1 00:01:20,307 --> 00:01:23,276 渡るぞ はっ?この流れを? 2 00:01:23,276 --> 00:01:26,613 何を仰せられる この北上の急流を馬で渡るなど 3 00:01:26,613 --> 00:01:28,615 できぬと申すか? 4 00:01:28,615 --> 00:01:32,152 人ができぬと決めていることを でかすが勝ち戦の近道 5 00:01:32,152 --> 00:01:35,288 衣川から姥石峠までの行き帰り 一夜でできぬと 6 00:01:35,288 --> 00:01:37,290 誰もが言うたことを たった今 しとげたではないか 7 00:01:37,290 --> 00:01:39,593 しかし それとこれとは違います 8 00:01:39,593 --> 00:01:42,095 この流れにて殿の御身に もしものことがあらば… 9 00:01:42,095 --> 00:01:46,266 三郎 そのほう この義経に これしきの流れが渡れぬと? 10 00:01:46,266 --> 00:01:50,637 殿! あっ 喜平次 何とする! 11 00:01:50,637 --> 00:01:52,637 あっ 12 00:01:58,011 --> 00:02:01,381 殿! 殿 13 00:02:01,381 --> 00:02:05,152 喜平次!命を粗末にするでない! 14 00:02:05,152 --> 00:02:08,152 命を粗末にするのは 殿でござるぞ! 15 00:02:12,893 --> 00:02:15,593 喜平次!死ぬな! 16 00:02:21,935 --> 00:02:24,104 ほら これにつかまれ! 17 00:02:24,104 --> 00:02:26,104 手を離すな 18 00:02:32,479 --> 00:02:35,849 殿!何たる無思慮 19 00:02:35,849 --> 00:02:40,954 いいや いかにお叱りを受けようと 三郎義盛 申し上げでは済みませぬ 20 00:02:40,954 --> 00:02:44,090 我ら郎党 幾人溺れ死んだとて ただそれだけのことでござろうが 21 00:02:44,090 --> 00:02:47,294 殿の御身にもしものことがあれば 源氏再興の大業は… 22 00:02:47,294 --> 00:02:50,294 無事のみを願うて その大業が成るか? 23 00:03:06,847 --> 00:03:08,982 殿! 待て! 24 00:03:08,982 --> 00:03:11,685 我ら 静かに控えていよう 25 00:03:11,685 --> 00:03:13,687 分からぬか? 26 00:03:13,687 --> 00:03:18,191 殿は今 あの山の彼方に 思いをはせておいでなんだ 27 00:03:18,191 --> 00:03:21,761 山の彼方は数百里の南 28 00:03:21,761 --> 00:03:27,861 伊豆 蛭ヶ小島におわします 兄者 右兵衛佐頼朝殿の御元に 29 00:05:34,628 --> 00:05:36,728 お見事 30 00:05:39,633 --> 00:05:44,804 殿 動きもせぬ物に当てて何が見事か 31 00:05:44,804 --> 00:05:46,940 へつらい言 聞きとうない 32 00:05:46,940 --> 00:05:51,311 へつらい言? 伊勢三郎 生来の無骨者 33 00:05:51,311 --> 00:05:53,313 へつらい言となど… 言うな! 34 00:05:53,313 --> 00:05:55,649 手に持って突き刺すほどの この近間の的でも 35 00:05:55,649 --> 00:05:58,151 当たったら「見事 ようやった」と 褒められるほどのわしの腕か? 36 00:05:58,151 --> 00:06:00,553 殿 くどい! 37 00:06:00,553 --> 00:06:04,758 六郎 組み打ち所望いたす 参れ 38 00:06:04,758 --> 00:06:07,994 はっ 参れ! 39 00:06:07,994 --> 00:06:09,994 ご免 40 00:06:26,746 --> 00:06:29,182 おのれ これでもか! 41 00:06:29,182 --> 00:06:31,782 何の これしき 42 00:06:39,392 --> 00:06:41,461 何だ何だ?どうしたんだ? 43 00:06:41,461 --> 00:06:43,463 殿が六郎に 組み打ちを所望されたのよ 44 00:06:43,463 --> 00:06:46,966 組み打ち?眠気覚ましには いっちょい思いつきだ 45 00:06:46,966 --> 00:06:51,204 どちらもしっかり負けまいぞ 弁慶 これにて検分つかまつる 46 00:06:51,204 --> 00:06:54,441 六郎 何だ何だ そのザマは? 盛り返せ 盛り返せ 47 00:06:54,441 --> 00:06:56,643 太刀を取ってはさすがに この弁慶をきりきり舞いに 48 00:06:56,643 --> 00:06:59,643 させる殿なれど 組み打ちとあっては… 49 00:07:02,348 --> 00:07:04,648 これでもか! 50 00:07:10,890 --> 00:07:13,960 これでもか!これでもか! 51 00:07:13,960 --> 00:07:16,796 殿 殿 52 00:07:16,796 --> 00:07:19,496 六郎の… 六郎の負けじゃ 53 00:07:21,835 --> 00:07:26,840 殿には敵わぬ すさまじい勢いじゃ 54 00:07:26,840 --> 00:07:30,844 六郎!わしをなぶるか! 55 00:07:30,844 --> 00:07:34,514 殿 56 00:07:34,514 --> 00:07:36,683 殿! 何をなさる 57 00:07:36,683 --> 00:07:40,887 殿 六郎が どうして殿をなぶるなど 58 00:07:40,887 --> 00:07:44,090 譲られた勝ちで 喜ぶ義経と思うか! 59 00:07:44,090 --> 00:07:47,060 何?譲った? 60 00:07:47,060 --> 00:07:49,729 すりゃ殿は この六郎がわざと… 61 00:07:49,729 --> 00:07:52,332 それならば今 なぜ笑うた? 62 00:07:52,332 --> 00:07:54,334 「殿には敵わぬ」と言うて 63 00:07:54,334 --> 00:07:56,369 これたちを見て笑いくさったに 気がつかぬと思うてか! 64 00:07:56,369 --> 00:07:58,438 殿!殿 言わしてくだされ 65 00:07:58,438 --> 00:08:02,175 黙れ黙れ! わざとらしゅう勝ちを譲って 66 00:08:02,175 --> 00:08:04,677 主の機嫌 取り結ぶが おのれの忠か! 67 00:08:04,677 --> 00:08:07,180 殿 殿 黙れ! 68 00:08:07,180 --> 00:08:09,480 殿!殿! 69 00:08:12,085 --> 00:08:14,785 殿 こらえい こらえい 70 00:08:33,973 --> 00:08:36,910 先ほどよりのご鍛錬 71 00:08:36,910 --> 00:08:40,980 定めしお渇きのことで ございましょう 72 00:08:40,980 --> 00:08:44,980 松殿 人の渇きまで ようお分かりじゃのう 73 00:08:50,723 --> 00:08:52,723 あっ 不調法を 74 00:08:56,329 --> 00:08:59,332 わたくしの不調法でございました 75 00:08:59,332 --> 00:09:01,501 お許しくださいませ 76 00:09:01,501 --> 00:09:05,471 許せ?そこもとに このわしが何を許すのじゃ? 77 00:09:05,471 --> 00:09:08,371 椀を倒したのは この義経ではござらぬか 78 00:09:12,445 --> 00:09:17,145 松のふつつか 何とぞご免なされてくださりませ 79 00:10:08,167 --> 00:10:11,938 六郎 80 00:10:11,938 --> 00:10:14,941 許せ 殿 81 00:10:14,941 --> 00:10:19,841 六郎 義経は 我と我が心が分からぬ 82 00:10:22,215 --> 00:10:24,651 気がくるうたのであろうか? 83 00:10:24,651 --> 00:10:27,551 咎もないそのほうを あのように打ちあおり 84 00:10:29,822 --> 00:10:34,560 痛かったであろう 恨んだであろう ん? 85 00:10:34,560 --> 00:10:36,863 六郎 86 00:10:36,863 --> 00:10:39,966 許してくれ 殿 殿 87 00:10:39,966 --> 00:10:42,066 何を言われる 88 00:10:46,039 --> 00:10:48,274 弁慶 89 00:10:48,274 --> 00:10:51,077 これにおります 三郎 90 00:10:51,077 --> 00:10:53,646 殿 これに 91 00:10:53,646 --> 00:10:57,917 忠信も為春も聞いてくれ 92 00:10:57,917 --> 00:11:01,154 義経が入道秀衡殿を頼って 93 00:11:01,154 --> 00:11:04,854 鞍馬からこの奥州に落ちて はや六年になる 94 00:11:07,193 --> 00:11:09,896 思えばその間 わしの心は一日も… 95 00:11:09,896 --> 00:11:13,396 いや 一刻もこの土地にはなかった 96 00:11:15,802 --> 00:11:18,702 あの山の向こうに 飛んでいたのじゃ 97 00:11:24,777 --> 00:11:27,977 山のこなたで 義経は秀衡殿に守られ 98 00:11:29,949 --> 00:11:33,749 そのほうらと共々 安らかに無事に暮らしてきた 99 00:11:36,723 --> 00:11:40,626 月日は この義経に ただむなしく過ぎていった 100 00:11:40,626 --> 00:11:45,598 しかし殿はその間 一日の休みもなく 101 00:11:45,598 --> 00:11:48,398 武技の鍛錬に勤しまれておった 102 00:11:54,507 --> 00:11:56,707 わしは弓を引いた 103 00:11:58,945 --> 00:12:02,645 清盛に向かってではない ただの紙の的に向かってじゃ 104 00:12:05,918 --> 00:12:09,122 組み打ちをした 105 00:12:09,122 --> 00:12:12,722 知盛 教経ならぬ おのが股肱の家臣と 106 00:12:16,095 --> 00:12:19,395 眠気覚まし 腹ごなしは もうたくさんじゃ! 107 00:12:24,070 --> 00:12:27,040 いつになったら 兄者は旗を揚げるのだ? 108 00:12:27,040 --> 00:12:29,776 立つのか立たぬのか もし兄者が立たねば 109 00:12:29,776 --> 00:12:31,876 俺は一体 どうすればいいのか? 