1 00:00:10,110 --> 00:00:12,112 〈その昔→ 2 00:00:12,112 --> 00:00:18,118 学者たちは 幾何学を使い 初めて地球の大きさを知った〉 3 00:00:19,119 --> 00:00:26,093 〈すると その手の内にある運命の大きさも 幾何学で測ることができるかな?〉 4 00:00:27,127 --> 00:00:34,101 〈これは 広大な大陸を翻弄した 一人の魔女の話〉 5 00:00:34,101 --> 00:00:50,117 ♬~ 6 00:00:56,123 --> 00:00:58,125 (アフマド)ん? 7 00:00:58,125 --> 00:01:00,127 (シタラ)ほっ。 8 00:01:00,127 --> 00:01:14,141 (アザーン) 9 00:01:17,110 --> 00:01:25,085 (アザーン) 10 00:01:25,085 --> 00:01:27,120 (アフマド)あっ…。 11 00:01:27,120 --> 00:01:33,093 (アザーン) 12 00:01:36,096 --> 00:01:48,108 (アザーン) 13 00:01:48,108 --> 00:01:51,078 (アフマド)どこに行こうとしてるのかな? 小鳥ちゃん。 14 00:01:53,080 --> 00:01:55,082 (アフマド)困った子だな。 15 00:02:09,129 --> 00:02:21,041 ♬~ 16 00:02:21,041 --> 00:02:38,091 ♬~ 17 00:02:38,091 --> 00:02:42,029 (ファーティマ)やっぱり バザールは 活気があっていいわね。 18 00:02:42,029 --> 00:02:47,034 (ズムッルド)奥さま 旦那さまの喪が明けたら お店巡りでもしましょうか? 19 00:02:47,034 --> 00:02:49,036 そうね。 20 00:02:49,036 --> 00:02:53,006 まず今日は お導きがあって いい奴隷が見つかるといいのだけれど…。 21 00:02:53,006 --> 00:02:55,008 あなたほどでなくてもね。 22 00:02:55,008 --> 00:02:57,010 (ズムッルド)フフフフ…。 23 00:03:01,048 --> 00:03:03,050 (ファーティマ)うーん…。 24 00:03:03,050 --> 00:03:06,019 (アフマド)どれも働き者ですよ。 25 00:03:06,019 --> 00:03:10,023 例えば この女なんかは料理が上手ですし→ 26 00:03:10,023 --> 00:03:12,092 隣のは裁縫が得意。 27 00:03:12,092 --> 00:03:14,027 そっちは口達者で→ 28 00:03:14,027 --> 00:03:17,030 ファーティマ奥さまのお話し相手にも なろうかと。 29 00:03:17,030 --> 00:03:21,034 そうね…。 でも 今 一番困っているのは…。 30 00:03:21,034 --> 00:03:25,005 お掃除です。 あの広いお屋敷を私だけでは…。 31 00:03:25,005 --> 00:03:29,042 ええ。 まだ 亡くなった夫の遺品整理も 終わってなくて…。 32 00:03:29,042 --> 00:03:33,013 (アフマド)なるほど。 では この女は いかがでしょう? 33 00:03:33,013 --> 00:03:35,015 掃除の天才ですよ。 34 00:03:35,015 --> 00:03:37,050 アニースと申します。 35 00:03:37,050 --> 00:03:41,021 掃除は 何を捨てるかではなく 何を残したいか。 36 00:03:41,021 --> 00:03:45,025 美しく整った毎日をお約束しますよ。 37 00:03:45,025 --> 00:03:47,027 素晴らしいわ。 おいくらでしょう? 38 00:03:48,028 --> 00:03:50,030 ざっと800ディルハムですね。 39 00:03:50,030 --> 00:03:54,034 (ファーティマ)はあ…。 奴隷は安い買い物ではないけれど…。 40 00:03:54,034 --> 00:03:58,071 アフマドさん お願い! もう少し安くできない? 41 00:03:58,071 --> 00:04:02,042 ふーむ…。 普段なら お断りなんですが…。 42 00:04:02,042 --> 00:04:06,046 では 特別に 半値でお譲りしても。 43 00:04:06,046 --> 00:04:09,015 (2人)えっ!? ただし 代わりに…。 44 00:04:09,015 --> 00:04:11,051 おいで。 45 00:04:11,051 --> 00:04:19,025 ♬~ 46 00:04:19,025 --> 00:04:22,028 (アフマド)ほら 教えたとおりに。 47 00:04:23,029 --> 00:04:26,032 あら かわいい。 その子は? 48 00:04:26,032 --> 00:04:28,101 (アフマド)先日 入った娘で シタラです。 49 00:04:28,101 --> 00:04:32,105 (ファーティマ)まあ! 名前が お星さまなんて すてきね。 50 00:04:34,040 --> 00:04:36,042 オホン。 51 00:04:36,042 --> 00:04:41,047 ちょっと恥ずかしがり屋ですが このとおり 笑った顔が かわいいもんで→ 52 00:04:41,047 --> 00:04:46,019 教養を付けさせたら 高貴な方のそば仕えになろうかと思いまして。 53 00:04:46,019 --> 00:04:48,054 で 相談なんですが→ 54 00:04:48,054 --> 00:04:52,058 ファーティマ奥さま あなたさまの家は 学者の家系で→ 55 00:04:52,058 --> 00:04:57,063 特に ムハンマド坊ちゃんは このトゥースでも有名な秀才です。 56 00:04:57,063 --> 00:04:59,065 お宅で学んだと言えば 箔が付く。 57 00:04:59,065 --> 00:05:03,036 この子を しばらく預かっちゃもらえませんかね? 58 00:05:09,042 --> 00:05:11,044 (伯父)えっ!? 59 00:05:11,044 --> 00:05:13,046 (伯父)引き受けちゃったのか! 60 00:05:13,046 --> 00:05:15,048 お願い。 61 00:05:15,048 --> 00:05:18,051 この家では もう 兄さんしか 教師の資格を持ってないの。 62 00:05:18,051 --> 00:05:22,022 私は 夫の喪中で よそに知り合いもいないし…。 63 00:05:22,022 --> 00:05:28,028 それに 奴隷だろうと誰だろうと 知を求めることは イスラム教徒の務め。 64 00:05:29,062 --> 00:05:31,031 まあね。 65 00:05:32,032 --> 00:05:35,035 学問の基本は読誦だ。 66 00:05:35,035 --> 00:05:39,005 正しく『クルアーン』を発音することが 第一歩だよ。 67 00:05:39,005 --> 00:05:41,007 僕のまねをして 声を出してごらん。 68 00:05:42,042 --> 00:05:47,013 慈悲ふかく慈愛あまねき アッラーの御名において…。 69 00:05:49,015 --> 00:05:52,052 ん? 君の番だよ。 