1 00:02:31,010 --> 00:02:35,000 そなたの評判は 我の耳にも届いておる 2 00:02:40,750 --> 00:02:42,950 そなたの物語には 3 00:02:43,460 --> 00:02:46,190 本物の血が 流れているようだと 4 00:02:51,930 --> 00:02:53,520 諦めなさい 5 00:02:54,700 --> 00:02:58,860 私は何をしても 許される身なのだ 6 00:04:14,650 --> 00:04:16,120 いつか 7 00:04:17,150 --> 00:04:20,850 そなたの書く物語を読ませてくれ 8 00:04:23,520 --> 00:04:25,860 男と女の物語だ 9 00:04:30,660 --> 00:04:32,890 我の名を知りたいか? 10 00:04:39,210 --> 00:04:41,040 我は光だ 11 00:04:42,110 --> 00:04:45,600 世をあまねく照らす光だ 12 00:05:35,430 --> 00:05:38,160 それは さる坊主が 13 00:05:38,370 --> 00:05:41,800 唐の国より 持ち帰った紙である 14 00:05:43,800 --> 00:05:45,470 とらえるのだ 15 00:05:45,770 --> 00:05:50,440 帝のお心を その筆でそなたの筆で 16 00:05:50,980 --> 00:05:54,380 それができるのは そなたしかおらぬ 17 00:05:54,850 --> 00:05:57,340 そなたの他にはおらぬのだ 18 00:05:59,690 --> 00:06:02,280 そなたの書く物語の力で 19 00:06:02,390 --> 00:06:06,790 我か娘彰子の元に いつときでも長く 20 00:06:07,230 --> 00:06:09,350 帝を留めおのだ 21 00:06:10,460 --> 00:06:12,960 我が天下を治めるため 22 00:06:13,130 --> 00:06:17,470 我の血を帝の中に 残さんがため 23 00:06:49,600 --> 00:06:52,660 我の血を… 24 00:07:11,890 --> 00:07:14,760 いつの御代のことでしょう 25 00:07:15,530 --> 00:07:18,930 女御更衣が あまたお仕えしておりました 26 00:07:19,030 --> 00:07:21,230 帝の後宮に 27 00:07:21,900 --> 00:07:27,240 軽い身分でありながら 帝から 誰よりも愛され 28 00:07:27,410 --> 00:07:30,470 楊貴妃もかくやと言われるほど 29 00:07:30,580 --> 00:07:35,740 格別に遇された一人の女人がいらっしゃいました 30 00:07:36,550 --> 00:07:40,210 桐壺更衣と呼ばれた お方でした 31 00:08:00,640 --> 00:08:05,480 けれど 帝のご寵愛の深さは 32 00:08:05,680 --> 00:08:08,340 あまたの女人の嫉妬となって 33 00:08:08,480 --> 00:08:12,350 桐壺様へと襲いかかりました 34 00:08:30,540 --> 00:08:34,270 中でも 帝の第一后 35 00:08:34,610 --> 00:08:39,600 弘徽殿様のお怒りは 並々ならぬものでした 36 00:08:51,960 --> 00:08:55,660 この淫らな女め 37 00:08:56,300 --> 00:09:00,660 卑しき身分のお前になんか 御子産ませはせぬ 38 00:09:01,670 --> 00:09:03,530 断じて許さぬぞ 39 00:09:16,820 --> 00:09:19,480 私の血は 40 00:09:20,990 --> 00:09:23,320 これで ようやく 41 00:09:24,320 --> 00:09:27,020 帝と一つになるのです 42 00:09:56,860 --> 00:09:58,380 私の 43 00:10:01,230 --> 00:10:02,690 命よ 44 00:10:12,270 --> 00:10:16,270 皇子様を 産みになられた桐壺様は 45 00:10:16,480 --> 00:10:22,610 まるでその命と 引き換えのように 身罷られたのでありました 46 00:10:31,830 --> 00:10:35,420 愛する桐壺様を失って三年 47 00:10:36,300 --> 00:10:42,760 帝は暗い世界を さまよっていらっしゃいました 48 00:10:57,980 --> 00:11:00,350 こちらへ さあ 49 00:11:01,250 --> 00:11:02,920 父の所へ 50 00:11:10,100 --> 00:11:12,760 今日から共に ここで暮らすのだ 51 00:11:21,310 --> 00:11:22,870 光の宮 52 00:11:25,150 --> 00:11:27,440 愛する人の忘れ形見よ 53 00:11:29,320 --> 00:11:31,940 私の御子 54 00:11:36,490 --> 00:11:38,220 色づいてきたのう 55 00:11:38,560 --> 00:11:43,150 帝は先の帝の四の姫宮を 56 00:11:43,300 --> 00:11:48,000 新しい女御様として お迎えになりました 57 00:11:49,170 --> 00:11:52,370 藤壺の宮様と呼ばれた そのお方は 58 00:11:52,970 --> 00:11:58,070 亡き桐壺様に 生き写しでいらっしゃったのです 59 00:12:03,750 --> 00:12:07,740 それから いくつかの季節が巡り 60 00:12:10,360 --> 00:12:14,020 御身大きなられた 第二皇子様は 61 00:12:14,390 --> 00:12:17,760 宮中の者すベての心を奪う 62 00:12:18,000 --> 00:12:21,060 稀代の貴公子と なられたのです 63 00:12:26,170 --> 00:12:29,070 まあ なんて お美しいのでしょう 64 00:12:29,380 --> 00:12:32,340 時がたつのを 忘れてしまいます 65 00:13:27,300 --> 00:13:29,460 我が意を得たり 66 00:13:43,250 --> 00:13:46,550 御所 清涼殿において 67 00:13:46,650 --> 00:13:52,250 光の宮様の元服式が 執り行われました 68 00:14:04,500 --> 00:14:08,630 弘徽殿様がお産みになられた 第一皇子様は 69 00:14:08,780 --> 00:14:12,680 右大臣という しっかりとした後ろ盾を持ち 70 00:14:12,950 --> 00:14:15,780 早くに東宮に立たれました 71 00:14:26,730 --> 00:14:29,990 帝は本心では 72 00:14:30,130 --> 00:14:34,730 光の宮をこそ 東宮にとお考えでしたか 73 00:14:35,170 --> 00:14:38,140 はかばかしい後ろ盾もおらず 74 00:14:38,540 --> 00:14:44,140 このまま無位の親王という 頼りない立場にあるよりはと 75 00:14:44,540 --> 00:14:47,040 源氏の姓を与えられ 76 00:14:47,180 --> 00:14:52,910 宮中こ仕える臣下の地位に 落とされたのでありました 77 00:14:57,490 --> 00:14:59,980 それでよい 似合いであろう 78 00:15:00,190 --> 00:15:05,220 我が産んだ東宮とは 格が違うのじゃ 79 00:15:05,330 --> 00:15:07,960 あの者 皇子とはいえ 80 00:15:08,070 --> 00:15:11,400 身分低き卑しき女の 子ではないか 81 00:15:13,840 --> 00:15:18,770 それにしても あのお姿は わたくし一度 お目にかかってから 82 00:15:18,880 --> 00:15:21,810 そのお姿が 目の中に焼き付いて… 83 00:15:21,920 --> 00:15:26,320 朝も夕も夢の中でも もうそのことしか 84 00:15:26,420 --> 00:15:28,790 わたくしもです 85 00:15:31,020 --> 00:15:32,180 黙れ! 86 00:15:32,560 --> 00:15:35,250 黙れ 黙れ 黙らぬか 87 00:15:54,150 --> 00:15:57,780 源氏はいつしか私を 恨むようになるのであろうか 88 00:16:01,490 --> 00:16:06,880 真に大切なものは 常に私の手より こぼれ落ちてゆく 89 00:16:36,090 --> 00:16:40,190 わたくしはいつまでも お側におりまする 90 00:16:48,630 --> 00:16:50,430 優しい人よ 91 00:18:07,050 --> 00:18:11,450 元服の儀 誠におめでたきことにございます 92 00:18:15,090 --> 00:18:19,790 わたくしに お顔を見せては くださらないのですか 93 00:18:20,860 --> 00:18:25,720 あなた様は もはや 大人におなりに なったのですから 94 00:18:41,450 --> 00:18:46,650 わたくしはこれより 臣下の立場にて 95 00:18:48,390 --> 00:18:50,380 この宮中を 96 00:18:54,830 --> 00:19:00,700 藤壺の宮様を 末永くお守り申し上げます 97 00:19:26,130 --> 00:19:30,790 まがまがしい女たちの 情念渦巻 宮中で 98 00:19:31,100 --> 00:19:37,700 限りなき美しさに恵まれて この世に生を受けた源氏の君 99 00:19:39,440 --> 00:19:40,870 されど 100 00:19:42,440 --> 00:19:47,440 母の愛を知らずして育った その心の飢えは 101 00:19:48,810 --> 00:19:53,750 大いなる悲劇へと つながってゆくのです 102 00:20:01,590 --> 00:20:05,960 早く続きが 聞きたいものよ のう 103 00:20:07,930 --> 00:20:09,090 えー 104 00:20:14,770 --> 00:20:16,500 もったいない 105 00:20:17,840 --> 00:20:19,440 お言葉を 106 