1 00:00:12,629 --> 00:00:14,631 (すすり泣く声) 2 00:00:14,631 --> 00:00:18,969 《美世:桜吹雪は 頬を濡らす雨。 3 00:00:18,969 --> 00:00:21,805 はらはら舞う雨の中で 4 00:00:21,805 --> 00:00:25,308 私は一人 泣いていた。 5 00:00:25,308 --> 00:00:27,978 春の暖かな日差しも 6 00:00:27,978 --> 00:00:30,480 夏の木漏れ日も 7 00:00:30,480 --> 00:00:33,817 秋雲の切れ間から差す光や 8 00:00:33,817 --> 00:00:36,987 粉雪に反射する朝日も 9 00:00:36,987 --> 00:00:40,323 私を照らしてはくれなかった。 10 00:00:40,323 --> 00:00:44,327 幸せなんて 知らなかった。 11 00:00:44,327 --> 00:00:46,496 いちるの希望も 12 00:00:46,496 --> 00:00:49,796 いつも 目の前で消えてしまったから》 13 00:00:54,337 --> 00:00:57,174 は… はっ! 14 00:00:57,174 --> 00:01:00,677 《ずっとそう思って生きてきた。 15 00:01:00,677 --> 00:01:05,277 この世界に 私は必要のない存在なのだと》 16 00:01:07,350 --> 00:01:10,954 《あの日 あのお方と 17 00:01:10,954 --> 00:01:12,954 出会うまでは…》 18 00:01:30,807 --> 00:01:34,978 (川のせせらぎ) 19 00:01:34,978 --> 00:01:38,481 (香耶)なによこれ! 20 00:01:38,481 --> 00:01:41,151 (香耶)こんなお茶 渋くて飲めないわ! 21 00:01:41,151 --> 00:01:43,653 申し訳ありません。 22 00:01:43,653 --> 00:01:45,655 今すぐいれなおして! 23 00:01:45,655 --> 00:01:48,992 (香乃子)美世 いつまで そうしているつもりなの? 24 00:01:48,992 --> 00:01:51,161 早く行ってちょうだい。 25 00:01:51,161 --> 00:01:53,161 かしこまりました。 26 00:02:00,837 --> 00:02:03,037 失礼いたします。 27 00:02:07,344 --> 00:02:10,947 もう お茶も満足に いれられないなんて 28 00:02:10,947 --> 00:02:14,451 同じ斎森の娘として 恥ずかしくないのかしら。 29 00:02:14,451 --> 00:02:18,121 香耶と違って 本当に要領の悪い娘ね。 30 00:02:18,121 --> 00:02:20,457 あの母親そっくり。 31 00:02:20,457 --> 00:02:23,960 (真一)香乃子 私を責めるつもりか? 32 00:02:23,960 --> 00:02:27,130 (香乃子)だって 真一さんが 産ませた子じゃないの。 33 00:02:27,130 --> 00:02:30,430 (真一)勘弁してくれ とうに昔のことだろう。 34 00:02:36,473 --> 00:02:38,975 おはようございます 辰石様。 35 00:02:38,975 --> 00:02:41,144 本日はどうなさいましたか? 36 00:02:41,144 --> 00:02:44,147 (実)真一と これから少し打ち合わせだ。 37 00:02:44,147 --> 00:02:46,816 これは使用人たちで食べなさい。 38 00:02:46,816 --> 00:02:50,654 まあ いつもありがとうございます。 39 00:02:50,654 --> 00:02:53,654 よいよい それでは失礼するぞ。 40 00:02:55,825 --> 00:02:58,995 先ほど 辰石様が お見えになられてたけど 41 00:02:58,995 --> 00:03:02,499 もしかして 縁談話でも持ってきたのかしら? 42 00:03:02,499 --> 00:03:05,502 んっ? 美世様も香耶様も 43 00:03:05,502 --> 00:03:08,004 そろそろお年頃ですからね。 44 00:03:08,004 --> 00:03:10,774 美世様なんてもう19よ。 