1 00:00:56,118 --> 00:01:15,118 ♬~(笛) 2 00:01:16,939 --> 00:01:28,951 ♬~ 3 00:01:28,951 --> 00:01:34,757 (玄沢)さあさあ どうぞ こちらへ。 こちらでおくつろぎ下さいませ。➡ 4 00:01:34,757 --> 00:01:37,659 おい! ぼんやりしてないで ご接待 ご接待! 5 00:01:37,659 --> 00:01:41,897 かしこまりました! 早く! 玄真! 6 00:01:41,897 --> 00:01:44,197 はい! 7 00:01:45,768 --> 00:01:49,772 近い! 良沢先生は まだか? 今 使いを出しておりますが。 8 00:01:49,772 --> 00:01:54,910 (玄沢)何をされておるのだ…。 そんなに立派な方なのですか? 9 00:01:54,910 --> 00:01:59,782 知らんのか 良沢先生を! お名前だけは存じておりますが。 10 00:01:59,782 --> 00:02:02,785 おっ! あっ! 11 00:02:02,785 --> 00:02:05,254 玄白先生! 12 00:02:05,254 --> 00:02:08,590 皆さん お待ちでございますが。 (玄白)良沢殿は? 13 00:02:08,590 --> 00:02:11,927 間もなく ご到着かと。 来たら 知らせろ。 14 00:02:11,927 --> 00:02:14,830 しかし! 来たら 知らせろ! 15 00:02:14,830 --> 00:02:18,267 先生! あっ! 16 00:02:18,267 --> 00:02:27,967 ♬~ 17 00:02:37,553 --> 00:02:51,567 ♬~(笛) 18 00:02:51,567 --> 00:02:53,567 ♬~(笛) (たたく音) 19 00:02:57,439 --> 00:03:01,739 (峰子)父上 使いの方がお待ちです。 20 00:03:03,579 --> 00:03:06,248 帰ってもらえ。 21 00:03:06,248 --> 00:03:10,919 (峰子)せっかく 父上の長寿を 祝って下さるというのに。 22 00:03:10,919 --> 00:03:14,619 わしが頼んだわけではない。 23 00:03:16,258 --> 00:03:20,129 ♬~(笛) 24 00:03:20,129 --> 00:03:23,932 杉田玄白と前野良沢。 25 00:03:23,932 --> 00:03:29,738 2人は 力を合わせ 日本で初めて 西洋医学の翻訳書を世に出した。 26 00:03:29,738 --> 00:03:33,041 その名は「解体新書」。 27 00:03:33,041 --> 00:03:36,879 日本の医学を変える 革命的な仕事であった。 28 00:03:36,879 --> 00:03:39,214 しかし 「解体新書」には➡ 29 00:03:39,214 --> 00:03:43,552 なぜか 前野良沢の名は 記されていない。 30 00:03:43,552 --> 00:03:52,552 ♬~ 31 00:03:55,164 --> 00:03:58,567 時は 20年ほど遡る。 32 00:03:58,567 --> 00:04:05,440 100日の長崎遊学を終え 前野良沢が江戸へ戻ってきた。 33 00:04:05,440 --> 00:04:09,578 (女たち)お帰りなさいませ。 まあ~! 34 00:04:09,578 --> 00:04:11,513 どうじゃ? すてきです。 35 00:04:11,513 --> 00:04:15,918 ありがとうございます。 どう? すてき。 36 00:04:15,918 --> 00:04:19,788 父上にしては なかなかの選択ね。 これこれ。 37 00:04:19,788 --> 00:04:22,691 (吹く音) (珉子)あら。 38 00:04:22,691 --> 00:04:25,260 ビードロじゃ。 (2人)ビードロ? 39 00:04:25,260 --> 00:04:28,560 (富士子)面白い。 峰子 もう一回 吹いてみて。 40 00:04:47,216 --> 00:04:51,216 [ 心の声 ] とんでもないものを 手に入れてしまった。 41 00:04:52,888 --> 00:04:56,188 「たあへるあなとみあ」。 42 00:05:02,564 --> 00:05:05,901 で 阿蘭陀人とは話せたのですか? 43 00:05:05,901 --> 00:05:11,240 出島といえども 彼らと じかに 会う事は禁じられておりました。 44 00:05:11,240 --> 00:05:15,911 しかし かようなものを手に入れました。 45 00:05:15,911 --> 00:05:19,248 これは? 字引でござる。 46 00:05:19,248 --> 00:05:22,084 それは すばらしい! これさえあれば➡ 47 00:05:22,084 --> 00:05:26,284 どんなに難しい向こうの本も 読めるというものですな! 48 00:05:28,857 --> 00:05:31,426 こ… これは…。 49 00:05:31,426 --> 00:05:36,198 阿蘭陀語の意味を 阿蘭陀語と フランス語で書いた字引です。 50 00:05:36,198 --> 00:05:39,101 全く読めません。 51 00:05:39,101 --> 00:05:44,706 今回の長崎行きで 最も大きな収穫です。 52 00:05:44,706 --> 00:05:46,706 あ…。 53 00:05:48,377 --> 00:05:52,247 「たあへるあなとみあ」。 54 00:05:52,247 --> 00:05:55,717 この国の医術を 大きく発展せしむる➡ 55 00:05:55,717 --> 00:05:57,753 貴重な書物です。 56 00:05:57,753 --> 00:06:01,223 はるばる 長崎へ 行ったかいがありました。 57 00:06:01,223 --> 00:06:05,060 旅費を出して下さった 殿や藩への面目も立つ。 58 00:06:05,060 --> 00:06:07,095 私が江戸で買った本と➡ 59 00:06:07,095 --> 00:06:10,395 全く同じものですな! 60 00:06:12,801 --> 00:06:16,238 あ…。 61 00:06:16,238 --> 00:06:18,907 良沢が留学した長崎は➡ 62 00:06:18,907 --> 00:06:23,412 この時代 西洋に向けて開かれた 唯一の港だった。 63 00:06:23,412 --> 00:06:27,582 ここから 日本に上陸したのは 輸入品だけではない。 64 00:06:27,582 --> 00:06:33,388 貿易船に乗ってきた船医たちは 日本に西洋医学をもたらした。 65 00:06:33,388 --> 00:06:36,191 いち早く 阿蘭陀に目覚めた彼らが➡ 66 00:06:36,191 --> 00:06:42,531 皆 医者の出身である事は 単なる偶然ではない。 67 00:06:42,531 --> 00:06:44,866 ここに描かれた五臓六腑の図➡ 68 00:06:44,866 --> 00:06:48,737 あまりにも 我らが書物で 見てきたものと違いませんか? 69 00:06:48,737 --> 00:06:50,739 はい。 70 00:06:50,739 --> 00:06:54,876 東洋人と西洋人では 体の中身が違うのでしょうか? 71 00:06:54,876 --> 00:06:57,546 実際に この目で人体の中を見ないと➡ 72 00:06:57,546 --> 00:06:59,881 はっきりとした事は言えないが。 73 00:06:59,881 --> 00:07:02,918 今日 伺った理由は そこでしてね。 はて。 74 00:07:02,918 --> 00:07:06,655 明日 千住の骨ヶ原で 腑分けが行われるんです。 75 00:07:06,655 --> 00:07:10,392 なんと! 良沢殿も 是非 ご一緒に いかがかと思いまして。 76 00:07:10,392 --> 00:07:12,327 願ってもない! 77 00:07:12,327 --> 00:07:14,563 この本に描かれた事が 本当かどうか➡ 78 00:07:14,563 --> 00:07:17,063 我らの目で 確かめてみようではないですか! 79 00:07:19,735 --> 00:07:35,517 ♬~ 80 00:07:35,517 --> 00:07:38,420 お待たせ致しました。 これはこれは 良沢殿。 81 00:07:38,420 --> 00:07:42,290 我が藩の藩医 中川淳庵です。 中川と申しまする。 82 00:07:42,290 --> 00:07:47,028 文化12年に杉田玄白が書き上げた 「蘭学事始」には➡ 83 00:07:47,028 --> 00:07:50,828 その日の様子が 詳しく記されている。 84 00:08:34,176 --> 00:08:39,176 なかなか 趣のある所ですなあ…。 85 00:08:48,190 --> 00:08:53,528 (新蔵)本日 腑分けを行うのは 虎松という者。➡ 86 00:08:53,528 --> 00:08:56,431 死骸を扱えるのは 虎松のみ。 87 00:08:56,431 --> 00:09:00,869 かしこまりました。 うん。 88 00:09:00,869 --> 00:09:03,772 本日は いろいろと ありがとうございました。 89 00:09:03,772 --> 00:09:08,472 うむ。 では しばし ここで待つように。 90 00:09:10,212 --> 00:09:13,114 いくら渡したんですか? まあ ほどほどに。 91 00:09:13,114 --> 00:09:17,886 私は そういうまねは好きではない。 92 00:09:17,886 --> 00:09:19,921 悪い知らせだ。 どうなさいました? 93 00:09:19,921 --> 00:09:22,224 虎松は 今日 来ぬ。 94 00:09:22,224 --> 00:09:24,159 そんな! 腑分けは どうなるんです!? 95 00:09:24,159 --> 00:09:28,396 代わりに 虎松の祖父が来ておるのだが…。 96 00:09:28,396 --> 00:09:30,899 腑分けが見られるのであれば 誰でも結構です。 97 00:09:30,899 --> 00:09:36,171 国松! (国松)へ~い!➡ 98 00:09:36,171 --> 00:09:41,042 ちゃっちゃか ちゃっちゃっちゃ! と来らあ! ハハハハハ! 99 00:09:41,042 --> 00:09:44,045 虎松の野郎が 風邪ひいちまったもんで。 100 00:09:44,045 --> 00:09:46,515 今日は あっしがやらさせて頂きます。 101 00:09:46,515 --> 00:09:50,685 国松と申します。 申します。 申します。 102 00:09:50,685 --> 00:09:53,188 腑分けの経験はあるのか? 103 00:09:53,188 --> 00:09:58,860 もう80年やってまさ! ハハハハハ! 104 00:09:58,860 --> 00:10:02,531 さあて 日が昇らんうちに 始めましょうかのう。 105 00:10:02,531 --> 00:10:05,433 のう のう。 106 00:10:05,433 --> 00:10:08,133 どかして どかして。 107 00:10:12,207 --> 00:10:19,207 さてと 本日の仏さんはと…。 108 00:10:21,216 --> 00:10:26,555 ほう 女かい。 109 00:10:26,555 --> 00:10:30,892 なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ…。➡ 110 00:10:30,892 --> 00:10:34,396 ちょっと 手伝っておくんなせい。 111 00:10:34,396 --> 00:10:36,896 早く持って! 112 00:10:39,901 --> 00:10:44,773 息を合わせて お願いしやすよ。 ひの ふの みい! 113 00:10:44,773 --> 00:10:49,473 「其日の刑屍は 五十歳ばかりの老婦にて…」 114 00:11:01,923 --> 00:11:07,262 よござんすか? よござんすね。 115 00:11:07,262 --> 00:11:12,133 これが 肺の臓でごぜえやす。 116 00:11:12,133 --> 00:11:14,603 ロング。 ん? 117 00:11:14,603 --> 00:11:17,505 続けて。 118 00:11:17,505 --> 00:11:21,776 よござんすか? よござんすね。 119 00:11:21,776 --> 00:11:26,615 これが 心の臓でござい。 120 00:11:26,615 --> 00:11:30,952 あっ ハルト。 ん? 121 00:11:30,952 --> 00:11:34,556 そこにあるのは 何か? 122 00:11:34,556 --> 00:11:36,491 これは何だろうなあ。 123 00:11:36,491 --> 00:11:40,895 名前は知らんけど どいつにも必ずついとるね。 124 00:11:40,895 --> 00:11:43,565 はい。 125 00:11:43,565 --> 00:11:49,265 そして この長いのが 腸でやす。 126 00:11:52,907 --> 00:11:56,778 まさにこの本のとおりであったな。 こうなると どうしても➡ 127 00:11:56,778 --> 00:11:58,780 ここの阿蘭陀語が 読み解きたくなりますな。 128 00:11:58,780 --> 00:12:02,250 ここには 我ら 医術に 関わる者にとって 大事な事が➡ 129 00:12:02,250 --> 00:12:04,185 全て書かれているはずだ。 (淳庵が吐く声) 130 00:12:04,185 --> 00:12:08,123 良沢殿! この「たあへるあなとみあ」➡ 131 00:12:08,123 --> 00:12:10,592 我らの手で 訳してみようではありませんか! 132 00:12:10,592 --> 00:12:13,495 我らの手で? そして 世に出すのです。 133 00:12:13,495 --> 00:12:15,463 この国の医術を一新する。 134 00:12:15,463 --> 00:12:17,932 それこそが我らの使命。 しかし…。 135 00:12:17,932 --> 00:12:21,436 むろん 生易しい事ではないのは 分かっております。 