00:21:24,710 --> 00:21:26,200 お離しを 107 00:21:26,650 --> 00:21:29,580 いや 離さぬ 108 00:21:32,750 --> 00:21:37,980 今宵の月は 我にあの夜を思い出させる 109 00:21:39,630 --> 00:21:44,090 生涯忘れ得ぬ あの一夜のように 110 00:21:46,600 --> 00:21:51,900 今宵そなたの胸で 甘えてみたいのだ 111 00:21:54,640 --> 00:21:59,840 お酒が過ぎたようで ございますね 道長様 112 00:22:04,880 --> 00:22:07,150 おやすみなさいませ 113 00:22:08,550 --> 00:22:11,150 明日の朝儀に遅れまする 114 00:22:12,360 --> 00:22:17,900 道長ではない 我は光だ 115 00:22:19,870 --> 00:22:25,630 そなたが物語の中で 我を光と 名付けたではないか 116 00:22:32,480 --> 00:22:34,640 早くご寝所へ 117 00:22:35,820 --> 00:22:40,480 このような所で長居をしては お風邪を召されます 118 00:22:41,850 --> 00:22:43,220 式部 でかした 119 00:22:43,690 --> 00:22:44,680 は? 120 00:22:45,520 --> 00:22:49,650 彰子が身こもったのは そなたのお陰だ 121 00:22:50,160 --> 00:22:51,560 改めて礼を申す 122 00:22:54,770 --> 00:22:59,490 わたくしは ただ あなた様のご命令を従ったまでのこと 123 00:22:59,710 --> 00:23:03,700 そなたの筆は 我が命を遙かに超えておる 124 00:23:05,080 --> 00:23:08,570 我とて そなたの虜だ 125 00:23:09,350 --> 00:23:14,550 そなたの書く物語に すっかり心を 奪われておるのだぞ 126 00:23:16,420 --> 00:23:18,390 おやすみなさいませ 127 00:23:32,140 --> 00:23:36,730 我の大願と そなたの思いと 128 00:23:38,110 --> 00:23:40,200 どちらが強いのだ 129 00:24:35,100 --> 00:24:38,130 下がれ 下がれ 下がれ 130 00:24:38,770 --> 00:24:40,100 道を空けろ 131 00:24:42,040 --> 00:24:43,980 早く行け さあ 132 00:24:45,210 --> 00:24:48,270 はあ…右大臣のばかめ 133 00:24:48,380 --> 00:24:51,940 決まりきったことを もったいつけて言いおって 134 00:24:52,650 --> 00:24:56,310 はあ…お陰で もうこんな時ではないか 135 00:24:57,220 --> 00:25:03,060 とかく頭の悪い者ほど 持って回った言い方をするもの 136 00:25:03,660 --> 00:25:06,860 なあ 行成 そうは思わぬか 137 00:25:07,330 --> 00:25:10,360 あなたも少し 見習うべきかと 138 00:25:11,140 --> 00:25:12,160 はあ? 139 00:25:12,470 --> 00:25:17,810 直截に物を言うはいらぬ誤解や喧嘩の種 140 00:25:19,040 --> 00:25:24,650 よいではないか 退屈な場が華やぐというもの 141 00:25:48,870 --> 00:25:53,170 我に 書物などいらぬ 142 00:25:53,750 --> 00:25:56,840 この体を流れる藤原の血が 143 00:25:57,120 --> 00:25:59,580 実に多くのことを教えてくれる 144 00:26:00,720 --> 00:26:04,450 どのように動けば人の心を操れるか 145 00:26:05,190 --> 00:26:09,220 どのように動けば 邪魔者を成敗できるか 146 00:26:14,900 --> 00:26:20,030 彰子の腹の子は 男皇子であらねばならぬ 147 00:26:21,370 --> 00:26:27,610 その時こそ我が一族の戦を 終わらせることができる 148 00:26:30,250 --> 00:26:31,410 何者だ 149 00:26:33,150 --> 00:26:34,280 何やつ 150 00:26:51,740 --> 00:26:53,300 名を名乗れ! 151 00:27:30,210 --> 00:27:30,970 何者? 152 00:27:31,210 --> 00:27:32,300 待て 153 00:27:34,210 --> 00:27:37,810 お前はこの私に用があるのであろう 154 00:27:42,420 --> 00:27:47,480 やはりお前であったか まだ思いを断てぬのか 155 00:27:48,390 --> 00:27:52,730 お前は敗れたのだ この私に敗れたのだ 156 00:27:53,570 --> 00:27:58,060 何ゆえそれが分からぬ 何ゆえそれを認めぬ 157 00:28:03,410 --> 00:28:04,430 伊周様 158 00:28:05,180 --> 00:28:08,610 お前は早すぎたのだ 若すぎたのだ 159 00:28:09,620 --> 00:28:11,880 まだその味も分からぬまま 160 00:28:12,580 --> 00:28:14,750 この世の華を食い尽くしたのだ 161 00:28:16,060 --> 00:28:21,290 その陰で 誰が何を欲しているかさえ気づかぬまま 162 00:28:21,390 --> 00:28:22,880 黙れ 黙れ 163 00:28:24,730 --> 00:28:27,560 すべては叔父貴の謀だったのであろう 164 00:28:28,230 --> 00:28:30,430 お前の華は终わったのだ 165 00:28:31,540 --> 00:28:36,430 もう十分であろう お前は十分 楽しんだであろう 166 00:28:51,220 --> 00:28:55,720 心奢り すべてを 己の力と思い込み 167 00:28:55,890 --> 00:29:00,830 我が兄 道隆の照らす灯りに一瞬の光を得たのだと 168 00:29:00,930 --> 00:29:02,490 知りもせず 169 00:29:06,070 --> 00:29:09,600 黙れ 黙れ 黙れ 170 00:29:10,440 --> 00:29:11,640 黙らぬか! 171 00:29:36,200 --> 00:29:40,830 角 坑 低 房 心 172 00:29:40,970 --> 00:29:45,210 尾 其 斗 牛 女 173 00:29:45,340 --> 00:29:50,410 虚 危 室 壁 圭 婁 174 00:29:50,520 --> 00:29:54,850 胃 昂 膝 紫 参 175 00:29:54,990 --> 00:29:58,180 井 鬼 柳 星 176 00:29:58,290 --> 00:30:00,820 張 翼 診 177 00:30:04,530 --> 00:30:06,690 何者だ お前は 178 00:30:35,830 --> 00:30:37,490 遅かったではないか 179 00:30:39,000 --> 00:30:44,260 このような月の晚は 十分お気を付けを 180 00:30:46,070 --> 00:30:50,180 乗れ 我が家で酒を飲もう 181 00:30:52,510 --> 00:30:57,270 そなたの屋敷は 何かと不都合が多いであろう 182 00:31:01,290 --> 00:31:02,840 知らぬのか 183 00:31:03,420 --> 00:31:08,920 この男 屋敷に雷が落ちて 焼け出されたのだ 184 00:31:09,760 --> 00:31:13,360 天下の陰場師 安倍晴明も 185 00:31:13,770 --> 00:31:18,530 自分の凶相は 占えぬというわけだ 186 00:31:26,280 --> 00:31:29,650 晴明殿 とんだご無礼を 187 00:31:34,820 --> 00:31:37,950 では この者たちに酌を頼もう 188 00:32:26,200 --> 00:32:30,700 行成殿 この者たちはお気に召しませぬか? 189 00:32:31,610 --> 00:32:35,170 この男は書物があればよいのだ 190 00:32:36,180 --> 00:32:42,520 書物と戯れ 書物と遊び 書物と情を交わす 191 00:32:43,990 --> 00:32:48,790 お陰で妻は 涙で枕を濡らしているというわけだ 192 00:32:50,460 --> 00:32:52,020 何を言うのです 193 00:32:52,460 --> 00:32:54,520 褒めているのだぞ 194 00:32:54,800 --> 00:32:59,530 そなたの筆は並の酒より人を酔わせる 195 00:33:01,470 --> 00:33:07,840 時を忘れ 場所を忘れ 我を忘れさせる 196 00:33:08,580 --> 00:33:15,320 我がこの先百年精進しても 決して そなたの域には達せぬ 197 00:33:15,750 --> 00:33:18,520 努力だけでは到達できぬ 198 00:33:18,660 --> 00:33:23,550 まさに 天から与えられた才である 199 00:33:25,400 --> 00:33:28,330 これはもったいないお言葉を 200 00:33:33,570 --> 00:33:34,330 何だ 201 00:33:35,440 --> 00:33:39,930 道長様も人をお褒めになるのでございますね 202 00:33:40,210 --> 00:33:44,380 我はいつもありのままを 申しているだけだ 203 00:33:45,850 --> 00:33:50,020 良いものは良い 悪いものは悪い 204 00:33:50,120 --> 00:33:55,450 聡い者は聡い ばか者はばか 205 00:33:57,600 --> 00:33:59,890 分かっておるではないか 206 00:34:03,470 --> 00:34:06,400 今宵は楽しい酒じゃ 207 00:34:07,110 --> 00:34:11,130 二人ながらに生まれながらの才人じゃ 208 00:34:11,880 --> 00:34:15,770 我は 到底 かなわぬ 209 00:34:24,260 --> 00:34:29,720 元服後 源氏の君はご結婚なさいました 210 00:34:30,730 --> 00:34:33,100 なんと似合いの二人じゃ 211 00:34:35,630 --> 00:34:41,730 これからは互いを頼りに 仲陸まじゅう 過ごされるのだぞ 212 00:34:53,490 --> 00:34:56,450 末永く仲良く致しましょう 213 00:35:02,130 --> 00:35:04,430 どうされたのですか? 