1 00:00:05,382 --> 00:00:07,851 奇跡の出会いを果たした 2つの家族は➡ 2 00:00:07,851 --> 00:00:10,520 大きなギャップに驚きながらも➡ 3 00:00:10,520 --> 00:00:17,077 互いにわかり合い 強い友情の絆を結びあった。 4 00:00:17,077 --> 00:00:23,077 その絆が とわに ほどけないことを信じたい。 5 00:00:34,044 --> 00:00:36,029 私は 絶対に死にません。 6 00:00:36,029 --> 00:00:38,498 特攻を命じられたら どこでもいい。 7 00:00:38,498 --> 00:00:40,798 島に不時着しろ。 8 00:00:45,138 --> 00:00:47,438 おかえりなさい。 9 00:00:51,027 --> 00:00:53,947 必ず…。 10 00:00:53,947 --> 00:00:57,447 必ず君の元に戻ってくる。 11 00:01:01,054 --> 00:01:05,408 諸君たちの健闘を祈る。 12 00:01:05,408 --> 00:01:08,708 やつは 死ぬ運命だった。 13 00:01:10,664 --> 00:01:14,334 おじいちゃんが もし特攻に行ったんなら➡ 14 00:01:14,334 --> 00:01:17,404 きっと 死ぬためじゃない。 15 00:01:17,404 --> 00:01:23,004 きっと 生きるために…。 16 00:01:26,763 --> 00:01:30,063 本当のことを教えて。 17 00:04:44,160 --> 00:04:49,048 ごめんね。 ん? 18 00:04:49,048 --> 00:04:54,537 本当は お母さんが 聞いておくべきことだったよね。 19 00:04:54,537 --> 00:04:58,837 宮部久蔵の たった一人の娘なんだから。 20 00:05:01,711 --> 00:05:05,131 だって お父さんは➡ 21 00:05:05,131 --> 00:05:10,131 私や お母さんに会うために 臆病者…。 22 00:05:16,176 --> 00:05:22,476 戦場で 臆病者だなんて言われて…。 23 00:05:32,075 --> 00:05:37,063 愛してたんだよね おじいちゃんは。 24 00:05:37,063 --> 00:05:42,402 お母さんや おばあちゃんのこと。 25 00:05:42,402 --> 00:05:44,804 そんな いいお父さんのこと➡ 26 00:05:44,804 --> 00:05:49,042 なんで お母さん 話してくれなかったのかな。 27 00:05:49,042 --> 00:05:54,747 もしかしたら おばあちゃんは知ってたのかな。 28 00:05:54,747 --> 00:05:57,400 何を? 29 00:05:57,400 --> 00:06:02,405 おじいちゃんが特攻に行った理由。 30 00:06:02,405 --> 00:06:06,543 なんかそこに おばあちゃんが おじいちゃんのことを➡ 31 00:06:06,543 --> 00:06:10,063 話せなかった理由が あるような気がして…。 32 00:06:10,063 --> 00:06:13,399 だって ほら おじいちゃんは➡ 33 00:06:13,399 --> 00:06:18,054 妻子に会うために 生きて帰りたいって言った人よ。 34 00:06:18,054 --> 00:06:22,525 不時着してでも 生き残れって言った人よ。 35 00:06:22,525 --> 00:06:28,525 なのに なんで 特攻に行って 死ななきゃならなかったの。 36 00:06:31,367 --> 00:06:37,423 私は どうしても それが知りたい。 37 00:06:37,423 --> 00:06:42,061 変わったわね アンタ。 38 00:06:42,061 --> 00:06:45,061 何が? 39 00:06:50,036 --> 00:06:53,356 ちょっと 何よ? 40 00:06:53,356 --> 00:06:56,542 今 つきあってる人いたわよね。 41 00:06:56,542 --> 00:07:00,797 え? 新聞社の人。 42 00:07:00,797 --> 00:07:04,797 急に話 変わりすぎだから。 43 00:07:14,394 --> 00:07:18,448 って やめないでよ。 何よ? 44 00:07:18,448 --> 00:07:23,036 お母さん。 45 00:07:23,036 --> 00:07:28,408 もう 帰った頃だから言うけどね。 46 00:07:28,408 --> 00:07:31,044 帰ったって誰が? 47 00:07:31,044 --> 00:07:35,081 藤木君。 48 00:07:35,081 --> 00:07:38,468 夕方 いつもみたいに➡ 49 00:07:38,468 --> 00:07:42,372 おじいちゃんに体 大丈夫? って電話したら➡ 50 00:07:42,372 --> 00:07:47,777 今 来てるって。 51 00:07:47,777 --> 00:07:50,377 そう。 52 00:08:12,368 --> 00:08:17,073 あ… 今 実家に行ってて。 53 00:08:17,073 --> 00:08:19,425 久しぶり。 54 00:08:19,425 --> 00:08:22,395 僕は 大石先生のところに。 55 00:08:22,395 --> 00:08:24,695 そうなんだ。 56 00:08:27,066 --> 00:08:30,436 いろいろ相談してたら 遅くなっちゃって。 57 00:08:30,436 --> 00:08:32,855 相談? 58 00:08:32,855 --> 00:08:39,028 あの 工場の融資とか 親父の入院費の貸し付けとか。 59 00:08:39,028 --> 00:08:42,048 大変なんだ。 60 00:08:42,048 --> 00:08:44,067 送ってくよ。 61 00:08:44,067 --> 00:08:47,737 あっ いい いい。 私 明日 早いから。 62 00:08:47,737 --> 00:08:50,037 じゃあ 送ってくよ。 63 00:09:02,068 --> 00:09:06,723 いいの? 食べなくて。 あぁ。 64 00:09:06,723 --> 00:09:10,023 帰ってから 食べるつもりだったから。 65 00:09:13,229 --> 00:09:16,399 覚えてる? 66 00:09:16,399 --> 00:09:22,739 この車で ドライブ行ったの 健ちゃんも一緒に。 67 00:09:22,739 --> 00:09:26,692 ほら 箱根まで行ったときにさ…。 68 00:09:26,692 --> 00:09:29,746 覚えてる 怒られたから。 69 00:09:29,746 --> 00:09:32,415 ん? 健太郎に。 70 00:09:32,415 --> 00:09:35,802 健ちゃんに? そうだっけ…。 71 00:09:35,802 --> 00:09:41,741 私 藤木さんに ひどいことばっかり言ったから。 72 00:09:41,741 --> 00:09:44,727 「諦めるくらいだったら➡ 73 00:09:44,727 --> 00:09:48,414 弁護士なんか目指さなきゃ よかったのに」とか。 74 00:09:48,414 --> 00:09:53,019 「10年近く頑張ったのに 無駄になったね」とか。 75 00:09:53,019 --> 00:09:59,075 「傾きかけた工場の 親父になるんだ」とか。 76 00:09:59,075 --> 00:10:02,779 ひどいよね。 77 00:10:02,779 --> 00:10:06,079 健太郎が怒るのも無理ない。 78 00:10:23,733 --> 00:10:26,152 おやすみ。 79 00:10:26,152 --> 00:10:28,452 うん。 80 00:10:36,345 --> 00:10:39,145 あっ 手紙…。 81 00:10:41,434 --> 00:10:43,734 あ…。 82 00:10:46,105 --> 00:10:48,705 驚いた。 83 00:10:52,395 --> 00:10:55,832 おめでとう。 84 00:10:55,832 --> 00:10:58,432 ありがとう。 85 00:11:02,705 --> 00:11:06,409 慶子ちゃん。 86 00:11:06,409 --> 00:11:10,813 はい。 87 00:11:10,813 --> 00:11:14,813 幸せになってください。 88 00:11:38,708 --> 00:11:42,094 鹿児島? うん。 89 00:11:42,094 --> 00:11:45,231 この人が宮部さんのこと 覚えてるって。 90 00:11:45,231 --> 00:11:49,035 村田保彦 元海軍一等兵曹。 91 00:11:49,035 --> 00:11:51,904 うん 通信員だったそうだ 鹿屋基地で。 92 00:11:51,904 --> 00:11:54,590 鹿屋基地? 宮部久蔵。 93 00:11:54,590 --> 00:11:58,027 君のおじいさんが 最後にいた場所だろ? 94 00:11:58,027 --> 00:12:02,732 君たちの謎を解く最後の話が 聞けるかもしれない。 95 00:12:02,732 --> 00:12:06,535 ありがとう。 あっ そうだ…。 96 00:12:06,535 --> 00:12:09,438 その人 今 鹿屋で 旅館を経営してて➡ 97 00:12:09,438 --> 00:12:12,742 連絡したら 慶子ちゃんたちに ぜひ会いたいって。 98 00:12:12,742 --> 00:12:15,711 わかった 行ってみる。 99 00:12:15,711 --> 00:12:19,699 僕も一緒に行こうか? え? 100 00:12:19,699 --> 00:12:21,717 君が決めていい。 101 00:12:21,717 --> 00:12:24,717 これは 君のおじいさんのことだから。 102 00:12:31,744 --> 00:12:34,044 わかった。 103 00:12:40,386 --> 00:12:43,406 戻ったら…。 104 00:12:43,406 --> 00:12:50,112 鹿屋から戻ったら あの返事も聞かせてほしい。 105 00:12:50,112 --> 00:12:53,112 君と僕の。 106 00:13:16,038 --> 00:13:20,109 何 考えてんの? 107 00:13:20,109 --> 00:13:22,709 高山さん? 108 00:13:27,366 --> 00:13:30,419 何よ。 109 00:13:30,419 --> 00:13:33,389 返事した? え? 110 00:13:33,389 --> 00:13:38,411 プロポーズ されたんだろ? 111 00:13:38,411 --> 00:13:41,447 してないんだ。 112 00:13:41,447 --> 00:13:43,749 なんで? 113 00:13:43,749 --> 00:13:47,737 いいよ その話は。 114 00:13:47,737 --> 00:13:52,024 藤木さんは? 115 00:13:52,024 --> 00:13:56,379 手紙の返事あった? 116 00:13:56,379 --> 00:13:59,081 まぁ 来ないか。 117 00:13:59,081 --> 00:14:04,403 結婚するかもなんて手紙に 返事なんか。 118 00:14:04,403 --> 00:14:09,425 藤木さんにさ プロポーズされてたら受けてた? 119 00:14:09,425 --> 00:14:12,261 は? あの時…。 120 00:14:12,261 --> 00:14:15,061 藤木さんが田舎に帰る時。 121 00:14:19,118 --> 00:14:21,418 ⦅慶子ちゃん。 122 00:14:33,065 --> 00:14:36,065 帰らないで⦆ 123 00:14:40,756 --> 00:14:46,062 あの時…。 124 00:14:46,062 --> 00:14:51,662 帰らないでって言ったの 藤木さんに。 125 00:14:56,055 --> 00:15:01,410 無理なの わかってるのに。 126 00:15:01,410 --> 00:15:05,397 姉ちゃんさ 本当に高山さんのこと…。 