1 00:01:22,290 --> 00:01:26,294 (鳥の鳴き声) 2 00:01:42,268 --> 00:01:43,895 (翡翠(ひすい)の玉の音) 3 00:01:49,234 --> 00:01:50,902 (翡翠の玉の音) 4 00:01:53,530 --> 00:01:54,948 (翡翠の玉の音) 5 00:01:56,491 --> 00:01:57,492 (紫式部(むらさきしきぶ))ハァッ! 6 00:02:26,062 --> 00:02:27,397 (紫式部)ハァッ! 7 00:02:27,480 --> 00:02:28,523 あっ! 8 00:02:30,066 --> 00:02:33,111 (男)そなたの評判は 我の耳にも届いておる 9 00:02:33,194 --> 00:02:34,696 (紫式部)ああっ… 10 00:02:39,784 --> 00:02:45,039 (男)そなたの物語には 本物の血が流れているようだと 11 00:02:51,004 --> 00:02:52,130 諦めなさい 12 00:02:53,756 --> 00:02:57,218 私は何をしても許される身なのだ 13 00:02:57,302 --> 00:02:58,303 (紫式部)ハァッ… 14 00:03:13,526 --> 00:03:14,569 ああっ! 15 00:03:44,349 --> 00:03:45,391 ハァッ! 16 00:03:54,317 --> 00:03:58,321 (翡翠の玉の音) 17 00:04:07,664 --> 00:04:09,040 (紫式部)ああ… 18 00:04:13,670 --> 00:04:14,754 (道長(みちなが))いつか― 19 00:04:16,172 --> 00:04:19,716 そなたの書く物語を読ませてくれ 20 00:04:22,553 --> 00:04:24,764 男と女の物語だ 21 00:04:29,686 --> 00:04:31,020 我の名を知りたいか? 22 00:04:38,236 --> 00:04:39,862 (道長)我は 光(ひかる)だ 23 00:04:41,114 --> 00:04:44,575 世をあまねく照らす光(ひかり)だ 24 00:05:34,417 --> 00:05:40,548 (道長)それは さる坊主が 唐(とう)の国より持ち帰った紙である 25 00:05:42,842 --> 00:05:46,095 捕らえるのだ 帝(みかど)のお心を 26 00:05:46,846 --> 00:05:49,223 その筆で そなたの筆で 27 00:05:49,974 --> 00:05:53,269 それができるのは そなたしかおらぬ 28 00:05:53,936 --> 00:05:56,272 そなたの他にはおらんのだ 29 00:05:58,733 --> 00:06:01,319 そなたの書く物語の力で― 30 00:06:01,402 --> 00:06:03,780 我が娘 彰子(しょうし)の元に― 31 00:06:03,863 --> 00:06:08,284 いっときでも長く 帝を留め置くのだ 32 00:06:09,452 --> 00:06:12,038 我が天下を治めるため 33 00:06:12,121 --> 00:06:16,417 我の血を 帝の中に残さんがため 34 00:06:23,299 --> 00:06:27,261 (翡翠の玉の音) 35 00:06:48,616 --> 00:06:51,536 (紫式部)我の血を… 36 00:07:10,888 --> 00:07:13,391 (紫式部) いつの御代(みよ)のことでしょう 37 00:07:14,475 --> 00:07:17,937 女御 更衣が あまたお仕えしておりました― 38 00:07:18,020 --> 00:07:20,148 帝の後宮に― 39 00:07:20,898 --> 00:07:26,320 軽い身分でありながら 帝から誰よりも愛され― 40 00:07:26,404 --> 00:07:31,033 楊貴妃(ようきひ)もかくやと言われるほど 格別に遇された― 41 00:07:31,909 --> 00:07:34,620 1人の女人がいらっしゃいました 42 00:07:35,538 --> 00:07:39,167 桐壺(きりつぼ)の更衣と呼ばれたお方でした 43 00:07:59,645 --> 00:08:04,567 (紫式部)けれど 帝のご寵愛(ちょうあい)の深さは― 44 00:08:04,650 --> 00:08:11,491 あまたの女人の嫉妬となって 桐壺様へと襲いかかりました 45 00:08:20,124 --> 00:08:21,167 (桐壺)ハァッ! 46 00:08:29,550 --> 00:08:35,847 (紫式部)中でも 帝の第一后(きさき) 弘徽殿(こきでん)様のお怒りは― 47 00:08:35,932 --> 00:08:38,392 なみなみならぬものでした 48 00:08:42,438 --> 00:08:44,607 (弘徽殿)うああ… 49 00:08:47,193 --> 00:08:50,863 うあ… あああ… 50 00:08:50,947 --> 00:08:54,659 この 淫らな女め! 51 00:08:55,243 --> 00:08:59,622 卑しき身分のお前になんか 皇子(みこ)を産ませはせぬ! 52 00:09:00,706 --> 00:09:04,460 断じて許さぬぞ! ん? ん? ん! 53 00:09:05,419 --> 00:09:06,671 うあー! 54 00:09:06,754 --> 00:09:10,800 (弘徽殿の力む声) (桐壺のうめき声) 55 00:09:15,846 --> 00:09:18,349 私の 血は… 56 00:09:19,976 --> 00:09:22,103 これで ようやく 57 00:09:23,354 --> 00:09:25,982 帝と1つになるのです 58 00:09:30,194 --> 00:09:31,195 んっ! 59 00:09:31,279 --> 00:09:33,281 (弘徽殿)うあっ ああっ… 60 00:09:45,209 --> 00:09:48,629 ハァ ハァ… 61 00:09:55,886 --> 00:09:57,263 私の… 62 00:10:00,224 --> 00:10:01,684 命よ 63 00:10:05,104 --> 00:10:09,108 (産声) 64 00:10:11,319 --> 00:10:15,406 (紫式部)皇子様を お産みになられた桐壺様は― 65 00:10:15,489 --> 00:10:21,454 まるで その命と引き換えのように みまかられたのでありました 66 00:10:30,838 --> 00:10:34,175 (紫式部) 愛する桐壺様を失って3年 67 00:10:34,967 --> 00:10:38,846 帝は 暗い世界を― 68 00:10:38,929 --> 00:10:41,474 さまよっていらっしゃいました 69 00:10:56,989 --> 00:10:59,200 (帝)こちらへ さあ 70 00:10:59,867 --> 00:11:01,744 父の所へ 71 00:11:09,043 --> 00:11:11,587 (帝)今日から共に ここで暮らすのだ 72 00:11:20,346 --> 00:11:21,514 光の宮 73 00:11:24,141 --> 00:11:26,310 愛する人の忘れ形見よ 74 00:11:28,312 --> 00:11:30,856 ああ… 私の御子(みこ) 75 00:11:35,486 --> 00:11:37,029 (帝)色づいてきたのう 76 00:11:37,571 --> 00:11:42,243 (紫式部)帝は 先の帝の四の姫宮を― 77 00:11:42,326 --> 00:11:46,956 新しい女御様として お迎えになりました 78 00:11:48,207 --> 00:11:51,335 藤壺(ふじつぼ)の宮様と呼ばれた そのお方は― 79 00:11:52,002 --> 00:11:56,966 亡き桐壺様に 生き写しでいらっしゃったのです 80 00:11:58,676 --> 00:12:02,638 (雅楽) 81 00:12:02,721 --> 00:12:06,725 (紫式部)それから いくつかの季節が巡り― 82 00:12:09,353 --> 00:12:13,315 御身 大きくなられた 第二皇子様は― 83 00:12:13,399 --> 00:12:16,861 宮中の者全ての心を奪う― 84 00:12:16,944 --> 00:12:20,030 希代の貴公子となられたのです 85 00:12:24,994 --> 00:12:28,038 (女房) まあ なんてお美しいのでしょう 86 00:12:28,122 --> 00:12:31,500 (女房) 時が経つのを忘れてしまいます 87 00:13:26,305 --> 00:13:28,682 我が意を得たり 88 00:13:28,766 --> 00:13:30,809 フフフフ… 89 00:13:42,238 --> 00:13:45,574 (紫式部) 御所 清涼(せいりょう)殿において― 90 00:13:45,658 --> 00:13:51,205 光の宮様の元服式が 執り行われました 91 00:14:03,509 --> 00:14:07,680 (紫式部) 弘徽殿様がお産みになられた 第一皇子様は― 92 00:14:07,763 --> 00:14:11,809 右大臣という しっかりとした後ろ盾を持ち― 93 00:14:11,892 --> 00:14:14,812 早くに東宮に立たれました 94 00:14:25,739 --> 00:14:27,408 (紫式部)帝は― 95 00:14:27,491 --> 00:14:33,581 本心では 光の宮をこそ 東宮にとお考えでしたが― 96 00:14:34,164 --> 00:14:36,876 はかばかしい後ろ盾もおらず― 97 00:14:37,501 --> 00:14:42,506 このまま無位の親王という 頼りない立場にあるよりはと― 98 00:14:43,549 --> 00:14:46,051 “源氏(げんじ)”の姓を与えられ― 99 00:14:46,135 --> 00:14:51,932 宮中に仕える臣下の地位に 落とされたのでありました 100 00:14:54,184 --> 00:14:58,772 (弘徽殿)うーん うーん! それでよい 似合いであろう 101 00:14:59,231 --> 00:15:04,278 我が産んだ東宮とは格が違うのじゃ 102 00:15:04,361 --> 00:15:06,989 あの者 皇子とはいえ 103 00:15:07,072 --> 00:15:10,075 身分低き卑しき女の子ではないか 104 00:15:10,159 --> 00:15:12,703 オーッホッホッホッ… 105 00:15:12,786 --> 00:15:15,039 (女房) それにしても あのお姿は… 106 00:15:15,122 --> 00:15:17,750 わたくし 一度 お目にかかってから― 107 00:15:17,833 --> 00:15:20,794 そのお姿が目の中に焼きついて… 108 00:15:20,878 --> 00:15:25,341 朝も夕も 夢の中でも もうそのことしか… 109 00:15:25,424 --> 00:15:28,552 (女房たち)わたくしもです わたくしもです… 110 00:15:29,970 --> 00:15:31,472 (弘徽殿)黙れ! 111 00:15:31,555 --> 00:15:34,224 黙れ! 黙れ! 黙らぬか! 112 00:15:53,202 --> 00:15:56,747 源氏は いつしか 私を恨むようになるのであろうか 113 00:16:00,501 --> 00:16:02,795 真に大切なものは 114 00:16:02,878 --> 00:16:05,673 常に私の手よりこぼれ落ちてゆく 115 00:16:35,035 --> 00:16:38,998 (藤壺)わたくしは いつまでも おそばにおりまする 116 00:16:47,631 --> 00:16:49,258 (帝)優しい人よ… 117 00:18:06,085 --> 00:18:10,672 元服の儀 誠におめでたきことにございます 118 00:18:14,093 --> 00:18:15,385 (源氏)わたくしに 119 00:18:16,136 --> 00:18:18,764 お顔を見せては くださらないのですか 120 00:18:19,848 --> 00:18:24,686 あなた様は もはや 大人におなりになったのですから 121 00:18:40,452 --> 00:18:41,745 わたくしは これより― 122 00:18:43,497 --> 00:18:45,332 臣下の立場にて 123 00:18:47,459 --> 00:18:49,128 この宮中を 124 00:18:53,882 --> 00:18:55,717 藤壺の宮様を 125 00:18:57,302 --> 00:18:59,680 末永くお守り申し上げます 126 00:19:25,122 --> 00:19:29,418 “まがまがしい女たちの 情念渦巻く宮中で” 127 00:19:30,085 --> 00:19:33,255 “限りなき美しさに恵まれて” 128 00:19:33,338 --> 00:19:36,466 “この世に生を受けた源氏の君” 129 00:19:38,385 --> 00:19:39,636 “されど―” 130 00:19:41,388 --> 00:19:46,143 “母の愛を知らずして育った その心の飢えは” 131 00:19:47,853 --> 00:19:52,733 “大いなる悲劇へと つながってゆくのです” 