70 00:05:52,052 --> 00:05:56,022 ああっ… ほら 言ってごらん。 71 00:05:59,092 --> 00:06:02,028 駄目だ。 あの子は才能がない。 72 00:06:02,028 --> 00:06:06,032 何を教えても 笑ってばかりで 学ぶ気がないんだ。 73 00:06:06,032 --> 00:06:08,034 でも 預かると約束を…。 74 00:06:09,035 --> 00:06:13,006 奴隷の値引き分は 僕が払ってやろう。 75 00:06:13,006 --> 00:06:15,008 ごめんなさい 兄さん…。 76 00:06:18,044 --> 00:06:21,047 迎えに来てもらうわ。 少し待っててね。 77 00:06:21,047 --> 00:06:24,117 (伯父)アフマドさんの店だね? 私が行こう。 78 00:06:24,117 --> 00:06:26,086 (ファーティマ)ええ ごめんなさい。 79 00:06:32,025 --> 00:06:33,994 《逃げなきゃ》 80 00:06:35,028 --> 00:06:37,097 《どこか遠くへ売られるなんて嫌》 81 00:06:37,097 --> 00:06:39,032 《家に帰るんだもん》 82 00:06:39,032 --> 00:06:56,049 ♬~ 83 00:06:56,049 --> 00:07:12,032 ♬~ 84 00:07:12,032 --> 00:07:14,100 《迷っちゃった!》 85 00:07:14,100 --> 00:07:16,102 《出口 どこだろう?》 86 00:07:22,042 --> 00:07:24,010 《男の子…?》 87 00:07:31,017 --> 00:07:33,053 …あっ。 88 00:07:33,053 --> 00:07:38,024 特に ムハンマド坊ちゃんは このトゥースでも有名な秀才です。 89 00:07:41,027 --> 00:07:43,029 あの…。 (ムハンマド)ん? 90 00:07:43,029 --> 00:07:46,032 出口って…。 (ムハンマド)あっ! き… 君 駄目じゃないか。 91 00:07:46,032 --> 00:07:50,036 女性が 髪も隠さずに 男の前に出るなんて。 92 00:07:50,036 --> 00:07:54,140 ふーん。 いいのよ 私 まだ子供だもん。 近いよ…。 93 00:07:54,140 --> 00:07:59,045 それに あなただって まだ子供に見えるわ ムハンマド坊ちゃん。 94 00:07:59,045 --> 00:08:01,047 そもそも 君 誰? 95 00:08:01,047 --> 00:08:04,050 私は シタ…。 (ズムッルド)あっ! いた! 96 00:08:04,050 --> 00:08:06,052 捜したのよ! 急にいなくなって。 97 00:08:06,052 --> 00:08:09,122 うっ… お庭のバラがきれいで…。 98 00:08:09,122 --> 00:08:12,092 その子 出口 探してたよ。 99 00:08:15,061 --> 00:08:18,031 まったく… 逃げ出そうだなんて! (ファーティマ)まあまあ。 100 00:08:18,031 --> 00:08:22,068 もうすぐ 兄さんが アフマドさんを連れてきますからね。 101 00:08:22,068 --> 00:08:25,038 ごめんね。 帰りたかったんでしょう? 102 00:08:27,040 --> 00:08:30,043 あの人の所じゃないもん…。 103 00:08:30,043 --> 00:08:33,113 母さんと暮らしてた家…。 104 00:08:33,113 --> 00:08:37,117 母さんが死んで 旦那さまは私を売っちゃった。 105 00:08:37,117 --> 00:08:40,019 それは あなたの家じゃないでしょ。 106 00:08:40,019 --> 00:08:43,023 奴隷なんだから。 帰る家が欲しければ→ 107 00:08:43,023 --> 00:08:46,025 いい主人に買ってもらえるよう 勉強しなきゃ。 108 00:08:46,025 --> 00:08:48,028 じゃあ 絶対勉強しない! 109 00:08:48,028 --> 00:08:53,099 勉強 嫌! かわいい顔も もうしない! 値段が高くなるもん。 110 00:08:53,099 --> 00:08:57,037 そしたら… 勉強したら もっとずっと遠くに売られちゃうんだ! 111 00:08:57,037 --> 00:09:01,007 もう知らない所に行くのは嫌…。 112 00:09:01,007 --> 00:09:03,043 (泣き声) 113 00:09:03,043 --> 00:09:06,045 (ムハンマド)ねえ 君 シタラといったっけ。 114 00:09:06,045 --> 00:09:09,015 そんな理由で うちへ学びに来ていたの? 115 00:09:09,015 --> 00:09:13,053 僕と君とじゃ 状況も違うんだろうけど…。 116 00:09:13,053 --> 00:09:17,023 ねえ ズムッルド 台所から 水おけを持ってきてくれるかい? 117 00:09:17,023 --> 00:09:19,993 大きいやつがいい。 (ズムッルド)はあ…。 118 00:09:21,027 --> 00:09:22,996 (ムハンマド)ちょっとおいで。 119 00:09:25,031 --> 00:09:27,033 どこ行くの? 120 00:09:31,004 --> 00:09:33,006 《屋上…?》 121 00:09:39,045 --> 00:09:41,047 (ズムッルド)これで いかがでしょう? 122 00:09:41,047 --> 00:09:43,016 (ムハンマド)うん ありがとう。 123 00:09:46,019 --> 00:09:48,021 今から これを庭に落とすね。 124 00:09:48,021 --> 00:09:50,023 (2人)ん? 125 00:09:54,093 --> 00:09:56,029 (ズムッルド)あの 坊ちゃん…。 126 00:09:56,029 --> 00:09:58,097 見込みなしですかね あの子…。 127 00:09:58,097 --> 00:10:01,034 (水おけの落ちる音) (アフマド)うわあっ…! なんだ? なんだ? 128 00:10:01,034 --> 00:10:03,002 一体 何が起こったんだ? 129 00:10:09,042 --> 00:10:12,045 (伯父)なんだ!? 今の音は。 みんな無事か? 130 00:10:12,045 --> 00:10:14,013 雷でも落ちたの? 131 00:10:14,013 --> 00:10:19,018 て… 敵が攻めてきたんじゃないか!? 野蛮な遊牧民とか。 ヒイ~ッ! 132 00:10:21,020 --> 00:10:25,024 水おけ? (ムハンマド)アハハッ。 みんな 慌てちゃって。 133 00:10:25,024 --> 00:10:27,026 坊ちゃん いたずらが過ぎます。 134 00:10:27,026 --> 00:10:31,030 ところで 君たちは どうして そんなに冷静なの? 135 00:10:31,030 --> 00:10:33,032 そりゃあ だって→ 136 00:10:33,032 --> 00:10:37,003 落ちると分かって 耳をふさいだくらいですし…。 