1 00:00:09,977 --> 00:00:12,980 (小津)ヒヒヒッ。 ばっちり撮れてますよ。 2 00:00:12,980 --> 00:00:15,983 (私)う~ん。 水が滴る いい男であるのに➡ 3 00:00:15,983 --> 00:00:17,985 そんな趣味が あるとは…。 4 00:00:20,988 --> 00:00:22,990 (私)<小津と わたしは 同学年である> 5 00:00:22,990 --> 00:00:24,992 <野菜嫌いで 即席物ばかり食べているから➡ 6 00:00:24,992 --> 00:00:28,996 何だか 月の裏側から来たような 顔をしていて はなはだ不気味だ> 7 00:00:28,996 --> 00:00:30,998 (小津)チャ~ンス。 8 00:00:30,998 --> 00:00:32,100 <弱者にむち打ち 強者にへつらい 怠惰で あまのじゃく> 9 00:00:32,100 --> 00:00:35,002 <もし彼と出会わなければ きっと わたしの魂は➡ 10 00:00:35,002 --> 00:00:37,004 もっと 清らかだったであろう> 11 00:00:40,007 --> 00:00:42,009 (私)なぜ お前は 合鍵を持っているのだ? 12 00:00:42,009 --> 00:00:46,013 わたしは 城ヶ崎さんにも 信頼を おかれていますからね。 13 00:00:46,013 --> 00:00:47,614 極悪人め。 14 00:00:49,349 --> 00:00:51,018 (小津)ああ 物を動かしたら➡ 15 00:00:51,018 --> 00:00:54,021 びっちり 元の場所に 戻してくださいね。➡ 16 00:00:54,021 --> 00:00:57,024 あの人 かなりの潔癖症らしいですよ。 17 00:00:57,024 --> 00:00:59,026 潔癖症? (小津)ええ。➡ 18 00:00:59,026 --> 00:01:00,961 だから 生身の人間じゃなく➡ 19 00:01:00,961 --> 00:01:02,963 ああいう人を 彼女にしちゃうんですね。 20 00:01:02,963 --> 00:01:04,965 どういうことだ? 21 00:01:04,965 --> 00:01:06,967 (小津)こっちです。 あなたのような➡ 22 00:01:06,967 --> 00:01:09,970 エロで頭がいっぱいの野人には 分からないでしょうが➡ 23 00:01:09,970 --> 00:01:12,973 非常に 高尚な愛の形です。 24 00:01:15,976 --> 00:01:18,979 うわっ! こっ… これは…。 25 00:01:18,979 --> 00:01:28,989 ♬~ 26 00:02:57,010 --> 00:02:59,012 <当時 ピカピカの大学1回生であった わたしの目の前には➡ 27 00:02:59,012 --> 00:03:00,947 個人の情報量を はるかに凌駕する➡ 28 00:03:00,947 --> 00:03:02,949 無数のサークルのチラシが 差し出され そのどれもが➡ 29 00:03:02,949 --> 00:03:04,951 「ばら色のキャンパスライフ」への 扉のように見えた> 30 00:03:04,951 --> 00:03:06,953 <そして わたしが選び取ったのは…> 31 00:03:08,955 --> 00:03:11,958 <そこには確かに 光り輝く 純金製の未来があった> 32 00:03:11,958 --> 00:03:14,961 <黒髪の乙女たちが 銀幕に舞う 恋のニューシネマ パラダイス> 33 00:03:18,965 --> 00:03:21,968 <「みんなで楽しく 映画 作ってるよ」という➡ 34 00:03:21,968 --> 00:03:23,970 甘い言葉に惑わされ 友達100人 作るべく➡ 35 00:03:23,970 --> 00:03:25,972 その日のうちに 入会を決めてしまった わたしは➡ 36 00:03:25,972 --> 00:03:28,975 手の施しようのない アホだった> 37 00:03:32,979 --> 00:03:35,982 <そして その日 入会した 映画サークル「MISOGI」では➡ 38 00:03:35,982 --> 00:03:37,984 会長である城ヶ崎先輩の下に➡ 39 00:03:37,984 --> 00:03:39,986 いまいましい独裁体制が 敷かれていたのだ> 40 00:03:44,991 --> 00:03:47,994 (助監督)テイク12。 よーい スタート! 41 00:03:49,996 --> 00:03:52,999 (城ヶ崎)「いくぞ マーズ!」 「来い!」 42 00:03:52,999 --> 00:03:55,001 (城ヶ崎)「ホー アチョー!」 43 00:03:55,001 --> 00:03:57,003 うわー! (一同)げっ! 44 00:04:00,941 --> 00:04:02,943 カット! 45 00:04:04,945 --> 00:04:07,948 う~ん…。 いまいち決まらんなぁ。 46 00:04:07,948 --> 00:04:10,951 すまん。 休憩の後 もう1テイク やらせてくれ。 