136 00:12:21,436 --> 00:12:24,773 しかし 「読書百遍 意おのずから 通ず」の言葉もあるように…。 137 00:12:24,773 --> 00:12:30,945 百遍どころか 二百遍 読んでも 分からないのが 阿蘭陀語なのだ! 138 00:12:30,945 --> 00:12:39,754 ♬~ 139 00:12:39,754 --> 00:12:44,492 恐ろしく 大変な仕事になりますよ。 140 00:12:44,492 --> 00:12:47,896 何年かかろうが 構いません。 141 00:12:47,896 --> 00:12:54,235 ♬~ 142 00:12:54,235 --> 00:12:57,906 私も! 143 00:12:57,906 --> 00:13:01,242 何年かかろうとも この「たあへるあなとみあ」➡ 144 00:13:01,242 --> 00:13:05,242 最後まで 訳し通してみせましょうぞ! 145 00:13:06,915 --> 00:13:09,250 (2人)はい! 146 00:13:09,250 --> 00:13:16,950 ♬~ 147 00:13:19,260 --> 00:13:23,960 翻訳作業は その次の日から始まった。 148 00:13:29,604 --> 00:13:32,604 では。 では。 149 00:13:44,552 --> 00:14:16,852 ♬~ 150 00:14:19,921 --> 00:14:23,591 本日は ここまで。 151 00:14:23,591 --> 00:14:25,527 ええっ!? 152 00:14:25,527 --> 00:14:30,465 お恥ずかしながら 全く分かりません。 153 00:14:30,465 --> 00:14:33,868 いや しかし…。 私が愚かでした。 154 00:14:33,868 --> 00:14:37,739 ちなみに お二方は…。 はい? 155 00:14:37,739 --> 00:14:42,544 阿蘭陀語は どのぐらいおできに? 156 00:14:42,544 --> 00:14:45,880 私は 言葉を 十ばかり知っているだけです。 157 00:14:45,880 --> 00:14:48,550 デリンキは 「飲む」でしたっけ? 158 00:14:48,550 --> 00:14:51,886 そのとおり! 玄白殿は? 159 00:14:51,886 --> 00:14:56,586 一つも知りません。 しかし やる気なら 人一倍! 160 00:14:58,760 --> 00:15:01,060 申し訳ない。 161 00:15:04,899 --> 00:15:10,238 読めぬという点では 私も変わりはない。 162 00:15:10,238 --> 00:15:12,173 (ため息) 163 00:15:12,173 --> 00:15:17,412 さて どうしたものか。 164 00:15:17,412 --> 00:15:20,112 (峰子)失礼致します。 165 00:15:21,916 --> 00:15:25,253 お茶が入りました。 (淳庵)ありがとうございます。 166 00:15:25,253 --> 00:15:28,953 お仕事 はかどっておられますか? 167 00:15:33,862 --> 00:15:36,764 お前が口を挟むな! 168 00:15:36,764 --> 00:15:39,764 ご無礼致しました! 169 00:15:42,203 --> 00:15:47,075 とにもかくにも この阿蘭陀イロハを 知らなければ 話になりませぬな。 170 00:15:47,075 --> 00:15:49,077 阿蘭陀イロハ? 171 00:15:49,077 --> 00:15:51,880 これを すぐに覚えて頂きましょう。 172 00:15:51,880 --> 00:15:54,382 まずは ここからです。 173 00:15:54,382 --> 00:15:57,218 参ったな~。 参りましたね。 174 00:15:57,218 --> 00:16:00,555 このままでは 百年たっても終わらぬ。 175 00:16:00,555 --> 00:16:02,891 もっと 力になる人が欲しい。 176 00:16:02,891 --> 00:16:06,761 誰か 心当たりが? 一人だけな。 177 00:16:06,761 --> 00:16:09,761 たまらんのう! 178 00:16:12,901 --> 00:16:16,771 ああ ああ ああ ありがたき事~! 179 00:16:16,771 --> 00:16:19,240 何で 泣いているのだろう…。 関わらないのが一番です。 180 00:16:19,240 --> 00:16:21,910 ありがたき事! 181 00:16:21,910 --> 00:16:26,247 天子様~! 182 00:16:26,247 --> 00:16:29,584 (泣き声) 183 00:16:29,584 --> 00:16:33,855 天子様~! 184 00:16:33,855 --> 00:16:35,790 高山彦九郎。 185 00:16:35,790 --> 00:16:38,526 その激しさで 尊王思想に走り➡ 186 00:16:38,526 --> 00:16:43,226 やがて 幕末の志士たちに 多大な影響を与える。 187 00:16:49,537 --> 00:16:52,874 ちょっと こっち片づけちゃうから そこで待ってて。 188 00:16:52,874 --> 00:16:56,210 どうぞ お構いなく。 189 00:16:56,210 --> 00:16:58,880 平賀源内。 190 00:16:58,880 --> 00:17:03,751 日本のレオナルド・ダ・ビンチともいわれる この当代随一の奇人は➡ 191 00:17:03,751 --> 00:17:07,221 なぜか 杉田玄白と馬が合った。 192 00:17:07,221 --> 00:17:11,092 よし できた。 193 00:17:11,092 --> 00:17:14,395 はい。 はっ 頂戴致します。➡ 194 00:17:14,395 --> 00:17:19,901 「霊験宮戸川」 源内先生 これも当たり狂言になりますね。 195 00:17:19,901 --> 00:17:22,804 せいぜい 儲けて下さいよ。 196 00:17:22,804 --> 00:17:27,104 この次は 締め切りを守って下さいよ。 197 00:17:31,512 --> 00:17:35,183 源内殿は 浄瑠璃の本も書かれるのですか? 198 00:17:35,183 --> 00:17:37,518 えっ? 199 00:17:37,518 --> 00:17:43,391 「神霊矢口渡」を書いたのは 俺だよ。 200 00:17:43,391 --> 00:17:47,528 えっ あの人気狂言の? 福内鬼外というのは 俺の事。 201 00:17:47,528 --> 00:17:50,198 ついでに それ。 202 00:17:50,198 --> 00:17:53,101 「根南志具佐」 私も読みました。 203 00:17:53,101 --> 00:17:56,070 それ書いた風来山人も 俺。➡ 204 00:17:56,070 --> 00:18:02,210 いや~ 売れたねえ。 で ご用件というのは? 205 00:18:02,210 --> 00:18:05,046 実は 私たち 今 「たあへるあなとみあ」の➡ 206 00:18:05,046 --> 00:18:07,081 読み分けに 取りかかっておるのです。 207 00:18:07,081 --> 00:18:10,218 これの読み分けを? よくやるねえ。 208 00:18:10,218 --> 00:18:14,918 この国の医術を変えたいのです。 見上げた心意気だ。 209 00:18:16,557 --> 00:18:20,257 コムマ プンクトム フラーガテーケン。 210 00:18:21,896 --> 00:18:24,932 源内さん 力を貸して下さい! お願いします! 211 00:18:24,932 --> 00:18:29,570 (源内)それより 今のどうだった? ど… ど… どうとは? 212 00:18:29,570 --> 00:18:33,174 阿蘭陀語に聞こえた? 213 00:18:33,174 --> 00:18:35,474 でたらめだったのですか? 214 00:18:37,512 --> 00:18:40,212 オスト アンデル。 215 00:18:43,184 --> 00:18:47,522 長崎で分かったのは 西洋人も大した事はないって事。 216 00:18:47,522 --> 00:18:52,860 源内の頭の中は とうに 阿蘭陀なんざ超えてる。➡ 217 00:18:52,860 --> 00:18:56,197 悪いけど 力にはなれねえな。 218 00:18:56,197 --> 00:18:59,867 俺は もっと 面白い事がやりてえんだ。 219 00:18:59,867 --> 00:19:04,205 誰も見た事ねえもの こしらえる時には 呼んでくんな。 220 00:19:04,205 --> 00:19:06,140 誰も見た事ないものとは? 221 00:19:06,140 --> 00:19:11,440 誰も見た事ねえんだ 俺だって知らねえさ。 222 00:19:13,214 --> 00:19:16,551 (淳庵)言っている事が 全く分かりませんでした。 223 00:19:16,551 --> 00:19:20,888 あの人は いつも 私らより ずっと 遠いところを見ている。 224 00:19:20,888 --> 00:19:25,560 ただ 一つだけ分かったのは…。 はい? 225 00:19:25,560 --> 00:19:28,560 私たちでやるしかないという事だ。 226 00:19:30,231 --> 00:19:33,501 さて 阿蘭陀語を知らない彼らは➡ 227 00:19:33,501 --> 00:19:36,838 いかにして 翻訳に挑んだのだろうか。 228 00:19:36,838 --> 00:19:39,507 彼らの武器は少ない。 229 00:19:39,507 --> 00:19:43,177 阿蘭陀語とフランス語が載った 蘭仏辞典。 230 00:19:43,177 --> 00:19:48,049 青木昆陽がまとめた 初歩的な単語帳「和蘭文字略考」。 231 00:19:48,049 --> 00:19:52,186 そして 良沢の留学ノート。 232 00:19:52,186 --> 00:19:56,858 「ターヘル・アナトミア」には 人体の詳細な絵図がついている。 233 00:19:56,858 --> 00:20:01,529 それぞれの部分には アルファベットや 数字の記号が書いてある。 234 00:20:01,529 --> 00:20:04,198 その記号が載っている箇所を 本文で探し➡ 235 00:20:04,198 --> 00:20:06,868 該当する言葉を見つける。 236 00:20:06,868 --> 00:20:09,537 そして 絵図と辞書を見比べながら➡ 237 00:20:09,537 --> 00:20:13,407 意味するところを 探し当てていくのである。 238 00:20:13,407 --> 00:20:15,877 意味の分からない単語は➡ 239 00:20:15,877 --> 00:20:19,213 丸に十の字をつけて 先送りとする。 240 00:20:19,213 --> 00:20:23,885 これを 轡十文字と呼んだ。 241 00:20:23,885 --> 00:20:28,556 これも 轡十文字ですな。 242 00:20:28,556 --> 00:20:30,892 諦めるのは まだ早い! 243 00:20:30,892 --> 00:20:34,228 いいんじゃないですか 轡十文字で。 244 00:20:34,228 --> 00:20:39,928 そう 何もかも轡十文字じゃ 一向に読み分けが進まん! 245 00:20:47,775 --> 00:20:52,580 先を読み解いていけば 新たにひらめく事もあるでしょう。 246 00:20:52,580 --> 00:20:55,880 轡十文字。 先 行こう。 247 00:21:02,590 --> 00:21:07,261 「ターヘル・アナトミア」翻訳の 苦労を伝える話で有名なのが➡ 248 00:21:07,261 --> 00:21:12,600 杉田玄白著「蘭学事始」で 紹介された このエピソード。 249 00:21:12,600 --> 00:21:17,271 あれは いつの頃だったかね…。 250 00:21:17,271 --> 00:21:24,612 「鼻は フルヘッヘンドしている」 という一節が見つかってね。 251 00:21:24,612 --> 00:21:28,912 このフルヘッヘンドが分からない。 252 00:21:31,285 --> 00:21:36,891 早速 辞書で フルヘッヘンドをひいてみたところ➡ 253 00:21:36,891 --> 00:21:40,761 そこには 「木の枝を切ると➡ 254 00:21:40,761 --> 00:21:45,233 その跡が フルヘッヘンドする」とあり➡ 255 00:21:45,233 --> 00:21:49,570 また 「庭を掃除すれば 枯れ葉が集まって➡ 256 00:21:49,570 --> 00:21:52,907 フルヘッヘンドする」とある。 257 00:21:52,907 --> 00:21:57,578 そこで 私は考えた。 258 00:21:57,578 --> 00:22:03,451 枝を切ると その跡が うずたかく盛り上がり➡ 259 00:22:03,451 --> 00:22:07,588 庭を掃除すれば 集められた枯れ葉が➡ 260 00:22:07,588 --> 00:22:10,925 うずたかく積もる。 261 00:22:10,925 --> 00:22:17,098 鼻というのは 顔の真ん中で うずたかくなってるもの。 262 00:22:17,098 --> 00:22:20,935 つまり フルヘッヘンドとは➡ 263 00:22:20,935 --> 00:22:28,609 日本語でいうところの 「うずたかし」である! 264 00:22:28,609 --> 00:22:31,879 これに たどりついた時は➡ 265 00:22:31,879 --> 00:22:35,750 実に うれしかったのを 覚えておる。 266 00:22:35,750 --> 00:22:38,753 実は このフルヘッヘンドのエピソード➡ 267 00:22:38,753 --> 00:22:41,555 現在では 完全な創作といわれている。 268 00:22:41,555 --> 00:22:45,059 何!? もしくは 玄白の思い違い。 