137 00:10:39,005 --> 00:10:44,043 つまり 君たちは 大きな音がするという未来を予測して→ 138 00:10:44,043 --> 00:10:47,013 適切に対処したということだね。 139 00:10:47,013 --> 00:10:50,016 はあ… まあ そうですね。 140 00:10:50,016 --> 00:10:54,020 (ムハンマド)勉強って こういうことなんじゃないかな。 141 00:10:55,054 --> 00:11:00,026 (ムハンマド)君は 今 自分の身がどこにあるかも 何が起こっているかも→ 142 00:11:00,026 --> 00:11:04,030 この先 どんなことが起きるかも まるで分からないでいる。 143 00:11:04,030 --> 00:11:08,067 いってみれば 伯父さまたちと同じ状況だ。 144 00:11:08,067 --> 00:11:10,069 でも 勉強して 賢くなれば→ 145 00:11:10,069 --> 00:11:15,041 どんなに困ったことが起きたって 何をすれば一番いいのか 分かるんだ。 146 00:11:15,041 --> 00:11:18,044 それは絶対に悪いことじゃない。 147 00:11:18,044 --> 00:11:21,014 それが勉強…。 148 00:11:24,050 --> 00:11:27,053 (ムハンマド)伯父さま 驚かせてごめん! 僕だよ。 149 00:11:28,121 --> 00:11:32,058 (アニース)うーん…。 この水おけ ひしゃげて うまく収まらないわ。 150 00:11:32,058 --> 00:11:34,127 ときめかない! 151 00:11:34,127 --> 00:11:38,031 (ズムッルド)修理に出してきて。 食事の支度は 私がやっておくから。 152 00:11:38,031 --> 00:11:40,033 あら! いらっしゃい シタラ。 153 00:11:42,035 --> 00:11:46,105 分からないことがあったら なんでも聞いてね。 は… はい! 154 00:11:46,105 --> 00:11:48,107 〈こうして シタラは→ 155 00:11:48,107 --> 00:11:53,079 学者一家の下で 勉学に励みつつ 働くことになった〉 156 00:11:55,114 --> 00:12:00,019 ♬~(ファーティマの鼻歌) 157 00:12:00,019 --> 00:12:29,048 ♬~ 158 00:12:29,048 --> 00:12:44,030 ♬~ 159 00:12:44,030 --> 00:12:59,012 ♬~ 160 00:13:01,014 --> 00:13:04,050 わあ…! とてもきれいです 奥さま。 161 00:13:04,050 --> 00:13:07,020 ありがとう。 でも まだ気が引けるわね。 162 00:13:07,020 --> 00:13:09,022 何をおっしゃいます! 163 00:13:09,022 --> 00:13:12,025 今日は 喪が明けて初めて ハマムへ行く日。 164 00:13:12,025 --> 00:13:16,029 さっぱりして お化粧して 髪と手をヘナで染めて→ 165 00:13:16,029 --> 00:13:20,133 よその奥さまと たくさんおしゃべりしてください! 166 00:13:20,133 --> 00:13:22,035 はいはい。 167 00:13:22,035 --> 00:13:26,039 今度 連れて行ってあげるわね シタラ。 168 00:13:26,039 --> 00:13:28,007 はい! 169 00:13:30,043 --> 00:13:36,015 天にあるもの 地にあるもの すべてはアッラーに属す。 170 00:13:37,016 --> 00:13:40,019 《伯父さまの読誦と まだ なんか違う…》 171 00:13:40,019 --> 00:13:43,022 《今度 もう一度 教えてもらおう》 172 00:13:43,022 --> 00:13:45,024 (ムハンマド)母さま お話が…。 173 00:13:45,024 --> 00:13:47,026 あっ…! 母さまは? 174 00:13:47,026 --> 00:13:50,029 ファーティマ奥さまは ハマムへ出かけられました。 175 00:13:50,029 --> 00:13:52,031 聞いてないんですか? 176 00:13:52,031 --> 00:13:54,033 えっ? あっ あれって今日だっけ? 177 00:13:54,033 --> 00:13:58,104 お勉強のこと以外 頭にないのかしら。 178 00:13:58,104 --> 00:14:02,108 だからさ 君 髪も隠さずに部屋から出てくるなんて…。 179 00:14:02,108 --> 00:14:05,044 私 まだ子供だって 言ってるじゃありませんか。 180 00:14:05,044 --> 00:14:09,115 それに ムハンマド坊ちゃんだって まだ12歳。 181 00:14:09,115 --> 00:14:13,052 そんな おひげもない頬で 女部屋に入ったところで なんの問題が? 182 00:14:13,052 --> 00:14:15,021 (ムハンマドの声)僕は子供じゃない! 183 00:14:16,022 --> 00:14:19,025 (ムハンマド)君から見ても 僕は幼稚かな。 えっ…? 184 00:14:23,863 --> 00:14:27,867 (ムハンマド)僕は世界を知らなさすぎるって 先生に言われた。 185 00:14:27,867 --> 00:14:29,869 先生って 法学の? 186 00:14:29,869 --> 00:14:33,873 (ムハンマド) そう 父さまが生前に紹介してくれた→ 187 00:14:33,873 --> 00:14:35,975 カマルッディーン先生だよ。 188 00:14:35,975 --> 00:14:39,912 でも 最近 考え方が違うと感じる時があって。 189 00:14:39,912 --> 00:14:43,983 踏み込んだ質問をしても はっきり答えてくださらない。 190 00:14:43,983 --> 00:14:47,954 (カマルッディーン)それを理解するには 君は あまりにも経験が浅い。 191 00:14:49,889 --> 00:14:53,893 僕は… 旅に出ようと思う。 192 00:14:53,893 --> 00:14:55,962 えっ…。 (ムハンマド)ニーシャプールへ行って→ 193 00:14:55,962 --> 00:14:58,865 高名な先生を訪ねてみたい。 194 00:14:58,865 --> 00:15:01,934 いや それだけじゃなく いずれ 他の都市も巡って→ 195 00:15:01,934 --> 00:15:06,906 イスラムだけでなく あらゆる知恵と出会いたい。 196 00:15:06,906 --> 00:15:08,875 真理を探して…。 197 00:15:12,979 --> 00:15:17,950 (ムハンマド)それが 学者だった父さまが僕に望んだ道だと思う。 198 00:15:21,888 --> 00:15:23,890 ご立派ですね。 199 00:15:23,890 --> 00:15:27,894 じゃあ 私 洗い物があるから失礼します。 ん…? 200 00:15:30,897 --> 00:15:35,868 天にあるもの 地にあるもの すべてはアッラーに属す。 201 00:15:38,871 --> 00:15:44,877 《私がどんなに勉強しても ムハンマドさまには追いつけないのよね》 202 00:15:59,892 --> 00:16:01,894 (ムハンマド)母さま いってまいります。 