1 00:00:50,851 --> 00:00:52,853 〈その昔→ 2 00:00:52,853 --> 00:00:58,859 学者たちは 幾何学を使い 初めて地球の大きさを知った〉 3 00:00:59,860 --> 00:01:06,867 〈すると その手の内にある運命の大きさも 幾何学で測ることができるかな?〉 4 00:01:07,868 --> 00:01:14,875 〈これは 広大な大陸を翻弄した 一人の魔女の話〉 5 00:01:14,875 --> 00:01:30,891 ♬~ 6 00:01:36,897 --> 00:01:38,899 (アフマド)ん? 7 00:01:38,899 --> 00:01:40,901 (シタラ)ほっ。 8 00:01:40,901 --> 00:01:54,915 (アザーン) 9 00:01:57,851 --> 00:02:05,859 (アザーン) 10 00:02:05,859 --> 00:02:07,861 (アフマド)あっ…。 11 00:02:07,861 --> 00:02:13,867 (アザーン) 12 00:02:16,870 --> 00:02:28,882 (アザーン) 13 00:02:28,882 --> 00:02:31,885 (アフマド)どこに行こうとしてるのかな? 小鳥ちゃん。 14 00:02:33,887 --> 00:02:35,889 (アフマド)困った子だな。 15 00:02:54,841 --> 00:03:06,853 ♬~ 16 00:03:06,853 --> 00:03:23,870 ♬~ 17 00:03:23,870 --> 00:03:27,874 (ファーティマ)やっぱり バザールは 活気があっていいわね。 18 00:03:27,874 --> 00:03:32,813 (ズムッルド)奥さま 旦那さまの喪が明けたら お店巡りでもしましょうか? 19 00:03:32,813 --> 00:03:34,815 そうね。 20 00:03:34,815 --> 00:03:38,819 まず今日は お導きがあって いい奴隷が見つかるといいのだけれど…。 21 00:03:38,819 --> 00:03:40,821 あなたほどでなくてもね。 22 00:03:40,821 --> 00:03:42,823 (ズムッルド)フフフフ…。 23 00:03:46,827 --> 00:03:48,829 (ファーティマ)うーん…。 24 00:03:48,829 --> 00:03:51,832 (アフマド)どれも働き者ですよ。 25 00:03:51,832 --> 00:03:55,836 例えば この女なんかは料理が上手ですし→ 26 00:03:55,836 --> 00:03:57,838 隣のは裁縫が得意。 27 00:03:57,838 --> 00:03:59,840 そっちは口達者で→ 28 00:03:59,840 --> 00:04:02,843 ファーティマ奥さまのお話し相手にも なろうかと。 29 00:04:02,843 --> 00:04:06,847 そうね…。 でも 今 一番困っているのは…。 30 00:04:06,847 --> 00:04:10,851 お掃除です。 あの広いお屋敷を私だけでは…。 31 00:04:10,851 --> 00:04:14,855 ええ。 まだ 亡くなった夫の遺品整理も 終わってなくて…。 32 00:04:14,855 --> 00:04:18,859 (アフマド)なるほど。 では この女は いかがでしょう? 33 00:04:18,859 --> 00:04:20,861 掃除の天才ですよ。 34 00:04:20,861 --> 00:04:22,863 アニースと申します。 35 00:04:22,863 --> 00:04:26,867 掃除は 何を捨てるかではなく 何を残したいか。 36 00:04:26,867 --> 00:04:30,871 美しく整った毎日をお約束しますよ。 37 00:04:30,871 --> 00:04:32,873 素晴らしいわ。 おいくらでしょう? 38 00:04:33,807 --> 00:04:35,809 ざっと800ディルハムですね。 39 00:04:35,809 --> 00:04:39,813 (ファーティマ)はあ…。 奴隷は安い買い物ではないけれど…。 40 00:04:39,813 --> 00:04:43,817 アフマドさん お願い! もう少し安くできない? 41 00:04:43,817 --> 00:04:47,821 ふーむ…。 普段なら お断りなんですが…。 42 00:04:47,821 --> 00:04:51,825 では 特別に 半値でお譲りしても。 43 00:04:51,825 --> 00:04:54,828 (2人)えっ!? ただし 代わりに…。 44 00:04:54,828 --> 00:04:56,830 おいで。 45 00:04:56,830 --> 00:05:04,838 ♬~ 46 00:05:04,838 --> 00:05:07,841 (アフマド)ほら 教えたとおりに。 