1 00:00:32,783 --> 00:00:35,202 (拍子木の音) 2 00:00:36,120 --> 00:00:38,748 (ハエが飛ぶ音) 3 00:00:39,457 --> 00:00:41,625 (近づく足音) 4 00:00:43,711 --> 00:00:46,589 (里見義実さとみよしざね) 籠城ろうじょうして ひと月となるか 5 00:00:46,714 --> 00:00:50,384 (金碗八郎かなまりはちろう) 皆 丸七日 何も食べておりませぬ 6 00:00:51,552 --> 00:00:54,597 (義実) これでは 討って出ることも叶かなわぬ 7 00:00:54,722 --> 00:00:57,016 もはや これまでか… 8 00:00:57,141 --> 00:01:00,478 (八郎) ええい 憎きは安西景連あんざいかげつら! 9 00:01:00,603 --> 00:01:06,108 三年前の大飢饉ききんの折には 五千俵もの支援をしたというに! 10 00:01:06,317 --> 00:01:08,235 (金碗大輔だいすけ) こちらが飢饉に見舞われると 11 00:01:08,360 --> 00:01:09,653 大軍で攻め入るとは… 12 00:01:09,779 --> 00:01:13,199 (八郎) 殿の恩を 仇あだで返すとは! 13 00:01:13,324 --> 00:01:16,327 ♪~ 14 00:01:17,787 --> 00:01:20,790 ~♪ 15 00:01:20,915 --> 00:01:21,916 (犬の鳴き声) 16 00:01:24,001 --> 00:01:26,128 (義実) おお 八房やつふさ 17 00:01:26,253 --> 00:01:26,545 ♪~ 18 00:01:26,545 --> 00:01:29,089 ♪~ お前も食べておらぬだろうに 19 00:01:29,507 --> 00:01:31,467 変わらず元気だのう 20 00:01:32,384 --> 00:01:34,553 ああ そうだ 21 00:01:36,305 --> 00:01:37,306 お前 22 00:01:38,265 --> 00:01:40,893 景連を 噛かみ殺してくれぬか? 23 00:01:42,228 --> 00:01:47,024 もし お前が見事 景連の首を取ってまいったら 24 00:01:47,358 --> 00:01:50,945 魚肉など いくらでも褒美は くれてやるぞ 25 00:01:51,070 --> 00:01:53,739 (鳴き声) 26 00:01:53,864 --> 00:01:55,533 それでは足りぬか… 27 00:01:57,368 --> 00:01:58,577 ならば 28 00:02:00,704 --> 00:02:03,749 伏姫ふせひめを お前の花嫁にしてやろう 29 00:02:07,336 --> 00:02:09,088 (伏姫) およしなされませ 30 00:02:09,964 --> 00:02:12,383 八房は ただの犬ではありませぬ 31 00:02:12,842 --> 00:02:14,885 人の言葉を解しまする 32 00:02:15,719 --> 00:02:17,680 (義実) ハハハハハッ 33 00:02:18,639 --> 00:02:21,725 わしとしたことが とんだ戯ざれ言ごとを 34 00:02:23,102 --> 00:02:26,230 最後まで姫に叱られるとは 35 00:02:27,982 --> 00:02:31,652 不肖な父を許してくれ 伏姫 36 00:02:33,362 --> 00:02:36,782 (うなり声) 37 00:02:36,907 --> 00:02:37,908 (吠ほえ声) 38 00:02:39,201 --> 00:02:40,536 (伏姫) 八房! 39 00:02:41,120 --> 00:02:43,831 ~♪ 40 00:02:44,456 --> 00:02:47,334 ♪~ 41 00:02:47,543 --> 00:02:48,711 (義実) 何の騒ぎだ 42 00:02:48,836 --> 00:02:50,504 (八郎) 殿 ご覧ください 43 00:02:50,921 --> 00:02:54,008 安西軍が 四散しておりまするぞ! 44 00:02:54,341 --> 00:02:57,136 (家来たち) 止めろ そっちだ そっちへ行った 45 00:02:58,095 --> 00:02:59,096 (大輔) 何事じゃ! 46 00:03:05,811 --> 00:03:07,563 景連… 47 00:03:11,150 --> 00:03:13,736 討て! 今こそ討って出よ! 48 00:03:13,861 --> 00:03:15,487 (八郎・大輔) おう! 49 00:03:15,613 --> 00:03:17,781 ~♪ 50 00:03:17,907 --> 00:03:21,660 (家来たち) えいえい おー! 51 00:03:21,785 --> 00:03:25,623 えいえい おー! 52 00:03:34,673 --> 00:03:37,343 (八郎) 色をもって 安西景連を操り 53 00:03:37,676 --> 00:03:42,306 己の快楽のために 民を虐しいたげたばかりか 54 00:03:42,431 --> 00:03:46,352 周辺諸国まで害を及ぼした 大妖婦だいようふめ 55 00:03:46,769 --> 00:03:48,646 ここで成敗してくれる! 56 00:03:49,730 --> 00:03:51,148 (玉梓たまずさ) 恐れながら 57 00:03:52,483 --> 00:03:55,486 ♪~ 楽しみを欲しいままにしたのは 私わたくしではありません 58 00:03:55,486 --> 00:03:56,737 楽しみを欲しいままにしたのは 私わたくしではありません 59 00:03:56,862 --> 00:03:58,948 景連殿でございます 60 00:04:00,616 --> 00:04:03,577 “女の苦楽は他人に因よる” と申します 61 00:04:08,290 --> 00:04:11,669 景連殿に寵愛ちょうあいされたのが悪いと おっしゃられても 62 00:04:12,336 --> 00:04:16,131 弱い女に 他に どんな道があるのでしょう 63 00:04:17,424 --> 00:04:18,467 ましてや 64 00:04:18,801 --> 00:04:21,971 私が お仕えした 先代の殿様を滅ぼしたのは 65 00:04:23,055 --> 00:04:27,059 金碗八郎様 あなた様の お弟子たちです 66 00:04:28,936 --> 00:04:30,145 それゆえ 67 00:04:30,521 --> 00:04:34,400 私は景連殿に 拾われたのでございます 68 00:04:36,360 --> 00:04:39,571 この女の言うことには 一理ある 69 00:04:41,115 --> 00:04:42,324 縄を解いてやれ 70 00:04:42,533 --> 00:04:43,534 (家来) はっ 71 00:04:44,076 --> 00:04:47,246 お慈悲をいただき ありがとうございまする 72 00:04:47,913 --> 00:04:48,914 (八郎) いや 待て! 73 00:04:50,165 --> 00:04:54,712 うぬが そんな 哀れな女でないことは 74 00:04:55,004 --> 00:04:58,882 わしが この目で見て よう知っておる 75 00:04:59,758 --> 00:05:01,677 (大輔) 父上の言うとおりじゃ 76 00:05:01,927 --> 00:05:05,389 うぬが 景連と並ぶ 大悪党であることは 77 00:05:05,514 --> 00:05:09,101 安西の領民ならば 皆が知っておること 78 00:05:09,226 --> 00:05:11,770 殿 やはり なりませぬ 79 00:05:12,396 --> 00:05:14,857 この女を成敗せねば 80 00:05:14,982 --> 00:05:18,027 領民に対して 物の筋が立ちませぬ 81 00:05:19,695 --> 00:05:21,447 領民とな… 82 00:05:25,367 --> 00:05:27,870 ならば その首 はねよ 83 00:05:28,495 --> 00:05:30,414 里見義実! 84 00:05:30,831 --> 00:05:33,167 いったんは許すと言いながら 85 00:05:33,292 --> 00:05:35,836 人の命を もてあそぶとは… 86 00:05:36,962 --> 00:05:38,756 殺さば殺せ! 87 00:05:38,922 --> 00:05:43,052 この玉梓の怨念で 里見家を呪い尽くしてくれるわ! 88 00:05:43,385 --> 00:05:44,636 ええい! 89 00:05:44,762 --> 00:05:45,596 (玉梓) 義実! 90 00:05:45,721 --> 00:05:49,016 一度 口にしたことの重みを 思い知らせてくれる! 91 00:05:49,391 --> 00:05:50,350 孫子まごこの代まで 92 00:05:50,476 --> 00:05:53,020 ことごとく 畜生道に落としめ 93 00:05:53,145 --> 00:05:55,022 煩悩の犬と変えてやる! 94 00:05:55,397 --> 00:05:56,982 うりゃあ! 95 00:06:04,656 --> 00:06:07,951 (玉梓の声) アハハハハハ… 96 00:06:08,786 --> 00:06:14,958 アハハハハハ… 97 00:06:14,958 --> 00:06:15,793 アハハハハハ… ~♪ 98 00:06:15,793 --> 00:06:17,961 ~♪ 99 00:06:18,087 --> 00:06:19,963 (鳥のさえずり) 100 00:06:20,089 --> 00:06:23,092 ♪~ 101 00:06:26,386 --> 00:06:27,471 (世四郎よしろう) 姫 姫… 102 00:06:30,265 --> 00:06:31,266 (家臣たち) 殿 103 00:06:33,602 --> 00:06:36,105 (うなり声) 104 00:06:36,230 --> 00:06:38,357 何をいたす 八房 105 00:06:42,027 --> 00:06:43,487 姫を放せ! 106 00:06:43,779 --> 00:06:46,323 放さぬなら 畜生ながら成敗いたす 107 00:06:46,448 --> 00:06:48,033 お待ちくださいませ 108 00:06:49,618 --> 00:06:52,079 お待ちください 父上様 109 00:06:52,996 --> 00:06:54,331 私わたくしには 110 00:06:55,290 --> 00:06:56,917 八房の心が分かります 111 00:06:57,626 --> 00:06:58,502 何? 112 00:06:58,669 --> 00:07:00,003 八房は 113 00:07:01,255 --> 00:07:04,633 父上との約束が果たされないので 怒っているのです 114 00:07:05,384 --> 00:07:06,677 馬鹿ばかなことを申すな! 115 00:07:06,802 --> 00:07:09,096 馬鹿なことでは ございませぬ 116 00:07:09,763 --> 00:07:12,766 里見家の当主であられます 父上様が 117 00:07:13,183 --> 00:07:15,394 いったん口に なされた お言葉は 118 00:07:16,854 --> 00:07:18,814 あとで取り消すわけには まいりません 119 00:07:19,314 --> 00:07:20,315 姫… 120 00:07:20,899 --> 00:07:23,068 お前は何を考えておるのじゃ 121 00:07:24,403 --> 00:07:25,737 私は 122 00:07:27,489 --> 00:07:30,659 八房の花嫁に ならなければならないと 123 00:07:32,786 --> 00:07:34,872 考えているのでございます 124 00:07:37,916 --> 00:07:39,251 (玉梓) 義実! 125 00:07:39,793 --> 00:07:42,796 一度 口にしたことの重みを 思い知らせてくれる! 126 00:07:43,297 --> 00:07:46,633 孫子の代まで ことごとく畜生道に落としめ 127 00:07:46,758 --> 00:07:48,552 煩悩の犬と変えてやる! 128 00:07:49,344 --> 00:07:52,639 この犬は魔性のものに 取とり憑つかれておるぞ 129 00:07:53,390 --> 00:07:56,059 もし魔性のものに 取り憑かれているなら 130 00:07:56,268 --> 00:07:58,812 私が救ってやりましょう 131 00:07:58,937 --> 00:08:00,814 (うなり声) 132 00:08:05,194 --> 00:08:06,278 父上 133 00:08:06,695 --> 00:08:10,657 私が 里見家から 魔性のものを遠ざけまする 134 00:08:10,782 --> 00:08:11,909 (吠え声) 135 00:08:13,660 --> 00:08:15,078 伏姫 伏姫! 136 00:08:15,913 --> 00:08:18,916 ~♪ 137 00:08:28,175 --> 00:08:29,176 (八郎) どうじゃ? 138 00:08:29,301 --> 00:08:30,969 (家来) 二ツ山の探索を 終えましたが 139 00:08:31,094 --> 00:08:33,805 伏姫様らしき お姿は いずこにもあらず 140 00:08:34,389 --> 00:08:37,309 ええい! その言葉 聞き飽きたわ! 141 00:08:37,684 --> 00:08:40,395 (伏姫) 以方便力故いほうべんりきこ 142 00:08:40,520 --> 00:08:43,440 現有滅不滅げんうめつふめつ ♪~ 143 00:08:43,565 --> 00:08:46,860 余国有衆生よこくうしゅうじょう 144 00:08:55,619 --> 00:08:58,622 ~♪ 145 00:09:02,334 --> 00:09:04,169 間違いないのじゃな? 146 00:09:04,711 --> 00:09:08,048 大輔が しかと 見届けてまいりました 147 00:09:08,590 --> 00:09:10,634 大輔 お手柄じゃ 148 00:09:10,759 --> 00:09:12,386 さすが八郎の子じゃ 149 00:09:12,511 --> 00:09:14,972 はっ もったいなき お言葉 150 00:09:18,767 --> 00:09:21,770 (うなり声) 151 00:09:22,980 --> 00:09:23,897 撃て! 152 00:09:32,739 --> 00:09:33,782 (義実) 伏姫! 153 00:09:33,782 --> 00:09:34,116 (義実) 伏姫! ♪~ 154 00:09:34,116 --> 00:09:36,702 ♪~ 155 00:09:39,997 --> 00:09:41,123 姫! 156 00:09:43,292 --> 00:09:44,418 姫… 157 00:09:50,882 --> 00:09:52,467 最期に 158 00:09:53,844 --> 00:09:56,221 お伝えしたいことが ございます 159 00:09:56,722 --> 00:09:58,223 口を開くでない 160 00:09:58,348 --> 00:10:00,434 誰か 布を持てぃ! 161 00:10:00,559 --> 00:10:01,560 (家臣) はっ! 162 00:10:02,352 --> 00:10:03,895 伏姫様… 163 00:10:04,813 --> 00:10:06,315 お許しください 164 00:10:09,901 --> 00:10:12,904 八房に取り憑いた怨霊は 165 00:10:14,239 --> 00:10:17,451 私の祈りで 浄化いたしました 166 00:10:18,577 --> 00:10:19,911 しかし 167 00:10:21,079 --> 00:10:24,666 怨霊の力 強く… 168 00:10:26,543 --> 00:10:27,753 いまだ 169 00:10:29,129 --> 00:10:31,256 里見家への怨念は 170 00:10:32,341 --> 00:10:35,719 すべて… 消し去ること… 171 00:10:36,720 --> 00:10:38,055 叶いませず 172 00:10:38,513 --> 00:10:41,850 (義実) おのれ 玉梓が怨霊め… 173 00:10:43,393 --> 00:10:45,687 (伏姫) 父上様 (義実) うん 174 00:10:46,313 --> 00:10:47,564 (伏姫) これを… 175 00:10:48,273 --> 00:10:53,570 今 この珠たまに祈りを込めました 176 00:10:55,864 --> 00:10:59,576 この八つの珠を持つ者たちを 177 00:11:01,328 --> 00:11:02,954 お探しください 178 00:11:04,122 --> 00:11:05,832 私の代わりに 179 00:11:08,418 --> 00:11:09,961 必ずや… 180 00:11:13,632 --> 00:11:18,011 里見家の… お力になりましょう 181 00:11:23,475 --> 00:11:24,476 (義実) 姫… 182 00:11:25,143 --> 00:11:26,520 姫! 183 00:11:50,752 --> 00:11:53,755 ~♪ 184 00:11:58,135 --> 00:11:59,553 (滝沢馬琴たきざわばきん) これが 185 00:12:00,846 --> 00:12:02,973 「八犬伝」の始まりだ 186 00:12:07,227 --> 00:12:08,353 どうかね? 187 00:12:15,569 --> 00:12:17,404 まだ発端だけだが… 188 00:12:18,738 --> 00:12:20,240 絵になるかね? 189 00:12:33,837 --> 00:12:36,173 (葛飾北斎かつしかほくさい) いや~ 190 00:12:36,298 --> 00:12:37,674 何をしてる? 191 00:12:38,592 --> 00:12:42,637 (北斎) こんな コッチンコッチンの 192 00:12:43,138 --> 00:12:45,474 石灰で固めたような頭から 193 00:12:45,724 --> 00:12:49,144 よく そんな途方もない物語が 生み出されるもんだ 194 00:12:49,269 --> 00:12:52,564 …で 面白いのか? 面白くないのか? 195 00:13:02,741 --> 00:13:03,950 (北斎) 面白い 196 00:13:04,576 --> 00:13:09,664 この前 おいらが挿絵さしえを描いた この「弓張月ゆみはりづき」も 197 00:13:09,789 --> 00:13:11,917 相当 面白かったが 198 00:13:13,335 --> 00:13:14,252 それ以上だ 199 00:13:15,921 --> 00:13:19,007 では 「八犬伝」の挿絵 描いてくれるか? 200 00:13:19,591 --> 00:13:20,800 ああ… 201 00:13:21,676 --> 00:13:22,677 描かん 202 00:13:23,637 --> 00:13:24,930 “描かん”? 203 00:13:25,555 --> 00:13:29,601 あんたに文句を言われ言われ 挿絵を描くのは 204 00:13:29,976 --> 00:13:31,895 もう懲こり懲ごりだ 205 00:13:32,896 --> 00:13:35,524 描いてくれるなら もう文句は つけん 206 00:13:35,649 --> 00:13:36,608 (北斎) つける 207 00:13:37,609 --> 00:13:39,027 あんたが 208 00:13:39,528 --> 00:13:41,404 文句をつけんことは… 209 00:13:41,947 --> 00:13:43,698 金輪際ない 210 00:13:43,823 --> 00:13:46,826 (階段を上がる音) 211 00:13:49,579 --> 00:13:50,580 (鎮五郎しずごろう) お父様 212 00:13:51,289 --> 00:13:53,625 堀内様の奥女中おくじょちゅうの方が 213 00:13:53,750 --> 00:13:57,170 愛読者ゆえ 一度お目にかかりたいと お見えになりました 214 00:13:57,295 --> 00:13:59,756 紹介状がなければ会わんと 215 00:14:00,048 --> 00:14:03,176 いつも申しつけて おるではないか 鎮五郎 216 00:14:03,593 --> 00:14:06,555 既に そのように お伝えし お引き取りいただきました 217 00:14:06,972 --> 00:14:08,974 よろしい 下がってよい 218 00:14:15,981 --> 00:14:20,151 (北斎) 今どき… ああ 珍しい 219 00:14:20,860 --> 00:14:21,778 (馬琴) 何が? 220 00:14:21,903 --> 00:14:24,823 (北斎) あ? あんたの息子 221 00:14:25,865 --> 00:14:29,077 当世 親を馬鹿にする子が 多いってのに 222 00:14:29,536 --> 00:14:32,330 あの歳としで 親にあれほど シャチホコばってるのは 223 00:14:32,455 --> 00:14:34,124 お武家ですら珍しいよ 224 00:14:34,249 --> 00:14:38,378 (馬琴) それが当たり前で 世間が間違っておるのだ 225 00:14:40,964 --> 00:14:42,048 (北斎) そういや 226 00:14:42,173 --> 00:14:45,885 鎮五郎を お武家にするとか 言ってなかったかい? 227 00:14:46,011 --> 00:14:48,972 滝沢家を また武家に戻すのが 228 00:14:49,598 --> 00:14:51,182 私の悲願だ 229 00:14:52,767 --> 00:14:56,146 だから 鎮五郎を 医者の見習いに出している 230 00:14:56,521 --> 00:14:59,149 医者と お武家は 関係ねえだろうが 231 00:14:59,274 --> 00:15:03,320 (馬琴) どこかのお大名に 医者として お抱えいただき 232 00:15:03,528 --> 00:15:05,238 扶持ふちをもらえば 233 00:15:05,822 --> 00:15:09,242 それはもう 立派な武家だ 234 00:15:09,576 --> 00:15:11,661 (北斎) ハハッ ふーん… 235 00:15:12,287 --> 00:15:17,250 それにしても 大した人気じゃねえか ええ? 236 00:15:17,375 --> 00:15:20,670 奥女中が わざわざ 訪ねてくるなんてよ 237 00:15:23,173 --> 00:15:25,508 (馬琴) 人気があると言っても 私は 238 00:15:25,634 --> 00:15:27,802 一介の戯作者げさくしゃにすぎん 239 00:15:29,220 --> 00:15:31,473 大衆の娯楽のために 240 00:15:32,140 --> 00:15:34,392 作り話を書いているだけだ 241 00:15:37,020 --> 00:15:38,688 (北斎) そうかねぇ 242 00:15:39,856 --> 00:15:42,942 おいらは 戯作者“曲亭きょくてい馬琴”を 243 00:15:43,151 --> 00:15:45,570 大したもんだと思うがねぇ 244 00:15:47,614 --> 00:15:50,992 葛飾北斎に褒められて 悪い気は せんが 245 00:15:51,826 --> 00:15:54,621 書きたいものは もっと他に たくさんある 246 00:15:54,746 --> 00:15:57,499 じゃあ 「八犬伝」は よすかね? 247 00:16:00,335 --> 00:16:03,505 お前さんが挿絵を 描いてくれないのであれば 248 00:16:05,173 --> 00:16:07,008 それも考えねばなるまい 249 00:16:11,513 --> 00:16:14,349 (北斎) ああ… ちょいと そこの… 250 00:16:14,474 --> 00:16:17,060 紙と すずりを貸してくんな 251 00:16:23,191 --> 00:16:27,195 (太鼓の音) 252 00:16:27,320 --> 00:16:30,323 ♪~ 253 00:16:45,046 --> 00:16:46,840 (北斎) ああ ほら… 254 00:16:47,507 --> 00:16:48,633 出来た 255 00:16:49,342 --> 00:16:51,177 見てくんな ほれ 256 00:17:01,521 --> 00:17:04,691 人様の筆で 走り描がきだが… 257 00:17:05,692 --> 00:17:07,026 これだ 258 00:17:08,862 --> 00:17:10,238 これが欲しかったのだ 259 00:17:12,157 --> 00:17:13,158 やる! 260 00:17:14,492 --> 00:17:15,910 「八犬伝」は やる! 261 00:17:16,161 --> 00:17:19,080 おうよ そのほうがいい 262 00:17:19,205 --> 00:17:19,873 ~♪ 263 00:17:19,873 --> 00:17:21,875 ~♪ (階段を駆け上がる音) 264 00:17:22,000 --> 00:17:23,293 何だ! 