214 00:35:05,260 --> 00:35:08,930 お相手は左大臣の一の姫 215 00:35:09,100 --> 00:35:13,700 後ろ盾を持たない源氏の君の行く末を案じた帝が 216 00:35:14,040 --> 00:35:20,270 このご結婚により 左大臣をご後見にと思われてのことでした 217 00:35:21,810 --> 00:35:24,010 なんと静かな 218 00:35:26,650 --> 00:35:28,550 まるでこの世に 219 00:35:29,290 --> 00:35:34,120 あなたとわたくし 二人だけでいるかのようです 220 00:35:35,160 --> 00:35:40,030 それは 何かと不都合になりましょう 221 00:35:42,470 --> 00:35:43,800 何ゆえですか 222 00:35:45,000 --> 00:35:48,830 顔洗いの水を 誰が用意するのです? 223 00:35:49,640 --> 00:35:53,980 私たちの朝餉は? 着物のお支度は? 224 00:35:56,850 --> 00:35:58,510 それは… 225 00:36:03,660 --> 00:36:06,680 それは…何とかなりましょう 226 00:36:06,830 --> 00:36:10,160 いいえ 何ともなりませぬ 227 00:36:20,410 --> 00:36:23,670 すぐに火桶の支度をさせます 228 00:36:31,850 --> 00:36:35,780 こうしていれば 温かい 229 00:36:42,530 --> 00:36:45,520 もう 夜は明けました 230 00:37:19,160 --> 00:37:20,960 今宵はとちらへ 231 00:37:40,350 --> 00:37:45,920 お方様 今宵源氏の君かお越しになられると 232 00:37:50,160 --> 00:37:52,060 そうですか 233 00:38:34,370 --> 00:38:35,960 浅ましい 234 00:39:19,180 --> 00:39:22,920 今宵もよろしくお導きくたさい 235 00:40:19,140 --> 00:40:24,040 こちらが 亡き東宮様から頂いた漢書にございます 236 00:40:24,650 --> 00:40:27,550 あなた様のよきお手本となるかと 237 00:40:31,420 --> 00:40:33,480 これは失礼致しました 238 00:40:35,260 --> 00:40:36,420 どうなさいましたか 239 00:40:36,530 --> 00:40:40,650 そちらは わたくしが書き写したものでございました 240 00:40:40,930 --> 00:40:45,430 こちらが 元の書にございます 241 00:41:00,850 --> 00:41:05,680 あなたのお手蹟の方が よほど美しい 242 00:41:14,200 --> 00:41:18,400 つややかで 気品に満ちていらっしゃる 243 00:41:28,250 --> 00:41:29,370 これは? 244 00:41:34,290 --> 00:41:35,270 それは… 245 00:41:39,890 --> 00:41:41,590 それは 246 00:41:45,060 --> 00:41:47,160 書き連ねているうちに 247 00:41:47,670 --> 00:41:51,660 亡きお方のことが 思い出されたのでございます 248 00:41:54,070 --> 00:41:56,500 涙… ですか? 249 00:42:06,620 --> 00:42:08,420 幸せなお方ですね 250 00:42:09,320 --> 00:42:10,690 東宮様は 251 00:42:13,760 --> 00:42:16,190 あなたのような素晴らしいお方に 252 00:42:17,700 --> 00:42:22,760 死してなおここまで深く 恋い慕われておられるとは 253 00:42:35,680 --> 00:42:37,940 たとえ長く生きようとも 254 00:42:39,180 --> 00:42:42,350 ただ一つの思いすら 遂げられぬのならば 255 00:42:44,890 --> 00:42:47,860 なんと甲斐なき人生でありましょうか 256 00:42:52,230 --> 00:42:56,960 ただひたすらに 苦しい心を抱えたまま 257 00:43:01,140 --> 00:43:03,370 耐えて生きねばならぬとは 258 00:43:10,480 --> 00:43:12,070 源氏の君? 259 00:43:22,260 --> 00:43:24,390 わたくしの この苦しい思い 260 00:43:24,500 --> 00:43:27,400 ほんの一さじでも 受け取ってくださいませんか 261 00:43:29,830 --> 00:43:30,700 な…何を 262 00:44:41,910 --> 00:44:45,680 ようやった ようやってくれた 263 00:44:47,750 --> 00:44:50,310 男皇子様の御誕生 264 00:44:52,520 --> 00:44:54,350 おめでとうございます 265 00:44:54,590 --> 00:44:56,990 おめでとうございます 266 00:45:01,160 --> 00:45:02,750 我が血よ 267 00:45:17,010 --> 00:45:21,780 彰子 でかした 268 00:45:24,780 --> 00:45:29,840 式部 すべては そなたの力であるそ 269 00:45:33,390 --> 00:45:36,620 おお 吉相が出ておられる 270 00:45:40,060 --> 00:45:41,530 晴明 271 00:45:43,330 --> 00:45:46,460 今頃 何しに参ったのじゃ 272 00:45:48,310 --> 00:45:51,640 安産の祈祷に参ったのではございません 273 00:45:53,310 --> 00:45:58,510 あなた様が じじ様になられたお顔を 見に参ったのでございます 274 00:45:59,020 --> 00:46:00,920 この役立たずめが 275 00:46:13,500 --> 00:46:14,900 あの者は? 276 00:46:20,340 --> 00:46:22,900 物語の使い手よ 277 00:46:26,340 --> 00:46:28,840 凶相が出ておりますぞ 278 00:46:38,020 --> 00:46:39,750 源氏の君が 279 00:46:39,860 --> 00:46:45,630 貴婦人との評判の高い御息所のお相手となられたことは 280 00:46:45,730 --> 00:46:48,790 もっぱらのお噂となりました 281 00:46:56,110 --> 00:46:57,800 お起きになって 282 00:47:12,120 --> 00:47:17,920 こんな闇の中に わたくしを放り出すのですか 283 00:47:18,800 --> 00:47:21,460 もうまもなく夜が明けます 284 00:47:25,940 --> 00:47:27,560 わたしなど 285 00:47:29,240 --> 00:47:32,730 闇夜の中で 鬼にでも食われてしまえと 286 00:47:34,910 --> 00:47:39,640 日が高くなってから お帰しすれば わたくしが笑われます 287 00:47:43,690 --> 00:47:45,990 盛りを過きた女が 288 00:47:46,820 --> 00:47:52,290 若い公達に心を奪われ 慎みを失っていると 289 00:47:57,870 --> 00:48:02,770 あなたは 何を守ろうとなさっているのですか 290 00:48:13,450 --> 00:48:17,680 ただ 楽しまれよと? 291 00:48:19,490 --> 00:48:24,120 ただ このひとときを愛おしめと? 292 00:48:26,630 --> 00:48:31,130 わたくしは―人で生きてゆかねばならぬのです 293 00:48:32,200 --> 00:48:35,140 あなたがわたくしの元を去ろうとも 294 00:48:37,070 --> 00:48:40,370 何ゆえ そのようなことを 295 00:48:43,650 --> 00:48:48,640 先に老いてゆく者は 多くを愛してはならぬのです 296 00:48:56,860 --> 00:48:59,090 寂しいことをおっやいます 297 00:49:25,720 --> 00:49:27,250 行かせない 298 00:49:28,730 --> 00:49:30,720 誰にも渡さない 299 00:50:26,920 --> 00:50:28,150 惟光 300 00:50:30,790 --> 00:50:33,950 あの花は何という花だ 301 00:50:37,500 --> 00:50:38,830 夕顔ですよ 302 00:50:39,530 --> 00:50:40,760 夕顔... 303 00:50:41,630 --> 00:50:45,930 人知れず夜に咲き 人知れずしおれていく 304 00:50:47,040 --> 00:50:48,670 哀れな花です 305 00:50:50,610 --> 00:50:51,940 そうか 306 00:50:53,780 --> 00:50:55,610 一房持ってまいれ 307 00:51:08,660 --> 00:51:10,130 これは これは 308 00:51:10,260 --> 00:51:12,160 断りもなく失礼を 309 00:51:13,100 --> 00:51:16,430 この上に載せて 差し上げてださいまし 310 00:51:17,330 --> 00:51:19,830 なよなよと 頼りない花ですので 311 00:51:20,500 --> 00:51:23,270 きっとお支えがいるかと思います 312 00:51:59,540 --> 00:52:00,740 ほお 313 00:52:01,680 --> 