203 00:16:01,894 --> 00:16:05,865 学者だった父さまに恥じないよう 向こうでも励むのですよ。 204 00:16:05,865 --> 00:16:07,900 はい。 205 00:16:07,900 --> 00:16:09,869 お体に気を付けて。 206 00:16:12,905 --> 00:16:14,874 では いってきます。 207 00:16:15,908 --> 00:16:18,978 途中まで送ろう。 伯父さま ありがとう。 208 00:16:18,978 --> 00:16:20,880 あっ…。 209 00:16:20,880 --> 00:16:22,849 ちょっと待ってて! 210 00:16:22,849 --> 00:16:24,951 君。 211 00:16:24,951 --> 00:16:27,954 文字は まだ読めないんだっけ? …ええ。 212 00:16:27,954 --> 00:16:31,858 (ムハンマド)そっか。 じゃあ 手紙を書く。 213 00:16:31,858 --> 00:16:35,895 僕が将来 先生になった時 君みたいな小さな子にも伝えられるように。 214 00:16:35,895 --> 00:16:37,864 できるだけ簡単な言葉で。 215 00:16:37,864 --> 00:16:39,866 練習台!? 216 00:16:39,866 --> 00:16:43,936 だから 君は 勉強して 母さまに読んで差し上げるんだ。 217 00:16:43,936 --> 00:16:45,938 いいね シタラ。 218 00:16:46,873 --> 00:16:48,875 これからも学ぶことをやめないでね。 219 00:16:48,875 --> 00:16:50,843 かしこまりました。 220 00:16:51,878 --> 00:16:53,846 じゃあ いってきます! 221 00:16:58,885 --> 00:17:04,857 〈後に 高名な学者となる トゥースの少年 ムハンマドと→ 222 00:17:04,857 --> 00:17:07,894 一人の奴隷の少女 シタラ〉 223 00:17:07,894 --> 00:17:12,865 〈2人が顔を合わせたのは 生涯 これが最後となる〉 224 00:17:16,869 --> 00:17:20,873 慈悲ふかく慈愛あまねき アッラーの御名において…。 225 00:17:20,873 --> 00:17:22,875 ん? 226 00:17:24,877 --> 00:17:26,879 (ズムッルド)トゥースの民軍だわ。 227 00:17:26,879 --> 00:17:28,915 ズムッルドさん。 228 00:17:28,915 --> 00:17:31,884 きっと 街の外を偵察に行くのね。 229 00:17:31,884 --> 00:17:35,855 なんでも 武装した遊牧民が 近くに現れたんですって。 230 00:17:36,956 --> 00:17:39,859 あの中に 私の弟もいるのよ。 231 00:17:39,859 --> 00:17:42,862 もう ずっと会っていないけど。 へえ~。 232 00:17:42,862 --> 00:17:46,933 私とミハイルは ずっと西の国で生まれたの。 233 00:17:46,933 --> 00:17:51,871 (ズムッルドの声)海の近くでね 夕日が沈む時 きれいな紫色に染まるんだ。 234 00:17:51,871 --> 00:17:53,873 (シタラの声)海! 235 00:17:53,873 --> 00:17:57,877 貧しかったけど 海を見るのは好きだったな。 236 00:17:57,877 --> 00:17:59,912 (ファーティマ)シタラ! 237 00:17:59,912 --> 00:18:01,881 手紙を読んでもらえるかしら。 238 00:18:01,881 --> 00:18:05,885 はい! すぐに! いつものお部屋ですね。 239 00:18:05,885 --> 00:18:07,887 あらあら あんなに喜んで。 240 00:18:07,887 --> 00:18:09,889 ウフフッ…。 241 00:18:09,889 --> 00:18:11,891 では…。 (せき払い) 242 00:18:11,891 --> 00:18:14,894 母上 伯父上 家を出て この8年→ 243 00:18:14,894 --> 00:18:19,899 私は 哲学 数学 医学や天文学などの科学を 学びました。 244 00:18:19,899 --> 00:18:24,904 (ムハンマドの声)ニーシャプールは 著名な学者たちの集う 大きな都市です。 245 00:18:24,904 --> 00:18:27,940 例えば ファドルッディーン・ダマード先生からは→ 246 00:18:27,940 --> 00:18:31,911 イブン・スィーナーの築いた医学を ご教授いただきました。 247 00:18:31,911 --> 00:18:35,881 教えられたことを ただ模倣する類いの 神学とは違い→ 248 00:18:35,881 --> 00:18:39,885 科学は 学者たちの実地の経験に基づいた知性です。 249 00:18:39,885 --> 00:18:42,888 (ムハンマド・シタラ) 私には こちらのほうが好ましく思えます。 250 00:18:42,888 --> 00:18:44,857 それから…。 251 00:18:45,891 --> 00:18:48,894 あの小さな星 シタラが耳を貸すなら→ 252 00:18:48,894 --> 00:18:53,899 エウクレイデスや プトレマイオスを 教えてあげてください。 253 00:18:54,934 --> 00:18:57,937 うん。 ついていらっしゃい。 254 00:19:02,908 --> 00:19:04,877 わあ~…! 255 00:19:04,877 --> 00:19:08,881 ありがとうございます! 貴重な写本を。 256 00:19:08,881 --> 00:19:13,886 いいのよ。 全てのイスラム教徒は 知を求める義務がある。 257 00:19:13,886 --> 00:19:16,889 学者だった夫も そう教えていたわ。 258 00:19:16,889 --> 00:19:19,892 エウクレイデスの『原論』なら あそこよ。 259 00:19:19,892 --> 00:19:21,861 はい! 260 00:19:28,868 --> 00:19:31,871 点とは部分のないもの。 261 00:19:31,871 --> 00:19:33,873 線とは幅のない長さ。 262 00:19:33,873 --> 00:19:36,909 線の端は点である…。 263 00:19:36,909 --> 00:19:40,846 なんだか 当たり前のことが 大仰に書かれていますが…。 264 00:19:40,846 --> 00:19:42,848 (ファーティマ) 当たり前のことが なぜ当たり前なのか。 265 00:19:42,848 --> 00:19:47,853 一つ一つ 事例を重ねて 普遍的な定理を証明するの。 266 00:19:47,853 --> 00:19:49,855 フフッ…。 難しい? 267 00:19:49,855 --> 00:19:53,959 すみません…。 この知識の使い道が 全然分からなくて。 268 00:19:53,959 --> 00:19:56,896 それじゃ もうちょっと面白い本を。 269 00:19:56,896 --> 00:20:00,866 ビールーニー 『占星術教程の書』。 