1 00:00:29,066 --> 00:00:39,710 ・~ 2 00:00:39,710 --> 00:00:44,415 <先々代の殿 雲覚院様は さばけた お方で・ 3 00:00:44,415 --> 00:00:46,884 春の花の季節になると・ 4 00:00:46,884 --> 00:00:50,587 家中の女子どもが お城の二の丸まで入るのを・ 5 00:00:50,587 --> 00:00:53,257 お許しなされた。・ 6 00:00:53,257 --> 00:00:57,127 お濠沿いの桜は それは見事なもので・ 7 00:00:57,127 --> 00:01:01,699 酒は禁じられておったなれども いわば 無礼講じゃったゆえに・ 8 00:01:01,699 --> 00:01:07,371 木の下に持参の重箱を開き にぎやかに物語などして・ 9 00:01:07,371 --> 00:01:12,242 それはそれは おおらかなものであった。・ 10 00:01:12,242 --> 00:01:17,081 もっとも 奇体なうわさが一つござった。・ 11 00:01:17,081 --> 00:01:21,218 花見を許されるのは 女子供に限らず・ 12 00:01:21,218 --> 00:01:24,722 非番の家中 隠居 部屋住みなど・ 13 00:01:24,722 --> 00:01:29,393 家々の男も見物苦しからずという ご沙汰であったが・ 14 00:01:29,393 --> 00:01:33,230 その中に お忍びの殿がおられて・ 15 00:01:33,230 --> 00:01:35,733 見目よい娘を物色しては・ 16 00:01:35,733 --> 00:01:40,571 後に お城に召される ということじゃった。・ 17 00:01:40,571 --> 00:01:44,742 事実か ただのうわさかは知らぬ。・ 18 00:01:44,742 --> 00:01:46,677 そのうわさを恐れて・ 19 00:01:46,677 --> 00:01:52,082 若い女子は二の丸のお花見に出さぬという 堅い家もあったが・ 20 00:01:52,082 --> 00:01:54,985 祖母は平気であったの。・ 21 00:01:54,985 --> 00:02:03,193 祖母は そのころ 剣術の修練に凝っていて 男など恐れてはおらなんだ。・ 22 00:02:03,193 --> 00:02:08,393 もう 50年も昔の話じゃ> 23 00:02:12,903 --> 00:02:15,203 (おふさ)お以登様? 24 00:02:26,416 --> 00:02:30,616 (以登)ここにしましょう。 (おふさ)はい。 25 00:02:40,397 --> 00:02:44,697 お以登様 津勢様でございますよ。 26 00:02:50,407 --> 00:02:53,076 あら お越しになっていたの。 27 00:02:53,076 --> 00:02:56,814 (津勢)ええ とっくに。 28 00:02:56,814 --> 00:03:00,184 よろしかったら こちらで ご一緒しましょうよ。 29 00:03:00,184 --> 00:03:04,054 この桜 本当に きれい。 30 00:03:04,054 --> 00:03:07,691 ご遠慮させていただきます。 31 00:03:07,691 --> 00:03:12,830 あなたと一緒だと 男の方が怖がって 近寄らないかもしれませんから。 32 00:03:12,830 --> 00:03:14,765 えっ? 33 00:03:14,765 --> 00:03:21,572 うわさになっていますよ。 羽賀様の道場での武勇伝。 34 00:03:21,572 --> 00:03:26,410 城下一の道場に 女子が腕試しに行くだけでもすごいのに・ 35 00:03:26,410 --> 00:03:31,048 あなたにかなう門弟は一人もいなかった っていうじゃありませんか。 36 00:03:31,048 --> 00:03:32,983 それは…。 37 00:03:32,983 --> 00:03:37,387 よほど腕に覚えのある者でなければ あなたには近づけないと・ 38 00:03:37,387 --> 00:03:39,387 専らの評判ですよ。 39 00:03:41,058 --> 00:03:43,758 (津勢)それでは ごきげんよう。 40 00:03:54,738 --> 00:03:59,443 相変わらず にぎやかな お方ですねえ。 41 00:03:59,443 --> 00:04:04,815 武家のお嬢様が あのように 人前で ぺらぺら おしゃべりになられては・ 42 00:04:04,815 --> 00:04:10,020 なかなか お話も まとまらないでしょうね。 43 00:04:10,020 --> 00:04:12,522 三姉妹のご長女ですから・ 44 00:04:12,522 --> 00:04:17,822 竹岡のお家も 早く婿殿をお決めになりたいでしょうに。 45 00:04:20,197 --> 00:04:23,033 さあ そろそろ お戻りになりませんと。 46 00:04:23,033 --> 00:04:25,369 まだ よいではありませんか。 47 00:04:25,369 --> 00:04:29,039 七つになると お城勤めを終えた ご家中が・ 48 00:04:29,039 --> 00:04:34,239 お嬢様方を目当てに大勢押しかけて ぶしつけな目を向けてきます。 49 00:04:39,049 --> 00:04:42,749 さあ お以登様。 ええ。 50 00:04:57,167 --> 00:04:59,967 惜しいこと。 51 00:05:09,346 --> 00:05:13,846 散ってしまうのですね もう。 52 00:05:21,692 --> 00:05:24,192 (孫四郎)卒爾ながら…。 53 00:05:31,368 --> 00:05:35,706 (孫四郎)いや… 間違えたら お許しいただきたいが・ 54 00:05:35,706 --> 00:05:38,906 寺井様のご息女ではありませんか? 55 00:05:40,577 --> 00:05:42,579 はい。 56 00:05:42,579 --> 00:05:46,717 それがし 羽賀道場の者でござる。 57 00:05:46,717 --> 00:05:51,054 先日は見事な試合であったとお聞きした。 58 00:05:51,054 --> 00:05:55,225 惜しいことに それがしは その折 不在で…。 59 00:05:55,225 --> 00:05:59,496 あっ もしや 江口様では? 60 00:05:59,496 --> 00:06:04,196 いかにも。 江口孫四郎でござる。 61 00:06:06,670 --> 00:06:10,007 まことに 惜しいことをいたした。 62 00:06:10,007 --> 00:06:13,877 私の方も 残念でございました。 63 00:06:13,877 --> 00:06:17,748 小黒も白井も 手もなく やられたそうですな。 64 00:06:17,748 --> 00:06:23,186 いいえ。 お二人ともに お強うございました。 65 00:06:23,186 --> 00:06:26,089 勝てたのは 運でございます。 66 00:06:26,089 --> 00:06:28,589 それは ご謙遜であろう。 67 00:06:31,828 --> 00:06:37,634 いつか機会を見て 一度 お手合わせ願いたいものでござる。 68 00:06:37,634 --> 00:06:42,934 私の方こそ 是非にお願いいたしまする。 69 00:06:45,842 --> 00:06:49,713 (鐘の音) お以登様 お時刻でございますよ。 70 00:06:49,713 --> 00:06:51,648 (鐘の音) 71 00:06:51,648 --> 00:06:56,520 いや お引き止めしてすまなんだ。 72 00:06:56,520 --> 00:06:59,820 いずれ また。 73 00:07:01,792 --> 00:07:06,092 さよう。 いずれ また。 74 00:07:49,039 --> 00:07:53,710 お見受けしたところ ただの平藩士。 75 00:07:53,710 --> 00:07:56,613 それも 部屋住みのご身分のようでしたが。 76 00:07:56,613 --> 00:07:58,548 よくは知らぬ。 77 00:07:58,548 --> 00:08:03,153 けれど 江口殿は 羽賀道場の筆頭の剣士。 78 00:08:03,153 --> 00:08:08,492 父に連れられ 試合に参った時は おいでになられなかった。 79 00:08:08,492 --> 00:08:13,663 どうであれ 寺井家五百石の一人娘ともあろうお方が・ 80 00:08:13,663 --> 00:08:18,001 あのような男の方と 親しく言葉を交わされるのは…。 81 00:08:18,001 --> 00:08:22,506 おふさ。 父には言ってもかまわぬ。 82 00:08:22,506 --> 00:08:25,542 剣の道の話をしただけじゃ。 83 00:08:25,542 --> 00:08:29,179 でも 母に言いつけるのは おやめ。 84 00:08:29,179 --> 00:08:34,179 気の小さい お人ゆえ 余計な気を回すかもしれません。 85 00:08:37,687 --> 00:08:42,387 母には ないしょにしましょう おふさ。 86 00:08:46,830 --> 00:08:51,535 <話は 祖母の若き日の恋物語かとな?・ 87 00:08:51,535 --> 00:08:53,837 よう見破った。・ 88 00:08:53,837 --> 00:08:59,309 そのとおりじゃが 恋というものは そなたらが夢みるように・ 89 00:08:59,309 --> 00:09:03,780 ただ甘し うれしのものだけではないぞや。