45 00:03:10,774 --> 00:03:13,610 ただ あの真一様のことですから 46 00:03:13,610 --> 00:03:16,780 美世様ではなく きっと香耶様かしらね。 47 00:03:16,780 --> 00:03:19,616 アンタたち 何くっちゃべってんだい! 48 00:03:19,616 --> 00:03:23,453 洗濯ひとつ まともにできないヤツは おまんま食い上げだよ! 49 00:03:23,453 --> 00:03:25,955 (2人)も 申し訳ありません。 50 00:03:25,955 --> 00:03:29,959 (香乃子)ちょっと 誰か居間に来てちょうだいな! 51 00:03:29,959 --> 00:03:32,796 ほら 奥様がお呼びだよ! 52 00:03:32,796 --> 00:03:34,796 (2人)ただいま参ります! 53 00:03:38,301 --> 00:03:40,301 縁談…。 54 00:03:48,478 --> 00:03:52,982 (幸次)今日も庭の掃除かい? 精が出るね。 55 00:03:52,982 --> 00:03:55,318 幸次さん。 (幸次)父さんが 56 00:03:55,318 --> 00:03:58,488 君の父上と 当主同士の会談があるみたいで 57 00:03:58,488 --> 00:04:02,158 今日はその付き添いで来たんだ。 58 00:04:02,158 --> 00:04:04,994 それは ご苦労さまです。 59 00:04:04,994 --> 00:04:07,497 ていうのは口実で…。 60 00:04:07,497 --> 00:04:10,697 ほんとのところは 美世と話したかっただけ。 61 00:04:16,773 --> 00:04:19,442 美世 手を出してごらん。 62 00:04:19,442 --> 00:04:22,278 んっ? ミルク…。 63 00:04:22,278 --> 00:04:25,782 ミルクキャラメルだよ。 甘くておいしいお菓子。 64 00:04:25,782 --> 00:04:30,182 初めて食べたときは 頬が落ちるかと思ったくらいさ。 65 00:04:39,796 --> 00:04:42,132 んっ! フフッ。 66 00:04:42,132 --> 00:04:44,467 喜んでもらえたみたいでよかった。 67 00:04:44,467 --> 00:04:47,137 はやりもの好きの兄貴が 買ってきたんだ。 68 00:04:47,137 --> 00:04:49,472 とってもおいしいです。 69 00:04:49,472 --> 00:04:52,642 ご希望とあらば いつでも持ってきてあげるよ。 70 00:04:52,642 --> 00:04:56,646 これで美世が笑顔になるのなら 安いものさ。 71 00:04:56,646 --> 00:05:00,984 いつも ありがとうございます。 72 00:05:00,984 --> 00:05:05,822 こんな時間が ずっと続けばいいんだけどな…。 73 00:05:05,822 --> 00:05:11,428 (幸次)僕は… 美世を助けてあげたいんだ。 74 00:05:11,428 --> 00:05:14,928 幸次さんには いつも救われています。 75 00:05:17,267 --> 00:05:19,436 こんな僕だけど 76 00:05:19,436 --> 00:05:23,440 いつだって 美世の力になりたいんだ。 77 00:05:23,440 --> 00:05:25,442 君のために…。 78 00:05:25,442 --> 00:05:28,445 君がずっと笑っていられるように。 79 00:05:28,445 --> 00:05:31,114 フッ なんて…。 80 00:05:31,114 --> 00:05:33,114 フフ…。 81 00:05:36,786 --> 00:05:39,122 ねぇお父様。 82 00:05:39,122 --> 00:05:42,959 女学校に着ていく 新しいお着物が 欲しいのだけれど 83 00:05:42,959 --> 00:05:45,128 ダメかしら? ああ 84 00:05:45,128 --> 00:05:47,964 そろそろ女学校も新学期か。 85 00:05:47,964 --> 00:05:51,468 この機会に 2~3枚買ってきたらどうだ。 86 00:05:51,468 --> 00:05:53,470 えっ いいの!? 87 00:05:53,470 --> 00:05:55,805 (香耶)お父様 ありがとう! 88 00:05:55,805 --> 00:05:57,807 まあ 真一さんったら。 