1 00:02:26,039 --> 00:02:30,839 元禄14年 五代将軍 綱吉の時代であります 2 00:02:36,883 --> 00:02:39,419 その頃 毎年初春には 3 00:02:39,419 --> 00:02:43,556 将軍家より京都御所へ 年賀の使者が上り 4 00:02:43,556 --> 00:02:46,960 これに対して京都よりは 陽春3月に 5 00:02:46,960 --> 00:02:50,030 答礼の勅使と上皇の院使が 6 00:02:50,030 --> 00:02:53,633 江戸へ下る慣例になっていました 7 00:02:53,633 --> 00:02:57,337 幕府は この儀式を すこぶる重大に考え 8 00:02:57,337 --> 00:03:03,237 勅使 院使の饗応役を大名から 選ぶことに決めていました 9 00:03:15,455 --> 00:03:19,759 「嘉例により このたびの 勅使御下向に際し」 10 00:03:19,759 --> 00:03:23,229 「左のとおり 仰せつけ候なり」 11 00:03:23,229 --> 00:03:28,368 「一つ 勅使饗応役 浅野内匠頭」 12 00:03:28,368 --> 00:03:33,668 「一つ 院使饗応役 伊達左京亮」 13 00:03:36,276 --> 00:03:38,411 申すまでもないことながら 14 00:03:38,411 --> 00:03:42,449 晴れの大役 心して相務められるよう 15 00:03:42,449 --> 00:03:44,984 なお 詳細にわたっては 16 00:03:44,984 --> 00:03:50,190 高家の筆頭 吉良上野介殿が 万事 ご指南をいたすはず 17 00:03:50,190 --> 00:03:52,490 さよう心得られたい 18 00:04:10,043 --> 00:04:13,613 兄上は勅使饗応役を 引き受けられたそうだな 19 00:04:13,613 --> 00:04:19,085 はい まことに ご名誉なことではございますが 20 00:04:19,085 --> 00:04:23,156 殿には「これを潮に 賄賂政治を正すのだ」 21 00:04:23,156 --> 00:04:26,392 「吉良殿には一切 賄をつかわさぬ」 と仰せられるので 22 00:04:26,392 --> 00:04:28,361 我々も困っております 23 00:04:28,361 --> 00:04:31,698 よし 私が行って 兄上を説得してくる 24 00:04:31,698 --> 00:04:33,698 お願い申します 25 00:04:53,253 --> 00:04:56,856 今度の費用は国元へ 無心をいたすのだろうな? 26 00:04:56,856 --> 00:04:59,926 御意のとおり 1箱と見積もっております 27 00:04:59,926 --> 00:05:02,162 1000両か? はい 28 00:05:02,162 --> 00:05:05,465 当時としては安いほうだ 29 00:05:05,465 --> 00:05:08,168 が しかし大野は したたか者だ 30 00:05:08,168 --> 00:05:11,171 なかなか おいそれとは 出してはくれまいぞ 31 00:05:11,171 --> 00:05:16,075 それでまず 大石殿を 動かす所存でございます 32 00:05:16,075 --> 00:05:19,612 この月岡を使者に立てまして 33 00:05:19,612 --> 00:05:24,017 これは正直者ゆえ 大石殿にも気に入られて 34 00:05:24,017 --> 00:05:28,288 妹も行儀見習いとして お世話になっておりますくらいで 35 00:05:28,288 --> 00:05:30,688 うん さようか はっ 36 00:06:31,217 --> 00:06:35,488 兄上 これ 慎め 37 00:06:35,488 --> 00:06:37,891 皆が せっかく 琴を楽しんでおるのに 38 00:06:37,891 --> 00:06:41,461 兄上 大事な お勤め向きのことです 39 00:06:41,461 --> 00:06:47,033 あなたは高家への賄を 一切 使わぬと言われるそうですな 40 00:06:47,033 --> 00:06:49,736 それがいかがいたした? 41 00:06:49,736 --> 00:06:51,938 今日 饗応役たる者が 42 00:06:51,938 --> 00:06:55,074 接伴役の高家へ黄金10枚に 43 00:06:55,074 --> 00:06:59,779 巻絹の家宝を添えて 贈り物とするのは世間の慣例です 44 00:06:59,779 --> 00:07:02,248 その慣例が気に入らんのじゃ 45 00:07:02,248 --> 00:07:06,085 今日の政治向きは 何もかも賄ずくめだ 46 00:07:06,085 --> 00:07:09,122 長矩は そのようなことは 大嫌いじゃ 47 00:07:09,122 --> 00:07:11,190 そのとおりだと結構ですが 48 00:07:11,190 --> 00:07:14,994 しかし政治向きで 吝嗇漢の勝ったためしがない 49 00:07:14,994 --> 00:07:16,996 吝嗇とは何だ? 大学様 50 00:07:16,996 --> 00:07:19,599 それは ちと お言葉が過ぎましょう 51 00:07:19,599 --> 00:07:24,270 殿の高いお志が あなたには お分かりにはなりませんのか? 52 00:07:24,270 --> 00:07:28,041 何が高い志です 世間知らずの世迷い言を 53 00:07:28,041 --> 00:07:30,541 くどい 重ねて申すな 帰れ 54 00:07:51,364 --> 00:07:54,164 弟さえ あのとおりだ 55 00:07:58,471 --> 00:08:00,471 殿 56 00:08:03,276 --> 00:08:05,511 大学様も 57 00:08:05,511 --> 00:08:09,282 殿のことをお考えに なってのことでございます 58 00:08:09,282 --> 00:08:11,284 考えて? 59 00:08:11,284 --> 00:08:14,821 考えて 余に賄などをせいと 勧めに来たというのか? 60 00:08:14,821 --> 00:08:17,357 そんなバカな 殿 61 00:08:17,357 --> 00:08:19,857 お気をお静めなされませ 62 00:08:21,828 --> 00:08:24,128 あー 嫌な世の中だ 63 00:08:26,699 --> 00:08:30,837 でも幸い 家中の者には 64 00:08:30,837 --> 00:08:35,675 あなた様のお心持ちが ようく分かっております 65 00:08:35,675 --> 00:08:38,275 皆 立派な侍でございます 66 00:08:40,546 --> 00:08:42,546 殿 67 00:08:54,193 --> 00:08:57,764 よく分かった 68 00:08:57,764 --> 00:08:59,964 思わず心が高ぶって 69 00:09:03,236 --> 00:09:05,236 許してくれ 70 00:09:34,200 --> 00:09:36,200 赤穂の歌か 71 00:09:47,280 --> 00:09:49,780 どうしてるかな 内蔵助は 72 00:10:50,009 --> 00:10:53,846 内蔵助殿 いや 吉報です 73 00:10:53,846 --> 00:10:58,784 早速 家中の者や領民一党へも 知らしてやらねばなりますまい 74 00:10:58,784 --> 00:11:00,920 何が吉報です 75 00:11:00,920 --> 00:11:03,990 チッ 大変な物入りですぞ 76 00:11:03,990 --> 00:11:06,859 どうして殿は ご辞退なさらなかったのか 77 00:11:06,859 --> 00:11:12,498 第一 あんな激しいご気性で この大役が務まりますかどうか 78 00:11:12,498 --> 00:11:14,967 だから お薬になりましょう 79 00:11:14,967 --> 00:11:19,972 人間ご修行あそばすには またとない折です 80 00:11:19,972 --> 00:11:22,141 1000両なら安いと思いませんか? 81 00:11:22,141 --> 00:11:26,546 何を悠長な 1000両は大金ですぞ! 82 00:11:26,546 --> 00:11:28,814 殿のご成長は 83 00:11:28,814 --> 00:11:32,952 我々 家中の者や領民にとっても 84 00:11:32,952 --> 00:11:35,721 まことに幸せなことです 85 00:11:35,721 --> 00:11:38,958 しかし吉良殿への礼物も ろくにしないで 86 00:11:38,958 --> 00:11:41,694 1000両 要るなんて けしからん! 87 00:11:41,694 --> 00:11:44,130 吉良殿への礼物については 88 00:11:44,130 --> 00:11:47,800 至急 殿へ手紙で お勧めするつもりです 89 00:11:47,800 --> 00:11:50,469 それでは ますます 出費がかさむばかりじゃ 90 00:11:50,469 --> 00:11:53,272 やむを得ません 大事なことです 91 00:11:53,272 --> 00:11:55,908 面白うもない 92 00:11:55,908 --> 00:11:59,645 今日 御金蔵にある金銀は 一体 誰がためだと思わっしゃる? 93 00:11:59,645 --> 00:12:01,647 はあ 分かっております ええい 94 00:12:01,647 --> 00:12:03,816 腹の立つのは江戸の奴らじゃ 95 00:12:03,816 --> 00:12:05,952 安井 藤井の輩です 96 00:12:05,952 --> 00:12:09,755 あいつら 国元の金を搾っては 97 00:12:09,755 --> 00:12:12,255 やたらに 使い果たすことしか知らん 98 00:12:14,627 --> 00:12:16,662 月岡 はっ 99 00:12:16,662 --> 00:12:19,462 妹に会ってきてやれ はっ 100 00:12:22,001 --> 00:12:27,401 源吾も京表へ 勘定方として今日 出立するぞ 101 00:12:30,476 --> 00:12:33,913 おい 源吾 おう 治右ヱか 102 00:12:33,913 --> 00:12:35,915 うん 捜したぞ いつ帰ったんだ? 