・ 90 00:09:03,780 --> 00:09:05,715 いっそ苦く・ 91 00:09:05,715 --> 00:09:10,987 胸に苦しい思いに責めらるるのが 恋というものじゃ。・ 92 00:09:10,987 --> 00:09:17,987 その次第を語って聞かせようほどに おとなしく聞きなされ> 93 00:09:22,165 --> 00:09:26,503 (郁)ごまであえましょう。 はい。 94 00:09:26,503 --> 00:09:29,005 ああ… それが終わったら・ 95 00:09:29,005 --> 00:09:30,941 たらを大鍋に入れといてください。 はい。 96 00:09:30,941 --> 00:09:32,876 ・(おふさ)ただいま戻りました。 97 00:09:32,876 --> 00:09:36,576 お願い。 はい。 98 00:09:50,293 --> 00:09:52,229 遅くなりました。 99 00:09:52,229 --> 00:09:55,832 お帰りなさい。 どうでした? 今年の桜は。 100 00:09:55,832 --> 00:10:00,036 とても きれいでした。 去年と変わりなく。 101 00:10:00,036 --> 00:10:02,036 そう。 102 00:10:15,585 --> 00:10:17,785 ふっ! ふっ! 103 00:10:21,057 --> 00:10:23,093 ふっ! ふっ! 104 00:10:23,093 --> 00:10:26,930 ふっ! ふっ! 105 00:10:26,930 --> 00:10:31,630 ふっ! ふっ! ふっ! 106 00:10:48,285 --> 00:10:57,285 (素振りをする音) 107 00:11:25,722 --> 00:11:29,422 (戸の開閉音) 108 00:11:33,396 --> 00:11:35,396 ・父上。 109 00:11:37,734 --> 00:11:39,734 (甚左衛門)どうした? 110 00:12:13,837 --> 00:12:16,206 何だ? 111 00:12:16,206 --> 00:12:20,844 お願いがございます。 112 00:12:20,844 --> 00:12:22,779 ん? 113 00:12:22,779 --> 00:12:27,050 江口殿と 試合をさせていただきたいのです。 114 00:12:27,050 --> 00:12:29,386 江口? 115 00:12:29,386 --> 00:12:34,586 羽賀道場の江口孫四郎殿です。 116 00:12:38,094 --> 00:12:41,097 先日 偶然お会いしました。 117 00:12:41,097 --> 00:12:45,297 二の丸の桜を見に参った折に。 118 00:13:05,688 --> 00:13:09,025 白井のお佐江様も お嫁に行かれて・ 119 00:13:09,025 --> 00:13:13,530 とうとう 私たちが 一番年上になってしまいましたね。 120 00:13:13,530 --> 00:13:17,200 そうね。 121 00:13:17,200 --> 00:13:22,705 よろしいこと もう決まってらっしゃる方は。 122 00:13:22,705 --> 00:13:27,577 それで 才助殿は いつ江戸から お戻りになるの? 123 00:13:27,577 --> 00:13:29,577 さあ。 124 00:13:32,215 --> 00:13:34,715 (多佳)いらっしゃいましたよ。 125 00:14:00,677 --> 00:14:02,677 明日だ。 126 00:14:04,681 --> 00:14:07,981 江口孫四郎が 明日 ここに来る。 127 00:14:12,021 --> 00:14:14,021 江口様? 128 00:14:16,693 --> 00:14:19,393 準備をしておけ。 129 00:14:24,367 --> 00:14:26,367 はい。 130 00:15:00,203 --> 00:15:03,903 ・(孫四郎)御免。 江口孫四郎でござる。 131 00:15:15,685 --> 00:15:19,022 奥で お茶でも召し上がりませんか。 132 00:15:19,022 --> 00:15:23,826 いや 先に試合を済ませましょう。 133 00:15:23,826 --> 00:15:26,362 お急ぎでございますか。 134 00:15:26,362 --> 00:15:30,033 いえ 格別 急ぐ用はござらん。 135 00:15:30,033 --> 00:15:35,705 こちら様のお屋敷の庭は見事なものだと 日頃から うわさに聞いており申す。 136 00:15:35,705 --> 00:15:39,709 伺ったついでに 是非とも ご案内いただきたいものですが・ 137 00:15:39,709 --> 00:15:44,847 それよりは まず 以登殿のお手並みを拝見したい。 138 00:15:44,847 --> 00:15:51,054 はい。 では 裏手の稽古場の方へご案内します。 139 00:15:51,054 --> 00:15:54,390 父が検分役を務めるそうでございます。 140 00:15:54,390 --> 00:15:57,360 それは光栄でござる。 141 00:15:57,360 --> 00:16:00,160 では 始めよ。 142 00:16:46,643 --> 00:16:48,643 えいっ! ふっ! ていっ! 143 00:16:52,215 --> 00:16:55,051 えいっ! やあっ! えいっ! えいっ! たあっ! 144 00:16:55,051 --> 00:16:57,051 やあっ! 145 00:17:21,177 --> 00:17:23,680 えいっ! えいっ! 146 00:17:23,680 --> 00:17:26,380 えいっ! たあっ! えいっ! やあっ! 147 00:17:45,935 --> 00:17:48,935 えいっ! せいっ! うっ! うっ! 148 00:18:45,695 --> 00:18:48,395 うっ! うっ! 149 00:18:50,199 --> 00:18:52,699 ていっ! えいっ! 150 00:18:54,837 --> 00:18:56,773 やあっ! ていっ! 151 00:18:56,773 --> 00:18:58,773 うっ…。 152 00:19:12,255 --> 00:19:14,555 (甚左衛門)それまで。 153 00:19:17,093 --> 00:19:23,866 何だ いま少し使えるかと思ったが 江口にかかっては 子供同然だな。 154 00:19:23,866 --> 00:19:27,870 いえ そのようなことは。 155 00:19:27,870 --> 00:19:32,675 江口を庭に案内して 茶を差し上げろ。 156 00:19:32,675 --> 00:19:35,011 はい。 157 00:19:35,011 --> 00:20:26,229 ・~ 158 00:20:26,229 --> 00:20:30,066 では そろそろ…。 159 00:20:30,066 --> 00:20:32,401 はい。 160 00:20:32,401 --> 00:20:37,874 今日は ありがとうございました。 161 00:20:37,874 --> 00:20:42,078 いえ こちらこそ。 162 00:20:42,078 --> 00:20:45,278 初めてでございました。 163 00:20:49,585 --> 00:20:57,026 女子の剣と侮ることなく 竹刀を合わせていただいたのは…。 164 00:20:57,026 --> 00:21:29,926 ・~ 165 00:21:29,926 --> 00:21:32,926 (甚左衛門)これで 気が済んだか? 166 00:21:36,699 --> 00:21:43,472 (甚左衛門)江口孫四郎は好漢だが 二度と会うことはならん。 167 00:21:43,472 --> 00:21:49,745 そなたは 婿となる男が決まった身だ。 168 00:21:49,745 --> 00:21:51,745 はい。 169 00:21:55,685 --> 00:22:01,685 それに 江口にも 内々で 縁組みの話が進んでおるらしい。 170 00:22:56,345 --> 00:23:00,016 では ふくささばきの割り稽古を 始めましょう。 171 00:23:00,016 --> 00:23:02,518 まず 三つ折りにして 帯から抜いてください。 172 00:23:02,518 --> 00:23:07,690 まだ お戻りにならないの? 才助殿。 ええ。 173 00:23:07,690 --> 00:23:12,194 もうそろそろ… 4年? 174 00:23:12,194 --> 00:23:14,530 そうね。 175 00:23:14,530 --> 00:23:17,199 まるで置き去りじゃありませんか。 176 00:23:17,199 --> 00:23:19,835 別に そんなことは…。 177 00:23:19,835 --> 00:23:24,040 一体 江戸で 何の学問をされているの? 178 00:23:24,040 --> 00:23:26,075 さあ…。 179 00:23:26,075 --> 00:23:29,912 高名な塾に通っておられるのでしょう? 180 00:23:29,912 --> 00:23:33,049 ご苦労されてるのではないかしら。 181 00:23:33,049 --> 00:23:41,223 どう見ても 切れ者という感じでは なかったですものね あのお方。 182 00:23:41,223 --> 00:23:43,223 ・(加世)失礼いたします。 