騒々しい 265 00:17:26,004 --> 00:17:27,756 お客様でございます 266 00:17:28,631 --> 00:17:29,841 (馬琴) 誰だ? 267 00:17:29,966 --> 00:17:32,969 毛利様の御老女と 奥家老おくがろう様でございます 268 00:17:34,012 --> 00:17:35,305 毛利様とは… 269 00:17:36,264 --> 00:17:38,475 あの お大名の毛利様か? 270 00:17:38,600 --> 00:17:39,642 (鎮五郎) さようです 271 00:17:39,768 --> 00:17:42,812 なんでも 今年 七十になられる 御後室ごこうしつ様が 272 00:17:42,937 --> 00:17:45,106 以前から「弓張月」を ご愛読あそばされ 273 00:17:45,899 --> 00:17:48,485 ぜひ一度 馬琴の話を 聞きたいとのことで… 274 00:17:51,738 --> 00:17:52,739 お断りしてくれ 275 00:17:53,698 --> 00:17:54,616 (鎮五郎) え? 276 00:17:55,784 --> 00:17:59,287 (馬琴) 初めての客は 紹介状がなければ 会わん 277 00:18:00,914 --> 00:18:02,916 それは分かっておりますが 278 00:18:03,583 --> 00:18:05,877 馬琴の都合のよい日で よいが 279 00:18:06,002 --> 00:18:07,712 もし今日 来てくれるならと 280 00:18:07,837 --> 00:18:09,964 ご用意のお駕籠かごまで お連れで 281 00:18:10,298 --> 00:18:14,052 家の前には お供のお中間衆ちゅうげんしゅうも 大勢 控えられておられます 282 00:18:14,177 --> 00:18:15,345 (北斎) ええ? 283 00:18:18,389 --> 00:18:20,225 あら~ 284 00:18:20,475 --> 00:18:24,312 (馬琴) 今日は折悪あしく 気分が優れず 285 00:18:24,604 --> 00:18:26,815 引きこもっておりますと お伝えしてくれ 286 00:18:27,482 --> 00:18:30,443 お父様が お会いになって そう申し上げてください 287 00:18:30,860 --> 00:18:33,613 会えば 私が病気でないことが 分かるではないか 288 00:18:33,988 --> 00:18:35,281 (北斎) 声 声! 289 00:18:35,782 --> 00:18:36,991 (馬琴) 鎮五郎! 290 00:18:37,575 --> 00:18:40,453 親の難儀が助けられぬと 言うのか! 291 00:18:47,043 --> 00:18:47,877 (舌打ち) 292 00:18:48,002 --> 00:18:48,962 はあっ… 293 00:18:49,170 --> 00:18:50,421 (北斎) へへへへ… 294 00:18:50,547 --> 00:18:52,757 偉えれえもんだなぁ 295 00:18:52,882 --> 00:18:56,845 お大名からのお呼びに 肘鉄を食らわせるとは… 296 00:18:56,970 --> 00:19:00,348 この面白くも おかしくもない偏屈に 297 00:19:01,933 --> 00:19:05,687 御後室のお話し相手など 務まるわけがない! 298 00:19:08,314 --> 00:19:11,401 “偏屈だ”って自覚あったんだ 299 00:19:12,193 --> 00:19:14,070 (毛利家の家来) 出立しゅったつ! 300 00:19:15,238 --> 00:19:19,325 (太鼓の音) 301 00:19:23,580 --> 00:19:24,789 ♪~ 302 00:19:24,789 --> 00:19:26,583 ♪~ (北斎) とんだ長居をした おいらもそろそろ お暇いとましよっと 303 00:19:26,583 --> 00:19:28,334 (北斎) とんだ長居をした おいらもそろそろ お暇いとましよっと 304 00:19:28,459 --> 00:19:29,460 (馬琴) おい! 305 00:19:30,545 --> 00:19:33,339 なんとしても 描いては くれんのか? 306 00:19:33,464 --> 00:19:36,134 (北斎) ああ そうだ… そのことだがね 307 00:19:36,968 --> 00:19:39,679 できたら その挿絵を 308 00:19:39,804 --> 00:19:43,308 婿の重信しげのぶって絵師に 描かせちゃもらえねえだろうか 309 00:19:44,142 --> 00:19:47,729 お前さんが 家族のために 頼み事をするとは 310 00:19:48,187 --> 00:19:49,314 珍しいな 311 00:19:49,439 --> 00:19:50,607 なあに 312 00:19:51,733 --> 00:19:55,737 婿というより 孫かわいさでね 313 00:19:55,862 --> 00:19:57,238 (馬琴) これは驚いた 314 00:19:58,448 --> 00:20:01,534 子供など関心がないと 思っておったが 315 00:20:01,659 --> 00:20:04,454 孫は おいらが 育てるわけじゃないからね 316 00:20:04,579 --> 00:20:06,789 おいらが育てなきゃ ならねえんだったら やっぱり 317 00:20:06,915 --> 00:20:08,499 放り出しだけどな 318 00:20:08,625 --> 00:20:10,460 その点においては 319 00:20:10,585 --> 00:20:13,046 お前さんと私は 天と地ほど違うな 320 00:20:13,338 --> 00:20:15,006 あんた 構い過ぎ 321 00:20:15,757 --> 00:20:17,175 おいらは放り出し 322 00:20:17,300 --> 00:20:20,053 しかし 子供にとっちゃあ どっちがいいかってぇと 323 00:20:20,303 --> 00:20:23,473 まだ放り出しのほうが 幸せなんじゃないかね 324 00:20:24,849 --> 00:20:28,770 (お百) えっ 何だって? なんてことするのさぁ 325 00:20:28,895 --> 00:20:31,898 (北斎) おや お百さんたち お帰りだね 326 00:20:33,399 --> 00:20:36,402 (階段を駆け上がる音) ~♪ 327 00:20:36,527 --> 00:20:37,570 (お百) あんた! 328 00:20:37,695 --> 00:20:40,323 今 毛利様のお使いが おいでになったんだって? 329 00:20:40,448 --> 00:20:41,366 (馬琴) ああ うん 330 00:20:41,699 --> 00:20:44,953 せっかくの 御後室様からのお召しを 331 00:20:45,078 --> 00:20:47,246 けんもほろろに断るなんて 332 00:20:47,372 --> 00:20:49,374 あんた 何 考えてんだい! 333 00:20:49,499 --> 00:20:51,751 お前たちの 知ったことではない! 334 00:20:52,085 --> 00:20:54,003 (お百) 鎮五郎に 関係あるじゃありませんか 335 00:20:54,128 --> 00:20:55,380 何が? 336 00:20:57,840 --> 00:20:59,801 鎮五郎が お医者になったら 337 00:20:59,926 --> 00:21:03,721 どこか お大名のお抱え医者に するつもりなんでしょ? 338 00:21:04,430 --> 00:21:06,849 毛利様は何よりも その手づる! 339 00:21:06,975 --> 00:21:07,976 (馬琴) あっ! 340 00:21:08,601 --> 00:21:09,686 気づかなかった 341 00:21:09,811 --> 00:21:11,396 それ ご覧 342 00:21:11,771 --> 00:21:14,732 何かにつけちゃ 人を無学だの 無思慮だの 343 00:21:14,899 --> 00:21:17,235 いっつも馬鹿扱いするくせに 344 00:21:17,360 --> 00:21:20,363 肝心な時は 自分が大まぬけだ! 345 00:21:22,448 --> 00:21:24,617 (お百) 冗談じゃないよ! (北斎) ひぃー 346 00:21:25,034 --> 00:21:27,620 相変わらず おっかねえ 347 00:21:27,745 --> 00:21:29,122 ああ それじゃあ 348 00:21:29,247 --> 00:21:32,959 婿の重信の件 よろしく頼みますよ 349 00:21:34,460 --> 00:21:36,087 (北斎) ん… (馬琴) おっ あの 待っ… 350 00:21:36,212 --> 00:21:37,088 (北斎) ん? 351 00:21:38,006 --> 00:21:40,133 誰が描くにしろ 352 00:21:40,258 --> 00:21:41,843 その絵を参考にしたい 353 00:21:41,968 --> 00:21:43,594 (馬琴) なっ 置いてってくれ (北斎) いや 354 00:21:44,804 --> 00:21:47,265 これは あくまで おいらが描いた絵だ 355 00:21:48,599 --> 00:21:52,270 重信が これに縛られたら かえって変なものになる 356 00:21:52,687 --> 00:21:54,522 これは ないものとしよう 357 00:21:55,982 --> 00:21:57,066 はい 358 00:22:01,404 --> 00:22:02,238 (ブフー) 359 00:22:04,157 --> 00:22:05,241 はい 360 00:22:06,075 --> 00:22:07,493 ああ それじゃあな 361 00:22:08,411 --> 00:22:09,996 あらよっと 362 00:22:26,596 --> 00:22:29,891 (北斎) 知人にゃ 偏屈だと嫌われ 363 00:22:30,892 --> 00:22:33,311 女房にゃ 侮あなどられ 364 00:22:33,936 --> 00:22:36,314 子供にゃ 怖がられ 365 00:22:37,190 --> 00:22:41,069 ご贔屓ひいきにゃ 剣突けんつく 食わせて怒らせる 366 00:22:41,444 --> 00:22:44,113 その馬琴を面白がってんのは 367 00:22:44,405 --> 00:22:46,240 まあ この北斎ぐらいなもん だろうぜ 368 00:22:55,625 --> 00:22:56,793 でも 369 00:22:57,877 --> 00:23:00,129 絵には ならんなぁ 370 00:23:01,339 --> 00:23:04,342 フッ ハハッ ハハハッ… 371 00:23:06,385 --> 00:23:08,805 (拍子木の音) 372 00:23:10,389 --> 00:23:13,392 ♪~ 373 00:23:18,606 --> 00:23:19,816 (水しぶきが飛ぶ音) 374 00:23:29,075 --> 00:23:30,493 (犬塚いぬづか信乃しの) 父上 375 00:23:32,328 --> 00:23:34,831 ようやく 父上のお言葉に従い 376 00:23:35,456 --> 00:23:40,545 この名刀“村雨むらさめ”を 関東公方くぼう様に お返しする日が参りました 377 00:23:44,382 --> 00:23:45,675 (浜路はまじ) 信乃様! 378 00:23:50,555 --> 00:23:51,722 (信乃) 浜路… 379 00:23:55,518 --> 00:23:56,519 (浜路) 明日 380 00:23:57,186 --> 00:23:59,522 古河こがへ発たたれると お聞きしました 381 00:24:01,149 --> 00:24:04,318 (信乃) 犬塚家の再興を 公方様に願い出る 382 00:24:05,778 --> 00:24:06,863 (浜路) どうか… 383 00:24:07,446 --> 00:24:10,199 浜路も一緒に 古河へ お連れください 384 00:24:10,700 --> 00:24:12,743 どうしたのだ いきなり 385 00:24:15,371 --> 00:24:16,497 (浜路) 何か… 386 00:24:18,040 --> 00:24:20,501 悪い虫の知らせがございます 387 00:24:23,296 --> 00:24:26,048 大丈夫 すぐに帰ってまいる 388 00:24:26,215 --> 00:24:29,760 留守中 伯父上と伯母上のことを よろしく頼む 389 00:24:30,636 --> 00:24:32,013 お父様は 390 00:24:32,930 --> 00:24:35,266 新しいお母様が いらしてから 391 00:24:35,474 --> 00:24:37,894 随分と お変わりになられました 392 00:24:38,936 --> 00:24:40,563 (ひき六) 信乃! 393 00:24:48,821 --> 00:24:50,323 伯父上 どうなされた? 394 00:24:50,948 --> 00:24:53,784 明日は 信乃の大事な門出じゃ 395 00:24:53,910 --> 00:24:58,664 わしが この手で大きな魚を釣って 今夜 ふるまってやろうと思ってな! 396 00:24:58,789 --> 00:25:00,917 それは ありがたき幸せ! 397 00:25:03,127 --> 00:25:05,421 本当に お優しいな 浜路のお父上は 398 00:25:07,882 --> 00:25:09,508 ~♪ 399 00:25:09,508 --> 00:25:10,885 ~♪ (水しぶきが飛ぶ音) 400 00:25:12,011 --> 00:25:13,137 (ひき六) ああっ… 401 00:25:13,471 --> 00:25:14,055 伯父上! 402 00:25:14,055 --> 00:25:14,805 伯父上! ♪~ 403 00:25:14,805 --> 00:25:16,307 ♪~ 404 00:25:17,558 --> 00:25:18,601 (ひき六) ああっ 405 00:25:21,812 --> 00:25:22,897 あっ… 406 00:25:32,490 --> 00:25:33,699 (ひき六) ああっ あっ… 407 00:25:35,660 --> 00:25:36,577 (信乃) うっ… 408 00:25:38,454 --> 00:25:39,455 信乃様! 409 00:25:44,919 --> 00:25:46,629 (水に飛び込む音) 410 00:25:54,804 --> 00:25:55,846 (ひき六) おお 411 00:25:55,972 --> 00:25:57,598 船虫ふなむし! 412 00:25:57,932 --> 00:25:58,516 ~♪ 413 00:25:58,516 --> 00:26:00,935 ~♪ (船虫) ご無事で何よりです 414 00:26:01,060 --> 00:26:03,562 子細は この者から聞きました 415 00:26:03,688 --> 00:26:06,399 (ひき六) 信乃が わしを助けてくれた 416 00:26:06,524 --> 00:26:09,277 信乃は わしの命の恩人じゃ 417 00:26:10,027 --> 00:26:12,863 信乃 本当にありがとう 418 00:26:13,155 --> 00:26:17,660 いえ 私より その新しい奉公人に 礼を言ってください 419 00:26:18,035 --> 00:26:21,664 荘助そうすけが いなかったら 私こそ命を落としておりました 420 00:26:22,498 --> 00:26:24,709 (船虫) そうかえ そうかえ 421 00:26:28,754 --> 00:26:31,799 (信乃) ああ… ここに居たか 捜したぞ 422 00:26:34,844 --> 00:26:35,761 ああ… 423 00:26:35,886 --> 00:26:38,389 そのような大げさなことは やめてくれ 424 00:26:38,514 --> 00:26:40,975 荘助は 私の命の恩人だ 425 00:26:41,392 --> 00:26:44,270 ♪~ 426 00:26:44,395 --> 00:26:47,440 (犬川いぬかわ荘助) 信乃様 お願いがございます 427 00:26:47,648 --> 00:26:49,775 (信乃) 何だ? 何でも言ってくれ 428 00:26:50,568 --> 00:26:53,362 (荘助) その首にかかる 袋の中のものを 429 00:26:53,487 --> 00:26:55,364 見せては いただけませんか? 430 00:26:59,035 --> 00:27:00,328 (信乃) この袋か? 431 00:27:01,620 --> 00:27:03,205 お安いご用だ 432 00:27:03,956 --> 00:27:07,626 これは 私が生まれた時に 手の中に握っていたそうだ 433 00:27:07,752 --> 00:27:11,172 それから 私のお守りとして こうして大事に持っている 434 00:27:11,297 --> 00:27:12,298 ほら 435 00:27:12,923 --> 00:27:14,967 中に“孝”の字が 浮かび上がるだろ? 436 00:27:28,564 --> 00:27:29,565 (信乃) これは… 437 00:27:30,399 --> 00:27:32,985 (荘助) 信乃様 これを 438 00:27:42,536 --> 00:27:44,830 先ほど 川で お見受けしました 439 00:27:46,540 --> 00:27:50,294 (信乃) 何かで 繋がっている… 440 00:27:55,424 --> 00:27:59,387 (船虫の荒い息) 441 00:27:59,512 --> 00:28:02,014 まったく! 大失敗じゃないか! 442 00:28:04,558 --> 00:28:06,227 (ひき六) あいつが来なければ 443 00:28:06,477 --> 00:28:08,312 間違いなく 信乃は沈んでいたんだ! 444 00:28:08,646 --> 00:28:12,066 あの忌々いまいましい奉公人め! 445 00:28:20,574 --> 00:28:24,870 網乾あぼし先生は しくじっては いないだろうねぇ 446 00:28:24,995 --> 00:28:26,414 (網乾左母二郎さもじろう) フッ… 447 00:28:30,918 --> 00:28:32,628 (水しぶきが飛ぶ音) 448 00:28:36,132 --> 00:28:37,842 おおっ… 449 00:28:38,134 --> 00:28:39,635 ほとばしる水しぶき 450 00:28:40,428 --> 00:28:42,555 まさしく 名刀“村雨” 451 00:28:47,226 --> 00:28:48,769 (網乾) 刀身だけ入れ替えて 452 00:28:49,979 --> 00:28:51,814 元に戻しておいた 453 00:28:51,939 --> 00:28:54,108 (船虫) フフフ… 454 00:28:54,483 --> 00:28:57,236 フフフフフッ… ~♪ 455 00:28:58,487 --> 00:29:01,574 (ひき六) 公方様に 堂々と 村雨を献上し 456 00:29:01,699 --> 00:29:04,326 父上の遺言を成就するんじゃぞ 457 00:29:04,952 --> 00:29:06,036 はい! 458 00:29:06,412 --> 00:29:09,081 (船虫) 道中 お気をつけて 459 00:29:10,249 --> 00:29:11,417 信乃様… 460 00:29:12,918 --> 00:29:15,087 心配するな 浜路 461 00:29:22,803 --> 00:29:24,722 それでは いってまいります 462 00:29:31,353 --> 00:29:34,356 (奉公人たちの話し声) 463 00:29:35,274 --> 00:29:36,650 ありがとうございます 464 00:29:36,775 --> 00:29:37,860 あっ 危ないよ そこ 465 00:29:43,032 --> 00:29:44,366 母上様 466 00:29:45,576 --> 00:29:48,037 これは 一体 何の騒ぎですか? 467 00:29:48,787 --> 00:29:51,707 これは… 今夜の祝言しゅうげんの準備だよ 468 00:29:52,208 --> 00:29:53,792 しゅ… 祝言? 469 00:29:54,251 --> 00:29:55,794 どなたの祝言ですか? 470 00:29:56,295 --> 00:29:58,797 何を言ってるの 471 00:29:59,256 --> 00:30:02,009 あなたの祝言に 決まってるじゃないか 472 00:30:02,134 --> 00:30:02,551 ♪~ 473 00:30:02,551 --> 00:30:05,137 ♪~ 新しい陣代じんだいの皮上宮六ひがみきゅうろく様が お前を見初みそめられてね 474 00:30:05,137 --> 00:30:07,431 新しい陣代じんだいの皮上宮六ひがみきゅうろく様が お前を見初みそめられてね 475 00:30:07,723 --> 00:30:10,267 “ぜひとも妻に”との お申し出があった 476 00:30:10,392 --> 00:30:14,146 そんな お話 私わたくしは聞いておりません 477 00:30:14,480 --> 00:30:17,816 話したところで お前が お受けするわけもない 478 00:30:17,942 --> 00:30:19,610 だからと言って 479 00:30:19,860 --> 00:30:21,487 こんな騙だまし討ちのような… 480 00:30:21,612 --> 00:30:25,616 捨て子のお前を ここまで育ててくれた お父様に 481 00:30:25,991 --> 00:30:28,702 ご恩返しをする時が 来たのですよ 482 00:30:29,286 --> 00:30:30,287 嫌です 483 00:30:31,288 --> 00:30:34,041 お父様が お手討ちになっても いいのかい? 484 00:30:41,173 --> 00:30:44,176 ~♪ 485 00:30:45,261 --> 00:30:46,595 どうだね? 486 00:30:49,515 --> 00:30:50,599 うん 487 00:30:53,936 --> 00:30:57,022 ますます 面白おもしれえ 488 00:31:00,150 --> 00:31:02,319 皮肉なものだな 489 00:31:03,571 --> 00:31:07,324 へそ曲がりで 口の悪い絵師の言葉は 490 00:31:07,950 --> 00:31:10,035 かえって信頼できる 491 00:31:10,286 --> 00:31:14,331 (北斎) 漬物石の上に こう 文鎮ぶんちん いっぱい載っけて 492 00:31:14,456 --> 00:31:17,376 押しつぶしたみてえな あんたの脳みそから 493 00:31:17,710 --> 00:31:22,172 なんで そんな とびっきり上等な 筋書きが出てくるのか 494 00:31:22,756 --> 00:31:25,009 どうにも納得がいかねえ 495 00:31:25,217 --> 00:31:27,094 (馬琴) まあ 気に入ってくれたのであれば 496 00:31:27,219 --> 00:31:30,639 約束どおり また二、三枚 下絵を描いてくれ 497 00:31:32,266 --> 00:31:33,392 (北斎) まあ 498 00:31:34,560 --> 00:31:36,812 婿の重信の絵を 499 00:31:37,396 --> 00:31:39,356 使ってもらってるしな 500 00:31:43,819 --> 00:31:47,698 前に聞いた発端のくだりは 501 00:31:48,449 --> 00:31:50,576 二年くらい前だったかな 502 00:31:50,701 --> 00:31:51,785 (馬琴) うん 503 00:31:53,412 --> 00:31:56,665 (北斎) 去年 やっと 本になったんだよな 504 00:31:57,541 --> 00:31:59,460 (馬琴) かなり売れておる 505 00:32:01,170 --> 00:32:04,048 まあ そうだろうね 506 00:32:05,257 --> 00:32:08,636 で… どうかね? 重信の絵は 507 00:32:09,720 --> 00:32:10,929 (馬琴) ん? 508 00:32:11,930 --> 00:32:15,476 よいのではないか 売れておるのだから 509 00:32:23,233 --> 00:32:26,236 ♪~ 510 00:32:26,362 --> 00:32:30,324 (馬琴) お前さんが孫のために 頼み事をするとは驚いた 511 00:32:31,075 --> 00:32:35,245 それほど かわいいなら 一緒に住めばよいではないか 512 00:32:35,454 --> 00:32:36,580 (北斎) ハハッ 513 00:32:37,331 --> 00:32:41,168 孫なんぞが そばにいたら 絵なんか描けたもんじゃねえや 514 00:32:41,293 --> 00:32:43,462 すぐに追い出しちまうさ 515 00:32:43,796 --> 00:32:46,507 (馬琴) しかし今は 娘さんと暮らしてるんだろ? 