103 00:12:35,915 --> 00:12:38,050 たった今だ おい 積もる話は 大石殿の屋敷でしよう 104 00:12:38,050 --> 00:12:40,987 いや 実は俺 勘定方を仰せつかって 105 00:12:40,987 --> 00:12:42,989 京表へ上るんだ うん 聞いた 106 00:12:42,989 --> 00:12:44,991 おい ちょっとぐらい いいだろ いや 107 00:12:44,991 --> 00:12:47,460 今 暇乞いしてきたばっかりだ フフフ 照れるな 108 00:12:47,460 --> 00:12:49,595 おい 妹にもう一度 会ってやれ 困る困る困る 109 00:12:49,595 --> 00:12:52,595 何を言うんだ 黙って ついて… 嫌だ 嫌だ 110 00:13:02,675 --> 00:13:04,810 月岡さん 111 00:13:04,810 --> 00:13:07,580 やあ 112 00:13:07,580 --> 00:13:09,815 遠路 ご苦労さまでした 113 00:13:09,815 --> 00:13:13,219 いやあ しばらく会わない間に すっかり 114 00:13:13,219 --> 00:13:15,855 見違えるほど立派に なられましたな 115 00:13:15,855 --> 00:13:18,024 あっ 今日はお祭りにでも? 116 00:13:18,024 --> 00:13:20,393 いえ あれは このたびの殿のご大役を 117 00:13:20,393 --> 00:13:22,395 無事お果たしなされますように 118 00:13:22,395 --> 00:13:24,597 領民どもが 祈願いたしてるんでございます 119 00:13:24,597 --> 00:13:28,134 あっ では主税殿も ご一緒でしたか 120 00:13:28,134 --> 00:13:31,537 ハハッ いやあ 御城代も さぞお喜びでしょう 121 00:13:31,537 --> 00:13:34,273 なあ おい こんな立派な 相談相手ができて 122 00:13:34,273 --> 00:13:37,009 うん そりゃもう このほうだって 123 00:13:37,009 --> 00:13:39,679 父上の血筋だけあって 我々の到底 及ぶところじゃないぞ 124 00:13:39,679 --> 00:13:41,681 そうか うん 125 00:13:41,681 --> 00:13:44,250 おはる殿もお待ちかねです ご一緒に参りましょう 126 00:13:44,250 --> 00:13:48,654 はっ ハッ おい 大高 照れるな 127 00:13:48,654 --> 00:13:52,154 いやあ… さあ 参りましょう 128 00:14:50,149 --> 00:14:53,652 ありがとうございます おじ様 ありがとう 129 00:14:53,652 --> 00:14:57,456 まあ かわいい お母様 130 00:14:57,456 --> 00:14:59,792 ありがとう存じます 131 00:14:59,792 --> 00:15:02,595 いろいろと お荷物も おありでございましょうに 132 00:15:02,595 --> 00:15:05,995 いいえ お気に入っていただければ 本望です 133 00:15:08,000 --> 00:15:12,438 主税 おはるさんに お兄上様がお待ちかねだと 134 00:15:12,438 --> 00:15:14,440 そう言っていらっしゃい はい 135 00:15:14,440 --> 00:15:18,310 いつも おはるが 大変ご厄介に相なりまして 136 00:15:18,310 --> 00:15:22,681 いいえ ご厄介を かけておりますのは 137 00:15:22,681 --> 00:15:25,785 子供やわたくしたち 138 00:15:25,785 --> 00:15:29,285 ほんとに気立てのいい 素直な方ですものね 139 00:15:31,223 --> 00:15:35,895 ご立派なお婿様を見つけて 差し上げねばと思っております 140 00:15:35,895 --> 00:15:38,697 何ぶん お願いいたします 141 00:15:38,697 --> 00:15:43,736 奥様のお眼鏡でしたら これ以上 確かなことはございません 142 00:15:43,736 --> 00:15:46,936 おお 元気そうだな 143 00:15:48,908 --> 00:15:50,943 おかえりなさいませ うん 144 00:15:50,943 --> 00:15:53,746 おはる お前は幸せ者だぞ 145 00:15:53,746 --> 00:15:56,882 こんなお優しい奥様のそばに いられて 146 00:15:56,882 --> 00:16:01,921 そうでしょうかしら な… 何をおっしゃいます 147 00:16:01,921 --> 00:16:06,592 つい先ほども 大高様がお帰りになるとすぐ 148 00:16:06,592 --> 00:16:09,695 あ… 奥様 149 00:16:09,695 --> 00:16:13,466 フフッ いいじゃありませんか 150 00:16:13,466 --> 00:16:17,036 お部屋の隅で シクシク泣いているんです 151 00:16:17,036 --> 00:16:21,707 ハハハハ 大高 事態は俺の思った以上だな 152 00:16:21,707 --> 00:16:25,177 月岡 俺はもう行くぞ おいおいおい 待て おい おい 153 00:16:25,177 --> 00:16:27,513 月岡様 は? 154 00:16:27,513 --> 00:16:30,683 江戸表の皆様 お変わりもなく? 155 00:16:30,683 --> 00:16:33,083 はっ 一同 元気です 156 00:16:36,455 --> 00:16:39,859 このたびのご大役 157 00:16:39,859 --> 00:16:44,259 皆様も さぞ ご心労のことでございましょう 158 00:17:38,150 --> 00:17:42,688 御家老 千馬三郎兵ヱで ございます 召しましたか? 159 00:17:42,688 --> 00:17:44,788 ああ 入れ はい 160 00:17:59,405 --> 00:18:02,441 病気と聞いたが その後 どうじゃな? 161 00:18:02,441 --> 00:18:05,511 はい もはや大丈夫でございます 162 00:18:05,511 --> 00:18:08,647 して ご用の趣は? 163 00:18:08,647 --> 00:18:12,985 殿 このたびのご大役 まことに おめでたいことじゃが 164 00:18:12,985 --> 00:18:15,955 心配なことが1つある 165 00:18:15,955 --> 00:18:20,593 殿の潔癖なご気性で 接伴役の吉良殿へ対しては 166 00:18:20,593 --> 00:18:24,363 賄に似た物は一切 贈りたくないと おっしゃるのじゃ 167 00:18:24,363 --> 00:18:26,463 はっ 168 00:18:28,400 --> 00:18:32,571 一徹孤高のご精神 169 00:18:32,571 --> 00:18:36,609 まことに尊いものではあるが 170 00:18:36,609 --> 00:18:39,278 お役目といい 場所柄といい 171 00:18:39,278 --> 00:18:43,415 ご指導役の吉良殿を 向こうへ回しては 172 00:18:43,415 --> 00:18:46,652 相手が相手だけに 173 00:18:46,652 --> 00:18:52,391 まかり間違えば お家の大事に ならんとも計りがたい 174 00:18:52,391 --> 00:18:54,391 はい 175 00:18:57,930 --> 00:19:04,036 そこで直々おいさめするつもりで 書いたのが この手紙だ 176 00:19:04,036 --> 00:19:06,338 殿は 177 00:19:06,338 --> 00:19:09,838 私の言うことは 聞いてくださると思う 178 00:19:11,844 --> 00:19:16,448 病後すまんが 家中並ぶ者のない そのほうの健脚 179 00:19:16,448 --> 00:19:20,619 お家のために役立ててもらいたい 180 00:19:20,619 --> 00:19:23,389 閉門が解かれたばかりの このわたくしに 181 00:19:23,389 --> 00:19:25,689 まことに身に余る大役 182 00:19:29,294 --> 00:19:35,401 21日には吉良殿へ 心ばかりの贈り物をするとある 183 00:19:35,401 --> 00:19:37,836 20日の日 日いっぱいには どうでも江戸屋敷へ 184 00:19:37,836 --> 00:19:40,005 入ってもらわねばならぬが 185 00:19:40,005 --> 00:19:42,107 あと6日しかない 186 00:19:42,107 --> 00:19:45,207 どうじゃ 無理じゃが やってくれるか? 187 00:19:47,813 --> 00:19:50,182 命に懸けましても 188 00:19:50,182 --> 00:19:54,186 6日で100と55里 189 00:19:54,186 --> 00:19:57,423 頼む 190 00:19:57,423 --> 00:20:00,259 一日30里以内なら 191 00:20:00,259 --> 00:20:02,259 楽でございます 192 00:20:13,439 --> 00:20:17,109 申し上げます 何事じゃ? 193 00:20:17,109 --> 00:20:19,178 ただ今 内村四郎兵ヱ 194 00:20:19,178 --> 00:20:22,147 福島屋宗八 他 ご領内お町方 195 00:20:22,147 --> 00:20:24,883 村方 浜方一党の16名がまかり越し 196 00:20:24,883 --> 00:20:28,654 神功寺八幡のお守りを 持参いたしましてござります 197 00:20:28,654 --> 00:20:32,091 何?