1 00:01:11,700 --> 00:01:13,740 怪物狩り 2 00:01:13,740 --> 00:01:19,450 仰木と安岡の荒唐無稽な申し出を アカギは承諾した 3 00:01:19,450 --> 00:01:21,680 心が動いたのである 4 00:01:21,680 --> 00:01:24,880 死をもたらす その勝負の 仕掛けに 5 00:01:24,880 --> 00:01:27,890 そして その怪物に 自分と同じにおいを 6 00:01:27,890 --> 00:01:30,320 嗅ぎとったのだ 7 00:01:30,320 --> 00:01:33,620 飽いている 俺と同じ 8 00:01:38,930 --> 00:01:42,800 生きることに飽いている 9 00:01:42,800 --> 00:01:47,310 この男 その成功という頂の上で 10 00:01:47,310 --> 00:01:51,950 ただ1人 絶望的に飽いている 11 00:01:51,950 --> 00:01:54,680 成功し続ける人生 12 00:01:54,680 --> 00:01:57,580 それは もう賞味期限切れ 13 00:01:57,580 --> 00:02:00,490 もう そこから酔いを得られない 14 00:02:00,490 --> 00:02:04,360 お前は生きながら焼かれる大蛇だ 15 00:02:04,360 --> 00:02:09,330 死にきれない まだ何かあるはず 16 00:02:09,330 --> 00:02:13,630 もう何もないのさ 死ね 異端者 17 00:02:13,630 --> 00:02:16,540 それが唯一の救いだ 18 00:02:16,540 --> 00:02:19,440 俺と同じ 理解されぬ者よ 19 00:02:19,440 --> 00:02:22,810 はぐれ者 20 00:02:22,810 --> 00:02:24,810 同類よ 21 00:02:28,210 --> 00:02:32,450 東京に戻ったアカギは 仰木が若頭を務める稲田組に 22 00:02:32,450 --> 00:02:34,790 身を寄せた 23 00:02:34,790 --> 00:02:38,730 アカギは待つ 怪物へのアプローチ 24 00:02:38,730 --> 00:02:42,130 交渉が成立するのを 25 00:02:42,130 --> 00:02:45,030 アカギは怪物を想像する 26 00:02:45,030 --> 00:02:49,670 何が その男のコアなのか 27 00:02:49,670 --> 00:02:53,410 鷲巣 巌 28 00:02:53,410 --> 00:02:57,040 鷲巣は大正元年 旧帝大を卒業後 29 00:02:57,040 --> 00:03:01,510 22歳で警保局 つまり現在の警察に入り 30 00:03:01,510 --> 00:03:06,750 その卓越した頭脳と野心で めきめきと頭角を現した 31 00:03:06,750 --> 00:03:11,390 昭和7年 42歳で 特別高等警察警視 32 00:03:11,390 --> 00:03:15,260 昭和15年 50歳で権中警視 33 00:03:15,260 --> 00:03:19,870 現在でいうところの 警視正クラスまで上り詰める 34 00:03:19,870 --> 00:03:23,870 しかし昭和17年 突然 退職する 35 00:03:25,970 --> 00:03:28,880 鷲巣は予見したのだ 36 00:03:28,880 --> 00:03:32,180 この国の滅びを 37 00:03:32,180 --> 00:03:39,020 まさに時代の1歩も2歩も 先を読む希代の先見性である 38 00:03:39,020 --> 00:03:43,820 戦後 鷲巣は経営コンサルタント 会社を設立する 39 00:03:43,820 --> 00:03:48,730 警察官僚時代に多くの政治家の スキャンダルを握っていた鷲巣は 40 00:03:48,730 --> 00:03:52,930 それをネタに彼らから 情報を引き出した 41 00:03:52,930 --> 00:03:55,870 これから どこが開発されるか 42 00:03:55,870 --> 00:03:59,710 どういう条例が解除されるか 43 00:03:59,710 --> 00:04:06,480 そういう値千金の情報を元に 各企業のコンサルタントを行った 44 00:04:06,480 --> 00:04:11,050 当然 鷲巣の打つ手は的を射 各企業は躍進 45 00:04:11,050 --> 