1 00:01:28,091 --> 00:01:30,093 (男性)よし。 一番 よく回るやつな。 2 00:01:30,093 --> 00:01:32,095 (子供たち)ありがとう。 (男性)はい。 ありがとよ。➡ 3 00:01:32,095 --> 00:01:34,095 気を付けてな。 4 00:01:36,099 --> 00:01:39,102 <江戸は 夏でございます> 5 00:01:39,102 --> 00:01:44,107 <梅雨の さなかではありますが ここ 数日は 雨もなく➡ 6 00:01:44,107 --> 00:01:50,113 大川は 連日 舟遊びで にぎわっていたようで> 7 00:01:50,113 --> 00:02:05,128 ♬~ 8 00:02:05,128 --> 00:02:09,132 <秋山 小兵衛は この日 思い立って➡ 9 00:02:09,132 --> 00:02:15,138 浅草の外れにある 妻 貞と 友人の墓に参った> 10 00:02:15,138 --> 00:02:27,083 ♬~ 11 00:02:27,083 --> 00:02:30,086 <その 帰りでございます> 12 00:02:30,086 --> 00:02:34,090 ≪(苦しむ声) (小兵衛)うん? 13 00:02:34,090 --> 00:02:38,090 (熊五郎の 苦しむ声) 14 00:03:19,135 --> 00:03:21,137 ≪(気合) 15 00:03:21,137 --> 00:03:32,082 ♬~ 16 00:03:32,082 --> 00:03:45,095 ♬~ 17 00:03:45,095 --> 00:03:47,095 (三冬)やあ! 18 00:03:52,102 --> 00:03:56,106 (大治郎)お見事です。 格段に 腕を上げられました。 19 00:03:56,106 --> 00:03:58,108 (三冬)いえ。 そのように 仰せられると。 20 00:03:58,108 --> 00:04:01,111 (大治郎)いや。 誠に。 21 00:04:01,111 --> 00:04:06,116 (おつぎ)先生。 ご飯の支度 できたよ。 22 00:04:06,116 --> 00:04:09,119 (おつぎ)よいしょ。 いつもの ねぶか汁。 23 00:04:09,119 --> 00:04:14,124 ネギ 多いめだよ。 よいしょ。 (三冬)よい匂いが。 24 00:04:14,124 --> 00:04:16,126 (大治郎)朝飯は? (おなかの鳴る音) 25 00:04:16,126 --> 00:04:19,129 (三冬)根岸の寮から 参りましたので まだ。 26 00:04:19,129 --> 00:04:22,129 (大治郎)よかったら ご一緒に。 27 00:04:25,135 --> 00:04:27,135 (三冬)ごちそうになりました。 28 00:04:29,072 --> 00:04:32,075 (三冬)田沼の父から またしても 私に➡ 29 00:04:32,075 --> 00:04:34,075 縁談が 持ち込まれました。 30 00:04:36,079 --> 00:04:38,081 (大治郎)それは めでたい。 31 00:04:38,081 --> 00:04:42,085 (三冬)父も こたびは 真剣のようです。 32 00:04:42,085 --> 00:04:45,088 (大治郎)それは…。 33 00:04:45,088 --> 00:04:49,092 (三冬)以前 私が 私を 打ち負かすほどの 殿御なら➡ 34 00:04:49,092 --> 00:04:52,095 いつにても 嫁ぐと 申したことを 覚えておいでで? 35 00:04:52,095 --> 00:04:57,100 (大治郎)では 今度の お相手とも 立ち合いを? 36 00:04:57,100 --> 00:05:01,104 (三冬)お相手は 大久保 兵蔵と 申すようです。 37 00:05:01,104 --> 00:05:04,107 (大治郎)大久保殿。 38 00:05:04,107 --> 00:05:08,111 (三冬)大治郎さまは いかが 思われますか? 39 00:05:08,111 --> 00:05:10,113 (大治郎)はっ? 40 00:05:10,113 --> 00:05:13,113 (三冬)立ち合いを するべきか どうか。 41 00:05:16,119 --> 00:05:19,122 (大治郎)さあ。 42 00:05:19,122 --> 00:05:23,126 (三冬)立ち合わぬ方が よいとか 何か。 43 00:05:23,126 --> 00:05:29,126 (大治郎)いや。 それは 何も 私が 言うべきことでは。 44 00:05:31,067 --> 00:05:33,069 (三冬)ああ。 45 00:05:33,069 --> 00:05:46,082 ♬~ 46 00:05:46,082 --> 00:05:48,084 (粂太郎)あっ。 秋山先生。 47 00:05:48,084 --> 00:05:52,088 (小兵衛)おう。 いるかい? (粂太郎)はい。 48 00:05:52,088 --> 00:05:57,093 (小兵衛)三冬殿に 縁談? (大治郎)そのようです。 49 00:05:57,093 --> 00:06:01,097 (小兵衛)ほほう。 そりゃ めでたい。 50 00:06:01,097 --> 00:06:03,099 (大治郎)はあ。 51 00:06:03,099 --> 00:06:08,104 (小兵衛)それで どうして 不景気な面をしている? 52 00:06:08,104 --> 00:06:12,108 (大治郎)不景気ですか? (小兵衛)うん。➡ 53 00:06:12,108 --> 00:06:15,111 いや。 何か お前には めでたくないような➡ 54 00:06:15,111 --> 00:06:20,116 思いでも あるのか? (大治郎)いえ。 そのようなことは。 55 00:06:20,116 --> 00:06:22,118 (小兵衛)では 何だ? 56 00:06:22,118 --> 00:06:27,056 (大治郎)何というわけでは ありません。 57 00:06:27,056 --> 00:06:31,060 (小兵衛)ということは…。 58 00:06:31,060 --> 00:06:34,063 (小兵衛)先年 縁談が 持ち上がったときと 同様➡ 59 00:06:34,063 --> 00:06:38,067 もし 三冬殿が 打ち負かされれば➡ 60 00:06:38,067 --> 00:06:41,070 立ち合いの相手に 嫁ぐということか。 61 00:06:41,070 --> 00:06:46,075 ハハッ。 面白いな。 (大治郎)何がでしょうか? 62 00:06:46,075 --> 00:06:51,080 いや。 その 立ち合いさ。 63 00:06:51,080 --> 00:06:54,083 何だ? その目は。 64 00:06:54,083 --> 00:06:56,085 そういう…。 65 00:06:56,085 --> 00:07:02,091 何かというと そういう 物見高い 面白がりようは そのう…。 66 00:07:02,091 --> 00:07:04,093 何だ? 67 00:07:04,093 --> 00:07:10,099 いささか…。 不謹慎です! 68 00:07:10,099 --> 00:07:12,099 うん? 69 00:07:14,103 --> 00:07:21,103 やあ! やあ! やあー! 70 00:07:23,112 --> 00:07:28,051 三冬殿の縁談のことならば 大治郎から 聞いております。 71 00:07:28,051 --> 00:07:32,055 (生島)お相手は 大和郡山 松平 美濃守さまの➡ 72 00:07:32,055 --> 00:07:35,058 側用人 大久保 兵蔵殿で。 はあ。 73 00:07:35,058 --> 00:07:39,062 (生島)家老の 柳沢 五郎右衛門が 侍女に産ませた お子で➡ 74 00:07:39,062 --> 00:07:45,068 後に 側用人 大久保 孫四郎の 養子に入った 人物でござる。 75 00:07:45,068 --> 00:07:48,071 ほう。 おとしだね。 76 00:07:48,071 --> 00:07:50,073 (生島)美濃守さまが➡ 77 00:07:50,073 --> 00:07:54,077 三冬さまの婿選びは 立ち合いで 決めるといった➡ 78 00:07:54,077 --> 00:07:57,080 昨年の事例を 耳になされたようで➡ 79 00:07:57,080 --> 00:08:00,083 家老のせがれと ぜひにも 立ち合いをと➡ 80 00:08:00,083 --> 00:08:04,087 殿に 直々の お申し入れが。 81 00:08:04,087 --> 00:08:07,090 (田沼)小兵衛。 はっ。 82 00:08:07,090 --> 00:08:11,094 (田沼)美濃守殿には 若い時分に 恩があり➡ 83 00:08:11,094 --> 00:08:15,098 受けざるを得なかった。 はっ? 84 00:08:15,098 --> 00:08:22,105 いや。 三冬に 誰か これはという 相手さえいれば➡ 85 00:08:22,105 --> 00:08:26,109 この縁談 断りようもあったのだ。 86 00:08:26,109 --> 00:08:32,048 三冬殿に そのような お相手は? 87 00:08:32,048 --> 00:08:35,051 (生島)気になる お方が あるようですが➡ 88 00:08:35,051 --> 00:08:38,054 なにぶん そのようなことを 口になさいません。 89 00:08:38,054 --> 00:08:40,056 はあ。 90 00:08:40,056 --> 00:08:44,060 (生島)しかし 大治郎殿は 誰から このことを? 91 00:08:44,060 --> 00:08:47,063 三冬殿から じかに聞いたと。 92 00:08:47,063 --> 00:08:51,067 三冬が わざわざ 知らせに? 93 00:08:51,067 --> 00:08:56,072 さあ。 わざわざか どうかは。 94 00:08:56,072 --> 00:08:59,075 (生島)いえ。 わざわざかと 存じます。 95 00:08:59,075 --> 00:09:02,078 わざわざと 申しますと? (生島)秋山殿。➡ 96 00:09:02,078 --> 00:09:06,082 このこと 大治郎殿は 何と? いや。 めでたいなどと。 97 00:09:06,082 --> 00:09:10,086 (生島)それは 本心からで? はっ? 98 00:09:10,086 --> 00:09:12,086 (生島)ああ。 いや。 99 00:09:14,090 --> 00:09:22,098 それで お呼び出しの訳は? (田沼)うん。 100 00:09:22,098 --> 00:09:25,101 (生島)つまり こたび 三冬さまが➡ 101 00:09:25,101 --> 00:09:29,038 立ち合いに 負けるとなれば その相手は 田沼家の婿殿。➡ 102 00:09:29,038 --> 00:09:33,042 殿としては 大久保 兵蔵なる者が どのような人物か➡ 103 00:09:33,042 --> 00:09:36,045 大いに 気になられるところです。 104 00:09:36,045 --> 00:09:40,049 表立って 調べるとなると 何かと 障りもあろう。 105 00:09:40,049 --> 00:09:43,052 なるほど。 106 00:09:43,052 --> 00:09:47,056 頼めるか? 107 00:09:47,056 --> 00:09:50,056 承知しました。 108 00:09:52,061 --> 00:09:55,064 (三冬)秋山先生。 109 00:09:55,064 --> 00:10:00,069 聞きますれば またしても 立ち合われるとか。 110 00:10:00,069 --> 00:10:04,073 私は 勝ちます。 111 00:10:04,073 --> 00:10:10,073 縁談を 阻むには 勝たねばなりません。 112 00:10:17,086 --> 00:10:20,086 なるほど。 113 00:10:24,093 --> 00:10:30,032 <武蔵屋は かつて 秋山 小兵衛の 道場に通っていた➡ 114 00:10:30,032 --> 00:10:32,034 目明しの弥七が➡ 115 00:10:32,034 --> 00:10:35,037 女房に やらせている 料理屋でございます> 116 00:10:35,037 --> 00:10:40,042 (弥七)大和郡山 松平さまの側用人 大久保 兵蔵ですね。 117 00:10:40,042 --> 00:10:44,046 だがよ 特に 何か 疑いがあるとか➡ 118 00:10:44,046 --> 00:10:47,049 怪しいなどというのでは ないのだ。 119 00:10:47,049 --> 00:10:50,052 (弥七)その ご仁の 人品骨柄をでしょ? 120 00:10:50,052 --> 00:10:53,055 いや。 ろくでもない頼みで すまんな。 121 00:10:53,055 --> 00:10:55,057 なに。 先生のためなら あっしは➡ 122 00:10:55,057 --> 00:10:58,060 盗みだって やらかしやすよ。 