1 00:00:11,594 --> 00:00:12,303 (ミルヴァートン)あれは… 2 00:00:13,722 --> 00:00:17,475 あいつの名は 確か… ウィリアム・ ジェームズ・モリアーティ 3 00:00:18,018 --> 00:00:21,980 モリアーティ伯爵家の次男 若き天才数学者 4 00:00:23,231 --> 00:00:27,402 なるほど… あの男が 競合相手だったというわけか 5 00:00:28,445 --> 00:00:31,823 では 早急に あの男について調べ尽くし 6 00:00:31,948 --> 00:00:33,533 リストに加えるとしよう 7 00:00:34,743 --> 00:00:35,493 そう… 8 00:00:37,203 --> 00:00:41,124 このチャールズ・オーガスタス・ ミルヴァートンのリストにな 9 00:00:42,542 --> 00:00:44,502 ♪~ 10 00:02:09,921 --> 00:02:11,881 ~♪ 11 00:02:14,759 --> 00:02:15,885 (ウィリアム) じゃあ 今度は 12 00:02:16,511 --> 00:02:19,931 この枠の中には ある数字が入るんだけど 13 00:02:20,056 --> 00:02:21,432 何か分かるかい? 14 00:02:21,975 --> 00:02:23,143 (少年A)え~? 15 00:02:23,268 --> 00:02:25,728 (少年B) 12個のものと20個のものが 16 00:02:25,854 --> 00:02:28,523 同じ数字になんてならないよ? 17 00:02:29,482 --> 00:02:32,110 (ウィリアム) ちょっと意地悪な問題だったかな 18 00:02:32,235 --> 00:02:33,361 正解は… 19 00:02:35,864 --> 00:02:37,824 えっ なんで1なの? 20 00:02:37,949 --> 00:02:39,951 (ウィリアム) これは お金の単位だよ 21 00:02:41,327 --> 00:02:43,496 12ペンスは1シリング 22 00:02:43,621 --> 00:02:45,623 20シリングは1ポンド 23 00:02:46,166 --> 00:02:49,252 だから 1ポンドは240ペンスとなる 24 00:02:50,336 --> 00:02:52,714 そうだね… パンにすると 25 00:02:53,256 --> 00:02:55,133 約240個分かな 26 00:02:55,258 --> 00:02:57,010 240個? 27 00:02:57,135 --> 00:02:58,553 すご~い! 28 00:02:59,179 --> 00:03:00,847 じゃあ 100ポンドなら… 29 00:03:00,972 --> 00:03:02,348 (少年A)う~んと… 30 00:03:02,473 --> 00:03:04,267 (少年たち)2万4000個だ! 31 00:03:04,392 --> 00:03:06,644 一生かかっても食べきれないや 32 00:03:06,769 --> 00:03:08,313 アハハハハ! 33 00:03:14,527 --> 00:03:15,403 (ルイス)ん? 34 00:03:16,279 --> 00:03:18,239 (少年B)また これっぽっちか… 35 00:03:18,781 --> 00:03:21,159 (ルイス) じゃあ 僕のを食べていいよ 36 00:03:21,284 --> 00:03:23,119 僕は もう おなかいっぱいだから 37 00:03:23,953 --> 00:03:25,079 (少年B)ありがとう! 38 00:03:31,753 --> 00:03:32,462 (ため息) 39 00:03:32,587 --> 00:03:34,339 (足音) (ウィリアム)マダム 40 00:03:35,840 --> 00:03:37,258 (マダム)あなたたち… 41 00:03:38,092 --> 00:03:40,220 どうしたの? こんな夜中に 42 00:03:40,929 --> 00:03:43,348 あなたがお困りではと思いまして 43 00:03:44,182 --> 00:03:47,560 もしや 誰かに 孤児院のお金をだまし取られた… 44 00:03:48,102 --> 00:03:49,103 違いますか? 45 00:03:49,646 --> 00:03:50,605 (マダム)あっ… 46 00:03:51,147 --> 00:03:52,899 どうして そのことを… 47 00:03:54,651 --> 00:03:56,819 この孤児院や救貧院が 48 00:03:56,945 --> 00:03:59,906 貴族の方々の寄付金で 成り立っているのは 49 00:04:00,031 --> 00:04:01,866 あなたたちも知っているわね? 