1 00:00:04,723 --> 00:00:09,323 見通しがきかない今を映しているように。 2 00:00:11,363 --> 00:00:19,505 この先 晴れ間が広がることをお祈りして 山を下ります。 3 00:00:19,505 --> 00:00:28,705 ♬~ 4 00:00:41,693 --> 00:00:47,566 (あい)はい これが お母さんの思い出の味。 5 00:00:47,566 --> 00:00:52,566 (ゆき)うわ~ おいしそう! じゃあ いただきます。 6 00:00:59,244 --> 00:01:01,380 うん? 7 00:01:01,380 --> 00:01:07,052 お母さん お砂糖 入れ忘れてない? 8 00:01:07,052 --> 00:01:14,393 入れられなかったの。 戦争中は 砂糖の配給が止められてたから。 9 00:01:14,393 --> 00:01:16,693 そういうことか。 10 00:01:20,265 --> 00:01:30,943 夢のように 鮮やかな黄色で 夢中で 必死で頬張った。 11 00:01:30,943 --> 00:01:34,680 ♬~ 12 00:01:34,680 --> 00:01:37,980 う~ん この味。 13 00:01:40,018 --> 00:01:46,358 <50歳を目前にして 初の連載漫画が決まった。➡ 14 00:01:46,358 --> 00:01:54,058 テーマは 私の母・あいが 12歳で体験した 戦争> 15 00:01:56,368 --> 00:02:07,068 <当時 母は 名古屋の街で 両親と姉 2人の妹と 6人で暮らしていた> 16 00:02:17,389 --> 00:02:27,399 <勉強することを許されず 戦闘機の部品を扱う工場で働いた> 17 00:02:27,399 --> 00:02:29,334 私の これくらいあって。 18 00:02:29,334 --> 00:02:35,207 <厳しい戦争のさなか 母が抱いていた恋心> 19 00:02:35,207 --> 00:02:38,010 ドキドキしっぱなし。 20 00:02:38,010 --> 00:02:41,710 「洋三 私 怖い」。 21 00:02:59,031 --> 00:03:05,731 <でも やがて 街は激しい空襲にさらされた> 22 00:03:28,060 --> 00:03:32,664 <少女たちが 明日も続くと信じていた日常は➡ 23 00:03:32,664 --> 00:03:35,664 炎に のみ込まれていった> 24 00:03:57,356 --> 00:03:59,656 (店員)いらっしゃいませ。 25 00:04:02,227 --> 00:04:05,230 (佐藤)こんちはっ! 26 00:04:05,230 --> 00:04:08,367 あっ… 何か? 27 00:04:08,367 --> 00:04:13,238 おざわ先生ですよね? よろしく お願いします。 28 00:04:13,238 --> 00:04:15,240 はい? 29 00:04:15,240 --> 00:04:20,946 ♬~ 30 00:04:20,946 --> 00:04:24,916 俺が 憩談社のスーパー編集者 佐藤です。 31 00:04:24,916 --> 00:04:27,719 先生 一緒に作りましょう。 32 00:04:27,719 --> 00:04:31,056 世界が ひっくり返るような 大ヒット漫画! 33 00:04:31,056 --> 00:04:33,356 はぁ!? 34 00:04:37,662 --> 00:04:39,598 お待たせしました。 35 00:04:39,598 --> 00:04:42,334 <初めての連載を実現させるには➡ 36 00:04:42,334 --> 00:04:48,006 何よりも まず 母の協力が不可欠だった。➡ 37 00:04:48,006 --> 00:04:51,343 だから 編集の担当者と一緒に➡ 38 00:04:51,343 --> 00:04:55,343 名古屋に行くことに なっていたんだけれど…> 39 00:04:57,015 --> 00:05:00,685 佐藤さん。 今 おいくつですか? 40 00:05:00,685 --> 00:05:06,358 27っす。 戦争 興味あります? 41 00:05:06,358 --> 00:05:11,696 正直 そこまで ないっすね。 42 00:05:11,696 --> 00:05:14,366 え~? 43 00:05:14,366 --> 00:05:18,236 戦争って 昔の話じゃないっすか。 44 00:05:18,236 --> 00:05:21,239 少なくとも 俺ら世代は そう思ってます。 