00:52:03,810 これは美しい 314 00:52:12,060 --> 00:52:16,720 心あてに それかとぞ見る白露の 315 00:52:16,990 --> 00:52:21,330 ひかりそへたる 夕顔の花 316 00:52:27,740 --> 00:52:29,500 あなたはもしや 317 00:52:30,210 --> 00:52:35,340 あのお噂に高い 光の君ではないのですか 318 00:53:09,880 --> 00:53:11,040 これは… 319 00:53:13,820 --> 00:53:17,720 あなたの肌を傷つけはしませんでしたか 320 00:53:18,660 --> 00:53:21,890 爪がこんなにも伸びておりました 321 00:53:22,060 --> 00:53:23,390 いいえ 322 00:53:25,000 --> 00:53:29,160 あなたは 冷たくはなかったですか 323 00:53:31,740 --> 00:53:34,670 夏ですのに あんまり冷えてしまったので 324 00:53:34,770 --> 00:53:39,900 こっそり温めていたのですよ あなたの温もりで 325 00:53:49,120 --> 00:53:50,980 もっとこちらへ 326 00:53:53,090 --> 00:53:57,420 もっと 温めてさしあげましょう 327 00:54:12,940 --> 00:54:17,640 あなたは 怖くはないのですか 328 00:54:19,680 --> 00:54:21,780 わたくしが どこの誰かも知らす 329 00:54:21,890 --> 00:54:26,880 あなたは お優しい方です 330 00:54:30,230 --> 00:54:34,460 私はそれだけで 十分でございます 331 00:54:42,310 --> 00:54:44,370 わたくしも十分だ 332 00:54:46,140 --> 00:54:50,310 あなたさえ 側にいてくだされば 333 00:55:33,460 --> 00:55:36,120 早くに母を失い 334 00:55:36,790 --> 00:55:41,290 愛に飢えた子供時代を送られた源氏の君は 335 00:55:41,500 --> 00:55:46,560 今でも 愛を求めてさまよう―人の童 336 00:55:47,910 --> 00:55:50,310 その童の心を 337 00:55:51,040 --> 00:55:57,580 夕顔の君は 優しく包んでさしあげたのです 338 00:56:03,920 --> 00:56:09,010 そうか そうか 我は童か 339 00:56:12,560 --> 00:56:15,000 何を仰っているのです 父上 340 00:56:15,670 --> 00:56:18,500 で どうなるのた? 341 00:56:19,170 --> 00:56:24,000 その夕顔と 源氏の行く末は 342 00:56:35,020 --> 00:56:41,420 夕顔の君のお命を 奪うこととなります 343 00:56:46,360 --> 00:56:47,560 ほう 344 00:57:12,700 --> 00:57:17,280 あなたはお美しい わたくしを憧れさせてやまないお方 345 00:57:21,060 --> 00:57:24,930 誰よりも気高く 趣味の高い素晴らしいお方 346 00:58:30,830 --> 00:58:33,830 どうした どうした 347 00:58:34,510 --> 00:58:37,940 おい しっかりしろ どうしたのだ おい 348 00:58:41,510 --> 00:58:45,350 わたくしがこんなに愛しておりますのに 349 00:58:47,350 --> 00:58:52,750 そのようなつまらぬ女に 情けをおかけになるとは 350 00:58:55,430 --> 00:58:57,090 情けない 351 00:58:59,430 --> 00:59:06,600 あなたの愛を ただひたすら  信じたわたくしが 352 00:59:07,440 --> 00:59:12,300 情けない 情けない 353 00:59:38,040 --> 00:59:39,230 やめろ 354 00:59:47,480 --> 00:59:48,970 あなたは 355 01:00:10,370 --> 01:00:13,870 夕顔 夕顔 356 01:00:16,670 --> 01:00:17,940 夕顔 357 01:00:19,410 --> 01:00:21,170 目を覚ませ 夕顔 358 01:00:22,350 --> 01:00:23,540 夕顔! 359 01:00:29,750 --> 01:00:32,350 それで源氏の君は 360 01:00:32,960 --> 01:00:35,550 夕顔の君を殺めた物の怪の正体が 361 01:00:35,690 --> 01:00:38,860 御息所の生き霊だと 気づいていたのでしょうか 362 01:00:39,530 --> 01:00:41,430 かすかには 363 01:00:41,900 --> 01:00:47,590 けれど はっきりとは お分かりになって いらっしやいませんでした 364 01:00:48,210 --> 01:00:53,230 とかく女君は 修羅の心を隠すのがお上手 365 01:00:54,650 --> 01:01:00,870 それを男君は なかなかお分かりにならぬものなのです 366 01:01:14,230 --> 01:01:16,430 あ…しみる 367 01:01:16,770 --> 01:01:18,230 ああ しみる 368 01:01:20,170 --> 01:01:23,500 今度の女は 随分とのぼせ性なのだ 369 01:01:25,580 --> 01:01:26,970 いや待てよ 370 01:01:28,280 --> 01:01:31,580 いくら私との睦みごとが いい証しとはいえ 371 01:01:32,250 --> 01:01:34,080 こうまで傷が… 372 01:01:36,950 --> 01:01:38,890 まさか謀略 373 01:01:40,720 --> 01:01:41,750 謀略 374 01:01:41,930 --> 01:01:43,690 あ… そうだ 375 01:01:44,490 --> 01:01:49,260 これは他の女の元へ 行かせぬための浅知恵 376 01:01:50,500 --> 01:01:56,370 あの女愛らしい顔をして このような魂胆があったとは 377 01:01:59,640 --> 01:02:04,410 このような話我が妹の 婿にする話ではないな 378 01:02:17,090 --> 01:02:22,160 葵の元を もう少し訪れてやっては くれないか 379 01:02:24,330 --> 01:02:26,360 冷たい女ではないのだ 380 01:02:27,370 --> 01:02:31,900 あれはただ 東宮妃になるべく育てられ 381 01:02:32,310 --> 01:02:35,300 取るに足らない誇りを 捨てられずにいる 382 01:02:36,210 --> 01:02:41,310 寂しいと泣きつくことのできない不器用な女 383 01:02:45,220 --> 01:02:50,650 時間がかかろうと 行く末はきっと 打ち解けた夫婦になろうと 384 01:02:52,630 --> 01:02:58,800 あ いや… 俺も正妻の右大臣の姫とは しっくりしておらん 385 01:03:01,640 --> 01:03:06,140 でも 御所に行くたび 俺は感心してしまう 386 01:03:07,940 --> 01:03:10,740 帝と藤壺の宮様の睦まじさ 387 01:03:12,280 --> 01:03:17,010 きっと 前世からの浅からぬご縁が おありなのであろう 388 01:03:17,720 --> 01:03:21,420 今は藤壺の宮様の お里下がりで 389 01:03:21,960 --> 01:03:26,290 帝もさぞ お寂しいことであろうな 390 01:03:55,230 --> 01:03:58,590 これはなんという… 誰か 王命婦は? 391 01:03:58,730 --> 01:04:03,220 誰も参りません わたくしがあの者たちを 蹴散らしたのです 392 01:04:04,970 --> 01:04:09,230 諦めてください わたしは何をしても 許される身なのです 393 01:04:09,510 --> 01:04:12,500 わたしが今 自らそう決めたのです 394 01:04:14,240 --> 01:04:17,870 なんと大それたことを わたくしは あなたの母なのですよ 395 01:04:17,980 --> 01:04:20,920 いいえ母ではない 母などではありはしない 396 01:04:21,480 --> 01:04:24,980 幼い頃から憧れ お慕いし 397 01:04:25,290 --> 01:04:28,350 気安お会いできぬようになってからは たとえ夢の中でも 398 01:04:28,460 --> 01:04:31,620 お逢いしたいと願った たった一人のお方なのです 399 01:04:36,870 --> 01:04:41,430 この罪は わたくし一人が背負うもの 400 01:04:43,640 --> 01:04:47,200 あなたは何も お悪くはないのです 401 01:04:49,950 --> 01:04:51,540 おやめなさい 402 01:04:54,520 --> 01:04:56,850 どうしてお分かりに ならぬのですか 403 01:04:57,890 --> 01:04:59,620 ただ いっときのために 404 01:05:00,820 --> 01:05:04,390 あなたは生涯裏切りの苦しみと共に 生きていかねば ならぬのですよ 405 01:05:04,530 --> 01:05:07,120 苦しいのは過去も今も同じこと 406 01:05:09,000 --> 01:05:13,030 あなたを想う限り この苦しみは続くのです 407 01:05:16,140 --> 01:05:19,200 あなたは大きな 思い違いをしておられる 408 01:05:22,410 --> 01:05:27,880 あなたが わたくしを求めるのは 父帝の后だからこそ 409 01:05:29,420 --> 01:05:32,050 易々と手に入る女であったなら 410 01:05:33,590 --> 01:05:36,060 決してそのようには 思いますまい 411 01:05:44,570 --> 01:05:49,730 そのように 思われていたのですか 412 01:06:35,350 --> 01:06:36,680 婿殿 413 01:06:37,520 --> 01:06:39,990 婿殿 お待ちを 414 01:06:42,190 --> 01:06:43,660 葵に… 415 01:07:25,100 --> 01:07:31,270 これで わたくしたちも 打ち解けた並の夫婦と なりましょう 416 01:07:35,080 --> 01:07:36,710 お苦しいのですか? 