269 00:22:45,059 --> 00:22:48,896 失敬な! なぜなら 「ターヘル・アナトミア」には➡ 270 00:22:48,896 --> 00:22:55,196 フルヘッヘンドという単語は どこにも出てこないからである。 271 00:22:58,906 --> 00:23:03,778 ず~っと気になってたんだけど この女は誰なんですかね?➡ 272 00:23:03,778 --> 00:23:06,247 この裸の。 273 00:23:06,247 --> 00:23:09,917 新たに参加した 桂川甫周は➡ 274 00:23:09,917 --> 00:23:14,588 奥医師 桂川甫三の息子である。 275 00:23:14,588 --> 00:23:17,925 (甫周)立派な体してるよなあ。➡ 276 00:23:17,925 --> 00:23:19,860 向こうの人は みんな こうなんでしょうか? 277 00:23:19,860 --> 00:23:21,796 さあ どうなんでしょう? 278 00:23:21,796 --> 00:23:26,267 乳房の膨らみなんて ほら すごいもんです! 279 00:23:26,267 --> 00:23:28,202 (小声で) なぜ あの男を引き入れた? 280 00:23:28,202 --> 00:23:31,605 玄白先生にお考えがあるようです。 いずれ 必ず 役に立ちます。 281 00:23:31,605 --> 00:23:34,208 甫周さん そろそろ 本を返して頂けますか。 282 00:23:34,208 --> 00:23:36,877 早く中身を読み解きたいものです。 283 00:23:36,877 --> 00:23:40,748 甫周殿に加わって頂ければ 百人力です。 ええ。 284 00:23:40,748 --> 00:23:45,219 本日は ここ。 まずは 最初から行きましょう。 285 00:23:45,219 --> 00:23:47,888 (淳庵)この西洋数字の1が 指し示すところは 何か。 286 00:23:47,888 --> 00:23:50,224 皆さん ご意見を。 頭でしょう。 287 00:23:50,224 --> 00:23:52,159 髪の毛かもしれませんよ。 頭でいいんじゃないかな? 288 00:23:52,159 --> 00:23:55,563 ひょっとしたら 額かもしれません。 289 00:23:55,563 --> 00:23:57,898 弱りましたな。 290 00:23:57,898 --> 00:23:59,834 もうちょっと 分かりやすい ところから 始めませんか。 291 00:23:59,834 --> 00:24:03,237 いや ここは 1から始めたい。 292 00:24:03,237 --> 00:24:06,574 これは どうです? これは どう見ても 鼻でしょう。 293 00:24:06,574 --> 00:24:09,243 ここに書かれてる符号は…。 何だ そりゃ。 294 00:24:09,243 --> 00:24:11,278 どうして ひらがなの「の」の字が そんなところに? 295 00:24:11,278 --> 00:24:14,115 これは 数字の6。 あ~ 6か。 296 00:24:14,115 --> 00:24:17,585 本文で 6の項目を探してみて。 かしこまりました。 297 00:24:17,585 --> 00:24:20,488 ねえ 乳房は 阿蘭陀語で何と言うのかな? 298 00:24:20,488 --> 00:24:23,257 そんなに知りたいなら 自分でお探しなさい。 299 00:24:23,257 --> 00:24:27,928 6 ありました! 300 00:24:27,928 --> 00:24:30,765 ナウス。 ナウス。 301 00:24:30,765 --> 00:24:34,535 という事は 鼻はナウスか。 早速 一つ 解けましたな。 302 00:24:34,535 --> 00:24:38,406 ああ 待たれよ! 確かに 線は鼻の部分を指しているが➡ 303 00:24:38,406 --> 00:24:43,544 これは 鼻全体を示しているのか 鼻の頭の部分なのか➡ 304 00:24:43,544 --> 00:24:47,844 はたまた 顔の穴なのか。 305 00:24:52,887 --> 00:24:55,222 とりあえず 鼻で いいでしょう。 306 00:24:55,222 --> 00:24:58,222 (淳庵)ナウスは鼻なり。 307 00:25:04,899 --> 00:25:11,238 では ナウスの解説文を見てみましょう。 308 00:25:11,238 --> 00:25:15,109 この説明文の中に 何か 知っている言葉はありませんか? 309 00:25:15,109 --> 00:25:19,580 このデやデーという短い言葉は 助語の類い。 310 00:25:19,580 --> 00:25:22,616 これらを除くと 気になる長い単語が残ります。 311 00:25:22,616 --> 00:25:24,919 つまり これが 鼻の説明に欠かせない言葉➡ 312 00:25:24,919 --> 00:25:28,255 という事になりますね。 すばらしい! 313 00:25:28,255 --> 00:25:31,292 何と読むのです? ベルヘベネ? 314 00:25:31,292 --> 00:25:33,861 聞いた事もないなあ ベルヘベネ。 315 00:25:33,861 --> 00:25:36,363 フルヘイヴェヌ! フルヘ… えっ? 316 00:25:36,363 --> 00:25:40,163 聞いた事あるぞ! では 私は こちらを。 317 00:25:42,169 --> 00:25:45,169 先 行きません? 318 00:25:46,874 --> 00:25:49,210 細かい事に こだわっていたら➡ 319 00:25:49,210 --> 00:25:51,879 一生 出版なんかできませんけどね。 320 00:25:51,879 --> 00:25:55,749 何年かかっても構わないと あなたは言った! 321 00:25:55,749 --> 00:26:00,554 はっきり言って 鼻がネウスでも ニウスでも いいんですよ! 322 00:26:00,554 --> 00:26:03,457 もっと大事な場所が いくらでもあると思うんです! 323 00:26:03,457 --> 00:26:06,227 こことか こことか ほら! 324 00:26:06,227 --> 00:26:08,562 いちいち こんなところで つっかえていたら➡ 325 00:26:08,562 --> 00:26:10,498 訳し終えるまで 百年はかかる! 326 00:26:10,498 --> 00:26:12,433 あなたは 間違えている。 あ? 327 00:26:12,433 --> 00:26:15,733 鼻は ナウスです。 328 00:26:18,906 --> 00:26:20,906 失礼しました。 329 00:26:24,778 --> 00:26:29,250 フルヘイヴェヌ 載ってませんね。 フルヘイヴェヌ! 330 00:26:29,250 --> 00:26:31,185 載ってましたか? ありました! 331 00:26:31,185 --> 00:26:34,522 でも この説明文の中に 知っている言葉は なかった。 332 00:26:34,522 --> 00:26:37,358 え~! 轡十文字~! 333 00:26:37,358 --> 00:26:40,027 フルヘイヴェヌ? (淳庵)はい? 334 00:26:40,027 --> 00:26:45,227 フルヘイヴェヌなら ここにも出てますよ。 ほら この女の裸の絵。 335 00:26:46,800 --> 00:26:50,037 乳房のところ 見て下さい。 ここに 印があるでしょう。 336 00:26:50,037 --> 00:26:53,073 で 同じ印が こっちの説明文の中にもあって➡ 337 00:26:53,073 --> 00:26:55,543 そこから たどると ほら。 338 00:26:55,543 --> 00:26:58,445 (淳庵)フルヘイヴェヌ! 同じだ! 339 00:26:58,445 --> 00:27:03,217 鼻と乳房の両方に通じるものは? 鼻と乳房の共通点…。 340 00:27:03,217 --> 00:27:05,152 膨らみではないですか? 341 00:27:05,152 --> 00:27:09,890 女の乳房は膨らみ そして 鼻も 顔の真ん中で膨らんでいる。 342 00:27:09,890 --> 00:27:12,393 それだ! しかし鼻を膨らみと言うだろうか。 343 00:27:12,393 --> 00:27:15,893 そこは いいのでは? 何か もっと ふさわしい言葉が…。 344 00:27:17,565 --> 00:27:20,901 うずたかし。 うずたかし? 345 00:27:20,901 --> 00:27:23,804 隆起の事でござる。 346 00:27:23,804 --> 00:27:28,242 鼻は 顔の中で隆起し 乳房は 胸で隆起している。 347 00:27:28,242 --> 00:27:32,513 それだ! フルヘイヴェヌとは 隆起している事なり。 348 00:27:32,513 --> 00:27:36,183 淳庵殿 書き留めて下され。 かしこまりました! 349 00:27:36,183 --> 00:27:39,853 これで また 一歩 前へ進みました。 350 00:27:39,853 --> 00:27:42,853 おめでとうございます! 351 00:27:45,526 --> 00:27:49,826 一歩ずつ 一歩ずつ。 352 00:27:52,199 --> 00:27:54,199 (峰子)失礼します。 353 00:28:00,874 --> 00:28:03,777 何故 黙って立ち去る? はい? 354 00:28:03,777 --> 00:28:05,746 いつものように 「はかどりましたか?」と➡ 355 00:28:05,746 --> 00:28:10,884 聞いてはもらえませんか? お仕事 はかどりましたか? 356 00:28:10,884 --> 00:28:13,220 はかどりました! それは ようございました。 357 00:28:13,220 --> 00:28:15,889 今日は 実に いい調子だ。 358 00:28:15,889 --> 00:28:19,889 この分でいくと あっという間に 最後まで行きそうですね! 359 00:28:26,533 --> 00:28:29,903 失礼致しました。 360 00:28:29,903 --> 00:28:34,675 良沢たちの翻訳作業が始まって 1年近くたった頃➡ 361 00:28:34,675 --> 00:28:37,675 一つの不幸があった。 362 00:28:40,481 --> 00:28:44,385 良沢の長女は 原因不明の高熱を出し➡ 363 00:28:44,385 --> 00:28:48,685 あっという間に 息を引き取った。 364 00:28:54,862 --> 00:28:57,531 ≪(珉子)失礼致します。 365 00:28:57,531 --> 00:28:59,831 何だ? 366 00:29:03,203 --> 00:29:07,074 お富士のそばに いて下さるわけにはいきませんか。 367 00:29:07,074 --> 00:29:09,074 仕事中だ。 368 00:29:14,815 --> 00:29:17,815 今夜くらいは! 369 00:29:20,220 --> 00:29:23,891 私は医者だ。 370 00:29:23,891 --> 00:29:28,562 息があれば どんな手も尽くそう。 371 00:29:28,562 --> 00:29:35,369 だが 死んでしまえば 何もできん。 372 00:29:35,369 --> 00:29:38,369 そばにいても しかたがない。 373 00:29:40,507 --> 00:29:42,807 行きなさい。 374 00:29:47,848 --> 00:29:51,148 失礼致しました…。 375 00:30:07,534 --> 00:30:09,734 よろしいんですか? 376 00:30:14,875 --> 00:30:21,215 もし この本が もっと早く 世に出ていれば➡ 377 00:30:21,215 --> 00:30:26,915 娘は 死なずに済んだのかもしれない。 378 00:30:28,889 --> 00:30:34,228 一日 休めば それだけ 完成が遅くなる。 379 00:30:34,228 --> 00:30:36,897 休んでいる暇はありません! 380 00:30:36,897 --> 00:30:39,197 さあ! 381 00:30:50,911 --> 00:30:52,911 失礼。 382 00:30:56,250 --> 00:31:15,936 ♬~(笛) 383 00:31:15,936 --> 00:31:19,439 笛 吹いてるなら 行けばいいのに。 384 00:31:19,439 --> 00:31:30,150 ♬~(笛) 385 00:31:30,150 --> 00:31:41,762 ♬~(笛) (すすり泣き) 386 00:31:41,762 --> 00:31:57,462 ♬~(笛) 387 00:32:08,789 --> 00:32:16,530 この部分は 腑分けに入り用な 12個の道具についての説明です。 388 00:32:16,530 --> 00:32:19,266 ターフルは盤➡ 389 00:32:19,266 --> 00:32:22,169 メッセンは短刀➡ 390 00:32:22,169 --> 00:32:25,138 プリイムは錐➡ 391 00:32:25,138 --> 00:32:28,275 パイペンは管➡ 392 00:32:28,275 --> 00:32:31,178 ワシリフトは刷毛➡ 393 00:32:31,178 --> 00:32:34,081 ナールデンは針➡ 394 00:32:34,081 --> 00:32:36,884 ハアレンは糸。 395 00:32:36,884 --> 00:32:39,553 良沢殿は 全ての単語を覚えておられる。 396 00:32:39,553 --> 00:32:42,222 さすがですな! 全く。 397 00:32:42,222 --> 00:32:46,093 そのような言葉は ご無用。 398 00:32:46,093 --> 00:32:49,563 スハアレンは鋏➡ 399 00:32:49,563 --> 00:32:52,466 ハメルは金槌➡ 400 00:32:52,466 --> 00:32:55,435 ベイテルは鑿➡ 401 00:32:55,435 --> 00:32:58,272 スポイトは水鉄砲。 