1 00:00:05,224 --> 00:00:07,224 まずは 見本誌を 無料で お届け! 2 00:01:57,336 --> 00:01:59,336 3 00:02:01,206 --> 00:02:06,211 (ナレーター:松田春翠) <大正12年 9月1日に起こった 関東大震災は・ 4 00:02:06,211 --> 00:02:10,215 日本の近代史に 1つの大きな区切りをつけた> 5 00:02:10,215 --> 00:02:13,218 <そのときを境に 古い伝統的な文化は・ 6 00:02:13,218 --> 00:02:15,220 大きく後退し・ 7 00:02:15,220 --> 00:02:21,226 現代的な大衆文化が 急速に前進する> 8 00:02:21,226 --> 00:02:25,230 <新聞の連載漫画が流行する> 9 00:02:25,230 --> 00:02:30,235 <講談本に取って代わって 大衆文学が盛んになる> 10 00:02:30,235 --> 00:02:33,238 <白井喬二 長谷川 伸・ 11 00:02:33,238 --> 00:02:40,245 大佛次郎 吉川英治などが 流行作家になる> 12 00:02:40,245 --> 00:02:43,248 <間もなく ラジオ放送が始まる> 13 00:02:43,248 --> 00:02:49,248 ・~ 14 00:02:51,256 --> 00:02:56,261 <それまで旧劇と呼ばれていた 講談調の映画が・ 15 00:02:56,261 --> 00:02:59,197 時代劇という新しい呼び名で・ 16 00:02:59,197 --> 00:03:02,200 新しい表現と内容に よみがえるのも・ 17 00:03:02,200 --> 00:03:05,203 この時期である> 18 00:03:05,203 --> 00:03:08,206 <旧劇を代表していたスターは・ 19 00:03:08,206 --> 00:03:10,208 明治の末以来・ 20 00:03:10,208 --> 00:03:14,212 目玉の松ちゃんの愛称で 子供たちに人気のあった・ 21 00:03:14,212 --> 00:03:16,214 尾上松之助である> 22 00:03:16,214 --> 00:03:23,221 <英雄 豪傑 侠客 忍術使いを 専ら演じた> 23 00:03:23,221 --> 00:03:28,221 ♪(太鼓) 24 00:03:32,230 --> 00:03:36,234 <同じころ 旧劇の歌舞伎調の 立ち回りを打破する・ 25 00:03:36,234 --> 00:03:39,237 激しい立ち回りを 新国劇の・ 26 00:03:39,237 --> 00:03:43,241 沢田正二郎が 舞台で作り出していた> 27 00:03:43,241 --> 00:03:46,244 <アメリカ映画では サーカスの芸人のように・ 28 00:03:46,244 --> 00:03:50,248 身軽な立ち回りをやる ダグラス・フェアバンクスの活劇が・ 29 00:03:50,248 --> 00:03:53,248 日本のファンの血を沸かせた> 30 00:03:58,190 --> 00:04:04,190 <時代劇は続々と 新しいスターを生み出し始めた> 31 00:04:07,199 --> 00:04:10,202 <激しく変化する 時代の精神を身につけた・ 32 00:04:10,202 --> 00:04:13,205 もっと新しいスターが 求められた> 33 00:04:13,205 --> 00:04:19,211 <そして それを代表するのが マキノ映画から現れた新人・ 34 00:04:19,211 --> 00:04:22,214 阪東妻三郎であった> 35 00:04:22,214 --> 00:04:25,217 <通称 阪妻> 36 00:04:25,217 --> 00:04:45,237 ・~ 37 00:04:45,237 --> 00:05:05,190 ・~ 38 00:05:05,190 --> 00:05:19,204 ・~ 39 00:05:19,204 --> 00:05:28,213 ・~ 40 00:05:28,213 --> 00:05:48,233 ・~ 41 00:05:48,233 --> 00:06:01,179 ・~ 42 00:06:01,179 --> 00:06:13,191 ・~ 43 00:06:13,191 --> 00:06:16,194 (佐藤)阪東妻三郎さんの・ 44 00:06:16,194 --> 00:06:19,197 ご本名は なんと おっしゃいましたでしょうか? 45 00:06:19,197 --> 00:06:24,202 (田村) 本名は田村傳吉と申しまして 46 00:06:24,202 --> 00:06:29,207 明治34年の12月13日に・ 47 00:06:29,207 --> 00:06:34,212 東京 日本橋の小伝馬町で 生まれたと聞いております 48 00:06:34,212 --> 00:06:38,216 父の父にあたる人… 49 00:06:38,216 --> 00:06:41,219 長五郎といいまして 50 00:06:41,219 --> 00:06:46,224 職業は木綿問屋だったんです 51 00:06:46,224 --> 00:06:51,229 で その人は 71歳まで生きてまして 52 00:06:51,229 --> 00:06:55,233 わたくしも いわゆる わたくしの父よりも・ 53 00:06:55,233 --> 00:06:57,168 おじい様に 随分かわいがってもらったこと・ 54 00:06:57,168 --> 00:07:00,171 今でも よく覚えておりますが 55 00:07:00,171 --> 00:07:03,174 しかし 他の その… 56 00:07:03,174 --> 00:07:06,177 母にあたる人とか きょうだいとは・ 57 00:07:06,177 --> 00:07:08,179 大変 縁が薄うございまして 58 00:07:08,179 --> 00:07:13,179 みんな 父が まだ幼いころに 世を去っております 59 00:07:19,190 --> 00:07:23,194 <田村傳吉が通った 日本橋の十思小学校は・ 60 00:07:23,194 --> 00:07:27,198 幕末に多くの勤皇の志士が 捕らえられていた> 61 00:07:27,198 --> 00:07:32,203 <小伝馬町牢跡の 十思公園の隣にある> 62 00:07:32,203 --> 00:07:35,206 <小学生時代の彼は ガキ大将で・ 63 00:07:35,206 --> 00:07:39,210 しょっちゅう 廊下越しに 女の子の教室をからかっていた> 64 00:07:39,210 --> 00:07:42,213 <スターになってから書かれた 生い立ちの木では・ 65 00:07:42,213 --> 00:07:45,213 こんなことが書かれている> 66 00:07:48,219 --> 00:07:52,223 <「彼は小学校では ずっと優等で過ごしたため・ 67 00:07:52,223 --> 00:07:55,226 いつも学校でやる 学芸会などに出て・ 68 00:07:55,226 --> 00:07:59,164 説明をやったり 話をしたりした」> 69 00:07:59,164 --> 00:08:03,168 <「あるとき どうしたはずみか 彼は フッと行き詰まって・ 70 00:08:03,168 --> 00:08:06,171 演壇に黙ったまま 立往生してしまった」> 71 00:08:06,171 --> 00:08:09,174 <「前に並んだ人々は 妙な顔をする」> 72 00:08:09,174 --> 00:08:12,177 <「先生は横から注意する」> 73 00:08:12,177 --> 00:08:14,179 <「彼は ますます上がって とうとう真っ赤になって・ 74 00:08:14,179 --> 00:08:17,182 降壇してしまった」> 75 00:08:17,182 --> 00:08:19,184 <このとき 彼は・ 76 00:08:19,184 --> 00:08:22,187 これを よっぽど 恥ずかしいと思ったのだろう> 77 00:08:22,187 --> 00:08:25,190 <そのまま家へ帰ると 10日あまりも・ 78 00:08:25,190 --> 00:08:29,190 2階の一室へ閉じ籠もって 泣いていたというのであった> 79 00:08:33,198 --> 00:08:36,201 <その間に 彼は いろいろ考えた> 80 00:08:36,201 --> 00:08:39,204 <自分は多数の人の前で 赤恥をかいた> 81 00:08:39,204 --> 00:08:44,209 <この恥辱を取り返すためには 多数の人の前で褒めはやされ・ 82 00:08:44,209 --> 00:08:47,212 仰ぎ見られる人に ならなければならない> 83 00:08:47,212 --> 00:08:49,214 <そう考えた彼は・ 84 00:08:49,214 --> 00:08:53,218 政治家とか軍人という 志を立てたのである> 85 00:08:53,218 --> 00:08:55,220 <ところが・ 86 00:08:55,220 --> 00:09:00,158 このころ 彼の兄と姉と母親が 相次いで死亡し・ 87 00:09:00,158 --> 00:09:04,162 父親は商売に失敗して 破産してしまった> 88 00:09:04,162 --> 00:09:06,164 <あれやこれやで 逆境に落ちた> 89 00:09:06,164 --> 00:09:11,164 <上の学校へ行く道が 途絶えてしまったのである> 90 00:09:17,175 --> 00:09:19,177 <小学校を終えた傳吉は・ 91 00:09:19,177 --> 00:09:22,180 いくつかの店に 丁稚奉公に行ったが・ 92 00:09:22,180 --> 00:09:25,183 どこも長続きはしなかったらしい> 93 00:09:25,183 --> 00:09:30,188 <そして15歳のとき 歌舞伎俳優 片岡仁左衛門の弟子となった> 94 00:09:30,188 --> 00:09:34,192 <しかし 門閥制度の厳しい 大歌舞伎では・ 95 00:09:34,192 --> 00:09:39,197 出世は難しいと見切りをつけ 間もなく浅草の小芝居に移った> 96 00:09:39,197 --> 00:09:43,201 <巣鴨の国活撮影所に 端役で出演したりしたのち・ 97 00:09:43,201 --> 00:09:48,206 大正11年 芝居仲間の中村吉松らとともに・ 98 00:09:48,206 --> 00:09:53,211 東京青年歌舞伎団 阪東妻三郎一座を結成して・ 99 00:09:53,211 --> 00:09:57,148 巡業したが すぐ解散した> 100 00:09:57,148 --> 00:09:59,150 <そして 大正12年> 101 00:09:59,150 --> 00:10:01,152 <妻三郎と中村吉松は・ 102 00:10:01,152 --> 00:10:04,155 京都の等持院の マキノ映画製作所に・ 103 00:10:04,155 --> 00:10:08,155 スカウトされて 映画界に飛び込んだ> 104 00:10:13,164 --> 00:10:18,164 <中村吉松は 妻三郎の映画で 専ら敵役をやる> 105 00:10:20,171 --> 00:10:22,173 <しばらく 大部屋俳優として・ 106 00:10:22,173 --> 00:10:26,177 御用提灯などを振りかざしていた 妻三郎は・ 107 00:10:26,177 --> 00:10:33,184 若い脚本家 寿々喜多呂九平と 親友になった> 108 00:10:33,184 --> 00:10:36,187 <寿々喜多呂九平は 時代劇で初めて・ 109 00:10:36,187 --> 00:10:39,190 アメリカ映画的な 複雑なストーリーと・ 110 00:10:39,190 --> 00:10:41,192 激しいアクションと・ 111 00:10:41,192 --> 00:10:46,197 熱い反逆のニヒリズムを 持ち込んだ作者である> 112 00:10:46,197 --> 00:10:48,199 <呂九平は 阪東妻三郎こそ・ 113 00:10:48,199 --> 00:10:52,203 自分の狙いを実現できる スターだとみて・ 114 00:10:52,203 --> 00:10:55,206 妻三郎を 自分の作品で デビューさした> 115 00:10:55,206 --> 00:11:04,149 ♪~ 116 00:11:04,149 --> 00:11:10,155 <これは現在残っている 阪妻の最も古い作品の一つである> 117 00:11:10,155 --> 00:11:23,168 ♪~ 118 00:11:23,168 --> 00:11:28,173 <妻三郎は貧しく身分が低い 純情な若侍である> 119 00:11:28,173 --> 00:11:32,177 <彼は家老の息子のために さんざん ひどい目に遭う> 120 00:11:32,177 --> 00:11:38,183 <母は馬に蹴られて死に 姉は貞操を奪われて自害する> 121 00:11:38,183 --> 00:11:43,188 <彼が ひそかに愛した女性までが 家老の息子と結婚してしまう> 122 00:11:43,188 --> 00:12:03,208 ♪~ 123 00:12:03,208 --> 00:12:12,217 ♪~ 124 00:12:12,217 --> 00:12:18,223 <絶望した彼は浪人し すさんだ生活に陥り・ 125 00:12:18,223 --> 00:12:22,227 やがて家老の息子と巡り会う> 126 00:12:22,227 --> 00:12:42,247 ♪~ 127 00:12:42,247 --> 00:13:02,200 ♪~ 128 00:13:02,200 --> 00:13:22,220 ♪~ 129 00:13:22,220 --> 00:13:42,240 ♪~ 130 00:13:42,240 --> 00:14:02,193 ♪~ 131 00:14:02,193 --> 00:14:12,203 ♪~ 132 00:14:12,203 --> 00:14:25,216 ♪~ 133 00:14:25,216 --> 00:14:28,219 <当時 中学生だった 1人のファンの・ 134 00:14:28,219 --> 00:14:30,221 思い出が ここにある> 135 00:14:30,221 --> 00:14:33,224 <「主人公を 最後のギリギリのふちまで・ 136 00:14:33,224 --> 00:14:35,226 嗜虐的に追い詰めておいて・ 137 00:14:35,226 --> 00:14:38,229 爆発的に 大乱闘を展開するという・ 138 00:14:38,229 --> 