47 00:05:08,842 --> 00:05:11,845 あら かわいい。 その子は? 48 00:05:11,845 --> 00:05:13,847 (アフマド)先日 入った娘で シタラです。 49 00:05:13,847 --> 00:05:17,851 (ファーティマ)まあ! 名前が お星さまなんて すてきね。 50 00:05:19,853 --> 00:05:21,855 オホン。 51 00:05:21,855 --> 00:05:26,860 ちょっと恥ずかしがり屋ですが このとおり 笑った顔が かわいいもんで→ 52 00:05:26,860 --> 00:05:31,798 教養を付けさせたら 高貴な方のそば仕えになろうかと思いまして。 53 00:05:31,798 --> 00:05:33,800 で 相談なんですが→ 54 00:05:33,800 --> 00:05:37,804 ファーティマ奥さま あなたさまの家は 学者の家系で→ 55 00:05:37,804 --> 00:05:42,809 特に ムハンマド坊ちゃんは このトゥースでも有名な秀才です。 56 00:05:42,809 --> 00:05:44,811 お宅で学んだと言えば 箔が付く。 57 00:05:44,811 --> 00:05:48,815 この子を しばらく預かっちゃもらえませんかね? 58 00:05:54,821 --> 00:05:56,823 (伯父)えっ!? 59 00:05:56,823 --> 00:05:58,825 (伯父)引き受けちゃったのか! 60 00:05:58,825 --> 00:06:00,827 お願い。 61 00:06:00,827 --> 00:06:03,830 この家では もう 兄さんしか 教師の資格を持ってないの。 62 00:06:03,830 --> 00:06:07,834 私は 夫の喪中で よそに知り合いもいないし…。 63 00:06:07,834 --> 00:06:13,840 それに 奴隷だろうと誰だろうと 知を求めることは イスラム教徒の務め。 64 00:06:14,841 --> 00:06:16,843 まあね。 65 00:06:17,844 --> 00:06:20,847 学問の基本は読誦だ。 66 00:06:20,847 --> 00:06:24,851 正しく『クルアーン』を発音することが 第一歩だよ。 67 00:06:24,851 --> 00:06:26,853 僕のまねをして 声を出してごらん。 68 00:06:27,854 --> 00:06:32,859 慈悲ふかく慈愛あまねき アッラーの御名において…。 69 00:06:34,794 --> 00:06:37,797 ん? 君の番だよ。 70 00:06:37,797 --> 00:06:41,801 ああっ… ほら 言ってごらん。 71 00:06:44,804 --> 00:06:47,807 駄目だ。 あの子は才能がない。 72 00:06:47,807 --> 00:06:51,811 何を教えても 笑ってばかりで 学ぶ気がないんだ。 73 00:06:51,811 --> 00:06:53,813 でも 預かると約束を…。 74 00:06:54,814 --> 00:06:58,818 奴隷の値引き分は 僕が払ってやろう。 75 00:06:58,818 --> 00:07:00,820 ごめんなさい 兄さん…。 76 00:07:03,823 --> 00:07:06,826 迎えに来てもらうわ。 少し待っててね。 77 00:07:06,826 --> 00:07:09,829 (伯父)アフマドさんの店だね? 私が行こう。 78 00:07:09,829 --> 00:07:11,831 (ファーティマ)ええ ごめんなさい。 79 00:07:17,837 --> 00:07:19,839 《逃げなきゃ》 80 00:07:20,840 --> 00:07:22,842 《どこか遠くへ売られるなんて嫌》 81 00:07:22,842 --> 00:07:24,844 《家に帰るんだもん》 82 00:07:24,844 --> 00:07:41,795 ♬~ 83 00:07:41,795 --> 00:07:57,811 ♬~ 84 00:07:57,811 --> 00:07:59,813 《迷っちゃった!》 85 00:07:59,813 --> 00:08:01,815 《出口 どこだろう?》 86 00:08:07,821 --> 00:08:09,823 《男の子…?》 87 00:08:16,830 --> 00:08:18,832 …あっ。 88 00:08:18,832 --> 00:08:23,837 特に ムハンマド坊ちゃんは このトゥースでも有名な秀才です。 89 00:08:26,840 --> 00:08:28,842 あの…。 (ムハンマド)ん? 90 00:08:28,842 --> 00:08:31,778 出口って…。 (ムハンマド)あっ! き… 君 駄目じゃないか。 91 00:08:31,778 --> 00:08:35,782 女性が 髪も隠さずに 男の前に出るなんて。 