123 00:10:58,060 --> 00:11:00,062 (おみね)お待たせしまして。 (弥七)あっ。 先生。 124 00:11:00,062 --> 00:11:02,064 おっ。 うん。 125 00:11:02,064 --> 00:11:08,070 (おみね)どうぞ。 あっ。 来た来た。 これは? 126 00:11:08,070 --> 00:11:10,072 (おみね)タイの おろしなますです。 127 00:11:10,072 --> 00:11:14,076 時節だね。 (おみね)ええ。 128 00:11:14,076 --> 00:11:16,076 頂こう。 129 00:11:22,084 --> 00:11:27,084 うん。 暑気払いには いい。 130 00:11:32,094 --> 00:11:39,094 (おはる)お待たせ。 うーん。 暑いね。 131 00:11:46,108 --> 00:11:48,108 (おはる)うーん。 132 00:11:51,113 --> 00:11:57,119 (おはる)若先生は 三冬さまの縁談に 気もそぞろ。 133 00:11:57,119 --> 00:11:59,121 うん。 134 00:11:59,121 --> 00:12:04,126 (おはる)そして 三冬さまも わざわざ 若先生に知らせた。 135 00:12:04,126 --> 00:12:06,128 うん。 136 00:12:06,128 --> 00:12:08,130 (おはる)そして 勝つとも お言いだ。 137 00:12:08,130 --> 00:12:10,132 言った。 138 00:12:10,132 --> 00:12:15,137 (おはる)これは もう 決まりだよ 先生。 139 00:12:15,137 --> 00:12:18,140 2人とも 口にこそしないが。 フフフ…。 140 00:12:18,140 --> 00:12:20,142 憎からず 思い合ってるよ。 141 00:12:20,142 --> 00:12:22,144 だろう? うん。 142 00:12:22,144 --> 00:12:25,147 いや。 俺も 今日 そのことに 気付いた。 143 00:12:25,147 --> 00:12:29,085 あれ? 何だい? 144 00:12:29,085 --> 00:12:31,087 気付いたんなら どうして 田沼さまに➡ 145 00:12:31,087 --> 00:12:33,089 その縁談を やめるように 言わないのだね? 146 00:12:33,089 --> 00:12:37,093 うん。 もし 三冬さまが負けたら➡ 147 00:12:37,093 --> 00:12:40,096 若先生に 気持ちを残したまま 他の人の 嫁だよ。 148 00:12:40,096 --> 00:12:43,099 若先生だって 泣く泣く 諦めることになるんだよ。 149 00:12:43,099 --> 00:12:47,103 それでも いいのかに? いや。 いいも 何も…。 150 00:12:47,103 --> 00:12:50,106 子を思う 親なら 何とか してやりたいと 思うはずだろ。 151 00:12:50,106 --> 00:12:54,110 何とかってなぁ。 何だね? 152 00:12:54,110 --> 00:12:59,115 いや。 田沼さまでも 断れねえ 縁談を どうして わしごときが。 153 00:12:59,115 --> 00:13:02,118 じゃあ 2人の間を 裂くのだね。 いや。 何も。 154 00:13:02,118 --> 00:13:06,122 ハァー。 見損なった。 おい。 おはる。 155 00:13:06,122 --> 00:13:09,125 先生は 薄情者だ。 156 00:13:09,125 --> 00:13:16,132 ♬~ 157 00:13:16,132 --> 00:13:21,137 (宗哲)ハハハ…。 薄情者とはな。 158 00:13:21,137 --> 00:13:25,141 いや。 だがな 大治郎なり 三冬殿が こう…。 159 00:13:25,141 --> 00:13:30,079 胸の内を はきと口にしておれば 手の打ちようもあるんだ。 160 00:13:30,079 --> 00:13:36,085 (宗哲)お前は ともかく 男と女が 思いを口にするのは➡ 161 00:13:36,085 --> 00:13:39,088 なかなか 難しいことさ。➡ 162 00:13:39,088 --> 00:13:43,092 年を取ると ことに…。 ああ? 163 00:13:43,092 --> 00:13:48,097 (宗哲)うん? あっ いや。 とかく そういうものらしい。 164 00:13:48,097 --> 00:13:50,099 ふん。 165 00:13:50,099 --> 00:13:55,104 (宗哲)おい。 飯は どうする? 家に帰って 食うか? それとも…。 166 00:13:55,104 --> 00:13:57,106 いや。 こっちだ。 167 00:13:57,106 --> 00:14:00,109 今夜は 一晩 うちを空けるつもりで 出てきた。 168 00:14:00,109 --> 00:14:02,111 (宗哲)ああ。 実はな。 169 00:14:02,111 --> 00:14:06,115 近くの横網町に 近ごろ 評判の 居酒屋がある。 170 00:14:06,115 --> 00:14:08,117 ほう。 171 00:14:08,117 --> 00:14:12,121 偏屈な親父らしいが 味は いいそうだ。 172 00:14:12,121 --> 00:14:18,127 名前も 変わっていて 鬼熊酒屋。 鬼熊か。 173 00:14:18,127 --> 00:14:20,129 ああ。 行くか? あっ。 174 00:14:20,129 --> 00:14:23,132 あっ。 小兵衛。 悪い。 あの麦 取ってくれ。 175 00:14:23,132 --> 00:14:25,134 あいよ。 176 00:14:25,134 --> 00:14:27,069 ああ。 すまん。 おっ。 177 00:14:27,069 --> 00:14:29,071 ≪(亀助)ごめんなさいよ。 (宗哲)おう。 178 00:14:29,071 --> 00:14:31,073 (亀助)ああ 何だい? 客かい。 (宗哲)おう。➡ 179 00:14:31,073 --> 00:14:34,076 俺の 古い なじみで 秋山 小兵衛だ。 180 00:14:34,076 --> 00:14:39,081 (亀助)ああ ああ ああ ああ。 聞いてますよ。 おとよから。 181 00:14:39,081 --> 00:14:45,087 ほら。 お前も ここで会った 裏店の あの おとよさんの父親だ。 182 00:14:45,087 --> 00:14:47,089 ああ。 (亀助)ええ。 183 00:14:47,089 --> 00:14:49,091 (亀助)亀助と申します。 184 00:14:49,091 --> 00:14:52,094 ああ。 亀さんね。 (亀助)へい。 185 00:14:52,094 --> 00:14:54,096 で 何だい? (亀助)いやいや。 実はね➡ 186 00:14:54,096 --> 00:14:57,099 ゆうべ うちに帰って 飯になったんですよ。➡ 187 00:14:57,099 --> 00:15:00,102 そしたら どうしたと思います? (宗哲)うん? 188 00:15:00,102 --> 00:15:04,106 (亀助)いや。 あっしの お膳にも おとよにも おせいの お膳にも➡ 189 00:15:04,106 --> 00:15:07,109 尾頭付きの イワシが 2匹ずつ。➡ 190 00:15:07,109 --> 00:15:09,111 しかも 俺には おちょうしが 1本。 191 00:15:09,111 --> 00:15:12,114 (宗哲)豪勢じゃないか。 (亀助)ええ。➡ 192 00:15:12,114 --> 00:15:14,116 それで これ 何だろうと 思ったんですけど➡ 193 00:15:14,116 --> 00:15:16,118 おとよの野郎 何にも 言わねえんでね。➡ 194 00:15:16,118 --> 00:15:18,120 ただ めでてえからって。 (宗哲)フッ。 195 00:15:18,120 --> 00:15:21,123 (亀助)で おせいに 何事かって 聞いたんですよ。 196 00:15:21,123 --> 00:15:24,126 (宗哲)おとよさんの娘だ。 ああ。 197 00:15:24,126 --> 00:15:27,063 いや。 おせいのやつね ただ 顔 赤らめて➡ 198 00:15:27,063 --> 00:15:29,065 もごもご するばかりで。 199 00:15:29,065 --> 00:15:35,071 はっはー。 こりゃ おかしいなって ぴんときたんですよ。 ああ。 200 00:15:35,071 --> 00:15:37,073 おせいのやつ とうとう➡ 201 00:15:37,073 --> 00:15:41,077 女のしるしが あったに 違えねえってね。 202 00:15:41,077 --> 00:15:43,077 (宗哲)ああ。 (亀助)うん。 203 00:15:45,081 --> 00:15:48,084 (おとよ)あら。 おとっつぁん。 (亀助)おう。 204 00:15:48,084 --> 00:15:51,087 (おとよ)ああ。 秋山さまも。 やあ。 205 00:15:51,087 --> 00:15:54,090 (おとよ)先生。 裁縫 教えてる 女の子のうちから➡ 206 00:15:54,090 --> 00:15:57,093 頂き物が ありましてね。 ササゲと 南蛮きび。 207 00:15:57,093 --> 00:15:59,095 (宗哲)ああ。 いつも いつも すまん。 おい。 小兵衛。 208 00:15:59,095 --> 00:16:01,097 おう。 (亀助)へえー。➡ 209 00:16:01,097 --> 00:16:03,099 いつも 持ってくんのかい? (おとよ)そうよ。 210 00:16:03,099 --> 00:16:06,102 (亀助)ふーん。 (宗哲)しかし あれだ おとよさん。 211 00:16:06,102 --> 00:16:09,105 おせいちゃんに 女のしるしが あって➡ 212 00:16:09,105 --> 00:16:11,105 めでたいことだ。 213 00:16:13,109 --> 00:16:15,111 (おとよ)おとっつぁん。 (亀助)うん? 214 00:16:15,111 --> 00:16:18,114 (おとよ)べらべらと 隣近所に 面白おかしく 言い触らしてんね。 215 00:16:18,114 --> 00:16:20,116 (亀助)何だよ? 面白おかしくって。 216 00:16:20,116 --> 00:16:22,118 (おとよ)何も 先生に お話しすることじゃないだろ。 217 00:16:22,118 --> 00:16:24,120 (亀助)いや。 俺はな。 (おとよ)何さ? 218 00:16:24,120 --> 00:16:27,056 (亀助)いや。 お前が 亭主に 死なれた後よ➡ 219 00:16:27,056 --> 00:16:29,058 折り合いの悪い 姑に 追われるように➡ 220 00:16:29,058 --> 00:16:31,060 嫁ぎ先を 出てだよ➡ 221 00:16:31,060 --> 00:16:35,064 おせい ともども お前 長屋に移り住んで 3年だ。➡ 222 00:16:35,064 --> 00:16:37,064 えっ? 俺の孫が…。 223 00:16:39,068 --> 00:16:41,070 (男性)あっ。 あっ…。 224 00:16:41,070 --> 00:16:44,073 (熊五郎)てめえなんかに 飲ますものは➡ 225 00:16:44,073 --> 00:16:47,076 水一滴 ありゃしねえや! (男性)チクショー!➡ 226 00:16:47,076 --> 00:16:49,076 何だい! くそじじい! 227 00:16:51,080 --> 00:16:54,080 (男性)あっ。 あっ…。 228 00:17:02,091 --> 00:17:04,091 (男性)あっ。 229 00:17:08,097 --> 00:17:11,097 (熊五郎の せき) 230 00:17:17,106 --> 00:17:20,109 (おしん)あんた 煮豆は まだかい。 (文吉)煮豆は ねえよ。 231 00:17:20,109 --> 00:17:24,113 きのこ煮。 (文吉)あいよ。 232 00:17:24,113 --> 00:17:27,049 (おしん)はい どうぞ。➡ 233 00:17:27,049 --> 00:17:30,052 すまないね。 奥の お客さんに ひじき。 234 00:17:30,052 --> 00:17:33,055 (男性)あいよ。 (おしん)いらっしゃい。➡ 235 00:17:33,055 --> 00:17:35,057 すんません。 相席でも いいですか? 236 00:17:35,057 --> 00:17:37,059 ああ。 237 00:17:37,059 --> 00:17:39,061 (男性)煮豆。 煮豆。 (おしん)煮豆は もう➡ 238 00:17:39,061 --> 00:17:41,063 終わっちまったんだよ。 