00:04:15,420 鷲巣は その収益の 何パーセントかを搾取し続けた 46 00:04:15,420 --> 00:04:18,730 そして積み上げた 無限に積もるカネ 47 00:04:18,730 --> 00:04:22,600 増殖し続けるカネ カネ 48 00:04:22,600 --> 00:04:26,570 気が付けば鷲巣は1人 頂に立っていた 49 00:04:26,570 --> 00:04:32,110 カネと政治家 経済人の秘密を 握っているという力 50 00:04:32,110 --> 00:04:35,610 誰1人 鷲巣に 指を させなくなっていた 51 00:04:35,610 --> 00:04:38,110 他を圧倒する絶対的存在 52 00:04:38,110 --> 00:04:41,650 この国の秘所に巣食う闇の帝王 53 00:04:41,650 --> 00:04:48,250 しかし この圧勝の男が 老境に入り 狂う 54 00:04:48,250 --> 00:04:52,660 時代を泳ぎきり 自分を コントロールし続けた賢明な男が 55 00:04:52,660 --> 00:04:56,130 その精神を破たんさせたのである 56 00:04:56,130 --> 00:04:59,800 それは おそらく 並の人生をゆく人間には 57 00:04:59,800 --> 00:05:04,200 想像だにできぬ 果てしない絶望によって 58 00:05:04,200 --> 00:05:09,040 なぜ満ちぬ なぜ わしは死ぬ 59 00:05:09,040 --> 00:05:12,950 死ぬさ どんな王も死ぬ 60 00:05:12,950 --> 00:05:17,320 その真実から目をそらしたのが お前の不覚 61 00:05:17,320 --> 00:05:21,190 ヤツは若者というだけで 許せないのだろう 62 00:05:21,190 --> 00:05:24,090 何だ 何なんだ 63 00:05:24,090 --> 00:05:28,930 このような才能も知性もない クズが長生きするなど 64 00:05:28,930 --> 00:05:32,600 許せない 許せない 65 00:05:32,600 --> 00:05:35,000 許せない 66 00:05:39,840 --> 00:05:44,110 昭和40年8月 怪物 鷲巣巌は 67 00:05:44,110 --> 00:05:48,580 75年の生涯で 初めての窮地に陥っていた 68 00:05:48,580 --> 00:05:52,450 鷲巣の逮捕は もう目前 という状況だったのだ 69 00:05:52,450 --> 00:05:57,990 ニセアカギと鷲巣の配下の人間が 会っていたという目撃証言 70 00:05:57,990 --> 00:06:00,730 現場の遺留品が鷲巣邸で 使われているものと 71 00:06:00,730 --> 00:06:03,260 同じ型であったこと 72 00:06:03,260 --> 00:06:07,530 鷲巣の屋敷の車と 同一のタイヤの跡 73 00:06:07,530 --> 00:06:10,240 もはや言い逃れの できない状況だが 74 00:06:10,240 --> 00:06:14,110 鷲巣は この窮地から 懸命にあらがった 75 00:06:14,110 --> 00:06:16,380 その豊じょうな資金を つぎ込んで 76 00:06:16,380 --> 00:06:21,110 警察幹部や政治家に 買収攻勢をかけたのだ 77 00:06:21,110 --> 00:06:23,780 さらに鷲巣がつかんでいる スキャンダルを 78 00:06:23,780 --> 00:06:26,250 暴露するという脅し 79 00:06:26,250 --> 00:06:31,090 この硬柔 織り交ぜた交渉で 徐々に状況を逆転 80 00:06:31,090 --> 00:06:33,090 逃げきったのである 81 00:06:35,460 --> 00:06:38,430 最後まで あらがっていた 現場の刑事が 82 00:06:38,430 --> 00:06:40,930 カネで転んだそうだ 83 00:06:40,930 --> 00:06:43,600 安心しろ お前たち 84 00:06:43,600 --> 00:06:49,040 ねじ曲げたぞ お… おめでとうございます 85 00:06:49,040 --> 00:06:51,940 当然だ 当然の結果 86 00:06:51,940 --> 00:06:57,350 警察OBの わしの殺人事件など ヤツらとて もみ消したいんだ 87 00:06:57,350 --> 00:07:00,220 この結果は当然 