92 00:08:35,782 --> 00:08:39,786 ふーん。 いいのよ 私 まだ子供だもん。 近いよ…。 93 00:08:39,786 --> 00:08:44,791 それに あなただって まだ子供に見えるわ ムハンマド坊ちゃん。 94 00:08:44,791 --> 00:08:46,793 そもそも 君 誰? 95 00:08:46,793 --> 00:08:49,796 私は シタ…。 (ズムッルド)あっ! いた! 96 00:08:49,796 --> 00:08:51,798 捜したのよ! 急にいなくなって。 97 00:08:51,798 --> 00:08:54,801 うっ… お庭のバラがきれいで…。 98 00:08:54,801 --> 00:08:57,804 その子 出口 探してたよ。 99 00:09:00,807 --> 00:09:03,810 まったく… 逃げ出そうだなんて! (ファーティマ)まあまあ。 100 00:09:03,810 --> 00:09:07,814 もうすぐ 兄さんが アフマドさんを連れてきますからね。 101 00:09:07,814 --> 00:09:10,817 ごめんね。 帰りたかったんでしょう? 102 00:09:12,819 --> 00:09:15,822 あの人の所じゃないもん…。 103 00:09:15,822 --> 00:09:18,825 母さんと暮らしてた家…。 104 00:09:18,825 --> 00:09:22,829 母さんが死んで 旦那さまは私を売っちゃった。 105 00:09:22,829 --> 00:09:25,832 それは あなたの家じゃないでしょ。 106 00:09:25,832 --> 00:09:28,835 奴隷なんだから。 帰る家が欲しければ→ 107 00:09:28,835 --> 00:09:31,838 いい主人に買ってもらえるよう 勉強しなきゃ。 108 00:09:31,838 --> 00:09:33,840 じゃあ 絶対勉強しない! 109 00:09:33,840 --> 00:09:38,845 勉強 嫌! かわいい顔も もうしない! 値段が高くなるもん。 110 00:09:38,845 --> 00:09:42,849 そしたら… 勉強したら もっとずっと遠くに売られちゃうんだ! 111 00:09:42,849 --> 00:09:46,853 もう知らない所に行くのは嫌…。 112 00:09:46,853 --> 00:09:48,855 (泣き声) 113 00:09:48,855 --> 00:09:51,858 (ムハンマド)ねえ 君 シタラといったっけ。 114 00:09:51,858 --> 00:09:54,861 そんな理由で うちへ学びに来ていたの? 115 00:09:54,861 --> 00:09:58,865 僕と君とじゃ 状況も違うんだろうけど…。 116 00:09:58,865 --> 00:10:02,869 ねえ ズムッルド 台所から 水おけを持ってきてくれるかい? 117 00:10:02,869 --> 00:10:05,872 大きいやつがいい。 (ズムッルド)はあ…。 118 00:10:06,873 --> 00:10:08,875 (ムハンマド)ちょっとおいで。 119 00:10:10,877 --> 00:10:12,879 どこ行くの? 120 00:10:16,883 --> 00:10:18,885 《屋上…?》 121 00:10:24,891 --> 00:10:26,893 (ズムッルド)これで いかがでしょう? 122 00:10:26,893 --> 00:10:28,895 (ムハンマド)うん ありがとう。 123 00:10:31,831 --> 00:10:33,833 今から これを庭に落とすね。 124 00:10:33,833 --> 00:10:35,835 (2人)ん? 125 00:10:39,839 --> 00:10:41,841 (ズムッルド)あの 坊ちゃん…。 126 00:10:41,841 --> 00:10:43,843 見込みなしですかね あの子…。 127 00:10:43,843 --> 00:10:46,846 (水おけの落ちる音) (アフマド)うわあっ…! なんだ? なんだ? 128 00:10:46,846 --> 00:10:48,848 一体 何が起こったんだ? 129 00:10:54,854 --> 00:10:57,857 (伯父)なんだ!? 今の音は。 みんな無事か? 130 00:10:57,857 --> 00:10:59,859 雷でも落ちたの? 131 00:10:59,859 --> 00:11:04,864 て… 敵が攻めてきたんじゃないか!? 野蛮な遊牧民とか。 ヒイ~ッ! 132 00:11:06,866 --> 00:11:10,870 水おけ? (ムハンマド)アハハッ。 みんな 慌てちゃって。 133 00:11:10,870 --> 00:11:12,872 坊ちゃん いたずらが過ぎます。 