1 00:00:38,131 --> 00:00:41,517 <フランスの都 パリ> 2 00:00:41,517 --> 00:00:44,954 <市街を見下ろす エッフェル塔が完成したのは> 3 00:00:44,954 --> 00:00:47,457 <明治22年> 4 00:00:47,457 --> 00:00:51,457 <今から127年前のことである> 5 00:00:53,546 --> 00:00:56,966 <土台以外 石材を一切使わず> 6 00:00:56,966 --> 00:00:59,435 <鉄骨を組み上げて> 7 00:00:59,435 --> 00:01:01,454 <当時 世界最高の> 8 00:01:01,454 --> 00:01:05,454 <312メートルの高さを実現した> 9 00:01:07,960 --> 00:01:10,963 <完成したばかりの エッフェル塔を> 10 00:01:10,963 --> 00:01:13,950 <一人の日本人実業家が> 11 00:01:13,950 --> 00:01:16,950 <大きな志を持って見上げていた> 12 00:01:20,940 --> 00:01:25,461 <今に続く住友グループの 初代総理事> 13 00:01:25,461 --> 00:01:27,961 <広瀬宰平である> 14 00:01:31,968 --> 00:01:35,468 <空前の活況を呼んだパリ万博> 15 00:01:36,439 --> 00:01:38,491 <エッフェル塔の横には> 16 00:01:38,491 --> 00:01:41,961 <同じく 鉄骨造りの機械館があった> 17 00:01:41,961 --> 00:01:44,964 <奥行き400メートルの館内に> 18 00:01:44,964 --> 00:01:48,964 <欧米の進んだ先端機械が ずらりと並んだ> 19 00:01:50,036 --> 00:01:54,440 <中でも注目の的は このマンモスランプ> 20 00:01:54,440 --> 00:01:57,440 <1万個の電球で館内を照らした> 21 00:01:58,461 --> 00:02:01,961 <発案者は あの発明王 エジソン> 22 00:02:03,449 --> 00:02:05,802 <パリ万博は まさしく> 23 00:02:05,802 --> 00:02:09,902 <電気と鉄の時代の到来を 宣言していた> 24 00:02:12,492 --> 00:02:14,443 <広瀬宰平は> 25 00:02:14,443 --> 00:02:18,447 <目の前に厳しくそびえる 西洋の壁に> 26 00:02:18,447 --> 00:02:20,947 <打ち震えていた> 27 00:02:32,445 --> 00:02:35,548 (広瀬)はあ… 28 00:02:35,548 --> 00:02:38,150 <11歳から丁稚として> 29 00:02:38,150 --> 00:02:42,455 <別子の山で 働き始めた広瀬宰平は> 30 00:02:42,455 --> 00:02:47,527 <長じて 37歳で別子銅山のトップ> 31 00:02:47,527 --> 00:02:50,527 <支配人の座に上り詰めた> 32 00:02:51,964 --> 00:02:54,467 どうだ 掘り進められそうか? 33 00:02:54,467 --> 00:02:58,988 ああ あそこは どうにも硬くて 歯が立ちませんや 34 00:02:58,988 --> 00:03:00,957 しかたないな 迂回しよう 35 00:03:00,957 --> 00:03:04,957 東側なら もっと掘りやすいはずだ ちょっと これ見てくれ 36 00:03:06,445 --> 00:03:10,550 <別子の山を 隅々まで知り尽くす広瀬を> 37 00:03:10,550 --> 00:03:14,954 <人々は 「別子の申し子」と呼んだ> 38 00:03:14,954 --> 00:03:16,973 分かりやした 39 00:03:16,973 --> 00:03:18,973 頼むぞ へえ 40 00:03:19,959 --> 00:03:23,029 <別子銅山は 江戸時代初期から> 41 00:03:23,029 --> 00:03:25,529 <幕府直轄の銅山であった> 42 00:03:33,956 --> 00:03:37,956 <幕府の財政を 大いに潤していた> 43 00:03:40,446 --> 00:03:42,946 <一貫して> 44 00:03:46,469 --> 00:03:49,956 <広瀬宰平が現場支配人 となったのは> 45 00:03:49,956 --> 00:03:52,456 <第12代 当主のころである> 46 00:03:53,943 --> 00:03:56,943 <別子から産出された> 47 00:04:00,950 --> 00:04:03,452 <別子の銅は 一時> 48 00:04:03,452 --> 00:04:08,452 <日本を世界一の 銅産出国の座に押し上げた> 49 00:04:11,060 --> 00:04:12,962 <しかし 幕末には> 50 00:04:12,962 --> 00:04:16,462 <生産コストの激増が 重くのしかかり> 51 00:04:20,119 --> 00:04:22,438 <その大きな原因の一つは> 52 00:04:22,438 --> 00:04:24,941 <坑道が深くなりすぎて> 53 00:04:24,941 --> 00:04:26,959 <旧来の手掘り作業では> 54 00:04:26,959 --> 00:04:29,959 <効率が著しく 低下したことにあった> 55 00:04:32,448 --> 00:04:35,468 <そんな別子銅山を立て直すため> 56 00:04:35,468 --> 00:04:38,471 <一人 立ち上がったのが> 57 00:04:38,471 --> 00:04:40,971 <広瀬宰平だった> 58 00:04:46,462 --> 00:04:50,983 <広瀬宰平が 生涯を捧げた別子銅山は> 59 00:04:50,983 --> 00:04:55,983 <愛媛県新居浜市を見下ろす 山の上にある> 60 00:04:56,956 --> 00:05:02,461 <海抜1200メートルまで続く 深い峡谷> 61 00:05:02,461 --> 00:05:05,131 <険しさを極める その山で> 62 00:05:05,131 --> 00:05:08,931 <銅山の申し子 広瀬宰平は活躍した> 63 00:05:10,953 --> 00:05:14,440 <山中に形を残す 石積みや> 64 00:05:14,440 --> 00:05:17,126 <レンガ積みの設備> 65 00:05:17,126 --> 00:05:21,926 <それらは 明治時代以降に 設置されたものである> 66 00:05:24,450 --> 00:05:28,971 <広瀬宰平が 銅山の立て直しに 失敗していたら> 67 00:05:28,971 --> 00:05:32,971 <これら設備は なかったかもしれない> 68 00:05:35,444 --> 00:05:37,446 <地表に口を開ける> 69 00:05:37,446 --> 00:05:40,116 <地下坑道の入り口は> 70 00:05:40,116 --> 00:05:42,802 <ここで銅が掘られていたことを> 71 00:05:42,802 --> 00:05:45,402 <教えてくれる証人である> 72 00:05:47,957 --> 00:05:51,957 <別子銅山には 時代の最先端が導入された> 73 00:05:52,978 --> 00:05:56,449 <この発電所は 今から100年前に> 74 00:05:56,449 --> 00:05:59,452 <年間400万キロワットアワーの> 75 00:05:59,452 --> 00:06:01,952 <電気の供給を実現> 76 00:06:02,972 --> 00:06:05,057 <そして ここからは> 77 00:06:05,057 --> 00:06:08,057 <瀬戸内の島にも電気が送られた> 78 00:06:08,944 --> 00:06:11,947 <20キロの長さの海底ケーブルは> 79 00:06:11,947 --> 00:06:15,947 <当時 世界一の長さだった> 80 00:06:19,555 --> 00:06:22,942 <採掘開始は 元禄4年> 81 00:06:22,942 --> 00:06:25,945 <幕末までは 山頂付近を> 82 00:06:25,945 --> 00:06:28,964 <手掘りで細々と掘っていたが> 83 00:06:28,964 --> 00:06:32,068 <広瀬宰平による近代化によって> 84 00:06:32,068 --> 00:06:35,938 <採掘スピードは 驚異的な速さになった> 85 00:06:35,938 --> 00:06:38,457 <戦後 坑道は> 86 00:06:38,457 --> 00:06:41,957 <海面下1000メートルにまで 達した> 87 00:06:45,448 --> 00:06:49,948 <壮大な銅山をつくりあげた 広瀬宰平> 88 00:06:52,505 --> 00:06:56,442 <彼が成し遂げた 明治の産業維新とは> 89 00:06:56,442 --> 00:07:00,442 <一体いかなるもので あったのだろうか?> 90 00:07:06,452 --> 00:07:09,455 <100年の時をへて> 91 00:07:09,455 --> 00:07:12,458 <明治の産業維新リーダーの姿が> 92 00:07:12,458 --> 00:07:14,458 <よみがえる> 93 00:07:44,957 --> 00:07:46,957 ≪間もなく発破します! 94 00:07:52,014 --> 00:07:54,514 (爆発音) 95 00:07:56,936 --> 00:07:59,138 おお~ッ 96 00:07:59,138 --> 00:08:01,138 ≪(部下)危ないです! 97 00:08:02,541 --> 00:08:04,443 これだ! 98 00:08:04,443 --> 00:08:07,813 これさえあれば 掘削が格段に楽になる 99 00:08:07,813 --> 00:08:09,913 これだ これだ! 100 00:08:17,456 --> 00:08:20,442 (通訳)西洋では200年前から この火薬を使った➡ 101 00:08:20,442 --> 00:08:23,128 発破が行われていると 言っています 102 00:08:23,128 --> 00:08:27,128 教えてくれ! 早く これの使い方を教えてくれ 103 00:08:29,952 --> 00:08:33,939 <このとき 使用していたのは 黒色火薬だ> 104 00:08:33,939 --> 00:08:36,992 <花火を打ち上げる火薬と 同じであり> 105 00:08:36,992 --> 00:08:41,964 <ヨーロッパでは 200年早く 鉱山で利用されていた> 106 00:08:41,964 --> 00:08:45,964 <当時は これを 竹筒に詰めて使った> 107 00:08:51,106 --> 00:08:53,459 <その翌年 広瀬宰平は> 108 00:08:53,459 --> 00:08:57,897 <別子銅山の坑道内で 実用試験を行う> 109 00:08:57,897 --> 00:09:00,497 (爆発音) 110 00:09:03,953 --> 00:09:06,472 <思えば この成功が> 111 00:09:06,472 --> 00:09:09,972 <のちの広瀬の背を 押したのかもしれない> 112 00:09:13,512 --> 00:09:16,012 <そして 同じころ> 113 00:09:18,450 --> 00:09:21,453 <一人の男が使命に燃え> 114 00:09:21,453 --> 00:09:24,453 <処刑場に向かって 駆けていた> 115 00:09:27,459 --> 00:09:30,112 (執行官一)それでは 刑を執り行う 116 00:09:30,112 --> 00:09:32,982 (伊庭)お待ちください! 117 00:09:32,982 --> 00:09:35,951 お待ちください! この処刑はなりません! 118 00:09:35,951 --> 00:09:37,953 誰だ 名を名乗れ! 119 00:09:37,953 --> 00:09:40,439 弾正台の伊庭貞剛です 120 00:09:40,439 --> 00:09:44,439 (執行官二)貴様 役人のくせに 暗殺者の肩を持つのかッ 121 00:09:51,951 --> 00:09:56,121 <この新政府の要人が 暗殺されたのだ> 122 00:09:56,121 --> 00:09:58,958 我々は 刑部省から 直接の指示を受け 123 00:09:58,958 --> 00:10:01,126 本日の処刑を執行するのだ 124 00:10:01,126 --> 00:10:05,126 法と上官の命令とは どちらが上でしょうか? 125 00:10:06,465 --> 00:10:08,951 いかなる極悪人であっても 126 00:10:08,951 --> 00:10:12,955 法の下で裁くのが 近代国家ではありませんか! 127 00:10:12,955 --> 00:10:16,959 <正義感あふれる この男は> 128 00:10:16,959 --> 00:10:19,828 <広瀬宰平の甥である> 129 00:10:19,828 --> 00:10:23,428 どうか この処刑は おとりやめください! 130 00:10:28,454 --> 00:10:32,124 貞剛 お前にも見せたかったよ 131 00:10:32,124 --> 00:10:37,129 硬い岩盤が 爆音とともに 一瞬で崩れたのだ 132 00:10:37,129 --> 00:10:41,450 あの威力が今の西洋の力を 物語っていると わしは思う 133 00:10:41,450 --> 00:10:46,105 では 別子にも 西洋人技師を招くのですか? 134 00:10:46,105 --> 00:10:48,107 う~ん 135 00:10:48,107 --> 00:10:52,177 西洋人を雇うということは 金がかかるからな 136 00:10:52,177 --> 00:10:57,449 今の住友は 一銭たりとも 無駄ができない時期なのだ 137 00:10:57,449 --> 00:11:00,519 まあ 簡単にはいかぬだろう 138 00:11:00,519 --> 00:11:03,956 しかし わしの座右の銘は 139 00:11:03,956 --> 00:11:08,460 「命に逆らいて君を利する 之を忠という」 140 00:11:08,460 --> 00:11:11,447 たとえ 国家や主家の 命令であっても 141 00:11:11,447 --> 00:11:14,967 それが 国家や主家のために ならないならば 142 00:11:14,967 --> 00:11:17,836 あえて 逆らうことが 忠義である 143 00:11:17,836 --> 00:11:19,772 そのとおり 144 00:11:19,772 --> 00:11:22,958 だから たとえ反対されても 訴え続けるさ 145 00:11:22,958 --> 00:11:26,945 今こそ 西洋に 学ばねばならんとね 146 00:11:26,945 --> 00:11:28,947 そういえば お前も 147 00:11:28,947 --> 00:11:32,951 「命に逆らいて君を利する」を やったそうじゃないか 148 00:11:32,951 --> 00:11:36,455 《法と上官の命令とは どちらが上でしょうか?》 149 00:11:36,455 --> 00:11:39,475 《この処刑は おとりやめください!》 