270 00:20:00,866 --> 00:20:02,868 占星術ですか。 271 00:20:02,868 --> 00:20:04,937 (ファーティマ)実践的でしょ。 272 00:20:04,937 --> 00:20:06,872 ほら ここを見て。 ん? 273 00:20:06,872 --> 00:20:12,878 地球の直径は 2163と3分の1ファルサフであり→ 274 00:20:12,878 --> 00:20:15,848 円周は6800ファルサフである。 275 00:20:15,848 --> 00:20:18,884 この人は 地球の端まで行ったのですか? 276 00:20:18,884 --> 00:20:21,854 まさか! そんなことはできないわ。 277 00:20:22,855 --> 00:20:26,859 地平上のある地点と 山頂と 地球の中心で→ 278 00:20:26,859 --> 00:20:28,894 直角三角形を作れば→ 279 00:20:28,894 --> 00:20:31,864 地球の半径が分かるというわけ。 280 00:20:31,864 --> 00:20:33,866 山の頂上…? 281 00:20:34,934 --> 00:20:36,869 (ファーティマ)地面に落ちた影の角度から→ 282 00:20:36,869 --> 00:20:39,872 地球の円周を計算する方法も。 283 00:20:39,872 --> 00:20:41,874 影から!? 284 00:20:45,878 --> 00:20:50,883 (ファーティマ)どれも『原論』にある普遍的な知識から 導き出されたのよ。 285 00:20:50,883 --> 00:20:52,852 どう? 面白いかしら? 286 00:20:53,853 --> 00:20:55,888 焦げてるよ! はっ!! 287 00:20:55,888 --> 00:20:57,857 あっ… ああっ! 288 00:20:59,892 --> 00:21:01,961 ハハッ…。 289 00:21:01,961 --> 00:21:04,864 最近 こんな失敗ばかりね。 290 00:21:04,864 --> 00:21:07,867 ごめんなさい アニースさん。 291 00:21:07,867 --> 00:21:11,971 あのね シタラちゃん 奴隷にも いろんな仕事があって→ 292 00:21:11,971 --> 00:21:17,910 中には 教養を身に付けて 主人を楽しませる奴隷もいるわ。 293 00:21:17,910 --> 00:21:21,881 場合によっては 解放の約束をもらえることだって。 294 00:21:21,881 --> 00:21:25,885 でも あんまり期待しないほうがいいと 思うな。 295 00:21:25,885 --> 00:21:28,888 自分じゃ何も決められないの 私たち。 296 00:21:28,888 --> 00:21:30,956 人じゃなくて 所有物なのよ。 297 00:21:30,956 --> 00:21:32,892 (伯父)君たち ちょっと…。 298 00:21:32,892 --> 00:21:34,894 集まってくれ。 299 00:21:34,894 --> 00:21:36,896 ズムッルドも呼んでくれる? 300 00:21:36,896 --> 00:21:38,864 どうしたんです? 301 00:21:38,864 --> 00:21:41,867 われらがトゥース軍が 遊牧民に敗れた。 302 00:21:45,905 --> 00:21:50,876 〈天への祈りの報いは 慈悲ではなく 炎のみ〉 303 00:21:50,876 --> 00:21:52,945 〈雨の代わりに 火花が降り出し→ 304 00:21:52,945 --> 00:21:54,947 そして 沈黙〉 305 00:21:55,881 --> 00:21:57,850 〈この炎の代わりにね〉 306 00:22:19,905 --> 00:22:21,874 ♬~ 307 00:23:55,868 --> 00:23:58,871 (伯父)われらがトゥース軍が 遊牧民に敗れた。 308 00:23:58,871 --> 00:24:00,873 軍は壊滅し→ 309 00:24:00,873 --> 00:24:04,843 もはや 街への侵入をはばむことは 難しいらしい。 310 00:24:04,843 --> 00:24:07,846 (伯父)奴らが来れば 略奪が起きる。 311 00:24:07,846 --> 00:24:10,816 今のうちに 食料や貴重品を隠しておこう。 312 00:24:12,851 --> 00:24:15,854 (ズムッルド)大して入らないわ。 313 00:24:15,854 --> 00:24:17,856 (アニース)ん~。 314 00:24:18,857 --> 00:24:20,826 (アニース)フッ…。 315 00:24:22,861 --> 00:24:24,830 (シタラ・ズムッルド)おお~! (アニース)フッ…。 316 00:24:25,831 --> 00:24:28,934 私は 息子たちを連れて 山のほうに避難するよ。 317 00:24:28,934 --> 00:24:31,870 (ファーティマ)ええ。 それがいいわね。 318 00:24:31,870 --> 00:24:34,840 ファーティマは シタラと一緒に地下室へ隠れていなさい。 319 00:24:35,874 --> 00:24:37,843 3日たったら迎えに来る。 320 00:24:37,843 --> 00:24:39,845 シタラ ファーティマのことを頼んだよ。 321 00:24:39,845 --> 00:24:42,881 (シタラ)はい! お守りします! 322 00:24:42,881 --> 00:24:46,885 (ズムッルド)それでは 奥さま シタラ! (アニース)また すぐに。 323 00:24:47,886 --> 00:24:52,891 (アニース)なんだか 子供の頃を思い出しちゃうな。 よく こうやって避難してたもの。 324 00:24:52,891 --> 00:24:57,896 (ズムッルド)もう~ もっと 緊張感 持ちなさいよ。 (アニース)フフッ…。 325 00:25:02,868 --> 00:25:06,839 奥さま ナツメヤシの実を どうぞ。 326 00:25:06,839 --> 00:25:09,842 (ファーティマ)ありがとう シタラ。 327 00:25:10,843 --> 00:25:15,848 ここにいると まるで時の流れが止まったように感じるわ。 328 00:25:16,849 --> 00:25:21,854 ここから見える外の光が 3度 暗くなって 明るくなりました。 329 00:25:21,854 --> 00:25:25,858 もうすぐ 伯父さまたちが迎えに来てくれますわ。 330 00:25:25,858 --> 00:25:28,827 それに もし来るのが遅れても→ 331 00:25:28,827 --> 00:25:32,831 アニースさんたちのおかげで 食料は十分にありますし→ 332 00:25:32,831 --> 00:25:34,833 大事な本だって無事です。 333 00:25:34,833 --> 00:25:37,903 そうね。 ありがとう シタラ。 334 00:25:37,903 --> 00:25:39,838 あなたがいてくれて心強いわ。 335 00:25:39,838 --> 00:25:42,841 私は 何も…。 336 00:25:42,841 --> 00:25:44,843 えっと…。 