183 00:24:24,900 --> 00:24:28,370 (加世)申し訳ございませんでした。 184 00:24:28,370 --> 00:24:36,045 ここのところ 家の方の用で お稽古に お伺いできませんでした。 185 00:24:36,045 --> 00:24:40,850 しばらく お会いできず さみしゅうございました。 186 00:24:40,850 --> 00:24:43,385 相変わらずね~。 187 00:24:43,385 --> 00:24:47,556 ご住職にまで こびて どういうおつもりかしら。・ 188 00:24:47,556 --> 00:24:49,592 男遊びが過ぎて・ 189 00:24:49,592 --> 00:24:53,429 お嫁入り前に慌てて おさらいしたって 遅いと思うけれど。 190 00:24:53,429 --> 00:24:56,665 えっ 加世様 お決まりになったの? 191 00:24:56,665 --> 00:24:58,667 ええ。・ 192 00:24:58,667 --> 00:25:01,537 お父上の具合が よろしくないようで・ 193 00:25:01,537 --> 00:25:05,808 お家の方は かなり 縁組みを 焦っておいでのようでしたけど・ 194 00:25:05,808 --> 00:25:08,008 ようやくね。 195 00:25:15,551 --> 00:25:21,290 お婿に入られる方は ご存じなのかしらね あのこと。 196 00:25:21,290 --> 00:25:24,693 でも あれは ただのうわさでしょう? 197 00:25:24,693 --> 00:25:26,695 いいえ 違いますよ。 198 00:25:26,695 --> 00:25:31,367 1年ほど前 小花町の青柳っていう お茶屋から・ 199 00:25:31,367 --> 00:25:35,204 夜更けて 加世様と ご用人の藤井勘解由様が・ 200 00:25:35,204 --> 00:25:39,041 忍び出てきたのを 見かけた方がいるのですから。 201 00:25:39,041 --> 00:25:43,379 でも 妻子のある 15も年が違う方と…。 202 00:25:43,379 --> 00:25:47,550 いいえ 17です。 203 00:25:47,550 --> 00:25:49,852 もう別れたのかしら? 204 00:25:49,852 --> 00:25:54,223 いくら 加世様でも まさか 片方に男を隠したまま・ 205 00:25:54,223 --> 00:25:58,494 お婿さんは もらえないでしょ? そうね。 206 00:25:58,494 --> 00:26:03,494 どちらにせよ おかわいそうよね 江口様も。 207 00:26:07,503 --> 00:26:09,805 江口様? 208 00:26:09,805 --> 00:26:15,678 ええ。 加世様のお相手は 勘定組の江口の家のご三男で・ 209 00:26:15,678 --> 00:26:20,816 孫四郎様という方だそうよ。 210 00:26:20,816 --> 00:26:24,186 ご存じなの? 211 00:26:24,186 --> 00:26:26,386 いいえ。 212 00:26:30,059 --> 00:26:37,366 きっと 妻となる方のうわさなど 何も聞いていないのでしょうね。 213 00:26:37,366 --> 00:26:39,702 仮に ご存じだとしても・ 214 00:26:39,702 --> 00:26:45,374 加世様のお家 内藤家は 三百石の奏者番のお家柄。 215 00:26:45,374 --> 00:26:50,045 代々城中の礼式をつかさどる 由緒ある お家でしょう? 216 00:26:50,045 --> 00:26:53,716 平藩士の三男でいらっしゃる 江口様にとっては・ 217 00:26:53,716 --> 00:26:56,986 またとない お話ではありませんか。・ 218 00:26:56,986 --> 00:27:02,986 知っていても 知らぬふりをなさる ということだって おありでしょ。 219 00:27:04,860 --> 00:27:06,996 (孫四郎)ていっ! 220 00:27:06,996 --> 00:27:42,696 ・~ 221 00:27:49,371 --> 00:27:51,407 こちらの方は いかがでしょうか。 こちらはですね・ 222 00:27:51,407 --> 00:27:54,243 京都の甚右衛門が 織り込んだものでございまして。 223 00:27:54,243 --> 00:27:57,112 (加世)もう一つ 別のを見せてください。 224 00:27:57,112 --> 00:28:00,783 では こちらは いかがでしょうか。 225 00:28:00,783 --> 00:28:05,283 孫四郎様には さぞや お似合いかと存じますが。 226 00:28:09,491 --> 00:28:11,691 (おなつ)お帰りでございます。 227 00:28:16,665 --> 00:28:19,668 ただいま戻りました。 一足遅うございました。 228 00:28:19,668 --> 00:28:22,471 えっ? 帰っていらっしゃったのですよ。 229 00:28:22,471 --> 00:28:24,540 江戸から いいなずけ殿が。 230 00:28:24,540 --> 00:28:26,540 えっ? 231 00:28:31,213 --> 00:28:35,684 ただいま戻りました。 お帰りなさい。 232 00:28:35,684 --> 00:28:38,354 父上は お会いになられたのですか? 233 00:28:38,354 --> 00:28:42,654 ええ。 どういうわけだか お気が合うようで あのお二人。 234 00:28:49,365 --> 00:28:52,034 それで 才助殿は? 235 00:28:52,034 --> 00:28:58,841 今日は お家の方に。 明日 江戸に戻られると。 236 00:28:58,841 --> 00:29:00,843 また江戸に? 237 00:29:00,843 --> 00:29:05,481 こちらの方に帰られたのは どうやら 金策のためだったようです。 238 00:29:05,481 --> 00:29:09,985 旦那様が こっそり お渡ししておられたようでしたから。 239 00:29:09,985 --> 00:29:14,785 きっと ばつが悪くて お以登様には お会いになられなかったのですよ。 240 00:29:24,166 --> 00:29:33,876 (せみの鳴き声) 241 00:29:33,876 --> 00:29:45,176 (太鼓の音) 242 00:29:53,028 --> 00:30:00,369 (孫四郎)「元日より七種朝晩まで 熨斗目麻上下着用のこと。・ 243 00:30:00,369 --> 00:30:06,241 節分夕番 熨斗目麻上下着用のこと。・ 244 00:30:06,241 --> 00:30:13,849 正月十日 御参詣当番 熨斗目麻上下着用・ 245 00:30:13,849 --> 00:30:18,554 同二十四日 平服のこと。・ 246 00:30:18,554 --> 00:30:28,063 公儀御祥月御参詣 大督寺詰め 熨斗目麻上下」…。 (島田)内藤様。・ 247 00:30:28,063 --> 00:30:32,863 小谷忠兵衛様が お見えになりました。 248 00:30:45,247 --> 00:30:49,084 (村川)江口改め 内藤孫四郎様か…。 249 00:30:49,084 --> 00:30:56,191 (石塚)平侍の部屋住みが 今や 内藤家三百石の奏者見習だ。 250 00:30:56,191 --> 00:30:59,528 羨ましいのう。 251 00:30:59,528 --> 00:31:02,197 城下一の剣の使い手であっても・ 252 00:31:02,197 --> 00:31:08,197 果たして 礼儀三百 威儀三千のご作法の世界が勤まるかな…。 253 00:31:11,707 --> 00:31:18,580 (小谷)今は見習いの身であるが やがては 城中の年中行事を取りしきり・ 254 00:31:18,580 --> 00:31:26,255 あるいは 殿のご名代として 幕府や朝廷へ使者を務めねばならん。 255 00:31:26,255 --> 00:31:32,995 代々 この奏者番の職を勤める 内藤家の当主として・ 256 00:31:32,995 --> 00:31:39,768 家名を汚すことのなきよう しっかりと励まれるように。 257 00:31:39,768 --> 00:31:42,568 はっ。 258 00:31:50,412 --> 00:31:54,612 ご用人の藤井勘解由様でございます。 259 00:32:02,357 --> 00:32:07,029 (藤井)内藤孫四郎殿か。 はっ。 260 00:32:07,029 --> 00:32:11,329 精進されよ。 はっ。 261 00:32:27,049 --> 00:32:34,790 (宗庵)ひとつき半ほど前 夜更けに 内藤の家から使いが来てな。 262 00:32:34,790 --> 00:32:38,790 多聞殿が お倒れになった。 263 00:32:45,734 --> 00:32:52,434 急に職を辞し 孫四郎に 家督を譲られたのは そのためでしたか。 264 00:32:55,811 --> 00:33:05,011 加世殿の縁組みを急いだのも 体調を懸念してのことであろう。 265 00:33:08,824 --> 00:33:17,566 あの江口孫四郎が 今や奏者見習とは…。 うん…。 266 00:33:17,566 --> 00:33:22,704 我が藩きっての剣の使い手が・ 267 00:33:22,704 --> 00:33:28,704 お役目を全うしようと 竹刀を手にする余裕もありますまい。 