132 00:20:00,657 --> 00:20:03,660 (一条(いちじょう)天皇) 早く続きが聞きたいものよ 133 00:20:03,744 --> 00:20:04,870 のう? 134 00:20:06,997 --> 00:20:08,040 (彰子)ええ 135 00:20:13,795 --> 00:20:18,508 (紫式部)もったいないお言葉を 136 00:21:15,983 --> 00:21:17,567 (翡翠の玉の音) 137 00:21:19,319 --> 00:21:20,529 ハァッ… 138 00:21:23,782 --> 00:21:25,075 お離しを 139 00:21:25,742 --> 00:21:28,370 (男)いや 離さぬ 140 00:21:31,832 --> 00:21:36,753 今宵(こよい)の月は 我に あの夜を思い出させる 141 00:21:38,714 --> 00:21:42,968 生涯忘れ得ぬ あの一夜のように 142 00:21:45,595 --> 00:21:48,181 今宵 そなたの胸で― 143 00:21:49,099 --> 00:21:50,642 甘えてみたいのだ 144 00:21:53,687 --> 00:21:57,232 お酒が過ぎたようでございますね 145 00:21:57,316 --> 00:21:58,775 道長様 146 00:22:03,905 --> 00:22:06,033 お休みなさいませ 147 00:22:07,576 --> 00:22:09,911 明日の朝儀に遅れまする 148 00:22:11,371 --> 00:22:13,123 (道長)道長ではない 149 00:22:14,458 --> 00:22:16,710 我は 光だ 150 00:22:18,879 --> 00:22:20,505 そなたが物語の中で― 151 00:22:21,298 --> 00:22:24,593 我を“光”と名づけたではないか 152 00:22:31,558 --> 00:22:33,560 早くご寝所へ 153 00:22:34,478 --> 00:22:39,316 このような所で長居をしては お風邪を召されます 154 00:22:40,901 --> 00:22:42,235 (道長)式部 でかした 155 00:22:42,319 --> 00:22:43,528 (紫式部)は? 156 00:22:44,362 --> 00:22:48,533 彰子が身ごもったのは そなたのおかげだ 157 00:22:49,201 --> 00:22:50,577 改めて礼を申す 158 00:22:53,830 --> 00:22:55,916 わたくしは ただ 159 00:22:55,999 --> 00:22:58,502 あなた様のご命令に 従ったまでのこと 160 00:22:58,585 --> 00:23:02,714 そなたの筆は 我が命を はるかに超えておる 161 00:23:04,174 --> 00:23:07,594 我とて そなたの虜(とりこ)だ 162 00:23:08,345 --> 00:23:10,764 そなたの書く物語に 163 00:23:10,847 --> 00:23:13,558 すっかり心を奪われておるのだぞ 164 00:23:15,435 --> 00:23:17,437 お休みなさいませ 165 00:23:31,159 --> 00:23:35,622 我の大願と そなたの思いと 166 00:23:37,165 --> 00:23:39,126 どちらが強いのだ 167 00:24:02,440 --> 00:24:07,195 (翡翠の玉の音) 168 00:24:34,139 --> 00:24:36,892 (従者)ええい 下がれ 下がれ下がれ! 169 00:24:37,684 --> 00:24:39,102 道を空けろ! 170 00:24:41,146 --> 00:24:42,981 早く行け さあ! 171 00:24:44,274 --> 00:24:47,360 ハァ… 右大臣のバカめ 172 00:24:47,444 --> 00:24:50,739 決まりきったことを もったいつけて言いおって 173 00:24:51,489 --> 00:24:52,490 (あくび) 174 00:24:52,574 --> 00:24:55,327 おかげで もうこんな時ではないか 175 00:24:56,286 --> 00:25:01,875 とかく頭の悪い者ほど 持って回った言い方をするもの 176 00:25:02,709 --> 00:25:05,879 なあ 行成(こうぜい) そうは思わんか? 177 00:25:06,421 --> 00:25:09,382 (行成) あなたも少し見習うべきかと 178 00:25:10,133 --> 00:25:11,176 (道長)は? 179 00:25:11,259 --> 00:25:16,806 直裁に ものを言うは いらぬ誤解やケンカの種 180 00:25:18,058 --> 00:25:19,601 よいではないか 181 00:25:20,393 --> 00:25:23,647 退屈な場が華やぐというもの 182 00:25:47,921 --> 00:25:51,967 我に 書物などいらぬ 183 00:25:52,759 --> 00:25:56,054 この体を流れる藤原(ふじわら)の血が 184 00:25:56,137 --> 00:25:58,556 実に多くのことを教えてくれる 185 00:25:59,766 --> 00:26:03,353 どのように動けば人の心を操れるか 186 00:26:04,187 --> 00:26:08,233 どのように動けば 邪魔者を成敗できるか 187 00:26:13,947 --> 00:26:18,910 彰子の腹の子は 男皇子であらねばならぬ 188 00:26:20,245 --> 00:26:22,205 そのときこそ 189 00:26:22,289 --> 00:26:26,626 我が一族の戦を 終わらせることができる 190 00:26:29,296 --> 00:26:30,422 (従者)何者だ! 191 00:26:31,006 --> 00:26:32,007 (道長)ん? 192 00:26:32,090 --> 00:26:33,508 (従者)何奴! 193 00:26:50,775 --> 00:26:52,193 (従者)名を名乗れ! 194 00:27:03,663 --> 00:27:04,998 (従者)うわあ! 195 00:27:06,082 --> 00:27:09,461 (従者たち)うわー! ああー! 196 00:27:10,211 --> 00:27:11,921 うわっ うわ! 197 00:27:16,468 --> 00:27:17,469 あっ… 198 00:27:28,938 --> 00:27:29,939 何者? 199 00:27:30,023 --> 00:27:31,191 (道長)待て 200 00:27:33,193 --> 00:27:36,696 お前は この私に 用があるのであろう 201 00:27:41,451 --> 00:27:43,244 やはり お前であったか… 202 00:27:44,329 --> 00:27:46,581 まだ思いを断てんのか 203 00:27:47,415 --> 00:27:49,125 お前は敗れたのだ 204 00:27:49,751 --> 00:27:51,711 この私に敗れたのだ 205 00:27:52,545 --> 00:27:54,339 何故それが分からぬ 206 00:27:55,090 --> 00:27:57,092 何故それを認めぬ! 207 00:28:02,389 --> 00:28:03,431 伊周(これちか)様… 208 00:28:04,140 --> 00:28:06,184 (道長)お前は早すぎたのだ 209 00:28:06,267 --> 00:28:07,435 若すぎたのだ 210 00:28:08,269 --> 00:28:10,855 まだその味も分からぬまま 211 00:28:11,606 --> 00:28:13,733 この世の華を食い尽くしたのだ 212 00:28:15,026 --> 00:28:16,403 その陰で 213 00:28:17,904 --> 00:28:20,281 誰が 何を欲しているかさえ 気づかぬまま 214 00:28:20,365 --> 00:28:21,866 (伊周)黙れ黙れ! 215 00:28:23,451 --> 00:28:26,538 全ては 叔父貴の はかりごとだったのであろう! 216 00:28:27,205 --> 00:28:29,249 お前の華は終わったのだ 217 00:28:30,542 --> 00:28:32,293 もう十分であろう 218 00:28:32,877 --> 00:28:35,463 お前は十分 愉(たの)しんだであろう 219 00:28:35,547 --> 00:28:38,091 うああー! 220 00:28:50,145 --> 00:28:54,816 心おごり 全てを己の力と思い込み 221 00:28:54,899 --> 00:28:57,527 我が兄 道隆(みちたか)の照らす明かりに 222 00:28:57,610 --> 00:29:01,489 一瞬の光を得たのだと知りもせず 223 00:29:04,826 --> 00:29:06,828 黙れ… 224 00:29:06,911 --> 00:29:08,955 黙れ黙れ! 225 00:29:09,456 --> 00:29:10,623 黙らぬか! 226 00:29:17,255 --> 00:29:18,423 うあっ! 227 00:29:27,932 --> 00:29:29,642 (伊周)ああっ! 228 00:29:35,231 --> 00:29:39,861 (男)角(カク) 坑(コウ) 低(テイ) 房(ボウ) 心(シン)― 229 00:29:39,944 --> 00:29:44,240 尾(ビ) 其(キ) 斗(ト) 牛(ギュウ) 女(ジョ)― 230 00:29:44,324 --> 00:29:49,454 虚(キョ) 危(キ) 室(シツ) 壁(ヘキ) 圭(ケイ) 婁(ロウ)― 231 00:29:49,537 --> 00:29:53,875 胃(イ) 昴(ボウ) 膝(シツ) 紫(シ) 参(シン)― 232 00:29:53,958 --> 00:29:59,798 井(セイ) 鬼(キ) 柳(リュウ) 星(セイ) 張(チョウ) 翼(ヨク) 診(シン) 233 00:30:03,593 --> 00:30:04,969 何者だ? お前は 234 00:30:10,141 --> 00:30:13,019 ううあー! 235 00:30:15,438 --> 00:30:17,524 うっ うう… 236 00:30:17,607 --> 00:30:20,401 ううああー! 237 00:30:34,874 --> 00:30:36,459 (道長)遅かったではないか 238 00:30:37,961 --> 00:30:40,255 (晴明(せいめい))このような月の晩は 239 00:30:41,005 --> 00:30:43,132 十分 お気をつけを 240 00:30:45,093 --> 00:30:46,094 乗れ 241 00:30:47,220 --> 00:30:49,097 我が屋で酒を飲もう 242 00:30:51,516 --> 00:30:56,145 そなたの屋敷は 何かと不都合が多いであろう 243 00:31:00,316 --> 00:31:01,568 知らんのか 244 00:31:02,402 --> 00:31:03,778 この男― 245 00:31:03,862 --> 00:31:07,782 屋敷に雷が落ちて焼け出されたのだ 246 00:31:08,741 --> 00:31:11,995 天下の陰陽師(おんみょうじ) 安倍(あべの)晴明も― 247 00:31:12,787 --> 00:31:17,750 自分の凶相は占えぬというわけだ 248 00:31:17,834 --> 00:31:19,836 フッフッフッ… 249 00:31:25,258 --> 00:31:26,259 晴明殿― 250 00:31:26,843 --> 00:31:28,678 とんだご無礼を 251 00:31:33,850 --> 00:31:36,769 では この者たちに酌を頼もう 252 00:31:46,863 --> 00:31:47,864 (式神)フフッ 253 00:31:48,573 --> 00:31:49,782 わっ 254 00:31:56,706 --> 00:31:59,083 (式神)フフフ フフッ (行成)おっ 255 00:32:02,712 --> 00:32:04,631 (式神)フフフッ (式神)フフフフッ 256 00:32:19,145 --> 00:32:20,772 (道長)アーッ 257 00:32:23,316 --> 00:32:25,151 (式神)フゥー (行成)くっ… 258 00:32:25,234 --> 00:32:29,489 (晴明)行成殿 この者たちは お気に召しませぬか? 