1 00:00:03,586 --> 00:00:04,921 (阿良々木(あららぎ)) ここまで 僕は 2 00:00:05,005 --> 00:00:07,841 ほとんど丸一日にわたって 勘違いしていた 3 00:00:08,383 --> 00:00:11,803 もちろん 左右逆の世界と裏返しの世界に 4 00:00:11,928 --> 00:00:13,471 どれほどの差があるのか 5 00:00:13,805 --> 00:00:15,598 言っていることは 結局 同じなんじゃないかと 6 00:00:15,724 --> 00:00:17,142 思うところも あるけれども 7 00:00:17,559 --> 00:00:19,185 風景については ともかく 8 00:00:19,310 --> 00:00:22,897 しかし こと 人間性に 関するかぎりは そうではない 9 00:00:28,445 --> 00:00:31,698 やはり羽川翼(はねかわつばさ)の例を引くのが 分かりやすいだろう 10 00:00:34,409 --> 00:00:37,245 ゴールデンウィークに現れた かの怪異は 11 00:00:37,370 --> 00:00:40,707 障(さわ)り猫という 伝統的な妖怪変化であると同時に 12 00:00:40,832 --> 00:00:43,501 それでも羽川翼自身だった 13 00:00:44,252 --> 00:00:46,379 聖人めいた彼女が抑圧してきた— 14 00:00:46,796 --> 00:00:49,007 痛みを押しつけてきた彼女自身 15 00:00:49,466 --> 00:00:52,010 羽川翼の裏側である 16 00:00:53,094 --> 00:00:55,930 そして 裏返しという視点に立つならば 17 00:00:56,056 --> 00:00:58,349 これは羽川以外にも適用できる 18 00:00:59,601 --> 00:01:02,979 小っちゃい火憐(かれん)は斬新で いかにも新機軸であり 19 00:01:03,730 --> 00:01:07,484 僕にとっては 新大陸発見くらいの 衝撃があったけれど 20 00:01:08,109 --> 00:01:09,527 クチナワさんの言うように 21 00:01:09,652 --> 00:01:12,864 火憐自身は 己の背の高さを気にしていたし 22 00:01:12,989 --> 00:01:16,159 また 身体の成長についていかない精神は 23 00:01:16,284 --> 00:01:18,495 ギャップとして 彼女の中に存在しただろう 24 00:01:19,329 --> 00:01:20,663 実在しただろう 25 00:01:21,289 --> 00:01:23,625 そんな火憐の裏側が 顕在化したならば 26 00:01:23,750 --> 00:01:25,335 ああいう姿を取りもしよう 27 00:01:26,002 --> 00:01:27,837 あの姿は決して新しくもない 28 00:01:28,588 --> 00:01:30,965 火憐の バランスの悪さの表れだった 29 00:01:33,718 --> 00:01:37,222 斧乃木(おののき)ちゃんの場合は 以前 本人から聞いたことがある 30 00:01:38,056 --> 00:01:42,227 表に現れないというだけであって 表現できないというだけで 31 00:01:42,352 --> 00:01:46,147 彼女自身は決して無感情でも 無表情でもないのだと 32 00:01:46,940 --> 00:01:49,234 実際 斧乃木ちゃんに対する印象は 33 00:01:49,776 --> 00:01:54,572 “性格が変わった”ではなく “性格の悪さが露見した”だった 34 00:01:56,324 --> 00:02:00,245 八九寺真宵(はちくじまよい)の場合は 考察するのは もっと簡単である 35 00:02:00,703 --> 00:02:05,333 かつて10歳の少女という姿を取って 僕の前に現れた八九寺は 36 00:02:05,458 --> 00:02:08,878 しかし 10数年前に命を落とした 幽霊であり 37 00:02:09,003 --> 00:02:12,924 順当に年齢を重ねていれば 21歳になっていたのだ 38 00:02:13,383 --> 00:02:18,429 表面の少女姿に対する裏面として 成人女性の資質を備えていた 39 00:02:19,013 --> 00:02:22,809 幽霊が成長しない 怪異に時間は蓄積しない 40 00:02:23,601 --> 00:02:26,104 単純な精神年齢を計算できない といっても 41 00:02:26,729 --> 00:02:30,775 11年にわたって道に迷い続けてきた 彼女の経歴自体は 42 00:02:30,900 --> 00:02:33,111 地獄に落ちようと 神様になろうと 43 00:02:33,528 --> 00:02:36,114 決して消えて なくなったりは していないのだ 44 00:02:38,283 --> 00:02:40,952 僕には そういうのは よく分からないけれども 45 00:02:41,077 --> 00:02:43,079 “少女少女 かわいい かわいい”と 46 00:02:43,204 --> 00:02:45,081 あいつを もてはやす 神原(かんばる)みたいなヤツには 47 00:02:45,206 --> 00:02:47,834 見えないであろう裏面が 八九寺には あって 48 00:02:49,460 --> 00:02:53,172 その裏面が ひっくり返れば ああいう姿を取るだろう 49 00:02:56,175 --> 00:03:00,346 その神原… 神原駿河(するが)の左手 猿の手は 50 00:03:00,513 --> 00:03:03,600 “持ち主の願いの裏を読んで かなえる”というもので 51 00:03:03,892 --> 00:03:06,853 存在自体が 裏技みたいな怪異だった 52 00:03:07,270 --> 00:03:11,608 レインコートを着て長靴を履いた レイニー・デビルとしての あの姿は 53 00:03:11,733 --> 00:03:13,776 神原駿河の裏側であり 54 00:03:13,943 --> 00:03:17,739 先輩として僕を慕ってくれる 気持ちにウソはない反面で 55 00:03:17,864 --> 00:03:20,950 しかし あいつの中にある 阿良々木憎しの感情を 