89 00:05:57,807 --> 00:05:59,976 本当に香耶には甘いんだから。 90 00:05:59,976 --> 00:06:02,812 (香耶)もうこのお着物ボロボロなのよ。 91 00:06:02,812 --> 00:06:06,316 (真一)美世。 はっ…。 92 00:06:06,316 --> 00:06:08,318 はい。 93 00:06:08,318 --> 00:06:11,421 いつも昼は 何をしている? 94 00:06:11,421 --> 00:06:15,258 え あ… 家の周りのお掃除を。 95 00:06:15,258 --> 00:06:18,761 (真一)そうか。 明後日の昼だが 96 00:06:18,761 --> 00:06:22,432 必ず家にいなさい。 いいな? 97 00:06:22,432 --> 00:06:25,932 あ… かしこまりました。 98 00:06:31,941 --> 00:06:37,280 《使用人同然の私に 家にいろだなんて…。 99 00:06:37,280 --> 00:06:39,616 心配しなくても 100 00:06:39,616 --> 00:06:43,286 私がこの家の 敷地の外に出ることなんて 101 00:06:43,286 --> 00:06:45,686 あるわけないのに》 102 00:06:57,467 --> 00:06:59,469 ふう…。 103 00:06:59,469 --> 00:07:02,305 (香耶)お母様~? 104 00:07:02,305 --> 00:07:04,641 ねぇ お母様を見なかった? 105 00:07:04,641 --> 00:07:07,810 奥様でしたら 離れにいらっしゃるかと。 106 00:07:07,810 --> 00:07:09,812 これからお出かけですか? 107 00:07:09,812 --> 00:07:12,081 ええ 着物を新調するの。 108 00:07:12,081 --> 00:07:14,918 新学期のためにね。 109 00:07:14,918 --> 00:07:18,755 それより… クククッ。 110 00:07:18,755 --> 00:07:22,759 (香耶)お姉様 顔を洗ったらいかが? 111 00:07:22,759 --> 00:07:25,094 (香耶)ひどい顔よ。 えっ? 112 00:07:25,094 --> 00:07:27,764 美世様 お顔にすすが。 113 00:07:27,764 --> 00:07:30,266 えっ。 (香耶)アハハッ! 114 00:07:30,266 --> 00:07:34,437 そんなお顔で 間違ってもお客様の お出迎えなんてしないでね。 115 00:07:34,437 --> 00:07:39,108 ただでさえ斎森家の恥なんだから。 116 00:07:39,108 --> 00:07:42,946 申し訳 ありません。 117 00:07:42,946 --> 00:07:45,281 (鳥のさえずり) 118 00:07:45,281 --> 00:07:50,181 (庭を掃く音) 119 00:07:55,625 --> 00:07:57,627 美世…。 120 00:07:57,627 --> 00:07:59,627 んっ 幸次さん。 121 00:08:01,798 --> 00:08:04,133 おはようございます。 122 00:08:04,133 --> 00:08:08,304 今日は洋装だなんて珍しいですね。 123 00:08:08,304 --> 00:08:10,473 とってもお似合いです。 124 00:08:10,473 --> 00:08:12,408 ん…。 125 00:08:12,408 --> 00:08:17,413 あ… あの 今日はどんなご用事で? 126 00:08:17,413 --> 00:08:21,250 ああ うん ちょっと大事な用だよ。 127 00:08:21,250 --> 00:08:24,921 君の父上に。 父に? 128 00:08:24,921 --> 00:08:27,423 あ…。 これ…。 129 00:08:27,423 --> 00:08:30,426 あっ。 手土産のお菓子。 130 00:08:30,426 --> 00:08:32,595 よければ みんなでどうぞ。 131 00:08:32,595 --> 00:08:35,264 ありがとうございます。 132 00:08:35,264 --> 00:08:40,103 じゃ じゃあ また後で…。 