1 00:00:16,975 --> 00:00:17,767 (べメール)申し上げます 2 00:00:17,892 --> 00:00:20,103 私(わたくし)は宝石商 べメールと申す者です 3 00:00:20,437 --> 00:00:21,688 王后陛下は いつになったら― 4 00:00:21,813 --> 00:00:23,606 お支払いを してくださるのでしょうか? 5 00:00:23,773 --> 00:00:26,943 私から お買い上げになった 首飾りの代金でございます 6 00:00:27,068 --> 00:00:30,321 もう 待てません すぐにお支払いいただきたい 7 00:00:30,572 --> 00:00:32,615 私は もう破産寸前でございます 8 00:00:32,907 --> 00:00:35,243 160万リーブルの 首飾りの代金を― 9 00:00:35,368 --> 00:00:36,619 お支払いくださいませ 10 00:00:36,870 --> 00:00:39,289 王妃 マリー・アントワネット様 11 00:00:40,623 --> 00:00:42,667 (ルイ16世) 王妃が どうしたのです? 12 00:00:42,792 --> 00:00:43,835 一体 何事です? 13 00:00:47,505 --> 00:00:48,214 (使者)王后陛下 14 00:00:49,424 --> 00:00:52,510 すぐ ベルサイユ宮へとの 国王陛下の お言葉です 15 00:00:53,845 --> 00:00:55,680 (ルーレットの回る音) 16 00:00:58,808 --> 00:01:00,268 (憲兵) ローアン大司教殿! 17 00:01:03,188 --> 00:01:05,565 ベルサイユ宮への 出頭命令でございます 18 00:01:13,031 --> 00:01:16,701 (語り手)1785年8月15日 19 00:01:16,910 --> 00:01:19,996 これが フランス犯罪史上 あまりにも名高い― 20 00:01:20,121 --> 00:01:22,874 “首飾り事件”の幕開きだった 21 00:01:23,583 --> 00:01:29,589 ♪~ 22 00:02:49,586 --> 00:02:55,133 ~♪ 23 00:03:01,222 --> 00:03:02,640 (マリー・アントワネット) ローアン大司教 24 00:03:02,891 --> 00:03:04,601 (ローアン大司教) はっ ははあ… 25 00:03:04,851 --> 00:03:08,146 この私が ジャンヌ・バロアとか申す 夫人に頼み― 26 00:03:08,271 --> 00:03:11,566 お前を保証人に立て あの首飾りを 買ったと申すのですか? 27 00:03:12,358 --> 00:03:14,944 はっ 恐れながら そのとおりでござります 28 00:03:15,069 --> 00:03:16,404 (アントワネット) お黙り! お黙りなさい ローアン 29 00:03:16,529 --> 00:03:17,447 (ローアン大司教)はあ… 30 00:03:17,572 --> 00:03:20,325 その上 あろうことか お前と私が 深夜― 31 00:03:20,450 --> 00:03:22,535 ビーナスの茂みで あいびきをしたというのですか? 32 00:03:22,660 --> 00:03:26,998 (ローアン大司教) うっ うぐっ うう… 33 00:03:27,123 --> 00:03:29,959 (アントワネット) 何を証拠に そのような 出任せを申すのです? 34 00:03:30,084 --> 00:03:32,462 (ローアン大司教) うっ うっ… 35 00:03:33,379 --> 00:03:34,923 (アントワネット) 何ですか? それは 36 00:03:35,340 --> 00:03:36,507 お… 恐れながら 37 00:03:36,633 --> 00:03:38,927 王妃様より頂いた ラ… ラブレターと― 38 00:03:39,052 --> 00:03:42,138 サ… サイン入りの 売買契約書でござりまする 39 00:03:42,263 --> 00:03:45,225 (貴族たちのざわめき) 40 00:03:54,651 --> 00:03:57,862 (ルイ16世)大司教 (ローアン大司教)は… ははあ 41 00:03:58,488 --> 00:04:01,616 (ルイ16世) このサインは王妃の筆跡とは違う それに― 42 00:04:01,741 --> 00:04:03,993 王妃が マリー・アントワネット・ ド・フランスなどという― 43 00:04:04,118 --> 00:04:06,829 サインをしないことは 誰もが知っているはずだよ 44 00:04:07,121 --> 00:04:09,415 えっ で… では 偽物だと? 45 00:04:09,916 --> 00:04:11,960 そうですね 偽物です 46 00:04:12,085 --> 00:04:16,339 うっ うぐ… ああ… 47 00:04:17,173 --> 00:04:21,177 国王陛下 王后陛下 お願いでございます 48 00:04:21,302 --> 00:04:23,721 首飾りの代金 160万リーブルは― 49 00:04:23,846 --> 00:04:26,516 このローアンが 何としてでも払います 50 00:04:26,641 --> 00:04:28,726 ですから ど… どうか お許しを 51 00:04:28,851 --> 00:04:31,354 わたしは ジャンヌ・バロア ニコラス夫婦に― 52 00:04:31,479 --> 00:04:33,147 だまされていたのでございます 53 00:04:33,273 --> 00:04:36,192 お許しください ですから… 54 00:04:36,567 --> 00:04:37,735 どうだね? 