50 00:04:02,951 --> 00:04:07,705 先月 バクスター子爵という 貴族様がいらっしゃって… 51 00:04:09,082 --> 00:04:10,500 (バクスター)お願いします 52 00:04:10,625 --> 00:04:15,088 孤児院を建てるために どうしても 300ポンド足りないのです 53 00:04:15,213 --> 00:04:18,591 なんでも 先日 多額の寄付を頂いたとか… 54 00:04:19,592 --> 00:04:21,928 私ではなく 孤児のために 55 00:04:22,053 --> 00:04:24,722 どうか そのお金を 貸していただけないでしょうか? 56 00:04:25,556 --> 00:04:29,102 孤児院を建てるのに最適な土地を やっと見つけたのですが 57 00:04:29,227 --> 00:04:31,020 今すぐ手付けを入れなければ 58 00:04:31,145 --> 00:04:33,815 ほかの者に 売ってしまうというのです 59 00:04:33,940 --> 00:04:35,483 でっ ですが… 60 00:04:36,985 --> 00:04:40,488 もし 万が一に 返せないようなことがあれば 61 00:04:40,613 --> 00:04:42,323 この身を差し出しましょう 62 00:04:43,866 --> 00:04:46,244 (マダム) 私個人の資産でもないから 63 00:04:46,369 --> 00:04:49,247 貸し出すのは そもそもダメなのを知りつつも 64 00:04:50,123 --> 00:04:52,375 借り受けの証文も頂いたし 65 00:04:52,500 --> 00:04:56,713 貴族様なら大丈夫だと思って つい… 66 00:04:58,798 --> 00:05:03,344 でも 約束の期日を過ぎても お金を返すそぶりもなく 67 00:05:03,469 --> 00:05:05,596 孤児院が建つ様子もないの 68 00:05:07,515 --> 00:05:11,144 (ウィリアム)その証文 僕に見せてくれませんか? 69 00:05:17,233 --> 00:05:18,609 (バクスター)う~ん 70 00:05:32,623 --> 00:05:33,374 ん? 71 00:05:33,499 --> 00:05:35,793 君たち どうしたのかな? 72 00:05:35,918 --> 00:05:37,587 ほら これで何か食べなさい 73 00:05:38,212 --> 00:05:41,049 (ウィリアム) 施しは結構です バクスターさん 74 00:05:41,716 --> 00:05:45,511 僕たちは 孤児院のマダムの代理で来ました 75 00:05:45,636 --> 00:05:48,264 お心当たりが おありですよね? 76 00:05:52,060 --> 00:05:55,646 (バクスター)マダムは お体の具合でも悪いのですか? 77 00:05:55,772 --> 00:05:58,441 (ルイス) 孤児院の仕事で手いっぱいでして 78 00:05:58,566 --> 00:05:59,400 (バクスター)なるほど 79 00:06:00,610 --> 00:06:04,405 用件は 私がお借りした 300ポンドですよね? 80 00:06:04,947 --> 00:06:08,826 残念ながら 孤児院の建設は進んでおらず 81 00:06:09,369 --> 00:06:11,829 運営する人も なかなか見つからなくて 82 00:06:11,954 --> 00:06:14,248 もろもろ 手が回っていないんです 83 00:06:15,083 --> 00:06:16,084 (ウィリアム)バクスターさん 84 00:06:16,209 --> 00:06:17,210 ん? 85 00:06:17,335 --> 00:06:19,545 (ウィリアム) 僕たちは 孤児院建設の進捗(しんちょく)を 86 00:06:19,670 --> 00:06:21,047 伺いに来たのではなく 87 00:06:21,172 --> 00:06:24,133 お貸ししたお金を 返してもらうために 88 00:06:24,258 --> 00:06:25,760 こうして参ったのです 89 00:06:25,885 --> 00:06:27,553 (バクスター)失礼しました 90 00:06:27,678 --> 00:06:31,015 来月になれば 貿易で儲(もう)けた お金が入ってきますので 91 00:06:31,682 --> 00:06:34,435 そうすれば すぐにでも お返しするつもりです 92 00:06:35,978 --> 00:06:37,605 (ウィリアム)そう言われましても 93 00:06:38,147 --> 00:06:40,858 実は こちらは 食事も ままならない状況で 94 00:06:41,734 --> 00:06:46,572 早急に返済していただかないと 孤児院が立ち行かないのですが… 95 00:06:47,240 --> 00:06:50,410 (バクスター)あのお金の重みは 重々承知しています 96 00:06:50,535 --> 00:06:53,538 しかし ないものは ないので… 97 00:06:55,498 --> 00:06:57,125 (ウィリアム)分かりました (バクスター)ん? 98 00:06:57,250 --> 00:07:01,087 (ウィリアム)では あなたが マダムから借りた300ポンドを 99 00:07:01,212 --> 00:07:03,214 僕が肩代わりしましょうか? 