56 00:03:21,075 --> 00:03:23,119 完全に消し去ることは 不可能だろう 57 00:03:23,953 --> 00:03:25,830 いないものが現れたわけじゃない 58 00:03:25,997 --> 00:03:29,125 それはずっと そこにあったし そこにいた 59 00:03:29,500 --> 00:03:34,130 “逆ではなく裏なのだ”と言えば まるで数学の定義のようだけれど 60 00:03:34,631 --> 00:03:36,299 もっとシンプルな問題として 61 00:03:36,424 --> 00:03:39,594 レイニー・デビルは 神原駿河自身なのである 62 00:03:41,554 --> 00:03:45,808 数学といえば あの 目も当てられない老倉育(おいくらそだち)の場合だ 63 00:03:46,267 --> 00:03:49,896 その片鱗(へんりん)さえ僕に見せなかった あの解放された性格や 64 00:03:50,021 --> 00:03:52,190 阿良々木家に なじんだ身内関係は 65 00:03:52,315 --> 00:03:54,692 僕が望ましいと妄想する以上に 66 00:03:54,817 --> 00:03:57,111 彼女にとって 願ってもないものだった… 67 00:03:57,612 --> 00:03:59,822 はずだと 僕が思いたい 68 00:04:00,615 --> 00:04:02,408 あんなウソくさい幸せを 69 00:04:02,659 --> 00:04:06,496 心の底では 老倉育が望んでいたのだと信じたい 70 00:04:07,121 --> 00:04:10,625 とげとげした性格や 攻撃的な言動の裏側で 71 00:04:10,750 --> 00:04:13,378 あんなふうな彼女もいたと 考えることは 72 00:04:13,503 --> 00:04:16,631 やはり 何らかの 救いになるようにも思えるのだ 73 00:04:17,548 --> 00:04:21,511 老倉については 我田引水が 過ぎるのかもしれないけれど 74 00:04:21,636 --> 00:04:25,306 しかし 幼なじみである彼女を 論理だけで語るのは 75 00:04:25,431 --> 00:04:27,016 僕には無理である 76 00:04:28,977 --> 00:04:31,354 それに比べれば 千石撫子(せんごくなでこ)のケースは 77 00:04:31,479 --> 00:04:34,440 もう少し 説得力を持って 分かりやすく裏付けできる 78 00:04:35,149 --> 00:04:37,402 クチナワさんという神様は 79 00:04:37,527 --> 00:04:40,655 北白蛇(きたしらへび)神社に祭られていた 土着の神として 80 00:04:40,780 --> 00:04:43,324 彼女が 彼女の中に生んだものなのだから 81 00:04:44,867 --> 00:04:47,787 二重人格とは どこか違うのだろうけれど 82 00:04:47,912 --> 00:04:51,332 僕は忍(しのぶ)と 一緒に クチナワさんと会話する千石を 83 00:04:51,624 --> 00:04:53,376 一度だけ見たことがある 84 00:04:53,960 --> 00:04:56,504 かの神様は 僕にも忍にも見えない— 85 00:04:56,963 --> 00:04:59,382 千石の裏側に巣くう蛇だった 86 00:05:00,258 --> 00:05:05,305 あの乱暴な口調 ぞんざいな態度 それもまた 千石撫子 87 00:05:05,763 --> 00:05:08,224 本人が言うところの同一人物 88 00:05:09,017 --> 00:05:12,812 おとなしくて内向的で かわいいだけの千石撫子なんて 89 00:05:13,104 --> 00:05:14,314 いないのである 90 00:05:15,106 --> 00:05:16,983 おとなしさの裏には子供っぽさが 91 00:05:17,108 --> 00:05:19,610 内向的の裏には外攻的が 92 00:05:19,736 --> 00:05:22,322 かわいさの裏には ふてぶてしさが あった 93 00:05:23,531 --> 00:05:27,577 いつ爆発しても いつ破裂しても おかしくない千石撫子が 94 00:05:27,702 --> 00:05:29,912 千石撫子の裏にはあった 95 00:05:30,330 --> 00:05:31,622 そういうことだ 96 00:05:35,668 --> 00:05:38,588 僕が“この世界は おかしい” と思ってきた— 97 00:05:38,713 --> 00:05:40,840 ここまでの冒険の書を 読み返してみると 98 00:05:41,340 --> 00:05:42,717 何のことはない 99 00:05:42,884 --> 00:05:46,888 僕はただ 裏返った彼女たちを 見てきただけだったのだ 100 00:05:47,889 --> 00:05:51,267 つじつまの合わない 矛盾が許される世界なのは 101 00:05:51,392 --> 00:05:54,062 ここが“鏡の中”だからではなく 102 00:05:54,187 --> 00:05:57,815 彼女たちが“心の中”の 登場人物だったからなのだ 103 00:05:58,399 --> 00:06:00,610 内心の自由ってやつか 104 00:06:00,985 --> 00:06:02,153 そう思って見れば 105 00:06:02,278 --> 00:06:07,533 不安定で不確かにしか思えなかった この世界に 1本 軸が出来たようで 106 00:06:07,658 --> 00:06:10,620 単なる左右逆にしか 見えなかった風景の見え方も 107 00:06:10,745 --> 00:06:12,205 変わってくるようだった 108 00:06:15,374 --> 00:06:21,380 ♪〜 109 00:07:08,928 --> 00:07:14,934 〜♪ 110 00:07:16,394 --> 00:07:19,856 (阿良々木) 驚くなかれ “私の意見は 最後に言う”というのは 111 00:07:19,981 --> 00:07:21,649 はったりでは なかったのだ 112 00:07:21,983 --> 00:07:24,152 彼女は1つ 疑問を持っていた 113 00:07:24,485 --> 00:07:28,281 (八九寺) いや ここが 鏡の中だろうと鏡の国だろうと 114 00:07:28,573 --> 00:07:32,577 異世界であろうと異次元であろうと それは ともかくとして 115 00:07:32,785 --> 00:07:35,288 阿良々木くんの 知り合いがいるわけじゃない? 