1 00:00:12,679 --> 00:00:17,684 ♪~ 2 00:01:51,111 --> 00:01:56,116 ~♪ 3 00:01:57,242 --> 00:01:59,244 (雪之丞(ゆきのじょう))長崎の海産物問屋― 4 00:01:59,327 --> 00:02:02,455 松浦屋(まつうらや) 清左衛門(せいざえもん)の 娘に生まれた私は― 5 00:02:02,539 --> 00:02:05,959 父母の慈愛のもとに 幸せな日を送っておりました 6 00:02:06,042 --> 00:02:10,088 ところが 突然 恐ろしい不幸が 降りかかってきました 7 00:02:10,170 --> 00:02:12,507 父は身に覚えのない 密貿易の嫌疑で― 8 00:02:12,590 --> 00:02:15,135 奉行所へ引き立てられていきました 9 00:02:16,427 --> 00:02:19,556 これは番頭の三郎兵衛(さぶろべえ)が 広海屋(ひろみや)と組み― 10 00:02:19,639 --> 00:02:24,269 長崎奉行 土部(どべ)三斎(さんさい)と共に たくらんだ悪だくみだったのです 11 00:02:26,312 --> 00:02:27,605 もちろん 家は欠所(けっしょ) 12 00:02:27,689 --> 00:02:30,441 家財道具は 一切 没収されてしまいました 13 00:02:30,525 --> 00:02:33,194 母は これがもとで亡くなりました 14 00:02:34,362 --> 00:02:37,157 父と私は 乳母の家に移りましたが― 15 00:02:37,240 --> 00:02:40,618 まもなく父は 土部たちを 恨みながら亡くなりました 16 00:02:40,702 --> 00:02:44,831 独りぼっちとなりました私は 中村菊之丞(なかむらきくのじょう)に引き取られ― 17 00:02:44,914 --> 00:02:49,544 中村雪之丞となり 親の敵を討つ機会を待ちました 18 00:02:53,673 --> 00:02:57,719 私の女形(おやま)としての名声は 日に日に高くなり― 19 00:02:57,802 --> 00:03:01,806 いよいよ 江戸の檜(ひのき)舞台を 踏むことになりました 20 00:03:05,727 --> 00:03:09,314 中村座は大入り満員の盛況です 21 00:03:12,275 --> 00:03:14,944 図らずも狙う敵の土部三斎が― 22 00:03:15,028 --> 00:03:18,531 娘の浪路(なみじ)を従え 中村座に現れました 23 00:03:18,615 --> 00:03:20,158 一味の広海屋と― 24 00:03:20,241 --> 00:03:24,078 今は長崎屋となった三郎兵衛も ついてきました 25 00:03:26,247 --> 00:03:30,710 私の目の前に 目指す敵が みんな 姿を現したのです 26 00:03:31,961 --> 00:03:35,089 ところが ここに新しい邪魔が現れました 27 00:03:35,173 --> 00:03:39,594 1人は私の大望を知り それを種に しつこく言い寄る 軽業お初(はつ) 28 00:03:40,678 --> 00:03:41,930 そして もう1人は― 29 00:03:42,013 --> 00:03:45,892 私が免許皆伝を受けたのをそねむ 同門の門倉平馬(かどくらへいま) 30 00:03:45,975 --> 00:03:48,269 しかし 救う神もありました 31 00:03:48,353 --> 00:03:51,147 義賊の闇太郎(やみたろう)さんが 陰となり ひなたとなって― 32 00:03:51,231 --> 00:03:53,441 私をかばってくれました 33 00:03:55,318 --> 00:03:58,279 ところが土部三斎の娘 浪路は― 34 00:03:58,363 --> 00:04:02,242 私に心を寄せ 大奥に帰るをいとい― 35 00:04:02,951 --> 00:04:06,663 ついに書き置きを残して 家出してしまいました 36 00:04:07,330 --> 00:04:09,207 三斎は慌てました 37 00:04:09,290 --> 00:04:11,417 これは てっきり私と 乳母の松ヶ枝(まつがえ)の― 38 00:04:11,501 --> 00:04:16,255 唆しによるものと誤解して 平馬に私を斬るように命じました 39 00:04:16,339 --> 00:04:18,341 そんなことは つゆ知らぬ私は― 40 00:04:18,423 --> 00:04:20,927 闇太郎さんの隠れがに 参りましたところ― 41 00:04:21,010 --> 00:04:23,972 門倉平馬たちに 囲まれてしまいました 42 00:04:28,017 --> 00:04:33,147 中村座は開幕が迫ってます しかし立女形(たておやま)の私がいません 43 00:04:33,231 --> 00:04:35,275 騒ぎは ますます大きくなります 44 00:04:35,358 --> 00:04:37,151 私は気が気でなりませんが― 45 00:04:37,235 --> 00:04:41,281 平馬たちに囲まれて どうすることもできません 46 00:04:43,574 --> 00:04:48,579 (人々の騒ぎ声) 47 00:04:58,464 --> 00:05:03,469 (観客の騒ぎ声) 48 00:05:08,558 --> 00:05:10,184 (駕籠(かご)屋) どけ どけ どけ! どけ! 49 00:05:10,268 --> 00:05:14,147 (駕籠屋たち) えっほ えっほ えっほ えっほ えっほ えっほ 50 00:05:14,230 --> 00:05:16,024 えっほ えっほ えっほ 51 00:05:16,107 --> 00:05:20,361 えっほ えっほ えっほ えっほ えっほ えっほ えっほ 52 00:05:20,445 --> 00:05:25,450 (駕籠屋たちの掛け声) (人々の騒ぎ声) 53 00:05:33,333 --> 00:05:38,337 (人々の騒ぎ声) 54 00:05:43,426 --> 00:05:46,429 (男衆)太夫が来ましたよ (男衆)帰ってきましたよ 55 00:05:46,512 --> 00:05:51,517 (観客の騒ぎ声) 56 00:06:03,029 --> 00:06:08,326 (拍子木の音) 57 00:06:08,409 --> 00:06:13,623 (観客の歓声) 58 00:06:13,706 --> 00:06:17,335 (歌い手)♪ 雁金(かりがね)の 59 00:06:17,418 --> 00:06:21,547 ♪ その玉章(たまずさ)を 60 00:06:21,631 --> 00:06:27,470 ♪ かくばかり 61 00:06:28,721 --> 00:06:32,100 ♪ 色に 62 00:06:32,183 --> 00:06:37,188 ♪ 手だれの 63 00:06:37,271 --> 00:06:42,318 ♪ 傾城(けいせい)も 64 00:06:42,401 --> 00:06:47,573 ♪ 焦がるる人に 65 00:06:47,657 --> 00:06:53,079 ♪ 逢(あ)い見ての 66 00:06:53,746 --> 00:06:58,751 (観客の歓声) 67 00:07:01,129 --> 00:07:03,172 (闇太郎)おう どいた どいた ちょっと どいてくれ 68 00:07:03,256 --> 00:07:06,551 (お初)ごめんなさいよ 親分 親分! 69 00:07:09,220 --> 00:07:10,596 (お初)親分! 70 00:07:14,434 --> 00:07:16,436 (お囃子の演奏) 71 00:07:16,519 --> 00:07:18,980 (歌い手)♪ 一つ 72 00:07:19,063 --> 00:07:25,903 ♪ 一夜の 73 00:07:26,404 --> 00:07:31,451 ♪ 契りさえ 74 00:07:31,534 --> 00:07:34,787 ♪ 二つ枕の 75 00:07:34,871 --> 00:07:40,334 ♪ 許しなき 76 00:07:40,418 --> 00:07:45,214 ♪ 三つ三重四重まわり気は 77 00:07:45,298 --> 00:07:48,968 親分 やっぱり私の負けだよ 78 00:07:50,011 --> 00:07:50,178 (歌い手) ♪ いつまで解かぬ 79 00:07:50,178 --> 00:07:51,721 (歌い手) ♪ いつまで解かぬ 80 00:07:50,178 --> 00:07:51,721 (闇太郎)しおらしいこと言うなよ 81 00:07:51,721 --> 00:07:55,516 (歌い手) ♪ いつまで解かぬ 82 00:07:55,600 --> 00:07:59,520 ♪ 常陸(ひたち)帯 83 00:07:59,604 --> 00:08:02,523 ♪ 六つ酷(むご)いと 84 00:08:02,607 --> 00:08:03,399 ♪ 思いはせいで 85 00:08:03,399 --> 00:08:07,612 ♪ 思いはせいで 86 00:08:03,399 --> 00:08:07,612 (観客の歓声) 87 00:08:07,612 --> 00:08:09,489 (観客の歓声) 88 00:08:10,114 --> 00:08:13,075 (浜川(はまかわ))雪之丞とは 全然 関係のないことでございます 89 00:08:13,159 --> 00:08:16,037 (三斎)そのほうたちは 一体 どこへ参っておった 90 00:08:16,120 --> 00:08:19,457 (浜川)雪之丞の宿を くまなく調べてまいりました 91 00:08:19,540 --> 00:08:22,084 (三斎)なぜ雪之丞を 斬ってまいらなかった? 92 00:08:23,044 --> 00:08:26,130 毒虫は斬れと申したではないか 93 00:08:26,214 --> 00:08:28,799 (門倉)雪之丞を殺すことは やすうございますが― 94 00:08:28,883 --> 00:08:31,010 あれだけ江戸の人気をさらった男 95 00:08:31,093 --> 00:08:33,386 万一 ご当家に 難がかかりましては― 96 00:08:33,471 --> 00:08:35,472 それこそ一大事と存じますれば― 97 00:08:35,556 --> 00:08:37,390 この処置は 中止あそばされては いかが 98 00:08:38,183 --> 00:08:40,477 江戸の人気男か 99 00:08:41,270 --> 00:08:43,272 フフフフ… 100 00:08:44,482 --> 00:08:48,736 たとえ草の根を分けても 必ず浪路を捜してまいれ 101 00:08:49,904 --> 00:08:52,573 (門倉)殿 いっそ町方にでも 依頼いたしまするか 102 00:08:52,657 --> 00:08:54,158 (三斎)うかつどもが! 103 00:08:55,326 --> 00:08:59,080 一切は秘密じゃ 参れ (門倉たち)はっ 104 00:08:59,997 --> 00:09:02,959 松ヶ枝 寄れ 105 00:09:03,042 --> 00:09:05,169 ちこう寄れ! (松ヶ枝)はい… 106 00:09:07,755 --> 00:09:12,718 (三斎)そのほう 余に 何か隠し立てをいたしておるのう 107 00:09:12,802 --> 00:09:15,137 (松ヶ枝)何を仰せられまするか 108 00:09:16,055 --> 00:09:22,270 (三斎)では浪路は 日頃 そのほうに何を訴えおる? 109 00:09:22,353 --> 00:09:27,191 そのことでございましたら すでに殿様も ご承知のはず 110 00:09:27,275 --> 00:09:28,526 言うな! 111 00:09:30,152 --> 00:09:32,905 そなたに家出の相談を したであろうが 112 00:09:35,283 --> 00:09:37,368 お情けのうございます 113 00:09:38,244 --> 00:09:41,956 松ヶ枝 毛頭 存じません 114 00:09:44,584 --> 00:09:50,006 松ヶ枝 そなたの立場としては そうであろうが― 115 00:09:50,673 --> 00:09:54,552 雪之丞とは どこで落ち合っている? 116 00:09:56,137 --> 00:09:57,805 (人々の騒ぎ声) 117 00:09:57,888 --> 00:10:01,058 (男衆)開けてください 恐れ入ります お下がりください 118 00:10:19,076 --> 00:10:20,995 (広海屋)ああ 太夫 (雪之丞)あ これは広海屋さん 119 00:10:21,078 --> 00:10:22,955 実は至急に話があるんだが 120 00:10:23,039 --> 00:10:24,624 (雪之丞)わたくし ちょっと呼ばれておりますので 121 00:10:24,707 --> 00:10:27,501 じゃあ 今夜 待ってるから 宿で 122 00:10:41,223 --> 00:10:46,103 では 浪路の方の行方が 本当に分からぬのですか? 123 00:10:46,187 --> 00:10:51,025 (広海屋)そのため 土部様のお屋敷は上を下への大騒ぎ 124 00:10:51,108 --> 00:10:54,236 そして疑いは 太夫にかかっているのです 125 00:10:54,320 --> 00:10:58,324 きっと太夫と示し合わせての 家出に違いないと 126 00:10:58,407 --> 00:10:59,992 何と申されますか 127 00:11:00,076 --> 00:11:01,327 書き置きには― 128 00:11:01,410 --> 00:11:05,164 “二度と将軍様のおそばへ 帰りたくない”と書いてあります 129 00:11:05,247 --> 00:11:09,627 いや それもこれも皆 太夫への心中立て 130 00:11:09,710 --> 00:11:14,382 (雪之丞) まあ では 私に何か罪でもあると 仰せられるのでございますか? 131 00:11:14,465 --> 00:11:17,927 いやあ そうとは言わぬが あ… しかし― 132 00:11:18,010 --> 00:11:23,391 大体 太夫の芝居をお見せしたのが わしと長崎屋だからな 133 00:11:23,474 --> 00:11:25,726 (長崎屋) おお 広海屋さんも来ていたのか 134 00:11:25,810 --> 00:11:28,187 えらいことになりましたな (広海屋)今も その話を― 135 00:11:28,270 --> 00:11:29,647 していたとこじゃ 136 00:11:29,730 --> 00:11:32,858 太夫 どうせ頼みは 同じことだと思うが― 137 00:11:32,942 --> 00:11:35,403 浪路の方の行方を どうか知らしてくれ 138 00:11:36,237 --> 00:11:41,450 ただいまも申し上げましたとおり 私の知る由がありません 139 00:11:49,959 --> 00:11:52,211 (雪之丞)敵を2人 前にして… 140 00:11:52,962 --> 00:11:57,216 雪之丞 敵を2人 前に… 141 00:12:00,719 --> 00:12:03,639 どうしたのじゃ? そのような顔をして 142 00:12:03,722 --> 00:12:05,224 言いすぎたかな? 