150 00:11:39,475 --> 00:11:43,462 あれは 単に手続き上の間違いを 正したまでです 151 00:11:43,462 --> 00:11:47,462 よいよい お互い 信じる道を大いにやろう 152 00:11:49,985 --> 00:11:52,438 話が弾んでるようですね 153 00:11:52,438 --> 00:11:56,108 母上 叔父さんと私は 似ているところがあるのです 154 00:11:56,108 --> 00:11:58,977 叔父さんは 実業界で 私は法の道で 155 00:11:58,977 --> 00:12:02,948 畑は違えど ともに 天下 国家のために働いておるのです 156 00:12:02,948 --> 00:12:06,101 あなた達は 好物まで一緒ですものね 157 00:12:06,101 --> 00:12:08,437 おお ふな寿司だ ふな寿司ですね 158 00:12:08,437 --> 00:12:11,937 これこれ 姉さんが作った これを食べたかったんだ 159 00:12:14,443 --> 00:12:16,943 うん ああ~ 160 00:12:17,963 --> 00:12:19,963 うん 161 00:12:22,017 --> 00:12:24,937 <そのころ 別子銅山の本部は> 162 00:12:24,937 --> 00:12:27,940 <新居浜の瀬戸内海側ではなく> 163 00:12:27,940 --> 00:12:30,959 <峠をはさんだ南側にあった> 164 00:12:30,959 --> 00:12:34,947 <海抜800から1200メートルの谷間に> 165 00:12:34,947 --> 00:12:37,447 <1000人以上が暮らしていた> 166 00:12:38,467 --> 00:12:41,487 <広瀬は 江戸時代からの抗口のある> 167 00:12:41,487 --> 00:12:45,487 <この谷間に詰めて 全山の指揮を執っていた> 168 00:12:47,443 --> 00:12:50,446 <苦しい経営にあった明治維新期> 169 00:12:50,446 --> 00:12:52,948 <広瀬は これを打開すべく> 170 00:12:52,948 --> 00:12:56,135 <山麓に新たな精銅場を設置> 171 00:12:56,135 --> 00:12:58,135 <明治2年には> 172 00:13:04,943 --> 00:13:09,031 <それまで 幕府に納めていた 輸出用の精銅は> 173 00:13:09,031 --> 00:13:10,966 <棒の形に仕上げ> 174 00:13:10,966 --> 00:13:15,966 <特殊なやり方で バラのような 赤色を表面につけていた> 175 00:13:17,473 --> 00:13:20,459 <ローズ・カッパーと呼ばれた その銅は> 176 00:13:20,459 --> 00:13:24,759 <遠くヨーロッパまで その美しさが知れ渡っていた> 177 00:13:26,465 --> 00:13:28,550 <住友では 当時> 178 00:13:28,550 --> 00:13:32,650 <バラ色の銅のつくり方を 紹介する冊子を作っていた> 179 00:13:35,440 --> 00:13:38,110 <棒の形に仕上げる その銅は> 180 00:13:38,110 --> 00:13:40,410 <棹銅と呼ばれていた> 181 00:13:47,452 --> 00:13:51,990 <棹銅のバラ色は どうやって できるのだろうか?> 182 00:13:51,990 --> 00:13:54,990 <図録をもとに 再現してもらった> 183 00:13:57,462 --> 00:13:59,448 <炉の準備ができたら> 184 00:13:59,448 --> 00:14:01,450 <まだ粗い銅を> 185 00:14:01,450 --> 00:14:04,950 <木炭で埋め尽くした 炉の中に入れる> 186 00:14:08,941 --> 00:14:13,962 <高温を得るためには 大量の木炭を必要とする> 187 00:14:13,962 --> 00:14:17,533 <のちに これが 別子の大問題になることを> 188 00:14:17,533 --> 00:14:20,033 <当時は気づいていなかった> 189 00:14:22,938 --> 00:14:25,958 <温度が 1085度になると> 190 00:14:25,958 --> 00:14:28,460 <銅は溶け始める> 191 00:14:28,460 --> 00:14:32,447 <さらに 焼き続けると 完全に液体となり> 192 00:14:32,447 --> 00:14:34,947 <るつぼの底にたまる> 193 00:14:40,556 --> 00:14:44,459 ≪パンパンか? おい ゆっくりかけよ➡ 194 00:14:44,459 --> 00:14:47,959 もっと早く もっと早く 慌てるな 慌てるな 195 00:14:48,947 --> 00:14:52,947 <溶けた銅を 熱湯を入れた おけに流し込む> 196 00:14:54,469 --> 00:14:57,469 <水蒸気爆発を防ぐためだ> 197 00:15:03,445 --> 00:15:06,945 ≪熱湯 もっと入れなあかん お湯が足らん 198 00:15:13,538 --> 00:15:17,538 <固まったら 塩水の中に移して冷ます> 199 00:15:25,000 --> 00:15:28,000 <これが バラ色の秘密だった> 200 00:15:31,957 --> 00:15:36,461 <銅の直接輸出の道は開かれたが 別子銅山では> 201 00:15:36,461 --> 00:15:40,461 <江戸末期以来の ある問題が持ち上がっていた> 202 00:15:45,454 --> 00:15:48,440 <断続的に続く 地震の影響から> 203 00:15:48,440 --> 00:15:50,792 <坑道の最深部で> 204 00:15:50,792 --> 00:15:53,892 <地下水が激しく 湧き出したのである> 205 00:15:59,468 --> 00:16:04,072 <水抜き作業は すべて 人の手で行われた> 206 00:16:04,072 --> 00:16:06,958 <何百人も坑夫を連ねて> 207 00:16:06,958 --> 00:16:09,945 <水を抜こうとしたが 果たせない> 208 00:16:09,945 --> 00:16:12,945 <人力の限界であった> 209 00:16:16,118 --> 00:16:19,187 今すぐにでも 外国人を雇い 210 00:16:19,187 --> 00:16:23,125 別子の近代化に着手しなければ 住友の将来はありません 211 00:16:23,125 --> 00:16:25,460 ≪(役員一)そんなことを 言っても➡ 212 00:16:25,460 --> 00:16:28,130 高い年俸の外国人を 雇う余裕はないぞ! 213 00:16:28,130 --> 00:16:32,451 (役員二)そうだ! 住友を潰す気か? 214 00:16:32,451 --> 00:16:37,456 <広瀬は 別子銅山近代化の 必要性を訴えたが> 215 00:16:37,456 --> 00:16:41,756 <その思いは 住友の番頭達には届かなかった> 216 00:18:45,433 --> 00:18:48,103 <住友の新年宴会は> 217 00:18:48,103 --> 00:18:53,103 <毎年 経営の中枢が 一堂に会し行われた> 218 00:18:55,944 --> 00:18:58,947 <別子銅山を経営する住友は> 219 00:18:58,947 --> 00:19:02,417 <代々の家長が オーナーとして君臨> 220 00:19:02,417 --> 00:19:06,938 <番頭達は 家長に 決まり言葉で挨拶をするのが> 221 00:19:06,938 --> 00:19:08,938 <通例だった> 222 00:19:09,925 --> 00:19:13,461 相変わりませず おめでとうございます 223 00:19:13,461 --> 00:19:15,461 (友親)おめでとう 224 00:19:23,438 --> 00:19:26,438 相変わりまして おめでとうございます! 225 00:19:28,043 --> 00:19:31,162 相変わらずでは 住友家は潰れます! 226 00:19:31,162 --> 00:19:34,082 新年早々 何を不吉な! 227 00:19:34,082 --> 00:19:36,952 広瀬 酔ってるのか!? 228 00:19:36,952 --> 00:19:38,952 そうではありません! 229 00:19:39,921 --> 00:19:44,442 (役員三)広瀬さん 今日は おめでたい席なのですから 230 00:19:44,442 --> 00:19:47,942 皆が集まる この席だからこそ言うのだ 231 00:19:49,431 --> 00:19:51,433 水を差されましたが 232 00:19:51,433 --> 00:19:54,102 乾杯をいたしましょう 233 00:19:54,102 --> 00:19:56,402 みんな 酒はあるかな? 234 00:20:07,432 --> 00:20:11,432 どうか! どうか お聞きくださいませ! 235 00:20:15,941 --> 00:20:19,878 この激動の世にあって 相変わらずではいけません 236 00:20:19,878 --> 00:20:24,178 一同 相変わって旧を捨て 新をとらなければなりません! 237 00:20:25,100 --> 00:20:28,453 欧米の技術は 日本の100年先をいってます 238 00:20:28,453 --> 00:20:31,953 このままでは 日本は欧米の餌食です 239 00:20:32,941 --> 00:20:35,493 我々は 一刻も早く 240 00:20:35,493 --> 00:20:40,198 日本を豊かな強い国に しなくてはいけません 241 00:20:40,198 --> 00:20:44,198 そのためには 我々は何をすべきか? 242 00:20:47,489 --> 00:20:51,126 銅を もっともっと掘るんです 243 00:20:51,126 --> 00:20:54,446 欧米のやり方なら それが可能なんです 244 00:20:54,446 --> 00:20:59,467 私は 別子の銅で 日本を もっと豊かな国にしたい 245 00:20:59,467 --> 00:21:03,104 別子の銅で 日本を欧米に負けない 246 00:21:03,104 --> 00:21:05,457 強い国にしたい 247 00:21:05,457 --> 00:21:08,443 住友のため お国のために 248 00:21:08,443 --> 00:21:11,943 今こそ 我々は 変わらねばなりません! 249 00:21:15,951 --> 00:21:18,451 その振る舞い もう許せん! 250 00:21:24,042 --> 00:21:28,446 住友のためを思うからこそ 251 00:21:28,446 --> 00:21:31,099 申し上げているのだ 252 00:21:31,099 --> 00:21:33,399 ≪(友親)お待ちなさい 253 00:21:38,456 --> 00:21:42,056 私は 宰平殿の意見を もっと聞いてみたい 254 00:21:49,934 --> 00:21:52,937 <この四年後 広瀬宰平は> 255 00:21:52,937 --> 00:21:56,937 <住友家家長から 大任を拝命する> 256 00:21:58,009 --> 00:22:01,446 <西洋人の雇い入れの 重責について> 257 00:22:01,446 --> 00:22:05,446 <すべての取り仕切りが 託されたのである> 258 00:22:08,470 --> 00:22:12,941 <それは 前例のない 大抜てきだった> 259 00:22:12,941 --> 00:22:17,112 <家長が一部でも 経営の権限を任すことは> 260 00:22:17,112 --> 00:22:20,112 <事実上 初めてだったのである> 261 00:22:29,424 --> 00:22:32,494 <そのころの日本は 近代化にあたり> 262 00:22:32,494 --> 00:22:34,429 <すべての面において> 263 00:22:34,429 --> 00:22:38,433 <お雇い外国人の 力添えが欠かせなかった> 264 00:22:38,433 --> 00:22:40,935 <政府が雇った 外国人は> 265 00:22:40,935 --> 00:22:44,422 <一年に 500人を超えたとも言われる> 266 00:22:44,422 --> 00:22:48,109 <しかし お雇い外国人の報酬は> 267 00:22:48,109 --> 00:22:50,979 <国の財政さえ傾かせるほど> 268 00:22:50,979 --> 00:22:52,979 <高額であった> 269 00:22:53,948 --> 00:22:56,448 <広瀬宰平は 考慮の末> 270 00:23:04,926 --> 00:23:06,928 <月給は600ドル> 271 00:23:06,928 --> 00:23:11,449 <今で言えば 月収6000万円である> 272 00:23:11,449 --> 00:23:15,449 <明治7年3月に 別子に到着した> 273 00:23:20,425 --> 00:23:23,445 まずは 坑道から案内いたそう 274 00:23:23,445 --> 00:23:26,548 <広瀬は ラロックの通訳として> 275 00:23:26,548 --> 00:23:30,548 <外務省から 塩野門之助を引き抜いた> 276 00:23:39,928 --> 00:23:42,447 <初めて見る 別子銅山の様子を> 277 00:23:42,447 --> 00:23:44,947 <ラロックは こう表現した> 278 00:23:45,934 --> 00:23:48,920 <本部の周辺には一本も木がなく> 279 00:23:48,920 --> 00:23:52,420 <煙が常に立ち上っていたからだ> 280 00:23:56,995 --> 00:24:00,415 <その当時 地下坑道の長さは> 281 00:24:00,415 --> 00:24:04,102 <最長で 抗口から500メートル> 282 00:24:04,102 --> 00:24:08,102 <地表からの深さは 400メートルになる> 283 00:24:11,926 --> 00:24:15,446 <これは 当時 広瀬宰平らが使っていた> 284 00:24:15,446 --> 00:24:17,932 <測量地図である> 285 00:24:17,932 --> 00:24:20,001 <安政の大地震のあと> 286 00:24:20,001 --> 00:24:24,422 <坑道最深部から 水を いかに抜くかを算段するため> 287 00:24:24,422 --> 00:24:27,108 <高松藩の測量方に依頼> 288 00:24:27,108 --> 00:24:29,460 <作成したものだった> 289 00:24:29,460 --> 00:24:32,460 <青い部分が水没した場所だ> 290 00:24:34,432 --> 00:24:38,102 <ルイ・ラロックも坑道を 独自に計測し> 291 00:24:38,102 --> 00:24:41,105 <図面を 作ることになる> 292 00:24:41,105 --> 00:24:43,107 <ラロックが 驚いたのは> 293 00:24:43,107 --> 00:24:45,426 <別子銅山製の 測量図が> 294 00:24:45,426 --> 00:24:47,428 <正確であったことだ> 295 00:24:47,428 --> 00:24:49,447 <自分が作ったものと> 296 00:24:49,447 --> 00:24:52,947 <ほとんど 誤差がなかったのである> 297 00:24:56,938 --> 00:25:00,959 <ルイ・ラロックは 現場の運営方法には> 298 00:25:00,959 --> 00:25:02,959 <手厳しい指摘をした> 299 00:25:07,031 --> 00:25:10,435 <機械化は一切なされておらず> 300 00:25:10,435 --> 00:25:13,821 <火薬をこめる穴を掘るのは 手作業> 301 00:25:13,821 --> 00:25:18,092 <しかも その坑道の狭さと 通気の悪さは> 302 00:25:18,092 --> 00:25:22,392 <ラロックの考える基準とは 大きく かいりしていた> 303 00:25:25,433 --> 00:25:27,452 <坑道内の明かりは> 304 00:25:27,452 --> 