337 00:25:44,843 --> 00:25:49,848 でも 奥さま 遊牧民が エウクレイデスなど読むのでしょうか? 338 00:25:49,848 --> 00:25:51,850 分からないわ。 339 00:25:51,850 --> 00:25:54,853 でも 万に一つもなくせないの。 340 00:25:54,853 --> 00:25:57,856 夫が生前集めた写本ですもの。 341 00:25:57,856 --> 00:25:59,825 そうですね…。 342 00:25:59,825 --> 00:26:02,828 (ファーティマ)ねえ シタラ。 343 00:26:02,828 --> 00:26:05,831 ムハンマドのことが好き? 344 00:26:05,831 --> 00:26:08,834 えっ? あっ… はっ…。 345 00:26:08,834 --> 00:26:11,837 はい! 尊敬しております。 346 00:26:11,837 --> 00:26:14,840 あれほど聡明な方は めったにいないかと…。 347 00:26:15,841 --> 00:26:18,911 (ファーティマ)父親とよく似ているの。 348 00:26:18,911 --> 00:26:22,881 あの子は 保守的な神学になじめなかった。 349 00:26:23,849 --> 00:26:31,824 この先 自分の道を進めば進むほど たくさんの対立を経ることになるでしょう。 350 00:26:31,824 --> 00:26:36,829 そんな時 あの子の心に寄り添ってあげられるのは→ 351 00:26:36,829 --> 00:26:39,832 シタラ。 あなただけよ。 352 00:26:40,833 --> 00:26:42,835 (ファーティマ)彼のそばに仕えてほしいの。 353 00:26:42,835 --> 00:26:45,904 一人の人間として。 354 00:26:45,904 --> 00:27:07,860 ♬~ 355 00:27:07,860 --> 00:27:09,828 はい! 356 00:27:14,933 --> 00:27:16,869 ⚞(足音) 357 00:27:16,869 --> 00:27:20,873 (ファーティマ)兄さんたちね。 やっと外に出られるわ。 358 00:27:20,873 --> 00:27:22,841 はい! 359 00:27:25,844 --> 00:27:27,813 フフッ…。 フフッ…。 360 00:27:33,919 --> 00:27:35,921 あっ…。 361 00:27:41,860 --> 00:27:44,830 あっ…。 ハッ! 362 00:27:44,830 --> 00:27:59,845 ♬~ 363 00:28:01,847 --> 00:28:10,856 ♬~ 364 00:29:46,785 --> 00:29:52,791 ♬~ 365 00:29:52,791 --> 00:29:55,794 ありがとう シタラ。 いえ…。 366 00:29:56,795 --> 00:29:58,797 (シラ)どけ。 あっ…。 367 00:30:00,832 --> 00:30:02,801 くっ…! (ファーティマ)シタラ。 368 00:30:02,801 --> 00:30:04,803 逆らっては駄目よ。 369 00:30:06,805 --> 00:30:08,774 はい。 奥さま…。 370 00:30:13,812 --> 00:30:15,814 (シラ)あっ…。 371 00:30:15,814 --> 00:30:21,853 ♬~ 372 00:30:21,853 --> 00:30:26,858 ⚞(物音) 373 00:30:30,896 --> 00:30:32,864 (シタラ・ファーティマ)はっ…! 374 00:30:47,813 --> 00:30:49,781 (ファーティマ)駄目よ… その本は…。 375 00:31:16,775 --> 00:31:18,777 あっ… あっ…。 376 00:31:23,882 --> 00:31:26,785 「それから泥棒をした者は→ 377 00:31:26,785 --> 00:31:30,789 男でも女でも 容赦なく 両手を切り落としてしまえ」! 378 00:31:30,789 --> 00:31:32,791 シタラ…! 379 00:31:32,791 --> 00:31:36,762 それは あなたのものではありません! 返してください! 380 00:31:57,783 --> 00:32:00,786 「泥棒ではない。 この地上のものは 皆→ 381 00:32:00,786 --> 00:32:03,789 わが父 チンギス・カンのものなのだ」。 《この人 私たちの言葉を…》 382 00:32:03,789 --> 00:32:05,757 …と仰せだ。 383 00:32:21,807 --> 00:32:23,775 ううっ…! (シラ)はっ…! 384 00:32:23,775 --> 00:32:25,777 (ファーティマ)駄目! 385 00:32:26,812 --> 00:32:28,814 (斬る音) 386 00:32:28,814 --> 00:32:31,783 (ファーティマ)あっ…。 387 00:32:34,820 --> 00:32:36,788 あっ…! 388 00:32:47,799 --> 00:32:50,802 お… 奥さま…。 389 00:32:55,874 --> 00:33:00,879 私の… 娘に…。 390 00:33:03,815 --> 00:33:06,785 触らないで…。 391 00:33:09,788 --> 00:33:11,790 奥さま…。 392 00:33:11,790 --> 00:33:14,893 奥さま… 奥さま! 393 00:33:14,893 --> 00:33:19,798 (泣き声) 394 00:33:19,798 --> 00:33:37,782 ♬~ 395 00:33:37,782 --> 00:33:40,785 ああっ…! 396 00:33:40,785 --> 00:34:04,876 ♬~ 397 00:34:04,876 --> 00:34:06,811 ああっ…。 398 00:34:06,811 --> 00:34:25,864 ♬~ 399 00:34:25,864 --> 00:34:35,807 ♬~ 400 00:34:35,807 --> 00:34:40,779 ♬~ 401 00:34:40,779 --> 00:34:42,781 あっ…。 402 00:34:47,786 --> 00:34:49,788 (アニース)あっ…。 403 00:34:49,788 --> 00:34:51,790 シタラちゃん! あっ…? 404 00:34:55,794 --> 00:34:58,797 (アニース)ああっ… 生きていたのね。 405 00:34:58,797 --> 00:35:01,800 けがはない? 406 00:35:01,800 --> 00:35:04,769 アニースさん… 私…。 407 00:35:05,770 --> 00:35:09,774 私… 奥さまをお守りするって…→ 408 00:35:09,774 --> 00:35:11,810 約束したのに…。 409 00:35:11,810 --> 00:35:13,845 奥さまが…。 410 00:35:13,845 --> 00:35:16,781 (泣き声) そう…。 411 00:35:16,781 --> 00:35:19,784 (泣き声) 412 00:35:19,784 --> 00:35:24,789 私たちは 山のほうへ向かう途中で捕まったの。 