268 00:33:35,050 --> 00:33:38,854 そういえば 以前 どこぞにも・ 269 00:33:38,854 --> 00:33:44,226 我が藩一の使い手とうたわれた男が おったな。 270 00:33:44,226 --> 00:33:49,097 だが その男は 剣に没頭するあまり・ 271 00:33:49,097 --> 00:34:00,342 親から受け継いだ以上のお役に昇る機会を 自らなくしてしまった。 272 00:34:00,342 --> 00:34:07,215 上士の家に生まれた者として 政に身を投じ・ 273 00:34:07,215 --> 00:34:12,921 お国を治める道を選ぶのか。 274 00:34:12,921 --> 00:34:22,197 それとも その身を捨て ひたすら剣の道を究めんとするか。 275 00:34:22,197 --> 00:34:31,997 果たして どちらが武士の選ぶべき道か 難しいものよのう…。 276 00:34:41,550 --> 00:34:46,054 父上が 江戸へ10年も行かれたままだったのは・ 277 00:34:46,054 --> 00:34:49,858 夕雲流の剣術に 出会われたからなのですね。 278 00:34:49,858 --> 00:34:55,564 藩のお役目だけでしたら 2年か3年で戻られたのでしょうけれど。 279 00:34:55,564 --> 00:35:02,064 その間 お母様 ずっと お一人で…。 ご祝言を挙げて すぐだったのでしょう? 280 00:35:05,240 --> 00:35:09,811 結局 父上は剣の道を諦めて 国元へ戻られた。 281 00:35:09,811 --> 00:35:15,311 さすがに 組頭のお家のご長男ですからね。 282 00:35:17,352 --> 00:35:22,824 あなたが生まれた日 よほど心待ちにされていたのでしょう。 283 00:35:22,824 --> 00:35:27,529 父上は お城から 飛ぶように帰っていらっしゃいました。 284 00:35:27,529 --> 00:35:36,838 それが あなたが女子だと知った時 ほんの一瞬 かすかに お顔がこわばった。 285 00:35:36,838 --> 00:35:44,638 母には それが分かったのです。 その顔が 今でも忘れられません。 286 00:35:47,382 --> 00:35:53,188 いや~ 剣の道など分からぬ へぼ医者が・ 287 00:35:53,188 --> 00:35:58,326 とやかく言うことではないな。 288 00:35:58,326 --> 00:36:05,000 いえ 医術の道を究めんと 自ら武士を捨て 江戸に向かわれた・ 289 00:36:05,000 --> 00:36:07,803 宗庵先生ならではのお言葉かと。 290 00:36:07,803 --> 00:36:12,174 わしが国を出たのは そんなに格好のよいものではない。 291 00:36:12,174 --> 00:36:14,209 ただ 逃げ出しただけだ。 292 00:36:14,209 --> 00:36:22,884 平藩士の次男に生まれ 一生 役もつかぬ部屋住みの身にとって・ 293 00:36:22,884 --> 00:36:30,025 医術というのが精いっぱいの 逃げ道であった。 ただ それだけだ。 294 00:36:30,025 --> 00:36:38,200 もし あの時 孫四郎のような話が来れば・ 295 00:36:38,200 --> 00:36:43,500 わしも それを選んだであろう。 296 00:36:45,941 --> 00:36:51,141 お主には 分からんだろうな。 297 00:37:10,198 --> 00:37:28,550 (稽古する声) 298 00:37:28,550 --> 00:37:31,250 (小黒)よし それまで! 299 00:37:36,391 --> 00:37:42,530 どうだ? 孫四郎 久しぶりに。 いや まだ お役目が残っている。 300 00:37:42,530 --> 00:37:48,403 うん。 では。 301 00:37:48,403 --> 00:37:54,603 (稽古する声) 302 00:38:41,022 --> 00:38:47,362 (太鼓の音) 303 00:38:47,362 --> 00:38:52,701 この者ども 江戸勤番を滞りなく相務め・ 304 00:38:52,701 --> 00:38:58,139 まかり帰りましたる 御番衆でござりまする。 305 00:38:58,139 --> 00:39:01,939 本多進之丞。 はっ。 306 00:39:04,779 --> 00:39:09,985 小寺源次郎。 はっ。 307 00:39:09,985 --> 00:39:15,490 中村平馬。 はっ。 308 00:39:15,490 --> 00:39:20,161 加藤衛蔵。 はっ。 309 00:39:20,161 --> 00:39:24,332 秋保丹解。 はっ。 310 00:39:24,332 --> 00:39:26,832 妻木…。 311 00:39:43,351 --> 00:39:48,151 妻木甚吾兵衛。 はっ。 312 00:39:50,525 --> 00:39:55,025 関口太郎衛門。 はっ。 313 00:40:23,858 --> 00:40:31,566 ありがとうございました。 年寄りは 何かと せっかちだからのう。 314 00:40:31,566 --> 00:40:36,766 初のお役目としては 上々であった。 315 00:40:53,955 --> 00:40:58,193 本当に よろしかったわね。 316 00:40:58,193 --> 00:41:02,030 大したお相手ではありませんけど。 何を言っているの。 317 00:41:02,030 --> 00:41:07,902 御番頭の水野様のご次男なんて。 ええ。 318 00:41:07,902 --> 00:41:15,710 お以登様と2人で ここに来るのも これが最後かもしれませんね。 319 00:41:15,710 --> 00:41:22,417 祝言が済めば こうして気ままに 湯あみにも来れないでしょう。 320 00:41:22,417 --> 00:41:25,854 そうね。 321 00:41:25,854 --> 00:41:31,654 もう… 終わってしまうのですね。 322 00:41:40,368 --> 00:41:45,668 惜しいこと。 えっ? 323 00:41:59,687 --> 00:42:06,387 もう一度 お湯に入ってきます。 せっかくだから。 ええ。 324 00:42:41,729 --> 00:42:47,429 ・(笑い声) 325 00:42:49,070 --> 00:42:53,770 ・ハハハハ 何をなさるんです。 326 00:42:57,779 --> 00:43:03,479 ・(笑い声) 327 00:43:19,534 --> 00:43:22,570 アハハハハ…。 328 00:43:22,570 --> 00:43:27,070 あっ。 加世様…。 329 00:43:43,057 --> 00:43:49,857 藤井… 勘解由殿…。 330 00:43:55,637 --> 00:43:58,837 参ろう。 331 00:44:25,199 --> 00:44:27,999 お帰りでございます。 332 00:44:34,542 --> 00:44:37,845 遅くなりました。 お以登様 よかった。 333 00:44:37,845 --> 00:44:40,715 今度は 間に合いましたよ。 えっ? 334 00:44:40,715 --> 00:44:45,386 早く着替えて ご挨拶なさい。 335 00:44:45,386 --> 00:44:47,686 ・失礼いたします。 336 00:44:51,859 --> 00:44:57,665 (才助)もう一杯 お代わり頂いて よろしいでしょうか。 337 00:44:57,665 --> 00:45:00,335 あっ。 338 00:45:00,335 --> 00:45:03,371 お帰りなさいませ。 339 00:45:03,371 --> 00:45:07,208 これは… 以登殿…。 340 00:45:07,208 --> 00:45:11,208 お久しゅうございます。 341 00:45:17,185 --> 00:45:24,685 いや~ ご無沙汰をいたした。 片桐才助 今朝 江戸から戻って参った。 342 00:45:37,505 --> 00:45:42,343 4年… いや 5年ぶりかのう。 343 00:45:42,343 --> 00:45:49,050 いやはや 見違え申した。 すっかり美しゅうなられた。 344 00:45:49,050 --> 00:45:53,554 あっ 先ほど お父上から・ 345 00:45:53,554 --> 00:46:00,554 年が明け 雪が解ける頃には祝言をと 言い渡されましてな。 346 00:46:23,518 --> 00:46:26,318 作らせておいた。 347 00:46:29,390 --> 00:46:33,390 婿を取る日が来たら 渡そうと思っていた。 348 00:46:54,582 --> 00:47:00,382 武家の妻として 何かの折に必要となるかもしれぬ。 349 00:47:03,191 --> 00:47:05,891 ありがとうございます。 350 00:47:36,023 --> 00:48:22,169 ・~ 351 00:48:22,169 --> 00:48:26,969 えいっ! えいっ! えいっ! 352 00:48:37,018 --> 00:48:39,518 えいっ! 353 00:48:57,338 --> 00:48:59,640 (堀田)先日 我が藩は・ 354 00:48:59,640 --> 00:49:04,779 幕府より 利根川治水のお手伝い普請を 仰せつかった。 