127 00:15:05,397 --> 00:15:09,034 ねぇ 知ってる? 鹿屋に海軍基地があって➡ 128 00:15:09,034 --> 00:15:11,754 そこ 今 自衛隊の基地に なってるんだって。 129 00:15:11,754 --> 00:15:13,706 海軍資料館もあるから➡ 130 00:15:13,706 --> 00:15:16,242 見といたほうがいいって 高山さんが。 131 00:15:16,242 --> 00:15:20,129 早く着きそうだし 行ってみよう。 132 00:15:20,129 --> 00:15:23,129 焼けるから中入るよ。 133 00:15:40,699 --> 00:15:46,122 あそこに昔 おじいちゃんがいたんだね。 134 00:15:46,122 --> 00:15:50,722 おじいちゃんも この景色を見てたのかな。 135 00:16:17,736 --> 00:16:22,057 初めて見たね 零戦。 136 00:16:22,057 --> 00:16:25,778 うん。 137 00:16:25,778 --> 00:16:29,378 思ってたより小さい。 138 00:16:40,793 --> 00:16:45,093 おじいちゃんは これに乗ってたんだね。 139 00:16:48,067 --> 00:16:52,238 いや ちょっと待って。 140 00:16:52,238 --> 00:16:57,126 「五二型」って書いてある。 141 00:16:57,126 --> 00:17:04,083 たしか おじいちゃんが 最後に乗ってたのって…。 142 00:17:04,083 --> 00:17:11,690 じゃあ これよりも古い零戦で おじいちゃんは…。 143 00:17:11,690 --> 00:17:38,417 ♬~ 144 00:17:38,417 --> 00:17:41,420 ねぇ。 145 00:17:41,420 --> 00:17:45,057 これ…。 146 00:17:45,057 --> 00:17:50,079 ⦅その遺書が特攻隊員の本心だと 思っているのか。 147 00:17:50,079 --> 00:17:52,414 喜んで死ぬと 書いてあるからといって➡ 148 00:17:52,414 --> 00:17:57,036 本当に喜んで死んだと 思っているのか! 149 00:17:57,036 --> 00:18:02,791 乱れる心を抑えに抑え 残された わずかな時間で➡ 150 00:18:02,791 --> 00:18:08,091 家族に向けて書いた文章の 心のうちを読み取れんのか!⦆ 151 00:18:13,068 --> 00:18:19,074 「父 母上様 私のために喜んでください。 152 00:18:19,074 --> 00:18:22,361 私は微笑んで征きます。 153 00:18:22,361 --> 00:18:26,582 出撃する嬉しさで一パイです」。 154 00:18:26,582 --> 00:18:32,371 「父は征く。 チエちゃんが 泣いたら 御守りしなさい。 155 00:18:32,371 --> 00:18:40,229 お兄ちゃんが泣きたい時は 母の胸に行きなさい」。 156 00:18:40,229 --> 00:18:45,529 「私たちは 身を結ばずに終はります」。 157 00:18:48,020 --> 00:18:52,074 「あなたは 勇気を持って 私を忘れ➡ 158 00:18:52,074 --> 00:18:58,397 あなたが正しいと信じる あなたの道を進んでください」。 159 00:18:58,397 --> 00:19:03,802 「婚約をした男子として。 160 00:19:03,802 --> 00:19:05,704 散っていく男子として。 161 00:19:05,704 --> 00:19:13,245 ただ あなたの幸せを思ふ以外 何もありません」。 162 00:19:13,245 --> 00:19:18,050 「今 見たい絵 下村観山 『白狐』。 163 00:19:18,050 --> 00:19:20,903 ダビンチ 『最後の晩餐』。 164 00:19:20,903 --> 00:19:24,723 フリードリヒ 『氷の海』。 165 00:19:24,723 --> 00:19:30,612 今 読みたい本 『道程』 『暖流』 『智恵子抄』。 166 00:19:30,612 --> 00:19:38,053 今 会いたい人 あなた あなた あなた」。 167 00:19:38,053 --> 00:20:13,053 ♬~ 168 00:20:32,458 --> 00:20:34,910 本日は お世話になります。 169 00:20:34,910 --> 00:20:39,581 すみません お話を お聞きするだけのはずが宿泊まで。 170 00:20:39,581 --> 00:20:43,535 いえ 嬉しいんですよ。 171 00:20:43,535 --> 00:20:50,359 宮部さんのお孫さんが わざわざ 会いにきてくださるなんて。 172 00:20:50,359 --> 00:20:54,213 あ さぁ どうぞ お荷物。 173 00:20:54,213 --> 00:20:56,365 すみません。 すみません。 174 00:20:56,365 --> 00:21:00,068 私が 鹿屋基地に行ったのは➡ 175 00:21:00,068 --> 00:21:02,604 昭和19年ですから➡ 176 00:21:02,604 --> 00:21:09,604 ああ もう 60年も前になるんですね。 177 00:21:23,041 --> 00:21:25,911 当時 私は 通信員でしてね➡ 178 00:21:25,911 --> 00:21:29,481 その頃になると 主な任務は➡ 179 00:21:29,481 --> 00:21:32,284 特攻機の電信を受けることでした。 180 00:21:32,284 --> 00:21:37,284 体当たりしたかどうかの 戦果確認です。 181 00:21:40,526 --> 00:21:44,396 当時の無線機は雑音ばかりで 使いものにならないので➡ 182 00:21:44,396 --> 00:21:48,233 頼りは トン・ツーの打電。 183 00:21:48,233 --> 00:21:52,621 つまり モールス信号です。 184 00:21:52,621 --> 00:21:58,360 トンの連打が 敵機を発見した 「敵戦闘機見ユ」。 185 00:21:58,360 --> 00:22:04,466 ツーは 敵艦へ 「我タダイマ突入ス」です。 186 00:22:04,466 --> 00:22:10,966 それを搭乗員は 体当たりの瞬間まで発し続けます。 187 00:22:19,698 --> 00:22:23,402 その音が聴こえてから 消えるまでの時間を計り➡ 188 00:22:23,402 --> 00:22:26,872 敵艦に体当たりしたか それとも➡ 189 00:22:26,872 --> 00:22:31,472 対空砲火で撃ち墜とされたかを 判断しなければなりません。 190 00:22:35,948 --> 00:22:37,900 搭乗員が押し続けたって…。 191 00:22:37,900 --> 00:22:40,352 特攻隊員が その信号を発してたんですか? 192 00:22:40,352 --> 00:22:49,912 はい。 今まさに特攻している 本人が発信していたのです。 193 00:22:49,912 --> 00:22:52,848 もちろん 本来ならそれは➡ 194 00:22:52,848 --> 00:22:57,069 戦果を確認する飛行機が すべき仕事です。 195 00:22:57,069 --> 00:23:01,023 でも その頃はもう➡ 196 00:23:01,023 --> 00:23:04,860 戦果確認機をつける 余裕などなかった。 197 00:23:04,860 --> 00:23:11,900 だから 特攻隊員は 死の寸前まで➡ 198 00:23:11,900 --> 00:23:17,923 すさまじい対空砲火のなか 自分の死ぬ合図を➡ 199 00:23:17,923 --> 00:23:21,710 自分でしなければ ならなかったのです。 200 00:23:21,710 --> 00:23:25,414 こんな非情なことは ありません。 201 00:23:25,414 --> 00:23:28,350 お母さん! 202 00:23:28,350 --> 00:23:33,055 そして このツーが消えたときこそ➡ 203 00:23:33,055 --> 00:23:37,055 特攻隊員の命が消えたときです。 204 00:23:55,827 --> 00:23:57,827 よくやった! 205 00:24:03,986 --> 00:24:08,586 あまりに残酷な命の電信です。 206 00:24:25,207 --> 00:24:31,613 似たような音を聴くと 今でも背筋が凍ります。 207 00:24:31,613 --> 00:24:38,770 だから 私は 音楽を聴くのが苦手です。 208 00:24:38,770 --> 00:24:43,542 たくさんの楽器のなかに 時折➡ 209 00:24:43,542 --> 00:24:47,245 あの音が聴こえるのです。 210 00:24:47,245 --> 00:24:51,767 それを聴いたときには もう…。 211 00:24:51,767 --> 00:24:56,767 動悸が激しくなって 立っていられなくなります。 212 00:25:00,125 --> 00:25:03,125 すみません。 213 00:25:06,898 --> 00:25:10,498 宮部さんの話でしたよね。 214 00:25:18,427 --> 00:25:25,050 宮部さんは よく通信室に来て 攻撃隊の通信を聴いていました。 215 00:25:25,050 --> 00:25:28,420 それも宮部さんの任務でしたから。 216 00:25:28,420 --> 00:25:32,374 じゃあ 祖父には 他にも任務があったんですか? 217 00:25:32,374 --> 00:25:35,711 はい 特攻機の直掩です。 218 00:25:35,711 --> 00:25:39,364 特攻機を守りながら 飛ぶ任務ですよね。 219 00:25:39,364 --> 00:25:43,068 死と隣り合わせの任務です。 220 00:25:43,068 --> 00:25:49,408 そう考えれば 直掩機も 特攻機のようなものですね。 221 00:25:49,408 --> 00:25:53,278 違う。 222 00:25:53,278 --> 00:25:56,064 私たちには 九死に一生ということがある。 223 00:25:56,064 --> 00:26:00,552 どんなに絶望的でも 生きるために戦うことができる。 224 00:26:00,552 --> 00:26:07,152 でも 特攻隊は 十死零生です。 225 00:26:10,295 --> 00:26:16,595 つまり 万が一にも 生還の可能性はない。 226 00:26:18,870 --> 00:26:25,076 はい。 特攻に行けば 必ず死ぬということです。 227 00:26:25,076 --> 00:26:27,212 だったら どうして…。 228 00:26:27,212 --> 00:26:34,569 ⦅やつの目は 死を覚悟した目ではなかった⦆ 229 00:26:34,569 --> 00:26:38,473 やっぱり 不時着しようとしてたのかな。 230 00:26:38,473 --> 00:26:40,892 不時着? 宮部さんが? 231 00:26:40,892 --> 00:26:45,864 はい。 祖父は 不時着を狙って特攻に行った。 232 00:26:45,864 --> 00:26:49,164 僕は その可能性を考えてます。 233 00:28:45,150 --> 00:28:50,906 昭和20年の 夏が近づく頃になると➡ 234 00:28:50,906 --> 00:28:57,862 特攻の直掩機で戻ってくるのは 宮部さんの零戦だけ。 235 00:28:57,862 --> 00:29:02,000 そういう日が多くなりました。 236 00:29:02,000 --> 00:29:05,800 そう あの日も…。 237 00:29:11,142 --> 00:29:13,361 村田。 はい。 238 00:29:13,361 --> 00:29:18,300 ここに座るか。 239 00:29:18,300 --> 00:29:22,400 はい 座らせていただきます。 240 00:29:27,425 --> 00:29:30,862 飲んでらっしゃるのですか。 