110 00:12:33,913 --> 00:12:38,051 人の厚意の中に無為の日を送る 111 00:12:38,051 --> 00:12:40,151 俺には耐えがたい 112 00:12:42,622 --> 00:12:44,822 秀衡殿の温かい心 113 00:12:46,859 --> 00:12:49,996 そのほうどもの一途な忠節 114 00:12:49,996 --> 00:12:54,567 それが義経の首を絞める 俺の乱心が始まる 115 00:12:54,567 --> 00:12:56,803 そちたちに無理を言う そちたちを痛めつける 116 00:12:56,803 --> 00:12:58,803 そちたちを殴りつける 117 00:13:02,341 --> 00:13:05,841 人を殴るのが 我と我が身を殴るように 118 00:13:08,414 --> 00:13:12,714 殴って殴って殴り倒さねば 分からなくなってしまう 119 00:13:18,257 --> 00:13:20,457 こんな女々しい義経 120 00:13:23,529 --> 00:13:26,365 許してくれ 121 00:13:26,365 --> 00:13:29,802 殿 122 00:13:29,802 --> 00:13:31,802 すみませぬ 123 00:13:35,274 --> 00:13:40,446 六郎は殿のお苦しみも知らず 124 00:13:40,446 --> 00:13:44,250 ただ おのが心が 分かってもらえぬと 125 00:13:44,250 --> 00:13:47,150 殿をお恨み申しておりました 126 00:13:51,324 --> 00:13:54,160 六郎はバカ 127 00:13:54,160 --> 00:13:56,560 大バカでございます 128 00:13:58,531 --> 00:14:01,434 六郎 殿 止めずにおいてくだされ 129 00:14:01,434 --> 00:14:06,439 六郎は泣きたいんです 六郎は 一人で思う存分 泣きたいのです 130 00:14:06,439 --> 00:14:09,275 我ら… 131 00:14:09,275 --> 00:14:11,475 我らも… 132 00:14:38,838 --> 00:14:40,840 殿!殿! 133 00:14:40,840 --> 00:14:45,444 鈴木二郎重家 東国の大事を聞き 駆けつけましてございますぞ 134 00:14:45,444 --> 00:14:47,547 重家 135 00:14:47,547 --> 00:14:50,447 兄者 御前じゃ 殿の御前じゃ 136 00:14:52,685 --> 00:14:56,455 殿 お懐かしや 137 00:14:56,455 --> 00:14:59,358 東国の大事とは もしや兄 頼朝… 138 00:14:59,358 --> 00:15:02,195 はい 右兵衛佐殿 139 00:15:02,195 --> 00:15:04,897 以仁王のご令旨を賜り 140 00:15:04,897 --> 00:15:08,100 ついに蛭ヶ小島に 平家追討の旗を揚げられましたぞ 141 00:15:08,100 --> 00:15:14,100 何?平家追討のご令旨が 源氏に下ったのか? 142 00:15:19,312 --> 00:15:21,814 弁慶 はい 143 00:15:21,814 --> 00:15:25,451 皆の者 聞いたか?聞きおったか? 144 00:15:25,451 --> 00:15:27,651 殿 145 00:15:29,655 --> 00:15:31,855 おめでとう存ずる 146 00:15:34,560 --> 00:15:39,660 馬を引け 伽羅御所に参って 秀衡殿にお別れのご挨拶をいたす 147 00:15:44,704 --> 00:15:48,507 継信 君にはご機嫌うるわしゅう 148 00:15:48,507 --> 00:15:51,444 入道殿に御意得たき儀 出来いたし まかり出たのじゃが 149 00:15:51,444 --> 00:15:53,779 はっ その儀にござりますが 150 00:15:53,779 --> 00:15:57,717 主人秀衡 先刻より 急に不快を覚え… 151 00:15:57,717 --> 00:16:01,153 何?ご不快?して ご容体は? 152 00:16:01,153 --> 00:16:06,592 甚だしき高熱を発し ただ今 臥所に苦しみおりまする 153 00:16:06,592 --> 00:16:09,528 義経 お見舞い申さねば… しばらく その儀はご容赦 154 00:16:09,528 --> 00:16:11,530 ご容赦願いたてまつりまする 155 00:16:11,530 --> 00:16:14,233 入道 熱のために すでにうわごとを口走る有り様 156 00:16:14,233 --> 00:16:17,036 かかる所へお通しつかまつるは 恐れ多きこと 157 00:16:17,036 --> 00:16:21,007 一両日うちには必ず 立ち直りますれば 158 00:16:21,007 --> 00:16:25,407 継信 入道殿は 義経にとって親以上の親 159 00:16:27,413 --> 00:16:31,951 ご不快と聞いて我にもなく 取り乱してしもうた 160 00:16:31,951 --> 00:16:34,587 わしに代わって 手厚いご看護 頼むぞ 161 00:16:34,587 --> 00:16:36,587 ははっ 162 00:17:16,495 --> 00:17:19,895 松の君様 お越しにござりまする 163 00:17:28,607 --> 00:17:33,207 松か 夜中呼び立てして すまなんだのう 164 00:17:49,362 --> 00:17:53,065 父上様にはご不例と 承りましたに 165 00:17:53,065 --> 00:17:56,135 不例?そうじゃ 166 00:17:56,135 --> 00:18:00,473 不例じゃ 不例じゃよ 167 00:18:00,473 --> 00:18:05,745 わしの病の元 そなたに語れば 168 00:18:05,745 --> 00:18:10,583 一番よう分かってもらえると 思うてなあ 169 00:18:10,583 --> 00:18:14,920 入道の病の元は 松よ 170 00:18:14,920 --> 00:18:18,620 山の彼方からの知らせが 運び込んだものじゃ 171 00:18:23,062 --> 00:18:25,664 わしはな 172 00:18:25,664 --> 00:18:30,870 山の彼方の話が あの方の耳に一切入らぬよう 173 00:18:30,870 --> 00:18:33,906 ひたすらに努めたんじゃ 174 00:18:33,906 --> 00:18:38,210 あの方をこの奥州から 出したくなかったからじゃ 175 00:18:38,210 --> 00:18:44,784 あの方は世に出れば 必ず不幸せになられる 176 00:18:44,784 --> 00:18:49,688 あのご気性 明るく激しく 177 00:18:49,688 --> 00:18:52,958 まるで日の光じゃ 178 00:18:52,958 --> 00:18:58,358 影や闇は光を憎む 敵を多くお作りになる 179 00:19:01,300 --> 00:19:06,505 好きな者にとっては たまらぬお方じゃがのう 180 00:19:06,505 --> 00:19:09,809 わしやお前のような者にはな 181 00:19:09,809 --> 00:19:13,579 わたくしはダメでございます 182 00:19:13,579 --> 00:19:16,379 わたくしは御曹司様に嫌われて… 183 00:19:18,984 --> 00:19:24,390 嫌いとつれなくするのとは 別物じゃ 184 00:19:24,390 --> 00:19:29,261 あの方がそちに つれなく当たるのは訳がある 185 00:19:29,261 --> 00:19:34,961 あの方の心が つまりは この土地にはなかった 186 00:19:37,136 --> 00:19:40,539 ただそれだけのことじゃよ 187 00:19:40,539 --> 00:19:42,708 殿 188 00:19:42,708 --> 00:19:45,077 金売り吉次が 平泉へ戻りましてございます 189 00:19:45,077 --> 00:19:47,847 何?吉次が? はっ 190 00:19:47,847 --> 00:19:50,583 して柳の御所へは すでに伺候いたせし模様か? 191 00:19:50,583 --> 00:19:54,453 はっ 幸いにしてその寸前において 彼に会うことができ 192 00:19:54,453 --> 00:19:59,058 これへ連れ参れ 申すまでもなく吉次の帰郷がこと 193 00:19:59,058 --> 00:20:03,258 柳の御所へ漏れざるよう きっと取り計らうのじゃぞ 194 00:20:07,666 --> 00:20:11,704 入道殿のご病気が治らぬ限り 出陣できぬなど 195 00:20:11,704 --> 00:20:14,807 ご平癒まで1年かかれば それまで待てというのか? 196 00:20:14,807 --> 00:20:16,809 戦が終わってしまうは 必定ではないか 197 00:20:16,809 --> 00:20:21,180 六郎 我らより殿がどれほど いら立っておられるか 198 00:20:21,180 --> 00:20:23,382 その殿が 199 00:20:23,382 --> 00:20:26,886 入道殿に受けられた 海山のご恩に対して 200 00:20:26,886 --> 00:20:28,921 こらえておられるのだ 武蔵坊 201 00:20:28,921 --> 00:20:31,857 ああ? 202 00:20:31,857 --> 00:20:34,159 奇態な噂を聞いてきた 金売り吉次が 203 00:20:34,159 --> 00:20:36,161 この平泉へ 戻ってるらしいとのことじゃ 204 00:20:36,161 --> 00:20:38,161 吉次? 205 00:20:49,375 --> 00:20:53,712 武蔵坊 いかにしてこれへ? 206 00:20:53,712 --> 00:20:57,683 入道様のご病気 容易ならずと承り 207 00:20:57,683 --> 00:21:01,353 お見舞いのため 208 00:21:01,353 --> 00:21:04,723 さすがは武蔵坊 209 00:21:04,723 --> 00:21:08,594 秀衡の仮病を見抜きおったか 210 00:21:08,594 --> 00:21:11,196 見抜かれずとも実は 211 00:21:11,196 --> 00:21:15,534 このほうより弁慶を 招こう所存ではあったが 212 00:21:15,534 --> 00:21:18,034 これへ寄れ 213 00:21:24,343 --> 00:21:26,912 弁慶 214 00:21:26,912 --> 00:21:30,212 わしはあの方を 我が手元から離しとうないのじゃ 215 00:21:32,418 --> 00:21:38,023 わしは あの方のご生涯が 気遣われてならんのじゃ 216 00:21:38,023 --> 00:21:42,728 あの方のご気性は 山の彼方の奸策詐謀 217 00:21:42,728 --> 00:21:46,198 人を陥れるをもって事とする所で 218 00:21:46,198 --> 00:21:49,835 しょせん幸せに なれるものではない 219 00:21:49,835 --> 00:21:52,638 なれど我が君 生涯の一事は 220 00:21:52,638 --> 00:21:58,110 かかって御兄君 頼朝様と 力を合わせて 221 00:21:58,110 --> 00:22:01,880 源家一門のかたき 平家を討ち滅ぼすにあり 222 00:22:01,880 --> 00:22:05,084 それが不憫でならんというのじゃ 223 00:22:05,084 --> 00:22:09,221 御曹司は「兄君 兄君」と 224 00:22:09,221 --> 00:22:13,425 お顔も存ぜられぬ頼朝殿を お慕いあそばされておわすが 225 00:22:13,425 --> 00:22:18,397 兄弟とは申せ 御腹も異なる頼朝殿が 226 00:22:18,397 --> 00:22:22,001 果たして御曹司の一途なお心に 応えてくださるか 227 00:22:22,001 --> 00:22:25,904 いや しかし… 弁慶! 228 00:22:25,904 --> 00:22:29,241 わしの気遣いが 老いの取り越し苦労ならずと 229 00:22:29,241 --> 00:22:31,577 思い知った時 そのほう… 230 00:22:31,577 --> 00:22:35,177 そのほう 御曹司の御身を 守り通せるか? 