100 00:07:08,261 --> 00:07:09,137 あっ… 101 00:07:10,346 --> 00:07:12,223 (ウィリアム)300ポンドあります 102 00:07:13,224 --> 00:07:16,936 こんな大金 なぜ 君のような子供が? 103 00:07:17,478 --> 00:07:19,480 (ウィリアム) 大人たちから相談を受け 104 00:07:19,605 --> 00:07:22,150 その謝礼を 少しずつ貯(た)めたものです 105 00:07:22,692 --> 00:07:27,029 そして 昨今のあなたの事情を 考慮して… 106 00:07:29,615 --> 00:07:31,367 更に300ポンド 107 00:07:31,492 --> 00:07:34,203 僕が個人的に あなたにお貸しします 108 00:07:34,328 --> 00:07:37,540 これならば 建設も 一気に進むのでは? 109 00:07:38,958 --> 00:07:43,337 (バクスター)つまり… これで 孤児院からの負債は帳消しとなり 110 00:07:43,463 --> 00:07:46,424 君から 600ポンド借りる ということだね 111 00:07:47,091 --> 00:07:48,176 ありがとう! 112 00:07:48,301 --> 00:07:51,137 その申し出 ぜひとも受けさせてほしい 113 00:07:51,762 --> 00:07:54,515 契約は マダムと同じ条件で いいかな? 114 00:07:55,600 --> 00:07:56,476 はい 115 00:07:56,601 --> 00:07:59,145 一字一句 全く同じでかまいません 116 00:08:00,563 --> 00:08:03,483 返済期日は 来月の1日までで 117 00:08:03,608 --> 00:08:04,859 (バクスター)よし 決まりだ! 118 00:08:05,401 --> 00:08:08,279 すぐに公証人の所に 行こうじゃないか 119 00:08:10,990 --> 00:08:13,117 (ルイス) お貸しする600ポンドのうち 120 00:08:13,242 --> 00:08:17,413 マダムがお貸しした分を差し引いた 残りの300ポンドです 121 00:08:17,538 --> 00:08:22,001 来月1日までには 必ず返済できると思います 122 00:08:22,126 --> 00:08:23,419 (ウィリアム)分かりました 123 00:08:24,462 --> 00:08:27,798 マダムには 僕から 300ポンドを渡しておきますね 124 00:08:36,015 --> 00:08:38,059 (バクスター)フフフフ… 125 00:08:39,227 --> 00:08:42,063 アハハハハ! 126 00:08:43,064 --> 00:08:46,234 (バクスター)これで また 自由に遊べる金が出来た 127 00:08:47,610 --> 00:08:52,990 この世は 教養のない者から 全てを失うようになってるんだよ 128 00:08:53,908 --> 00:08:58,287 呪うなら 己の その境遇を呪うがいい 129 00:08:58,829 --> 00:08:59,789 (ルイス)ケホッ… 130 00:09:01,249 --> 00:09:02,124 兄さん 131 00:09:02,250 --> 00:09:06,462 あの男に 新たに300ポンドも貸して よかったんですか? 