00:25:30,452 <サザエの殻をつかった 螺灯だった> 305 00:25:31,539 --> 00:25:33,539 <燃料は鯨油である> 306 00:25:34,425 --> 00:25:36,925 <ラロックは 螺灯について…> 307 00:25:38,930 --> 00:25:41,930 <と その不便さを酷評している> 308 00:25:45,937 --> 00:25:48,940 <鉱石の運搬作業についても> 309 00:25:48,940 --> 00:25:51,440 <一言のもとに否定した> 310 00:25:54,529 --> 00:25:56,447 <掘り出された鉱石は> 311 00:25:56,447 --> 00:26:00,435 <海抜1200メートルの この銅山越を越えて> 312 00:26:00,435 --> 00:26:03,435 <すべて 人力で運んでいた> 313 00:26:10,445 --> 00:26:13,932 <運搬を担う者を「中持」と呼ぶ> 314 00:26:13,932 --> 00:26:16,467 <中持達は 平地まで> 315 00:26:16,467 --> 00:26:18,967 <12キロの道のりを歩いた> 316 00:26:20,955 --> 00:26:22,955 <担ぐ鉱石は…> 317 00:26:25,944 --> 00:26:30,444 <ここから高低差 1000メートル以上を下りていく> 318 00:26:38,423 --> 00:26:40,508 <これは 実際に> 319 00:26:40,508 --> 00:26:43,428 <昔の中持が 歩いた道である> 320 00:26:43,428 --> 00:26:46,114 <道は狭く 急な傾斜もあり> 321 00:26:46,114 --> 00:26:48,114 <危険極まりない> 322 00:26:56,090 --> 00:26:59,961 <ラロックは 中持が 頻繁に休息をとりつつ> 323 00:26:59,961 --> 00:27:02,461 <歩く姿を目撃している> 324 00:27:10,421 --> 00:27:14,421 <再現は あまりに危険と中断した> 325 00:27:22,433 --> 00:27:24,936 <馬も牛も使わず> 326 00:27:24,936 --> 00:27:29,941 <山の運搬を 人間だけが担っていた別子銅山> 327 00:27:29,941 --> 00:27:34,941 <ラロックは 絶対に やめるべきだと書き残した> 328 00:27:38,433 --> 00:27:42,103 <ラロックは こうした状況を変えるべく> 329 00:27:42,103 --> 00:27:45,103 <改革案の作成に着手する> 330 00:27:54,949 --> 00:27:57,952 (塩野)坑道の深さに驚いています 331 00:27:57,952 --> 00:28:01,039 なにせ 200年も 掘り続けてますからな 332 00:28:01,039 --> 00:28:06,039 (通訳する) 333 00:28:10,948 --> 00:28:14,052 私に任せれば 増産できると言っています 334 00:28:14,052 --> 00:28:16,052 期待してますよ 335 00:28:17,438 --> 00:28:19,440 <一年に及ぶ調査後> 336 00:28:19,440 --> 00:28:24,462 <ラロックは 銅山の 改革プランを作成し始めた> 337 00:28:24,462 --> 00:28:26,431 <そのころには 彼は> 338 00:28:26,431 --> 00:28:29,931 <別子銅山に すっかり 夢中になっていた> 339 00:28:33,988 --> 00:28:37,988 <今から140年前に ラロックが書いた論文> 340 00:28:38,926 --> 00:28:43,926 <「別子鉱山目論見書」という 近代化の計画書である> 341 00:28:44,949 --> 00:28:47,034 <600ページ以上あるが> 342 00:28:47,034 --> 00:28:50,034 <そのポイントは三つあった> 343 00:28:51,422 --> 00:28:54,425 それはですね 採鉱 344 00:28:54,425 --> 00:28:56,444 それから 運搬 345 00:28:56,444 --> 00:28:59,444 製錬についての近代化計画です 346 00:29:00,481 --> 00:29:02,934 <採鉱の近代化は> 347 00:29:02,934 --> 00:29:06,921 <大きな鉱脈に まっすぐに到達するシャフト> 348 00:29:06,921 --> 00:29:08,940 <斜めの直線坑道> 349 00:29:08,940 --> 00:29:10,940 <斜坑を掘ること> 350 00:29:14,929 --> 00:29:17,432 <馬に引かせる 大きな台車を転がせる> 351 00:29:17,432 --> 00:29:20,432 <車道をつくること さらに…> 352 00:29:32,430 --> 00:29:34,930 <設計図も残した> 353 00:29:38,119 --> 00:29:40,119 ラロック 354 00:29:41,105 --> 00:29:45,009 この目論見書は 千金の価値がある 355 00:29:45,009 --> 00:29:47,445 あなたにお願いして 本当によかった 356 00:29:47,445 --> 00:29:50,445 メルシー メルシーボーク 357 00:30:01,459 --> 00:30:05,459 ラロックさんは 日本に 別子に骨をうずめる覚悟です 358 00:30:13,938 --> 00:30:18,442 (フランス語で話す) 359 00:30:18,442 --> 00:30:22,096 ラロックさんは 礼には及びません とおっしゃっています 360 00:30:22,096 --> 00:30:24,432 契約は延長しません 361 00:30:24,432 --> 00:30:26,951 えッ? 362 00:30:26,951 --> 00:30:29,951 フランスに帰ってくれと 伝えてくれ 363 00:30:31,989 --> 00:30:33,989 ですが… 364 00:30:39,096 --> 00:30:43,534 (塩野)広瀬さん どういうことか 説明してください 365 00:30:43,534 --> 00:30:46,938 塩野くん 別子銅山の近代化は 366 00:30:46,938 --> 00:30:49,941 我々 日本人の手で成し遂げる 367 00:30:49,941 --> 00:30:51,943 それは ムチャです 368 00:30:51,943 --> 00:30:56,047 今の日本の技術力では 到底 無理だとラロックも言っています 369 00:30:56,047 --> 00:30:58,416 官営鉱山を見たまえ 370 00:30:58,416 --> 00:31:01,452 外国人を高給で 大勢 雇ったがために 371 00:31:01,452 --> 00:31:05,952 財政破綻し 日本人の技術者は育っていない 372 00:31:08,543 --> 00:31:12,430 一番大事なのは 進んだ技術を 373 00:31:12,430 --> 00:31:16,934 我々 日本人が 自分達のものにすることなんだ 374 00:31:16,934 --> 00:31:18,970 もしかして あなたは 375 00:31:18,970 --> 00:31:21,970 最初から そのおつもり だったのですか? 376 00:31:22,924 --> 00:31:25,927 我々の手で やり遂げる 377 00:31:25,927 --> 00:31:29,447 我々の 手で… 378 00:31:29,447 --> 00:31:32,247 やれる 絶対にやってみせる 379 00:31:34,936 --> 00:31:38,422 塩野くん フランスに 行ってくれないか? 380 00:31:38,422 --> 00:31:40,441 えッ? 381 00:31:40,441 --> 00:31:43,928 フランスで 鉱山学を学んできてほしい 382 00:31:43,928 --> 00:31:48,933 住友のため いや 日本の未来のために 383 00:31:48,933 --> 00:31:52,933 君が日本人技術者の 先頭に立つんだ 384 00:31:54,922 --> 00:31:57,425 <明治8年12月> 385 00:31:57,425 --> 00:32:00,444 <ルイ・ラロックは フランスへ帰国> 386 00:32:00,444 --> 00:32:03,431 <結局 広瀬が ラロックに頼んだのは> 387 00:32:03,431 --> 00:32:06,417 <計画書の作成だけだった> 388 00:32:06,417 --> 00:32:09,103 <そして 翌4月> 389 00:32:09,103 --> 00:32:13,090 <塩野門之助は フランス留学に旅立った> 390 00:32:13,090 --> 00:32:16,177 <政府の助成のない 私費での留学は> 391 00:32:16,177 --> 00:32:18,477 <まだ 非常にまれだった> 392 00:32:20,431 --> 00:32:23,100 <ラロックの改革案をもとに> 393 00:32:23,100 --> 00:32:28,100 <広瀬は 銅山の 近代化改革の開始を宣言する> 394 00:32:30,107 --> 00:32:33,094 今 着手しなければ 10年先 395 00:32:33,094 --> 00:32:38,182 いや 100年先の日本の未来に 責任を持っているとは言えない! 396 00:32:38,182 --> 00:32:41,102 我々は 自らの事業が 即 397 00:32:41,102 --> 00:32:44,488 国の発展の行く末に かかわっていることを 398 00:32:44,488 --> 00:32:46,988 肝に銘じなければならない 399 00:32:47,925 --> 00:32:50,928 別子銅山を改革するということは 400 00:32:50,928 --> 00:32:54,428 日本の未来を 切り開いていくことである 401 00:33:01,922 --> 00:33:05,926 <住友家の家長も また動いた> 402 00:33:05,926 --> 00:33:09,926 <二度目の委任を 広瀬に与えたのである> 403 00:33:11,032 --> 00:33:12,950 <ただし 今度は> 404 00:33:12,950 --> 00:33:16,950 <経営に関する すべての権限だった> 405 00:33:21,425 --> 00:33:24,425 <それは 家長により行われた…> 406 00:33:28,482 --> 00:33:32,453 <家長は新しい時代の 経営システムを> 407 00:33:32,453 --> 00:33:35,953 <広瀬宰平に託したのである> 408 00:33:36,924 --> 00:33:38,993 <「総理代人」> 409 00:33:38,993 --> 00:33:41,793 <これが のちに 総理事という職名になる> 410 00:35:45,936 --> 00:35:49,924 <広瀬宰平による 近代化の第一歩は> 411 00:35:49,924 --> 00:35:54,924 <海抜800メートルの山上での 土木工事から始まった> 412 00:36:00,434 --> 00:36:04,438 <広瀬宰平は 東延斜坑の掘削に伴い> 413 00:36:04,438 --> 00:36:08,438 <機械を設置する平地を造成した> 414 00:36:13,414 --> 00:36:17,434 <ここは その造成された平地である> 415 00:36:17,434 --> 00:36:19,436 <機械小屋だけでなく> 416 00:36:19,436 --> 00:36:22,936 <掘り出した鉱石の 選別場も設置された> 417 00:36:27,928 --> 00:36:30,931 <この建物は 動力室> 418 00:36:30,931 --> 00:36:35,931 <明治23年から 動力機関が 置かれることになる> 419 00:36:39,924 --> 00:36:41,926 <機械小屋のそばに> 420 00:36:41,926 --> 00:36:44,926 <掘削された東延斜坑がある> 421 00:36:45,996 --> 00:36:50,996 <斜坑は 49度の傾斜で 掘り進められた> 422 00:36:56,423 --> 00:36:58,425 <水没した最深部を> 423 00:36:58,425 --> 00:37:01,912 <まっすぐ目指す東延斜坑> 424 00:37:01,912 --> 00:37:03,914 <斜坑の途中では> 425 00:37:03,914 --> 00:37:05,916 <水平坑道も掘り> 426 00:37:05,916 --> 00:37:08,435 <それまで気づかなかった鉱脈も> 427 00:37:08,435 --> 00:37:10,935 <くまなく掘る算段だった> 428 00:37:12,923 --> 00:37:15,926 <斜坑には 鉄軌道が敷かれ> 429 00:37:15,926 --> 00:37:18,426 <トロッコを走らせる> 430 00:37:21,916 --> 00:37:25,436 <これは トロッコを動かす巻きあげ機> 431 00:37:25,436 --> 00:37:27,936 <動力は 蒸気機関である> 432 00:37:28,939 --> 00:37:31,909 (汽笛) 433 00:37:31,909 --> 00:37:33,928 <現代の愛好家達が> 434 00:37:33,928 --> 00:37:38,949 <100年を超える年代物の 蒸気機関を所有していた> 435 00:37:38,949 --> 00:37:41,949 <明治初期には国産のものはない> 436 00:37:47,408 --> 00:37:49,910 <蒸気機関は すなわち> 437 00:37:49,910 --> 00:37:52,763 <蒸気機関車の仕組みと同じだ> 438 00:37:52,763 --> 00:37:55,416 <大きなかまに燃料をくべて> 439 00:37:55,416 --> 00:37:59,916 <ボイラーで蒸気を発生させ 動力源とする> 440 00:38:01,605 --> 00:38:04,105 (音が出る) 441 00:38:05,426 --> 00:38:10,426 <東延斜坑の機械場でも 蒸気が立ち上っている> 442 00:38:17,771 --> 00:38:21,371 <蒸気機関でトロッコを引っ張る> 443 00:38:38,525 --> 00:38:41,412 <仕組みは極めて単純> 444 00:38:41,412 --> 00:38:45,933 <しかし 当時は 鉄の軌道 トロッコの台車> 445 00:38:45,933 --> 00:38:50,433 <ワイヤーにいたるまで 高価な輸入品だった> 446 00:38:53,424 --> 00:38:56,910 <斜坑の工事現場では 途中から> 447 00:38:56,910 --> 00:39:00,410 <ダイナマイトの使用が 切望された> 448 00:39:05,419 --> 00:39:10,908 <ダイナマイトの本格的使用は 明治13年以降になる> 449 00:39:10,908 --> 00:39:17,431 <広瀬は当初 東延斜坑の工期を 10年以内ともくろんでいた> 450 00:39:17,431 --> 00:39:21,452 <しかし それは 予定の倍以上の年月が> 451 00:39:21,452 --> 00:39:23,452 <かかることになる> 452 00:39:26,757 --> 00:39:30,427 <別子銅山の近代化と ときを同じくして> 453 00:39:30,427 --> 00:39:35,432 <欧米では急速に 銅の需要が高まっていた> 454 00:39:35,432 --> 00:39:38,085 <電気の普及とともに 町には> 455 00:39:38,085 --> 00:39:42,406 <電線が網のように 張られるようになった> 456 00:39:42,406 --> 00:39:46,443 <その結果 電気の血管ともいうべき銅線が> 457 00:39:46,443 --> 00:39:49,443 <大量に必要になったのである> 458 00:39:50,531 --> 00:39:53,917 <銅の生産を 増やさなければならない> 459 00:39:53,917 --> 00:39:58,417 <広瀬は右腕となる 人材のスカウトにとりかかる> 460 00:40:05,429 --> 00:40:09,099 貞剛 住友に来い 461 00:40:09,099 --> 00:40:11,099 えッ? 462 00:40:13,036 --> 00:40:17,424 叔父さん 私が裁判官を辞めたから 心配してくださってるんですね 463 00:40:17,424 --> 00:40:20,094 いや これは 叔父として言うのではない 464 00:40:20,094 --> 00:40:23,594 住友の総理事として 誘ってるんだ 465 00:40:24,932 --> 00:40:28,418 維新を成し遂げた 西郷隆盛も死んだ 466 00:40:28,418 --> 00:40:30,771 政治の季節は終わった 467 00:40:30,771 --> 00:40:33,757 これからは 企業の時代だ 468 00:40:33,757 --> 00:40:36,426 産業が日本を支えるんだ 469 00:40:36,426 --> 00:40:39,079 やりがいがあるぞ でも叔父さん 470 00:40:39,079 --> 00:40:43,100 私は鉱山のことも商いのことも まったく分かりません 471 00:40:43,100 --> 00:40:45,402 今 分からなくても構わない 472 00:40:45,402 --> 00:40:47,754 広く天下を見て 473 00:40:47,754 --> 00:40:51,425 日本の将来を考えられる 人材がほしい 474 00:40:51,425 --> 00:40:53,443 日本の将来? 