231 00:22:44,123 --> 00:22:46,123 入道様 232 00:22:52,297 --> 00:22:54,533 殿 金売り吉次が柳の御所へ 233 00:22:54,533 --> 00:22:56,635 引っ立てられましたげに ござりまする 234 00:22:56,635 --> 00:23:00,205 何?吉次が柳の御所へ? 235 00:23:00,205 --> 00:23:02,841 頼朝様 わずか300の手勢をもって 236 00:23:02,841 --> 00:23:06,912 十数倍なる大庭景親の大軍と 石橋山に合戦 237 00:23:06,912 --> 00:23:10,516 衆寡敵すべくもなく惨たる敗北 238 00:23:10,516 --> 00:23:13,452 して 兄者は?兄者は? 239 00:23:13,452 --> 00:23:15,888 頼朝様は身をもって虎口を逃れ 240 00:23:15,888 --> 00:23:19,558 苫の小舟に隠れ伏し 海路 下総に落ち延びられた 241 00:23:19,558 --> 00:23:22,094 …とのことにござりまする おのれ 242 00:23:22,094 --> 00:23:24,396 それほどの大事 聞き知って戻りながら 243 00:23:24,396 --> 00:23:26,398 早速のご注進に及ばぬとは 244 00:23:26,398 --> 00:23:29,198 そのこと 吉次を責めても 詮ないことだ 245 00:23:33,205 --> 00:23:37,342 吉次の口を塞いだのは 入道殿の指図だ 246 00:23:37,342 --> 00:23:41,246 何として そのような? 247 00:23:41,246 --> 00:23:45,446 入道殿のご不例も殿との対面を 一寸延ばしに致そうがため 248 00:23:47,453 --> 00:23:54,560 仮病だ 有り様は 殿の行く末をご憂慮あそばされて 249 00:23:54,560 --> 00:23:57,296 この地にとどめ置かんとの お心からだ 250 00:23:57,296 --> 00:24:01,433 なんということ 入道殿の仮病に惑わされず 251 00:24:01,433 --> 00:24:03,802 兄者の知らせと共に立って 馬を飛ばせなば 252 00:24:03,802 --> 00:24:05,971 石橋山にも間に合うたものを 253 00:24:05,971 --> 00:24:10,109 ええい 腹が立つ 腹が立つ 254 00:24:10,109 --> 00:24:12,411 一同 出陣の用意 255 00:24:12,411 --> 00:24:15,013 はっ はい 256 00:24:15,013 --> 00:24:17,950 入道殿の仮病 いや ご不例にあらずと承らば 257 00:24:17,950 --> 00:24:21,120 平家追討にはせ向かう義経を 妨ぐるものは何一つない 258 00:24:21,120 --> 00:24:23,422 あるを許さぬ 259 00:24:23,422 --> 00:24:26,859 妨ぐる者 山いかに高からんとも 川いかに広がらんとも 260 00:24:26,859 --> 00:24:31,463 人の情け いかに深からんとも 足下に踏んで越え行くのじゃ 261 00:24:31,463 --> 00:24:34,463 弁慶 鎧 はい 262 00:24:45,677 --> 00:24:47,877 君様 263 00:24:53,819 --> 00:24:56,919 わたくしは… わたくしは… 264 00:25:04,863 --> 00:25:09,963 ただ… ただ君様のご武運を 神懸けて… 265 00:25:53,879 --> 00:25:59,284 源家の御曹司 九郎義経公 266 00:25:59,284 --> 00:26:05,224 今日の佳辰を期しての 平家追討 鹿島立ちと漏れ承り 267 00:26:05,224 --> 00:26:07,793 藤原入道秀衡 268 00:26:07,793 --> 00:26:12,193 晴れの門出のお見送り つかまつらんと かくは 269 00:26:14,666 --> 00:26:17,002 秀衡殿 270 00:26:17,002 --> 00:26:19,137 義経… 271 00:26:19,137 --> 00:26:22,708 義経 過分に思いまする 272 00:26:22,708 --> 00:26:27,913 めでたきご出陣に 秀衡 心ばかりの引き出物 273 00:26:27,913 --> 00:26:33,352 お納めくださらば身の光栄 これに過ぎたるはござりません 274 00:26:33,352 --> 00:26:37,289 はっ 275 00:26:37,289 --> 00:26:40,359 おお これは名馬 青海波 276 00:26:40,359 --> 00:26:44,997 秀衡 かねて今日あるを思い 277 00:26:44,997 --> 00:26:48,066 君のご用に備えんものと 278 00:26:48,066 --> 00:26:53,605 奥羽の駿馬 数ある中より これを選んで育ておきました 279 00:26:53,605 --> 00:26:55,674 君 これに召さば 280 00:26:55,674 --> 00:26:59,745 いかなる奔流を渡らんにも 鞍を濡らさず 281 00:26:59,745 --> 00:27:05,484 いかなる峻険を越さんにも 三足の躊躇はつかまつるまじ 282 00:27:05,484 --> 00:27:10,489 君 敵に向かわん時は必ずこの馬に 283 00:27:10,489 --> 00:27:13,959 かたじけのう存ずる 本来ならば秀衡 284 00:27:13,959 --> 00:27:17,029 君の御共つかまつって 唐天竺の果てまで 285 00:27:17,029 --> 00:27:20,265 従いたしとは存ずれど 286 00:27:20,265 --> 00:27:25,671 老齢すでに物の役には 相立ちかねまする 287 00:27:25,671 --> 00:27:29,875 されば これなる三郎継信 288 00:27:29,875 --> 00:27:32,911 すでに御共へ差し上げたる 忠信の兄 289 00:27:32,911 --> 00:27:35,747 秀衡が妹の生める者 290 00:27:35,747 --> 00:27:40,485 志 腕ばし いささかのお足しに なろうと存じ 291 00:27:40,485 --> 00:27:44,022 当人の切なる頼みも ござりますれば 292 00:27:44,022 --> 00:27:46,325 その郎党と共に 293 00:27:46,325 --> 00:27:50,162 秀衡の代わりと思し召して お連れくだされたく 294 00:27:50,162 --> 00:27:53,662 ひたすらお願いたてまつりまする 295 00:27:57,869 --> 00:28:00,969 さらば お召しを 296 00:28:03,308 --> 00:28:05,408 武蔵坊 はい 297 00:28:10,882 --> 00:28:13,218 この入道が取り越し苦労 298 00:28:13,218 --> 00:28:16,822 万一にも山の彼方で生じなば そのほう 299 00:28:16,822 --> 00:28:20,258 七度 生き返っても 御曹司の命を守り 300 00:28:20,258 --> 00:28:23,462 この秀衡の元へ お連れ申すのじゃぞ 301 00:28:23,462 --> 00:28:27,162 誓え 弓矢八幡 ご照覧あれ 302 00:28:34,339 --> 00:28:36,639 行け はい 303 00:28:41,146 --> 00:28:45,751 一統 君のため祝え! はっ! 304 00:28:45,751 --> 00:28:50,722 えいえい おー! 305 00:28:50,722 --> 00:28:57,362 えいえい おー! えいえい おー! 306 00:28:57,362 --> 00:29:01,466 入道殿 天下 源氏の旗の下に 鎮まらば 307 00:29:01,466 --> 00:29:03,568 義経 必ず兄頼朝と打ち連れて 308 00:29:03,568 --> 00:29:07,168 入道殿にこうむりたる 海山のご恩のお礼に参ろうぞ 309 00:29:09,174 --> 00:29:12,010 何とぞご息災にて 310 00:29:12,010 --> 00:29:14,613 必ず… 311 00:29:14,613 --> 00:29:18,817 必ずお待ち申しておりまする 312 00:29:18,817 --> 00:29:22,554 万一の時 平泉をお忘れあそばすな 313 00:29:22,554 --> 00:29:26,691 入道 奥州にあって君を待つこと 314 00:29:26,691 --> 00:29:29,694 きっとお忘れあそばすなよ 315 00:29:29,694 --> 00:29:31,830 うん 316 00:29:31,830 --> 00:29:34,030 さらば これにて 317 00:29:38,336 --> 00:29:40,936 いま一度 お顔を! 318 00:29:46,645 --> 00:29:48,745 未練とお笑いくだされ 319 00:29:55,153 --> 00:29:57,653 御曹司 入道殿 320 00:30:02,961 --> 00:30:05,330 東海西海の土産 321 00:30:05,330 --> 00:30:09,501 山と積んで 必ず戻ってまいりまするぞ 322 00:30:09,501 --> 00:30:12,304 忠衡 白河までは藤原が領土 323 00:30:12,304 --> 00:30:15,304 父に代わってご守護つかまつれ はっ 324 00:30:27,152 --> 00:30:29,152 御曹司 325 00:30:31,156 --> 00:30:35,393 必ずお帰りくだされよ 326 00:30:35,393 --> 00:30:37,393 必ず 327 00:31:38,857 --> 00:31:43,795 源家の総大将 右兵衛佐頼朝殿の ご消息 聞きおらぬか? 328 00:31:43,795 --> 00:31:47,399 へ… へい あの 人の噂では 何でも10日ほど前に 329 00:31:47,399 --> 00:31:50,202 軍勢を連れて 足柄を越えられたとか へい 330 00:31:50,202 --> 00:31:53,038 何?軍勢を連れて? 331 00:31:53,038 --> 00:31:55,038 行こう はっ 332 00:32:06,818 --> 00:32:08,920 右兵衛佐殿の軍勢は? 333 00:32:08,920 --> 00:32:11,056 富士川を挟んで平家の大軍と 334 00:32:11,056 --> 00:32:13,191 にらみ合っていなさるという 噂じゃが 335 00:32:13,191 --> 00:32:16,661 もう大合戦が 始まってるかもしれませんぞ 336 00:32:16,661 --> 00:32:18,661 急げ! 337 00:32:32,644 --> 00:32:34,813 あれは何じゃ? おお かがり火じゃ 338 00:32:34,813 --> 00:32:37,215 あれは陣営の火だ するとこれは富士川か 339 00:32:37,215 --> 00:32:39,818 何を言う これは黄瀬川じゃ 340 00:32:39,818 --> 00:32:42,118 まずもって 土狩の里の辺りと見受けるが 341 00:32:44,789 --> 00:32:47,659 待て あれはいずれ方の陣か? 