あっ。 すまないね。 239 00:17:41,063 --> 00:17:44,063 (おしん)あいよ。 いつも すまないね。 240 00:17:47,069 --> 00:17:51,069 (熊五郎)酒かい? うん。 241 00:17:58,080 --> 00:18:03,085 ≪(男性)うるめは まだかい? ≪(おしん)今 やってるよ。 242 00:18:03,085 --> 00:18:05,087 (熊五郎)おい。 文吉! (文吉)へい。 243 00:18:05,087 --> 00:18:07,089 (熊五郎)何 ぐずぐずしてやがんだ?➡ 244 00:18:07,089 --> 00:18:09,091 てめえみてえに もったいぶって 包丁 使ってっと➡ 245 00:18:09,091 --> 00:18:12,094 夜が明けちまうぞ! 246 00:18:12,094 --> 00:18:15,097 (熊五郎)ここの客どもの 食い物 こさえんのに➡ 247 00:18:15,097 --> 00:18:17,099 汗かくことは ねえんだ。 248 00:18:17,099 --> 00:18:20,099 何でもいいから さっさと 出しちめえ。 249 00:18:29,044 --> 00:18:32,047 (権太)初めてで? おう。 250 00:18:32,047 --> 00:18:34,049 (権太)驚いたろ。 251 00:18:34,049 --> 00:18:38,053 それでも ここじゃなきゃ 嫌だっていう野郎が 多くてよ。➡ 252 00:18:38,053 --> 00:18:41,056 まっ。 俺も そうだけど。 ほう。 253 00:18:41,056 --> 00:18:45,060 何せ 酒がいい。 食べ物も うまい。 254 00:18:45,060 --> 00:18:50,065 それでいて 勘定が安い。 255 00:18:50,065 --> 00:18:54,069 日に一度は 鬼熊のとっつぁんの 毒口 聞かねえと➡ 256 00:18:54,069 --> 00:18:57,072 寝れねえってやつまで いるんだ。➡ 257 00:18:57,072 --> 00:19:00,072 ヘヘッ。 なあ? (男性)ハハハ。 俺も そうだよ。 258 00:19:03,078 --> 00:19:05,080 (男性)おい! 俺の酒 取るんじゃねえよ。➡ 259 00:19:05,080 --> 00:19:07,082 この野郎! おい。 260 00:19:07,082 --> 00:19:20,095 ♬~ 261 00:19:20,095 --> 00:19:24,099 (おしん)毎度! 悪いね。 ちょっと 通らしてくれよ。➡ 262 00:19:24,099 --> 00:19:26,101 いらっしゃい! (男性)おう。 263 00:19:26,101 --> 00:19:29,038 (熊五郎)酒かい。 (男性)ああ。➡ 264 00:19:29,038 --> 00:19:32,041 ここに来て 他に 何があるんでぇ? 265 00:19:32,041 --> 00:19:37,046 (熊五郎)つべこべ 抜かすな。 飯だけ食う 客もいるんだ。 266 00:19:37,046 --> 00:19:39,046 (男性)何だと! 267 00:19:41,050 --> 00:19:43,052 (男性)何でぇ? じじい。 (男性)やめときなって。 268 00:19:43,052 --> 00:19:46,055 (権太)長生きしたかったら 帰れ。 ほら! 269 00:19:46,055 --> 00:19:48,057 (男性)バカ野郎! (男性)やめとけって。 270 00:19:48,057 --> 00:19:50,059 (男性)早く 帰れ。 (男性)二度と来るか!➡ 271 00:19:50,059 --> 00:19:53,062 てめえらも うるせえ! くそ! 272 00:19:53,062 --> 00:19:56,065 (笑い声) 273 00:19:56,065 --> 00:20:01,070 (熊五郎)何だ? てめえら。 ここは 見せ物小屋じゃねえんだ。 274 00:20:01,070 --> 00:20:06,075 下 向いて おとなしく飲んでろ。 (男性)はいはい。 275 00:20:06,075 --> 00:20:09,078 (権太)今夜は 出刃包丁 持ち出さなかっただけ➡ 276 00:20:09,078 --> 00:20:12,078 おとなしいよ。 ハハハ! なあ? (男性)ああ。 277 00:20:26,095 --> 00:20:28,095 おう。 278 00:20:38,040 --> 00:20:40,042 徳次郎も 一緒か? (徳次郎)へえ。➡ 279 00:20:40,042 --> 00:20:42,044 ご無沙汰しております。 (弥七)例の男のことを➡ 280 00:20:42,044 --> 00:20:47,044 徳次郎と 手分けして。 あっ。 そうかい。 まあ。 281 00:20:49,051 --> 00:20:53,051 (おはる)私は 裏山に 草 摘みに行ってくるよ。 282 00:20:55,057 --> 00:20:57,059 (弥七)ケンカでも? うん? ああ。 いや。 283 00:20:57,059 --> 00:20:59,061 あっ。 それで? 284 00:20:59,061 --> 00:21:02,064 (弥七)あっ。 大久保 兵蔵ですね。 うん。 285 00:21:02,064 --> 00:21:05,067 (弥七)確かに 大和郡山 松平家の側用人でした。 286 00:21:05,067 --> 00:21:07,069 ほう。 (弥七)ですが 本人は➡ 287 00:21:07,069 --> 00:21:10,072 お務めのことより 剣術に 入れ込んでおりやして➡ 288 00:21:10,072 --> 00:21:13,075 2~3年 諸国を歩いて 剣の修行をしたようでございます。 289 00:21:13,075 --> 00:21:16,078 ふーん。 (弥七)側用人とは いいながら➡ 290 00:21:16,078 --> 00:21:18,080 ご家老の おとしだねってことも ありやして➡ 291 00:21:18,080 --> 00:21:22,084 込み入った務めは あんまり。 わがまま勝手か? 292 00:21:22,084 --> 00:21:25,087 (弥七)いや。 それが すこぶるつきの いい男で。 なあ? 293 00:21:25,087 --> 00:21:27,089 (徳次郎)へえ。 屋敷の奉公人たちにも➡ 294 00:21:27,089 --> 00:21:29,091 好かれております。 (弥七)その上 足軽連中相手に➡ 295 00:21:29,091 --> 00:21:32,094 剣の稽古まで つけてやってるようで。 296 00:21:32,094 --> 00:21:35,097 好人物のようだな。 (弥七)へえ。 297 00:21:35,097 --> 00:21:38,100 で こっちの方は? 298 00:21:38,100 --> 00:21:41,103 流派は 一刀流。 ご家中の 剣術の立ち合いでは➡ 299 00:21:41,103 --> 00:21:43,105 いまだに 負けたことは ねえようです。 300 00:21:43,105 --> 00:21:47,109 (徳次郎)かなりの 使い手だという噂で。 301 00:21:47,109 --> 00:21:50,112 うーん。 302 00:21:50,112 --> 00:21:52,114 (弥七)何か まずいこっても? 303 00:21:52,114 --> 00:21:56,118 うん? いや。 304 00:21:56,118 --> 00:22:00,118 まずいというわけでは ないんだが。 305 00:22:03,125 --> 00:22:05,127 (男性)気を付けろ。 この野郎! こぼれんじゃねえか。 306 00:22:05,127 --> 00:22:09,131 (男性)あっ。 すいません。 どうも すいません。 307 00:22:09,131 --> 00:22:11,133 (おしん)へい。 お待ち。 308 00:22:11,133 --> 00:22:14,136 (亀助)おしんちゃん。 近ごろ 色っぽくなっちゃって。 309 00:22:14,136 --> 00:22:17,139 (おしん)何 言ってんだい? からかわないでおくれよ。 310 00:22:17,139 --> 00:22:23,145 (男性)どいつが 噂の親父だ? (男性)隠れてやがるか? 311 00:22:23,145 --> 00:22:29,084 (亀助)おっ。 どうも。 ほれ。 宗哲先生んとこで。 312 00:22:29,084 --> 00:22:32,087 ああっ。 亀さんか。 (亀助)ええ。 亀です。 亀。➡ 313 00:22:32,087 --> 00:22:34,089 ハハハ。 ああ。 さあ さあ さあ。 さあ。 どうぞ どうぞ。 314 00:22:34,089 --> 00:22:36,091 おうおう。 いやいや。 (亀助)さあ さあ さあ。➡ 315 00:22:36,091 --> 00:22:39,094 ああー。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 ええ。 316 00:22:39,094 --> 00:22:41,096 いやいや。 あっしは 自分の…。 そうか? 317 00:22:41,096 --> 00:22:43,098 (亀助)バカに 静かでしょ。 えっ? 318 00:22:43,098 --> 00:22:47,102 (亀助)ねえ。 鬼熊のやつね 今日はね 奥に 引っ込んで➡ 319 00:22:47,102 --> 00:22:50,105 おとなしくしてるんですよ。 (男性)おい! 320 00:22:50,105 --> 00:22:54,109 (男性)客に ケンカを売って 酒を売る 親父は どこだ? 321 00:22:54,109 --> 00:22:58,113 (男性)客商売の身分も わきまえず 威張り返って 酒を売るとは➡ 322 00:22:58,113 --> 00:23:04,113 誠に けしからん! (男性)因業親父の 面が見てえ! 323 00:23:07,122 --> 00:23:10,125 (文吉)親父は あいにく 奥で 横になってまして。 324 00:23:10,125 --> 00:23:12,127 (男性)仮病だろ。 325 00:23:12,127 --> 00:23:15,127 (男性)われらに 恐れをなして 出てこぬと みえる。 326 00:23:18,133 --> 00:23:22,137 (男性)くそ。 面白くもない。 勘定は 払わんぞ。 327 00:23:22,137 --> 00:23:24,139 (文吉)へい。 ようございますとも。 328 00:23:24,139 --> 00:23:28,076 いや。 それは なるまいよ。 329 00:23:28,076 --> 00:23:31,079 (男性)おい。 じじい。 何か 言ったか? 330 00:23:31,079 --> 00:23:33,079 ≪(熊五郎)待ちやがれ! 331 00:23:37,085 --> 00:23:40,088 (文吉)おとっつぁん。 出てきちゃいけねえ。 332 00:23:40,088 --> 00:23:44,092 (熊五郎)文吉。 てめえ 勘定は ようござんすって 何てこった。➡ 333 00:23:44,092 --> 00:23:48,096 この 大バカ野郎! (男性)とうとう 出たな 親父。 334 00:23:48,096 --> 00:23:50,098 (熊五郎)何? (文吉)いや…。 335 00:23:50,098 --> 00:23:52,100 (男性)どけ! (男性たち)あっ。 336 00:23:52,100 --> 00:23:56,100 (おしん)あっ。 あんた! あんた! (熊五郎)てめえら。 337 00:23:58,106 --> 00:24:00,108 どけ! 338 00:24:00,108 --> 00:24:03,111 酒は 静かに 飲みたいのさ。 339 00:24:03,111 --> 00:24:05,113 (熊五郎)こいつら 追い出してからだ。 340 00:24:05,113 --> 00:24:08,116 (男性)面白い。 ううっ。 341 00:24:08,116 --> 00:24:11,119 誰も 外に出るな。 342 00:24:11,119 --> 00:24:21,129 ♬~ 343 00:24:21,129 --> 00:24:27,069 熊五郎に代わり この じじいが 己らの 相手をしてやろう。 344 00:24:27,069 --> 00:24:42,084 ♬~ 345 00:24:42,084 --> 00:24:49,091 ♬~ 346 00:24:49,091 --> 00:24:51,093 (男性たち)おいおい。 どうしたんだ? 何だい? 347 00:24:51,093 --> 00:24:56,098 (亀助)ご隠居! 鬼熊が 血を吐いた。 どうしよう? 348 00:24:56,098 --> 00:24:58,100 宗哲 呼んで! (亀助)へい! 349 00:24:58,100 --> 00:25:01,100 (男性たち)親父…。 350 00:25:14,116 --> 00:25:19,121 (文吉)おとっつぁんは? (おしん)寝た。 