45 00:05:21,239 --> 00:05:27,239 でも だからこそ 俺ら世代に刺さるような 戦争漫画 作りたいなって。 46 00:05:33,652 --> 00:05:37,989 というわけで おざわ先生の初連載が決定しまして➡ 47 00:05:37,989 --> 00:05:43,328 お母様の子供時代 あいちゃんが主人公の 漫画を作らせて頂きたいと。 48 00:05:43,328 --> 00:05:45,263 「あいちゃん」って。 49 00:05:45,263 --> 00:05:50,001 でも できるのかしらね? 漫画に。 50 00:05:50,001 --> 00:05:53,872 大丈夫っす! 俺 バシッと プロデュースするんで。 51 00:05:53,872 --> 00:05:59,872 お母さんの子供時代って ほとんど聞いたことなかったでしょ? 52 00:06:02,013 --> 00:06:07,013 知ったところで 過去は変わらないしね。 53 00:06:16,027 --> 00:06:22,901 へぇ~ こんな写真あったんだ。 普通に かわいいじゃないっすか。 54 00:06:22,901 --> 00:06:28,039 あはは うれしいわ。 佐藤君みたいな 若い子に褒められると。 55 00:06:28,039 --> 00:06:33,645 もう そういう おべんちゃらはいいから。 ねえ お母さん これ いつの時代? 56 00:06:33,645 --> 00:06:43,345 ちょうど 名古屋に空襲があった時だから 昭和19年 12歳だったかな。 57 00:06:48,660 --> 00:06:51,997 これ 何? 58 00:06:51,997 --> 00:06:56,997 鋲っていってね 昔の飛行機の部品。 59 00:06:59,671 --> 00:07:03,371 お母さんの青春時代。 60 00:08:46,177 --> 00:08:52,177 <防空壕の中は 真っ暗で ジメジメして 息苦しくて…> 61 00:09:01,593 --> 00:09:39,297 ♬~(歌声) 62 00:09:39,297 --> 00:09:43,635 そう。 防空壕が一番楽しかった。 63 00:09:43,635 --> 00:09:47,972 将来の夢とか話して みんなで盛り上がったりして。 64 00:09:47,972 --> 00:09:50,875 きれいな お嫁さんになりたいとか? 65 00:09:50,875 --> 00:09:56,648 女の子ってね いつの時代でも 結構 野心家なんよ。 66 00:09:56,648 --> 00:10:03,321 タイピストに エレベーターガール 女優になりたいっていう友達もいた。 67 00:10:03,321 --> 00:10:05,990 あいちゃんは 何に憧れてたんですか? 68 00:10:05,990 --> 00:10:08,893 女の車掌さん。 69 00:10:08,893 --> 00:10:12,330 かっこよくてね 学校行く 途中で見かけると➡ 70 00:10:12,330 --> 00:10:14,666 電車を追いかけたりして。 71 00:10:14,666 --> 00:10:17,569 へぇ~。 はい 質問。 72 00:10:17,569 --> 00:10:20,538 はい 佐藤君。 73 00:10:20,538 --> 00:10:25,310 あいちゃん 好きな人とか いなかったんですか? 74 00:10:25,310 --> 00:10:27,679 もちろん いたわよ。 75 00:10:27,679 --> 00:10:29,614 えっ!? 76 00:10:29,614 --> 00:10:36,354 その子ね 近所の子と戦争ごっこしてて 防空壕に落っこっちゃったの。 77 00:10:36,354 --> 00:10:38,354 アハハハ…。 78 00:10:48,700 --> 00:10:54,000 「死んどらんよね?」。 79 00:11:30,308 --> 00:11:34,212 背ぇが 私のこれくらいあって➡ 80 00:11:34,212 --> 00:11:42,353 大人っぽい肩とか のどぼとけ意識して ドキドキしっぱなし。 81 00:11:42,353 --> 00:11:45,256 戦争中だろうが 何だろうが➡ 82 00:11:45,256 --> 00:11:52,256 恋する乙女は 雨も嵐も鉄砲も 止められんのよ。 83 00:11:56,901 --> 00:12:02,674 でも ほんと 普通の女の子だったんすね。 84 00:12:02,674 --> 00:12:05,043 うん。 