259 00:32:30,490 --> 00:32:34,160 (道長)この男は 書物があればよいのだ 260 00:32:35,161 --> 00:32:39,040 書物と戯れ 書物と遊び― 261 00:32:39,123 --> 00:32:41,501 書物と情を交わす 262 00:32:43,002 --> 00:32:47,840 おかげで妻は 涙で枕をぬらしているというわけだ 263 00:32:47,924 --> 00:32:49,425 フフフ… 264 00:32:49,509 --> 00:32:51,010 何を言うのです 265 00:32:51,094 --> 00:32:53,304 (道長)褒めているのだぞ 266 00:32:53,846 --> 00:32:58,518 そなたの筆は 並の酒より人を酔わせる 267 00:33:00,478 --> 00:33:02,438 時を忘れ― 268 00:33:02,522 --> 00:33:06,651 場所を忘れ 我を忘れさせる 269 00:33:07,610 --> 00:33:10,822 我が この先 100年精進しても 270 00:33:11,447 --> 00:33:14,158 決して そなたの域には達せぬ 271 00:33:14,784 --> 00:33:17,537 努力だけでは到達できぬ 272 00:33:17,620 --> 00:33:21,874 まさに天から与えられた才である 273 00:33:22,709 --> 00:33:24,293 フッフッフッ… 274 00:33:24,377 --> 00:33:26,963 これは もったいないお言葉を 275 00:33:27,046 --> 00:33:31,050 (晴明の笑い声) 276 00:33:32,301 --> 00:33:33,302 なんだ? 277 00:33:34,470 --> 00:33:38,933 (晴明)道長様も 人をお褒めになるのでございますね 278 00:33:39,017 --> 00:33:43,396 我はいつも ありのままを申しているだけだ 279 00:33:44,814 --> 00:33:49,027 よいものはよい 悪いものは悪い 280 00:33:49,110 --> 00:33:51,654 (晴明)聡(さと)い者は聡い 281 00:33:52,280 --> 00:33:54,449 バカ者はバカ 282 00:33:55,199 --> 00:33:58,828 (道長)フッフッフッ 分かっておるではないか 283 00:34:00,329 --> 00:34:05,209 ああ… 今宵は愉しい酒じゃ 284 00:34:05,752 --> 00:34:10,130 2人ながらに 生まれながらの才人じゃ 285 00:34:10,882 --> 00:34:14,677 我は 到底かなわぬ 286 00:34:23,268 --> 00:34:28,940 (紫式部)元服後 源氏の君は ご結婚なさいました 287 00:34:29,734 --> 00:34:31,944 (左大臣)なんと似合いの2人じゃ 288 00:34:34,280 --> 00:34:37,492 これからは互いを頼りに― 289 00:34:37,574 --> 00:34:40,745 仲むつまじう過ごされるのだぞ 290 00:34:52,507 --> 00:34:55,426 末永く 仲良くいたしましょう 291 00:35:01,182 --> 00:35:03,476 どうされたのですか? 292 00:35:04,268 --> 00:35:08,022 (紫式部) お相手は 左大臣の一の姫 293 00:35:08,106 --> 00:35:12,693 後ろ盾を持たない源氏の君の 行く末を案じた帝が― 294 00:35:12,777 --> 00:35:15,196 このご結婚により― 295 00:35:15,279 --> 00:35:19,283 左大臣をご後見にと 思われてのことでした 296 00:35:20,868 --> 00:35:22,829 (源氏)なんと静かな… 297 00:35:25,665 --> 00:35:27,375 まるで この世に― 298 00:35:28,251 --> 00:35:32,672 あなたとわたくし 2人だけでいるかのようです 299 00:35:34,173 --> 00:35:38,886 (葵(あおい)の上)それは 何かと不都合になりましょう 300 00:35:41,472 --> 00:35:42,765 何故ですか? 301 00:35:44,016 --> 00:35:47,812 顔洗いの水を 誰が用意するのです? 302 00:35:48,604 --> 00:35:52,984 私たちの朝げは 着物のお支度は 303 00:35:55,945 --> 00:35:57,405 それは… 304 00:36:02,660 --> 00:36:05,705 それは なんとかなりましょう 305 00:36:05,788 --> 00:36:09,125 いいえ なんともなりませぬ 306 00:36:13,671 --> 00:36:14,839 (源氏のくしゃみ) 307 00:36:19,427 --> 00:36:22,930 すぐに火おけの支度をさせます 308 00:36:30,897 --> 00:36:32,481 (源氏)こうしていれば… 309 00:36:33,566 --> 00:36:34,734 温かい 310 00:36:41,532 --> 00:36:44,493 もう夜は明けました 311 00:37:18,110 --> 00:37:19,111 (惟光(これみつ))今宵は どちらへ? 312 00:37:39,340 --> 00:37:40,591 (女房)お方様 313 00:37:41,467 --> 00:37:44,720 今宵 源氏の君が お越しになられると 314 00:37:49,183 --> 00:37:50,184 (御息所(みやすどころ))そうですか 315 00:38:33,394 --> 00:38:34,937 あさましい… 316 00:39:18,230 --> 00:39:22,026 今宵も よろしくお導きください 317 00:40:18,124 --> 00:40:19,500 (御息所)こちらが― 318 00:40:20,084 --> 00:40:23,587 亡き東宮様から頂いた 漢書にございます 319 00:40:23,671 --> 00:40:26,424 あなた様の よきお手本となるかと 320 00:40:30,428 --> 00:40:32,430 これは失礼いたしました 321 00:40:34,306 --> 00:40:35,516 (源氏)どうなさいましたか? 322 00:40:35,599 --> 00:40:39,437 (御息所)そちらは わたくしが 書き写したものでございました 323 00:40:39,979 --> 00:40:44,442 こちらが 元の書にございます 324 00:40:59,915 --> 00:41:01,459 あなたのお手蹟の方が― 325 00:41:03,085 --> 00:41:04,587 よほど美しい 326 00:41:13,220 --> 00:41:17,600 つややかで 気品に満ちていらっしゃる 327 00:41:26,984 --> 00:41:27,818 これは? 328 00:41:33,282 --> 00:41:34,283 それは… 329 00:41:38,913 --> 00:41:40,456 それは 330 00:41:44,084 --> 00:41:46,128 書き連ねているうちに 331 00:41:46,712 --> 00:41:50,674 亡きお方のことが 思い出されたのでございます 332 00:41:53,093 --> 00:41:55,513 涙… ですか? 333 00:42:05,648 --> 00:42:09,777 幸せなお方ですね 東宮様は 334 00:42:12,780 --> 00:42:15,199 あなたのような すばらしいお方に 335 00:42:16,742 --> 00:42:21,205 死してなお ここまで深く 恋い慕われておられるとは 336 00:42:34,677 --> 00:42:36,887 たとえ長く生きようとも― 337 00:42:38,222 --> 00:42:41,100 ただ1つの思いすら 遂げられぬのならば 338 00:42:43,936 --> 00:42:46,522 なんと 甲斐(かい)なき人生で ありましょうか 339 00:42:51,235 --> 00:42:52,820 ただひたすらに 340 00:42:53,737 --> 00:42:55,948 苦しい心を抱えたまま 341 00:43:00,286 --> 00:43:02,371 耐えて生きねばならぬとは… 342 00:43:09,461 --> 00:43:10,963 源氏の君? 343 00:43:21,265 --> 00:43:23,434 わたくしの この苦しい思い 344 00:43:23,517 --> 00:43:26,061 ほんの ひとさじでも 受け取ってはくださいませんか 345 00:43:27,021 --> 00:43:29,690 あっ な… 何を! 346 00:43:30,441 --> 00:43:32,192 あ… あっ 347 00:44:17,905 --> 00:44:21,450 (赤ん坊の泣き声) 348 00:44:31,627 --> 00:44:34,046 (道長)おお… おお… 349 00:44:36,090 --> 00:44:39,593 おお… おお… 350 00:44:40,719 --> 00:44:41,720 ようやった 351 00:44:42,763 --> 00:44:43,889 ようやってくれた 352 00:44:46,809 --> 00:44:49,311 (紫式部)男皇子様のご誕生 353 00:44:51,563 --> 00:44:53,357 おめでとうございます 354 00:44:53,440 --> 00:44:55,818 (女房たち) おめでとうございます! 355 00:45:00,197 --> 00:45:01,782 (道長)我が血よ! 356 00:45:16,088 --> 00:45:17,631 彰子 357 00:45:19,466 --> 00:45:20,676 でかした 358 00:45:23,762 --> 00:45:25,097 式部 359 00:45:26,390 --> 00:45:28,851 全ては そなたの力であるぞ 360 00:45:32,438 --> 00:45:35,899 (晴明)おお 吉相が出ておられる 361 00:45:39,111 --> 00:45:40,529 (道長)晴明… 362 00:45:42,364 --> 00:45:44,783 今頃 何しに参ったのじゃ? 363 00:45:47,327 --> 00:45:50,539 安産の祈祷(きとう)に 参ったのではございません 364 00:45:52,332 --> 00:45:55,127 あなた様が じじ様になられたお顔を― 365 00:45:55,210 --> 00:45:57,379 見に参ったのでございます 366 00:45:58,005 --> 00:46:01,133 (道長)この役立たずめが フッフッフッ… 367 00:46:12,519 --> 00:46:13,770 (晴明)あの者は? 368 00:46:17,357 --> 00:46:18,484 おお 369 00:46:19,401 --> 00:46:21,695 物語の使い手よ 370 00:46:25,407 --> 00:46:27,826 凶相が出ておりますぞ 371 00:46:37,002 --> 00:46:38,795 (紫式部)源氏の君が― 372 00:46:38,879 --> 00:46:44,676 貴婦人との評判の高い御息所の お相手となられたことは― 373 00:46:44,760 --> 00:46:47,596 もっぱらの お噂(うわさ)となりました 374 00:46:55,145 --> 00:46:57,105 お起きになって 375 00:47:11,161 --> 00:47:13,163 こんな闇の中に 376 00:47:14,248 --> 00:47:16,542 わたくしを放り出すのですか 377 00:47:17,876 --> 00:47:20,379 もうまもなく夜が明けます 378 00:47:24,967 --> 00:47:26,593 わたくしなど 379 00:47:28,303 --> 00:47:31,848 闇夜の中で 鬼にでも食われてしまえと 380 00:47:31,932 --> 00:47:33,016 ハッ… 381 00:47:33,934 --> 00:47:37,771 日が高くなってからお帰しすれば わたくしが笑われます 382 00:47:42,734 --> 00:47:48,156 盛りを過ぎた女が 若い公達(きんだち)に心を奪われ― 383 00:47:48,991 --> 00:47:51,159 慎みを失っていると 384 00:47:56,873 --> 00:47:58,166 あなたは― 385 00:47:59,459 --> 00:48:01,753 何を守ろうとなさっているのですか 386 00:48:12,472 --> 00:48:16,685 ただ 愉しまれよと? 387 00:48:18,562 --> 00:48:22,524 ただ このひとときを愛(いと)おしめと? 388 00:48:25,652 --> 00:48:30,032 わたくしは 1人で 生きてゆかねばならぬのです 389 00:48:31,241 --> 00:48:33,869 あなたが わたくしの元を去ろうとも 390 00:48:36,163 --> 00:48:39,333 何故 そのようなことを 391 00:48:42,669 --> 00:48:44,838 先に老いてゆく者は 392 00:48:45,797 --> 00:48:47,633 多く愛してはならぬのです 393 00:48:55,974 --> 00:48:57,934 寂しゅうことをおっしゃいますね 394 00:49:05,525 --> 00:49:07,110 (戸が開く音) 395 00:49:24,795 --> 00:49:26,088 (御息所)行かせない 396 00:49:27,798 --> 00:49:29,758 誰にも渡さない! 