神功寺八幡の守り? 198 00:20:32,091 --> 00:20:37,963 はい お殿様 このたびのご大役 滞りなく相済みますよう 199 00:20:37,963 --> 00:20:41,233 一同 水垢離を取って お受けしてまいった由 200 00:20:41,233 --> 00:20:44,002 是非とも御城代様より江戸表へ 201 00:20:44,002 --> 00:20:46,702 お届けが願いたいとのことで ござりまするが 202 00:20:49,742 --> 00:20:51,742 殿は 203 00:20:53,779 --> 00:20:57,279 殿はお幸せなお方じゃ 204 00:21:12,464 --> 00:21:14,964 俊足一日30里 205 00:21:17,236 --> 00:21:20,939 しかし頑丈無比の体も 1年の閉門の間に 206 00:21:20,939 --> 00:21:23,639 むしばまれていたのであろうか 207 00:21:44,263 --> 00:21:47,063 沼津の近くで発病しながらも… 208 00:21:58,277 --> 00:22:01,677 そして ついに2月20日の夜 209 00:22:04,316 --> 00:22:06,316 あ… 210 00:22:10,823 --> 00:22:13,325 か… 開門 211 00:22:13,325 --> 00:22:15,325 開門 212 00:22:19,565 --> 00:22:22,165 (戸を叩く音) 213 00:22:30,008 --> 00:22:33,979 おっ 千馬殿 おい しっかりしろ 214 00:22:33,979 --> 00:22:37,149 大変な熱だ しっかりせい 藤井又左ヱ門だぞ 215 00:22:37,149 --> 00:22:40,118 安井彦右ヱ門じゃ しっかりせい 216 00:22:40,118 --> 00:22:43,755 あっ これは ご両所殿 217 00:22:43,755 --> 00:22:46,892 こ… これ これ すぐ 殿へ 218 00:22:46,892 --> 00:22:50,629 ん?誰からじゃ? 219 00:22:50,629 --> 00:22:54,132 あ… 御城代様から お殿様へ 220 00:22:54,132 --> 00:22:56,635 何?大石からか? はい 221 00:22:56,635 --> 00:22:59,137 吉良家への贈り物やその他 222 00:22:59,137 --> 00:23:02,241 このたびのお役目に大事な… 大事なお手紙です 223 00:23:02,241 --> 00:23:04,509 一刻も早く殿へ 224 00:23:04,509 --> 00:23:07,346 すぐ殿へ お届けいたそう はい 225 00:23:07,346 --> 00:23:10,549 あっ かたじけない 226 00:23:10,549 --> 00:23:14,286 お願い… お願い申します 227 00:23:14,286 --> 00:23:17,689 おい お前たち 旅籠へ連れていけ 228 00:23:17,689 --> 00:23:19,689 他言いたすでないぞ 229 00:23:25,597 --> 00:23:27,966 いちいち国元から 指図を受けたのでは 230 00:23:27,966 --> 00:23:29,968 我々の面目は丸潰れです 231 00:23:29,968 --> 00:23:32,004 のう?安井殿 232 00:23:32,004 --> 00:23:34,904 江戸のことは任しておけ バカ者 233 00:23:59,665 --> 00:24:03,035 そなたも今年は元服だが 234 00:24:03,035 --> 00:24:05,037 はい 235 00:24:05,037 --> 00:24:11,143 どうじゃ 武士として一人前に やっていく心構えができたか? 236 00:24:11,143 --> 00:24:15,047 はい 及ばずながら 237 00:24:15,047 --> 00:24:19,518 ほう 立派な返事じゃが 238 00:24:19,518 --> 00:24:22,287 大丈夫かな? 239 00:24:22,287 --> 00:24:25,057 はい 大丈夫です 240 00:24:25,057 --> 00:24:28,760 だが学問といい 武芸といい 241 00:24:28,760 --> 00:24:30,829 まだまだ… 242 00:24:30,829 --> 00:24:33,432 あっ この石 ちょっと待て 243 00:24:33,432 --> 00:24:36,368 いえ 待てません いやあ 待てと言うに 244 00:24:36,368 --> 00:24:38,570 つい話に身が入って 見逃したのじゃ 245 00:24:38,570 --> 00:24:41,807 いえ 武士が一旦 打ち下ろしましたからには 246 00:24:41,807 --> 00:24:45,544 確か父上のお言葉にも 「碁も真剣勝負じゃ」と 247 00:24:45,544 --> 00:24:48,113 ハハッ ああ よしよし 248 00:24:48,113 --> 00:24:50,749 わしの負けじゃ 249 00:24:50,749 --> 00:24:52,851 では今度は2目に さしていただきます 250 00:24:52,851 --> 00:24:54,851 ああ やむを得まい 251 00:25:00,559 --> 00:25:03,862 父上様 おやすみなさいませ 252 00:25:03,862 --> 00:25:06,531 ああ おとなに休みなさい 253 00:25:06,531 --> 00:25:08,531 はい はい 254 00:25:12,371 --> 00:25:14,840 りく 255 00:25:14,840 --> 00:25:16,942 はい 何時であろう? 256 00:25:16,942 --> 00:25:21,279 はっ 間もなく 257 00:25:21,279 --> 00:25:23,815 五つでございましょうか 258 00:25:23,815 --> 00:25:25,815 五つ… 259 00:25:48,907 --> 00:25:53,078 着いたであろうな 千馬は 260 00:25:53,078 --> 00:25:55,247 はい もう今頃は 261 00:25:55,247 --> 00:25:59,885 お殿様のお手元に 届いていることでございましょう 262 00:25:59,885 --> 00:26:03,255 あの手紙さえ見ていただければ 263 00:26:03,255 --> 00:26:05,957 母上様 おやすみなさいませ 264 00:26:05,957 --> 00:26:09,594 はい おやすみなさい 265 00:26:09,594 --> 00:26:11,594 お母様 266 00:26:13,598 --> 00:26:15,898 母上様 はいはい 267 00:26:19,638 --> 00:26:22,638 さあ おとなにお休みなさい 268 00:26:26,611 --> 00:26:29,648 お母様 269 00:26:29,648 --> 00:26:31,648 何ですか? 270 00:26:33,652 --> 00:26:38,152 まあ いつまでも そのように甘えて 271 00:27:26,004 --> 00:27:28,640 いやあ これはいかんいかん 272 00:27:28,640 --> 00:27:31,510 こういうお心遣いは 構えて ご無用なことじゃ 273 00:27:31,510 --> 00:27:33,512 そう仰せられずと 274 00:27:33,512 --> 00:27:37,215 弟子入りの束脩として 曲げて お納めのほどを 275 00:27:37,215 --> 00:27:40,385 さようか せっかくのお志じゃ 276 00:27:40,385 --> 00:27:42,988 ありがたく頂戴つかまつる ヘヘヘ 277 00:27:42,988 --> 00:27:48,260 饗応の役目など さして まあ 心配なさるほどのことはない 278 00:27:48,260 --> 00:27:51,196 心得るべきこと なすべきこと 279 00:27:51,196 --> 00:27:55,700 この吉良が いちいち 教えてさんぜましょう 280 00:27:55,700 --> 00:27:57,969 (たんを吐く音) 281 00:27:57,969 --> 00:28:00,939 はっ よろしくお願いいたします 282 00:28:00,939 --> 00:28:04,676 あー 283 00:28:04,676 --> 00:28:06,845 申し上げます 284 00:28:06,845 --> 00:28:11,983 浅野家江戸家老 安井彦右ヱ門殿 並びに藤井又左ヱ門殿 285 00:28:11,983 --> 00:28:13,985 ご挨拶にまかり出られました 286 00:28:13,985 --> 00:28:17,822 あ?