402 00:32:58,272 --> 00:33:01,909 水鉄砲!? 私も不思議に思っていた。 403 00:33:01,909 --> 00:33:04,945 水鉄砲 知らないんですか? 水鉄砲は知っておりますが➡ 404 00:33:04,945 --> 00:33:08,248 腑分けに水鉄砲というのが 妙だと申しておるのです。 405 00:33:08,248 --> 00:33:10,918 阿蘭陀人の考える事は よく分からん。 406 00:33:10,918 --> 00:33:12,853 そして スポンギウス。 407 00:33:12,853 --> 00:33:16,790 このスポンギウスさえ分かれば この項は完成するのだが。 408 00:33:16,790 --> 00:33:20,260 (淳庵)スポンギウス…。 409 00:33:20,260 --> 00:33:23,597 このスポンギウスの説明文だが➡ 410 00:33:23,597 --> 00:33:26,934 ゼイイという言葉が出てくる。 これが気になる。 411 00:33:26,934 --> 00:33:29,269 こちらで ゼイイをひくと やたら 説明文が長く➡ 412 00:33:29,269 --> 00:33:33,540 そのくせ 知った言葉が出てこないのです。 413 00:33:33,540 --> 00:33:37,210 スポンギウスの説明にある ヘエルという言葉。 414 00:33:37,210 --> 00:33:40,714 分かりました? ヘエルとは 黄色の事です。 415 00:33:40,714 --> 00:33:44,885 スポンギウスとは 黄色いもの。 ひよこ? 416 00:33:44,885 --> 00:33:49,585 そのあとのメニヒを調べて下さい。 かしこまりました。 417 00:33:51,558 --> 00:33:53,493 スポンギウスは 黄色いもの。 418 00:33:53,493 --> 00:33:55,429 それが分かっただけでも よしとしませんか? 419 00:33:55,429 --> 00:33:58,899 (淳庵)メニヒは載っておりませんね。 そうですか…。 420 00:33:58,899 --> 00:34:02,569 先 行きましょう 先! 421 00:34:02,569 --> 00:34:06,239 手がかりが欲しい。 何か 別の言葉を。 422 00:34:06,239 --> 00:34:10,077 スポンギウスは ヘエルで クレインで ハアツなもの。 423 00:34:10,077 --> 00:34:12,579 クレイン… クレインとは 確か…。 424 00:34:12,579 --> 00:34:14,915 あっ 小さき事! 425 00:34:14,915 --> 00:34:17,584 つまり スポンギウスは 黄色くて小さいものか…。 426 00:34:17,584 --> 00:34:21,922 次は ハアツ! (淳庵)ハアツ! 427 00:34:21,922 --> 00:34:24,825 ハアツは 穴の事ですね。 428 00:34:24,825 --> 00:34:27,794 なぜ 知っている? 429 00:34:27,794 --> 00:34:31,732 という事は スポンギウスとは 黄色く小さい穴。 430 00:34:31,732 --> 00:34:35,202 黄色くて小さい穴…。 431 00:34:35,202 --> 00:34:37,537 さっぱり分からない。 432 00:34:37,537 --> 00:34:41,408 やはり ゼイイという言葉が気になる。 433 00:34:41,408 --> 00:34:46,546 ゼイイの説明文は 非常に長い。 そこから推察するに➡ 434 00:34:46,546 --> 00:34:50,417 ゼイイとは 説明するに 多くの言葉を要するものらしい。 435 00:34:50,417 --> 00:34:52,419 複雑なものですか? 436 00:34:52,419 --> 00:34:55,255 もしかしたら 計り知れぬほど 大きなもの。 大きなもの! 437 00:34:55,255 --> 00:34:57,557 ひょっとして 国の名前かもしれん。 438 00:34:57,557 --> 00:35:00,227 確かに説明するのに 多くの言葉を要しますね! 439 00:35:00,227 --> 00:35:04,527 スポンギウスとは その土地の特産品かもしれない。 440 00:35:06,566 --> 00:35:10,437 あっ! ゼイイとは…。 441 00:35:10,437 --> 00:35:14,241 あっ ゼイイという言葉の説明文に ニイトという言葉がある。 442 00:35:14,241 --> 00:35:17,144 ニイトとは 「さにあらず」の意味。 443 00:35:17,144 --> 00:35:21,114 このニイトが こちらのランドに 掛かっている。 すなわち! 444 00:35:21,114 --> 00:35:23,583 ゼイイは ランドにあらずか! 445 00:35:23,583 --> 00:35:25,919 ランドを すぐに調べて! はい! 446 00:35:25,919 --> 00:35:28,255 ゼイイは ランドにあらず ゼイイは ランドにあらず。 447 00:35:28,255 --> 00:35:30,590 ゼイイは ランドにあらず ゼイイは ランドにあらず。 448 00:35:30,590 --> 00:35:33,860 (淳庵) ランドとは 土地の事にございます! 449 00:35:33,860 --> 00:35:37,197 ゼイイは 土地にあらず…。 450 00:35:37,197 --> 00:35:39,533 海だ! そうか! 451 00:35:39,533 --> 00:35:45,872 つまり スポンギウスは 海で採れ 黄色く 小さい穴が開いているものだ! 452 00:35:45,872 --> 00:35:49,172 一体 何の事やら…。 453 00:35:51,211 --> 00:35:54,881 それって 水吸いの事じゃないか? 水吸い? 454 00:35:54,881 --> 00:35:56,817 海から採れて 色は黄色く➡ 455 00:35:56,817 --> 00:35:59,553 小さき穴が たくさん開いている といえば 水吸いしかない。 456 00:35:59,553 --> 00:36:02,456 あれなら 我ら医師も 治療の時に よく使う! 457 00:36:02,456 --> 00:36:04,424 海綿か! 458 00:36:04,424 --> 00:36:07,227 だとすると 先ほど分からなかったメニヒは➡ 459 00:36:07,227 --> 00:36:09,896 数多くという意味では ないでしょうか。 460 00:36:09,896 --> 00:36:13,233 メニヒ クレイン ハアツ。 461 00:36:13,233 --> 00:36:17,104 数多き 小さき 穴。 つながった! 462 00:36:17,104 --> 00:36:20,006 メニヒ クレイン ハアツ! 463 00:36:20,006 --> 00:36:24,578 (一同)数多き 小さき 穴~! 464 00:36:24,578 --> 00:36:30,450 (歓声と笑い声) 465 00:36:30,450 --> 00:36:32,853 (笑い声) 失礼…。 466 00:36:32,853 --> 00:36:36,189 次へ参りましょうか。 (3人)はい! 467 00:36:36,189 --> 00:36:38,125 (甫周)では どこから始めますか。 468 00:36:38,125 --> 00:36:40,060 それは 心の臓と肺の臓に 決まってるでしょ。 469 00:36:40,060 --> 00:36:42,529 いや 1から順番に行きましょう。 1って何ですか? 470 00:36:42,529 --> 00:36:44,865 まずは 額からです。 はあ? 471 00:36:44,865 --> 00:36:47,767 額が どこから どこまで 額か。 ここから ここまでですよ。 472 00:36:47,767 --> 00:36:49,736 (甫周)骨 行きましょうよ 骨から。 473 00:36:49,736 --> 00:36:51,738 骨なんか 一番最後に決まってるでしょ。 474 00:36:51,738 --> 00:36:53,874 1から行きましょう。 まずは額ですよ。 475 00:36:53,874 --> 00:36:57,544 だから ここから ここまで…。 骨でいいじゃないですか 骨で。 476 00:36:57,544 --> 00:37:00,844 骨なんて 一番最後に 決まってるって さっきから…。 477 00:37:04,217 --> 00:37:09,890 大願成就の近からん事 お祈り申し上げます。 478 00:37:09,890 --> 00:37:17,564 ♬~ 479 00:37:17,564 --> 00:37:22,864 4人は 4日に一度 良沢の屋敷に集った。 480 00:37:25,238 --> 00:37:29,109 淳庵 甫周と共に 訳語を検討しながら➡ 481 00:37:29,109 --> 00:37:32,846 良沢が中心となって 下訳を作り➡ 482 00:37:32,846 --> 00:37:37,184 玄白が それを 漢文の文章に まとめていく。 483 00:37:37,184 --> 00:37:39,119 (甫周)できました! 484 00:37:39,119 --> 00:37:42,055 すばらしい 甫周殿! 良沢さん! 485 00:37:42,055 --> 00:37:45,525 い~らない! おいおい 何するんだ! 486 00:37:45,525 --> 00:38:02,075 ♬~ 487 00:38:02,075 --> 00:38:07,547 元号が間もなく 明和から安永に かわると決まった頃➡ 488 00:38:07,547 --> 00:38:10,450 不明な点は まだ多く残っていたが➡ 489 00:38:10,450 --> 00:38:15,222 4人の作業は 「ターヘル・アナトミア」の最終章へと➡ 490 00:38:15,222 --> 00:38:20,093 ついに たどりついた。 491 00:38:20,093 --> 00:38:22,896 できた! 492 00:38:22,896 --> 00:38:40,696 ♬~ 493 00:38:47,520 --> 00:38:49,856 源内さん! 494 00:38:49,856 --> 00:38:52,692 お~ 読み分けは進んでるかい? 495 00:38:52,692 --> 00:38:54,728 おかげさまで! そりゃ 結構。 496 00:38:54,728 --> 00:38:56,863 今日は どちらへ? 497 00:38:56,863 --> 00:39:00,734 ちょっと 野暮用で 秩父まで行ってくるよ。 秩父? 498 00:39:00,734 --> 00:39:03,203 うん 田沼のおっさんに頼まれてね。 499 00:39:03,203 --> 00:39:05,138 新しく老中になられた? (源内)そうだよ。 500 00:39:05,138 --> 00:39:08,074 源内さんは 田沼様と お親しいのですか? 501 00:39:08,074 --> 00:39:12,379 田沼様に頼みたい事があったら 口きいてやってもいいぜ。 502 00:39:12,379 --> 00:39:14,579 じゃあ。 503 00:39:16,216 --> 00:39:19,552 田沼… 悪い評判しか聞かないが。 504 00:39:19,552 --> 00:39:24,224 金に汚いという話ですね。 どんな世の中になっていくのか。 505 00:39:24,224 --> 00:39:26,893 玄白殿! ハハハハハ! 506 00:39:26,893 --> 00:39:28,828 これは これは。 507 00:39:28,828 --> 00:39:32,165 仙台伊達家の工藤平助さん。 医者仲間だ。 508 00:39:32,165 --> 00:39:35,835 工藤です! 509 00:39:35,835 --> 00:39:38,738 阿蘭陀医術の本を訳されていると 聞きました。 510 00:39:38,738 --> 00:39:40,707 はい。 511 00:39:40,707 --> 00:39:42,707 ちょっと。 512 00:39:46,179 --> 00:39:52,052 いらぬ世話かもしれませんが 「紅毛談」の事は ご存じですな? 513 00:39:52,052 --> 00:39:55,522 何でしたっけ? 後藤なんとかという学者が書いた。 514 00:39:55,522 --> 00:39:59,025 大した中身でもないのに 阿蘭陀イロハが記されてるからって➡ 515 00:39:59,025 --> 00:40:02,862 作者は お咎めを受けて 本は発禁になってしまった。 516 00:40:02,862 --> 00:40:06,533 あなた方も 気を付けられよ! ありがとうございます。 517 00:40:06,533 --> 00:40:10,870 私もいずれ おろしや国についての 本を書こうと思っております。 518 00:40:10,870 --> 00:40:12,806 それをもって➡ 519 00:40:12,806 --> 00:40:16,376 北の守りが いかに手薄かを 世間に知らせるつもり! 520 00:40:16,376 --> 00:40:18,411 そっちの方が よっぽど危ないじゃないですか。 521 00:40:18,411 --> 00:40:24,117 お互いに頑張りましょう! ハハハ! ハハハハ! 522 00:40:24,117 --> 00:40:26,086 工藤平助。 523 00:40:26,086 --> 00:40:28,888 後に 「赤蝦夷風説考」を書き➡ 524 00:40:28,888 --> 00:40:32,759 北から来るロシアの存在を 世に知らしめる。 525 00:40:32,759 --> 00:40:36,396 そのような事を恐れて何ができる。 もちろん そうですが。 526 00:40:36,396 --> 00:40:38,431 しかし ここは うまく立ち回らねば 大変な事に。 527 00:40:38,431 --> 00:40:42,736 私は 牢に入れられても構わぬ。 なすべき事をなすだけじゃ! 528 00:40:42,736 --> 00:40:44,771 良沢殿! もうよい。 529 00:40:44,771 --> 00:40:47,073 しかし…。 530 00:40:47,073 --> 00:40:51,273 いよいよ 桂川の出番のようだ。 531 00:40:52,879 --> 00:40:56,583 (甫三)息子が 足を引っ張ってはおらんかな? 