134 00:11:12,872 --> 00:11:16,876 ところで 君たちは どうして そんなに冷静なの? 135 00:11:16,876 --> 00:11:18,878 そりゃあ だって→ 136 00:11:18,878 --> 00:11:22,882 落ちると分かって 耳をふさいだくらいですし…。 137 00:11:24,884 --> 00:11:29,889 つまり 君たちは 大きな音がするという未来を予測して→ 138 00:11:29,889 --> 00:11:32,825 適切に対処したということだね。 139 00:11:32,825 --> 00:11:35,828 はあ… まあ そうですね。 140 00:11:35,828 --> 00:11:39,832 (ムハンマド)勉強って こういうことなんじゃないかな。 141 00:11:40,833 --> 00:11:45,838 (ムハンマド)君は 今 自分の身がどこにあるかも 何が起こっているかも→ 142 00:11:45,838 --> 00:11:49,842 この先 どんなことが起きるかも まるで分からないでいる。 143 00:11:49,842 --> 00:11:53,846 いってみれば 伯父さまたちと同じ状況だ。 144 00:11:53,846 --> 00:11:55,848 でも 勉強して 賢くなれば→ 145 00:11:55,848 --> 00:12:00,853 どんなに困ったことが起きたって 何をすれば一番いいのか 分かるんだ。 146 00:12:00,853 --> 00:12:03,856 それは絶対に悪いことじゃない。 147 00:12:03,856 --> 00:12:06,859 それが勉強…。 148 00:12:09,862 --> 00:12:12,865 (ムハンマド)伯父さま 驚かせてごめん! 僕だよ。 149 00:12:13,866 --> 00:12:17,870 (アニース)うーん…。 この水おけ ひしゃげて うまく収まらないわ。 150 00:12:17,870 --> 00:12:19,872 ときめかない! 151 00:12:19,872 --> 00:12:23,876 (ズムッルド)修理に出してきて。 食事の支度は 私がやっておくから。 152 00:12:23,876 --> 00:12:25,878 あら! いらっしゃい シタラ。 153 00:12:27,880 --> 00:12:31,818 分からないことがあったら なんでも聞いてね。 は… はい! 154 00:12:31,818 --> 00:12:33,820 〈こうして シタラは→ 155 00:12:33,820 --> 00:12:38,825 学者一家の下で 勉学に励みつつ 働くことになった〉 156 00:12:40,827 --> 00:12:45,832 ♬~(ファーティマの鼻歌) 157 00:12:45,832 --> 00:13:14,861 ♬~ 158 00:13:14,861 --> 00:13:29,876 ♬~ 159 00:13:29,876 --> 00:13:44,891 ♬~ 160 00:13:46,826 --> 00:13:49,829 わあ…! とてもきれいです 奥さま。 161 00:13:49,829 --> 00:13:52,832 ありがとう。 でも まだ気が引けるわね。 162 00:13:52,832 --> 00:13:54,834 何をおっしゃいます! 163 00:13:54,834 --> 00:13:57,837 今日は 喪が明けて初めて ハマムへ行く日。 164 00:13:57,837 --> 00:14:01,841 さっぱりして お化粧して 髪と手をヘナで染めて→ 165 00:14:01,841 --> 00:14:05,845 よその奥さまと たくさんおしゃべりしてください! 166 00:14:05,845 --> 00:14:07,847 はいはい。 167 00:14:07,847 --> 00:14:11,851 今度 連れて行ってあげるわね シタラ。 168 00:14:11,851 --> 00:14:13,853 はい! 169 00:14:15,855 --> 00:14:21,861 天にあるもの 地にあるもの すべてはアッラーに属す。 170 00:14:22,862 --> 00:14:25,865 《伯父さまの読誦と まだ なんか違う…》 171 00:14:25,865 --> 00:14:28,868 《今度 もう一度 教えてもらおう》 172 00:14:28,868 --> 00:14:30,870 (ムハンマド)母さま お話が…。 173 00:14:30,870 --> 00:14:32,805 あっ…! 母さまは? 174 00:14:32,805 --> 00:14:35,808 ファーティマ奥さまは ハマムへ出かけられました。 175 00:14:35,808 --> 00:14:37,810 聞いてないんですか? 176 00:14:37,810 --> 00:14:39,812 えっ? あっ あれって今日だっけ? 177 00:14:39,812 --> 00:14:43,816 お勉強のこと以外 頭にないのかしら。 