397 00:49:46,525 --> 00:49:50,529 (太鼓の演奏) 398 00:50:25,647 --> 00:50:26,481 (源氏)惟光 399 00:50:29,776 --> 00:50:32,988 あの花は なんという花だ 400 00:50:36,575 --> 00:50:37,784 (惟光)夕顔ですよ 401 00:50:38,577 --> 00:50:39,828 (源氏)夕顔… 402 00:50:40,746 --> 00:50:42,414 人知れず夜に咲き 403 00:50:42,998 --> 00:50:44,875 人知れず しおれていく 404 00:50:46,126 --> 00:50:47,586 哀れな花です 405 00:50:49,629 --> 00:50:51,006 (源氏)そうか 406 00:50:52,799 --> 00:50:54,426 1房 持ってまいれ 407 00:51:07,773 --> 00:51:11,067 (惟光)これはこれは 断りもなく失礼を 408 00:51:11,777 --> 00:51:15,322 (女童(めのわらわ))この上に載せて 差し上げてくださいまし 409 00:51:16,448 --> 00:51:18,867 なよなよと頼りない花ですので 410 00:51:19,618 --> 00:51:22,370 きっと お支えがいるかと思います 411 00:51:58,532 --> 00:52:02,786 (源氏)ほお これは美しい 412 00:52:11,169 --> 00:52:14,840 “心あてに それかとぞ見る白露の―” 413 00:52:16,091 --> 00:52:20,262 “ひかりそへたる 夕顔の花” 414 00:52:26,893 --> 00:52:28,645 (夕顔)あなたはもしや― 415 00:52:29,312 --> 00:52:34,401 あのお噂に高い 光の君ではないのですか? 416 00:53:08,935 --> 00:53:10,103 これは… 417 00:53:12,939 --> 00:53:17,068 あなたの肌を 傷つけはしませんでしたか? 418 00:53:17,736 --> 00:53:21,072 爪が こんなにも伸びておりました 419 00:53:21,156 --> 00:53:22,365 (夕顔)いいえ 420 00:53:24,075 --> 00:53:28,163 あなたは 冷たくはなかったですか? 421 00:53:30,874 --> 00:53:33,793 夏ですのに あんまり冷えてしまったので 422 00:53:33,877 --> 00:53:36,421 こっそり温めていたのですよ 423 00:53:37,005 --> 00:53:39,007 あなたの温(ぬく)もりで 424 00:53:48,224 --> 00:53:49,893 もっとこちらへ 425 00:53:52,187 --> 00:53:56,399 もっと 温めて差し上げましょう 426 00:54:12,040 --> 00:54:16,169 あなたは 怖くはないのですか… 427 00:54:18,797 --> 00:54:20,882 わたくしが どこの誰かも知らず 428 00:54:20,966 --> 00:54:22,300 (夕顔)あなたは… 429 00:54:23,802 --> 00:54:25,887 お優しい方です 430 00:54:29,265 --> 00:54:33,520 私はそれだけで 十分でございます 431 00:54:41,444 --> 00:54:43,279 (源氏)わたくしも十分だ 432 00:54:45,240 --> 00:54:49,285 あなたさえ そばにいてくだされば 433 00:55:32,495 --> 00:55:35,040 “早くに母を失い” 434 00:55:35,832 --> 00:55:40,420 “愛に飢えた子供時代を 送られた源氏の君は” 435 00:55:40,503 --> 00:55:45,550 “今でも 愛を求めてさまよう1人の童(わらわ)” 436 00:55:46,968 --> 00:55:49,262 “その童の心を―” 437 00:55:50,055 --> 00:55:56,394 “夕顔の君は 優しく包んで差し上げたのです” 438 00:56:00,565 --> 00:56:02,025 (道長)フッフッフッ… 439 00:56:02,776 --> 00:56:04,944 そうかそうか 440 00:56:05,570 --> 00:56:09,199 我は童か フッフッフッ… 441 00:56:11,493 --> 00:56:13,995 何をおっしゃっているのです? 父上 442 00:56:14,704 --> 00:56:17,457 (道長)で どうなるのだ? 443 00:56:18,166 --> 00:56:22,921 その 夕顔と源氏の行く末は 444 00:56:33,973 --> 00:56:38,103 夕顔の君の お命を 445 00:56:38,186 --> 00:56:40,271 奪うこととなります 446 00:56:45,276 --> 00:56:46,694 ほう 447 00:57:11,719 --> 00:57:13,388 (源氏)あなたは お美しい 448 00:57:14,347 --> 00:57:16,307 わたくしを憧れさせて やまないお方… 449 00:57:20,061 --> 00:57:21,980 誰よりも気高く― 450 00:57:22,063 --> 00:57:23,940 趣味の高いすばらしいお方… 451 00:57:24,023 --> 00:57:25,859 (御息所)ハァッ… 452 00:58:26,377 --> 00:58:27,420 (夕顔)ううっ… 453 00:58:28,505 --> 00:58:29,797 あうっ… 454 00:58:29,881 --> 00:58:31,007 どうした? 455 00:58:31,841 --> 00:58:32,842 どうした… 456 00:58:33,593 --> 00:58:35,094 しっかりしろ 457 00:58:35,178 --> 00:58:36,971 どうしたのだ? 458 00:58:37,055 --> 00:58:40,517 (夕顔の苦しむ声) 459 00:58:40,600 --> 00:58:44,395 わたくしが こんなに愛しておりますのに― 460 00:58:46,439 --> 00:58:51,736 そのような つまらぬ女に 情けをおかけになるとは 461 00:58:54,239 --> 00:58:56,199 情けない… 462 00:58:58,451 --> 00:59:00,453 あなたの愛を 463 00:59:01,788 --> 00:59:05,500 ただ ひたすら信じたわたくしが 464 00:59:06,501 --> 00:59:07,669 情けない 465 00:59:09,295 --> 00:59:11,172 情けない… 466 00:59:12,006 --> 00:59:14,634 (夕顔の苦しむ声) 467 00:59:20,515 --> 00:59:22,684 (夕顔)ああっ ああ… 468 00:59:27,313 --> 00:59:31,526 (夕顔のうめき声) 469 00:59:37,031 --> 00:59:38,241 やめろ! (抜刀の音) 470 00:59:46,207 --> 00:59:47,041 あなたは… 471 01:00:09,397 --> 01:00:10,481 (源氏)夕顔… 472 01:00:11,649 --> 01:00:12,775 夕顔 473 01:00:15,737 --> 01:00:16,863 夕顔 474 01:00:18,448 --> 01:00:20,241 目を覚ませ 夕顔! 475 01:00:21,326 --> 01:00:22,660 夕顔! 476 01:00:28,833 --> 01:00:31,419 それで 源氏の君は 477 01:00:32,086 --> 01:00:34,631 夕顔の君を殺(あや)めた もののけの正体が 478 01:00:34,714 --> 01:00:37,675 御息所の生き霊だと 気づいていたのでしょうか 479 01:00:38,635 --> 01:00:40,261 かすかには 480 01:00:40,928 --> 01:00:43,222 けれど はっきりとは― 481 01:00:43,306 --> 01:00:46,476 お分かりになって いらっしゃいませんでした 482 01:00:46,976 --> 01:00:52,482 とかく女君は 修羅の心を隠すのがお上手 483 01:00:53,733 --> 01:00:55,818 それを男君は 484 01:00:55,902 --> 01:00:59,906 なかなか お分かりにならぬものなのです 485 01:01:06,162 --> 01:01:07,538 ハァ… 486 01:01:13,252 --> 01:01:15,672 (頭の中将)あっ しみる 487 01:01:15,755 --> 01:01:17,298 ああ… しみる 488 01:01:19,217 --> 01:01:22,553 今度の女は ずいぶんと のぼせ性なのだ 489 01:01:24,597 --> 01:01:25,807 いや 待てよ 490 01:01:27,308 --> 01:01:30,603 いくら私とのむつみごとが いい証とはいえ― 491 01:01:31,270 --> 01:01:33,022 こうまで傷が? 492 01:01:35,983 --> 01:01:37,819 まさか 謀略! 493 01:01:39,821 --> 01:01:40,738 謀略? 494 01:01:40,822 --> 01:01:42,448 そうだ… 495 01:01:43,533 --> 01:01:48,246 これは 他の女の元へ 行かせぬための浅知恵 496 01:01:49,539 --> 01:01:55,336 あの女 愛らしい顔をして このような魂胆があったとは… 497 01:01:56,963 --> 01:02:00,425 アハッ… このような話 498 01:02:00,508 --> 01:02:03,428 我が妹の婿にする話ではないな 499 01:02:04,387 --> 01:02:05,388 ハハッ… 500 01:02:16,107 --> 01:02:17,650 葵の元を― 501 01:02:18,568 --> 01:02:21,070 もう少し訪れてやってはくれないか 502 01:02:23,364 --> 01:02:25,241 冷たい女ではないのだ 503 01:02:26,409 --> 01:02:30,705 あれはただ 東宮妃になるべく育てられ 504 01:02:31,330 --> 01:02:34,208 取るに足らない誇りを 捨てられずにいる 505 01:02:35,251 --> 01:02:40,339 さみしいと 泣きつくことのできない不器用な女 506 01:02:44,302 --> 01:02:45,845 時間がかかろうと 507 01:02:46,512 --> 01:02:49,640 行く末は きっと 打ち解けた夫婦になろうと 508 01:02:51,684 --> 01:02:54,228 あっ いや 俺も― 509 01:02:54,312 --> 01:02:57,815 正妻の右大臣の姫とは しっくりしておらん 510 01:03:00,651 --> 01:03:05,281 でも 御所に行くたび 俺は感心してしまう 511 01:03:06,991 --> 01:03:09,744 帝と藤壺の宮様のむつまじさ 512 01:03:11,287 --> 01:03:16,042 きっと 前世からの 浅からぬご縁がおありなのであろう 513 01:03:16,751 --> 01:03:20,421 今は藤壺の宮様のお里下がりで― 514 01:03:20,963 --> 01:03:25,218 帝も さぞ おさみしいことであろうな 515 01:03:54,205 --> 01:03:55,623 これは なんという… 516 01:03:55,706 --> 01:03:57,667 誰か 王命婦(おうのみょうぶ)は… 517 01:03:57,750 --> 01:03:59,168 誰も参りません 518 01:03:59,752 --> 01:04:02,129 わたくしが あの者たちを 蹴散らしたのです 519 01:04:03,965 --> 01:04:05,466 諦めてください 520 01:04:05,550 --> 01:04:07,927 わたくしは 何をしても 許される身なのです 521 01:04:08,553 --> 01:04:11,514 わたくしが今 自ら そう決めたのです 522 01:04:13,307 --> 01:04:15,309 なんと大それたことを… 523 01:04:15,393 --> 01:04:16,894 わたくしは あなたの母なのですよ 524 01:04:16,978 --> 01:04:19,063 いいえ 母ではない 母などではありはしない! 525 01:04:20,523 --> 01:04:23,276 幼いころから憧れ お慕いし 526 01:04:24,318 --> 01:04:25,987 気安くお会いできぬように なってからは 527 01:04:26,070 --> 01:04:28,239 たとえ夢の中でも お会いしたいと願った 528 01:04:28,322 --> 01:04:30,199 たった1人のお方なのです! 529 01:04:35,913 --> 01:04:39,792 この罪は わたくし1人が背負うもの 530 01:04:42,670 --> 01:04:46,257 あなたは何も お悪くはないのです 531 01:04:48,926 --> 01:04:50,261 おやめなさい! 