85 00:12:05,043 --> 00:12:11,343 戦時中って 恋愛とか青春とか そういうの無縁だと思ってました。 86 00:12:17,388 --> 00:12:20,388 私 決めた! 87 00:12:22,727 --> 00:12:26,064 戦争の悲劇だけじゃなくて➡ 88 00:12:26,064 --> 00:12:33,364 戦争中も 当たり前の日常が あったってことを描く。 89 00:13:13,578 --> 00:13:17,578 <それは 突然やって来た> 90 00:13:43,541 --> 00:13:47,541 「あれが 敵?」。 91 00:13:49,280 --> 00:13:54,686 お母さんがね 偵察機を見た時の話を 聞いてきたんだけど。 92 00:13:54,686 --> 00:13:59,686 どうでした? 意外なこと 言ってたの。 93 00:14:03,027 --> 00:14:08,700 きれいだったの。 敵の飛行機が。 94 00:14:08,700 --> 00:14:12,400 キラキラ光ってて。 95 00:14:14,038 --> 00:14:16,708 怖い じゃなくてですか? 96 00:14:16,708 --> 00:14:18,643 そうなの。 97 00:14:18,643 --> 00:14:27,352 うん… あいちゃんならではの感性っすね。 で お母さんが言うにはね…。 98 00:14:27,352 --> 00:14:33,992 もう 大きさから何から 全然 違うんだから。 99 00:14:33,992 --> 00:14:40,992 今 思うと 誰が あんなのと 戦おうと思ったのか 不思議なくらい。 100 00:16:08,352 --> 00:16:13,352 (組長)「じゃんじゃん たたいて消火! これで 万全!」。 101 00:16:39,984 --> 00:16:43,284 はい お待たせ。 はい どうも~。 102 00:16:44,856 --> 00:16:48,659 何を さっきから ニヤニヤしてんの。 103 00:16:48,659 --> 00:16:56,000 いや~ 俺が担当してる「あとかたの街」の 第2話 いい感じなんだよな~。 104 00:16:56,000 --> 00:16:57,935 ああ 読んだよ。 105 00:16:57,935 --> 00:17:02,673 マジ? どうでした? 106 00:17:02,673 --> 00:17:08,346 うん 初めて読んだかも。 12歳の子が主人公の 戦争漫画。 107 00:17:08,346 --> 00:17:10,281 でしょ? 108 00:17:10,281 --> 00:17:13,684 やっぱ うまいコーヒーいれる男は 違いますね~。 109 00:17:13,684 --> 00:17:16,684 クリームソーダしか 飲まないじゃん いつも。 110 00:17:18,556 --> 00:17:21,025 …ったく もう。 111 00:17:24,695 --> 00:17:28,566 はい 佐藤で~す。 112 00:17:28,566 --> 00:17:32,503 地震があったんだって。 地震!? 113 00:17:32,503 --> 00:17:39,210 空襲が激しくなっていったころ 大きな地震があったんだって 名古屋では。 114 00:17:39,210 --> 00:17:42,510 悪いけど 詳しく調べてもらえる? 115 00:17:48,319 --> 00:17:52,990 <ただでさえ 戦争は 多くの悲劇を生んでいるというのに➡ 116 00:17:52,990 --> 00:17:58,863 地震が 追い打ちをかけていたなんて。➡ 117 00:17:58,863 --> 00:18:07,538 1944年 昭和19年12月7日に起きた 東南海地震> 118 00:18:07,538 --> 00:18:09,540 あった。 119 00:18:09,540 --> 00:18:14,540 <およそ 1, 200人が 亡くなったと言われている> 120 00:18:17,215 --> 00:18:20,218 あとになって書かれた資料は いろいろ見つかったんすけど➡ 121 00:18:20,218 --> 00:18:24,355 当時の新聞記事は 結構小さい扱いで。 122 00:18:24,355 --> 00:18:26,691 どうしてだろう? 123 00:18:26,691 --> 00:18:31,362 つまりですね 敵に弱みを 見せてはならないってことで➡ 124 00:18:31,362 --> 00:18:34,632 国が厳しい報道規制を敷いてたんですよ。 125 00:18:34,632 --> 00:18:37,932 そういうこと。 