47 00:04:10,951 --> 00:04:12,953 (一同)はい。 48 00:04:12,953 --> 00:04:15,956 くそ… やってられっか。 49 00:04:15,956 --> 00:04:18,959 ん? (女性たち)キャー 変態! 50 00:04:18,959 --> 00:04:22,963 あっ…。 あっ 待って! ああ ちょっと。 51 00:04:22,963 --> 00:04:24,965 (ため息) 52 00:04:24,965 --> 00:04:26,967 <意味不明な 城ヶ崎先輩の演出の下➡ 53 00:04:26,967 --> 00:04:29,970 いら立っていた わたしの傍らに ひどく縁起の悪そうな顔をした➡ 54 00:04:29,970 --> 00:04:31,972 不気味な男が立っていた> 55 00:04:31,972 --> 00:04:33,974 こ… これは 月の裏側の住人か? 56 00:04:33,974 --> 00:04:36,977 はたまた E.T.か? 57 00:04:36,977 --> 00:04:38,979 あなた ひどいことおっしゃる。➡ 58 00:04:38,979 --> 00:04:42,983 ご安心ください。 僕は あなたの同志ですよ。 59 00:04:42,983 --> 00:04:44,985 <これが 小津との ファーストコンタクトであり➡ 60 00:04:44,985 --> 00:04:46,987 ワーストコンタクトでもあった> 61 00:04:51,992 --> 00:04:54,995 (セミの鳴き声) 62 00:04:54,995 --> 00:04:57,998 しょせん やつは 映画のハウツー本の受け売りです。 63 00:04:57,998 --> 00:05:00,934 ゴダールだの トリュフォーだの 言ってますが➡ 64 00:05:00,934 --> 00:05:03,937 ホントは オールタイムベストが 『タイタニック』なやつです。 65 00:05:03,937 --> 00:05:05,939 頭の中に 乳しかない男が➡ 66 00:05:05,939 --> 00:05:08,942 サークルを仕切ってるのは 危険ですよ。 67 00:05:08,942 --> 00:05:11,945 映画は 断じて 商業主義に 毒されては ならない! 68 00:05:11,945 --> 00:05:15,949 あなたの手で 映画サークルの あるべき姿を見せるのです! 69 00:05:19,953 --> 00:05:22,956 <わたしは 城ヶ崎先輩たちに 反逆の のろしを上げるべく➡ 70 00:05:22,956 --> 00:05:24,958 独自に 映画を 撮り始めることにした> 71 00:05:26,960 --> 00:05:29,963 <まず 1作目は 太平洋戦争から続く➡ 72 00:05:29,963 --> 00:05:31,965 由緒ある いたずら合戦を 引き継いだ 2人の男が➡ 73 00:05:31,965 --> 00:05:33,967 知力と体力の 限りを尽くして戦う➡ 74 00:05:33,967 --> 00:05:36,970 バイオレンスあふれる映画であったが 当然のごとく無視され➡ 75 00:05:36,970 --> 00:05:39,973 上映会で笑ったのは 明石さんだけであった> 76 00:05:39,973 --> 00:05:41,975 <2作目は 『リア王』を下敷きとして➡ 77 00:05:41,975 --> 00:05:45,979 3人の女性の間を揺れ動く 男の心情を描いた作品であったが➡ 78 00:05:45,979 --> 00:05:47,981 女性陣からは 罵詈雑言の嵐に遭った> 79 00:05:47,981 --> 00:05:49,649 (明石)フフッ。 80 00:05:49,649 --> 00:05:51,985 <そして 3作目は 四畳半が どこまでも続く迷路に➡ 81 00:05:51,985 --> 00:05:54,988 閉じ込められた男が そこから 脱出するという映画であったが➡ 82 00:05:54,988 --> 00:05:56,990 「どこかで見た設定だ」と言われ 終わった> 83 00:05:56,990 --> 00:06:00,927 <ましなコメントをくれたのは 明石さんだけであった> 84 00:06:00,927 --> 00:06:02,929 <奇怪なのは われわれが 努力すれば するほど➡ 85 00:06:02,929 --> 00:06:04,931 城ヶ崎先輩のカリスマぶりが➡ 86 00:06:04,931 --> 00:06:08,935 上がっていくように思われて ならないことであった> 87 00:06:08,935 --> 00:06:11,938 次の作品は ずばり 「アレキサンダー大王」! 88 00:06:11,938 --> 00:06:16,943 わたしの集大成と言うべき 超一級のエンターテインメントとなるだろう。 89 00:06:16,943 --> 00:06:18,945 みんな ついてきてくれるな? 90 00:06:18,945 --> 00:06:21,948 (一同)はい! アブリューション! 