516 00:32:46,632 --> 00:32:49,009 (北斎) ああ? あっ 応為おういか 517 00:32:49,510 --> 00:32:54,723 あれは お前 絵描きだから 娘というよりは 弟子みてえなもんだ 518 00:32:55,808 --> 00:32:57,351 ヘヘッ 519 00:32:57,726 --> 00:33:00,896 家うちでは おいらが “おーい”としか呼ばねえもんだから 520 00:33:01,021 --> 00:33:03,899 自分で“葛飾応為おうい”って 名乗ってらぁ 521 00:33:04,525 --> 00:33:06,193 ヘヘヘヘッ 522 00:33:07,152 --> 00:33:08,362 ところで 523 00:33:09,905 --> 00:33:12,491 「八犬伝」の舞台は安房あわだが 524 00:33:13,117 --> 00:33:15,202 あんた いつ安房へ行ったのかね 525 00:33:15,411 --> 00:33:17,705 (馬琴) いや 行ったことはない 526 00:33:19,164 --> 00:33:22,209 安房へ行かねえで 「八犬伝」 書いてるのか 527 00:33:22,501 --> 00:33:25,421 三百年も昔の安房の話だ 528 00:33:25,546 --> 00:33:29,383 今の安房を見ると かえって害になる 529 00:33:30,092 --> 00:33:31,635 (北斎) はあ~ 530 00:33:31,760 --> 00:33:36,056 おいらなんて 描きたくなったら この目で見なきゃ始まんねえよ 531 00:33:36,348 --> 00:33:38,809 年がら年じゅう 旅だらけ 532 00:33:39,601 --> 00:33:41,145 でも あんたは 533 00:33:41,520 --> 00:33:45,441 この 本の山の中だけで あの物語を紡いでる 534 00:33:46,608 --> 00:33:50,279 まったく どうにも 不思議で仕方がないな 535 00:33:51,447 --> 00:33:54,450 (階段を上がる足音) ~♪ 536 00:33:59,204 --> 00:34:00,456 (宗伯そうはく) お父様 (馬琴) うん 537 00:34:00,581 --> 00:34:04,835 誾花堂ぎんかどうさんが「朝夷巡島記あさひなしまめぐりのき」の 校正原稿を受け取りに お見えです 538 00:34:04,960 --> 00:34:06,462 (馬琴) おう 出来ておる 539 00:34:06,587 --> 00:34:08,130 (馬琴) 動くぞ (北斎) おお 540 00:34:15,596 --> 00:34:17,556 (馬琴) これを渡してくれ (宗伯) はい 541 00:34:23,812 --> 00:34:25,522 (北斎) おいおいおい… 542 00:34:27,316 --> 00:34:30,569 鎮五郎は お医者になったのかね? 543 00:34:32,237 --> 00:34:33,822 もうすぐだ 544 00:34:34,323 --> 00:34:35,365 フフッ 545 00:34:35,741 --> 00:34:39,703 その筋は いいらしい ハハハッ… 546 00:34:40,871 --> 00:34:44,124 今は医者らしく 宗伯そうはくと名乗っておる 547 00:34:44,249 --> 00:34:45,584 (お百) あんた 548 00:34:45,709 --> 00:34:47,294 あんた! 549 00:34:47,878 --> 00:34:50,714 あんた また修正を出したのかい? 550 00:34:50,881 --> 00:34:52,216 (馬琴) ああ そうだ 551 00:34:52,341 --> 00:34:56,720 (お百) ったく… 何度も しつこい男だね 552 00:34:57,054 --> 00:35:00,891 京伝きょうでんや三馬さんばなんて せいぜい 直しは一回くらいというじゃないか 553 00:35:01,016 --> 00:35:03,310 それを何だい! 三回も四回も… 554 00:35:03,435 --> 00:35:06,897 (馬琴) 間違いを正さないまま 世に出すわけには いかんだろう 555 00:35:07,189 --> 00:35:09,233 もう それじゃあ いつまでたっても 556 00:35:09,358 --> 00:35:11,026 稿料が いただけないんだよ! 557 00:35:11,151 --> 00:35:12,861 分かっておる 558 00:35:13,529 --> 00:35:14,780 ったく… 559 00:35:15,781 --> 00:35:18,700 じじい二人が朝っぱらから 560 00:35:18,826 --> 00:35:21,870 狭い部屋に こもって 何やってんだか 561 00:35:22,412 --> 00:35:24,414 怪しいもんだ! 562 00:35:25,249 --> 00:35:29,419 ったく… 冗談じゃないよ (北斎の笑い声) 563 00:35:30,212 --> 00:35:31,296 (北斎) ヘヘッ 564 00:35:32,673 --> 00:35:36,134 (馬琴) まあ お百の言うとおりでもある 565 00:35:36,260 --> 00:35:37,261 (北斎) ええ? 566 00:35:37,386 --> 00:35:41,473 (馬琴) 世の中の 何の役にも立たない 私の戯作など 567 00:35:41,682 --> 00:35:44,685 ♪~ 少々 間違っていても 誰も困りは しないのだから 568 00:35:44,685 --> 00:35:46,186 少々 間違っていても 誰も困りは しないのだから 569 00:35:47,312 --> 00:35:50,899 (北斎) 「八犬伝」が 何の役にも立たねえって 570 00:35:51,024 --> 00:35:52,609 本気で そんなこと思ってんのか? 571 00:35:52,860 --> 00:35:55,070 戯作など そんなもんだろう 572 00:35:58,949 --> 00:36:01,702 (北斎) うーん… あんた 573 00:36:02,327 --> 00:36:04,538 なんで戯作 書いてんだい? 574 00:36:05,914 --> 00:36:07,416 それは… 575 00:36:08,041 --> 00:36:09,877 生計のためだな 576 00:36:10,586 --> 00:36:14,172 お前さんは? 何のために絵を描いている? 577 00:36:14,423 --> 00:36:18,010 おいらは絵が好きだからさ 578 00:36:19,011 --> 00:36:23,807 子供の頃から ただ もう 絵を描くのが好きだった 579 00:36:25,225 --> 00:36:27,686 私は商売としてやってきて 580 00:36:27,811 --> 00:36:30,564 世間に認められるようになっても 581 00:36:31,315 --> 00:36:34,943 どこか これは 本来の自分ではないと思っている 582 00:36:35,861 --> 00:36:37,988 物語ばかりではなく 583 00:36:39,948 --> 00:36:41,825 自分自身も… 584 00:36:43,744 --> 00:36:45,495 虚きょの世界に居る 585 00:36:47,289 --> 00:36:48,916 (北斎) するってぇと 586 00:36:49,499 --> 00:36:52,502 家族も 虚の世界の人間かい? 587 00:36:52,628 --> 00:36:54,046 (馬琴) いやいや 588 00:36:55,213 --> 00:36:56,882 家族こそ 589 00:36:57,758 --> 00:36:59,468 今の私の 590 00:37:00,010 --> 00:37:01,595 実じつだな 591 00:37:03,305 --> 00:37:05,015 おいらの場合 592 00:37:05,641 --> 00:37:07,726 まさに家族は 593 00:37:07,976 --> 00:37:09,394 虚だがね 594 00:37:11,188 --> 00:37:12,439 ほら ~♪ 595 00:37:12,439 --> 00:37:14,191 ~♪ 596 00:37:15,609 --> 00:37:17,277 はい 出来たよ 597 00:37:25,619 --> 00:37:28,580 (馬琴) さすが葛飾北斎だ 598 00:37:32,292 --> 00:37:35,170 これを 私にくれ 599 00:37:35,295 --> 00:37:36,755 (北斎) いや 駄目だ 600 00:37:37,130 --> 00:37:39,091 そんな約束じゃねえ 601 00:37:39,508 --> 00:37:41,843 ああっ… ほら ほれ 602 00:37:42,636 --> 00:37:45,138 そこを曲げて 頼む! 603 00:37:45,263 --> 00:37:47,307 駄目だ ほら 604 00:38:03,365 --> 00:38:06,576 さてと 今日は ここらで退散するか 605 00:38:06,952 --> 00:38:08,620 また来るよ ハッ… 606 00:38:09,246 --> 00:38:12,165 (北斎の鼻歌) 607 00:38:16,503 --> 00:38:17,921 (ひぐらしの鳴き声) 608 00:38:18,046 --> 00:38:19,339 (馬琴) 迎え火か 609 00:38:23,260 --> 00:38:25,387 盆は あさってだったな 610 00:38:30,392 --> 00:38:32,936 どれ 貸してみなさい 611 00:39:02,257 --> 00:39:03,633 父上 612 00:39:05,260 --> 00:39:06,595 母上 613 00:39:08,847 --> 00:39:10,390 宗伯が 614 00:39:11,308 --> 00:39:13,393 お抱え医師となり 615 00:39:16,229 --> 00:39:18,732 武士の世界へ戻してくれます 616 00:39:22,986 --> 00:39:24,821 もうすぐでござる 617 00:39:30,577 --> 00:39:32,579 (拍子木の音) 618 00:39:32,788 --> 00:39:36,124 (奉公人たち) 浜路様? 浜路様? 619 00:39:37,626 --> 00:39:39,669 (皮上宮六) 花嫁が逃げた だと? 620 00:39:39,961 --> 00:39:42,422 (ひき六) はっ 誠に面目次第もなき始末ながら… 621 00:39:42,547 --> 00:39:45,926 (軍木五倍二ぬるでごばいじ) 貴様 陣代様を嘲弄ちょうろうするつもりか! 622 00:39:46,051 --> 00:39:49,554 嘲弄など とんでもございません その証拠に… 623 00:39:52,891 --> 00:39:57,145 大塚家秘蔵の 名刀“村雨”にございます 624 00:39:57,646 --> 00:39:59,231 村雨… 625 00:40:00,190 --> 00:40:02,442 噂うわさには聞いたことがあるぞ 626 00:40:02,734 --> 00:40:05,862 さすがは陣代様 この村雨を引き出物として 627 00:40:05,987 --> 00:40:08,782 陣代様に献上さしあげるつもりで ご用意しておりました 628 00:40:09,157 --> 00:40:12,035 ほう… 見せてみい 629 00:40:12,327 --> 00:40:13,495 (ひき六) はっ… 630 00:40:20,252 --> 00:40:22,295 これが村雨… 631 00:40:22,879 --> 00:40:25,048 振れば 水を発するのだな 632 00:40:25,674 --> 00:40:27,050 さようでございます 633 00:40:31,596 --> 00:40:32,681 (皮上) ん? 634 00:40:37,394 --> 00:40:38,520 (皮上) ふん! 635 00:40:39,646 --> 00:40:43,817 そんなはずは ござりませぬ もっと強く! 636 00:40:46,194 --> 00:40:47,988 ええい! 637 00:40:48,905 --> 00:40:51,867 水どころか この刀 錆さびておるではないか! 638 00:40:52,200 --> 00:40:54,744 うぬは わしをからかっておるのか! 639 00:40:54,870 --> 00:40:55,078 ♪~ 640 00:40:55,078 --> 00:40:57,581 ♪~ めっ 滅相めっそうもない! これは何かの手違いで… 641 00:40:57,581 --> 00:40:58,790 めっ 滅相めっそうもない! これは何かの手違いで… 642 00:40:58,915 --> 00:40:59,833 ああっ… 643 00:40:59,958 --> 00:41:01,585 (皮上) ええい! (ひき六) ああ… 644 00:41:01,918 --> 00:41:03,211 (女中たちの悲鳴) 645 00:41:12,387 --> 00:41:13,847 網乾め 646 00:41:16,141 --> 00:41:17,559 まあ いい 647 00:41:18,351 --> 00:41:20,770 天罰を下してやるさ 648 00:41:20,937 --> 00:41:23,940 ~♪ 649 00:41:27,277 --> 00:41:30,780 (浜路) この道が 本当に 古河へ通じているのですか? 650 00:41:31,781 --> 00:41:33,033 (網乾) いいや 651 00:41:34,284 --> 00:41:35,285 浜路 652 00:41:37,329 --> 00:41:39,706 俺と一緒に逃げて 楽しく暮らそう 653 00:41:40,540 --> 00:41:42,918 (浜路) 信乃様のところへ 連れていくと 654 00:41:43,418 --> 00:41:45,170 約束したではないですか 655 00:41:48,423 --> 00:41:49,674 (水しぶきが飛ぶ音) 656 00:41:50,008 --> 00:41:51,426 その刀は… ♪~ 657 00:41:51,426 --> 00:41:52,802 ♪~ 658 00:41:52,928 --> 00:41:54,179 村雨よ 659 00:41:54,638 --> 00:41:55,680 なんで… 660 00:41:56,264 --> 00:41:57,682 あの馬鹿め 661 00:41:57,974 --> 00:42:01,061 偽の刀を 公方様に献上するつもりだ 662 00:42:01,186 --> 00:42:03,605 フッハハハハ 663 00:42:03,897 --> 00:42:05,106 それを… 664 00:42:05,649 --> 00:42:08,526 本当に村雨か よく見せてください 665 00:42:27,254 --> 00:42:28,797 (網乾) 馬鹿な奴だ 666 00:42:28,964 --> 00:42:31,549 さあ おとなしく村雨を返せ 667 00:42:32,217 --> 00:42:36,137 (浜路) これは 信乃様の刀でございます 668 00:42:37,264 --> 00:42:39,599 (網乾) うっ… ああ… 669 00:42:39,724 --> 00:42:41,893 この女アマ! 670 00:42:42,727 --> 00:42:45,438 (もみ合う声) 671 00:42:46,273 --> 00:42:49,567 (浜路の悲鳴) 672 00:42:50,318 --> 00:42:51,569 (舌打ち) 673 00:42:56,157 --> 00:42:57,951 (網乾) 何だ お前は… 674 00:42:58,076 --> 00:43:00,370 (犬山道節いぬやまどうせつ) その刀を置いて去れ 675 00:43:00,870 --> 00:43:02,872 命だけは助けてやろう 676 00:43:03,790 --> 00:43:05,542 (網乾) 片腹 痛いわ 677 00:43:07,002 --> 00:43:08,461 (斬る音) (網乾) うっ… 678 00:43:10,505 --> 00:43:11,965 (倒れる音) 679 00:43:21,266 --> 00:43:22,600 (荘助) 待て! 680 00:43:27,230 --> 00:43:28,690 網乾… 681 00:43:30,317 --> 00:43:31,693 浜路様は どこだ? 682 00:43:32,444 --> 00:43:33,820 “はまじ”… 683 00:43:34,738 --> 00:43:35,280 ~♪ 684 00:43:35,280 --> 00:43:37,741 ~♪ ああ その男に斬られて 崖下に落ちた女人にょにんか 685 00:43:37,741 --> 00:43:39,868 ああ その男に斬られて 崖下に落ちた女人にょにんか 686 00:43:40,410 --> 00:43:43,538 嘘だ! 怪しき奴… 687 00:43:43,663 --> 00:43:45,582 本当のことを話せ! 688 00:43:45,707 --> 00:43:47,042 (水しぶきが飛ぶ音) 689 00:43:47,167 --> 00:43:48,335 (荘助) ああっ… 690 00:43:50,295 --> 00:43:52,005 その刀は… 691 00:43:52,130 --> 00:43:56,134 悪いが これで定正さだまさが討てるのでな 692 00:43:56,343 --> 00:43:58,219 その刀は信乃様のもの 693 00:43:58,595 --> 00:43:59,512 返せ! 694 00:44:13,526 --> 00:44:14,944 これは… 695 00:44:15,904 --> 00:44:18,448 (道節) お前に構ってる暇はない 696 00:44:19,657 --> 00:44:20,492 ふんっ! 697 00:44:22,035 --> 00:44:24,120 ♪~ 698 00:44:28,416 --> 00:44:31,419 ~♪ 699 00:44:33,338 --> 00:44:38,134 (横堀在村よこぼりありむら) この者 故 足利持氏あしかがもちうじ公の遺臣の子で 700 00:44:38,259 --> 00:44:40,887 犬塚信乃という者です 701 00:44:41,429 --> 00:44:45,308 亡き父が 御主君から お預かりした名刀“村雨”を 702 00:44:45,433 --> 00:44:49,312 公方様に献上いたしたく 罷まかり出ました 703 00:44:49,771 --> 00:44:54,734 (足利成氏なりうじ) その志 誠に神妙である 704 00:44:55,402 --> 00:44:58,571 いざ 御見ぎょけんに入れよ 705 00:45:03,284 --> 00:45:06,287 ♪~ 706 00:45:15,588 --> 00:45:17,298 ~♪ 707 00:45:17,298 --> 00:45:18,591 ~♪ あいや 708 00:45:18,967 --> 00:45:20,093 しばらく お待ちを… 709 00:45:22,387 --> 00:45:25,056 誠に恐れ入った儀で ござりまするが 710 00:45:25,306 --> 00:45:28,601 その刀 村雨ではござりませぬ 711 00:45:29,769 --> 00:45:30,937 何と申す? 712 00:45:31,980 --> 00:45:34,357 私わたくしの持参いたしました刀 713 00:45:34,524 --> 00:45:37,360 事前に 何者かに すり替えられておりました 714 00:45:38,528 --> 00:45:41,990 願わくば 数日のお許しをいただき 715 00:45:42,240 --> 00:45:44,451 本物の村雨を取り返し 716 00:45:45,076 --> 00:45:47,036 改めて献上いたしとうござる 717 00:45:47,912 --> 00:45:51,040 なにとぞ 今しばらくの ご猶予を… 718 00:45:51,166 --> 00:45:53,126 (在村) うぬは間者かんじゃだな? 719 00:45:53,251 --> 00:45:55,628 これに託して この城を 探りに来たに違いない 720 00:45:55,920 --> 00:45:58,798 途方もない 私 天地天命に誓って… 721 00:45:58,923 --> 00:46:01,050 それ ひっ捕らえて糾明きゅうめいせい! 722 00:46:01,176 --> 00:46:01,634 (侍たち) はっ! 723 00:46:01,634 --> 00:46:02,385 (侍たち) はっ! ♪~ 724 00:46:02,385 --> 00:46:04,637 ♪~ 725 00:46:05,889 --> 00:46:07,474 (在村) 出合え 出合え! 726 00:46:09,601 --> 00:46:10,518 (侍) ぐあっ… 727 00:46:21,488 --> 00:46:23,072 (侍たち) 出合え 出合え! 728 00:46:32,165 --> 00:46:33,124 (侍) ああっ… 729 00:46:33,917 --> 00:46:36,419 何をしておる あれを討ち取れ! 730 00:46:44,219 --> 00:46:48,431 誰か おらぬのか 成氏の家来に人は居ないのか! 731 00:46:49,807 --> 00:46:51,976 犬飼現八いぬかいげんぱちを連れてこい 732 00:46:52,101 --> 00:46:54,103 (重い扉が開く音) 733 00:47:00,235 --> 00:47:01,319 (信乃) ううっ… 734 00:47:16,292 --> 00:47:19,295 ~♪ 735 00:47:19,712 --> 00:47:21,381 もはや これまでか 736 00:47:26,010 --> 00:47:30,765 これは 足利家に仕える 犬飼現八と申す者 737 00:47:32,225 --> 00:47:34,644 訳あって牢獄より罷まかり出た 738 00:47:35,186 --> 00:47:38,565 おぬしを捕らえれば 無罪放免となるゆえ 739 00:47:39,816 --> 00:47:43,403 神妙に お縄にかかれ 740 00:47:46,155 --> 00:47:50,618 ここに一人で上のぼってくるとは あっぱれな覚悟だ 741 00:47:51,661 --> 00:47:53,496 選ばれし強者つわものと見た 742 00:47:54,163 --> 00:47:58,209 冥途の土産に よい腕試しとなろう 743 00:47:59,794 --> 00:48:00,878 さあ 744 00:48:03,089 --> 00:48:03,923 参れ! 745 00:48:05,925 --> 00:48:08,928 ♪~ 746 00:48:09,721 --> 00:48:11,014 やあっ! 747 00:48:17,812 --> 00:48:18,813 (現八) うあっ! 748 00:48:38,333 --> 00:48:39,250 うわっ… 749 00:48:47,467 --> 00:48:48,551 おぬしは… 750 00:49:02,231 --> 00:49:04,233 (2人) うわあああ! 751 00:49:08,071 --> 00:49:11,074 ~♪ 752 00:49:15,495 --> 00:49:19,666 ああ… これじゃあ お前 続きが気になって仕方がねえや 753 00:49:19,791 --> 00:49:21,459 (馬琴) フフフフッ… 754 00:49:22,794 --> 00:49:25,004 (北斎) しかし あの浜路はひどい 755 00:49:25,672 --> 00:49:27,882 あれは お前 かわいそうすぎる! 756 00:49:28,466 --> 00:49:31,386 (馬琴) その意味も あとで分かる仕掛けになっておる 757 00:49:31,552 --> 00:49:33,012 とにかく 私は 758 00:49:33,137 --> 00:49:37,558 正しき男たち 清き女たちの死を 無駄には せん 759 00:49:37,684 --> 00:49:40,395 (北斎) そもそも 伏姫様からして 760 00:49:40,520 --> 00:49:42,939 罪もねえのに 非業ひごうの死を遂げてんじゃねえか 761 00:49:43,064 --> 00:49:46,359 まあ まあ まあ 心配は無用だ 762 00:49:46,859 --> 00:49:50,822 私は 正義は必ず報われる という物語を 763 00:49:50,947 --> 00:49:53,032 書こうとしているのだから 764 00:49:54,325 --> 00:49:57,537 (北斎) 今んところ お前 人の運命さだめを もてあそぶ― 765 00:49:57,662 --> 00:50:00,289 卑劣なじじいにしか 見えねえぜ 766 00:50:01,332 --> 00:50:03,960 (馬琴) まあ 続きを楽しみにしていてくれ 767 00:50:04,502 --> 00:50:06,295 (北斎のため息) 768 00:50:06,421 --> 00:50:07,630 (北斎) ほれ 769 00:50:08,423 --> 00:50:11,843 とにかく よろしく頼みますよ 770 00:50:13,094 --> 00:50:15,138 みんな 待ってんだからよ 771 00:50:16,723 --> 00:50:19,767 ところで 鉄砲が よく出てくるが 772 00:50:19,892 --> 00:50:23,479 「八犬伝」の時代に 鉄砲なんてものが あったのかね? 773 00:50:24,021 --> 00:50:28,484 (馬琴) いや 鉄砲が伝来したのは 天文てんぶん十二年のことだから 774 00:50:28,735 --> 00:50:30,903 この物語より だいたい 775 00:50:31,320 --> 00:50:33,656 六、七十年 後あとのことになる 776 00:50:33,781 --> 00:50:35,199 やっぱり そうかい 777 00:50:35,324 --> 00:50:37,869 (馬琴) 私は 読者に許されるであろう嘘は 778 00:50:37,994 --> 00:50:39,871 どんどん取り入れる 779 00:50:41,873 --> 00:50:43,374 そうよ 780 00:50:43,791 --> 00:50:48,129 大戯作者 曲亭馬琴は そうこなくちゃな 781 00:50:55,052 --> 00:50:58,848 以前 お前さんに “なんで戯作を書くのか?”