143 00:12:06,934 --> 00:12:08,894 いいえ あの… 144 00:12:11,147 --> 00:12:13,357 あまり驚きましたもので… 145 00:12:14,483 --> 00:12:16,652 (男性)太夫 お客様でございます 146 00:12:16,735 --> 00:12:19,363 (一松斎(いっしょうさい))いや これはお客人か 147 00:12:20,489 --> 00:12:24,535 はい 常日頃 ごひいきにあずかっている― 148 00:12:24,618 --> 00:12:27,663 広海屋さんと 長崎屋さんでござります 149 00:12:31,584 --> 00:12:33,919 広海屋さん それじゃあ わしたちは帰りましょう 150 00:12:34,003 --> 00:12:37,882 もう お互いに米の値が上がって いい気持ちになっている時に― 151 00:12:37,965 --> 00:12:39,925 とんだことが起こったものだ フッ 152 00:12:40,009 --> 00:12:42,011 太夫 頼みますぞ 153 00:12:45,556 --> 00:12:47,099 頼みましたぞ 154 00:13:07,244 --> 00:13:08,537 先生! 155 00:13:09,538 --> 00:13:14,960 (一松斎)雪之丞 敵を前にして よく我慢してくれた 156 00:13:15,503 --> 00:13:20,508 はい 思わず震えが止まらず 弱りました 157 00:13:20,591 --> 00:13:22,218 そうであろう 158 00:13:22,301 --> 00:13:25,304 近年 打ち続く 奥羽(おおう)の飢きんのために― 159 00:13:25,387 --> 00:13:27,681 江戸市中に米が出回らず― 160 00:13:27,765 --> 00:13:30,768 値が上がるのを幸いに 米を買い占め― 161 00:13:30,851 --> 00:13:35,689 さらに値上げを謀る あの2人こそ 誠の極悪商人 162 00:13:36,232 --> 00:13:37,900 ことに広海屋は― 163 00:13:37,983 --> 00:13:42,947 関西から買い込んだ手持ちの米が 1万石もあるそうじゃ 164 00:13:43,030 --> 00:13:45,866 1万石ですって? (一松斎)さよう 165 00:13:45,950 --> 00:13:50,663 貧しい者を苦しめて もうけた タヌキとキツネじゃ 166 00:13:52,081 --> 00:13:53,415 先生 167 00:13:54,124 --> 00:13:56,585 私は敵を目の前にして… 168 00:13:57,336 --> 00:14:00,172 つくづく役者が嫌になりました 169 00:14:00,256 --> 00:14:03,342 (一松斎)我慢せい あと一息じゃ 170 00:14:04,593 --> 00:14:06,220 忍びよ 171 00:14:09,598 --> 00:14:10,766 はい 172 00:14:12,977 --> 00:14:17,398 雪之丞 ここに1つ策がある 173 00:14:17,481 --> 00:14:20,568 そなたは いずれ 広海屋に会うであろう 174 00:14:21,777 --> 00:14:22,987 はい 175 00:14:23,654 --> 00:14:27,449 広海屋の1万石を 投げ売りさせることじゃ 176 00:14:28,075 --> 00:14:32,913 まあ あの強欲な男が そのようなことを… 177 00:14:34,832 --> 00:14:38,085 やってみよ 必ずできる 178 00:14:39,253 --> 00:14:42,131 (男性)このままじゃ 今の俺たちは飢え死にしちゃうぞ 179 00:14:42,214 --> 00:14:44,925 (女性)米を食べなきゃ 私たちは生きていけないんだよ! 180 00:14:45,009 --> 00:14:46,969 (男性) やつらは 米の値が上がるのを 待ってやがんだよ 181 00:14:47,052 --> 00:14:49,346 (女性) 長崎屋と広海屋の米蔵には― 182 00:14:49,430 --> 00:14:51,807 上方から安く仕入れた米が うなってるっちゅうじゃないか 183 00:14:51,891 --> 00:14:53,767 (女性)長崎屋と広海屋に 掛け合ってさ― 184 00:14:53,851 --> 00:14:56,103 米を安く売らせりゃいいじゃないか (男性)なんでい 売らなきゃ― 185 00:14:56,186 --> 00:14:57,980 米蔵をぶち壊しちまえ (一同)そうだ! 186 00:14:58,063 --> 00:15:02,276 (男性)行け行け! (一同の騒ぎ声) 187 00:15:02,359 --> 00:15:06,572 (女性の悲鳴) (男性)早く逃げろ! 188 00:15:06,655 --> 00:15:11,660 (人々の騒ぎ声) 189 00:15:19,001 --> 00:15:21,795 (長屋の人)はっ 小判だ 小判だ 190 00:15:21,879 --> 00:15:23,672 おーい! おーい! 191 00:15:23,756 --> 00:15:26,091 (長屋の人)なあに? (長屋の人たちのざわめき) 192 00:15:26,175 --> 00:15:27,801 (長屋の人)小判だ! (長屋の人)まあ! 193 00:15:27,885 --> 00:15:29,720 (長屋の人) 闇の親分の仕打ちに違(ちげ)えねえ 194 00:15:29,803 --> 00:15:32,598 (長屋の人)ああ これで お米が買える よかった 195 00:15:32,681 --> 00:15:35,476 (長屋の人)あっ おい 役人だ ほれ 逃げろ! 196 00:15:36,518 --> 00:15:37,645 (役人)待てい! 197 00:15:38,896 --> 00:15:40,272 こいつら! (長屋の人)あっ あっ 198 00:15:40,356 --> 00:15:42,441 (役人)な な 何を騒いでやがんだ (長屋の人)ああっ ああ… 199 00:15:42,524 --> 00:15:43,692 (役人)こら! 200 00:15:43,776 --> 00:15:47,154 こんな時にお施米(せまい)でも出れば あっしらは助かります! 201 00:15:47,237 --> 00:15:49,198 (役人)そんなことは 奉行所 行って頼め! 202 00:15:49,281 --> 00:15:51,200 (長屋の人)ううっ (役人)おかしいな 203 00:15:51,283 --> 00:15:53,077 おう! こちららしい (捕手(とりて)たち)へい! 204 00:16:02,836 --> 00:16:06,882 (横山(よこやま))誠に申し訳ありません かような張り紙を残しまして 205 00:16:06,966 --> 00:16:09,802 (三斎)盗まれたのは千両箱か (横山)はっ 206 00:16:09,885 --> 00:16:12,429 (三斎)その張り紙を読んでみい (横山)はっ 207 00:16:15,683 --> 00:16:19,144 “町人に代わって 金子(きんす) 頂きました” 208 00:16:20,729 --> 00:16:24,733 (三斎)そのほうたち 何者の仕業か分かっておるのか? 209 00:16:24,817 --> 00:16:29,488 (門倉)はっ 殿! これは 闇太郎の仕業に相違ありません 210 00:16:29,571 --> 00:16:30,614 (三斎)何? 211 00:16:32,157 --> 00:16:33,242 闇太郎? 212 00:16:33,325 --> 00:16:37,538 義賊を気取り 大きな屋敷か 大商人以外には絶対に入らぬ― 213 00:16:37,621 --> 00:16:39,331 闇太郎の仕業に相違ありません 214 00:16:39,415 --> 00:16:41,250 うつけ者! 215 00:16:41,333 --> 00:16:44,044 浪路のことといい このたびの件といい― 216 00:16:44,128 --> 00:16:46,463 そのほうたちは 一体 何をしておった 217 00:16:47,297 --> 00:16:50,509 松ヶ枝 浪路の居所は まだ分からんのか? 218 00:16:51,468 --> 00:16:57,558 はい 八方を捜し申しておりますが いまだに分かりません 219 00:16:57,641 --> 00:16:59,643 おう 土部の旦那― 220 00:16:59,727 --> 00:17:04,064 人ばかり どなり散らさねえで 己のことも考えたらどうだい 221 00:17:04,147 --> 00:17:04,982 (家臣)くせ者! 222 00:17:05,983 --> 00:17:07,608 (三斎)おっ… (門倉)おのれ くせ者! 223 00:17:08,944 --> 00:17:11,905 (捕手)くせ者だ! くせ者だ! 224 00:17:11,989 --> 00:17:13,490 (捕手)くせ者を逃がすな 225 00:17:13,574 --> 00:17:15,451 (捕手)くせ者 (捕手)くせ者 226 00:17:20,914 --> 00:17:23,208 まだ くせ者は捕まらんのか! 227 00:17:37,306 --> 00:17:40,809 このような 夜盗の横行を 取り締まりもせず― 228 00:17:40,893 --> 00:17:43,479 町奉行は一体 何をしておるんじゃ 229 00:17:43,562 --> 00:17:45,981 早々に両町奉行を呼んでいただこう 230 00:17:46,065 --> 00:17:48,817 (目付)もとより その点は厳重に 奉行所へ― 231 00:17:48,901 --> 00:17:51,904 抗議は申し入れまするが 土部様― 232 00:17:51,987 --> 00:17:55,991 この際 ご政道の改革なども よほど心にかけませぬと― 233 00:17:56,075 --> 00:17:59,244 幕府に 怨嗟(えんさ)の声も起ころうかと 思われます 234 00:17:59,328 --> 00:18:00,871 甲斐(かい)殿 235 00:18:00,954 --> 00:18:04,833 何か含んでおられるような言葉だが それは わしに言うことか? 236 00:18:04,917 --> 00:18:11,381 いや 上様のご信任厚き土部様の お耳に一応 入れればと思いまして 237 00:18:11,465 --> 00:18:14,718 例えば このたびの 米の 値上がりなどにつきましても― 238 00:18:14,802 --> 00:18:19,348 広海屋とか長崎屋とかが 法外もなく米を買い占めまして… 239 00:18:19,431 --> 00:18:23,477 黙らっしゃい! 何も広海屋に限ったことではない 240 00:18:23,560 --> 00:18:26,355 なお この話と夜盗の件は別じゃ 241 00:18:26,438 --> 00:18:28,774 とくと 大目付殿に言われるがよい 242 00:18:28,857 --> 00:18:31,110 いや! 別と申されるが― 243 00:18:31,193 --> 00:18:34,488 なかなか もちまして この件は重大でござります 244 00:18:34,571 --> 00:18:39,201 伺えば そのような商人と 土部様とは お近づきの由 245 00:18:39,910 --> 00:18:41,662 (若年寄)いや 甲斐殿 246 00:18:41,745 --> 00:18:44,832 ただいま広海屋 長崎屋のお話が 出ましたが― 247 00:18:44,915 --> 00:18:48,502 彼らは そのようなことを する者ではござりませぬ 248 00:18:48,585 --> 00:18:51,880 他の商人たちが 彼らを妬んでの 結果ではありませぬか? 249 00:18:53,048 --> 00:18:56,593 伊勢(いせ)殿! 何をもって そのように言い切れるか 250 00:18:56,677 --> 00:18:59,763 (若年寄) 土部様は野獣のごとき者を― 251 00:18:59,847 --> 00:19:02,766 なぜ厳重に取り締まらぬかとの お話にござりまするぞ 252 00:19:02,850 --> 00:19:04,893 (三斎)まあ 伊勢殿 253 00:19:04,977 --> 00:19:09,231 わしの言うことが分からぬような 甲斐殿でもあるまい 254 00:19:09,314 --> 00:19:11,984 あとは よきようにのう 255 00:19:12,067 --> 00:19:13,694 (目付)しばらく! 256 00:19:13,777 --> 00:19:17,072 ただいま 大目付様 お見えかと思われます しばらく! 257 00:19:17,156 --> 00:19:20,951 わしは上様に会わねばならん それまで待たせておけ! 258 00:19:24,121 --> 00:19:29,626 もとより 太夫が かくまったとは思いませぬが― 259 00:19:29,710 --> 00:19:33,213 毎日 毎日 殿様から せっかんされ― 260 00:19:34,256 --> 00:19:35,966 この松ヶ枝― 261 00:19:36,049 --> 00:19:39,845 命に代えても お捜しして お連れせねばなりません 262 00:19:41,013 --> 00:19:45,309 太夫 どうぞ この気持ちを 酌んでください 263 00:19:46,393 --> 00:19:51,815 お話は よく分かりましたが 私は何も知らぬこと 264 00:19:51,899 --> 00:19:55,694 しかも浪路の方と お話をいたしました時― 265 00:19:55,777 --> 00:19:59,281 あなた様も ご一緒だったでは ございませんか 266 00:19:59,364 --> 00:20:03,785 ただ お部屋様が あなたを お慕いしていることは― 267 00:20:03,869 --> 00:20:06,246 わたくしにも ようく分かります 268 00:20:07,414 --> 00:20:12,669 もしも お部屋様のお命に 万一のことでもありますと… 269 00:20:14,254 --> 00:20:20,010 私は ここ数日 広海屋さん 長崎屋さん― 270 00:20:20,093 --> 00:20:21,720 その他の方々から― 271 00:20:21,803 --> 00:20:25,265 浪路の方のことばかり 責められております 272 00:20:25,349 --> 00:20:27,809 (男性) 太夫 お迎えの駕籠が参りました 273 00:20:27,893 --> 00:20:29,019 はい 274 00:20:30,479 --> 00:20:33,482 では 約束がございますので 275 00:20:35,234 --> 00:20:36,902 お出かけですか? 276 00:20:42,157 --> 00:20:46,245 (人々のざわめき) 277 00:20:46,328 --> 00:20:48,538 (男性)ああ どいてください どいてください 278 00:20:48,622 --> 00:20:49,623 どいてくださいよ 279 00:20:49,706 --> 00:20:51,333 どいてくださいよ (人々のどよめき) 280 00:20:51,416 --> 00:20:53,502 (松ヶ枝)それでは太夫 くどいようですが― 281 00:20:53,585 --> 00:20:55,212 よろしく お頼みします 282 00:20:55,295 --> 00:20:58,799 心当たりさえありましたら 必ずお知らせいたします 283 00:21:07,975 --> 00:21:10,435 (家臣)どけ どけ! どけ (門倉)どけ! 松ヶ枝殿 284 00:21:10,519 --> 00:21:14,064 いかがでした? (松ヶ枝)太夫は全然 知りません 285 00:21:14,147 --> 00:21:15,607 そんなはずはないんですが 286 00:21:15,691 --> 00:21:18,902 (松ヶ枝)知らないと言ってますよ (門倉)おかしい 287 00:21:23,073 --> 00:21:25,284 お前 あっちに行っといでよ 288 00:21:25,367 --> 00:21:28,287 (むく犬(いぬ)の吉)親分 あんまり あねごをいじめないでくださいよ 289 00:21:28,370 --> 00:21:30,831 行ってろったら行ってろよ (むく犬の吉)はあ 290 00:21:34,960 --> 00:21:38,630 おめえとは まだ話し合いがついてねえが― 291 00:21:39,381 --> 00:21:42,843 俺は人の弱みに つけ込むやつは でえきれえなんだ 292 00:21:42,926 --> 00:21:45,012 ほれた男の弱みに つけ込んで― 293 00:21:45,095 --> 00:21:47,597 それをネタに脅すようなやつは でえきれえだ 294 00:21:47,681 --> 00:21:51,226 (お初)ちょいと 何で同じことを言うんだね 295 00:21:51,310 --> 00:21:53,520 痛い胸に触れるんじゃないよ 296 00:21:53,603 --> 00:21:56,606 あたしゃね このごろ 焼きが回ったって― 297 00:21:56,690 --> 00:22:00,777 自分でも分かってるんだよ (闇太郎)そうだろうな 298 00:22:01,737 --> 00:22:06,616 このごろ 町じゃ 米の高値で 一騒動 起こりそうになってるんだ 299 00:22:08,035 --> 00:22:12,539 いつもの おめえなら 必ず片棒担ぐところだが― 300 00:22:13,457 --> 00:22:16,209 女が男にほれると そうも変わるもんか 301 00:22:16,293 --> 00:22:17,669 (むく犬の吉)親分の言うとおり 302 00:22:17,753 --> 00:22:21,006 べたぼれなんだから しょうがねえよ ほんとに 303 00:22:21,089 --> 00:22:23,633 まだ そんなとこにいたのかい 304 00:22:26,595 --> 00:22:30,599 お前さんは ほんとに あの雪之丞という人に似てるねえ 305 00:22:32,267 --> 00:22:35,062 どうして こんな憎ったらしい人が 似てるんだろうね 306 00:22:37,189 --> 00:22:39,900 江戸ってのは不思議な所さ 307 00:22:39,983 --> 00:22:42,694 中村座は毎日 大入り満員で― 308 00:22:42,778 --> 00:22:46,823 また 片方じゃ 米の買えねえやつもいるし 309 00:22:48,200 --> 00:22:53,371 だけど あの雪之丞ってのは まったく すげえ人気だな 310 00:22:54,372 --> 00:23:00,420 ねえ 親分 土部三斎の屋敷から 千両箱 担ぎ出したの 親分だろ? 311 00:23:01,755 --> 00:23:04,508 食えねえ人を 黙って見ちゃいられねえよ 312 00:23:05,801 --> 00:23:09,429 それより早く おめえと 雪之丞の話を片づけなくっちゃ 313 00:23:09,513 --> 00:23:12,432 お前さん 土部三斎を 敵にしてるところまで― 314 00:23:12,516 --> 00:23:14,017 雪之丞に似てるね 315 00:23:14,101 --> 00:23:16,436 てめえ まだ それを言うのか お初 316 00:23:16,520 --> 00:23:18,814 お前さんの前だから言ったんだよ 317 00:23:19,564 --> 00:23:22,776 でも まだ雪之丞との話は ついてないって― 318 00:23:22,859 --> 00:23:24,528 お前さん 言っただろ 319 00:23:25,362 --> 00:23:27,489 (闇太郎) おっ いけね 追っ手が来やがった 320 00:23:28,281 --> 00:23:31,576 いけね (お初)川端に逃げるんだよ 321 00:23:34,121 --> 00:23:37,040 (役人)どこだ どこだ どこだ 322 00:23:37,541 --> 00:23:39,251 どこにもいねえじゃねえか 323 00:23:39,334 --> 00:23:41,086 この野郎 デタラメぬかしやがって (捕手)あいっ へい 324 00:23:41,169 --> 00:23:42,671 おう 向こうらしい 325 00:23:45,924 --> 00:23:50,303 (松ヶ枝)お部屋様 お部屋様 お部屋様! 326 00:23:59,604 --> 00:24:00,647 いかがでした? 