355 00:49:04,779 --> 00:49:09,317 奥羽各藩と共に行う大事業だ。 356 00:49:09,317 --> 00:49:15,990 我が藩だけで 十万両を超す出費になる。・ 357 00:49:15,990 --> 00:49:21,162 だが 知ってのとおり 6年前の大凶作以降・ 358 00:49:21,162 --> 00:49:27,501 我が藩は とても そのような ばく大な負担に耐えられる状況にはない。 359 00:49:27,501 --> 00:49:31,339 (本多)そこで かねてより 懇意にしていただいている・ 360 00:49:31,339 --> 00:49:34,008 安部元勝様のお計らいにより・ 361 00:49:34,008 --> 00:49:36,911 ご老中 安西対馬守様に・ 362 00:49:36,911 --> 00:49:41,515 いささかでも 我が藩の負担を 軽くしていただけぬものかと・ 363 00:49:41,515 --> 00:49:45,353 書状にて お伺いを立てたいのだ。 364 00:49:45,353 --> 00:49:48,053 近う。 365 00:49:59,900 --> 00:50:03,204 奏者見習として まだ日の浅い そちには・ 366 00:50:03,204 --> 00:50:07,708 荷が勝ちすぎるとも思ったが…。 367 00:50:07,708 --> 00:50:14,508 藤井殿のご推挙もあり 任せることとなった。 368 00:50:38,673 --> 00:50:43,878 (山田)お旗本の安部様を通じ ご老中に書状をお届けするだけとはいえ・ 369 00:50:43,878 --> 00:50:49,583 初めての江戸でのお役目 遺漏なきよう 心して務めよ。 370 00:50:49,583 --> 00:50:51,883 はっ。 371 00:51:13,908 --> 00:52:16,203 ・~ 372 00:52:16,203 --> 00:52:19,540 藤井様。 373 00:52:19,540 --> 00:52:25,045 人がおっては 小谷殿の顔を 潰すことになりかねんのでな。 374 00:52:25,045 --> 00:52:27,848 はっ? 375 00:52:27,848 --> 00:52:34,054 江戸のしきたりについて ひと言 教えておかねばならぬことがある。 376 00:52:34,054 --> 00:52:38,926 城内の作法は 十分に心得たつもりでおりますが。 377 00:52:38,926 --> 00:52:44,732 その作法も生き物だ。 近う。 378 00:52:44,732 --> 00:53:20,232 ・~ 379 00:53:31,045 --> 00:53:34,345 お代わり 頂けますか。 380 00:53:55,669 --> 00:54:00,469 お以登様。 はいはい。 381 00:54:02,543 --> 00:54:05,813 よっぽど 居心地がよろしいんでしょうね。 382 00:54:05,813 --> 00:54:11,018 ご祝言は まだまだ先だというのに 3日とあけず お越しになるんですから。 383 00:54:11,018 --> 00:54:17,718 でも これだけ召し上がってくださると かえって気持ちがよろしゅうございます。 384 00:54:42,850 --> 00:54:47,721 (笑い声) 385 00:54:47,721 --> 00:54:51,592 いや~ この岡田伝八郎とは・ 386 00:54:51,592 --> 00:54:54,395 江戸でも よく こうして飲み明かしたものだ。 387 00:54:54,395 --> 00:54:56,997 なあ。 (岡田)おう。 388 00:54:56,997 --> 00:55:02,870 これからも 長~いつきあいになる。 以登殿も よろしくお願いいたしますぞ。 389 00:55:02,870 --> 00:55:08,609 はあ… よろしくお願いいたします。 いや こちらこそ。 390 00:55:08,609 --> 00:55:15,382 では そろそろ おいとまを。 おい まだよいではないか。 391 00:55:15,382 --> 00:55:22,690 お主も 江戸詰めを終え 戻ったばかりだ。 やはり 国の酒は うまかろう。 392 00:55:22,690 --> 00:55:27,528 ああ。 ほら。 おう。 393 00:55:27,528 --> 00:55:34,828 ハハハハ… すまん もう少し 頂けるかな。 はい。 394 00:55:42,076 --> 00:55:44,378 才助。 ん? 395 00:55:44,378 --> 00:55:46,413 よい家に婿に入ったな。 396 00:55:46,413 --> 00:55:51,151 それを言うな。 フフフフ…。 397 00:55:51,151 --> 00:55:55,151 祝言は まだでございます。 398 00:56:07,501 --> 00:56:13,173 (才助たちの笑い声) 399 00:56:13,173 --> 00:56:15,373 おう。 400 00:56:17,511 --> 00:56:22,711 かわや。 ハハハハ…。 401 00:56:26,687 --> 00:56:49,376 ・~ 402 00:56:49,376 --> 00:56:52,713 (おふさ)ただいま戻りました。 403 00:56:52,713 --> 00:57:50,713 ・~ 404 00:57:53,207 --> 00:57:57,644 ご老中 安西対馬守様。 405 00:57:57,644 --> 00:58:01,982 ますます ご機嫌よろしく あらせられますること 承知いたし・ 406 00:58:01,982 --> 00:58:05,786 恐悦の至りと存じ奉ります。 407 00:58:05,786 --> 00:58:10,324 海坂藩 内藤孫四郎と申しまする。 408 00:58:10,324 --> 00:58:15,996 本日は 我が殿より ご老中への呈書を 持参つかまつりました。 409 00:58:15,996 --> 00:58:19,696 (笑い声) 410 00:58:24,171 --> 00:58:28,871 どうか お納めくださいますよう…。 (笑い声) 411 00:58:31,678 --> 00:58:35,349 ご披露 願い奉りまする。 (笑い声) 412 00:58:35,349 --> 00:58:39,186 (久米)内藤殿と申されたか。 413 00:58:39,186 --> 00:58:44,686 いま一度 一からやり直されてはいかがかな。 414 00:58:56,303 --> 00:59:00,774 ご老中 安西対馬守様。 415 00:59:00,774 --> 00:59:05,646 ますます ご機嫌よろしく…。 (久米)そうではない。 416 00:59:05,646 --> 00:59:12,152 届け先を間違っているのではないかと 申しておるのだ。・ 417 00:59:12,152 --> 00:59:15,055 どなたをも介することなく・ 418 00:59:15,055 --> 00:59:18,025 ここで そのような書状を突き出されたのは・ 419 00:59:18,025 --> 00:59:20,494 さすがに 身共も初めてでござる。 420 00:59:20,494 --> 00:59:26,667 いや 江戸開城以来 初めてかもしれぬな。・ 421 00:59:26,667 --> 00:59:31,004 もちろん受け取り ご老中にお渡ししてもよいのだが・ 422 00:59:31,004 --> 00:59:36,877 それでは 国元の殿のお顔に 泥を塗ることになると存ずるが。 423 00:59:36,877 --> 00:59:41,181 (都筑)いや もう既に そのお顔には・ 424 00:59:41,181 --> 00:59:45,519 洗っても落ちぬほどの泥が ついておるような気がするがのう。 425 00:59:45,519 --> 00:59:59,019 (笑い声) 426 01:00:22,723 --> 01:00:24,723 (腹を切る音) 427 01:01:03,196 --> 01:01:08,196 以登。 はい。 428 01:01:12,205 --> 01:01:18,205 内藤孫四郎が 江戸屋敷で 自ら命を絶った。 429 01:01:34,394 --> 01:02:18,071 ・~ 430 01:02:18,071 --> 01:02:25,679 いや 間違えたらお許しいただきたいが 寺井様のご息女ではありませんか? 431 01:02:25,679 --> 01:03:51,679 ・~ 432 01:04:07,180 --> 01:04:11,380 ・よろしいか? はい。 433 01:04:21,027 --> 01:04:26,700 いやいや 驚きましたぞ。 以登殿の方から会いたいなどと…。 434 01:04:26,700 --> 01:04:31,037 それも こちらの部屋で。 435 01:04:31,037 --> 01:04:33,337 どうぞ お座りください。 436 01:04:35,375 --> 01:04:37,310 あっ いてて。 あっ…。 437 01:04:37,310 --> 01:04:40,847 妙な誤解をなさらぬよう。 438 01:04:40,847 --> 01:04:42,782 はあ? 439 01:04:42,782 --> 01:04:46,653 ご相談できるお相手が 才助殿しかいなかったのです。 440 01:04:46,653 --> 01:04:49,453 相談? 441 01:04:54,060 --> 01:04:59,666 何なのだ? わしにしかできない相談というのは。 