と言われて 782 00:50:59,390 --> 00:51:01,768 “生計のためだ”と答えた 783 00:51:01,934 --> 00:51:02,769 (北斎) うん 784 00:51:02,894 --> 00:51:03,978 しかし 785 00:51:05,229 --> 00:51:08,441 本当は そうではないことに 気づいた 786 00:51:09,567 --> 00:51:11,235 私は 結局 787 00:51:12,528 --> 00:51:16,991 正しい者が勝ち 悪は罰せられる 788 00:51:17,116 --> 00:51:18,659 ♪~ 789 00:51:18,659 --> 00:51:20,119 ♪~ そういう世界を 描えがく目的で 790 00:51:20,119 --> 00:51:22,830 そういう世界を 描えがく目的で 791 00:51:22,955 --> 00:51:24,749 戯作を書いているんだ 792 00:51:26,292 --> 00:51:27,710 (北斎) この世は 793 00:51:28,085 --> 00:51:30,171 そう うまくゆくかね? 794 00:51:32,423 --> 00:51:34,091 (馬琴) ゆかんから 795 00:51:35,343 --> 00:51:37,470 物語として書くんだ 796 00:51:40,681 --> 00:51:44,268 悪が勝つこともある この世の中だからこそ 797 00:51:45,603 --> 00:51:47,313 別の世界を 798 00:51:48,731 --> 00:51:50,858 読者には味わってもらいたい 799 00:51:54,195 --> 00:51:55,696 つまり 800 00:51:56,531 --> 00:51:58,658 虚の世界だね 801 00:52:00,576 --> 00:52:01,953 そうだな 802 00:52:03,830 --> 00:52:05,706 悲しいかな それは 803 00:52:05,873 --> 00:52:07,291 ~♪ 804 00:52:07,291 --> 00:52:08,876 ~♪ 虚の世界だ 805 00:52:09,794 --> 00:52:12,922 (お百) ちょっと あんた まただよ~ 806 00:52:13,256 --> 00:52:17,510 隣の家の犬が 庭の畑 踏み荒らしてさ… 807 00:52:17,718 --> 00:52:18,803 あっ 808 00:52:19,095 --> 00:52:21,389 あんた 来てたのかい 809 00:52:21,514 --> 00:52:23,975 いい家じゃないか お百さん 810 00:52:24,642 --> 00:52:28,729 (お百) 前の家は 下駄屋だった私の実家だよ 811 00:52:28,980 --> 00:52:32,316 婿に来た この人が 下駄屋ほったらかして 812 00:52:32,441 --> 00:52:35,528 勝手に 物書きなんかに なっちまってさ 813 00:52:36,529 --> 00:52:38,197 (お百) あんた! (馬琴) ん? 814 00:52:38,322 --> 00:52:42,201 お高くとまった お武家の犬 どうにかするよう言っとくれ! 815 00:52:42,326 --> 00:52:45,121 そんな大声で… 隣に聞こえるではないか 816 00:52:45,997 --> 00:52:47,874 聞こえるように言ってんだ! 817 00:52:50,418 --> 00:52:51,544 …ったく 818 00:52:51,878 --> 00:52:55,882 「八犬伝」とやらを ずっと書いてるから 犬が寄ってくんだよ! 819 00:52:56,090 --> 00:52:57,884 ハハハハッ… 820 00:52:58,009 --> 00:52:59,802 あたしゃ 猫好きなんだ 821 00:53:00,136 --> 00:53:03,055 猫の話にすりゃ よかったんだよ 822 00:53:03,431 --> 00:53:07,184 (宗伯) 駄目ですよ お父様のお仕事の邪魔をしては 823 00:53:07,310 --> 00:53:08,269 (お百) ふん! 824 00:53:08,394 --> 00:53:12,732 こんな くたばりかけ同士の 与太話よたばなしが仕事だって? 825 00:53:12,899 --> 00:53:14,567 笑わせんじゃないよ! 826 00:53:14,692 --> 00:53:16,736 さあさあ あちらへ 827 00:53:20,531 --> 00:53:23,534 ♪~ 828 00:53:26,329 --> 00:53:28,122 (馬琴) ようやく宗伯も 829 00:53:28,831 --> 00:53:32,043 松前家の扶持ふちをいただく 身分になったのだが… 830 00:53:33,920 --> 00:53:35,212 (馬琴のため息) 831 00:53:35,463 --> 00:53:39,884 (馬琴) どうにも 病が抜けん 832 00:53:42,345 --> 00:53:45,514 (北斎) 医者の不養生ふようじょうかぁ 833 00:53:46,766 --> 00:53:48,184 (馬琴) この家も 834 00:53:48,309 --> 00:53:51,312 医者を開業するために 用意したのだが 835 00:53:52,897 --> 00:53:55,566 開店休業が続いておる 836 00:53:56,859 --> 00:54:00,696 八犬士のようには ゆかんなぁ 837 00:54:02,073 --> 00:54:03,866 ほーら ハハッ ~♪ 838 00:54:03,866 --> 00:54:04,367 ~♪ 839 00:54:04,492 --> 00:54:05,534 出来たよ 840 00:54:05,785 --> 00:54:06,786 (馬琴) おっ… 841 00:54:08,996 --> 00:54:10,414 おおっ 842 00:54:13,793 --> 00:54:16,212 お前さんは ひと筆で 843 00:54:16,379 --> 00:54:19,173 これほどの絵を描き上げるのに 844 00:54:20,549 --> 00:54:24,720 最近 重信の絵が 845 00:54:25,554 --> 00:54:26,722 遅れがちなんだ 846 00:54:27,932 --> 00:54:31,811 (北斎) そういや 病気を患ってるとか言ってたな 847 00:54:32,228 --> 00:54:35,648 ならば お前さん 代わりに描いてくれんか? 848 00:54:36,857 --> 00:54:38,067 (北斎) 駄目! 849 00:54:40,486 --> 00:54:41,404 それどころか… 850 00:54:42,071 --> 00:54:44,448 当分 ここには 来れないかもしれねえ 851 00:54:45,741 --> 00:54:46,909 なんで? 852 00:54:47,076 --> 00:54:50,913 (北斎) 富士を とことんまで 描いてやろうと思い立ってね 853 00:54:54,125 --> 00:54:56,002 そのためには 854 00:54:56,502 --> 00:55:01,132 富士山の見える国を 全部 巡って歩かにゃならねえ 855 00:55:02,091 --> 00:55:05,011 海の上からだって こう 見えるしね 856 00:55:05,720 --> 00:55:07,221 海の上からか… 857 00:55:09,181 --> 00:55:10,683 (北斎) なんか… 858 00:55:11,642 --> 00:55:13,644 急に そわそわしてきた 859 00:55:14,603 --> 00:55:17,606 日も暮れたんで 今日は これで 860 00:55:28,868 --> 00:55:31,245 (北斎) ああ 日が暮れちゃう 861 00:55:31,954 --> 00:55:33,956 (拍子木の音) 862 00:55:34,081 --> 00:55:36,876 (若い衆の声援) 863 00:55:41,589 --> 00:55:43,132 (若い衆) 投げろ! 投げろ! 864 00:55:47,344 --> 00:55:50,389 (犬田小文吾いぬたこぶんご) 房六ふさろく まだまだ脇が甘いな 865 00:55:50,848 --> 00:55:52,266 (山林房六) クソッ! 866 00:55:53,267 --> 00:55:54,977 (小文吾) 今年の秋祭りも 867 00:55:55,102 --> 00:55:58,814 犬田屋の船が 奉納旗ばたを掲げるぞ! 868 00:55:58,939 --> 00:56:00,399 (犬田屋一同) おおー! 869 00:56:06,155 --> 00:56:07,573 (使いの者) 若旦那! 870 00:56:08,157 --> 00:56:11,452 か… 川で大将が お呼びです 871 00:56:12,578 --> 00:56:15,456 ♪~ 872 00:56:20,711 --> 00:56:23,714 ~♪ 873 00:56:26,842 --> 00:56:28,636 大丈夫 敵ではござらん 874 00:56:29,970 --> 00:56:33,599 (現八) ここは どこだ? 875 00:56:34,308 --> 00:56:38,771 (犬田文五兵衛ぶんごべえ) 利根川沿いの網元 犬田屋の営む旅籠はたごでございます 876 00:56:39,313 --> 00:56:40,231 現八殿 877 00:56:43,442 --> 00:56:44,693 文五兵衛殿! 878 00:56:45,861 --> 00:56:47,696 (信乃) お二人が ここへ運んでくださり 879 00:56:48,322 --> 00:56:50,157 命拾いいたしました 880 00:56:50,407 --> 00:56:53,494 本当に ありがとうございました 881 00:56:53,619 --> 00:56:57,998 いえいえ 運んだのは この小文吾でして 882 00:56:58,749 --> 00:57:03,796 私は 小舟で漂ってるお二人を 見つけただけです 883 00:57:03,921 --> 00:57:06,549 私からも礼を申す 884 00:57:07,883 --> 00:57:11,137 昔 侍だった頃 885 00:57:11,554 --> 00:57:14,473 お父上には 散々 お世話になりました 886 00:57:14,932 --> 00:57:16,225 それゆえ 887 00:57:16,809 --> 00:57:19,812 ここで こうして 現八殿のお役に立てて 888 00:57:19,937 --> 00:57:21,939 何よりでございます 889 00:57:27,903 --> 00:57:29,613 (現八) それにしても 890 00:57:30,072 --> 00:57:33,826 おぬしが私を 小舟へと引き上げたのは 891 00:57:34,118 --> 00:57:35,536 何ゆえ? 892 00:57:36,579 --> 00:57:39,456 私は おぬしを 捕まえようとしたのだぞ 893 00:57:40,749 --> 00:57:42,084 (信乃) おぬし 894 00:57:45,588 --> 00:57:47,173 このような珠を持っておらぬか 895 00:57:47,840 --> 00:57:50,843 ♪~ 896 00:57:54,096 --> 00:57:55,181 (信乃) やはりな 897 00:57:55,764 --> 00:57:58,392 戦っている時に その頬のあざが見えた 898 00:57:59,894 --> 00:58:01,395 これは… 899 00:58:01,729 --> 00:58:02,938 どういうことだ 900 00:58:03,063 --> 00:58:03,939 (小文吾) 俺も 901 00:58:06,567 --> 00:58:09,987 俺の尻にも 牡丹ぼたんの形のあざがある 902 00:58:15,743 --> 00:58:16,952 (近づく足音) 903 00:58:17,077 --> 00:58:18,495 (障子が開く音) ~♪ 904 00:58:19,246 --> 00:58:20,956 (男) 公方の追っ手が迫っている! 905 00:58:27,588 --> 00:58:29,590 (信乃たちの荒い息) 906 00:58:29,924 --> 00:58:31,759 (信乃) さすがに もう大丈夫だろう 907 00:58:38,349 --> 00:58:39,975 (現八) ふう… 908 00:58:41,894 --> 00:58:42,895 (現八のため息) 909 00:58:43,145 --> 00:58:44,271 (現八) で… 910 00:58:45,856 --> 00:58:48,192 おぬしは一体 何者だ? 911 00:58:49,026 --> 00:58:50,945 なぜ我われらを助ける? 912 00:58:56,951 --> 00:58:58,244 (ゝ大ちゅだい法師) 拙者せっしゃ ♪~ 913 00:58:58,244 --> 00:58:58,619 ♪~ 914 00:58:58,744 --> 00:59:03,332 南総里見家に仕える 金碗大輔と申す者 915 00:59:03,582 --> 00:59:07,544 二十年前に出家して 今はゝ大ちゅだい法師と名乗っております 916 00:59:09,088 --> 00:59:10,506 訳あって 917 00:59:10,923 --> 00:59:13,050 皆様がお持ちの その珠を 918 00:59:13,676 --> 00:59:17,304 二十年間 捜し求めてまいりました 919 00:59:18,264 --> 00:59:20,057 二十年間… 920 00:59:20,266 --> 00:59:21,392 (法師) これも 921 00:59:23,143 --> 00:59:25,396 伏姫様のお導き 922 00:59:26,939 --> 00:59:29,566 珠は全部で八つ ございます 923 00:59:30,401 --> 00:59:31,819 (小文吾) 八つ… 924 00:59:33,279 --> 00:59:34,571 珠は今 925 00:59:36,282 --> 00:59:39,326 強く 引き合っております 926 00:59:39,493 --> 00:59:41,996 そして 時を同じくして 927 00:59:42,663 --> 00:59:46,125 とてつもなく巨大で 凶悪な邪気が 928 00:59:46,625 --> 00:59:49,378 再び 動き始めました 929 00:59:52,923 --> 00:59:54,425 (扇谷おうぎがやつ定正) 何だと! ~♪ 930 00:59:54,425 --> 00:59:55,467 ~♪ 931 00:59:55,592 --> 00:59:58,429 芳流閣ほうりゅうかくに間者だと! 932 00:59:58,887 --> 01:00:00,014 (在村) はっ 933 01:00:01,307 --> 01:00:03,183 公方様は ご無事です 934 01:00:03,309 --> 01:00:05,769 …が 間者は 935 01:00:06,061 --> 01:00:07,438 取り逃がしました 936 01:00:08,397 --> 01:00:11,400 ♪~ 937 01:00:13,360 --> 01:00:15,612 おお 玉梓 938 01:00:15,904 --> 01:00:18,157 (玉梓) 間者を取り逃がすとは 939 01:00:18,574 --> 01:00:23,537 そなたを芳流閣に潜ませている意味が ないではないか 在村 940 01:00:24,079 --> 01:00:25,039 ははっ… 941 01:00:26,582 --> 01:00:28,000 定正様 942 01:00:28,792 --> 01:00:32,713 これは かねてより ご建言けんげん 申し上げております― 943 01:00:33,088 --> 01:00:36,467 里見家の手の者の 仕業ではござりませぬか? 944 01:00:36,967 --> 01:00:41,013 (在村) 恐れながら 我が配下にあります里見義実は 945 01:00:41,138 --> 01:00:44,683 名君として 名を馳せております 好人物ゆえに まさか 946 01:00:44,808 --> 01:00:47,436 間者を送り込むような そのような大たいそれたことを… 947 01:00:47,561 --> 01:00:49,563 ええい 黙れ! 948 01:00:51,065 --> 01:00:55,736 どいつも こいつも 里見 里見と こざかしい 949 01:00:58,238 --> 01:00:59,990 さては 在村 950 01:01:00,783 --> 01:01:04,328 そのように里見義実を持ち上げ 951 01:01:04,453 --> 01:01:07,289 この わしを愚弄ぐろうしておるのだな 952 01:01:08,540 --> 01:01:09,708 (在村) 滅相もござ… 953 01:01:10,501 --> 01:01:11,335 ああっ! 954 01:01:12,419 --> 01:01:14,004 (侍たち) うわっ うわあ… 955 01:01:14,129 --> 01:01:17,299 (河鯉権之佐かわごいごんのすけ) 騒ぐでない! 無礼討ちじゃ! 956 01:01:18,550 --> 01:01:21,387 早はよう 里見を取り除かねば 957 01:01:22,471 --> 01:01:24,848 災いになりましょうぞ 958 01:01:26,892 --> 01:01:29,895 ~♪ 959 01:01:30,938 --> 01:01:33,023 (義実) あれから二十年 960 01:01:33,357 --> 01:01:37,986 伏姫のおかげで この里見家は安泰であった 961 01:01:38,278 --> 01:01:39,488 ただ 962 01:01:40,489 --> 01:01:44,660 あのあと 五ごの君きみが 大鷲に さらわれたことは 963 01:01:45,619 --> 01:01:47,329 いまだに悔やまれてならない 964 01:01:47,454 --> 01:01:49,248 (家臣たち) 姫! 姫! (遠ざかる赤子の泣き声) 965 01:01:50,124 --> 01:01:54,378 (義実) 五の君を捜しに出た 世話役の世四郎と おとねも 966 01:01:54,670 --> 01:01:57,089 いまだに戻らぬままじゃ 967 01:02:00,384 --> 01:02:03,345 (信乃) やはり我らには 前世からの繋がりが あったようだな 968 01:02:03,470 --> 01:02:05,139 (現八) ゝ大ちゅだい法師は別れ際に 969 01:02:05,264 --> 01:02:08,892 “新たなる珠の力が導く方へ 向かう”と言われていた 970 01:02:09,017 --> 01:02:12,229 (小文吾) 我らも手分けして 珠を持つ残りの犬士を探そう 971 01:02:12,354 --> 01:02:13,188 (現八) おう 972 01:02:13,313 --> 01:02:16,692 とにかく 私の知る もう一人の犬士に 早く引き合わせたい 973 01:02:16,817 --> 01:02:18,110 先を急ごう 974 01:02:24,950 --> 01:02:25,868 (信乃) 荘助… 975 01:02:26,910 --> 01:02:28,078 荘助ではないか 976 01:02:28,454 --> 01:02:30,289 はあっ ああっ… ♪~ 977 01:02:30,414 --> 01:02:31,665 (信乃) 荘助! 978 01:02:33,167 --> 01:02:34,376 荘助 979 01:02:37,212 --> 01:02:38,547 (信乃) 何があった? 980 01:02:39,131 --> 01:02:40,507 浜路様… 981 01:02:41,091 --> 01:02:42,634 浜路様が… 982 01:02:42,843 --> 01:02:44,887 浜路が どうしたというのだ? 983 01:02:45,012 --> 01:02:47,848 ~♪ 984 01:02:48,640 --> 01:02:50,225 (宗伯) こちらでございます 985 01:02:53,353 --> 01:02:55,355 (宗伯) ここへ お願いします (北斎) よう 986 01:02:55,481 --> 01:02:58,150 あっ おはようございます 北斎先生 987 01:02:58,525 --> 01:03:02,571 今日は 父を中村座に ご招待いただき ありがとうございます 988 01:03:02,696 --> 01:03:07,367 なあに 尾上菊五郎おのえきくごろうの野郎に 女の幽霊の絵を描いてやったんだが 989 01:03:07,493 --> 01:03:10,287 そのお礼に とかで 呼ばれちまったんだよ 990 01:03:10,829 --> 01:03:15,792 鶴屋南北つるやなんぼく先生の新作で 今 大評判の「東海道四谷怪談」ですよね 991 01:03:16,627 --> 01:03:19,296 なんでも 二日にわたる大芝居だとか 992 01:03:22,257 --> 01:03:27,221 曲亭先生は きっと 南北のことが気になってるぜ 993 01:03:27,346 --> 01:03:29,848 (馬琴) おい 待たせたな (北斎) ああ いやいや 994 01:03:30,474 --> 01:03:32,351 (宗伯) さあ 北斎先生 お乗りくださりませ 995 01:03:32,476 --> 01:03:35,020 (北斎) おいらは 要らねえよ 駕籠は嫌いなんだ 996 01:03:35,145 --> 01:03:35,979 (宗伯) でも… 997 01:03:36,104 --> 01:03:38,774 (北斎) 今まで どこ行くにも 駕籠なんか乗ったことはねえ 998 01:03:38,899 --> 01:03:40,442 曲亭さんだけで いいよ 999 01:03:41,026 --> 01:03:41,944 おい 行こう 1000 01:03:42,069 --> 01:03:43,946 (街のざわめき) 1001 01:03:53,163 --> 01:03:56,041 (中村座の呼び込みの声) 1002 01:03:59,127 --> 01:04:00,379 (呼び込み) 四谷怪談ですよ 1003 01:04:00,504 --> 01:04:04,383 (幕開きの音楽) 1004 01:04:08,470 --> 01:04:10,055 (木戸番) こちらでございやす 1005 01:04:11,640 --> 01:04:14,643 しまった! もう始まってらぁ 1006 01:04:17,646 --> 01:04:20,232 (馬琴) 今 幕が開いたばかりのようだな 1007 01:04:20,857 --> 01:04:25,737 (義太夫ぎたゆう) 顔に似合わぬ 様さま 参る 1008 01:04:26,905 --> 01:04:30,284 あれ? こりゃ 「忠臣蔵」じゃねえか 1009 01:04:30,534 --> 01:04:35,247 (木戸番) いえ これも 「四谷怪談」のお芝居なんでございやす 1010 01:04:41,503 --> 01:04:43,505 (判官はんがん) 師直もろなお 待て 1011 01:04:43,630 --> 01:04:47,342 (師直) ああ どけ どかぬか 1012 01:04:47,467 --> 01:04:50,429 袴はかまが破れる 1013 01:04:52,055 --> 01:04:55,058 やっぱり「忠臣蔵」じゃねえか 1014 01:04:56,101 --> 01:04:58,854 おいら この芝居 好きじゃねえんだよ 1015 01:05:00,397 --> 01:05:02,065 (馬琴) 私は好きだ 1016 01:05:03,233 --> 01:05:05,527 「忠臣蔵」は何度 見てもいい 1017 01:05:06,069 --> 01:05:09,740 へえー こんな誰でも知ってる芝居が 好きかい 1018 01:05:10,198 --> 01:05:14,202 百年前の 実際にあった事件を 題材にして 1019 01:05:14,536 --> 01:05:17,581 巧妙に絵空事えそらごとを織り込んで 1020 01:05:19,207 --> 01:05:22,127 何とも言えんほど うまく出来ている 1021 01:05:22,919 --> 01:05:25,172 神のごとき出し物だ 1022 01:05:32,763 --> 01:05:34,181 (三味線の音色) 1023 01:05:34,306 --> 01:05:35,807 (北斎) ああっ… 1024 01:05:37,517 --> 01:05:40,771 やっと「忠臣蔵」じゃねえ芝居に なったじゃねえか 1025 01:05:41,480 --> 01:05:43,899 半日も待たせやがって 1026 01:05:44,941 --> 01:05:46,943 (お岩) この蚊帳かやがないとな 1027 01:05:47,069 --> 01:05:50,989 あの子が夜 ひどい蚊に せめられて 1028 01:05:51,114 --> 01:05:54,534 (伊右衛門いえもん) 蚊が食くはば 親の役だ 1029 01:05:54,660 --> 01:05:56,495 追ってやれ 1030 01:05:57,079 --> 01:05:58,997 (伊右衛門) 離せ (お岩) 離しゃせず 1031 01:05:59,122 --> 01:06:00,582 (伊右衛門) 離せ (お岩) 離しゃせず 1032 01:06:00,707 --> 01:06:02,167 (伊右衛門) 離せ (お岩) 離しゃせず 1033 01:06:03,001 --> 01:06:04,878 (北斎) 何だ こりゃ 1034 01:06:05,754 --> 01:06:07,798 支離滅裂だな 1035 01:06:17,474 --> 01:06:21,853 (お岩) 今をも知れぬ この岩が 1036 01:06:21,978 --> 01:06:26,274 死なば正まさしく その娘 1037 01:06:26,400 --> 01:06:29,695 祝言さするは 1038 01:06:29,820 --> 01:06:33,281 これ眼前がんぜん 1039 01:06:37,035 --> 01:06:38,453 (伊右衛門) 岩 1040 01:06:38,995 --> 01:06:41,081 許してくれろ 1041 01:06:41,206 --> 01:06:44,710 あやまった 1042 01:06:45,460 --> 01:06:51,174 民谷たみやの血筋 伊藤喜兵衛きへえが 1043 01:06:51,299 --> 01:06:58,306 根葉ねはを枯らして この恨み 1044 01:07:00,517 --> 01:07:01,810 (北斎) ああ… 1045 01:07:03,395 --> 01:07:05,147 怖いね 1046 01:07:05,731 --> 01:07:07,149 (馬琴) 怖い 1047 01:07:12,821 --> 01:07:15,907 (北斎) 菊五郎の奴も 人が悪いや 1048 01:07:16,408 --> 01:07:19,161 あれじゃあ おいらの描いた 幽霊の絵なんて目じゃねえや 1049 01:07:19,286 --> 01:07:20,370 あっ… 1050 01:07:23,707 --> 01:07:25,876 菊五郎に祝儀やるの 忘れたわ 1051 01:07:26,001 --> 01:07:28,170 明日 渡せばよいではないか 1052 01:07:29,796 --> 01:07:33,008 おや 明日も来るつもりかい? 