王妃 55 00:04:37,860 --> 00:04:40,280 大司教も だまされていただけのようだし 56 00:04:40,405 --> 00:04:41,489 許してあげたら… 57 00:04:41,823 --> 00:04:44,075 いいえ きっと この男が― 58 00:04:44,200 --> 00:04:45,952 そのジャンヌや ニコラスと仕組んだ― 59 00:04:46,077 --> 00:04:48,162 私へのワナに違いありません 60 00:04:48,288 --> 00:04:50,540 しかし こうして謝っているのだから 61 00:04:50,665 --> 00:04:53,584 いいえ 母 マリア・テレジアと この私に― 62 00:04:53,710 --> 00:04:56,671 声もかけてもらえぬほど嫌われた その恨みを晴らそうと… 63 00:04:56,796 --> 00:04:57,672 王妃 64 00:04:57,797 --> 00:05:01,384 いいえ いいえ 許せません 私への侮辱罪です 65 00:05:01,509 --> 00:05:04,470 裁判にかけて 何もかも はっきりさせま… 66 00:05:05,305 --> 00:05:07,932 (ローアン大司教のおびえる声) 67 00:05:08,224 --> 00:05:10,768 (犬の鳴き声) 68 00:05:13,062 --> 00:05:16,316 (犬の鳴き声) 69 00:05:25,033 --> 00:05:26,909 (ドアが開く音) 70 00:05:27,035 --> 00:05:28,619 (ニコル・ド・オリバ) ようこそ いらっしゃいました 71 00:05:29,370 --> 00:05:33,583 ひと晩で たったの10スー 代金は先払いが決まりです 72 00:05:37,378 --> 00:05:41,924 ひと晩で たったの10スー 代金は先払いが決まりです 73 00:05:43,176 --> 00:05:46,804 お客さん 代金は先払いが決まりです 74 00:05:49,223 --> 00:05:52,101 (ジャンヌ) あたしだよ ニコル お客じゃないよ 75 00:05:52,727 --> 00:05:56,647 あっ その声は ジャンヌ・バロアさん 76 00:05:56,773 --> 00:05:57,857 お久しぶりです 77 00:05:57,982 --> 00:05:59,692 あの時は たくさん お金を頂きまして― 78 00:05:59,817 --> 00:06:01,110 ありがとうございました 79 00:06:01,235 --> 00:06:02,612 その時のことでね 80 00:06:02,737 --> 00:06:05,156 あたしの周りが 少し危なくなってきたんだよ 81 00:06:05,281 --> 00:06:07,867 つまり あんたも 偽王妃をやったことがバレたら― 82 00:06:07,992 --> 00:06:09,243 タダでは済まないってことさ 83 00:06:09,368 --> 00:06:10,161 (オリバ)え… 84 00:06:10,286 --> 00:06:12,914 (ジャンヌ) さあ これを持って しばらくパリを出ておくれ 85 00:06:13,039 --> 00:06:14,540 ざっと100リーブルはあるから 86 00:06:15,166 --> 00:06:16,918 (オリバ)あ… あの (ジャンヌ)いいね 87 00:06:17,043 --> 00:06:18,503 できるだけ早くだよ 88 00:06:30,973 --> 00:06:32,517 (憲兵) ジャンヌ・バロア・ド・ラ・モット 89 00:06:32,642 --> 00:06:35,895 文書偽造 窃盗 および 詐欺の罪で逮捕する 90 00:06:39,607 --> 00:06:45,404 (語り手) 公文書偽造 窃盗 詐欺 そして 王室侮辱罪の容疑により 91 00:06:45,530 --> 00:06:46,405 ニコラスを除く― 92 00:06:46,531 --> 00:06:49,367 “首飾り事件”の関係者 全員が捕らえられ 93 00:06:49,492 --> 00:06:51,285 裁判を受けることになった 94 00:06:54,997 --> 00:06:55,832 (ドアが開く音) 95 00:06:57,542 --> 00:06:58,876 (オスカル・フランソワ・ド・ ジャルジェ) どうした? ロザリー 96 00:06:59,001 --> 00:07:00,002 わたしの部屋で 97 00:07:03,548 --> 00:07:06,384 いいんだよ 弾きたいなら 好きな時に弾いて 98 00:07:06,509 --> 00:07:10,054 (ロザリー・ラ・モリエール) あの お聞きしたいことがあって お帰りをお待ちしておりました 99 00:07:11,389 --> 00:07:12,974 うん? 