116 00:07:35,455 --> 00:07:39,292 家族だったり 友達だったり 後輩だったり 幼なじみだったり 117 00:07:39,667 --> 00:07:41,294 ええ そうですけれど 118 00:07:41,669 --> 00:07:43,504 阿良々木くん自身は どこにいるの? 119 00:07:44,839 --> 00:07:45,798 (阿良々木) 僕? 120 00:07:46,382 --> 00:07:49,135 阿良々木くんは 阿良々木くんと会っていない 121 00:07:49,260 --> 00:07:50,303 これって変じゃない? 122 00:07:51,012 --> 00:07:54,807 私やクチナワさんを含め みんな 阿良々木くんを知っている 123 00:07:54,932 --> 00:07:58,227 それぞれが 阿良々木くんとの関係を持っている 124 00:07:59,061 --> 00:08:02,064 君以外に もう1人 阿良々木くんが… 125 00:08:02,565 --> 00:08:04,025 阿良々木くんの裏側が 126 00:08:04,442 --> 00:08:06,986 この世界には いてしかるべき なんじゃないの? 127 00:08:09,655 --> 00:08:11,824 (阿良々木) 彼女たちが僕を知っている以上 128 00:08:11,949 --> 00:08:14,076 僕がいなければ おかしいのだ 129 00:08:14,327 --> 00:08:17,205 今いないのだとしても かつて いなければ 130 00:08:17,914 --> 00:08:19,957 今朝 鏡を見たときに 131 00:08:20,166 --> 00:08:23,461 僕の動きに連動しなかった あの鏡像(きょうぞう) 132 00:08:23,961 --> 00:08:26,589 僕を にらむようにしていた あの目 133 00:08:27,131 --> 00:08:28,633 阿良々木くんと入れ代わりに 134 00:08:28,758 --> 00:08:31,219 阿良々木くんは あちらの世界に 行っちゃったのかな? 135 00:08:31,719 --> 00:08:32,845 そして 同じように 136 00:08:32,970 --> 00:08:35,306 “訳の分からない つじつまが合っちゃう世界”に 137 00:08:35,431 --> 00:08:36,766 混乱しているとか 138 00:08:36,891 --> 00:08:40,228 ハハッ だとすれば あっちのほうが大変そうだけど 139 00:08:41,103 --> 00:08:43,523 (阿良々木) 順当に考えてブラック羽川や 140 00:08:43,648 --> 00:08:45,942 レイニー・デビルの例を 見るかぎりにおいて 141 00:08:46,150 --> 00:08:50,196 この世界にいたと仮定される僕は 阿良々木暦(こよみ)は… 142 00:08:51,030 --> 00:08:54,575 阿良々木暦の裏面は… 僕の天敵 143 00:08:56,202 --> 00:08:58,412 忍野扇(おしのおうぎ)以外に考えられない 144 00:09:01,374 --> 00:09:03,251 (八九寺)今日はもう 休みなさい 145 00:09:03,709 --> 00:09:07,088 まあ 引き続き 私やクチナワさんも動いてみるから 146 00:09:07,213 --> 00:09:09,590 明日も夕方くらいに もう1回 来てよ 147 00:09:09,799 --> 00:09:12,593 もちろん 向こうに戻るチャンスがあったら 148 00:09:12,718 --> 00:09:14,512 それを逃しちゃダメだからね 149 00:09:14,637 --> 00:09:17,390 そのときは 手紙でも書いて残しといて 150 00:09:17,890 --> 00:09:19,100 分かりました 151 00:09:19,308 --> 00:09:21,435 ご迷惑をおかけして 申し訳ないです 152 00:09:21,936 --> 00:09:24,313 (八九寺) 迷惑なんて かけられてないよ 153 00:09:24,438 --> 00:09:29,443 それに この町を平定するのが 今の私の仕事だしね! 154 00:09:29,819 --> 00:09:31,946 (千石)俺様は迷惑だけどな 155 00:09:32,071 --> 00:09:34,490 引退したはずなのに 引っ張り出されて 156 00:09:35,324 --> 00:09:38,744 しかし まあ 猫の動きは気になるから 157 00:09:43,374 --> 00:09:46,002 (阿良々木) でも 長期戦に構えるにしても 158 00:09:46,127 --> 00:09:48,754 あんまり長居するわけには いかないんですけどね 159 00:09:49,380 --> 00:09:50,965 前にも言いましたけれど 160 00:09:51,090 --> 00:09:55,261 大学に合格していた場合は 入学手続きが ありますから 161 00:10:03,144 --> 00:10:08,149 (阿良々木) 風呂上がり 洗面台の鏡は やっぱり何事もないことを確認し 162 00:10:08,649 --> 00:10:09,942 落胆した後 163 00:10:11,736 --> 00:10:13,738 まあ 今日は寝よう 164 00:10:14,030 --> 00:10:16,449 起きたら 全部 解決しているかもしれないし 165 00:10:21,996 --> 00:10:22,830 (阿良々木)あ… 166 00:10:25,041 --> 00:10:26,917 (老倉)あっ 暦ったら 167 00:10:27,043 --> 00:10:29,545 頭 ちゃんと乾かさないと 風邪ひいちゃうよ 168 00:10:30,004 --> 00:10:32,298 水も滴るいい男だけども! 