1053 01:07:34,217 --> 01:07:37,679 本当のところは見たくない 気色が悪い 1054 01:07:38,305 --> 01:07:40,974 しかし 二日がかりの 芝居なんだから 1055 01:07:41,099 --> 01:07:43,351 見なきゃ 義理が悪かろう 1056 01:07:49,441 --> 01:07:54,404 (三味線と太鼓の音色) 1057 01:08:04,998 --> 01:08:07,209 ああっ… 岩! 1058 01:08:16,593 --> 01:08:20,722 (重太郎じゅうたろう) 天あまと かけなば (喜多八きたはち) 河と答へん 1059 01:08:20,931 --> 01:08:24,100 (由良之助ゆらのすけ) 然しからば いづれも 1060 01:08:24,518 --> 01:08:25,811 (皆々) はぁ 1061 01:08:25,936 --> 01:08:29,397 何だよ また「忠臣蔵」かよ 1062 01:08:34,069 --> 01:08:39,407 えいえい おー 1063 01:08:40,992 --> 01:08:47,833 (幕切れの音楽) 1064 01:08:52,295 --> 01:08:54,047 (馬琴) 実に どうも 1065 01:08:54,631 --> 01:08:57,926 とんでもない芝居を考える者が あったものだ 1066 01:08:59,386 --> 01:09:02,055 まるっきり つじつまが合わん 1067 01:09:02,722 --> 01:09:04,349 まったくだ 1068 01:09:05,475 --> 01:09:09,646 桜の絵の真ん中に 墨汁を落としたような芝居だな 1069 01:09:11,439 --> 01:09:14,234 (木戸番) 菊五郎さんのところへ ご案内いたしやす 1070 01:09:14,359 --> 01:09:17,153 ああ そうだった また忘れるとこだった 1071 01:09:17,279 --> 01:09:18,113 行こう 1072 01:09:26,621 --> 01:09:27,747 (木戸番) あっ… 1073 01:09:27,873 --> 01:09:30,792 ここから奈落に下りることに なっておりやす 1074 01:09:31,293 --> 01:09:35,630 ついでだから 奈落ってぇやつを ご覧になりやすか? 1075 01:09:35,755 --> 01:09:37,883 (馬琴) それはぜひ 見せてもらおう 1076 01:09:55,191 --> 01:09:58,945 (木戸番) この“ぶん回し”の柱に 柱だけの人数が取りついて 1077 01:09:59,070 --> 01:10:02,365 それを回すと 上の舞台が回る 仕掛けになっておりやすんで 1078 01:10:02,490 --> 01:10:04,159 (馬琴) ほお… 1079 01:10:04,993 --> 01:10:06,077 (木戸番) あれ? 1080 01:10:08,038 --> 01:10:10,248 誰か おるようでござんすね 1081 01:10:13,627 --> 01:10:14,628 (馬琴) おおっ! 1082 01:10:15,795 --> 01:10:16,838 (鶴屋南北) お前さんか 1083 01:10:17,047 --> 01:10:18,673 (木戸番) 南北先生でござんしたか 1084 01:10:18,798 --> 01:10:20,091 (南北) ああ 1085 01:10:20,342 --> 01:10:23,887 せりの具合に 気になるところがあってね 1086 01:10:24,763 --> 01:10:25,889 お前さん どうした? 1087 01:10:26,556 --> 01:10:29,309 あっ 今日 滝沢馬琴先生と 1088 01:10:29,434 --> 01:10:32,729 葛飾北斎先生が 芝居を見に来てくださったんで 1089 01:10:32,854 --> 01:10:35,148 ちょいと 奈落をお見せしようと 1090 01:10:35,273 --> 01:10:39,653 ああっ 曲亭先生と北斎先生が… 1091 01:10:39,778 --> 01:10:41,363 それは それは 1092 01:10:41,529 --> 01:10:45,408 嬉しくもあり 恥ずかしくもある 1093 01:10:45,825 --> 01:10:50,789 作者の鶴屋南北にござります よう おいでくだされました 1094 01:10:50,914 --> 01:10:54,125 ええ… 今 ちょっと 1095 01:10:54,250 --> 01:10:58,254 下りられない形になっておりまして 失礼ではございますが… 1096 01:10:58,380 --> 01:11:01,508 ああ いやいやいや おいらたちゃ もう すぐ行くから 1097 01:11:01,633 --> 01:11:03,301 申し訳ございません 1098 01:11:04,302 --> 01:11:06,888 しかし とにかく… 1099 01:11:07,347 --> 01:11:09,933 あんたの芝居には驚いた 1100 01:11:11,434 --> 01:11:15,522 曲亭さんの怪談は面白いが あんたの怪談は怖い 1101 01:11:17,190 --> 01:11:22,404 でも 「忠臣蔵」に 怪談を挟み込むたぁ 1102 01:11:22,529 --> 01:11:25,240 曲亭さんは怒ってるぜ 1103 01:11:25,740 --> 01:11:26,908 恐れ入ります 1104 01:11:27,200 --> 01:11:28,284 (馬琴) いや 1105 01:11:29,077 --> 01:11:31,579 よく考えて お書きになっている 1106 01:11:31,746 --> 01:11:34,916 私は大変 感服いたした 1107 01:11:35,333 --> 01:11:37,544 (北斎) いやいや でも あんた… 1108 01:11:39,045 --> 01:11:41,423 “とんでもない芝居を書く奴が あったものだ” 1109 01:11:41,548 --> 01:11:43,508 “まったく つじつまが合わん” って さっき… 1110 01:11:43,633 --> 01:11:44,759 言った 1111 01:11:46,803 --> 01:11:50,515 よく考えているのに つじつまが合わんのか? 1112 01:11:50,640 --> 01:11:52,058 そのとおりだ 1113 01:11:52,183 --> 01:11:54,019 (南北) ハッハッハッハッ… 1114 01:11:54,144 --> 01:11:55,311 おおっ おお… 1115 01:11:55,311 --> 01:11:57,647 おおっ おお… ♪~ 1116 01:11:58,857 --> 01:12:00,900 (南北) ああ… あっ! 1117 01:12:02,068 --> 01:12:03,486 私わたくしこそ 1118 01:12:03,611 --> 01:12:08,533 曲亭先生のお書きのものは いつも拝見して 感服しております 1119 01:12:09,409 --> 01:12:11,911 よく まあ 水も漏らさず 1120 01:12:12,037 --> 01:12:15,415 善因善果 悪因悪果 1121 01:12:15,540 --> 01:12:18,251 勧善懲悪かんぜんちょうあくを貫いていらっしゃる 1122 01:12:18,376 --> 01:12:21,004 まあ 世辞はいいです 1123 01:12:21,296 --> 01:12:22,464 それより 1124 01:12:23,548 --> 01:12:28,928 「忠臣蔵」という実の芝居に なぜ虚の怪談話を はめ込まれた? 1125 01:12:29,345 --> 01:12:31,681 (南北) ハハッ… あの… 1126 01:12:32,849 --> 01:12:35,560 嘘話の怪談だけだと 1127 01:12:35,685 --> 01:12:38,271 お上かみから きっと お叱りを受けそうで 1128 01:12:38,396 --> 01:12:42,901 それで 「忠臣蔵」の皮でくるむ… 1129 01:12:43,526 --> 01:12:47,238 ただの“逃げ手”とでも 申しましょうか 1130 01:12:47,572 --> 01:12:51,326 それにしては 手が込んでおりますな 1131 01:12:52,285 --> 01:12:55,371 巧みな工夫で「忠臣蔵」の中に 1132 01:12:55,497 --> 01:12:59,417 怪談仕立ての「義士外伝」を はめ込み しかも… 1133 01:12:59,834 --> 01:13:04,756 怪談そのものが 「忠臣蔵」の裏返しになっておる 1134 01:13:05,507 --> 01:13:08,134 さすがは曲亭先生ですな 1135 01:13:08,510 --> 01:13:10,929 裏返しに お気づきでしたか 1136 01:13:12,097 --> 01:13:17,685 そうやって 実の世界に 虚の世界を加えることで 1137 01:13:17,811 --> 01:13:20,563 ただの加くわえ算ではなく 掛け算のような 1138 01:13:20,688 --> 01:13:22,857 妙な味が出てきやせんかと 思いやしてね 1139 01:13:23,608 --> 01:13:27,821 あれは 加え算でも掛け算でもなく 引き算でしょ! 1140 01:13:27,946 --> 01:13:30,907 おいおい 曲亭さん 1141 01:13:32,826 --> 01:13:34,119 南北さん 1142 01:13:34,869 --> 01:13:37,372 あんたの本当の狙いは 1143 01:13:38,164 --> 01:13:41,251 「忠臣蔵」を愚弄ぐろうすることでは なかったのかね 1144 01:13:41,960 --> 01:13:44,504 へへへヘヘッ 1145 01:13:45,130 --> 01:13:48,258 あるいは そうかもしれませんなぁ 1146 01:13:50,385 --> 01:13:52,679 なぜ そのようなことをされる? 1147 01:13:53,596 --> 01:13:57,767 さっき あたしが 「四谷怪談」を嘘話と申したのは 1148 01:13:57,892 --> 01:13:59,811 あれは遠慮したからで 1149 01:13:59,936 --> 01:14:03,690 本当は 「四谷怪談」のほうが実で 1150 01:14:03,815 --> 01:14:07,735 「忠臣蔵」が嘘話 つまり虚だと 1151 01:14:07,861 --> 01:14:09,988 あたしは考えているので ございます 1152 01:14:10,822 --> 01:14:12,365 何じゃと! 1153 01:14:13,616 --> 01:14:16,995 (北斎) ハッ ハハハッ… 1154 01:14:17,120 --> 01:14:20,832 なるほど 言われてみりゃ そうかもしれねえなぁ 1155 01:14:20,957 --> 01:14:23,376 「忠臣蔵」なんて でたらめもいいとこだ 1156 01:14:23,501 --> 01:14:25,587 (馬琴) いい加減にせんか! (北斎) え? 1157 01:14:27,672 --> 01:14:29,257 (南北) 曲亭先生 1158 01:14:29,799 --> 01:14:33,720 もし あたしの怪談が 本当に怖いなら 1159 01:14:34,429 --> 01:14:39,267 そりゃ あれが実の世界を 描えがいたものだから でございましょう 1160 01:14:39,809 --> 01:14:41,603 あたしは この浮世は 1161 01:14:41,811 --> 01:14:45,732 善因悪果 悪因善果 1162 01:14:46,816 --> 01:14:50,570 良き者が憂うき目に遭い 悪あしき者が栄える 1163 01:14:50,695 --> 01:14:54,532 まるで つじつまの合わない 怪談だらけの世の中だと 1164 01:14:54,657 --> 01:14:56,159 思っておりますんで 1165 01:14:57,660 --> 01:15:00,455 つじつまの合わん浮世だからこそ 1166 01:15:00,580 --> 01:15:04,375 つじつまの合う世界が 必要とされておるのだ! 1167 01:15:04,500 --> 01:15:06,920 (南北) しかし それは無意味な 1168 01:15:07,212 --> 01:15:10,840 ただの つじつま合わせでは ございますまいか 1169 01:15:16,054 --> 01:15:17,972 お前さんの世界は 1170 01:15:19,557 --> 01:15:20,892 有害だ! 1171 01:15:21,434 --> 01:15:26,814 有害のほうが 無意味よりは まだ意味があると 1172 01:15:26,940 --> 01:15:29,567 あたくしは考えているんで ございます 1173 01:15:36,032 --> 01:15:37,367 (木戸番) あっ いけねえ 1174 01:15:37,784 --> 01:15:40,912 ろうそくが 燃え尽きやす 1175 01:15:41,496 --> 01:15:43,706 うん うん 1176 01:15:43,831 --> 01:15:47,835 こりゃ 回り舞台のように 果てしがないわい 1177 01:15:47,961 --> 01:15:49,712 つじつま論は もう おやめ おやめ! 1178 01:15:49,837 --> 01:15:51,005 おう 曲亭さん 1179 01:15:51,256 --> 01:15:53,383 もうそろそろ 帰ろう 1180 01:15:53,758 --> 01:15:55,677 お岩さんが出てくるぞ 1181 01:16:02,100 --> 01:16:05,061 妙な長問答ながもんどうして 1182 01:16:06,271 --> 01:16:07,397 失礼した 1183 01:16:09,565 --> 01:16:10,942 (南北) いえいえ 1184 01:16:11,818 --> 01:16:14,737 私のほうこそ とんだ ご無礼を 1185 01:16:15,029 --> 01:16:16,948 平ひらにお許しを… 1186 01:16:18,074 --> 01:16:20,451 お気を悪くされず 1187 01:16:20,576 --> 01:16:27,542 これからもどうぞ 南北めの芝居を ご贔屓ひいきに 1188 01:16:27,667 --> 01:16:30,670 ~♪ 1189 01:16:30,795 --> 01:16:33,840 (拍子木の音) 1190 01:16:33,965 --> 01:16:35,216 浜路が死んだ? 1191 01:16:35,341 --> 01:16:38,886 (荘助) 申し訳ありません 私がついていながら… 1192 01:16:39,304 --> 01:16:41,556 崖下を隈くまなく捜しましたが 1193 01:16:41,764 --> 01:16:44,350 浜路様のお姿は 既になく… 1194 01:16:45,310 --> 01:16:47,103 川に流されたか 1195 01:16:47,687 --> 01:16:48,604 (現八) いや 1196 01:16:49,230 --> 01:16:51,441 まだ亡くなったとは 1197 01:16:52,358 --> 01:16:53,234 限らんぞ 1198 01:16:53,359 --> 01:16:57,447 そうだ まだ諦めてはいかんぞ 信乃殿 1199 01:16:59,407 --> 01:17:01,326 (現八) それにしても 1200 01:17:01,868 --> 01:17:05,330 村雨を奪った その修験者しゅげんじゃとは 1201 01:17:06,247 --> 01:17:08,333 一体 何者だ? 1202 01:17:08,583 --> 01:17:10,501 (荘助) 村雨を奪い 1203 01:17:12,587 --> 01:17:15,340 “これで定正を討てる”と 申しておりました 1204 01:17:17,133 --> 01:17:18,176 そして 1205 01:17:19,385 --> 01:17:21,095 この珠を持っておりました 1206 01:17:25,308 --> 01:17:28,269 (水しぶきが飛ぶ音) 1207 01:17:29,395 --> 01:17:31,481 (定正) おおっ 1208 01:17:32,148 --> 01:17:34,734 これは見事じゃ 1209 01:17:36,069 --> 01:17:39,864 紛まごうことなき 名刀“村雨” 1210 01:17:41,699 --> 01:17:46,746 これを わしに献上とは 殊勝しゅしょうな心がけじゃ 1211 01:17:47,121 --> 01:17:48,790 (定正) 褒美を遣わす 1212 01:17:49,665 --> 01:17:52,668 ははっ ありがたき幸せ 1213 01:18:01,677 --> 01:18:04,680 ♪~ 1214 01:18:05,014 --> 01:18:06,849 今夜 中の院で宴うたげを開く 1215 01:18:07,308 --> 01:18:09,018 その席に参れ 1216 01:18:11,270 --> 01:18:12,271 ははっ 1217 01:18:12,397 --> 01:18:13,523 ~♪ 1218 01:18:13,523 --> 01:18:14,690 ~♪ くっ… 1219 01:18:15,316 --> 01:18:18,319 ♪~ 1220 01:18:26,661 --> 01:18:27,995 (神楽鈴の音) 1221 01:19:26,762 --> 01:19:31,642 (定正) あの踊り子は “あさけの”と申したのう 1222 01:19:31,767 --> 01:19:33,686 さようでございます 1223 01:19:34,687 --> 01:19:38,858 わしは大いに気に入ったぞ 1224 01:19:42,695 --> 01:19:45,239 (定正) ああ よい よい 1225 01:20:04,884 --> 01:20:06,886 (襖ふすまが開く音) 1226 01:20:20,525 --> 01:20:20,942 ~♪ 1227 01:20:20,942 --> 01:20:23,528 ~♪ (玉梓) 定正様 いけませぬ! 1228 01:20:24,195 --> 01:20:26,572 ♪~ 1229 01:20:27,615 --> 01:20:31,869 (犬坂いぬさか毛野けの) 我こそは 扇谷定正の罠にかかり 殺された― 1230 01:20:31,994 --> 01:20:35,831 相原胤度あいはらたねのりが一子いっし 犬坂毛野 1231 01:20:35,957 --> 01:20:40,419 父の敵かたき 定正の首 頂戴いたす 1232 01:20:40,545 --> 01:20:41,629 おのれ! 1233 01:20:42,129 --> 01:20:43,172 (毛野) うっ… 1234 01:20:48,511 --> 01:20:50,054 (息切れ) 1235 01:20:50,179 --> 01:20:52,181 伏姫め… 1236 01:20:52,306 --> 01:20:54,600 ~♪ 1237 01:20:55,810 --> 01:20:58,354 (道節) あっ これは… 1238 01:20:59,063 --> 01:20:59,855 ♪~ 1239 01:20:59,855 --> 01:21:01,065 ♪~ (侍) おい! 1240 01:21:05,987 --> 01:21:07,113 (足音) 1241 01:21:07,238 --> 01:21:09,532 はあっ! 1242 01:21:17,373 --> 01:21:20,543 里見の手の者だ 捕らえよ 1243 01:21:20,668 --> 01:21:21,502 捕らえよ! 1244 01:21:23,588 --> 01:21:24,630 (道節) おぬしは? 1245 01:21:25,298 --> 01:21:27,216 話はあとだ 逃げるぞ! 1246 01:21:27,341 --> 01:21:28,175 (侍) はあっ! 1247 01:21:31,929 --> 01:21:33,264 おぬしも来い! 1248 01:21:34,515 --> 01:21:36,142 たぶん俺たちは 1249 01:21:37,059 --> 01:21:38,311 仲間だ 1250 01:21:49,030 --> 01:21:49,947 ふん! 1251 01:21:52,742 --> 01:21:54,785 (侍たち) 退ひけ! 退け! 1252 01:21:57,580 --> 01:21:58,664 信乃! 1253 01:22:04,920 --> 01:22:06,005 行くぞ 1254 01:22:11,469 --> 01:22:14,472 ~♪ 1255 01:22:16,057 --> 01:22:18,434 (鳴き声) 1256 01:22:22,730 --> 01:22:23,731 (北斎) 参った 1257 01:22:26,192 --> 01:22:27,485 ヘヘッ 1258 01:22:28,110 --> 01:22:32,406 おいらも ちったぁ 気にはしてたんだ 1259 01:22:33,199 --> 01:22:37,078 しばらく「八犬伝」が出てねえって 聞いててよ 1260 01:22:38,454 --> 01:22:39,664 でも 1261 01:22:40,206 --> 01:22:43,042 今の筋立てを聞くにつけ 1262 01:22:44,168 --> 01:22:47,088 心配ご無用って感じだな 1263 01:22:47,880 --> 01:22:48,881 (北斎の笑い声) 1264 01:22:49,006 --> 01:22:51,175 (馬琴) お前さんが 人のことを心配するとは 1265 01:22:51,300 --> 01:22:53,219 天変地異の前触れだな 1266 01:22:53,344 --> 01:22:55,221 (北斎) なあに ハハッ 1267 01:22:55,388 --> 01:22:59,183 「八犬伝」が中途半端なまま 筆折れってのも お前 1268 01:22:59,308 --> 01:23:01,143 夢見が悪いだけよ 1269 01:23:02,311 --> 01:23:04,230 (馬琴) 本が遅れているのは 1270 01:23:05,106 --> 01:23:07,775 版元が いろいろと 問題を起こしたので 1271 01:23:07,900 --> 01:23:10,152 出したくても 出せなかったのだ 1272 01:23:11,362 --> 01:23:13,781 (北斎) それなら いいがね 1273 01:23:15,491 --> 01:23:16,659 ほら 1274 01:23:17,201 --> 01:23:19,954 南北の一件があってからさ 1275 01:23:20,204 --> 01:23:24,375 あんた えらく おくたびれのように 見えたからさ 1276 01:23:26,585 --> 01:23:29,213 あの奈落での問答のあと 1277 01:23:30,256 --> 01:23:34,593 正直なところ かなり 筆に迷いが出た 1278 01:23:34,844 --> 01:23:37,722 南北の野郎に いいように言われたんだ 1279 01:23:38,597 --> 01:23:40,391 あんたのことだから 1280 01:23:40,516 --> 01:23:43,811 あれこれと気が落ち着かねえだろう とは思ったがね 1281 01:23:44,353 --> 01:23:45,396 ヘヘッ 1282 01:23:45,563 --> 01:23:49,650 でも こうして また書く気になったんだ 1283 01:23:49,775 --> 01:23:51,193 それで いいじゃねえか 1284 01:23:51,318 --> 01:23:53,320 ほれ… おいらの やるよ 1285 01:23:53,696 --> 01:23:54,780 (馬琴) おお… 1286 01:24:01,746 --> 01:24:03,748 ♪~ 1287 01:24:08,753 --> 01:24:10,671 んんっ… 1288 01:24:13,883 --> 01:24:15,301 うーん… 1289 01:24:15,885 --> 01:24:17,595 (北斎) 何でえ お前 1290 01:24:18,846 --> 01:24:22,016 腹痛はらいたなら さっさと厠かわやへ行け 1291 01:24:24,351 --> 01:24:27,646 (馬琴) こんな しょぼくれた爺じいさんから 1292 01:24:28,731 --> 01:24:31,525 どうやって これほどの躍動が 1293 01:24:32,443 --> 01:24:34,445 ひねり出せるのか 1294 01:24:35,446 --> 01:24:38,032 ハハッ… 1295 01:24:38,949 --> 01:24:41,410 もはや お前さんそのものが 1296 01:24:41,744 --> 01:24:43,204 怪談だ 1297 01:24:43,996 --> 01:24:45,831 (北斎) ふん (馬琴) ハハッ… 1298 01:24:45,956 --> 01:24:50,586 (北斎) その言葉 そっくりそのまんま あんたに お返しだぜ 1299 01:24:50,836 --> 01:24:52,880 曲亭さんよ 1300 01:24:53,756 --> 01:24:55,549 (馬琴) そうだな 1301 01:24:57,343 --> 01:24:58,928 まだまだ… 1302 01:24:59,136 --> 01:25:00,054 ~♪ 1303 01:25:00,054 --> 01:25:02,139 ~♪ くたびれては おれんなぁ 1304 01:25:02,556 --> 01:25:03,557 (北斎) で… 1305 01:25:03,933 --> 01:25:06,227 どうなんだい? 