とはいえ 88 00:07:00,220 --> 00:07:04,120 あの ごうつくばりどもに 派手に たかられはしたがな 89 00:07:04,120 --> 00:07:06,790 しかし それも結局 同じこと 90 00:07:06,790 --> 00:07:10,800 いくら渡しても回収できる 91 00:07:10,800 --> 00:07:14,600 わしは連中の秘密を 何でも知っておるのだ 92 00:07:14,600 --> 00:07:18,440 問題ない わしは滅びん 93 00:07:18,440 --> 00:07:22,070 わしは滅びんのだ 94 00:07:22,070 --> 00:07:26,310 ただ しばらくは国外退去せねば ならぬそうだ 95 00:07:26,310 --> 00:07:28,850 本来これほど日本に 尽くしてきた わしに 96 00:07:28,850 --> 00:07:31,780 そのような無礼は許されぬが 97 00:07:31,780 --> 00:07:35,720 何やら 嗅ぎつけつつある マスコミもあるらしい 98 00:07:35,720 --> 00:07:39,460 吉岡 仕方ない ついてきてくれるか? 99 00:07:39,460 --> 00:07:41,890 はっ もちろんです 100 00:07:41,890 --> 00:07:45,100 この屋敷を始めとする 鷲巣様の財産 101 00:07:45,100 --> 00:07:49,040 そのすべてを現金化し いつでも持ち出せる状態 102 00:07:49,040 --> 00:07:52,540 何年でも その身を 隠すことが可能です 103 00:07:52,540 --> 00:07:56,280 ん?吉岡 104 00:07:56,280 --> 00:08:00,150 「身を隠す」とは何という言い草だ 105 00:08:00,150 --> 00:08:03,720 わしが この国にしてきた貢献を 忘れたか 106 00:08:03,720 --> 00:08:07,590 わしが この国にしてきた その発展の礎 107 00:08:07,590 --> 00:08:10,090 貢献 忘れたか? 108 00:08:15,160 --> 00:08:20,900 圧倒的貢献 それを考えれば 何の問題があろうぞ 109 00:08:20,900 --> 00:08:25,610 ガキの クズの5人や6人 殺そうと問題はない 110 00:08:25,610 --> 00:08:30,210 わしには許されるはずだ 吉岡 違うか 111 00:08:30,210 --> 00:08:32,710 ええ おっしゃるとおりです 112 00:08:38,250 --> 00:08:40,620 仰木に連絡しろ 113 00:08:40,620 --> 00:08:43,060 何とか1人 都合がつくそうだ 114 00:08:43,060 --> 00:08:45,960 先生 先生は その遊びが高じて 115 00:08:45,960 --> 00:08:50,960 黙れ わしは もう あと数日しか この日本におれんのだ 116 00:08:53,100 --> 00:08:55,900 今夜は その最後の晩餐 117 00:08:55,900 --> 00:08:57,840 ガタガタ抜かすな 118 00:08:57,840 --> 00:09:00,270 勝負は今夜 これから 119 00:09:00,270 --> 00:09:02,210 すぐ連絡しろ 120 00:09:02,210 --> 00:09:04,210 急げ あ… はっ 121 00:09:07,480 --> 00:09:11,280 アカギが稲田組に 身を寄せること2週間 122 00:09:18,690 --> 00:09:22,560 アカギ 行くぞ 123 00:09:22,560 --> 00:09:27,900 ついに鷲巣巌との対決の時 来たる 124 00:09:27,900 --> 00:09:32,200 午後9時 3台の車が 鷲巣邸へ向かう 125 00:09:32,200 --> 00:09:36,140 後ろ2台には 今回の勝負を 成立させるための武力 126 00:09:36,140 --> 00:09:39,010 稲田組の組員が武装して乗り 127 00:09:39,010 --> 00:09:44,320 先頭の1台に仰木 安岡 そして アカギ 128 00:09:44,320 --> 00:09:47,090 仰木さん ん? 129 00:09:47,090 --> 00:09:49,690 1ヵ所 寄ってもらいたい所が あるんだ 130 00:09:49,690 --> 00:09:51,690 寄る? 131 00:09:55,490 --> 00:09:58,900 医者? 