何の用だ? 100 00:07:13,099 --> 00:07:16,018 (ロザリー) “王室侮辱罪”というのは うんと重い罪なんでしょうか? 101 00:07:16,144 --> 00:07:18,229 終身刑とか 死刑とか… 102 00:07:20,189 --> 00:07:23,192 ジャンヌ… ジャンヌ・バロアというのは― 103 00:07:23,317 --> 00:07:25,987 わたしとパリの下町で 一緒に育った姉さんなんです 104 00:07:28,448 --> 00:07:29,365 えっ? 105 00:07:30,241 --> 00:07:32,994 隠しているつもりは ありませんでしたが 106 00:07:33,327 --> 00:07:36,539 今まで 何となく 言いそびれていました 107 00:07:36,747 --> 00:07:38,458 あんな姉ですから 108 00:07:40,501 --> 00:07:41,878 そうだったのか… 109 00:07:42,628 --> 00:07:44,839 だが 裁判は これからだ 110 00:07:44,964 --> 00:07:48,593 まだ ロザリーの姉さんが 犯人だと 決まったわけではないんだよ 111 00:07:48,718 --> 00:07:50,261 (ロザリー) いいえ 違うんです 112 00:07:50,386 --> 00:07:52,013 オスカル様に 助けていただきたいなんて 113 00:07:52,138 --> 00:07:53,806 思ってるんじゃないんです 114 00:07:53,973 --> 00:07:56,559 姉なら やったのかもしれませんから 115 00:07:57,018 --> 00:08:00,354 ですけど あの あの… 116 00:08:00,480 --> 00:08:04,901 もし オスカル様が 姉さんに 会える機会があるんでしたら 117 00:08:05,568 --> 00:08:07,987 この指輪を渡してほしいんです 118 00:08:08,154 --> 00:08:12,575 母さんの あたしたちの母さんの形見です 119 00:08:12,909 --> 00:08:16,787 あたしは今 十分 幸せです ですから これは― 120 00:08:16,913 --> 00:08:19,123 ジャンヌ姉さんに 持っていてほしい 121 00:08:21,083 --> 00:08:23,836 引き受けた 必ず渡そう 122 00:08:24,712 --> 00:08:26,547 (ロザリー) ありがとうございます 123 00:08:26,797 --> 00:08:30,760 (ロベスピエール) 諸君 今度の裁判を 単なる詐欺事件と思ってはいけない 124 00:08:31,052 --> 00:08:34,764 我々が注目すべきは その裁判の中で語られる― 125 00:08:34,889 --> 00:08:37,433 王室 および上流貴族たちの その実態だ 126 00:08:37,975 --> 00:08:40,478 我々 大衆には 想像もつかないような― 127 00:08:40,603 --> 00:08:44,899 160万リーブルもの金が たった1つの首飾りの値段だ 128 00:08:45,566 --> 00:08:48,236 そういう物が出入りしても 不思議でない ベルサイユ宮殿 129 00:08:48,361 --> 00:08:50,112 そして 我々から搾り取った税金を― 130 00:08:50,238 --> 00:08:51,864 湯水のように使う ベルサイユ宮殿 131 00:08:52,323 --> 00:08:53,574 いいかね 諸君 132 00:08:53,699 --> 00:08:56,744 今や パリ高等法院の 裁判官たちにも― 133 00:08:56,869 --> 00:08:59,830 ベルサイユに対する反感は 芽生え始めている 134 00:09:00,540 --> 00:09:02,208 我々は期待しようじゃないか 135 00:09:02,333 --> 00:09:03,834 裁かれるべきは 犯罪ではなく― 136 00:09:03,960 --> 00:09:05,753 ベルサイユそのものであると いうことに 137 00:09:05,878 --> 00:09:07,797 パリ高等法院の 良識を信じよう 138 00:09:08,589 --> 00:09:11,092 (男性A) そうだ! ロベスピエール先生の 言うとおりだ 139 00:09:11,217 --> 00:09:13,219 王室侮辱罪なんか クソ食らえだ 140 00:09:13,344 --> 00:09:16,180 (男性B) そうだ! ベルサイユを これ以上 のさばらしちゃいけねえ 141 00:09:16,347 --> 00:09:20,142 (聴衆の賛同する声) 142 00:09:32,280 --> 00:09:33,864 ロザリーからだ 143 00:09:34,156 --> 00:09:35,866 母上の形見の指輪だそうだ 144 00:09:35,992 --> 00:09:38,035 知らないねえ ロザリーなんて 145 00:09:38,160 --> 00:09:40,621 それに あたしは 安物を身に着けない主義なの 146 00:09:40,746 --> 00:09:41,372 悪いけど 147 00:09:42,081 --> 00:09:44,959 どうして安物だと分かる 見もしないで 148 00:09:46,711 --> 00:09:47,628 フン 149 00:09:51,465 --> 00:09:54,719 必ず渡すと ロザリーと約束したんだ 150 00:10:12,111 --> 00:10:13,070 (木槌(きづち)の音) 151 00:10:13,946 --> 00:10:17,158 (語り手) パリ高等法院 それは 王室といえども 152 00:10:17,283 --> 00:10:20,536 その内部に 干渉できぬ存在であった 153 00:10:21,037 --> 00:10:26,459 (傍聴人たちのざわめき) 154 00:10:26,959 --> 00:10:29,795 (木槌の音) (裁判長)静粛に 静粛に 155 00:10:30,880 --> 00:10:33,716 もう一度 聞こう ジャンヌ・バロア・ド・ラ・モット 156 00:10:33,841 --> 00:10:35,718 何度 お答えしても 同じですわ 157 00:10:35,843 --> 00:10:37,845 首飾りを盗んだのは ローアン様です 158 00:10:37,970 --> 00:10:40,723 私は ただ 命令されただけ 159 00:10:40,848 --> 00:10:44,393 どうあっても 首飾りが 今 どこにあるかは知らないと言うのか 160 00:10:44,810 --> 00:10:45,978 ローアン様が どこかへ― 161 00:10:46,103 --> 00:10:48,314 ご処分なすったのでは ないのですか? 162 00:10:48,439 --> 00:10:52,943 うっ うああっ ジャンヌ! 悪党め うう… 163 00:10:53,069 --> 00:10:55,863 お静かに ローアン様 ここをどこだと思っているのです 164 00:10:55,988 --> 00:10:56,989 法廷ですよ (ローアン大司教)ううっ 165 00:10:58,699 --> 00:11:02,912 では 何もかもがローアン大司教の 命令であったとするならば 166 00:11:03,037 --> 00:11:05,456 王妃の偽サインの入った 手紙はどうだ? 167 00:11:05,873 --> 00:11:07,541 君が パリの偽司法書士― 168 00:11:07,667 --> 00:11:10,044 レトー・ド・ビレットに 書かせたものではないのか? 169 00:11:10,169 --> 00:11:12,254 レトーは そう白状しておるぞ 170 00:11:13,089 --> 00:11:16,133 まあ こんな やぼったい男 見たこともありませんわ 171 00:11:16,258 --> 00:11:17,593 ジャンヌ様 172 00:11:17,718 --> 00:11:20,179 (裁判長) どうでも シラを切り通すか 173 00:11:27,103 --> 00:11:29,980 ロザリー 見ろ 指輪だ 174 00:11:30,481 --> 00:11:33,943 姉さんは お前が渡した指輪を ちゃんと着けているぞ 175 00:11:34,610 --> 00:11:35,611 姉さん… 176 00:11:37,780 --> 00:11:40,658 (ジャンヌ) 少しでいいから力を貸して 母さん 177 00:11:40,866 --> 00:11:43,244 あたし こんなことぐらいで 負けたくないの 178 00:11:43,369 --> 00:11:44,912 切り抜けてみたいの 何とか 179 00:11:45,663 --> 00:11:51,544 だって たとえ神だろうと あたしを裁くなんて許せない 180 00:11:53,921 --> 00:11:56,841 では 証人を呼びなさい ニコル・ド・オリバ 181 00:12:05,224 --> 00:12:06,684 (傍聴人A) あっ 王妃だ 182 00:12:06,809 --> 00:12:07,935 (傍聴人B) マリー・アントワネットだ 183 00:12:08,144 --> 00:12:11,647 (傍聴人C) バカ よく見ろ 王妃にゃ似てるが 別人だよ 184 00:12:11,772 --> 00:12:13,190 王妃が あんなボロを着てるかよ 185 00:12:13,315 --> 00:12:14,316 (傍聴人A) そりゃそうだ 186 00:12:14,442 --> 00:12:16,694 (傍聴人B) しかし よく似てんなあ 187 00:12:18,821 --> 00:12:19,655 (廷吏)出ろ 188 00:12:29,039 --> 00:12:31,083 ニコル・ド・オリバ どうかね? 189 00:12:31,208 --> 00:12:34,336 そこにいる女が 君を ビーナスの茂みへと連れていき― 190 00:12:34,462 --> 00:12:37,214 偽王妃の役を頼んだ女かね? 