169 00:10:32,673 --> 00:10:33,549 アハハ… 170 00:10:34,008 --> 00:10:35,092 (阿良々木)あ… 171 00:10:38,763 --> 00:10:40,264 (老倉) え〜? なんで なんで なんで? 172 00:10:40,389 --> 00:10:41,974 なんか私 悪いことした? 173 00:10:42,099 --> 00:10:43,100 暦 怒ってるの? 174 00:10:43,434 --> 00:10:45,811 やめてよ そういう よそよそしいこと するの! 175 00:10:45,978 --> 00:10:48,981 なに 暦 私のこと 意識しちゃってるの? 176 00:10:49,607 --> 00:10:50,858 (阿良々木)ん… 177 00:10:56,364 --> 00:10:59,283 なあ おいく… 育 178 00:10:59,408 --> 00:11:02,328 鏡について 何か知っていることってない? 179 00:11:02,745 --> 00:11:03,663 ん… 180 00:11:04,789 --> 00:11:10,878 鏡は決して像を正確に映さない って話があったかな そういえば… 181 00:11:11,545 --> 00:11:15,007 ほら 鏡って 光の いわゆる反射だけれど 182 00:11:16,133 --> 00:11:19,178 光を全部 反射するのは無理だから 183 00:11:19,345 --> 00:11:23,724 一般的な鏡で反射率が 80パーセントくらいなんだっけ? 184 00:11:24,517 --> 00:11:28,354 いくらかは どうしても 鏡面が吸着しちゃうのよね 185 00:11:28,771 --> 00:11:33,734 だから 鏡像は現物よりも ぼやけて見える 186 00:11:34,235 --> 00:11:35,152 うん… 187 00:11:35,945 --> 00:11:40,449 (老倉) 私たちは 鏡で自分の姿を認識するけれども 188 00:11:40,616 --> 00:11:43,494 でも ぼんやりとしか 見ることはできない 189 00:11:44,036 --> 00:11:46,747 ぼんやりとしか 知ることができない 190 00:11:47,415 --> 00:11:51,877 輪郭がぼやけて 正確さに欠ける 191 00:11:52,920 --> 00:11:53,754 ん… 192 00:11:59,593 --> 00:12:01,011 (阿良々木) すぐ起こされた 193 00:12:01,220 --> 00:12:02,096 (斧乃木)し〜 194 00:12:02,596 --> 00:12:06,142 鬼のおにいちゃん こっそり 音を立てずに起きて 195 00:12:06,600 --> 00:12:08,894 育のおねえちゃんを 起こさないように 196 00:12:09,186 --> 00:12:10,896 出かけられるよう着替えて 197 00:12:11,480 --> 00:12:12,314 ん? 198 00:12:13,065 --> 00:12:16,986 (阿良々木) 表情豊かに感情を込めてしゃべる 斧乃木ちゃんは どこへ行った? 199 00:12:17,403 --> 00:12:19,947 (斧乃木) 黙って僕についてきて おにいちゃん 200 00:12:20,072 --> 00:12:22,867 そうすれば 忍に会わせてあげるよ 201 00:12:23,784 --> 00:12:25,411 この世界に存在する— 202 00:12:25,536 --> 00:12:28,789 キスショット・アセロラオリオン・ ハートアンダーブレードに 203 00:12:41,469 --> 00:12:45,055 (斧乃木) 言っておくけれど あまり期待されても困る 204 00:12:45,181 --> 00:12:46,557 僕だってギリギリだ 205 00:12:46,682 --> 00:12:49,143 全てを理解しているところからは 程遠い 206 00:12:49,768 --> 00:12:50,769 斧乃木ちゃん 207 00:12:51,020 --> 00:12:52,313 (斧乃木)何だい おにいちゃん 208 00:12:52,438 --> 00:12:54,023 (阿良々木)いや え〜っと… 209 00:12:58,944 --> 00:13:01,030 ああ 説明してほしいんだよね? 210 00:13:01,489 --> 00:13:02,865 分かってる分かってる 211 00:13:02,990 --> 00:13:05,951 鬼のおにいちゃんの思考は 幼女から童女まで 212 00:13:06,076 --> 00:13:07,203 全部 理解している 213 00:13:07,453 --> 00:13:09,497 そんな狭いレンジで理解するな 214 00:13:10,247 --> 00:13:11,749 それは思考じゃなく “嗜好(しこう)”だろう 215 00:13:12,208 --> 00:13:13,626 嗜好でもないしな! 216 00:13:13,792 --> 00:13:15,836 これでも僕はプロなのでね 217 00:13:16,212 --> 00:13:20,174 鬼のおにいちゃんは 今朝 僕を見て 僕と話して 218 00:13:20,299 --> 00:13:24,220 この世界に確定的に 違和感を感じたようだったけれども 219 00:13:24,345 --> 00:13:26,180 しかし そんな おにいちゃんの態度から 220 00:13:26,305 --> 00:13:27,890 僕は違和感を感じ取った 221 00:13:28,390 --> 00:13:31,852 深淵(しんえん)をのぞく者は また深淵からも のぞかれている 222 00:13:33,229 --> 00:13:35,356 あれ? あの おにいちゃんが 223 00:13:35,481 --> 00:13:37,858 僕のパンツを脱がせもせずに 去って行った? 224 00:13:37,983 --> 00:13:38,943 ありえない 225 00:13:39,068 --> 00:13:41,403 そんな疑問が僕の出発点だった 226 00:13:41,654 --> 00:13:43,781 (阿良々木) そんなところから スタートしないでくれ 227 00:13:44,156 --> 00:13:46,617 パンツっていうのは ズボンのことか 下着のことか 228 00:13:46,742 --> 00:13:47,660 どっちのことだ 229 00:13:47,785 --> 00:13:50,287 (斧乃木) さあね 自分の胸に聞いてみたら? 