475 00:40:53,443 --> 00:40:56,743 日本の100年先を考えるんだ 476 00:41:06,423 --> 00:41:08,923 この銅を見ろ 477 00:41:11,628 --> 00:41:14,748 貞剛 銅の増産は 478 00:41:14,748 --> 00:41:17,734 住友の単なる金儲けではない 479 00:41:17,734 --> 00:41:20,087 国家のための事業なんだ 480 00:41:20,087 --> 00:41:22,439 国益のためだ 481 00:41:22,439 --> 00:41:27,427 わしは住友の事業で 日本を豊かにし 強くし 482 00:41:27,427 --> 00:41:30,247 素晴らしい国にする 483 00:41:30,247 --> 00:41:35,435 住友の事業で 国を豊かに… 484 00:41:35,435 --> 00:41:40,090 それが創業以来の 住友の精神でもある 485 00:41:40,090 --> 00:41:44,428 どうだ わしと一緒に住友で 486 00:41:44,428 --> 00:41:47,428 国家のために尽くしてみないか? 487 00:41:53,520 --> 00:41:55,756 よろしくお願いいたします 488 00:41:55,756 --> 00:41:58,356 広瀬総理事 489 00:42:00,427 --> 00:42:06,767 <こうして のちに 第2代総理事となる伊庭貞剛は> 490 00:42:06,767 --> 00:42:12,067 <明治12年2月4日 住友に入社したのだった> 491 00:42:15,092 --> 00:42:19,079 いやあ 驚きました そんなことがあったのですか 492 00:42:19,079 --> 00:42:21,131 わしも驚いたよ 493 00:42:21,131 --> 00:42:24,431 お前も一回行ってみたらいい ぜひ はい 494 00:42:28,405 --> 00:42:31,091 おお ふな寿司か 495 00:42:31,091 --> 00:42:33,093 梅子さんが作ったのか? 496 00:42:33,093 --> 00:42:35,762 (梅子)はい お義母様に教えていただきながら 497 00:42:35,762 --> 00:42:38,081 うちの女房にも 仕込んでくれるよう 498 00:42:38,081 --> 00:42:40,434 姉さんに頼まないとな 499 00:42:40,434 --> 00:42:42,434 よし 早速 はい 500 00:42:44,404 --> 00:42:47,441 (幸)お義姉さん 味 見ていただけますか 501 00:42:47,441 --> 00:42:50,077 幸さんの味付けでいいのよ 502 00:42:50,077 --> 00:42:53,263 せっかくお義姉さんのところへ 伺ったんですから 503 00:42:53,263 --> 00:42:56,363 宰平さんの好きな味が 知りたいんです 504 00:42:58,085 --> 00:43:00,437 幸さんも梅子さんも 505 00:43:00,437 --> 00:43:04,458 あんまり夫を甘やかすと 苦労するわよ 506 00:43:04,458 --> 00:43:07,758 できるようになったか よかったな… 507 00:43:11,081 --> 00:43:14,418 宰平は猪突猛進 508 00:43:14,418 --> 00:43:18,422 貞剛は ああ見えて 頑固な暴れ馬 509 00:43:18,422 --> 00:43:20,440 二人とも 510 00:43:20,440 --> 00:43:23,443 よく連れ添ってくれる人が いたものよ 511 00:43:23,443 --> 00:43:25,443 少しは感謝させないと 512 00:43:26,430 --> 00:43:29,967 お義姉さん 私はイノシシみたいな人が 513 00:43:29,967 --> 00:43:32,753 好きだったようなんです えッ? 514 00:43:32,753 --> 00:43:36,853 だから 私が感謝してるんです 515 00:43:37,908 --> 00:43:42,262 私は 馬を乗り慣らす稽古を つけているところですから 516 00:43:42,262 --> 00:43:44,431 まあ見ていてください 517 00:43:44,431 --> 00:43:46,783 ありがとう 518 00:43:46,783 --> 00:43:49,383 じゃ お願いします 519 00:43:53,106 --> 00:43:55,606 おいしい よかった 520 00:43:57,427 --> 00:43:59,930 <そして この男> 521 00:43:59,930 --> 00:44:03,430 <広瀬の要請で フランス留学に旅立った> 522 00:44:09,423 --> 00:44:13,410 <塩野のパスポートの写しが 現存する> 523 00:44:13,410 --> 00:44:16,463 <当時は まだ写真がない> 524 00:44:16,463 --> 00:44:21,401 <その代わりに 背丈や 容貌の特徴が書かれている> 525 00:44:21,401 --> 00:44:25,088 <目は大きく 顔は丸く> 526 00:44:25,088 --> 00:44:27,958 <背丈は四尺八寸> 527 00:44:27,958 --> 00:44:29,958 <小柄だった> 528 00:44:36,800 --> 00:44:38,752 <明治10年> 529 00:44:38,752 --> 00:44:42,439 <塩野門之助は フランス東部の町> 530 00:44:42,439 --> 00:44:44,939 <サンテティエンヌにいた> 531 00:44:45,926 --> 00:44:50,497 <サンテティエンヌは当時 炭鉱の町として栄え> 532 00:44:50,497 --> 00:44:56,420 <町にある鉱山学校からは 優秀な鉱山技師を輩出していた> 533 00:44:56,420 --> 00:45:00,090 <塩野は その学校に入学> 534 00:45:00,090 --> 00:45:04,090 <1学年30人ほどの中の 一人となった> 535 00:45:08,915 --> 00:45:12,436 <その鉱山学校は今も現存し> 536 00:45:12,436 --> 00:45:17,441 <町の史料館には 塩野の足跡が残っていた> 537 00:45:17,441 --> 00:45:20,441 <塩野の成績表だ> 538 00:45:29,403 --> 00:45:32,939 はるばる日本から やってきたようですが 539 00:45:32,939 --> 00:45:35,939 なかなか優れていたようですよ 540 00:45:37,511 --> 00:45:41,915 <在学中 塩野は7回のテストを受け> 541 00:45:41,915 --> 00:45:45,415 <すべてを合格点で通過している> 542 00:45:51,074 --> 00:45:54,744 <当時の学校は鉱山技術のほか> 543 00:45:54,744 --> 00:45:58,915 <電気や鉄道など 最先端技術を教える> 544 00:45:58,915 --> 00:46:01,415 <エリート学校だった> 545 00:46:16,533 --> 00:46:18,633 <塩野は> 546 00:46:20,704 --> 00:46:23,504 <意気揚々と帰国する> 547 00:46:25,091 --> 00:46:27,978 やあ すっかりあか抜けたね 塩野くん 548 00:46:27,978 --> 00:46:30,931 とんでもありません 外見はともかく 549 00:46:30,931 --> 00:46:34,417 ここには最新の知識を 詰められるだけ詰めてきました 550 00:46:34,417 --> 00:46:38,088 うん 期待してるよ これからは君が先頭に立ち 551 00:46:38,088 --> 00:46:41,091 別子をもっともっと 近代的な山にしてほしい 552 00:46:41,091 --> 00:46:44,077 はい 早速 別子を改めて見てくるつもりです 553 00:46:44,077 --> 00:46:46,096 色々驚くぞ 554 00:46:46,096 --> 00:46:49,696 こっちも座して君の帰国を 待っていたわけではないからね 555 00:46:50,750 --> 00:46:54,254 <広瀬宰平は明治10年> 556 00:46:54,254 --> 00:46:56,907 <上野で行われる産業博覧会に> 557 00:46:56,907 --> 00:47:00,427 <別子銅山の絵図を出品している> 558 00:47:00,427 --> 00:47:04,931 <別子の近代化を 全国にアピールするためのもので> 559 00:47:04,931 --> 00:47:09,931 <広瀬の取り組みの細部が 克明に描かれている> 560 00:47:16,426 --> 00:47:19,412 <トロッコの巻きあげ機は 最初は> 561 00:47:19,412 --> 00:47:22,412 <人力によるものだった> 562 00:47:27,404 --> 00:47:32,592 <銅山の中心には 洋式の溶鉱炉を造った> 563 00:47:32,592 --> 00:47:35,495 <設計はラロックが残した> 564 00:47:35,495 --> 00:47:37,795 <図面に基づいた> 565 00:47:44,871 --> 00:47:49,075 <白眉ともいえるのは 車道の整備である> 566 00:47:49,075 --> 00:47:53,430 <広瀬宰平は近江から牛を調達し> 567 00:47:53,430 --> 00:47:55,932 <牛車が通行可能な> 568 00:47:55,932 --> 00:47:59,432 <つづら折りの車道を整備した> 569 00:48:05,141 --> 00:48:07,244 <現在も山中には> 570 00:48:07,244 --> 00:48:10,344 <牛車道が形を残している> 571 00:48:15,085 --> 00:48:19,422 <学校や劇場 病院も整え> 572 00:48:19,422 --> 00:48:23,422 <福利厚生の近代化も行っている> 573 00:48:24,411 --> 00:48:26,763 それは素晴らしいですね 574 00:48:26,763 --> 00:48:29,099 では 僕は本丸にとりかかります 575 00:48:29,099 --> 00:48:31,184 フランスの最新知識で 576 00:48:31,184 --> 00:48:33,184 頼むぞ 577 00:48:35,088 --> 00:48:40,410 <塩野は別子銅山の技師長として ラロックが提唱した> 578 00:48:40,410 --> 00:48:42,412 <最後の近代化プラン> 579 00:48:42,412 --> 00:48:47,412 <洋式製錬所の建設計画に とりかかった> 580 00:48:54,407 --> 00:48:56,409 <計画作成に際し> 581 00:48:56,409 --> 00:49:00,413 <塩野は新製錬所の 営業年限などを> 582 00:49:00,413 --> 00:49:05,418 <会社と詳しくやりとりし 精力的に計画を立てる> 583 00:49:05,418 --> 00:49:09,939 <しかし これが ある騒動の 火付け役となってしまうことに> 584 00:49:09,939 --> 00:49:12,739 <塩野はまだ気づいていなかった> 585 00:51:16,416 --> 00:51:21,404 これが 惣開に建設する 洋式製錬所の完成予想図です 586 00:51:21,404 --> 00:51:25,074 さらに 新居浜に大規模な港を造り 587 00:51:25,074 --> 00:51:28,161 外国からの大型船舶が 出入りできるよう 588 00:51:28,161 --> 00:51:30,461 計画しております 589 00:51:31,414 --> 00:51:34,751 この 惣開製錬所では 買鉱製錬 590 00:51:34,751 --> 00:51:37,921 外国から鉱石を買い それを原料にして 591 00:51:37,921 --> 00:51:41,407 製錬することも念頭に置いており それに対応するものです 592 00:51:41,407 --> 00:51:43,576 ちょっと待ってくれ 593 00:51:43,576 --> 00:51:47,030 なぜ 外国の鉱石を買うんだ? 594 00:51:47,030 --> 00:51:48,915 鉱脈は いつか必ず尽きます 595 00:51:48,915 --> 00:51:51,901 将来 別子銅山の鉱脈が尽きたときにも 596 00:51:51,901 --> 00:51:54,904 製錬が続けられるよう 今から対応策を練っていたほうが 597 00:51:54,904 --> 00:51:58,908 いいと思います 別子の鉱脈が尽きるだと? 598 00:51:58,908 --> 00:52:01,411 愚かなことを 599 00:52:01,411 --> 00:52:03,511 話にならん! 600 00:52:08,918 --> 00:52:11,018 あの… 広瀬総理事 601 00:52:14,407 --> 00:52:16,493 塩野くん 602 00:52:16,493 --> 00:52:21,197 住友の家法に はっきり書かれてるじゃないか 603 00:52:21,197 --> 00:52:23,197 はッ? 604 00:52:36,396 --> 00:52:40,466 別子銅山のおかげで 住友は発展してきたんだ 605 00:52:40,466 --> 00:52:42,418 それに 広瀬総理事は➡ 606 00:52:42,418 --> 00:52:45,405 かつて 別子の申し子と呼ばれたほどで➡ 607 00:52:45,405 --> 00:52:48,408 別子に入れ込んでおられるからな 608 00:52:48,408 --> 00:52:52,908 別子について語るときは 言葉を選んだほうがいい 609 00:53:09,412 --> 00:53:13,399 どうしてそんなに外国の石を 買うことにこだわるのか 610 00:53:13,399 --> 00:53:16,586 外国の石にこだわっている わけではありません 611 00:53:16,586 --> 00:53:20,106 私は 住友の将来を 大事に思っているだけです 612 00:53:20,106 --> 00:53:22,191 広瀬総理事と同じです 613 00:53:22,191 --> 00:53:24,093 わしと同じだと? 