133 00:08:40,103 --> 00:08:42,703 あ 幸次さん? 134 00:08:48,945 --> 00:08:52,115 《どうして こんなことに…》 135 00:08:52,115 --> 00:08:56,619 (雨音) 136 00:08:56,619 --> 00:08:59,455 美世様! んっ? 137 00:08:59,455 --> 00:09:02,792 旦那様が美世様を お呼びになられてます。 138 00:09:02,792 --> 00:09:06,129 えっ? すぐにお座敷に来るようにと。 139 00:09:06,129 --> 00:09:08,464 わ わかりました。 140 00:09:08,464 --> 00:09:10,964 (雨音) 141 00:09:14,570 --> 00:09:16,570 はっ。 142 00:09:22,078 --> 00:09:26,416 明後日の昼だが 必ず家にいなさい。 143 00:09:26,416 --> 00:09:28,416 いいな? 144 00:09:30,920 --> 00:09:33,923 《もしかしたらなんて考えてはダメ。 145 00:09:33,923 --> 00:09:36,923 きっと悪い話に決まってる》 146 00:09:38,928 --> 00:09:42,265 《幸次さんとの縁談…。 147 00:09:42,265 --> 00:09:44,767 期待してはいけない。 148 00:09:44,767 --> 00:09:48,771 そう思っているはずなのに…》 149 00:09:48,771 --> 00:09:52,942 (深呼吸) 150 00:09:52,942 --> 00:09:55,611 参りました 美世です。 151 00:09:55,611 --> 00:09:57,611 (真一)入れ。 152 00:09:59,949 --> 00:10:02,449 失礼いたします。 153 00:10:09,459 --> 00:10:12,462 (香耶)何を ボーッとしてらっしゃるの? 154 00:10:12,462 --> 00:10:14,762 さっさと お入りになっていただける? 155 00:10:16,799 --> 00:10:18,801 ん…。 156 00:10:18,801 --> 00:10:20,801 あ…。 157 00:10:23,139 --> 00:10:26,142 (真一)話というのは他でもない。 158 00:10:26,142 --> 00:10:28,644 辰石家との縁談と 159 00:10:28,644 --> 00:10:31,147 この家の今後のことだ。 160 00:10:31,147 --> 00:10:33,149 (真一)この斎森家は 161 00:10:33,149 --> 00:10:38,154 幸次くんに婿養子に入ってもらい 継いでもらうことにした。 162 00:10:38,154 --> 00:10:43,493 彼の妻として この家を支えるのは 163 00:10:43,493 --> 00:10:45,661 香耶だ。 はっ…。 164 00:10:45,661 --> 00:10:47,997 フフフ。 165 00:10:47,997 --> 00:10:50,500 《覚悟していた。 166 00:10:50,500 --> 00:10:53,169 使用人同然の私が 167 00:10:53,169 --> 00:10:56,672 結婚できるわけがないって。 168 00:10:56,672 --> 00:11:00,343 この家で 存在を許されて 169 00:11:00,343 --> 00:11:03,012 穏やかに過ごせる日々が 170 00:11:03,012 --> 00:11:08,351 そんな簡単に私のもとに 訪れるわけがないって》 171 00:11:08,351 --> 00:11:11,621 (真一)美世 お前には嫁いでもらう。 172 00:11:11,621 --> 00:11:13,623 は…。 173 00:11:13,623 --> 00:11:15,958 嫁ぎ先は 久堂家。 174 00:11:15,958 --> 00:11:20,463 久堂清霞殿のところだ。 175 00:11:20,463 --> 00:11:23,299 く 久堂!? (香耶)よかったじゃない! 176 00:11:23,299 --> 00:11:27,637 あの有名な久堂清霞さんのもとに 嫁げるだなんて。 177 00:11:27,637 --> 00:11:29,639 は…。 178 00:11:29,639 --> 00:11:31,974 なんの取り柄もないあなたには 179 00:11:31,974 --> 00:11:34,477 もったいなさすぎるお話ね。 