532 00:40:56,583 --> 00:41:00,253 とんでもない。 なんとか やっております。 533 00:41:00,253 --> 00:41:04,591 (甫三)阿蘭陀医術を学ぶに これ以上の機会はないと思え。 534 00:41:04,591 --> 00:41:06,926 心して励みます。 535 00:41:06,926 --> 00:41:09,829 法眼様 本日は 是非とも お願いしたい事があり➡ 536 00:41:09,829 --> 00:41:11,798 参上致しました。 537 00:41:11,798 --> 00:41:15,935 な~んでも申されるがよい。 ハハハハハ! 538 00:41:15,935 --> 00:41:18,605 (甫周)「たあへるあなとみあ」を 世に出すにあたっては➡ 539 00:41:18,605 --> 00:41:21,941 この後 強い逆風に さらされる事でしょう。 540 00:41:21,941 --> 00:41:26,446 特に 漢方の奥医師の皆様が黙って 見ているはずもございません。 541 00:41:26,446 --> 00:41:29,949 (甫三)ワハハハハ! 542 00:41:29,949 --> 00:41:34,788 何とぞ その際は 父上に お力添えをお願いしたく。 543 00:41:34,788 --> 00:41:37,757 任せておけ。 うむ。 544 00:41:37,757 --> 00:41:39,759 ハハハハハ! 545 00:41:39,759 --> 00:41:43,897 法眼様が 力になって下されば これほど うれしい事はない。 546 00:41:43,897 --> 00:41:47,767 力になるかなあ。 えっ? 547 00:41:47,767 --> 00:41:50,236 割と流される人だから。 548 00:41:50,236 --> 00:41:53,536 あんまり 当てにしない方がいいと 思いますよ。 549 00:41:58,578 --> 00:42:00,878 (甫周・小声で)漢方医たちです。 550 00:42:16,963 --> 00:42:19,966 法眼様は 守って下さらないのですか…。 551 00:42:19,966 --> 00:42:23,466 これでは 何のために甫周を誘ったのか…。 552 00:42:28,274 --> 00:42:30,574 行こう。 553 00:42:34,881 --> 00:42:36,816 (淳庵)誰なんです? 554 00:42:36,816 --> 00:42:39,516 漢方医の連中にでも 雇われたんだろ。 555 00:42:44,557 --> 00:42:48,857 私は 一介の医者です。 乱暴は やめて頂きたい。 556 00:42:50,430 --> 00:42:52,899 話しても無駄なようだな。 557 00:42:52,899 --> 00:42:55,735 構わぬ やっておしまい! 558 00:42:55,735 --> 00:42:59,235 え~っ!? 痛っ! この野郎! 559 00:43:03,243 --> 00:43:05,243 うわっ! 560 00:43:13,887 --> 00:43:17,087 ≪待て待て待て~! 561 00:43:19,792 --> 00:43:23,563 何があったかは知らないが➡ 562 00:43:23,563 --> 00:43:28,401 お医者様は 人の命を救う大事なお方。 563 00:43:28,401 --> 00:43:30,601 は~っ! 564 00:43:32,872 --> 00:43:36,543 狼藉はならん。 誰だ おぬし! 565 00:43:36,543 --> 00:43:40,046 通りすがりの名もなき侍よ。 566 00:43:40,046 --> 00:43:53,560 ♬~ 567 00:43:53,560 --> 00:43:55,495 峰打ちだ! 568 00:43:55,495 --> 00:43:59,232 ありがとうございます! 貴殿のお名前は? 569 00:43:59,232 --> 00:44:01,901 名乗るほどの者じゃござらん。 570 00:44:01,901 --> 00:44:04,404 さらば。 あ~! 571 00:44:04,404 --> 00:44:06,439 林 子平。 572 00:44:06,439 --> 00:44:09,909 やがて 幕府に対して 国防の必要性を説く➡ 573 00:44:09,909 --> 00:44:15,248 「海国兵談」を著す事になる。 574 00:44:15,248 --> 00:44:20,248 峰打ちも 骨 折れたりして 結構 大変なんだけどなあ。 575 00:44:24,424 --> 00:44:28,928 このころから 4人で集う機会は次第に減り➡ 576 00:44:28,928 --> 00:44:33,766 良沢は 独りで 作業するようになっていた。 577 00:44:33,766 --> 00:44:35,766 父上。 578 00:44:43,876 --> 00:44:48,047 玄白が出版に向けて 根回しを進める一方➡ 579 00:44:48,047 --> 00:44:53,553 良沢は 翻訳の精度を上げる事に 没頭していく。 580 00:44:53,553 --> 00:44:55,488 正直に申せば➡ 581 00:44:55,488 --> 00:44:57,724 この本が出版される事を よしとしない輩もおります。 582 00:44:57,724 --> 00:45:00,560 確かに これは危ない。 フフフ…。 583 00:45:00,560 --> 00:45:02,495 しかし これが世に出れば➡ 584 00:45:02,495 --> 00:45:05,431 この国の医術は 根本から変わります。 585 00:45:05,431 --> 00:45:07,900 多くの人の命を 救う事ができるのです。 586 00:45:07,900 --> 00:45:10,236 それは 私どもの知った事では ございません。 587 00:45:10,236 --> 00:45:13,906 何が書いてあるのかも ちんぷんかんぷん。 588 00:45:13,906 --> 00:45:16,606 失礼致した。 589 00:45:21,247 --> 00:45:23,547 先生! 590 00:45:25,918 --> 00:45:28,588 先ほど おっしゃいましたよね。 591 00:45:28,588 --> 00:45:34,394 これが出れば 医者は必ず買うと。 買わない医者は 医者ではないと。 592 00:45:34,394 --> 00:45:37,196 はい。 593 00:45:37,196 --> 00:45:41,034 日本全国 医者の数は 10万は下りますまい。 594 00:45:41,034 --> 00:45:45,538 って事は いまだ かつてない 売れ行きの本になる。 595 00:45:45,538 --> 00:45:47,473 では…。 596 00:45:47,473 --> 00:45:50,877 私にとって よい本とは 売れる本の事。 597 00:45:50,877 --> 00:45:55,577 喜んで お引き受け致しましょう。 ハハハハハ! 598 00:45:59,218 --> 00:46:02,121 須原屋市兵衛。 599 00:46:02,121 --> 00:46:05,892 平賀源内や 林 子平などの 先鋭的な本を➡ 600 00:46:05,892 --> 00:46:08,892 好んで出版した事で知られている。 601 00:46:15,234 --> 00:46:19,572 版元と話がつきました。 これで 本が出せます! 602 00:46:19,572 --> 00:46:24,911 おめでとうございます。 良沢殿! 603 00:46:24,911 --> 00:46:28,711 玄白殿 ご苦労でござった。 604 00:46:30,583 --> 00:46:33,853 あなたに そう言って頂けると…。 605 00:46:33,853 --> 00:46:36,189 この前野良沢➡ 606 00:46:36,189 --> 00:46:42,061 命ある限り 阿蘭陀語の読み分けに 取り組むつもりです。 607 00:46:42,061 --> 00:46:45,198 ようやく分かったのです。 608 00:46:45,198 --> 00:46:47,867 これを成し遂げるために➡ 609 00:46:47,867 --> 00:46:52,205 私は この世に生まれてきたのだと。 610 00:46:52,205 --> 00:46:55,875 時に 新しい訳を2つ考えました。 611 00:46:55,875 --> 00:46:57,875 すばらしい。 612 00:46:59,545 --> 00:47:04,845 トロムル・フリースは 太鼓の膜で鼓膜。 613 00:47:06,419 --> 00:47:09,889 懸案としていた➡ 614 00:47:09,889 --> 00:47:12,792 十二の指幅の腸ですが➡ 615 00:47:12,792 --> 00:47:19,565 これについて 思い切ってそのまま 十二指腸では いかがかと。 616 00:47:19,565 --> 00:47:21,501 十二指腸。 はい。 617 00:47:21,501 --> 00:47:25,438 声に出してみると 語呂もいい。 618 00:47:25,438 --> 00:47:27,438 よいと思います。 619 00:47:34,514 --> 00:47:40,186 あの人は もはや 医術よりも 言葉の世界に 心を奪われている。 620 00:47:40,186 --> 00:47:43,486 (淳庵)そのようですね。 621 00:47:46,859 --> 00:47:50,730 我らとは別の道を 歩んでいかれるのか。 622 00:47:50,730 --> 00:48:11,083 ♬~ 623 00:48:11,083 --> 00:48:13,085 (たたく音) 624 00:48:13,085 --> 00:48:21,227 ♬~ 625 00:48:21,227 --> 00:48:23,527 中川殿! 626 00:48:25,398 --> 00:48:27,433 出版は中止だ! お待ち下さい。 627 00:48:27,433 --> 00:48:30,570 このままでは世に出せぬ! こじつけが多すぎる! 628 00:48:30,570 --> 00:48:32,505 意味は通じてるんですから。 629 00:48:32,505 --> 00:48:34,440 我らは 何度も何度も読み直しました。 630 00:48:34,440 --> 00:48:36,843 少なくとも 命取りになるような 大間違いは もうありません。 631 00:48:36,843 --> 00:48:40,513 この本で 日本の医術は 新しい時代を迎えるのです。 632 00:48:40,513 --> 00:48:43,182 なればこそ 些細な誤りも あってはならんのだ! 633 00:48:43,182 --> 00:48:45,518 まず 一石を投じる事が 我らの使命。 634 00:48:45,518 --> 00:48:47,854 後に続く者のためにも 急ぐべきです! 635 00:48:47,854 --> 00:48:50,756 的外れの石は投げられぬ! せめて 己の納得できる…。 636 00:48:50,756 --> 00:48:52,725 どうせ あんた 納得なんてしないだろう! 637 00:48:52,725 --> 00:48:54,727 いつになったって! 玄白殿! 638 00:48:54,727 --> 00:48:57,196 とにかく このまま出す事は 私の良心が許さない! 639 00:48:57,196 --> 00:48:59,131 この頑固者! まあまあ。 640 00:48:59,131 --> 00:49:01,067 何と言われようが結構! まあまあ! 641 00:49:01,067 --> 00:49:03,536 わがままにも ほどがある! 642 00:49:03,536 --> 00:49:07,406 (淳庵)あの方は 完璧な翻訳を 目指したいだけなのです。 643 00:49:07,406 --> 00:49:10,877 要するに あいつは 格好つけてるんだ。 644 00:49:10,877 --> 00:49:13,212 人に何か言われるのが 怖いんだよ。 645 00:49:13,212 --> 00:49:17,083 だけどね 世の中には 多少の恥をかいてでも➡ 646 00:49:17,083 --> 00:49:21,087 やらなきゃいけない事が あるんだ! 参りましたね。 647 00:49:21,087 --> 00:49:26,559 あいつの言いなりになってたら いつになったって 本は出せん。 648 00:49:26,559 --> 00:49:29,859 何か 手を打たねばならんな。 649 00:49:31,430 --> 00:49:34,367 予告? 先に予告を出すのです。 650 00:49:34,367 --> 00:49:39,138 そして 良沢殿には 心行くまで 翻訳を続けてもらう。 651 00:49:39,138 --> 00:49:42,041 それで折れてはもらえませんか? 652 00:49:42,041 --> 00:49:44,043 予告…。 653 00:49:44,043 --> 00:49:47,847 本文は後にして 図版の部分だけ 先に出すのです。 654 00:49:47,847 --> 00:49:53,185 骨ヶ原で我々が受けた衝撃を 世の人々に味わってもらうのです。 655 00:49:53,185 --> 00:49:56,885 なるほど。 どうか! 656 00:49:59,058 --> 00:50:02,528 お任せ致す。 かたじけない。 657 00:50:02,528 --> 00:50:07,199 名は「解体約図」と致します。 約図…。 658 00:50:07,199 --> 00:50:12,538 そして いずれ出す本編の名は このように。 659 00:50:12,538 --> 00:50:15,207 「解体新書」。 660 00:50:15,207 --> 00:50:21,547 体内を解き明かしたる新しき書。 661 00:50:21,547 --> 00:50:23,482 よい名だ。 662 00:50:23,482 --> 00:50:25,885 ありがとうございます。 663 00:50:25,885 --> 00:50:31,885 予告倒れにならないよう 私も 一層 頑張らねばならんな。 664 00:50:34,894 --> 00:50:37,797 安永2年1月。 665 00:50:37,797 --> 00:50:41,767 まずは 「解体約図」が刊行された。 