00:14:42,233 呂九平と二川文太郎の 見事な手法」> 139 00:14:42,233 --> 00:14:46,237 <「そして阪妻の あの 猫背になって刀を構える・ 140 00:14:46,237 --> 00:14:48,239 特異な殺陣の悲壮美は・ 141 00:14:48,239 --> 00:14:54,245 それまでに見た どの作品よりも 数段 優れていた」> 142 00:14:54,245 --> 00:14:57,181 <「私は この『逆流』を見ての帰り・ 143 00:14:57,181 --> 00:15:00,184 もう夜半近い 仙台の街を・ 144 00:15:00,184 --> 00:15:04,188 小倉のズボンのポケットに 手を突っ込んで歩きながら・ 145 00:15:04,188 --> 00:15:09,193 ふと これは社会主義では ないだろうかと思った」> 146 00:15:09,193 --> 00:15:14,198 <「なぜ 『逆流』に社会主義を 感じ取ったかというと・ 147 00:15:14,198 --> 00:15:18,202 当時 社会主義とは 反逆の思想であること」> 148 00:15:18,202 --> 00:15:21,205 <「したがって 大いに危険なものである」> 149 00:15:21,205 --> 00:15:25,209 <「しかし 虐げられた者の 味方になる思想であると・ 150 00:15:25,209 --> 00:15:27,211 聞かされていたからである」> 151 00:15:27,211 --> 00:15:31,215 <「そう考えてくると どうも 呂九平の作品には・ 152 00:15:31,215 --> 00:15:35,215 そういう考え方が にじんでいる」> 153 00:15:45,229 --> 00:15:48,232 <鐘は上野か浅草か> 154 00:15:48,232 --> 00:15:53,237 <ここは江戸 浅草 浅草寺観音の境内> 155 00:15:53,237 --> 00:15:57,175 <旗本 ハムラ・サンエモンの娘 お美江> 156 00:15:57,175 --> 00:16:01,179 <彼女は有名な おてんば娘でありました> 157 00:16:01,179 --> 00:16:04,182 <そのお美江の 金かんざしを狙っている・ 158 00:16:04,182 --> 00:16:08,186 カラスのセンタと流星の十太> 159 00:16:08,186 --> 00:16:12,190 <彼は かなり変わった泥棒で・ 160 00:16:12,190 --> 00:16:14,192 さらにまた ここに1人> 161 00:16:14,192 --> 00:16:21,199 <待て そのかんざし 身どもが頂戴つかまつる> 162 00:16:21,199 --> 00:16:26,204 <おきてに背く者は法の命ずるまま 容赦なく捕らえ・ 163 00:16:26,204 --> 00:16:31,209 役目を重ね公然と悪事を働く 岡っ引き 赤鬼の喜蔵> 164 00:16:31,209 --> 00:16:35,213 <横暴 傲慢 無情 冷酷> 165 00:16:35,213 --> 00:16:38,216 <それが彼の全てであります> 166 00:16:38,216 --> 00:16:40,218 <明和から天明にかけて 江戸の街なかを・ 167 00:16:40,218 --> 00:16:45,223 悠然と闊歩する 影法師と呼ぶ痛快な盗賊があった> 168 00:16:45,223 --> 00:16:50,228 <悪事は働いても 彼のやり口には 独特の皮肉と ちゃめっ気があり・ 169 00:16:50,228 --> 00:16:54,232 洗練された鮮やかさと 一種の小気味よさがあった> 170 00:16:54,232 --> 00:16:57,168 <物語は 一代の奇賊> 171 00:16:57,168 --> 00:16:59,170 <影法師の生涯において・ 172 00:16:59,170 --> 00:17:05,170 最も劇的色彩の 濃厚なる一断片であります> 173 00:17:09,180 --> 00:17:11,182 <そのころ 彼に熱狂した もう1人のファンの・ 174 00:17:11,182 --> 00:17:14,185 証言を読んでみよう> 175 00:17:14,185 --> 00:17:16,187 <「小学校の2年のときだった」> 176 00:17:16,187 --> 00:17:19,190 <「随分 劣等感に凝り固まって・ 177 00:17:19,190 --> 00:17:23,194 ひねくれて 陰気な子供だったと思う」> 178 00:17:23,194 --> 00:17:26,197 <「そこへ妻三郎は チャンバラで立ち現れた」> 179 00:17:26,197 --> 00:17:28,199 <「その 目にもとまらん剣」> 180 00:17:28,199 --> 00:17:31,202 <「斬って斬って 斬りまくる形相は・ 181 00:17:31,202 --> 00:17:36,207 陰気に結滞していた私の血を 噴き上がらせたふうである」> 182 00:17:36,207 --> 00:17:39,210 <「それは私一人ではない」> 183 00:17:39,210 --> 00:17:42,213 <彼も 妻三郎が いかに強き・ 184 00:17:42,213 --> 00:17:47,218 しかも いかに弱い者に味方するか ということを語り・ 185 00:17:47,218 --> 00:17:49,218 聞かせてくれたりした> 186 00:17:51,222 --> 00:17:54,225 <そのころ ファンレターの募集に当選した・ 187 00:17:54,225 --> 00:17:58,162 鈴木秀子という女性は…> 188 00:17:58,162 --> 00:18:02,166 (沢登翠)<「ピンピンしている体や 心を持っていながら・ 189 00:18:02,166 --> 00:18:06,170 あんなに弱々しく 悲しそうにできるのは・ 190 00:18:06,170 --> 00:18:08,172 妻三郎って よほど・ 191 00:18:08,172 --> 00:18:12,176 ああなるまでには 試練が積まれたと思うわ」> 192 00:18:12,176 --> 00:18:15,179 <妻三郎 その人によって・ 193 00:18:15,179 --> 00:18:19,183 早く母を失うた きょうだいの寂しさは・ 194 00:18:19,183 --> 00:18:22,183 慰められるのであった> 195 00:18:27,191 --> 00:18:32,191 <新人 阪東妻三郎の人気は 急激に上昇した> 196 00:18:39,203 --> 00:18:41,205 <大正14年 夏> 197 00:18:41,205 --> 00:18:44,208 <人気絶頂の阪東妻三郎は・ 198 00:18:44,208 --> 00:18:47,211 マキノ映画から独立して プロダクションを興す> 199 00:18:47,211 --> 00:18:51,215 <その第2回 作品が 『雄呂血』である> 200 00:18:51,215 --> 00:19:11,168 ♪~ 201 00:19:11,168 --> 00:19:24,181 ♪~ 202 00:19:24,181 --> 00:19:28,185 スタジオでは 阪妻さんとの 監督さんとの関係などは・ 203 00:19:28,185 --> 00:19:30,187 どうだったんで ございましょうか? 204 00:19:30,187 --> 00:19:32,189 (森)んー まあ あの… 205 00:19:32,189 --> 00:19:35,192 プロダクションですから やっぱしね・ 206 00:19:35,192 --> 00:19:37,194 妻さんが一番ね あの… 207 00:19:37,194 --> 00:19:41,198 なんでも自分が権利 持ってるって 言ったらおかしいですけどね 208 00:19:41,198 --> 00:19:43,200 あんまり 監督さん… 209 00:19:43,200 --> 00:19:48,205 まあ なんていうんですかね 210 00:19:48,205 --> 00:19:52,209 まあ 全部のあれは 監督さんに任してますけれど 211 00:19:52,209 --> 00:19:56,213 その場その場の あれは やっぱし 自分でね・ 212 00:19:56,213 --> 00:20:00,151 こうしよう こうしようって 相談しながらやってました 213 00:20:00,151 --> 00:20:02,153 よく あれですね ここでアップ ちょうだいっていうような… 214 00:20:02,153 --> 00:20:04,155 ええ 215 00:20:04,155 --> 00:20:06,157 それは ホントだったんでございますか? 216 00:20:06,157 --> 00:20:10,161 ホントです なんかしてて あっ アップって自分が言うんです 217 00:20:10,161 --> 00:20:14,165 そしたら 「はい」って言って 監督さんが そばへ行って 218 00:20:14,165 --> 00:20:17,168 しかし 非常に芸は熱心だったそうですね 219 00:20:17,168 --> 00:20:19,170 熱心ですね 220 00:20:19,170 --> 00:20:22,173 事に もう立ち回りなんかもね 221 00:20:22,173 --> 00:20:26,177 私らも そばでね 見てても ビックリするくらいね 222 00:20:26,177 --> 00:20:29,180 いっぺん 殺陣の人が こう つけますでしょう 223 00:20:29,180 --> 00:20:31,182 つけたら こっちで ジッと見てて 224 00:20:31,182 --> 00:20:34,185 で その次 軽くね 立っていって 225 00:20:34,185 --> 00:20:39,190 で こう シュッシュッとやって それでもう もう すぐ本番ですわ 226 00:20:39,190 --> 00:20:41,192 3回目に 227 00:20:41,192 --> 00:20:44,195 だから もうビックリします そういうときはね 228 00:20:44,195 --> 00:20:46,197 それで間違うことは なかったわけですか? 229 00:20:46,197 --> 00:20:49,200 ないです 頭いいですわ 230 00:20:49,200 --> 00:20:51,202 普通に 231 00:20:51,202 --> 00:20:53,204 (鐘の音) 232 00:20:53,204 --> 00:21:00,144 ♪~ 233 00:21:00,144 --> 00:21:02,146 <牢破りの平三郎だ!> 234 00:21:02,146 --> 00:21:05,149 <誰か早く 半鐘を打て 御用だ!> 235 00:21:05,149 --> 00:21:10,154 <何? 牢破りだと おのれ 犬め!> 236 00:21:10,154 --> 00:21:16,160 <怒りに燃えた平三郎の 天誅の刃が はらわれた> 237 00:21:16,160 --> 00:21:20,164 <寄るな… ええい おらは斬る!> 238 00:21:20,164 --> 00:21:25,169 <やがて しじまを破る 半鐘の乱打 御用の声> 239 00:21:25,169 --> 00:21:34,178 ♪~ 240 00:21:34,178 --> 00:21:37,181 <牢破りだ! ならず者だ! 迎撃だ> 241 00:21:37,181 --> 00:21:40,184 <サソリだ ヘビだ オロチだ> 242 00:21:40,184 --> 00:21:42,186 <ちまたに広がる おびえと呪い> 243 00:21:42,186 --> 00:21:46,190 <飛び交う 御用 御用の声> 244 00:21:46,190 --> 00:21:49,193 <白刃一閃 空に流れる紅の風> 245 00:21:49,193 --> 00:21:54,198 <飛電 鮮血 火花は散るか> 246 00:21:54,198 --> 00:21:57,201 <十手に刀6尺も・ 247 00:21:57,201 --> 00:21:59,203 突棒 さすまた 袖がらみ> 248 00:21:59,203 --> 00:22:02,206 <縄はからむ ハシゴはかぶさる 戸板が塞ぐ> 249 00:22:02,206 --> 00:22:06,210 <大八車が突き進む 屋根瓦は飛んでくる> 250 00:22:06,210 --> 00:22:08,212 <斬って走って 走って斬って> 251 00:22:08,212 --> 00:22:10,214 <倒れて はねのき また転び・ 252 00:22:10,214 --> 00:22:14,218 のたうち転げ回る 反逆のオロチ> 253 00:22:14,218 --> 00:22:34,238 ♪~ 254 00:22:34,238 --> 00:22:54,258 ♪~ 255 00:22:54,258 --> 00:23:14,211 ♪~ 256 00:23:14,211 --> 00:23:24,221 ♪~ 257 00:23:24,221 --> 00:23:41,238 ♪~ 258 00:23:41,238 --> 00:23:44,241 <世人ならぬ者と称する者・ 259 00:23:44,241 --> 00:23:47,244 必ずしも 真のならず者の身にあらん> 260 00:23:47,244 --> 00:23:51,248 <善人 高潔なる人格者と 称すらるる者・ 261 00:23:51,248 --> 00:23:55,252 必ずしも 真の善人の身にあらん> 262 00:23:55,252 --> 00:23:57,187 <生年善人の仮面をかぶり・ 263 00:23:57,187 --> 00:24:01,191 裏面に奸悪を行う大偽善者> 264 00:24:01,191 --> 00:24:07,197 <また 我らの世界に 数多くあることもしれん> 265 00:24:07,197 --> 00:24:14,204 <人の世の正邪 善悪は 果たして いずこにあるか> 266 00:24:14,204 --> 00:24:16,206 これ もう ずっとあとに なってからなんですけども・ 267 00:24:16,206 --> 00:24:18,208 今まで見たこともないような その… 268 00:24:18,208 --> 00:24:20,210 知らなかった戸棚を開けたんです 269 00:24:20,210 --> 00:24:23,213 そしたら なんか 本がギッシリ詰まってまして 270 00:24:23,213 --> 00:24:25,215 あんまり ハッキリ覚えてませんけども 271 00:24:25,215 --> 00:24:28,218 ある時代には これは いわゆる まあ 当時の言葉で言う・ 272 00:24:28,218 --> 00:24:34,224 赤の本に類するもんじゃないかと 思われる本が・ 273 00:24:34,224 --> 00:24:36,226 随分ありましたですけども 274 00:24:36,226 --> 00:24:39,229 親父の生きてた ある時代っていうのは・ 275 00:24:39,229 --> 00:24:41,231 やっぱり 相当 日本も揺れ動いてたし・ 276 00:24:41,231 --> 00:24:44,234 そういうもんに やっぱ 親父って 相当… 277 00:24:44,234 --> 00:24:47,237 敏感というんでしょうか 感じやすかった 278 00:24:47,237 --> 00:24:50,240 そういう体質というんでしょうか 279 00:24:50,240 --> 00:24:52,242 心の持ち主というんでしょうか 280 00:24:52,242 --> 00:24:55,245 そういうものを 昔の映画 見ましても・ 281 00:24:55,245 --> 00:24:57,181 なんか感じます 282 00:24:57,181 --> 00:25:00,184 というのは 立ち回りなんか 見てましてもですね・ 283 00:25:00,184 --> 00:25:04,188 決して自分から傷つけようとは しないですね 284 00:25:04,188 --> 00:25:10,194 なんか 相手が斬ってくるから やむをえず… 285 00:25:10,194 --> 00:25:14,198 やむをえず こっちも刀を抜いて 286 00:25:14,198 --> 00:25:17,201 やむをえず 人を斬るという場面が わりに多い 287 00:25:17,201 --> 00:25:20,204 しかも それが大変悲しい 288 00:25:20,204 --> 00:25:23,207 どっか悲しい立ち回り… 289 00:25:23,207 --> 00:25:27,211 みたいなものを 僕は感じるんですけども 290 00:25:27,211 --> 00:25:30,214 そういう やっぱり 立ち回りとか芝居 291 00:25:30,214 --> 00:25:32,216 まあ ある時期のことですけども 292 00:25:32,216 --> 00:25:37,221 が 親父の中から 生まれたというのは・ 293 00:25:37,221 --> 00:25:41,225 そういう思想問題というか 社会情勢というか 294 00:25:41,225 --> 00:25:44,228 そういうものに わりに 感化されていた人じゃないかと・ 295 00:25:44,228 --> 00:25:46,228 僕は思うんです 296 00:25:48,232 --> 00:25:53,237 <環 歌子さんは 阪妻が国活で 敵役などをやっていたときに・ 297 00:25:53,237 --> 00:25:55,239 同じ撮影所で スターであった> 298 00:25:55,239 --> 00:26:00,177 <のちに マキノで再び一緒になり 共演するようになる> 299 00:26:00,177 --> 00:26:04,181 (環)オムロのね キッちゃんと 一緒に暮らしてたの やめて・ 300 00:26:04,181 --> 00:26:07,184 ショエンのほうに 女の人 来るから帰ってた 301 00:26:07,184 --> 00:26:11,188 それ まあ 話に来ましたよね 真面目に 302 00:26:11,188 --> 00:26:13,190 だから 向こうもビックリして 「何? 真面目な話」 303 00:26:13,190 --> 00:26:16,193 「なんだろ」と 思ってたみたいだけど 304 00:26:16,193 --> 00:26:20,197 私と撮影する間はね・ 305 00:26:20,197 --> 00:26:23,200 「女の人 呼ばないでほしい」って 言うの 306 00:26:23,200 --> 00:26:27,204 ねっ 仕事が済んだら自由だからね 307 00:26:27,204 --> 00:26:29,206 でないと 昔の式でね 308 00:26:29,206 --> 00:26:31,208 間に こう ジャラジャラ顔見たりして・ 309 00:26:31,208 --> 00:26:34,211 ジャレついてたり こっちにはこう 冗談言ったりするのイヤだからね 310 00:26:34,211 --> 00:26:37,214 もう 今までとは違うから 311 00:26:37,214 --> 00:26:39,216 その人に言って 312 00:26:39,216 --> 00:26:41,218 仕事が済んだら あんたの自由だから・ 313 00:26:41,218 --> 00:26:43,220 どんなに遊んだって かまわないけどもね 314 00:26:43,220 --> 00:26:45,222 仕事の間ね 済むまで 315 00:26:45,222 --> 00:26:48,225 こっちは あんたね 精進潔斎って あんた 316 00:26:48,225 --> 00:26:51,228 お塩を持って いつでも清めて 働いてるんだから 317 00:26:51,228 --> 00:26:55,232 真面目に やってほしい とにかく2~3日待ってくれ 318 00:26:55,232 --> 00:26:58,168 それで ちょうど3日目にね・ 319 00:26:58,168 --> 00:27:01,171 改めて会ってね うち来てね 320 00:27:01,171 --> 00:27:04,174 ほんで 「じゃあ環の言うとおりするから・ 321 00:27:04,174 --> 00:27:07,177 一生懸命やりましょうね」って 初めて それで・ 322 00:27:07,177 --> 00:27:09,179 仲良しになって 仕事… 323 00:27:09,179 --> 00:27:13,183 それ ないとね 昔の俳優さんってね・ 324 00:27:13,183 --> 00:27:15,185 こっち向いて こっち… すぐ冗談になるからね 325 00:27:15,185 --> 00:27:18,188 ほいで 女の話ばっかりでしょ 326 00:27:18,188 --> 00:27:20,190 一番 やっぱし印象に残ってるのは なんですか? 327 00:27:20,190 --> 00:27:25,195 (環) それで 一番気持ちが合っててね 若いしね 清くていい気持ちは・ 328 00:27:25,195 --> 00:27:29,199 さっきも言うた な… 七曲がりのあの あれ 329 00:27:29,199 --> 00:27:31,201 『雲母坂』 330 00:27:31,201 --> 00:27:34,204 あのとき 2人もう死にたいほどに 思ったこと 十分ですからね 331 00:27:34,204 --> 00:27:36,206 もう 身が入るとね・ 332 00:27:36,206 --> 00:27:39,206 最後に 一緒に死にたくなるほど いいですよね 仕事が 333 00:27:52,222 --> 00:27:56,226 (沢登)<「『雄呂血』に 初めて あなた様を見しその夜から 334 00:27:56,226 --> 00:28:02,166 私も また 妻様党の一人と相成り候」> 335 00:28:02,166 --> 00:28:07,171 <「あなた様が 芸の上にあふれたる熱と力に・ 336 00:28:07,171 --> 00:28:09,173 限りなき感激を覚え・ 337 00:28:09,173 --> 00:28:12,176 思わずも抱き締めたる 手のひらを・ 338 00:28:12,176 --> 00:28:15,179 ついに終わりまで開かず・ 339 00:28:15,179 --> 00:28:18,182 ついぞ流さぬ涙に・ 340 00:28:18,182 --> 00:28:21,182 頬をぬらした者に これあり候」> 341 00:28:23,187 --> 00:28:30,194 <「立ち回りは 妻三郎において 初めて映画的描写を得たり」> 342 00:28:30,194 --> 00:28:36,200 <「と申しても 決して過言には これなくと存じ候」> 343 00:28:36,200 --> 00:28:40,204 <「真の意味における時代劇を 自立するためには・ 344 00:28:40,204 --> 00:28:45,209 今が一番 肝要な時期かと存ぜられ候」> 345 00:28:45,209 --> 00:28:50,214 <「いたずらに 剣劇のための剣劇に走らず・ 346 00:28:50,214 --> 00:28:53,217 乱闘を事とせず・ 347 00:28:53,217 --> 00:29:00,157 その中に 心を盛ることを 忘れなきよう願い上げ候」> 348 00:29:00,157 --> 00:29:20,177 ♪~ 349 00:29:20,177 --> 00:29:40,197 ♪~ 350 00:29:40,197 --> 00:30:00,150 ♪~ 351 00:30:00,150 --> 00:30:10,160 ♪~ 352 00:30:10,160 --> 00:30:21,171 ♪~ 353 00:30:21,171 --> 00:30:23,173 (久世)歌舞伎っていうのは・ 354 00:30:23,173 --> 00:30:25,175 もう 立ち回りが ちゃんと決まっておりましてね 355 00:30:25,175 --> 00:30:31,181 だから 山型 ほいで まあ 柳だとかね 356 00:30:31,181 --> 00:30:33,183 ほいで ちりはたきとか言いましてね 357 00:30:33,183 --> 00:30:37,187 ダダッと この 板をたたきながら 地べたですけど 358 00:30:37,187 --> 00:30:40,190 舞台の上なら 板をたたきながら こう やるような・ 359 00:30:40,190 --> 00:30:42,192 立ち回りがあったんですよね 360 00:30:42,192 --> 00:30:46,196 それが つまり 高木新平さんだとか・ 361 00:30:46,196 --> 00:30:48,198 阪妻さんが出た時分からですね 362 00:30:48,198 --> 00:30:51,201 立ち回りっていうのは 変わりましたね 363 00:30:51,201 --> 00:30:53,203 だから その… 364 00:30:53,203 --> 00:30:56,206 妻さん独特の その立ち回りでもね 365 00:30:56,206 --> 00:30:59,142 あの人のは独特の 立ち回りがあるんです ええ 366 00:30:59,142 --> 00:31:04,147 そういう系統の人が たくさんいましたけどもね 367 00:31:04,147 --> 00:31:07,150 あの人のは 一風変わっておりました はい 368 00:31:07,150 --> 00:31:11,154 新しい俳優さんたちが出てきて 変わったっていう… 369 00:31:11,154 --> 00:31:13,156 どういうふうに 変わったんでしょう? 370 00:31:13,156 --> 00:31:17,160 (久世)いや あの人の… 妻さんの違いっていうのはですね 371 00:31:17,160 --> 00:31:20,163 えー 人を斬るときにね・ 372 00:31:20,163 --> 00:31:24,167 正面のヤツを ダッと こう斬りますよね 373 00:31:24,167 --> 00:31:28,171 それがね あの人のはね その 自分からね・ 374 00:31:28,171 --> 00:31:32,175 斬るのにね これを斬ろうとして これを斬りますね 375 00:31:32,175 --> 00:31:35,178 斬ったときに 必ず斬るほうを見ないんですよ 376 00:31:35,178 --> 00:31:37,180 斬るほうを見ないで 次にかかってくるヤツを・ 377 00:31:37,180 --> 00:31:39,182 見てるんですよ 378 00:31:39,182 --> 00:31:41,184 バッと こういうふうに 斬っちゃうんですよね 379 00:31:41,184 --> 00:31:44,187 ほいで 次の斬りかかってくるのをね・ 380 00:31:44,187 --> 00:31:46,189 ダッ ダッと よけといてね 381 00:31:46,189 --> 00:31:49,192 それで また次のヤツを斬る 382 00:31:49,192 --> 00:31:53,196 ただ歩いてても フッと立つとね・ 383 00:31:53,196 --> 00:31:55,198 この かかとを ピッとつけてね・ 384 00:31:55,198 --> 00:31:58,201 かかとをつけて サッと背伸びするような格好で・ 385 00:31:58,201 --> 00:32:02,205 立つんですよね これが一点 変わってね・ 386 00:32:02,205 --> 00:32:04,207 人を斬るときには これがバッと こう開いて・ 387 00:32:04,207 --> 00:32:07,210 ビーッと斬ってしまったりね 388 00:32:07,210 --> 00:32:13,216 で もう必ず足をそろえて スッと棒立ちになったときには・ 389 00:32:13,216 --> 00:32:18,216 もう人を斬るぞっていう 構えですかね 一つの うん 390 00:32:23,226 --> 00:32:27,230 <大正14年 妻三郎は 独立プロを興した> 391 00:32:27,230 --> 00:32:31,234 <翌15年 京都市郊外の 一面の竹やぶの中に・ 392 00:32:31,234 --> 00:32:33,236 スタジオを建設した> 393 00:32:33,236 --> 00:32:39,242 <阪妻プロダクションのあった所は 今は東映京都撮影所になっている> 394 00:32:39,242 --> 00:32:56,259 ・~ 395 00:32:56,259 --> 00:33:00,197 <後に 日活や帝キネも この地に撮影所を建て・ 396 00:33:00,197 --> 00:33:05,202 太秦は 日本のハリウッドと 呼ばれる映画の町になった> 397 00:33:05,202 --> 00:33:25,222 ・~ 398 00:33:25,222 --> 00:33:45,242 ・~ 399 00:33:45,242 --> 00:34:03,193 ・~ 400 00:34:03,193 --> 00:34:05,195 阪妻さんとの作品で 会心の作品っていったら・ 401 00:34:05,195 --> 00:34:07,197 なんだと思ってらっしゃいますか 402 00:34:07,197 --> 00:34:09,199 そうですね 403 00:34:09,199 --> 00:34:11,201 あの… 404 00:34:11,201 --> 00:34:15,205 『砂繪呪縛』とかね ああいうの 405 00:34:15,205 --> 00:34:18,208 いい… いいと思いますね ああいう 406 00:34:18,208 --> 00:34:22,212 それから 阪妻さんで 非常に有名なのは・ 407 00:34:22,212 --> 00:34:25,215 よく豪遊されたっていう ことですけれども 408 00:34:25,215 --> 00:34:27,217 そういうのは どうだったんですか? ええ 409 00:34:27,217 --> 00:34:29,219 もう それはもう… 410 00:34:29,219 --> 00:34:33,223 もう しょっちゅう もう 祇園に つかりづめですね 411 00:34:33,223 --> 00:34:35,225 はあ ええ 412 00:34:35,225 --> 00:34:37,227 それは撮影のあるときもですか? 