191 00:12:38,841 --> 00:12:41,886 間違いありません ジャンヌ・バロアさんです 192 00:12:50,019 --> 00:12:53,147 フフッ 参ったな… 193 00:13:09,997 --> 00:13:11,373 (裁判長) さて ジャンヌ・バロア 194 00:13:11,499 --> 00:13:14,376 君が なぜ パリの娼婦(しょうふ)を 偽王妃に仕立て上げ― 195 00:13:14,502 --> 00:13:16,295 ビーナスの茂みへ 連れていったのか 196 00:13:16,420 --> 00:13:17,796 その訳を言ってもらおうか 197 00:13:17,922 --> 00:13:18,547 それは… 198 00:13:18,881 --> 00:13:19,507 それは? 199 00:13:19,632 --> 00:13:20,466 それは… 200 00:13:20,883 --> 00:13:22,927 速やかに述べなさい 201 00:13:23,052 --> 00:13:25,930 これ以上 ウソを重ねると 罪が重くなるばかりですぞ 202 00:13:26,931 --> 00:13:29,767 分かりました 何もかも お話しいたします 203 00:13:37,233 --> 00:13:41,820 ほんとに ローアン大司教様には 大変なご迷惑をおかけしました 204 00:13:43,531 --> 00:13:45,866 大司教様は まったく 私ども夫婦に― 205 00:13:45,991 --> 00:13:48,035 だまされていただけ なのでございます 206 00:13:48,160 --> 00:13:50,329 それと申しますのも 今度の事件は― 207 00:13:50,454 --> 00:13:52,748 実は ローアン様も 足元にも及ばないほどの― 208 00:13:52,873 --> 00:13:54,583 さる 高貴なお方に頼まれ 209 00:13:54,708 --> 00:13:57,670 しかたなく 私どもが 仕組んだことだったからです 210 00:13:57,878 --> 00:13:59,588 そのお方というのは― 211 00:13:59,713 --> 00:14:03,133 何が何でも 首飾りを手に入れたいと言った方 212 00:14:03,259 --> 00:14:05,970 160万リーブルの 首飾りをなすっても― 213 00:14:06,095 --> 00:14:08,389 少しも見劣りのしない方 214 00:14:08,597 --> 00:14:12,142 フランス王后陛下 マリー・アントワネット様です 215 00:14:15,854 --> 00:14:17,898 ジャンヌ・バロア・ ド・ラ・モット夫人 216 00:14:18,023 --> 00:14:21,944 王妃は 君のことも首飾りのことも 全く知らないと申されている 217 00:14:22,069 --> 00:14:24,280 知らないからこそ この裁判を起こしたんだ 218 00:14:24,405 --> 00:14:25,447 そう思わんか? 219 00:14:25,573 --> 00:14:27,449 口から出任せも いいかげんにしなさい 220 00:14:27,575 --> 00:14:29,827 確たる証拠もなしに そのようなことを述べると― 221 00:14:29,952 --> 00:14:33,539 王室侮辱罪だけでなく 法廷侮辱罪をも適用しますぞ 222 00:14:34,081 --> 00:14:37,543 王妃様は あまり 宝石商が騒ぎ立てるので― 223 00:14:37,668 --> 00:14:39,962 そろそろ ご自分の身が危なくなると― 224 00:14:40,087 --> 00:14:42,506 お思いになったんじゃ ありませんの? 225 00:14:42,631 --> 00:14:45,384 それで 私一人に 罪をかぶせようとなさり― 226 00:14:45,509 --> 00:14:47,469 裁判を起こしたんですわ 227 00:14:47,595 --> 00:14:49,513 まず 証拠を見せなさい 228 00:14:51,181 --> 00:14:52,474 聞けば 王妃様は― 229 00:14:53,058 --> 00:14:54,852 宝石商 べメールからの 請求書を― 230 00:14:54,977 --> 00:14:57,396 燃やしてしまわれたと いうではありませんか 231 00:14:57,521 --> 00:14:58,439 それは 王妃様が― 232 00:14:58,564 --> 00:15:01,525 証拠を消してしまおうと 思われたからに違いありません 233 00:15:01,650 --> 00:15:03,694 そうお思いになりませんか? 裁判長様 234 00:15:03,819 --> 00:15:07,865 (傍聴人A) そうだ! やましい所がなけりゃ 請求書を燃やしたりはしないぞ 235 00:15:08,073 --> 00:15:09,783 (傍聴人B) 王妃がやったんだ! 236 00:15:09,909 --> 00:15:11,827 (傍聴人C) 首飾りは王妃が持ってるんだぜ きっと 237 00:15:12,328 --> 00:15:14,788 (傍聴人D) そうだ! 犯人は あのオーストリア女だぞ! 