413 00:35:24,789 --> 00:35:27,759 (アニースとズムッルドの笑い声) 414 00:35:28,793 --> 00:35:32,797 (アニースの声)それから いくつかの組に分けられたの。 415 00:35:32,797 --> 00:35:37,836 女たち 子供たち 職人たち。 416 00:35:37,836 --> 00:35:42,807 それ以外の男の人やお年寄りは どこかへ連れて行かれたわ。 417 00:35:42,807 --> 00:35:45,777 伯父さまとは それっきり…。 418 00:35:47,812 --> 00:35:49,781 それから…。 419 00:35:53,785 --> 00:35:55,787 ミハイル…! 420 00:35:55,787 --> 00:36:04,896 ♬~ 421 00:36:04,896 --> 00:36:06,865 ミハイル!! 422 00:36:08,800 --> 00:36:10,802 そんな…。 423 00:36:10,802 --> 00:36:12,771 ズムッルドさん…。 424 00:36:19,778 --> 00:36:22,814 (泣き声) お願い 泣きやんで…。 425 00:36:22,814 --> 00:36:25,850 (乳児の泣き声) (女性)いい子だから… ねっ…。 426 00:36:25,850 --> 00:36:27,786 ズムッルドさん…。 427 00:36:27,786 --> 00:36:29,754 立てますか? 428 00:36:31,790 --> 00:36:33,792 大丈夫? 429 00:36:33,792 --> 00:36:42,801 ♬~ 430 00:36:42,801 --> 00:36:44,769 《あの人…→ 431 00:36:44,769 --> 00:36:48,773 昔 水おけを直してくれた金物屋さん…》 432 00:36:49,774 --> 00:36:52,777 《早く伯父さまたちを捜さないと…》 433 00:36:52,777 --> 00:36:54,879 (女性の悲鳴) 434 00:36:54,879 --> 00:36:56,848 (人々のどよめき) 435 00:36:59,784 --> 00:37:03,755 ああっ… ハサン! ハサン! 436 00:37:05,790 --> 00:37:07,792 (女性)うっ…。 437 00:37:08,793 --> 00:37:10,762 チュウ! 438 00:37:12,797 --> 00:37:18,770 〈得体の知れない彼らへの恐怖が シタラたちを荒野へと追い立てた〉 439 00:37:24,642 --> 00:37:30,648 《今年のサファル月は まだ少し寒い季節で 水も冷たかった》 440 00:37:32,650 --> 00:37:35,720 《けれど 日が差すと→ 441 00:37:35,720 --> 00:37:38,723 もう 薔薇のつぼみが膨らんでいることに 気が付く》 442 00:37:42,727 --> 00:37:45,697 《私たちが仕事をしていると…》 443 00:37:45,697 --> 00:37:48,633 ⚞(子供たち)慈悲ふかく 慈愛あまねき…。 444 00:37:48,633 --> 00:37:53,638 《伯父さまの生徒たちの 読誦する声が聞こえてくる》 445 00:37:53,638 --> 00:37:55,640 かわいいわね! 446 00:37:55,640 --> 00:37:58,610 私が ここへ来た頃を思い出します。 447 00:38:00,612 --> 00:38:02,614 あっ! 帰っていらした! 448 00:38:04,616 --> 00:38:06,618 お帰りなさいませ! 奥さま! 449 00:38:06,618 --> 00:38:08,653 バザールは どうでしたか? 450 00:38:08,653 --> 00:38:12,624 ズムッルドのおかげで いい買い物ができたのよ。 451 00:38:12,624 --> 00:38:17,629 奥さま いつでもお供しますわ。 フフフッ… そうね。 452 00:38:17,629 --> 00:38:21,633 次は シタラも連れて行きましょうね。 はい! 453 00:38:21,633 --> 00:38:24,636 シタラ。 ニーシャプールへ手紙を送ったわ。 454 00:38:24,636 --> 00:38:28,606 薔薇が咲く頃には 返事が来るかもしれないわね。 455 00:38:31,643 --> 00:38:36,614 《サファル月の後には 花咲くラビーアウラル月が来る》 456 00:38:36,614 --> 00:38:39,617 《来るはずだった…》 457 00:38:39,617 --> 00:38:42,620 (泣き声) 458 00:38:48,626 --> 00:38:53,631 (アニース)ズムッルド 少しは食べて元気出さないと…。 459 00:38:54,632 --> 00:38:57,635 シタラちゃんも 食べなきゃ駄目よ。 460 00:38:57,635 --> 00:38:59,637 アニースさんが食べて…。 461 00:39:00,638 --> 00:39:05,610 (アニース)ありがとう。 でも これは あなたの分よ。 462 00:39:06,644 --> 00:39:08,613 ねえ 覚えてる? 463 00:39:08,613 --> 00:39:14,619 前に話した 「奴隷は自分じゃ何も決められない」って話。 464 00:39:15,620 --> 00:39:17,622 はい…。 465 00:39:17,622 --> 00:39:19,624 あれは言い換えるとね→ 466 00:39:19,624 --> 00:39:23,628 奴隷には その分 責任もない ということなの。 467 00:39:23,628 --> 00:39:27,632 例えば 奴隷が 何か罪を犯したとしても→ 468 00:39:27,632 --> 00:39:30,635 受ける罰は自由人の半分。 469 00:39:30,635 --> 00:39:36,641 私たちは 責任を負うことを認められていない というべきかしらね。 470 00:39:38,643 --> 00:39:44,616 奥さまのこと 許すも許さないも 自分で決めちゃ駄目よ。 471 00:39:45,650 --> 00:39:48,720 じゃあ… 誰が決めるの? 472 00:39:48,720 --> 00:39:51,623 もう 誰も決められない。 473 00:39:51,623 --> 00:39:55,627 奥さまも伯父さまも もう…。 474 00:39:55,627 --> 00:39:57,629 そうね…。 475 00:39:57,629 --> 00:40:01,633 ううん。 まだ たった一人いるわ。 476 00:40:01,633 --> 00:40:03,601 ニーシャプールに。 477 00:40:08,640 --> 00:40:10,642 ムハンマドさま…。 478 00:40:10,642 --> 00:40:12,610 うん…。 479 00:40:13,645 --> 00:40:18,650 ムハンマドさまは… まだ 生きていらっしゃる…。 480 00:40:18,650 --> 00:40:20,652 (アニース)そうよ。 481 00:40:20,652 --> 00:40:24,656 まだ 私たちには 一つだけ残されているの。 482 00:40:24,656 --> 00:40:34,666 ♬~ 483 00:40:34,666 --> 00:40:37,635 はい…。 