417 01:07:48,090 --> 01:07:52,590 わたくしは たまらなく嬉しいのてす 418 01:07:54,770 --> 01:07:58,770 わたくしは 母親の記憶がありません 419 01:07:59,370 --> 01:08:00,770 けれど 420 01:08:02,210 --> 01:08:04,770 これから生まれてる わたくしの子は 421 01:08:05,740 --> 01:08:10,480 母親であるあなたの愛を 存分に受けることが できましょう 422 01:08:15,990 --> 01:08:18,610 わたくしはそれを見て ようやく 423 01:08:19,460 --> 01:08:24,390 寂しかった幼き日々より 解き放たれるのです 424 01:08:32,770 --> 01:08:33,900 葵? 425 01:08:52,460 --> 01:08:54,150 これからは 426 01:08:54,860 --> 01:08:59,150 つらいことも 悲しいことも 恨みごとも 427 01:08:59,630 --> 01:09:01,690 何でも仰ってください 428 01:09:04,270 --> 01:09:05,760 わたくしたちは 429 01:09:07,540 --> 01:09:11,000 世にも許された 夫婦なのですから 430 01:09:14,980 --> 01:09:16,110 ええ 431 01:09:17,520 --> 01:09:18,950 あなた 432 01:09:28,030 --> 01:09:31,460 少しお痩せになりましたね 433 01:09:35,970 --> 01:09:37,230 けれど 434 01:09:38,300 --> 01:09:44,140 その面やつれしたお顔がなお いっそう美しい 435 01:09:48,580 --> 01:09:50,170 あなたは 436 01:09:51,380 --> 01:09:54,710 他でも そのようなことを 仰るのですか? 437 01:09:56,890 --> 01:09:58,820 もう恨みごとですか 438 01:10:00,660 --> 01:10:03,090 ええ そうです 439 01:10:08,900 --> 01:10:15,730 安心してください わたくしは ずっと側におります 440 01:10:19,580 --> 01:10:20,700 ええ 441 01:10:23,110 --> 01:10:24,170 ええ 442 01:10:52,210 --> 01:10:57,270 恐ろしい女であるなあ 六条御息所とは 443 01:10:58,920 --> 01:11:02,650 一人の女を殺めておいて まだ気が済まぬのか 444 01:11:04,220 --> 01:11:07,280 一体どこまで 源氏を追いつめるのだ 445 01:11:09,130 --> 01:11:10,390 さあ 446 01:11:11,830 --> 01:11:14,320 それは わたくしにも分かりませぬ 447 01:11:15,500 --> 01:11:16,660 分からぬ? 448 01:11:17,740 --> 01:11:20,140 すべてそなたが 決めることであろう 449 01:11:22,070 --> 01:11:27,270 筆を取り 紙に向かうまでは 何も決まっておりませぬ 450 01:11:29,150 --> 01:11:30,910 書きながら初めて 451 01:11:33,350 --> 01:11:37,250 この者はこう動くのだと 分かるのです 452 01:11:39,760 --> 01:11:41,850 そういうものか 453 01:11:42,590 --> 01:11:44,530 そういうものです 454 01:11:48,600 --> 01:11:52,930 ほんに 恐ろしい女であるなあ 455 01:11:53,800 --> 01:11:55,100 そなたは 456 01:11:56,970 --> 01:12:03,350 帝も彰子も 宮中の者すべての心を掴んでしまったではないか 457 01:12:04,110 --> 01:12:05,950 その筆 一つで 458 01:12:08,850 --> 01:12:10,680 彰子は皇子を産み 459 01:12:11,120 --> 01:12:13,560 我の大願は果たされた 460 01:12:13,690 --> 01:12:15,280 ならば式部 461 01:12:15,560 --> 01:12:21,560 それでもまだ そなたが物語を綴るのは 何のためだ 462 01:12:22,370 --> 01:12:27,460 無用な物語を 何ゆえ書き続けるのだ 463 01:12:30,970 --> 01:12:37,210 まさか それをお分かりにならぬ あなた様ではありますまい 464 01:12:45,320 --> 01:12:47,550 遂げられぬ思いが 465 01:12:48,660 --> 01:12:53,830 わたくしに 筆を持たせるので ありましょう 466 01:14:07,000 --> 01:14:08,400 東宮様じゃ 467 01:14:08,910 --> 01:14:15,570 東宮様 東宮様じゃ 東宮様じゃ… 468 01:14:26,860 --> 01:14:29,120 これは これは 東宮様 469 01:14:32,360 --> 01:14:37,590 そのお目に映るものは すべて あなた様のものですぞ 470 01:14:38,200 --> 01:14:42,500 我は一生東宮様にお仕えする臣下である 471 01:14:55,690 --> 01:14:57,120 行成殿 472 01:14:58,190 --> 01:15:01,950 結局我は そなたがおらねば何もできぬ 473 01:15:02,560 --> 01:15:05,460 よう帝を説き伏せてくれた 474 01:15:06,460 --> 01:15:10,230 以前そなたには 百年たっても かなわぬと申したが 475 01:15:10,330 --> 01:15:14,400 いやいや 千年たっても かなわぬわ 476 01:15:19,640 --> 01:15:22,080 道長様というお人は 477 01:15:22,480 --> 01:15:27,750 ひとたび心に描いたことは 必ず やり遂げるお方です 478 01:15:29,590 --> 01:15:32,350 彰子様のお産みになった 敦成親王が 479 01:15:32,520 --> 01:15:34,890 東宮にお立ちになることは 480 01:15:35,230 --> 01:15:41,160 道長様のお心の中で 既に決まったことなのです 481 01:15:42,530 --> 01:15:46,660 仮に それが覆るようなことがあっても 482 01:15:47,370 --> 01:15:50,000 必ずや元の通りにしてしまう 483 01:15:50,210 --> 01:15:52,200 どんな手を使ってでも 484 01:15:54,110 --> 01:15:59,250 私は そのことが恐ろしいのです 485 01:16:05,190 --> 01:16:12,790 主上の おなり 486 01:16:33,880 --> 01:16:37,410 我があばら家に ようお越しくださいました 487 01:16:41,660 --> 01:16:46,390 どうぞ ごゆるりと お過ごしくださいませ 488 01:16:48,130 --> 01:16:52,430 加減が悪く 遅うなりました 489 01:17:16,760 --> 01:17:19,660 料理も酒も どんどん持ってまいれ 490 01:17:20,930 --> 01:17:22,630 東宮様が 袴着をなされた 491 01:17:22,770 --> 01:17:28,000 一世一代の祝いの場に 出し惜しみは無用であるぞ 492 01:17:29,770 --> 01:17:30,870 それ 493 01:17:32,540 --> 01:17:35,670 楽はどうした 舞をお見せしろ 494 01:17:37,610 --> 01:17:38,840 それ! 495 01:19:11,740 --> 01:19:12,970 毒 496 01:19:15,250 --> 01:19:21,050 凝り固まった思いが毒となり あの者の体内を回っておる 497 01:19:37,970 --> 01:19:40,560 源氏の君に和子様が? 498 01:19:41,000 --> 01:19:45,230 葵の上様がご懐妊で まもなくお生まれになると 499 01:19:45,910 --> 01:19:49,610 左大臣家では 大層なお賑わいのご様子 500 01:19:49,810 --> 01:19:53,340 それは源氏の君も さぞお喜びでしょう 501 01:19:55,250 --> 01:19:58,520 なんせ初めてのお子で いらっしやるのですもの 502 01:20:00,160 --> 01:20:04,460 葵の上様がご心配で 始終つきっきりだとか 503 01:20:04,660 --> 01:20:07,100 お優しい方で いらっしやいますね 504 01:20:07,200 --> 01:20:08,760 源氏の君は 505 01:20:10,430 --> 01:20:13,430 きっと よき父上になられることでしょう 506 01:20:14,270 --> 01:20:19,110 男の子でしょうか それとも可愛らしい女の子 507 01:20:21,380 --> 01:20:25,940 源氏の君のお越しも 今宵が最後になるのではと… 508 01:20:31,820 --> 01:20:36,360 忙しさに追われ 寂しい思いをおさせしました 509 01:20:37,960 --> 01:20:39,450 どうぞお許しを 510 01:20:41,300 --> 01:20:44,790 左大臣家ことって この度は初めての孫 511 01:20:45,800 --> 01:20:48,200 今から安産の祈祷などを行い 512 01:20:48,470 --> 01:20:52,310 あちらには わたくしの くつろぐ場所がないのです 513 01:20:54,310 --> 01:21:00,220 こちらの風流なたたずまい 常に懐かしく 思っておりました 514 01:21:03,820 --> 01:21:05,410 お懐かしいのなら 515 01:21:06,720 --> 01:21:10,060 いつお越しになっても 構わないのですよ 516 01:21:12,330 --> 01:21:16,700 わたくしの 温かい閨へ 517 01:21:22,440 --> 01:21:24,500 おかわいそうに 518 01:21:26,010 --> 01:21:31,940 冷たいだけの奥様に 缚られて いらっしやるのですね 519 01:21:34,750 --> 01:21:36,010 けれど 520 01:21:37,250 --> 01:21:42,890 愛されてないお方が どうして 胎まれたのでございましょう 521 01:21:46,730 --> 01:21:48,390 わたくしの身ではなく 522 01:22:08,890 --> 01:22:11,290 祓え 523 01:22:12,520 --> 01:22:16,080 何をしておる 祓え 祓え 524 01:22:16,190 --> 01:22:17,020 お方様 525 01:22:22,870 --> 01:22:24,230 お待ちくださいませ 526 01:22:24,330 --> 01:22:27,790 お方様! お方様 お方様… 527 01:22:41,320 --> 01:22:41,910 義父上 528 01:22:44,420 --> 01:22:45,080 義父上 529 01:22:45,360 --> 01:22:49,160 いかようにしても 物の怪が取り憑いて 離れぬのだ 530 01:22:52,160 --> 01:22:52,960 お方様 531 01:22:53,060 --> 01:22:54,330 葵 532 01:22:56,000 --> 01:22:59,500 もう大丈夫だ 心配ない 533 01:22:59,940 --> 01:23:01,900 わたくしが ずっと側にいる 534 01:23:02,010 --> 01:23:03,340 あなた… 535 01:23:04,610 --> 01:23:08,700 まもなく わたくしたちは 本当の夫婦になれるのだ 536 01:23:09,180 --> 01:23:10,910 長い遠回りだったが 537 01:23:11,180 --> 01:23:15,680 わたくしと あなたと 生まれてくる子と三人で 幸せになるのだ 538 01:23:15,790 --> 01:23:20,220 穏やかな 満ち足りた日々を 共に過ごすのだ 539 01:23:26,260 --> 01:23:27,560 何が言いたい 540 01:23:29,200 --> 01:23:31,920 ゆる… めて.. 541 01:23:32,700 --> 01:23:34,100 苦しいのか? 542 01:23:37,040 --> 01:23:39,540 ゆる… めて... 543 01:23:41,540 --> 01:23:43,440 ご祈祷を 544 01:23:45,380 --> 01:23:47,750 ゆるめてほしいのです 545 01:23:51,420 --> 01:23:54,120 そのお声は… 546 01:23:54,590 --> 01:23:58,120 何ゆえ わたくしを 放っておかれてるのですか 547 01:23:59,600 --> 01:24:01,220 わたくしは 548 01:24:01,930 --> 01:24:06,560 あなたが情けをかけた あまたの女の一人にすぎぬのですか 549 01:24:08,640 --> 01:24:11,730 決して… そのようなことは 550 01:24:15,410 --> 01:24:18,940 王羲之の書と比ぺますと 幾分やわ… 551 01:24:19,750 --> 01:24:21,510 騒いでおる 552 01:24:22,350 --> 01:24:23,340 飲め 553 01:24:23,520 --> 01:24:26,650 あの者の中で 鬼が騒ぎ出しておる 554 01:24:27,260 --> 01:24:33,320 わたくしの中の 修羅の心 555 01:24:36,800 --> 01:24:40,430 その心を 目覚めさせたのは 556 01:24:42,640 --> 01:24:43,970 あなた 557 01:24:52,180 --> 01:24:54,970 何ゆえ わたくしの扉を開けたのですが 558 01:24:56,690 --> 01:24:59,880 わたくしは心平らかに 559 01:25:00,960 --> 01:25:06,690 自らの誇りと共に 生きてゆきたいと願っていたのに 560 01:25:10,870 --> 01:25:12,960 浅ましい 561 01:25:16,140 --> 01:25:22,580 このような姿に 成り果てた我が身が 浅ましい 562 01:25:36,990 --> 01:25:38,150 葵 563 01:25:40,330 --> 01:25:41,260 葵 564 01:25:41,360 --> 01:25:42,330 お方様 565 01:25:42,430 --> 01:25:44,990 姬 姬 566 01:25:49,240 --> 01:25:50,430 姬 567 01:26:08,760 --> 01:26:11,120 お方様 568 01:26:11,230 --> 01:26:11,890 姬 569 01:26:16,030 --> 01:26:17,020 姬 570 01:26:20,540 --> 01:26:24,700 天清浄地清淨内外清淨 571 01:26:25,280 --> 01:26:28,210 六根清浄と祓い賜う 572 01:26:29,580 --> 01:26:33,070 天清浄地清浄内外清浄 573 01:26:33,220 --> 01:26:36,120 六根清浄と祓い賜う 574 01:26:37,990 --> 01:26:39,820 何じゃ お前は 575 01:26:46,960 --> 01:26:49,160 晴明はとこへ行ったのだ 576 01:26:54,670 --> 01:26:58,270 臨 兵 闘 577 01:26:59,140 --> 01:27:04,170 者 皆 陣 列 578 01:27:04,850 --> 01:27:07,340 在 前  579 01:27:12,190 --> 01:27:14,490 者 皆… 580 01:27:14,590 --> 01:27:15,990 許さぬ 581 01:27:16,330 --> 01:27:20,420 わらわの邪魔をする者は 誰とて許さぬ 582 01:27:20,530 --> 01:27:24,260 臨 兵 闘 583 01:27:24,500 --> 01:27:28,800 者 皆 陣 列 584 01:27:29,610 --> 01:27:34,770 在 前 臨 兵 闘 585 01:27:35,610 --> 01:27:40,310 者 皆 陣 列 586 01:27:40,450 --> 01:27:42,680 在 前  587 01:28:04,970 --> 01:28:07,840 天祖神恵霊玉 祓いたまえ淨めたまえ 588 01:28:41,510 --> 01:28:45,110 そなたの修羅は これほどのものなのか 589 01:28:49,350 --> 01:28:50,880 お兆しにございます 590 01:28:51,020 --> 01:28:52,350 お兆しにございます 591 01:28:52,460 --> 01:28:53,510 お兆しにございます 592 01:28:53,620 --> 01:28:55,420 お気をしっかりと 593 01:29:04,130 --> 01:29:04,720 姫 594 01:29:04,870 --> 01:29:05,770 姫 595 01:29:05,870 --> 01:29:07,360 お気を確かに 596 01:29:15,110 --> 01:29:18,270 道長様に益をもたらした女 597 01:29:20,050 --> 01:29:21,980 物語の使い手 598 01:29:23,490 --> 01:29:27,720 あの者の修羅はいずれ 物語の世界から抜け出す 599 01:29:30,330 --> 01:29:34,160 その時は我とて 収められぬやもしれぬ 600 01:29:37,100 --> 01:29:39,400 式部の筆を止めるのです 601 01:29:41,340 --> 01:29:44,930 止められるのは 道長様の他にはおりませぬ 602 01:29:47,280 --> 01:29:49,240 それはできぬ 603 01:29:50,250 --> 01:29:51,800 なにゆえです 604 01:29:53,420 --> 01:29:56,940 我が それを望まぬからだ 605 01:29:58,690 --> 01:30:00,590 我は見たいのだ 606 01:30:04,590 --> 01:30:08,260 式部の筆の行き着く先を 607 01:30:10,300 --> 01:30:12,770 あの者の業の深さを 608 01:30:13,340 --> 01:30:17,670 才のすべてを 見届けたいのだ 609 01:30:18,940 --> 01:30:21,880 我が身に害が及ぼうとも 610 01:30:22,780 --> 01:30:26,610 そうだ それが務めだ 611 01:30:28,720 --> 01:30:35,380 あの者の才を 呼び覚ましたのは この私なのだからな 612 01:31:08,520 --> 01:31:11,550 さあ 薬湯をおあがり 613 01:31:14,760 --> 01:31:16,200 ありがとう 614 01:31:26,780 --> 01:31:28,180 取れぬ 615 01:31:30,850 --> 01:31:32,710 なぜ取れぬ 616 01:31:34,220 --> 01:31:38,340 この… 芥子の匂い 617 01:31:40,090 --> 01:31:44,090 取れぬ 取れぬのじゃ 618 01:32:56,130 --> 01:32:57,600 苦しいか? 619 01:33:03,210 --> 01:33:08,110 わらわは もっと苦しんだのだ 620 01:33:10,050 --> 01:33:13,780 もっと もっと 621 01:33:17,020 --> 01:33:19,350 苦しみ抜いたのだ 622 01:33:28,560 --> 01:33:29,860 起きよ 623 01:33:31,370 --> 01:33:36,870 まだまだそなたには 苦しみが足らぬ 起きよ 624 01:33:41,480 --> 01:33:43,450 天御中主 625 