91 00:06:21,948 --> 00:06:24,951 <今にして思えば われわれは 先輩のカリスマぶりを持ち上げる➡ 92 00:06:24,951 --> 00:06:26,953 てこの支点として 利用されていたのである> 93 00:06:26,953 --> 00:06:28,955 <城ヶ崎先輩に負けじと われわれも➡ 94 00:06:28,955 --> 00:06:30,957 撮影中の 新作恋愛映画を 発表しようとしたが➡ 95 00:06:30,957 --> 00:06:32,959 先輩連中は こぞって反対> 96 00:06:32,959 --> 00:06:35,962 <敵の先鋒 相島先輩は 城ヶ崎先輩の右腕であり➡ 97 00:06:35,962 --> 00:06:38,965 しつこく われわれを いじめた人物でもある> 98 00:06:38,965 --> 00:06:40,967 <上映スケジュールを ごまかすという アクロバティックな手法で➡ 99 00:06:40,967 --> 00:06:43,970 われわれを会場から締め出し 電源を落とす 鍵を隠すなどの➡ 100 00:06:43,970 --> 00:06:45,972 せこい手を使われ 編集機材を借りるのに➡ 101 00:06:45,972 --> 00:06:47,974 土下座に近い屈辱を なめたこともある> 102 00:06:47,974 --> 00:06:49,976 <結局 わたしは 誰からも相手にされず➡ 103 00:06:49,976 --> 00:06:52,979 ついに上映会から 締め出しを食ってしまった> 104 00:07:04,925 --> 00:07:06,926 なぜ あれが あれほど歓迎され➡ 105 00:07:06,926 --> 00:07:09,930 われわれは かくのごとき状況に 甘んじなければならぬのだ! 106 00:07:09,930 --> 00:07:12,933 まあまあ 大衆は保守的なんです。 107 00:07:12,933 --> 00:07:15,935 しかし 真の映画ならば いつか認められます。 108 00:07:15,935 --> 00:07:18,938 いつの話だ!? 即時 承認を求める! 109 00:07:18,938 --> 00:07:20,940 あなた わがままな人ですね。 110 00:07:20,940 --> 00:07:23,943 あれだけ やりたい放題やっておいて➡ 111 00:07:23,943 --> 00:07:25,945 何で そんな 不景気そうな顔なんですか? 112 00:07:25,945 --> 00:07:27,947 うるさい! 113 00:07:27,947 --> 00:07:30,950 お前のせいで 有意義な学生生活が 台無しになってしまった! 114 00:07:30,950 --> 00:07:33,954 あらら それは お互いさまじゃありませんか。 115 00:07:33,954 --> 00:07:35,955 どうせ あなたは どんな道を選んだって➡ 116 00:07:35,955 --> 00:07:38,959 今みたいな ありさまに なっちまうんだ。 117 00:07:38,959 --> 00:07:40,560 ん? 118 00:07:42,295 --> 00:07:45,966 俺たち 前にも こんな言い合いしてなかったか? 119 00:07:45,966 --> 00:07:49,969 してるわけないでしょ。 デジャビュですよ デジャビュ。 120 00:07:49,969 --> 00:07:51,971 そうか。 いずれにしても➡ 121 00:07:51,971 --> 00:07:55,976 僕は あなたに出会って 全力で あなたを駄目にします。 122 00:07:55,976 --> 00:07:58,978 お前は なぜ わたしに 付きまとうのだ。 123 00:07:58,978 --> 00:08:00,914 僕なりの愛ですよ。 124 00:08:00,914 --> 00:08:05,919 われわれは 運命の黒い糸で 結ばれているというわけです。 125 00:08:05,919 --> 00:08:09,923 それから これ。 城ヶ崎先輩の成績表です。 126 00:08:09,923 --> 00:08:12,926 あの人 表の顔では ああして強がってますけど➡ 127 00:08:12,926 --> 00:08:14,928 内情は もう ひどいもんですよ。 128 00:08:14,928 --> 00:08:19,933 8回生なのか。 それに 恐ろしいほどの低空飛行。 129 00:08:19,933 --> 00:08:22,936 なぜ お前は こんな物を持っているんだ? 130 00:08:22,936 --> 00:08:25,939 わたしの情報網を 見くびらないでください。 131 00:08:25,939 --> 00:08:27,941 しかも そんな現実から逃れるために➡ 132 00:08:27,941 --> 00:08:30,944 彼は ますます 女子部員の乳に 心を奪われています。 133 00:08:30,944 --> 00:08:33,947 今回の 破廉恥水着オーディションも そのためですよ。 134 00:08:33,947 --> 00:08:36,950 (生つばを飲む音) 水着で撮るのか? 135 00:08:36,950 --> 00:08:39,953 いいえ 本編では 露出なんかありません。 136 00:08:39,953 --> 00:08:41,955 だからこそ 破廉恥 極まりないんです。 