230 00:13:51,330 --> 00:13:54,625 胸といえば 僕の胸を使ってやる いつものやつも 231 00:13:54,750 --> 00:13:57,711 そのとき やらなかったことも 気がかりだった 232 00:13:57,836 --> 00:14:00,339 (阿良々木) 君の胸を使ってやる いつものやつって何だ 233 00:14:00,464 --> 00:14:03,384 僕が君の胸を使ってやる いつものやつって何だ? 234 00:14:03,509 --> 00:14:07,429 (斧乃木) 不安要素を放っておけないのが 僕の難儀な性格でね 235 00:14:07,846 --> 00:14:11,308 おにいちゃんが去ったあとに 僕はセルフチェックを行った 236 00:14:11,934 --> 00:14:15,563 僕のコンディションの何が 鬼のおにいちゃんを驚かせたのか 237 00:14:15,688 --> 00:14:17,439 壁ドンさせたのかを考えた 238 00:14:17,773 --> 00:14:20,150 壁ドン? そんなことは しなかったはずだが 239 00:14:20,442 --> 00:14:22,027 (斧乃木) 間違えた ドン引きだった 240 00:14:22,361 --> 00:14:25,030 (阿良々木) 全然 違うじゃねえか 間違うか 241 00:14:26,031 --> 00:14:27,992 (斧乃木) メンテナンスの結論として 242 00:14:28,158 --> 00:14:30,452 鬼のおにいちゃんが どうして僕にドン引きしたのかは 243 00:14:30,578 --> 00:14:32,288 とうとう分からなかったけれども 244 00:14:32,621 --> 00:14:35,499 しかし 少なくとも今の僕のありようが 245 00:14:35,624 --> 00:14:36,542 パフォーマンスをフルに 246 00:14:36,667 --> 00:14:39,003 発揮できる状態でないことは 分かった 247 00:14:39,336 --> 00:14:42,715 おねえちゃんに仕える化物として 式神として 248 00:14:42,840 --> 00:14:44,800 不完全であることが分かった 249 00:14:45,426 --> 00:14:47,803 なので 性格を作り替えた 250 00:14:48,178 --> 00:14:49,013 あ? 251 00:14:49,388 --> 00:14:52,683 つまりキャラクターをぶらした ブラッシュアップした 252 00:14:53,183 --> 00:14:56,770 うまくできたかどうか 僕自身は分からなかったけれども 253 00:14:56,896 --> 00:14:59,940 今こうして 鬼のおにいちゃんの 反応を見るかぎりは 254 00:15:00,065 --> 00:15:01,525 おおむね うまく いっているみたいだね 255 00:15:02,192 --> 00:15:03,027 あ… 256 00:15:04,820 --> 00:15:05,654 ん… 257 00:15:06,405 --> 00:15:09,325 (斧乃木) なに そんな 褒められるようなことでもない 258 00:15:09,450 --> 00:15:11,660 おにいちゃんの協力が あってこそだよ 259 00:15:12,119 --> 00:15:14,246 おにいちゃん あのとき 260 00:15:14,371 --> 00:15:17,082 僕のパンツを脱がさないでくれて ありがとう 261 00:15:17,750 --> 00:15:21,170 なあに 当然のことを しなかったまでさ 262 00:15:24,965 --> 00:15:26,175 最初に言ったけれど 263 00:15:26,634 --> 00:15:29,386 僕にだって ちゃんと 理解できているわけじゃないよ 264 00:15:29,553 --> 00:15:31,639 というか 相当 無理をしている 265 00:15:31,764 --> 00:15:34,099 このレベルで キャタクターを変化させるのは 266 00:15:34,224 --> 00:15:36,018 怪異として やっていいことの範囲を 267 00:15:36,143 --> 00:15:37,561 結構 逸脱している 268 00:15:37,937 --> 00:15:39,438 “くらやみ”が生じても おかしくない 269 00:15:40,522 --> 00:15:44,193 そんなわけで おにいちゃん 僕にできることには限りがある 270 00:15:44,318 --> 00:15:47,321 あんまり はしゃぎ過ぎると 消滅の危機なのでね 271 00:15:47,738 --> 00:15:51,116 おにいちゃんと いつか 海を見に行く約束を果たす前に 272 00:15:51,241 --> 00:15:53,077 消滅するわけにはいかない 273 00:15:53,494 --> 00:15:54,578 (阿良々木)ん… 274 00:15:55,162 --> 00:15:57,164 (阿良々木) そんな かっこいい約束してんのか 僕 275 00:15:57,706 --> 00:16:00,334 毎朝パンツを脱がそうとしている 一方で 276 00:16:02,294 --> 00:16:04,546 で それから どうしたんだ? 277 00:16:04,672 --> 00:16:08,175 僕が異変を相談するために 北白蛇神社に行ったように 278 00:16:08,300 --> 00:16:10,636 斧乃木ちゃんは 調査に乗り出したということかい? 