238 00:15:15,122 --> 00:15:16,123 (木槌の音) 239 00:15:16,707 --> 00:15:18,500 傍聴人は 静かにしなさい 240 00:15:18,626 --> 00:15:21,086 これ以上 騒ぐと 全員に退廷を命じますぞ 241 00:15:27,259 --> 00:15:28,218 ラ・モット夫人 242 00:15:28,344 --> 00:15:28,969 (ジャンヌ)はい 243 00:15:29,094 --> 00:15:31,597 (裁判長) 王妃は あなたを 全然 知らないと言っているんだが 244 00:15:31,722 --> 00:15:33,474 では それは 王妃のウソと言うんですか? 245 00:15:33,599 --> 00:15:34,683 (ジャンヌ)そのとおりです 246 00:15:35,142 --> 00:15:37,227 では 当法廷の 納得のいくように― 247 00:15:37,353 --> 00:15:39,688 あなたと王妃の 関係を述べなさい 248 00:15:39,813 --> 00:15:40,648 (ジャンヌ)はい 249 00:15:41,899 --> 00:15:45,402 王妃様は 私を 愛してくださっていたのです 250 00:15:45,694 --> 00:15:46,487 うん? 251 00:15:46,820 --> 00:15:49,031 つまり レスボス風に― 252 00:15:49,156 --> 00:15:53,702 実は その… 王妃様は 同性愛の趣味がおありなのです 253 00:15:53,827 --> 00:15:56,747 私は 王妃様の 恋人でございました 254 00:15:56,872 --> 00:16:01,460 (傍聴人たちのざわめき) 255 00:16:02,378 --> 00:16:03,087 姉さん 256 00:16:03,420 --> 00:16:04,755 (せきばらい) 257 00:16:04,880 --> 00:16:07,591 ほほう そんな話は 初めて耳にしますな 258 00:16:07,716 --> 00:16:10,719 何か はっきりした根拠でも おありかな? ラ・モット夫人 259 00:16:11,011 --> 00:16:14,223 はい 裁判長も ご存じだと思いますけれど 260 00:16:14,348 --> 00:16:18,519 アントワネット様お気に入りの 有名なポリニャック夫人 261 00:16:18,644 --> 00:16:21,230 あの方も本当は 王妃様のいとしい方 262 00:16:21,355 --> 00:16:22,815 そして何よりの証拠が― 263 00:16:22,940 --> 00:16:25,693 近衛連隊長 オスカル・フランソワという方 264 00:16:27,945 --> 00:16:30,072 私の夫 ニコラスの 上官ですが― 265 00:16:30,197 --> 00:16:33,117 その方は男装はしていても れっきとした女性です 266 00:16:33,242 --> 00:16:34,994 つまり 王妃様は 愛する女性に― 267 00:16:35,119 --> 00:16:38,497 男の姿をさせ おそばに置き お相手をさせているのでございます 268 00:16:39,081 --> 00:16:42,209 王妃 マリー・アントワネット様は それはそれは偉大な方 269 00:16:42,334 --> 00:16:45,004 この世のあらゆるぜいたくを あらゆる楽しみを― 270 00:16:45,129 --> 00:16:47,464 すべて 独り占めなさっている方なのです 271 00:16:48,716 --> 00:16:49,675 (アンドレ・グランディエ) 待て オスカル 272 00:16:50,175 --> 00:16:52,219 落ち着け ここは法廷だぞ 273 00:16:52,553 --> 00:16:56,181 裁判長 私は ただ 操られていた人形にすぎません 274 00:16:56,557 --> 00:16:58,225 私を裁く前に王妃を 275 00:16:58,350 --> 00:17:00,185 マリー・アントワネットを 裁くべきです 276 00:17:00,644 --> 00:17:02,730 (傍聴人A) そうだ! 真犯人は王妃だ 277 00:17:02,855 --> 00:17:04,023 (傍聴人B) 浮気でレスビアン 278 00:17:04,148 --> 00:17:06,567 オーストリアから来た 尻軽女に決まってるよ 279 00:17:06,984 --> 00:17:09,194 (傍聴人C) ジャンヌ・バロア 俺がついてるぞ! 