126 00:19:55,313 --> 00:19:58,313 さあ 召し上がれ。 127 00:20:00,184 --> 00:20:03,654 ああ~。 ああ~。 128 00:20:03,654 --> 00:20:05,654 はあ はあ はあ。 129 00:20:07,325 --> 00:20:09,660 結構 うまいっすね。 130 00:20:09,660 --> 00:20:14,999 でも 人参嫌いで非国民か。 131 00:20:14,999 --> 00:20:21,872 まあ 好き嫌いなんか言ってたら 兵隊さんに 申し訳ないのは確かだけど➡ 132 00:20:21,872 --> 00:20:28,346 でも 苦手な食べ物が 戦争のおかげで 好物になるなんて➡ 133 00:20:28,346 --> 00:20:31,682 そんなの うそっぱち。 134 00:20:31,682 --> 00:20:36,554 でも 洋三君 かっこいいっすよね。 何かドラマの主人公みたい。 135 00:20:36,554 --> 00:20:39,557 でしょう? うん。 136 00:20:39,557 --> 00:20:45,257 人参は 嫌いだけど 人参ごはんだけは 時々食べたくなる。 137 00:20:47,031 --> 00:20:53,371 佐藤君 人参ごはん まだあるから じゃんじゃん食べて… はい。 138 00:20:53,371 --> 00:20:58,042 ああ ああ ああ 大丈夫 大丈夫っす 自分で やるっす。 139 00:20:58,042 --> 00:21:03,914 あいちゃん… 優しいっすね。 140 00:21:03,914 --> 00:21:25,069 ♬~ 141 00:21:25,069 --> 00:21:31,876 これで 9話まで出たけど 読者の評判 結構いいっすよ。 142 00:21:31,876 --> 00:21:34,576 そう よかった。 143 00:21:37,348 --> 00:21:40,251 うれしくないんすか? 144 00:21:40,251 --> 00:21:44,021 あっ もちろん うれしいわよ。 145 00:21:44,021 --> 00:21:48,021 でも な~んか喜んでない気がして。 146 00:21:50,694 --> 00:21:52,694 心配なの。 147 00:21:54,365 --> 00:22:01,038 お母さん 漫画 喜んでくれてるのかなって。 148 00:22:01,038 --> 00:22:03,707 どういうことっすか? 149 00:22:03,707 --> 00:22:11,382 お母さん 私の漫画 読んでないみたい。 150 00:22:11,382 --> 00:22:15,719 え? 俺 ちゃんと あいちゃんとこに送ってますけど。 151 00:22:15,719 --> 00:22:21,019 うん。 でも読まずに積んであった。 152 00:22:25,062 --> 00:22:27,362 どうして…? 153 00:22:29,733 --> 00:22:34,004 自分の話が 漫画になってるんすよ。 154 00:22:34,004 --> 00:22:38,704 俺なら うれしすぎて SNSで宣伝しまくりますけどね。 155 00:23:34,665 --> 00:23:37,365 「空襲警報!?」。 156 00:24:30,921 --> 00:24:36,621 あの日から 名古屋が戦場になった。 157 00:24:38,329 --> 00:24:41,629 高射砲は? 158 00:24:43,200 --> 00:24:51,875 ぜ~んぜん 撃ち落とせなくて 頼りなく落下。 159 00:24:51,875 --> 00:24:54,875 そっか。 160 00:24:59,617 --> 00:25:10,261 花ちゃんちへ行くと いっつも こういう おいしいお菓子出てきたのよね。 161 00:25:10,261 --> 00:25:17,261 花ちゃん… 初等科時代の お金持ちの お友達だよね? 162 00:25:19,370 --> 00:25:27,044 花ちゃんが動員されている工場に 空襲があったんじゃないかって聞いて➡ 163 00:25:27,044 --> 00:25:31,382 家を訪ねてみたの。 164 00:25:31,382 --> 00:25:34,082 そしたら…。 165 00:25:52,002 --> 00:25:56,702 「ああっ うわわわ!」。 166 00:27:23,694 --> 00:27:29,694 それから 3日後のことだった。 