241 00:29:30,862 --> 00:29:38,303 あ~ 杯はないから そのままいけ。 242 00:29:38,303 --> 00:29:43,303 とんでもない もったいないです。 遠慮いたします。 243 00:30:15,757 --> 00:30:17,757 頂戴いたします。 244 00:30:20,912 --> 00:30:25,100 たった1年足らずの訓練で➡ 245 00:30:25,100 --> 00:30:31,900 あんな数の敵に襲われて 逃げ切れるはずがない。 246 00:30:36,895 --> 00:30:44,219 いや あんな重い爆弾を ぶら下げていては 俺だって。 247 00:30:44,219 --> 00:30:46,404 あの…。 248 00:30:46,404 --> 00:30:51,810 そんな実態を 司令部は知っていて 知らないふりをしている。 249 00:30:51,810 --> 00:30:57,810 宮部少尉 どうされたのですか? 250 00:31:06,608 --> 00:31:08,608 今日は 6機だ。 251 00:31:12,747 --> 00:31:17,047 6機の中攻が 俺の目の前で すべて墜とされた。 252 00:31:20,188 --> 00:31:22,907 はい。 253 00:31:22,907 --> 00:31:26,707 そのなかに 筑波の教え子がいた。 254 00:31:34,119 --> 00:31:36,419 宮部教官が 援護してくださるなら安心です! 255 00:31:42,060 --> 00:31:44,245 彼は そう言ったんだ。 256 00:31:44,245 --> 00:31:46,698 そう言ったのに…。 257 00:31:46,698 --> 00:31:48,767 宮部少尉。 258 00:31:48,767 --> 00:31:52,303 俺の目の前で 火を吹いて墜ちていった! 259 00:31:52,303 --> 00:31:55,373 俺に敬礼しながら墜ちていった。 260 00:31:55,373 --> 00:31:58,026 みんなだ! みんな 俺に敬礼しながら…。 261 00:31:58,026 --> 00:32:02,063 それなのに 俺は…。 262 00:32:02,063 --> 00:32:04,732 宮部少尉…。 俺は! 263 00:32:04,732 --> 00:32:08,369 1機も守れなかった。 264 00:32:08,369 --> 00:32:11,206 ただの1機もだ! 265 00:32:11,206 --> 00:32:14,275 しかたがないです。 しかたがないと思います。 266 00:32:14,275 --> 00:32:17,896 しかたがないだと? 267 00:32:17,896 --> 00:32:23,618 何人死んだと思ってる? ん? 268 00:32:23,618 --> 00:32:26,218 何人死んだと思ってる! 269 00:32:42,687 --> 00:32:46,724 特攻機を守る。 270 00:32:46,724 --> 00:32:48,726 それが 俺の任務だ。 271 00:32:48,726 --> 00:32:51,729 たとえ自分が墜とされてもだ。 272 00:32:51,729 --> 00:32:58,029 しかし 俺は彼らを見殺しにした。 273 00:33:02,207 --> 00:33:07,228 俺の命は 彼らの犠牲の上にある。 274 00:33:07,228 --> 00:33:09,364 それは違います! 275 00:33:09,364 --> 00:33:13,117 違うと思います! 276 00:33:13,117 --> 00:33:15,117 違わない。 277 00:33:17,956 --> 00:33:24,056 彼らが死ぬことで 俺は生き延びてる。 278 00:33:51,206 --> 00:33:54,242 不時着じゃないのかも。 279 00:33:54,242 --> 00:34:00,698 祖父は 自分より若い人たちが どんどん死んでいくのを➡ 280 00:34:00,698 --> 00:34:03,301 目の前で見てたんですよね。 281 00:34:03,301 --> 00:34:10,708 だから 自分1人が 生き延びることはできない。 282 00:34:10,708 --> 00:34:15,780 えっ? そう思ったんじゃないかな。 283 00:34:15,780 --> 00:34:18,580 それで 特攻に? 284 00:34:23,871 --> 00:34:27,208 そんなはずない。 285 00:34:27,208 --> 00:34:30,912 だったら おじいちゃんの 妻と娘は どうなるの? 286 00:34:30,912 --> 00:34:33,364 たとえ 臆病者って言われたって➡ 287 00:34:33,364 --> 00:34:36,200 たとえ どんなに殴られたって➡ 288 00:34:36,200 --> 00:34:38,736 それでも 特攻を拒否したのよ。 289 00:34:38,736 --> 00:34:42,240 答えろ! 290 00:34:42,240 --> 00:34:46,411 それくらいおじいちゃんは 妻子を愛してたの。 291 00:34:46,411 --> 00:34:49,063 どんなことをしたって 生きて帰ろうとしたの。 292 00:34:49,063 --> 00:34:54,285 なのに 目の前の 残酷さに耐えられなくなって➡ 293 00:34:54,285 --> 00:34:58,085 それで 特攻に行ったって言うの? 294 00:35:04,862 --> 00:35:07,699 おじいちゃんが もし特攻に行ったんなら…。 295 00:35:07,699 --> 00:35:12,120 行ったんだよ それは間違いない。 だとしても➡ 296 00:35:12,120 --> 00:35:14,420 きっと 死ぬためじゃない。 297 00:35:17,375 --> 00:35:22,213 きっと 生きるために。 298 00:35:22,213 --> 00:35:27,313 生きるために特攻に行った? 意味わかんないよ。 299 00:35:41,799 --> 00:35:46,099 宮部さんが特攻に行った日の 話をしましょう。 300 00:37:44,088 --> 00:37:47,859 宮部さんが特攻に行った日の 話をしましょう。 301 00:37:47,859 --> 00:37:52,413 祖父が特攻へ行ったの 見たんですか? 302 00:37:52,413 --> 00:37:54,382 ええ。 303 00:37:54,382 --> 00:37:58,382 しかし それは あまりに突然でした。 304 00:38:03,458 --> 00:38:05,743 諸君たちの健闘を祈る! 305 00:38:05,743 --> 00:38:09,197 当日か 前の晩遅くか➡ 306 00:38:09,197 --> 00:38:12,099 とにかく急に 決まったのでしょう。 307 00:38:12,099 --> 00:38:15,699 私は その日になって知り 驚きました。 308 00:38:17,722 --> 00:38:22,410 宮部さんに 何でもいい 何か声をかけなければいけない➡ 309 00:38:22,410 --> 00:38:24,378 そう思って…。 310 00:38:24,378 --> 00:38:26,378 宮部教官! 311 00:38:30,801 --> 00:38:35,101 でも 何と声をかけてよいか…。 312 00:39:01,415 --> 00:39:07,015 その時 私は 奇妙な光景を目にしました。 313 00:39:24,739 --> 00:39:28,893 お願いがあります。 はい。 314 00:39:28,893 --> 00:39:33,064 飛行機を換わってくれませんか? 315 00:39:33,064 --> 00:39:35,066 私の零戦と。 316 00:39:35,066 --> 00:39:40,071 ある予備士官に なぜか そう頼んでいたのです。 317 00:39:40,071 --> 00:39:43,541 その予備士官は 驚いて断っていました。 318 00:39:43,541 --> 00:39:50,731 当然です。 宮部さんが 乗る予定の零戦は五二型で➡ 319 00:39:50,731 --> 00:39:55,403 予備士官の零戦は旧式の二一型。 320 00:39:55,403 --> 00:39:57,521 性能は比べ物になりません。 321 00:39:57,521 --> 00:40:03,077 宮部教官は 私より はるかに上手です。 322 00:40:03,077 --> 00:40:08,733 腕のいい搭乗員が いい飛行機に乗るべきです。 323 00:40:08,733 --> 00:40:14,438 あの五二型は 宮部教官が乗るべきです。 324 00:40:14,438 --> 00:40:17,038 申し訳ありません。 325 00:40:26,117 --> 00:40:28,117 わかりました。 326 00:40:31,706 --> 00:40:35,209 予備士官の当然の言葉に➡ 327 00:40:35,209 --> 00:40:40,209 宮部さんは 自分の零戦に戻りました。 328 00:40:57,448 --> 00:41:01,948 村田! あそこで見送るぞ。 329 00:41:10,394 --> 00:41:14,694 ところが 宮部さんは また…。 330 00:41:25,693 --> 00:41:27,695 やはり頼みます。 331 00:41:27,695 --> 00:41:31,732 自分の零戦と換わってください。 332 00:41:31,732 --> 00:41:35,236 しかし 宮部教官を古い零戦で 行かせるわけには…。 333 00:41:35,236 --> 00:41:42,810 自分の腕は 一流です。 334 00:41:42,810 --> 00:41:48,582 だから 二一型に乗っても 十分やっていけます。 335 00:41:48,582 --> 00:41:50,534 お願いします。 336 00:41:50,534 --> 00:41:53,371 なぜ祖父は そこまでして➡ 337 00:41:53,371 --> 00:41:56,090 飛行機を交換しようと したんでしょうか? 338 00:41:56,090 --> 00:42:03,047 さあ… もしかしたら 意地だったんでしょうか? 339 00:42:03,047 --> 00:42:05,733 意地。 340 00:42:05,733 --> 00:42:09,537 自分のような 熟練した搭乗員にまで➡ 341 00:42:09,537 --> 00:42:13,774 特攻を命じた 日本海軍に対する➡ 342 00:42:13,774 --> 00:42:16,574 怒りのようなもの だったんでしょうか。 343 00:42:20,064 --> 00:42:24,435 考えすぎですね。 344 00:42:24,435 --> 00:42:30,241 ただ 懐かしい二一型で 行きたかった。 345 00:42:30,241 --> 00:42:34,395 そういうことだったのかも しれません。 346 00:42:34,395 --> 00:42:39,100 結局 祖父は その二一型で 行ったんですか? 347 00:42:39,100 --> 00:42:41,100 はい。 348 00:42:44,855 --> 00:42:48,426 とうとう 予備士官のほうが折れて➡ 349 00:42:48,426 --> 00:42:55,549 零戦の交換は成立し ともに飛び立ちました。 350 00:42:55,549 --> 00:43:01,349 そのまま 戻らなかったんですね? 祖父は。 351 00:43:04,892 --> 00:43:12,600 はい それは 私が電信で確認しました。 352 00:43:12,600 --> 00:43:15,400 命の電信で。 353 00:43:17,571 --> 00:43:23,210 宮部さんは敵艦に体当たりした。 354 00:43:23,210 --> 00:43:29,083 そういう音でした。 355 00:43:29,083 --> 00:43:34,021 体当たりした? はい。 356 00:43:34,021 --> 00:43:38,742 撃ち墜とされた可能性は? 357 00:43:38,742 --> 00:43:41,542 不時着した可能性は? ありません! 