342 00:32:47,659 --> 00:32:52,230 へい 源氏の御大将 頼朝様のご陣営にございます 343 00:32:52,230 --> 00:32:54,232 何?兄者のご陣? 344 00:32:54,232 --> 00:32:56,768 昨夜 富士川において 平家の大軍をお破りになり 345 00:32:56,768 --> 00:33:00,939 軍勢をまとめて あれなる黄瀬川の 駅にお泊まりと承りまする 346 00:33:00,939 --> 00:33:03,539 すりゃ 富士川の戦にも遅れたか 347 00:33:24,462 --> 00:33:26,865 何者だ? 348 00:33:26,865 --> 00:33:29,467 右兵衛佐殿のご陣屋はいずれか? 349 00:33:29,467 --> 00:33:32,667 何奴だ?名を名乗れ 控えおらぬか 350 00:33:38,710 --> 00:33:42,480 かりそめにも無礼を働かば 容赦はせぬぞ 351 00:33:42,480 --> 00:33:44,549 こなたを何人にましますと 心得おるか 352 00:33:44,549 --> 00:33:46,949 騒々しい 静まりおらぬか 353 00:33:48,987 --> 00:33:53,291 今宵 陣屋の警ら大将を勤むる 梶原平三景時に 354 00:33:53,291 --> 00:33:55,660 馬上の挨拶 無礼であろう 355 00:33:55,660 --> 00:33:57,829 源家の公達 九郎義経公 356 00:33:57,829 --> 00:34:00,098 御兄君 頼朝公に お目通りつかまつるべく 357 00:34:00,098 --> 00:34:05,070 ご本陣へまかり通るのじゃ 無礼呼ばわりこそ笑止の至り 358 00:34:05,070 --> 00:34:08,573 また出てきおったわい 佐殿ご盛運と聞くや 359 00:34:08,573 --> 00:34:13,211 親類じゃ縁者だと申す者どもが 雨後の竹の子と出てきさらす 360 00:34:13,211 --> 00:34:16,381 一敗地にまみれた石橋山の戦いは 元より 361 00:34:16,381 --> 00:34:18,383 このたびの富士川の合戦にも 362 00:34:18,383 --> 00:34:22,754 鳴りを潜めて逼塞していた 命惜しみの臆病めらがのう 363 00:34:22,754 --> 00:34:24,954 我が君を臆病者とか! 364 00:34:29,661 --> 00:34:34,466 我が君 九郎義経公 僻遠の地 奥州平泉にあり 365 00:34:34,466 --> 00:34:39,604 御兄君の旗揚げを知るや 夜を日に継いで はせ参じたる次第 366 00:34:39,604 --> 00:34:42,507 右兵衛佐様にお取り次ぎ願いたい くどい! 367 00:34:42,507 --> 00:34:45,076 いずれは佐殿に 「さようの者は知らん」と 368 00:34:45,076 --> 00:34:49,047 追い返されるは必定 どこの馬の骨とも分からん者に 369 00:34:49,047 --> 00:34:52,250 いちいち かかずろう手間暇は 当方は持ち合わせておらんわ 370 00:34:52,250 --> 00:34:54,650 ええい 言葉が過ぎるぞ! 371 00:35:00,992 --> 00:35:03,962 畠山重忠にござりまする 372 00:35:03,962 --> 00:35:07,399 騒々しき争い声 何事じゃ? 373 00:35:07,399 --> 00:35:09,567 恐れ入りまする 374 00:35:09,567 --> 00:35:12,971 実は源家ご一門 九郎義経と 称する者 375 00:35:12,971 --> 00:35:15,473 君に拝謁たまわりたしと 376 00:35:15,473 --> 00:35:18,576 また一門か 377 00:35:18,576 --> 00:35:21,846 さような者に覚えはない 追い返せ 378 00:35:21,846 --> 00:35:24,449 はっ あっ 待て 379 00:35:24,449 --> 00:35:26,549 はっ 380 00:35:31,556 --> 00:35:33,658 どのような者じゃ? 381 00:35:33,658 --> 00:35:37,061 年の頃 二十歳前後 わずかの郎党を従え 382 00:35:37,061 --> 00:35:39,761 長き旅路の果てと思しく 383 00:35:43,101 --> 00:35:45,601 九郎と申したのう? はい 384 00:35:47,806 --> 00:35:51,743 あるいは牛若のことかもしれん 385 00:35:51,743 --> 00:35:55,443 秀衡を頼って みちのくへ逃れたと 噂には聞いたが 386 00:35:57,515 --> 00:36:01,315 このたびの旗揚げを知って はせ参ったのでは? 387 00:36:06,257 --> 00:36:11,863 弁慶 お目通りは またのよき日を待とうぞ 388 00:36:11,863 --> 00:36:13,863 しかし 殿 389 00:36:18,903 --> 00:36:21,372 (笑い声) 390 00:36:21,372 --> 00:36:23,408 しばらく しばらく 391 00:36:23,408 --> 00:36:25,908 しばらくお待ちくだされ 392 00:36:28,213 --> 00:36:32,684 これは牛若君にましまさずやと 御大将のお尋ねにござりまする 393 00:36:32,684 --> 00:36:35,553 いかにも 幼名 牛若丸 394 00:36:35,553 --> 00:36:39,357 それを承って欣快至極に 存じたてまつりまする 395 00:36:39,357 --> 00:36:45,129 御兄 右兵衛佐様 「牛若ならば すぐ連れ参れ」と御諚あって 396 00:36:45,129 --> 00:36:48,366 すりゃ兄者には この九郎がこと 覚えあって? 397 00:36:48,366 --> 00:36:51,266 ご対面 お待ちかねでござりまする 398 00:36:53,938 --> 00:36:56,038 殿 399 00:37:03,648 --> 00:37:07,185 おめでとうござりまする 400 00:37:07,185 --> 00:37:09,185 殿 401 00:37:11,689 --> 00:37:16,589 郎党衆 2名を限りご対面の席 侍座 差し許されまするぞ 402 00:37:20,131 --> 00:37:24,836 畠山庄司重忠 ご先導つかまつりまする 403 00:37:24,836 --> 00:37:26,836 いざ 404 00:37:55,600 --> 00:37:59,500 顔を… 顔を見せい 405 00:38:18,690 --> 00:38:20,790 牛若か 406 00:38:23,661 --> 00:38:25,861 兄者か 407 00:38:29,400 --> 00:38:34,005 牛若 兄者 408 00:38:34,005 --> 00:38:36,105 これへ来い 409 00:38:38,309 --> 00:38:40,309 これへ 410 00:38:42,380 --> 00:38:44,382 ご免 411 00:38:44,382 --> 00:38:46,382 (義経の泣き声) 412 00:38:51,155 --> 00:38:54,726 牛若 413 00:38:54,726 --> 00:38:56,726 よう来てくれた 414 00:38:59,864 --> 00:39:02,064 よう来てくれたぞ 415 00:39:17,281 --> 00:39:19,450 継信 416 00:39:19,450 --> 00:39:22,387 この対面の模様 417 00:39:22,387 --> 00:39:25,087 入道様にお知らせせいでは 気が済まぬ 418 00:39:27,425 --> 00:39:29,725 今宵にも平泉へ使いを 419 00:39:59,457 --> 00:40:02,827 九郎義経と申したな? 420 00:40:02,827 --> 00:40:06,931 元服は秀衡の元で済ませたのか? 421 00:40:06,931 --> 00:40:09,200 鞍馬を逃れ 422 00:40:09,200 --> 00:40:12,370 前髪のまま追っ手にかかるは 無念と存じ 423 00:40:12,370 --> 00:40:14,372 近江の宿にて つかまつりましてござりまする 424 00:40:14,372 --> 00:40:16,572 何?近江? 425 00:40:18,810 --> 00:40:22,410 して 烏帽子親はどなたに? 426 00:40:28,853 --> 00:40:34,192 すりゃ そのほう 烏帽子親もなしにか? 427 00:40:34,192 --> 00:40:40,692 我が手にて前髪を落とし 我が口にて源九郎義経と 428 00:40:46,237 --> 00:40:49,774 いたいけなき子供のそなたへ 429 00:40:49,774 --> 00:40:53,674 そのような哀れをかけたは この兄の咎 430 00:40:55,880 --> 00:40:59,517 許してくれよ 兄者 何を申されます 431 00:40:59,517 --> 00:41:03,054 兄者がなめられた 艱難辛苦に比べれば 432 00:41:03,054 --> 00:41:05,354 この義経の苦労など… 433 00:41:09,594 --> 00:41:15,566 だがもう 全ては昔語りぞ 434 00:41:15,566 --> 00:41:20,738 兄弟ここに相会うて 手を取れば何の辛苦 435 00:41:20,738 --> 00:41:23,838 何の苦労ぞ のう? 436 00:41:25,777 --> 00:41:28,746 相携えて今は亡き 437 00:41:28,746 --> 00:41:32,446 父上のお恨みを 晴らす一途あるのみじゃ 438 00:41:34,418 --> 00:41:37,355 義経は ただひたすら 439 00:41:37,355 --> 00:41:43,227 兄上のそのお言葉を承るを 命のめどに生きてまいりました 440 00:41:43,227 --> 00:41:45,463 以後 義経は 兄上の手となり足となり 441 00:41:45,463 --> 00:41:47,465 いや しもべとなってなりと 442 00:41:47,465 --> 00:41:51,265 粉骨のご奉公いたすが 我が幸せにござりまする 443 00:41:58,109 --> 00:42:00,209 皆の者 444 00:42:03,848 --> 00:42:06,784 永保3年5月 445 00:42:06,784 --> 00:42:09,086 曽祖 陸奥守義家公 みちのくにあって 446 00:42:09,086 --> 00:42:13,624 清原と立ち向かい難戦あそばさる 447 00:42:13,624 --> 00:42:16,928 弟 義光公 京にあって この報を聞くや 448 00:42:16,928 --> 00:42:22,633 ただちに警護当官の職を なげうって みちのくに赴きたもう 449 00:42:22,633 --> 00:42:26,337 義家公 弟君をかき抱き 450 00:42:26,337 --> 00:42:30,308 亡き父上に会うたる心地ぞと 申され 451 00:42:30,308 --> 00:42:33,077 感涙にむせびたもう 452 00:42:33,077 --> 00:42:35,346 ために征夷軍 士気 大いに上がり 453 00:42:35,346 --> 00:42:39,016 賊 たちまちにして 平定されたりという 454 00:42:39,016 --> 00:42:44,288 あたかも その佳例に似たる 今宵の頼朝 義経のこの対面 455 00:42:44,288 --> 00:42:48,392 我らのこの喜び いかで皆に分かたいでおこうや 456 00:42:48,392 --> 00:42:50,561 酒を持て 457 00:42:50,561 --> 00:42:53,097 折からの名月を仰ぎながら 458 00:42:53,097 --> 00:42:56,697 今宵は心ゆくばかり 歓を尽くそうぞ 459 00:44:34,632 --> 00:44:38,669 あっ 敵襲だ!