137 00:08:41,955 --> 00:08:44,958 ちなみに これが そのときの採点表。 138 00:08:44,958 --> 00:08:47,961 おっぱいの形 向き サイズ 距離を表にしているんです。 139 00:08:47,961 --> 00:08:50,964 まったく とんだ 公私混同ですよ。 140 00:08:52,966 --> 00:08:54,968 はい 次。 141 00:08:54,968 --> 00:08:58,972 フフフッ。 はい 次。 142 00:08:58,972 --> 00:09:01,908 それでは ただの おっぱい独裁者ではないか! 143 00:09:01,908 --> 00:09:05,912 そうですよ。 要するに やつは 単なる おっぱいジャンキー。 144 00:09:05,912 --> 00:09:08,915 おっぱいドランカーなんですよ。 145 00:09:08,915 --> 00:09:12,919 小津! わたしに 1つの考えがある。 146 00:09:12,919 --> 00:09:16,923 協力してくれるか? どうしたんです? 147 00:09:16,923 --> 00:09:18,925 どうせ わたしは いずれ サークルを去ることになる。 148 00:09:18,925 --> 00:09:22,929 ならば どうしても 最後に 城ヶ崎に 天誅を下したい! 149 00:09:22,929 --> 00:09:25,932 あらら 穏やかじゃないですね~。 150 00:09:25,932 --> 00:09:30,937 分かりました。 どこまでも ついていきますよ 監督。 151 00:09:36,943 --> 00:09:39,946 <それは 義憤に駆られた やむに やまれぬ行動であった> 152 00:09:39,946 --> 00:09:42,949 <冷や水を浴びせる人間が 今こそ 求められている> 153 00:09:42,949 --> 00:09:44,617 <ありていに言えば わたしは➡ 154 00:09:44,617 --> 00:09:48,021 城ヶ崎先輩の告発ドキュメンタリーを 撮ることにした> 155 00:09:53,960 --> 00:09:55,962 <わたしは 城ヶ崎先輩の ちっちゃなカリスマぶりに魅了された➡ 156 00:09:55,962 --> 00:09:57,964 下級生たちを救済すべく 恐ろしく 損な役回りを➡ 157 00:09:57,964 --> 00:10:00,967 進んで 買って出ることにした> 158 00:10:00,967 --> 00:10:04,971 (小津)どうですか? 師匠。 (樋口)さて。 159 00:10:04,971 --> 00:10:06,973 まだ 手ぬるいんですね。 160 00:10:06,973 --> 00:10:08,975 <アドバイザーとして 小津が連れてきたのは➡ 161 00:10:08,975 --> 00:10:10,977 城ヶ崎先輩を 古くから知る人物のようで➡ 162 00:10:10,977 --> 00:10:13,980 小津が 策謀の限りを尽くして 城ヶ崎先輩を中傷する画面を➡ 163 00:10:13,980 --> 00:10:15,982 作り出せば 作り出すほど 面白がり➡ 164 00:10:15,982 --> 00:10:18,985 相当な 個人的 確執があると 見て取れた> 165 00:10:18,985 --> 00:10:20,987 <小津は 水を得た魚のごとく 生き生きし➡ 166 00:10:20,987 --> 00:10:22,989 改変され続けたフィルムは 事実をも 逸脱し➡ 167 00:10:22,989 --> 00:10:26,993 告発映画は 単なる 個人的 中傷映画となっていった> 168 00:10:26,993 --> 00:10:28,995 (小津)これは どうです? (樋口)どうだろう。 169 00:10:28,995 --> 00:10:31,998 (小津)これぐらい やっても いいんじゃないですか?➡ 170 00:10:31,998 --> 00:10:34,000 ドキュメントも しょせん 意図的なものですから。➡ 171 00:10:34,000 --> 00:10:37,003 師匠 ガンガンいきましょうね。 172 00:10:37,003 --> 00:10:41,007 いや~ どうやら これは エポックな作品になりますね。 173 00:10:41,007 --> 00:10:44,010 ちなみに これ クレジットは 監督が 1人で お願い…。 174 00:10:47,013 --> 00:10:49,015 監督? 175 00:10:54,020 --> 00:10:57,023 <編集室を出て 木屋町辺りを 当てもなく 歩いていると➡ 176 00:10:57,023 --> 00:10:59,025 民家の軒下から 怪しげな妖気を 垂れ流している老婆が➡ 177 00:10:59,025 --> 00:11:01,961 わたしを捉えた。 その えたいの知れない妖気には➡ 178 00:11:01,961 --> 00:11:03,963 説得力があり わたしは 論理的に考えた> 179 00:11:03,963 --> 00:11:05,965 <これだけの妖気を 無料で 垂れ流している人物の占いが➡ 180 00:11:05,965 --> 00:11:07,967 当たらないわけがないと> 181 00:11:07,967 --> 00:11:09,969 (老婆) 何を お聞きになりたいんじゃ? 