666 00:50:41,767 --> 00:50:46,906 人体図3枚に解説がついただけの 簡単なものである。 667 00:50:46,906 --> 00:50:52,606 カバーには「解体新書」の発売予告が 記されていた。 668 00:50:55,247 --> 00:50:59,118 あなた様のお名前が どこにもございませんが。 669 00:50:59,118 --> 00:51:01,587 ああ そのようだな。 670 00:51:01,587 --> 00:51:05,458 あるのは 玄白さんと淳庵さんのお名前だけ。 671 00:51:05,458 --> 00:51:07,460 この事に関しては➡ 672 00:51:07,460 --> 00:51:09,762 私は一切 関知しておらんのだ。 でも…。 673 00:51:09,762 --> 00:51:13,265 任せると言ったのは 私なのだ。 だからって…。 674 00:51:13,265 --> 00:51:17,603 お富士が死んだ夜も あなた様は この仕事に打ち込まれました。 675 00:51:17,603 --> 00:51:19,538 なぜ 名前がないのです! 676 00:51:19,538 --> 00:51:23,275 名前のあるなしなんぞ 小さな事だ。 677 00:51:23,275 --> 00:51:27,947 あの子も これでは浮かばれません…。 678 00:51:27,947 --> 00:51:30,247 (すすり泣き) 679 00:51:33,552 --> 00:51:37,223 これで 良沢のおっさんも 後には引けなくなった。 680 00:51:37,223 --> 00:51:40,126 出版は中止なんて 二度と言わせない。 681 00:51:40,126 --> 00:51:42,561 しかし 本文がないとはいえ➡ 682 00:51:42,561 --> 00:51:48,434 良沢殿の名前を外したのは やはり 胸が痛みますね。 683 00:51:48,434 --> 00:51:51,570 「解体新書」を世に出すためだ。 684 00:51:51,570 --> 00:51:54,240 どういう事です? 685 00:51:54,240 --> 00:51:58,110 仮に私が捕まっても 良沢殿さえ残っていれば➡ 686 00:51:58,110 --> 00:52:01,914 「解体新書」は いずれ 完成する。 なるほど! 687 00:52:01,914 --> 00:52:06,786 全ては 良沢殿を守るため。 「解体新書」を守るため。 688 00:52:06,786 --> 00:52:10,589 ひいては この国の医術の行く末を 守るため。 689 00:52:10,589 --> 00:52:13,589 お見それしました! 690 00:52:16,262 --> 00:52:22,601 しかし そうなると 私の名前を 載せたのは どういうわけです? 691 00:52:22,601 --> 00:52:25,901 私一人で捕まるのは 淋しいじゃないか。 ええっ! 692 00:52:53,566 --> 00:52:59,238 おうおうおう 源内。 秩父の事 すまなかったな。 693 00:52:59,238 --> 00:53:01,173 私の言うとおりに 山を掘っていれば➡ 694 00:53:01,173 --> 00:53:03,909 間違いなく 鉱脈が見つかったってのに。 695 00:53:03,909 --> 00:53:07,246 せっかく お前をやって 儲けさせてやろうと思ったのに。 696 00:53:07,246 --> 00:53:09,915 馬鹿なやつらだ。 697 00:53:09,915 --> 00:53:14,215 本日は 面白いものを持ってまいりました。 698 00:53:16,255 --> 00:53:18,591 エレキテルにございます。 699 00:53:18,591 --> 00:53:20,526 エレキテル? 700 00:53:20,526 --> 00:53:22,928 阿蘭陀人が 長崎に持ち込んだものを➡ 701 00:53:22,928 --> 00:53:25,831 私なりに工夫して作ってみました。 702 00:53:25,831 --> 00:53:30,131 何をするものだ? まあ ご覧あれ。 703 00:53:41,413 --> 00:53:57,563 ♬~ 704 00:53:57,563 --> 00:53:59,498 源内。 はい。 705 00:53:59,498 --> 00:54:04,236 見事だな。 ありがとうございます。 706 00:54:04,236 --> 00:54:07,907 で これが何の役に立つ? 707 00:54:07,907 --> 00:54:11,407 さあ 分かりませぬ。 708 00:54:14,580 --> 00:54:17,580 お前らしいな。 709 00:54:21,253 --> 00:54:25,925 先日 お話しした 杉田玄白にございます。 710 00:54:25,925 --> 00:54:29,795 阿蘭陀医術では 当代随一。 711 00:54:29,795 --> 00:54:33,732 阿蘭陀語の知識に関しても 私と並びます。 712 00:54:33,732 --> 00:54:35,734 お初にお目にかかりまする。 713 00:54:35,734 --> 00:54:40,873 なんとかという向こうの書物の 読み分けをしておるそうじゃな。 714 00:54:40,873 --> 00:54:43,209 この度 ようやく その一部を➡ 715 00:54:43,209 --> 00:54:45,544 予告として出版する事に 相成りました。 716 00:54:45,544 --> 00:54:50,244 お目汚しながら ご高覧賜れば 幸いでございます。 717 00:54:59,558 --> 00:55:02,228 (意次)玄白。 はい。 718 00:55:02,228 --> 00:55:06,065 わしを金に目がない男だと 思っておるか。 719 00:55:06,065 --> 00:55:09,902 そのような…。 構わん。 そのとおりじゃ。 720 00:55:09,902 --> 00:55:15,774 だが 玄白 これは何じゃ? は? 721 00:55:15,774 --> 00:55:19,245 こんな端金に わしが喜ぶと思うたか。 722 00:55:19,245 --> 00:55:21,914 出直してまいります。 いや 一応もらっておく。 723 00:55:21,914 --> 00:55:24,214 せっかくだから。 724 00:55:36,862 --> 00:55:40,199 (意次)源内。 725 00:55:40,199 --> 00:55:43,102 こうして 異国の知識に触れる度に 思うのは…。 726 00:55:43,102 --> 00:55:46,872 いっそ 鎖国を やめてしまいましょう。 727 00:55:46,872 --> 00:55:51,210 (意次)わしとて それが一番なのは分かっておる。 728 00:55:51,210 --> 00:55:56,548 だが 頭の固い連中が多すぎる。 729 00:55:56,548 --> 00:56:02,221 今は 開国に備え 国を富ます方法を考える時じゃ。 730 00:56:02,221 --> 00:56:05,921 さようでございます。 731 00:56:07,893 --> 00:56:10,593 玄白。 はい。 732 00:56:12,231 --> 00:56:14,166 気持ち悪い。 733 00:56:14,166 --> 00:56:19,166 されど 我が国の医術を 変える代物でございます。 734 00:56:22,241 --> 00:56:24,910 これは 予告と申したな。 はい。 735 00:56:24,910 --> 00:56:27,579 早々に本編「解体新書」を 出すつもりでございます。 736 00:56:27,579 --> 00:56:30,616 もっと すごいのか? 比べものになりませぬ。 737 00:56:30,616 --> 00:56:33,686 売れるか? …多分。 738 00:56:33,686 --> 00:56:36,722 多分ではいかん。 必ず売れ。 739 00:56:36,722 --> 00:56:40,859 この金は それに使うがよい。 740 00:56:40,859 --> 00:56:44,530 日本中で売れる本を作れ。 そして 儲けろ。 741 00:56:44,530 --> 00:56:47,866 儲けて 10倍に増やして また持ってまいれ。 742 00:56:47,866 --> 00:56:52,204 金が動けば 世の中に活気が生まれる。 743 00:56:52,204 --> 00:56:54,139 国は潤う。 744 00:56:54,139 --> 00:56:59,078 田沼様は それを望んでおられるのだ。 745 00:56:59,078 --> 00:57:02,214 かしこまりました! 746 00:57:02,214 --> 00:57:04,149 おう 源内。 747 00:57:04,149 --> 00:57:07,052 次は 秋田へ行ってくれ。 秋田? 748 00:57:07,052 --> 00:57:10,089 佐竹義敦が 鉱山の開発を もくろんでおる。 749 00:57:10,089 --> 00:57:12,224 知恵を貸してやってほしい。 750 00:57:12,224 --> 00:57:14,159 喜んで。 751 00:57:14,159 --> 00:57:19,859 ♬~ 752 00:57:25,571 --> 00:57:31,871 オランダ商館のカピタン一行が 年に一度 ここを訪れる。 753 00:57:34,847 --> 00:57:38,517 今年は 大通詞の吉雄耕牛様も お見えだそうです。 754 00:57:38,517 --> 00:57:40,452 それは すばらしい。 755 00:57:40,452 --> 00:57:44,189 良沢殿 我らの読み分けが正しいか 吉雄様に見極めて頂きましょう。 756 00:57:44,189 --> 00:57:46,125 嫌じゃ! え…。 757 00:57:46,125 --> 00:57:49,862 私は長崎で あのお方に 阿蘭陀語を教わったのだ! 758 00:57:49,862 --> 00:57:51,797 なればこそ 見て頂くべきでは。 759 00:57:51,797 --> 00:57:55,367 こんな拙い訳を 大通詞殿に見せられるか! 760 00:57:55,367 --> 00:57:57,302 いつも おっしゃってるではないですか。 761 00:57:57,302 --> 00:58:00,539 最も大事なのは正しく訳す事だと。 762 00:58:00,539 --> 00:58:03,876 それは そうだが…。 763 00:58:03,876 --> 00:58:06,576 やっぱり 嫌じゃ! 764 00:58:09,748 --> 00:58:13,218 分かりますよ 分かります。 765 00:58:13,218 --> 00:58:19,091 阿蘭陀語というのは 容易に 読み下せるものではござらん。 766 00:58:19,091 --> 00:58:21,560 吉雄様も ご多忙だ。 767 00:58:21,560 --> 00:58:23,495 邪魔をしては申し訳ない。 帰ろう。 768 00:58:23,495 --> 00:58:26,899 せめて 轡十文字の一つでも! ん? 何かな? 769 00:58:26,899 --> 00:58:29,802 訳に自信を持てぬところが まだ多くあるのです。 770 00:58:29,802 --> 00:58:32,504 丸に十の字が その部分でございます。 771 00:58:32,504 --> 00:58:36,804 なるほど。 それで 轡十文字。 772 00:58:38,377 --> 00:58:42,514 誤りを正して頂けると 大変助かるのですが。 773 00:58:42,514 --> 00:58:44,850 力になりましょう。 774 00:58:44,850 --> 00:58:47,150 拝見。 775 00:59:11,543 --> 00:59:24,122 ♬~ 776 00:59:24,122 --> 00:59:27,122 こ… これは…。 777 00:59:30,562 --> 00:59:35,562 至らぬものを お見せしてしまいました。 778 00:59:43,141 --> 00:59:45,210 良沢さん。 779 00:59:45,210 --> 00:59:49,410 すばらしい仕事をされましたな…。 780 00:59:52,518 --> 00:59:54,818 (すすり泣き) 781 00:59:57,856 --> 01:00:00,192 長年…。 782 01:00:00,192 --> 01:00:02,861 阿蘭陀語に携わっている者でも➡ 783 01:00:02,861 --> 01:00:08,734 ここまで訳せる者は 一人もいない! 784 01:00:08,734 --> 01:00:16,875 僅か100日の留学で よう おやりになった。 785 01:00:16,875 --> 01:00:22,748 よう おやりになった! その志 感服致しましたぞ! 786 01:00:22,748 --> 01:00:25,048 あの これは この訳でいいので…。 787 01:00:26,885 --> 01:00:30,222 良沢さん。 788 01:00:30,222 --> 01:00:34,560 あなた方に教える事は もう何もない。 789 01:00:34,560 --> 01:00:38,230 胸を張って➡ 790 01:00:38,230 --> 01:00:42,930 このまま 出版されるが よろしかろう! 791 01:00:44,570 --> 01:00:46,905 (すすり泣き) 792 01:00:46,905 --> 01:00:50,205 (吉雄)よくぞ おやりになった。 793 01:00:53,245 --> 01:00:58,584 お墨付き 頂いたな。 力を尽くしたかいがありましたね。 794 01:00:58,584 --> 01:01:02,254 我が国で最も阿蘭陀語に 通じている方に言われたのです。 795 01:01:02,254 --> 01:01:05,157 あなた以上の蘭学者は もう この国には いないんですよ。 796 01:01:05,157 --> 01:01:08,594 おめでとうございます。 797 01:01:08,594 --> 01:01:12,294 何を気にされているのです? 798 01:01:16,268 --> 01:01:21,607 私は もう 誰に教えを乞う事も できないのか! 799 01:01:21,607 --> 01:01:26,307 ♬~ 800 01:01:32,551 --> 01:01:36,421 どうぞ ごゆるりと。 