出あえ!出あえ! 460 00:44:38,669 --> 00:44:40,669 出あえ! 461 00:45:04,495 --> 00:45:07,798 馬の足の届かんまでは 手綱をくれて泳がれよ 462 00:45:07,798 --> 00:45:10,001 馬の足 はずまば弓手の手綱を 指しくつろげ 463 00:45:10,001 --> 00:45:12,570 馬手の手綱をちと縮めよ 464 00:45:12,570 --> 00:45:15,270 尾口沈まば前輪にすがれ! 465 00:45:25,316 --> 00:45:30,921 近江国の住人 佐々木四郎高綱 宇治川の先陣を渡したり! 466 00:45:30,921 --> 00:45:36,321 橋桁の先陣渡しは武蔵国の住人 平山武者所季重! 467 00:46:24,842 --> 00:46:27,142 どけっ!どけ! 468 00:46:40,491 --> 00:46:42,891 おお!どけ 469 00:47:20,965 --> 00:47:22,965 あっ 470 00:47:29,173 --> 00:47:32,710 何を召さる 梶原の手の者でござるぞ 471 00:47:32,710 --> 00:47:36,046 重忠 はっ 何か? 472 00:47:36,046 --> 00:47:38,516 そのほう これより都大路を警らし 473 00:47:38,516 --> 00:47:41,352 かかる非行ある者どもは 義経股肱の臣たりとて 474 00:47:41,352 --> 00:47:44,922 容赦あらせず斬って捨てい 軍紀を厳しく正すのじゃ 475 00:47:44,922 --> 00:47:47,122 申しつけたぞ はっ 476 00:48:14,485 --> 00:48:16,785 それにあるは何者ぞ? 477 00:48:19,223 --> 00:48:21,759 これは木曽義仲追討の院宣を 賜りたる 478 00:48:21,759 --> 00:48:25,296 右兵衛佐源頼朝の末弟 九郎義経 479 00:48:25,296 --> 00:48:28,766 今暁 宇治川に木曽勢を破り 頼朝の命に従って 480 00:48:28,766 --> 00:48:32,036 まず御所ご警護のために 駆け参じたる者にござりまする 481 00:48:32,036 --> 00:48:34,838 殊勝の御事 しばしそれに御座あって 482 00:48:34,838 --> 00:48:37,538 院のご沙汰を御待ち候え 483 00:48:40,611 --> 00:48:44,281 高綱 季重 484 00:48:44,281 --> 00:48:46,917 そのほうども 本日の先陣の功にめで 485 00:48:46,917 --> 00:48:48,919 御所のご警護 申しつけようぞ はっ 486 00:48:48,919 --> 00:48:51,889 家門の面目 これに過ぎたるはござりませぬ 487 00:48:51,889 --> 00:48:54,389 それ! おう! 488 00:49:06,370 --> 00:49:10,274 このたびの抜群の働き 奏上に及びしところ 489 00:49:10,274 --> 00:49:13,110 院には殊の外の御感 490 00:49:13,110 --> 00:49:18,415 総大将たる義経に 拝謁賜るべしとの御諚あり 491 00:49:18,415 --> 00:49:23,654 大蔵卿 高階泰経 ご嚮導つかまつる 492 00:49:23,654 --> 00:49:28,359 叡慮 ただかたじけなく 義経 感佩の極みにござりますれど 493 00:49:28,359 --> 00:49:32,696 義経は搦め手の将 総大将は兄 範頼にござります 494 00:49:32,696 --> 00:49:34,698 瀬田の大手を打ち破り 程なくこれに 495 00:49:34,698 --> 00:49:36,900 参着つかまつりましょうなれば 496 00:49:36,900 --> 00:49:40,704 ご拝謁の栄誉は まず兄 範頼に 497 00:49:40,704 --> 00:49:43,874 院にはすでにご出御 おおせいだされたもう 498 00:49:43,874 --> 00:49:45,874 この御儀 待てとか? 499 00:50:15,973 --> 00:50:20,177 九郎殿には このたび 院に拝謁を賜り 500 00:50:20,177 --> 00:50:23,814 殊の外の御感を得られたと 聞き及びまする 501 00:50:23,814 --> 00:50:27,117 朝廷への忠勤は もっとものことながら 502 00:50:27,117 --> 00:50:32,323 武家を己の番犬のごとく心得る 都の公家どもに 503 00:50:32,323 --> 00:50:35,659 九郎殿が利用されることは? 504 00:50:35,659 --> 00:50:38,796 平氏を倒し 再び武家を己の下位に 505 00:50:38,796 --> 00:50:41,165 引きずり下ろさんとする 公家どもを 506 00:50:41,165 --> 00:50:43,767 何としても抑えねばなりませぬ 507 00:50:43,767 --> 00:50:47,638 彼らに殿のご威光を 知らしめることは 508 00:50:47,638 --> 00:50:52,376 鎌倉幕府確立のためにも… 広元 509 00:50:52,376 --> 00:50:55,776 まださようなことを 口にすべき時ではあるまい 510 00:50:58,482 --> 00:51:00,884 目指すは平家 511 00:51:00,884 --> 00:51:03,987 全ては平家を 倒してからのことじゃ 512 00:51:03,987 --> 00:51:06,724 はい 我ら東国の精鋭 513 00:51:06,724 --> 00:51:11,128 一万数千と誇称するも その実数 三千数百に満たず 514 00:51:11,128 --> 00:51:13,764 数万の兵を擁する福原の要害を 515 00:51:13,764 --> 00:51:17,401 今直ちに襲うなど 無謀に等しきこと 516 00:51:17,401 --> 00:51:19,803 無謀と申すか? いかにも 517 00:51:19,803 --> 00:51:24,341 たとえ九郎殿のお言葉なりとも 戦奉行としては承服しがたい 518 00:51:24,341 --> 00:51:26,677 ひとまず陣容の立て直しを図り 519 00:51:26,677 --> 00:51:29,012 鎌倉よりのお指図を 待ったのちに… 520 00:51:29,012 --> 00:51:31,281 景時 521 00:51:31,281 --> 00:51:34,918 時機を失しては戦に勝てぬ 522 00:51:34,918 --> 00:51:38,622 兄上 何とぞ我らに 500の兵をたまえ 523 00:51:38,622 --> 00:51:42,092 義経 直ちに丹波路より長駆 福原の背後に回り 524 00:51:42,092 --> 00:51:45,529 暁暗を利して一気に敵陣に 突入いたしますれば 525 00:51:45,529 --> 00:51:49,199 兄上は主力を率いて正面より 我らに呼応くださるよう 526 00:51:49,199 --> 00:51:52,136 何とぞ しばらく! 527 00:51:52,136 --> 00:51:56,607 今 京都を発して明け方までに 福原に達することさえ至難なるに 528 00:51:56,607 --> 00:52:00,411 ましてその背後を突こうなど 到底 考えられませぬ 529 00:52:00,411 --> 00:52:04,415 よしんばたどり着けたとしても その疲労困憊の兵馬をもって 530 00:52:04,415 --> 00:52:08,152 敵陣突入はできますまい 531 00:52:08,152 --> 00:52:13,290 兄上 味方の勝利 疑いなしと存じます 532 00:52:13,290 --> 00:52:15,959 味方の戦奉行が叶わぬと断ずる この方策 533 00:52:15,959 --> 00:52:18,729 敵が予知しようはずも ありますまい 534 00:52:18,729 --> 00:52:21,632 寡をもって衆を頼む要害を 攻めるには 535 00:52:21,632 --> 00:52:26,032 人ができぬと決めていることを やり遂げる以外 道はありません 536 00:52:46,457 --> 00:52:48,757 殿 土地の子供を 連れてまいりました 537 00:52:50,828 --> 00:52:52,963 鷲尾村の三郎といいますだ 538 00:52:52,963 --> 00:52:55,232 平家の陣を見下ろせる所に 案内してくれ 539 00:52:55,232 --> 00:52:58,335 それなら鵯越だ こっちのほうが近道だが 540 00:52:58,335 --> 00:53:01,135 馬の足を痛めるから 下りたほうがいいだ 541 00:53:35,138 --> 00:53:38,041 この崖は鹿は通らぬか? 鹿なら通ります 542 00:53:38,041 --> 00:53:42,241 寒くなれば丹波の鹿が この崖を通って播磨に行きますだ 543 00:53:47,184 --> 00:53:49,186 鹿も四つ足 馬も四つ足 544 00:53:49,186 --> 00:53:51,989 西国の馬は知らず 東国の馬にとって鹿の通る所は 545 00:53:51,989 --> 00:53:56,089 馬場同然 義経が馬の立て様を本とせよ 546 00:54:06,136 --> 00:54:08,236 いざ下せ! 547 00:54:41,872 --> 00:54:44,472 敵襲だ!出あえ!出あえ! 548 00:54:55,953 --> 00:55:01,625 宇治川の合戦 福原館の襲撃 いずれも確かに味方の大勝利 549 00:55:01,625 --> 00:55:06,630 しかしながら1つ間違えば 双方とも無残な敗戦は必定という 550 00:55:06,630 --> 00:55:09,933 思えば身の毛のよだつ 危ない綱渡りじゃった 551 00:55:09,933 --> 00:55:14,771 不意討ち つまりはだまし討ちを 事とする九郎殿の戦法は 552 00:55:14,771 --> 00:55:18,442 堂々たる王者の戦いを望む 我らから見れば 553 00:55:18,442 --> 00:55:21,979 何やら夜盗野伏の卑しさが うかがわれ 554 00:55:21,979 --> 00:55:25,315 甚だもって 後味の悪い思いでござる 555 00:55:25,315 --> 00:55:28,151 しかし九郎殿があれほどまで 556 00:55:28,151 --> 00:55:31,688 離れ業戦法に固執する訳が 分かり申した 557 00:55:31,688 --> 00:55:35,425 己を花形人気者にするには あの手に限り申す 558 00:55:35,425 --> 00:55:40,697 その策 まんまと図に当たって 九郎殿は今や洛中洛外の大立者 559 00:55:40,697 --> 00:55:46,370 京童は源氏に義経あるを知って 頼朝殿あるを知らずという 560 00:55:46,370 --> 00:55:50,240 そうともそうとも こうして 結構な花見ができるのも 561 00:55:50,240 --> 00:55:52,776 ひとえに義経様の おかげというものじゃ 562 00:55:52,776 --> 00:55:55,545 もし平家の軍勢が 都へ攻め込んでいたら 563 00:55:55,545 --> 00:55:57,981 今頃は一面の焼け野原じゃ 564 00:55:57,981 --> 00:56:01,451 なあ この頃 都で 流行っている落首を聞いたか? 