180 00:11:34,477 --> 00:11:39,315 ウフフ お姉様は久堂家で いったい何日もつのかしら。 181 00:11:39,315 --> 00:11:41,484 楽しみね。 182 00:11:41,484 --> 00:11:43,820 すぐに荷物をまとめて 183 00:11:43,820 --> 00:11:47,156 明朝 久堂殿の屋敷に向かえ。 184 00:11:47,156 --> 00:11:50,326 あの おと…。 (真一)話は以上だ。 185 00:11:50,326 --> 00:11:52,995 わかったならさっさと支度をしろ。 186 00:11:52,995 --> 00:11:56,332 くれぐれも 無礼のないようにな。 187 00:11:56,332 --> 00:11:59,836 は…。 188 00:11:59,836 --> 00:12:01,838 フフ…。 189 00:12:01,838 --> 00:12:04,238 失礼 いたします。 190 00:12:10,780 --> 00:12:15,680 (真一)さて 幸次くん 早速結納の日取りだが…。 191 00:12:29,966 --> 00:12:32,301 しばらく止みそうにないわねぇ。 192 00:12:32,301 --> 00:12:35,201 せっかく洗濯物 干したのに。 193 00:12:37,473 --> 00:12:39,673 あっ。 194 00:12:41,978 --> 00:12:44,981 (幸次)美世…。 195 00:12:44,981 --> 00:12:47,650 ん…。 196 00:12:47,650 --> 00:12:50,152 幸次:ちょっと待ってください! 197 00:12:50,152 --> 00:12:52,154 どうして僕が! 198 00:12:52,154 --> 00:12:54,156 何度も言わせるな。 199 00:12:54,156 --> 00:12:57,159 お前は斎森香耶の 婿になれと言っている。 200 00:12:57,159 --> 00:13:00,162 そんなこと いきなり言われても…。 201 00:13:00,162 --> 00:13:02,832 お前は美世を助けたいんだろう? 202 00:13:02,832 --> 00:13:04,834 心配するな。 203 00:13:04,834 --> 00:13:08,504 美世は一志の嫁にするよう 斎森に頼んである。 204 00:13:08,504 --> 00:13:13,109 そうすれば 彼女はあの家を出られるんだ。 205 00:13:13,109 --> 00:13:17,446 それこそ彼女にとって 一番幸せな道だと思わんか? 206 00:13:17,446 --> 00:13:19,448 美世の気持ちは…。 207 00:13:19,448 --> 00:13:22,118 よりにもよって 僕と香耶だなんて。 208 00:13:22,118 --> 00:13:24,787 これはすでに決まったことだ。 209 00:13:24,787 --> 00:13:28,958 お前はこの家の繁栄のために 黙って従え。 210 00:13:28,958 --> 00:13:30,960 (実)わかったな。 211 00:13:30,960 --> 00:13:33,960 ん… 212 00:13:40,469 --> 00:13:43,306 《お母様の桜の木…。 213 00:13:43,306 --> 00:13:45,808 落ち込んだときにここに来ると 214 00:13:45,808 --> 00:13:48,978 いつも心が安らぐのだけど 215 00:13:48,978 --> 00:13:52,982 もうここにも来れなくなるのね。 216 00:13:52,982 --> 00:13:54,984 今までありがとう。 217 00:13:54,984 --> 00:13:57,984 さようなら お母様》 218 00:14:00,823 --> 00:14:03,993 (幸次)美世…。 219 00:14:03,993 --> 00:14:06,996 幸次さん…。 220 00:14:06,996 --> 00:14:10,499 (幸次)ごめん。 221 00:14:10,499 --> 00:14:13,769 僕は本当にふがいないね。 222 00:14:13,769 --> 00:14:16,439 結局なにもできなくて…。 223 00:14:16,439 --> 00:14:19,775 幸次さんが 謝ることではありません。 224 00:14:19,775 --> 00:14:23,112 ただ 運が悪かっただけですから。 