614 00:53:24,093 --> 00:53:26,429 断じて違う! 615 00:53:26,429 --> 00:53:29,399 もちろんわしも 住友の将来のことは考える 616 00:53:29,399 --> 00:53:32,085 しかしわしは 住友さえよければいいなどとは 617 00:53:32,085 --> 00:53:34,587 決して思わん 私だって そんなことは… 618 00:53:34,587 --> 00:53:37,574 莫大な金を払って 外国から鉱石を買い 619 00:53:37,574 --> 00:53:41,077 住友が それを製錬し 日本で売って儲ける 620 00:53:41,077 --> 00:53:45,098 そんなことが 本当に日本のためになるのか? 621 00:53:45,098 --> 00:53:47,698 国益につながるのか? 622 00:53:49,752 --> 00:53:54,424 日本の原材料で 日本人の技術で 623 00:53:54,424 --> 00:53:59,479 日本人の手で 国産産業として もり立てていく 624 00:53:59,479 --> 00:54:01,447 わしはそれこそが 625 00:54:01,447 --> 00:54:05,447 日本を繁栄に導く道だと 信じている 626 00:54:07,470 --> 00:54:10,470 日本の100年先を考えるんだ 627 00:54:11,424 --> 00:54:14,024 この話は これで終わりだ 628 00:54:28,391 --> 00:54:32,562 <二人の意見は対立したまま ときが過ぎ> 629 00:54:32,562 --> 00:54:37,417 <塩野門之助は ついに製錬所の完成を待たず> 630 00:54:37,417 --> 00:54:40,417 <辞職の道を選んだ> 631 00:54:49,128 --> 00:54:51,414 <明治22年> 632 00:54:51,414 --> 00:54:56,402 <東海道線 新橋 神戸間が全線開通した> 633 00:54:56,402 --> 00:55:00,089 <東京から神戸へ わずか1日> 634 00:55:00,089 --> 00:55:03,689 <鉄路が時代を切り開いていく> 635 00:55:08,915 --> 00:55:11,517 <折しも その年> 636 00:55:11,517 --> 00:55:14,420 <広瀬宰平は 欧米への大旅行に> 637 00:55:14,420 --> 00:55:16,520 <出かけることになる> 638 00:55:20,393 --> 00:55:25,081 <旅の行程は 横浜を出航して太平洋を横断> 639 00:55:25,081 --> 00:55:28,084 <サンフランシスコから アメリカに上陸すると> 640 00:55:28,084 --> 00:55:31,884 <大陸横断列車で東海岸へ移動> 641 00:55:33,406 --> 00:55:37,076 <次いで ニューヨークから大西洋を渡り> 642 00:55:37,076 --> 00:55:39,078 <イギリスへ到達> 643 00:55:39,078 --> 00:55:43,433 <そのあとは フランス ベルギー ドイツを巡り> 644 00:55:43,433 --> 00:55:45,533 <マルセイユへ> 645 00:55:47,403 --> 00:55:49,405 <そして 再び船に乗り> 646 00:55:49,405 --> 00:55:53,905 <インド洋経由で神戸に帰着した> 647 00:55:54,927 --> 00:55:57,927 <北半球1周である> 648 00:56:04,404 --> 00:56:06,906 <広瀬のこの写真は> 649 00:56:06,906 --> 00:56:10,406 <ニューヨークの写真館で 撮影したものだった> 650 00:56:12,095 --> 00:56:16,416 <この旅に 広瀬は幸夫人を帯同した> 651 00:56:16,416 --> 00:56:20,403 <西洋では夫人の同伴がないと> 652 00:56:20,403 --> 00:56:23,403 <ジェントルマンとして認められない> 653 00:56:28,428 --> 00:56:30,897 <広瀬は旅の様子を> 654 00:56:30,897 --> 00:56:34,417 <簡潔な言葉で 日記に記していた> 655 00:56:34,417 --> 00:56:39,417 <まず アメリカで 強く印象に残るものを見た> 656 00:56:44,927 --> 00:56:48,414 <明治22年 6月8日> 657 00:56:48,414 --> 00:56:52,401 <広瀬宰平はコロラド州の山奥で> 658 00:56:52,401 --> 00:56:55,901 <フル稼働する鉱山を 見聞した> 659 00:56:57,924 --> 00:57:01,410 <一獲千金のゴールドラッシュ時代は去り> 660 00:57:01,410 --> 00:57:06,082 <組織的な鉱山経営が 始まっていたころのこと> 661 00:57:06,082 --> 00:57:10,086 <旧来の日本の鉱山しか知らない 広瀬宰平には> 662 00:57:10,086 --> 00:57:13,139 <見るものすべてが刺激的だった> 663 00:57:13,139 --> 00:57:18,928 <特に心を奪われたのは 鉱石の運搬方法である> 664 00:57:18,928 --> 00:57:22,515 <広瀬が訪れたころ 坑道の中では> 665 00:57:22,515 --> 00:57:24,600 <ロバがトロッコを引いていた> 666 00:57:24,600 --> 00:57:28,200 <しかし 広瀬が驚がくしたのは> 667 00:57:29,288 --> 00:57:33,459 <山から平地まで 厳しい高低差をものともせず> 668 00:57:33,459 --> 00:57:38,459 <大型貨車を連ねた 機関車が走っていたことである> 669 00:57:43,419 --> 00:57:47,089 <この鉱山鉄道を目にした 広瀬宰平は> 670 00:57:47,089 --> 00:57:49,075 <日記に こう書いた> 671 00:57:49,075 --> 00:57:53,913 <ここでの鉱石の値段は 1トンあたり平均200ドル> 672 00:57:53,913 --> 00:57:57,900 <それを1日 75トンも運んでいる> 673 00:57:57,900 --> 00:58:02,922 <現在の額に換算すると 1日 15億円分という> 674 00:58:02,922 --> 00:58:05,922 <驚異的な量を運んでいたのだ> 675 00:58:08,411 --> 00:58:11,414 <別子にも必ず鉄道を> 676 00:58:11,414 --> 00:58:14,414 <広瀬は心に誓った> 677 00:58:18,471 --> 00:58:22,408 <一方 パリで広瀬は何を見たのか> 678 00:58:22,408 --> 00:58:26,429 <広瀬を圧倒したのは 天を貫くエッフェル塔> 679 00:58:26,429 --> 00:58:30,729 <その驚きが 短い言葉で表現されていた> 680 00:58:32,752 --> 00:58:37,352 <鉄製ノ大塔天ニ聳ユル物アリ> 681 00:58:51,737 --> 00:58:57,076 <パリ万博は欧米の科学技術と 鉄の時代の到来を> 682 00:58:57,076 --> 00:59:00,676 <広瀬に強く印象づけたのである> 683 00:59:07,853 --> 00:59:12,024 <広瀬宰平は 大阪商法会議所で> 684 00:59:12,024 --> 00:59:15,024 <視察報告を行った> 685 00:59:18,397 --> 00:59:21,400 イギリス アメリカ 686 00:59:21,400 --> 00:59:25,071 あるいは ドイツ フランスの財力は 687 00:59:25,071 --> 00:59:30,076 甚だしく豊かで 驚がくの極みでありました 688 00:59:30,076 --> 00:59:35,748 ただし 国民の貧富の差は 非常に激しい 689 00:59:35,748 --> 00:59:39,201 日本が やがて世界で台頭し 690 00:59:39,201 --> 00:59:42,104 その名誉を発揚するにあたっては 691 00:59:42,104 --> 00:59:48,077 西洋諸国のように 一部の者だけが 豊かであってはなりません 692 00:59:48,077 --> 00:59:53,082 国民全体が富み 国民全体が強くなる 693 00:59:53,082 --> 00:59:57,737 それが 真の経済発展なのであります 694 00:59:57,737 --> 01:00:02,091 一国の富とは 人民の富のことであり 695 01:00:02,091 --> 01:00:04,691 政府の富ではないのです 696 01:00:11,434 --> 01:00:16,434 では 今後 我々は何をすべきか 697 01:00:19,075 --> 01:00:21,127 鉄です 698 01:00:21,127 --> 01:00:25,398 今後 日本が発展していくには 699 01:00:25,398 --> 01:00:30,069 必ずや 製鉄業をおこさなければならない 700 01:00:30,069 --> 01:00:33,406 輸入に頼らず国産の鉄で 701 01:00:33,406 --> 01:00:36,409 日本を豊かにする 702 01:00:36,409 --> 01:00:41,097 これこそが 我々の使命なのであります! 703 01:00:41,097 --> 01:00:43,397 (拍手) 704 01:00:48,421 --> 01:00:50,790 <ドイツを訪れた広瀬は> 705 01:00:50,790 --> 01:00:54,060 <ドイツが 良質な鉄鉱石が少ないのに> 706 01:00:54,060 --> 01:00:57,396 <盛んに製鉄を行っていることを 知る> 707 01:00:57,396 --> 01:01:02,401 <それは 優れた製錬技術が あってこそであった> 708 01:01:02,401 --> 01:01:06,522 <広瀬は 鉄を含む別子の鉱石でも> 709 01:01:06,522 --> 01:01:09,522 <鉄を取り出せると踏んだ> 710 01:01:14,080 --> 01:01:19,418 <製鉄所の名残が 別子銅山のふもとに残っている> 711 01:01:19,418 --> 01:01:21,921 <山根製錬所だ> 712 01:01:21,921 --> 01:01:25,408 <明治23年に実験を開始> 713 01:01:25,408 --> 01:01:28,408 <銑鉄の取り出しに成功した> 714 01:01:35,901 --> 01:01:39,588 <別子の鉱石からの 生産品サンプルの中に> 715 01:01:39,588 --> 01:01:42,091 <銑鉄も加えられた> 716 01:01:42,091 --> 01:01:45,391 <これが その銑鉄である> 717 01:01:48,397 --> 01:01:54,397 <新事業許可申請の書類には 広瀬の思いが記されている> 718 01:02:04,747 --> 01:02:08,401 <ここでも広瀬は 国益を語っていた> 719 01:02:08,401 --> 01:02:10,401 <だが…> 720 01:02:15,441 --> 01:02:20,129 ≪(役員四)総理事 このまま 製鉄事業への投資を続ければ➡ 721 01:02:20,129 --> 01:02:25,067 我が社は今期 八年ぶりの 赤字になるのではありませんか 722 01:02:25,067 --> 01:02:28,737 製鉄事業にかける 総理事の意気込みは分かります 723 01:02:28,737 --> 01:02:32,425 ただ そのために住友が 潰れるようなことになっては 724 01:02:32,425 --> 01:02:34,925 本末転倒ではないでしょうか 725 01:02:38,447 --> 01:02:42,747 皆さんに ご意見は色々おありだろうが 726 01:02:44,086 --> 01:02:46,086 鉄でいく! 727 01:02:47,256 --> 01:02:50,426 国益のために必要な製鉄事業 728 01:02:50,426 --> 01:02:55,498 それを 我々が担っているという 誇りと信念を 729 01:02:55,498 --> 01:02:58,598 お忘れなきよう 以上 730 01:02:59,668 --> 01:03:03,422 <信念を貫こうとする 広瀬の姿勢は> 731 01:03:03,422 --> 01:03:05,925 <ほかの役員達の目には> 732 01:03:05,925 --> 01:03:09,725 <傲慢なワンマン経営としか 映らなくなっていた> 733 01:03:53,405 --> 01:03:55,407 <別子鉱山鉄道は> 734 01:03:55,407 --> 01:04:00,746 <広瀬宰平の欧米旅行から たった四年で完成した> 735 01:04:00,746 --> 01:04:06,068 <これで 運搬能力は 江戸時代の500倍になった> 736 01:04:06,068 --> 01:04:10,368 <本格的な増産体制の 確立であった> 737 01:04:12,424 --> 01:04:15,294 <当時の路線を見る> 738 01:04:15,294 --> 01:04:19,598 <新居浜の海岸部から 海抜150メートルの端出場までが> 739 01:04:19,598 --> 01:04:21,598 <一路線> 740 01:04:31,961 --> 01:04:35,097 <端出場からは 急斜面を一気に> 741 01:04:35,097 --> 01:04:37,397 <ロープウェイで つなぐ> 742 01:04:42,838 --> 01:04:46,458 <そして 圧巻なのは そこから先> 743 01:04:46,458 --> 01:04:49,078 <1100メートルの終点まで> 744 01:04:49,078 --> 01:04:53,415 <崖にへばりつくように もう一つの路線を造った> 745 01:04:53,415 --> 01:04:58,415 <この上部鉄道の険しさは 大層恐れられた> 746 01:05:04,910 --> 01:05:07,413 <この鉱山鉄道の完成で> 747 01:05:07,413 --> 01:05:10,082 <物資輸送を担う中持は> 748 01:05:10,082 --> 01:05:13,082 <ほとんど姿を消すことになる> 749 01:05:22,411 --> 01:05:27,082 <坑道の中では 画期的な機械も導入された> 750 01:05:27,082 --> 01:05:30,419 <岩盤に爆薬をこめる穴を開ける> 751 01:05:30,419 --> 01:05:32,571 <削岩機である> 752 01:05:32,571 --> 01:05:35,240 <掘り進むスピードが倍になり> 753 01:05:35,240 --> 01:05:38,740 <採鉱効率が飛躍的に上がった> 754 01:05:47,086 --> 01:05:50,489 <しかし これら近代化の一方で> 755 01:05:50,489 --> 01:05:56,489 <鉱山には人員削減に対する 不安が持ち上がる> 756 01:06:07,423 --> 01:06:10,309 (権三)またクビ切りに来たのか 許さねえぞ! 757 01:06:10,309 --> 01:06:12,261 (虎次郎)金だ 金 金をよこせ! 758 01:06:12,261 --> 01:06:14,596 (佐助)簡単に切れるなら 切ってみろ! 