家老が? 287 00:28:17,822 --> 00:28:20,292 あー まあ 288 00:28:20,292 --> 00:28:22,994 いかが計らいましょう 289 00:28:22,994 --> 00:28:25,197 まあ 通せ はっ 290 00:28:25,197 --> 00:28:28,166 わたくしは これで 失礼いたしまする 291 00:28:28,166 --> 00:28:32,404 まあ いいではないか 家老などに遠慮なさることはない 292 00:28:32,404 --> 00:28:37,576 いや 家老はとにかく そのご進物にご遠慮いたしたい 293 00:28:37,576 --> 00:28:42,681 我々と違って浅野家は ご裕福をもって聞こえるお家柄 294 00:28:42,681 --> 00:28:45,350 さぞ お見事であろうと存じまして 295 00:28:45,350 --> 00:28:48,220 ハッ いや 何を言わっしゃる 296 00:28:48,220 --> 00:28:52,757 贈り物の良しあしは 中身よりもここじゃ ここじゃ 297 00:28:52,757 --> 00:28:54,993 ヘヘヘ 298 00:28:54,993 --> 00:28:58,793 恐れ入ります ではこれにて 299 00:29:23,521 --> 00:29:26,558 初めて御意を得ます わたくしどもは… 300 00:29:26,558 --> 00:29:30,929 浅野殿はご病気かな? いえ 病気など… 301 00:29:30,929 --> 00:29:34,733 その… 病気というほどのことも ございませんが 302 00:29:34,733 --> 00:29:39,404 その… ちょっと風邪気味で 伏せっておりますので 303 00:29:39,404 --> 00:29:43,875 ん?だいぶ手の込んだ病気と 見えるな 304 00:29:43,875 --> 00:29:47,345 はっ よって 305 00:29:47,345 --> 00:29:50,949 我々 代理としてまかり出ました 306 00:29:50,949 --> 00:29:54,319 長矩 このたびの大役につきまして 307 00:29:54,319 --> 00:29:57,155 何ぶん よろしゅう 308 00:29:57,155 --> 00:29:59,291 よろしゅうとは何をじゃ? 309 00:29:59,291 --> 00:30:02,560 はい それはつまり… その… 310 00:30:02,560 --> 00:30:06,531 饗応役として心がくべきこと 311 00:30:06,531 --> 00:30:08,566 その他につきまして 312 00:30:08,566 --> 00:30:12,737 あー 何よりも心がくべきことは 金遣いじゃ 313 00:30:12,737 --> 00:30:17,008 あらゆる方面に惜しみなく 金を使うことじゃ 314 00:30:17,008 --> 00:30:19,911 浅野家は評判のご裕福 315 00:30:19,911 --> 00:30:22,814 まあ そこに抜かりはないようにな 316 00:30:22,814 --> 00:30:26,314 殿に よく くれぐれも 申し上げることじゃ 317 00:30:38,630 --> 00:30:41,900 まあ その他のことは 318 00:30:41,900 --> 00:30:44,469 勅使ご到着の前日 319 00:30:44,469 --> 00:30:49,140 すなわち3月10日正 未の刻 320 00:30:49,140 --> 00:30:54,145 ご宿泊所たる辰の口伝奏屋敷 下検分の際に 321 00:30:54,145 --> 00:30:57,282 また改めて ご伝授申し上げることにする 322 00:30:57,282 --> 00:30:59,282 はっ 323 00:31:01,286 --> 00:31:03,755 何か まだ用があるのか? 324 00:31:03,755 --> 00:31:06,624 はい あ… 325 00:31:06,624 --> 00:31:10,061 これは ほんの 326 00:31:10,061 --> 00:31:13,161 ご挨拶の印として… はい 327 00:31:41,326 --> 00:31:44,095 うーん 浅野殿は 328 00:31:44,095 --> 00:31:47,565 吉良に猫でも下さるおつもりかな 329 00:31:47,565 --> 00:31:52,036 将軍家に次いで犬様が 幅を利かせるご時世に 330 00:31:52,036 --> 00:31:56,107 ヘヘヘ さりとは皮肉なお方じゃ 331 00:31:56,107 --> 00:32:01,780 世の風習慣例が よほど お嫌いなお方と見えるな 332 00:32:01,780 --> 00:32:05,480 ハハッ まあ 結構なお心がけじゃ 333 00:32:07,452 --> 00:32:10,288 あー 大儀であったのう 334 00:32:10,288 --> 00:32:13,258 あー そうそう 335 00:32:13,258 --> 00:32:16,661 3月10日 下検分までに 336 00:32:16,661 --> 00:32:22,066 伝奏屋敷内の畳 建具 道具類の一切 337 00:32:22,066 --> 00:32:25,403 破損した箇所は 必ず修理しておくのだぞ 338 00:32:25,403 --> 00:32:27,603 ははっ はっ 339 00:32:34,879 --> 00:32:38,079 3月10日午後2時頃 340 00:33:04,809 --> 00:33:08,813 あー 伊達殿 お役目 ご苦労でございますな 341 00:33:08,813 --> 00:33:13,117 はっ 吉良殿には わざわざ恐れ入ります 342 00:33:13,117 --> 00:33:16,721 伊達殿 別殿へご案内を 343 00:33:16,721 --> 00:33:19,390 順序として本殿より 344 00:33:19,390 --> 00:33:25,563 いや 順序は まず この検分役にお任せ願いたい 345 00:33:25,563 --> 00:33:27,663 御意 346 00:33:39,511 --> 00:33:44,883 この衝立は どなたが お立てになったのじゃ?ん? 347 00:33:44,883 --> 00:33:49,053 はっ その衝立は以前より そこにありましたものです 348 00:33:49,053 --> 00:33:51,055 けしからん 349 00:33:51,055 --> 00:33:54,726 かかる異国風の物は 勅使饗応には無礼千万じゃ 350 00:33:54,726 --> 00:33:57,395 早速 取り替えさっしゃい 351 00:33:57,395 --> 00:33:59,497 恐れ入りました 早速 取り替えまする 352 00:33:59,497 --> 00:34:01,499 不調法の段 ひらにお許しくださいませ 353 00:34:01,499 --> 00:34:04,035 当たり前じゃ 354 00:34:04,035 --> 00:34:07,705 浅野殿 ひどく ご不快のご様子じゃが 355 00:34:07,705 --> 00:34:10,608 やむを得ませんな 356 00:34:10,608 --> 00:34:15,647 勅使饗応は すべて前例故実に 従わねばなりませんでな 357 00:34:15,647 --> 00:34:17,647 お分かりかな? 358 00:34:36,367 --> 00:34:38,703 磯貝 富森 上屋敷へ行って 359 00:34:38,703 --> 00:34:40,705 手頃な衝立 5~6枚 すぐ運ばしてくれ 360 00:34:40,705 --> 00:34:42,705 はっ はっ 361 00:35:00,124 --> 00:35:03,394 申し訳ござりません わたくしの手落ちでござりました 362 00:35:03,394 --> 00:35:05,663 磯貝 富森の両名を 走らせましたれば 363 00:35:05,663 --> 00:35:10,001 ほどなく持参いたすと思います いましばらく お待ちくださりませ 364 00:35:10,001 --> 00:35:12,303 源五 余は もう帰ってもよいか? 365 00:35:12,303 --> 00:35:15,206 いえいえ 大事なお役目で ござりますれば 366 00:35:15,206 --> 00:35:18,176 殿がおりませいでは 何かと不都合と存じますれば 367 00:35:18,176 --> 00:35:20,178 いましばらくのご辛抱を 368 00:35:20,178 --> 00:35:23,948 そうか 余がおらんでは 不都合だと申すのか 369 00:35:23,948 --> 00:35:26,248 はい やむを得ん 370 00:35:29,621 --> 00:35:32,921 何事も ご忍耐が 肝心でござりまする 371 00:35:58,216 --> 00:36:01,116 申の刻 午後4時 372 00:36:05,323 --> 00:36:08,059 と… 殿 吉良殿を 見てまいりましょうか? 373 00:36:08,059 --> 00:36:11,059 ならん!見苦しいまねはおけ 374 00:36:20,705 --> 00:36:22,705 碁なぞ打っている 375 00:36:35,520 --> 00:36:38,620 酉の刻 午後6時 376 00:37:00,078 --> 00:37:02,580 酉の刻の中刻 377 00:37:02,580 --> 00:37:05,717 午後7時 378 00:37:05,717 --> 00:37:09,020 ハハハ 思いのほかの強敵じゃ 379 00:37:09,020 --> 00:37:13,120 残念ながら一番 負け越しかな ハハハ 380 00:37:17,528 --> 00:37:20,098 いや お待たせした 381 00:37:20,098 --> 00:37:23,167 いえ どうつかまつりまして 382 00:37:23,167 --> 00:37:26,471 案外 あちらの検分が 手惑いましてな 383 00:37:26,471 --> 00:37:28,573 (たんの絡む音) 384 00:37:28,573 --> 00:37:32,210 では玄関の衝立から ご検分 願います 385 00:37:32,210 --> 00:37:34,445 待たっしゃい 386 00:37:34,445 --> 00:37:37,315 これは今夜中に 参るんでしょうな? 387 00:37:37,315 --> 00:37:39,717 な… 何でござりましょうか? 388 00:37:39,717 --> 00:37:42,520 畳じゃ 389 00:37:42,520 --> 00:37:46,190 見るところ どの部屋も まだ変わっておらんじゃないか 390 00:37:46,190 --> 00:37:49,827 畳 建具の類は破損した所だけ 繕えばよいと承りました 391 00:37:49,827 --> 00:37:52,363 誰がそのようなことを言った? あなたご自身が 392 00:37:52,363 --> 00:37:54,565 わしが?いつどこで? 393 00:37:54,565 --> 00:37:56,834 お屋敷で わたくしどもの家老へ確かに 394 00:37:56,834 --> 00:37:59,737 黙らっしゃい! 395 00:37:59,737 --> 00:38:02,273 勅使 院使をお迎え申すのに 396 00:38:02,273 --> 00:38:06,110 この畳を新しくするぐらいのこと 普通の人間なら 397 00:38:06,110 --> 00:38:09,313 誰しも たやすく 分別のつくところだ 398 00:38:09,313 --> 00:38:13,785 ことに身不肖ながら 高家の肝いりだ 399 00:38:13,785 --> 00:38:17,054 さようなバカげたことを 申すはずは万々ない 400 00:38:17,054 --> 00:38:20,591 しかし家老2人ながら 確かに承ったと申しております 401 00:38:20,591 --> 00:38:25,196 くどい!論より証拠 別殿を見られい 402 00:38:25,196 --> 00:38:27,765 伊達殿は二百余畳 残らず 403 00:38:27,765 --> 00:38:31,269 目も覚めるばかりの新しい畳に 替えておるわ 404 00:38:31,269 --> 00:38:33,304 えっ! 嘘だと思うなら 405 00:38:33,304 --> 00:38:35,704 ご自身で見てきさっしゃい 406 00:38:37,909 --> 00:38:41,412 それとも明早朝 ご到着を控えて 407 00:38:41,412 --> 00:38:44,415 本殿 二百三十余枚の畳 408 00:38:44,415 --> 00:38:49,086 今夜中に新しく取り替える才覚が おありかな? 409 00:38:49,086 --> 00:38:51,422 フハハ 浅野殿 410 00:38:51,422 --> 00:38:54,325 どうなさる?フハハ 411 00:38:54,325 --> 00:38:57,695 大変な手落ちをしでかされたな 412 00:38:57,695 --> 00:39:00,698 この上は検分する必要もなかろう 413 00:39:00,698 --> 00:39:03,434 では御免 414 00:39:03,434 --> 00:39:06,034 フフフフ 415 00:39:17,815 --> 00:39:21,115 殿 源五にお任せ願いまする お任せを 416 00:39:34,665 --> 00:39:38,803 吉蔵 吉蔵はおるか? 浅野家の家臣 片岡と磯貝だ 417 00:39:38,803 --> 00:39:42,240 あっ これはこれは 旦那方 418 00:39:42,240 --> 00:39:44,909 どうなすったんで?さあさあ いやいや 急ぐのだ 419 00:39:44,909 --> 00:39:46,978 吉蔵 何も言わずに 引き受けてくれ 420 00:39:46,978 --> 00:39:50,081 費用はいくらかかっても構わん 伝奏屋敷の畳232枚 421 00:39:50,081 --> 00:39:53,551 明朝 明け六つまで取り替えてくれ え?冗談言っちゃいけません 422 00:39:53,551 --> 00:39:55,553 いくら お屋敷に お世話になってるからったって 423 00:39:55,553 --> 00:39:57,822 そんなことは あんた… そこを押して頼む 424 00:39:57,822 --> 00:40:01,058 男と見込んで頼む へい 一体どうしたことで? 425 00:40:01,058 --> 00:40:03,494 詳しくは言えぬが 殿の威信に関わる大事な場合じゃ 426 00:40:03,494 --> 00:40:06,697 無理は承知の上だ 頼む 427 00:40:06,697 --> 00:40:08,933 吉蔵 頼む 428 00:40:08,933 --> 00:40:11,002 やりやしょう やってくれるか? 429 00:40:11,002 --> 00:40:13,504 やらしていただきやしょう ありがとう かたじけない 430 00:40:13,504 --> 00:40:15,504 かたじけない 431 00:40:18,743 --> 00:40:22,313 おい おい! へい 432 00:40:22,313 --> 00:40:24,615 お前たち この半時の間に 腕っこきの職人を 433 00:40:24,615 --> 00:40:26,617 できるだけ集めて 伝奏屋敷へ引っ張っていけ 434 00:40:26,617 --> 00:40:28,617 へい! 435 00:40:35,192 --> 00:40:38,062 おい 畳屋仲間の一大事だ 早く来い 早く来い 436 00:40:38,062 --> 00:40:41,632 おい 勢ぞろいだ 針を持った職人はみんな出てこい 437 00:40:41,632 --> 00:40:43,768 (戸を叩く音) 438 00:40:43,768 --> 00:40:47,939 江戸っ子の一大事だぞ おい 畳職人のみんな 起きるんだ 439 00:40:47,939 --> 00:40:50,741 おい 起きろ起きろ 天下の一大事だ! 440 00:40:50,741 --> 00:40:54,111 おい 畳屋職人なら 縫い針持って みんな出てこい 441 00:40:54,111 --> 00:40:57,248 おう 親方 畳屋の一大事だ 早く みんなも起きて 442 00:40:57,248 --> 00:40:59,248 早く早く 443 00:41:56,907 --> 00:41:58,907 すまんな 444 00:42:02,113 --> 00:42:05,049 おう おめえっち ヘソの緒 切ってこの方 445 00:42:05,049 --> 00:42:07,818 こんな立派なお武家様に お茶の給仕まで 446 00:42:07,818 --> 00:42:09,820 してもらったことが ただの1回でもあるか? 447 00:42:09,820 --> 00:42:13,357 え?あるめえ ざまあ見やがれ 448 00:42:13,357 --> 00:42:15,626 そう言うとっつぁん どうなんだよ ヘヘッ 449 00:42:15,626 --> 00:42:17,628 はばかりながら オギャっと生まれた途端 450 00:42:17,628 --> 00:42:19,764 畳針をつかんだ 骨の髄からの職人だい 451 00:42:19,764 --> 00:42:22,700 そんなことのあろうはずがねえさ あれ?威張ってやがらあ 452 00:42:22,700 --> 00:42:26,771 当たりめえよ いいか 万が一 明日の明け六つまでに 453 00:42:26,771 --> 00:42:29,206 割り当てだけの仕事が 上げらんねえ意気地なしは 454 00:42:29,206 --> 00:42:32,843 うぬの畳針で のど突いて 申し開きするんだぞ 455 00:42:32,843 --> 00:42:35,479 やかましい つまらねえこと 並べる暇があったら 456 00:42:35,479 --> 00:42:38,082 1針でも多く刺したほうが ご当家のためになるんだぜ 457 00:42:38,082 --> 00:42:41,152 このバカ野郎 ざまあ見やがれ へへえんだ 458 00:42:41,152 --> 00:42:43,287 この野郎 459 00:42:43,287 --> 00:42:45,389 違えねえ てめえの言うとおりだ 460 00:42:45,389 --> 00:42:48,259 (一同の笑い) 461 00:42:48,259 --> 00:42:50,561 おう みんな 今の意気で頼むぜ 462 00:42:50,561 --> 00:42:52,561 おう! おう! 463 00:45:00,090 --> 00:45:02,193 殿 え? 464 00:45:02,193 --> 00:45:05,529 できました できたか? 465 00:45:05,529 --> 00:45:07,829 できました そうか 466 00:45:14,305 --> 00:45:17,205 おっ 殿様のお出ましだぞ あっ 467 00:45:28,085 --> 00:45:30,688 源五 できたな 468 00:45:30,688 --> 00:45:33,123 はい できた 469 00:45:33,123 --> 00:45:35,759 はい 470 00:45:35,759 --> 00:45:39,863 できたな 源五 源五 471 00:45:39,863 --> 00:45:43,500 できた できた できた できた 472 00:45:43,500 --> 00:45:46,100 殿のお徳でござりまする 473 00:45:51,575 --> 00:45:54,411 皆の者 474 00:45:54,411 --> 00:45:56,611 浅野内匠頭長矩 475 00:45:58,616 --> 00:46:01,885 そのほうたちに 476 00:46:01,885 --> 00:46:04,485 何と礼を言っていい… 477 00:46:06,523 --> 00:46:10,394 一生 恩に着る 478 00:46:10,394 --> 00:46:14,194 (一同のすすり泣き) 479 00:46:32,182 --> 00:46:37,087 3月12日 勅使と院使は 千代田城へ登城 480 00:46:37,087 --> 00:46:42,487 将軍と対面して 天皇と上皇のお言葉を伝えました 481 00:46:58,042 --> 00:47:01,045 翌3月13日 482 00:47:01,045 --> 00:47:05,845 勅使 院使 ご慰労の 能の会が催されました 483 00:47:12,056 --> 00:47:17,656 そして元禄14年3月14日 484 00:47:43,120 --> 00:47:45,756 本日 将軍家より 485 00:47:45,756 --> 00:47:48,726 勅使 院使への奉答があって 486 00:47:48,726 --> 00:47:51,326 勅使下向の儀式が終わる 487 00:47:53,263 --> 00:47:58,001 長矩も やっと重荷が 下ろせるというものじゃ 488 00:47:58,001 --> 00:48:02,506 のう?