132 00:09:06,587 --> 00:09:07,171 (ウィリアム)ああ 133 00:09:07,713 --> 00:09:10,216 マダムと同じ条件で 貸し付けたからね 134 00:09:11,759 --> 00:09:13,678 最後の条文を読んでごらん 135 00:09:17,890 --> 00:09:21,143 (ルイス)“期日までに お金を返済できない場合” 136 00:09:21,269 --> 00:09:24,522 “貸主は 借主の体の好きな部分から” 137 00:09:24,647 --> 00:09:27,275 “肉1ポンドを 切り取ることができる” 138 00:09:27,817 --> 00:09:28,526 あっ… 139 00:09:29,360 --> 00:09:32,029 兄さん この契約って まさか… 140 00:09:32,905 --> 00:09:33,906 ああ 141 00:09:35,074 --> 00:09:38,953 ウィリアム・シェイクスピアの戯曲 「ヴェニスの商人」 142 00:09:39,495 --> 00:09:43,291 高利貸しのシャイロックが 貿易商のアントーニオと結んだ⸺ 143 00:09:43,416 --> 00:09:45,001 貸借契約と同じさ 144 00:09:46,419 --> 00:09:48,212 (ルイス)作中の裁判では 145 00:09:48,337 --> 00:09:50,881 シャイロックは 肉を切り取ることは かなわず 146 00:09:51,632 --> 00:09:54,719 貸し付けたお金すら 回収できなかったはずですが… 147 00:09:55,261 --> 00:09:57,888 (ウィリアム) いや そうはならないよ ルイス 148 00:09:58,514 --> 00:09:59,223 (ルイス)ん? 149 00:10:00,141 --> 00:10:02,393 僕たちで ひっくり返すのさ 150 00:10:03,477 --> 00:10:06,397 世界で一番有名な裁判を 151 00:10:19,535 --> 00:10:22,788 (裁判長)これより 原告と被告とで交わされた⸺ 152 00:10:22,913 --> 00:10:26,792 金銭貸借書の不履行に関わる 審理を始める 153 00:10:27,335 --> 00:10:31,464 なお この裁判は 規則に従い記録される 154 00:10:32,006 --> 00:10:37,178 当法廷での偽証は罰せられるため 注意して発言するように 155 00:10:37,887 --> 00:10:40,389 双方 よろしいかな? 156 00:10:42,224 --> 00:10:44,560 (裁判長) 訴状を読んだときは目を疑ったが 157 00:10:45,269 --> 00:10:48,522 驚いたな… 本当に子供じゃないか 158 00:10:49,398 --> 00:10:53,027 (裁判長) では 原告側の陳述から始めなさい 159 00:10:53,569 --> 00:10:54,111 (ウィリアム)はい 160 00:10:55,237 --> 00:10:58,407 原告である私は 訴状のとおり 161 00:10:58,532 --> 00:11:02,203 被告バクスター氏と交わした 証文に記された⸺ 162 00:11:02,328 --> 00:11:05,706 計600ポンドの返済を 直ちに求めます 163 00:11:05,831 --> 00:11:07,333 よろしい 164 00:11:07,458 --> 00:11:09,668 では 被告側の陳述を 165 00:11:10,711 --> 00:11:13,255 (弁護士)被告バクスター子爵は 166 00:11:13,381 --> 00:11:18,636 事前に提出させていただいている 資料のとおり 現保有資産はゼロ 167 00:11:19,512 --> 00:11:22,932 原告の要求どおり 直ちに返済することは 168 00:11:23,057 --> 00:11:25,184 不可能と言わざるをえません 169 00:11:25,726 --> 00:11:28,896 (ウィリアム) すみません 今の発言ですが 170 00:11:29,021 --> 00:11:32,274 被告の資産状況について 疑わしい点があります 171 00:11:32,817 --> 00:11:34,068 尋問の許可を 172 00:11:34,819 --> 00:11:35,820 (裁判長)認めよう 173 00:11:36,696 --> 00:11:40,658 資料によれば 現保有資産はないということですが 174 00:11:41,534 --> 00:11:43,285 バクスターさんは 現在 175 00:11:43,411 --> 00:11:46,205 高級住宅街の一角に 住まわれています 176 00:11:47,331 --> 00:11:50,876 ご自宅を売却なさるというお考えは ないのですか? 177 00:11:52,253 --> 00:11:55,005 (バクスター) 残念ながら それは できないのです 178 00:11:55,548 --> 00:11:56,757 (ウィリアム)なぜでしょうか? 179 00:11:56,882 --> 00:12:00,594 あの邸宅は 友人から借りているものでして 180 00:12:00,720 --> 00:12:02,721 私の所有物ではありません 181 00:12:03,848 --> 00:12:04,974 なるほど 182 00:12:05,099 --> 00:12:05,975 では 次に 183 00:12:06,892 --> 00:12:09,895 あなたは 貿易会社を経営されていますね 184 00:12:10,604 --> 00:12:14,900 その会社が保有している船舶や 会社自体を売却すれば 185 00:12:15,025 --> 00:12:16,944 返済可能ではないでしょうか? 