358 00:43:47,585 --> 00:43:50,037 確かに あの頃➡ 359 00:43:50,037 --> 00:43:55,793 特攻を成功させるのは 至難の技になっておりました。 360 00:43:55,793 --> 00:44:02,093 でも だからこそ 宮部さんの腕なら…。 361 00:44:06,403 --> 00:44:10,703 じゃあ やっぱり…。 362 00:44:13,444 --> 00:44:17,565 ここに書いてるとおり➡ 363 00:44:17,565 --> 00:44:24,238 おじいちゃんは 特攻で死んだ。 364 00:44:24,238 --> 00:44:30,895 それは 確かなんでしょうか? 365 00:44:30,895 --> 00:44:37,395 はい。 この件に関しては 強く心に残ってますから。 366 00:44:39,570 --> 00:44:45,693 あとに起きた出来事のせいで どんな記憶よりも強く。 367 00:44:45,693 --> 00:44:50,247 あとに起きた出来事? 368 00:44:50,247 --> 00:44:55,069 実は この話には➡ 369 00:44:55,069 --> 00:44:59,990 あまり愉快でない 続きがあるのです。 370 00:44:59,990 --> 00:45:02,790 何でしょう? 371 00:45:05,379 --> 00:45:08,979 言ってください 何でも。 372 00:48:09,997 --> 00:48:17,037 この話には あまり愉快でない 続きがあるのです。 373 00:48:17,037 --> 00:48:23,377 あの時 特攻した零戦は 6機でしたが➡ 374 00:48:23,377 --> 00:48:31,835 1機だけ 発動機のトラブルで 喜界島に不時着しているのです。 375 00:48:31,835 --> 00:48:35,038 それって…。 もしかして。 376 00:48:35,038 --> 00:48:41,545 宮部さんの乗るはずだった 五二型です。 377 00:48:41,545 --> 00:48:44,331 そんな…。 378 00:48:44,331 --> 00:48:48,602 宮部さんが飛行機を 換えてくれって言わなければ➡ 379 00:48:48,602 --> 00:48:52,702 助かっていたのは 宮部さんだったんです。 380 00:48:55,359 --> 00:48:59,813 ひどい。 381 00:48:59,813 --> 00:49:03,813 なんて 残酷な運命。 382 00:49:05,669 --> 00:49:10,741 いや 違う。 383 00:49:10,741 --> 00:49:13,041 おじいちゃんなら…。 384 00:49:15,329 --> 00:49:18,265 発動機に異常加熱を 感じるんですが。 385 00:49:18,265 --> 00:49:20,551 音にも違和感があります。 386 00:49:20,551 --> 00:49:23,020 不時着するような 不具合があったら➡ 387 00:49:23,020 --> 00:49:26,206 おじいちゃんなら 音でわかったはずだよ。 388 00:49:26,206 --> 00:49:32,529 確かに 宮部さんなら そうかもしれません。 389 00:49:32,529 --> 00:49:35,329 じゃあ どうして祖父は…。 390 00:49:37,935 --> 00:49:39,853 なんで おじいちゃんは➡ 391 00:49:39,853 --> 00:49:42,406 不時着できるって わかってて その飛行機を➡ 392 00:49:42,406 --> 00:49:44,906 その人に渡しちゃったの? 393 00:49:47,377 --> 00:49:49,377 健太郎。 394 00:49:53,000 --> 00:49:56,370 村田さん。 395 00:49:56,370 --> 00:50:00,040 祖父が乗るはずだった 零戦で不時着した➡ 396 00:50:00,040 --> 00:50:02,492 その人の名前 覚えてますか? 397 00:50:02,492 --> 00:50:05,979 もちろんです。 398 00:50:05,979 --> 00:50:09,079 教えてください。 399 00:50:12,603 --> 00:50:16,039 大石…。 400 00:50:16,039 --> 00:50:19,339 大石賢一郎少尉です。 401 00:50:36,026 --> 00:50:47,921 ♬~ 402 00:50:47,921 --> 00:50:52,021 俺たち 今日は…。 403 00:51:01,518 --> 00:51:07,318 いつか いつか 話さなきゃいかんと思っていた。 404 00:51:25,058 --> 00:51:31,698 松乃は 子供たちに言う 必要はないと言っていた。 405 00:51:31,698 --> 00:51:36,703 しかし 私は…。 406 00:51:36,703 --> 00:51:45,379 健太郎 お前は私を 立派だと言ってくれたよな。 407 00:51:45,379 --> 00:51:48,165 だが とんでもない。 408 00:51:48,165 --> 00:51:52,903 ずっと逃げていた。 409 00:51:52,903 --> 00:52:00,703 どうしても言えなかったんだ 私も特攻隊員だったと。 410 00:52:03,680 --> 00:52:10,253 知ってたんだね 宮部久蔵さんのこと。 411 00:52:10,253 --> 00:52:15,053 最初に会ったのは 筑波の航空隊? 412 00:52:18,412 --> 00:52:24,012 宮部教官のもとで 訓練を受けていた。 413 00:52:26,453 --> 00:52:32,753 特攻隊員になるための訓練 死ぬための訓練だ。 414 00:52:37,497 --> 00:52:43,387 誰もが死ぬ覚悟をしていた。 415 00:52:43,387 --> 00:52:48,408 誰もが 自分の死を 意味あるものにしたい。 416 00:52:48,408 --> 00:52:51,408 懸命に そう思っていた。 417 00:53:06,827 --> 00:53:10,680 だが 宮部さんは違っていた。 418 00:53:10,680 --> 00:53:16,086 宮部さんは 私たちを教えることに➡ 419 00:53:16,086 --> 00:53:18,686 矛盾を感じていた。 420 00:53:21,708 --> 00:53:26,008 そして 訓練は ますます過酷になった。 421 00:53:33,920 --> 00:53:37,020 その訓練で 仲間が死んだ。 422 00:53:39,509 --> 00:53:43,663 死んだ予備士官は 精神が足らなかった! 423 00:53:43,663 --> 00:53:49,703 そのようなやつは 軍人の風上にもおけない! 424 00:53:49,703 --> 00:53:52,622 中尉。 425 00:53:52,622 --> 00:54:00,914 亡くなった六藤少尉は 立派な男でした。 426 00:54:00,914 --> 00:54:04,014 軍人の風上にもおけない 男ではありません。 427 00:54:07,087 --> 00:54:09,087 貴様! 428 00:54:11,992 --> 00:54:14,094 特務士官の分際で生意気な! 429 00:54:14,094 --> 00:54:17,394 ああっ… うあっ! 430 00:54:19,416 --> 00:54:26,016 (叩く音) 431 00:54:39,653 --> 00:54:43,874 訓練中に敵機に襲われたとき➡ 432 00:54:43,874 --> 00:54:51,198 私の訓練に気をとられ 宮部さんは気づかなかった。 433 00:54:51,198 --> 00:54:54,401 私は しぜんに体が動いた。 434 00:54:54,401 --> 00:54:56,701 敵機に突っ込んでいった。 435 00:55:05,212 --> 00:55:08,198 君は なんという バカなことをしたんですか! 436 00:55:08,198 --> 00:55:15,255 宮部教官は 日本に必要な人です。 437 00:55:15,255 --> 00:55:20,755 絶対に死んではいけない人です。 438 00:55:25,415 --> 00:55:30,215 入院した私を 宮部さんが見舞ってくれた。 439 00:55:40,030 --> 00:55:43,950 1日も早く 立派な搭乗員として➡ 440 00:55:43,950 --> 00:55:46,870 活躍したいと 念願しております。 441 00:55:46,870 --> 00:55:49,470 この身は 桜花と散って…。 442 00:55:51,541 --> 00:55:56,179 わざわざ ありがとうございます。 443 00:55:56,179 --> 00:56:01,751 あ… ケガのほうは このとおり…。 444 00:56:01,751 --> 00:56:04,851 もう いつでも飛び立てます。 445 00:56:14,698 --> 00:56:17,998 あ すみません 自分の一式です。 すぐによけます。 446 00:56:31,014 --> 00:56:33,814 今年の冬までは着られそうです。 447 00:56:40,240 --> 00:56:42,340 いえ…。 448 00:56:48,198 --> 00:56:55,055 着る機会は もうないですね。 449 00:56:55,055 --> 00:57:34,327 ♬~ 450 00:57:34,327 --> 00:57:39,032 退院したら これを着てください。 451 00:57:39,032 --> 00:57:42,632 いえ… そんな困ります。 452 00:57:46,222 --> 00:57:49,822 宮部教官… 宮部教官! 453 00:57:57,834 --> 00:58:02,134 まさか それが おじいちゃんだったなんて…。 454 01:01:18,084 --> 01:01:21,538 退院すると宮部さんは すでに➡ 455 01:01:21,538 --> 01:01:25,575 鹿屋に転属したあとだったよ。 456 01:01:25,575 --> 01:01:30,880 数か月後 私も鹿屋へ行くことになった。 457 01:01:30,880 --> 01:01:34,880 特攻命令が下りたからだ。 458 01:01:39,405 --> 01:01:44,905 その時 宮部さんと再会した。 459 01:01:51,584 --> 01:01:54,084 ご苦労さまです。 460 01:02:16,442 --> 01:02:19,442 まるで別人だった。 461 01:02:38,698 --> 01:02:42,785 特攻を命じられたとき 怖かった? 462 01:02:42,785 --> 01:02:48,885 動揺しなかったと言えば嘘になる。 463 01:02:52,061 --> 01:02:56,249 当然よ。 理不尽よ。 464 01:02:56,249 --> 01:03:04,190 うん そう思ったが 翌日には死を受け入れていた。 465 01:03:04,190 --> 01:03:09,829 受け入れていた? どうして? どうやって? 466 01:03:09,829 --> 01:03:17,429 苦しみ抜いて 深い思考の末に辿り着いた。 467 01:03:21,407 --> 01:03:25,878 あの時は そんなふうに思っていたな。 468 01:03:25,878 --> 01:03:35,521 今 思えば 狂気の時代の 狂った思考だったかもしれん。 469 01:03:35,521 --> 01:03:39,726 しかし これだけは言える。 470 01:03:39,726 --> 01:03:45,064 私たちは 熱狂的に 死を受け入れたんじゃない。 471 01:03:45,064 --> 01:03:49,769 喜んで特攻に行ったんじゃない。 472 01:03:49,769 --> 01:03:55,869 あの時ほど 家族を思ったことはなかった。 473 01:03:59,796 --> 01:04:04,767 あの時ほど 自分亡きあとの 愛する者の行く末➡ 474 01:04:04,767 --> 01:04:08,767 日本の未来を 考えたことはなかった。 475 01:04:13,309 --> 01:04:18,309 出撃当日の 朝のことを忘れたことはない。 476 01:04:21,250 --> 01:04:28,050 しかし あの時のことを どう話せばいいのか…。 