167 00:28:17,881 --> 00:28:20,181 (花)<あの時…> 168 00:28:44,641 --> 00:28:48,312 (花)<その歌に耳を傾けながら➡ 169 00:28:48,312 --> 00:28:55,612 その場所で 私は じっと それを眺めていた> 170 00:30:23,206 --> 00:30:33,884 その日の晩から 熱を出して 花ちゃんの声が聞こえてきたの。 171 00:30:33,884 --> 00:30:38,584 (花の声)あいちゃん どうして代わってくれなかったの? 172 00:30:41,358 --> 00:30:51,034 今でも覚えてる。 花ちゃんにつかまれた あの感触。 173 00:30:51,034 --> 00:31:26,734 ♬~ 174 00:31:37,547 --> 00:31:42,686 …で 洋三君のことは どうなったの? 175 00:31:42,686 --> 00:31:47,024 洋三君の家が 建物疎開にあってね。 176 00:31:47,024 --> 00:31:49,359 「建物疎開」!? 177 00:31:49,359 --> 00:31:55,232 空襲で 火災が広がらないように あらかじめ 建物を壊すの。 178 00:31:55,232 --> 00:31:58,702 家 壊された人 どうするんですか? 179 00:31:58,702 --> 00:32:05,575 親戚の家に身を寄せるとか 田舎に 新しい家を買うとか。 180 00:32:05,575 --> 00:32:13,717 でもね 洋三君は うちに来ることになったの。 181 00:32:13,717 --> 00:32:16,620 うちに!? そう。 182 00:32:16,620 --> 00:32:22,392 洋三君のうちと仲よかった お父さんが 一緒に暮らさないかって提案して。 183 00:32:22,392 --> 00:32:28,265 好きな人と 同じ屋根の下に… それ やばくないっすか? 184 00:32:28,265 --> 00:32:33,670 そう… かしら… ね? 185 00:32:33,670 --> 00:32:37,007 ヒュ~! 186 00:32:37,007 --> 00:32:41,344 お父さん聞いたら 絶対嫉妬する。 187 00:32:41,344 --> 00:32:49,644 朝 起きたら 同じ家にいるんだもん もう ときめきっぱなしよ。 188 00:34:34,324 --> 00:34:37,227 腕…。 189 00:34:37,227 --> 00:34:39,663 え? 190 00:34:39,663 --> 00:34:47,337 花ちゃんの 小さな手に つかまれたのも腕だったし➡ 191 00:34:47,337 --> 00:34:57,013 洋三の分厚い手につかまれたのも 腕だった。 192 00:34:57,013 --> 00:35:00,684 つい この間のことみたい。 193 00:35:00,684 --> 00:35:41,658 ♬~ 194 00:35:41,658 --> 00:35:45,996 先生 どうしてっすか? 195 00:35:45,996 --> 00:35:50,333 ここまで 何とか描いてきたじゃないですか? 196 00:35:50,333 --> 00:35:53,033 まだ覚えてた。 197 00:35:58,675 --> 00:36:09,686 お母さん 花ちゃんと洋三君につかまれた 腕の感触 覚えてた。 198 00:36:09,686 --> 00:36:16,026 私 戦争って 過去の話だと思ってた。 199 00:36:16,026 --> 00:36:23,700 でも お母さんにとっては 今も続いてる。 200 00:36:23,700 --> 00:36:30,373 お母さんの大切な人…➡ 201 00:36:30,373 --> 00:36:36,980 自分の漫画のために 利用してるような気がして➡ 202 00:36:36,980 --> 00:36:42,680 続ける自信なくなっちゃって。 203 00:36:53,530 --> 00:36:56,666 分かりました! 204 00:36:56,666 --> 00:37:02,666 先生が 描かないって決めるなら その思い 尊重します。 205 00:37:13,683 --> 00:37:17,354 一つ 聞いていいっすか? 206 00:37:17,354 --> 00:37:21,224 なに? 207 00:37:21,224 --> 00:37:28,365 先生が タイトルを 「あとかたの街」にしようと思った理由。 208 00:37:28,365 --> 00:37:34,065 普通は 「あとかたもない」って 続く言葉っすよね? 