178 00:14:43,816 --> 00:14:47,820 だからさ 君 髪も隠さずに部屋から出てくるなんて…。 179 00:14:47,820 --> 00:14:50,823 私 まだ子供だって 言ってるじゃありませんか。 180 00:14:50,823 --> 00:14:54,827 それに ムハンマド坊ちゃんだって まだ12歳。 181 00:14:54,827 --> 00:14:58,831 そんな おひげもない頬で 女部屋に入ったところで なんの問題が? 182 00:14:58,831 --> 00:15:00,833 (ムハンマドの声)僕は子供じゃない! 183 00:15:01,834 --> 00:15:04,837 (ムハンマド)君から見ても 僕は幼稚かな。 えっ…? 184 00:15:14,847 --> 00:15:18,851 (ムハンマド)僕は世界を知らなさすぎるって 先生に言われた。 185 00:15:18,851 --> 00:15:20,853 先生って 法学の? 186 00:15:20,853 --> 00:15:24,857 (ムハンマド) そう 父さまが生前に紹介してくれた→ 187 00:15:24,857 --> 00:15:26,859 カマルッディーン先生だよ。 188 00:15:26,859 --> 00:15:30,863 でも 最近 考え方が違うと感じる時があって。 189 00:15:30,863 --> 00:15:34,867 踏み込んだ質問をしても はっきり答えてくださらない。 190 00:15:34,867 --> 00:15:38,871 (カマルッディーン)それを理解するには 君は あまりにも経験が浅い。 191 00:15:40,873 --> 00:15:44,877 僕は… 旅に出ようと思う。 192 00:15:44,877 --> 00:15:46,879 えっ…。 (ムハンマド)ニーシャプールへ行って→ 193 00:15:46,879 --> 00:15:49,882 高名な先生を訪ねてみたい。 194 00:15:49,882 --> 00:15:52,885 いや それだけじゃなく いずれ 他の都市も巡って→ 195 00:15:52,885 --> 00:15:57,890 イスラムだけでなく あらゆる知恵と出会いたい。 196 00:15:57,890 --> 00:15:59,892 真理を探して…。 197 00:16:03,896 --> 00:16:08,901 (ムハンマド)それが 学者だった父さまが僕に望んだ道だと思う。 198 00:16:12,839 --> 00:16:14,841 ご立派ですね。 199 00:16:14,841 --> 00:16:18,845 じゃあ 私 洗い物があるから失礼します。 ん…? 200 00:16:21,848 --> 00:16:26,853 天にあるもの 地にあるもの すべてはアッラーに属す。 201 00:16:29,856 --> 00:16:35,862 《私がどんなに勉強しても ムハンマドさまには追いつけないのよね》 202 00:16:50,877 --> 00:16:52,879 (ムハンマド)母さま いってまいります。 203 00:16:52,879 --> 00:16:56,883 学者だった父さまに恥じないよう 向こうでも励むのですよ。 204 00:16:56,883 --> 00:16:58,885 はい。 205 00:16:58,885 --> 00:17:00,887 お体に気を付けて。 206 00:17:03,890 --> 00:17:05,892 では いってきます。 207 00:17:06,826 --> 00:17:09,829 途中まで送ろう。 伯父さま ありがとう。 208 00:17:09,829 --> 00:17:11,831 あっ…。 209 00:17:11,831 --> 00:17:13,833 ちょっと待ってて! 210 00:17:13,833 --> 00:17:15,835 君。 211 00:17:15,835 --> 00:17:18,838 文字は まだ読めないんだっけ? …ええ。 212 00:17:18,838 --> 00:17:22,842 (ムハンマド)そっか。 じゃあ 手紙を書く。 213 00:17:22,842 --> 00:17:26,846 僕が将来 先生になった時 君みたいな小さな子にも伝えられるように。 214 00:17:26,846 --> 00:17:28,848 できるだけ簡単な言葉で。 215 00:17:28,848 --> 00:17:30,850 練習台!? 216 00:17:30,850 --> 00:17:34,854 だから 君は 勉強して 母さまに読んで差し上げるんだ。 217 00:17:34,854 --> 00:17:36,856 いいね シタラ。 218 00:17:37,857 --> 00:17:39,859 これからも学ぶことをやめないでね。 219 00:17:39,859 --> 00:17:41,861 かしこまりました。 