532 01:04:53,598 --> 01:04:55,850 どうして お分かりにならぬのですか… 533 01:04:56,934 --> 01:04:58,603 ただ いっときのために 534 01:04:59,854 --> 01:05:03,399 あなたは生涯 裏切りの苦しみと 共に生きていかねばならぬのですよ 535 01:05:03,482 --> 01:05:05,985 苦しいのは 過去も今も同じこと 536 01:05:08,029 --> 01:05:12,033 あなたを思うかぎり この苦しみは続くのです 537 01:05:15,202 --> 01:05:17,455 あなたは 大きな思い違いをしておられる 538 01:05:21,459 --> 01:05:23,419 あなたが わたくしを求めるのは 539 01:05:24,503 --> 01:05:26,839 父帝の后だからこそ 540 01:05:28,466 --> 01:05:30,927 やすやすと手に入る女であったなら 541 01:05:32,637 --> 01:05:34,472 決して そのように思いますまい 542 01:05:43,648 --> 01:05:44,982 そのように 543 01:05:46,776 --> 01:05:48,069 思われていたのですか… 544 01:06:34,365 --> 01:06:35,574 (左大臣)婿殿 545 01:06:36,575 --> 01:06:38,869 婿殿 お待ちを 546 01:06:41,247 --> 01:06:42,665 葵に… 547 01:06:43,541 --> 01:06:45,626 ホホホホ… 548 01:07:24,123 --> 01:07:25,916 これで わたくしたちも 549 01:07:26,751 --> 01:07:30,129 打ち解けた並の夫婦となりましょう 550 01:07:34,133 --> 01:07:35,634 お苦しいのですか? 551 01:07:47,146 --> 01:07:51,484 わたくしは たまらなくうれしいのです 552 01:07:53,778 --> 01:07:57,698 わたくしは 母親の記憶がありません 553 01:07:58,407 --> 01:07:59,533 けれど 554 01:08:01,202 --> 01:08:03,120 これから生まれてくる わたくしの子は― 555 01:08:04,747 --> 01:08:09,376 母親である あなたの愛を 存分に受けることができましょう 556 01:08:15,007 --> 01:08:17,426 わたくしは それを見て ようやく 557 01:08:18,469 --> 01:08:23,390 寂しかった幼き日々より 解き放たれるのです 558 01:08:31,816 --> 01:08:32,817 葵? 559 01:08:51,502 --> 01:08:52,711 これからは 560 01:08:53,796 --> 01:08:57,966 つらいことも 哀しいことも 恨みごとも 561 01:08:58,676 --> 01:09:00,469 なんでもおっしゃってください 562 01:09:03,264 --> 01:09:04,765 わたくしたちは 563 01:09:06,600 --> 01:09:10,020 世にも許された夫婦なのですから 564 01:09:14,024 --> 01:09:17,944 ええ あなた 565 01:09:27,037 --> 01:09:30,291 少しお痩せになりましたね 566 01:09:35,045 --> 01:09:36,046 けれど― 567 01:09:37,339 --> 01:09:39,758 その面やつれしたお顔が なお 568 01:09:41,260 --> 01:09:43,136 一層 美しい 569 01:09:47,683 --> 01:09:49,143 あなたは 570 01:09:50,477 --> 01:09:53,439 他でも そのようなことを おっしゃるのですか? 571 01:09:55,941 --> 01:09:57,860 もう 恨みごとですか 572 01:09:59,737 --> 01:10:02,114 ええ そうです 573 01:10:07,953 --> 01:10:09,538 安心してください 574 01:10:10,748 --> 01:10:14,752 わたくしは ずっとそばにおります 575 01:10:18,631 --> 01:10:19,715 ええ 576 01:10:22,176 --> 01:10:23,302 ええ… 577 01:10:51,247 --> 01:10:56,293 恐ろしい女であるなあ 六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)とは 578 01:10:58,003 --> 01:11:01,548 1人の女を殺めておいて まだ気が済まんのか? 579 01:11:03,259 --> 01:11:06,220 一体どこまで 源氏を追いつめるのだ 580 01:11:08,138 --> 01:11:09,431 さあ… 581 01:11:10,891 --> 01:11:13,352 それは わたくしにも分かりませぬ 582 01:11:14,561 --> 01:11:15,688 分からぬ? 583 01:11:16,647 --> 01:11:19,149 全ては そなたが 決めることであろう 584 01:11:21,110 --> 01:11:26,282 筆を取り 紙に向かうまでは 何も決まっておりませぬ 585 01:11:28,200 --> 01:11:29,910 書きながら初めて 586 01:11:30,619 --> 01:11:36,417 ああ この者はこう動くのだと 分かるのです 587 01:11:38,794 --> 01:11:41,255 (道長)そういうものか 588 01:11:41,338 --> 01:11:43,632 そういうものです 589 01:11:45,592 --> 01:11:47,428 フッフッフッフッ… 590 01:11:47,511 --> 01:11:51,849 ほんに 恐ろしい女であるなあ 591 01:11:52,558 --> 01:11:53,559 そなたは 592 01:11:55,978 --> 01:11:57,479 帝も彰子も 593 01:11:58,397 --> 01:12:02,401 宮中の者全ての心を つかんでしまったではないか 594 01:12:03,152 --> 01:12:05,029 その筆1つで 595 01:12:07,823 --> 01:12:12,661 彰子は皇子を産み 我の大願は果たされた 596 01:12:12,745 --> 01:12:15,831 ならば式部 それでもまだ 597 01:12:16,540 --> 01:12:20,586 そなたが物語をつづるのは なんのためだ 598 01:12:21,420 --> 01:12:26,467 無用な物語を 何故 書き続けるのだ 599 01:12:30,012 --> 01:12:35,934 まさか それをお分かりにならぬ あなた様ではありますまい 600 01:12:44,318 --> 01:12:46,570 遂げられぬ思いが 601 01:12:47,696 --> 01:12:52,785 わたくしに 筆を持たせるのでありましょう 602 01:13:12,679 --> 01:13:17,684 (雅楽) 603 01:14:06,024 --> 01:14:07,401 (公達)東宮様じゃ! 604 01:14:08,735 --> 01:14:10,446 (公達たち)東宮様じゃ! 605 01:14:10,529 --> 01:14:14,491 東宮様じゃ! 東宮様じゃ! 606 01:14:25,878 --> 01:14:29,840 (道長)これはこれは 東宮様! フフフ… 607 01:14:31,383 --> 01:14:36,472 そのお目に映るものは全て あなた様のものですぞ 608 01:14:37,264 --> 01:14:41,560 我は一生 東宮様にお仕えする臣下である 609 01:14:41,643 --> 01:14:43,270 フフフ… 610 01:14:54,698 --> 01:14:56,241 行成殿 611 01:14:57,201 --> 01:15:00,954 結局 我は そなたがおらねば何もできぬ 612 01:15:01,622 --> 01:15:04,583 よう帝を説き伏せてくれた 613 01:15:05,459 --> 01:15:09,588 以前 そなたには 100年経ってもかなわぬと申したが 614 01:15:09,671 --> 01:15:13,467 いやいや 千年経っても かなわぬわ 615 01:15:13,550 --> 01:15:15,260 フフフフ… 616 01:15:18,680 --> 01:15:20,891 (行成)道長様というお人は― 617 01:15:21,558 --> 01:15:23,101 ひとたび心に描いたことは― 618 01:15:24,436 --> 01:15:25,938 必ずやり遂げるお方です 619 01:15:28,607 --> 01:15:30,901 彰子様のお産みになった敦成(あつひら)親王が 620 01:15:31,568 --> 01:15:33,737 東宮にお立ちになることは 621 01:15:34,279 --> 01:15:40,118 道長様のお心の中で 既に決まったことなのです 622 01:15:41,578 --> 01:15:45,499 仮に それが 覆るようなことがあっても 623 01:15:46,375 --> 01:15:48,168 必ずや元のとおりにしてしまう 624 01:15:49,253 --> 01:15:51,213 どんな手を使ってでも 625 01:15:53,090 --> 01:15:58,262 私は そのことが恐ろしいのです 626 01:16:04,268 --> 01:16:07,145 (従者)主上(おかみ)の― 627 01:16:07,229 --> 01:16:11,900 おなーりー! 628 01:16:32,921 --> 01:16:36,425 (道長)我があばら家に ようお越しくださいました 629 01:16:40,387 --> 01:16:45,225 どうぞ ごゆるりと お過ごしくださいませ 630 01:16:47,144 --> 01:16:51,356 加減が悪く 遅うなりました 631 01:17:13,879 --> 01:17:15,339 (道長)ほれほれ 632 01:17:15,422 --> 01:17:18,258 料理も酒も どんどん持ってまいれ 633 01:17:18,342 --> 01:17:19,801 (従者)はあ 634 01:17:19,885 --> 01:17:23,597 (道長)東宮様が袴着(はかまぎ)をなされた 一世一代の祝いの場に 635 01:17:24,139 --> 01:17:27,100 出し惜しみは無用であるぞ 636 01:17:27,184 --> 01:17:29,561 (従者)ははっ それ 637 01:17:30,187 --> 01:17:32,814 (道長)ほれ 楽はどうした 638 01:17:32,898 --> 01:17:34,733 舞をお見せしろ 639 01:17:34,816 --> 01:17:37,819 (従者)ははっ それ! 640 01:17:43,033 --> 01:17:46,078 (雅楽) 641 01:18:29,538 --> 01:18:35,210 (笛の演奏) 642 01:19:10,787 --> 01:19:11,955 (晴明)毒… 643 01:19:14,291 --> 01:19:19,838 凝り固まった思いが毒となり あの者の体内を回っておる 644 01:19:35,061 --> 01:19:39,941 (女房)え? 源氏の君に和子(わこ)様が? 645 01:19:40,025 --> 01:19:44,196 (女房)葵の上様がご懐妊で まもなくお生まれになると 646 01:19:44,780 --> 01:19:48,617 左大臣家では 大層な おにぎわいのご様子 647 01:19:48,700 --> 01:19:52,370 (女房)それは… 源氏の君も さぞお喜びでしょう 648 01:19:54,331 --> 01:19:57,375 なんせ 初めてのお子で いらっしゃるのですもの 649 01:19:59,211 --> 01:20:03,590 (女房)葵の上様がご心配で 始終 付きっきりだとか 650 01:20:03,673 --> 01:20:06,134 (女房) お優しい方でいらっしゃいますね 651 01:20:06,218 --> 01:20:07,636 源氏の君は 652 01:20:09,554 --> 01:20:12,516 きっと よき父上に なられることでしょう 653 01:20:13,266 --> 01:20:15,060 男(お)の子でしょうか? 