477 01:04:45,858 --> 01:04:48,895 特攻隊員の自分の隣に➡ 478 01:04:48,895 --> 01:04:53,332 同じ特攻隊員として 宮部さんがいた。 479 01:04:53,332 --> 01:04:57,437 海軍は この人まで殺す気なのか。 480 01:04:57,437 --> 01:05:01,037 その現実に 私は動揺した。 481 01:05:03,076 --> 01:05:05,862 諸君たちの健闘を祈る! 482 01:05:05,862 --> 01:05:28,785 ♬~ 483 01:05:28,785 --> 01:05:31,385 宮部少尉! 484 01:05:49,055 --> 01:05:51,555 宮部教官。 485 01:05:54,911 --> 01:05:58,798 宮部教官。 486 01:05:58,798 --> 01:06:02,798 教官と一緒に死ねるなら本望です。 487 01:06:18,401 --> 01:06:21,571 その手は力強かった。 488 01:06:21,571 --> 01:06:26,576 これから死に行く人間とは 思えなかった。 489 01:06:26,576 --> 01:06:32,365 そうだ 私たちは もう死ぬのだ。 490 01:06:32,365 --> 01:06:35,067 あの! 491 01:06:35,067 --> 01:06:41,123 そんなときに なぜ あんなことを言ったのか…。 492 01:06:41,123 --> 01:06:47,923 宮部教官からお借りした外套を まだ返していません。 493 01:07:01,928 --> 01:07:04,428 夏には不要です。 494 01:07:17,109 --> 01:07:19,609 では 行きましょうか。 495 01:08:08,461 --> 01:08:10,561 大石少尉。 496 01:08:18,371 --> 01:08:22,408 大石少尉 お願いがあります。 497 01:08:22,408 --> 01:08:26,112 はい。 498 01:08:26,112 --> 01:08:32,712 飛行機を換わってくれませんか? 私の零戦と。 499 01:08:35,221 --> 01:08:37,821 はっ? お願いします。 500 01:08:40,743 --> 01:08:47,533 あの… 自分の二一型は 旧式の零戦です。 501 01:08:47,533 --> 01:08:51,754 はい。 ラバウルにいたときに 乗っていました。 502 01:08:51,754 --> 01:08:54,357 宮部教官の零戦は➡ 503 01:08:54,357 --> 01:08:58,911 これより馬力があり速度も出ます。 504 01:08:58,911 --> 01:09:03,199 お願いします。 505 01:09:03,199 --> 01:09:08,070 懐かしい零戦で行きたいのです。 506 01:09:08,070 --> 01:09:13,626 宮部教官は 私より はるかに上手です。 507 01:09:13,626 --> 01:09:17,426 腕のいい搭乗員が いい飛行機に乗るべきです。 508 01:09:20,616 --> 01:09:26,116 あの五二型は 宮部教官が乗るべきです。 509 01:09:31,877 --> 01:09:35,677 どうしても 換わってはくれませんか? 510 01:09:39,568 --> 01:09:43,372 我が師である宮部教官に…。 511 01:09:43,372 --> 01:09:49,295 いえ 我が師であるからこそ 譲れません。 512 01:09:49,295 --> 01:09:51,895 申し訳ありません。 513 01:10:03,726 --> 01:10:06,226 わかりました。 514 01:10:11,967 --> 01:10:18,767 宮部さんの最後の願いを 聞けなかったことに胸が痛んだ。 515 01:11:14,864 --> 01:11:19,752 大石君 やはり頼みます。 516 01:11:19,752 --> 01:11:23,856 自分の零戦と換わってください。 517 01:11:23,856 --> 01:11:29,962 しかし 宮部教官を 古い零戦で行かせるわけには…。 518 01:11:29,962 --> 01:11:36,062 自分の腕は 一流です。 519 01:11:38,687 --> 01:11:42,958 だから 二一型に乗っても 十分やっていけます。 520 01:11:42,958 --> 01:11:45,958 お願いします。 521 01:11:53,469 --> 01:11:56,269 困ります。 522 01:12:00,242 --> 01:12:03,195 ラバウルで乗っていた➡ 523 01:12:03,195 --> 01:12:11,604 いや 真珠湾攻撃で 乗っていた零戦で➡ 524 01:12:11,604 --> 01:12:14,904 自分は行きたいのです! 525 01:12:28,387 --> 01:12:30,687 わかりました。 526 01:12:38,531 --> 01:12:41,531 ありがとうございます。 527 01:13:23,525 --> 01:14:04,633 ♬~ 528 01:14:04,633 --> 01:14:09,133 私は 宮部さんの零戦に乗って飛んだ。 529 01:14:11,106 --> 01:14:16,106 隣に 宮部さんが乗った 私の零戦があった。 530 01:14:22,384 --> 01:14:27,684 しばらく飛ぶと 涙が溢れた。 531 01:14:30,426 --> 01:14:33,579 私が死ぬのはいい。 532 01:14:33,579 --> 01:14:37,583 だが 宮部さんは助かってほしい。 533 01:14:37,583 --> 01:14:43,739 自分が死ぬことで この人を助けられないだろうか。 534 01:14:43,739 --> 01:14:46,525 自分の命と引き換えに➡ 535 01:14:46,525 --> 01:14:50,929 未来の日本に宮部さんを残したい。 536 01:14:50,929 --> 01:14:54,729 そんな できもしないことを 本気で思った。 537 01:15:04,610 --> 01:15:09,710 出撃してから 1時間も経ってなかったはずだ。 538 01:15:15,187 --> 01:15:18,687 突然 発動機から…。 539 01:15:33,622 --> 01:15:36,622 私だけが取り残された。 540 01:15:39,578 --> 01:15:41,630 宮部さん? 541 01:15:41,630 --> 01:15:45,617 宮部さん! 宮部さん! 542 01:15:45,617 --> 01:15:51,117 もう飛べないと思ったとき 私は そう叫んでいた。 543 01:15:57,146 --> 01:16:00,099 私の零戦は限界だった。 544 01:16:00,099 --> 01:16:03,099 鹿屋までは戻れない。 545 01:16:06,755 --> 01:16:11,355 そこから不時着できるのは 喜界島だけだった。 546 01:16:13,362 --> 01:16:15,898 西に五十浬! 547 01:16:15,898 --> 01:16:19,785 それまで発動機が もつかどうか わからない。 548 01:16:19,785 --> 01:16:24,039 途中で 敵戦闘機に出くわしても 死ぬ。 549 01:16:24,039 --> 01:16:29,211 不時着のためには 機体を軽くしなければならない。 550 01:16:29,211 --> 01:16:31,547 私は海に爆弾を投下しようとした。 551 01:16:31,547 --> 01:16:33,547 投下! 552 01:16:35,717 --> 01:16:40,517 しかし 爆弾は投下できなかった。 553 01:16:43,542 --> 01:16:45,542 あれ? 554 01:16:58,140 --> 01:17:03,440 このまま不時着すれば 胴体の下で爆弾が破裂する。 555 01:17:09,701 --> 01:17:13,121 死を覚悟した。 556 01:17:13,121 --> 01:17:15,121 その時…。 557 01:17:17,142 --> 01:17:19,142 死ぬな! 558 01:17:21,780 --> 01:17:25,780 どんなに苦しくても 生き延びる努力をしろ! 559 01:17:32,040 --> 01:17:34,710 空耳ではない。 560 01:17:34,710 --> 01:17:38,010 確かに宮部さんの声だった。 561 01:17:42,551 --> 01:17:47,051 その時 喜界島が見えた。 562 01:17:54,746 --> 01:17:58,050 宮部さん…。 563 01:17:58,050 --> 01:18:02,120 特攻しよう。 564 01:18:02,120 --> 01:18:08,120 この爆弾を抱えて 特攻しよう。 565 01:18:11,079 --> 01:18:13,131 だが…。 566 01:18:13,131 --> 01:18:15,033 脚出し確認! 567 01:18:15,033 --> 01:18:18,787 これは 生きるための特攻だ。 568 01:18:18,787 --> 01:18:22,087 生きるんだ。 569 01:18:24,560 --> 01:18:26,560 脚よし! 570 01:18:33,552 --> 01:18:35,552 着陸! 571 01:18:42,077 --> 01:18:44,077 50! 572 01:18:46,064 --> 01:18:49,051 20! 573 01:18:49,051 --> 01:18:52,387 5! 574 01:18:52,387 --> 01:18:54,987 うわ~! 575 01:19:20,415 --> 01:19:26,555 奇跡… としか言いようがない。 576 01:19:26,555 --> 01:19:29,555 爆弾は炸裂しなかった。 577 01:19:33,629 --> 01:19:39,129 私は 宮部さんに助けられた。 578 01:21:12,077 --> 01:21:18,077 君たちの本当のおじいさんに 助けられた。 579 01:21:24,189 --> 01:21:29,878 宮部さんの零戦で おじいちゃんは助かって➡ 580 01:21:29,878 --> 01:21:33,878 おじいちゃんの零戦で 宮部さんは…。 581 01:21:39,604 --> 01:21:43,104 運命が2人を分けたんだね。 582 01:21:47,145 --> 01:21:49,645 運命ではない。 583 01:21:52,084 --> 01:21:55,084 運命では なかった。 584 01:22:42,117 --> 01:22:46,117 ハァ ハァ ハァ ハァ…。 585 01:23:06,541 --> 01:23:09,110 宮部さんが 持ち歩いていた写真に➡ 586 01:23:09,110 --> 01:23:11,110 間違いなかった。 587 01:23:14,699 --> 01:23:21,106 零戦を交換したときに 忘れてしまったのか。 588 01:23:21,106 --> 01:23:23,606 そう思ったとき…。 589 01:23:41,042 --> 01:23:46,698 「もし大石少尉がこの戦争を 運良く生き残ったら➡ 590 01:23:46,698 --> 01:23:49,868 お願いがあります。 591 01:23:49,868 --> 01:23:55,290 私の家族が路頭に迷い 苦しんでいたなら➡ 592 01:23:55,290 --> 01:23:57,790 助けてほしい」。 593 01:24:11,890 --> 01:24:16,311 これでも運命だと思うか? 594 01:24:16,311 --> 01:24:20,111 ただの偶然だと思うか? 595 01:24:23,018 --> 01:24:27,756 おじいちゃんなら… 宮部久蔵なら➡ 596 01:24:27,756 --> 01:24:29,708 不時着するような 不具合があったら➡ 597 01:24:29,708 --> 01:24:33,612 発動機の音でわかったはず。 598 01:24:33,612 --> 01:24:39,112 見抜いたんだ 特攻に行く前に。 599 01:24:45,140 --> 01:24:48,440 発動機の音を聞いただけで…。 