565 00:56:01,451 --> 00:56:03,553 何とじゃ? 「一ノ谷」 566 00:56:03,553 --> 00:56:06,323 「平家の鵯 火にあぶり」 567 00:56:06,323 --> 00:56:09,026 「ただ一口に九郎義経」じゃ 568 00:56:09,026 --> 00:56:14,264 何々?「一ノ谷 平家の鵯 火にあぶり」 569 00:56:14,264 --> 00:56:17,401 「ただ一口に九郎義経」か 570 00:56:17,401 --> 00:56:20,037 まったく殿の評判は たいしたものだ 571 00:56:20,037 --> 00:56:23,537 おかげで我々も洛中 どこへ行っても大事にされるわ 572 00:56:26,476 --> 00:56:28,578 兄者 どうしたのだ? 573 00:56:28,578 --> 00:56:30,714 花見だというのに その浮かぬ顔は? 574 00:56:30,714 --> 00:56:34,584 ん?うん… 実は 575 00:56:34,584 --> 00:56:37,988 殿のご評判があまりに高いのが 気になってな 576 00:56:37,988 --> 00:56:42,793 とはまた なぜに? 平泉を出る時に入道殿が 577 00:56:42,793 --> 00:56:46,797 「殿のご評判が高くなった時に 気をつけるのじゃ」 578 00:56:46,797 --> 00:56:50,434 …と仰せじゃったで 579 00:56:50,434 --> 00:56:52,903 おい みんな! みんな 聞いてくれ! 580 00:56:52,903 --> 00:56:55,806 今日 鎌倉殿より このたびの功労に対し朝廷に 581 00:56:55,806 --> 00:56:58,341 範頼公は三河守 広綱殿は駿河守 582 00:56:58,341 --> 00:57:01,178 義信殿は武蔵守に 任官奏請があったが 583 00:57:01,178 --> 00:57:04,114 武勲にかけてはこれらの人々と 天地の隔たりある我が殿に 584 00:57:04,114 --> 00:57:06,850 関しては 全くこれを 除外されたとは 585 00:57:06,850 --> 00:57:10,587 こはそも いかなることじゃ そりゃ誠か? 586 00:57:10,587 --> 00:57:13,590 朝廷においても諸卿等しく 587 00:57:13,590 --> 00:57:17,594 この論功行賞奏請は 不可解なりと断ぜられた 588 00:57:17,594 --> 00:57:22,232 いわく 頼朝 側近のそしりに惑わされて 589 00:57:22,232 --> 00:57:25,068 義経を疎んずるに至ったものか 590 00:57:25,068 --> 00:57:28,472 その儀 構えてありようはずも ござりません 591 00:57:28,472 --> 00:57:31,541 梶原平三景時なる者 592 00:57:31,541 --> 00:57:34,311 そこもとに何か含むことあってか 593 00:57:34,311 --> 00:57:37,948 鎌倉において 讒訴を事といたしおるとの噂 594 00:57:37,948 --> 00:57:43,019 朝臣 頼朝は義経の 血を分けた兄にござりまする 595 00:57:43,019 --> 00:57:45,922 身内を褒むるは 心苦しきに似たれど 596 00:57:45,922 --> 00:57:50,393 讒訴に耳を奪われるごとき 器量の者とは思いませぬ 597 00:57:50,393 --> 00:57:52,696 お心ばえ 598 00:57:52,696 --> 00:57:56,696 泰経 顧みて 我と我が心が恥ずかしゅうござる 599 00:57:59,002 --> 00:58:01,204 九郎殿 600 00:58:01,204 --> 00:58:04,541 近々 そこもとにも 任官のご沙汰あるはず 601 00:58:04,541 --> 00:58:08,741 しからば兄頼朝より またの奏請が? 602 00:58:17,788 --> 00:58:22,292 兄頼朝の奏請なき限り 義経 603 00:58:22,292 --> 00:58:24,594 恐れながら任官の儀は 固くご辞退… 604 00:58:24,594 --> 00:58:26,794 控えい 義経 605 00:58:28,799 --> 00:58:32,135 除目はこれ 恐れ多くも 院 発せられたもう 606 00:58:32,135 --> 00:58:36,540 あに 一武弁 頼朝に 左右せらるるものならんや 607 00:58:36,540 --> 00:58:40,477 このたびのそこもとの武勲 院深く よみしたもう 608 00:58:40,477 --> 00:58:45,582 一片の私情において これを 辞するは臣の道にあらずと存ずる 609 00:58:45,582 --> 00:58:47,782 義経 いかに 610 00:58:53,557 --> 00:58:58,195 頼朝の奏請のみをもって これを行うは 611 00:58:58,195 --> 00:59:00,430 朝廷のご威儀を 612 00:59:00,430 --> 00:59:04,668 傷つくるものなりと 思し召さぬか? 613 00:59:04,668 --> 00:59:06,803 恐れ入りたてまつりまする 614 00:59:06,803 --> 00:59:09,372 それに受領なくして 615 00:59:09,372 --> 00:59:13,572 そこもと 忠義のご郎党に いかに報いなされるのじゃ? 616 00:59:16,112 --> 00:59:19,716 鎌倉よりの奏請に漏れたりとて 617 00:59:19,716 --> 00:59:22,686 義経 いささかの無念も ござりませぬ 618 00:59:22,686 --> 00:59:26,022 ただ郎党のことを思えば 619 00:59:26,022 --> 00:59:28,625 彼らには… 620 00:59:28,625 --> 00:59:31,728 彼らにだけは 報いてやりとうござりました 621 00:59:31,728 --> 00:59:35,232 義経殿 殿の奏請を待たずして 622 00:59:35,232 --> 00:59:38,735 検非違使左衛門尉に 任官されしことは 623 00:59:38,735 --> 00:59:42,839 元より かの君の存意とは 思われませぬ 624 00:59:42,839 --> 00:59:46,643 院とその側近 大蔵卿泰経の 625 00:59:46,643 --> 00:59:50,280 しいての取り計らいと 察せられまする 626 00:59:50,280 --> 00:59:54,618 義経殿 このたびの大功は 万人の認めるところ 627 00:59:54,618 --> 01:00:00,457 それを殿の意に反し あえて任官奏請より除きしは 628 01:00:00,457 --> 01:00:03,326 この広元にござりまする 629 01:00:03,326 --> 01:00:07,497 都の公家どもが 鎌倉牽制のための力とするは 630 01:00:07,497 --> 01:00:09,966 かの君をおいて 他にはござりませぬ 631 01:00:09,966 --> 01:00:14,170 したがって今 都の人気を 沸き立たせている 632 01:00:14,170 --> 01:00:18,375 義経殿が力を これ以上 強めますることは 633 01:00:18,375 --> 01:00:23,975 殿の大業達成を阻む危険ありと 認めしゆえにござりまする 634 01:00:29,019 --> 01:00:32,355 大義 親を滅す 635 01:00:32,355 --> 01:00:37,260 九郎殿へのお心遣い 拝察するに余りありますれども 636 01:00:37,260 --> 01:00:41,260 鎌倉幕府百年の大計のためには… 637 01:01:29,846 --> 01:01:33,416 あれが静じゃ ご存じないか? 638 01:01:33,416 --> 01:01:36,152 我ら至って無粋 639 01:01:36,152 --> 01:01:38,855 白拍子などという向きには とんと… 640 01:01:38,855 --> 01:01:42,559 今 洛中での流行り歌を 聞かれたことはないか? 641 01:01:42,559 --> 01:01:45,395 流行り歌? 642 01:01:45,395 --> 01:01:51,434 「人気随一 人問わば 女 静に男 義経」 643 01:01:51,434 --> 01:01:54,634 そのような歌 全くもって… 644 01:02:59,803 --> 01:03:01,803 静 645 01:03:12,482 --> 01:03:16,619 静 これに御座あるは… 646 01:03:16,619 --> 01:03:22,926 京に住まいする身で判官義経様を 知らぬ者とてござりませぬ 647 01:03:22,926 --> 01:03:26,729 義経様が都ご守護の任に お就きあそばして 648 01:03:26,729 --> 01:03:29,766 京の民は初めて安堵して その暮らしにつくことが 649 01:03:29,766 --> 01:03:31,901 できたのでござりまする 650 01:03:31,901 --> 01:03:35,038 殊にわたくしどもは すでに危ういところを 651 01:03:35,038 --> 01:03:38,138 義経様にお助けいただきまして 652 01:03:42,512 --> 01:03:47,016 義経様が宇治川を破って 都入りをなされたあの日 653 01:03:47,016 --> 01:03:50,019 おお 梶原の手の者が白拍子に 654 01:03:50,019 --> 01:03:54,519 義経様御自ら不法者を お斬りになされました 655 01:03:57,760 --> 01:04:01,264 不意の推参 ご容赦 殿! 656 01:04:01,264 --> 01:04:05,635 平家追討の命が 鎌倉殿より範頼公に 657 01:04:05,635 --> 01:04:08,238 してこの義経は? 