280 00:17:09,319 --> 00:17:15,117 (傍聴人たちのヤジ) 281 00:17:15,409 --> 00:17:18,162 閉廷 閉廷 当法廷はしばらく閉廷する 282 00:17:18,162 --> 00:17:19,705 閉廷 閉廷 当法廷はしばらく閉廷する 283 00:17:18,162 --> 00:17:19,705 (木槌の音) 284 00:17:20,164 --> 00:17:23,667 (サン・ジュスト) なるほど すばらしい裁判ですね ロベスピエール先生 285 00:17:24,126 --> 00:17:26,462 うむ これ以上ないほど こってりと― 286 00:17:26,587 --> 00:17:29,131 王室は泥を 塗りたくられたというところだ 287 00:17:29,965 --> 00:17:32,051 さあ 引き上げよう サン・ジュスト君 288 00:17:32,176 --> 00:17:33,010 はい 289 00:17:33,218 --> 00:17:37,097 (語り手) この青年こそ 若き法律学生 サン・ジュスト 290 00:17:37,222 --> 00:17:41,643 後に ロベスピエールの 懐刀となる青年革命家であった 291 00:17:41,769 --> 00:17:45,731 そして ロベスピエールに 影のように付き添う新聞記者 292 00:17:45,856 --> 00:17:47,483 ベルナール・シャトレ 293 00:17:47,608 --> 00:17:51,779 彼も 新しき時代への 情熱をたぎらせた若者である 294 00:17:51,904 --> 00:17:55,574 “首飾り事件”は 古い権力に対しての怒りを 295 00:17:55,699 --> 00:17:59,286 民衆と若者たちに はっきりと 植え付けたということで― 296 00:17:59,411 --> 00:18:02,706 フランス革命への 引き金となる事件であった 297 00:18:05,000 --> 00:18:06,752 あんな ひどいことを… 298 00:18:07,628 --> 00:18:09,546 すみません オスカル様 299 00:18:09,671 --> 00:18:13,217 姉さんは 助かりたいその一心で あんなことを言ったんです 300 00:18:13,342 --> 00:18:14,343 (ロザリーのすすり泣く声) 301 00:18:14,468 --> 00:18:17,554 たくましい… たくましい生命力だ 302 00:18:17,679 --> 00:18:21,725 絶えず断崖絶壁の上に立ちながら ひるむどころか大胆で― 303 00:18:21,850 --> 00:18:23,143 しかも 余裕すらある 304 00:18:23,477 --> 00:18:24,394 ジャンヌ 305 00:18:24,937 --> 00:18:28,273 わたしが 今まで 見たこともないような女性だ 306 00:18:32,820 --> 00:18:37,241 (語り手) 1786年5月31日 水曜日 307 00:18:37,407 --> 00:18:41,829 パリ高等法院で“首飾り事件”の 判決が言い渡された 308 00:18:41,954 --> 00:18:43,789 (裁判長) ニコラス・ド・ラ・モット大尉 309 00:18:43,914 --> 00:18:47,793 現在 本人は逃亡中であるが 終身漕役(そうえき)刑に処する 310 00:18:47,918 --> 00:18:49,711 見つけしだい 直ちに逮捕のこと 311 00:18:50,087 --> 00:18:51,171 レトー・ド・ビレット 312 00:18:51,296 --> 00:18:54,675 ムチ打ち50回の後(のち) 35年間の国外追放 313 00:18:55,676 --> 00:18:57,678 ニコル・ド・オリバ 無罪 314 00:18:58,720 --> 00:19:00,639 ジャンヌ・バロア・ ド・ラ・モット夫人 315 00:19:01,223 --> 00:19:03,183 両肩に“V”の字の 焼きごてを押して 316 00:19:03,308 --> 00:19:05,602 終身禁錮の刑に処する 317 00:19:07,521 --> 00:19:09,398 ルイ・ド・ローアン大司教 318 00:19:09,523 --> 00:19:13,861 首飾り事件についても 王室侮辱罪についても 無罪 319 00:19:18,907 --> 00:19:20,909 裁判長 お尋ねいたします 320 00:19:21,034 --> 00:19:24,413 真犯人は どうなるのです? 私を操った真犯人は 321 00:19:24,538 --> 00:19:27,708 私だけを罰して あとは 知らん顔をするつもりなんですか? 322 00:19:27,833 --> 00:19:30,752 当法廷は 憶測だけで 人を裁くことはしない 323 00:19:30,878 --> 00:19:34,089 もし 万一 あなたの言うとおり 真犯人がいたとしても 324 00:19:34,214 --> 00:19:36,508 王室が 当法廷に 立ち入れないように― 325 00:19:36,633 --> 00:19:40,637 当法廷も また 王室に対しては 手出しはできないことになっておる 326 00:19:42,598 --> 00:19:45,017 それでは まるで 私が真犯人… 327 00:19:45,142 --> 00:19:47,519 レスビアンだと言われ 犯人だと言われ― 328 00:19:47,644 --> 00:19:49,479 しかも ローアンは無罪 329 00:19:49,605 --> 00:19:52,107 これでは 何のために 裁判を起こしたのか分かりません 330 00:19:52,608 --> 00:19:54,109 おかわいそうな王妃様 331 00:19:54,735 --> 00:19:55,736 ポリニャック夫人 332 00:19:55,861 --> 00:19:59,072 ねえ 私が 一体 何をしたというんです? 