186 00:12:18,028 --> 00:12:19,905 (バクスター) それも できないのです 187 00:12:20,531 --> 00:12:23,826 貿易会社自体は 書類上 存在するのですが 188 00:12:23,951 --> 00:12:25,161 建物はなく 189 00:12:25,703 --> 00:12:28,998 望みであった貿易船も 難破してしまい 190 00:12:29,123 --> 00:12:30,875 港には戻っておりません 191 00:12:32,042 --> 00:12:35,463 保険金も 既に 会社の損失に充てており 192 00:12:35,588 --> 00:12:38,257 事実上 倒産している状態なのです 193 00:12:39,675 --> 00:12:41,135 (ウィリアム)邸宅同様 194 00:12:41,260 --> 00:12:44,138 資産として 頭数に入れられなかったから 195 00:12:44,263 --> 00:12:46,557 資料に記載していなかったと? 196 00:12:47,183 --> 00:12:48,726 (バクスター)そのとおりです 197 00:12:49,477 --> 00:12:51,479 本当に情けない話ですが 198 00:12:51,604 --> 00:12:55,858 今の私は 爵位はあれど 資産なんてものはない 199 00:12:55,983 --> 00:12:58,235 没落貴族というわけなんです! 200 00:13:03,240 --> 00:13:04,492 (裁判長)なるほど 201 00:13:04,617 --> 00:13:08,370 返済は不可能なようだが どうするかね? 202 00:13:12,374 --> 00:13:14,001 (ウィリアム) 返していただくことは 203 00:13:14,710 --> 00:13:16,587 諦めるしかなさそうですね 204 00:13:17,129 --> 00:13:18,130 (バクスター)フッ… 205 00:13:18,964 --> 00:13:20,466 (ウィリアム)ですので… (バクスター)ん? 206 00:13:21,717 --> 00:13:24,428 (ウィリアム)契約書で交わされた もう1つの条項 207 00:13:25,971 --> 00:13:30,184 被告の体から 肉1ポンドを 切り取ることを要求します 208 00:13:33,062 --> 00:13:36,857 (裁判長)君… 本気で 肉1ポンドを要求するつもりか? 209 00:13:36,982 --> 00:13:38,108 (ウィリアム)もちろん 210 00:13:38,234 --> 00:13:43,822 この契約書は 公証弁護人に 正式に発行してもらったものです 211 00:13:43,948 --> 00:13:46,784 もし これが 認められないのであれば 212 00:13:46,909 --> 00:13:49,787 この国の国権そのものが 揺らぎかねません 213 00:13:50,621 --> 00:13:54,750 (裁判長)確かに この契約上 認められる要求ではあるが… 214 00:13:55,668 --> 00:13:56,627 (バクスター)いっ… 215 00:13:58,379 --> 00:13:59,129 ひっ! 216 00:14:03,968 --> 00:14:06,011 うう… 217 00:14:09,098 --> 00:14:11,016 ま… 待ちたまえ! 218 00:14:12,059 --> 00:14:13,227 裁判長! 219 00:14:13,352 --> 00:14:16,647 肉1ポンドを切り取ることは こちらも認めます 220 00:14:17,314 --> 00:14:18,983 ただし 契約書には 221 00:14:19,108 --> 00:14:21,860 “肉1ポンド”としか 記載はありません 222 00:14:21,986 --> 00:14:25,197 つまり 肉1ポンドを切り取る際に 223 00:14:25,322 --> 00:14:28,367 1滴の血も流すことは 認められない! 224 00:14:28,492 --> 00:14:29,410 違いますか? 