442 01:04:59,666 --> 01:05:05,805 江口… いえ 内藤孫四郎殿のことです。 443 01:05:05,805 --> 01:05:08,505 えっ? 444 01:05:10,677 --> 01:05:14,477 江戸屋敷の一件か? 445 01:05:16,349 --> 01:05:23,049 どうしても知りたいのです。 孫四郎殿が 自ら命を絶たれた訳を。 446 01:05:24,691 --> 01:05:31,464 それは まだお役目に慣れぬ孫四郎が 失態を犯し・ 447 01:05:31,464 --> 01:05:34,367 藩に恥辱を与えたとして・ 448 01:05:34,367 --> 01:05:39,667 自ら命をもって償った ということのようだが…。 449 01:05:41,241 --> 01:05:46,713 本当に そうでしょうか? えっ? 450 01:05:46,713 --> 01:05:49,215 罠にはめられたのでは ないでしょうか? 451 01:05:49,215 --> 01:05:57,023 罠!? 内藤孫四郎がか? 452 01:05:57,023 --> 01:05:59,793 どうして そのようなことを…。 453 01:05:59,793 --> 01:06:04,631 孫四郎殿の妻 加世殿は・ 454 01:06:04,631 --> 01:06:09,336 ある男と ただならぬ関係にありました。 455 01:06:09,336 --> 01:06:13,673 相手は? 456 01:06:13,673 --> 01:06:16,676 藤井…。 457 01:06:16,676 --> 01:06:18,876 勘解由殿か? 458 01:06:27,520 --> 01:06:33,820 お願いします。 孫四郎殿とのことを 調べていただけないでしょうか? 459 01:06:44,371 --> 01:06:47,407 飯は まだあるかのう? 460 01:06:47,407 --> 01:06:49,542 えっ? 461 01:06:49,542 --> 01:06:53,742 腹が減っては 戦はできぬ。 462 01:07:17,504 --> 01:07:22,809 内藤家は お取り潰しか? いや そこまでは どうかな? 463 01:07:22,809 --> 01:07:27,009 もう一本 頼む。 はい かしこまりました。 464 01:07:29,349 --> 01:07:34,020 で どうだった? 早駆けで戻った横山殿は? 465 01:07:34,020 --> 01:07:38,358 案の定 かん口令が敷かれているようだった。 466 01:07:38,358 --> 01:07:41,695 そうか。 心配するな。 467 01:07:41,695 --> 01:07:46,366 やつとは 夜中に 江戸藩邸を 何度も抜け出した仲だ。 フッ。 468 01:07:46,366 --> 01:07:49,269 それで? お待たせしました! 469 01:07:49,269 --> 01:07:52,172 早いな。 あっ… おい! 470 01:07:52,172 --> 01:07:56,172 あっ すみません。 どうぞ ごゆっくり。 471 01:08:02,849 --> 01:08:08,154 どうやら 孫四郎は 手順を一つ間違えたらしい。 472 01:08:08,154 --> 01:08:10,190 手順? 473 01:08:10,190 --> 01:08:13,493 江戸城とは 回りくどい所でな。 474 01:08:13,493 --> 01:08:21,193 誰かに話を通すには それ相応の仲介者 つまり 筋を通さねばならん。 475 01:08:23,503 --> 01:08:27,006 今回の場合も 藩が かねてより懇意にしていて・ 476 01:08:27,006 --> 01:08:30,677 ご老中と通じているお旗本 安部元勝様を通せば・ 477 01:08:30,677 --> 01:08:32,612 何の問題もなかった。 478 01:08:32,612 --> 01:08:38,612 だが 孫四郎は なぜか直接ご老中のもとに 書状を持っていった。 479 01:08:40,353 --> 01:08:42,689 江戸の留守居役は 何していたんだ? 480 01:08:42,689 --> 01:08:45,592 本来 そういった手はずは 留守居が段取るはずだろう。 481 01:08:45,592 --> 01:08:48,828 それが 折悪く 留守居役の長坂様は・ 482 01:08:48,828 --> 01:08:52,532 ひとつきほど前から 胸の病で 床に伏せっている。 483 01:08:52,532 --> 01:09:00,732 なぜ そのような時に まだお役目に不慣れな者を…。 484 01:09:02,208 --> 01:09:05,779 孫四郎は 我が藩の面目のみならず・ 485 01:09:05,779 --> 01:09:10,316 無視された格好になった 安部家の顔をも潰した。 486 01:09:10,316 --> 01:09:13,653 安部様にとっても お旗本の対面に関わることだ。 487 01:09:13,653 --> 01:09:18,992 激しいお怒りであったろうことは 想像するに難くない。 488 01:09:18,992 --> 01:09:23,496 しかし 腹を切るようなことでは…。 489 01:09:23,496 --> 01:09:27,696 孫四郎とは そういう男なのだ。 490 01:09:34,007 --> 01:09:41,181 こたびのお役目を 奏者見習として まだ 日が浅い孫四郎に託したのは・ 491 01:09:41,181 --> 01:09:43,817 それがしでございます。 492 01:09:43,817 --> 01:09:49,689 いや お役は その身分に相応したものであったはず。 493 01:09:49,689 --> 01:09:54,360 それに 孫四郎を立てたのは 殿のご意向を受けてのことでもあろう。 494 01:09:54,360 --> 01:09:56,696 はっ。 ですが…。 495 01:09:56,696 --> 01:10:00,200 ならば 用人としての職務を果たしたまで。 496 01:10:00,200 --> 01:10:06,072 いや それどころか ご老中様のおとがめが あの程度で済んだのは・ 497 01:10:06,072 --> 01:10:10,210 まさに 藤井殿が いち早く江戸屋敷に指示を送り・ 498 01:10:10,210 --> 01:10:12,245 諸方に手を打たれたおかげ。 499 01:10:12,245 --> 01:10:17,383 さよう。 そのことは 皆が知っておる。 500 01:10:17,383 --> 01:10:20,420 さあ 顔を上げられよ。 501 01:10:20,420 --> 01:10:22,555 しかし こたびのことで・ 502 01:10:22,555 --> 01:10:30,730 孫四郎のみならず 内藤家に 何かしらのおとがめが下るとなれば・ 503 01:10:30,730 --> 01:10:37,230 それがしとて ただいまの職に 安穏としているわけには参りません。 504 01:10:40,874 --> 01:10:48,414 分かった。 内藤家の処分に関しては いま一度 ご家老たちと協議いたそう。 505 01:10:48,414 --> 01:10:50,714 よろしいですな? 506 01:10:58,024 --> 01:11:00,224 はっ。 507 01:11:05,765 --> 01:11:11,371 遺書には 事の経緯も言い訳も 一切なかったそうだ。・ 508 01:11:11,371 --> 01:11:16,843 全ての責めは 自分にある ということなのだろう。 509 01:11:16,843 --> 01:11:22,215 藩は 別の旗本衆を通して ご老中以下に根回しを図り・ 510 01:11:22,215 --> 01:11:25,852 なんとか事を収めたようだ。 511 01:11:25,852 --> 01:11:30,556 かなりの金品が飛び交ったはずだな…。 512 01:11:30,556 --> 01:11:33,059 そんなところだ。 513 01:11:33,059 --> 01:11:38,398 しかし どうもな…。 何です? 514 01:11:38,398 --> 01:11:44,203 いかに幕府への使者に立つのが 初めてだったとはいえ・ 515 01:11:44,203 --> 01:11:47,740 孫四郎ほどの男が…・ 516 01:11:47,740 --> 01:11:50,410 いや だからこそだ。 517 01:11:50,410 --> 01:11:56,516 初めてだからこそ 周到な準備をして 江戸へ向かったはずだ。 518 01:11:56,516 --> 01:12:01,216 なのに 過ちを犯した。 519 01:12:02,822 --> 01:12:09,122 やはり 誰かが間違った手順を あえて孫四郎に教えた。 520 01:12:13,566 --> 01:12:16,766 もう少し 探ってみる。 521 01:12:22,842 --> 01:12:26,212 あ~! たあっ! 522 01:12:26,212 --> 01:12:28,848 次! 523 01:12:28,848 --> 01:12:32,719 やあっ! 524 01:12:32,719 --> 01:12:37,919 よし! てやっ! たあっ! やあっ! 525 01:12:45,431 --> 01:12:47,931 ごゆっくり。 526 01:12:55,408 --> 01:13:00,813 孫四郎は 女房と藤井勘解由の密通に うすうす気付いていた? 527 01:13:00,813 --> 01:13:05,013 羽賀道場の連中を当たって 確かめたことだ。 528 01:13:07,353 --> 01:13:12,191 おい。 