堀部 よくぞ ご辛抱くださいました 489 00:48:02,506 --> 00:48:06,543 うん これも片岡始め 490 00:48:06,543 --> 00:48:09,313 富森 磯貝らが ついていてくれたからじゃ 491 00:48:09,313 --> 00:48:12,416 さよう 私が おつきいたしましたならば 492 00:48:12,416 --> 00:48:15,916 上野め とっくに 斬っておりましたでしょう 493 00:48:17,955 --> 00:48:23,360 余としても 昨日も一昨日も 494 00:48:23,360 --> 00:48:25,460 幾度も腹に据えかね… 495 00:48:28,599 --> 00:48:31,435 フフフ 496 00:48:31,435 --> 00:48:34,004 しかし もう大丈夫じゃ 497 00:48:34,004 --> 00:48:36,404 そのほうたちに心配はかけぬぞ 498 00:48:43,680 --> 00:48:47,980 尊いご忍耐でございました 499 00:49:03,567 --> 00:49:05,567 それも今日一日 500 00:49:08,572 --> 00:49:10,872 一日の辛抱じゃ 501 00:49:14,244 --> 00:49:19,116 殿 無事に お務めなさいますれば 502 00:49:19,116 --> 00:49:21,418 殿のご意思も通り 503 00:49:21,418 --> 00:49:26,156 ひいては家中の誉れ 504 00:49:26,156 --> 00:49:29,493 国元一同も 505 00:49:29,493 --> 00:49:32,293 どのように喜ぶかと存じます 506 00:49:41,772 --> 00:49:44,572 大石より何とも言ってまいらぬが 507 00:49:46,543 --> 00:49:50,214 もしや患うておるのでは あるまいか 508 00:49:50,214 --> 00:49:55,285 殿 一度 国元へ尋ねますれば 509 00:49:55,285 --> 00:49:57,685 ああ そうしてくれぬか 510 00:50:10,067 --> 00:50:13,437 殿 ご登城のお時刻でございます 511 00:50:13,437 --> 00:50:16,573 そうか あっ しばらく 512 00:50:16,573 --> 00:50:20,544 殿 本日の式服は 烏帽子 大紋と聞いておりまするが 513 00:50:20,544 --> 00:50:24,214 いや 間違いない 今日の儀式は普通の長裃と 514 00:50:24,214 --> 00:50:26,283 確かに吉良殿から聞いた 515 00:50:26,283 --> 00:50:28,683 ハッ 心配いたすな 516 00:51:49,399 --> 00:51:51,401 藤井様 安井様 517 00:51:51,401 --> 00:51:54,871 おっ お… おぬし もう よくなったか? 518 00:51:54,871 --> 00:51:57,074 さあ 千馬 わしらの部屋へ行こう 519 00:51:57,074 --> 00:52:00,110 御免こうむりましょう まだ病は治ってませんが 520 00:52:00,110 --> 00:52:03,046 帰国する前に殿の晴れのお姿を 一目 拝んでおきたいと 521 00:52:03,046 --> 00:52:05,048 思って やって参っただけです 522 00:52:05,048 --> 00:52:09,052 お前には旅籠銭も渡さにゃならん さあ わしの部屋へ来なさい 523 00:52:09,052 --> 00:52:11,288 要りません それぐらい 自分で払って帰ります 524 00:52:11,288 --> 00:52:14,057 千馬 一体どうしたのだ? 525 00:52:14,057 --> 00:52:17,060 堀部 千馬のことは 私たちに任しといてくれ 526 00:52:17,060 --> 00:52:19,062 さあ 行こう 大きなお世話です 527 00:52:19,062 --> 00:52:21,064 それより御城代のお手紙は? あー 千馬千馬 さあ 528 00:52:21,064 --> 00:52:26,069 まあ 待て 大石殿からの手紙と 言ったな?誰に宛てた手紙だ 529 00:52:26,069 --> 00:52:28,469 お殿様へです 何?殿へ? 530 00:52:30,407 --> 00:52:32,609 その手紙は まだ 殿の手に入っておらんぞ 531 00:52:32,609 --> 00:52:34,609 えっ 何ですって? 532 00:52:36,780 --> 00:52:39,316 ご両所 533 00:52:39,316 --> 00:52:42,216 その手紙… 手紙をどうなされた? 534 00:52:54,398 --> 00:52:58,435 殿 今日一日 どのようなことがありましても 535 00:52:58,435 --> 00:53:02,435 お目をおつぶりなされて うん 分かっておる 536 00:53:04,408 --> 00:53:07,811 それにしても長裃に 間違いござりますまいな? 537 00:53:07,811 --> 00:53:11,581 またか… 大丈夫だと申すのに 538 00:53:11,581 --> 00:53:14,081 吉良殿には念を押して 確かめてあるのじゃ 539 00:53:34,638 --> 00:53:42,879 間もなく 御勅使 ご登城あそばされます 540 00:53:42,879 --> 00:53:45,949 持ち場 持ち場に 541 00:53:45,949 --> 00:53:51,349 就かれましょう 542 00:54:21,752 --> 00:54:25,852 (一同の笑い) 543 00:54:47,410 --> 00:54:49,646 源五! いかがなされました? 544 00:54:49,646 --> 00:54:51,646 式服は… 545 00:54:55,952 --> 00:54:58,855 烏帽子 大紋であった 546 00:54:58,855 --> 00:55:01,491 はっ ご安心なされませ かかることもあろうかと 547 00:55:01,491 --> 00:55:04,494 烏帽子 大紋 持参いたしました え? 548 00:55:04,494 --> 00:55:06,963 源五 持ってきておるのか?え? 549 00:55:06,963 --> 00:55:08,999 そうか 550 00:55:08,999 --> 00:55:11,699 さあ お早く うん かたじけない 551 00:55:25,182 --> 00:55:27,282 お願い申す 552 00:55:29,419 --> 00:55:33,423 浅野の家臣 千馬三郎兵ヱ 殿に急用あって お通し願いたい 553 00:55:33,423 --> 00:55:37,394 せっかくながら 本日は 勅使饗応の御儀式につき 554 00:55:37,394 --> 00:55:39,396 ご遠慮くだされ 555 00:55:39,396 --> 00:55:42,699 このように通門証を 持参いたしますれば 556 00:55:42,699 --> 00:55:44,701 殿の一大事に関わる この書状 557 00:55:44,701 --> 00:55:47,204 何とぞ 何とぞ お通しのほどを 558 00:55:47,204 --> 00:55:51,041 いかような儀があろうとも 間もなく 勅使ご到着の刻につき 559 00:55:51,041 --> 00:55:53,176 通すことはまかりならん 560 00:55:53,176 --> 00:55:56,746 でもござりましょうが 火急の用件なれば 561 00:55:56,746 --> 00:55:59,316 ただ殿へ お手渡しいたすだけのこと 562 00:55:59,316 --> 00:56:02,452 お慈悲だと思し召し 何とぞ お通しのほどを 563 00:56:02,452 --> 00:56:05,088 お願いします お願いします お願いします 564 00:56:05,088 --> 00:56:08,091 ええい くどい! 565 00:56:08,091 --> 00:56:10,460 何とぞ この書状を この書状を 待たれい 566 00:56:10,460 --> 00:56:15,365 殿へ 殿へ お願い お願い お願い お願い申す 567 00:56:15,365 --> 00:56:17,467 さあ 急いでくれ はっ 568 00:56:17,467 --> 00:56:21,167 勅使お迎えの作法 吉良殿に 一刻も早く たださねばならん 569 00:56:23,173 --> 00:56:26,543 殿 くれぐれも ご忍耐なされまするよう 570 00:56:26,543 --> 00:56:28,543 うん 571 00:56:32,215 --> 00:56:34,215 ご辛抱を 572 00:56:36,720 --> 00:56:38,720 分かっておる 573 00:56:53,570 --> 00:56:55,705 あっ 吉良殿を ご存じではござらぬか? 574 00:56:55,705 --> 00:56:57,705 存じません 575 00:57:01,077 --> 00:57:05,515 吉良殿をご存じではないか? いや 一向に 576 00:57:05,515 --> 00:57:08,585 あ… あの… き… 御勅使は 577 00:57:08,585 --> 00:57:13,490 間もなく和田倉門に 578 00:57:13,490 --> 00:57:18,490 かかられます 579 00:57:22,499 --> 00:57:26,599 吉良殿!吉良殿! 580 00:57:41,184 --> 00:57:45,822 吉良殿 吉良殿! 581 00:57:45,822 --> 00:57:49,025 吉良殿! 582 00:57:49,025 --> 00:57:53,930 吉良殿!