413 00:34:37,227 --> 00:34:39,229 えっ? 撮影して… 414 00:34:39,229 --> 00:34:43,233 ええ 撮影 済みましてからですけどね ええ 415 00:34:43,233 --> 00:34:46,236 まあ 途中で行くときも ありますけどね ええ 416 00:34:46,236 --> 00:34:50,240 それでも 1人では行かないですよ 417 00:34:50,240 --> 00:34:53,243 私たちも連れてってくれたりね 418 00:34:53,243 --> 00:34:55,245 周りの者をね 419 00:34:55,245 --> 00:34:57,180 面白かったですわ 420 00:34:57,180 --> 00:35:00,183 それは何人ぐらい? そうですね 421 00:35:00,183 --> 00:35:03,186 5~6人 連れていきますね いつもね 422 00:35:03,186 --> 00:35:05,188 そして芸子さんは たくさん… 423 00:35:05,188 --> 00:35:08,191 芸子さんは もう 10人か20人ぐらい呼んで・ 424 00:35:08,191 --> 00:35:10,193 もうワイワイ騒いで 425 00:35:10,193 --> 00:35:13,196 で そのうちに もう遅くなりますからね 426 00:35:13,196 --> 00:35:16,199 私たち 先に帰らしてもらいますけどね 427 00:35:16,199 --> 00:35:19,202 とても面白かったですけどね そのころは 428 00:35:19,202 --> 00:35:26,209 ♪~ 429 00:35:26,209 --> 00:35:34,217 ♪~ 430 00:35:34,217 --> 00:35:37,220 結婚なすって もう… 431 00:35:37,220 --> 00:35:40,223 明くる日から もう撮影ですからね 432 00:35:40,223 --> 00:35:43,226 それでも家庭のことなんか 一切 おっしゃらないの 433 00:35:43,226 --> 00:35:45,228 はあ なんにも 434 00:35:45,228 --> 00:35:48,231 ですから それで もう やっぱし… 435 00:35:48,231 --> 00:35:50,233 結婚しても いくらでも・ 436 00:35:50,233 --> 00:35:53,236 また 祇園のほうへ いらっしゃるでしょう 437 00:35:53,236 --> 00:35:55,238 だから 奥さん お気の毒だなと思ってましたわ 438 00:35:55,238 --> 00:35:57,238 そのころね 439 00:35:59,175 --> 00:36:01,177 <撮影所を建てた その年・ 440 00:36:01,177 --> 00:36:05,181 プロダクションの経営者 立花良介の孝策で・ 441 00:36:05,181 --> 00:36:08,184 アメリカ映画と日本映画を 一緒に配給しようという・ 442 00:36:08,184 --> 00:36:10,186 試みが行われる> 443 00:36:10,186 --> 00:36:14,190 <このため 阪妻・立花・ ユニヴァーサル連合映画が設立され・ 444 00:36:14,190 --> 00:36:18,194 アメリカから技術者たちと 新しい機材が送られてきた> 445 00:36:18,194 --> 00:36:22,198 <これで 日本映画全体に 技術革新が進んだ> 446 00:36:22,198 --> 00:36:26,198 <このプロダクションは しかし 半年で挫折した> 447 00:36:30,206 --> 00:36:35,211 <立花良介は右翼結社 黒龍会の同人である> 448 00:36:35,211 --> 00:36:39,215 <しかし 阪妻プロには 左翼の頭首も少なからずいた> 449 00:36:39,215 --> 00:36:41,217 <右翼 左翼 ヤクザ> 450 00:36:41,217 --> 00:36:44,220 <芸術青年が 平気で共存して・ 451 00:36:44,220 --> 00:36:47,220 にぎやかに 映画を作っていたのである> 452 00:36:50,226 --> 00:37:10,180 ♪~ 453 00:37:10,180 --> 00:37:30,200 ♪~ 454 00:37:30,200 --> 00:37:50,220 ♪~ 455 00:37:50,220 --> 00:38:00,163 ♪~ 456 00:38:00,163 --> 00:38:13,163 ♪~ 457 00:38:15,178 --> 00:38:18,181 <阪妻の切り開いた突破口から・ 458 00:38:18,181 --> 00:38:22,185 すぐ追いかけるように新しい スーパースターたちが登場して・ 459 00:38:22,185 --> 00:38:25,188 それぞれに 違った個性を競い合い・ 460 00:38:25,188 --> 00:38:29,192 昭和の初期は 時代劇の黄金時代となった> 461 00:38:29,192 --> 00:38:33,192 <剣劇王 阪妻は 追われる者の立場になった> 462 00:38:37,200 --> 00:38:57,153 ♪~ 463 00:38:57,153 --> 00:39:17,173 ♪~ 464 00:39:17,173 --> 00:39:37,193 ♪~ 465 00:39:37,193 --> 00:39:57,146 ♪~ 466 00:39:57,146 --> 00:40:17,166 ♪~ 467 00:40:17,166 --> 00:40:32,181 ♪~ 468 00:40:32,181 --> 00:40:34,183 <昭和6年から10年まで・ 469 00:40:34,183 --> 00:40:38,187 阪妻は 千葉県谷津に建設した スタジオで・ 470 00:40:38,187 --> 00:40:42,191 阪妻プロダクションの製作を 続けた> 471 00:40:42,191 --> 00:40:46,195 (稲垣)そのころの 阪妻のプロダクションが・ 472 00:40:46,195 --> 00:40:48,197 どういうことに なったかっていうと・ 473 00:40:48,197 --> 00:40:51,200 あんまり よく知らないです はあ 474 00:40:51,200 --> 00:40:54,203 私たちが知らないということは それだけ その… 475 00:40:54,203 --> 00:40:58,141 プロダクションが よくなかったと いうことじゃないかと思いますね 476 00:40:58,141 --> 00:41:00,143 なんていうか その… 477 00:41:00,143 --> 00:41:04,147 いわゆる ワンマンプロダクションみたいな 478 00:41:04,147 --> 00:41:11,154 監督の人たちは 阪東妻三郎に・ 479 00:41:11,154 --> 00:41:15,158 ご機嫌を使うっていうような 時代だったんで 480 00:41:15,158 --> 00:41:23,166 なんなら その阪妻の演技自体も もう マンネリというのかな 481 00:41:23,166 --> 00:41:30,173 したがって 作品も あんまりうまくいかない 482 00:41:30,173 --> 00:41:41,184 ・~ 483 00:41:41,184 --> 00:41:43,186 <昭和10年> 484 00:41:43,186 --> 00:41:46,189 <阪妻は巨匠 伊藤大輔を迎えた> 485 00:41:46,189 --> 00:41:50,193 <トーキー第1作 『新納鶴千代』を作った> 486 00:41:50,193 --> 00:41:53,196 <これは格調高い作品であった> 487 00:41:53,196 --> 00:41:56,199 <しかし 阪妻自身の声は 細くて 甲高く・ 488 00:41:56,199 --> 00:42:00,203 トーキー向きでないという 批評が多かった> 489 00:42:00,203 --> 00:42:02,205 <トーキーへの転換で・ 490 00:42:02,205 --> 00:42:06,209 多くのスターが 危機に立たされた時代である> 491 00:42:06,209 --> 00:42:08,211 <昭和11年> 492 00:42:08,211 --> 00:42:12,215 <阪妻は10年に及ぶ 独立製作をやめた> 493 00:42:12,215 --> 00:42:14,217 <そして 翌昭和12年> 494 00:42:14,217 --> 00:42:17,220 <日活に入社する> 495 00:42:17,220 --> 00:42:21,224 <日本軍の中国への侵略が 始まった年である> 496 00:42:21,224 --> 00:42:25,228 <阪妻プロの名監督だった 志波西果も・ 497 00:42:25,228 --> 00:42:29,232 寛寿郎プロからデビューして 天才とうたわれた山中貞雄も・ 498 00:42:29,232 --> 00:42:34,237 一兵卒として 中国の戦場に借り出された> 499 00:42:34,237 --> 00:42:39,237 <そして 山中貞雄は この翌年 戦場で死んだ> 500 00:42:44,247 --> 00:42:49,252 ♪(男性たちの歌声) 501 00:42:49,252 --> 00:42:52,255 ♪~ 502 00:42:52,255 --> 00:42:54,257 <昭和13年> 503 00:42:54,257 --> 00:43:00,196 <日活オールスターの大作 『忠臣蔵』で 大石内蔵助を演じた> 504 00:43:00,196 --> 00:43:03,199 <これは大石の東下りの場である> 505 00:43:03,199 --> 00:43:07,203 <立花左近の名をかたって 江戸へ向かう大石の宿に・ 506 00:43:07,203 --> 00:43:10,206 本物の立花左近が現れた> 507 00:43:10,206 --> 00:43:30,226 ♪~ 508 00:43:30,226 --> 00:43:50,246 ♪~ 509 00:43:50,246 --> 00:44:10,199 ♪~ 510 00:44:10,199 --> 00:44:30,219 ♪~ 511 00:44:30,219 --> 00:44:50,239 ♪~ 512 00:44:50,239 --> 00:45:10,193 ♪~ 513 00:45:10,193 --> 00:45:29,193 ♪~ 514 00:45:31,214 --> 00:45:33,214 (立花)初めて御意申す 515 00:45:35,218 --> 00:45:39,222 そつじながら ご姓名を承りたい 516 00:45:39,222 --> 00:45:44,227 (大石)拙者は 九条家諸太夫を相務むる・ 517 00:45:44,227 --> 00:45:48,231 立花左近でござる 518 00:45:48,231 --> 00:45:51,234 して 貴公の姓名は? 519 00:45:51,234 --> 00:45:57,173 九条家諸太夫を相務める 立花左近と申す者でござる 520 00:45:57,173 --> 00:46:00,176 黙れ! 偽り者めが (立花)うん? 521 00:46:00,176 --> 00:46:02,178 九条家諸太夫・ 522 00:46:02,178 --> 00:46:05,178 立花左近は 拙者をのけて 他にはない! 523 00:46:09,185 --> 00:46:12,188 さては そのほう・ 524 00:46:12,188 --> 00:46:16,192 何か身に望み事あって・ 525 00:46:16,192 --> 00:46:21,197 我が名を偽り 往来いたす まぎれ者か 526 00:46:21,197 --> 00:46:23,197 黙れ! 527 00:46:25,201 --> 00:46:29,205 九条家諸太夫の官職を偽し・ 528 00:46:29,205 --> 00:46:32,208 上を恐れぬ不適な振る舞い 529 00:46:32,208 --> 00:46:36,212 かく誠の立花左近 現れしうえからは・ 530 00:46:36,212 --> 00:46:39,215 神妙に その素性を名乗れ! 531 00:46:39,215 --> 00:46:41,217 ほう 532 00:46:41,217 --> 00:46:46,222 まことしやかに 立花左近に成りすます 533 00:46:46,222 --> 00:46:49,225 言語道断の振る舞い 534 00:46:49,225 --> 00:46:53,229 そのほうこそ 素性を現せ 535 00:46:53,229 --> 00:46:56,232 拙者は誠の立花左近じゃ! 536 00:46:56,232 --> 00:47:00,232 いいや 拙者をのけて 立花左近は他にはない! 