何をするつもりだ? 529 01:13:12,191 --> 01:13:15,391 うん…。 530 01:13:18,364 --> 01:13:21,834 何か不正が起きているとなれば 藩の一大事だ。 531 01:13:21,834 --> 01:13:25,038 見過ごしてはおけん。 532 01:13:25,038 --> 01:13:30,838 普請組の下役とはいえど 城内のことならば お前より調べはつく。 533 01:13:33,746 --> 01:13:39,446 ありがたい。 では わしは 外で動いてみる。 534 01:13:51,164 --> 01:13:54,400 (津勢)多分 男の子だと思うわ。 535 01:13:54,400 --> 01:13:57,670 ほら 顔つきが きつくなったでしょ? 536 01:13:57,670 --> 01:14:00,339 フフッ そうかしら? 537 01:14:00,339 --> 01:14:05,678 もし 男の子だったら お以登様に 剣術を教えていただこうかしら。 538 01:14:05,678 --> 01:14:10,550 無理ですよ。 もう ずっと 竹刀を握っていないのですから。 539 01:14:10,550 --> 01:14:14,687 それに 城下には 立派な道場が いくつもあります。 540 01:14:14,687 --> 01:14:21,360 まあ 男の子でも女の子でも どちらでも よいわ。 541 01:14:21,360 --> 01:14:25,560 元気に生まれてきてくれれば。 542 01:14:31,537 --> 01:15:00,500 ・~ 543 01:15:00,500 --> 01:15:05,371 ちょっと 尋ねたいことがあるのだが。 544 01:15:05,371 --> 01:15:08,808 頼む こっち向いてくれんかな? 頼む 頼む! 545 01:15:08,808 --> 01:15:10,743 もう ちょっとで いいんだ。 546 01:15:10,743 --> 01:15:12,743 よし わしが手伝おう! 547 01:15:16,015 --> 01:15:18,684 頼む ちょっとでいいんだ。 頼む。 548 01:15:18,684 --> 01:15:39,384 ・~ 549 01:15:52,585 --> 01:15:58,658 孫四郎殿は 加世様と藤井様のことを知っていたと? 550 01:15:58,658 --> 01:16:02,458 うん。 …のようだな。 551 01:16:04,163 --> 01:16:08,000 どうして? えっ? 552 01:16:08,000 --> 01:16:13,172 どうして 孫四郎殿は 妻の裏切りに気付いていながら・ 553 01:16:13,172 --> 01:16:20,372 離縁するでもなく 藤井様に詰め寄るでもなく…。 554 01:16:23,516 --> 01:16:26,516 そなたには 分からん。 555 01:16:30,690 --> 01:16:34,694 武士として生まれながら 仕事も許されず・ 556 01:16:34,694 --> 01:16:40,032 一生やっかい者として暮らさねばならん 平侍の部屋住みが・ 557 01:16:40,032 --> 01:16:46,205 奏者番という役を得 藩のために働くことができる。 558 01:16:46,205 --> 01:16:51,077 男であれば 自ら心を殺し 覚悟を決めるのも・ 559 01:16:51,077 --> 01:16:54,714 あながち無理ではなかろう。 560 01:16:54,714 --> 01:16:59,214 郡代の五男坊に生まれた わしには 分からんではない。 561 01:17:03,522 --> 01:17:09,795 あっ いや… わしは 孫四郎とは 全く違うがな。 562 01:17:09,795 --> 01:17:12,698 いや 本当に 違うぞ。 563 01:17:12,698 --> 01:17:15,001 分かっております。 564 01:17:15,001 --> 01:17:17,001 あっ…。 565 01:17:18,804 --> 01:17:26,178 だが 孫四郎にとって その覚悟にも 限界があったのだろう。 566 01:17:26,178 --> 01:17:31,684 事が起こるのは 時間の問題だった。 567 01:17:31,684 --> 01:17:36,355 藤井と加世の関係は 既にご城下で うわさになっている。 568 01:17:36,355 --> 01:17:40,693 以登殿が知っていたぐらいだからな。 569 01:17:40,693 --> 01:17:43,529 そのうわさが もっと大きくなれば・ 570 01:17:43,529 --> 01:17:50,303 孫四郎個人を超えて 内藤家全体の問題ともなってくる。 571 01:17:50,303 --> 01:17:53,039 遅かれ早かれ 孫四郎は・ 572 01:17:53,039 --> 01:17:56,642 藤井と決着をつけなければ ならなかったのだ。 573 01:17:56,642 --> 01:18:00,980 内藤家の当主として 加世の夫として・ 574 01:18:00,980 --> 01:18:05,980 そして 何よりも 一人の武士として。 575 01:18:08,721 --> 01:18:12,158 武士として。 576 01:18:12,158 --> 01:18:17,158 そのことに 藤井勘解由ほどの男が 気付かぬはずはない。 577 01:18:19,665 --> 01:18:24,170 何か事が起これば 自らの不義が公となる。 578 01:18:24,170 --> 01:18:31,344 そうなれば 今の立場どころか 命まで危うくなる。 579 01:18:31,344 --> 01:18:35,214 そこで 先手を打った。 580 01:18:35,214 --> 01:18:41,354 藤井は 今のお役目の前 自身四方に使者として遣わされた男で・ 581 01:18:41,354 --> 01:18:45,854 礼法や しきたりには 誰よりも詳しいとされている。 582 01:18:48,027 --> 01:18:50,027 やはり 罠に…。 583 01:18:52,365 --> 01:18:56,335 相手は 羽賀道場 筆頭の剣士だ。 584 01:18:56,335 --> 01:19:03,835 藤井が勝つには お役目の中に 罠を仕掛けるしか手はなかったろうて。 585 01:19:17,656 --> 01:19:20,326 藤井は ここ数年・ 586 01:19:20,326 --> 01:19:24,497 下田清衛門をはじめとする 城下の大商人どもから・ 587 01:19:24,497 --> 01:19:28,167 多額の賄賂を受け取っているようだ。 588 01:19:28,167 --> 01:19:30,803 賄賂? 589 01:19:30,803 --> 01:19:34,340 藤井の強い進言で 藩は5年前・ 590 01:19:34,340 --> 01:19:38,210 江戸物を独占販売する権利を 彼らに与えた。 591 01:19:38,210 --> 01:19:41,013 その見返りだ。 592 01:19:41,013 --> 01:19:44,683 しかし そのようなことが おとがめもなく…。 593 01:19:44,683 --> 01:19:49,555 金の一部が 藤井から 執政のおもだった連中にも渡っている。 594 01:19:49,555 --> 01:19:55,828 となれば 藤井と執政たちは一蓮托生だ。 595 01:19:55,828 --> 01:20:00,199 下手な追及をすれば 自分の家が潰される。 596 01:20:00,199 --> 01:20:03,536 誰も怖くて 手は出せん。 597 01:20:03,536 --> 01:20:06,572 なんと ひきょうな…。 598 01:20:06,572 --> 01:20:10,372 世間とは そんなものだ。 599 01:20:20,719 --> 01:20:23,219 藤井勘解由に会います。 600 01:20:25,057 --> 01:20:29,257 会って どうする? 601 01:20:46,745 --> 01:20:50,545 わしも立ち会おうか? 602 01:20:52,251 --> 01:20:57,051 いえ 一人で結構です。 603 01:20:59,024 --> 01:21:02,695 藤井は あれで かなりの剣の使い手だ。 604 01:21:02,695 --> 01:21:05,995 侮らぬことだ。 605 01:21:14,840 --> 01:21:19,840 ずっと 聞こうと思っておったのだが…。 606 01:21:21,547 --> 01:21:24,047 えっ? 607 01:21:27,853 --> 01:21:32,353 孫四郎と 何かあったのか? 608 01:21:35,594 --> 01:21:37,863 何も。 609 01:21:37,863 --> 01:21:43,663 ただ 一度 試合をしていただいただけで ございますよ。 610 01:21:46,238 --> 01:21:51,738 一度だけ… 試合を? 611 01:22:00,686 --> 01:22:04,986 どうせ そのようなことだろうと思った! 612 01:22:36,855 --> 01:22:40,655 (ふすまが開く音) 遅くなりました。 613 01:24:14,353 --> 01:24:16,288 ていっ! やあっ! 614 01:24:16,288 --> 01:24:18,488 ていっ! うっ…。 615 01:25:15,013 --> 01:26:03,013 ・~ 616 01:26:34,693 --> 01:26:39,393 藤井勘解由殿ですね。 