吉良殿! 583 00:57:53,930 --> 00:57:56,967 吉良殿! 584 00:57:56,967 --> 00:57:59,502 吉良殿? 585 00:57:59,502 --> 00:58:02,839 吉良殿! 586 00:58:02,839 --> 00:58:06,409 あっ 伊達殿 あ… 吉良殿はどちらにおいでか? 587 00:58:06,409 --> 00:58:08,409 存じません 588 00:58:10,413 --> 00:58:12,413 吉良殿! 589 00:58:15,785 --> 00:58:18,054 吉良殿! 590 00:58:18,054 --> 00:58:21,054 吉良殿!吉良殿! 591 00:58:22,993 --> 00:58:25,061 あっ 592 00:58:25,061 --> 00:58:27,330 吉良殿 593 00:58:27,330 --> 00:58:30,266 浅野様 お捜し申しておりました ああ 594 00:58:30,266 --> 00:58:33,737 梶川輿惣兵ヱ 本夕 桂昌院様のご使者として 595 00:58:33,737 --> 00:58:36,139 勅使 御宿所に お訪ねせねばなりません 596 00:58:36,139 --> 00:58:39,976 奉答の儀 相済みましたならば 手前にお知らせ願いとう存じます 597 00:58:39,976 --> 00:58:43,546 ああ あ… 承知いたした 598 00:58:43,546 --> 00:58:45,949 吉良殿 しばらく しばらくお待ちください 599 00:58:45,949 --> 00:58:49,486 吉良殿 し… しばらくお待ちください 600 00:58:49,486 --> 00:58:53,189 浅野殿 困りますな 601 00:58:53,189 --> 00:58:56,926 先ほどは長裃で ご登城なされたとか 602 00:58:56,926 --> 00:58:58,928 お… お願いでござる 603 00:58:58,928 --> 00:59:01,998 勅使お出迎えのご作法 ご教授 願い上げまする 604 00:59:01,998 --> 00:59:06,202 何と言われる かかる大役を お受けしておきながら… 605 00:59:06,202 --> 00:59:09,339 (むせ込み) 606 00:59:09,339 --> 00:59:11,508 かー ペッ 607 00:59:11,508 --> 00:59:16,046 まだ それしきのこと ご存じないとは 608 00:59:16,046 --> 00:59:19,949 お恥ずかしゅう存じます 609 00:59:19,949 --> 00:59:26,056 何とぞ… 何とぞ ご教授のほどを 610 00:59:26,056 --> 00:59:30,794 もはや暇がない おっつけ ご到着じゃ 611 00:59:30,794 --> 00:59:34,164 吉良殿 お願いで… お願い… お願いでございます 612 00:59:34,164 --> 00:59:36,164 あー くどい! 613 00:59:38,168 --> 00:59:41,271 お… お願いでございます 614 00:59:41,271 --> 00:59:45,375 勅使お迎えは式台の上にて いたすべきや または下へ下りて… 615 00:59:45,375 --> 00:59:48,545 あー 暇がない どかっしゃい 616 00:59:48,545 --> 00:59:51,448 いや 吉良殿 しばらく 617 00:59:51,448 --> 00:59:54,250 しばらく ええい くどい 618 00:59:54,250 --> 00:59:57,887 あっ! 619 00:59:57,887 --> 01:00:01,591 武士の… 武士の面を… 620 01:00:01,591 --> 01:00:06,591 当たったのじゃ ツラの置き所が悪かったのじゃ 621 01:00:12,402 --> 01:00:15,705 それは何のまねじゃ? 622 01:00:15,705 --> 01:00:17,905 わしを斬る気か? 623 01:00:21,010 --> 01:00:24,280 フフフフ 624 01:00:24,280 --> 01:00:27,350 ここを何と心得ておるのじゃ? 625 01:00:27,350 --> 01:00:29,552 殿中ですぞ 626 01:00:29,552 --> 01:00:34,190 しかも勅使下向の御儀式中 お忘れかな? 627 01:00:34,190 --> 01:00:36,993 フフフ フヘヘヘ 628 01:00:36,993 --> 01:00:40,897 いやはや あきれ果てたる饗応役 629 01:00:40,897 --> 01:00:44,701 フフッ 何じゃ その顔は? 630 01:00:44,701 --> 01:00:48,505 フフフフ それほど悔しいか 631 01:00:48,505 --> 01:00:50,773 ならば斬るがよい 632 01:00:50,773 --> 01:00:54,077 どうじゃ 斬れるか? 633 01:00:54,077 --> 01:00:58,114 斬れるものなら さあ斬れ 634 01:00:58,114 --> 01:01:01,985 フフフ 震えてござる 635 01:01:01,985 --> 01:01:07,485 かほどまで言われても刀も抜けぬ 腰抜け侍! 636 01:01:09,425 --> 01:01:13,925 フフフ 少しは骨身にこたえたか 637 01:01:16,099 --> 01:01:20,503 吉良殿!何とぞ 何とぞ お気を直され 638 01:01:20,503 --> 01:01:24,707 勅使お出迎えのご作法 ご伝授のほど 639 01:01:24,707 --> 01:01:27,810 願い上げまする 640 01:01:27,810 --> 01:01:30,110 ええい 離せ! 641 01:01:32,382 --> 01:01:37,554 田舎大名の泣きっ面 虫唾が走るわ 642 01:01:37,554 --> 01:01:40,023 フハハハハ 643 01:01:40,023 --> 01:01:43,026 吉良殿 お願い… お願い… 644 01:01:43,026 --> 01:01:46,329 ええい うるさい 645 01:01:46,329 --> 01:01:50,667 吉良殿 お願い… お願い… お願いでございまする 646 01:01:50,667 --> 01:01:54,404 ええい うるさい あっ! 647 01:01:54,404 --> 01:01:56,404 あっ 648 01:01:59,309 --> 01:02:02,845 ヘヘヘヘ フハハハ 649 01:02:02,845 --> 01:02:05,045 ハハハ 650 01:02:07,016 --> 01:02:10,216 うー… くくく… 651 01:02:27,537 --> 01:02:30,437 上野 待て! 何じゃ? 652 01:02:32,375 --> 01:02:34,375 うあっ! 653 01:02:36,946 --> 01:02:39,582 殿中だぞ 殿中ござる 654 01:02:39,582 --> 01:02:44,387 で… 殿中だ 殿中でござる 655 01:02:44,387 --> 01:02:47,090 待て! 殿中でござる 656 01:02:47,090 --> 01:02:50,193 殿中でござるぞ ご乱心 召されたか? 657 01:02:50,193 --> 01:02:53,963 放しませい 放せ 武士の情けだ 658 01:02:53,963 --> 01:02:57,163 場所をご覧めされ 気を確かに持たれい! 659 01:02:59,235 --> 01:03:02,372 待てい 放せ 660 01:03:02,372 --> 01:03:06,472 お静まりなされ! 放せ!待てい 661 01:03:08,478 --> 01:03:11,648 お待ちなされ 放せ 放せ 662 01:03:11,648 --> 01:03:14,384 待たれい お待ちなされ 663 01:03:14,384 --> 01:03:17,086 あ… 664 01:03:17,086 --> 01:03:19,289 もはや 665 01:03:19,289 --> 01:03:23,426 乱暴はつかまつりませぬ 666 01:03:23,426 --> 01:03:28,498 せめて衣紋の乱れ等を 直しとうござれど 667 01:03:28,498 --> 01:03:31,498 何とぞ お放しくだされ 668 01:03:45,315 --> 01:03:48,618 内匠頭長矩は そのまま身柄を 669 01:03:48,618 --> 01:03:52,818 愛宕下 田村右京太夫の屋敷へ 預けられ 670 01:03:55,058 --> 01:03:59,896 即日 切腹と決まりました 671 01:03:59,896 --> 01:04:03,399 検使の使いは荘田下総守 672 01:04:03,399 --> 01:04:08,805 副使 多門伝八郎 同じく大久保権左ヱ門 673 01:04:08,805 --> 01:04:12,942 何?内匠頭に一目会いたい? 