600 01:24:52,564 --> 01:24:55,550 自分は堂々と不時着できる。 601 01:24:55,550 --> 01:25:00,050 そんな生き残りのクジを 手にしたんだと。 602 01:25:05,410 --> 01:25:08,530 残酷な話だ。 603 01:25:08,530 --> 01:25:12,600 これから死ななきゃならん そんな瀬戸際に➡ 604 01:25:12,600 --> 01:25:16,100 なんとも残酷な話だ。 605 01:25:26,531 --> 01:25:30,452 しかし そうなったときに宮部さんは➡ 606 01:25:30,452 --> 01:25:35,452 その生き残りのクジを 私に…。 607 01:25:53,608 --> 01:25:56,608 換わってはくれませんか? 608 01:25:59,898 --> 01:26:03,518 我が師である宮部教官に…。 609 01:26:03,518 --> 01:26:09,441 いえ 我が師であるからこそ 譲れません。 610 01:26:09,441 --> 01:26:11,941 申し訳ありません。 611 01:26:16,097 --> 01:26:18,597 わかりました。 612 01:26:25,073 --> 01:26:29,110 でも それを私に断られたとき➡ 613 01:26:29,110 --> 01:26:33,610 宮部さんは一度 自分の零戦に戻っている。 614 01:26:39,738 --> 01:26:43,391 きっと迷ったんだ。 615 01:26:43,391 --> 01:26:47,491 生と死の狭間で 葛藤したんだ。 616 01:27:27,652 --> 01:27:29,537 命は一つしかない! 617 01:27:29,537 --> 01:27:32,407 貴様に家族はいないのか? 618 01:27:32,407 --> 01:27:35,126 死んで悲しむ人間はいないのか? 619 01:27:35,126 --> 01:27:37,426 それなら死ぬな! 620 01:27:40,365 --> 01:27:43,234 多くの若者が 十分な訓練もないまま➡ 621 01:27:43,234 --> 01:27:45,286 実戦に投入され 初陣で戦死しています。 622 01:27:45,286 --> 01:27:47,405 だからこそ 今では 1人でも多くの搭乗員が…。 623 01:27:47,405 --> 01:27:51,926 皆さんは搭乗員などに なるべき人ではない! 624 01:27:51,926 --> 01:27:56,548 私は 皆さんに 死んでほしくありません。 625 01:27:56,548 --> 01:28:00,385 お前 命が惜しいのか? 626 01:28:00,385 --> 01:28:03,385 命は…。 627 01:28:07,392 --> 01:28:09,392 惜しいです。 628 01:28:21,739 --> 01:28:23,775 おかえりなさい。 629 01:28:23,775 --> 01:30:26,075 ♬~ 630 01:32:04,095 --> 01:32:09,467 なんとなくだけど わかる気がする。 631 01:32:09,467 --> 01:32:13,467 おじいちゃんが ずっと 話せなかった気持。 632 01:32:19,227 --> 01:32:25,233 でも あの時… 6年前のあの時➡ 633 01:32:25,233 --> 01:32:28,586 実のおじいさんがいるって➡ 634 01:32:28,586 --> 01:32:34,386 宮部さんの存在を 教えてくれたよね。 635 01:32:44,535 --> 01:32:50,635 松乃が死んだあの時 見たんだ。 636 01:32:53,728 --> 01:32:58,282 はっきりと見た。 637 01:32:58,282 --> 01:33:01,382 宮部さんの姿を。 638 01:33:11,062 --> 01:33:13,862 ⦅ありがとうございました。 639 01:33:18,920 --> 01:33:21,539 おじいちゃん? 640 01:33:21,539 --> 01:33:25,560 違う。 641 01:33:25,560 --> 01:33:31,199 私は お前たちの 本当の祖父ではない⦆ 642 01:33:31,199 --> 01:33:36,154 それで 思わず あんなことを…。 643 01:33:36,154 --> 01:33:43,110 松乃には 子供たちに言う必要はない。 644 01:33:43,110 --> 01:33:45,910 そう言われていたのに…。 645 01:33:51,402 --> 01:33:57,425 おばあちゃんと初めて会ったのは 戦争が終わってからよね? 646 01:33:57,425 --> 01:34:04,225 それから 松乃と会うのに 3年もかかった。 647 01:34:19,063 --> 01:34:24,719 宮部さんの家は横浜だったが 空襲で焼き払われ➡ 648 01:34:24,719 --> 01:34:28,819 妻である松乃さんの消息は わからなくなっていた。 649 01:34:33,628 --> 01:34:37,128 それでも私は捜した。 650 01:34:39,200 --> 01:34:44,422 しかし 月日ばかりが流れた。 651 01:34:44,422 --> 01:34:48,876 松乃さんの消息を 教えてくれたのは 友人だった。 652 01:34:48,876 --> 01:34:54,876 厚生省に行った友人から 遺族年金の問い合わせがあったと。 653 01:34:57,118 --> 01:35:01,218 松乃さんは 大阪で暮らしていた。 654 01:36:19,200 --> 01:36:57,738 ♬~ 655 01:36:57,738 --> 01:37:01,208 その子が清子だった。 656 01:37:01,208 --> 01:37:03,808 宮部さんの娘だった。 657 01:37:08,432 --> 01:37:14,038 いけません 清子。 何度言えば わかるんですか? 658 01:37:14,038 --> 01:37:18,743 すみません。 内職でちらかっていて。 659 01:37:18,743 --> 01:37:25,583 ほら これで ジュースでも買ってきなさい。 660 01:37:25,583 --> 01:37:29,987 ジュース? 本当? 661 01:37:29,987 --> 01:37:32,487 でしたら あの…。 662 01:37:36,594 --> 01:37:40,031 これで買っておいで。 ジュースでも お菓子でも。 663 01:37:40,031 --> 01:37:42,400 困ります そんなことされては。 664 01:37:42,400 --> 01:37:45,436 いいんです。 よくありません。 665 01:37:45,436 --> 01:37:50,708 何も持たずに 突然来たんです。 私に出させてください。 666 01:37:50,708 --> 01:37:53,944 でも…。 667 01:37:53,944 --> 01:37:57,244 お願いします。 668 01:38:08,709 --> 01:38:12,863 宮部が 教官を…。 669 01:38:12,863 --> 01:38:15,699 はい。 670 01:38:15,699 --> 01:38:21,756 本当に いろいろと 教えていただきました。 671 01:38:21,756 --> 01:38:26,927 そうですか。 672 01:38:26,927 --> 01:38:32,927 宮部は 人の役に立ったのですね? 673 01:38:36,487 --> 01:38:41,487 宮部さんとは 鹿屋でも一緒でした。 674 01:38:44,044 --> 01:38:46,697 私の身代わりで死んだ。 675 01:38:46,697 --> 01:38:49,697 それだけは どうしても言えなかった。 676 01:38:52,720 --> 01:38:59,110 では 宮部の死は➡ 677 01:38:59,110 --> 01:39:02,910 無駄ではなかったのですね。 678 01:39:22,533 --> 01:39:26,287 許してください。 679 01:39:26,287 --> 01:39:32,087 私が… 私が代わりに 死ねばよかったんです。 680 01:39:38,449 --> 01:39:41,949 顔を上げてください。 681 01:39:45,456 --> 01:39:51,896 宮部はきっと 私たちのために死んだのです。 682 01:39:51,896 --> 01:39:58,419 いいえ 宮部だけでなく➡ 683 01:39:58,419 --> 01:40:01,755 あの戦争で 亡くなった方たちは みんな➡ 684 01:40:01,755 --> 01:40:05,755 私たちのために死んだのです。 685 01:40:12,349 --> 01:40:17,849 もっと聞かせてください 宮部のことを。 686 01:40:25,279 --> 01:40:31,779 宮部の最期は どんなでしたか? 687 01:40:38,275 --> 01:40:42,375 大石さん お顔を上げて。 688 01:41:00,881 --> 01:41:07,181 宮部さんは 軍人らしく…。 689 01:41:10,441 --> 01:41:13,741 立派な最期を遂げられました。 690 01:41:26,774 --> 01:41:30,274 嬉しい。 691 01:41:34,315 --> 01:41:40,070 そう言うべきなんでしょうね。 692 01:41:40,070 --> 01:41:42,222 は? 693 01:41:42,222 --> 01:41:45,222 でも…。 694 01:41:49,063 --> 01:41:53,017 でも あの人は➡ 695 01:41:53,017 --> 01:41:56,117 私に嘘をつきました。 696 01:42:02,276 --> 01:42:04,776 必ず…。 697 01:42:06,764 --> 01:42:13,064 必ず帰ってくると 約束したのに…。 698 01:42:24,348 --> 01:42:26,717 お母さん! 699 01:42:26,717 --> 01:42:31,455 お母さん? 700 01:42:31,455 --> 01:42:37,755 何でもないの。 お父さんの話をしてただけ。 701 01:42:44,351 --> 01:42:47,254 清子のお父さん? 702 01:42:47,254 --> 01:42:49,907 そうよ。 703 01:42:49,907 --> 01:42:55,913 お父さん どんな人だったの? 704 01:42:55,913 --> 01:42:58,513 お父さんはね…。 705 01:43:08,742 --> 01:43:12,880 立派な男だった。 706 01:43:12,880 --> 01:43:21,480 誰よりも勇敢で 優しい人だった。 707 01:43:26,593 --> 01:43:30,393 でも 死んじゃった。 708 01:43:37,905 --> 01:43:40,891 私は決めた。 709 01:43:40,891 --> 01:43:45,991 自分の一生を この人たちのために と。 710 01:47:11,034 --> 01:47:16,073 町は戦争を忘れようと するかのように復興していった。 711 01:47:16,073 --> 01:47:22,613 だが 私たちの会話は 宮部さんのことばかりだった。 712 01:47:22,613 --> 01:47:28,735 宮部さんは 僕たちに なかなか 合格点くれなかったんです。 713 01:47:28,735 --> 01:47:33,273 お父さん いじわるだね。 そうだね。 714 01:47:33,273 --> 01:47:39,273 でも 宮部さんが 特攻に 行った日の話だけはできなかった。 715 01:47:41,214 --> 01:47:46,253 言えば 彼女を 苦しめるだけのような気がした。 716 01:47:46,253 --> 01:47:52,042 いや… それは きれい事だ。 717 01:47:52,042 --> 01:47:58,065 本当は 松乃さんとの関わりが 途絶えるのが怖かった。 718 01:47:58,065 --> 01:48:05,365 そんな私に きっと松乃さんも 何かを感じていたんだろう。 719 01:48:07,374 --> 01:48:11,374 そんな不思議な関係が 2年以上も続いたある時…。 