宗伯のほうは 1306 01:25:06,769 --> 01:25:08,312 ちっとは よくなったのかね 1307 01:25:08,771 --> 01:25:10,189 (馬琴) いやぁ 1308 01:25:10,689 --> 01:25:15,444 最近は 家を出ることもなく ほとんど横になっている 1309 01:25:16,904 --> 01:25:22,535 それでも 「八犬伝」の校正などを きちんと やってくれてるから 1310 01:25:23,244 --> 01:25:24,495 助かっては いる 1311 01:25:24,620 --> 01:25:25,871 (障子が開く音) 1312 01:25:26,872 --> 01:25:28,666 (太郎) カナリア カナリア 1313 01:25:28,791 --> 01:25:31,794 (お路みち) これ! 太郎 おつぎ 1314 01:25:34,046 --> 01:25:37,132 (太郎) だって おばあちゃんが カナリア見ておいでって 1315 01:25:37,758 --> 01:25:41,095 (お百) こっちは炭団たどん作りで 忙しいんだよ! 1316 01:25:41,762 --> 01:25:45,307 じじい二人で 半日も おしゃべりしてちゃ 1317 01:25:45,432 --> 01:25:47,142 罰が当たるってんだよ! 1318 01:25:47,518 --> 01:25:49,854 (太郎) あっ フンした (北斎) ああ フンしたか 1319 01:25:50,938 --> 01:25:53,023 (お路) では お願いします 1320 01:25:59,572 --> 01:26:01,949 なかなか お前 器量よしじゃねえか 1321 01:26:03,742 --> 01:26:06,078 まあ 器量はともかく 1322 01:26:06,537 --> 01:26:07,830 どうにも… 1323 01:26:10,499 --> 01:26:11,959 愛想が悪い 1324 01:26:12,418 --> 01:26:14,587 しかし まあ 1325 01:26:14,795 --> 01:26:18,048 よく こんな家うちに嫁に来たもんだ 1326 01:26:18,424 --> 01:26:20,676 (北斎) ヘヘッ (馬琴) 何だと? 1327 01:26:21,802 --> 01:26:22,928 ほれ 1328 01:26:23,721 --> 01:26:25,014 ほれ ほれ 1329 01:26:25,139 --> 01:26:26,515 (おつぎ) 行くよ 1330 01:26:29,310 --> 01:26:31,604 (お百) なんで また戻ってきたんだい! 1331 01:26:31,729 --> 01:26:34,273 (お百) ああ 触るんじゃないよ! (北斎) ハハハッ… 1332 01:26:34,648 --> 01:26:37,985 あの婆ばあさんに 炭団ぶっつけられねえうちに 1333 01:26:38,402 --> 01:26:40,029 おいらも退散するかな 1334 01:26:40,154 --> 01:26:41,614 (馬琴) おい! (北斎) ん? 1335 01:26:42,281 --> 01:26:44,033 今日は一枚だけか 1336 01:26:44,658 --> 01:26:47,661 こう見えて おいらも忙しいんでね ヘヘッ 1337 01:26:48,370 --> 01:26:51,624 「冨嶽ふがく三十六景」も まとまったことだし 1338 01:26:51,916 --> 01:26:55,127 今度は「冨嶽百景」ってのを 出すつもりだ 1339 01:26:55,377 --> 01:26:57,171 “百景”か 1340 01:26:57,838 --> 01:27:02,509 (北斎) まだまだ 若造の広重ひろしげなんぞに 負けちゃいられねえや 1341 01:27:07,556 --> 01:27:08,641 はい 1342 01:27:11,226 --> 01:27:12,353 おっ? 1343 01:27:15,064 --> 01:27:16,148 ヘヘッ 1344 01:27:18,275 --> 01:27:21,278 あんたも せいぜい長生きして 1345 01:27:21,862 --> 01:27:23,906 “百犬伝”でも書きな 1346 01:27:25,532 --> 01:27:29,453 ハハッ ハハハハハッ… 1347 01:27:33,958 --> 01:27:35,167 (玄関の戸を閉める音) 1348 01:27:37,962 --> 01:27:40,297 お百さん 精が出るね 1349 01:27:40,422 --> 01:27:41,548 (舌打ち) 1350 01:27:41,757 --> 01:27:46,428 あたしだって 好きで 炭団 丸めてんじゃないんだよ 1351 01:27:46,553 --> 01:27:47,721 (北斎) ええ? 1352 01:27:48,180 --> 01:27:50,599 あんたからも言っとくれよ 1353 01:27:51,141 --> 01:27:54,144 草双紙くさぞうしやら人情本にんじょうぼんやら 1354 01:27:54,269 --> 01:27:56,855 もっと世間様に合わせりゃ 1355 01:27:57,398 --> 01:27:59,650 楽に お金が入んのに 1356 01:28:00,067 --> 01:28:02,277 一人で いばりくさって 1357 01:28:02,736 --> 01:28:05,531 じゃあな また来るよ ヘヘッ 1358 01:28:05,990 --> 01:28:07,324 何でえ! 1359 01:28:08,325 --> 01:28:09,994 みんなして 1360 01:28:10,703 --> 01:28:13,414 あたしを 除のけ者にしやがって 1361 01:28:13,872 --> 01:28:17,126 どうせ あたしゃ無学ですよ! 1362 01:28:18,252 --> 01:28:23,841 何かと言や 人に知られた 滝沢馬琴の妻らしく しろって 1363 01:28:24,091 --> 01:28:26,468 説教ばっかり しやがって 1364 01:28:26,760 --> 01:28:28,804 あたしゃ 下駄屋の女房やってたほうが 1365 01:28:28,929 --> 01:28:31,515 よっぽど楽に暮らせたんだよ! 1366 01:28:35,185 --> 01:28:37,021 (宗伯) いい加減にしてください! 1367 01:28:39,148 --> 01:28:40,733 父上は立派な方です 1368 01:28:41,483 --> 01:28:44,737 正直言って あなたには もったいないお方だ 1369 01:28:44,862 --> 01:28:45,946 それなのに 1370 01:28:46,071 --> 01:28:48,657 その不足がましい悪口は 何事ですか! 1371 01:28:49,408 --> 01:28:51,160 お前まで… 1372 01:28:53,996 --> 01:28:56,915 お前まで 母親に説教するのかい! 1373 01:28:58,208 --> 01:29:02,004 四十しじゅう前にもなって 何もしねえで 1374 01:29:02,337 --> 01:29:04,048 うじ虫みたいに ただ 1375 01:29:04,173 --> 01:29:07,926 うじゃうじゃ うじゃうじゃ 寝てばっかりいる役立たずが! 1376 01:29:08,218 --> 01:29:11,138 そうだ 私は うじ虫だ 1377 01:29:11,388 --> 01:29:14,683 しかし うじ虫のような息子を 産んだのは誰だ 1378 01:29:15,100 --> 01:29:20,230 あの優れた頭と丈夫な体を 持っておられる父上では 断じてない! 1379 01:29:20,481 --> 01:29:22,733 よさないか! 宗伯! 1380 01:29:22,858 --> 01:29:23,901 (宗伯) 申し訳ご… 1381 01:29:24,026 --> 01:29:26,028 (せき込み) ♪~ 1382 01:29:26,028 --> 01:29:27,029 ♪~ 1383 01:29:27,863 --> 01:29:29,281 (せき込み) 1384 01:29:32,159 --> 01:29:33,660 お前… 1385 01:29:34,453 --> 01:29:36,872 子供の頃は まあ 1386 01:29:38,040 --> 01:29:41,376 普通の子供だったじゃないか 1387 01:29:44,254 --> 01:29:48,634 それを この父親が いじり倒して 1388 01:29:49,218 --> 01:29:51,887 そんで 変なんなっちゃったんだよ! 1389 01:29:53,680 --> 01:29:57,559 お前を廃人同様にしたのも この父親 1390 01:29:58,519 --> 01:30:02,356 お前を しつけ殺すのも この父親だ! 1391 01:30:18,580 --> 01:30:20,582 なんと恐ろしいことを… 1392 01:30:22,793 --> 01:30:24,128 私が 1393 01:30:26,547 --> 01:30:30,634 宗伯を しつけ殺す… 1394 01:30:36,557 --> 01:30:38,475 なんと恐ろしいことを… 1395 01:30:39,726 --> 01:30:42,729 ~♪ 1396 01:30:42,855 --> 01:30:45,566 (拍子木の音) 1397 01:30:48,235 --> 01:30:49,653 (猫の鳴き声) 1398 01:30:49,778 --> 01:30:52,114 (女将おかみ) ここは道場なんですが 1399 01:30:52,406 --> 01:30:56,785 暮らし向きも よくないので 宿も始めたんですよ 1400 01:31:00,539 --> 01:31:02,082 (法師) ああ… 1401 01:31:05,210 --> 01:31:06,420 (ため息) 1402 01:31:07,838 --> 01:31:09,047 この雨の中 1403 01:31:09,173 --> 01:31:12,843 途方に暮れていたところ 助かりました 1404 01:31:13,177 --> 01:31:15,929 (女将) お役に立てて何よりです 1405 01:31:17,431 --> 01:31:19,349 ごゆっくり 1406 01:31:37,492 --> 01:31:39,661 (風が吹き込む音) 1407 01:31:40,120 --> 01:31:43,123 ♪~ 1408 01:31:48,962 --> 01:31:50,547 (赤岩一角いっかく) ほう 1409 01:31:50,964 --> 01:31:53,759 なかなかのものだな 1410 01:31:55,093 --> 01:31:57,095 (雷鳴) 1411 01:31:57,512 --> 01:31:59,139 お前さん 1412 01:31:59,431 --> 01:32:02,309 遊んでないで さっさと殺やっちまいな 1413 01:32:02,809 --> 01:32:05,062 まあ そう焦るな 1414 01:32:05,812 --> 01:32:08,774 (赤岩) こいつは楽しめそうだ 1415 01:32:09,233 --> 01:32:12,444 さあ いくぞ! 1416 01:32:21,745 --> 01:32:23,872 (猫の鳴き声) 1417 01:32:24,706 --> 01:32:25,707 うおおっ! 1418 01:32:29,836 --> 01:32:33,048 (犬村大角いぬむらだいかく) 父上 おやめくだされ! 1419 01:32:33,257 --> 01:32:34,633 (赤岩) 大角 1420 01:32:34,758 --> 01:32:36,969 父の邪魔をするか! 1421 01:32:37,219 --> 01:32:38,220 うっ… 1422 01:32:43,725 --> 01:32:46,436 (大角) 旅人を襲い 金品を奪うなど 1423 01:32:46,937 --> 01:32:49,940 なぜ そのような愚かなことを 繰り返すのですか 1424 01:32:50,065 --> 01:32:51,275 (船虫) 大角 1425 01:32:51,733 --> 01:32:53,986 恩義ある父上に逆らうのかえ? 1426 01:32:54,111 --> 01:32:56,154 (大角) うるさい お前は黙ってろ! 1427 01:32:56,280 --> 01:32:58,699 お前が来てから 父は おかしくなってしまった 1428 01:32:58,824 --> 01:33:01,493 (赤岩) 母上に なんという口を利くのだ 1429 01:33:01,743 --> 01:33:04,371 息子だとて容赦は せぬぞ! 1430 01:33:12,337 --> 01:33:14,381 くっ… 父上! 1431 01:33:17,676 --> 01:33:19,011 ええい 1432 01:33:21,596 --> 01:33:22,764 ううっ… 1433 01:33:24,391 --> 01:33:26,518 ううっ… あっ 1434 01:33:27,811 --> 01:33:28,895 ううっ… 1435 01:33:29,104 --> 01:33:32,357 父上 お目覚めくだされ! 1436 01:33:32,649 --> 01:33:33,859 ううっ… 1437 01:33:34,526 --> 01:33:35,360 くっ… 1438 01:33:37,612 --> 01:33:39,323 ううっ うっ 1439 01:33:39,614 --> 01:33:42,617 大角 それをしまえ! 1440 01:33:42,743 --> 01:33:43,994 うああっ 1441 01:33:44,119 --> 01:33:46,705 しまえと言っておるのだ! 1442 01:33:46,830 --> 01:33:48,165 (法師) 御免! 1443 01:33:54,713 --> 01:33:56,840 (法師) ふんっ! 怨霊よ 1444 01:33:57,007 --> 01:33:58,258 立ち去れ! 1445 01:33:58,383 --> 01:34:04,806 (うめき声) 1446 01:34:05,682 --> 01:34:06,975 (大角) 父上! 1447 01:34:12,105 --> 01:34:13,523 (赤岩) 大角… 1448 01:34:15,609 --> 01:34:17,694 愚かな父を 1449 01:34:18,278 --> 01:34:19,571 許せ 1450 01:34:26,870 --> 01:34:28,288 (大角の泣き声) 1451 01:34:33,460 --> 01:34:35,212 おのれ 1452 01:34:36,421 --> 01:34:38,006 すべて お前のせいだ! 1453 01:34:40,300 --> 01:34:43,387 (悲鳴) 1454 01:34:43,387 --> 01:34:46,390 (悲鳴) ~♪ 1455 01:34:47,557 --> 01:34:48,392 はあっ… 1456 01:34:58,068 --> 01:35:01,279 (荒い息) 1457 01:35:08,787 --> 01:35:09,538 ♪~ 1458 01:35:09,538 --> 01:35:11,790 ♪~ (義実) おお 大輔 よう戻った 1459 01:35:11,790 --> 01:35:12,958 (義実) おお 大輔 よう戻った 1460 01:35:14,126 --> 01:35:15,335 (法師) 殿 1461 01:35:16,461 --> 01:35:17,754 お久しゅうございます 1462 01:35:21,091 --> 01:35:23,260 この者たちが… 1463 01:35:23,885 --> 01:35:27,180 伏姫様ゆかりの 犬士たちにございます 1464 01:35:27,848 --> 01:35:29,933 犬塚信乃にございます 1465 01:35:31,935 --> 01:35:34,104 “孝”の珠を持っております 1466 01:35:34,521 --> 01:35:36,773 犬川荘助にございます 1467 01:35:38,650 --> 01:35:40,819 “義”の珠を持っております 1468 01:35:41,528 --> 01:35:44,281 犬飼現八にございます 1469 01:35:44,489 --> 01:35:47,284 “信”の珠を持っております 1470 01:35:48,535 --> 01:35:50,954 犬田小文吾にございます 1471 01:35:51,830 --> 01:35:54,207 “悌てい”の珠を持っております 1472 01:35:55,542 --> 01:35:57,794 犬村大角にございます 1473 01:35:58,503 --> 01:36:00,630 “礼”の珠を持っております 1474 01:36:02,215 --> 01:36:04,342 犬坂毛野にございます 1475 01:36:05,343 --> 01:36:07,387 “智”の珠を持っております 1476 01:36:08,847 --> 01:36:11,475 犬山道節にございます 1477 01:36:13,101 --> 01:36:15,687 “忠”の珠を持っております 1478 01:36:16,980 --> 01:36:18,148 皆… 1479 01:36:19,816 --> 01:36:24,488 よくぞ 滝田の城に参ってくれた 1480 01:36:25,864 --> 01:36:27,699 まさに あの時 1481 01:36:29,075 --> 01:36:32,204 天に飛び去った伏姫の珠が 1482 01:36:33,705 --> 01:36:37,042 また ここに集まった 1483 01:36:40,253 --> 01:36:41,421 殿… 1484 01:36:41,922 --> 01:36:46,092 玉梓に操られし定正は 今まさに里見を滅ぼさんと 1485 01:36:46,218 --> 01:36:48,595 各地の諸大名に下知げじを下し 1486 01:36:48,720 --> 01:36:52,140 伊皿子いさらご城に 大軍を集結させております 1487 01:36:52,933 --> 01:36:54,935 おのれ 玉梓め 1488 01:36:55,560 --> 01:36:59,105 いつまで里見を 苦しめ続けるつもりだ 1489 01:36:59,314 --> 01:37:04,110 殿 かくなる上は この七人の犬士たちを中心に 1490 01:37:04,236 --> 01:37:06,696 戦いくさの準備を 急がねばなりませぬ 1491 01:37:06,821 --> 01:37:07,405 ~♪ 1492 01:37:07,405 --> 01:37:08,406 ~♪ うむ 1493 01:37:08,532 --> 01:37:11,618 (男) あいや~ しばらく! 1494 01:37:12,577 --> 01:37:13,870 やあっ! 1495 01:37:17,707 --> 01:37:18,708 ふんっ! 1496 01:37:24,881 --> 01:37:28,009 突然のご無礼 お許し願いまする 1497 01:37:28,301 --> 01:37:31,638 拙者 犬江親兵衛いぬえしんべえと申します 1498 01:37:36,935 --> 01:37:38,979 ♪~ 1499 01:37:39,104 --> 01:37:40,397 これは… 1500 01:37:46,570 --> 01:37:49,739 仁じん・義ぎ・礼れい・智ち・忠ちゅう・信しん・孝こう・悌てい 1501 01:37:50,073 --> 01:37:51,366 ついに 1502 01:37:52,117 --> 01:37:56,496 八つの珠が揃そろいましたぞ 伏姫様 1503 01:37:58,915 --> 01:38:02,627 捨て子だった拙者を お育てくださったのは 1504 01:38:02,794 --> 01:38:05,213 かつて里見家に仕えし 1505 01:38:05,964 --> 01:38:09,426 この世四郎 おとねにございます 1506 01:38:13,346 --> 01:38:17,267 おおっ… 世四郎 おとね! 1507 01:38:18,602 --> 01:38:19,686 殿… 1508 01:38:21,396 --> 01:38:24,316 お久しゅうございます 1509 01:38:24,524 --> 01:38:26,651 お久しゅうございます 1510 01:38:28,236 --> 01:38:31,531 不思議な縁えにしでございます 1511 01:38:32,574 --> 01:38:36,244 大鷲に さらわれた五の君を捜し 1512 01:38:36,369 --> 01:38:39,080 彷徨さまよう道すがら 1513 01:38:39,414 --> 01:38:40,999 森の中に 1514 01:38:41,207 --> 01:38:45,128 置き去りにされていた親兵衛を 1515 01:38:45,253 --> 01:38:48,298 見つけた次第にございます 1516 01:38:50,008 --> 01:38:52,927 親兵衛が持っていた珠の中には 1517 01:38:53,470 --> 01:38:57,807 “仁”という文字が 浮かび上がっていました 1518 01:38:58,099 --> 01:39:03,355 これは間違いなく 伏姫様ゆかりの珠に相違ないと 1519 01:39:03,938 --> 01:39:07,859 今日こんにちまで大切に お育て申し上げました 1520 01:39:08,568 --> 01:39:09,444 うむ 1521 01:39:09,569 --> 01:39:12,280 世四郎 おとね でかしたぞ! 1522 01:39:15,158 --> 01:39:16,660 (世四郎) 恐れながら 1523 01:39:16,951 --> 01:39:20,914 もう お一方 お連れいたしております 1524 01:39:27,962 --> 01:39:29,964 (信乃) 浜路 (荘助) 浜路様! 1525 01:39:30,090 --> 01:39:31,633 信乃様! 1526 01:39:32,384 --> 01:39:33,385 浜路! 1527 01:39:33,510 --> 01:39:35,095 無事だったのか? 1528 01:39:35,261 --> 01:39:38,932 はい 親兵衛殿に 助けていただきました 1529 01:39:39,349 --> 01:39:40,642 そうか 1530 01:39:41,059 --> 01:39:42,644 親兵衛殿に 1531 01:39:45,647 --> 01:39:47,023 (義実) “浜路”? 