654 01:20:15,143 --> 01:20:18,146 それとも かわいらしい女(め)の子 655 01:20:20,398 --> 01:20:24,778 (女房)源氏の君のお越しも 今宵が最後になるのではと… 656 01:20:30,867 --> 01:20:35,372 (源氏)忙しさに追われ 寂しい思いをおさせしました 657 01:20:37,040 --> 01:20:38,500 どうぞお許しを 658 01:20:40,335 --> 01:20:43,797 左大臣家にとって この度は初めての孫 659 01:20:44,798 --> 01:20:47,425 今から安産の祈祷などを行い― 660 01:20:47,509 --> 01:20:51,179 あちらには わたくしの くつろぐ場所がないのです 661 01:20:53,306 --> 01:20:55,475 こちらの風流なたたずまい 662 01:20:56,810 --> 01:20:58,979 常に懐かしく思っておりました 663 01:21:02,858 --> 01:21:04,442 お懐かしいのなら― 664 01:21:05,777 --> 01:21:08,947 いつお越しになっても かまわないのですよ 665 01:21:11,366 --> 01:21:15,704 わたくしの温かい閨(ねや)へ 666 01:21:21,501 --> 01:21:23,545 おかわいそうに… 667 01:21:24,963 --> 01:21:30,760 冷たいだけの奥様に 縛られていらっしゃるのですね 668 01:21:33,763 --> 01:21:35,056 けれど 669 01:21:36,308 --> 01:21:38,393 愛されてないお方が 670 01:21:38,977 --> 01:21:41,688 どうして 胎(はら)まれたのでございましょう 671 01:21:45,734 --> 01:21:47,402 あたくしの身ではなく… 672 01:21:51,364 --> 01:21:56,202 (祈祷) 673 01:22:07,881 --> 01:22:10,133 (左大臣)祓(はら)えー! 674 01:22:11,593 --> 01:22:15,096 何をしておる 祓え! 祓えー! 675 01:22:15,180 --> 01:22:16,014 (女房)お方様… 676 01:22:16,097 --> 01:22:18,099 (葵の上の苦しむ声) 677 01:22:21,853 --> 01:22:23,271 (女房)お待ちくださいませ 678 01:22:23,355 --> 01:22:26,775 (女房たち)お方様 お方様… 679 01:22:30,654 --> 01:22:33,490 (叫び声) 680 01:22:39,913 --> 01:22:40,914 義父(ちち)上! 681 01:22:41,998 --> 01:22:44,084 (左大臣)おお… (源氏)義父上 682 01:22:44,167 --> 01:22:46,378 いかようにしても もののけが取りついて― 683 01:22:46,461 --> 01:22:48,213 離れぬのだ 684 01:22:52,050 --> 01:22:53,218 (源氏)葵 685 01:22:55,053 --> 01:22:56,262 もう大丈夫だ 686 01:22:57,097 --> 01:23:00,892 心配ない わたくしが ずっと側にいる 687 01:23:00,976 --> 01:23:02,310 あなた 688 01:23:03,603 --> 01:23:07,565 まもなく わたくしたちは 本当の夫婦になれるのだ 689 01:23:08,149 --> 01:23:10,110 長い遠回りだったが 690 01:23:10,193 --> 01:23:11,695 わたくしとあなたと 691 01:23:11,778 --> 01:23:14,030 生まれてくる子と3人で 幸せになるのだ 692 01:23:14,781 --> 01:23:18,910 穏やかな 満ち足りた日々を 共に過ごすのだ 693 01:23:25,125 --> 01:23:26,126 何が言いたい? 694 01:23:28,169 --> 01:23:30,922 ゆる… めて 695 01:23:31,715 --> 01:23:33,049 苦しいのか? 696 01:23:35,969 --> 01:23:38,471 ゆる… めて 697 01:23:40,557 --> 01:23:42,434 ご祈祷を― 698 01:23:44,394 --> 01:23:46,646 ゆるめてほしいのです 699 01:23:50,483 --> 01:23:53,111 その… お声は 700 01:23:53,653 --> 01:23:56,948 (御息所)何故 わたくしを 放っておかれてるのですか? 701 01:23:58,616 --> 01:24:00,160 わたくしは 702 01:24:00,952 --> 01:24:05,331 あなたが情けをかけた あまたの女の1人に過ぎぬのですか 703 01:24:07,709 --> 01:24:10,587 (源氏) 決して そのようなことは… 704 01:24:14,382 --> 01:24:18,261 王(おう)羲之(ぎし)の書と比べますと 幾分… 705 01:24:18,762 --> 01:24:20,597 (晴明)騒いでおる 706 01:24:21,389 --> 01:24:22,515 (道長)飲め 707 01:24:22,599 --> 01:24:25,643 (晴明)あの者の中で 鬼が騒ぎだしておる 708 01:24:26,227 --> 01:24:28,146 (紫式部)わたくしの中の― 709 01:24:29,189 --> 01:24:32,150 修羅の心… 710 01:24:35,862 --> 01:24:39,199 その心を目覚めさせたのは 711 01:24:41,659 --> 01:24:42,744 あなた 712 01:24:51,252 --> 01:24:53,963 何故 わたくしの扉を 開けたのですか? 713 01:24:55,715 --> 01:24:58,885 わたくしは 心 平らかに 714 01:24:59,969 --> 01:25:05,600 自らの誇りと共に 生きてゆきたいと願っていたのに… 715 01:25:09,854 --> 01:25:11,898 あさましい… 716 01:25:15,110 --> 01:25:21,491 このような姿に成り果てた 我が身が あさましい 717 01:25:22,534 --> 01:25:24,119 あ… あっ 718 01:25:28,706 --> 01:25:31,376 (葵の上)ハァ ハァ… 719 01:25:36,005 --> 01:25:37,048 葵… 720 01:25:39,300 --> 01:25:40,301 葵 721 01:25:40,385 --> 01:25:44,264 (女房たち)お方様 お方様… (大宮)姫… 姫! 722 01:25:48,059 --> 01:25:49,394 (大宮)姫 723 01:26:06,286 --> 01:26:10,165 (苦しむ声) 724 01:26:10,248 --> 01:26:12,792 (大宮)姫 (女房たち)お方様 お方様… 725 01:26:15,086 --> 01:26:17,046 (大宮)姫! (女房)お方様! 726 01:26:19,549 --> 01:26:24,179 (晴明)天清浄 地清浄 内外清浄 727 01:26:24,262 --> 01:26:27,140 (晴明)六根清浄と祓い賜(たも)う (御息所)ああっ… 728 01:26:28,558 --> 01:26:35,064 (晴明)天清浄 地清浄 内外清浄 六根清浄と祓い賜う 729 01:26:36,983 --> 01:26:38,651 なんじゃ? お前は 730 01:26:41,821 --> 01:26:42,864 (道長)ん? 731 01:26:45,992 --> 01:26:48,036 晴明は どこへ行ったのだ? 732 01:26:53,625 --> 01:26:59,505 (晴明)臨 兵 闘 者 (御息所)うっ! 733 01:26:59,589 --> 01:27:06,221 (晴明)皆 陣 列 在 前 (御息所)ああっ… 734 01:27:06,971 --> 01:27:12,560 (晴明)臨 兵 闘 者 (御息所)うああ! 735 01:27:12,644 --> 01:27:13,561 (晴明)皆 陣 列 在 前 736 01:27:13,561 --> 01:27:14,812 (晴明)皆 陣 列 在 前 737 01:27:13,561 --> 01:27:14,812 (御息所)許さぬ 738 01:27:14,812 --> 01:27:15,355 (晴明)皆 陣 列 在 前 739 01:27:15,355 --> 01:27:17,106 (晴明)皆 陣 列 在 前 740 01:27:15,355 --> 01:27:17,106 わらわの邪魔をする者は 741 01:27:17,106 --> 01:27:17,857 (晴明)皆 陣 列 在 前 742 01:27:17,857 --> 01:27:19,484 (晴明)皆 陣 列 在 前 743 01:27:17,857 --> 01:27:19,484 誰とて許さぬ! 744 01:27:19,567 --> 01:27:24,656 (晴明)臨 兵 闘 者 (御息所)あっ あ… 745 01:27:24,739 --> 01:27:30,328 (晴明)皆 陣 列 在 前 746 01:27:31,162 --> 01:27:36,209 (晴明)臨 兵 闘 者 皆 (御息所)ハァッ ああっ… 747 01:27:37,043 --> 01:27:41,673 (晴明)陣 列 在 前… 748 01:27:41,756 --> 01:27:43,508 うっ… 749 01:27:43,591 --> 01:27:47,220 (祈祷) 750 01:27:48,554 --> 01:27:49,847 ああっ… 751 01:27:53,226 --> 01:27:54,269 ああっ! 752 01:28:01,943 --> 01:28:03,820 (御息所)あっ ああっ… 753 01:28:03,903 --> 01:28:06,823 祓いたまえ 清めたまえ… 754 01:28:09,033 --> 01:28:12,412 (苦しむ声) 755 01:28:18,668 --> 01:28:19,836 (御息所)ああ… 756 01:28:20,503 --> 01:28:22,255 ああーっ! 757 01:28:28,136 --> 01:28:31,639 (苦しむ声) 758 01:28:37,812 --> 01:28:40,440 (祈祷) 759 01:28:40,523 --> 01:28:43,985 そなたの修羅は これほどのものなのか 760 01:28:45,737 --> 01:28:48,323 (葵の上の荒い息遣い) 761 01:28:48,406 --> 01:28:50,074 (産婆)お兆しにございます 762 01:28:50,158 --> 01:28:52,702 (女房たち)お兆しにございます 763 01:28:52,785 --> 01:28:54,620 (女房)お気をしっかりと 764 01:28:59,751 --> 01:29:01,627 (息む声) 765 01:29:01,711 --> 01:29:03,254 ハァ ハァ… 766 01:29:03,338 --> 01:29:05,298 (息む声) 767 01:29:08,634 --> 01:29:13,222 (産声) 768 01:29:14,140 --> 01:29:17,268 道長様に益をもたらした女 769 01:29:19,020 --> 01:29:21,105 物語の使い手 770 01:29:22,482 --> 01:29:26,861 あの者の修羅は いずれ 物語の世界から抜け出す 771 01:29:29,322 --> 01:29:33,159 そのときは 我とて 収められぬやもしれぬ 772 01:29:36,079 --> 01:29:38,373 式部の筆を止めるのです 773 01:29:40,333 --> 01:29:43,920 止められるのは 道長様の他にはおりませぬ 774 01:29:46,339 --> 01:29:48,007 それはできん 775 01:29:49,258 --> 01:29:50,802 (晴明)何故です? 776 01:29:52,470 --> 01:29:55,890 我が それを望まぬからだ 777 01:29:57,767 --> 01:29:59,393 我は見たいのだ 778 01:30:03,606 --> 01:30:07,193 式部の筆の行き着く先を 779 01:30:09,278 --> 01:30:11,489 あの者の業の深さを 780 01:30:12,365 --> 01:30:16,410 才の全てを見届けたいのだ 781 01:30:17,954 --> 01:30:20,665 (晴明)我が身に害が及ぼうとも 782 01:30:21,791 --> 01:30:22,959 そうだ 783 01:30:23,960 --> 01:30:25,711 それが務めだ 784 01:30:27,755 --> 01:30:31,175 あの者の才を呼び覚ましたのは 785 01:30:32,218 --> 01:30:34,387 この私なのだからな 786 01:31:03,875 --> 01:31:07,461 (夕霧の声) 787 01:31:07,545 --> 01:31:10,464 さあ 薬湯をお上がり 788 01:31:13,759 --> 01:31:15,219 ありがとう 789 01:31:25,188 --> 01:31:28,191 (水音) (御息所)取れぬ… 790 01:31:29,901 --> 01:31:31,611 何故 取れぬ 791 01:31:33,279 --> 01:31:37,200 この芥子(けし)のにおい… 792 01:31:39,118 --> 01:31:40,620 取れぬ… 793 01:31:41,454 --> 01:31:43,080 取れぬのじゃ 794 01:31:49,462 --> 01:31:50,963 ああっ! 795 01:32:31,170 --> 01:32:32,380 ああっ あ… 796 01:32:37,134 --> 01:32:38,135 あっ… 797 01:32:55,111 --> 01:32:56,570 (御息所)苦しいか? 798 01:33:02,201 --> 01:33:06,914 わらわは もっと苦しんだのだ 799 