617 01:26:43,202 --> 01:26:45,902 お待ちしておりました。 618 01:26:47,840 --> 01:26:50,540 あの書状は…。 619 01:26:53,712 --> 01:27:00,419 寺井甚左衛門の娘 以登と申します。 620 01:27:00,419 --> 01:27:04,219 お組頭の ご息女が…。 621 01:27:06,658 --> 01:27:13,532 どうして このようなものを…。 622 01:27:13,532 --> 01:27:17,369 何かの お戯れか? 623 01:27:17,369 --> 01:27:20,005 いいえ。 624 01:27:20,005 --> 01:27:25,878 内藤孫四郎殿をたばかり 亡き者にしたのは…・ 625 01:27:25,878 --> 01:27:29,078 藤井殿ですね。 626 01:27:30,682 --> 01:27:35,882 だとしたら… どうする? 627 01:27:39,825 --> 01:27:44,029 斬るというのか…。 628 01:27:44,029 --> 01:27:47,833 このわしを…。 629 01:27:47,833 --> 01:27:50,833 女子の分際で…。 630 01:27:53,639 --> 01:27:58,310 父より 夕雲流の手ほどきを受けております。 631 01:27:58,310 --> 01:28:02,781 確かに うわさには聞いておる。 632 01:28:02,781 --> 01:28:10,081 だが… 竹刀だけを 振っておればよかったのではないか? 633 01:28:20,999 --> 01:28:24,670 一人か。 634 01:28:24,670 --> 01:28:28,340 はい。 635 01:28:28,340 --> 01:28:31,040 そうか。 636 01:28:53,565 --> 01:28:56,865 んっ! ああ…。 637 01:29:03,141 --> 01:29:05,341 やあ~! はっ! 638 01:29:08,480 --> 01:29:11,516 やあっ! んっ! やあ~! 639 01:29:11,516 --> 01:29:14,653 はっ! ん~っ! 640 01:29:14,653 --> 01:29:17,556 はっ! えいっ! 641 01:29:17,556 --> 01:29:19,556 やあっ! ああっ! 642 01:29:25,296 --> 01:29:27,996 はっ! たあっ! 643 01:29:33,671 --> 01:29:36,174 ふっ! はっ! あっ! 644 01:29:36,174 --> 01:29:39,510 ふんっ! ん~っ! 645 01:29:39,510 --> 01:29:42,413 ん~っ! 646 01:29:42,413 --> 01:29:44,382 あっ! でやっ! 647 01:29:44,382 --> 01:29:46,818 うっ! やあ~っ! 648 01:29:46,818 --> 01:29:49,687 んっ! ああ~っ! ああっ! 649 01:29:49,687 --> 01:29:52,487 ああ~…。 650 01:30:06,037 --> 01:31:24,382 ・~ 651 01:31:24,382 --> 01:31:26,317 やあっ! 652 01:31:26,317 --> 01:31:28,617 はっ! あっ! 653 01:31:47,738 --> 01:31:50,738 んっ んっ! やあっ! 654 01:31:59,684 --> 01:32:01,684 あっ! 655 01:32:13,831 --> 01:32:16,701 組頭の娘が・ 656 01:32:16,701 --> 01:32:20,705 なぜ 平侍の部屋住み上がりのために・ 657 01:32:20,705 --> 01:32:23,505 命を賭してまで…。 658 01:32:26,210 --> 01:32:31,549 江口孫四郎殿は 女子と侮ることなく・ 659 01:32:31,549 --> 01:32:34,585 何事にも おもねることなく・ 660 01:32:34,585 --> 01:32:40,258 私の剣を まっすぐに見つめてくださいました。 661 01:32:40,258 --> 01:32:43,958 孫四郎と何があった? 662 01:32:53,738 --> 01:32:59,938 ただ一度 竹刀を合わせただけ…。 663 01:33:13,824 --> 01:33:15,824 これまでだ。 664 01:33:48,059 --> 01:33:51,559 んっ! (藤井の倒れる音) 665 01:34:26,530 --> 01:34:59,430 ・~ 666 01:34:59,430 --> 01:35:04,168 あと半時もすれば・ 667 01:35:04,168 --> 01:35:08,506 そろそろ 通りには人が出てくる。 668 01:35:08,506 --> 01:35:11,542 目につかぬよう 川沿いを行き・ 669 01:35:11,542 --> 01:35:15,679 三杉の林から お家の裏へ。 670 01:35:15,679 --> 01:35:18,379 ううっ! 671 01:35:22,453 --> 01:35:26,023 あとは わしに任せろ。 672 01:35:26,023 --> 01:36:01,675 ・~ 673 01:36:01,675 --> 01:36:04,345 さあ 早く。 674 01:36:04,345 --> 01:36:35,645 ・~ 675 01:36:59,333 --> 01:37:05,673 藤井の家は お取り潰しと決まったようだな。 676 01:37:05,673 --> 01:37:10,673 はい。 あれだけの賄賂が あらわになっては…。 677 01:37:15,182 --> 01:37:22,482 それをつかんだ何者かに ゆすられ 金を要求されたというわけか…。 678 01:37:24,892 --> 01:37:32,366 懐に残されていた書状に やつの罪状が 全て書かれていたそうでございます。 679 01:37:32,366 --> 01:37:38,566 あの河原に出向き 斬り合いになったというわけか。 680 01:37:41,375 --> 01:37:45,212 しかし 3人を斬って捨て・ 681 01:37:45,212 --> 01:37:49,850 あの勘解由を 一突きで しとめるとは・ 682 01:37:49,850 --> 01:37:53,050 かなりの腕よのう。 683 01:38:00,794 --> 01:38:02,994 確かに。 684 01:38:08,502 --> 01:38:11,202 ああっ! 685 01:39:32,353 --> 01:39:34,853 お以登様。 686 01:39:49,536 --> 01:39:52,236 ん~。 687 01:39:56,710 --> 01:39:58,710 才助殿。 688 01:40:12,259 --> 01:40:14,561 腕は? 689 01:40:14,561 --> 01:40:18,561 あっ… ええ もう。 690 01:40:27,574 --> 01:40:30,611 この10日ほど お見えになりませんでしたが・ 691 01:40:30,611 --> 01:40:32,746 どうかなさったのですか? 692 01:40:32,746 --> 01:40:36,083 ん? 693 01:40:36,083 --> 01:40:38,585 ここにおった。 694 01:40:38,585 --> 01:40:41,088 はっ? 695 01:40:41,088 --> 01:40:47,261 ここで 桜が咲くのを眺めていた。 696 01:40:47,261 --> 01:40:49,561 まあ…。 697 01:40:52,599 --> 01:40:57,037 さあ そろそろ 七つだ。 698 01:40:57,037 --> 01:41:02,237 城勤めの男たちが来ては かなわん。 帰ろう。 699 01:41:10,584 --> 01:43:01,195 ・~ 700 01:43:01,195 --> 01:43:05,832 <その後 才助殿は 我が父 甚左衛門の名前を継ぎ・ 701 01:43:05,832 --> 01:43:09,703 あろうことか 祖母に 7人もの子供を産ませた。・ 702 01:43:09,703 --> 01:43:14,208 そうじゃ そなたらの父母のことじゃ。・ 703 01:43:14,208 --> 01:43:19,713 この才助 家にいては 何様 締まりというものがない男であったが・ 704 01:43:19,713 --> 01:43:24,051 やがて 我が父も なれなんだ中老から家老にのぼり・ 705 01:43:24,051 --> 01:43:26,553 昼行灯などと呼ばれながらも・ 706 01:43:26,553 --> 01:43:30,424 長く筆頭の家老を勤められたところを 見ると・ 707 01:43:30,424 --> 01:43:36,263 どこかしら 人に先立つ才覚とやらが あったのであろうな。・ 708 01:43:36,263 --> 01:43:41,068 その時の二の丸の花は 今も ありありと目に残るほどじゃが・ 709 01:43:41,068 --> 01:43:46,240 花は盛りというのに それはそれは寂しい色じゃった。・ 710 01:43:46,240 --> 01:43:50,877 祖母の花の季節も 終わったせいであったろうかの。・ 711 01:43:50,877 --> 01:43:57,651 そして それっきり もう花見には行かなんだ…> 712 01:43:57,651 --> 01:47:23,651 ・~ 713 01:47:35,702 --> 01:48:02,702 ・~