1532 01:39:47,482 --> 01:39:48,566 (世四郎) 殿! 1533 01:39:54,531 --> 01:39:56,032 (義実) 笹ささりんどう 1534 01:39:56,491 --> 01:39:58,785 これは里見家の紋ではないか 1535 01:39:58,910 --> 01:40:00,495 (おとね) この守り袋は 1536 01:40:00,829 --> 01:40:04,999 浜路様が捨て子として 拾われた時に くるまれていた― 1537 01:40:05,500 --> 01:40:07,711 おくるみで作ったものだそうです 1538 01:40:09,379 --> 01:40:10,380 (世四郎) おとねが 1539 01:40:10,505 --> 01:40:13,341 背中のあざも見定めました 1540 01:40:14,843 --> 01:40:17,137 ここに おわす浜路様は 1541 01:40:17,470 --> 01:40:20,598 大鷲に さらわれた五の君 1542 01:40:21,015 --> 01:40:23,643 浜路姫様でございます 1543 01:40:28,314 --> 01:40:29,858 浜路にございます 1544 01:40:36,448 --> 01:40:38,408 浜路姫… 1545 01:40:39,534 --> 01:40:43,037 本当に 浜路姫なのじゃな 1546 01:40:43,788 --> 01:40:45,290 お父上 1547 01:40:53,381 --> 01:40:56,176 ~♪ 1548 01:40:57,177 --> 01:40:58,845 (渡辺崋山わたなべかざん) ついに 1549 01:40:59,888 --> 01:41:02,223 八犬士が揃いましたな 1550 01:41:06,311 --> 01:41:08,521 どれだけの読者が 1551 01:41:08,980 --> 01:41:11,399 その日を待ち望んでいることか 1552 01:41:13,026 --> 01:41:17,739 どうも 埒らちもない嘘話を 長々と聞いていただき 1553 01:41:17,906 --> 01:41:19,365 かたじけない 1554 01:41:22,577 --> 01:41:26,790 宗伯を見舞っていただいたうえに 思いがけず 1555 01:41:27,373 --> 01:41:29,542 お引き止めしてしまいました 1556 01:41:30,001 --> 01:41:31,419 (崋山) いやいや 1557 01:41:32,086 --> 01:41:35,507 「八犬伝」を愛読させて いただいている身としては 1558 01:41:35,965 --> 01:41:37,884 この上ない幸せ 1559 01:41:38,092 --> 01:41:39,636 ありがたく存じております 1560 01:41:41,346 --> 01:41:43,515 ところで 渡辺殿 1561 01:41:44,390 --> 01:41:45,683 その… 1562 01:41:46,476 --> 01:41:50,480 八犬士 揃い踏みの場面を ひとつ 1563 01:41:50,980 --> 01:41:54,943 今 ここで 絵にしてくださらんだろうか 1564 01:41:55,443 --> 01:41:57,153 えっ 今 ここで… ですか 1565 01:41:57,153 --> 01:41:58,655 えっ 今 ここで… ですか ♪~ 1566 01:41:58,655 --> 01:41:59,614 ♪~ 1567 01:41:59,739 --> 01:42:00,698 ああ… 1568 01:42:00,949 --> 01:42:02,033 いや 1569 01:42:02,951 --> 01:42:04,619 いや これは大変 1570 01:42:04,953 --> 01:42:06,871 失礼いたしました 1571 01:42:07,831 --> 01:42:10,875 今や 田原藩若家老わかがろう かつ 1572 01:42:11,251 --> 01:42:15,004 画家でもいらっしゃる 渡辺崋山先生に 1573 01:42:15,129 --> 01:42:17,549 即興で絵を描いてくれ など 1574 01:42:17,674 --> 01:42:19,676 いやいや 私が どうかしておりました 1575 01:42:19,801 --> 01:42:22,262 (崋山) ああ… 滅相もございません 1576 01:42:23,179 --> 01:42:26,558 大変 光栄に存じますが 何分なにぶん 1577 01:42:26,933 --> 01:42:28,935 私は それほど器用ではなく… 1578 01:42:29,060 --> 01:42:31,396 (馬琴) いやいや 本当に 1579 01:42:31,688 --> 01:42:34,899 年寄りの戯ざれ言ごとと お忘れくだされ 1580 01:42:35,567 --> 01:42:36,818 (崋山) 申し訳ございません 1581 01:42:36,943 --> 01:42:38,278 (馬琴) いや いや いや 1582 01:42:41,489 --> 01:42:45,660 実は いつもは北斎老ろうに 1583 01:42:46,411 --> 01:42:48,413 腹案ふくあんを聞いてもらって 1584 01:42:48,538 --> 01:42:51,624 その場で二、三枚 絵にしてもらっていたんです 1585 01:42:54,168 --> 01:42:59,007 それが どれだけ 私の創作の励みになっていたことか 1586 01:43:02,051 --> 01:43:04,137 ところが ここのところ 1587 01:43:04,470 --> 01:43:06,431 とんと やって来ない 1588 01:43:07,307 --> 01:43:10,059 そうでしたか 北斎先生が 1589 01:43:10,351 --> 01:43:11,936 渡辺殿 1590 01:43:15,481 --> 01:43:16,691 私は 1591 01:43:21,154 --> 01:43:23,364 宗伯のことを思うと 1592 01:43:25,408 --> 01:43:28,578 ああ… 恐ろしゅうてな 1593 01:43:32,707 --> 01:43:36,836 じっと ここに座って 1594 01:43:40,340 --> 01:43:42,842 考えておるに耐えられん 1595 01:43:47,138 --> 01:43:48,389 (馬琴のため息) 1596 01:43:48,848 --> 01:43:51,309 (馬琴) 口幅くちはばったいことではありますが 1597 01:43:52,852 --> 01:43:56,522 私と宗伯は まず 1598 01:43:57,899 --> 01:44:00,068 悪を成したことがない 1599 01:44:03,404 --> 01:44:04,989 それなのに… 1600 01:44:06,115 --> 01:44:08,117 こういう運命を見る 1601 01:44:13,957 --> 01:44:16,417 そう考えるにつけ 1602 01:44:18,044 --> 01:44:21,631 “正しき者が勝つ”という主題で 書いている― 1603 01:44:23,091 --> 01:44:24,884 「八犬伝」など 1604 01:44:29,305 --> 01:44:32,642 いよいよもって 虚だと思えるのです 1605 01:44:36,646 --> 01:44:38,022 (崋山) 先生 1606 01:44:40,066 --> 01:44:41,359 私は 1607 01:44:41,901 --> 01:44:45,238 若かりし頃から 「八犬伝」を愛読しております 1608 01:44:47,281 --> 01:44:49,617 侍として 辛つらい日々があっても 1609 01:44:50,451 --> 01:44:56,374 どれほど 「八犬伝」の正義に 勇気づけられたことか 1610 01:45:00,420 --> 01:45:02,505 曲亭先生に対して 1611 01:45:02,755 --> 01:45:05,466 おこがましい言葉で 恐れ入りますが 1612 01:45:08,177 --> 01:45:09,387 私は 1613 01:45:11,305 --> 01:45:13,433 正義は虚であっても 1614 01:45:14,517 --> 01:45:17,145 それを貫いて 一生を終えれば 1615 01:45:18,271 --> 01:45:21,024 その人の人生は実となる 1616 01:45:22,817 --> 01:45:27,030 決して 虚とはならんと 信じております 1617 01:45:32,076 --> 01:45:35,079 ~♪ 1618 01:45:42,128 --> 01:45:43,588 (お路) 渡辺様 1619 01:45:44,505 --> 01:45:45,757 お駕籠を お呼びします 1620 01:45:46,007 --> 01:45:50,219 ああ いや 駕籠は無用 二本の足がござれば 1621 01:45:50,344 --> 01:45:51,554 (お路) でも… 1622 01:45:53,097 --> 01:45:54,307 お路さん 1623 01:45:55,099 --> 01:45:59,145 宗伯殿は 私にとって かけがえのない友人 1624 01:45:59,604 --> 01:46:02,523 どうか よろしくお願いいたします 1625 01:46:11,199 --> 01:46:13,284 お路さんは お気づきか? 1626 01:46:13,618 --> 01:46:15,912 曲亭先生の右の目ですが… 1627 01:46:18,623 --> 01:46:21,751 時々 右目が霞かすむと… 1628 01:46:23,920 --> 01:46:25,671 やはり そうでしたか 1629 01:46:28,132 --> 01:46:29,717 先生のことも 1630 01:46:31,094 --> 01:46:32,970 よろしくお願いいたします 1631 01:47:02,750 --> 01:47:03,751 (お路) 失礼します 1632 01:47:16,973 --> 01:47:19,058 もう お休みになってください 1633 01:47:19,600 --> 01:47:20,893 (宗伯) いや 1634 01:47:21,561 --> 01:47:23,521 明日の朝までに 1635 01:47:24,021 --> 01:47:26,190 これだけは なんとしても 1636 01:47:26,941 --> 01:47:28,151 でも… 1637 01:47:37,326 --> 01:47:40,454 父上の この「八犬伝」は 1638 01:47:41,455 --> 01:47:44,792 なんとしても 完結させねばならないのだ 1639 01:47:50,715 --> 01:47:55,428 (苦しそうな呼吸) 1640 01:47:55,553 --> 01:47:58,556 ♪~ 1641 01:48:00,850 --> 01:48:03,519 (近づく足音) 1642 01:48:04,729 --> 01:48:06,272 お父様を呼んでいます 1643 01:48:09,817 --> 01:48:12,153 (せき込み) 1644 01:48:12,778 --> 01:48:13,863 (宗伯) ああ… 1645 01:48:14,197 --> 01:48:15,781 お母さん 1646 01:48:19,952 --> 01:48:21,913 癇癪かんしゃくを起こして 1647 01:48:23,289 --> 01:48:27,627 随分と ひどいことを 言ってきました 1648 01:48:30,838 --> 01:48:33,966 どうか お許しください 1649 01:48:35,051 --> 01:48:37,053 (すすり泣き) 1650 01:48:37,345 --> 01:48:40,514 何だね 鎮五郎 1651 01:48:42,183 --> 01:48:43,851 そんなの 1652 01:48:45,186 --> 01:48:48,689 病気が言わせる駄々だだじゃないか 1653 01:48:53,819 --> 01:48:56,447 謝らなくちゃ いけないのは 1654 01:48:58,407 --> 01:49:00,660 母さんのほうだよ 1655 01:49:00,785 --> 01:49:02,119 (足音) 1656 01:49:04,997 --> 01:49:06,457 (馬琴) 鎮五郎 1657 01:49:08,501 --> 01:49:10,544 (宗伯) お預かりした校正を 1658 01:49:11,587 --> 01:49:13,589 先ほど終えました 1659 01:49:16,550 --> 01:49:18,177 そんなものは 1660 01:49:18,761 --> 01:49:21,639 体が楽になってからで よいのだ 1661 01:49:30,064 --> 01:49:31,565 (宗伯) 父上… 1662 01:49:34,068 --> 01:49:36,445 これまでの ご恩に 1663 01:49:38,406 --> 01:49:39,740 子として 1664 01:49:41,575 --> 01:49:45,454 何のお報いもせず 死んでゆきますが 1665 01:49:47,790 --> 01:49:50,209 どうぞ お許しを… 1666 01:49:52,253 --> 01:49:53,921 (馬琴) 何を言うか 1667 01:49:55,506 --> 01:49:57,967 要らざることを口にするな 1668 01:49:58,551 --> 01:50:01,178 (苦しそうな呼吸) 1669 01:50:04,390 --> 01:50:07,018 み… みず 水を… 1670 01:50:07,184 --> 01:50:08,394 (馬琴) おお… 1671 01:50:15,568 --> 01:50:16,569 おう 1672 01:50:18,446 --> 01:50:19,780 宗伯 1673 01:50:28,331 --> 01:50:29,707 (宗伯) ああ… 1674 01:50:30,207 --> 01:50:31,542 ああ… 1675 01:50:42,470 --> 01:50:44,180 (馬琴) 宗伯… 1676 01:50:45,556 --> 01:50:47,058 宗伯… 1677 01:50:48,934 --> 01:50:51,354 (お百) 鎮五郎 (馬琴) 宗伯 1678 01:50:53,230 --> 01:50:56,734 鎮五郎! 1679 01:50:58,611 --> 01:51:04,450 鎮五郎! (お百の号泣) 1680 01:51:06,786 --> 01:51:07,578 (3人の泣き声) 1681 01:51:07,578 --> 01:51:09,288 (3人の泣き声) ~♪ 1682 01:51:09,288 --> 01:51:10,581 ~♪ 1683 01:51:17,922 --> 01:51:20,925 (近づく足音) 1684 01:51:21,634 --> 01:51:22,760 (馬琴) ああ… 1685 01:51:26,222 --> 01:51:27,807 (崋山) 宗伯殿は? 1686 01:51:29,350 --> 01:51:32,603 (馬琴) 昨日の朝 亡くなりました 1687 01:51:34,855 --> 01:51:38,150 骸むくろは棺桶に入れて 1688 01:51:38,734 --> 01:51:40,820 まだ納戸なんどに置いてござる 1689 01:51:44,949 --> 01:51:47,952 (雨の音) 1690 01:51:56,544 --> 01:51:58,963 (崋山) いずれ 色を差し 1691 01:51:59,213 --> 01:52:01,173 絵にして お持ちいたします 1692 01:52:03,259 --> 01:52:05,678 今日は急ぎますので 1693 01:52:06,220 --> 01:52:09,014 これにて 御免 1694 01:52:33,998 --> 01:52:37,001 ♪~ 1695 01:52:41,630 --> 01:52:43,090 なぜだ 1696 01:52:46,218 --> 01:52:47,887 なぜなんだ 1697 01:52:56,187 --> 01:53:00,232 なんで 宗伯が… 1698 01:53:03,736 --> 01:53:06,071 私でよいではないか 1699 01:53:11,911 --> 01:53:14,788 私が長生きしている罰なのか 1700 01:53:20,669 --> 01:53:23,589 なんで代わってやれないんだ 1701 01:53:28,052 --> 01:53:31,472 (泣き声) 1702 01:53:36,602 --> 01:53:38,062 (泣き声) 1703 01:53:44,360 --> 01:53:47,363 ~♪ 1704 01:53:48,906 --> 01:53:53,118 (太鼓の音) 1705 01:53:54,745 --> 01:53:59,124 (定正) 平賀隊は白峰しらみね街道 1706 01:53:59,250 --> 01:54:02,127 熊代くましろ隊は大兼おおがね街道 1707 01:54:02,378 --> 01:54:05,881 塚原隊は後方 三馬山さんばやまを下れ 1708 01:54:06,006 --> 01:54:07,258 そして 1709 01:54:08,425 --> 01:54:10,469 浅沼隊は 1710 01:54:11,720 --> 01:54:13,222 海からじゃ 1711 01:54:13,347 --> 01:54:16,350 ♪~ 海から先駆け 一気に叩たたけ 1712 01:54:16,350 --> 01:54:16,934 海から先駆け 一気に叩たたけ 1713 01:54:17,977 --> 01:54:20,813 里見の勢力を分散させれば 1714 01:54:21,355 --> 01:54:24,400 八犬士も自おのずと 散ちり散ぢりとなる 1715 01:54:24,817 --> 01:54:30,573 八つ 揃わなければ 伏姫の珠など 恐れるに足りぬ 1716 01:54:34,994 --> 01:54:35,911 ~♪ 1717 01:54:35,911 --> 01:54:37,997 ~♪ いよいよ 開戦じゃ 1718 01:54:38,831 --> 01:54:40,749 頼んだぞ 八犬士 1719 01:54:40,874 --> 01:54:43,877 ♪~ 1720 01:54:50,134 --> 01:54:53,470 (文五兵衛) 水の上なら 誰にも負けねえ 1721 01:54:53,846 --> 01:54:55,389 今こそ 1722 01:54:56,056 --> 01:54:59,143 犬田屋の底力を 見せてやるんじゃ! 1723 01:54:59,268 --> 01:55:01,103 (若い衆) おー! 1724 01:55:11,822 --> 01:55:12,656 んっ! 1725 01:55:28,922 --> 01:55:31,342 (衝突音) 1726 01:55:34,595 --> 01:55:37,014 しばらく 他の船は近づけない 1727 01:55:37,139 --> 01:55:39,433 目指すは水軍大将の首ひとつ! 1728 01:55:39,558 --> 01:55:41,060 (里見軍の兵士たち) おー! 1729 01:55:46,565 --> 01:55:47,775 (信乃) んっ… 1730 01:55:48,609 --> 01:55:49,943 んんっ… 1731 01:55:50,110 --> 01:55:54,073 本当に この穴で間違いないのか 1732 01:55:54,573 --> 01:55:58,577 この城のことは隅々まで調べた あと少しだ 1733 01:55:59,787 --> 01:56:02,748 毛野は するする進むが 1734 01:56:02,873 --> 01:56:06,168 わしの体では これは地獄だ 1735 01:56:07,086 --> 01:56:08,962 それを言うなら 1736 01:56:10,381 --> 01:56:12,716 俺が 一番きつい 1737 01:56:14,093 --> 01:56:16,387 犬士とは呼ばれているが… 1738 01:56:16,512 --> 01:56:17,805 あつ… 熱あつっ! 1739 01:56:18,180 --> 01:56:21,517 俺たちは人だぞ これは狸たぬきの穴だ! 1740 01:56:22,810 --> 01:56:24,728 さあ さあ 皆さん 1741 01:56:24,853 --> 01:56:27,564 もう少しで城内ですよ 1742 01:56:27,690 --> 01:56:30,484 法師様たちの時間稼ぎにも 限界があります 1743 01:56:30,609 --> 01:56:31,819 ああ 1744 01:56:32,528 --> 01:56:33,904 とにかく急ごう 1745 01:56:39,410 --> 01:56:41,662 (門番たち) うっ… ぐわっ… 1746 01:56:51,422 --> 01:56:52,423 (信乃) よし 1747 01:56:52,840 --> 01:56:56,552 四つの門が開かなければ 城内の敵の数は わずか 1748 01:57:02,808 --> 01:57:04,309 (管領かんれい軍の侍) 敵だ! 1749 01:57:22,703 --> 01:57:26,498 (信乃) 目指すは 関東管領かんれい 扇谷定正の首 1750 01:57:26,623 --> 01:57:29,418 そして怨霊 玉梓 1751 01:57:29,543 --> 01:57:32,588 (侍たち) やああー! 1752 01:57:32,963 --> 01:57:35,299 (信乃) いざ参らん! 1753 01:57:35,841 --> 01:57:37,259 (一同) おう! 1754 01:57:40,971 --> 01:57:43,390 (一同) やああー! 1755 01:57:53,609 --> 01:57:55,611 何だと! 八犬士だと? 1756 01:57:55,736 --> 01:57:57,070 (権之佐) どうやって城内に 1757 01:57:57,196 --> 01:57:58,989 (玉梓) ええい 謀りおったな! 1758 01:57:59,114 --> 01:58:02,785 (定正) たかだか 八人ではないか ここへ寄せつけるでないぞ 1759 01:58:02,910 --> 01:58:05,454 殿 万が一に備えて最上階へ 1760 01:58:06,205 --> 01:58:08,040 珠を八つ 1761 01:58:08,499 --> 01:58:10,876 揃わせてはならない 1762 01:58:23,305 --> 01:58:25,224 (毛野) 定正は さっきまで ここに居たぞ! 1763 01:58:25,349 --> 01:58:28,143 (道節) 上だ! 上に逃げたぞ 1764 01:58:37,236 --> 01:58:38,987 (定正) ええい 戦況はどうなっている! 1765 01:58:39,112 --> 01:58:40,197 (権之佐) はっ! 1766 01:58:42,282 --> 01:58:45,369 (伝令) 敵方 三階を突破して 四階に上がってきております 1767 01:58:45,494 --> 01:58:48,664 八人ごときに 何をやっておるのじゃ! 1768 01:58:49,122 --> 01:58:51,625 毛野と道節の狙いは 1769 01:58:52,084 --> 01:58:53,961 定正殿でしたね? 1770 01:59:01,260 --> 01:59:02,636 (侍) はあっ! 1771 01:59:15,023 --> 01:59:15,983 うおおっ! 1772 01:59:37,045 --> 01:59:38,213 (毛野) はああっ! 1773 01:59:45,554 --> 01:59:46,972 (斬られる音) 1774 01:59:47,097 --> 01:59:49,224 んんっ… だあっ! 1775 01:59:50,851 --> 01:59:51,727 (現八) うわっ… 1776 01:59:53,061 --> 01:59:53,937 うおっ! 1777 01:59:55,063 --> 01:59:55,981 (斬られる音) 1778 01:59:57,900 --> 02:00:00,736 (荒い息) 1779 02:00:02,779 --> 02:00:03,739 ふんっ! 1780 02:00:09,077 --> 02:00:10,078 (殴る音) 1781 02:00:11,038 --> 02:00:12,581 (荒い息) 1782 02:00:19,755 --> 02:00:21,048 (信乃) んんんっ… 1783 02:00:24,509 --> 02:00:26,845 (侍たち) うおおー! 1784 02:00:35,437 --> 02:00:37,272 (大角) ここは俺たちに任せて 1785 02:00:37,856 --> 02:00:39,441 定正を討て! 1786 02:00:39,691 --> 02:00:41,985 うおおー! 1787 02:00:42,277 --> 02:00:43,153 小文吾! 1788 02:00:43,278 --> 02:00:44,905 (斬られる音) 1789 02:00:47,908 --> 02:00:49,409 早く行け! 信乃! 1790 02:00:52,412 --> 02:00:53,956 (信乃) んっ! んんっ! 1791 02:01:03,882 --> 02:01:06,802 (玉梓の笑い声) 1792 02:01:07,135 --> 02:01:10,430 (定正) あっ… ああっ… 1793 02:01:10,889 --> 02:01:14,726 何をする… 玉梓… 1794 02:01:16,311 --> 02:01:18,814 (床が抜ける音) 1795 02:01:23,777 --> 02:01:25,612 (定正) あああーっ! (落下音) 1796 02:01:27,781 --> 02:01:29,282 (せき込み) 1797 02:01:29,408 --> 02:01:32,786 さあ さあ 定正が逃げるぞえ 1798 02:01:33,870 --> 02:01:35,956 二人は定正を討て! 1799 02:01:36,999 --> 02:01:39,209 玉梓は俺たちに任せろ 1800 02:01:40,711 --> 02:01:42,045 かたじけない! 1801 02:01:42,254 --> 02:01:43,380 御免! 1802 02:01:48,468 --> 02:01:50,887 (玉梓) 残りは たった三人かえ 1803 02:01:51,638 --> 02:01:54,182 ハッ ハハハハッ… 1804 02:01:54,516 --> 02:01:56,268 怨霊 玉梓! 1805 02:01:56,893 --> 02:01:58,770 伏姫様に成り代わり 1806 02:01:59,229 --> 02:02:01,982 我ら犬士が 成敗してくれる! 1807 02:02:03,775 --> 02:02:06,528 我が怨念の深淵しんえんを 1808 02:02:06,695 --> 02:02:08,530 とくと覗のぞくがよい! 1809 02:02:15,662 --> 02:02:18,665 (玉梓の咆哮ほうこう) 1810 02:02:20,208 --> 02:02:23,211 ~♪ 1811 02:02:26,757 --> 02:02:28,800 やっとだね 1812 02:02:29,885 --> 02:02:31,178 (馬琴) うん 1813 02:02:32,095 --> 02:02:33,638 やっとだ 1814 02:02:36,183 --> 02:02:39,102 (北斎) あんた いくつになった? 