351 00:25:19,121 --> 00:25:21,123 (宗哲)娘さんに 押さえ付けてもらって➡ 352 00:25:21,123 --> 00:25:25,127 やっとのことで 薬を飲ませた。 おう。 353 00:25:25,127 --> 00:25:30,132 (おしん)先生。 ご隠居さん。 今日は 色々と。 354 00:25:30,132 --> 00:25:32,134 (文吉)ありがとう存じました。 (宗哲)明日にでも➡ 355 00:25:32,134 --> 00:25:38,134 薬 取りに おいで。 (おしん)あっ。 はい。 ああ。 356 00:25:43,145 --> 00:25:48,150 どうなんだい? 鬼熊は。 357 00:25:48,150 --> 00:25:52,150 (宗哲)死病だな。 358 00:25:55,157 --> 00:26:07,102 ♬~ 359 00:26:07,102 --> 00:26:14,109 ♬~ 360 00:26:14,109 --> 00:26:18,113 (文吉)おとっつぁん 痩せたな。 361 00:26:18,113 --> 00:26:27,122 ♬~ 362 00:26:27,122 --> 00:26:30,125 (粂太郎)あっ! 痛っ。 あっ。➡ 363 00:26:30,125 --> 00:26:33,128 ああ。 もう。 364 00:26:33,128 --> 00:26:37,132 (三冬)粂太郎。 そのざまは 何か!? (粂太郎)はい。 365 00:26:37,132 --> 00:26:43,138 (三冬)立て。 攻めるのじゃ。 (粂太郎)はい。 366 00:26:43,138 --> 00:26:46,138 かかってまいれ。 367 00:26:49,144 --> 00:26:54,144 (粂太郎)やあー! ううー! 368 00:26:56,151 --> 00:26:59,087 (粂太郎)うわっ。 あ痛っ。➡ 369 00:26:59,087 --> 00:27:01,089 参りました。 (三冬)まだまだ! 370 00:27:01,089 --> 00:27:04,092 (粂太郎)えっ!? おおっ。 よいところへ。 371 00:27:04,092 --> 00:27:08,096 (三冬)秋山先生。 出稽古ですかな? 372 00:27:08,096 --> 00:27:11,099 (三冬)はい。 来るべき 立ち合いに 備えておかねばなりません。 373 00:27:11,099 --> 00:27:14,102 なるほど。 大治郎は? 374 00:27:14,102 --> 00:27:17,105 (粂太郎)朝から 牛堀道場へ 参られました。 375 00:27:17,105 --> 00:27:21,109 おう。 九万之助のとこか。 376 00:27:21,109 --> 00:27:25,113 秋山先生。 ぜひ お手合わせを。 377 00:27:25,113 --> 00:27:30,118 しかし せがれの道場を 勝手に 使うというのは。 378 00:27:30,118 --> 00:27:34,122 (粂太郎)私は 言いませんので ぜひ。 379 00:27:34,122 --> 00:27:39,122 何とぞ。 (粂太郎)何とぞ! 380 00:27:46,134 --> 00:27:56,144 ♬~ 381 00:27:56,144 --> 00:28:03,084 それは…。 お相手は 確か 一刀流。 382 00:28:03,084 --> 00:28:06,087 お心遣い。 383 00:28:06,087 --> 00:28:17,098 ♬~ 384 00:28:17,098 --> 00:28:35,116 ♬~ 385 00:28:35,116 --> 00:28:37,116 (三冬)やあ! 386 00:28:47,128 --> 00:28:49,128 参りました。 387 00:28:51,132 --> 00:28:55,132 いや。 だいぶ 腕を上げられたようだ。 388 00:28:57,072 --> 00:29:00,075 (三冬)私は 勝てましょうか? 389 00:29:00,075 --> 00:29:08,083 さあ。 相手の腕が 分からぬでは 何とも。 390 00:29:08,083 --> 00:29:12,083 あっ。 いえ。 私は 勝ちます。 391 00:30:14,082 --> 00:30:17,082 (熊五郎)うっ。 ううっ。 392 00:30:20,088 --> 00:30:23,091 妙なところで 会ったのう。 393 00:30:23,091 --> 00:30:26,094 (熊五郎)な… 何でえ? てめえは。 394 00:30:26,094 --> 00:30:30,098 わしの顔を 忘れたのかえ? 395 00:30:30,098 --> 00:30:35,103 ここは 酒を飲ませる 場所じゃねえや。 396 00:30:35,103 --> 00:30:41,103 さようさ。 薬を飲む 場所でもない。 397 00:30:45,113 --> 00:30:49,117 とっつぁん。 何も こんなところまで 出てきて➡ 398 00:30:49,117 --> 00:30:53,121 薬養生することは あるまい。 399 00:30:53,121 --> 00:30:59,127 そういうときは 本所亀沢町の 小川 宗哲のところに 転がり込め。 400 00:30:59,127 --> 00:31:02,130 わしが 口を利くから 毎日でも 行くがいい。 401 00:31:02,130 --> 00:31:05,133 (熊五郎)余計なこった。 薬を飲むために➡ 402 00:31:05,133 --> 00:31:09,137 苦しみを 思いっ切り 吐き出すために➡ 403 00:31:09,137 --> 00:31:12,140 店を 出ているんだろう? 404 00:31:12,140 --> 00:31:19,147 この前も 浅茅が原で のたうつ とっつぁんを見たよ。 405 00:31:19,147 --> 00:31:25,153 よくよくの 意地っ張りと みえる。 フフフ。 406 00:31:25,153 --> 00:31:29,157 お前は 己が ひどく 病んでいることを➡ 407 00:31:29,157 --> 00:31:32,160 娘夫婦に 知られたくないんだろう。 408 00:31:32,160 --> 00:31:34,162 うるせえ。 409 00:31:34,162 --> 00:31:38,166 見たところ お前は これまで 何事にも➡ 410 00:31:38,166 --> 00:31:44,172 他人へ 弱みを見せずに 生きてきたようだ。 411 00:31:44,172 --> 00:31:49,177 少しの弱み わずかな隙を見せても 他人に 乗じられる。 412 00:31:49,177 --> 00:31:52,180 いや。 世の中に 甘く 見られるというので➡ 413 00:31:52,180 --> 00:31:57,118 お前は どうやら 若いころから 精いっぱい 肩肘を張り➡ 414 00:31:57,118 --> 00:31:59,120 他人を たたきつけ➡ 415 00:31:59,120 --> 00:32:05,126 蹴倒して 今日まで 生きてきたんじゃないのかな? 416 00:32:05,126 --> 00:32:10,126 いやぁ。 見上げたものだよ。 417 00:32:15,136 --> 00:32:21,136 だがよ 身内にまで 肩肘を張ることは あるまい。 418 00:32:24,145 --> 00:32:28,149 何を 恐れてる? 419 00:32:28,149 --> 00:32:33,154 恐れ? うん。 420 00:32:33,154 --> 00:32:45,166 ♬~ 421 00:32:45,166 --> 00:32:54,175 俺は これまで 娘夫婦にさえ 優しい言葉 掛けたことがねえ。 422 00:32:54,175 --> 00:32:57,112 甘やかしたこともねえ。 423 00:32:57,112 --> 00:33:01,116 何でもかでも 俺の言い分を通し➡ 424 00:33:01,116 --> 00:33:05,120 一言の口答えも 許しゃしなかった。 425 00:33:05,120 --> 00:33:08,123 うん。 426 00:33:08,123 --> 00:33:16,131 俺の体は もう 長くはねえ。 そうと知ったら➡ 427 00:33:16,131 --> 00:33:21,136 娘夫婦が どう出るか 知れたもんじゃねえや。 428 00:33:21,136 --> 00:33:24,139 わしには そんな夫婦には 見えないがね。 429 00:33:24,139 --> 00:33:28,143 何が 分かる? いや。 お前を 憎けりゃ➡ 430 00:33:28,143 --> 00:33:32,147 とうの昔に おん出ているさ。 431 00:33:32,147 --> 00:33:37,152 人というものは いざとなったら➡ 432 00:33:37,152 --> 00:33:40,152 どう出るか 分かりゃしねえや! 433 00:33:42,157 --> 00:33:47,157 そのうち また 酒を飲みに行くよ。 434 00:33:57,105 --> 00:34:02,110 (おはる)先生。 いったい どうしたって いうんですよ? 435 00:34:02,110 --> 00:34:08,116 うん? 体の具合でも 悪いとか? 436 00:34:08,116 --> 00:34:14,122 いや。 そうじゃない。 そうじゃないんだよ。 437 00:34:14,122 --> 00:34:19,122 ひょっとして。 うん? 438 00:34:22,130 --> 00:34:27,068 この前 若先生と 三冬さまのことで 先生のこと➡ 439 00:34:27,068 --> 00:34:30,071 薄情者って 言ったの 根に持ってるのかね? 440 00:34:30,071 --> 00:34:34,075 なぁに。 こっちのことだ。 どっち? 441 00:34:34,075 --> 00:34:38,079 年のことさ。 えっ? 442 00:34:38,079 --> 00:34:43,084 わしも もう 若くはない。 だから 若い お前には➡ 443 00:34:43,084 --> 00:34:47,088 思いも及ばぬ 屈託というものが あるのさ。 444 00:34:47,088 --> 00:34:50,091 屈託かね? 445 00:34:50,091 --> 00:34:54,095 年寄りだけが 分かる 心持ちのことさ。 446 00:34:54,095 --> 00:34:59,100 フフフ。 やだよ。 先生は 年寄りなんかじゃないよ。 447 00:34:59,100 --> 00:35:07,108 この前だって。 フフフ。 ああ。 あら。 やだよ。 448 00:35:07,108 --> 00:35:11,112 わしは 幸せ者だ。 えっ? 449 00:35:11,112 --> 00:35:17,118 あの親父に 比べたなら まだまだ 大丈夫。 450 00:35:17,118 --> 00:35:20,121 若い お前を かわいがることもできる。 451 00:35:20,121 --> 00:35:22,123 誰のことかね? 452 00:35:22,123 --> 00:35:28,062 地獄の釜の湯気が 当たりかかっている 親父のことよ。 453 00:35:28,062 --> 00:35:35,062 あの とっつぁんに 比べたら。 先生。 454 00:35:37,071 --> 00:35:44,078 今夜は 久しぶりで お前と 二人っきりで 酒を飲もう。 455 00:35:44,078 --> 00:35:49,083 笑った。 先生が 3日ぶりに 笑った。 456 00:35:49,083 --> 00:35:58,092 (笑い声) 457 00:35:58,092 --> 00:36:00,094 (男性)うるせえな。 (おしん)毎度。 458 00:36:00,094 --> 00:36:03,097 (権太)だから やめろって 言ったじゃねえか。 459 00:36:03,097 --> 00:36:06,100 (男性)いかさま ばくちに やられたんだよ。➡ 460 00:36:06,100 --> 00:36:11,105 何 見てんだ? この野郎。 ああ。 チキショーめ。 461 00:36:11,105 --> 00:36:16,110 (熊五郎)静かにしやがれ! (男性)何を! 462 00:36:16,110 --> 00:36:18,112 (一同)おおっ。 (熊五郎)てめえらみたいな➡ 463 00:36:18,112 --> 00:36:22,116 やくざ者に 安い酒 飲ませてやってる➡ 464 00:36:22,116 --> 00:36:26,120 恩を忘れたのか?➡ 465 00:36:26,120 --> 00:36:31,059 つまらねえことを ぐだぐだ 並べてると➡ 466 00:36:31,059 --> 00:36:35,063 その鼻ん中に 出刃 突っ込んで➡ 467 00:36:35,063 --> 00:36:41,069 鼻くそぐるみ その鼻 えぐりだして やろうかい!? 468 00:36:41,069 --> 00:36:44,069 (権太)し… 静かにします。 469 00:36:47,075 --> 00:36:50,075 (熊五郎)分かったんなら いいよ。 470 00:36:56,084 --> 00:36:59,087 (おしん)いらっしゃい。 