01:33:43,550 --> 01:33:46,640 一 一は二を生じ 二 626 01:33:47,050 --> 01:33:49,310 二は三を生じ 三 627 01:33:50,150 --> 01:33:52,550 三は万物を生ず 628 01:33:53,690 --> 01:33:55,550 三三で九 629 01:33:56,430 --> 01:33:58,480 九九で八十一 630 01:34:03,670 --> 01:34:08,160 北より南に廻りて 前一騰蛇 631 01:34:08,670 --> 01:34:10,500 前二朱雀 632 01:34:11,370 --> 01:34:13,430 前三六合 633 01:34:13,580 --> 01:34:15,370 前四勾陳 634 01:34:15,580 --> 01:34:17,710 前五青龍 635 01:34:18,180 --> 01:34:21,620 目下どの神にして 東にあるもの 636 01:34:22,950 --> 01:34:25,850 恨みはいずれ我が身に返る 637 01:34:26,920 --> 01:34:28,910 御息所よ もうやめるのだ 638 01:34:29,390 --> 01:34:31,120 お前に何が分かる 639 01:34:36,570 --> 01:34:43,370 もはや あの方に愛されぬこの身など 640 01:34:44,410 --> 01:34:46,600 どうなっても構わぬ 641 01:34:48,880 --> 01:34:53,970 死して 煉獄をさまよっても構わぬ 642 01:35:02,630 --> 01:35:08,290 あの方は 私の命 643 01:35:10,300 --> 01:35:12,930 わたくしだけの命 644 01:35:54,810 --> 01:35:56,210 これで 645 01:35:59,680 --> 01:36:01,810 终わりにしてくれる 646 01:36:09,890 --> 01:36:13,050 あ… あなた… 647 01:36:18,330 --> 01:36:19,600 だ…誰か 648 01:36:19,700 --> 01:36:24,170 お…お方様が お方様いかがなさいました 649 01:36:39,160 --> 01:36:40,520 葵 650 01:36:50,170 --> 01:36:52,000 そなたの夫は 651 01:36:53,240 --> 01:36:56,840 果たして どれほどの女を 狂わせるのだ 652 01:37:14,720 --> 01:37:16,620 何も言わぬのは 653 01:37:19,060 --> 01:37:21,690 あなたの優しさからですか 654 01:37:28,370 --> 01:37:29,700 もう 655 01:37:31,810 --> 01:37:34,780 何もかも こ存じなはずです 656 01:37:37,450 --> 01:37:39,110 浅ましい 657 01:37:41,080 --> 01:37:43,710 鬼に成り果てたわたしを 658 01:37:47,060 --> 01:37:51,820 幾度… 幾度衣を替えても 659 01:37:53,060 --> 01:37:56,430 幾度髪を洗っても 取れぬのです 660 01:37:57,230 --> 01:38:00,830 体中から漂う芥子の匂い 661 01:38:02,770 --> 01:38:04,400 わたくしは 662 01:38:05,570 --> 01:38:10,500 我が身が恐ろしくて なりませぬ 663 01:38:13,480 --> 01:38:18,980 すべて わたくしが悪いのです 664 01:38:22,660 --> 01:38:29,090 あなたを そこまで追いつめたのは このわたくしなのです 665 01:38:31,770 --> 01:38:33,700 我が身を失うほど 666 01:38:35,170 --> 01:38:37,800 深く わたくしを 愛してくださったあなたを 667 01:38:40,110 --> 01:38:44,380 粗略に扱ったわたくしが 悪いのです 668 01:38:50,450 --> 01:38:55,220 もう こ自分をお責めになりますな 669 01:39:01,830 --> 01:39:03,560 そのお言葉で 670 01:39:05,970 --> 01:39:08,560 都を離れる決心がつきました 671 01:39:10,140 --> 01:39:12,200 何を言われるのですか 672 01:39:14,680 --> 01:39:19,910 縁者を頼り 伊勢に下ることに致します 673 01:39:21,980 --> 01:39:23,420 その地で 674 01:39:24,890 --> 01:39:30,890 心静かに 余生を過ごすつもりです 675 01:39:33,160 --> 01:39:37,520 わたくしを一人 捨て置かれるのですか 676 01:39:37,730 --> 01:39:39,500 ここにいては 677 01:39:40,170 --> 01:39:45,770 わたくしはまた あなたを 苦しめるだけの女に 成り下がってしまう 678 01:39:50,710 --> 01:39:54,170 あなたは まだお若い 679 01:39:57,690 --> 01:39:59,350 共に生き 680 01:40:01,120 --> 01:40:04,290 共に泣き笑う 681 01:40:08,200 --> 01:40:11,190 お優しい方を 見つけてくださいな 682 01:40:15,070 --> 01:40:16,700 くれぐれも 683 01:40:17,740 --> 01:40:19,730 わたくしのような 684 01:40:20,810 --> 01:40:25,200 情の強い女には 気を付けるのですよ 685 01:41:02,350 --> 01:41:03,980 初めから 686 01:41:05,520 --> 01:41:08,290 何もかも初めから やり直すのです 687 01:41:08,920 --> 01:41:11,480 この先どれほどの 月日がたとうとも 688 01:41:11,930 --> 01:41:15,860 あなたほど深く わたくしを愛してくれる人に 出会えるはずもない 689 01:41:22,000 --> 01:41:24,770 何度やり直しても同じこと 690 01:41:26,940 --> 01:41:31,940 わたくしたちはまた 同じ過ちを繰り返すのです 691 01:41:36,020 --> 01:41:41,520 もう わたくしは十分なのてす 692 01:41:44,560 --> 01:41:51,660 恋の喜びも 悲しみも 苦しみも 693 01:41:54,640 --> 01:41:57,970 すべては あなたゆえでした 694 01:42:05,010 --> 01:42:06,740 さようなら 695 01:42:08,180 --> 01:42:09,480 あなた 696 01:42:55,630 --> 01:42:58,190 命婦様 命婦様   697 01:43:02,470 --> 01:43:06,530 おやめを おやめください 698 01:43:07,080 --> 01:43:10,510 おやめください おやめを 699 01:43:10,680 --> 01:43:13,510 おやめくださいまし おやめください 700 01:43:13,680 --> 01:43:16,240 おやめください おやめください 701 01:43:17,520 --> 01:43:19,710 おやめください おやめ… 702 01:43:25,290 --> 01:43:26,760 おやめください 703 01:43:32,200 --> 01:43:34,900 お方様 わたくしは 704 01:43:35,040 --> 01:43:36,530 分かっております 705 01:43:39,040 --> 01:43:41,530 あとはわたくしが お話し致します 706 01:44:39,100 --> 01:44:42,920 源氏の君 あなたのお振る舞いは 707 01:44:43,470 --> 01:44:48,470 わたくしだけではなく あの者をも 苦しめているのですよ 708 01:44:58,820 --> 01:45:00,520 それがお分かりに ならぬのですか 709 01:45:00,620 --> 01:45:04,690 わたくしは今 やっと分かったのです 710 01:45:08,360 --> 01:45:10,630 あなたへの思いが 何ゆえなのか 711 01:45:15,800 --> 01:45:17,360 思い出したのです 712 01:45:18,470 --> 01:45:21,470 初めて御所であなたに お会いした時のことを 713 01:45:24,310 --> 01:45:26,800 共に夜が更けるまで本を読み 714 01:45:27,680 --> 01:45:29,210 管弦の遊ひをし 715 01:45:30,190 --> 01:45:32,550 そのうちに わたくしは思ったのです 716 01:45:36,890 --> 01:45:39,660 いっそこのまま 大人にならなければ 717 01:45:41,600 --> 01:45:43,930 ずっと あなたと共にいられる 718 01:45:45,000 --> 01:45:47,830 あなたの笑顔の中に 包まれていられると 719 01:45:56,180 --> 01:45:57,910 わたくしにとって 720 01:45:59,680 --> 01:46:02,010 あなたの代わりなど どこにもいない 721 01:46:06,190 --> 01:46:11,120 結ばれぬあなたを 恋い慕い続けることが わたくしの運命 722 01:46:13,100 --> 01:46:16,060 その苦しみを 一人で背負う強さがあれば 723 01:46:16,200 --> 01:46:18,530 誰も傷つけることは なかったのです 724 01:46:24,910 --> 01:46:29,210 葵も 夕顔も 725 01:46:33,320 --> 01:46:34,750 あの方も 726 01:46:46,800 --> 01:46:49,390 そのことをお伝えしに 参りました 727 01:46:50,100 --> 01:46:52,760 もう二度とこのような 振る舞いは致しません 728 01:47:03,080 --> 01:47:04,910 愛しいあなたを 729 01:47:08,980 --> 01:47:11,420 地獄に落とすことはできない 730 01:47:31,940 --> 01:47:33,600 