484 00:40:38,636 --> 00:40:40,638 はい…! 485 00:40:43,641 --> 00:40:49,647 〈それから 捕虜たちは 毎日 東へと移動していった〉 486 00:40:53,651 --> 00:40:57,722 〈山あいを縫い 川を渡り→ 487 00:40:57,722 --> 00:41:01,726 そして サファル月が終わる頃…〉 488 00:41:07,665 --> 00:41:15,673 〈一行は タールカーンという地に張られた 天幕群にたどり着いた〉 489 00:41:24,615 --> 00:41:27,618 《兵士じゃない人たちもいる…》 490 00:41:27,618 --> 00:41:29,620 《もしかして 彼らの街かしら?》 491 00:41:30,621 --> 00:41:34,625 (職人)もし…。 あなた方は どこから? 492 00:41:34,625 --> 00:41:36,627 トゥースです。 493 00:41:36,627 --> 00:41:40,631 (職人)おお… なんてことだ。 トゥースまで…。 494 00:41:40,631 --> 00:41:42,667 あなたたちは? 495 00:41:42,667 --> 00:41:48,639 われわれは 職人ということで殺されず ここへ連れてこられました。 496 00:41:50,641 --> 00:41:52,643 ニーシャプールから。 497 00:41:54,712 --> 00:41:59,684 (職人の声)私たちは 遊牧民の接近を知り 防御を固めていました。 498 00:42:02,620 --> 00:42:06,724 (職人の声)そして ついに彼らが現れた時→ 499 00:42:06,724 --> 00:42:09,627 城壁から放たれた1本の矢が→ 500 00:42:09,627 --> 00:42:13,598 見事 彼らの司令官を貫いたのです。 501 00:42:16,634 --> 00:42:18,636 (職人の声)その1本の矢のために→ 502 00:42:18,636 --> 00:42:22,640 ニーシャプールは 報復の炎に焼き尽くされました。 503 00:42:32,617 --> 00:42:35,620 (遠ぼえ) 504 00:42:36,621 --> 00:42:39,657 生き残ったのは われわれ職人だけ。 505 00:42:39,657 --> 00:42:42,627 他は 女や子供たちまで…。 506 00:42:43,628 --> 00:42:47,632 《ああ… ニーシャプールには ムハンマドさまが…》 507 00:42:47,632 --> 00:42:54,639 ♬~ 508 00:42:54,639 --> 00:42:56,641 そんな…。 509 00:42:56,641 --> 00:42:58,643 (ズムッルド)うっ…。 510 00:42:58,643 --> 00:43:00,611 (アニース)ズムッルド! 511 00:43:01,612 --> 00:43:03,614 ズムッルドさん! 512 00:43:03,614 --> 00:43:08,619 (ズムッルド)ううっ… ミハイル…。 513 00:43:10,655 --> 00:43:12,623 ズムッルド…。 514 00:43:12,623 --> 00:43:14,625 (ズムッルド)まぶしい…。 515 00:43:14,625 --> 00:43:19,664 ああ… 夕日ね。 ミハイル。 516 00:43:19,664 --> 00:43:22,633 (波の音) 517 00:43:22,633 --> 00:43:25,636 (ズムッルド)とても きれい…。 518 00:43:28,739 --> 00:43:30,641 ズムッルドさん! 519 00:43:30,641 --> 00:43:33,644 (アニース)駄目よ! こんなの駄目! 520 00:43:33,644 --> 00:43:35,646 お願いだから…。 521 00:43:35,646 --> 00:43:41,652 ズムッルドさんは どこか海の見える外国から来たんです…。 522 00:43:41,652 --> 00:43:46,657 誰よりも長く 奥さまにお仕えして…。 523 00:43:46,657 --> 00:43:50,728 本当は 故郷に帰りたかったでしょうか…。 524 00:43:50,728 --> 00:43:54,665 家族に会いたかったでしょうか…。 525 00:43:54,665 --> 00:43:57,635 (泣き声) 526 00:43:57,635 --> 00:44:01,672 (アニース)せめて 私たちの手で弔ってあげましょう。 527 00:44:01,672 --> 00:44:05,643 弟さんと また会えるように…。 528 00:44:06,611 --> 00:44:10,615 われわれは アッラーのものであり…。 529 00:44:10,615 --> 00:44:14,619 (一同)最終的には アッラーに帰するものである。 530 00:44:14,619 --> 00:44:21,626 ♬~ 531 00:44:26,631 --> 00:44:29,634 (寝息) 532 00:44:29,634 --> 00:44:32,637 もう ときめかないな…。 533 00:44:41,612 --> 00:44:44,682 (女性)かわいそうに…。 (女性)何があったの? 534 00:44:44,682 --> 00:44:46,651 あっ…。 535 00:44:46,651 --> 00:44:48,619 すみません。 はっ…! 536 00:44:49,654 --> 00:44:52,623 (女性)通りかかった兵士に つかみかかったみたい。 537 00:44:52,623 --> 00:44:56,627 それで その場で斬られて…。 (女性)なんてこと…。 538 00:44:56,627 --> 00:44:59,630 どうして こんなに…。 539 00:45:00,631 --> 00:45:03,634 (職人)おお… 彼女の魂に平穏あれ。 540 00:45:05,636 --> 00:45:07,638 《自分で決めたんだ》 541 00:45:07,638 --> 00:45:13,644 《アニースさんは あの遊牧民たちの奴隷になるより→ 542 00:45:13,644 --> 00:45:18,616 トゥースのあの家の奴隷のままでいることを 望んだんだ》 543 00:45:22,620 --> 00:45:26,624 《そうだ。 このまま真っすぐ歩いていったら→ 544 00:45:26,624 --> 00:45:30,628 誰かが私に矢を射かけるかしら》 545 00:45:35,633 --> 00:45:37,635 (シラ)待て! 546 00:45:37,635 --> 00:45:39,670 あっ…! 547 00:45:39,670 --> 00:45:41,639 《この人は…》 548 00:45:44,642 --> 00:45:46,644 ううっ…! 549 00:45:46,644 --> 00:45:48,646 ううーっ! イテッ! 550 00:45:48,646 --> 00:45:51,649 違っ… 違うんだ! 551 00:45:51,649 --> 00:45:55,653 なあ あんた! あの本を取り返したくないか!? 552 00:45:55,653 --> 00:46:01,659 ♬~ 553 00:46:01,659 --> 00:46:03,661 えっ…? 554 00:46:04,629 --> 00:46:06,631 ♬~