658 01:04:08,238 --> 01:04:11,875 「検非違使左衛門尉の御役目 拝する以上」 659 01:04:11,875 --> 01:04:15,775 「都にとどまって禁裏警護のお役を 続くるが当然たるべし」と 660 01:04:18,047 --> 01:04:20,250 殿 661 01:04:20,250 --> 01:04:24,454 殿のご任官が鎌倉殿には それほど… それほど… 662 01:04:24,454 --> 01:04:28,591 黙れ 控えおらぬか 663 01:04:28,591 --> 01:04:31,995 いずれも様 せっかくのご興をそぎ 664 01:04:31,995 --> 01:04:35,398 何の何の 梶原が讒訴には 665 01:04:35,398 --> 01:04:38,234 この白拍子どものせいも あろうとの今の話 666 01:04:38,234 --> 01:04:41,534 詫びはこの女どもより義経殿に 667 01:04:43,573 --> 01:04:48,778 いや 義経の誠が足らぬゆえに ござりまする 668 01:04:48,778 --> 01:04:54,617 静殿の今日の舞を見て 義経 それに思い至りました 669 01:04:54,617 --> 01:04:57,854 静殿は女ながらも その至誠 天に通じ 670 01:04:57,854 --> 01:05:01,454 ために八大竜王 御感あって 雨を恵ませたもう 671 01:05:04,360 --> 01:05:09,299 しかるに義経 男子と生まれきて 亡父の恨みを晴らさん 672 01:05:09,299 --> 01:05:12,799 ただそれのみを一期の悲願と せるにもかかわらず 673 01:05:15,004 --> 01:05:19,004 誠 至らずして 追討の軍より除外さる 674 01:05:23,513 --> 01:05:26,513 静殿の舞にも恥ずかしゅう 675 01:05:29,052 --> 01:05:31,054 恥ずかしゅう存じまする 676 01:05:31,054 --> 01:05:33,189 何を仰せられます 677 01:05:33,189 --> 01:05:38,561 静ごとき未熟の舞 天に通ずるなど おこがましき限り 678 01:05:38,561 --> 01:05:44,167 この雨は民百万の 祈りによるものでござりまする 679 01:05:44,167 --> 01:05:50,506 あなた様の誠は京の民誰一人 感ぜぬ者とてござりませぬ 680 01:05:50,506 --> 01:05:53,543 これこそ天に通ずる誠 681 01:05:53,543 --> 01:05:57,943 必ず… 必ず時 巡り来て… 682 01:06:03,086 --> 01:06:05,486 方々 ご免 683 01:06:51,467 --> 01:06:54,904 弁慶 はっ 684 01:06:54,904 --> 01:06:57,040 鎌倉へ参る 鎌倉へ? 685 01:06:57,040 --> 01:06:59,342 兄者にお詫びいたすのじゃ 686 01:06:59,342 --> 01:07:01,978 膝下にひれ伏し義経のふつつか 687 01:07:01,978 --> 01:07:04,414 どのようにもお裁きを 乞いたてまつるのじゃ 688 01:07:04,414 --> 01:07:08,314 事もおろか殿は鎌倉殿が それを許すと思うてか 689 01:07:11,220 --> 01:07:15,158 そのほうども この義経と共に あって いずれもはや十年 690 01:07:15,158 --> 01:07:19,095 この義経が何を目当てに 生きてきたか 何がこの身の支えか 691 01:07:19,095 --> 01:07:22,532 知らぬはずとてあるまい 692 01:07:22,532 --> 01:07:28,404 義経は亡き父上のご遺志を継ぎ 平家征討に一生を懸けし者 693 01:07:28,404 --> 01:07:32,904 この戦に加わらぬ義経は 生きながらの屍じゃ 694 01:08:14,617 --> 01:08:17,320 殿 四郎 695 01:08:17,320 --> 01:08:19,322 兄者のご沙汰は? 696 01:08:19,322 --> 01:08:22,722 改めてお使者あるまで 万福寺にて待てとの仰せ 697 01:09:22,218 --> 01:09:25,818 殿 長途のお疲れもただならず 698 01:09:27,957 --> 01:09:31,727 衣を替えて お休みあそばされては? 699 01:09:31,727 --> 01:09:35,064 兄者よりのご使者 いつ参ろうとも知れぬゆえ 700 01:09:35,064 --> 01:09:37,364 義経はこのままにて待つ 701 01:09:40,136 --> 01:09:43,236 そのほうどもこそ くつろいで休もうぞ 702 01:10:08,397 --> 01:10:10,466 殿 鎌倉殿のお使者として 703 01:10:10,466 --> 01:10:13,566 北条時政殿 ご参着にござりまするぞ 704 01:10:25,314 --> 01:10:28,814 頼朝公の御諚 お伝えつかまつる 705 01:10:31,087 --> 01:10:35,157 義経 検非違使左衛門尉の職にあり 706 01:10:35,157 --> 01:10:37,960 禁裏警護の大任を持ちながら 707 01:10:37,960 --> 01:10:41,898 気ままなるこのたびの下向 もっての外の振る舞い 708 01:10:41,898 --> 01:10:46,869 早々に都に立ち帰るべし 709 01:10:46,869 --> 01:10:49,369 すりゃ この義経… 710 01:10:55,111 --> 01:10:59,148 兄者様へのお目通りも 叶いませぬのか 711 01:10:59,148 --> 01:11:03,386 広元 余は九郎に会う 712 01:11:03,386 --> 01:11:05,588 会うぞ 713 01:11:05,588 --> 01:11:07,990 九郎が罪の懲らしめ 714 01:11:07,990 --> 01:11:13,429 さらにまた世上への見せしめも これまでにて十分じゃ 715 01:11:13,429 --> 01:11:16,365 九郎は兄に会いとうて 716 01:11:16,365 --> 01:11:21,537 兄の膝に伏してわびようと この鎌倉まで来たのじゃ 717 01:11:21,537 --> 01:11:24,974 余もその弟に会いたい 718 01:11:24,974 --> 01:11:27,977 会いたいのじゃ 殿 719 01:11:27,977 --> 01:11:30,146 この広元は元より 720 01:11:30,146 --> 01:11:33,749 殿の元にはせ参じたる 数万の強者どもを 721 01:11:33,749 --> 01:11:38,054 ただ平家を討伐 源家の恨みを晴らさんために 722 01:11:38,054 --> 01:11:41,290 命を懸けているのでは ござりません 723 01:11:41,290 --> 01:11:44,026 公家政治は安逸惰弱の果て 724 01:11:44,026 --> 01:11:47,997 今や国を滅ぼさんとまでに 立ち至っておりまする 725 01:11:47,997 --> 01:11:54,136 これに代わるに質実剛健 武断政治あるのみとの信念の下 726 01:11:54,136 --> 01:11:56,505 大器 頼朝公を押し頂き 727 01:11:56,505 --> 01:11:59,742 立ち上がった者どもに ござりまする 728 01:11:59,742 --> 01:12:05,147 元より広元 九郎義経殿に 含むべき何物もござりません 729 01:12:05,147 --> 01:12:10,720 ただ 我らが倒さねばならぬもの 知ると知らぬは論外 730 01:12:10,720 --> 01:12:16,359 これらの者どもに 利用されんとする九郎殿は… 731 01:12:16,359 --> 01:12:18,559 もうよい 言うな! 732 01:12:51,260 --> 01:12:53,760 兄上の奏請を待たで 733 01:12:55,798 --> 01:13:01,437 検非違使左衛門尉に 任官いたせるの儀 734 01:13:01,437 --> 01:13:04,937 元より義経の存意に候わず 735 01:13:06,942 --> 01:13:09,512 院の叡慮 736 01:13:09,512 --> 01:13:13,212 辞するに道なかりしのゆえに ござ候えども 737 01:13:16,619 --> 01:13:22,858 兄上のご叱責を賜り 義経のふつつか 738 01:13:22,858 --> 01:13:26,662 誠に胸にこたえ申し候 739 01:13:26,662 --> 01:13:28,964 義経 740 01:13:28,964 --> 01:13:34,970 このたび 非常の下向をあえて つかまつりしゆえんのものは 741 01:13:34,970 --> 01:13:41,170 兄上の膝下にひれ伏し 兄上のご打擲を受け ご叱責を賜り 742 01:13:46,082 --> 01:13:50,182 ひたすらお詫び致さん以外は 候わず 743 01:13:54,223 --> 01:13:59,562 しかるに お目通りも叶わぬとあるは 744 01:13:59,562 --> 01:14:05,262 はや骨肉同胞の儀も これなきとまでのご所存なるや 745 01:14:08,771 --> 01:14:10,871 義経の悲痛 746 01:14:12,975 --> 01:14:15,975 ここに極まり申し候 747 01:14:19,682 --> 01:14:22,251 この悲しみ 748 01:14:22,251 --> 01:14:26,251 亡き父上の尊霊に 訴えたてまつれど 749 01:14:28,457 --> 01:14:30,826 お声も候わず 750 01:14:30,826 --> 01:14:34,663 「かくて生き長らえんよりは お手討ちをこうむるにしかずと」 751 01:14:34,663 --> 01:14:36,863 「存じ候えども」 752 01:14:39,268 --> 01:14:45,007 「母の懐にして父上に死に別れ 兄上に生き別れ」 753 01:14:45,007 --> 01:14:48,544 「以降 諸国を流離」 754 01:14:48,544 --> 01:14:50,613 「もって今日に生き長らえしは」 755 01:14:50,613 --> 01:14:55,013 「黄瀬川の喜びの折に誓いし 平家追討の一事」 756 01:14:58,487 --> 01:15:00,687 「これ達せずしては義経」 757 01:15:02,691 --> 01:15:06,428 「死ぬにも死ねぬ思いにござ候」 758 01:15:06,428 --> 01:15:10,499 「元より一方の将たるを 望みませぬ」 759 01:15:10,499 --> 01:15:14,199 「義経股肱の郎党のみにて 立ち向かわん所存」 760 01:15:16,172 --> 01:15:18,974 「哀れ武士の情け」 761 01:15:18,974 --> 01:15:23,174 「平家追討軍の一端に 加えたまわらんこと」 762 01:15:25,514 --> 01:15:28,714 「伏して 伏して…」 763 01:15:48,571 --> 01:15:50,573 広元 764 01:15:50,573 --> 01:15:54,243 九郎よりの書状であろう 見せい 765 01:15:54,243 --> 01:15:56,512 なりませぬ 766 01:15:56,512 --> 01:16:00,015 これは広元へ宛てたる物に ござりまする 767 01:16:00,015 --> 01:16:02,184 広元 768 01:16:02,184 --> 01:16:05,020 この書状 お目にかけなば 769 01:16:05,020 --> 01:16:09,058 殿は九郎殿の後を追われるは必定 770 01:16:09,058 --> 01:16:11,694 何?後を追う? 771 01:16:11,694 --> 01:16:14,363 すりゃ そのほう 九郎を… 772 01:16:14,363 --> 01:16:16,365 御意 773 01:16:16,365 --> 01:16:21,270 広元 独断 「頼朝公の御諚なり」と 774 01:16:21,270 --> 01:16:26,775 すでに九郎殿を 退去いたさせましてござりまする 775 01:16:26,775 --> 01:16:28,875 おのれ! 776 01:16:32,948 --> 01:16:38,254 ご成敗 喜んで お受けつかまつりまする 777 01:16:38,254 --> 01:16:43,959 ただ願わくば 広元を斬ったる御手にて 778 01:16:43,959 --> 01:16:48,297 いつの日か九郎殿を… 779 01:16:48,297 --> 01:16:51,897 黙れ!