333 00:20:00,574 --> 00:20:02,826 悔しい… (ポリニャック夫人)王妃様 334 00:20:03,785 --> 00:20:05,871 でも 不思議な事件ですわ 335 00:20:05,996 --> 00:20:10,334 よりによって 近衛連隊の隊員が このような不始末をするなんて 336 00:20:10,459 --> 00:20:12,753 しかも その隊員が 逃亡を企てていたのを― 337 00:20:12,878 --> 00:20:15,505 連隊長が お気づきにならないなんて… 338 00:20:16,340 --> 00:20:18,800 いいえ 何でもございません 王妃様 339 00:20:19,509 --> 00:20:21,803 (アントワネットの泣き声) 340 00:20:22,846 --> 00:20:24,890 (語り手) 判決より ひと月後(のち) 341 00:20:25,015 --> 00:20:28,936 パリ市民の見守る中で ジャンヌの刑は執行された 342 00:20:30,187 --> 00:20:31,563 “V”の焼きごて 343 00:20:31,688 --> 00:20:34,942 それは 泥棒を意味する言葉の イニシャルである 344 00:20:37,861 --> 00:20:40,197 チクショーッ! (刑吏A)うあっ 345 00:20:40,781 --> 00:20:41,657 (ジャンヌ)ああっ 346 00:20:41,782 --> 00:20:43,575 (刑吏B) ワーッ! うおっ 347 00:20:46,036 --> 00:20:46,662 うわっ 348 00:20:47,204 --> 00:20:49,081 (ジャンヌの荒い息) 349 00:20:51,583 --> 00:20:53,669 (刑吏C)フンッ (ジャンヌ)ああっ 350 00:20:54,044 --> 00:20:57,172 離せ! あたしは無実だ みんな 王妃の陰謀だよ 351 00:20:57,631 --> 00:20:59,591 あたし一人に 罪をかぶせやがって 352 00:20:59,716 --> 00:21:01,343 てめえは 涼しい顔を… 353 00:21:01,468 --> 00:21:02,761 ああーっ 354 00:21:03,762 --> 00:21:06,223 ううっ ああ うう… 355 00:21:06,348 --> 00:21:08,433 地獄へ落ちろ マリー・アントワネット! 356 00:21:08,558 --> 00:21:10,477 あたしは無実だ! 357 00:21:11,061 --> 00:21:14,940 ギャーッ! 358 00:21:16,108 --> 00:21:17,442 (刑吏A) クソッ なんて女でい 359 00:21:17,567 --> 00:21:18,902 俺の腕の肉を 食いちぎりやがった 360 00:21:19,027 --> 00:21:21,280 (刑吏B) 見ろよ 目を開けたまんま 気絶してやがる 361 00:21:21,405 --> 00:21:23,365 (刑吏長) すぐ サルペトリエール牢獄(ろうごく)へ運べ 362 00:21:23,490 --> 00:21:24,449 (刑吏A・B)はい 363 00:21:30,330 --> 00:21:34,376 (語り手) ジャンヌの巧みなウソは 国中の人気と同情を集め 364 00:21:34,501 --> 00:21:36,795 投獄された サルペトリエールには― 365 00:21:36,920 --> 00:21:40,132 彼女をひと目見ようという人々が 毎日 押しかけた 366 00:21:40,799 --> 00:21:44,303 (アントワネット) なんということでしょう 平民ばかりか 貴族までもが― 367 00:21:44,428 --> 00:21:46,638 ジャンヌに会いに行っていると いうではありませんか 368 00:21:46,805 --> 00:21:47,639 はい 369 00:21:48,223 --> 00:21:51,601 なんで身分のある貴族までも… 私には分かりません 370 00:21:51,893 --> 00:21:54,271 恐れながら その貴族たちは― 371 00:21:54,396 --> 00:21:57,107 王后陛下の離宮への 出入りを許されずに― 372 00:21:57,232 --> 00:21:59,776 宮廷を去った者たちで ございます 373 00:22:01,320 --> 00:22:03,905 そんな… そんなことぐらいで 374 00:22:13,874 --> 00:22:20,088 フフフ… 面白かったわ 久しぶりに ゾクゾクするくらい 375 00:22:20,213 --> 00:22:22,257 フフフ… 376 00:22:23,342 --> 00:22:29,056 あたし 子供の頃に こんな イタズラごっこをしたかったなあ 377 00:22:29,181 --> 00:22:30,265 みんなと… 378 00:22:33,977 --> 00:22:39,399 ♪~ 379 00:23:39,292 --> 00:23:45,507 ~♪