こちらへ。 471 00:36:59,087 --> 00:37:02,090 (藤次)久しいね。 472 00:37:02,090 --> 00:37:17,105 ♬~ 473 00:37:17,105 --> 00:37:30,051 ♬~ 474 00:37:30,051 --> 00:37:34,051 (藤次)お前ら 飲んでろ。 (男性たち)へい。 475 00:37:36,057 --> 00:37:38,057 (おしん)こちらへ。 476 00:37:42,063 --> 00:37:49,070 (藤次)繁蔵兄ぃ やったの お前さんだろ? いや。 なに。➡ 477 00:37:49,070 --> 00:37:53,074 兄ぃの敵討ちに来たわけじゃ ねえよ。 熊五郎さん。➡ 478 00:37:53,074 --> 00:38:01,082 あれは もう 昔のことだ。 (熊五郎)何しに来やがった? 479 00:38:01,082 --> 00:38:09,090 (藤次)ヘヘッ。 2~3年前から 向こう岸で 稼業 始めて。➡ 480 00:38:09,090 --> 00:38:12,093 両国で。 いや。 そしたら➡ 481 00:38:12,093 --> 00:38:17,098 本所で 面白え 飲み屋があるって 耳に入るじゃねえか。➡ 482 00:38:17,098 --> 00:38:21,102 店の名前は 鬼熊酒屋。➡ 483 00:38:21,102 --> 00:38:26,107 若え者に 偏屈親父の 人相 風体 聞いたら。➡ 484 00:38:26,107 --> 00:38:34,048 ヘヘヘ。 昔のまんま 熊五郎さんと そっくり。➡ 485 00:38:34,048 --> 00:38:40,048 フッ。 それで 来てみたんだよ。 486 00:38:42,056 --> 00:38:48,056 (藤次)店は えらく 繁盛してるってねぇ。 487 00:38:50,064 --> 00:38:56,070 (藤次)実は 渡世の義理で 50両ばかり 入り用でね。➡ 488 00:38:56,070 --> 00:39:01,075 何なら あの店 そっくり 譲ってくれたっていいんだ。➡ 489 00:39:01,075 --> 00:39:07,081 何せ ばくち稼業だけじゃ 浮き沈みがあって いけねえや。 490 00:39:07,081 --> 00:39:10,084 (熊五郎)ふざけんな。 491 00:39:10,084 --> 00:39:14,088 (藤次)さっきの娘かい?➡ 492 00:39:14,088 --> 00:39:18,088 繁蔵兄ぃの 子供は。 493 00:39:24,098 --> 00:39:29,036 兄ぃ 殺した後 おかみさんと 乳飲み子➡ 494 00:39:29,036 --> 00:39:33,036 引き取ったらしいって 聞いてたもんだからね。 495 00:39:35,042 --> 00:39:42,049 あの娘 あんたが 実の父親を 殺したってこと➡ 496 00:39:42,049 --> 00:39:49,056 知ってるのかい? (熊五郎)藤次。 てめえ。 497 00:39:49,056 --> 00:39:56,063 どうだろうね? 50両。 498 00:39:56,063 --> 00:40:01,068 ゆすりか。 (藤次)いや。 499 00:40:01,068 --> 00:40:07,074 あの娘に 昔 あんたの父親 繁蔵さんには➡ 500 00:40:07,074 --> 00:40:14,074 お世話になりましたと 詳しく 挨拶するだけよ。 501 00:40:18,085 --> 00:40:22,089 すぐに できる 金じゃねえ。 502 00:40:22,089 --> 00:40:27,094 (藤次)いつ 揃うね? 50両。 503 00:40:27,094 --> 00:40:35,094 10日後。 浅草 新鳥越 正行寺。 504 00:41:09,036 --> 00:41:11,038 (おつぎ)あっ。 若先生は いないよ。 505 00:41:11,038 --> 00:41:13,040 そうか。 (おつぎ)うん。➡ 506 00:41:13,040 --> 00:41:17,044 粂太郎さん 引き連れて 芝の 何とかっていう 道場に。 507 00:41:17,044 --> 00:41:21,048 いやぁ。 女房の 里の親が くれたんでな。 508 00:41:21,048 --> 00:41:26,053 (おつぎ)アハハ。 スイカなら あそこにも。 509 00:41:26,053 --> 00:41:29,056 あるなぁ。 (おつぎ)フフフ。 510 00:41:29,056 --> 00:41:32,056 あいにくだったねぇ。 エヘヘ。 511 00:41:38,065 --> 00:41:40,065 うーん。 512 00:41:44,071 --> 00:41:48,071 (おつぎ)先生。 お客さんだよ。 513 00:41:56,083 --> 00:42:02,023 (兵蔵)秋山先生でしょうか? ああ。 いや。 ここの あれは。 514 00:42:02,023 --> 00:42:07,028 (兵蔵)私 一刀流を学びます 大久保 兵蔵と申します。 515 00:42:07,028 --> 00:42:14,035 うん? 大久保 兵蔵殿。 516 00:42:14,035 --> 00:42:17,038 (兵蔵)先般 諸国遍歴から 戻りましたばかりの➡ 517 00:42:17,038 --> 00:42:19,040 修行の者です。 518 00:42:19,040 --> 00:42:22,043 ああ。 (兵蔵)知人より➡ 519 00:42:22,043 --> 00:42:26,047 橋場の 秋山 大治郎殿の名を 耳にいたし➡ 520 00:42:26,047 --> 00:42:29,050 一手 ご教授 願わしく まかり越しました。 521 00:42:29,050 --> 00:42:31,052 いやぁ。 それは。 522 00:42:31,052 --> 00:42:35,056 (兵蔵)あっ。 他流との 立ち合いは なされませぬか? 523 00:42:35,056 --> 00:42:39,060 いや。 そのう。 何というか。 524 00:42:39,060 --> 00:42:43,064 (兵蔵)いや。 何も 道場を荒らして 高名を 得ようというつもりは➡ 525 00:42:43,064 --> 00:42:48,069 毛頭なく いわば 好奇心といいますか。 526 00:42:48,069 --> 00:42:50,071 (兵蔵)腕試しといいますか。 527 00:42:50,071 --> 00:42:59,071 ♬~ 528 00:43:17,031 --> 00:43:19,031 ふん。 やあ! 529 00:43:44,058 --> 00:43:46,058 うっ!? 530 00:43:49,063 --> 00:43:52,063 腕を。 531 00:44:00,007 --> 00:44:04,011 お手数を おかけしまして。 いや。 532 00:44:04,011 --> 00:44:13,020 素人療治故 後で しかるべき 医者に見せられよ。 533 00:44:13,020 --> 00:44:15,020 あっ はい。 534 00:44:17,024 --> 00:44:22,029 今日は 誠に その。 あっ。 いえ。 535 00:44:22,029 --> 00:44:26,033 立ち合いいただきまして ありがとうございました。 536 00:44:26,033 --> 00:44:28,033 ああ。 いや。 537 00:44:30,037 --> 00:44:34,037 あっ。 痛っ。 おう。 538 00:44:36,043 --> 00:44:41,043 あっ。 かたじけのうございます。 ああ!? 539 00:44:52,059 --> 00:44:54,061 (宗哲)どうした? いやぁ。 540 00:44:54,061 --> 00:44:56,997 スイカをさ。 (宗哲)おお。 あっ。 541 00:44:56,997 --> 00:45:00,000 (おとよ)じゃあ 井戸に 漬けておきましょう。 542 00:45:00,000 --> 00:45:02,002 (宗哲)おお。 (おとよ)前を 失礼します。➡ 543 00:45:02,002 --> 00:45:07,007 おっ。 重い。 ウフフ。 (宗哲)フフフ。 フフフ。 544 00:45:07,007 --> 00:45:09,009 おい。 (宗哲)えっ? 545 00:45:09,009 --> 00:45:11,011 手伝わせてるのか? 546 00:45:11,011 --> 00:45:14,014 (宗哲)いや。 何も。 向こうが 勝手に。 547 00:45:14,014 --> 00:45:17,017 (亀助)両先生 お揃いで。 (宗哲)仕事は? 548 00:45:17,017 --> 00:45:20,020 (亀助)ええ。 それがね 実は お得意さまの➡ 549 00:45:20,020 --> 00:45:24,024 お店の ご隠居が 昼前に ぽっくり 逝っちまってね。➡ 550 00:45:24,024 --> 00:45:27,027 いやぁ。 びっくりしたの 何のってね。➡ 551 00:45:27,027 --> 00:45:32,032 ああ。 で 今日は まあ 仕事は 休みなんですが。➡ 552 00:45:32,032 --> 00:45:34,034 いや。 しかし 人の死を見ると➡ 553 00:45:34,034 --> 00:45:37,037 つい てめえのことを 考えちまってね。➡ 554 00:45:37,037 --> 00:45:42,042 俺が死んだ後 どうなんのか。 555 00:45:42,042 --> 00:45:46,046 先生。 うちの おとよを 嫁に もらってもらいてえ! 556 00:45:46,046 --> 00:45:49,046 (宗哲)うん? 何を。 557 00:45:51,051 --> 00:45:55,055 (おとよ)おとっつぁん。 いったい 何てこと 言いだすんだい!? 558 00:45:55,055 --> 00:45:57,992 (亀助)お前 いたの? (おとよ)バカなこと 言って。➡ 559 00:45:57,992 --> 00:46:00,995 先生が お困りじゃないか。 (亀助)困る? 560 00:46:00,995 --> 00:46:04,999 いや。 そ… その。 困るというか。 えっ? 561 00:46:04,999 --> 00:46:08,002 ほれ。 見ろ。 (おとよ)ああ。 だからって➡ 562 00:46:08,002 --> 00:46:12,006 何だか 犬や 猫みたいに もらってくれだの 何だのって。 563 00:46:12,006 --> 00:46:14,008 (亀助)お前 何を言ってんだよ? よく 見ろよ。➡ 564 00:46:14,008 --> 00:46:19,013 先生だって もう 若かねえんだよ。 えっ? 一人 心細く 暮らすより➡ 565 00:46:19,013 --> 00:46:22,016 子連れで 年増女でも いてくれた方が➡ 566 00:46:22,016 --> 00:46:24,018 どんなに 助かるか。 ねえ? ねえ? ねえ? 567 00:46:24,018 --> 00:46:28,022 おっ? おうおう。 ごもっとも。 568 00:46:28,022 --> 00:46:30,024 小兵衛。 うん? 569 00:46:30,024 --> 00:46:32,026 (おとよ)秋山先生。 あっ。 570 00:46:32,026 --> 00:46:34,026 (せきばらい) 571 00:46:52,046 --> 00:46:55,049 (おかよ)ごちそうさまでした。 572 00:46:55,049 --> 00:46:59,049 (文吉)ごちそうさまでした。 (おしん)ごちそうさまでした。 573 00:47:03,991 --> 00:47:06,994 すまんが 茶を 一杯 くれぬか? 574 00:47:06,994 --> 00:47:11,994 (おしん)ああ。 どうぞ。 さあさあ どうぞ。 575 00:47:14,001 --> 00:47:17,004 (おしん)さあ。 この前を 通り掛かって➡ 576 00:47:17,004 --> 00:47:19,006 喉が 渇いたもんでな。 577 00:47:19,006 --> 00:47:22,009 (おしん)どうぞ。 お掛けになって。 では。 578 00:47:22,009 --> 00:47:25,012 (文吉)どうせなら 冷や酒なんぞ いかがで? 579 00:47:25,012 --> 00:47:28,015 いいのかえ? 店を 開けてもいないのに。 580 00:47:28,015 --> 00:47:32,015 (文吉)へえ。 おとっつぁんが いたら 大変でございますが。 581 00:47:35,022 --> 00:47:39,022 幾つかな? (おかよ)4つ。 582 00:47:42,029 --> 00:47:45,029 お千代ちゃんとこ 行く。 583 00:47:49,036 --> 00:47:54,041 (おしん)おかよ。 忘れてるわよ。➡ 584 00:47:54,041 --> 00:47:56,977 気を付けて 行くんだよ。 585 00:47:56,977 --> 00:47:58,977 (文吉)どうぞ。 おう。 586 00:48:05,986 --> 00:48:10,991 ああー。 ここの酒は うまい。 