327 00:24:00,730 --> 00:24:03,608 いや 確かに この辺りで お姿を お見受けしたんです 328 00:24:03,692 --> 00:24:05,944 この辺りに違いないんですけど 329 00:24:08,071 --> 00:24:12,826 (人々の悲鳴) 330 00:24:12,909 --> 00:24:14,494 (役人)闇太郎! 観念しろ 331 00:24:14,578 --> 00:24:19,583 (捕手たちの掛け声) 332 00:24:28,967 --> 00:24:30,135 (役人)成敗しろ 333 00:24:30,218 --> 00:24:35,223 (捕手たちの掛け声) 334 00:24:39,769 --> 00:24:41,479 (むく犬の吉) 闇の親分が やってますぜ 335 00:24:41,563 --> 00:24:43,523 (お初)橋の上から 飛び込んじまえばいいのに 336 00:24:43,607 --> 00:24:46,359 (むく犬の吉) あねご 人が追われるのを 聞いてんのは― 337 00:24:46,443 --> 00:24:48,361 こりゃあ のんきなもんですぜ 338 00:24:48,445 --> 00:24:52,407 あーあ 何をやってるんだろうね 早く飛び込みゃいいのに 339 00:24:52,490 --> 00:24:53,408 (むく犬の吉) あねご 気になるんですか? 340 00:24:54,242 --> 00:24:59,247 (捕手たちの掛け声) 341 00:25:04,878 --> 00:25:07,631 (捕手)ほら 逃げるぞ! (役人)追え! 追え 追え! 342 00:25:07,714 --> 00:25:08,965 逃がすな! 343 00:25:16,056 --> 00:25:18,099 (横山)あっ いかがでした? (松ヶ枝)見えませぬ 344 00:25:18,183 --> 00:25:19,184 早く三方に分かれろ 345 00:25:19,267 --> 00:25:21,436 (横山)向こうを捜せ (家臣)はっ 346 00:25:24,272 --> 00:25:26,775 松ヶ枝殿 川じゃ この先 347 00:25:26,858 --> 00:25:30,153 お部屋様 お部屋様! 348 00:25:35,367 --> 00:25:38,370 (役人)ほら 追え 追え! 349 00:25:38,453 --> 00:25:43,458 (捕手たちの掛け声) 350 00:25:44,751 --> 00:25:47,170 (むく犬の吉)え? 済んじゃった 逃げちゃったよ 351 00:25:53,677 --> 00:25:55,512 あれ? あんなとこへ 飛び込みやがった 352 00:25:55,595 --> 00:25:57,931 なんて逃げ足の速い人なんだろ 353 00:25:58,014 --> 00:26:00,016 早く船をおこぎよ (むく犬の吉)ほいきた 354 00:26:03,937 --> 00:26:05,188 (長屋の人)親分 (闇太郎)かくまってくれ 355 00:26:05,272 --> 00:26:06,898 (長屋の人)へい (長屋の人)お 親分さん 356 00:26:06,982 --> 00:26:08,483 さ どうぞ (長屋の人)あっ 親分さん 357 00:26:17,617 --> 00:26:21,037 おい みんな この路地に 逃げ込まれちゃ百年目だぞ それ! 358 00:26:23,498 --> 00:26:24,457 (駕籠屋)えっほ… (むく犬の吉)あっ! 359 00:26:24,541 --> 00:26:26,167 ちょっと その駕籠 待った 360 00:26:26,251 --> 00:26:28,586 どざえもんができたから ちょっと 人を乗っけてやりてえんだわ 361 00:26:28,670 --> 00:26:29,587 貸してくれねえか 362 00:26:29,671 --> 00:26:30,922 (男性)貸せねえよ (むく犬の吉)ん? 363 00:26:31,006 --> 00:26:31,965 (男性)駕籠やれ (駕籠屋)へい 364 00:26:32,048 --> 00:26:33,883 (むく犬の吉)貸せねえとは何だ 人が溺れてんだよ 365 00:26:33,967 --> 00:26:35,719 てめえは誰だ おい! 366 00:26:36,678 --> 00:26:38,972 何だ 何だよ おい 生意気なこと言うじゃねえかよ 367 00:26:39,055 --> 00:26:40,056 あっ 368 00:26:40,640 --> 00:26:43,977 てめえは鬼の長崎屋だな (長崎屋)鬼とは何じゃ 369 00:26:44,060 --> 00:26:45,103 何をぬかしやがるんだい 370 00:26:45,186 --> 00:26:47,480 (むく犬の吉)てめえの身内が 溺れてたら どうしようってんだい 371 00:26:47,564 --> 00:26:50,859 そんなバカな話があるか (むく犬の吉)何を? 372 00:26:50,942 --> 00:26:53,486 野郎 やりやがったな (長崎屋)うおっ 何をするんだ 373 00:26:53,570 --> 00:26:55,196 (お初)おやめよ 374 00:26:56,531 --> 00:26:59,451 どうも すいませんでした 375 00:26:59,534 --> 00:27:02,454 こら 人を見て口を利け 376 00:27:04,914 --> 00:27:09,753 野郎… あねご 何で あんな野郎に謝るんだよ 377 00:27:09,836 --> 00:27:11,254 ちきしょう (お初)バカだね 378 00:27:11,338 --> 00:27:14,007 お前は早く行って 介抱してやんなさい 379 00:27:14,090 --> 00:27:16,760 (人々の笑い声) (男性)あっ 380 00:27:16,843 --> 00:27:18,595 (お初)みんなでお分け (男性)えっ? 381 00:27:18,678 --> 00:27:20,013 (女性)わあっ (男性)おい みんな 382 00:27:20,096 --> 00:27:22,223 (お初)すまないけどね 2人ばかり 川端行っておくれよ 383 00:27:22,307 --> 00:27:23,767 (男性)へい! (男性)おう おい 384 00:27:23,850 --> 00:27:25,435 (闇太郎)おう お初 385 00:27:25,518 --> 00:27:29,022 長崎屋から巻き上げるとは しゃれたことするじゃねえか 386 00:27:29,105 --> 00:27:32,484 見てたのかい? 親分を助けようと思ったらさ― 387 00:27:32,567 --> 00:27:33,860 とんだもの引きずり込んじゃったよ 388 00:27:33,943 --> 00:27:36,905 そいつは おめえの 日頃の了見が悪いからだよ 389 00:27:36,988 --> 00:27:39,324 ヘヘッ (お初)何だって? 親分! 390 00:27:44,245 --> 00:27:47,916 (広海屋)いつ見ても 太夫の舞台は いいのう 391 00:27:47,999 --> 00:27:51,378 まあ 相変わらず お口の お上手な広海屋さん 392 00:27:51,461 --> 00:27:55,882 (広海屋)いや もう これなどはな 太夫のこととなると夢中でな 393 00:27:55,965 --> 00:27:58,760 いい年をしながら 太夫の絵草紙ばかり― 394 00:27:58,843 --> 00:28:00,720 集めてる始末じゃ フッフッフッ 395 00:28:00,804 --> 00:28:02,847 (雪之丞)ごひいきに あずかりまして 396 00:28:02,931 --> 00:28:06,017 (広海屋の妻)太夫 これに一筆 お願いします 397 00:28:06,101 --> 00:28:07,852 承知いたしました 398 00:28:09,646 --> 00:28:11,731 ところで 広海屋さん 399 00:28:11,815 --> 00:28:14,484 ご息女様は まだ? (広海屋)それがのう― 400 00:28:14,567 --> 00:28:18,863 この間も頼んだとおり 浜川様 横山様をはじめ― 401 00:28:18,947 --> 00:28:22,992 ご家中の皆様が八方へ手を尽くして 捜しておるが― 402 00:28:23,076 --> 00:28:27,455 何しろ ご公儀に漏れぬよう ないしょな捜しものだけに― 403 00:28:27,539 --> 00:28:29,958 なかなか はかどらん始末じゃ 404 00:28:30,041 --> 00:28:34,671 それを思うと わしとても のんきに 芝居見物もしておれんのじゃが― 405 00:28:34,754 --> 00:28:38,383 今日は 女房に せがまれてのう (広海屋の妻)まあ あなた 406 00:28:38,466 --> 00:28:43,596 しかし まったく近頃の若い娘は 思い切ったことをするものじゃ 407 00:28:43,680 --> 00:28:47,016 浪路様 このたびの不始末が 大奥に知れれば― 408 00:28:47,100 --> 00:28:49,686 土部様は たちまち ご失脚 409 00:28:49,769 --> 00:28:52,689 その お引き立てにあずかる わしや長崎屋は― 410 00:28:52,772 --> 00:28:55,567 将軍家御用達もお取り上げじゃ 411 00:28:55,650 --> 00:28:59,738 そうなれば この広海屋も おしまいというものじゃ 412 00:28:59,821 --> 00:29:02,907 太夫の前で そんなことを… 413 00:29:03,950 --> 00:29:07,620 まさか そのようなことも ございますまい 414 00:29:07,704 --> 00:29:12,876 いやいや 世の中のことと 人の定めは分からんものじゃ 415 00:29:12,959 --> 00:29:15,754 常に目先を利かせておかぬとな 416 00:29:15,837 --> 00:29:19,841 わしらとて また長崎屋とて 今日は こうしておるが― 417 00:29:19,924 --> 00:29:23,762 明日は どうなることやら フフフフ… 418 00:29:23,845 --> 00:29:27,265 長崎屋さんといえば 西のほうから― 419 00:29:27,348 --> 00:29:30,435 大変にお米を買い入れたという ウワサがございますが 420 00:29:30,518 --> 00:29:33,021 (広海屋) うん そんなことも聞いたが― 421 00:29:33,104 --> 00:29:37,734 やつも金もうけにかけては あくどいからなあ 422 00:29:37,817 --> 00:29:40,320 それにつきまして 昨晩― 423 00:29:40,403 --> 00:29:44,365 さる ご城内のお役向衆から お招きを受けました節― 424 00:29:44,449 --> 00:29:47,202 面白い商売の話を承りました 425 00:29:48,369 --> 00:29:52,665 私には深い意味は げせませんでしたが― 426 00:29:52,749 --> 00:29:55,043 お役向衆の仰せでは― 427 00:29:55,543 --> 00:30:00,590 “商人が財を成し名を挙げるには 損をして得を取れ” 428 00:30:01,674 --> 00:30:04,511 “今が その絶好の時だというのに―” 429 00:30:04,594 --> 00:30:07,555 “広海屋も長崎屋も 何をいたしておるのか”と― 430 00:30:07,639 --> 00:30:10,266 まあ こんなことを 申されておりました 431 00:30:10,350 --> 00:30:12,977 太夫 それから 何と申しておられた? 432 00:30:13,061 --> 00:30:15,605 もう少し 詳しく聞かせてくださらんか 433 00:30:16,523 --> 00:30:18,483 “米の値をつり上げてから―” 434 00:30:18,566 --> 00:30:22,111 “持ち前を手放す商売なら 誰でもできる” 435 00:30:22,195 --> 00:30:28,034 “それより 多少 損をしても 今すぐに蔵を開け米を売れば―” 436 00:30:28,117 --> 00:30:31,788 “うなぎ登りの米の値は 一朝にして引き下がり―” 437 00:30:31,871 --> 00:30:35,416 “江戸中の市民からは 神のように敬われ―” 438 00:30:35,500 --> 00:30:38,753 “一挙に江戸一番の商人に なれるものを―” 439 00:30:39,337 --> 00:30:42,048 “目前の わずかの利に 目がくらんで―” 440 00:30:42,131 --> 00:30:44,884 “売り渋っているのは愚の骨頂” 441 00:30:45,677 --> 00:30:48,638 “今が売り時 ためらっていては―” 442 00:30:48,721 --> 00:30:52,517 “せっかく蓄えた米の元も子も なくしてしまうだろうに”と 443 00:30:53,685 --> 00:30:56,521 太夫 よく教えてくれた 444 00:30:56,604 --> 00:30:59,190 まあ あなた 太夫にお礼も言わずに 445 00:30:59,274 --> 00:31:01,276 (広海屋) 何をグズグズしているんじゃ はよう来い はよ 446 00:31:01,359 --> 00:31:03,444 (広海屋の妻)まあ あなた (広海屋)はよ さあ はよ 447 00:31:04,112 --> 00:31:05,071 あなた 448 00:31:05,154 --> 00:31:07,782 何も そんなに急いで帰らなくても いいじゃありませんか 449 00:31:07,866 --> 00:31:09,534 (広海屋) 何をグズグズしてるんじゃ 450 00:31:09,617 --> 00:31:12,787 広海屋が江戸一番の 男になるか ならんかの瀬戸際だ 451 00:31:12,871 --> 00:31:13,913 はよ来い (広海屋の妻)あなた 452 00:31:13,997 --> 00:31:15,290 出口は向こうですよ (広海屋)あっ 453 00:31:15,373 --> 00:31:17,834 ええい それを はよ言わんかい さあ はよ来い 454 00:31:17,917 --> 00:31:20,128 さあ いいから 来い 455 00:31:25,884 --> 00:31:30,638 この間 先生がお話しになったこと 広海屋に申しましたところ― 456 00:31:30,722 --> 00:31:33,808 初めのうちは それほどでも ございませんでしたが― 457 00:31:33,892 --> 00:31:38,479 だんだんと顔色を変えて 話もそこそこに楽屋から帰りました 458 00:31:38,563 --> 00:31:42,692 広海屋が米の投げ売りをすれば 長崎屋は破産になろう 459 00:31:42,775 --> 00:31:45,820 いずれ 欲より他に 目的のない両人だ 460 00:31:45,904 --> 00:31:47,989 これは必ず争いになる 461 00:31:48,072 --> 00:31:52,827 もし長崎屋が広海屋にならって 米の投げ売りを始めたとすれば― 462 00:31:52,911 --> 00:31:54,746 江戸の市民が喜ぶ 463 00:31:54,829 --> 00:31:58,082 雪 よくぞ広海屋に言うてくれたな 464 00:31:58,166 --> 00:32:02,587 でも先生 私は ただ あの広海屋のような男が― 465 00:32:02,670 --> 00:32:04,797 江戸の市民から 神様扱いにされることが― 466 00:32:04,881 --> 00:32:08,176 恨めしゅうてなりません (一松斎)雪 そこが違う 467 00:32:08,259 --> 00:32:10,678 広海屋は あくまで 欲から出たことじゃ 468 00:32:10,762 --> 00:32:13,222 人を助けようなどとは 思ってもおらぬ 469 00:32:13,306 --> 00:32:15,850 欲しいのは ただ権力じゃ 470 00:32:15,934 --> 00:32:19,312 それにしても たとえ いっときなりとも広海屋が… 471 00:32:19,395 --> 00:32:21,522 (一松斎)まあ 結果を見るがよい 472 00:32:21,606 --> 00:32:25,443 それよりも門倉は その後 そちの所に参るか? 