182 00:11:09,969 --> 00:11:13,973 あなたの顔は 大変 もどかしいという顔。 不満ですね。 183 00:11:13,973 --> 00:11:15,975 どうも 今の環境が➡ 184 00:11:15,975 --> 00:11:17,977 あなたに ふさわしくないと お感じのようです。 185 00:11:17,977 --> 00:11:20,980 あなたは 大変 まじめで 才能も おありのようじゃし。 186 00:11:20,980 --> 00:11:23,983 <老婆の慧眼に わたしは 早くも脱帽した> 187 00:11:23,983 --> 00:11:26,986 とにかく 好機を逃さないことが 肝心じゃ。 188 00:11:26,986 --> 00:11:28,988 好機? 好機というのは➡ 189 00:11:28,988 --> 00:11:31,991 良い機会ということじゃ。 それは 分かってます。 190 00:11:31,991 --> 00:11:34,994 好機は いつでも あなたの 目の前に ぶら下がってございます。 191 00:11:34,994 --> 00:11:38,998 あなたは その好機を捉えて 行動に出なくちゃいけません。 192 00:11:38,998 --> 00:11:42,001 う~ん 何か それ 前にも聞いた気が…。 193 00:11:42,001 --> 00:11:44,003 さもないと! 194 00:11:44,003 --> 00:11:48,007 あなたは また 今と変わらぬ 人生を歩むことじゃろう。 195 00:11:48,007 --> 00:11:52,011 はい 2,000円。 値上がりしてませんか? 196 00:11:55,014 --> 00:11:58,017 ⚟(城ヶ崎) 客を一番に考えてるのは 何だ? 197 00:11:58,017 --> 00:11:59,953 んっ? (城ヶ崎)たくさんの お客さんと➡ 198 00:11:59,953 --> 00:12:02,956 感動を分かち合うための エチケット。 199 00:12:02,956 --> 00:12:04,958 城ヶ崎。 200 00:12:04,958 --> 00:12:07,961 結局 ハリウッドシステムが 一番いいということだ。 201 00:12:07,961 --> 00:12:12,966 んっ? おう! どうも。 202 00:12:12,966 --> 00:12:14,968 (城ヶ崎)どうした? ぼちぼちです。 203 00:12:14,968 --> 00:12:17,971 (城ヶ崎)企画が通らなかったのは しょうがないと思うぜ。➡ 204 00:12:17,971 --> 00:12:19,973 映画は みんなが見るものだ。➡ 205 00:12:19,973 --> 00:12:22,976 好きで 訳の分からないものを 作るのは 構わんが➡ 206 00:12:22,976 --> 00:12:26,980 観客に見せたいのなら 最低のエチケットは 守れ。➡ 207 00:12:26,980 --> 00:12:30,984 観客の大事な時間を奪った上に マスターベーションまで見せられるのは➡ 208 00:12:30,984 --> 00:12:34,988 かなわんからな。 まっ 頑張れ 兄弟。 209 00:12:34,988 --> 00:12:37,991 (女性)分かってないみたい。 (女性)やだ 怖い。 210 00:12:37,991 --> 00:12:40,994 んっ。 あっ いた。 211 00:12:40,994 --> 00:12:44,998 監督 捜しましたよ。 212 00:12:44,998 --> 00:12:48,001 ぐわっ! ⚟おー! 213 00:12:48,001 --> 00:12:51,004 <そうして わたしは 城ヶ崎先輩の中傷映画作りに➡ 214 00:12:51,004 --> 00:12:54,007 まい進する決意をした。 足元には かつて 城ヶ崎先輩が 量産した➡ 215 00:12:54,007 --> 00:12:59,012 自主製作映画と同じぐらい 底の浅い 高瀬川が流れていた> 216 00:13:02,949 --> 00:13:06,953 <その後 わたしは 編集室に戻り 3日間 寝ずに編集作業をした後➡ 217 00:13:06,953 --> 00:13:09,956 4日目の朝 ついに わたしの 2年間の集大成とも言うべき…> 218 00:13:09,956 --> 00:13:12,959 よし! <不毛なドキュメンタリーが 完成した> 219 00:13:14,961 --> 00:13:16,963 (部員)上映会やりますんで よろしく お願いします。 220 00:13:16,963 --> 00:13:19,966 (小津)上映前のスタッフ紹介の時間が チャンスです。 221 00:13:19,966 --> 00:13:22,969 そのすきに 映写機へ。 任せとけ! 222 00:13:22,969 --> 00:13:28,975 (拍手) 223 00:13:28,975 --> 00:13:30,643 (城ヶ崎)えー この映画は➡ 224 00:13:30,643 --> 00:13:33,980 われわれ MISOGIが 総力を結集して作ったもので➡ 225 00:13:33,980 --> 00:13:36,983 ここには われわれの全てが 詰まっている。 