刀傷が癒えてないのか? 132 00:09:58,900 --> 00:10:03,100 まだ完治してはいないようです 133 00:10:03,100 --> 00:10:05,940 お待たせしました 134 00:10:05,940 --> 00:10:08,770 大丈夫なのか?肩の傷 135 00:10:08,770 --> 00:10:12,180 ああ それは もう問題ないです 136 00:10:12,180 --> 00:10:15,080 あそこに寄ったのは これです 137 00:10:15,080 --> 00:10:17,080 ドリンク 138 00:10:17,080 --> 00:10:20,250 水分が補えれば何でもよかった 139 00:10:20,250 --> 00:10:22,720 今夜は向こうが出すものは 140 00:10:22,720 --> 00:10:25,390 お茶1杯といえど 口にしたくない 141 00:10:25,390 --> 00:10:27,630 あっ す… すまん 142 00:10:27,630 --> 00:10:31,630 こういうことは こっちが 気を回さにゃいかんのに 143 00:10:31,630 --> 00:10:34,470 敵は一服盛るくらい 平気でやってくる 144 00:10:34,470 --> 00:10:38,040 何せ 5億を ふんだくろうって麻雀 145 00:10:38,040 --> 00:10:41,770 昭和40年の5億は 現在の貨幣価値にして 146 00:10:41,770 --> 00:10:45,480 50億以上である 147 00:10:45,480 --> 00:10:49,480 注意しすぎるってことはない 148 00:10:49,480 --> 00:10:54,180 午後10時 アカギ ついに足を踏み入れる 149 00:11:26,820 --> 00:11:30,360 君かね 今夜の相手は 150 00:11:30,360 --> 00:11:32,990 ああ 若いな 151 00:11:32,990 --> 00:11:36,600 結構 結構 若さは貴重だ 152 00:11:36,600 --> 00:11:40,200 それでこそ わしの差し出す 大金と釣り合う 153 00:11:42,440 --> 00:11:47,140 では早速 鷲巣麻雀を始めようか 154 00:12:06,290 --> 00:12:08,990 名前を聞いてなかったな 155 00:12:08,990 --> 00:12:12,830 アカギ アカギ君か 156 00:12:12,830 --> 00:12:16,470 掛けたまえ 157 00:12:16,470 --> 00:12:19,510 まあ おおよその話は 聞いているだろうが 158 00:12:19,510 --> 00:12:22,980 勝負に入る前に説明しておこう 159 00:12:22,980 --> 00:12:28,110 この屋敷の麻雀 ハウスルールについて 160 00:12:28,110 --> 00:12:32,320 といっても ルールは通常と 何ら変わりはない 161 00:12:32,320 --> 00:12:35,790 ちと違うのは道具 162 00:12:35,790 --> 00:12:39,630 見るのは初めてじゃろう 163 00:12:39,630 --> 00:12:42,460 あれが鷲巣麻雀の牌 164 00:12:42,460 --> 00:12:48,730 うちの麻雀は この裏からも見える透明な麻雀牌を用いて行う 165 00:12:48,730 --> 00:12:52,040 1種4牌のうち 3枚までが透明 166 00:12:52,040 --> 00:12:55,910 え 背の黒い通常の牌は 1牌だけだ 167 00:12:55,910 --> 00:13:00,250 ま やれば分かるが これでやると煮詰まるのだ 168 00:13:00,250 --> 00:13:03,150 なまじ見えるから切れなくなる 169 00:13:03,150 --> 00:13:05,380 今まで平気で歩いてきた道も 170 00:13:05,380 --> 00:13:08,290 今いる場所が地雷の巣と知ったら 171 00:13:08,290 --> 00:13:10,260 1歩も動けなくなるだろ? 172 00:13:10,260 --> 00:13:12,690 あ それと同じだ 173 00:13:12,690 --> 00:13:17,430 これは地雷を浮き彫りに するための仕掛け 174 00:13:17,430 --> 00:13:20,070 面白い趣向だろ? 