473 00:32:26,361 --> 00:32:28,905 いいえ さっぱり見えません 474 00:32:29,989 --> 00:32:32,408 わしの所にも もちろん参らぬが― 475 00:32:32,492 --> 00:32:35,578 いずれ あの男は 斬るより他はなかろう 476 00:32:36,079 --> 00:32:39,582 お初という おなごは どうした? (雪之丞)はい… 477 00:32:40,083 --> 00:32:44,504 私の一番 恐ろしいのは 今のところ お初です 478 00:32:44,587 --> 00:32:46,005 どうやら あのお初は― 479 00:32:46,089 --> 00:32:49,342 私の秘密を見通しているような 気がします 480 00:32:49,425 --> 00:32:51,970 時折 舞台を見に参りますが… 481 00:32:52,053 --> 00:32:54,764 (一松斎) 秘密というと そのことか? 482 00:32:54,847 --> 00:32:56,808 それだけではありません (一松斎)何じゃ? 483 00:32:57,684 --> 00:32:59,102 私が― 484 00:33:00,186 --> 00:33:01,938 女であるということさえ 485 00:33:03,648 --> 00:33:05,024 そうか… 486 00:33:06,067 --> 00:33:10,530 あの女が敵に回れば どのようなことが起こるか… 487 00:33:11,406 --> 00:33:14,993 先生 早く 敵を討ち果たしとう存じます 488 00:33:15,910 --> 00:33:17,120 案ずるな 489 00:33:17,203 --> 00:33:20,873 そなたには 両親の み霊が 必ず守っていてくださる 490 00:33:23,251 --> 00:33:24,460 はい 491 00:33:29,340 --> 00:33:32,468 わしの見るところ 闇太郎という男は― 492 00:33:32,552 --> 00:33:34,721 何か そちと因縁があろう 493 00:33:36,931 --> 00:33:40,935 私も そのような気がしてなりません 494 00:33:44,981 --> 00:33:48,192 (むく犬の吉)姉ちゃん いいかげんに打ち明けたらどうかね 495 00:33:48,276 --> 00:33:49,944 話によっちゃね うちのあねごだって― 496 00:33:50,028 --> 00:33:52,321 おいらだって 力になるんだよ? 497 00:33:53,114 --> 00:33:55,366 (浪路)何とぞ しばらくの間― 498 00:33:55,450 --> 00:33:57,452 何もお聞きにならないで くださいませ 499 00:33:57,535 --> 00:33:59,162 (むく犬の吉) あれ まだ言ってやがらあ 500 00:33:59,245 --> 00:34:01,581 昨日から 何度 同じこと言ってんのよ 501 00:34:01,664 --> 00:34:03,458 あ おかえんなさい (お初)むく犬 502 00:34:03,541 --> 00:34:05,418 町の様子が変だから ちょっと行って見といで 503 00:34:05,501 --> 00:34:06,836 (むく犬の吉)行って見といでって あねご 今― 504 00:34:06,919 --> 00:34:09,630 帰(けえ)ってきた ばっかりじゃねえか (お初)いいから行って見といでよ 505 00:34:09,714 --> 00:34:11,591 (むく犬の吉)大丈夫だよ 昼間だって人っ子1人― 506 00:34:11,674 --> 00:34:14,135 通りゃしないんだからね この辺は (お初)行ってくるの 507 00:34:14,217 --> 00:34:15,553 (むく犬の吉) 大丈夫だってのになあ 508 00:34:15,636 --> 00:34:17,597 犬だって 寂しくって 歩きゃしないんだから 509 00:34:17,679 --> 00:34:20,183 様子を見てくりゃいいんだろ 分かったよ 510 00:34:22,060 --> 00:34:24,228 (お初)大川から引き上げた時― 511 00:34:24,312 --> 00:34:27,023 お前さん 一番初め 何て言ったと思う? 512 00:34:27,106 --> 00:34:29,150 “雪之丞様”って言ったよ 513 00:34:29,650 --> 00:34:32,904 雪之丞っていえば あの役者のことだろ? 514 00:34:33,946 --> 00:34:38,159 それに お前さん どう見ても れっきとした武家育ち 515 00:34:38,242 --> 00:34:40,786 といって まんざら 生娘でもなさそうだしさ 516 00:34:40,870 --> 00:34:43,246 どうぞ お聞きにならないで 517 00:34:43,331 --> 00:34:47,126 ご恩は いずれ… いずれ お返しいたします 518 00:34:47,210 --> 00:34:49,337 (お初)そんなら聞かないがね 519 00:34:49,420 --> 00:34:52,005 せめて名前だけでも 言ったらどうだい 520 00:34:52,090 --> 00:34:55,592 はい… マツと申します 521 00:34:57,678 --> 00:35:00,932 (お初)ふーん… マツ 522 00:35:01,516 --> 00:35:04,435 お前さん 雪之丞に会いたいのかい? 523 00:35:04,936 --> 00:35:06,229 (むく犬の吉) そりゃ あねごじゃねえか 524 00:35:06,312 --> 00:35:07,522 (お初)うるさいね まだ いたのかい? 525 00:35:07,605 --> 00:35:10,191 (むく犬の吉)だって 様子を 見てこいっつったじゃねえかさ 526 00:35:14,570 --> 00:35:16,614 あなた様のお力で― 527 00:35:16,697 --> 00:35:18,783 せめて一目でも 会わせていただけますか? 528 00:35:19,408 --> 00:35:24,372 あーあ 嫌んなっちゃうね お前の目の色が変わってきたよ 529 00:35:25,498 --> 00:35:28,209 雪之丞って なんて憎らしいやつなんだろう 530 00:35:30,086 --> 00:35:32,964 おい お初という女の素性が 分かったぞ 531 00:35:33,047 --> 00:35:35,216 居所は? (浜川)居所も分かった 532 00:35:35,299 --> 00:35:38,970 あいつは“軽業のお初”といって 大した女スリだ 533 00:35:39,053 --> 00:35:41,973 どうも動きが速いとは思ったが やっぱり そうか 534 00:35:42,056 --> 00:35:45,977 よし 今日はどうでも あの女に泥を吐かせてやろう 535 00:35:46,060 --> 00:35:50,189 そのお初が 確かに雪之丞を 敵持ちと言ったのか? 536 00:35:50,273 --> 00:35:52,233 (門倉)俺の勘だが― 537 00:35:52,316 --> 00:35:55,903 敵持ちでなくて 役者風情が あれだけの剣を使(つこ)うはずがない 538 00:35:56,779 --> 00:35:59,740 それに敵というのも よほどの大物に相違あるまい 539 00:36:01,033 --> 00:36:04,453 どうも これは土部様に 関係があるんじゃないかと思うがな 540 00:36:05,454 --> 00:36:07,540 うまくいけば大した手柄になるな 541 00:36:07,623 --> 00:36:10,293 ただ軽業お初というは 一筋縄ではいけんからな 542 00:36:10,376 --> 00:36:12,044 どうした? (浜川)雪之丞という声が 543 00:36:12,128 --> 00:36:14,213 (横山)え? (門倉)雪之丞? ようし― 544 00:36:14,297 --> 00:36:17,175 二度と再び舞台に出られん顔に してくれる どけ! 545 00:36:25,725 --> 00:36:28,019 あっ! (一松斎)平馬ではないか 546 00:36:28,102 --> 00:36:29,520 その殺気 どうしたのじゃ 547 00:36:29,604 --> 00:36:33,649 そのほう 十余年 剣を学んで いまだに我欲に走るか 548 00:36:38,321 --> 00:36:41,741 先生 もう ここまでで 結構でございますから 549 00:36:41,824 --> 00:36:45,161 いや 宿まで送ろう (雪之丞)あ… 550 00:36:55,087 --> 00:36:57,798 (長崎屋)おかげをもちまして 上々の首尾 551 00:36:57,882 --> 00:37:00,885 これも ひとえに殿様のお力 552 00:37:00,968 --> 00:37:04,597 何とぞ お納めのほど (三斎)うん 553 00:37:04,680 --> 00:37:08,935 先日 城中において そちたちの話が出ての 554 00:37:09,018 --> 00:37:11,520 あの目付ども 叱りおいたわ 555 00:37:11,604 --> 00:37:13,272 恐れ入ります 556 00:37:14,649 --> 00:37:17,443 長崎屋 いかなることが 起こりましても― 557 00:37:17,526 --> 00:37:20,655 10年来の ご恩に 報いる覚悟でござります 558 00:37:21,322 --> 00:37:22,782 なお 伺えば― 559 00:37:22,865 --> 00:37:26,661 川端にて お部屋様のお姿を お見受けなさりました由 560 00:37:26,744 --> 00:37:31,832 私めは もちろん 番頭 仲仕 あらゆる者を使って必ず― 561 00:37:31,916 --> 00:37:35,378 お捜し申しますれば ご安心のほど 562 00:37:37,922 --> 00:37:41,926 (三斎)おお これは大枚な金じゃ 563 00:37:42,468 --> 00:37:47,306 長崎屋 今度は だいぶ もうかったと見えるのう 564 00:37:47,890 --> 00:37:52,603 商いのことだから 何をしようと かまわんが― 565 00:37:52,687 --> 00:37:55,481 あまり わしの名前は使うなよ 566 00:37:57,483 --> 00:38:00,152 とくと心得ておりまする 567 00:38:00,736 --> 00:38:04,615 時に 松ヶ枝様は まだ白状なさいませぬか? 568 00:38:04,699 --> 00:38:09,578 松ヶ枝め… 強情なやつで困っておる 569 00:38:10,496 --> 00:38:12,581 と申しても― 570 00:38:12,665 --> 00:38:15,209 斬り捨てるわけにもまいらずのう 571 00:38:16,168 --> 00:38:18,546 今日は そなたですか 572 00:38:18,629 --> 00:38:21,799 浪路の方は 雪之丞と どこで会われておる? 573 00:38:21,882 --> 00:38:26,053 太夫とは まったく関係がないと あれほど言うてるではありませぬか 574 00:38:26,137 --> 00:38:28,848 私が知ろうはずがありませぬ お下がりなさい 575 00:38:28,931 --> 00:38:31,225 ええい まだ しらを切られる 576 00:38:31,309 --> 00:38:34,103 拙者は殿の言いつけで 聞いているのですぞ 577 00:38:34,645 --> 00:38:38,024 今のうち白状せぬと あなたの命も危なくなりますぞ 578 00:38:38,107 --> 00:38:39,608 お控えなさい! 579 00:38:40,568 --> 00:38:45,406 私の命と引き換えに お部屋様がお帰りになるなら― 580 00:38:46,615 --> 00:38:49,577 この松ヶ枝 いつでも自害します 581 00:38:50,202 --> 00:38:55,958 フフフフ… 久しぶりに そのほうが参ったのじゃ 582 00:38:56,042 --> 00:38:58,753 気晴らしに 一献 さすか 583 00:39:00,087 --> 00:39:01,922 (鈴の音) 584 00:39:05,468 --> 00:39:07,887 (三斎)酒こうの用意をいたせ (腰元)はい 585 00:39:11,932 --> 00:39:15,644 (腰元)長崎屋様 お宅より 火急のご用とのことでございます 586 00:39:15,728 --> 00:39:18,939 (長崎屋) おう それは困りましたな 587 00:39:19,482 --> 00:39:23,235 ヘヘヘヘッ また相場でも上がりまするかな 588 00:39:23,319 --> 00:39:27,156 それで また もうけるか (長崎屋)ヘヘヘヘッ… 589 00:39:27,239 --> 00:39:29,992 後刻 必ず参れよ (長崎屋)はい はい 590 00:39:30,076 --> 00:39:33,788 来るなと仰せられましても 必ず お伺いつかまつりまする 591 00:39:33,871 --> 00:39:37,583 (三斎)うん 待っておるぞ (長崎屋)はい それでは ちょっと 592 00:39:43,714 --> 00:39:47,134 また持ってくるか フフフフ… 593 00:39:48,386 --> 00:39:51,222 おう 何じゃな 急な用かの? (男性)へい 594 00:39:51,305 --> 00:39:53,599 今朝から米相場が大暴落で (長崎屋)何? 595 00:39:53,682 --> 00:39:55,810 人の話じゃ 広海屋さんが蔵開けて― 596 00:39:55,893 --> 00:39:58,396 持ち米を残らず問屋衆に 売り渡したそうで― 597 00:39:58,479 --> 00:40:00,439 町じゅうの米屋が みんな店 開けました 598 00:40:00,523 --> 00:40:02,525 そんなバカな話があるか 599 00:40:02,608 --> 00:40:04,985 何かの間違いじゃろう (男性)いえ 間違いどころか― 600 00:40:05,069 --> 00:40:06,862 大変な騒ぎでございます 601 00:40:06,946 --> 00:40:08,447 ほんとか? (家臣)へい 602 00:40:08,531 --> 00:40:09,907 (長崎屋)ううっ… 603 00:40:10,908 --> 00:40:14,245 おのれ 広海屋! (家臣)へい 604 00:40:19,291 --> 00:40:23,254 (人々のざわめき) 605 00:40:23,337 --> 00:40:25,214 (男性) あっ あれは鬼の長崎屋だ! 606 00:40:25,297 --> 00:40:30,302 (男性)あっ おい やっつけろ! (人々の怒号) 607 00:40:33,764 --> 00:40:37,059 (長崎屋) ぐっ… 何だ! 何すんだ 608 00:40:40,896 --> 00:40:44,733 クハハハハハハ! 