587 00:48:10,991 --> 00:48:13,994 (文吉)挨拶が 遅くなりました。 私は 文吉と申します。➡ 588 00:48:13,994 --> 00:48:15,996 これは 女房の しんと。 589 00:48:15,996 --> 00:48:17,998 しんで ございます。 590 00:48:17,998 --> 00:48:21,001 この前は 難儀なところを お助けいただき➡ 591 00:48:21,001 --> 00:48:27,007 お医者の世話まで。 なぁに。 今日は いないのかえ? 592 00:48:27,007 --> 00:48:31,007 (文吉)あっ。 昼間は 時々 出掛けてまして。 593 00:48:34,014 --> 00:48:36,016 こんなこと言っては 何だが➡ 594 00:48:36,016 --> 00:48:43,023 あの とっつぁんと 一緒に 住んでいるってのは 大変だろう。 595 00:48:43,023 --> 00:48:47,027 そりゃ まあ。 ご存じのような お人でございますから。 596 00:48:47,027 --> 00:48:51,031 よく 辛抱してるなぁ。 ですが ご隠居さん。 597 00:48:51,031 --> 00:48:54,034 ああ 見えても 根は さっぱりしてるんですよ。 598 00:48:54,034 --> 00:48:56,970 ほう。 (文吉)私も なんです。 599 00:48:56,970 --> 00:48:58,972 初めのうちは びっくりしておりましたが➡ 600 00:48:58,972 --> 00:49:01,972 この女房に ほれこんでしまったもんですから。 601 00:49:03,977 --> 00:49:07,981 (文吉)しかし 覚悟を決めて 入りこんでみますと➡ 602 00:49:07,981 --> 00:49:10,984 何事も 慣れというやつで あまり 気にならなくなりました。 603 00:49:10,984 --> 00:49:15,989 文吉さん。 あんた 大した男だね。 604 00:49:15,989 --> 00:49:17,989 (文吉)いえいえ。 605 00:49:19,993 --> 00:49:21,995 ああー。 うまかった。 606 00:49:21,995 --> 00:49:25,999 突然 現れて とんだ厄介を かけたね。 607 00:49:25,999 --> 00:49:29,002 ありがとう ありがとう。 うん。 608 00:49:29,002 --> 00:49:31,004 (文吉)いや。 それは 頂けません。 609 00:49:31,004 --> 00:49:33,006 いやぁ。 タダ酒を飲んだと 知られたら➡ 610 00:49:33,006 --> 00:49:37,010 鬼熊が 怖えからさ。 じゃあ 遠慮なく。 611 00:49:37,010 --> 00:49:39,010 邪魔したね。 612 00:49:42,015 --> 00:49:45,018 ≪(戸の閉まる音) 613 00:49:45,018 --> 00:49:55,018 (苦しむ声) 614 00:50:27,060 --> 00:50:29,060 (熊五郎)《おっ!?》 615 00:51:17,044 --> 00:51:22,049 (熊五郎)煮貫は 火加減と 火から上げる加減が 難しい。 616 00:51:22,049 --> 00:51:25,049 (文吉)へい。 617 00:51:32,059 --> 00:51:35,062 (おかよ)じいちゃん。 おとっつぁん。 おやすみ。 618 00:51:35,062 --> 00:51:37,062 (熊五郎)ああ。 619 00:52:05,025 --> 00:52:08,025 (熊五郎)もう一遍。 (文吉)へい。 620 00:52:11,031 --> 00:52:13,031 よいしょ。 621 00:52:21,041 --> 00:52:26,046 (おはる)先生。 先生! 622 00:52:26,046 --> 00:52:29,049 (おはる)先生の好物の らくがん 頂いたよ。 623 00:52:29,049 --> 00:52:31,049 おおー。 それは それは。 624 00:52:35,055 --> 00:52:40,060 (生島)秋山殿。 いよいよ 明日 三冬さまの 立ち合いにござる。 625 00:52:40,060 --> 00:52:42,062 明日。 626 00:52:42,062 --> 00:52:47,067 (生島)それで 秋山殿にも ぜひ おいでいただけないかと。 627 00:52:47,067 --> 00:52:51,071 あっ。 いや。 そのう。 628 00:52:51,071 --> 00:52:55,075 気にならないのかね? なるさ。 629 00:52:55,075 --> 00:53:03,075 なるが 顔を出すのは ちと まずい。 いや。 まずい。 630 00:53:10,023 --> 00:53:13,026 (女性)あのう。 通してください。 急ぐんです。 631 00:53:13,026 --> 00:53:16,029 (男性)嫌だね。 (男性)カワイイ。 632 00:53:16,029 --> 00:53:20,033 (男性)ほう。 なかなか カワイイ娘さんじゃねえか。 633 00:53:20,033 --> 00:53:23,036 (女性)何をするんです! (男性)ばばあは 引っ込んでろ!➡ 634 00:53:23,036 --> 00:53:27,040 おい。 付き合ってもらおうぜ。 うん? うっ!? 635 00:53:27,040 --> 00:53:30,043 (大治郎)嫌がってるではないか。 636 00:53:30,043 --> 00:53:35,048 (男性)口を挟むなよ! さんぴん! 637 00:53:35,048 --> 00:53:52,065 ♬~ 638 00:53:52,065 --> 00:53:54,067 (男性)覚えてろ 貴様! (男性)痛い!? 639 00:53:54,067 --> 00:53:57,004 (男性)もう 商売 上がったりじゃねえかよ。➡ 640 00:53:57,004 --> 00:54:00,007 くそ。 旦那。 (大治郎)すいません。 641 00:54:00,007 --> 00:54:03,010 (女性)ありがとうございます。 (女性)ありがとうございます。 642 00:54:03,010 --> 00:54:05,012 (女性)これで お見合いに 間に合います。 643 00:54:05,012 --> 00:54:09,012 (女性)ありがとうございました。 (女性)さっ。 お嬢さま。 644 00:54:13,020 --> 00:54:16,020 お見合い? 645 00:54:19,026 --> 00:54:23,030 どうした? (粂太郎)ああ!? ああ。➡ 646 00:54:23,030 --> 00:54:27,034 今日の先生は まるで 鬼です。➡ 647 00:54:27,034 --> 00:54:30,037 いつにも増して 激しく 手加減もなく。➡ 648 00:54:30,037 --> 00:54:35,037 半時。 いや。 一時にわたって 稽古を。 649 00:54:39,046 --> 00:54:45,052 大よ。 今日は 三冬殿の立ち合いが あるそうだ。 650 00:54:45,052 --> 00:54:50,057 (大治郎)それが 何か? 知っていたのか? 651 00:54:50,057 --> 00:54:56,063 (大治郎)しかし 私には 何の関わりも ございません。➡ 652 00:54:56,063 --> 00:55:03,003 立ち合いなり 嫁入りなり 勝手にされるがよい。➡ 653 00:55:03,003 --> 00:55:12,012 やあー! やあ! やあ! やあー! 654 00:55:12,012 --> 00:55:19,012 ♬~ 655 00:55:27,027 --> 00:55:30,030 大久保 兵蔵にございます。 656 00:55:30,030 --> 00:55:32,032 佐々木 三冬と申します。 657 00:55:32,032 --> 00:55:48,048 ♬~ 658 00:55:48,048 --> 00:55:50,050 (審判)始め! 659 00:55:50,050 --> 00:56:07,000 ♬~ 660 00:56:07,000 --> 00:56:10,003 <三冬の縁談が決する この日> 661 00:56:10,003 --> 00:56:15,008 <小兵衛は どこにいても 落ち着かなかったのでございます> 662 00:56:15,008 --> 00:56:27,020 ♬~ 663 00:56:27,020 --> 00:56:42,035 ♬~ 664 00:56:42,035 --> 00:56:49,042 ♬~ 665 00:56:49,042 --> 00:56:51,044 (兵蔵)やあ! 666 00:56:51,044 --> 00:56:54,047 弥七 食ってくれ。 (弥七)えっ。 あっ。➡ 667 00:56:54,047 --> 00:56:56,047 いただきやす。 668 00:57:00,987 --> 00:57:03,990 (弥七)で 先生。 今日 こっちには 何か? 669 00:57:03,990 --> 00:57:09,996 うん? いや。 これという あれは。 670 00:57:09,996 --> 00:57:14,000 じっとしておられぬことも あってな。 671 00:57:14,000 --> 00:57:17,003 おはるさんと やり合いやしたか? いやぁ。 672 00:57:17,003 --> 00:57:21,007 (おみね)ねえ? 先生。 その 何とかって 飲み屋ですけど。 673 00:57:21,007 --> 00:57:24,010 鬼熊酒屋か? (おみね)そんなに おいしいんで? 674 00:57:24,010 --> 00:57:29,015 うまい。 (おみね)えっ!? うちより? 675 00:57:29,015 --> 00:57:32,018 いや。 お前さんの作るのも➡ 676 00:57:32,018 --> 00:57:34,020 そんじょ そこらの店には 負けないがね。 677 00:57:34,020 --> 00:57:39,025 (おみね)はい。 正直 言って 一味 違う。 678 00:57:39,025 --> 00:57:42,028 よし。 今度 一遍 俺が 味見に 行ってみるよ。 679 00:57:42,028 --> 00:57:46,032 うん。 そうしておくれ。 (弥七)ああ。 本所でしたね? 680 00:57:46,032 --> 00:57:49,035 本所横網町。 へい。 681 00:57:49,035 --> 00:57:52,038 だが 気を付けろよ。 何か? 682 00:57:52,038 --> 00:57:56,042 下手な 物言いをすると そこの親父に 遠慮 会釈もなく➡ 683 00:57:56,042 --> 00:58:00,981 どやしつけられることにもなる。 「バカ野郎!」 684 00:58:00,981 --> 00:58:03,981 へえー。 フフッ。 685 00:58:17,998 --> 00:58:25,005 ♬~ 686 00:58:25,005 --> 00:58:28,005 じいちゃん ありがとう。 687 00:58:33,013 --> 00:58:36,016 (おしん)おとっつぁん。 出掛けるの? 688 00:58:36,016 --> 00:58:42,022 (熊五郎)ああ。 文吉。 (文吉)はい。 689 00:58:42,022 --> 00:58:46,022 (熊五郎)お前の 煮貫な…。 (文吉)へい。 690 00:58:50,030 --> 00:58:53,033 (熊五郎)まあ いいや。 691 00:58:53,033 --> 00:58:56,033 (文吉)ああー。 火加減 火加減。 692 00:59:05,979 --> 00:59:09,983 おしんさん。 (おしん)あっ。 ご隠居さん。 693 00:59:09,983 --> 00:59:11,985 ≪(文吉)おしん!➡ 694 00:59:11,985 --> 00:59:14,988 ああ。 ご隠居さん。 どうしたい? 695 00:59:14,988 --> 00:59:16,990 (文吉)おとっつぁんの出刃が 1本 なくなってる。 696 00:59:16,990 --> 00:59:18,992 (おしん)えっ? 697 00:59:18,992 --> 00:59:20,994 親父さんは? 698 00:59:20,994 --> 00:59:23,994 (おしん)あっ。 ついさっき 出掛けました。 699 01:00:08,041 --> 01:00:13,041 ≪(足音) 700 01:00:15,048 --> 01:00:19,048 50両 持ってきたかい? 701 01:00:25,058 --> 01:00:27,058 ああ。 702 01:00:34,067 --> 01:00:40,067 (藤次)チッ。 てめえ。 やっぱりな。 703 01:00:43,076 --> 01:00:46,079 (藤次)お前のことだ。 704 01:00:46,079 --> 01:00:50,083 おとなしく 金 持ってくるとは 思わなかったさ。 705 01:00:50,083 --> 01:00:55,088 あの店には 指一本 触れさせねえ。 