175 00:13:20,070 --> 00:13:23,270 恐怖の始まりは認識から 176 00:13:23,270 --> 00:13:26,170 人は認識したあと震える 177 00:13:26,170 --> 00:13:28,810 その震えが何に 起因しているのかを 178 00:13:28,810 --> 00:13:32,810 知りつつ眺めるのは楽しい 179 00:13:35,350 --> 00:13:38,950 さて ハウスルールだったな 180 00:13:38,950 --> 00:13:44,290 ルールというより透明な牌で 通常の麻雀を行うための工夫 181 00:13:44,290 --> 00:13:48,160 約束事だ 全部で3つ 182 00:13:48,160 --> 00:13:51,060 1つは山を積まぬということ 183 00:13:51,060 --> 00:13:54,370 次に引く牌が 分かってしまっては興ざめ 184 00:13:54,370 --> 00:13:57,370 鷲巣麻雀では配牌も 通常のツモも 185 00:13:57,370 --> 00:14:01,140 すべて卓の中央にある穴から 引いてくる 186 00:14:01,140 --> 00:14:06,010 2つ目が盲牌できぬように 革手袋をはめるということ 187 00:14:06,010 --> 00:14:11,320 3つ目はドラ表示牌 及び裏ドラ カンドラ表示牌の取り決め 188 00:14:11,320 --> 00:14:14,720 これは配牌のあとに 親が もう1枚 穴から引き 189 00:14:14,720 --> 00:14:17,520 その局のドラ表示牌を定める 190 00:14:17,520 --> 00:14:21,390 裏ドラ カンドラも同様に その必要が生まれたときに 191 00:14:21,390 --> 00:14:23,930 その都度 穴から引いてくる 192 00:14:23,930 --> 00:14:28,130 なおシー牌は不正が できないように機械が行う 193 00:14:28,130 --> 00:14:30,670 牌を入れたあと 穴のふちに触れば 194 00:14:30,670 --> 00:14:34,040 自動的に かき混ぜてくれる 195 00:14:34,040 --> 00:14:36,580 どうだ?面白かろう 196 00:14:36,580 --> 00:14:38,910 さて 問題は このあとだ 197 00:14:38,910 --> 00:14:43,720 このあとの取り決めについては 仰木君も知らぬ話 198 00:14:43,720 --> 00:14:46,020 はい? わしは以前 199 00:14:46,020 --> 00:14:49,460 数百万を賭けた麻雀を していた時期がある 200 00:14:49,460 --> 00:14:54,290 一時 熱くもなったが 今から考えれば手慰みもいいとこ 201 00:14:54,290 --> 00:14:57,200 わしは今 その程度では物足りん 202 00:14:57,200 --> 00:14:59,470 別の味を知ってしまった 203 00:14:59,470 --> 00:15:02,370 早い話 レートが変化した 204 00:15:02,370 --> 00:15:05,870 あ つまり… 察しはついてます 205 00:15:05,870 --> 00:15:08,670 おそらく 打つ者の血 206 00:15:10,710 --> 00:15:12,780 血液を賭けろと言うんでしょ 207 00:15:12,780 --> 00:15:14,780 ええ? 208 00:15:17,050 --> 00:15:20,650 聡明 聡明 実に察しがいい 209 00:15:20,650 --> 00:15:25,490 例の事件から そこまで想像が ついているのなら話が早い 210 00:15:25,490 --> 00:15:29,800 そのとおりだ 君には血液を賭けてもらう 211 00:15:29,800 --> 00:15:32,300 負ければ君は死ぬ 212 00:15:35,100 --> 00:15:39,940 人体には おおよそ4リットルから5リットルの血液がある 213 00:15:39,940 --> 00:15:44,140 君の体格なら4,5リットル といったところか 214 00:15:44,140 --> 00:15:47,650 ああ とはいえ そのすべて というわけにはいかん 215 00:15:47,650 --> 00:15:51,180 当然だ すべてを抜く はるか手前で 216 00:15:51,180 --> 00:15:54,090 