226 00:13:36,983 --> 00:13:41,988 これから 皆さんに それを ご覧いただこうと思います。 227 00:13:41,988 --> 00:13:43,990 その前に わが スタッフを紹介します。 228 00:13:43,990 --> 00:13:47,994 今回 録音で協力してくれた 小津君です。 229 00:13:47,994 --> 00:13:50,997 (拍手) 230 00:13:50,997 --> 00:13:53,100 チッ。 あの 八方美人めが。 231 00:13:53,100 --> 00:13:59,005 えー 続きまして 3Dや ビジュアルエフェクト担当の明石さん。 232 00:13:59,005 --> 00:14:00,940 明石さん? 233 00:14:00,940 --> 00:14:03,943 (拍手) 234 00:14:03,943 --> 00:14:05,945 明石さん!? 235 00:14:07,947 --> 00:14:09,949 <明石さんと 出会ったのは➡ 236 00:14:09,949 --> 00:14:12,952 去年の夏 吉田山での 城ヶ崎先輩のロケであった> 237 00:14:12,952 --> 00:14:14,954 <彼女は 1つ下の学年で 工学部に属しており➡ 238 00:14:14,954 --> 00:14:17,957 その技術力を買われ スタッフとして雇われていた> 239 00:14:17,957 --> 00:14:19,959 <万事 手回しが良く 機材の扱いも そつない彼女は➡ 240 00:14:19,959 --> 00:14:22,962 スタッフの信頼を集めていたが 歯に衣 着せぬ 物言いで➡ 241 00:14:22,962 --> 00:14:24,964 同回生からは 敬遠されていたようである> 242 00:14:24,964 --> 00:14:27,967 <舌鋒の鋭さにかけては 城ヶ崎先輩に 引けを取らず➡ 243 00:14:27,967 --> 00:14:29,969 先輩は そのカリスマぶりに 傷が 付くのを恐れて➡ 244 00:14:29,969 --> 00:14:32,972 彼女の冷ややかで 理知的な顔と 乳には 興味はあるものの➡ 245 00:14:32,972 --> 00:14:35,975 おいそれと 言葉を掛けられないでいた> 246 00:14:35,975 --> 00:14:37,977 (男性)明石さんって 色 白いんだね。 247 00:14:39,979 --> 00:14:41,981 (明石)わたしの肌の どこが 白いんですか? 248 00:14:41,981 --> 00:14:43,983 肌の白い方は ほかにも いっぱい いますし➡ 249 00:14:43,983 --> 00:14:46,986 何を基準に言ってるんですか? 250 00:14:46,986 --> 00:14:49,989 <きっぱりとした否定と詰問に それ以降 彼女に話し掛ける男は➡ 251 00:14:49,989 --> 00:14:52,992 いなくなった。 わたしは 「明石さん そのまま 君の道を➡ 252 00:14:52,992 --> 00:14:55,995 ひた走れ!」と 心の中で 熱いエールを送った> 253 00:14:57,997 --> 00:15:00,933 (明石) また アホなもの作りましたね。 254 00:15:00,933 --> 00:15:04,937 ろくでもない映画を 見てもらって すまんね。 255 00:15:04,937 --> 00:15:06,939 確かに ろくでもなかったですけど➡ 256 00:15:06,939 --> 00:15:08,941 わたしは 嫌いじゃありませんでした。 257 00:15:12,945 --> 00:15:15,948 (城ヶ崎)えー これより 上映を開始いたします。 258 00:15:15,948 --> 00:15:18,951 最後まで ごゆっくり 楽しんでください。 259 00:15:20,953 --> 00:15:28,961 ♬~ 260 00:15:28,961 --> 00:15:30,963 おい やっぱり やめにしないか? 261 00:15:30,963 --> 00:15:33,966 明石さんも 参加してたんじゃ 忍びない。 262 00:15:33,966 --> 00:15:35,968 何を 言っているんです? 263 00:15:35,968 --> 00:15:37,970 映画人としての誇りは どうしました? 264 00:15:37,970 --> 00:15:40,973 というか お前も 向こうのクルーじゃないか! 265 00:15:40,973 --> 00:15:43,976 シッ! そろそろですよ。 266 00:15:43,976 --> 00:15:46,979 (相島)「楽しんでるか? アレキサンダー」 267 00:15:46,979 --> 00:15:50,983 (城ヶ崎)「酒では 晴れんよ プトレマイオス」➡ 268 00:15:50,983 --> 00:15:52,985 「はい OK!」 269 00:15:52,985 --> 00:15:54,654 (スタッフ)「お疲れさまでした!」 