お待たせ致した。 801 01:01:36,421 --> 01:01:40,892 「解体約図」 大評判だな。 秋田でも噂になってたよ。 802 01:01:40,892 --> 01:01:43,228 いい仕事してるじゃねえか。 803 01:01:43,228 --> 01:01:47,099 田沼様のおかげで 今のところは 何のお咎めもございませぬ。 804 01:01:47,099 --> 01:01:49,568 そいつは何よりだ。 805 01:01:49,568 --> 01:01:53,438 ただ 絵が もうひとつだなあ。 806 01:01:53,438 --> 01:01:57,242 江戸には 満足に蘭画を描ける 絵描きが いないのです。 807 01:01:57,242 --> 01:02:00,579 何で 俺に頼まない? 俺 絵も うまいんだぞ。 808 01:02:00,579 --> 01:02:03,415 どうせ 引き受けて くれないでしょう 忙しくて。 809 01:02:03,415 --> 01:02:05,917 まっ そうだけどさ。 810 01:02:05,917 --> 01:02:10,589 で 今日は こいつを連れてきた。 811 01:02:10,589 --> 01:02:14,459 秋田藩士 小田野武助と申します。 俺の弟子だ。 812 01:02:14,459 --> 01:02:17,262 この半年 みっちり 蘭画を教え込んだ。 813 01:02:17,262 --> 01:02:20,165 はっきり言って 俺より 絵の才はある。 814 01:02:20,165 --> 01:02:26,271 俺が言うんだから 間違いない。 ほら それ 見せてやんな。 815 01:02:26,271 --> 01:02:30,571 あんた 待ってる間 あそこの鏡餅を描かせてみた。 816 01:02:34,079 --> 01:02:37,215 これを あなたが…? 817 01:02:37,215 --> 01:02:39,551 私が描きました! 使えると思うぜ。 818 01:02:39,551 --> 01:02:42,220 オダ ノブスケ殿…。 819 01:02:42,220 --> 01:02:46,020 小田野 武助でございます。 820 01:02:49,895 --> 01:02:53,765 武助こと小田野直武。 821 01:02:53,765 --> 01:02:57,569 角館に 鉱山の技術指導に訪れた源内は➡ 822 01:02:57,569 --> 01:03:00,906 そこで 彼に出会ったとされる。 823 01:03:00,906 --> 01:03:04,576 源内の下で 西洋絵画技法を学んだ直武は➡ 824 01:03:04,576 --> 01:03:06,511 やがて 秋田蘭画と呼ばれる➡ 825 01:03:06,511 --> 01:03:11,249 独自の画法を確立する。 826 01:03:11,249 --> 01:03:15,120 これは…。 コウペルという人が書いた 人体の書だ。 827 01:03:15,120 --> 01:03:18,590 迫力のある絵ですね。 描き写す事はできるか? 828 01:03:18,590 --> 01:03:20,525 是非 やりたいとは思いますが…。 829 01:03:20,525 --> 01:03:23,929 この絵が加われば 「解体新書」は 必ず売れる! 830 01:03:23,929 --> 01:03:26,598 「たあへるあなとみあ」とは 全く関係ありませんが。 831 01:03:26,598 --> 01:03:30,936 構わぬ! 頼んだぞ 武助殿! 832 01:03:30,936 --> 01:03:32,904 (笑い声) 833 01:03:32,904 --> 01:03:37,209 翻訳作業は 仕上げの段階に来ている。 834 01:03:37,209 --> 01:03:40,112 原稿を 客観的な目で チェックするため➡ 835 01:03:40,112 --> 01:03:45,083 若いが 阿蘭陀医学に 精通する人物が選ばれた。 836 01:03:45,083 --> 01:03:47,552 (小声で)誰なんです? 837 01:03:47,552 --> 01:03:50,222 (小声で・淳庵) 良沢先生の弟子筋にあたるとか。➡ 838 01:03:50,222 --> 01:03:52,891 若いですが かなり優秀らしいですよ。 839 01:03:52,891 --> 01:03:57,763 だったら もっと早く呼べばよかったのに。 840 01:03:57,763 --> 01:04:02,901 石川殿は 先月まで 京で阿蘭陀医術を学んでおられた。 841 01:04:02,901 --> 01:04:04,901 へえ~。 842 01:04:06,571 --> 01:04:10,871 (小声で) 都の御典医たちと昵懇なのだ。 843 01:04:16,581 --> 01:04:19,484 どうであった? 844 01:04:19,484 --> 01:04:22,921 さすが 前野先生。 845 01:04:22,921 --> 01:04:27,259 見事なお訳でございます! 846 01:04:27,259 --> 01:04:29,928 恐れ入りました…。 847 01:04:29,928 --> 01:04:32,197 それは何より。 すばらしい! 848 01:04:32,197 --> 01:04:35,197 うん…。 すばらしいです! 849 01:04:37,869 --> 01:04:40,772 よくぞ ここまで 本当に! 850 01:04:40,772 --> 01:04:43,208 すばらしい! すばらしいです! 851 01:04:43,208 --> 01:04:45,877 これによって 石川玄常の名は➡ 852 01:04:45,877 --> 01:04:49,548 「解体新書」翻訳者の一人として クレジットされ➡ 853 01:04:49,548 --> 01:04:53,418 後世に伝わる事になる。 854 01:04:53,418 --> 01:04:57,889 何か 釈然としないんだよなあ。 855 01:04:57,889 --> 01:05:00,189 何か? 856 01:05:07,232 --> 01:05:09,901 見事だ。 857 01:05:09,901 --> 01:05:14,239 武助殿 ご苦労でした。 858 01:05:14,239 --> 01:05:18,039 はっ! 良沢殿も お喜びになるでしょう。 859 01:05:25,851 --> 01:05:29,254 すばらしい出来だ。 860 01:05:29,254 --> 01:05:34,860 では これを 本文と併せて入稿すれば➡ 861 01:05:34,860 --> 01:05:38,560 いよいよ 完成。 862 01:05:42,200 --> 01:05:45,871 良沢殿…。 863 01:05:45,871 --> 01:05:49,541 原稿は 渡せぬ。 864 01:05:49,541 --> 01:05:51,476 良沢殿! 分かりませぬ。 865 01:05:51,476 --> 01:05:53,411 絵は すばらしいと おっしゃったではないですか! 866 01:05:53,411 --> 01:05:56,882 だからこそだ。 この絵の緻密さが➡ 867 01:05:56,882 --> 01:05:59,718 訳のいい加減さを 際立たせているのだ! 868 01:05:59,718 --> 01:06:02,554 うわっ そう来たか…。 一語一語 あらためて➡ 869 01:06:02,554 --> 01:06:05,223 よく吟味しなくては釣り合わぬ! 870 01:06:05,223 --> 01:06:08,560 それは どれくらいで できるんです? 871 01:06:08,560 --> 01:06:12,230 急ぎに急げば… あと3年。 872 01:06:12,230 --> 01:06:14,900 3年! そんな馬鹿な! まあまあ! 873 01:06:14,900 --> 01:06:16,835 日本中の医者が これを待っているんです。 874 01:06:16,835 --> 01:06:18,770 すぐに出すと 予告もした。 875 01:06:18,770 --> 01:06:20,772 これ以上 遅れたら 我らは笑いもの。 876 01:06:20,772 --> 01:06:23,909 このまま出せば それこそ 後の世の笑いものだ! 877 01:06:23,909 --> 01:06:25,844 まあまあ! 後の世は後の世! 878 01:06:25,844 --> 01:06:29,247 大事なのは 今です! 879 01:06:29,247 --> 01:06:32,517 あなたが守ろうとしているものは 何ですか? 880 01:06:32,517 --> 01:06:34,452 ご自分の名ではないですか? 何だと! 881 01:06:34,452 --> 01:06:36,388 だって そうではないですか。 882 01:06:36,388 --> 01:06:38,857 あなたは 後の世の人が この中に間違いを見つけ➡ 883 01:06:38,857 --> 01:06:41,359 己の名に きずがつく事に 怯えている! 884 01:06:41,359 --> 01:06:45,697 あなたの その小さな見栄のために この国の医術は立ち遅れるのです。 885 01:06:45,697 --> 01:06:48,733 死ななくてもいい人が あまた死んでいくのです! 886 01:06:48,733 --> 01:06:52,203 誤りがあれば 続く者たちが直せばいい! 887 01:06:52,203 --> 01:06:56,074 あなたが まともな医者ならば 今すぐに この本を出すべきだ! 888 01:06:56,074 --> 01:06:58,877 それができないのなら もはや あなたは医者ではない! 889 01:06:58,877 --> 01:07:00,877 玄白殿! 890 01:07:13,892 --> 01:07:16,592 申し訳ありません…。 891 01:07:23,234 --> 01:07:27,934 それほどまでに おっしゃるなら しかたがない。 892 01:07:32,510 --> 01:07:37,510 どうぞ お持ち下され。 893 01:07:41,186 --> 01:07:44,886 (淳庵)よろしいのですか? 894 01:07:48,860 --> 01:07:51,529 これより➡ 895 01:07:51,529 --> 01:07:56,829 一切 あなた方にお任せ致す。 896 01:08:07,078 --> 01:08:11,216 かしこまりました。 そのかわり。 897 01:08:11,216 --> 01:08:13,885 今回も 私の名を外して頂く。 898 01:08:13,885 --> 01:08:16,185 良沢殿 それは…。 これだけは…。 899 01:08:17,756 --> 01:08:22,756 必ず 守って頂きたい。 900 01:08:27,232 --> 01:08:31,102 分かりました。 901 01:08:31,102 --> 01:08:36,841 では お引き取り頂こう。 902 01:08:36,841 --> 01:08:40,512 あっ それから 淳庵殿。 903 01:08:40,512 --> 01:08:42,447 はい。 904 01:08:42,447 --> 01:08:46,851 セイニュの訳でござるが➡ 905 01:08:46,851 --> 01:08:52,851 これまでは 阿蘭陀語の音を そのまま使っていたが…。 906 01:08:55,860 --> 01:09:02,200 これからは この言葉に変えて頂きたい。 907 01:09:02,200 --> 01:09:04,536 神経。 908 01:09:04,536 --> 01:09:10,875 神の気を伝える経脈 という意味でござる。 909 01:09:10,875 --> 01:09:16,875 よい言葉を 思いつかれましたね。 910 01:09:20,218 --> 01:09:25,218 では 私は休ませて頂く。 911 01:09:28,893 --> 01:09:31,729 お引き取りを。 912 01:09:31,729 --> 01:09:53,051 ♬~ 913 01:09:53,051 --> 01:09:59,051 玄白先生たち 青ざめて お帰りになられました。 914 01:10:01,192 --> 01:10:04,696 本は出す。 何があっても出す。 915 01:10:04,696 --> 01:10:08,199 しかし 今度もまた 良沢殿の名前を外すとなれば➡ 916 01:10:08,199 --> 01:10:10,135 あなたが手柄を独り占めしたと 思う者も…。 917 01:10:10,135 --> 01:10:12,871 構わぬ。 918 01:10:12,871 --> 01:10:17,671 本当に父上は お名前を 出さないおつもりなんですか? 919 01:10:20,545 --> 01:10:23,545 あいつに全て くれてやる。 920 01:10:26,217 --> 01:10:31,089 私の名前が泥にまみれようが そんな事は どうでもよい。 921 01:10:31,089 --> 01:10:34,893 私の名前など➡ 922 01:10:34,893 --> 01:10:39,230 歴史に残らんでもよい。 923 01:10:39,230 --> 01:10:41,566 冗談じゃありません! 924 01:10:41,566 --> 01:10:45,236 誰よりも あなたが力を尽くした事を➡ 925 01:10:45,236 --> 01:10:47,436 私たちは知っております。 926 01:10:51,576 --> 01:10:54,576 (珉子)ひどすぎる…。 927 01:10:58,449 --> 01:11:04,589 (泣き声) 928 01:11:04,589 --> 01:11:08,459 私は 名が欲しくて やってきたのではない。 929 01:11:08,459 --> 01:11:11,262 全ては医術のため。 930 01:11:11,262 --> 01:11:14,599 私は➡ 931 01:11:14,599 --> 01:11:19,299 名が欲しくて やってきたのではない。 932 01:11:21,272 --> 01:11:24,943 全ては医術のためだ。 933 01:11:24,943 --> 01:11:27,243 大事なのは…。 934 01:11:28,813 --> 01:11:32,113 大事なのは 信念を貫く事。 935 01:11:33,751 --> 01:11:37,222 信念じゃ。 936 01:11:37,222 --> 01:12:03,448 ♬~ 937 01:12:03,448 --> 01:12:06,918 これでよい。 