黙れ黙れ!黙れ! 780 01:16:59,141 --> 01:17:01,841 九郎! 781 01:17:10,686 --> 01:17:12,886 九郎… 782 01:18:04,273 --> 01:18:06,573 く… 九郎… 783 01:18:35,537 --> 01:18:40,642 広元 直ちに九郎を呼び戻せ 784 01:18:40,642 --> 01:18:45,447 一大事出来 ただ今 安芸より 立ち帰りましたる急使によれば 785 01:18:45,447 --> 01:18:48,650 範頼殿の総軍 平家の逆襲により 786 01:18:48,650 --> 01:18:51,286 後続を断たれ孤立せりと 787 01:18:51,286 --> 01:18:55,024 何? 788 01:18:55,024 --> 01:19:01,230 愚鈍範頼 無策にして大事を誤る 789 01:19:01,230 --> 01:19:06,335 いずれにしても救援を 送らねばならぬと存じまするが 790 01:19:06,335 --> 01:19:08,404 誰を遣わす? 791 01:19:08,404 --> 01:19:13,709 この難局 九郎殿をおいて 他に人ありとも思われませぬ 792 01:19:13,709 --> 01:19:15,709 九郎? 793 01:19:17,813 --> 01:19:22,851 この期に及んで 九郎が それを引き受けると思うか? 794 01:19:22,851 --> 01:19:26,055 必ずお引き受けくださりまする 795 01:19:26,055 --> 01:19:33,162 広元自ら後を追い 直々 お願いいたす所存にござりまする 796 01:19:33,162 --> 01:19:36,965 おのれ それを正気で言うか? 797 01:19:36,965 --> 01:19:41,236 正気にござりまする 広元 798 01:19:41,236 --> 01:19:44,540 九郎があれほどまでの従軍の願い 799 01:19:44,540 --> 01:19:47,709 にべもなく断って追い返した 800 01:19:47,709 --> 01:19:51,213 その節 そのほうは何と申した? 801 01:19:51,213 --> 01:19:55,717 頼朝の許しなくして検非違使に 任官せるは置くとしても 802 01:19:55,717 --> 01:19:59,021 彼が平家追討にはせ参じ 大功を立てなば 803 01:19:59,021 --> 01:20:03,192 その声望は今の数倍たるべく 804 01:20:03,192 --> 01:20:08,197 かくしては幕府樹立の 大いなる障害として 必ず… 805 01:20:08,197 --> 01:20:12,734 必ず消滅せねば済まんことに 相なるであろうと 806 01:20:12,734 --> 01:20:15,234 その通りにござりまする 807 01:20:17,206 --> 01:20:20,209 這般の事情 808 01:20:20,209 --> 01:20:23,879 九郎が悟らずに済むと思うか? 809 01:20:23,879 --> 01:20:27,716 それとこれとは 別の途にござりまする 810 01:20:27,716 --> 01:20:30,752 広元 811 01:20:30,752 --> 01:20:33,752 九郎は頼朝の弟じゃぞ 812 01:20:35,757 --> 01:20:38,494 器量ばし 心ばし 813 01:20:38,494 --> 01:20:43,232 源家の血を伝えて 恥ずかしからぬ者として 814 01:20:43,232 --> 01:20:49,338 この頼朝が愛おしむ ただ一人の弟じゃぞ 815 01:20:49,338 --> 01:20:54,576 その弟を おのれは… 816 01:20:54,576 --> 01:20:59,176 おのれはそのようにして 殺せというのか? 817 01:21:15,697 --> 01:21:18,033 継信 818 01:21:18,033 --> 01:21:20,102 殿が今 何を考えておいであそばすか… 819 01:21:20,102 --> 01:21:25,207 分からいでか!この黄瀬川の宿は 820 01:21:25,207 --> 01:21:29,144 初めて兄君にお会いなされた所だ 821 01:21:29,144 --> 01:21:34,044 お主と一緒に うれし泣きに泣いたあの日… 822 01:21:36,718 --> 01:21:38,818 こんなことになろうとは 823 01:21:45,727 --> 01:21:48,427 この部屋で 初めてお会いした日の兄上 824 01:21:50,499 --> 01:21:53,499 分からん わしには分からん 825 01:22:02,578 --> 01:22:05,714 六郎 泣くな 826 01:22:05,714 --> 01:22:07,950 泣いておらん 827 01:22:07,950 --> 01:22:11,153 隠すな わしも我慢してるんだ 828 01:22:11,153 --> 01:22:13,822 貴様のことは知らんが 829 01:22:13,822 --> 01:22:15,822 俺は泣いておらん! 830 01:22:21,597 --> 01:22:25,133 殿 831 01:22:25,133 --> 01:22:27,833 組み打ち 所望いたす 832 01:22:40,616 --> 01:22:43,116 参れ ご免 833 01:23:26,094 --> 01:23:28,094 これでもか! 834 01:23:46,348 --> 01:23:49,184 殿 殿 835 01:23:49,184 --> 01:23:51,887 殿 六郎 泣くな 836 01:23:51,887 --> 01:23:53,889 泣くな 六郎! 837 01:23:53,889 --> 01:23:56,925 殿!ただ今 鎌倉より 大江広元殿が… 838 01:23:56,925 --> 01:23:59,925 何?因幡殿が? 839 01:24:13,842 --> 01:24:17,379 鎌倉より追い返されたる義経に 840 01:24:17,379 --> 01:24:20,782 今さら何の用ぞ? 841 01:24:20,782 --> 01:24:24,619 平家追討新手の大将を あなた様に 842 01:24:24,619 --> 01:24:28,957 何?この義経に? 843 01:24:28,957 --> 01:24:31,860 すりゃ兄者 我らの願いを? 844 01:24:31,860 --> 01:24:35,731 実を申せば先ほど 西国よりの急使あり 845 01:24:35,731 --> 01:24:37,899 平家の逆襲に背後を断たれ 846 01:24:37,899 --> 01:24:42,499 範頼殿の大手軍は 孤立無援との知らせがありました 847 01:24:48,243 --> 01:24:52,243 それでこの義経に… お受けくだされましょうや 848 01:24:54,316 --> 01:24:57,252 お受けいたすもいたさぬも ござるまい 849 01:24:57,252 --> 01:25:02,557 鎌倉殿の御命とあらば この義経 いかようのことたりとも 850 01:25:02,557 --> 01:25:08,063 鎌倉殿 聞こし召されなば いかようのお喜びか 851 01:25:08,063 --> 01:25:13,335 早速 播磨なる梶原景時 畠山重忠の軍を引き返し 852 01:25:13,335 --> 01:25:17,038 まずもって平家水軍の根拠地を 853 01:25:17,038 --> 01:25:21,009 かしこまり申した 854 01:25:21,009 --> 01:25:24,713 九郎殿 855 01:25:24,713 --> 01:25:28,316 心静めてお聞きくだされ 856 01:25:28,316 --> 01:25:32,954 鎌倉殿は九郎殿を誰にも増して 857 01:25:32,954 --> 01:25:37,054 真実 思うておられまするぞ 858 01:25:42,564 --> 01:25:46,535 源家の血を受け継いで 恥ずかしからぬ者 859 01:25:46,535 --> 01:25:50,806 頼朝が愛おしむただ一人の弟 860 01:25:50,806 --> 01:25:53,975 …と仰せあって 861 01:25:53,975 --> 01:26:00,749 全てはこの広元の裁量によって なされたことでござりまする 862 01:26:00,749 --> 01:26:04,119 範頼殿以下の任官を奏請し 863 01:26:04,119 --> 01:26:08,256 九郎殿を 故意に除外いたせしことも 864 01:26:08,256 --> 01:26:12,961 また はるばる鎌倉へ 下向の九郎殿と 865 01:26:12,961 --> 01:26:17,732 鎌倉殿のご対面を妨げしも この広元 866 01:26:17,732 --> 01:26:22,337 加えて 帝の信任あつき九郎殿は 867 01:26:22,337 --> 01:26:26,107 鎌倉幕府の存立を危うくするもの 868 01:26:26,107 --> 01:26:31,279 殿の大業達成のためには いつの日か九郎殿を 869 01:26:31,279 --> 01:26:36,751 …とまで進言いたせしも この広元にござりまする 870 01:26:36,751 --> 01:26:40,522 鎌倉殿のお怒りはこの広元を 871 01:26:40,522 --> 01:26:45,260 お手打ちになさらんまでの ご意識にござりました 872 01:26:45,260 --> 01:26:51,533 そして 吹雪の高殿に 駆け上がりたまい 873 01:26:51,533 --> 01:26:56,271 「九郎 返せ 戻せ」と 874 01:26:56,271 --> 01:26:59,574 くるわんばかりに叫ばされ 875 01:26:59,574 --> 01:27:05,174 身をもだえて お泣きなされてでござりました 876 01:27:08,917 --> 01:27:10,917 因幡殿 877 01:27:13,321 --> 01:27:17,959 うれしゅう… うれしゅうござる 878 01:27:17,959 --> 01:27:21,129 そのこと 義経にとって 879 01:27:21,129 --> 01:27:23,229 何より勝るはなむけ 880 01:27:28,403 --> 01:27:30,839 因幡殿 881 01:27:30,839 --> 01:27:35,739 義経 世事に疎くして己の立場に 気づかざりしは うかつの極み 882 01:27:49,991 --> 01:27:56,164 かかる仕儀に立ち至りしは 元より義経の心にあらず 883 01:27:56,164 --> 01:28:01,464 持って生まれた定めと諦めんと 諦め切れぬはこの身の念願 884 01:28:03,838 --> 01:28:07,038 平家滅亡を見ずして相果てること 885 01:28:13,648 --> 01:28:16,117 しかるに今は はや 886 01:28:16,117 --> 01:28:22,157 兄者の誠の心を知り さらに平家追討の軍勢に加えられ 887 01:28:22,157 --> 01:28:24,757 またとなき死に場所を賜る 888 01:28:27,829 --> 01:28:29,965 義経 889 01:28:29,965 --> 01:28:33,365 雲間に月を仰ぐがごとき 心持ちにござる