270 00:15:54,654 --> 00:15:56,989 (城ヶ崎)「いやー 俺って やっぱ 天才だわ!」➡ 271 00:15:56,989 --> 00:15:58,991 「マイク オフって」 272 00:15:58,991 --> 00:16:00,993 (城ヶ崎)んっ? 273 00:16:03,930 --> 00:16:06,933 (観客)あれ? これ オンなの 気が付いてないの? 274 00:16:06,933 --> 00:16:11,938 (観客)カメラ ついてるぜ。 (女性たち)キャーッ!! 275 00:16:11,938 --> 00:16:13,940 (女性)「キャッ!」 (女性たち)「ハハハッ…」 276 00:16:13,940 --> 00:16:15,942 (城ヶ崎)「だ… 大丈夫?」 277 00:16:18,945 --> 00:16:21,948 (女性)ええっ!? (女性)「これ もらってください!」 278 00:16:21,948 --> 00:16:23,950 (城ヶ崎)「あ… どうも」 (女性)「うわーっ!!」 279 00:16:27,954 --> 00:16:29,956 (城ヶ崎)「ガルルーッ」 280 00:16:31,958 --> 00:16:33,960 (女性)何これ? (女性)先輩の? 281 00:16:33,960 --> 00:16:36,963 (城ヶ崎)「どうすんだよ 米を買う お金も 無いんだよ ママ~」 282 00:16:36,963 --> 00:16:39,966 (城ヶ崎)こっ… これは? (女性)えっ!? 283 00:16:39,966 --> 00:16:42,969 (女性)ゲッ…。 (女性たち)嘘~っ! 何これ? 284 00:16:42,969 --> 00:16:44,971 (女性)なななな…。 (観客)城ヶ崎じゃねえのか? 285 00:16:44,971 --> 00:16:46,973 (女性)まさか 壁に おっぱい? 286 00:16:49,976 --> 00:16:51,978 (観客)これって ノンフィクション? 287 00:16:51,978 --> 00:16:54,981 (観客)…にしたら すごいよ。 (女性)嘘よ 嘘よ こんなの! 288 00:16:54,981 --> 00:16:57,984 (女性)どーってことないわよ! 289 00:16:57,984 --> 00:17:00,920 (城ヶ崎)おい! 上映をやめろ! (観客)やめるな! 290 00:17:00,920 --> 00:17:03,923 止めろってば 止めろ! (城ヶ崎)「ただいま 香織」 291 00:17:05,925 --> 00:17:09,929 (女性たちの悲鳴) (城ヶ崎)やめろ! そこは やめろ。 292 00:17:11,931 --> 00:17:13,933 (女性)やめてー! 293 00:17:13,933 --> 00:17:15,935 (城ヶ崎)「香織さん 今日も 奇麗だよ」➡ 294 00:17:15,935 --> 00:17:18,938 「そろそろ寝る? 着替えようか?」 295 00:17:25,945 --> 00:17:28,948 どこだあー! いぶしだせ! (一同)はい! 296 00:17:30,950 --> 00:17:33,953 あっ! お前 逃げ足 速いなあ。 297 00:17:33,953 --> 00:17:35,955 だって 面倒くさいの嫌ですもん。 298 00:17:35,955 --> 00:17:38,958 俺に 付き合って 辞める必要はないぞ。 299 00:17:38,958 --> 00:17:42,962 あんなことさせといて よく そんなことが言えますねぇ。 300 00:17:42,962 --> 00:17:47,967 あっ 誰か来た! まっ… 待って! あっ。 301 00:17:47,967 --> 00:17:49,969 あぁっ! あっ 明石さん…。 302 00:17:49,969 --> 00:17:51,971 (明石)また アホなものを 作りましたね。 303 00:17:51,971 --> 00:17:54,974 上映… 止められてなかった? 304 00:17:54,974 --> 00:17:57,977 観客が 面白がってますから。 305 00:17:57,977 --> 00:18:00,913 けど 城ヶ崎さんたちは 先輩を 捜しています。 306 00:18:00,913 --> 00:18:02,915 もうすぐ ここへ来るでしょう。 307 00:18:02,915 --> 00:18:05,918 うん… 分かった。 観客が 笑ってるなら まあ よかろう。 308 00:18:05,918 --> 00:18:07,920 それが あいつの言う エンターテインメントだ。 309 00:18:07,920 --> 00:18:09,922 わたしは これまでの方が好きでした。 310 00:18:09,922 --> 00:18:12,925 今度のは 品性を疑います。 311 00:18:12,925 --> 00:18:15,928 いいんだ。 今回は 作り逃げだ。 312 00:18:15,928 --> 00:18:19,932 先輩は アホです。 そのとおりだ。 313 00:18:19,932 --> 00:18:22,935 まだ 先輩は 約束も果たしていません。 