609 00:40:44,817 --> 00:40:49,697 太夫 今日は どうしても 太夫に お礼を言わなきゃならん 610 00:40:49,780 --> 00:40:53,659 おかげで広海屋は江戸一番の あきんどになりましたぞ 611 00:40:53,742 --> 00:40:56,912 天井知らずに上がっていた 米の相場が一気に下がり― 612 00:40:56,996 --> 00:40:59,623 あきんどからは 相場の神様と言われ― 613 00:40:59,707 --> 00:41:02,585 また 会う人ごとに 救いの神様と言われ― 614 00:41:02,668 --> 00:41:06,672 それも もともと米相場を見越して 安く買い込んだ持ち米じゃ 615 00:41:06,755 --> 00:41:11,260 なんぼ安く売ったところで もうけは大したものじゃ 616 00:41:11,343 --> 00:41:12,928 太夫 それというのも― 617 00:41:13,012 --> 00:41:16,015 この間… この間 太夫のお言葉のおかげじゃ 618 00:41:16,098 --> 00:41:19,977 太夫 そのうち わしは 二本差しの士分に取り立てられ― 619 00:41:20,060 --> 00:41:21,687 江戸きっての豪商になる 620 00:41:21,770 --> 00:41:24,607 いや これも みんな 太夫のおかげじゃ 621 00:41:24,690 --> 00:41:26,108 ああ このとおりじゃ (雪之丞)まあ― 622 00:41:26,192 --> 00:41:29,570 そのように申されますと かえって痛み入ります 623 00:41:29,653 --> 00:41:34,366 私は ただ 日頃 ごひいきに あずかっている あなた様に― 624 00:41:34,450 --> 00:41:37,328 お役人様のウワサを お伝えしたまでです 625 00:41:37,411 --> 00:41:39,914 (広海屋)いや それが大成功じゃ 626 00:41:39,997 --> 00:41:44,502 長崎屋は 大坂表から 10そうの米船を回漕(かいそう)したが― 627 00:41:44,585 --> 00:41:47,505 いやはや 大層な損も損 628 00:41:47,588 --> 00:41:50,424 長崎屋は上方米と心中だで 629 00:41:50,508 --> 00:41:54,011 ヒャハハハハハ… ヒャハハハ! 630 00:41:54,094 --> 00:41:56,805 (男衆)太夫 出です (雪之丞)はい 631 00:41:57,348 --> 00:42:00,809 では 広海屋さん おめでとうございました 632 00:42:00,893 --> 00:42:02,478 舞台ですので失礼いたします 633 00:42:02,561 --> 00:42:04,855 (広海屋)じゃあ わしは 今日一日 ここにいますから 634 00:42:04,939 --> 00:42:09,193 なあ そうじゃ 太夫を正客にして 騒ごうじゃないか のう? お? 635 00:42:09,276 --> 00:42:14,281 (人々の怒号) 636 00:42:20,746 --> 00:42:23,541 (男性)待ってくれよ やめ… やめてくれよ あっ 637 00:42:26,293 --> 00:42:30,756 待って! まっ 待って やめてくれよ 638 00:42:33,551 --> 00:42:36,303 おのれ 広海屋! 639 00:42:37,346 --> 00:42:42,351 (三味線の演奏と語り) 640 00:42:58,951 --> 00:43:00,202 (お囃子の演奏) 641 00:43:00,202 --> 00:43:03,956 (お囃子の演奏) 642 00:43:00,202 --> 00:43:03,956 (観客の歓声) 643 00:43:03,956 --> 00:43:05,207 (観客の歓声) 644 00:43:28,230 --> 00:43:30,941 (長崎屋)おい 番頭! ハァ ハァ… 645 00:43:31,025 --> 00:43:33,235 広海屋は どうした (番頭)知りません! 646 00:43:33,319 --> 00:43:36,030 (長崎屋)知らんて… 言わぬか! (番頭)ぐっ ど どこへって― 647 00:43:36,113 --> 00:43:38,657 雪之丞の所へ (長崎屋)えっ 雪之丞? 648 00:43:38,741 --> 00:43:40,868 (番頭)はい (長崎屋)くっ ハァ… 649 00:43:40,951 --> 00:43:45,956 (お囃子の演奏) 650 00:44:13,942 --> 00:44:18,947 (人々の騒ぎ声) 651 00:44:33,837 --> 00:44:38,842 (お囃子の演奏) (観客の歓声) 652 00:44:43,681 --> 00:44:46,642 (男性)うっ ハァ… (男性)うあっ 653 00:44:54,274 --> 00:44:56,527 (雪之丞) 広海屋さんは どうしました? 654 00:44:56,610 --> 00:44:58,654 (男衆)親方の部屋におられますよ 655 00:45:01,281 --> 00:45:03,242 (菊之丞)それは何よりでした 656 00:45:03,325 --> 00:45:06,495 (広海屋)親方 いい弟子を持ったもんだなあ 657 00:45:06,578 --> 00:45:09,206 今日は一座 総揚げ さあ 何でも おごりますよ 658 00:45:09,289 --> 00:45:11,959 さっ 表の景気を見てきましょう 659 00:45:13,210 --> 00:45:15,129 (男衆)あ これは これは (広海屋)ああ ご苦労さん 660 00:45:15,212 --> 00:45:17,089 (男性)あ これは旦那 (広海屋)ああ 大した景気だな 661 00:45:17,172 --> 00:45:18,298 ハハッ 662 00:45:39,653 --> 00:45:42,489 おっ おのれ 広海屋 663 00:45:43,532 --> 00:45:45,909 どけ どいてくれ! (男性)長崎屋だ! 664 00:45:45,993 --> 00:45:49,830 (人々の騒ぎ声) (広海屋)あっ ほれ 長崎屋 665 00:45:49,913 --> 00:45:51,665 (長崎屋)おのれ 広海屋 (広海屋)なっ 何を 666 00:45:51,748 --> 00:45:54,042 (長崎屋)よくも だましたな (広海屋)何をするんじゃ 667 00:45:54,126 --> 00:45:56,044 (雪之丞)表の騒ぎは何ですか? 668 00:45:56,128 --> 00:45:59,006 (男衆)米の暴落で 騒動が起きたらしいんですが 669 00:45:59,631 --> 00:46:01,800 (雪之丞)お前 見てきてください (男衆)はい 670 00:46:17,566 --> 00:46:19,610 いくら直しても― 671 00:46:20,611 --> 00:46:23,322 今日に限って私の顔は… 672 00:46:30,329 --> 00:46:31,747 (男衆)どうした? (男衆)へい 長崎屋さんと― 673 00:46:31,830 --> 00:46:33,582 広海屋さんが えらいケンカをしてます 674 00:46:33,665 --> 00:46:34,833 (男衆)早く お止めしないか (男衆)はい 675 00:46:34,917 --> 00:46:37,294 (長崎屋) これっ 広海屋 広海屋 676 00:46:37,377 --> 00:46:40,172 よくも お主は このわしを裏切ったな! 677 00:46:40,255 --> 00:46:42,382 これは また 妙なことを言われるな 678 00:46:42,466 --> 00:46:43,926 裏切ったとは何のことです? 679 00:46:44,009 --> 00:46:46,303 言うな わしが私財を投げ出して― 680 00:46:46,386 --> 00:46:48,722 上方米を仕入れるだけ 仕入れたのを知っていて― 681 00:46:48,805 --> 00:46:51,642 相場を狂わしたのは お主だ わしを殺す気か 682 00:46:51,725 --> 00:46:54,144 そんな言いがかりをされちゃ 困りますよ 683 00:46:54,228 --> 00:46:57,356 私は自分で仕入れた品を 売っただけのことじゃ 684 00:46:57,439 --> 00:46:59,691 誰に文句をつけられる筋合いは ありませんよ 685 00:46:59,775 --> 00:47:01,318 (長崎屋)何を! (広海屋)しつこいな 686 00:47:01,401 --> 00:47:05,155 仕入れた品はな 売る時が大切じゃ 687 00:47:05,239 --> 00:47:06,823 あんたが損をしたからと言って― 688 00:47:06,907 --> 00:47:09,201 わしのほうへ持ち込まれては とんだ迷惑じゃ 689 00:47:09,284 --> 00:47:11,078 (長崎屋)何! 広海屋 (広海屋)うわっ 690 00:47:11,161 --> 00:47:15,749 お主は よくも この長崎屋に そんな口が利けるな! このっ 691 00:47:15,832 --> 00:47:20,087 広海屋 よくも… だましおったな 692 00:47:20,170 --> 00:47:23,465 (菊之丞)雪之丞 大変だ 早く… 693 00:47:24,633 --> 00:47:27,636 はっ その顔は― 694 00:47:27,719 --> 00:47:30,305 亡くなった そなたの母上に 生き写しだ 695 00:47:31,139 --> 00:47:34,101 それが 私にも分かりません 696 00:47:34,184 --> 00:47:36,061 (広海屋)うわあっ (長崎屋)おのれ! 697 00:47:36,144 --> 00:47:39,523 (人々のざわめき) 698 00:47:39,606 --> 00:47:41,358 (広海屋)うっ (長崎屋)広海屋 699 00:47:41,441 --> 00:47:42,693 長崎以来のこと忘れたか 700 00:47:42,776 --> 00:47:44,820 (広海屋)貴様 松浦屋の番頭をしてた時… 701 00:47:44,903 --> 00:47:46,321 (長崎屋)何をっ 702 00:47:46,405 --> 00:47:48,991 (広海屋)貴様 松浦屋の番頭の時 店の金を使い込み― 703 00:47:49,074 --> 00:47:51,785 危うく 罪になるのを 助けてやったのは― 704 00:47:51,868 --> 00:47:54,079 一体 誰だと思うんだ (長崎屋)そんな古いこと… 705 00:47:54,162 --> 00:47:57,124 その松浦屋を罪に落としたのは誰だ 貴様じゃないか 706 00:47:57,207 --> 00:47:59,543 昔のことが知りたけりゃ いっくらでも言ってやるぞ 707 00:47:59,626 --> 00:48:02,296 (広海屋)何っ (長崎屋)うわあーっ! 708 00:48:03,463 --> 00:48:07,342 ああ~っ! 助けてくれ (雪之丞)お静かになされませ 709 00:48:08,093 --> 00:48:09,803 お静かになされませ (長崎屋)ああっ! 710 00:48:10,846 --> 00:48:15,892 ひゃあーっ! 奥様! ああっ… 奥様! 711 00:48:15,976 --> 00:48:19,354 ああっ ああっ ああっ ま 松浦屋 712 00:48:19,438 --> 00:48:21,189 あっ… (長崎屋)ああーっ! 713 00:48:21,273 --> 00:48:24,359 あっ あっ ああ… 何っ… (広海屋)ああっ ああっ 714 00:48:24,443 --> 00:48:26,403 (長崎屋)あっ ううっ (広海屋)がっ… 715 00:48:26,945 --> 00:48:30,157 こらっ 貴様 こらっ やっ 716 00:48:37,289 --> 00:48:39,541 (菊之丞)あっ 出るな 出てはならん 717 00:48:45,714 --> 00:48:50,719 (お囃子の演奏) 718 00:48:54,765 --> 00:48:55,932 (長崎屋)ああっ! 719 00:48:56,016 --> 00:48:57,100 (観客の悲鳴) (男衆)幕だ 幕だ 720 00:48:57,184 --> 00:48:58,185 (男衆)早く閉めろ! (男衆)幕だ! 幕だ 幕だ! 721 00:48:58,185 --> 00:48:59,978 (男衆)早く閉めろ! (男衆)幕だ! 幕だ 幕だ! 722 00:48:58,185 --> 00:48:59,978 (拍子木の音) 723 00:48:59,978 --> 00:49:00,062 (拍子木の音) 724 00:49:00,062 --> 00:49:03,190 (拍子木の音) 725 00:49:00,062 --> 00:49:03,190 (観客のざわめき) 726 00:49:03,190 --> 00:49:05,275 (観客のざわめき) 727 00:49:05,359 --> 00:49:06,610 (長崎屋)ああっ! 728 00:49:09,112 --> 00:49:10,280 (広海屋)ううっ 729 00:49:12,658 --> 00:49:17,663 (観客たちの悲鳴) 730 00:49:19,331 --> 00:49:21,541 (男衆)広海屋と長崎屋が 舞台で死んだぞ! 731 00:49:21,625 --> 00:49:26,296 (人々のざわめき) 732 00:49:29,925 --> 00:49:31,051 (菊之丞)雪之丞! 733 00:49:31,802 --> 00:49:35,639 広海屋と長崎屋 2人とも 斬り死にしたぞ! 734 00:49:38,558 --> 00:49:39,851 死んだ… 735 00:49:41,228 --> 00:49:42,854 死にましたか 736 00:49:54,574 --> 00:49:57,744 父上 母上 737 00:49:59,413 --> 00:50:02,040 敵のうち2人は死にました 738 00:50:05,752 --> 00:50:07,254 死にました 739 00:50:07,337 --> 00:50:12,134 (すすり泣き) 740 00:50:12,217 --> 00:50:14,594 (人々のざわめき) (男衆)お静かに願います 741 00:50:14,678 --> 00:50:18,640 (男衆)お静かに! 検使の方が見えますから お静かに 742 00:50:20,225 --> 00:50:21,643 (闇太郎)そうか 743 00:50:22,310 --> 00:50:25,480 おめえが雪之丞から 手を引いてくれると聞いて― 744 00:50:25,564 --> 00:50:27,983 俺は どんなにうれしいか 分からねえや 745 00:50:28,066 --> 00:50:29,818 (お初)話が こう決まれば― 746 00:50:29,901 --> 00:50:33,155 一刻も早く あの人に 敵討ちさせてあげたいね 747 00:50:33,238 --> 00:50:36,324 この後ろ盾は 闇の親分より他にないよ 748 00:50:36,408 --> 00:50:38,910 私こそ 親分に頼んだよ 749 00:50:38,994 --> 00:50:44,291 さっ この かんざしを親分の手から あの人に渡してやって 750 00:50:45,375 --> 00:50:47,419 よく そこまで決心してくれた 751 00:50:47,502 --> 00:50:50,839 じゃ この かんざしは 一応 俺が預かるぜ 752 00:50:50,922 --> 00:50:54,134 じゃ 俺は雪之丞に ようく言ってくるからな 753 00:50:54,217 --> 00:50:56,303 せっかく ここまで 来てもらったんだから― 754 00:50:56,386 --> 00:50:58,805 私のうちまで来てもらいたいけどさ 755 00:50:59,598 --> 00:51:01,600 あいにく お客さんでね 756 00:51:01,683 --> 00:51:05,687 おめえんとこのお客じゃ おおかた 裏通りに決まってるな 757 00:51:07,355 --> 00:51:09,191 (法印(ほういん))おい 何を慌ててるんだ 758 00:51:09,274 --> 00:51:10,650 あねご 知らねえか 759 00:51:10,734 --> 00:51:11,985 向こうにいるんだよ (むく犬の吉)ん? 760 00:51:12,986 --> 00:51:14,488 むく犬 何でえ? 761 00:51:14,571 --> 00:51:16,698 (むく犬の吉)あねご! あねご… あねご どこ行った? 762 00:51:16,782 --> 00:51:19,034 たった今 帰(けえ)ったよ (むく犬の吉)あれ… 763 00:51:19,117 --> 00:51:22,037 親分 中村座で… (闇太郎)どしたんでえ? 764 00:51:22,120 --> 00:51:24,581 長崎屋と広海屋が 大ゲンカをしやがって― 765 00:51:24,664 --> 00:51:26,750 両方とも死んじゃったんでえ 766 00:51:27,501 --> 00:51:30,879 何? 長崎屋と広海屋が死んだのか 767 00:51:34,716 --> 00:51:36,051 (門倉)お初は いるか? 768 00:51:38,303 --> 00:51:40,555 お初はどこだ おい! 769 00:51:40,639 --> 00:51:42,933 あっ (浪路)はっ ハァ… 770 00:51:43,433 --> 00:51:45,602 (横山)あ… (浪路)あなた方は― 771 00:51:45,685 --> 00:51:46,978 何しに来ましたか? 