220 00:17:42,862 --> 00:17:44,864 じゃあ いってきます! 221 00:17:49,869 --> 00:17:55,875 〈後に 高名な学者となる トゥースの少年 ムハンマドと→ 222 00:17:55,875 --> 00:17:58,878 一人の奴隷の少女 シタラ〉 223 00:17:58,878 --> 00:18:03,883 〈2人が顔を合わせたのは 生涯 これが最後となる〉 224 00:18:07,887 --> 00:18:11,891 慈悲ふかく慈愛あまねき アッラーの御名において…。 225 00:18:11,891 --> 00:18:13,893 ん? 226 00:18:15,895 --> 00:18:17,897 (ズムッルド)トゥースの民軍だわ。 227 00:18:17,897 --> 00:18:19,899 ズムッルドさん。 228 00:18:19,899 --> 00:18:22,902 きっと 街の外を偵察に行くのね。 229 00:18:22,902 --> 00:18:26,906 なんでも 武装した遊牧民が 近くに現れたんですって。 230 00:18:27,907 --> 00:18:30,910 あの中に 私の弟もいるのよ。 231 00:18:30,910 --> 00:18:33,913 もう ずっと会っていないけど。 へえ~。 232 00:18:33,913 --> 00:18:37,917 私とミハイルは ずっと西の国で生まれたの。 233 00:18:37,917 --> 00:18:42,922 (ズムッルドの声)海の近くでね 夕日が沈む時 きれいな紫色に染まるんだ。 234 00:18:42,922 --> 00:18:44,924 (シタラの声)海! 235 00:18:44,924 --> 00:18:48,928 貧しかったけど 海を見るのは好きだったな。 236 00:18:48,928 --> 00:18:50,930 (ファーティマ)シタラ! 237 00:18:50,930 --> 00:18:52,932 手紙を読んでもらえるかしら。 238 00:18:52,932 --> 00:18:56,936 はい! すぐに! いつものお部屋ですね。 239 00:18:56,936 --> 00:18:58,938 あらあら あんなに喜んで。 240 00:18:58,938 --> 00:19:00,940 ウフフッ…。 241 00:19:00,940 --> 00:19:02,942 では…。 (せき払い) 242 00:19:02,942 --> 00:19:05,945 母上 伯父上 家を出て この8年→ 243 00:19:05,945 --> 00:19:10,883 私は 哲学 数学 医学や天文学などの科学を 学びました。 244 00:19:10,883 --> 00:19:15,888 (ムハンマドの声)ニーシャプールは 著名な学者たちの集う 大きな都市です。 245 00:19:15,888 --> 00:19:18,891 例えば ファドルッディーン・ダマード先生からは→ 246 00:19:18,891 --> 00:19:22,895 イブン・スィーナーの築いた医学を ご教授いただきました。 247 00:19:22,895 --> 00:19:26,899 教えられたことを ただ模倣する類いの 神学とは違い→ 248 00:19:26,899 --> 00:19:30,903 科学は 学者たちの実地の経験に基づいた知性です。 249 00:19:30,903 --> 00:19:33,906 (ムハンマド・シタラ) 私には こちらのほうが好ましく思えます。 250 00:19:33,906 --> 00:19:35,908 それから…。 251 00:19:36,909 --> 00:19:39,912 あの小さな星 シタラが耳を貸すなら→ 252 00:19:39,912 --> 00:19:44,917 エウクレイデスや プトレマイオスを 教えてあげてください。 253 00:19:45,918 --> 00:19:48,921 うん。 ついていらっしゃい。 254 00:19:53,926 --> 00:19:55,928 わあ~…! 255 00:19:55,928 --> 00:19:59,932 ありがとうございます! 貴重な写本を。 256 00:19:59,932 --> 00:20:04,937 いいのよ。 全てのイスラム教徒は 知を求める義務がある。 257 00:20:04,937 --> 00:20:07,873 学者だった夫も そう教えていたわ。 258 00:20:07,873 --> 00:20:10,876 エウクレイデスの『原論』なら あそこよ。 259 00:20:10,876 --> 00:20:12,878 はい! 260 00:20:19,885 --> 00:20:22,888 点とは部分のないもの。 261 00:20:22,888 --> 00:20:24,890 線とは幅のない長さ。 262 00:20:24,890 --> 00:20:27,893 線の端は点である…。 