537 00:47:08,177 --> 00:47:11,180 しからば問わんが 538 00:47:11,180 --> 00:47:14,183 九条家より 禁裏の御用を相受けて・ 539 00:47:14,183 --> 00:47:17,186 東へ下る街道筋 540 00:47:17,186 --> 00:47:20,189 どれからどれへ たどられたか 541 00:47:20,189 --> 00:47:25,194 京をあとに 東海道筋を東 542 00:47:25,194 --> 00:47:28,197 逢坂の関も通り・ 543 00:47:28,197 --> 00:47:33,202 五十三次を 日数を重ねて四十五次 544 00:47:33,202 --> 00:47:37,206 当三島宿へ到着いたした 545 00:47:37,206 --> 00:47:41,210 して 貴公のたどられし 街道筋は? 546 00:47:41,210 --> 00:47:44,213 中山道を通行いたした 547 00:47:44,213 --> 00:47:47,216 その一言は 偽り者の証拠歴然 548 00:47:47,216 --> 00:47:52,221 しからば いずれの… 549 00:47:52,221 --> 00:47:55,224 誠 中山道を江戸へ下るならば・ 550 00:47:55,224 --> 00:47:58,160 信州路を… 551 00:47:58,160 --> 00:48:02,164 碓氷越えに江戸へ入るが 当然ではないか 552 00:48:02,164 --> 00:48:05,167 いささか 真がんの志あって・ 553 00:48:05,167 --> 00:48:08,170 信州そばより道を右へとり・ 554 00:48:08,170 --> 00:48:12,174 甲州 韮崎より鰍沢 身延山に参詣いたし・ 555 00:48:12,174 --> 00:48:15,174 当東海道を下り参った 556 00:48:18,180 --> 00:48:21,183 ふむ 557 00:48:21,183 --> 00:48:25,187 一応は 道理に聞こえる 558 00:48:25,187 --> 00:48:27,189 このうえは・ 559 00:48:27,189 --> 00:48:34,196 九条家諸太夫を証拠立てる 確かな品を示されよ 560 00:48:34,196 --> 00:48:38,200 フフッ 証拠なきかと申そうか 561 00:48:38,200 --> 00:48:41,203 恐れ多くも 九条家より下したまえる・ 562 00:48:41,203 --> 00:48:44,203 街道往来の身分書 563 00:48:58,154 --> 00:49:04,154 そりゃ偽物じゃ (立花)何 偽物・ 564 00:49:14,170 --> 00:49:18,170 貴殿の証拠を拝見いたそう 565 00:49:24,180 --> 00:49:26,182 恐れ多くも・ 566 00:49:26,182 --> 00:49:35,191 九条家より賜った 街道往来の身分書 567 00:49:35,191 --> 00:49:39,195 謹んで拝見めされ 568 00:49:39,195 --> 00:49:44,200 ♪(男性の歌声) 569 00:49:44,200 --> 00:50:04,153 ♪~ 570 00:50:04,153 --> 00:50:24,173 ♪~ 571 00:50:24,173 --> 00:50:33,173 ♪~ 572 00:51:18,160 --> 00:51:23,165 これこそ疑いもなき 街道往来の身分書 573 00:51:23,165 --> 00:51:25,167 これを所持なす貴公こそ 疑いもなく・ 574 00:51:25,167 --> 00:51:29,167 九条家諸太夫 立花左近殿に相違ない! 575 00:51:32,174 --> 00:51:35,174 恐れ入ってござる 576 00:51:50,192 --> 00:51:52,194 何を隠そう 拙者は・ 577 00:51:52,194 --> 00:52:00,202 播州赤穂 元浅野の家来 大石内蔵助 良雄でござる 578 00:52:00,202 --> 00:52:09,202 さては貴殿が大石内蔵助… 殿でござるか 579 00:52:11,213 --> 00:52:14,216 偽名を偽り 東へ下り・ 580 00:52:14,216 --> 00:52:20,222 暴君 尊霊を慰め奉らんとする 我らの苦衷 581 00:52:20,222 --> 00:52:26,228 ああ ご推察くだされ 582 00:52:26,228 --> 00:52:29,231 大石殿 583 00:52:29,231 --> 00:52:32,234 お察し申すぞ 584 00:52:32,234 --> 00:52:36,238 ♪(三味線) 585 00:52:36,238 --> 00:52:41,243 ♪(男性の歌声) 586 00:52:41,243 --> 00:53:01,196 ♪~ 587 00:53:01,196 --> 00:53:21,216 ♪~ 588 00:53:21,216 --> 00:53:41,236 ♪~ 589 00:53:41,236 --> 00:53:51,246 ♪~ 590 00:53:51,246 --> 00:54:06,195 ♪~ 591 00:54:06,195 --> 00:54:10,199 拙者は これより甲州路へ道をとり・ 592 00:54:10,199 --> 00:54:13,202 笹尾越えに 東へ下りもうす 593 00:54:13,202 --> 00:54:17,206 長居を恐れ おいとまつかまつる 594 00:54:17,206 --> 00:54:27,206 ♪~ 595 00:54:29,218 --> 00:54:31,218 偽物の身分書 596 00:54:33,222 --> 00:54:35,222 お焼き捨てくだされ 597 00:54:40,229 --> 00:55:00,182 ♪~ 598 00:55:00,182 --> 00:55:20,202 ♪~ 599 00:55:20,202 --> 00:55:40,222 ♪~ 600 00:55:40,222 --> 00:55:50,232 ♪~ 601 00:55:50,232 --> 00:56:07,182 ♪~ 602 00:56:07,182 --> 00:56:10,185 『地獄の蟲』は・ 603 00:56:10,185 --> 00:56:16,191 初めて 日活で・ 604 00:56:16,191 --> 00:56:21,196 阪妻氏と 一緒に仕事をしようという・ 605 00:56:21,196 --> 00:56:26,201 まあ 意気込みをかけた 作品だったわけです 606 00:56:26,201 --> 00:56:31,206 ただし 作品の内容が少し… 607 00:56:31,206 --> 00:56:35,210 いわゆる チャンバラ映画ではないんで 608 00:56:35,210 --> 00:56:41,216 少し 早撮りをするからということで・ 609 00:56:41,216 --> 00:56:44,219 会社を乗せようと 610 00:56:44,219 --> 00:56:48,223 大体 2週間ぐらいで 上げるつもりで 611 00:56:48,223 --> 00:56:51,226 会社と交渉して やったわけです 612 00:56:51,226 --> 00:56:54,226 意外に みんな 乗りましてね 613 00:56:57,165 --> 00:57:02,170 最初は付けヒゲで 宣伝スチール撮ったんですけども 614 00:57:02,170 --> 00:57:06,174 これは もう4~5日 スタート遅らしてくれと 615 00:57:06,174 --> 00:57:09,177 そうすれば もう付けヒゲしないで・ 616 00:57:09,177 --> 00:57:13,181 そのまま みんな ヒゲが生えるからと 617 00:57:13,181 --> 00:57:18,186 そのぐらい みんな 熱を入れてやったんです 618 00:57:18,186 --> 00:57:23,191 ところが まあ お金をかけないということが・ 619 00:57:23,191 --> 00:57:26,194 会社を乗せた あれですから 620 00:57:26,194 --> 00:57:31,199 ほとんど もう京都の周辺だけで 621 00:57:31,199 --> 00:57:33,201 愛宕山の下とか 清滝とか 622 00:57:33,201 --> 00:57:38,206 その辺だけでもって仕事した 623 00:57:38,206 --> 00:57:42,210 意外に面白いものができましてね 624 00:57:42,210 --> 00:57:46,214 えー その試写の… 625 00:57:46,214 --> 00:57:48,216 完成試写のときなどは・ 626 00:57:48,216 --> 00:57:56,224 まあ… 妻さんが喜んで もう手を握って 627 00:57:56,224 --> 00:58:02,164 これはもう 大傑作ができたって 喜んでくれた 628 00:58:02,164 --> 00:58:04,166 ところが 検閲へ出したら・ 629 00:58:04,166 --> 00:58:11,173 これは 大変 退廃的なストーリーで・ 630 00:58:11,173 --> 00:58:19,181 ちっとも国家の目的に 寄与しないということで・ 631 00:58:19,181 --> 00:58:23,185 検閲の保留処分に遭ったんです 632 00:58:23,185 --> 00:58:26,188 会社が大変困りまして 633 00:58:26,188 --> 00:58:32,194 これを改訂してでも 公開したいんだと 634 00:58:32,194 --> 00:58:34,196 で 会社案が出て・ 635 00:58:34,196 --> 00:58:42,204 会社案に こっちが なかなか 納得しきれないでいたところが・ 636 00:58:42,204 --> 00:58:44,206 妻さんが 私の肩たたいて・ 637 00:58:44,206 --> 00:58:50,212 「とにかく僕らは やるだけのことをやったんだ」と 638 00:58:50,212 --> 00:58:54,216 「しかも もう大傑作を 僕らは この目で見たんだから」 639 00:58:54,216 --> 00:58:57,152 「もう それで満足じゃないか」と 640 00:58:57,152 --> 00:59:01,156 「これを この映画を大衆に 見せなかったっていうことは・ 641 00:59:01,156 --> 00:59:04,159 僕らの責任じゃなくて これは会社の責任・ 642 00:59:04,159 --> 00:59:07,162 あるいは内務省の責任だ」って 643 00:59:07,162 --> 00:59:12,167 もう その言葉を 大変うれしく思いましてね 644 00:59:12,167 --> 00:59:18,173 それで その改訂… 会社案を まあ 承諾したわけです 645 00:59:18,173 --> 00:59:22,177 まあ ご承知のように・ 646 00:59:22,177 --> 00:59:24,179 阪妻という人は ああいう特徴のある・ 647 00:59:24,179 --> 00:59:27,182 しゃべり方 セリフ回し 648 00:59:27,182 --> 00:59:32,187 それが まあ 阪妻であるわけですから 649 00:59:32,187 --> 00:59:35,190 これを変えるわけに いかないんですけども 650 00:59:35,190 --> 00:59:39,194 しかし それを変えないと その… 651 00:59:39,194 --> 00:59:46,201 なかなか 作品の中の人物に なるってことは難しい 652 00:59:46,201 --> 00:59:50,205 ちょうど 『江戸最後の日』を 撮ったときも・ 653 00:59:50,205 --> 00:59:56,211 私が まあ モノマネで 好きだけに こういう調子だと 654 00:59:56,211 --> 00:59:58,146 「それは面白い」と 655 00:59:58,146 --> 01:00:00,148 それで 自分がマネしてみるんだけども・ 656 01:00:00,148 --> 01:00:04,152 どうも阪妻が出てきて うまくいかない 657 01:00:04,152 --> 01:00:07,155 中村翫右衛門 658 01:00:07,155 --> 01:00:10,158 中村翫右衛門の セリフ回しというのは・ 659 01:00:10,158 --> 01:00:15,163 非常に当時 機関銃という 異名を取ったぐらい・ 660 01:00:15,163 --> 01:00:19,167 速い… 速い言葉遣い 661 01:00:19,167 --> 01:00:21,169 ほいで 随分 そうですね 662 01:00:21,169 --> 01:00:26,169 7~8回 そういう特訓をやりましたかね 663 01:00:28,176 --> 01:00:33,181 <かつて 『影法師』で 阪妻の魅力に 取りつかれた足立巻一は・ 664 01:00:33,181 --> 01:00:37,185 一兵卒として 中国の戦場に投入されていた> 665 01:00:37,185 --> 01:00:40,188 <彼の参加した中原会戦が・ 666 01:00:40,188 --> 01:00:43,191 『将軍と参謀と兵』という 映画になった> 667 01:00:43,191 --> 01:00:46,194 <彼は久しぶりに 阪妻の映画を見た> 668 01:00:46,194 --> 01:00:49,197 <そして後に こう書いた> 669 01:00:49,197 --> 01:00:54,202 <「驚いた そこでは我が妻三郎は 将軍になっていたのだ」> 670 01:00:54,202 --> 01:00:56,204 <「その将軍は ほとんど口を利かない」> 671 01:00:56,204 --> 01:00:59,141 <「ただ 目の前で 参謀が作戦について・ 672 01:00:59,141 --> 01:01:01,143 激論をたたかわしているのを・ 673 01:01:01,143 --> 01:01:05,147 居眠りをしているように あるいは半眼を開いて・ 674 01:01:05,147 --> 01:01:09,151 あるいは薄い微笑を浮かべて 聞いているばかりだ」> 675 01:01:09,151 --> 01:01:12,154 <「その将軍が突然 軍刀で床を一突きする」> 676 01:01:12,154 --> 01:01:15,157 <「決断は それだけによって示される」> 677 01:01:15,157 --> 01:01:20,162 <「すると地図の上を 延々と兵列が歩いている」> 678 01:01:20,162 --> 01:01:25,167 <「土ほこり 大平原 雑草のようにそよぐ樹木」> 679 01:01:25,167 --> 01:01:28,170 <「それは大変 物悲しかった」> 680 01:01:28,170 --> 01:01:30,172 <「兵隊の顔の クローズアップになると・ 681 01:01:30,172 --> 01:01:33,175 勇ましそうな演技が 行われたけれど・ 682 01:01:33,175 --> 01:01:37,179 