君は死ぬのだからな 217 00:15:54,090 --> 00:15:57,590 血を失うスピードにもよるが 通常 死は 218 00:15:57,590 --> 00:16:01,160 総血液量の3分の1ほどが 失われる頃から 219 00:16:01,160 --> 00:16:03,730 そろりそろりと忍び寄る 220 00:16:03,730 --> 00:16:08,530 2分の1を失うのを待たず まず絶命する 221 00:16:08,530 --> 00:16:12,100 君が賭けられる血液は およそ2000CC 222 00:16:12,100 --> 00:16:14,540 それが君の致死量だ 223 00:16:14,540 --> 00:16:19,980 もっとも急激に抜けば 1500CCでも十分 死に至る 224 00:16:19,980 --> 00:16:22,980 仮に死なないとしても 意識混濁は激しく 225 00:16:22,980 --> 00:16:26,790 まず麻雀など興じていられる 状態ではない 226 00:16:26,790 --> 00:16:29,050 あ そう言う意味では 君のリミットは 227 00:16:29,050 --> 00:16:31,860 1500CCとも言えるが 228 00:16:31,860 --> 00:16:36,760 わしは100パーセント確実な死に 照準を合わせておる 229 00:16:36,760 --> 00:16:39,000 衰弱に意味はない 230 00:16:39,000 --> 00:16:42,670 君はボロボロになりながらも 打ち続け 231 00:16:42,670 --> 00:16:46,340 で いよいよとなったら 卓に突っ伏して死ぬのだ 232 00:16:46,340 --> 00:16:49,240 途中棄権は一切 認めない 233 00:16:49,240 --> 00:16:52,540 2000CCとは君の命の量 234 00:16:52,540 --> 00:16:57,250 その値段は2000万だ 235 00:16:57,250 --> 00:17:01,850 昭和40年の2000万円は 現在の2億円 236 00:17:01,850 --> 00:17:05,220 これだけあれば 面白おかしく 暮らしていける 237 00:17:05,220 --> 00:17:09,030 行動をわきまえれば 一生働かずともよい 238 00:17:09,030 --> 00:17:12,560 どうだ 命を張るには ふさわしい額だろ 239 00:17:12,560 --> 00:17:17,270 さて この わしの2000万 及び君の血液2000CCを 240 00:17:17,270 --> 00:17:20,170 麻雀で どう やり取りするか 241 00:17:20,170 --> 00:17:25,310 ま 言うならレートだが 20万点と わしは考えておる 242 00:17:25,310 --> 00:17:28,180 ハンチャン 6回を打ち 20万点失えば 243 00:17:28,180 --> 00:17:31,950 君は2000CCの血液を失い死ぬ 244 00:17:31,950 --> 00:17:34,750 逆に生き長らえるだけの 血液を残して 245 00:17:34,750 --> 00:17:37,360 ハンチャン 6回を やりとおしたなら 246 00:17:37,360 --> 00:17:41,360 生涯 働いても手にできぬ カネを得るはずだ 247 00:17:41,360 --> 00:17:45,700 ただし このハンチャン6回で 20万点の意味なんだが 248 00:17:45,700 --> 00:17:50,100 今夜の勝負は純粋に 君とわしとの サシ勝負 249 00:17:50,100 --> 00:17:54,940 あくまで わしら2人の 点差での やり取りだ 250 00:17:54,940 --> 00:17:59,310 仮に わしが1着でトップ賞を 加えて プラス3万点 251 00:17:59,310 --> 00:18:02,680 君が4着で マイナス2万点だった場合 252 00:18:02,680 --> 00:18:07,550 ワンスリーのウマを計算に加えて その点差は11万点 253 00:18:07,550 --> 00:18:10,520 つまり 君は血液1100CCを 254 00:18:10,520 --> 00:18:15,290 たった1度のハンチャンで 失うことになる 255 00:18:15,290 --> 00:18:18,900 そんな展開が2度も続けば 君の20万点 256 00:18:18,900 --> 00:18:22,630 2000CCの血は