772 00:51:47,062 --> 00:51:48,146 はっ 773 00:51:49,397 --> 00:51:50,732 浪路の方か 774 00:51:50,816 --> 00:51:54,027 また どうして このような所へ おいでなられたのじゃ 775 00:51:54,110 --> 00:51:56,154 (浪路)そなたたちこそ 帰ってください 776 00:51:56,238 --> 00:51:59,199 (横山)何をおっしゃられますか 殿様がお待ちかねでございます 777 00:51:59,282 --> 00:52:01,701 (浪路)父上のことなど 言わないでください 778 00:52:01,785 --> 00:52:04,454 そばに寄ると許しませんよ (横山)ああ そんな お戯れは… 779 00:52:04,538 --> 00:52:05,872 (浪路)助けて 780 00:52:05,956 --> 00:52:06,915 助けて! (横山)ああ そんな― 781 00:52:06,998 --> 00:52:08,792 大きな声をお立てになっても ここは一軒家 782 00:52:08,875 --> 00:52:10,418 無駄ですぞ (浪路)やっ… 783 00:52:10,502 --> 00:52:13,797 (お初)誰だい? 黙って人の家に入ってきたのは 784 00:52:13,880 --> 00:52:15,549 一体 誰に断って入ってきたんだよ 785 00:52:15,632 --> 00:52:17,300 (門倉)おおっ これは いいところへ帰ってきたな 786 00:52:17,384 --> 00:52:20,387 貴様 どうして このお方を ここへ かくまったんだ 白状せい 787 00:52:20,470 --> 00:52:23,515 (お初)何を言ってるんだい 誰が白状しなきゃならないんだい 788 00:52:23,598 --> 00:52:26,560 (門倉)貴様 まさか雪之丞に 頼まれたんじゃあるまいな 789 00:52:26,643 --> 00:52:29,145 (お初) 何て脅かし文句 言うんだい 790 00:52:29,229 --> 00:52:34,568 とにかくね ここは私の家なんだよ それに この人はね― 791 00:52:34,651 --> 00:52:36,778 この軽業お初が 助けた人なんだからね 792 00:52:36,862 --> 00:52:38,238 (横山)何? (お初)とっとと出ておいきよ 793 00:52:38,321 --> 00:52:40,740 (横山)あっ (お初)はっ お待ち! 794 00:52:40,824 --> 00:52:43,702 (横山)あっ おい おい! (門倉)しゃらくせえまねすんな 795 00:52:43,785 --> 00:52:46,329 お放しったら (門倉)町方を呼ぶぞ 796 00:52:46,413 --> 00:52:48,748 呼べるもんなら 呼んでみな (門倉)ううっ 797 00:52:48,832 --> 00:52:50,584 (お初)お待ち (門倉)横山! 798 00:52:50,667 --> 00:52:52,335 早く浪路の方を連れ出せ! 799 00:52:52,419 --> 00:52:53,837 (お初)くっ… (門倉)んっ 800 00:52:55,755 --> 00:52:57,924 お初 邪魔するか 801 00:52:59,426 --> 00:53:03,054 (横山)し… しばらく しばらく 浪路様 しばらく 802 00:53:03,138 --> 00:53:06,057 しばらく お待ちください しばらく しばらく 803 00:53:06,141 --> 00:53:07,684 帰ってください 804 00:53:09,185 --> 00:53:10,645 はっ… 805 00:53:11,605 --> 00:53:12,939 斬る気かい? 806 00:53:13,690 --> 00:53:16,109 (門倉) 貴様の出よう1つだ どけ! 807 00:53:16,192 --> 00:53:17,235 (お初)ハァッ 808 00:53:18,028 --> 00:53:20,697 (門倉)んっ こら 女! 809 00:53:20,780 --> 00:53:26,119 これっ 放せ! この 放さぬか こらっ んんっ… 810 00:53:26,202 --> 00:53:27,287 (浪路)あっ… 811 00:53:29,664 --> 00:53:32,375 それほど お屋敷へ帰るのが お嫌か? 812 00:53:33,001 --> 00:53:34,210 はっ… 813 00:53:34,711 --> 00:53:39,132 横山 そなたの言うことでしたら 何でも聞きますから 814 00:53:39,215 --> 00:53:41,343 どうぞ見逃してくださいませ 815 00:53:41,426 --> 00:53:43,219 お家のためとはいえ― 816 00:53:43,303 --> 00:53:46,222 将軍家の おもちゃにも等しき身の上 817 00:53:46,306 --> 00:53:49,017 よろしい 拙者が 隠れ小屋を探してしんぜよう 818 00:53:49,100 --> 00:53:51,353 まあ… はっ 嫌 819 00:53:51,436 --> 00:53:53,563 (門倉)ふんっ! (お初)ああっ 820 00:53:54,147 --> 00:53:55,482 はっ あ… 821 00:53:55,565 --> 00:53:59,945 ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ… 822 00:54:04,199 --> 00:54:06,660 あっ ハァ ハァ… 823 00:54:07,369 --> 00:54:12,123 なるほど 軽業お初は 絶世の美人だと聞いていたが― 824 00:54:12,207 --> 00:54:14,292 これじゃあ ずいぶん 男も泣かしたろう 825 00:54:14,376 --> 00:54:17,837 ハァ ハァ ハァ 826 00:54:17,921 --> 00:54:20,674 (浪路)何をするのですか! ハァ ハァ… 827 00:54:20,757 --> 00:54:23,385 (横山)お お部屋様 さあ こちら 828 00:54:23,468 --> 00:54:27,889 ただいま申し上げた横山の胸が お分かりにはならんのですか? 829 00:54:28,974 --> 00:54:30,392 (浪路)あっ (横山)お部屋様 830 00:54:31,518 --> 00:54:32,894 お部屋様! 831 00:54:34,020 --> 00:54:38,358 (浪路)ううっ 何をする あっ (横山)お部屋様 832 00:54:39,025 --> 00:54:43,613 ハァ… 殺したらいいじゃないか ハァ… 833 00:54:43,697 --> 00:54:45,323 (闇太郎)待ちやがれ 834 00:54:46,116 --> 00:54:48,201 (門倉)おう 貴様! 835 00:54:49,452 --> 00:54:53,957 何だか気にかかるから来てみたが 案の定だ 836 00:54:55,000 --> 00:54:58,461 あっ! ハァ… (門倉)闇太郎 837 00:54:58,545 --> 00:55:00,296 今日こそ たたっ斬ってやるぞ 838 00:55:00,380 --> 00:55:01,589 ふんっ 839 00:55:02,924 --> 00:55:04,384 ふんっ (闇太郎)野郎 840 00:55:07,721 --> 00:55:11,474 (門倉と闇太郎のもみ合う声) 841 00:55:17,605 --> 00:55:19,149 (門倉)ふんっ (闇太郎)おっ 842 00:55:19,232 --> 00:55:20,817 (門倉)うあっ (闇太郎)ざっ! 843 00:55:20,900 --> 00:55:22,193 (門倉)ううっ… 844 00:55:24,529 --> 00:55:26,364 んっ くっ… 845 00:55:30,243 --> 00:55:33,329 (お初) 親分 とうとう殺しちゃったね 846 00:55:33,413 --> 00:55:35,582 こんなやつは 死んだほうがマシなんだ 847 00:55:35,665 --> 00:55:38,293 これも雪之丞の敵の片割れだ 848 00:55:38,918 --> 00:55:41,671 親分 もう1人 助けてもらう人があったんだよ 849 00:55:41,755 --> 00:55:44,049 何? まだいるのか (お初)早くね 850 00:55:44,132 --> 00:55:47,177 (横山)これ… (浪路)ああっ! うっ… 851 00:55:50,263 --> 00:55:52,265 (むく犬の吉)あねご あねご! 852 00:55:52,348 --> 00:55:55,018 あっ! ああっ あねご! あねご… 853 00:55:55,101 --> 00:55:57,604 バカだね どこ行ってたんだよ (むく犬の吉)あねご! いたた… 854 00:55:57,687 --> 00:55:59,981 (お初)早く 法印を呼んで あの死骸を片づけるんだよ 855 00:56:00,065 --> 00:56:03,610 (むく犬の吉) ほっ ほっ ほ 法印さ~ん! ああ… 856 00:56:03,693 --> 00:56:06,196 (横山)くっ うう… 857 00:56:06,279 --> 00:56:07,238 (闇太郎)おっ 858 00:56:10,867 --> 00:56:12,118 横山 859 00:56:13,453 --> 00:56:15,914 おい! おい しっかりしろ 860 00:56:17,123 --> 00:56:20,376 (お初)しっかりおし しっかりしなさいよ! 861 00:56:20,460 --> 00:56:23,129 親分 浪路の方ですよ 862 00:56:23,922 --> 00:56:26,508 なんて因果なことだろうね 863 00:56:29,552 --> 00:56:31,054 そうか… 864 00:56:43,066 --> 00:56:47,195 不思議なことに どう化粧を変えましても― 865 00:56:47,278 --> 00:56:50,198 母親そっくりの顔になりました 866 00:56:51,950 --> 00:56:55,912 今にして思えば 先生の仰せられたとおり― 867 00:56:55,995 --> 00:56:59,916 両親の霊が私を守ってくださったに 違いありません 868 00:56:59,999 --> 00:57:03,837 (一松斎)残るは あと三斎 浜川 横山の3人 869 00:57:03,920 --> 00:57:08,800 雪之丞 この調子だと 近いうちに必ず敵を討てる 870 00:57:08,883 --> 00:57:11,553 はい それにつきまして… 871 00:57:11,636 --> 00:57:12,637 (一松斎)待て 872 00:57:16,099 --> 00:57:17,642 (男性) ただいま お初という女が― 873 00:57:17,725 --> 00:57:20,979 こちらに伺っている雪之丞様に ぜひ お目にかかりたいと― 874 00:57:21,062 --> 00:57:22,188 参りました 875 00:57:23,022 --> 00:57:24,899 (一松斎)ここへ通せ (男性)はい 876 00:57:27,527 --> 00:57:31,448 先生… (一松斎)雪 早く座を外せ 877 00:57:31,531 --> 00:57:32,615 (雪之丞)はい 878 00:57:42,750 --> 00:57:45,920 (法印)親分 もうダメらしいぜ 879 00:57:50,550 --> 00:57:54,137 (浪路)ハァ… 雪之丞様! 880 00:57:54,220 --> 00:57:55,680 (闇太郎)もうすぐ来る 881 00:57:56,723 --> 00:57:58,600 (浪路)雪之丞様… 882 00:57:58,683 --> 00:58:02,604 あっしは 雪之丞じゃねえんだ (浪路)まあ… 883 00:58:03,229 --> 00:58:06,524 よく似ておられますこと 884 00:58:06,608 --> 00:58:10,320 もうしばらくの我慢だ しっかりしてくれ 885 00:58:10,403 --> 00:58:11,654 (浪路)う… 886 00:58:14,616 --> 00:58:17,869 これほど頼んでも 雪之丞さんを 出してもらえないのかい? 887 00:58:17,952 --> 00:58:19,913 (一松斎)話によっては そなたの命はないぞ 888 00:58:19,996 --> 00:58:20,830 何だって? 889 00:58:20,914 --> 00:58:22,665 わしが そなたを斬り捨てる 890 00:58:22,749 --> 00:58:24,792 それを承知ならば雪を出そう 891 00:58:24,876 --> 00:58:29,589 何でも承知さ さあ 雪之丞さんを 出してくださいよ 早く 892 00:58:30,340 --> 00:58:32,091 あっ 雪之丞さん! 893 00:58:34,302 --> 00:58:37,889 お初様 いつぞやは 大変 失礼いたしました 894 00:58:37,972 --> 00:58:39,724 (お初) 実は あんたに どうしても― 895 00:58:39,807 --> 00:58:42,852 私と一緒に来てもらわなきゃ ならないことができちゃったのさ 896 00:58:42,936 --> 00:58:45,980 と言われましても わたくしは… (お初)ああ じれったいね 897 00:58:46,064 --> 00:58:49,108 そら あの土部の娘さんの 浪路の方が― 898 00:58:49,192 --> 00:58:50,568 今 死にかかってるんだよ 899 00:58:50,652 --> 00:58:54,572 え… 浪路の方が? 900 00:58:54,656 --> 00:58:58,826 ええ 闇太郎さんが 今 看護をしていますがね― 901 00:58:58,910 --> 00:59:02,372 虫の息で あなたに会いたいと 言ってるんです 902 00:59:03,039 --> 00:59:05,917 恐らく 今夜中には 息を引き取るでしょう 903 00:59:06,834 --> 00:59:10,296 お話は よく分かりませんが どうしたというわけですか? 904 00:59:10,380 --> 00:59:14,133 浪路さんは お前さん恋しさで 家を飛び出したんだよ 905 00:59:14,217 --> 00:59:17,220 それを今日 横山と門倉に 見つけられてね 906 00:59:17,303 --> 00:59:20,223 手ごめにされそうになったのを 死力を尽くして― 907 00:59:20,306 --> 00:59:21,808 短刀で刺し殺したんだよ 908 00:59:21,891 --> 00:59:27,397 まあ… 横山が浪路の方に 刺し殺されたんですか 909 00:59:28,022 --> 00:59:29,440 横山が… 910 00:59:33,820 --> 00:59:35,613 (お初)あんたの敵だろ? 911 00:59:35,697 --> 00:59:38,908 何を隠そう長崎以来の敵じゃ 912 00:59:38,992 --> 00:59:41,035 (お初)そいつを 刺し殺したのがもとで― 913 00:59:41,119 --> 00:59:43,204 浪路さんは今 死にかかってるんです 914 00:59:43,288 --> 00:59:45,957 門倉は… 門倉はどうしました? 915 00:59:46,040 --> 00:59:49,502 (お初)闇太郎さんに斬られて これも死にましたよ 916 00:59:50,878 --> 00:59:52,171 そうでしたか… 917 00:59:53,590 --> 00:59:57,552 雪之丞 一刻も早く行ってやれ 918 00:59:58,177 --> 00:59:59,304 はい 919 01:00:00,179 --> 01:00:04,601 行ってくれますか ああ これで人助けになるってもの 920 01:00:04,684 --> 01:00:07,270 さあ 駕籠があるから早く 921 01:00:18,197 --> 01:00:22,619 (駕籠屋たち) えっほ えっほ えっほ えっほ えっほ えっほ 922 01:00:22,702 --> 01:00:28,166 えっほ えっほ えっほ えっほ えっほ えっほ… 923 01:00:34,005 --> 01:00:37,216 しっかりしてくれ もうすぐ来る 924 01:00:37,967 --> 01:00:38,968 おい! 925 01:00:43,139 --> 01:00:44,265 (お初)早く! 926 01:00:54,484 --> 01:00:57,737 親分 親分! (闇太郎)来てくれたか 927 01:01:05,787 --> 01:01:07,038 早く 928 01:01:11,584 --> 01:01:15,338 (闇太郎)よく来てやってくれた さあ 会ってやってくれ 929 01:01:15,421 --> 01:01:16,881 (お初)雪之丞さん 930 01:01:18,299 --> 01:01:20,343 (闇太郎) どうして早く会ってやらねえんだ 931 01:01:21,719 --> 01:01:22,804 お初 932 01:01:31,771 --> 01:01:33,272 浪路様 933 01:01:34,607 --> 01:01:38,653 雪之丞です お分かりになりますか? 