279 00:16:10,761 --> 00:16:13,722 (斧乃木) おにいちゃん 北白蛇神社に行ってたんだ 280 00:16:13,931 --> 00:16:16,976 ふうん あとで その辺の話は聞かせてね 281 00:16:17,101 --> 00:16:20,104 (阿良々木) なんだ 僕の動向を 知ってたわけじゃないんだ 282 00:16:20,521 --> 00:16:22,940 (斧乃木) だから そこまで多くを望まないでってば 283 00:16:23,065 --> 00:16:25,234 人格形成に無理をし過ぎたせいで 284 00:16:25,359 --> 00:16:28,153 頭の中 結構 しっちゃかめっちゃか なんだから 285 00:16:28,946 --> 00:16:30,531 もちろん おにいちゃんは 286 00:16:30,656 --> 00:16:32,282 何か動いているだろうとは 思ったけれど 287 00:16:32,574 --> 00:16:36,203 でも それと同じくらい 単に 育のおねえちゃんへのプレゼントを 288 00:16:36,286 --> 00:16:38,122 買いに行った可能性も 考えていたよ 289 00:16:38,247 --> 00:16:39,415 (阿良々木) どんな可能性だ 290 00:16:40,416 --> 00:16:42,710 (斧乃木) だって すごい お願いされてたからね 291 00:16:43,043 --> 00:16:46,130 〝暦〜 買ってよ 買ってよ〜 お願い!〞 292 00:16:46,255 --> 00:16:48,632 〝うんって言うまで 放さないよ!〞って 293 00:16:48,799 --> 00:16:51,176 (阿良々木) すごく甘えられてるな 僕 294 00:16:51,468 --> 00:16:53,137 何を ねだられたんだ 295 00:16:53,262 --> 00:16:56,557 そして 斧乃木ちゃんのパンツを 脱がそうとしている 一方 296 00:16:56,682 --> 00:16:57,933 誕生日でもないのに 297 00:16:58,058 --> 00:17:00,185 老倉の そんなお願いを 聞いてあげようという 298 00:17:00,310 --> 00:17:03,897 この世界の僕は本当に 一体 どういうヤツなのだろう 299 00:17:04,898 --> 00:17:08,527 (斧乃木) あ〜あ がっかりするだろうな 育のおねえちゃん 300 00:17:08,861 --> 00:17:11,030 やめろ プレッシャーをかけるな 301 00:17:11,405 --> 00:17:12,906 あいつを がっかりさせることは 302 00:17:13,032 --> 00:17:15,117 僕にとって すごく つらいことなんだ 303 00:17:15,242 --> 00:17:17,286 今の僕に これ以上のタスクを課すな 304 00:17:17,786 --> 00:17:20,247 で 町を調査した結果 305 00:17:20,372 --> 00:17:23,584 斧乃木ちゃんは僕と忍を 引き合わすことを決めた… のか? 306 00:17:23,709 --> 00:17:24,793 (斧乃木)そういうことだ 307 00:17:25,210 --> 00:17:27,379 ただ その辺は 直接 会ったときの 308 00:17:27,504 --> 00:17:30,174 鬼のおにいちゃんの リアクションを見て楽しみたいから 309 00:17:30,299 --> 00:17:31,967 詳しくは言わないけれど 310 00:17:32,092 --> 00:17:34,803 もちろん その旧ハートアンダーブレードは 311 00:17:34,928 --> 00:17:36,972 おにいちゃんの知る 旧ハートアンダーブレードとは 312 00:17:37,097 --> 00:17:38,015 違うから 313 00:17:38,140 --> 00:17:39,892 その辺りは覚悟しておいてよ 314 00:17:40,142 --> 00:17:41,685 ああ 分かってる 315 00:17:42,186 --> 00:17:44,688 今 僕のリアクションを見て 楽しみたいからって言ったか? 316 00:17:44,980 --> 00:17:46,857 言ったが それがどうした 317 00:17:46,982 --> 00:17:48,942 (阿良々木) 開き直るほどのセリフじゃねえよ 318 00:17:50,402 --> 00:17:52,613 (斧乃木) 僕は そちら側の事情を知らないけれど 319 00:17:55,407 --> 00:17:58,410 そっちの僕は おねえちゃんと 仲良くやっているかい? 320 00:17:58,535 --> 00:18:01,663 (阿良々木) ん? いや え〜っと… 321 00:18:01,830 --> 00:18:04,541 (斧乃木) ふうん まっ そんなところだろうね 322 00:18:06,043 --> 00:18:07,127 (阿良々木)ん… 323 00:18:07,836 --> 00:18:09,254 (斧乃木)で おにいちゃんは 324 00:18:09,379 --> 00:18:11,924 今日は どこで 誰のパンツを脱がせていたの? 325 00:18:12,216 --> 00:18:15,552 今日の僕の動向が知りたいのなら 普通に聞いてくれ 326 00:18:15,844 --> 00:18:18,222 (斧乃木) まずは 真宵さんのパンツを脱がせに 327 00:18:18,347 --> 00:18:20,182 北白蛇神社に向かったんだっけ? 328 00:18:20,432 --> 00:18:21,809 罰当たりすぎるわ! 329 00:18:21,975 --> 00:18:23,936 その場で天罰覿面(てきめん)だわ 330 00:18:25,062 --> 00:18:26,563 (阿良々木) そんなやりとりを経て 331 00:18:26,772 --> 00:18:29,817 僕は斧乃木ちゃんに 本日のあらましを説明した 332 00:18:34,279 --> 00:18:35,114 ふむ 333 00:18:35,823 --> 00:18:37,616 つまり鬼のおにいちゃんは 今日 334 00:18:37,741 --> 00:18:39,243 真宵さんと 猿のおねえちゃんと 335 00:18:39,368 --> 00:18:41,370 猫のおねえちゃんと 蛇のおねえちゃん 336 00:18:41,495 --> 00:18:44,331 それに育のおねえちゃんの パンツを脱がせたというわけだ 337 00:18:44,790 --> 00:18:47,376 もう完全に下着のニュアンスで 言ってんじゃねえか 338 00:18:47,626 --> 00:18:50,587 (斧乃木) おっと ファイヤーシスターズを 