あっさり消し飛ぶ 257 00:18:22,630 --> 00:18:26,070 とはいえ このリスクを 逆に考えれば 258 00:18:26,070 --> 00:18:30,910 それだけ 君が大金を得られる 可能性が高いってことだ 259 00:18:30,910 --> 00:18:36,220 前向きに考えれば 素晴らしい条件でもある 260 00:18:36,220 --> 00:18:41,050 ハンチャン6回戦 20万点 純粋サシ勝負 261 00:18:41,050 --> 00:18:44,490 これが鷲巣麻雀の根幹 262 00:18:44,490 --> 00:18:47,090 清算はハンチャンごとに行う 263 00:18:47,090 --> 00:18:51,000 君がわしを上回れば カネか血を補給すればいい 264 00:18:51,000 --> 00:18:54,600 えー もちろん その両方も認める 265 00:18:54,600 --> 00:18:57,370 配分は勝者の自由だ 266 00:18:57,370 --> 00:18:59,640 それと もう1つ 267 00:18:59,640 --> 00:19:01,610 鷲巣麻雀には祝儀というか 268 00:19:01,610 --> 00:19:05,210 一種のボーナスのような ものがある 269 00:19:05,210 --> 00:19:08,050 サシウマ同士で直撃があったり 270 00:19:08,050 --> 00:19:10,820 ツモを点棒で支払うようなとき 271 00:19:10,820 --> 00:19:16,120 その時点で それに見合うレートのカネか血を支払うのだ 272 00:19:16,120 --> 00:19:20,790 どちらを支払うかは あがったものが決める 273 00:19:20,790 --> 00:19:25,430 繰り返すが この特例は あくまで 君と わしとのこと 274 00:19:25,430 --> 00:19:28,270 こうすることで 2人の対決という図式が 275 00:19:28,270 --> 00:19:31,940 より鮮明になるわけだ 276 00:19:31,940 --> 00:19:35,510 このハンチャンの途中で カネや血が動くというのは 277 00:19:35,510 --> 00:19:38,480 なかなか面白い趣向でな 278 00:19:38,480 --> 00:19:43,050 たとえばカネばかり追いかけて 先ほどの1100CCの血の補給を 279 00:19:43,050 --> 00:19:45,750 お留守にしているときに 280 00:19:45,750 --> 00:19:50,290 役満クラスに 振り込むようなことがあれば 281 00:19:50,290 --> 00:19:55,490 勝負の途中でも320CC以上の 血を抜かれるわけで 282 00:19:55,490 --> 00:19:59,130 えー となれば2度目の ハンチャンの区切りを待たずに 283 00:19:59,130 --> 00:20:01,470 一気に決着 284 00:20:01,470 --> 00:20:04,800 絶命もありうる 285 00:20:04,800 --> 00:20:10,340 どうだ こうなれば そうそう 安直な牌は打てまい 286 00:20:10,340 --> 00:20:12,280 当然 震える 287 00:20:12,280 --> 00:20:15,810 ま これは比喩ではなく 本当に震えるのだ 288 00:20:15,810 --> 00:20:18,720 一牌を通すごとに 心のコア 289 00:20:18,720 --> 00:20:22,050 底の底 深部が凍り 290 00:20:22,050 --> 00:20:25,360 本当に震え出す 291 00:20:25,360 --> 00:20:28,260 わしは それが見たくてな 292 00:20:28,260 --> 00:20:32,030 その恐れ 恐怖 それが見たくて 293 00:20:32,030 --> 00:20:37,570 見たくて 見たくてな 見たくて 294 00:20:37,570 --> 00:20:42,470 もう何人も殺してしまったよ 295 00:20:55,950 --> 00:21:00,260 天才アカギ 対 怪物 鷲巣巌 296 00:21:00,260 --> 00:21:03,830 麻雀史上 類を見ない せい惨な戦いの幕が 297 00:21:03,830 --> 00:21:06,630 切って落とされようとしていた 298 00:22:15,430 --> 00:22:18,530 次回 「破滅の闘牌」