209 00:37:37,173 --> 00:37:42,312 あとかたは 「ある」んだよ。 210 00:37:42,312 --> 00:37:46,983 街は 全部壊された。 211 00:37:46,983 --> 00:37:53,857 でも そこには確かに 存在してたものがあった。 212 00:37:53,857 --> 00:38:00,997 人の暮らしや 思い出も。 213 00:38:00,997 --> 00:38:09,697 だから あとかたは あるんだと思う。 214 00:38:18,014 --> 00:38:24,687 先生 もしかしたら この作品も➡ 215 00:38:24,687 --> 00:38:29,359 街が残した 「あとかた」なのかもしれないっすね。 216 00:38:29,359 --> 00:39:13,670 ♬~ 217 00:39:13,670 --> 00:39:26,683 ねえ お母さん もっと もう少し ううん… 全部。 218 00:39:26,683 --> 00:39:30,983 お母さんの思い出 見せてほしい。 219 00:39:37,961 --> 00:39:42,632 お母さん 最初 言ってたよね。 220 00:39:42,632 --> 00:39:47,504 「知ったところで 過去は変わらない」って。 221 00:39:47,504 --> 00:39:53,276 けど 私の中は変わった。 222 00:39:53,276 --> 00:39:59,276 私と 一緒だって思った。 223 00:40:01,651 --> 00:40:13,263 好きになった。 花ちゃんのことも 洋三君のことも。 224 00:40:13,263 --> 00:40:18,201 もし 同じ時代に生まれてたら お母さんと 洋三君を取り合って➡ 225 00:40:18,201 --> 00:40:21,901 恋のライバルに なってたかもしれないって。 226 00:40:24,340 --> 00:40:31,681 何を どこまで知りたいの? 227 00:40:31,681 --> 00:40:42,681 名古屋大空襲。 お母さんが どうしてたのか 全部教えてほしい。 228 00:40:45,028 --> 00:40:53,703 空から爆弾が降ってくるって言われても よく分からない。 229 00:40:53,703 --> 00:41:02,378 お母さんが見た景色 嗅いだにおい 聞いた音➡ 230 00:41:02,378 --> 00:41:06,078 全部 知りたいの。 231 00:41:08,251 --> 00:41:15,725 知りたいなんて 簡単に言わないで。 232 00:41:15,725 --> 00:41:23,600 人の生き死にが いとも簡単に分けられていく。 233 00:41:23,600 --> 00:41:32,600 そんなことが なぜ許されるのか 私が 一番知りたいわよ。 234 00:41:42,685 --> 00:41:44,985 この音よ。 235 00:41:49,359 --> 00:42:00,970 (雨音) 236 00:42:00,970 --> 00:42:02,970 雨!? 237 00:42:06,376 --> 00:42:13,049 この音が聞こえたら 終わりって言われてた。 238 00:42:13,049 --> 00:42:18,749 (雨音) 239 00:42:42,679 --> 00:42:45,679 (みね)「どっち? 空襲警報?」。 240 00:43:27,256 --> 00:43:30,256 <サイレンの音に 胃がせり上がる> 241 00:45:41,657 --> 00:45:50,657 もう駄目だって 家を飛び出して 逃げたんだけど 熱くて熱くて…。 242 00:45:52,668 --> 00:46:03,679 肌に当たる空気が まるで 火のようだった。 243 00:46:03,679 --> 00:46:11,679 もう駄目だと思った時 見つけたの 防空壕。 244 00:47:36,305 --> 00:47:42,005 (女性)「木村さん ごめんなさい…」。 245 00:48:00,329 --> 00:48:09,629 あとから知った。 防空壕の中の人たち みんな亡くなった。 246 00:48:16,879 --> 00:48:20,349 今日は これぐらいにしとく? 247 00:48:20,349 --> 00:48:23,252 ううん。 248 00:48:23,252 --> 00:48:28,224 生き延びた私にできることは➡ 249 00:48:28,224 --> 00:48:35,297 過去にしか生きてない人を 思い出すことなのかもしれない。 250 00:48:35,297 --> 00:48:47,309 ゆきの漫画で みんな生き生きしてて すごく懐かしかった。 