938 01:12:06,918 --> 01:12:14,618 ♬~ 939 01:12:28,940 --> 01:12:31,440 これでよいのだ。 940 01:12:33,544 --> 01:12:35,880 それに…。 941 01:12:35,880 --> 01:12:43,180 私は 前野良沢の力を利用して 私が作りたかったものを作った。 942 01:12:46,224 --> 01:12:49,924 はじめから そうだったではないか。 943 01:12:51,562 --> 01:12:54,562 これは 私の作品だ。 944 01:12:58,236 --> 01:13:01,236 紛れもなく。 945 01:13:24,929 --> 01:13:28,266 安永3年8月。 946 01:13:28,266 --> 01:13:31,602 ついに 「解体新書」が出版された。 947 01:13:31,602 --> 01:13:34,205 「解体新書」? 948 01:13:34,205 --> 01:13:39,077 皆さ~ん ちょっといいですか~? あのね この大先生がね➡ 949 01:13:39,077 --> 01:13:41,879 「解体新書」って すばらしい本 書いた。 950 01:13:41,879 --> 01:13:46,379 見て下さい。 是非。 見て下さい。 951 01:13:53,891 --> 01:13:56,561 (淳庵)おかげをもちまして➡ 952 01:13:56,561 --> 01:14:03,861 「解体新書」 無事 上梓できましてございます。 953 01:14:10,575 --> 01:14:13,575 お納め下さい。 954 01:14:25,590 --> 01:15:28,920 ♬~ 955 01:15:28,920 --> 01:15:31,220 できた…。 956 01:15:34,725 --> 01:15:36,725 な…。 957 01:15:38,729 --> 01:15:41,029 はい。 958 01:15:43,201 --> 01:15:47,071 彼らが 骨ヶ原で 腑分けに立ち会った あの日から➡ 959 01:15:47,071 --> 01:15:51,371 3年半の歳月が過ぎていた。 960 01:16:00,551 --> 01:16:04,055 それを 上様に献上されるというのは➡ 961 01:16:04,055 --> 01:16:06,891 まことでござるか? そのつもりですが。 962 01:16:06,891 --> 01:16:09,927 蛮夷の奇書で 上様を たばかるおつもりか! 963 01:16:09,927 --> 01:16:13,764 多紀様! それは あまりの…。 黙らっしゃい! 964 01:16:13,764 --> 01:16:16,234 父上! 965 01:16:16,234 --> 01:16:21,105 幕府開闢以来の奥医師である 多紀の者として➡ 966 01:16:21,105 --> 01:16:26,577 この多紀元徳 命に代えても お止め申す! 967 01:16:26,577 --> 01:16:29,877 ≪その本 私が預かろう。 968 01:16:31,849 --> 01:16:34,149 ご… 御老中! 969 01:16:36,187 --> 01:16:38,523 ど… どうされるおつもりですか? 970 01:16:38,523 --> 01:16:41,859 無論 上様に差し上げる。 御老中! 971 01:16:41,859 --> 01:16:44,195 上様の御目に かなうものかどうかは➡ 972 01:16:44,195 --> 01:16:49,534 上様御自ら ご判断頂くのが筋。 973 01:16:49,534 --> 01:16:54,405 それとも 多紀殿は 上様のご眼力を疑われるのかな。 974 01:16:54,405 --> 01:16:57,405 あ… いや…。 うん? 975 01:16:59,210 --> 01:17:01,546 では。 976 01:17:01,546 --> 01:17:18,729 ♬~ 977 01:17:18,729 --> 01:17:21,065 気持ち悪い…。 978 01:17:21,065 --> 01:17:25,570 「解体新書」の杉田玄白は 知っておるか? 979 01:17:25,570 --> 01:17:27,905 よく存じております。 980 01:17:27,905 --> 01:17:32,176 近頃は 阿蘭陀語といえば あの男。 981 01:17:32,176 --> 01:17:37,515 医者として また 蘭学者として 飛ぶ鳥を落とす勢いのようだな。 982 01:17:37,515 --> 01:17:39,450 さようでございますな。 983 01:17:39,450 --> 01:17:44,188 わしは覚えておるぞ。 5年前の長崎留学の際に➡ 984 01:17:44,188 --> 01:17:48,059 お前は わしのやった金で なんとかという本を買った。 985 01:17:48,059 --> 01:17:51,862 「たあへるあなとみあ」で ございます。 986 01:17:51,862 --> 01:17:55,533 あの時の金 ようやく生きたな。 987 01:17:55,533 --> 01:17:57,868 何の事でございますか。 988 01:17:57,868 --> 01:18:03,541 「解体新書」のもとになったのは あの本であろう。 989 01:18:03,541 --> 01:18:06,541 これは お前の仕事じゃ。 990 01:18:08,412 --> 01:18:12,550 わしが知らぬと思うたか。 991 01:18:12,550 --> 01:18:18,422 しかし 分からぬ。 なぜ ここに お前の名前がない? 992 01:18:18,422 --> 01:18:24,895 その訳では 良沢 まだまだ 不満にございますゆえ。 993 01:18:24,895 --> 01:18:28,232 それでよいのか? よろしゅうございます。 994 01:18:28,232 --> 01:18:31,836 手柄を ほかの者に取られてもか? 995 01:18:31,836 --> 01:18:38,036 殿にだけ お分かり頂ければ それで十分にございます。 996 01:18:41,178 --> 01:18:44,081 お前は 阿蘭陀語に没頭するあまり➡ 997 01:18:44,081 --> 01:18:46,851 藩医としての仕事を ほとんどしておらぬ。 998 01:18:46,851 --> 01:18:49,754 申し訳ござりませぬ。 999 01:18:49,754 --> 01:18:52,523 悪く言う者もあろうが➡ 1000 01:18:52,523 --> 01:18:57,223 天下後世の人のために尽くすも 立派な務めである。 1001 01:18:58,863 --> 01:19:02,199 今後も励め。 1002 01:19:02,199 --> 01:19:04,869 ははっ! 1003 01:19:04,869 --> 01:19:09,373 お前は まるで 阿蘭陀の化け物だな。 1004 01:19:09,373 --> 01:19:12,873 阿蘭陀の 化け物…。 1005 01:19:15,246 --> 01:19:18,082 化け物じゃ。 1006 01:19:18,082 --> 01:19:23,554 良沢は これ以降 蘭化と号した。 1007 01:19:23,554 --> 01:19:28,554 もちろん 阿蘭陀の化け物という意味である。 1008 01:19:30,227 --> 01:19:33,130 (意次)売れておるようだな 「解体新書」。 1009 01:19:33,130 --> 01:19:38,669 (源内)これで 杉田玄白の名は 不動のものとなりました。 1010 01:19:38,669 --> 01:19:42,506 主に訳したのは 別の男と聞いたが…。 1011 01:19:42,506 --> 01:19:45,176 前野良沢ですか? 1012 01:19:45,176 --> 01:19:49,513 ああ… 気の毒な事だな。 1013 01:19:49,513 --> 01:19:51,849 あの者にとっては きっと➡ 1014 01:19:51,849 --> 01:19:56,149 名を残す事など どうでもよかったのです。 1015 01:19:57,722 --> 01:20:01,525 畳に襖に障子。➡ 1016 01:20:01,525 --> 01:20:08,199 誰かが考えたには違いないが その者の名前は残っておりませぬ。 1017 01:20:08,199 --> 01:20:12,069 名とは むなしいもの。 1018 01:20:12,069 --> 01:20:16,540 そういった 名もなき あまたの者たちの手によって➡ 1019 01:20:16,540 --> 01:20:20,240 時代は 先に進むのだな…。 1020 01:20:22,413 --> 01:20:25,549 わしは どうなる? 1021 01:20:25,549 --> 01:20:29,849 田沼様の名は 間違いなく 歴史に残ります。 1022 01:20:31,422 --> 01:20:37,561 (源内)たくさん 敵を作られたゆえ 悪名になるやもしれませんが。 1023 01:20:37,561 --> 01:20:41,232 おぬしは 何で 名を残す? 1024 01:20:41,232 --> 01:20:43,167 さて。 1025 01:20:43,167 --> 01:20:45,736 私は 何をやるために 生まれてきたのか➡ 1026 01:20:45,736 --> 01:20:47,736 まだ分かっておりませぬ。 1027 01:20:49,406 --> 01:20:54,278 才能がありすぎるのも 困ったもの。 1028 01:20:54,278 --> 01:21:08,478 ♬~ 1029 01:21:11,796 --> 01:21:22,940 ♬~ 1030 01:21:22,940 --> 01:21:28,813 寛政4年11月 杉田玄白の還暦と➡ 1031 01:21:28,813 --> 01:21:33,813 前野良沢の古希を祝う会が 催された。 1032 01:21:47,131 --> 01:21:55,573 ♬~(笛) 1033 01:21:55,573 --> 01:21:59,273 (扉が開く音) (峰子)いい加減にして下さい。 1034 01:22:01,445 --> 01:22:04,745 母上との約束を 破るおつもりですか。 1035 01:22:27,504 --> 01:22:31,504 [ 回想 ] (せきこみ) 1036 01:22:36,547 --> 01:22:41,218 玄白様のご書状は? 1037 01:22:41,218 --> 01:22:44,121 読んだよ。 1038 01:22:44,121 --> 01:22:49,121 必ず 行って下さい。 1039 01:22:50,895 --> 01:23:00,195 あの男が いくつになろうと わしには関わりのない事じゃ。 1040 01:23:02,239 --> 01:23:06,911 今日の蘭学の隆盛は➡ 1041 01:23:06,911 --> 01:23:11,248 あなたがあればこそ。 1042 01:23:11,248 --> 01:23:15,586 あなたの目を通して➡ 1043 01:23:15,586 --> 01:23:18,923 お富士に➡ 1044 01:23:18,923 --> 01:23:26,223 あなたが成し遂げた事を 見せてやって下さい。 1045 01:23:28,933 --> 01:23:35,205 それだけが 私の心残り。 1046 01:23:35,205 --> 01:23:38,542 (せきこみ) 1047 01:23:38,542 --> 01:23:42,212 あい分かった。 1048 01:23:42,212 --> 01:24:03,233 ♬~ 1049 01:24:03,233 --> 01:24:06,933 さっ 父上。 1050 01:24:33,030 --> 01:24:35,030 いらしたぞ! 1051 01:24:57,554 --> 01:25:00,554 ようこそ おいで下さいました。 1052 01:25:08,198 --> 01:25:12,198 良沢先生が お着きになられました! 1053 01:25:35,025 --> 01:25:37,025 先生…。 1054 01:26:26,910 --> 01:26:32,210 ご無沙汰しております。 1055 01:26:56,874 --> 01:27:33,510 ♬~ 1056 01:27:33,510 --> 01:27:52,529 (泣き声) 1057 01:27:52,529 --> 01:27:58,402 日本の歴史上 「解体新書」が 果たした役割は大きい。 1058 01:27:58,402 --> 01:28:04,875 それは 良沢と玄白の予想を はるかに超えていた。 1059 01:28:04,875 --> 01:28:24,228 ♬~ 1060 01:28:24,228 --> 01:28:26,897 「解体新書」の 出現により➡ 1061 01:28:26,897 --> 01:28:29,800 多くの日本人が 西洋文明に触れ➡ 1062 01:28:29,800 --> 01:28:32,502 感化された。 1063 01:28:32,502 --> 01:28:34,438 開国へと向かう 動きは➡ 1064 01:28:34,438 --> 01:28:36,840 次第に 加速していく。 1065 01:28:36,840 --> 01:28:39,176 そして 時代は➡ 1066 01:28:39,176 --> 01:28:41,511 良沢たちの意志を 継いだ➡ 1067 01:28:41,511 --> 01:28:44,348 あまたの 風雲児たちによって➡ 1068 01:28:44,348 --> 01:28:46,850 幕末の大革命へと➡ 1069 01:28:46,850 --> 01:28:49,753 歩みを 進めていくのである。 1070 01:28:49,753 --> 01:29:28,053 ♬~ 1071 01:30:39,563 --> 01:30:43,367 >>8時50分になりました。 1072 01:30:43,367 --> 01:30:47,120 全国のニュースをお伝えします。 元日のきょう、 1073 01:30:47,120 --> 01:30:50,907 東京都内では、餅をのどに詰まら せて、 1074 01:30:50,907 --> 01:30:54,678 10人が病院に運ばれました。 1075 01:30:54,678 --> 01:30:58,498 このうち2人は心肺停止の状態で 搬送され、東京消防庁は、