数えるのを忘れていた 339 00:18:51,004 --> 00:18:52,089 (阿良々木)数えなくていい 340 00:18:52,422 --> 00:18:54,675 (斧乃木) へえ さすがは鬼のおにいちゃん 341 00:18:54,800 --> 00:18:57,553 妹のパンツなんて ものの数じゃないと言うんだ 342 00:18:57,678 --> 00:19:01,390 (阿良々木) もっと違うところで僕に対して “さすが”って言ってくれないかな 343 00:19:01,515 --> 00:19:03,976 僕の話を聞いての感想が その“さすが”じゃあ 344 00:19:04,101 --> 00:19:05,769 さすがに悲しくなってくるよ 345 00:19:06,478 --> 00:19:08,230 (斧乃木)まあ 僕にとっては 346 00:19:08,355 --> 00:19:11,066 当たり前の人たちの 当たり前のありようだからね 347 00:19:11,817 --> 00:19:13,986 しかしながら ある一点において 348 00:19:14,403 --> 00:19:16,738 僕は おにいちゃんと 意見を同じくする 349 00:19:17,072 --> 00:19:18,490 (阿良々木)へえ? どこだよ 350 00:19:18,782 --> 00:19:20,868 初めて あなたと意見が合ったね 351 00:19:21,243 --> 00:19:23,453 (阿良々木) でこぼこコンビみたいなセリフを 言うな 352 00:19:23,620 --> 00:19:26,165 意見が合ったことくらいは これまで いくらでもあるよ 353 00:19:26,290 --> 00:19:27,124 どこだよ? 354 00:19:27,624 --> 00:19:31,086 (斧乃木) ブラック羽川が おにいちゃんを助けたという点だ 355 00:19:31,503 --> 00:19:33,881 それは 僕の彼女に対する認識からすると 356 00:19:34,381 --> 00:19:36,133 およそ ありえないことなんだ 357 00:19:38,427 --> 00:19:41,054 ただ 思い当たらないんだよな 358 00:19:41,221 --> 00:19:42,222 僕を助けるよう 359 00:19:42,347 --> 00:19:44,641 ブラック羽川に 依頼するようなヤツを 360 00:19:44,766 --> 00:19:45,767 (斧乃木)そうだね 361 00:19:45,893 --> 00:19:49,062 おにいちゃんを助けようなんてヤツ 聞いたことがないもんね 362 00:19:49,563 --> 00:19:51,190 僕だって まず助けないし 363 00:19:51,356 --> 00:19:52,691 そこまでの意味じゃない 364 00:19:53,150 --> 00:19:55,777 ブラック羽川に依頼するようなヤツ って意味だ 365 00:19:55,903 --> 00:19:57,571 “僕だって まず助けないし”って 366 00:19:58,030 --> 00:19:59,698 僕をむやみに傷つけるなよ 367 00:20:00,199 --> 00:20:02,576 今こうして 助けてくれてるじゃないか 368 00:20:02,701 --> 00:20:04,703 (斧乃木) そう思わせて ギリギリのところで見捨て 369 00:20:04,828 --> 00:20:07,748 そのときの表情を観察しようという 算段なのさ 370 00:20:07,873 --> 00:20:09,958 (阿良々木) 信じられないくらい 性格が悪いだろ 371 00:20:10,334 --> 00:20:12,836 もう1回 最初から キャラを作り直せ! 372 00:20:15,214 --> 00:20:17,716 忍は僕が来ることを 知っているのか? 373 00:20:18,258 --> 00:20:20,510 聞くなって言うなら あんまり聞かないけれども 374 00:20:20,636 --> 00:20:22,846 つまり アポを取ってるのかどうか 375 00:20:23,222 --> 00:20:25,098 取ってるよ ご心配なく 376 00:20:25,599 --> 00:20:27,851 そちらの世界では どうか知らないけれど 377 00:20:27,976 --> 00:20:30,687 僕とあの女は この世界じゃあ仲良しだからね 378 00:20:30,812 --> 00:20:33,065 (阿良々木) いや 絶対 仲良しじゃないだろ 379 00:20:33,190 --> 00:20:36,485 “あの女”っていう言い方には どう考えても悪意入ってるだろ 380 00:20:36,902 --> 00:20:37,736 ん… 381 00:20:38,487 --> 00:20:41,031 (阿良々木) と さすがに この辺りで 382 00:20:41,156 --> 00:20:43,951 僕は斧乃木ちゃんが 向かっている先が分かった 383 00:20:44,660 --> 00:20:47,913 流浪の専門家 忍野メメが 根城とした廃虚 384 00:20:48,580 --> 00:20:52,251 この道の先にあるのは 学習塾跡の廃ビルディングだ 385 00:20:53,126 --> 00:20:56,463 僕の知る世界観では 去年の夏に火事に遭い 386 00:20:56,588 --> 00:21:00,092 全焼して跡形も残っていない 建物なのだけれど 387 00:21:00,217 --> 00:21:02,886 こうして僕を そこに 連れていこうというのであれば 388 00:21:03,011 --> 00:21:06,139 こちらでは あの廃ビルは まだ無事なのかもしれない 389 00:21:06,765 --> 00:21:11,144 いや ひょっとすると こちらでは 忍は僕の影に住んでいるのではなく 390 00:21:11,728 --> 00:21:14,982 忍野と共に あそこで 暮らしていたころから引き続き 391 00:21:15,107 --> 00:21:17,484 ずっと あの教室で暮らしているのかも 392 00:21:18,193 --> 00:21:20,529 だとすれば やっぱり僕に対して 393 00:21:20,904 --> 00:21:23,282 というか 阿良々木暦に対して 394 