225 00:14:23,112 --> 00:14:25,614 違う! 運なんかじゃ…。 226 00:14:25,614 --> 00:14:30,953 いいんです。 嫁ぎ先で 幸せになれるかもしれませんし。 227 00:14:30,953 --> 00:14:32,955 私は気にしていませんから。 228 00:14:32,955 --> 00:14:36,292 君は 僕を恨んでいないのか。 229 00:14:36,292 --> 00:14:38,294 恨むだなんて…。 230 00:14:38,294 --> 00:14:41,194 そんな気持ちは とうに忘れました。 231 00:14:43,632 --> 00:14:46,135 僕は君を助けたかった。 232 00:14:46,135 --> 00:14:50,473 また昔のように 普通に君と笑いあいたかった。 233 00:14:50,473 --> 00:14:52,808 僕は君を…。 (香耶)幸次さん。 234 00:14:52,808 --> 00:14:54,810 (幸次)香耶…。 235 00:14:54,810 --> 00:14:57,480 何を話しているの? 236 00:14:57,480 --> 00:15:00,149 な 何でもないよ…。 237 00:15:00,149 --> 00:15:02,985 あらそう。 238 00:15:02,985 --> 00:15:05,654 幸次さん。 んっ。 239 00:15:05,654 --> 00:15:09,992 今まで ありがとうございました。 240 00:15:09,992 --> 00:15:14,263 (遠ざかる足音) 241 00:15:14,263 --> 00:15:16,263 フフッ。 242 00:15:24,106 --> 00:15:33,115 ~ 243 00:15:33,115 --> 00:15:36,118 美世様 少しよろしいですか? 244 00:15:36,118 --> 00:15:38,120 はい どうぞ。 245 00:15:38,120 --> 00:15:40,122 (ふすまが開く音) 246 00:15:40,122 --> 00:15:44,460 真一様からのお言づてで 明日出発される際は 247 00:15:44,460 --> 00:15:48,297 こちらの お着物をお召しなるようにと。 248 00:15:48,297 --> 00:15:50,800 お父様が…。 249 00:15:50,800 --> 00:15:53,969 いいですか 美世様。 あ…。 250 00:15:53,969 --> 00:15:58,474 久堂清霞様は 冷酷無慈悲と ウワサされているお方です。 251 00:15:58,474 --> 00:16:01,811 今までの婚約者は 皆 逃げ出したそうで。 252 00:16:01,811 --> 00:16:04,146 どうか お気をつけて。 253 00:16:04,146 --> 00:16:07,483 お気遣い ありがとうございます。 254 00:16:07,483 --> 00:16:13,422 は… お荷物 たったそれだけで…。 255 00:16:13,422 --> 00:16:17,259 母の形見も ほとんど 捨てられてしまったので 256 00:16:17,259 --> 00:16:20,429 これくらいしか ないんです。 257 00:16:20,429 --> 00:16:24,266 さぞ おつらかったでしょうに…。 258 00:16:24,266 --> 00:16:28,437 こちら よければ 道中で召し上がってください。 259 00:16:28,437 --> 00:16:31,440 フフ 助かります。 260 00:16:31,440 --> 00:16:35,440 美世様 それでは どうかお元気で。 261 00:16:39,615 --> 00:16:41,951 《こんな 派手な着物 262 00:16:41,951 --> 00:16:45,151 私には到底 似合いそうにない》 263 00:16:56,799 --> 00:16:58,999 は…。 264 00:17:01,804 --> 00:17:04,004 (戸を開ける音) 265 00:17:10,479 --> 00:17:13,582 《私 とうとう帰る家も 266 00:17:13,582 --> 00:17:17,182 思い出さえも 失ってしまったのね…》 267 00:17:22,758 --> 00:17:31,600 (走る息遣い) 268 00:17:31,600 --> 00:17:33,602 フフッ! 269 00:17:33,602 --> 00:17:45,781 ~ 270 00:17:45,781 --> 00:17:56,959 (美世の嗚咽) 271 00:17:56,959 --> 00:18:00,462 (セミの鳴き声) 272 00:18:00,462 --> 00:18:08,804 ~ 273 00:18:08,804 --> 00:18:10,739 ん…。 