251 00:48:47,309 --> 00:48:53,182 漫画 読んでくれたの? 252 00:48:53,182 --> 00:49:00,856 佐藤君に言われてね 「あいちゃんが 思い出と向き合ってるように➡ 253 00:49:00,856 --> 00:49:12,556 おざわ先生も 漫画と向き合ってます。 だから 一度ちゃんと読んでほしい」って。 254 00:49:15,004 --> 00:49:17,704 あいつ…。 255 00:49:19,341 --> 00:49:25,641 防空壕に入らなかった私たちは 橋に向かって逃げたの。 256 00:49:27,683 --> 00:49:35,983 <何人もの人が 熱に耐えかねて 川に飛び込んでいる> 257 00:49:47,169 --> 00:49:49,469 <その時…> 258 00:49:57,313 --> 00:50:02,184 <でも それは 目玉焼きなんかにはならなくて➡ 259 00:50:02,184 --> 00:50:05,184 ぐんぐん ぐんぐん近づいてきて…> 260 00:50:19,001 --> 00:50:23,001 <あとは もう数え切れない> 261 00:51:49,692 --> 00:52:01,303 ♬~ 262 00:52:01,303 --> 00:52:05,241 洋三を助けたくて 必死だった。 263 00:52:05,241 --> 00:52:10,012 でも その時 洋三が言ったの。 264 00:52:10,012 --> 00:52:21,312 「自分は もう駄目だから逃げろ。 生きろ!」って。 265 00:52:24,593 --> 00:52:33,593 走り出したらね あの声が聞こえてきたの。 266 00:54:44,333 --> 00:54:47,669 (母)「もう高射砲は やられた。➡ 267 00:54:47,669 --> 00:54:53,669 だから 公園が狙われることはないって ことだったんだね」。 268 00:55:21,570 --> 00:55:29,711 ♬~ 269 00:55:29,711 --> 00:55:39,411 <二度と消えない傷を残して 空襲の潮が引いた> 270 00:55:50,666 --> 00:55:53,966 雨 上がったね。 271 00:55:57,339 --> 00:56:02,678 ゆき ひとつ お願いがあるの。 うん? 272 00:56:02,678 --> 00:56:13,322 あの公園 行ってみてくれない? あなたには 見ておいてほしい。 273 00:56:13,322 --> 00:56:16,692 いいの? 274 00:56:16,692 --> 00:56:20,392 あなたしか いない。 275 00:56:22,030 --> 00:56:36,330 分かった。 今 どうなってるか どう今に続いてるのか 見てくる。 276 00:56:54,663 --> 00:57:03,363 この公園が そんな場所だったなんて きっと誰も知らないっすよね。 277 00:57:08,677 --> 00:57:10,677 (シャッター音) 278 00:57:14,016 --> 00:57:21,316 高射砲が やられたおかげで 助かったって すごい皮肉。 279 00:57:31,967 --> 00:57:35,267 よかったんだよね? 280 00:57:37,306 --> 00:57:42,644 お母さんの話 漫画にしたこと。 281 00:57:42,644 --> 00:57:51,944 もちろん! 先生が作品に込めた メッセージは まっすぐ読者に届いてます。 282 00:58:00,662 --> 00:58:11,962 もしかしたら 私が立ってる場所に 立ってたこともあるかもしれない。 283 00:58:13,675 --> 00:58:20,375 同じような空 見上げてたかもしれない。 284 00:58:23,018 --> 00:58:36,565 同じような風の音 におい 感じてたかもしれない。 285 00:58:36,565 --> 00:58:43,972 ♬~ 286 00:58:43,972 --> 00:58:53,315 <昔 この場所に 街がありました。➡ 287 00:58:53,315 --> 00:59:00,656 その街で 人々が暮らしていました。➡ 288 00:59:00,656 --> 00:59:11,300 街がなくなって 新しい街が そこに つくられても➡ 289 00:59:11,300 --> 00:59:20,676 残り続けるものが あるのです。 きっと> 290 00:59:20,676 --> 00:59:27,676 ♬~