00:21:23,407 --> 00:21:25,867 あまり好意的ではないと 予想できる 395 00:21:26,451 --> 00:21:27,828 斧乃木ちゃんもいるし 396 00:21:27,953 --> 00:21:30,789 命の危険は まあ ないとは思うけれど 397 00:21:30,956 --> 00:21:33,041 もう少し 警戒レベルを上げておいたほうが 398 00:21:33,166 --> 00:21:34,418 いいかもしれない 399 00:21:39,131 --> 00:21:39,965 あ… 400 00:21:40,882 --> 00:21:43,093 (阿良々木) 僕たちは目的地に到着した 401 00:21:46,263 --> 00:21:47,514 あ… 402 00:21:53,478 --> 00:21:55,814 (阿良々木)ぽか〜ん… 403 00:22:02,821 --> 00:22:05,490 忍は この中にいるんだな? 404 00:22:06,158 --> 00:22:08,702 この城に住んでいるんだな? 斧乃木ちゃん 405 00:22:08,869 --> 00:22:11,621 (斧乃木) うん そうだよ 鬼のおにいちゃん 406 00:22:11,830 --> 00:22:14,499 彼女は ここにいる ここに住んでいる 407 00:22:16,043 --> 00:22:17,127 さっ 入ろう 408 00:22:17,252 --> 00:22:20,714 (阿良々木) は… 入るって でも 勝手に入っていいのか? 409 00:22:21,214 --> 00:22:24,217 (斧乃木) こんな お城にインターホンなんて あるわけないでしょ 410 00:22:27,137 --> 00:22:28,680 (阿良々木) そういえば 斧乃木ちゃん 411 00:22:28,805 --> 00:22:30,599 (斧乃木) 何だい 鬼のおにいちゃん 412 00:22:30,724 --> 00:22:31,808 (阿良々木)僕は てっきり 413 00:22:31,933 --> 00:22:35,187 忍は この世界には いないものだと 思っていたんだよ 414 00:22:35,353 --> 00:22:39,733 吸血鬼は鏡には映らないんだから 鏡の中には いないんだって 415 00:22:40,192 --> 00:22:41,902 その辺りが この世界の 416 00:22:42,027 --> 00:22:43,987 つじつまの合わないところ なんだけれど 417 00:22:44,529 --> 00:22:47,991 僕 鬼のおにいちゃんのこと 鬼のおにいちゃんて言うよね 418 00:22:48,408 --> 00:22:51,495 (阿良々木) おう いつからか そんな名称が定着している 419 00:22:51,995 --> 00:22:54,372 なんで そんなふうに呼ぶか 分かる? 420 00:22:54,873 --> 00:22:58,001 (阿良々木) なんでって… そりゃあ まあ 分かるけれど 421 00:22:58,168 --> 00:23:00,629 (斧乃木)そう 僕には分からない 422 00:23:01,088 --> 00:23:02,881 (阿良々木) ん? それって どういう… 423 00:23:03,215 --> 00:23:04,216 (斧乃木)こっちだよ 424 00:23:04,341 --> 00:23:07,511 旧ハートアンダーブレードは 寝室で あなたを待っている 425 00:23:07,969 --> 00:23:10,597 もっとも この言い方も どうなのかな 426 00:23:10,722 --> 00:23:12,641 忍野忍という言い方も 427 00:23:12,891 --> 00:23:13,725 うん? 428 00:23:13,850 --> 00:23:17,020 それは今のあいつは “旧”じゃあないって意味か? 429 00:23:17,354 --> 00:23:18,563 (斧乃木)いい勘してるね 430 00:23:18,688 --> 00:23:20,273 僕の楽しみが1つ減った 431 00:23:20,690 --> 00:23:21,525 (阿良々木) 楽しむな 432 00:23:21,942 --> 00:23:23,652 君の楽しみはゼロにしろ 433 00:23:24,569 --> 00:23:27,405 おいおい それは つまり今のあいつは 434 00:23:27,531 --> 00:23:29,074 この世界のあいつは 435 00:23:29,199 --> 00:23:31,827 吸血鬼としての特性を 失っていない状態 436 00:23:31,952 --> 00:23:34,663 全盛期状態である ということじゃあないか 437 00:23:35,539 --> 00:23:39,000 旧キスショット・アセロラオリオン・ ハートアンダーブレードではなく 438 00:23:39,167 --> 00:23:41,795 忍野忍ではなく 純正の 439 00:23:41,920 --> 00:23:44,798 キスショット・アセロラオリオン・ ハートアンダーブレード? 440 00:24:00,105 --> 00:24:01,439 あ… 441 00:24:02,482 --> 00:24:06,278 (阿良々木) そのシルエットを見るだけで 僕は察した 442 00:24:06,778 --> 00:24:08,488 全てを察した 443 00:24:09,322 --> 00:24:12,701 (忍) ようこそ いらしてくださいました 阿良々木様 444 00:24:12,993 --> 00:24:15,787 はじめまして と言うべきでしょう 445 00:24:16,163 --> 00:24:17,372 わたくしが 446 00:24:17,497 --> 00:24:19,916 キスショット・アセロラオリオン・ ハートアンダーブレード 447 00:24:20,041 --> 00:24:21,334 でございます 448 00:24:22,377 --> 00:24:25,922 (阿良々木) と 時代がかった挨拶をしてきた 彼女は 449 00:24:26,423 --> 00:24:27,966 麗しき彼女は 450 00:24:28,383 --> 00:24:31,720 しかし このとき 吸血鬼ではなく 451 00:24:32,387 --> 00:24:34,181 人間だったのだ