01:33:09,083 --> 01:33:12,795 もっと もっと― 800 01:33:16,007 --> 01:33:18,217 苦しみ抜いたのだ 801 01:33:19,343 --> 01:33:24,348 (苦しむ声) 802 01:33:27,601 --> 01:33:28,853 起きよ 803 01:33:30,688 --> 01:33:33,232 まだまだ そなたには 苦しみが足らぬ 804 01:33:34,567 --> 01:33:35,860 起きよ! 805 01:33:36,485 --> 01:33:37,653 あ… 806 01:33:40,448 --> 01:33:42,491 (晴明)天御中主(あめのみなかぬし)― 807 01:33:42,575 --> 01:33:46,037 一 一は二を生じ二 808 01:33:46,120 --> 01:33:48,289 二は 三を生じ三 809 01:33:49,165 --> 01:33:51,542 三は 万物を生ず 810 01:33:52,293 --> 01:33:54,628 三三で九 811 01:33:55,379 --> 01:33:57,465 (晴明)九九で八拾壱 (御息所)うっ うう… 812 01:34:02,720 --> 01:34:06,349 (晴明) 北より南に廻(めぐ)りて 前一騰蛇(とうしゃ) 813 01:34:06,432 --> 01:34:07,516 ハァッ… 814 01:34:07,600 --> 01:34:09,727 (晴明)前二朱雀(すざく) 815 01:34:10,394 --> 01:34:12,521 前三六合(りくごう) 816 01:34:12,605 --> 01:34:14,482 前四勾陳(こうちん) 817 01:34:14,565 --> 01:34:16,567 前五青龍(せいりゅう) 818 01:34:17,234 --> 01:34:20,613 目下どの神にして 東にあるもの 819 01:34:21,947 --> 01:34:24,575 恨みは いずれ我が身に返る 820 01:34:25,951 --> 01:34:27,912 御息所よ もうやめるのだ 821 01:34:27,995 --> 01:34:30,122 お前に何が分かる! 822 01:34:35,586 --> 01:34:36,837 もはや 823 01:34:39,590 --> 01:34:42,218 あの方に愛されぬこの身など 824 01:34:43,427 --> 01:34:44,804 どうなってもかまわぬ 825 01:34:47,932 --> 01:34:52,228 死して 煉獄(れんごく)をさまよっても かまわぬ 826 01:35:01,695 --> 01:35:03,197 あの方は 827 01:35:05,074 --> 01:35:07,326 私の命… 828 01:35:09,286 --> 01:35:11,956 わたくしだけの命 829 01:35:53,873 --> 01:35:55,207 これで 830 01:35:58,627 --> 01:36:00,796 終わりにしてくれる… 831 01:36:03,716 --> 01:36:07,553 あ… う… 832 01:36:08,888 --> 01:36:12,016 あ… あなた 833 01:36:16,353 --> 01:36:18,647 (女房たちの悲鳴) 834 01:36:18,731 --> 01:36:23,152 (女房たち)お方様! お方様… 835 01:36:23,235 --> 01:36:27,239 (女房たちの泣き声) 836 01:36:31,285 --> 01:36:32,453 (左大臣)ああ… 837 01:36:38,167 --> 01:36:39,335 (頭の中将)葵… 838 01:36:49,011 --> 01:36:50,638 そなたの夫は 839 01:36:52,264 --> 01:36:56,018 果たして どれほどの女を 狂わせるのだ… 840 01:37:13,744 --> 01:37:15,579 (御息所)何も言わぬのは― 841 01:37:18,123 --> 01:37:20,626 あなたの優しさからですか? 842 01:37:27,383 --> 01:37:33,764 もう 何もかも ご存じなはずです 843 01:37:36,433 --> 01:37:37,810 あさましい― 844 01:37:40,104 --> 01:37:42,439 鬼に成り果てたわたくしを 845 01:37:46,068 --> 01:37:47,278 幾度… 846 01:37:48,529 --> 01:37:50,614 幾度 衣を替えても 847 01:37:52,074 --> 01:37:55,411 幾度 髪を洗っても取れぬのです 848 01:37:56,245 --> 01:37:59,540 体じゅうから漂う芥子のにおい… 849 01:38:01,792 --> 01:38:03,168 わたくしは 850 01:38:04,587 --> 01:38:09,550 我が身が恐ろしくてなりませぬ 851 01:38:12,553 --> 01:38:13,846 全て 852 01:38:16,473 --> 01:38:17,975 わたくしが悪いのです 853 01:38:21,687 --> 01:38:23,981 あなたをそこまで追いつめたのは 854 01:38:25,941 --> 01:38:27,776 このわたくしなのです 855 01:38:30,779 --> 01:38:32,615 我が身を失うほど 856 01:38:34,199 --> 01:38:36,785 深く わたくしを愛してくださった あなたを― 857 01:38:39,204 --> 01:38:43,459 粗略に扱った わたくしが悪いのです 858 01:38:49,465 --> 01:38:54,178 もう ご自分をお責めになりますな 859 01:39:00,893 --> 01:39:02,603 そのお言葉で 860 01:39:04,980 --> 01:39:07,566 都を離れる決心がつきました 861 01:39:09,193 --> 01:39:11,195 何を言われるのですか… 862 01:39:13,656 --> 01:39:15,324 縁者を頼り 863 01:39:16,909 --> 01:39:18,911 伊勢(いせ)に下ることにいたします 864 01:39:21,038 --> 01:39:22,414 その地で― 865 01:39:23,916 --> 01:39:29,713 心静かに余生を過ごすつもりです 866 01:39:32,174 --> 01:39:35,761 わたくしを 1人 捨て置かれるのですか 867 01:39:36,720 --> 01:39:38,305 ここにいては 868 01:39:39,264 --> 01:39:40,974 わたくしは また 869 01:39:41,058 --> 01:39:44,395 あなたを苦しめるだけの女に 成り下がってしまう… 870 01:39:49,733 --> 01:39:53,153 あなたは まだお若い 871 01:39:56,699 --> 01:39:58,200 共に生き― 872 01:40:00,119 --> 01:40:03,414 共に泣き 笑う 873 01:40:07,209 --> 01:40:10,295 お優しい方を見つけてくださいな 874 01:40:14,049 --> 01:40:15,551 くれぐれも 875 01:40:16,760 --> 01:40:22,057 わたくしのような情のこわい女には 876 01:40:22,141 --> 01:40:24,184 気をつけるのですよ 877 01:41:01,430 --> 01:41:02,639 はじめから… 878 01:41:04,600 --> 01:41:07,227 何もかも はじめから やり直すのです 879 01:41:07,936 --> 01:41:10,856 この先 どれほどの月日が 経とうとも 880 01:41:10,939 --> 01:41:13,108 あなたほど深く わたくしを愛してくれる人に 881 01:41:13,192 --> 01:41:14,902 出会えるはずもない 882 01:41:21,033 --> 01:41:23,577 (御息所) 何度やり直しても同じこと 883 01:41:25,954 --> 01:41:27,790 わたくしたちは また― 884 01:41:28,791 --> 01:41:30,918 同じ過ちを繰り返すのです 885 01:41:35,047 --> 01:41:40,594 もう わたくしは十分なのです 886 01:41:43,555 --> 01:41:45,265 恋の喜びも 887 01:41:46,809 --> 01:41:48,310 悲しみも 888 01:41:49,186 --> 01:41:50,604 苦しみも 889 01:41:53,690 --> 01:41:56,944 全ては あなたゆえでした 890 01:42:04,034 --> 01:42:08,455 さようなら あなた… 891 01:42:44,575 --> 01:42:48,579 (雷鳴) 892 01:42:54,376 --> 01:42:57,087 (女房)命婦様! 命婦様! 893 01:43:01,508 --> 01:43:02,676 (王命婦)おやめを… 894 01:43:03,927 --> 01:43:05,429 おやめください! 895 01:43:06,138 --> 01:43:07,472 おやめください… 896 01:43:08,098 --> 01:43:11,310 おやめを… おやめくださいませ 897 01:43:11,393 --> 01:43:12,519 おやめください 898 01:43:12,603 --> 01:43:15,230 おやめください おやめください! 899 01:43:16,565 --> 01:43:18,567 (王命婦) おやめください おやめ… 900 01:43:24,364 --> 01:43:25,991 おやめください 901 01:43:31,163 --> 01:43:33,957 (王命婦)お方様 わたくしは… 902 01:43:34,041 --> 01:43:35,542 (藤壺)分かっております 903 01:43:38,086 --> 01:43:40,589 あとは わたくしが お話しいたします 904 01:43:54,144 --> 01:43:57,147 (雷鳴) 905 01:44:38,105 --> 01:44:39,439 (藤壺)源氏の君 906 01:44:40,691 --> 01:44:44,069 あなたのお振る舞いは わたくしだけではなく― 907 01:44:44,945 --> 01:44:47,489 あの者をも苦しめているのですよ 908 01:44:57,874 --> 01:44:59,543 それがお分かりにならぬのですか 909 01:44:59,626 --> 01:45:03,672 (源氏)わたくしは今 やっと分かったのです 910 01:45:07,384 --> 01:45:09,803 あなたへの思いが 何故なのか 911 01:45:14,850 --> 01:45:16,309 思い出したのです 912 01:45:17,519 --> 01:45:20,230 初めて御所で あなたにお会いしたときのことを 913 01:45:23,358 --> 01:45:25,569 共に夜が更けるまで本を読み― 914 01:45:26,737 --> 01:45:28,363 管弦の遊びをし 915 01:45:29,239 --> 01:45:31,408 そのうちに わたくしは思ったのです 916 01:45:35,912 --> 01:45:38,373 いっそ このまま 大人にならなければ― 917 01:45:40,667 --> 01:45:42,836 ずっとあなたと共にいられる 918 01:45:44,004 --> 01:45:46,798 あなたの笑顔の中に 包まれていられると 919 01:45:55,182 --> 01:45:56,683 わたくしにとって― 920 01:45:58,727 --> 01:46:00,979 あなたの代わりなど どこにもいない 921 01:46:05,233 --> 01:46:08,403 結ばれぬあなたを 恋い慕い続けることが― 922 01:46:08,487 --> 01:46:10,030 わたくしの運命 923 01:46:12,157 --> 01:46:15,118 その苦しみを 1人で背負う強さがあれば― 924 01:46:15,202 --> 01:46:17,454 誰も傷つけることはなかったのです 925 01:46:23,919 --> 01:46:25,128 葵も 926 01:46:26,963 --> 01:46:28,173 夕顔も 927 01:46:32,344 --> 01:46:33,804 あの方も… 928 01:46:45,899 --> 01:46:48,068 そのことをお伝えしに参りました 929 01:46:49,152 --> 01:46:51,530 もう二度と このような振る舞いは いたしません 930 01:47:02,124 --> 01:47:03,166 愛しいあなたを 931 01:47:08,046 --> 01:47:09,506 地獄に落とすことはできない 932 01:47:30,944 --> 01:47:32,612 もう落ちている 933 01:50:00,844 --> 01:50:03,138 (雷鳴) 934 01:50:03,221 --> 01:50:04,931 この悪夢は 935 01:50:07,559 --> 01:50:12,188 この一夜の夢で終わるのですか 936 01:50:26,077 --> 01:50:27,454 