263 00:20:27,893 --> 00:20:31,897 なんだか 当たり前のことが 大仰に書かれていますが…。 264 00:20:31,897 --> 00:20:33,899 (ファーティマ) 当たり前のことが なぜ当たり前なのか。 265 00:20:33,899 --> 00:20:38,904 一つ一つ 事例を重ねて 普遍的な定理を証明するの。 266 00:20:38,904 --> 00:20:40,906 フフッ…。 難しい? 267 00:20:40,906 --> 00:20:44,910 すみません…。 この知識の使い道が 全然分からなくて。 268 00:20:44,910 --> 00:20:47,913 それじゃ もうちょっと面白い本を。 269 00:20:47,913 --> 00:20:51,917 ビールーニー 『占星術教程の書』。 270 00:20:51,917 --> 00:20:53,919 占星術ですか。 271 00:20:53,919 --> 00:20:55,921 (ファーティマ)実践的でしょ。 272 00:20:55,921 --> 00:20:57,923 ほら ここを見て。 ん? 273 00:20:57,923 --> 00:21:03,929 地球の直径は 2163と3分の1ファルサフであり→ 274 00:21:03,929 --> 00:21:06,866 円周は6800ファルサフである。 275 00:21:06,866 --> 00:21:09,869 この人は 地球の端まで行ったのですか? 276 00:21:09,869 --> 00:21:12,872 まさか! そんなことはできないわ。 277 00:21:13,873 --> 00:21:17,877 地平上のある地点と 山頂と 地球の中心で→ 278 00:21:17,877 --> 00:21:19,879 直角三角形を作れば→ 279 00:21:19,879 --> 00:21:22,882 地球の半径が分かるというわけ。 280 00:21:22,882 --> 00:21:24,884 山の頂上…? 281 00:21:25,885 --> 00:21:27,887 (ファーティマ)地面に落ちた影の角度から→ 282 00:21:27,887 --> 00:21:30,890 地球の円周を計算する方法も。 283 00:21:30,890 --> 00:21:32,892 影から!? 284 00:21:36,896 --> 00:21:41,901 (ファーティマ)どれも『原論』にある普遍的な知識から 導き出されたのよ。 285 00:21:41,901 --> 00:21:43,903 どう? 面白いかしら? 286 00:21:44,904 --> 00:21:46,906 焦げてるよ! はっ!! 287 00:21:46,906 --> 00:21:48,908 あっ… ああっ! 288 00:21:50,910 --> 00:21:52,912 ハハッ…。 289 00:21:52,912 --> 00:21:55,915 最近 こんな失敗ばかりね。 290 00:21:55,915 --> 00:21:58,918 ごめんなさい アニースさん。 291 00:21:58,918 --> 00:22:02,922 あのね シタラちゃん 奴隷にも いろんな仕事があって→ 292 00:22:02,922 --> 00:22:08,861 中には 教養を身に付けて 主人を楽しませる奴隷もいるわ。 293 00:22:08,861 --> 00:22:12,865 場合によっては 解放の約束をもらえることだって。 294 00:22:12,865 --> 00:22:16,869 でも あんまり期待しないほうがいいと 思うな。 295 00:22:16,869 --> 00:22:19,872 自分じゃ何も決められないの 私たち。 296 00:22:19,872 --> 00:22:21,874 人じゃなくて 所有物なのよ。 297 00:22:21,874 --> 00:22:23,876 (伯父)君たち ちょっと…。 298 00:22:23,876 --> 00:22:25,878 集まってくれ。 299 00:22:25,878 --> 00:22:27,880 ズムッルドも呼んでくれる? 300 00:22:27,880 --> 00:22:29,882 どうしたんです? 301 00:22:29,882 --> 00:22:32,885 われらがトゥース軍が 遊牧民に敗れた。 302 00:22:36,889 --> 00:22:41,894 〈天への祈りの報いは 慈悲ではなく 炎のみ〉 303 00:22:41,894 --> 00:22:43,896 〈雨の代わりに 火花が降り出し→ 304 00:22:43,896 --> 00:22:45,898 そして 沈黙〉 305 00:22:46,899 --> 00:22:48,901 〈この炎の代わりにね〉 306 00:23:10,856 --> 00:23:12,858 ♬~ 307 00:24:41,847 --> 00:24:44,850 〈次回 サファルに咲く薔薇〉