1815 02:02:41,313 --> 02:02:44,483 私は今年 七十三しちじゅうさんだ 1816 02:02:45,692 --> 02:02:47,778 してみると お前さんは 1817 02:02:48,195 --> 02:02:50,280 八十になるはず 1818 02:02:50,739 --> 02:02:51,907 (北斎) フフッ 1819 02:02:52,699 --> 02:02:56,286 いやはや 化け物だな 1820 02:02:57,245 --> 02:03:00,624 老いて なお 頂いただきを求めるのは 1821 02:03:01,124 --> 02:03:03,668 おいらと あんたくらいなもんだ 1822 02:03:04,961 --> 02:03:08,673 まあ かき続けるより他に 1823 02:03:08,799 --> 02:03:11,593 これといって 能もないがね 1824 02:03:12,719 --> 02:03:14,596 あらよっと 1825 02:03:24,314 --> 02:03:26,149 (風の音) 1826 02:03:26,608 --> 02:03:30,904 (北斎) しかし また 辺ぴな所へ 越してきたもんだな 1827 02:03:32,030 --> 02:03:34,074 さっき お百さんを見舞ったら 1828 02:03:34,199 --> 02:03:37,160 散々 愚痴を聞かされたよ 1829 02:03:37,619 --> 02:03:40,789 (近づく足音) 1830 02:03:40,914 --> 02:03:42,749 (障子を開ける音) 1831 02:03:44,751 --> 02:03:47,838 あら 北斎さん 1832 02:03:49,339 --> 02:03:51,424 生きてたのかい 1833 02:03:54,010 --> 02:03:55,470 なんだ 1834 02:03:56,930 --> 02:03:58,849 元気そうじゃねえか 1835 02:04:00,016 --> 02:04:02,894 あたしゃ ご覧のとおり 1836 02:04:03,603 --> 02:04:05,564 もう駄目だよ 1837 02:04:05,689 --> 02:04:07,107 なあに 1838 02:04:08,275 --> 02:04:10,402 (お百) 何の因果で 1839 02:04:12,112 --> 02:04:16,575 こんな江戸の外はずれで 死ななきゃなんないのさ 1840 02:04:20,120 --> 02:04:23,665 何のための一生だったか 1841 02:04:25,750 --> 02:04:27,711 分かりゃしないよ 1842 02:04:27,711 --> 02:04:28,253 分かりゃしないよ ♪~ 1843 02:04:28,253 --> 02:04:30,714 ♪~ 1844 02:04:31,298 --> 02:04:33,216 こんな あばら家やだが 1845 02:04:33,341 --> 02:04:37,179 ここは鉄砲同心株の付いている お屋敷でね 1846 02:04:37,762 --> 02:04:41,016 買うだけで お召し抱えいただける 1847 02:04:43,268 --> 02:04:44,436 ただ… 1848 02:04:45,604 --> 02:04:49,941 大事にしていた本も ほとんど売ってしまったがね 1849 02:04:52,736 --> 02:04:55,989 (北斎) まあ 広くていいやね 1850 02:04:56,114 --> 02:04:57,240 (馬琴) うん 1851 02:04:57,449 --> 02:05:03,079 (北斎) これで太郎も 立派な お武家の鉄砲同心様か 1852 02:05:04,122 --> 02:05:08,043 孫には 何か残してやりたくてね 1853 02:05:09,711 --> 02:05:12,547 (北斎) ああ… 出来た 1854 02:05:14,799 --> 02:05:16,176 ほらよ 1855 02:05:20,305 --> 02:05:21,765 ほら 1856 02:05:22,515 --> 02:05:26,269 八犬士が 揃って出陣するところだ 1857 02:05:28,647 --> 02:05:30,232 おお… 1858 02:05:32,817 --> 02:05:34,903 八犬士が… 1859 02:05:35,278 --> 02:05:38,281 ~♪ 1860 02:05:43,453 --> 02:05:46,414 ここには 八犬士は描いては おらん 1861 02:05:49,251 --> 02:05:52,712 右目が見えてねえってことは 聞いてたがね 1862 02:05:54,172 --> 02:05:55,298 あんた 1863 02:05:56,591 --> 02:05:59,052 もう片方も見えてないね? 1864 02:06:05,558 --> 02:06:06,601 フッ… 1865 02:06:08,728 --> 02:06:11,731 (鍬くわを振るう音) ♪~ 1866 02:06:46,349 --> 02:06:49,352 ~♪ 1867 02:06:54,733 --> 02:06:56,359 はあ… 1868 02:06:59,154 --> 02:07:00,572 (ため息) 1869 02:07:16,963 --> 02:07:18,423 (丁子屋平兵衛ちょうじやへいべえ) 先生 1870 02:07:20,300 --> 02:07:23,887 もう一度 お考え直し くださいませんか 1871 02:07:26,097 --> 02:07:27,474 文渓堂ぶんけいどう 1872 02:07:28,516 --> 02:07:29,934 悪いが 1873 02:07:30,477 --> 02:07:34,147 何人 試みても 結果は同じだ 1874 02:07:34,272 --> 02:07:38,026 何とか 先生のおっしゃるとおり 書ける者を探してまいりますので 1875 02:07:38,818 --> 02:07:40,153 いや 1876 02:07:41,488 --> 02:07:44,574 私の この気性を心得て 1877 02:07:45,658 --> 02:07:47,535 共に過ごすのは 1878 02:07:49,621 --> 02:07:53,291 そもそも 他人では無理だ 1879 02:07:53,541 --> 02:07:55,293 (平兵衛) うーん… 1880 02:07:59,172 --> 02:08:02,175 こんな時 宗伯さんが 居てくださいましたら 1881 02:08:05,845 --> 02:08:08,014 それを言うてくれるな 1882 02:08:08,681 --> 02:08:12,268 これは失礼いたしました ついつい… 1883 02:08:16,147 --> 02:08:17,482 (ため息) 1884 02:08:17,899 --> 02:08:19,317 まあ とにかく 先生 1885 02:08:19,442 --> 02:08:22,487 今日のところは お暇いとまいたしますが くれぐれも 1886 02:08:23,738 --> 02:08:26,866 お諦めなきよう お願いいたします 1887 02:08:33,873 --> 02:08:35,250 それでは… 1888 02:09:00,233 --> 02:09:01,943 やはり 1889 02:09:04,154 --> 02:09:05,947 これまでか… 1890 02:09:06,698 --> 02:09:08,032 (崋山) 私は 1891 02:09:08,533 --> 02:09:10,577 正義は虚であっても 1892 02:09:10,785 --> 02:09:13,413 それを貫いて 一生を終えれば 1893 02:09:13,705 --> 02:09:16,249 その人の人生は実となる 1894 02:09:16,708 --> 02:09:20,670 決して 虚とはならんと 信じております 1895 02:09:20,795 --> 02:09:24,382 所詮しょせん 無意味な つじつま合わせ 1896 02:09:24,632 --> 02:09:28,219 どこまで行っても 虚は実に飲み込まれ 1897 02:09:28,344 --> 02:09:32,682 つじつまは合わないので ございますよ 1898 02:09:38,188 --> 02:09:41,107 (荒い息) 1899 02:09:42,525 --> 02:09:44,027 ああっ! 1900 02:09:45,820 --> 02:09:47,071 はあっ… 1901 02:09:48,490 --> 02:09:49,699 ああっ 1902 02:09:51,993 --> 02:09:53,328 ああ… 1903 02:09:53,453 --> 02:09:56,789 (お路) お父様 少し よろしいでしょうか 1904 02:09:59,042 --> 02:10:01,836 ああ… よい 1905 02:10:10,845 --> 02:10:12,055 どうした? 1906 02:10:14,349 --> 02:10:16,726 お父様に お願いがございます 1907 02:10:17,977 --> 02:10:21,022 何だ? 改まって 1908 02:10:23,149 --> 02:10:24,651 (お路) 「八犬伝」を 1909 02:10:24,984 --> 02:10:27,362 私に書かせて いただけないでしょうか 1910 02:10:31,199 --> 02:10:33,952 お前が「八犬伝」を… 1911 02:10:34,786 --> 02:10:35,870 書く? 1912 02:10:36,120 --> 02:10:40,083 お父様が語ったことを 私が文字にいたします 1913 02:10:43,044 --> 02:10:47,340 (馬琴) しかし お前は 「八犬伝」を読んでは おるまい 1914 02:10:47,674 --> 02:10:49,592 いえ 読みました 1915 02:10:52,011 --> 02:10:53,179 読んだ? 1916 02:10:54,264 --> 02:10:55,098 いつ? 1917 02:10:56,641 --> 02:10:58,393 去年の秋からです 1918 02:11:00,019 --> 02:11:02,730 お父様の両の目が お悪くなってから 1919 02:11:03,314 --> 02:11:06,651 いつか お役に立てる時が 来るのではないかと思いまして 1920 02:11:10,822 --> 02:11:11,906 それで 1921 02:11:12,907 --> 02:11:14,075 読めたか? 1922 02:11:14,742 --> 02:11:16,911 (お路) 漢字や言葉が難しく… 1923 02:11:17,829 --> 02:11:20,915 それでも皆 振り仮名が付いていたので 1924 02:11:21,040 --> 02:11:22,625 何とか読みました 1925 02:11:23,835 --> 02:11:25,086 お前は 1926 02:11:26,170 --> 02:11:28,172 漢字が書けるのか? 1927 02:11:29,549 --> 02:11:30,758 いいえ 1928 02:11:32,552 --> 02:11:35,513 存じているのは “いろは”ばかりです 1929 02:11:37,015 --> 02:11:38,099 ああ… 1930 02:11:41,644 --> 02:11:43,354 “いろは”では 1931 02:11:43,980 --> 02:11:45,940 「八犬伝」は書けん 1932 02:11:46,065 --> 02:11:47,859 一字一字 お教えくだされば 1933 02:11:47,984 --> 02:11:50,278 お路にも 何とか できるのではないかと 1934 02:11:50,987 --> 02:11:53,573 お路の気持ちは嬉しいが 1935 02:11:54,741 --> 02:11:56,075 これは 1936 02:11:56,826 --> 02:11:58,870 言うほど たやすくない 1937 02:12:03,875 --> 02:12:06,878 ♪~ 1938 02:12:08,254 --> 02:12:09,797 (お路) お父様が 1939 02:12:10,715 --> 02:12:12,884 「八犬伝」を書けないのに 1940 02:12:13,259 --> 02:12:16,220 毎日そうして 机の前に 座ってらっしゃるのを見ると 1941 02:12:16,346 --> 02:12:17,889 辛つろうございます 1942 02:12:19,641 --> 02:12:20,767 それに 1943 02:12:21,893 --> 02:12:26,105 “「八犬伝」を頼む”と お路は しかと申しつかっております 1944 02:12:28,441 --> 02:12:29,859 誰にだ? 1945 02:12:31,402 --> 02:12:33,237 宗伯さんにです 1946 02:12:40,328 --> 02:12:43,331 ~♪ 1947 02:12:44,290 --> 02:12:47,085 “邪大茂林かのおおもりの澳邊おきべにて” 1948 02:12:47,960 --> 02:12:49,087 おおもり? 1949 02:12:49,671 --> 02:12:51,089 “大茂林”が分からんか 1950 02:12:51,214 --> 02:12:51,673 ♪~ 1951 02:12:51,673 --> 02:12:53,049 ♪~ 申し訳ございません 1952 02:12:54,050 --> 02:12:56,135 大小の“大”と 1953 02:12:56,260 --> 02:13:00,056 くさかんむりに“戊つちのえ”と 1954 02:13:00,181 --> 02:13:02,350 “林”の三文字から成る 1955 02:13:04,394 --> 02:13:06,479 私の指先を見よ 1956 02:13:06,604 --> 02:13:07,438 はい 1957 02:13:10,983 --> 02:13:14,362 “身は冷え。” 1958 02:13:15,947 --> 02:13:18,241 “手脚てあし 疲労果つかれはてて” 1959 02:13:19,492 --> 02:13:20,993 (お路) 手脚… 1960 02:13:24,622 --> 02:13:25,456 書いたか? 1961 02:13:25,957 --> 02:13:26,958 はい 1962 02:13:27,667 --> 02:13:29,335 “冷ひえ”は どう書いた? 1963 02:13:30,002 --> 02:13:33,089 (お路) にんべんに… (馬琴) にんべんではない! 1964 02:13:37,385 --> 02:13:38,761 にすいだ 1965 02:13:40,388 --> 02:13:42,348 (馬琴) 指先を見よ (お路) はい 1966 02:13:43,099 --> 02:13:44,267 (馬琴) これで… 1967 02:13:44,767 --> 02:13:46,644 (馬琴) 分かるな? (お路) はい 1968 02:13:46,894 --> 02:13:49,147 “皆みな 立たちよりて” 1969 02:13:49,439 --> 02:13:51,607 “又またよく見るに” 1970 02:13:51,733 --> 02:13:54,610 (お路) 申し訳ございません もう一度 お願いします 1971 02:13:55,611 --> 02:13:59,532 “皆 立ちよりて 又よく見るに” 1972 02:14:00,533 --> 02:14:02,827 “みな”とは どう書くのでしょうか? 1973 02:14:02,952 --> 02:14:04,370 (馬琴) “皆”とは 1974 02:14:05,747 --> 02:14:07,290 “皆”とは こうだ 1975 02:14:13,588 --> 02:14:14,422 見えたか? 1976 02:14:14,547 --> 02:14:16,799 はい ありがとうございます 1977 02:14:18,134 --> 02:14:22,305 “喚よばはりつ 胸を拊なでて” 1978 02:14:25,516 --> 02:14:28,269 “胸”と“拊なでて”は教えたな? 1979 02:14:28,394 --> 02:14:29,437 はい 1980 02:14:30,062 --> 02:14:32,398 “喚よび”という漢字は こうだ 1981 02:14:36,486 --> 02:14:37,612 (物音) ~♪ 1982 02:14:37,612 --> 02:14:38,488 ~♪ 1983 02:14:44,786 --> 02:14:45,787 (お路) お母様! 1984 02:14:46,329 --> 02:14:48,498 お母様 どうなさいました? 1985 02:14:53,419 --> 02:14:54,587 (馬琴) お百 1986 02:14:56,005 --> 02:14:57,256 お百 1987 02:14:59,550 --> 02:15:02,136 ここまで這はってきたのか 1988 02:15:04,472 --> 02:15:07,058 なんで そんなことを! 1989 02:15:10,186 --> 02:15:13,147 畜生ちきしょう… 1990 02:15:29,497 --> 02:15:31,749 (馬琴) お百! (お路) お母様! 1991 02:15:31,916 --> 02:15:32,959 おい お百! 1992 02:15:33,084 --> 02:15:33,417 ♪~ 1993 02:15:33,417 --> 02:15:34,794 ♪~ (お路) お母様 1994 02:15:35,086 --> 02:15:36,420 (馬琴) お百 1995 02:15:43,177 --> 02:15:44,470 お百… 1996 02:15:47,139 --> 02:15:48,516 お前は 1997 02:15:49,517 --> 02:15:51,811 私の女房になって 1998 02:15:53,145 --> 02:15:55,898 幸せでは なかったかもしれんな 1999 02:15:59,610 --> 02:16:00,903 (馬琴のため息) 2000 02:16:02,446 --> 02:16:05,324 (馬琴) 許せ お百 2001 02:16:06,868 --> 02:16:08,703 私には まだ 2002 02:16:10,496 --> 02:16:12,081 どうしても 2003 02:16:13,958 --> 02:16:16,836 やり切らねばならぬことが あるのだ 2004 02:16:26,345 --> 02:16:30,516 “安房の里見を攻伐給せめうちたもふ” 2005 02:16:31,309 --> 02:16:32,393 申し訳ございません もう一度 お願いします 2006 02:16:32,393 --> 02:16:34,395 申し訳ございません もう一度 お願いします ~♪ 2007 02:16:37,940 --> 02:16:42,194 (馬琴) “安房の里見を攻伐せめうち”… 2008 02:16:42,320 --> 02:16:43,779 (お路) 申し訳ございません 2009 02:16:43,905 --> 02:16:46,449 “せめうち”とは どう書くのでしょうか? 2010 02:16:47,783 --> 02:16:49,327 (馬琴のため息) 2011 02:16:50,494 --> 02:16:51,913 お路 2012 02:16:53,247 --> 02:16:54,415 もう いい 2013 02:16:55,791 --> 02:16:57,543 もう やめだ 2014 02:16:58,628 --> 02:17:00,129 これも天命だ 2015 02:17:00,546 --> 02:17:05,051 いいえ いいえ! お父様 申し訳ございません! 2016 02:17:05,760 --> 02:17:07,678 お路の無学を叱ってください 2017 02:17:08,179 --> 02:17:10,556 お路の馬鹿を嘆いてください 2018 02:17:11,474 --> 02:17:13,434 でも 諦めないでください 2019 02:17:13,935 --> 02:17:16,270 もう少し 辛抱してください 2020 02:17:19,440 --> 02:17:20,942 (ため息) 2021 02:17:24,779 --> 02:17:29,784 (玉梓の咆哮) 2022 02:17:42,380 --> 02:17:44,674 ♪~ 2023 02:17:44,799 --> 02:17:45,758 (信乃) ふんっ! 2024 02:17:46,050 --> 02:17:50,304 (玉梓の苦しむ声) 2025 02:17:51,389 --> 02:17:55,476 名刀“村雨”の 一撃を食らえ! 2026 02:18:13,035 --> 02:18:15,079 ~♪ 2027 02:18:15,079 --> 02:18:16,038 ~♪ うっ うう… 2028 02:18:16,038 --> 02:18:17,081 うっ うう… 2029 02:18:17,206 --> 02:18:18,624 うう… 2030 02:18:18,749 --> 02:18:19,959 ううっ… 2031 02:18:21,544 --> 02:18:22,461 (信乃) 荘助! 親兵衛! 2032 02:18:22,461 --> 02:18:23,921 (信乃) 荘助! 親兵衛! ♪~ 2033 02:18:23,921 --> 02:18:25,172 ♪~ 2034 02:18:25,297 --> 02:18:26,549 (荘助) 信乃様 2035 02:18:27,842 --> 02:18:29,552 玉梓を 2036 02:18:30,386 --> 02:18:32,805 逃がしてはなりませぬ 2037 02:18:34,765 --> 02:18:36,267 早く! 2038 02:18:42,398 --> 02:18:45,401 (信乃の荒い息) 2039 02:18:52,658 --> 02:18:57,872 お前一人の力では この玉梓は倒せぬわ! 2040 02:19:00,499 --> 02:19:02,543 私は一人には あらず! 2041 02:19:10,009 --> 02:19:12,094 あああっ… 2042 02:19:12,970 --> 02:19:14,430 玉梓! 2043 02:19:15,598 --> 02:19:18,017 我ら八犬士の絆きずなを 2044 02:19:18,601 --> 02:19:19,977 受け止めるがいい! 2045 02:19:24,398 --> 02:19:25,232 んっ! 2046 02:19:26,484 --> 02:19:30,488 (苦しむ声) 2047 02:19:34,450 --> 02:19:36,077 怨霊退散! 2048 02:19:36,202 --> 02:19:43,209 (うめき声) 2049 02:19:50,091 --> 02:19:53,094 ~♪ 2050 02:19:54,887 --> 02:19:57,807 (伝令) 八犬士たち 見事 定正を討ち取り 2051 02:19:57,932 --> 02:20:00,935 怨霊 玉梓を退けました! 2052 02:20:01,227 --> 02:20:01,977 うむ! 2053 02:20:01,977 --> 02:20:02,353 うむ! ♪~ 2054 02:20:02,353 --> 02:20:04,188 ♪~ 2055 02:20:07,274 --> 02:20:11,070 よくやった! 八犬士! 2056 02:20:14,406 --> 02:20:17,409 ~♪ 2057 02:20:21,205 --> 02:20:23,374 (すすり泣き) 2058 02:20:24,500 --> 02:20:27,503 ♪~ 2059 02:21:00,452 --> 02:21:01,662 (信乃) 伏姫様 2060 02:21:08,002 --> 02:21:09,295 信乃 2061 02:21:10,254 --> 02:21:11,755 荘助 2062 02:21:12,464 --> 02:21:13,924 親兵衛 2063 02:21:15,509 --> 02:21:16,635 毛野 2064 02:21:17,511 --> 02:21:18,888 道節 2065 02:21:20,556 --> 02:21:21,891 よくぞ 2066 02:21:22,892 --> 02:21:25,436 玉梓の怨霊を退けました 2067 02:21:26,896 --> 02:21:29,190 心から感謝いたします 2068 02:21:32,151 --> 02:21:33,611 これからも 2069 02:21:34,278 --> 02:21:36,697 八人で力を合わせて 2070 02:21:37,823 --> 02:21:42,036 すばらしき世を 築いてゆくのですよ 2071 02:22:59,154 --> 02:23:02,157 ~♪ 2072 02:23:15,629 --> 02:23:21,635 (馬琴) “伊皿子いさらご近き這浦このうらに。” 2073 02:23:27,516 --> 02:23:32,604 “艦ふねの寄りしを 歓よろこべども” 2074 02:23:32,730 --> 02:23:34,398 (お路) 寄りしを… 2075 02:23:35,983 --> 02:23:42,614 (馬琴) “身は 背手うしろでに結紐しばられて” 2076 02:24:02,509 --> 02:24:03,969 あれは 2077 02:24:04,803 --> 02:24:06,347 絵になる 2078 02:24:07,848 --> 02:24:08,932 フッ… 2079 02:24:16,482 --> 02:24:19,485 ♪~ 2080 02:24:41,882 --> 02:24:44,885 ~♪ 2081 02:24:57,272 --> 02:25:03,278 (神々しい穏やかな音楽) ♪~ 2082 02:25:58,250 --> 02:26:01,253 ~♪ 2083 02:26:06,216 --> 02:26:09,219 ♪~ 2084 02:29:47,521 --> 02:29:50,524 ~♪