934 01:02:00,133 --> 01:02:01,676 浪路様 935 01:02:06,180 --> 01:02:07,473 太夫 936 01:02:08,349 --> 01:02:14,272 (雪之丞)浪路様 どうぞ お気を確かになされませ 937 01:02:14,355 --> 01:02:17,900 (浪路) ハァ… よう来てくれました 938 01:02:18,860 --> 01:02:23,740 浪路は もう… 太夫には会えぬかと思って― 939 01:02:24,449 --> 01:02:26,701 諦めておりました 940 01:02:27,326 --> 01:02:29,328 (雪之丞)何を申されます 941 01:02:30,037 --> 01:02:32,582 どうぞ 元気を出してくださりませ 942 01:02:34,792 --> 01:02:36,127 (浪路)太夫 943 01:02:37,795 --> 01:02:39,714 浪路は今― 944 01:02:40,214 --> 01:02:43,176 恐ろしい夢を見ておりました 945 01:02:43,676 --> 01:02:45,511 (雪之丞)どのような夢を? 946 01:02:47,597 --> 01:02:49,724 (浪路)太夫と私とは― 947 01:02:50,516 --> 01:02:52,226 生まれながらの― 948 01:02:53,686 --> 01:02:55,062 敵同士 949 01:02:57,440 --> 01:03:01,194 何ですと? 何と仰せられます? 950 01:03:04,739 --> 01:03:07,992 でも… でも それは― 951 01:03:08,075 --> 01:03:10,036 夢なのでしょうね? 952 01:03:11,454 --> 01:03:12,622 太夫! 953 01:03:22,715 --> 01:03:24,091 浪路様 954 01:03:24,884 --> 01:03:26,969 敵同士などと― 955 01:03:27,053 --> 01:03:30,264 何で そのようなことが あるはずがありません 956 01:03:30,932 --> 01:03:32,642 (浪路)そうですか 957 01:03:34,352 --> 01:03:36,938 夢で何よりでした 958 01:03:38,689 --> 01:03:39,899 太夫 959 01:03:42,026 --> 01:03:46,322 浪路は 命をかけての恋でした 960 01:03:47,740 --> 01:03:51,661 ひと言… ただ ひと言― 961 01:03:52,245 --> 01:03:55,665 “愛している”と 言うてはくれませぬか 962 01:04:02,672 --> 01:04:06,217 浪路様 浪路様 963 01:04:08,344 --> 01:04:10,471 実は私は女 964 01:04:12,682 --> 01:04:13,808 (お初)はっ… 965 01:04:17,770 --> 01:04:19,480 何ですか? 966 01:04:21,315 --> 01:04:25,862 よく… 聞こえませぬ 太夫 967 01:04:27,530 --> 01:04:31,492 太夫こそ 一生かけて あなたを慕っておるのですよ 968 01:04:31,576 --> 01:04:33,077 ねえ 太夫? 969 01:04:35,288 --> 01:04:38,916 男で… 男でいてくださいね 970 01:04:42,503 --> 01:04:45,715 浪路様 私は― 971 01:04:46,215 --> 01:04:48,009 私は あなた様に― 972 01:04:48,092 --> 01:04:51,178 将軍家 お戻りを お勧めしたのは― 973 01:04:52,054 --> 01:04:55,975 あなた様の幸せを願ったからです 974 01:05:02,273 --> 01:05:05,318 ウソ… 違います 975 01:05:17,288 --> 01:05:21,751 しかし今は もう どこへも参りません 976 01:05:22,335 --> 01:05:24,795 いつまでも ここにおりますよ 977 01:05:25,421 --> 01:05:29,926 分かりましたか? 浪路様 (浪路)あ… 978 01:05:31,969 --> 01:05:33,346 太夫 979 01:05:44,023 --> 01:05:45,441 浪路様 980 01:05:47,401 --> 01:05:51,364 ♪~ 981 01:05:51,447 --> 01:05:58,037 ♪ 恋の淡雪 982 01:05:58,579 --> 01:06:05,544 ♪ はかなく消えた 983 01:06:07,922 --> 01:06:14,261 ♪ 江戸のまぼろし 984 01:06:14,345 --> 01:06:21,310 ♪ 浪路さま 985 01:06:23,896 --> 01:06:30,653 ♪ 熱い情(なさけ)に 986 01:06:31,153 --> 01:06:38,119 ♪ 役者が流す 987 01:06:40,371 --> 01:06:47,336 ♪ 今日の涙は 988 01:06:48,921 --> 01:06:53,175 ♪ ああ 989 01:06:53,259 --> 01:07:00,224 ♪ 嘘じゃない 990 01:07:21,495 --> 01:07:26,500 ~♪ 991 01:07:28,419 --> 01:07:33,049 広海屋も長崎屋も死んだか 992 01:07:33,132 --> 01:07:34,592 (松ヶ枝)はい 993 01:07:34,675 --> 01:07:39,555 番所役人の話では 2人は米相場の件で恨み合い― 994 01:07:39,638 --> 01:07:44,143 ほとんど狂い死にに等しい 死に方をしたそうにござります 995 01:07:44,226 --> 01:07:47,730 それがまた どうして 中村座で死んだのだ? 996 01:07:47,813 --> 01:07:52,109 (松ヶ枝) 広海屋が雪之丞の所にいるのを 長崎屋が知り― 997 01:07:52,193 --> 01:07:54,278 飛び込んだらしゅうございます 998 01:07:54,862 --> 01:07:56,822 広海屋なら― 999 01:07:57,490 --> 01:07:59,325 さもあろう 1000 01:08:01,118 --> 01:08:02,244 だが― 1001 01:08:03,162 --> 01:08:05,039 ただ気がかりは― 1002 01:08:06,290 --> 01:08:08,501 浪路のことじゃ 1003 01:08:10,461 --> 01:08:11,837 浪路 1004 01:08:18,636 --> 01:08:19,886 (すすり泣き) 1005 01:08:34,568 --> 01:08:38,029 くっ… だが この三斎― 1006 01:08:38,113 --> 01:08:42,283 目に見えぬ怨敵の魔力なぞに おびえはせんぞ! 1007 01:08:45,246 --> 01:08:46,622 (松ヶ枝)殿様! 1008 01:08:47,872 --> 01:08:52,336 貴様も怨敵の味方をするのか 1009 01:08:52,419 --> 01:08:54,880 (松ヶ枝) ひっ… 何を申されまするか 1010 01:08:55,756 --> 01:08:59,676 松ヶ枝… 松ヶ枝! 1011 01:09:00,426 --> 01:09:02,595 浪路をどこへやった 1012 01:09:03,889 --> 01:09:06,642 浪路をいくらで渡した! (松ヶ枝)うっ… 1013 01:09:09,979 --> 01:09:11,814 (門番)何だ? こんな夜更けに 1014 01:09:11,897 --> 01:09:13,524 (闇太郎)殿様に お目にかかりてえんですよ 1015 01:09:13,607 --> 01:09:15,442 (門番) 用があったら 明日 来い 帰れ 1016 01:09:15,526 --> 01:09:19,613 (闇太郎)明日に延ばしてよけりゃ わざわざ今夜 来やしませんや 1017 01:09:19,697 --> 01:09:23,826 殿様に どうしても渡してえ品物を 持ってきたと取り次いでもらいてえ 1018 01:09:23,908 --> 01:09:26,245 (門番)取り次ぎはできんと 言ってるではないか 帰れ 帰れ 1019 01:09:26,328 --> 01:09:28,163 (闇太郎)分からねえ人だな 1020 01:09:28,247 --> 01:09:32,960 このまま あっしを追い返したら あとで腹を切らなきゃならねえぜ 1021 01:09:33,042 --> 01:09:35,129 おう そこ どけよ (門番)ろうぜき者! 1022 01:09:35,212 --> 01:09:38,506 (闇太郎)何でえ 何でえ 何が ろうぜきだ 早く取り次げ 1023 01:09:38,591 --> 01:09:42,051 浜川 浜川! (浜川)はっ! 1024 01:09:42,553 --> 01:09:45,639 あの騒々しいのは 何じゃ! (浜川)はっ 1025 01:09:47,892 --> 01:09:50,978 (闇太郎)早く取り次げばいいんだ (浜川)何事だ? 騒々しい 1026 01:09:51,060 --> 01:09:53,981 (門番)この者が お殿様に 取り次げと申して動きません 1027 01:09:54,064 --> 01:09:55,608 (浜川)夜分 何用で参ったか? 1028 01:09:55,691 --> 01:09:58,360 (闇太郎)一刻を争うものを お殿様に お目にかけてえと― 1029 01:09:58,444 --> 01:10:02,114 わざわざ参上したわけですよ (浜川)何? 一刻を争う? 1030 01:10:02,198 --> 01:10:04,408 (闇太郎)それがために わざわざ闇太郎が来たと― 1031 01:10:04,491 --> 01:10:06,285 お取り次ぎくだせえ (浜川)何 闇太郎? 1032 01:10:06,368 --> 01:10:10,247 おっと おめえさんたちには 分からねえこった 1033 01:10:10,331 --> 01:10:13,667 早く取り次がねえと てめえらの首が すっ飛ぶぜ 1034 01:10:19,924 --> 01:10:22,635 (浜川)闇太郎でございます (三斎)何? 1035 01:10:23,469 --> 01:10:25,095 闇太郎が参ったと? 1036 01:10:25,804 --> 01:10:27,598 これに通せ! (浜川)はっ 1037 01:10:29,975 --> 01:10:31,477 刀を持て! 1038 01:10:44,657 --> 01:10:46,784 (三斎)闇太郎と申すのは そのほうか 1039 01:10:46,867 --> 01:10:48,202 (闇太郎)いかにも あっしです 1040 01:10:48,285 --> 01:10:51,914 (三斎)そのほう 余が屋敷に 忍び込んだ覚えはないか? 1041 01:10:51,997 --> 01:10:54,083 (闇太郎)そんなことと 話が違いますわ 1042 01:10:54,166 --> 01:10:55,459 あっしが出向いたのは― 1043 01:10:55,542 --> 01:10:57,586 どうしても今夜 お届けしなくちゃならねえんで― 1044 01:10:57,670 --> 01:10:59,421 参上したわけなんですぜ 1045 01:10:59,505 --> 01:11:03,050 (三斎)これか? 当家で捜しているものは 1046 01:11:03,133 --> 01:11:07,554 (闇太郎) あっしが くどくど申すより どうぞ お開けなすってくだせえ 1047 01:11:07,638 --> 01:11:09,014 (三斎)浜川 (浜川)はっ 1048 01:11:09,098 --> 01:11:09,974 (三斎)ふたを取れ (浜川)はっ 1049 01:11:10,057 --> 01:11:12,851 おっと 殿様以外の人は いけねえ 1050 01:11:12,935 --> 01:11:15,604 土部の旦那 ご自分で お開けなすって 1051 01:11:15,688 --> 01:11:17,898 わしに開けろと申すのか 1052 01:11:17,982 --> 01:11:21,026 そうですよ でなきゃ今夜― 1053 01:11:21,110 --> 01:11:23,862 こんな苦労して ここまで持ち込みゃしませんよ 1054 01:11:27,449 --> 01:11:29,743 くっ… (闇太郎)何でえ 1055 01:11:29,827 --> 01:11:31,996 刀で開けていいのかい 1056 01:11:32,579 --> 01:11:33,831 いいんですかい! 1057 01:11:33,914 --> 01:11:34,999 (三斎)ん? 1058 01:11:46,176 --> 01:11:47,094 なっ… 1059 01:12:27,343 --> 01:12:28,802 お部屋様! 1060 01:12:34,183 --> 01:12:38,687 殿様 夜中 伺ったわけが お分かりでございましょう? 1061 01:12:41,482 --> 01:12:45,819 闇太郎 これは一体 どうしたっちゅうわけじゃ 1062 01:12:47,571 --> 01:12:49,531 誰が浪路をこのように… 1063 01:12:50,824 --> 01:12:54,161 訳を申せ! 訳を言わぬか! 1064 01:12:54,244 --> 01:12:57,956 おおっと 殿様 そう取り乱しちゃ みっともねえ 1065 01:12:58,040 --> 01:12:59,208 (三斎)何だと? 1066 01:12:59,291 --> 01:13:02,378 罪もねえ お嬢さんを こんな姿にしたのは― 1067 01:13:02,461 --> 01:13:04,588 誰でもねえ 殿様ですぜ 1068 01:13:04,671 --> 01:13:08,133 何? 何と申す! 1069 01:13:09,593 --> 01:13:12,096 あっしは おめえさんや この仏とは― 1070 01:13:12,179 --> 01:13:16,517 縁もゆかりもねえ人間だが 妙な行きがかりから― 1071 01:13:16,600 --> 01:13:19,520 お嬢さんが息を引き取る時に 立ち会ったんだ 1072 01:13:21,480 --> 01:13:23,982 身分と金さえありゃあ 世の中のことは― 1073 01:13:24,066 --> 01:13:26,276 どうにでもなると思ってる おめえさんに― 1074 01:13:26,360 --> 01:13:28,695 何を言っても始まらねえが― 1075 01:13:30,239 --> 01:13:33,742 考えてみりゃあ こんな不幸せな お姫様 ありゃしねえ 1076 01:13:34,284 --> 01:13:36,495 婿は将軍様か何か知らねえが― 1077 01:13:36,578 --> 01:13:39,873 心にもねえ男の慰みものにされてよ 1078 01:13:41,458 --> 01:13:44,503 やっと好きな男ができたと思や― 1079 01:13:44,586 --> 01:13:49,049 その相手とは この世じゃあ 金輪際 一緒になれねえ間柄だ 1080 01:13:50,551 --> 01:13:54,221 焦がれ焦がれた相手と 一緒になれねえと知った時― 1081 01:13:54,930 --> 01:13:58,267 お嬢さんは… お嬢さんは… 1082 01:13:58,350 --> 01:14:02,354 浪路を手にかけたのは 一体 誰だ! 1083 01:14:02,438 --> 01:14:04,815 (闇太郎) よく調べてごらんなせえ 1084 01:14:04,898 --> 01:14:08,193 お嬢さんには 刀傷一つ ありゃしねえや 1085 01:14:08,277 --> 01:14:10,279 強いて手をかけたとすりゃ― 1086 01:14:10,362 --> 01:14:13,782 おめえさんところの 横山と門倉という男ですぜ 1087 01:14:13,866 --> 01:14:16,702 (三斎) 何? たわけたことを申すな 1088 01:14:16,785 --> 01:14:21,582 (闇太郎)どうしてです? 