もう落ちている 731 01:50:04,160 --> 01:50:06,150 この悪夢は 732 01:50:08,530 --> 01:50:13,300 この一夜の 夢で終わるのですか 733 01:50:27,050 --> 01:50:34,550 それとも新たな悪夢の 幕開けになろうと いうのですか 734 01:50:56,210 --> 01:50:59,010 私はあなたに 感謝しているのだよ 735 01:51:01,220 --> 01:51:06,990 源氏の母を失い 闇の中にいた私を 救ってくれた 736 01:51:08,660 --> 01:51:13,820 あなたはこうして 新しい命まで私にくれる 737 01:51:17,400 --> 01:51:19,730 私を照らす光 738 01:51:22,170 --> 01:51:24,830 あなたの代わりは どこにもいない 739 01:52:10,150 --> 01:52:13,380 ごらん美しい子であろろ 740 01:52:14,920 --> 01:52:16,050 はい 741 01:52:17,130 --> 01:52:18,720 誠に美しい 742 01:52:20,630 --> 01:52:23,890 そなたの幼い頃に 不思議なほどよく似ておる 743 01:52:25,730 --> 01:52:27,670 恐れ多いことにございます 744 01:52:32,570 --> 01:52:36,440 きっと美しいものは 似るものなのだのう 745 01:52:43,590 --> 01:52:48,720 朱雀帝に位を譲り 院となられた帝は 746 01:52:48,820 --> 01:52:52,450 若宮様を 東宮にお立てになると 747 01:52:52,660 --> 01:52:58,090 まるでそれを 待っていたかのように 病に倒れられました 748 01:52:59,170 --> 01:53:01,100 心配はいらぬ 749 01:53:03,140 --> 01:53:08,100 私は既に 寿命が尽きた身なのだよ 750 01:53:10,950 --> 01:53:12,940 何を仰るのです 751 01:53:14,220 --> 01:53:17,650 私はもう疲れたのだ 752 01:53:20,120 --> 01:53:21,380 父上 753 01:53:22,620 --> 01:53:25,990 思い残すことは何も… 754 01:53:31,400 --> 01:53:32,370 光 755 01:53:35,970 --> 01:53:39,170 ただそなたのことだけだ 756 01:53:43,380 --> 01:53:48,910 数ある皇子の中で そなたは 一番優れた子であった 757 01:53:49,720 --> 01:53:56,750 されど私の力不足ゆえ 帝位に即けることが できなかった 758 01:53:57,830 --> 01:54:02,430 わたくしは元より その器のない人間です 759 01:54:03,430 --> 01:54:06,700 そうしていれば 誰も苦しまなかったのだ 760 01:54:08,440 --> 01:54:12,030 そなたも 私も 761 01:54:22,780 --> 01:54:24,250 どうか 762 01:54:25,350 --> 01:54:28,580 幼い東宮を守ってやってくれ 763 01:54:30,020 --> 01:54:35,290 これは 私の最後の望みだ 764 01:55:14,440 --> 01:55:16,060 わたくしは 765 01:55:16,570 --> 01:55:18,130 亡き院が 766 01:55:19,310 --> 01:55:23,810 わたくしたちの罪を すべて知っておられたように思えてならぬのです 767 01:55:26,280 --> 01:55:32,340 それを知ったうえで わたくしたちの子を 東宮になされた 768 01:55:35,760 --> 01:55:41,590 そのお心を わたくしは守りたいのです 769 01:57:05,850 --> 01:57:07,340 里に帰るとな 770 01:57:09,020 --> 01:57:10,110 ええ 771 01:57:12,520 --> 01:57:14,920 娘が待っております 772 01:57:15,720 --> 01:57:18,780 娘は早くに父を亡くし 773 01:57:19,060 --> 01:57:22,930 わたくしも 宮仕えで側を離れたゆえ 774 01:57:23,260 --> 01:57:26,560 長らく寂しい思いを させました 775 01:57:27,700 --> 01:57:29,030 そうか 776 01:57:30,270 --> 01:57:34,540 だが 我は寂しゅうなるな 777 01:57:38,780 --> 01:57:39,770 何だ 778 01:57:40,250 --> 01:57:41,940 ご冗談を 779 01:57:44,220 --> 01:57:45,810 真の思いだ 780 01:57:52,830 --> 01:57:59,230 そなたの物語が 読めなくなると思うと 毎日に張り合いがなくなるわ 781 01:58:04,240 --> 01:58:05,970 達者で暮らすのだぞ 782 01:58:08,280 --> 01:58:09,240 はい 783 01:58:12,610 --> 01:58:15,740 その後 源氏はどうなるのだ 784 01:58:17,850 --> 01:58:21,520 世の無常を儚み 隠居するのではないか 785 01:58:22,120 --> 01:58:23,250 いいえ 786 01:58:24,130 --> 01:58:27,930 そのようなことは 決してありませぬ 787 01:58:29,860 --> 01:58:35,000 源氏の君の人生は まだ始まったばかりなのです 788 01:58:37,840 --> 01:58:39,640 これからまた 789 01:58:40,110 --> 01:58:44,440 様々な方と出会い 別れ 790 01:58:45,310 --> 01:58:48,280 多くの喜びを味わい 791 01:58:48,980 --> 01:58:54,440 多くの涙を流して 生きてゆかれるのです 792 01:58:56,620 --> 01:59:01,520 それはまた ずいぶん難儀な人生であるな 793 01:59:05,300 --> 01:59:06,460 ええ 794 01:59:09,400 --> 01:59:13,540 あなた様と 同じように 795 01:59:20,280 --> 01:59:21,810 同じようにか 796 01:59:30,020 --> 01:59:34,320 遠くより 見守っております 797 01:59:37,270 --> 01:59:42,330 これからも この世の栄華を 極められる 798 01:59:43,370 --> 01:59:45,500 あなた様のことを 799 02:00:08,530 --> 02:00:09,760 そうよ 800 02:00:11,230 --> 02:00:13,220 我の名は光 801 02:00:14,870 --> 02:00:17,300 世をあまねく照らす 802 02:00:19,810 --> 02:00:21,040 光だ 803 02:00:31,550 --> 02:00:35,220 誠に美しい月よ 804 02:00:37,990 --> 02:00:44,500 我もあと幾度 このように月を 愛でられることか 805 02:00:47,740 --> 02:00:49,970 おや 随分と弱気な 806 02:00:50,440 --> 02:00:51,630 のう 晴明 807 02:00:52,970 --> 02:00:55,310 我はあと どのぐらい生きられる 808 02:01:00,410 --> 02:01:01,850 それは 809 02:01:05,150 --> 02:01:06,480 分かりませぬ 810 02:01:07,760 --> 02:01:11,250 相変わらず 役に立たぬ男よ 811 02:01:12,690 --> 02:01:13,750 行成 812 02:01:16,100 --> 02:01:17,430 おぬしも飲まんか 813 02:01:23,440 --> 02:01:25,960 ほれほれ しっかり持て 814 02:01:26,110 --> 02:01:26,940 はあ… 815 02:01:27,480 --> 02:01:31,340 どうやら物語の毒気に あたったようですな 816 02:01:41,960 --> 02:01:43,620 道長様 817 02:01:46,290 --> 02:01:49,020 あなたはやはり運の強き男 818 02:01:49,900 --> 02:01:56,630 あの女 我が身が鬼となる前に 自ら身を引くとは 819 02:02:02,410 --> 02:02:04,540 美しいのう 820 02:02:10,320 --> 02:02:12,810 では―首 821 02:02:26,570 --> 02:02:33,600 この世をば 我が世とぞ思う望月の 822 02:02:35,180 --> 02:02:39,840 欠けたることもなしと思えば 823 02:03:16,950 --> 02:03:19,920 ご決心は変わりませぬか 824 02:03:37,270 --> 02:03:40,870 お通しください あの方とお話しせねば ならないのです 825 02:03:40,980 --> 02:03:45,680 なりませぬ ここから先は何人たりとも 入ることはかないません 826 02:03:46,480 --> 02:03:49,310 わたくしは都にて 参議の職を担う者 827 02:03:50,520 --> 02:03:52,950 御仏の前では 只人でこさいましょう 828 02:03:54,820 --> 02:03:59,930 仏の胸に抱かれた者には 以後決して 触れてはなりませぬ 829 02:07:17,590 --> 02:07:19,150 そなたは 830 02:07:21,830 --> 02:07:24,350 どこまで わたくしを苦しめるのだ 831 02:07:40,610 --> 02:07:43,550 まだお分かりに ならぬのですか 832 02:07:46,420 --> 02:07:49,910 多くの人を 引き付けてやまないあなたは 833 02:07:50,690 --> 02:07:57,460 そのあり余る幸せの分だけ 血を流して生きるのてす 834 02:08:11,310 --> 02:08:12,870 それが 835 02:08:14,380 --> 02:08:16,540 あなたの人生