720 01:48:17,584 --> 01:48:22,372 知り合いに 生地を安く譲っていただいて…。 721 01:48:22,372 --> 01:48:25,472 いつも もんぺばかりだから…。 722 01:48:28,095 --> 01:48:30,197 似合います。 723 01:48:30,197 --> 01:48:34,568 はい? 724 01:48:34,568 --> 01:48:39,406 とても 似合います。 725 01:48:39,406 --> 01:48:42,759 それに…。 726 01:48:42,759 --> 01:48:45,429 それに? 727 01:48:45,429 --> 01:48:51,535 とても きれいです… とは口にできなかった。 728 01:48:51,535 --> 01:48:54,888 清子ちゃんは? 729 01:48:54,888 --> 01:49:00,188 学校の友達と その… 遊びに行ってて。 730 01:49:05,899 --> 01:49:10,570 清子ちゃんは 本当に かわいらしいです。 731 01:49:10,570 --> 01:49:17,861 人見知りしないし 私にも懐いてくれて。 732 01:49:17,861 --> 01:49:23,900 大石さんだからです。 733 01:49:23,900 --> 01:49:27,938 清子は 人見知りをする子です。 734 01:49:27,938 --> 01:49:31,438 でも 大石さんだと…。 735 01:49:37,364 --> 01:49:42,419 あの… どこか お体の具合でも? 736 01:49:42,419 --> 01:49:45,705 あなたは なぜ…。 737 01:49:45,705 --> 01:49:50,705 どうして私に こんなにも 親切にしてくださるのですか? 738 01:49:57,234 --> 01:50:03,740 今の自分があるのは 宮部さんのおかげだからです。 739 01:50:03,740 --> 01:50:09,379 あなたに もし 宮部への恩があるなら➡ 740 01:50:09,379 --> 01:50:12,215 それは もう十分に返しました。 741 01:50:12,215 --> 01:50:16,069 いえ まだです。 742 01:50:16,069 --> 01:50:23,243 そうして 一生 私たちのために 生きるつもりですか? 743 01:50:23,243 --> 01:50:27,414 いけませんか? 744 01:50:27,414 --> 01:50:34,221 宮部さんに助けられた命を あなたたちのために。 745 01:50:34,221 --> 01:50:38,074 それが いけませんか? 746 01:50:38,074 --> 01:50:40,877 あなたの人生はどうなるのです? 747 01:50:40,877 --> 01:50:43,246 これが私の人生です。 748 01:50:43,246 --> 01:50:46,049 あなたの幸せは どうなるのですか? 749 01:50:46,049 --> 01:50:48,049 これが私の幸せです。 750 01:50:57,627 --> 01:50:59,627 すみません。 751 01:51:03,533 --> 01:51:08,939 宮部に助けられた命。 752 01:51:08,939 --> 01:51:14,439 今 そうおっしゃいましたね。 753 01:51:16,613 --> 01:51:21,213 それは いつ どこでですか? 754 01:51:25,522 --> 01:51:30,577 その時 わかった 松乃さんは その日➡ 755 01:51:30,577 --> 01:51:32,577 覚悟を決めてきたのだ。 756 01:51:34,581 --> 01:51:38,869 自分が生きていられるのは 宮部のおかげ。 757 01:51:38,869 --> 01:51:43,139 あなたは よく そうおっしゃいます。 758 01:51:43,139 --> 01:51:46,939 その意味を ずっと考えていました。 759 01:51:52,132 --> 01:51:58,632 大石さん 本当のことを教えて。 760 01:52:06,913 --> 01:52:12,852 私は とうとう話した。 761 01:52:12,852 --> 01:52:16,423 話さざるをえなかった。 762 01:52:16,423 --> 01:52:21,061 あの日のことを。 763 01:52:21,061 --> 01:52:26,061 宮部さんと私が 最後の出撃をした日のことを。 764 01:54:36,062 --> 01:54:41,217 あの時 あの絶望的状況の中➡ 765 01:54:41,217 --> 01:54:48,017 1本の蜘蛛の糸が 宮部さんの前に降りてきた。 766 01:54:55,899 --> 01:55:01,037 これをつかめば 助かるかもしれない。 767 01:55:01,037 --> 01:55:04,457 それを…。 768 01:55:04,457 --> 01:55:08,957 それを 宮部さんは 私につかませた。 769 01:55:12,065 --> 01:55:14,065 その話を…。 770 01:55:18,938 --> 01:55:23,938 ずっと黙っていて すみませんでした。 771 01:55:29,616 --> 01:55:34,916 私は 汚い男です。 772 01:55:41,945 --> 01:55:49,545 私は もうこれ以上 あなたとは…。 773 01:55:52,005 --> 01:55:54,305 宮部は…。 774 01:55:58,628 --> 01:56:05,728 宮部は なぜ あなたを 選んだのでしょうか? 775 01:56:11,724 --> 01:56:15,895 わかりません。 776 01:56:15,895 --> 01:56:22,995 ただ 一つだけ思い当たることが。 777 01:56:32,946 --> 01:56:35,246 うっ! 778 01:56:48,912 --> 01:56:51,364 見舞いに来た宮部さんに➡ 779 01:56:51,364 --> 01:56:55,118 外套をいただきました。 780 01:56:55,118 --> 01:57:00,218 あの外套は 私が 仕立て直したものです。 781 01:57:03,393 --> 01:57:08,893 やはり そうでしたか。 782 01:57:15,738 --> 01:57:20,877 そんな大切なものを➡ 783 01:57:20,877 --> 01:57:23,877 宮部さんは 私に…。 784 01:57:27,951 --> 01:57:35,251 宮部と大石さんが出会ったのは 運命だったんですね。 785 01:57:40,697 --> 01:57:45,919 許してください。 786 01:57:45,919 --> 01:57:48,905 私が こうして生きていられるのも➡ 787 01:57:48,905 --> 01:57:52,075 宮部さんのおかげです。 788 01:57:52,075 --> 01:57:54,744 大石さん それはもう…。 789 01:57:54,744 --> 01:57:57,113 何度でも言います! 790 01:57:57,113 --> 01:58:00,613 私は 宮部さんに生かされたんです。 791 01:58:03,419 --> 01:58:10,209 どうぞ 私の気の済むように させてください。 792 01:58:10,209 --> 01:58:15,309 それが叶わないなら 私の人生に意味はありません。 793 01:58:25,341 --> 01:58:28,441 約束を守った。 794 01:58:32,248 --> 01:58:38,548 あの時 一瞬 そう思いました。 795 01:59:07,383 --> 01:59:12,121 宮部の外套を着た あなたを初めて見た時➡ 796 01:59:12,121 --> 01:59:18,121 宮部は 約束を守ったのだと…。 797 01:59:32,325 --> 01:59:34,425 約束? 798 01:59:38,047 --> 01:59:41,347 必ず 帰ってくるという? 799 01:59:52,061 --> 01:59:58,284 宮部とは ひと言も交わさずに祝言…。 800 01:59:58,284 --> 02:00:00,384 お話ししましたね。 801 02:00:05,591 --> 02:00:08,591 結婚生活も たった1週間でした。 802 02:00:11,948 --> 02:00:16,948 そのあとすぐ 宮部は戦地に。 803 02:00:21,274 --> 02:00:27,774 でも1日だけ 帰ってきて くれたことがありました。 804 02:00:32,802 --> 02:00:34,902 帰りました。 805 02:00:39,442 --> 02:00:42,042 おかえりなさい。 806 02:00:48,117 --> 02:00:50,117 ただいま。 807 02:00:55,575 --> 02:00:58,044 こういうものを 支給していただきました。 808 02:00:58,044 --> 02:01:02,081 やっと話ができたのは 寝る時間になってから。 809 02:01:02,081 --> 02:01:04,083 暖かそうでしょ。 810 02:01:04,083 --> 02:01:07,103 それを着れば どんなに寒いところに…。 811 02:01:07,103 --> 02:01:12,258 それも 次は いつ帰れるかわからない。 812 02:01:12,258 --> 02:01:15,895 これから どこへ行くかもわからない。 813 02:01:15,895 --> 02:01:21,067 日本では 考えられないような 気候のところへも行く。 814 02:01:21,067 --> 02:01:27,573 そんな話ばかりで とても じっとしていられませんでした。 815 02:01:27,573 --> 02:01:30,076 何をするんですか? 816 02:01:30,076 --> 02:01:34,163 こんなことなら… こんなことなら もっと➡ 817 02:01:34,163 --> 02:01:36,263 衣服を残しておくべきでした。 818 02:01:40,887 --> 02:01:44,987 これに 綿を入れさせてください。 819 02:01:53,199 --> 02:01:57,453 そうだ 供出するための革が…。 820 02:01:57,453 --> 02:01:59,453 革があります。 821 02:02:13,619 --> 02:02:15,719 これを使わせてもらいましょう。 822 02:02:17,740 --> 02:02:21,744 これを襟に張るんです。 823 02:02:21,744 --> 02:02:25,381 こうして こうして➡ 824 02:02:25,381 --> 02:02:28,217 こうすれば出来ます。 825 02:02:28,217 --> 02:02:30,887 これで 暖かい外套が出来ます。 826 02:02:30,887 --> 02:02:33,422 間に合わせます。 827 02:02:33,422 --> 02:02:36,025 あすの朝までに間に合わせます。 828 02:02:36,025 --> 02:02:42,565 これさえ着ていれば どんな寒いところに行っても➡ 829 02:02:42,565 --> 02:02:44,665 大丈夫です。 830 02:02:47,687 --> 02:02:54,777 たとえ 氷が 張っているようなところでも…。 831 02:02:54,777 --> 02:02:57,377 必ず…。 832 02:02:59,899 --> 02:03:06,899 必ず生きて 生きて…。 833 02:03:08,858 --> 02:03:10,860 生きて帰ってこられる…。 834 02:03:10,860 --> 02:03:16,282 その言葉は飲み込みました。 835 02:03:16,282 --> 02:03:20,736 軍人の妻が 口にしてはいけない言葉でした。 836 02:03:20,736 --> 02:03:24,140 その代わり この外套を➡ 837 02:03:24,140 --> 02:03:26,242 暖かくするには どうすればいいか。 838 02:03:26,242 --> 02:03:29,262 どうすれば もっと…。 839 02:03:29,262 --> 02:03:31,262 それだけを思って…。 