759 01:06:14,596 --> 01:06:20,853 <人員整理が行われ 不満が募る坑夫や運搬夫達> 760 01:06:20,853 --> 01:06:25,074 <こうした人心の荒廃を おさめることができる人物は> 761 01:06:25,074 --> 01:06:28,374 <別子の現場にはいなかった> 762 01:06:34,416 --> 01:06:36,485 <鉄道の開通後> 763 01:06:36,485 --> 01:06:40,422 <塩野門之助が設計した 西洋式の製錬所は> 764 01:06:40,422 --> 01:06:42,424 <フル回転だった> 765 01:06:42,424 --> 01:06:46,024 <しかし ここでも問題が起こる> 766 01:06:49,481 --> 01:06:52,618 <140年の歴史がある地元新聞社は> 767 01:06:52,618 --> 01:06:55,618 <当時の騒動を報じていた> 768 01:06:58,090 --> 01:07:02,390 こちらに明治時代の新聞が 保管されています 769 01:07:04,413 --> 01:07:08,083 <当時は 海南新聞との名だった> 770 01:07:08,083 --> 01:07:12,383 <その明治26年 10月10日の記事> 771 01:07:20,596 --> 01:07:23,396 <そして その2日後には> 772 01:07:38,097 --> 01:07:40,197 開けろー! 773 01:07:41,233 --> 01:07:44,920 畑も田んぼも全部枯れた 飢え死にさせる気か! 774 01:07:44,920 --> 01:07:48,407 製錬所の煙が原因だ! 775 01:07:48,407 --> 01:07:52,911 何が虫だ こんなことする虫が どこにいる! 776 01:07:52,911 --> 01:07:57,011 製錬工場が原因じゃ 開けろ おい! 777 01:07:59,435 --> 01:08:05,257 <農民達が問題にしていたのは 製錬所からの煙である> 778 01:08:05,257 --> 01:08:09,745 <別子の鉱石を焼くと 含まれる硫黄分が気化して> 779 01:08:09,745 --> 01:08:13,845 <有毒性の亜硫酸ガスが 排出される> 780 01:08:15,901 --> 01:08:19,404 <この煙が原因で作物が枯れたと> 781 01:08:19,404 --> 01:08:22,090 <農民が声を上げたのだ> 782 01:08:22,090 --> 01:08:26,390 製錬工場が原因じゃ 開けろ おい! 783 01:08:28,747 --> 01:08:34,069 <事態を収拾できる人間は 分店には現れなかった> 784 01:08:34,069 --> 01:08:36,088 <騒ぎは拡大し> 785 01:08:36,088 --> 01:08:38,088 <当時の…> 786 01:08:46,064 --> 01:08:49,101 我こそは別子に赴き 787 01:08:49,101 --> 01:08:52,401 事にあたろうという者は いないのか? 788 01:09:05,417 --> 01:09:07,436 本気か? 789 01:09:07,436 --> 01:09:09,436 はい 790 01:09:11,073 --> 01:09:15,427 今 別子の責任者として 赴任するのは 791 01:09:15,427 --> 01:09:17,727 命がけだぞ 792 01:09:19,414 --> 01:09:23,519 ツガザクラ という名前でしたか…? 793 01:09:23,519 --> 01:09:25,737 うん? 四国では 794 01:09:25,737 --> 01:09:30,409 別子の峰だけに咲く花が あると聞きました 795 01:09:30,409 --> 01:09:33,428 一度見てみたいと 思っていたんです 796 01:09:33,428 --> 01:09:36,528 来年の春が楽しみだな 797 01:09:38,083 --> 01:09:41,383 お前も相当な変わり者だな 798 01:09:43,922 --> 01:09:46,422 行ってまいります 799 01:12:05,380 --> 01:12:10,419 <このころ 住友家では 家長の代が替わり> 800 01:12:10,419 --> 01:12:15,424 <15代 友純の時代を迎えていた> 801 01:12:15,424 --> 01:12:17,724 伊庭でございます 802 01:12:32,240 --> 01:12:35,394 別子赴任のご挨拶にまいりました 803 01:12:35,394 --> 01:12:39,064 (友純)この難局に よく決意してくれました 804 01:12:39,064 --> 01:12:41,416 あなたが 支配人になってくださるなら 805 01:12:41,416 --> 01:12:43,752 私も安心です 806 01:12:43,752 --> 01:12:47,389 つきましては お願いがございます 807 01:12:47,389 --> 01:12:49,391 何でしょう 808 01:12:49,391 --> 01:12:54,429 討ち死に覚悟で別子の山に 籠城することをお許しください 809 01:12:54,429 --> 01:12:57,399 別子の山に籠城する 810 01:12:57,399 --> 01:12:59,401 どういうことですか? 811 01:12:59,401 --> 01:13:04,423 工場の煙が人々の暮らしを 破壊しているのなら 812 01:13:04,423 --> 01:13:09,745 煙害問題は 抜本的に解決すべきだと思います 813 01:13:09,745 --> 01:13:13,081 補償金で片付けるのではなく 814 01:13:13,081 --> 01:13:16,468 煙害そのものをなくすのです 815 01:13:16,468 --> 01:13:22,468 そのためには 煙を どうにかしなければなりません 816 01:13:23,391 --> 01:13:29,691 私は その方法を何としても 見つけ出すつもりです 817 01:13:31,066 --> 01:13:37,389 しかし もしうまくいかなかった そのときは… 818 01:13:37,389 --> 01:13:40,909 今後の別子銅山のあり方について 819 01:13:40,909 --> 01:13:43,462 あなたが全責任を負う 820 01:13:43,462 --> 01:13:45,562 そういうことですか? 821 01:13:46,581 --> 01:13:50,681 その覚悟で 行かせてください 822 01:13:52,070 --> 01:13:55,974 別子銅山は 住友の財本ではありますが 823 01:13:55,974 --> 01:13:58,393 人々の安全には代えられません 824 01:13:58,393 --> 01:14:02,914 住友のためではなく 日本のことを 考えて処理してください 825 01:14:02,914 --> 01:14:07,014 そのときは 私も責任を負います 826 01:14:13,408 --> 01:14:15,708 かしこまりました 827 01:14:23,752 --> 01:14:29,352 <伊庭貞剛が別子に赴任した その日> 828 01:14:31,476 --> 01:14:34,262 さあ 829 01:14:34,262 --> 01:14:36,562 いよいよ出陣だ 830 01:14:58,453 --> 01:15:00,722 <待ち構えていたのは> 831 01:15:00,722 --> 01:15:06,322 <経営陣への不信と敵意で いっぱいの坑夫達だった> 832 01:15:09,397 --> 01:15:14,252 へえ 新支配人さん お待ちしてましたよ 833 01:15:14,252 --> 01:15:16,905 大歓迎しますよ なあみんな 834 01:15:16,905 --> 01:15:18,924 (坑夫達)ああ! 835 01:15:18,924 --> 01:15:23,424 だがな 山の歓迎は ちいと手荒えぞ 836 01:15:42,747 --> 01:15:45,047 ありがとう 837 01:15:47,836 --> 01:15:51,336 虎次郎さん えッ!? 838 01:15:53,058 --> 01:15:55,227 何だよ…? 839 01:15:55,227 --> 01:15:58,914 武三さん な… 何だよ? 840 01:15:58,914 --> 01:16:01,514 伸の介さん 何だい? 841 01:16:02,934 --> 01:16:05,734 太郎さん ≪おう… 842 01:16:06,738 --> 01:16:09,538 佐助さん おい 843 01:16:10,575 --> 01:16:13,745 庄助さん ≪何だい? 844 01:16:13,745 --> 01:16:17,045 惣五郎さん ≪えッ? 845 01:16:18,233 --> 01:16:20,533 掘兵衛さん 846 01:16:23,421 --> 01:16:26,721 権三さん な… 何でえ? 847 01:16:35,066 --> 01:16:37,252 皆さん 848 01:16:37,252 --> 01:16:40,552 どうぞ よろしく頼みます 849 01:16:41,640 --> 01:16:44,909 ≪よろしくって どういうことだよ? 850 01:16:44,909 --> 01:16:48,009 (ざわめく坑夫達) 851 01:17:02,243 --> 01:17:06,731 <別子の支配人に着任した 伊庭貞剛は> 852 01:17:06,731 --> 01:17:10,902 <新たな規則や人事を 発令するでもなく> 853 01:17:10,902 --> 01:17:14,222 <ひたすら わらじ履きで現場に出かけ> 854 01:17:14,222 --> 01:17:17,625 <坑夫達に声をかける日々を 送った> 855 01:17:17,625 --> 01:17:20,225 末吉さん ご苦労さま 856 01:18:05,106 --> 01:18:07,106 (碁をうつ音) 857 01:18:08,093 --> 01:18:10,093 あなた? 858 01:18:15,100 --> 01:18:17,102 あなた? 859 01:18:17,102 --> 01:18:19,604 梅子… 860 01:18:19,604 --> 01:18:21,639 はあッ… 861 01:18:21,639 --> 01:18:23,591 驚くじゃないか 862 01:18:23,591 --> 01:18:27,612 来るなら来るで 知らせてくれれば 迎えに行ったのに 863 01:18:27,612 --> 01:18:31,449 あなたを驚かせようと 思ったんですもの 成功ですわね 864 01:18:31,449 --> 01:18:34,049 アッハッハ… 大成功だ 865 01:18:40,425 --> 01:18:43,611 子供達に 変わりはないかい? 866 01:18:43,611 --> 01:18:45,711 みんな 元気です 867 01:18:46,781 --> 01:18:50,435 あなたは 大丈夫ですか? もちろん 868 01:18:50,435 --> 01:18:53,535 このとおりだ ハッハッハ… 869 01:18:57,442 --> 01:19:01,442 私 こう見えて 五目並べは得意なんです 870 01:19:03,948 --> 01:19:07,448 よーし じゃあ 勝負だ 871 01:19:23,918 --> 01:19:26,421 また 来やがったよ 872 01:19:26,421 --> 01:19:30,792 でも わしらに こんなに声を かけてくれる支配人も 初めてだ 873 01:19:30,792 --> 01:19:33,428 ああ 名前を覚えてくれるなんて 874 01:19:33,428 --> 01:19:37,298 えッ!? タヌキに だまされんなよ 875 01:19:37,298 --> 01:19:39,434 ご苦労さま 876 01:19:39,434 --> 01:19:42,103 力仕事ですからね 877 01:19:42,103 --> 01:19:44,956 しっかり食べてくださいよ 878 01:19:44,956 --> 01:19:47,256 アイタタタッ… 879 01:20:03,992 --> 01:20:06,277 虎次郎さん 880 01:20:06,277 --> 01:20:08,877 いつも ご苦労さま 881 01:20:12,116 --> 01:20:14,116 ありがとうごぜえます 882 01:20:28,099 --> 01:20:30,952 何か いいことがあったんですか? 883 01:20:30,952 --> 01:20:33,938 うん 坑夫の一人が 884 01:20:33,938 --> 01:20:37,038 私に口をきいてくれたのだ 885 01:20:38,793 --> 01:20:41,296 それだけですか? うん 886 01:20:41,296 --> 01:20:43,448 それだけだ 887 01:20:43,448 --> 01:20:46,935 毎日 山に登って 何をなさってるかと思えば 888 01:20:46,935 --> 01:20:50,121 何だか ばかなお仕事ですこと 889 01:20:50,121 --> 01:20:52,290 どうやら 私は 890 01:20:52,290 --> 01:20:55,790 そんな ばかな仕事が好きなのだよ 891 01:20:57,929 --> 01:21:01,029 (笑う二人) 892 01:21:02,784 --> 01:21:13,278 (坑夫が歌う声) 893 01:21:13,278 --> 01:21:16,764 <伊庭貞剛の人となりは いつしか> 894 01:21:16,764 --> 01:21:22,120 <別子で働く者達の心を 一つにまとめた> 895 01:21:22,120 --> 01:21:27,220 (声を合わせて歌う坑夫達) 896 01:21:28,793 --> 01:21:31,793 <一方 広瀬は…> 897 01:21:33,114 --> 01:21:35,600 ≪(部下)申し訳ありません➡ 898 01:21:35,600 --> 01:21:38,286 どうしても 銅や硫黄が まじってしまい➡ 899 01:21:38,286 --> 01:21:42,086 別子の鉱石から 鋼鉄がつくれません 900 01:21:44,425 --> 01:21:48,725 今の我々の技術では 採算がとれません 901 01:22:01,092 --> 01:22:05,446 宰平殿は 住友家に半世紀以上 仕え 902 01:22:05,446 --> 01:22:08,600 その礎を築いてくださいました 903 01:22:08,600 --> 01:22:11,200 ありがとうございます 904 01:22:26,267 --> 01:22:28,753 しかし… 905 01:22:28,753 --> 01:22:30,955 どれだけ苦くても 906 01:22:30,955 --> 01:22:35,055 飲んでいただかなければならない お話があります 907 01:22:36,260 --> 01:22:39,781 責任の取り方を お考えくださるよう 908 01:22:39,781 --> 01:22:42,381 願います 909 01:23:02,036 --> 01:23:03,955 幸 910 01:23:03,955 --> 01:23:05,955 はい 911 01:23:07,091 --> 01:23:10,391 墨を… 頼む 912 01:23:39,540 --> 01:23:42,140 あなた 913 01:23:46,614 --> 01:23:49,614 ありがとうございました 914 01:24:06,284 --> 01:24:09,620 <住友家長宛ての辞表であったが> 915 01:24:09,620 --> 01:24:12,473 <広瀬宰平は これをまず> 916 01:24:12,473 --> 01:24:15,760 <伊庭貞剛に 送った> 917 01:24:15,760 --> 01:24:18,763 <封筒には 「伊庭貞剛殿」> 918 01:24:18,763 --> 01:24:21,263 <「親展」とある> 919 01:24:32,944 --> 01:24:34,946 <1月> 920 01:24:34,946 --> 01:24:38,783 <東延斜坑が ついに最深部に到達した> 921 01:24:38,783 --> 01:24:42,270 <坑道距離 526メートル> 922 01:24:42,270 --> 01:24:45,957 <広瀬が切望した 新時代の採鉱法の> 923 01:24:45,957 --> 01:24:48,957 <本格的な始動である> 924 01:24:50,261 --> 01:24:53,448 19年… 925 01:24:53,448 --> 01:24:56,748 19年かかった 926 01:24:58,603 --> 01:25:03,274 本当に… おめでとうございます 927 01:25:03,274 --> 01:25:08,129 ついに 日本人だけの手で やり遂げましたね 928 01:25:08,129 --> 01:25:10,729 ありがとう 929 01:25:13,117 --> 01:25:15,770 叔父さんは 930 01:25:15,770 --> 01:25:18,122 この日が来ることを 931 01:25:18,122 --> 01:25:21,759 どこまで 信じておられたのですか? 