225 00:14:32,705 --> 00:14:33,789 認めよう 226 00:14:34,415 --> 00:14:39,503 原告は 被告の血を流すことは 契約上 認められてはいない 227 00:14:41,505 --> 00:14:42,756 (ウィリアム)1滴… 228 00:14:43,549 --> 00:14:47,344 たった1滴の血も流さずに 肉を切り取ることなど 229 00:14:48,220 --> 00:14:49,263 不可能 230 00:14:50,431 --> 00:14:51,765 (バクスター)勝った 231 00:14:52,850 --> 00:14:54,268 バカなガキめ 232 00:14:54,393 --> 00:14:56,812 お前が この契約書に サインした時点で 233 00:14:56,937 --> 00:14:59,648 俺の勝ちは決まってるんだよ! 234 00:15:00,274 --> 00:15:04,361 体(てい)よく“600ポンドを諦める” という言質も取れた 235 00:15:04,486 --> 00:15:09,074 お前の要求は もう 何ひとつ通らない! 236 00:15:11,285 --> 00:15:12,286 (ウィリアム)では… 237 00:15:13,162 --> 00:15:15,748 被告への質問を続けさせてください 238 00:15:15,873 --> 00:15:16,790 (弁護士)え? 239 00:15:17,917 --> 00:15:21,629 (ウィリアム)原告側の 証人の入廷を許可願えますか? 240 00:15:29,511 --> 00:15:31,263 (バクスター)誰だ? あいつは 241 00:15:31,388 --> 00:15:32,598 どこかで… 242 00:15:32,723 --> 00:15:34,850 (ウィリアム) まず先に 被告に伺います 243 00:15:35,517 --> 00:15:36,810 バクスターさん 244 00:15:36,936 --> 00:15:39,688 あなたは お店で ビフテキを召し上がりますよね? 245 00:15:40,230 --> 00:15:42,066 (バクスター)ええ たまには… 246 00:15:42,858 --> 00:15:44,943 では 僕をウェイターに見立てて 247 00:15:45,069 --> 00:15:47,571 いつものように 注文してみてください 248 00:15:48,155 --> 00:15:49,073 ん? 249 00:15:49,615 --> 00:15:52,242 “牛肉をハーフポンド焼いてくれ” 250 00:15:52,368 --> 00:15:53,494 これでいいですか? 251 00:15:53,619 --> 00:15:55,537 ありがとうございます 252 00:15:55,663 --> 00:15:58,499 では 次に 証人であるブレムナーさん 253 00:15:58,624 --> 00:15:59,958 (ブレムナー)あ… はい 254 00:16:00,918 --> 00:16:02,711 (ウィリアム)あなたは バクスターさん行きつけの 255 00:16:02,836 --> 00:16:04,505 レストランのウェイターですね? 256 00:16:05,714 --> 00:16:06,882 (ブレムナー)そうです 257 00:16:07,007 --> 00:16:09,051 (バクスター)ああ そうだったな 258 00:16:09,593 --> 00:16:12,930 (ウィリアム)バクスターさんは よくお見えになるのですか? 259 00:16:13,055 --> 00:16:15,349 (ブレムナー)はい 昨日も いらっしゃいました 260 00:16:15,474 --> 00:16:18,811 その際 お肉を召し上がっていましたか? 261 00:16:18,936 --> 00:16:23,023 (バクスター)このガキ 俺が頻繁に いい肉を食ってるから 262 00:16:23,148 --> 00:16:26,276 実は金がある… とでも 言いたいのか? 263 00:16:26,402 --> 00:16:27,361 (ブレムナー)はい 264 00:16:27,486 --> 00:16:30,280 いつも おいしそうに 召し上がっていただいております 265 00:16:31,240 --> 00:16:35,411 バクスターさんは いつも お肉を希望の大きさで注文し 266 00:16:35,536 --> 00:16:38,455 その代金を 支払っている… のですね? 267 00:16:38,580 --> 00:16:41,250 あ… はい そうです 268 00:16:42,960 --> 00:16:43,669 (ウィリアム)では… 269 00:16:44,586 --> 00:16:46,755 バクスターさんは 注文の際 270 00:16:47,297 --> 00:16:52,720 肉から血の重さを差し引いて 頼まれたことがありますか? 271 00:16:53,387 --> 00:16:54,513 (バクスター)あっ… 272 00:16:55,848 --> 00:16:57,433 (ブレムナー)血の重さを? 