ロングショットの隊列は ちっとも勇壮ではなかった」> 683 01:01:37,179 --> 01:01:41,183 <「くらく 物憂く虫のように動いた」> 684 01:01:41,183 --> 01:01:45,187 <「私は その場面には 率直に ひどく感動した」> 685 01:01:45,187 --> 01:01:48,190 <「その隊列の中に 重い背のうを背負い・ 686 01:01:48,190 --> 01:01:51,193 銃を担いでいた 自分を見つけたのだ」> 687 01:01:51,193 --> 01:01:57,199 <「それと一緒に 妻三郎の将軍には まったくの違和感を覚えた」> 688 01:01:57,199 --> 01:02:00,202 <「あんな将軍なんているもんか」> 689 01:02:00,202 --> 01:02:05,207 <「しかし そんな怒りは 実は あの青ざめた ろう人」> 690 01:02:05,207 --> 01:02:08,210 <「病みさらばえて さまようヤクザ」> 691 01:02:08,210 --> 01:02:10,212 <「斬り死にをする 肺病病みの武士」> 692 01:02:10,212 --> 01:02:14,216 <「そんな妻三郎が いきなり ベタ金の肩章をつけて・ 693 01:02:14,216 --> 01:02:17,216 現れたからに違いなかった」> 694 01:02:23,225 --> 01:02:27,229 <戦争中には 妻三郎に もう一度 お目にかかった> 695 01:02:27,229 --> 01:02:31,233 <これは すごく気に入った 『無法松の一生』である> 696 01:02:31,233 --> 01:02:37,239 <昭和18年の『無法松の一生』は 貧しい車引きの物語である> 697 01:02:37,239 --> 01:02:39,241 <当時の常識としては・ 698 01:02:39,241 --> 01:02:44,246 威風あたりを払う 大スターのやる役ではなかった> 699 01:02:44,246 --> 01:02:49,251 ・♪(富島の歌声) 700 01:02:49,251 --> 01:02:53,255 ・♪~ 701 01:02:53,255 --> 01:03:13,208 ♪~ 702 01:03:13,208 --> 01:03:33,228 ♪~ 703 01:03:33,228 --> 01:03:43,238 ♪~ 704 01:03:43,238 --> 01:03:58,186 ♪~ 705 01:03:58,186 --> 01:04:00,188 あっ 706 01:04:00,188 --> 01:04:02,188 エッヘヘ… 707 01:04:05,193 --> 01:04:09,197 旦那 一杯いこう 708 01:04:09,197 --> 01:04:11,199 (吉岡)ごまかしたってダメだぞ 709 01:04:11,199 --> 01:04:13,201 貴様 やれっちゅうたろ 710 01:04:13,201 --> 01:04:16,204 やるやる… やることは やるけんどな 711 01:04:16,204 --> 01:04:20,208 どうも奥さんがいると ホホホ… 712 01:04:20,208 --> 01:04:22,210 やりにくうて いけんのじゃ ハハハハハッ… 713 01:04:22,210 --> 01:04:25,213 (よし子) まあ ひどう嫌われましたこと 714 01:04:25,213 --> 01:04:30,218 それじゃ 今すぐに引き下がりますから 715 01:04:30,218 --> 01:04:33,221 敏雄は もう寝たか? (よし子)はあ もうとっくに 716 01:04:33,221 --> 01:04:35,223 そうか 717 01:04:35,223 --> 01:04:37,225 おい 富島 (富島)へい 718 01:04:37,225 --> 01:04:39,227 まっちゃん もっとやれよ (富島)へい 719 01:04:39,227 --> 01:04:42,230 遠慮すんな! (富島)へい 720 01:04:42,230 --> 01:04:48,236 俺は なんでかしらん えろう 貴様が好きになったぞ 721 01:04:48,236 --> 01:04:53,241 んー 少し酔うたかな 722 01:04:53,241 --> 01:04:56,244 おい よし子 少し寒いな 723 01:04:56,244 --> 01:04:58,179 縁側 閉めてくれ 724 01:04:58,179 --> 01:05:01,182 閉まっとりますけど (吉岡)そうか 725 01:05:01,182 --> 01:05:05,186 まっちゃん 失敬して おらは横になるぞ 726 01:05:05,186 --> 01:05:07,188 へえ どうぞどうぞ 727 01:05:07,188 --> 01:05:10,188 あなた ご気分が お悪いんじゃありませんか? 728 01:05:12,193 --> 01:05:15,196 しっかし 実に寒いのう 729 01:05:15,196 --> 01:05:19,200 どうしたんでしょう こんな暖かい晩に 「寒い」なんて 730 01:05:19,200 --> 01:05:22,203 あら ひどいおつむが熱いようですが 731 01:05:22,203 --> 01:05:24,205 (吉岡)そんなことがあるもんか 732 01:05:24,205 --> 01:05:27,208 今 体温計を持ってまいりますから 733 01:05:27,208 --> 01:05:29,210 少し風邪気のところを・ 734 01:05:29,210 --> 01:05:32,213 演習で 雨に打たれたのが いけなんだんでしょう 735 01:05:32,213 --> 01:05:34,215 熱は 9度9分とおっしゃってください 736 01:05:34,215 --> 01:05:36,217 多分 すぐ来てくださると思います (富島)へえ 737 01:05:36,217 --> 01:05:38,219 無理にも来てもらいますけえ (よし子)それから・ 738 01:05:38,219 --> 01:05:40,221 氷を一貫目と お願いします 739 01:05:40,221 --> 01:05:42,223 あっ バケツかなんか 持っていきますか? 740 01:05:42,223 --> 01:05:45,226 (富島)何 縄で縛ってきます では 一っ走り行ってきます 741 01:05:45,226 --> 01:05:48,229 (よし子)お願いします 742 01:05:48,229 --> 01:06:08,183 ♪~ 743 01:06:08,183 --> 01:06:28,203 ♪~ 744 01:06:28,203 --> 01:06:45,220 ♪~ 745 01:06:45,220 --> 01:06:48,220 まるで夢のようじゃ 746 01:06:50,225 --> 01:06:53,228 旦那のようなお方が はよ死んで・ 747 01:06:53,228 --> 01:06:57,228 こちとらのようなクズが いつまでも生きとる 748 01:07:02,170 --> 01:07:07,175 松五郎さん もう おっしゃってくださいますな 749 01:07:07,175 --> 01:07:11,175 私も もう亡くなった人のことは 言わんつもりですから 750 01:07:13,181 --> 01:07:17,181 これからの私の命は これです 751 01:07:19,187 --> 01:07:21,189 これだけです 752 01:07:21,189 --> 01:07:25,193 (富島)へえへえ そうですとも それでなくっちゃよ へえ 753 01:07:25,193 --> 01:07:28,196 ただ 案じられるのは・ 754 01:07:28,196 --> 01:07:31,199 これが 父親ほどに強うないことです 755 01:07:31,199 --> 01:07:35,203 体も心も 父親ほどに強うないことです 756 01:07:35,203 --> 01:07:38,206 (富島)奥さん ボンボンは まだ小さいんじゃもの 757 01:07:38,206 --> 01:07:41,209 これからの育てようで どうとでもならあな 758 01:07:41,209 --> 01:07:43,211 案じるには及ばんて 759 01:07:43,211 --> 01:07:45,213 そうでしょうか 760 01:07:45,213 --> 01:07:49,217 女の力で この子を強うできますかしら 761 01:07:49,217 --> 01:07:52,220 (富島)ええ そりゃあ できますて 762 01:07:52,220 --> 01:07:57,158 ああ これで 俺が多少 学問でもある人間なら・ 763 01:07:57,158 --> 01:08:00,161 こういうときに お役に立てるんじゃけんど 764 01:08:00,161 --> 01:08:03,164 車引きじゃな… 765 01:08:03,164 --> 01:08:06,167 フフッ 情けねえことじゃ 766 01:08:06,167 --> 01:08:09,170 そんなことはありません 767 01:08:09,170 --> 01:08:12,173 私から お願いします 768 01:08:12,173 --> 01:08:16,177 どうか 折があったら この子を鍛えてやってください 769 01:08:16,177 --> 01:08:21,182 そりゃあ 俺にできることなら なんでもやるけんど 770 01:08:21,182 --> 01:08:24,185 ああ こりゃあ 大役だな 771 01:08:24,185 --> 01:08:27,188 ああ? ハッハハ… 772 01:08:27,188 --> 01:08:33,194 『無法松』は とにかく 誰を主役にするかということで・ 773 01:08:33,194 --> 01:08:36,197 だいぶ いろいろ問題があったんです 774 01:08:36,197 --> 01:08:40,201 で 私は もう『無法松』を やることが決まったとき・ 775 01:08:40,201 --> 01:08:46,207 もう これは阪妻よりないという もう… 776 01:08:46,207 --> 01:08:49,210 決めたもんですからね 777 01:08:49,210 --> 01:08:54,215 会社から出る案も それから 他の人から出る案も・ 778 01:08:54,215 --> 01:08:59,153 全部 排除して 779 01:08:59,153 --> 01:09:02,156 そして 阪妻一本槍で 780 01:09:02,156 --> 01:09:07,161 ところが阪妻の その… 781 01:09:07,161 --> 01:09:09,163 果たして これに乗るかどうかってことが・ 782 01:09:09,163 --> 01:09:12,166 まあ 問題なわけなんです 783 01:09:12,166 --> 01:09:17,171 最初は 「イヤだ」って どうしても乗らないんです 784 01:09:17,171 --> 01:09:19,173 「あんた ホントに これ やる気がないのか」って言ったら・ 785 01:09:19,173 --> 01:09:23,177 あんたがホントに やる気があるんだったら・ 786 01:09:23,177 --> 01:09:27,181 これに あんたは命を懸けるかって話 787 01:09:27,181 --> 01:09:30,184 「命を懸けるか?」と言われて・ 788 01:09:30,184 --> 01:09:33,187 私も これには 命を懸けたいと思ってたんで 789 01:09:33,187 --> 01:09:35,189 「そうだ」と 790 01:09:35,189 --> 01:09:39,193 そしたら いきなり 手を握りましてね 791 01:09:39,193 --> 01:09:43,197 「あんたが その気なら 私もやる」と 792 01:09:43,197 --> 01:09:49,203 とにかく2人は これで失敗したら・ 793 01:09:49,203 --> 01:09:53,203 映画界 去るぐらいのつもりで やりましょうと 794 01:09:55,209 --> 01:09:59,147 それから あと 阪妻 795 01:09:59,147 --> 01:10:03,151 どうも 日常生活が変わったらしいですね 796 01:10:03,151 --> 01:10:06,154 父はですね 普通 自分の部屋で・ 797 01:10:06,154 --> 01:10:08,156 書斎といいますか 勉強部屋といいますか 798 01:10:08,156 --> 01:10:11,159 そこで食事もやるんです 799 01:10:11,159 --> 01:10:13,161 で 母が付き添いまして 800 01:10:13,161 --> 01:10:16,164 晩に ちゃんと こう 正座してですね 801 01:10:16,164 --> 01:10:20,168 ある日 帰ってまいりますとね わたくしが 802 01:10:20,168 --> 01:10:23,171 台所で あぐらかいて なんか イワシかなんか 干物を・ 803 01:10:23,171 --> 01:10:26,174 こう なんか ムシャムシャかじりながら 804 01:10:26,174 --> 01:10:30,178 多分 あれはコップ酒… 茶わん酒っていうんですかね 805 01:10:30,178 --> 01:10:34,182 やってる姿を見ましてね 806 01:10:34,182 --> 01:10:36,184 大変 不思議に思ったんです 807 01:10:36,184 --> 01:10:38,186 (稲垣)ああ これは もう いよいよ乗り出して・ 808 01:10:38,186 --> 01:10:40,188 役作りやってんだなと思って 809 01:10:40,188 --> 01:10:45,188 まあ 大変 私は私で まあ 喜んでたわけですけどね 810 01:10:47,195 --> 01:10:52,200 <『無法松の一生』は 阪妻出世の名演技の一つだった> 811 01:10:52,200 --> 01:10:54,202 <戦争は間もなく 敗戦で終わった> 812 01:10:54,202 --> 01:10:57,138 <人々は進むべき方向を見失った> 813 01:10:57,138 --> 01:11:01,142 <アメリカ軍は 時代劇映画を 封建思想の温床と見て・ 814 01:11:01,142 --> 01:11:03,144 厳しい制限を加えた> 815 01:11:03,144 --> 01:11:06,147 <時代劇スターたちは 劇団を作って・ 816 01:11:06,147 --> 01:11:09,150 地方巡業をしなければ ならなかった> 817 01:11:09,150 --> 01:11:15,156 <阪妻は 時代劇を演じ続ける一方 現代劇にも進出した> 818 01:11:15,156 --> 01:11:19,160 <特に 社会の一番の下積みの 庶民の中にこそ・ 819 01:11:19,160 --> 01:11:23,164 真の人間的な風格を見いだす 役柄を開拓して・ 820 01:11:23,164 --> 01:11:26,164 芸の円熟に達した> 821 01:11:28,169 --> 01:11:34,175 ♪(玉江の歌声) 822 01:11:34,175 --> 01:11:54,195 ♪~ 823 01:11:54,195 --> 01:11:57,198 あっ おとっつぁん 824 01:11:57,198 --> 01:12:00,201 (三吉)はよ来い はよ来い これな 賞品やで 825 01:12:00,201 --> 01:12:04,201 賞品や賞品や賞品や フフッ 826 01:12:06,207 --> 01:12:11,207 (玉江)おかあちゃーん おとっつぁん 帰らはったえー 827 01:12:17,218 --> 01:12:20,221 あっ 新やん えろう遅うなってな 828 01:12:20,221 --> 01:12:22,223 ああ 暑… 829 01:12:22,223 --> 01:12:25,226 (新蔵)アホ! (三吉)えっ? 830 01:12:25,226 --> 01:12:27,228 (新蔵) わいの一張羅 何しくさるねん 831 01:12:27,228 --> 01:12:29,228 はよう脱がんかい (三吉)あっ すいません… 832 01:12:33,234 --> 01:12:35,236 (新蔵)いよっ… 833 01:12:35,236 --> 01:12:37,238 おっ? 834 01:12:37,238 --> 01:12:39,240 売り飛ばしたんやなかったんかい 835 01:12:39,240 --> 01:12:44,245 へえ 将棋でもろうた賞金でな 買い戻してきたんや 836 01:12:44,245 --> 01:12:46,247 それどころやあらへんで 837 01:12:46,247 --> 01:12:48,249 はよ 小春さんに謝らんと 838 01:12:48,249 --> 01:12:52,249 小春さん 家出の支度の最中やで (三吉)何? 839 01:13:19,213 --> 01:13:21,213 すまんかった 840 01:13:28,222 --> 01:13:30,224 あの… 841 01:13:30,224 --> 01:13:32,224 あのな… 842 01:13:44,238 --> 01:13:48,238 (小春)ああ… 843 01:13:52,246 --> 01:13:57,246 (泣き声) 844 01:14:10,197 --> 01:14:14,201 (玉江)おじちゃーん! 845 01:14:14,201 --> 01:14:19,201 (機関車の走行音) 846 01:14:43,230 --> 01:14:48,235 ・♪(チャルメラ) 847 01:14:48,235 --> 01:14:54,235 ・♪~ 848 01:15:01,182 --> 01:15:07,182 ・♪~ 849 01:15:31,212 --> 01:15:35,216 ・(汽笛) 850 01:15:35,216 --> 01:15:40,216 ・(走行音) 851 01:15:56,237 --> 01:16:01,237 (汽笛) 852 01:16:14,188 --> 01:16:17,191 (鐘の音) 853 01:16:17,191 --> 01:16:19,193 あっ 新やん (新蔵)ええ? 854 01:16:19,193 --> 01:16:22,193 ちょっとちょっと (新蔵)なんや 855 01:16:27,201 --> 01:16:29,203 新やん! (新蔵)なんやなんや 856 01:16:29,203 --> 01:16:33,207 ちょっと来てんか (新蔵)なんや いきなり もう… 857 01:16:33,207 --> 01:16:36,210 新やん あのな これは… (新蔵)眠とうて 眠とうて… 858 01:16:36,210 --> 01:16:40,214 あのな これはな… 打った手やねん 859 01:16:40,214 --> 01:16:42,216 ちょっと見てんか なっ 860 01:16:42,216 --> 01:16:44,218 ほう 861 01:16:44,218 --> 01:16:48,222 なんと また難しい手やな 862 01:16:48,222 --> 01:16:50,224 そうやろ 新やん (新蔵)うん 863 01:16:50,224 --> 01:16:54,228 これな はじめな こんな具合にな 864 01:16:54,228 --> 01:16:57,164 なっ 865 01:16:57,164 --> 01:17:01,164 これな 最初な こうやってな… 866 01:17:05,172 --> 01:17:09,176 新やん それで わいはな (新蔵)うん 867 01:17:09,176 --> 01:17:12,179 ここへ角を こう打ったんや 868 01:17:12,179 --> 01:17:15,182 (新蔵)うんうんうんうん それから それから? 869 01:17:15,182 --> 01:17:18,185 するとな (新蔵)うん 870 01:17:18,185 --> 01:17:23,190 ここん所へ 歩を張ってきよったんや 871 01:17:23,190 --> 01:17:27,194 んー! こら 大した玄人や 872 01:17:27,194 --> 01:17:29,196 当たり前やがな 873 01:17:29,196 --> 01:17:34,201 関根七段っつったら 今 売り出しのバリバリや 874 01:17:34,201 --> 01:17:37,204 それでなしや… (新蔵)ちょ… ちょっと待った 875 01:17:37,204 --> 01:17:42,209 あー もう腹減って 腹減って もう 痛なってきた 876 01:17:42,209 --> 01:17:47,209 ああ まだチャーシュー麺 残っとったいうようやから 877 01:17:49,216 --> 01:17:52,219 うん なるほど 878 01:17:52,219 --> 01:17:54,221 (三吉)新やん ええか? (新蔵)うん 879 01:17:54,221 --> 01:17:58,159 (三吉)でな わいは この銀を こう取ったんや 880 01:17:58,159 --> 01:18:01,162 すると 金で取ってきよったから・ 881 01:18:01,162 --> 01:18:05,166 銀をケツへ こう打ったんや (新蔵)なるほど 882 01:18:05,166 --> 01:18:08,169 (三吉)これで おしまいや (新蔵)えっ? 883 01:18:08,169 --> 01:18:10,171 (三吉)わいの負けやっちゅんで 884 01:18:10,171 --> 01:18:14,175 負け? この指しかけで? 885 01:18:14,175 --> 01:18:16,177 (三吉)新やん 886 01:18:16,177 --> 01:18:18,179 わいが口を知ってたって 887 01:18:18,179 --> 01:18:20,181 いやあ 気いつけや 888 01:18:20,181 --> 01:18:25,186 (三吉)ななな… なんで これは わての負けだんね? 889 01:18:25,186 --> 01:18:28,189 そりゃ 手詰まりみたいに 見えてまっけどな 890 01:18:28,189 --> 01:18:31,192 これ 指して指して 指し抜いていったら・ 891 01:18:31,192 --> 01:18:33,194 か… 必ず勝てる見込みっとやねん 892 01:18:33,194 --> 01:18:36,197 それが なんで わての負けだんね? 893 01:18:36,197 --> 01:18:38,199 えっ えっ? どうなんで? 894 01:18:38,199 --> 01:18:41,199 わて 合点がなりませんわ これ 895 01:18:43,204 --> 01:18:48,209 (男性) まあまあ あなたは お素人衆で ご存じないのでしょうが・ 896 01:18:48,209 --> 01:18:53,214 将棋の世界では これを 千日手と申しましてな・ 897 01:18:53,214 --> 01:18:57,151 双方 どうにも動きのつかない手に なった場合には・ 898 01:18:57,151 --> 01:19:00,154 その手を仕掛けたほうが負けと 899 01:19:00,154 --> 01:19:02,156 (笑い声) 900 01:19:02,156 --> 01:19:04,158 こりゃ規則ですからな 901 01:19:04,158 --> 01:19:07,161 きそく… 902 01:19:07,161 --> 01:19:10,161 き… きそく 903 01:19:17,171 --> 01:19:20,171 きそく… きそく 904 01:19:23,177 --> 01:19:25,179 あっ さようか さようか 905 01:19:25,179 --> 01:19:28,179 よろしい そんなら それでよろしい 906 01:19:30,184 --> 01:19:33,187 けどな 関根はんたら 天下の七段 907 01:19:33,187 --> 01:19:36,190 わては免状一枚もろてもおらん 素人だす 908 01:19:36,190 --> 01:19:41,195 その七段の大先生が 素人の仕掛けた手に詰まる… 909 01:19:41,195 --> 01:19:45,199 き… きそくとやないうもんで 勝たはったんじゃ・ 910 01:19:45,199 --> 01:19:48,199 あんまり名誉でもないこと おまへんか? 911 01:19:52,206 --> 01:19:55,209 よろしゅうおま 912 01:19:55,209 --> 01:19:57,209 今度は負けとしまひょ 913 01:20:00,147 --> 01:20:03,150 その代わりな わてえもな・ 914 01:20:03,150 --> 01:20:08,155 今日から素人やめて 玄人の将棋指しになる 915 01:20:08,155 --> 01:20:12,159 あんさんとの この決着は 必ずつけますでな 916 01:20:12,159 --> 01:20:16,163 よう覚えといて おくんなはれや 917 01:20:16,163 --> 01:20:18,165 (新蔵)んっ! 918 01:20:18,165 --> 01:20:22,169 よう言うた! よう言うたった うん 919 01:20:22,169 --> 01:20:25,172 (三吉)新やん (新蔵)うん? 920 01:20:25,172 --> 01:20:28,175 わい 今日から命懸け 921 01:20:28,175 --> 01:20:32,175 性根入れ替えて 草履作りも一生懸命やる 922 01:20:34,181 --> 01:20:37,184 女房 子供に ひもじいめ さすようなこと・ 923 01:20:37,184 --> 01:20:39,186 金輪際 しやへん (新蔵)うんうん 924 01:20:39,186 --> 01:20:44,191 その代わり! 将棋も命懸けや ええな? 925 01:20:44,191 --> 01:20:50,197 そいでな あの関根って将棋指しな 926 01:20:50,197 --> 01:20:53,197 今に見とれ! 927 01:21:01,141 --> 01:21:05,145 随分 いろんな人が 三吉をやりましたけれども・ 928 01:21:05,145 --> 01:21:10,150 その中で 阪妻さんが おやりになった役の・ 929 01:21:10,150 --> 01:21:12,152 特徴というのは どういうもんでございましょうか 930 01:21:12,152 --> 01:21:14,154 (伊藤)大きいですね 931 01:21:14,154 --> 01:21:17,157 はあ 大きさですか なんといっても・ 932 01:21:17,157 --> 01:21:21,161 人物が大きいというか 演技が大きいというかね 933 01:21:21,161 --> 01:21:24,164 幅がありますね 奥行きがあるだけじゃないですね 934 01:21:24,164 --> 01:21:27,164 幅がありますね 大きいです 935 01:21:30,170 --> 01:21:35,175 映画の三吉は俺なりと 思い込んでますからね 936 01:21:35,175 --> 01:21:40,180 それが おのずから出ますから 非常に気持ちが楽です 937 01:21:40,180 --> 01:21:43,183 そこが そうしてもらわんと… 938 01:21:43,183 --> 01:21:46,186 ちょっと三吉らしくないですね というようなことが 939 01:21:46,186 --> 01:21:53,193 監督が とかく言う必要のない 気迫さがあります 940 01:21:53,193 --> 01:21:56,196 大きいんです ホントに大きいんだからね 941 01:21:56,196 --> 01:22:00,200 役者さんにはね 大きくなってるの いますけどね 942 01:22:00,200 --> 01:22:02,200 妻さんみたいに… 943 01:22:04,204 --> 01:22:07,207 非凡がりもね 平凡がりもしないね・ 944 01:22:07,207 --> 01:22:11,211 素のままでね 通るの 妻さんぐらいのもんですよ 945 01:22:11,211 --> 01:22:14,214 いや 大河内君もあるかな なるほど 946 01:22:14,214 --> 01:22:18,214 その面では非常に 監督としては扱いやすい 947 01:22:21,221 --> 01:22:24,224 その代わり 得心ができないとですね 948 01:22:24,224 --> 01:22:27,227 理屈は言わないけど 得心が出てこない 949 01:22:27,227 --> 01:22:31,227 自分の演技も得心でいかないと 950 01:22:37,237 --> 01:22:45,245 時々 家族ぐるみで 京都の日本海の天橋立のほうへ・ 951 01:22:45,245 --> 01:22:47,247 海水浴に 行ったことがあるんですけども 952 01:22:47,247 --> 01:22:50,250 弟たちは ホントに親父と・ 953 01:22:50,250 --> 01:22:52,252 キャッキャ言って 戯れてるんですね 954 01:22:52,252 --> 01:22:55,255 親父も 僕には見せたこともないような・ 955 01:22:55,255 --> 01:22:57,191 いわゆる いい親父ぶりを そこで発揮するんですけども 956 01:22:57,191 --> 01:22:59,193 僕は なんとなく そばで… 957 01:22:59,193 --> 01:23:04,198 というか 横から羨ましそうな気持ちで・ 958 01:23:04,198 --> 01:23:08,202 見てたもんなんですけども 959 01:23:08,202 --> 01:23:12,206 大変 そういう 弟たちに対しては・ 960 01:23:12,206 --> 01:23:17,211 いわゆる スキンシップというんですか 961 01:23:17,211 --> 01:23:19,213 もう 充満した いい親父だったです 962 01:23:19,213 --> 01:23:22,216 ええ もう なんか弟たちよりも・ 963 01:23:22,216 --> 01:23:24,218 もっともっと 子供っぽく はしゃいで・ 964 01:23:24,218 --> 01:23:27,221 自分で なんか 水ん中 飛び込んだり・ 965 01:23:27,221 --> 01:23:30,224 変な格好したり おどけたり・ 966 01:23:30,224 --> 01:23:33,227 ホントに もう 子供以上に はしゃいでました 967 01:23:33,227 --> 01:23:49,243 ・~ 968 01:23:49,243 --> 01:23:51,245 <長男の田村高廣が・ 969 01:23:51,245 --> 01:23:56,250 中学校の入学試験を 受けたときのことである> 970 01:23:56,250 --> 01:23:59,186 とにかく わたくしとしましても・ 971 01:23:59,186 --> 01:24:02,189 また両親としましても・ 972 01:24:02,189 --> 01:24:04,191 試験を受けて・ 973 01:24:04,191 --> 01:24:08,195 それが 合否を決められるというのは・ 974 01:24:08,195 --> 01:24:10,197 とにかく 初めてな経験だったもんですから 975 01:24:10,197 --> 01:24:12,199 うちじゅう 落ち着かないんです 976 01:24:12,199 --> 01:24:15,202 で 親父も そういうことになると 大変 臆病でして 977 01:24:15,202 --> 01:24:18,205 誰一人 その… 978 01:24:18,205 --> 01:24:23,210 中学の入試発表の日に 見に行こうとしないんです 979 01:24:23,210 --> 01:24:25,212 わたくしも なんか怖かったんです 980 01:24:25,212 --> 01:24:28,215 それで うちにいたんですけども 981 01:24:28,215 --> 01:24:30,217 とにかく 小さいうちだったもんですから 982 01:24:30,217 --> 01:24:33,220 で 父の部屋は2階にございまして 983 01:24:33,220 --> 01:24:35,222 古いうちだったんで・ 984 01:24:35,222 --> 01:24:37,224 なんか ミシミシ 上で音がするんですね 985 01:24:37,224 --> 01:24:40,227 多分 親父 なんか… 986 01:24:40,227 --> 01:24:42,229 動物園の熊みたいに・ 987 01:24:42,229 --> 01:24:45,232 2階で落ち着かないで ノソノソ・ 988 01:24:45,232 --> 01:24:48,235 歩き回ってたんじゃないかと 思うんですけど 989 01:24:48,235 --> 01:24:51,238 そういうときに ご親切に・ 990 01:24:51,238 --> 01:24:57,177 小学校の受け持ちの先生が 発表を見てきてくださいまして 991 01:24:57,177 --> 01:25:01,181 それを わざわざ うちまで知らせてくれましてね 992 01:25:01,181 --> 01:25:04,184 で それを聞いた途端に 親父が まあ 2階から・ 993 01:25:04,184 --> 01:25:08,188 転がるように 階段を下りてきまして 994 01:25:08,188 --> 01:25:12,192 で その知らせに来てくださった 先生の前に・ 995 01:25:12,192 --> 01:25:16,196 ホント なんていうか… 時代劇の格好じゃないですけども 996 01:25:16,196 --> 01:25:20,200 両手ついて もう 畳に頭こすりつけて・ 997 01:25:20,200 --> 01:25:22,202 「ありがとうございました」 998 01:25:22,202 --> 01:25:42,222 ・~ 999 01:25:42,222 --> 01:25:53,233 ・~ 1000 01:25:53,233 --> 01:25:59,172 中学に入りましたときに・ 1001 01:25:59,172 --> 01:26:04,177 新入生代表で ご挨拶させられたんですけども 1002 01:26:04,177 --> 01:26:07,180 とにかく人の前で しゃべるのは 僕は… 1003 01:26:07,180 --> 01:26:09,182 しゃべるというか 声を出すのは 初めてなもんですから・ 1004 01:26:09,182 --> 01:26:12,185 親父も大変 うれしかったんでしょうけども・ 1005 01:26:12,185 --> 01:26:14,187 気にしましてですね 1006 01:26:14,187 --> 01:26:17,190 たまたま我が家が 広隆寺の裏にあったもんですから 1007 01:26:17,190 --> 01:26:20,193 朝早く たたき起こされて 1008 01:26:20,193 --> 01:26:23,196 森の中で まだ もやというんですか 1009 01:26:23,196 --> 01:26:26,199 霧というんですか 立ちこめてる中で 1010 01:26:26,199 --> 01:26:31,204 親父がスーッと 霧の向こうへ消えましてね 1011 01:26:31,204 --> 01:26:33,206 「始めろ」って言うわけなんです 1012 01:26:33,206 --> 01:26:35,208 で わたくしが その… 1013 01:26:35,208 --> 01:26:40,213 いわゆる その ご挨拶の言葉を読むんですけども 1014 01:26:40,213 --> 01:26:44,217 声が出ないもんですから 親父まで届かないんですね 1015 01:26:44,217 --> 01:26:46,219 「早く始めろ」って 言われるんですけども 1016 01:26:46,219 --> 01:26:50,223 僕は言ってるんですけども 親父の耳に届かないんです 1017 01:26:50,223 --> 01:26:52,225 で まあ それを何日も繰り返しまして 1018 01:26:52,225 --> 01:26:58,165 やっと まあ なんとか なんとか まあ 様になって 1019 01:26:58,165 --> 01:27:00,165 それで 式の当日 1020 01:27:02,169 --> 01:27:04,171 今でいう 山城高校なんですけども 1021 01:27:04,171 --> 01:27:07,174 当時 京都府立第三中学校 だったんですけど 1022 01:27:07,174 --> 01:27:17,184 その校庭の周りは ずっと カラタチの垣根がございまして 1023 01:27:17,184 --> 01:27:22,189 親父は その垣根の向こう側で なんか… 1024 01:27:22,189 --> 01:27:24,191 どんな気持ちだったか 知りませんけども 1025 01:27:24,191 --> 01:27:29,196 それはもう 背中に汗しながら 見ていてくれた・ 1026 01:27:29,196 --> 01:27:31,198 ということを聞いてますけども 1027 01:27:31,198 --> 01:27:41,208 ・~ 1028 01:27:41,208 --> 01:27:55,222 ・~ 1029 01:27:55,222 --> 01:27:57,157 人柄としては・ 1030 01:27:57,157 --> 01:28:00,160 若いころの阪妻さんって 大体 どんな人だったんでしょう? 1031 01:28:00,160 --> 01:28:02,162 (森)そうですね なんていうのかな 1032 01:28:02,162 --> 01:28:05,165 ものすごい魅力のある方ですね やっぱり 1033 01:28:05,165 --> 01:28:07,167 あっさりしてるし 1034 01:28:07,167 --> 01:28:09,169 私たちにはね 1035 01:28:09,169 --> 01:28:12,169 かわいがっていただきましたね 随分ね 1036 01:28:16,176 --> 01:28:21,181 とにかく あの人っていうのは どういう人柄って・ 1037 01:28:21,181 --> 01:28:23,183 人がいいっていうのか 悪いっていうのか 1038 01:28:23,183 --> 01:28:27,187 とにかく 親しみのある人ですけどね 1039 01:28:27,187 --> 01:28:34,194 親しみのある人なんだけども 時々 変なことをやる人でね 1040 01:28:34,194 --> 01:28:36,196 一口に言えば いい人です 1041 01:28:36,196 --> 01:28:40,200 「あれは阪妻の地ではないか」と 1042 01:28:40,200 --> 01:28:43,203 それを いわゆる 映画化したものではないかと・ 1043 01:28:43,203 --> 01:28:48,208 言われてるものの中に 木下惠介先生の・ 1044 01:28:48,208 --> 01:28:50,210 『破れ太鼓』という映画が あるんですけども 1045 01:28:50,210 --> 01:28:55,215 あの主人公の津田軍平という男は とにかく もう なんていうか・ 1046 01:28:55,215 --> 01:28:57,150 ガミガミ親父で ワンマンで 1047 01:28:57,150 --> 01:28:59,152 もう 家族が みんな 震え上がってると 1048 01:28:59,152 --> 01:29:02,155 それ イコール 阪妻であろうという・ 1049 01:29:02,155 --> 01:29:06,159 まあ 質問とか お話を 随分 伺ったんですけども 1050 01:29:06,159 --> 01:29:10,163 全く その逆なんです うちにいるときは言葉少ないし・ 1051 01:29:10,163 --> 01:29:12,165 陰へ回って いろいろと 子供のことを 1052 01:29:12,165 --> 01:29:14,167 あるいは 家族のことを考える 1053 01:29:14,167 --> 01:29:16,169 そういう人ですから もうひとつ 1054 01:29:16,169 --> 01:29:20,173 これは親父の地ではないかと 思われるのは・ 1055 01:29:20,173 --> 01:29:23,176 遺作になりました・ 1056 01:29:23,176 --> 01:29:26,179 『あばれ獅子』という 映画なんですけども 1057 01:29:26,179 --> 01:29:28,181 これ やっぱり… 1058 01:29:28,181 --> 01:29:32,185 勝 海舟の まあ おとっつぁん役なんですけども 1059 01:29:32,185 --> 01:29:36,189 子供のためなら もう どこでも出ていく 1060 01:29:36,189 --> 01:29:40,193 それで子供には 見られないとこでもって・ 1061 01:29:40,193 --> 01:29:47,200 女房と一緒に 一生懸命 麟太郎のことを心配する 1062 01:29:47,200 --> 01:29:52,205 それが まさに 親父自身じゃなかったかなと 1063 01:29:52,205 --> 01:29:54,207 今にして そう思っております 1064 01:29:54,207 --> 01:29:59,207 (一同の騒ぎ声) 1065 01:30:18,164 --> 01:30:20,166 (君江)お母様 (お信)あっ はい 1066 01:30:20,166 --> 01:30:24,170 ふつつか者でございますが (お信)いいえ 1067 01:30:24,170 --> 01:30:29,175 他人のために嫁をもらい 夫を持つのではありません 1068 01:30:29,175 --> 01:30:31,177 麟太郎と2人で 力を合わせて・ 1069 01:30:31,177 --> 01:30:33,179 勝の家を 立派にしてくださるように・ 1070 01:30:33,179 --> 01:30:35,181 頼みますよ 1071 01:30:35,181 --> 01:30:37,183 はい 1072 01:30:37,183 --> 01:30:42,183 (一同の騒ぎ声) 1073 01:30:44,190 --> 01:30:47,193 (小吉)君 花嫁は婿の隣だよ 1074 01:30:47,193 --> 01:30:51,197 隣 隣 隣だよ 1075 01:30:51,197 --> 01:30:54,200 おい おめえはバカだな 1076 01:30:54,200 --> 01:30:56,202 邪魔ということを知らねえ アホだよ 1077 01:30:56,202 --> 01:30:58,202 ハハハッ 1078 01:31:01,141 --> 01:31:03,143 (小吉)さあ おめえも踊れや 1079 01:31:03,143 --> 01:31:05,145 (男性)はい はい 1080 01:31:05,145 --> 01:31:10,145 (一同の騒ぎ声) 1081 01:32:20,220 --> 01:32:23,223 <田村傳吉の最期の日々は・ 1082 01:32:23,223 --> 01:32:27,227 高血圧におびえる 小心な毎日であったという> 1083 01:32:27,227 --> 01:32:31,231 <しかしファンの記憶に生き続ける 阪東妻三郎は・ 1084 01:32:31,231 --> 01:32:35,235 荒々しい肉体に 高貴な魂を持った・ 1085 01:32:35,235 --> 01:32:38,238 男の中の男であった> 1086 01:32:38,238 --> 01:32:53,238 ・~