それとも― 937 01:50:27,996 --> 01:50:33,543 新たな悪夢の幕開けに なろうというのですか 938 01:50:38,757 --> 01:50:41,134 (雷鳴) 939 01:50:55,273 --> 01:50:57,859 私は あなたに感謝しているのだよ 940 01:51:00,320 --> 01:51:02,614 源氏の母を失い 941 01:51:02,697 --> 01:51:05,825 闇の中にいた私を救ってくれた 942 01:51:07,660 --> 01:51:09,454 あなたは こうして― 943 01:51:10,288 --> 01:51:12,791 新しい命まで私にくれる 944 01:51:16,461 --> 01:51:18,463 私を照らす光… 945 01:51:21,216 --> 01:51:22,926 あなたの代わりは どこにもいない 946 01:51:33,728 --> 01:51:37,774 (風の音) 947 01:52:09,139 --> 01:52:12,350 (帝)ご覧 美しい子であろう 948 01:52:13,977 --> 01:52:15,019 (源氏)はい 949 01:52:16,104 --> 01:52:17,730 (帝)誠に美しい 950 01:52:19,649 --> 01:52:22,861 そなたの幼いころに 不思議なほど よく似ておる 951 01:52:24,737 --> 01:52:26,656 畏れ多いことにございます 952 01:52:31,494 --> 01:52:35,206 (帝)きっと 美しいものは 似るものなのだのう 953 01:52:42,589 --> 01:52:47,719 (紫式部)朱雀帝に位を譲り 院となられた帝は― 954 01:52:47,802 --> 01:52:51,556 若宮様を東宮にお立てになると― 955 01:52:51,639 --> 01:52:54,517 まるで それを 待っていたかのように― 956 01:52:54,601 --> 01:52:57,061 病に倒れられました 957 01:52:58,188 --> 01:53:00,106 (院)心配はいらぬ… 958 01:53:02,108 --> 01:53:07,030 私は既に 寿命が尽きた身なのだよ 959 01:53:09,949 --> 01:53:11,784 (藤壺)何をおっしゃるのです 960 01:53:13,203 --> 01:53:16,623 (院)私はもう 疲れたのだ 961 01:53:19,083 --> 01:53:20,543 父上… 962 01:53:21,586 --> 01:53:24,714 思い残すことは 何も… 963 01:53:30,345 --> 01:53:31,346 光 964 01:53:34,974 --> 01:53:38,144 ただ そなたのことだけだ 965 01:53:42,357 --> 01:53:44,400 数ある皇子の中で― 966 01:53:45,068 --> 01:53:48,196 そなたは 一番優れた子であった 967 01:53:48,738 --> 01:53:51,574 されど 私の力不足ゆえ 968 01:53:52,617 --> 01:53:55,745 帝位に就けることができなかった 969 01:53:56,788 --> 01:53:58,540 わたくしは元より 970 01:53:59,457 --> 01:54:01,417 その器のない人間です 971 01:54:02,460 --> 01:54:05,838 (院)そうしていれば 誰も苦しまなかったのだ 972 01:54:07,423 --> 01:54:11,052 そなたも 私も 973 01:54:21,771 --> 01:54:23,106 どうか― 974 01:54:24,274 --> 01:54:27,318 幼い東宮を守ってやってくれ 975 01:54:28,987 --> 01:54:34,284 これが 私の最後の望みだ 976 01:55:13,448 --> 01:55:17,035 (藤壺)わたくしは 亡き院が― 977 01:55:18,286 --> 01:55:19,454 わたくしたちの罪を― 978 01:55:19,537 --> 01:55:22,665 全て知っておられたように 思えてならぬのです 979 01:55:25,293 --> 01:55:27,045 それを知った上で― 980 01:55:28,254 --> 01:55:31,090 わたくしたちの子を東宮になされた 981 01:55:34,761 --> 01:55:36,346 そのお心を― 982 01:55:38,306 --> 01:55:40,433 わたくしは守りたいのです 983 01:55:42,727 --> 01:55:43,728 (つまづく音) 984 01:56:23,685 --> 01:56:26,312 ハァ… 985 01:56:34,153 --> 01:56:35,738 (筆を置く音) 986 01:57:04,809 --> 01:57:06,352 里に帰るとな 987 01:57:08,021 --> 01:57:09,272 ええ 988 01:57:11,482 --> 01:57:13,860 娘が待っております 989 01:57:14,360 --> 01:57:17,905 娘は 早くに父を亡くし― 990 01:57:17,989 --> 01:57:22,201 わたくしも宮仕えで そばを離れたゆえ 991 01:57:22,285 --> 01:57:25,705 長らく寂しい思いをさせました 992 01:57:26,748 --> 01:57:28,166 そうか 993 01:57:29,125 --> 01:57:29,959 だが― 994 01:57:31,294 --> 01:57:33,755 我は寂しゅうなるな 995 01:57:33,838 --> 01:57:34,839 (紫式部)フフッ… 996 01:57:37,800 --> 01:57:39,177 (道長)なんだ? 997 01:57:39,260 --> 01:57:41,095 ご冗談を 998 01:57:43,181 --> 01:57:44,766 真(まこと)の思いだ 999 01:57:51,856 --> 01:57:54,776 そなたの物語が 読めなくなると思うと 1000 01:57:55,651 --> 01:57:58,279 毎日に張り合いがなくなるわ 1001 01:58:03,159 --> 01:58:04,952 達者で暮らすのだぞ 1002 01:58:07,288 --> 01:58:08,414 はい 1003 01:58:11,626 --> 01:58:14,629 その後 源氏はどうなるのだ? 1004 01:58:16,839 --> 01:58:20,510 世の無常をはかなみ 隠居するのではないか? 1005 01:58:21,135 --> 01:58:22,345 いいえ 1006 01:58:23,137 --> 01:58:26,974 そのようなことは 決してありませぬ 1007 01:58:28,893 --> 01:58:33,981 源氏の君の人生は まだ始まったばかりなのです 1008 01:58:36,859 --> 01:58:38,611 これからまた 1009 01:58:38,694 --> 01:58:43,449 さまざまな方と出会い 別れ 1010 01:58:44,367 --> 01:58:47,203 多くの喜びを味わい 1011 01:58:48,037 --> 01:58:53,251 多くの涙を流して 生きてゆかれるのです 1012 01:58:55,586 --> 01:59:00,633 それはまた ずいぶん難儀な人生であるな 1013 01:59:04,345 --> 01:59:05,471 ええ 1014 01:59:08,432 --> 01:59:11,686 あなた様と同じように 1015 01:59:17,316 --> 01:59:20,736 フフフ… 同じようにか 1016 01:59:22,071 --> 01:59:23,489 (紫式部)フッ… 1017 01:59:29,036 --> 01:59:33,291 遠くより 見守っております 1018 01:59:36,294 --> 01:59:37,712 これからも 1019 01:59:38,629 --> 01:59:44,468 この世の栄華を極められる あなた様のことを 1020 02:00:07,533 --> 02:00:08,618 そうよ 1021 02:00:10,286 --> 02:00:11,954 我の名は光 1022 02:00:13,831 --> 02:00:16,083 世をあまねく照らす 1023 02:00:18,836 --> 02:00:20,129 光だ 1024 02:00:30,556 --> 02:00:34,268 (道長)誠に美しい月よ 1025 02:00:37,021 --> 02:00:39,523 我も あと幾度 1026 02:00:40,608 --> 02:00:43,569 このように月を愛(め)でられることか 1027 02:00:46,739 --> 02:00:48,950 おや ずいぶんと弱気な 1028 02:00:49,033 --> 02:00:50,743 のう 晴明 1029 02:00:52,036 --> 02:00:54,288 我は あとどのぐらい生きられる? 1030 02:00:59,418 --> 02:01:00,711 それは 1031 02:01:04,173 --> 02:01:05,466 分かりませぬ 1032 02:01:06,759 --> 02:01:10,221 相変わらず 役に立たぬ男よ 1033 02:01:11,681 --> 02:01:12,807 行成 1034 02:01:15,101 --> 02:01:16,394 おぬしも飲まんか 1035 02:01:22,441 --> 02:01:24,986 ほれほれ しっかり持て 1036 02:01:25,069 --> 02:01:26,362 はあ 1037 02:01:26,445 --> 02:01:30,324 どうやら 物語の毒気に あたったようですな 1038 02:01:31,117 --> 02:01:32,368 (行成)あああ… 1039 02:01:40,960 --> 02:01:42,670 道長様 1040 02:01:45,256 --> 02:01:48,009 あなたは やはり運の強き男 1041 02:01:48,926 --> 02:01:50,303 あの女 1042 02:01:51,846 --> 02:01:55,599 我が身が鬼となる前に 自ら身を引くとは 1043 02:02:01,439 --> 02:02:03,357 美しいのう… 1044 02:02:09,322 --> 02:02:11,866 では 一首 1045 02:02:23,419 --> 02:02:24,879 (翡翠の玉の音) 1046 02:02:25,588 --> 02:02:27,006 “この世をば” 1047 02:02:28,924 --> 02:02:32,428 “我が世とぞ思う 望月の” 1048 02:02:34,347 --> 02:02:38,768 “欠けたることも 無しと思えば” 1049 02:02:51,072 --> 02:02:55,076 (読経) 1050 02:03:15,971 --> 02:03:18,933 (高僧) ご決心は 変わりませぬか? 1051 02:03:36,200 --> 02:03:37,034 (源氏)お通しください 1052 02:03:37,576 --> 02:03:39,787 あの方とお話しせねば ならないのです 1053 02:03:39,870 --> 02:03:40,871 (僧侶)なりませぬ 1054 02:03:40,955 --> 02:03:44,708 ここから先は 何人(なんぴと)たりとも 入ることはかないません 1055 02:03:45,459 --> 02:03:48,337 わたくしは都にて 参議の職を担う者 1056 02:03:49,547 --> 02:03:51,966 御仏(みほとけ)の前では ただ人でございましょう 1057 02:03:53,843 --> 02:03:58,681 仏の胸に抱かれた者には 以後 決して触れてはなりませぬ 1058 02:04:12,445 --> 02:04:16,449 (読経) 1059 02:04:40,848 --> 02:04:41,932 (切る音) 1060 02:07:16,587 --> 02:07:18,047 そなたは 1061 02:07:20,758 --> 02:07:23,218 どこまで わたくしを 苦しめるのだ… 1062 02:07:39,652 --> 02:07:42,404 まだお分かりにならぬのですか? 1063 02:07:45,407 --> 02:07:48,744 多くの人を引きつけて やまないあなたは 1064 02:07:49,703 --> 02:07:52,790 その有り余る幸福(しあわせ)の分だけ― 1065 02:07:53,791 --> 02:07:56,210 血を流して生きるのです 1066 02:08:10,349 --> 02:08:15,270 それが あなたの人生 1067 02:09:19,543 --> 02:09:20,711 フフ… 1068 02:09:21,420 --> 02:09:23,714 フッハハハハ… 1069 02:09:24,798 --> 02:09:28,802 ハハハハ… 1070 02:09:39,062 --> 02:09:44,067 ♪~ 1071 02:12:56,551 --> 02:13:01,556 ~♪ 1072 02:13:01,640 --> 02:13:06,645 ♪~ 1073 02:16:20,797 --> 02:16:26,469 ~♪