932 01:25:21,759 --> 01:25:24,629 わしか? 933 01:25:24,629 --> 01:25:27,265 信じるのが 934 01:25:27,265 --> 01:25:31,365 難しい日も あったかもしれんな 935 01:25:34,105 --> 01:25:36,524 貞剛 936 01:25:36,524 --> 01:25:39,293 いつまで 総理事を 937 01:25:39,293 --> 01:25:42,093 空席にしておくのだ? 938 01:25:44,599 --> 01:25:46,601 私は 939 01:25:46,601 --> 01:25:50,438 まだ 本社に戻るわけにはいきません 940 01:25:50,438 --> 01:25:54,738 やらなければならないことが あるのです 941 01:26:05,269 --> 01:26:07,371 (ドアの開閉音) 942 01:26:07,371 --> 01:26:10,171 (塩野)ご無沙汰しております 943 01:26:11,108 --> 01:26:13,761 よく戻ってきてくれたね 塩野くん 944 01:26:13,761 --> 01:26:17,598 住友は 私を5年も フランスに留学させてくれたのです 945 01:26:17,598 --> 01:26:20,468 いつか恩返しがしたいと 思っていました 946 01:26:20,468 --> 01:26:23,771 ありがとう ただ 煙害問題を解決するのは 947 01:26:23,771 --> 01:26:27,942 至難の業です 私は 補償で済ませるのではなく 948 01:26:27,942 --> 01:26:30,611 根本的に解決したいのだ 949 01:26:30,611 --> 01:26:33,464 そう おっしゃるだろうと 思っていました 950 01:26:33,464 --> 01:26:36,464 でも どうなさるおつもりですか? 951 01:26:37,435 --> 01:26:40,435 島に移る えッ!? 952 01:26:43,274 --> 01:26:45,610 四阪島だ 953 01:26:45,610 --> 01:26:47,778 なるほど… 954 01:26:47,778 --> 01:26:51,115 ここに製錬所を移せば 煙は 海上で離散し 955 01:26:51,115 --> 01:26:55,586 田畑に影響しませんね ただし 四阪島は無人島だ 956 01:26:55,586 --> 01:26:58,673 じゃあ 社員達は どうやって生活するんですか? 957 01:26:58,673 --> 01:27:00,591 病院や学校は? 958 01:27:00,591 --> 01:27:05,691 四阪島には 水も出ない もちろん 今は 港もない 959 01:27:08,766 --> 01:27:13,566 君に解決してもらいたい 力を貸してくれないか? 960 01:27:16,023 --> 01:27:20,123 分かりました 全力で 取り組みます 961 01:29:24,235 --> 01:29:26,270 <塩野は> 962 01:29:26,270 --> 01:29:29,440 <伊庭の信頼と期待に応えて> 963 01:29:29,440 --> 01:29:32,927 <四阪島移転計画を練り上げた> 964 01:29:32,927 --> 01:29:37,548 四阪島は 新居浜から20キロメートルの 沖合にあります 965 01:29:37,548 --> 01:29:42,103 坑員達は 家族と一緒に 移り住んでもらいます 966 01:29:42,103 --> 01:29:45,589 学校 社宅 病院 床屋 967 01:29:45,589 --> 01:29:48,609 銭湯 公園 神社 968 01:29:48,609 --> 01:29:52,113 生活に必要なものは すべて 969 01:29:52,113 --> 01:29:54,613 ゼロから つくります 970 01:29:55,750 --> 01:29:59,670 とんでもない大計画だな… 971 01:29:59,670 --> 01:30:02,470 今さら 驚かないでください 972 01:30:04,091 --> 01:30:06,277 水は どうする? 973 01:30:06,277 --> 01:30:09,146 水は もちろん 鉱石 生活物資 974 01:30:09,146 --> 01:30:12,266 すべて 新居浜などから 定期的に運びます➡ 975 01:30:12,266 --> 01:30:15,102 蒸気船に 曳かれ舟を長くつなげば➡ 976 01:30:15,102 --> 01:30:18,105 一度に大量に運べますから➡ 977 01:30:18,105 --> 01:30:22,276 続いて 四阪島に建設する製錬工場ですが 978 01:30:22,276 --> 01:30:27,348 <四阪島製錬所の 見取り図> 979 01:30:27,348 --> 01:30:31,102 <これまで 新居浜と別子の 山の中にあった製錬所を> 980 01:30:31,102 --> 01:30:33,771 <すべて一ヵ所に 集中しただけあって> 981 01:30:33,771 --> 01:30:38,576 <その焼鉱場の数は 島を埋め尽くすほどである> 982 01:30:38,576 --> 01:30:42,496 <中央に 煙を広く遠くへ飛散させるための> 983 01:30:42,496 --> 01:30:46,096 <巨大な煙突があることが分かる> 984 01:30:50,087 --> 01:30:52,756 <この大計画が> 985 01:30:52,756 --> 01:30:56,056 <広瀬宰平の耳に入った> 986 01:31:08,772 --> 01:31:13,844 隠居した身でありながら 私が差し出口をいたすのは 987 01:31:13,844 --> 01:31:17,264 許されないことと 重々 承知なれど 988 01:31:17,264 --> 01:31:20,417 この宰平の座右の銘は 989 01:31:20,417 --> 01:31:23,921 「命に逆らいて 君を利する」 990 01:31:23,921 --> 01:31:27,021 「之を忠という」でございます 991 01:31:28,275 --> 01:31:32,930 この一大事を 見過ごすわけにはまいりません 992 01:31:32,930 --> 01:31:37,434 あえて 卑見を申す無礼を お許しください 993 01:31:37,434 --> 01:31:41,272 (友純)宰平殿の忠義は 十分 分かっております 994 01:31:41,272 --> 01:31:44,372 遠慮なく おっしゃってください 995 01:31:50,264 --> 01:31:53,364 貞剛! 血迷ったか! 996 01:31:54,752 --> 01:31:59,757 新居浜は 住友とともに 発展してきた工業都市だ 997 01:31:59,757 --> 01:32:01,926 その新居浜から 998 01:32:01,926 --> 01:32:05,596 住友の工場を 抜き去るということは 999 01:32:05,596 --> 01:32:09,767 新居浜の人々から 仕事を取り上げるということだ 1000 01:32:09,767 --> 01:32:12,269 住友さえよければ よいのか! 1001 01:32:12,269 --> 01:32:16,440 新居浜には 運輸課 販売課 機械課などの諸部門を残します 1002 01:32:16,440 --> 01:32:19,093 失業者を出さないよう 万全の対策をとり 1003 01:32:19,093 --> 01:32:23,430 水のない無人島に 工場を 移すだと!? 水は どうするんだ? 1004 01:32:23,430 --> 01:32:26,100 船で運びます そんなムチャに 1005 01:32:26,100 --> 01:32:30,087 莫大な費用をつぎ込むのなら 被害住民への賠償や 1006 01:32:30,087 --> 01:32:33,107 土地買い取りに あてるべきじゃないのか? 1007 01:32:33,107 --> 01:32:36,777 煙害被害地をすべて買い取る ことなど 資金的に不可能です 1008 01:32:36,777 --> 01:32:39,930 無人島に移転するほうが 金がかかるんじゃないのか? 1009 01:32:39,930 --> 01:32:43,117 たとえ そうだとしても… 新居浜に対する住友の 1010 01:32:43,117 --> 01:32:45,117 責任を考えよ! 1011 01:32:46,103 --> 01:32:48,122 私は お前に 1012 01:32:48,122 --> 01:32:52,309 住友の事業を通じて 国に貢献せよと教えたはずだ 1013 01:32:52,309 --> 01:32:55,809 お前は 一体 何を学んだのか! 1014 01:33:02,202 --> 01:33:06,502 100年先を考えることです 1015 01:33:11,762 --> 01:33:13,914 普通に考えれば 1016 01:33:13,914 --> 01:33:18,869 確かに 四阪島移転計画は 無謀かもしれません 1017 01:33:18,869 --> 01:33:20,771 しかし あなたは 1018 01:33:20,771 --> 01:33:25,793 周りから ムチャだ 無謀だと 言われても ご自分の信念を貫き 1019 01:33:25,793 --> 01:33:29,793 住友の礎を築いてくださったでは ありませんか? 1020 01:33:30,864 --> 01:33:32,933 だからこそ 私は 1021 01:33:32,933 --> 01:33:35,102 どんなムチャをしようとも 1022 01:33:35,102 --> 01:33:39,707 煙害問題を 根本的に解決したいのです 1023 01:33:39,707 --> 01:33:43,360 100年先を考えるからこそ 1024 01:33:43,360 --> 01:33:47,460 目先の補償で済ますことなど できません 1025 01:33:55,105 --> 01:33:57,474 企業は 1026 01:33:57,474 --> 01:34:03,574 100年先に対する責任まで 考えなければならない 1027 01:34:05,099 --> 01:34:09,003 それを教えてくれたのは… 1028 01:34:09,003 --> 01:34:11,622 叔父さん 1029 01:34:11,622 --> 01:34:14,422 あなたです 1030 01:34:24,118 --> 01:34:26,920 宰平殿 1031 01:34:26,920 --> 01:34:28,922 はい 1032 01:34:28,922 --> 01:34:31,592 貞剛殿の詳しい話を 1033 01:34:31,592 --> 01:34:34,692 聞こうではありませんか 1034 01:34:37,614 --> 01:34:39,914 ありがとうございます 1035 01:35:13,534 --> 01:35:16,754 幸 はい 1036 01:35:16,754 --> 01:35:19,790 立派になったぞ えッ… 1037 01:35:19,790 --> 01:35:23,290 まあ! 本当に フフッ… 1038 01:35:24,261 --> 01:35:26,597 貞剛のことだ 1039 01:35:26,597 --> 01:35:28,632 あら! 1040 01:35:28,632 --> 01:35:32,432 (笑う二人) 1041 01:35:36,440 --> 01:35:39,009 <伊庭貞剛は 改めて> 1042 01:35:39,009 --> 01:35:42,663 <四阪島への移転計画書を 提出した> 1043 01:35:42,663 --> 01:35:46,116 <それは 膨大な見積書も添付された> 1044 01:35:46,116 --> 01:35:49,916 <ぬかりのない 事業計画書であった> 1045 01:35:59,780 --> 01:36:04,751 <伊庭の 別子での奮闘は 5年に及んだ> 1046 01:36:04,751 --> 01:36:09,851 <のちに伊庭は 別子での5年を こう詠んだ> 1047 01:36:20,434 --> 01:36:23,587 <この歌を送られた 伊庭の親友> 1048 01:36:23,587 --> 01:36:26,687 <品川弥二郎は…> 1049 01:36:29,259 --> 01:36:32,779 <…と 下の句を返した> 1050 01:36:32,779 --> 01:36:35,916 <伊庭の別子時代は 雪の時代で> 1051 01:36:35,916 --> 01:36:39,486 <月が美しく 花が咲く よい時代は> 1052 01:36:39,486 --> 01:36:41,755 <後継者に譲ったと> 1053 01:36:41,755 --> 01:36:45,442 <伊庭の潔さを 雪月花にたとえ> 1054 01:36:45,442 --> 01:36:48,042 <たたえたのである> 1055 01:36:49,112 --> 01:36:53,767 <四阪島への移転計画に めどをつけた伊庭貞剛は> 1056 01:36:53,767 --> 01:36:56,687 <明治33年 1月> 1057 01:36:56,687 --> 01:37:00,787 <第2代 総理事に就任した> 1058 01:37:06,930 --> 01:37:08,932 (ノック) 1059 01:37:08,932 --> 01:37:11,869 はい (部下)失礼します 1060 01:37:11,869 --> 01:37:15,522 <伊庭が 取り組まなければならない課題は> 1061 01:37:15,522 --> 01:37:18,022 <ほかにもあった> 1062 01:37:25,082 --> 01:37:27,434 <別子の山を> 1063 01:37:27,434 --> 01:37:30,754 <もとの あおあおとした姿にして> 1064 01:37:30,754 --> 01:37:35,354 <これを 大自然に返さなければならない> 1065 01:37:38,595 --> 01:37:41,782 <伊庭に決意をうながした その書類は> 1066 01:37:41,782 --> 01:37:46,282 <別子山中の記念施設に 展示されている> 1067 01:37:49,590 --> 01:37:53,760 <すぐに策を打たないと 取り返しがつかない> 1068 01:37:53,760 --> 01:37:57,931 <書類は はげ山に変わり果てた 山林の窮状を> 1069 01:37:57,931 --> 01:38:01,101 <切実に訴えていた> 1070 01:38:01,101 --> 01:38:04,254 (男性)近代化を写しとった 写真帳であります 1071 