706 01:00:55,088 --> 01:00:57,023 (男性)野郎! 707 01:00:57,023 --> 01:01:10,036 ♬~ 708 01:01:10,036 --> 01:01:14,040 (男性)てめえ! なめやがって こら!➡ 709 01:01:14,040 --> 01:01:16,042 痛っ!? 710 01:01:16,042 --> 01:01:34,060 ♬~ 711 01:01:34,060 --> 01:01:40,066 とっつぁん! とっつぁん! おい! 712 01:01:40,066 --> 01:01:49,066 ♬~ 713 01:01:52,078 --> 01:01:55,078 (宗哲)今度ばかりは いけないね。 714 01:01:57,083 --> 01:02:02,088 (宗哲)死ぬなぁ。 まあ 今日 明日ということは ないだろうが。 715 01:02:02,088 --> 01:02:04,090 お前さん。 また 診に来てくれるかえ? 716 01:02:04,090 --> 01:02:06,090 (宗哲)ああ いいよ。 717 01:02:13,099 --> 01:02:15,101 開けるのかえ? 718 01:02:15,101 --> 01:02:20,101 店 休むって 言ったら おとっつぁん 「バカ野郎」って。 719 01:02:32,051 --> 01:02:37,056 ≪(足音) 720 01:02:37,056 --> 01:02:39,058 (おしん)ああ。 721 01:02:39,058 --> 01:02:44,063 とっつぁん。 店を開けさせたのか? 722 01:02:44,063 --> 01:02:50,063 (熊五郎)店 閉めたからって 俺が 良くなることはなかろう。 723 01:02:53,072 --> 01:02:58,072 (おしん)けど。 お行きなさい。 支度がある。 724 01:03:02,081 --> 01:03:06,081 (おしん)じゃあ お願いします。 ああ。 725 01:03:21,100 --> 01:03:28,041 (熊五郎)ここに いると 板場の音が 聞こえる。 726 01:03:28,041 --> 01:03:31,044 ≪(切る音) うん。 727 01:03:31,044 --> 01:03:40,053 (熊五郎)店に来る バカ野郎どもの 声も届く。 728 01:03:40,053 --> 01:03:44,057 ≪(切る音) 729 01:03:44,057 --> 01:03:48,061 ったく。 あの野郎。 730 01:03:48,061 --> 01:03:54,067 まな板の音 立てりゃ いいってもんじゃねえんだ。 731 01:03:54,067 --> 01:03:56,067 バカ野郎。 732 01:04:04,077 --> 01:04:09,077 さっきの寺の連中 何だい? 733 01:04:11,084 --> 01:04:22,095 昔の。 ずいぶんと 昔の 付けが 回ってきてね。 734 01:04:22,095 --> 01:04:25,095 包丁なんぞ 持ってか? 735 01:04:27,033 --> 01:04:32,033 とっつぁん。 死ぬ気で 行ったな? 736 01:04:34,040 --> 01:04:39,040 生きてるのは もう 飽き飽きだ。 737 01:04:41,047 --> 01:04:49,055 だからといって てめえで てめえの命 縮めるのは➡ 738 01:04:49,055 --> 01:04:54,055 これは また なかなか 難しくてね。 739 01:04:57,063 --> 01:05:04,070 俺は 弱虫だ。 740 01:05:04,070 --> 01:05:12,078 弱虫だから 世間に かみついて 生きてきた。 741 01:05:12,078 --> 01:05:16,082 今日は 素直だな。 742 01:05:16,082 --> 01:05:22,082 もうすぐ 死ぬと分かったら 安心したんだ。 743 01:05:24,090 --> 01:05:32,090 分かるよ。 てめえの体のことぐれえ。 744 01:05:39,038 --> 01:05:44,038 とっつぁんは 江戸かえ? 745 01:05:48,047 --> 01:05:56,047 越後だ。 山ん中の ちっちゃな村だ。 746 01:05:58,057 --> 01:06:05,064 物心 付いたころにゃ 二親が いなかった。 747 01:06:05,064 --> 01:06:08,067 うん。 748 01:06:08,067 --> 01:06:16,075 そのうち 誰かに 角兵衛獅子に 売られて➡ 749 01:06:16,075 --> 01:06:21,080 江戸に来たんだ。 そうかえ。 750 01:06:21,080 --> 01:06:25,084 2~3年は 辛抱したが➡ 751 01:06:25,084 --> 01:06:36,028 親方から 逃れて ワルの仲間に 潜り込み➡ 752 01:06:36,028 --> 01:06:44,036 後は お決まりの 修羅の道だ。 753 01:06:44,036 --> 01:06:48,040 人も 殺したろ? 754 01:06:48,040 --> 01:06:51,043 ああ。 やったね。 755 01:06:51,043 --> 01:06:55,043 2人か? 3人か? 756 01:06:57,049 --> 01:07:03,049 そうさな。 5人。 757 01:07:05,057 --> 01:07:09,057 わしが思ったより 多かったか。 758 01:07:11,063 --> 01:07:17,069 その中の 一人が➡ 759 01:07:17,069 --> 01:07:20,069 おしんの父親だ。 760 01:07:26,078 --> 01:07:31,017 何の恨みも なかった。 761 01:07:31,017 --> 01:07:38,024 (熊五郎)《繁蔵。 どけ。 お前には 関係ねえんだ》➡ 762 01:07:38,024 --> 01:07:40,026 《どけ!》 (繁蔵)《うわ!?》 763 01:07:40,026 --> 01:07:43,026 (熊五郎)《この野郎!》 764 01:07:45,031 --> 01:07:50,036 (熊五郎)《治平。 借りは 返すぜ》 765 01:07:50,036 --> 01:07:52,038 (繁蔵)《熊さん。 見逃してやってくれ》➡ 766 01:07:52,038 --> 01:07:55,041 《知らねえ仲じゃ ねえだろ》 (熊五郎)《甘え!》 767 01:07:55,041 --> 01:07:57,041 (治平)《野郎!》 768 01:08:00,046 --> 01:08:02,046 (熊五郎)《てめえ》 769 01:08:05,051 --> 01:08:07,051 (治平)《野郎!》 770 01:08:15,061 --> 01:08:17,061 (熊五郎)《おっ!?》 771 01:08:22,068 --> 01:08:26,072 (繁蔵)《く… 熊さん》 772 01:08:26,072 --> 01:08:33,012 (熊五郎)《繁蔵! 繁蔵! 繁蔵!》 773 01:08:33,012 --> 01:08:52,031 ♬~ 774 01:08:52,031 --> 01:08:57,036 (熊五郎)《おかみさん。 堪忍してくれ》➡ 775 01:08:57,036 --> 01:09:04,043 《お前さん方の面倒は 俺が。 俺が 必ず》 776 01:09:04,043 --> 01:09:16,055 (泣き声) 777 01:09:16,055 --> 01:09:21,055 (熊五郎)それが おしんだ。 778 01:09:26,065 --> 01:09:36,075 その母親も おしんが 6つのときに 病でね。 779 01:09:36,075 --> 01:09:41,080 そのことを おしんさんは? 780 01:09:41,080 --> 01:09:48,080 いや。 口が裂けても 言えるもんじゃねえ。 781 01:09:50,089 --> 01:09:52,089 なら いい。 782 01:09:54,093 --> 01:10:05,104 さっきの寺に おしんの父親と 母親の墓が あってね。 783 01:10:05,104 --> 01:10:09,108 (おしん)《おとっつぁん。 この墓は 誰?》 784 01:10:09,108 --> 01:10:14,113 (熊五郎)《俺の知り合いの人だ。 手 合わしてやってくれ》 785 01:10:14,113 --> 01:10:16,113 (おしん)《うん》 786 01:10:24,123 --> 01:10:35,123 おかげで 昔のことは 俺一人の 胸に納めて…。 787 01:10:42,074 --> 01:10:46,078 あの世へ 行ける。 788 01:10:46,078 --> 01:10:55,078 ♬~ 789 01:11:02,094 --> 01:11:05,094 (おしん)ありがと。 (文吉)頼むね。 790 01:11:09,101 --> 01:11:11,103 (文吉)いらっしゃい。 (権太)おう。 今日 遅いね。 791 01:11:11,103 --> 01:11:15,107 (おしん)えっ。 ちょっと。 (権太)おっ。 親父 いねえな。 792 01:11:15,107 --> 01:11:20,112 (おしん)あっ。 横になってまして。 (権太)おい。 鬼熊が寝てるってよ。 793 01:11:20,112 --> 01:11:25,117 (男性)おっ。 おーい。 親父。 起きてきやがれ。 794 01:11:25,117 --> 01:11:28,054 ≪(権太)いいよ いいよ。 寝かしとけって。➡ 795 01:11:28,054 --> 01:11:32,054 鬼の居ぬ間に 洗濯よ。 (一同)ハハハ。 違えねえ。 796 01:11:34,060 --> 01:11:37,060 (熊五郎)バカ野郎どもが。 797 01:11:43,069 --> 01:11:47,073 ≪(男性)けどよ こっちで 騒ごうもんなら➡ 798 01:11:47,073 --> 01:11:49,075 飛んで 出てくるぜ。 ≪(男性)どっかで➡ 799 01:11:49,075 --> 01:11:53,079 こっちの様子でも うかがってんじゃねえのか? 800 01:11:53,079 --> 01:11:56,082 ≪(男性)おしんちゃん いつもの。 ≪(おしん)あいよ。 801 01:11:56,082 --> 01:11:58,084 ≪(男性)まあ 文吉さんと おしんちゃんが いれば➡ 802 01:11:58,084 --> 01:12:03,089 この店は 大丈夫だ。 ≪(男性)そうだ そうだ。 803 01:12:03,089 --> 01:12:07,093 (熊五郎)行くのかい? 804 01:12:07,093 --> 01:12:11,097 このまま 飲み明かしたいところだが➡ 805 01:12:11,097 --> 01:12:18,104 気になることも あってな。 (熊五郎)そうかい。 806 01:12:18,104 --> 01:12:22,108 何かあったら 遠慮なく 小川 宗哲に知らせろ。 807 01:12:22,108 --> 01:12:27,108 (熊五郎)知らせたって。 言うことを聞け。 808 01:12:29,048 --> 01:12:32,051 へーい。 809 01:12:32,051 --> 01:12:47,066 ♬~ 810 01:12:47,066 --> 01:12:55,066 ♬~ 811 01:12:59,011 --> 01:13:03,011 (田沼)おう。 小兵衛。 よう 参った。 さあ 近う 近う。 812 01:13:07,019 --> 01:13:13,025 はっ。 昨日の三冬殿の 立ち合いのことが 気掛かりで。 813 01:13:13,025 --> 01:13:15,027 (田沼)それを こちらからも 知らせようと➡ 814 01:13:15,027 --> 01:13:19,027 思っていたところでな。 それで? 815 01:13:21,033 --> 01:13:26,038 (生島)三冬さまは 勝つことは ならず。 816 01:13:26,038 --> 01:13:29,041 負けましたか? (生島)負けもなく。➡ 817 01:13:29,041 --> 01:13:35,047 互角のまま 引き分けと。 そうなりますと ご縁談は? 818 01:13:35,047 --> 01:13:39,051 松平殿からは 勝負が つかぬからには➡ 819 01:13:39,051 --> 01:13:43,055 この縁談は 白紙にとの 申し出があった。 820 01:13:43,055 --> 01:13:46,055 つまり…。 (生島)破談。 821 01:13:49,061 --> 01:13:53,065 ≪(足音) 822 01:13:53,065 --> 01:13:55,065 あっ。 823 01:14:00,005 --> 01:14:04,009 (三冬)秋山先生。 先日は ご教授を賜り➡ 824 01:14:04,009 --> 01:14:08,013 ありがとうございました。 あっ。 いえ。 825 01:14:08,013 --> 01:14:10,015 (三冬)おかげを もちまして➡ 826 01:14:10,015 --> 01:14:12,017 互角の立ち合いを することが できました。 