674 01:04:12,942 --> 01:04:15,178 はい 675 01:04:15,178 --> 01:04:18,247 目には熱涙を浮かべ 676 01:04:18,247 --> 01:04:22,518 敬虔なうちにも 一歩も引かぬ その気迫 677 01:04:22,518 --> 01:04:27,590 平右ヱ門 思わず 涙を催してございます 678 01:04:27,590 --> 01:04:30,660 といって浅野は天下の罪人 679 01:04:30,660 --> 01:04:35,832 いや 内匠頭は罪人でも 家来に罪はございません 680 01:04:35,832 --> 01:04:38,101 しかし天下の法は曲げられぬ 681 01:04:38,101 --> 01:04:42,501 いや 今日のお裁きにおいては 老中が法を曲げられました 682 01:04:44,874 --> 01:04:49,779 内匠頭の切腹は 余儀ないこととしても 683 01:04:49,779 --> 01:04:52,882 吉良殿には ねんごろな手当を 加えられた上に 684 01:04:52,882 --> 01:04:55,218 何のお構いもなし 685 01:04:55,218 --> 01:04:57,854 しかるに今回の軋轢の元は 686 01:04:57,854 --> 01:05:00,723 吉良殿にあることは 何人も認めるところ 687 01:05:00,723 --> 01:05:04,927 さすれば明らかに片手落ちだ 688 01:05:04,927 --> 01:05:07,096 東照神君の 689 01:05:07,096 --> 01:05:10,333 「喧嘩両成敗」のご趣旨にも 背いている 690 01:05:10,333 --> 01:05:15,204 これ 役人として御政道への 批判は穏やかではないぞ 691 01:05:15,204 --> 01:05:17,673 失礼ながら それは卑屈だ 692 01:05:17,673 --> 01:05:19,742 上司や権門のなさることには 693 01:05:19,742 --> 01:05:22,912 何事によらず目をつぶっていろ とでも仰せられるのですか? 694 01:05:22,912 --> 01:05:26,015 それでもよいのだ それで秩序が保つのだ 695 01:05:26,015 --> 01:05:28,584 上司や権門の暴力を 取り締まるためには 696 01:05:28,584 --> 01:05:31,587 それぞれの役人もあり また法もある 697 01:05:31,587 --> 01:05:36,993 しかし その役人や法が 公平に動いておりますか? 698 01:05:36,993 --> 01:05:40,229 当世のお裁きでは上から下まで 699 01:05:40,229 --> 01:05:42,965 権門の介入や賄の贈収で 700 01:05:42,965 --> 01:05:45,201 動いているようなものでは ありませんか 701 01:05:45,201 --> 01:05:48,204 単にお裁きのみではない ご政治向き全般が 702 01:05:48,204 --> 01:05:51,073 権勢と賄で動いているような ものではありませんか 703 01:05:51,073 --> 01:05:54,510 内匠頭などは哀れな その生け贄にすぎません 704 01:05:54,510 --> 01:05:58,948 そして またしても 5万3000石の改易 705 01:05:58,948 --> 01:06:02,819 それが幕府の財政を救う 1つの手段かもしれません 706 01:06:02,819 --> 01:06:06,489 しかし そのため 500人の武士 707 01:06:06,489 --> 01:06:08,958 1500人の家族が路頭に迷い 708 01:06:08,958 --> 01:06:11,527 世の中は それだけ 住みにくくなるのです 709 01:06:11,527 --> 01:06:14,130 これっ 710 01:06:14,130 --> 01:06:17,800 少しは慎まぬか あまりといえば激しすぎるぞ 711 01:06:17,800 --> 01:06:23,473 荘田殿 激しすぎるのは 世の中の疲弊であって 712 01:06:23,473 --> 01:06:25,675 我々の言葉は ただそれを 713 01:06:25,675 --> 01:06:28,277 ありのままに言っているに すぎませんぞ 714 01:06:28,277 --> 01:06:32,148 浅野の旧臣の方は いかがいたしましょうか? 715 01:06:32,148 --> 01:06:36,352 私が後は引き受ける よきに計らってやれ 716 01:06:36,352 --> 01:06:41,891 ただし 無刀無腰で1人に限るぞ 717 01:06:41,891 --> 01:06:46,562 地に手足を着けて 決して言葉は交わさぬこと 718 01:06:46,562 --> 01:06:48,764 よいか? はい 719 01:06:48,764 --> 01:06:50,764 かしこまりました 720 01:08:41,310 --> 01:08:45,681 殿は元より孤高潔白のご気性 721 01:08:45,681 --> 01:08:51,721 かねがね内蔵助らの感服 つかまつりおるところに候えども 722 01:08:51,721 --> 01:08:55,591 はばかりなく申し上げ候えば 723 01:08:55,591 --> 01:08:59,562 このたびは世間の通例に従いて 724 01:08:59,562 --> 01:09:04,834 吉良殿へは十分の贈り物 あそばさるるよう 725 01:09:04,834 --> 01:09:09,805 残念ながら 我人共に法にも触れ 726 01:09:09,805 --> 01:09:13,242 また人をも損なわざる限り 727 01:09:13,242 --> 01:09:16,912 あえて世の俗人に まみるるもまた 728 01:09:16,912 --> 01:09:22,685 致し方なき次第と存じ上げ候 729 01:09:22,685 --> 01:09:25,154 吉良殿の人物たる 730 01:09:25,154 --> 01:09:31,127 はなはだ面白からざるよう 承り及び候えども 731 01:09:31,127 --> 01:09:33,696 何事も家臣のため 732 01:09:33,696 --> 01:09:38,234 領民のためと お覚悟 これありたく 733 01:09:38,234 --> 01:09:41,170 ただただ ご辛抱の上 734 01:09:41,170 --> 01:09:45,941 吉良殿とも あたうる限りの 親しきお付き合い 735 01:09:45,941 --> 01:09:51,313 伏してお願い申し上げおき候 736 01:09:51,313 --> 01:09:54,583 このたびの名誉あるご大役 737 01:09:54,583 --> 01:09:57,253 無事お果たしなさるるよう 738 01:09:57,253 --> 01:10:02,525 家中はもちろんのこと 領民一同もまた 739 01:10:02,525 --> 01:10:08,431 上下 誠を捧げて 祈念いたしおり候こと 740 01:10:08,431 --> 01:10:12,031 ここに重ねて申し上げ候 741 01:10:15,137 --> 01:10:17,137 遅かった 742 01:10:24,146 --> 01:10:26,916 遅かったぞ 743 01:10:26,916 --> 01:10:28,916 内蔵助 744 01:10:57,747 --> 01:11:00,447 お前たちまでが そのように… 745 01:11:12,428 --> 01:11:14,428 許してくれ 746 01:12:13,789 --> 01:12:17,259 桜の花も 747 01:12:17,259 --> 01:12:19,259 散り初めました 748 01:12:42,384 --> 01:12:45,784 落花の風情も またひとしお 749 01:12:48,057 --> 01:12:50,960 お心置きなく 750 01:12:50,960 --> 01:12:53,060 ご賞美なさいませ 751 01:14:20,049 --> 01:14:22,049 牟岐殿 752 01:14:30,826 --> 01:14:34,897 おかげをもって 長矩 753 01:14:34,897 --> 01:14:37,797 二度と見られぬ うれしき花 754 01:14:41,370 --> 01:14:44,773 心ゆくまで 755 01:14:44,773 --> 01:14:47,673 味わわせていただきました 756 01:15:00,923 --> 01:15:03,323 ううう… 757 01:15:21,043 --> 01:15:23,512 風さそう 758 01:15:23,512 --> 01:15:27,449 花よりもなお 我はまた 759 01:15:27,449 --> 01:15:32,149 春の名残をいかにとかせん 760 01:15:37,326 --> 01:15:39,595 「風さそう」 761 01:15:39,595 --> 01:15:43,665 「花よりもなお 我はまた」 762 01:15:43,665 --> 01:15:48,265 「春の名残をいかにとかせん」 763 01:16:03,952 --> 01:16:06,855 「風さそう」 764 01:16:06,855 --> 01:16:11,760 「花よりもなお 我はまた」 765 01:16:11,760 --> 01:16:13,760 「春の名残を」 766 01:16:15,798 --> 01:16:17,798 「いかにとかせん」 767 01:16:31,380 --> 01:16:34,316 さぞ 768 01:16:34,316 --> 01:16:38,754 お苦しいことで ござりましたでしょう 769 01:16:38,754 --> 01:16:40,754 お心のほど 770 01:16:43,826 --> 01:16:45,826 お察し申し上げます 771 01:16:56,638 --> 01:17:01,538 ただ何事も気高き殿の 772 01:17:03,545 --> 01:17:05,545 お心にござります 773 01:17:12,754 --> 01:17:14,854 この上は何とぞ 774 01:17:17,960 --> 01:17:19,960 安らかに 775 01:17:26,902 --> 01:17:28,902 切りや 776 01:17:48,490 --> 01:17:52,490 (一同のすすり泣き) 777 01:18:28,197 --> 01:18:31,433 松之廊下の刃傷を報ずる 第一の早は 778 01:18:31,433 --> 01:18:36,672 その日の午後5時過ぎに 鉄砲洲上屋敷を出発 779 01:18:36,672 --> 01:18:40,142 使者は早水藤左ヱ門 萱野三平の両名 780 01:18:40,142 --> 01:18:42,945 不眠不休で155里を突破して 781 01:18:42,945 --> 01:18:46,745 6日目の早朝 赤穂に到着いたしました