01:38:04,254 --> 01:38:07,641 <明治14年の写真が残っている> 1072 01:38:07,641 --> 01:38:11,812 <別子銅山では 近代化の 進行具合を報告するための> 1073 01:38:11,812 --> 01:38:15,265 <写真帳を制作していた> 1074 01:38:15,265 --> 01:38:20,103 <山林の窮状は そこにはっきりと 写し出されていた> 1075 01:38:20,103 --> 01:38:23,903 <銅山には 木一本 生えていないのだ> 1076 01:38:25,092 --> 01:38:28,111 <製錬の火を起こす木炭> 1077 01:38:28,111 --> 01:38:31,448 <坑道を支える坑木などを 得るため> 1078 01:38:31,448 --> 01:38:35,419 <銅山では 常に木を伐採してきた> 1079 01:38:35,419 --> 01:38:39,940 <さらに 焼鉱場からの煙で 枯死する木も多く> 1080 01:38:39,940 --> 01:38:44,240 <そうして 森は 姿を消していったのである> 1081 01:38:58,075 --> 01:39:01,428 <伊庭貞剛が決意を示してから> 1082 01:39:01,428 --> 01:39:05,428 <現在は 122年後にあたる> 1083 01:39:06,767 --> 01:39:11,367 (鳥のさえずり) 1084 01:39:23,717 --> 01:39:29,717 <すべては 小さな苗木 1本1本を 植えることから始まった> 1085 01:39:35,278 --> 01:39:37,931 <明治27年> 1086 01:39:37,931 --> 01:39:41,418 <伊庭貞剛の指示により 別子銅山では> 1087 01:39:41,418 --> 01:39:45,088 <大規模な植林事業が始まった> 1088 01:39:45,088 --> 01:39:49,676 <増える本数は すぐに 年100万本にもなり> 1089 01:39:49,676 --> 01:39:55,276 <そして 植林事業は 今も続いている> 1090 01:40:03,774 --> 01:40:09,279 <別子の森林の復活を 見守ってきた木を発見した> 1091 01:40:09,279 --> 01:40:14,579 <枯れかけて やむなく切られた ヒノキの切り株だった> 1092 01:40:16,853 --> 01:40:19,773 この年輪を写真に撮って 拡大をして 1093 01:40:19,773 --> 01:40:24,761 調べたところ 林齢が118年になってましたので 1094 01:40:24,761 --> 01:40:28,932 <つまり…> 1095 01:40:28,932 --> 01:40:34,532 <伊庭貞剛が 銅山の支配人だったころの木だ> 1096 01:40:37,758 --> 01:40:40,410 <周辺の生きている木も> 1097 01:40:40,410 --> 01:40:43,747 <同じ明治30年生まれ> 1098 01:40:43,747 --> 01:40:48,935 <植えられた場所が 急傾斜すぎて 木材として切られることなく> 1099 01:40:48,935 --> 01:40:53,590 <100年 命を紡いできた> 1100 01:40:53,590 --> 01:40:57,890 <別子の森の 生き証人である> 1101 01:41:08,605 --> 01:41:11,258 <世界の予想を覆し> 1102 01:41:11,258 --> 01:41:15,295 <日本がロシアに勝利した その年> 1103 01:41:15,295 --> 01:41:20,250 <四阪島製錬所は 6年間の工期をへて完成> 1104 01:41:20,250 --> 01:41:23,253 <操業を開始した> 1105 01:41:23,253 --> 01:41:27,753 <煙害は これで解決するはずだった> 1106 01:43:32,415 --> 01:43:36,436 <煙害問題は 再発した> 1107 01:43:36,436 --> 01:43:40,073 <雲散霧消するはずの 四阪島の煙は> 1108 01:43:40,073 --> 01:43:45,173 <かえって その影響を 広範囲に広げてしまったのである> 1109 01:43:47,414 --> 01:43:53,253 <明治時代の資料が残っている つくば市の農業研究施設> 1110 01:43:53,253 --> 01:43:57,591 <四阪島からの煙で被害にあった 農作物のサンプルが> 1111 01:43:57,591 --> 01:44:00,191 <保管されていた> 1112 01:44:01,595 --> 01:44:05,432 <葉が枯れる 斑紋が現れるなどして> 1113 01:44:05,432 --> 01:44:08,232 <生育不良に陥った> 1114 01:44:09,402 --> 01:44:13,523 <被害が広まったのは 今治や 大島など> 1115 01:44:13,523 --> 01:44:17,523 <収穫期の米が 全滅の田もあったという> 1116 01:44:20,430 --> 01:44:23,934 <この事態に きぜんと立ち向かったのは> 1117 01:44:23,934 --> 01:44:27,734 <伊庭貞剛の後を継いだ…> 1118 01:44:30,590 --> 01:44:33,410 <鈴木は 100年の計を引き継ぎ> 1119 01:44:33,410 --> 01:44:36,429 <被害住民への補償をしながらも> 1120 01:44:36,429 --> 01:44:39,966 <煙害の完全解決を約束した> 1121 01:44:39,966 --> 01:44:45,255 <その約束は 34年の月日ののちに果たされる> 1122 01:44:45,255 --> 01:44:50,260 <四阪島の一角の この場所は その記念すべき場所である> 1123 01:44:50,260 --> 01:44:52,245 <昭和4年> 1124 01:44:52,245 --> 01:44:54,931 <ここに設置された硫酸工場が> 1125 01:44:54,931 --> 01:44:58,731 <解決の道を前進させた> 1126 01:45:02,739 --> 01:45:07,927 <実験段階の新技術を輸入し 実用化した硫酸工場> 1127 01:45:07,927 --> 01:45:10,430 <硫酸をつくる過程で> 1128 01:45:10,430 --> 01:45:16,030 <亜硫酸ガス濃度を 0.2%まで下げることに成功した> 1129 01:45:17,904 --> 01:45:23,426 <なお残る微量のガスは アンモニアを 利用する中和技術を実現し> 1130 01:45:23,426 --> 01:45:27,597 <この中和工場で 完全に中和した> 1131 01:45:27,597 --> 01:45:32,697 <そうして ついに 亜硫酸ガスの 排出をゼロにしたのである> 1132 01:45:34,437 --> 01:45:38,591 <四阪島から 有毒ガスは出なくなった> 1133 01:45:38,591 --> 01:45:42,091 <昭和14年のことであった> 1134 01:45:46,082 --> 01:45:49,269 <鹿児島県の菱刈鉱山は> 1135 01:45:49,269 --> 01:45:55,069 <現在 日本で稼働する唯一の 大規模金鉱山である> 1136 01:46:00,580 --> 01:46:03,099 <鉄のレールをひくこともなく> 1137 01:46:03,099 --> 01:46:07,399 <トラックや重機が 直接 坑道内に入ってくる> 1138 01:46:08,822 --> 01:46:11,775 <鉱石を拾い集めるショベルカーは> 1139 01:46:11,775 --> 01:46:14,275 <今は リモコン操作だ> 1140 01:46:17,781 --> 01:46:20,433 <究極の機械化が進み> 1141 01:46:20,433 --> 01:46:25,933 <坑道内には 一度に30人ほどしか 入ることがない> 1142 01:46:29,759 --> 01:46:32,445 <広瀬宰平が夢見たのは> 1143 01:46:32,445 --> 01:46:36,545 <こんな鉱山の 姿だったのだろうか?> 1144 01:46:52,599 --> 01:46:55,435 美しいなあ 1145 01:46:55,435 --> 01:46:57,735 はい 1146 01:46:58,838 --> 01:47:02,838 お前のおかげで 別子の山は よみがえった 1147 01:47:03,743 --> 01:47:06,763 私がやった 本当の仕事といえるのは 1148 01:47:06,763 --> 01:47:08,763 これだけですよ 1149 01:47:09,916 --> 01:47:13,716 叔父さんがやられた 仕事の大きさに比べたら 1150 01:47:15,004 --> 01:47:17,804 仕事か… 1151 01:47:19,159 --> 01:47:22,259 お互いにムチャをやったなあ 1152 01:47:23,429 --> 01:47:26,029 本当に 1153 01:47:27,083 --> 01:47:30,253 そうだ 叔父さん 1154 01:47:30,253 --> 01:47:33,156 ふな寿司 おう 1155 01:47:33,156 --> 01:47:35,156 いいな 1156 01:47:36,092 --> 01:47:38,092 では… 1157 01:47:45,602 --> 01:47:50,256 <住友の初代 総理事 広瀬宰平は> 1158 01:47:50,256 --> 01:47:53,743 <大正3年 86歳で> 1159 01:47:53,743 --> 01:47:57,080 <2代目 総理事 伊庭貞剛は> 1160 01:47:57,080 --> 01:48:00,266 <大正15年 79歳で> 1161 01:48:00,266 --> 01:48:04,566 <ともに 大往生を遂げた> 1162 01:48:05,922 --> 01:48:10,426 <広瀬と伊庭が他界してから 1世紀近く> 1163 01:48:10,426 --> 01:48:14,430 <別子銅山も 閉山から43年> 1164 01:48:14,430 --> 01:48:18,835 <それでも 昔を懐かしむ かつての住民が> 1165 01:48:18,835 --> 01:48:22,422 <思い出の銅山に やってくる> 1166 01:48:22,422 --> 01:48:26,426 <この日は ヤマザクラを植えにきた> 1167 01:48:26,426 --> 01:48:31,426 <ヤマザクラは かつての社宅街に たくさん生えていた> 1168 01:48:35,268 --> 01:48:40,768 <銅山の暮らしの記憶は 写真の中に生きている> 1169 01:48:56,256 --> 01:49:00,260 <大阪からやってくる 人気の歌舞伎が見られたという> 1170 01:49:00,260 --> 01:49:02,779 <娯楽場もあった> 1171 01:49:02,779 --> 01:49:07,779 <春には ヤマザクラが たくさん咲いた> 1172 01:49:11,104 --> 01:49:16,576 <江戸時代の 別子銅山の暮らしを描いた絵図> 1173 01:49:16,576 --> 01:49:19,929 <祭りの習俗を描いている> 1174 01:49:19,929 --> 01:49:23,099 <相撲をとる様子> 1175 01:49:23,099 --> 01:49:25,585 <若き男女の語らい> 1176 01:49:25,585 --> 01:49:27,937 <酔い潰れる男> 1177 01:49:27,937 --> 01:49:31,237 <山の活気が伝わってくる> 1178 01:49:32,926 --> 01:49:34,994 <その中に> 1179 01:49:34,994 --> 01:49:39,594 <神輿や山車が 練り歩くさまがある> 1180 01:50:05,425 --> 01:50:08,077 <新居浜の風物詩> 1181 01:50:08,077 --> 01:50:11,097 <毎年10月の太鼓祭り> 1182 01:50:11,097 --> 01:50:16,697 <まちまちの男連中が 意気と華やかさを競う祭りだ> 1183 01:50:19,072 --> 01:50:21,090 <銅山の心意気は> 1184 01:50:21,090 --> 01:50:25,590 <祭りの中に 受け継がれているのかもしれない> 1185 01:50:28,131 --> 01:50:31,250 <別子銅山では 不運にも> 1186 01:50:31,250 --> 01:50:34,437 <命を落とした方々がいる> 1187 01:50:34,437 --> 01:50:36,456 <毎年8月> 1188 01:50:36,456 --> 01:50:39,258 <たくさんの方々が 今も> 1189 01:50:39,258 --> 01:50:44,558 <銅山に眠る先人や 無縁仏らの供養に訪れる> 1190 01:50:46,416 --> 01:50:49,585 <急斜面を登る丘の上に> 1191 01:50:49,585 --> 01:50:52,088 <広瀬宰平が移設した> 1192 01:50:52,088 --> 01:50:55,425 <慰霊の蘭塔場がある> 1193 01:50:55,425 --> 01:51:00,525 (お経) 1194 01:51:04,417 --> 01:51:08,438 <やってくるのは 現代の住友グループ各社の> 1195 01:51:08,438 --> 01:51:10,940 <社員代表者達> 1196 01:51:10,940 --> 01:51:13,926 <こうして 江戸時代からの習わしを> 1197 01:51:13,926 --> 01:51:17,026 <ずっと続けている> 1198 01:51:34,414 --> 01:51:36,766 <別子の山では> 1199 01:51:36,766 --> 01:51:41,571 <今も 植林作業が 継続して行われている> 1200 01:51:41,571 --> 01:51:45,491 <植えたばかりの幼木を パイプで覆って守るのが> 1201 01:51:45,491 --> 01:51:48,291 <今のやり方だ> 1202 01:51:49,762 --> 01:51:52,915 <この植林事業 その母体は> 1203 01:51:52,915 --> 01:51:56,436 <銅製錬に使う木炭や坑木を> 1204 01:51:56,436 --> 01:51:59,936 <調達する部門だった> 1205 01:52:02,675 --> 01:52:05,411 <広瀬宰平による近代化以降> 1206 01:52:05,411 --> 01:52:08,414 <別子銅山からは 非鉄金属> 1207 01:52:08,414 --> 01:52:12,085 <林業と建設 機械製作と化学といった> 1208 01:52:12,085 --> 01:52:14,670 <事業部門が独立> 1209 01:52:14,670 --> 01:52:17,924 <それに伴い 新居浜は 工業都市として> 1210 01:52:17,924 --> 01:52:20,076 <歩み始めていく> 1211 01:52:20,076 --> 01:52:22,595 <そして 事業拡大の流れは> 1212 01:52:22,595 --> 01:52:25,581 <100年を過ぎた今も続き> 1213 01:52:25,581 --> 01:52:30,736 <その後 14まで 部門の数を増やしている> 1214 01:52:30,736 --> 01:52:36,259 <280年あまりの長い歴史を刻んだ 別子銅山> 1215 01:52:36,259 --> 01:52:39,745 <今も あの広瀬宰平の声が> 1216 01:52:39,745 --> 01:52:43,299 <山に こだまする> 1217 01:52:43,299 --> 01:52:46,102 《別子銅山を 改革するということは》 1218 01:52:46,102 --> 01:52:50,402 《日本の未来を 切り開いていくことである!》