273 00:16:57,558 --> 00:16:59,810 いえ 20年やってますが 274 00:16:59,935 --> 00:17:02,312 そんなことは ただの一度もありません 275 00:17:03,480 --> 00:17:05,274 もう お分かりですよね 276 00:17:05,399 --> 00:17:08,277 いっ いや… これは その… 277 00:17:08,402 --> 00:17:11,822 (ウィリアム)つまり これは “肉の概念”の話なのです 278 00:17:12,990 --> 00:17:16,827 先ほど あなたは 肉を1ポンド切り取る際には 279 00:17:16,952 --> 00:17:20,956 血の1滴も流すことは 認められないと おっしゃいました 280 00:17:22,040 --> 00:17:25,502 しかし 依頼人である バクスター氏の注文方法から 281 00:17:26,045 --> 00:17:29,465 常日頃 肉という概念の中に 282 00:17:29,590 --> 00:17:33,010 血液も含まれていると 考えていたことが分かります 283 00:17:34,136 --> 00:17:35,095 いや 違う… 284 00:17:35,220 --> 00:17:38,390 (ウィリアム) 違うというのなら 注文の際に 285 00:17:38,515 --> 00:17:42,936 “血の重さは 肉の重さから 差し引け”と告げていたはず 286 00:17:43,061 --> 00:17:46,690 しかし そう頼んだことは 一度もない 287 00:17:47,399 --> 00:17:51,195 つまり それは あなたが契約書にサインした時点で 288 00:17:51,320 --> 00:17:55,449 血の重さも 肉1ポンドに 含まれていると考えていた⸺ 289 00:17:55,574 --> 00:17:57,159 何よりの証拠となります 290 00:17:57,284 --> 00:17:59,995 こっ こんな… 屁理屈(へりくつ)だ! 291 00:18:00,120 --> 00:18:02,039 (ウィリアム) 屁理屈は そちらのほうでは? 292 00:18:02,873 --> 00:18:06,502 “肉1ポンドを切り取ることは こちらも認める”と 293 00:18:06,627 --> 00:18:09,004 そちらの弁護士さんも おっしゃいましたよね? 294 00:18:09,546 --> 00:18:10,881 裁判長 295 00:18:11,423 --> 00:18:12,466 そのとおりだ 296 00:18:13,008 --> 00:18:14,635 ふざけるな! 297 00:18:14,760 --> 00:18:18,555 そもそも 契約書のベースとなった 戯曲も知らない こいつが… 298 00:18:18,680 --> 00:18:19,723 うっ… 299 00:18:22,684 --> 00:18:25,270 (ウィリアム) “おお アントーニオ!” 300 00:18:25,395 --> 00:18:29,233 “シャイロックのナイフを 胸に受ける覚悟があるのなら” 301 00:18:29,858 --> 00:18:32,111 “その服の前を開けるのだ!” 302 00:18:33,362 --> 00:18:34,863 シェイクスピアなら 303 00:18:34,988 --> 00:18:38,492 40作品 全てのセリフを 諳(そら)んじることもできますよ 304 00:18:39,034 --> 00:18:41,036 バ… バカな 305 00:18:41,161 --> 00:18:43,372 貧民街のガキが そんな… 306 00:18:45,374 --> 00:18:48,752 (ウィリアム)では 血の問題が解決したところで… 307 00:18:51,046 --> 00:18:54,675 今度こそ あなたの肉を1ポンド 頂きましょうか 308 00:18:56,009 --> 00:18:58,053 お目汚しにならないように 309 00:18:58,804 --> 00:19:00,305 (バクスター) ひっ… ちょっ お前… 310 00:19:01,473 --> 00:19:02,516 いや ホントに? 311 00:19:03,851 --> 00:19:04,768 あっ… 312 00:19:04,893 --> 00:19:07,312 あ… いや… 313 00:19:08,355 --> 00:19:09,147 あっ… 314 00:19:10,107 --> 00:19:11,358 待ってって… 315 00:19:11,483 --> 00:19:13,944 待って! 待ってください! 316 00:19:14,069 --> 00:19:16,989 全部… ウソなんです 317 00:19:18,740 --> 00:19:22,494 家や会社の名義は 友人に変えただけで 318 00:19:22,619 --> 00:19:26,373 ホントは 全て 私自身が所有してるんです! 