門倉も横山も帰っちゃいますめえ 1089 01:14:21,665 --> 01:14:24,126 帰ってるなら 出してもらいましょうや 1090 01:14:24,710 --> 01:14:26,962 ヘッ 当たりめえよ 1091 01:14:27,045 --> 01:14:30,132 横山は このお嬢さんに横恋慕して のしかかったところ― 1092 01:14:30,215 --> 01:14:33,510 お嬢さんの必死の短剣で 刺し殺されたんですぜ 1093 01:14:33,594 --> 01:14:38,015 (三斎)くっ でまかせ言いおると そのほうが裁かれるぞ 1094 01:14:38,098 --> 01:14:40,309 (闇太郎)疑い深(ぶけ)え殿様だな 1095 01:14:41,685 --> 01:14:44,354 あっしは 金輪際 ウソを言うのは きれえだ! 1096 01:14:46,273 --> 01:14:49,568 では 闇太郎殿とやら― 1097 01:14:49,651 --> 01:14:52,571 浪路様は どなたかのお名前を… 1098 01:14:52,654 --> 01:14:54,531 ええい もう言うな! よい! 1099 01:14:54,615 --> 01:14:57,743 いいえ それでは… 1100 01:14:58,285 --> 01:15:03,373 それでは あまりに仏様が おかわいそうでございます 1101 01:15:05,209 --> 01:15:06,835 そのとおりだ 1102 01:15:07,586 --> 01:15:09,505 雪之丞を呼びなさる― 1103 01:15:09,588 --> 01:15:11,381 その しおらしさに あっしは打たれて― 1104 01:15:11,465 --> 01:15:13,759 仲間を突っ走らせたところ― 1105 01:15:13,842 --> 01:15:15,427 太夫は お嬢さんが 息を引き取るまで― 1106 01:15:15,511 --> 01:15:17,137 そばにいてくれた 1107 01:15:18,305 --> 01:15:22,267 見なせえ お嬢さんの死骸は 笑ってますわ 1108 01:15:26,396 --> 01:15:28,398 これというのも もとを正せば― 1109 01:15:28,482 --> 01:15:31,360 みんな おめえさんの悪さから 出たことだ 1110 01:15:31,443 --> 01:15:33,987 あっしは ただ それが言いたくて 来たんだ 1111 01:15:34,571 --> 01:15:36,281 法印 帰ろうぜ 1112 01:15:36,365 --> 01:15:39,409 (三斎)くっ… 闇太郎 待て 1113 01:15:39,493 --> 01:15:41,411 (闇太郎)何でえ その声は 1114 01:15:41,495 --> 01:15:45,332 世の中で 誰が酔狂で こんな親切を するやつがいると思うか 1115 01:15:45,415 --> 01:15:48,377 それを礼一つ言わねえで “待て”とは何だ! 1116 01:15:48,460 --> 01:15:51,547 (松ヶ枝)闇太郎殿! お礼を申します 1117 01:15:51,630 --> 01:15:54,508 (三斎)くっ… 控えい! 控えおれ! 1118 01:15:57,261 --> 01:16:02,057 殿様 何とぞ 松ヶ枝をお手討ちに 1119 01:16:05,185 --> 01:16:08,438 この屋敷には 人でなしばかりかと思ったら― 1120 01:16:08,522 --> 01:16:10,774 おめえさんみたいな人も いたんだな 1121 01:16:11,692 --> 01:16:14,820 話によっちゃあ 一暴れしてやろうと思ったが― 1122 01:16:14,903 --> 01:16:16,488 やめといてやらあ 1123 01:16:31,044 --> 01:16:34,715 (目付)土部殿 遺憾ながら ご貴殿― 1124 01:16:34,798 --> 01:16:38,260 今日より ご出仕 お差し止めでござりまするぞ 1125 01:16:38,343 --> 01:16:39,428 (三斎)何と言われる! 1126 01:16:40,220 --> 01:16:44,099 火急の用あって 上様に拝謁いたすそれがしを― 1127 01:16:44,182 --> 01:16:46,643 止められる所存か (目付)その ご用件― 1128 01:16:46,727 --> 01:16:48,895 すでに承知いたしておりまする 1129 01:16:48,979 --> 01:16:52,316 何… どけい! 上様 じきじき お話をいたす 1130 01:16:52,399 --> 01:16:53,734 なりません! 1131 01:16:54,318 --> 01:16:57,029 大目付様 じきじきに お話しになります 1132 01:16:57,112 --> 01:16:58,322 何? 1133 01:17:00,616 --> 01:17:02,242 大目付? 1134 01:17:05,996 --> 01:17:07,247 はっ 1135 01:17:18,216 --> 01:17:19,926 おのれ… 1136 01:17:23,555 --> 01:17:26,933 出仕まかりならんとは 聞き捨てならざる言葉ながら― 1137 01:17:27,017 --> 01:17:30,228 この三斎 火急の用あって 上様に お会いするを― 1138 01:17:30,312 --> 01:17:31,647 あくまで 止められるか! 1139 01:17:31,730 --> 01:17:32,939 (大目付)待たれい! 1140 01:17:34,483 --> 01:17:37,819 浪路の方 急死のことでござろう 1141 01:17:39,529 --> 01:17:43,075 な… 急死とは何じゃ 長々の病気じゃ 1142 01:17:43,158 --> 01:17:45,452 控えい! (目付)控えい 控えい! 1143 01:17:45,535 --> 01:17:46,828 具状を申し渡す 1144 01:17:54,586 --> 01:17:56,630 土部三斎 儀 1145 01:17:57,214 --> 01:18:00,467 かねがね 公儀を恐れざる所業 これあり 1146 01:18:00,550 --> 01:18:04,346 糾問のため 閉門 申しつくるものなり 1147 01:18:48,974 --> 01:18:50,392 (松ヶ枝)何を慌てていますか 1148 01:18:54,813 --> 01:18:58,275 (一松斎)早まるでないぞ 落ち着くのじゃ 1149 01:19:02,738 --> 01:19:06,158 本日は お悔やみだけ 申し上げるがよい 1150 01:19:10,746 --> 01:19:13,540 (三斎)屋敷内が騒々しいが いかがいたした? 1151 01:19:13,623 --> 01:19:18,962 はっ お留守中 雪之丞 浪路の方のお悔やみに参りました 1152 01:19:19,045 --> 01:19:20,464 (三斎)何 雪之丞? 1153 01:19:21,840 --> 01:19:23,967 まだ いるのか? (浜川)はっ 1154 01:19:24,885 --> 01:19:26,762 (三斎)座敷へ通せ (浜川)はっ 1155 01:19:42,068 --> 01:19:46,573 ただいま 殿様 お帰りにございます どうぞ 1156 01:20:24,194 --> 01:20:28,323 (雪之丞) 本日 浪路様のお悔やみに 参上いたしました 1157 01:20:28,406 --> 01:20:33,328 (三斎)雪之丞 何のために 浪路を籠絡いたした? 1158 01:20:33,411 --> 01:20:35,747 (雪之丞)これは意外なお言葉 1159 01:20:35,831 --> 01:20:40,418 昨夜 闇太郎が伺い 子細は お話ししたと思います 1160 01:20:40,502 --> 01:20:43,338 籠絡など そのようなことは 絶対にございません 1161 01:20:43,421 --> 01:20:45,257 (三斎)ええい 言い訳は許さん! 1162 01:20:47,843 --> 01:20:51,930 そのほうが江戸に参っている ここ数日のうちに― 1163 01:20:52,013 --> 01:20:55,642 長崎に縁のある者が 非業の最期を遂げた 1164 01:20:56,560 --> 01:20:59,980 わしは それが不思議でならん 1165 01:21:10,282 --> 01:21:11,783 そなた… 1166 01:21:13,827 --> 01:21:15,328 長崎の… 1167 01:21:15,412 --> 01:21:17,122 土部様 1168 01:21:18,832 --> 01:21:20,709 思い出されましたか? 1169 01:21:22,168 --> 01:21:28,633 12年前(ぜん) あなたが長崎奉行を していた時のことを 1170 01:21:30,760 --> 01:21:32,053 松浦屋の! 1171 01:21:32,137 --> 01:21:34,848 (雪之丞)いかにも 仰せのとおりでございます 1172 01:21:35,432 --> 01:21:38,476 私は あなたのために 地獄に落とされた― 1173 01:21:38,560 --> 01:21:41,104 松浦屋清左衛門の娘です 1174 01:21:42,147 --> 01:21:45,358 亡き父上や母上の 恨みを晴らすため― 1175 01:21:45,442 --> 01:21:48,361 復讐(ふくしゅう)の鬼となって12年 1176 01:21:48,445 --> 01:21:52,449 私は今日の日を どんなに 待ったことでございましょう 1177 01:21:52,532 --> 01:21:55,911 (三斎)そなた その呪いをもって― 1178 01:21:55,994 --> 01:21:59,289 浪路を籠絡し 死に至らしめたな 1179 01:21:59,372 --> 01:22:02,918 なれど この三斎 そのような呪いに おびえはせん! 1180 01:22:03,001 --> 01:22:04,461 お待ちください 1181 01:22:04,544 --> 01:22:08,590 たとえ あなたの娘御にしても 何の罪がございましょう 1182 01:22:08,673 --> 01:22:11,426 私は その方に対し ひたすら 真心をもって… 1183 01:22:11,509 --> 01:22:13,637 ええい 言うな! 言うな! 1184 01:22:13,720 --> 01:22:17,140 ろうぜき者! ろうぜき者! ものども 出あえ! 1185 01:22:19,267 --> 01:22:20,393 あっ… 1186 01:22:30,946 --> 01:22:34,157 (家臣)はあーっ! (家臣)やあっ ああっ 1187 01:22:35,033 --> 01:22:37,702 敵を前に これほど道を通しているのに― 1188 01:22:37,786 --> 01:22:39,996 今のお言葉は何事です! 1189 01:22:44,042 --> 01:22:45,335 そやつを斬れ! 1190 01:22:45,418 --> 01:22:47,879 (家臣)うわあっ ぐっ (家臣)やーっ! 1191 01:22:47,963 --> 01:22:51,174 (家臣たちのどよめき) 1192 01:22:52,050 --> 01:22:55,679 しばらく! 雪之丞1人を かく大勢で囲むにおいては― 1193 01:22:55,762 --> 01:22:57,263 一松斎 雪之丞に助太刀いたす 1194 01:22:57,347 --> 01:22:58,390 (家臣)だーっ! (一松斎)たあっ 1195 01:22:58,473 --> 01:23:00,475 (家臣)うっ… ああっ! (家臣)やあーっ! 1196 01:23:00,558 --> 01:23:02,894 (家臣)うっ あっ うっ! 1197 01:23:05,438 --> 01:23:07,232 (家臣)うっ (家臣)ええい! 1198 01:23:07,315 --> 01:23:09,943 (家臣)やあっ! うわあっ (一松斎)雪之丞 1199 01:23:10,026 --> 01:23:12,320 目指すは土部1人じゃ 早く斬れ! 1200 01:23:12,404 --> 01:23:13,613 (三斎)うっ! 1201 01:23:15,991 --> 01:23:17,993 (家臣)だあっ! ううっ 1202 01:23:19,411 --> 01:23:20,662 (三斎)はあっ! 1203 01:23:23,415 --> 01:23:26,001 (家臣)はあーっ! (家臣)やーっ! 1204 01:23:28,378 --> 01:23:33,216 (一同のもみ合う声) 1205 01:23:33,299 --> 01:23:34,426 (家臣)ぐっ… (闇太郎)やあっ 1206 01:23:34,509 --> 01:23:37,137 (家臣)ああっ (家臣)ああっ うわっ 1207 01:24:01,745 --> 01:24:02,579 うあーっ! 1208 01:24:03,413 --> 01:24:04,831 はあっ! (三斎)うっ 1209 01:24:08,376 --> 01:24:09,794 ぐっ… 1210 01:24:09,878 --> 01:24:14,883 (一同のもみ合う声) 1211 01:24:30,607 --> 01:24:32,108 (家臣)うあっ 1212 01:24:32,192 --> 01:24:33,151 太夫 1213 01:24:33,234 --> 01:24:36,321 敵を討った以上 ここは あっしと先生が引き受けたぜ 1214 01:24:36,946 --> 01:24:38,448 (家臣)うあっ 1215 01:24:38,531 --> 01:24:40,408 闇太郎様 かたじけない 1216 01:24:40,492 --> 01:24:45,497 (一同のもみ合う声) 1217 01:24:48,625 --> 01:24:50,460 太夫の体に もしものことがあっちゃ― 1218 01:24:50,543 --> 01:24:52,128 お客様に申し訳ねえ 1219 01:24:52,837 --> 01:24:55,256 (家臣)うわあーっ! 1220 01:24:57,592 --> 01:24:58,885 (家臣)たあーっ! 1221 01:25:04,766 --> 01:25:07,852 早く行け! (雪之丞)先生 ごめん 1222 01:25:10,563 --> 01:25:12,232 (家臣)たあーっ! 1223 01:25:15,151 --> 01:25:17,987 親方 太夫が… 太夫が たった今― 1224 01:25:18,071 --> 01:25:19,781 敵を取りましたよ (菊之丞)そうか 1225 01:25:21,533 --> 01:25:23,785 雪! (雪之丞)お師匠様 1226 01:25:23,868 --> 01:25:27,747 ただいま… ただいま 敵を討ちました 1227 01:25:28,915 --> 01:25:31,960 太夫 おめでとう 1228 01:25:32,043 --> 01:25:35,797 これというのも あなたが 秘密を守ってくれたからです 1229 01:25:35,880 --> 01:25:38,800 (菊之丞)雪 無事で何よりだった 1230 01:25:39,634 --> 01:25:41,136 師匠 1231 01:25:42,428 --> 01:25:47,142 両親に代わって 今日まで育ててくださったこと― 1232 01:25:47,225 --> 01:25:48,893 お礼申し上げます 1233 01:25:56,151 --> 01:25:58,570 (家臣)やあっ うわーっ! 1234 01:26:00,488 --> 01:26:02,657 (家臣)はあっ! (家臣)やあっ! 1235 01:26:05,618 --> 01:26:10,623 (一同のもみ合う声) 1236 01:26:26,723 --> 01:26:31,728 (人々の歓声) 1237 01:26:37,233 --> 01:26:40,069 父上 母上 1238 01:26:40,695 --> 01:26:42,530 お喜びください 1239 01:26:43,781 --> 01:26:46,492 私は とうとう恨みを晴らし― 1240 01:26:47,827 --> 01:26:50,330 これで何もかも終わりました 1241 01:26:58,546 --> 01:27:01,216 私は今から生まれ変わります 1242 01:27:02,300 --> 01:27:03,885 今日までは― 1243 01:27:03,968 --> 01:27:06,638 舞台の芸を 土部一味へ 恨みを晴らすための― 1244 01:27:06,721 --> 01:27:08,806 道具としてまいりましたが― 1245 01:27:10,183 --> 01:27:14,520 これからは芸道一筋に生きます 1246 01:27:17,649 --> 01:27:20,526 (お囃子の演奏) 1247 01:27:20,610 --> 01:27:25,615 (お囃子の演奏と歌) 1248 01:28:08,700 --> 01:28:13,705 ♪~ 1249 01:28:28,845 --> 01:28:33,850 ~♪