274 00:18:10,739 --> 00:18:12,741 んっ? 275 00:18:12,741 --> 00:18:41,270 ~ 276 00:18:41,270 --> 00:19:35,924 ~ 277 00:19:35,924 --> 00:20:01,224 ~ 278 00:20:04,453 --> 00:20:07,956 《こんなところに 本当に久堂家の当主が 279 00:20:07,956 --> 00:20:10,459 住んでいるのかしら…》 280 00:20:10,459 --> 00:20:12,459 (鳥のさえずり) 281 00:20:19,301 --> 00:20:21,637 あっ。 282 00:20:21,637 --> 00:20:24,139 《ここかしら…。 283 00:20:24,139 --> 00:20:27,239 思っていたよりも質素な家…》 284 00:20:31,480 --> 00:20:33,649 (ノック) 285 00:20:33,649 --> 00:20:35,749 ごめんください。 286 00:20:37,820 --> 00:20:40,989 (ゆり江)はいはい。 287 00:20:40,989 --> 00:20:42,991 (ゆり江)どちら様でしょう。 288 00:20:42,991 --> 00:20:46,829 は 初めまして 斎森美世と申します。 289 00:20:46,829 --> 00:20:48,997 この度 久堂清霞様との 290 00:20:48,997 --> 00:20:51,834 縁談のお話をいただき 参りました。 291 00:20:51,834 --> 00:20:54,169 まあ 斎森様。 292 00:20:54,169 --> 00:20:56,171 お待ちしておりましたよ。 293 00:20:56,171 --> 00:20:59,842 私は久堂家使用人の ゆり江と申します。 294 00:20:59,842 --> 00:21:02,511 よろしくお願いいたします。 295 00:21:02,511 --> 00:21:04,847 お話は聞いておりますよ。 296 00:21:04,847 --> 00:21:08,016 さあ どうぞお入りくださいませ。 297 00:21:08,016 --> 00:21:11,787 お お邪魔します。 298 00:21:11,787 --> 00:21:14,957 坊ちゃんは今 書斎にいらっしゃいますから。 299 00:21:14,957 --> 00:21:18,627 早速そちらまで ご案内いたしますね。 300 00:21:18,627 --> 00:21:21,797 あ…。 301 00:21:21,797 --> 00:21:24,633 お初にお目にかかります。 302 00:21:24,633 --> 00:21:27,302 斎森美世と申します。 303 00:21:27,302 --> 00:21:30,302 どうぞ よろしくお願いいたします。 304 00:21:40,983 --> 00:21:43,485 (清霞)はぁ…。 305 00:21:43,485 --> 00:21:46,989 いつまでそうしているつもりだ。 306 00:21:46,989 --> 00:21:51,160 申し訳ございません。 謝れとは言っていない。 307 00:21:51,160 --> 00:21:54,830 さあ どうか お顔を上げてくださいまし。 308 00:21:54,830 --> 00:21:56,830 は はい…。 309 00:21:59,501 --> 00:22:01,503 はっ…。 310 00:22:01,503 --> 00:22:05,507 《この日 このお方と出会ったことで 311 00:22:05,507 --> 00:22:09,344 まるで 雪の中で芽吹いた花のように 312 00:22:09,344 --> 00:22:12,614 私の閉ざされた人生は 313 00:22:12,614 --> 00:22:17,119 再び動き出したのでした》 314 00:22:17,119 --> 00:22:20,419 久堂家当主 久堂清霞だ。 315 00:22:23,625 --> 00:22:25,794 (風の音) 316 00:22:25,794 --> 00:22:29,294 《きれいな 人…》