319 00:19:30,627 --> 00:19:32,379 は… 半分! 320 00:19:32,504 --> 00:19:35,340 私の財産の半分を差し上げます 321 00:19:35,465 --> 00:19:37,134 それで どうか… 322 00:19:38,510 --> 00:19:39,511 (ウィリアム)半分? 323 00:19:40,053 --> 00:19:40,971 (バクスター)ひっ! 324 00:19:42,848 --> 00:19:46,393 (ウィリアム) 全てだ あなたの全財産 325 00:19:47,436 --> 00:19:49,271 それで手を打とう 326 00:19:55,652 --> 00:19:57,654 (バクスター)はっ はい… 327 00:20:01,700 --> 00:20:03,619 (ミルヴァートン) 少年たちは その後 328 00:20:03,744 --> 00:20:08,165 バクスターから得た大金を その孤児院に寄付して姿を消した 329 00:20:09,791 --> 00:20:13,211 火事で死んだ養子の三男を 調べた末に行き着いた⸺ 330 00:20:13,754 --> 00:20:15,672 この裁判記録 331 00:20:17,007 --> 00:20:18,258 間違いない 332 00:20:18,800 --> 00:20:21,553 彼こそ 現在のモリアーティ家次男 333 00:20:21,678 --> 00:20:24,014 ウィリアム・ ジェームズ・モリアーティ 334 00:20:25,933 --> 00:20:28,143 彼は 邸宅の火事の際に 335 00:20:28,268 --> 00:20:30,687 本物のウィリアムと 入れ代わったのだ 336 00:20:31,855 --> 00:20:34,816 そして ほかの兄弟も それを受け入れていることから 337 00:20:35,359 --> 00:20:38,570 これは三兄弟の共犯であると 考えられる 338 00:20:40,072 --> 00:20:42,658 ウィリアム・ ジェームズ・モリアーティ 339 00:20:43,200 --> 00:20:44,326 ヤツは… 340 00:20:45,744 --> 00:20:47,579 私の敵だ 341 00:20:49,081 --> 00:20:51,041 ♪~ 342 00:22:16,960 --> 00:22:18,920 ~♪ 343 00:22:20,881 --> 00:22:22,174 (フレッド)報告します 344 00:22:23,091 --> 00:22:27,304 例の泳がせていた裁判記録を 持ち出した者が現れました 345 00:22:28,764 --> 00:22:30,140 持ち出したのは 346 00:22:30,265 --> 00:22:32,559 チャールズ・オーガスタス・ ミルヴァートン 347 00:22:33,226 --> 00:22:34,436 判例でなく 348 00:22:34,561 --> 00:22:38,190 ウィリアムさんの過去を探ることが 目的かと思われます 349 00:22:39,357 --> 00:22:40,984 (アルバート)ミルヴァートン卿… 350 00:22:41,526 --> 00:22:47,115 多くの新聞社や広告会社を経営する “メディア王”とも称される人物だ 351 00:22:47,657 --> 00:22:51,328 (ジャック)貴族ではないが 相当な大物実業家だな 352 00:22:51,453 --> 00:22:54,164 (ボンド) ウィル君の裁判記録って? 353 00:22:54,289 --> 00:22:55,832 (モラン)ウィリアムがガキのころ 354 00:22:55,957 --> 00:22:58,877 ある貴族と 裁判で争ったときのものだ 355 00:22:59,419 --> 00:23:01,421 なぜ そんなものを残して… 356 00:23:01,963 --> 00:23:02,464 あっ 357 00:23:03,090 --> 00:23:04,257 まさか… 358 00:23:04,800 --> 00:23:05,967 (ウィリアム)みんな 聞いてくれ 359 00:23:07,135 --> 00:23:10,347 彼が 僕を ターゲットにしていることは明白 360 00:23:11,765 --> 00:23:14,476 全員が警戒すべき相手と言える 361 00:23:16,520 --> 00:23:19,898 今後 ミルヴァートンを 最重要の敵と位置づけ 362 00:23:23,026 --> 00:23:24,277 排除する 363 00:23:33,745 --> 00:23:35,997 (ホームズ) 次回「憂国のモリアーティ」 364 00:23:36,540 --> 00:23:39,376 「ロンドンの騎士 第一幕」