840 02:03:39,605 --> 02:03:45,605 必ず 生きて帰ります。 841 02:03:49,131 --> 02:03:52,735 たとえ腕がなくなっても➡ 842 02:03:52,735 --> 02:03:58,224 たとえ足がなくなっても➡ 843 02:03:58,224 --> 02:04:00,524 必ず…。 844 02:04:07,116 --> 02:04:09,716 必ず帰ってきます。 845 02:04:18,227 --> 02:04:22,815 たとえ死んでも➡ 846 02:04:22,815 --> 02:04:26,315 それでも 僕は戻ってくる。 847 02:04:31,891 --> 02:04:36,946 生まれ変わってでも➡ 848 02:04:36,946 --> 02:04:41,946 必ず君の元に戻ってくる。 849 02:05:09,245 --> 02:05:14,245 だから あなたを初めて見たとき…。 850 02:05:18,621 --> 02:05:22,221 あの外套を着た あなたを初めて見たとき…。 851 02:05:28,381 --> 02:05:34,053 宮部が戻ってきた。 852 02:05:34,053 --> 02:05:38,053 生まれ変わって 帰ってきた。 853 02:05:42,044 --> 02:05:47,183 そう思って 私…。 854 02:05:47,183 --> 02:06:16,395 ♬~ 855 02:06:16,395 --> 02:06:21,817 その時 私は結婚を口にした。 856 02:06:21,817 --> 02:06:25,617 自分には その資格がないと 諦めていた言葉だった。 857 02:06:32,711 --> 02:06:39,902 結婚を前にして 松乃は 私にすべてを話してくれた。 858 02:06:39,902 --> 02:06:43,889 すべて? 859 02:06:43,889 --> 02:06:48,689 自分が戦後 どのようにして 生きてきたか…。 860 02:06:56,952 --> 02:06:59,552 おじいちゃん? 861 02:07:01,607 --> 02:07:05,907 戦後 おばあちゃんに何があったの? 862 02:07:11,750 --> 02:07:15,371 あの時代 幼子を抱えた➡ 863 02:07:15,371 --> 02:07:18,424 身寄りのない女性が 生きていくのは➡ 864 02:07:18,424 --> 02:07:25,030 想像を絶するほど 大変なことだ。 865 02:07:25,030 --> 02:07:30,469 夫の戦死で 自暴自棄にもなっていた。 866 02:07:30,469 --> 02:07:38,143 生きていくために 人に騙されたこともあった。 867 02:07:38,143 --> 02:07:41,143 それで ヤクザの…。 868 02:07:43,365 --> 02:07:47,903 囲い者に なってしまったこともあった。 869 02:07:47,903 --> 02:07:50,406 えっ? 870 02:07:50,406 --> 02:07:58,113 普通なら そういう支配から 抜け出すのは難しい。 871 02:07:58,113 --> 02:08:05,113 ところが 驚くことが起きたんだ。 872 02:11:14,026 --> 02:12:09,548 ♬~ 873 02:12:09,548 --> 02:12:13,018 その男は 組織の幹部だった。 874 02:12:13,018 --> 02:12:18,440 ある時 松乃を囲っていた別宅で 数人に襲われ…。 875 02:12:18,440 --> 02:12:20,940 逃げろ! 876 02:12:26,081 --> 02:12:28,081 ぐわぁ! 877 02:12:40,212 --> 02:12:42,548 やったか? おう。 878 02:12:42,548 --> 02:12:45,100 女もやっとけ 急げ! 879 02:12:45,100 --> 02:13:17,332 ♬~ 880 02:13:17,332 --> 02:13:22,704 お母さん お母さん。 881 02:13:22,704 --> 02:13:25,704 お母さん? 882 02:14:25,767 --> 02:14:28,267 生きろ。 883 02:14:46,888 --> 02:14:50,759 その男が いったい誰だったのか。 884 02:14:50,759 --> 02:14:55,697 松乃は ついに わからなかったらしい。 885 02:14:55,697 --> 02:14:58,667 もちろん 私もわからない。 886 02:14:58,667 --> 02:15:01,870 だが その時 松乃は➡ 887 02:15:01,870 --> 02:15:05,524 宮部さんに守られた。 888 02:15:05,524 --> 02:15:08,493 そう思ったようだ。 889 02:15:08,493 --> 02:15:11,747 私もそう思ってる。 890 02:15:11,747 --> 02:15:16,047 信じられんか こんな話。 891 02:15:19,237 --> 02:15:21,537 信じるよ。 892 02:15:23,525 --> 02:15:25,927 ⦅すまん。 893 02:15:25,927 --> 02:15:29,427 許せ⦆ 894 02:15:33,719 --> 02:15:36,719 うん 信じる。 895 02:15:42,244 --> 02:15:46,865 私も信じてる。 896 02:15:46,865 --> 02:15:52,437 結婚後 松乃と私の間で➡ 897 02:15:52,437 --> 02:15:57,826 宮部さんの名前が出たことは 一度もない。 898 02:15:57,826 --> 02:16:02,714 それは 松乃が望んだことだ。 899 02:16:02,714 --> 02:16:04,866 だが 私は…。 900 02:16:04,866 --> 02:16:09,071 いや おそらく松乃も➡ 901 02:16:09,071 --> 02:16:13,671 宮部さんのことを忘れたことは 一度もない。 902 02:16:16,661 --> 02:16:22,534 お互いに心に思う人がいて➡ 903 02:16:22,534 --> 02:16:27,589 それでも結婚生活は幸せだった? 904 02:16:27,589 --> 02:16:31,189 だからこそ 幸せだった。 905 02:16:35,197 --> 02:16:39,368 私も もう長くはない。 906 02:16:39,368 --> 02:16:45,874 若い頃は 死ぬことが怖かった。 907 02:16:45,874 --> 02:16:53,865 特攻命令が下ったときは やはり怖かったな。 908 02:16:53,865 --> 02:16:59,838 だが 今は怖くない。 909 02:16:59,838 --> 02:17:06,211 宮部さんは 松乃を迎えに来た。 910 02:17:06,211 --> 02:17:12,084 同じように 松乃も きっと私を迎えに来てくれる。 911 02:17:12,084 --> 02:17:15,084 そう思えるからだ。 912 02:17:27,365 --> 02:17:31,353 その時 宮部さんが一緒だったら➡ 913 02:17:31,353 --> 02:17:34,353 私は嬉しい。 914 02:18:00,415 --> 02:18:06,515 その時には これを着て逝くつもりだ。 915 02:18:12,377 --> 02:18:19,534 宮部さんと松乃と私 3人一緒に。 916 02:18:19,534 --> 02:19:44,536 ♬~ 917 02:19:44,536 --> 02:19:48,607 「もし大石少尉がこの戦争を 運良く生き残ったら➡ 918 02:19:48,607 --> 02:19:51,526 お願いがあります。 919 02:19:51,526 --> 02:19:56,197 私の家族が路頭に迷い 苦しんでいたなら➡ 920 02:19:56,197 --> 02:19:58,867 助けてほしい」。 921 02:19:58,867 --> 02:20:56,524 ♬~ 922 02:20:56,524 --> 02:20:59,824 たった一行の人生。 923 02:21:03,531 --> 02:21:09,187 前は これを見て そう言ったけど➡ 924 02:21:09,187 --> 02:21:14,287 今は これを見ただけで…。 925 02:21:20,215 --> 02:21:25,253 今 ちょっと見えちゃった。 えっ? 926 02:21:25,253 --> 02:21:28,553 カバンの中に司法試験の本。 927 02:21:32,260 --> 02:21:36,881 来年の司法試験ね。 928 02:21:36,881 --> 02:21:40,535 おじいちゃんがさ…。 929 02:21:40,535 --> 02:21:43,321 あっ 今のおじいちゃんのほうね。 930 02:21:43,321 --> 02:21:46,224 おじいちゃんが 弁護士になったのは➡ 931 02:21:46,224 --> 02:21:48,543 30過ぎてから。 932 02:21:48,543 --> 02:21:51,413 知ってるけど。 933 02:21:51,413 --> 02:21:55,250 俺も来年30。 934 02:21:55,250 --> 02:22:00,350 もう1回挑戦してみるわ。 935 02:22:04,759 --> 02:22:09,164 あ… 私 返事したから。 936 02:22:09,164 --> 02:22:11,199 えっ? 937 02:22:11,199 --> 02:22:16,204 高山さんに結婚できないって。 938 02:22:16,204 --> 02:22:19,674 ごめんなさいって。 939 02:22:19,674 --> 02:22:24,662 申し分のない相手じゃ なかったの? 940 02:22:24,662 --> 02:22:30,051 大手の新聞記者で。 そうね。 941 02:22:30,051 --> 02:22:34,339 ライターとしてのチャンス逃すかもよ。 942 02:22:34,339 --> 02:22:36,875 かもね。 943 02:22:36,875 --> 02:22:42,680 あれ? もしかして 藤木さんから返事が届いた? 944 02:22:42,680 --> 02:22:46,367 ⦅慶子ちゃん。 945 02:22:46,367 --> 02:22:51,823 幸せになってください⦆ 946 02:22:51,823 --> 02:22:54,692 ううん 直接話した。 947 02:22:54,692 --> 02:22:58,079 嘘!? で なんて? 948 02:22:58,079 --> 02:23:04,736 おめでとう 幸せになってください だって。 949 02:23:04,736 --> 02:23:09,836 それから 昔の思い出話もした。 950 02:23:17,031 --> 02:23:22,554 明日 藤木さんの工場を 訪ねてみようと思う。 951 02:23:22,554 --> 02:23:25,440 訪ねてどうするの? 952 02:23:25,440 --> 02:23:29,040 どうするって…。 953 02:23:31,546 --> 02:23:35,717 何か始まると思ってる? 954 02:23:35,717 --> 02:23:41,506 始まらない可能性のほうが 高いわね。 955 02:23:41,506 --> 02:23:47,695 もし 始まったとしても 苦労するのは目に見えてる。 956 02:23:47,695 --> 02:23:49,995 じゃあ なんで? 957 02:23:52,200 --> 02:23:56,020 アンタだって そうでしょ? はっ? 958 02:23:56,020 --> 02:24:00,942 それでも進みたい。 959 02:24:00,942 --> 02:24:05,442 たとえ 望みは薄くても。 960 02:24:23,348 --> 02:24:26,985 結局 わからなかったね。 961 02:24:26,985 --> 02:24:31,222 なんで 宮部さんが 特攻へ行ったのか? 962 02:24:31,222 --> 02:24:34,092 うん。 963 02:24:34,092 --> 02:24:37,912 でも わかった気もする。 964 02:24:37,912 --> 02:24:41,012 うん。