314 00:18:22,935 --> 00:18:24,937 約束? ⚟(足音) 315 00:18:24,937 --> 00:18:26,939 うっ! いいです。 316 00:18:26,939 --> 00:18:28,941 ほら 早く逃げてください。 317 00:18:28,941 --> 00:18:32,945 うむ。 それでは 明石さんよ さらばじゃ! 318 00:18:32,945 --> 00:18:34,947 城ヶ崎マジックに だまされちゃいかんぞー。 319 00:18:34,947 --> 00:18:37,950 そんな ボケナスに見えますか? わたしが。 320 00:18:44,957 --> 00:18:46,959 <こうして わたしは 2年間 不毛な苦闘に➡ 321 00:18:46,959 --> 00:18:49,962 挑んでいた空間を 後にした> 322 00:18:58,971 --> 00:19:00,906 これは? 323 00:19:00,906 --> 00:19:02,908 <下宿に戻ると 先日 小津にもらったカステラが➡ 324 00:19:02,908 --> 00:19:05,911 何者かによって 食い散らかされていた> 325 00:19:07,913 --> 00:19:10,916 <何だか 疲れた。 理性がまるで この カステラのように➡ 326 00:19:10,916 --> 00:19:13,919 ボロボロ 崩れていくかに思えた> 327 00:19:22,928 --> 00:19:26,932 次の映画は思い切って 純愛映画をやろうと思う。 328 00:19:26,932 --> 00:19:28,934 純愛映画…。 329 00:19:28,934 --> 00:19:30,936 運命に結ばれた2人が➡ 330 00:19:30,936 --> 00:19:33,939 立場 年齢 性別を超えて 結ばれる ラブロマンスだ。 331 00:19:33,939 --> 00:19:37,943 それはまた 変なものに なりそうですね。 332 00:19:37,943 --> 00:19:41,947 ぎょええー! ひっひっひぃー…。 333 00:19:41,947 --> 00:19:45,951 放せ! 放すんだ 明石さん。 ヒッヒッハァー…。 334 00:19:45,951 --> 00:19:47,953 むにゅっとしてました。 むにゅっと。 335 00:19:47,953 --> 00:19:49,955 まま 落ち着きたまえ。 はあ…。 336 00:19:53,959 --> 00:19:56,962 はぁ…。 337 00:19:56,962 --> 00:19:59,965 すみません。 ガは 苦手なんです。 338 00:19:59,965 --> 00:20:01,967 これは モチグマンといって 5匹で 一揃いなのですが➡ 339 00:20:01,967 --> 00:20:03,969 1匹 なくしてしまって。 340 00:20:03,969 --> 00:20:06,972 心配するな。 どうせ 地球は丸いのだ。 341 00:20:06,972 --> 00:20:09,975 いつかまた会える。 何なら わたしが 捜してあげてもいい。 342 00:20:09,975 --> 00:20:13,979 それより さっきの映画を 実現させてください。 343 00:20:13,979 --> 00:20:16,982 ああ。 約束ですよ。 344 00:20:20,986 --> 00:20:23,989 約束って そうか…。 345 00:20:23,989 --> 00:20:25,991 《好機は いつでも あなたの目の前に➡ 346 00:20:25,991 --> 00:20:27,993 ぶら下がってございます》 347 00:20:27,993 --> 00:20:29,995 《わたしは 嫌いじゃなかったですけど》 348 00:20:31,997 --> 00:20:33,999 <「夢を見るのも たいがいにしろ」 そう わたしは➡ 349 00:20:33,999 --> 00:20:36,001 自分に言い聞かせた。 あんな 身勝手な映画を➡ 350 00:20:36,001 --> 00:20:39,004 理解してくれる女性を わたしは 理解する自信がない> 351 00:20:39,004 --> 00:20:42,007 <わたしは 完成しなかった最新の フィルムを見てみることにした> 352 00:20:48,013 --> 00:20:51,016 <あの運命の時計台で 映画サークル 「MISOGI」を選んだことへの➡ 353 00:20:51,016 --> 00:20:53,018 後悔の念は 振り払えない。 もし あのとき➡ 354 00:20:53,018 --> 00:20:55,020 例えば 鳥人サークル 「バードマン」に入っていたら➡ 355 00:20:55,020 --> 00:20:58,023 わたしは もっと別の 2年間を送っていたであろう> 356 00:20:59,959 --> 00:21:02,962 「お前は いつも わたしに 付きまとってくれるね」 357 00:21:02,962 --> 00:21:05,965 「これが わたしなりの愛ですわ」 358 00:21:10,970 --> 00:21:12,972 そんなもん いらんわい! 359 00:21:24,984 --> 00:21:34,994 ♬~