827 01:14:12,017 --> 01:14:15,020 互角に? (三冬)はい。➡ 828 01:14:15,020 --> 01:14:18,023 それは 相手も なかなかの者とは 存じましたが➡ 829 01:14:18,023 --> 01:14:21,026 いかんせん 剣のさばきに 鋭さを欠き➡ 830 01:14:21,026 --> 01:14:25,030 私とて 打ち負かすことは できませんでしたが➡ 831 01:14:25,030 --> 01:14:27,032 負けることなく ついには 互角のまま➡ 832 01:14:27,032 --> 01:14:30,035 引き分けました。 あっ。 それは。 833 01:14:30,035 --> 01:14:33,035 私は 負けませんでした。 834 01:14:38,043 --> 01:14:40,043 (三冬)父上。 (田沼)うん? 835 01:14:44,049 --> 01:14:47,052 (三冬)これよりは 立ち合いにて 三冬の相手を 選ぶのは➡ 836 01:14:47,052 --> 01:14:51,056 おやめくださいますよう。 (田沼)う… うん。 837 01:14:51,056 --> 01:14:56,061 (三冬)私が負けるとすれば 秋山先生を除けば➡ 838 01:14:56,061 --> 01:14:57,997 あと一人しか おらぬように 思いますれば。 839 01:14:57,997 --> 01:14:59,997 (生島)それは? 840 01:15:02,001 --> 01:15:06,005 (三冬)あえて 申しません。 841 01:15:06,005 --> 01:15:13,012 わしの 存じ寄りの者か? (三冬)んっ。 申しません。 842 01:15:13,012 --> 01:15:19,018 私の知り合いとか? (三冬)さあ? それは。 843 01:15:19,018 --> 01:15:29,028 ♬~ 844 01:15:29,028 --> 01:15:34,028 (三冬)んっ! ハハハ! 845 01:15:44,043 --> 01:15:50,049 (大治郎)大久保 兵蔵殿と 申されますと そのう。 846 01:15:50,049 --> 01:15:54,053 私が お会いしたいのは 秋山 大治郎先生ですが? 847 01:15:54,053 --> 01:15:56,989 私が 秋山 大治郎ですが? 848 01:15:56,989 --> 01:16:01,994 (兵蔵)いや。 しかし 先日 ご指南いただいた お方は。 849 01:16:01,994 --> 01:16:04,997 ここで 誰と 立ち合われました? 850 01:16:04,997 --> 01:16:11,003 はあ。 年のころは 60を超え 体つきも 堂々と 威厳があり➡ 851 01:16:11,003 --> 01:16:13,003 白髪の。 852 01:16:16,008 --> 01:16:20,012 あの お方は いったい? 853 01:16:20,012 --> 01:16:30,022 あのう。 それは たぶん 親戚の。 (兵蔵)ああ。 854 01:16:30,022 --> 01:16:34,026 見事な剣でした。 855 01:16:34,026 --> 01:16:38,030 その折 不覚にも 木刀を 腕に受けてしまい➡ 856 01:16:38,030 --> 01:16:45,037 その後 縁談の懸かった 立ち合いにも 勝つことができず。 857 01:16:45,037 --> 01:16:51,043 (兵蔵)あっ いや。 そのことは どうでも いいのですが。➡ 858 01:16:51,043 --> 01:16:54,046 ここで 立ち合っていただいた お方の おかげにて➡ 859 01:16:54,046 --> 01:16:57,983 私は まだまだ 未熟だと 思うに至りまして➡ 860 01:16:57,983 --> 01:17:02,988 近々 修行の旅に 出ることに いたしました。➡ 861 01:17:02,988 --> 01:17:06,992 それで その ご挨拶に 伺ったのですが。 862 01:17:06,992 --> 01:17:10,992 あいにく 住まいは 別で。 863 01:17:12,998 --> 01:17:17,002 お会いになられましたら 大久保 兵蔵が➡ 864 01:17:17,002 --> 01:17:20,005 くれぐれも よろしく申していたと お伝えください。 865 01:17:20,005 --> 01:17:23,008 はっ。 しかと。 866 01:17:23,008 --> 01:17:26,011 では ごめん。 867 01:17:26,011 --> 01:17:42,011 ♬~ 868 01:17:49,034 --> 01:17:51,036 (大治郎)私の名を かたって 立ち合った末に➡ 869 01:17:51,036 --> 01:17:54,039 大久保殿の腕を 打たれましたな? 870 01:17:54,039 --> 01:17:56,975 んっ。 あれは ほんの 弾みだ。 871 01:17:56,975 --> 01:17:59,978 三冬殿を 勝たせようと なされたのでは ありますまいな? 872 01:17:59,978 --> 01:18:01,980 わしは そんな。 873 01:18:01,980 --> 01:18:03,982 それは 武芸者として いささか。 874 01:18:03,982 --> 01:18:09,988 いや。 あまりに 姑息な 振る舞いかと 存じまするが。 875 01:18:09,988 --> 01:18:12,991 あのときの わしは 武芸者では なかった。 876 01:18:12,991 --> 01:18:15,994 何と。 877 01:18:15,994 --> 01:18:20,994 あれは ただの 子の親であった。 878 01:18:25,003 --> 01:18:29,003 ≪(鶏の鳴き声) あっ。 また 産んだ。 879 01:18:33,011 --> 01:18:39,011 (宗哲)姑息とな。 言われた。 880 01:18:41,019 --> 01:18:47,025 だがな 大久保 兵蔵殿とのことを 言ったら➡ 881 01:18:47,025 --> 01:18:51,029 おはるには 褒められたよ。 「よくやった」 882 01:18:51,029 --> 01:18:58,036 フフフ。 で どうなんだ? 何が? 883 01:18:58,036 --> 01:19:01,039 大久保なにがしの腕を 打ったのは➡ 884 01:19:01,039 --> 01:19:07,045 三冬殿に 勝ってほしいという? 885 01:19:07,045 --> 01:19:14,052 ほんの少し。 わずかに 大久保 兵蔵殿には➡ 886 01:19:14,052 --> 01:19:16,054 勝たせたくない思いが…。 887 01:19:16,054 --> 01:19:19,057 それでいい。 そうか。 888 01:19:19,057 --> 01:19:27,057 親の思いは それでいいのさ。 それが 業というものだ。 889 01:19:30,068 --> 01:19:36,068 人は 善と同じくらいの 悪を背負ってるものさ。 890 01:19:38,076 --> 01:19:41,079 よく 分かる。 フフフ。 891 01:19:41,079 --> 01:19:45,083 (おとよ)先生。 (宗哲)うん。 892 01:19:45,083 --> 01:19:51,089 あっ。 秋山先生も。 やっ。 893 01:19:51,089 --> 01:19:54,092 あっ。 何なら 秋山先生も ご一緒に。 894 01:19:54,092 --> 01:19:58,030 (宗哲)ううん! 何か? 895 01:19:58,030 --> 01:20:03,030 あっ。 晩ご飯 今夜は うちに 来ていただくことになってまして。 896 01:20:05,037 --> 01:20:10,042 いいのかい? (宗哲)うん? 897 01:20:10,042 --> 01:20:12,044 ≪(弥七)宗哲先生。 (宗哲)うん? 898 01:20:12,044 --> 01:20:14,046 あっ。 大先生も。 どうした? 弥七。 899 01:20:14,046 --> 01:20:16,048 いや。 鬼熊の親父の かかりつけは 宗哲先生だって いうから。 900 01:20:16,048 --> 01:20:18,050 (宗哲)そうだ。 (弥七)いや。 鬼熊酒屋の➡ 901 01:20:18,050 --> 01:20:21,050 食い物をと思って 店に行ったら 親父の加減が よくねえようで。 902 01:20:40,038 --> 01:20:42,038 (文吉)先生? 903 01:20:54,052 --> 01:20:57,052 (熊五郎)おしん。 おしん。 904 01:20:59,057 --> 01:21:01,057 (おしん)何? 905 01:21:04,062 --> 01:21:07,062 (熊五郎)す…。 906 01:21:10,068 --> 01:21:13,068 すまねえ。 907 01:21:15,073 --> 01:21:20,073 何のこと? 何のこと? 908 01:21:24,082 --> 01:21:27,019 おとっつぁん。 (文吉)おとっつぁん。 909 01:21:27,019 --> 01:21:30,022 おとっつぁん! (文吉)おとっつぁん! 910 01:21:30,022 --> 01:21:35,027 おとっつぁん! (文吉)おとっつぁん…。 911 01:21:35,027 --> 01:21:42,034 (おしん)おとっつぁん! おとっつぁん! 912 01:21:42,034 --> 01:21:57,049 ≪(おしんと 文吉の おえつ) 913 01:21:57,049 --> 01:22:11,063 ♬~ 914 01:22:11,063 --> 01:22:13,063 (おしん)おかよ。 915 01:22:20,072 --> 01:22:24,076 (文吉)おっかさんの墓は 分かるが そっちは 誰んだい? 916 01:22:24,076 --> 01:22:28,013 (おしん)うん? ちょっとね。 917 01:22:28,013 --> 01:22:45,030 ♬~ 918 01:22:45,030 --> 01:22:51,036 (おしん)そうですか。 お墓に 行ってくだすったんですか。 919 01:22:51,036 --> 01:22:58,036 怒鳴り声もせず 物足りないかぎりだよ。 920 01:23:02,047 --> 01:23:05,047 おう。 (文吉)お一つ。 921 01:23:23,068 --> 01:23:26,071 ご隠居さんには 何から何まで➡ 922 01:23:26,071 --> 01:23:32,071 すっかり 世話になっちまって。 なぁに。 923 01:23:34,012 --> 01:23:37,015 その後 店は どうかね? 924 01:23:37,015 --> 01:23:40,018 相変わらず 多くの方に 来ていただいております。 925 01:23:40,018 --> 01:23:45,023 客は 何と言っている? (文吉)ええ。 926 01:23:45,023 --> 01:23:47,025 なじみの皆さんは➡ 927 01:23:47,025 --> 01:23:50,025 おとっつぁんが 死んだことには 触れません。 928 01:23:52,030 --> 01:23:56,034 (おしん)板場の陰に 隠れてるに 違いないなんて。 929 01:23:56,034 --> 01:23:59,037 (熊五郎)《この 大バカ野郎!》 930 01:23:59,037 --> 01:24:07,037 (おしん)だから 帰りしなも 「親父! また来るぜ」なんて。 931 01:24:09,047 --> 01:24:12,050 (文吉)しかし ご隠居さん。 うん? 932 01:24:12,050 --> 01:24:17,055 おしんにも 私にも 一度として 謝ったことのない おとっつぁんが➡ 933 01:24:17,055 --> 01:24:21,059 最後の最後に おしんに 「すまねえ」なんて言ったんですよ。 934 01:24:21,059 --> 01:24:23,061 ほう。 935 01:24:23,061 --> 01:24:27,061 (文吉)あれは 何だったのかね? 936 01:24:29,000 --> 01:24:34,005 私は 分かってるから。 いいの。 (文吉)何なんだい? 937 01:24:34,005 --> 01:24:38,009 (おしん)うん? (文吉)何だよ? 938 01:24:38,009 --> 01:24:42,013 それより お前さん。 ご隠居さんに 煮貫のつゆで。 939 01:24:42,013 --> 01:24:45,013 あっ。 そうだな。 じゃあ。 940 01:24:53,024 --> 01:24:59,024 「すまねえ」の訳を 分かっているというと? 941 01:25:01,032 --> 01:25:03,032 ええ。 942 01:25:06,037 --> 01:25:10,041 (おしん)ご隠居さんだから 言いますけど➡ 943 01:25:10,041 --> 01:25:15,041 熊五郎おとっつぁんは 実の父親じゃないんです。 944 01:25:20,051 --> 01:25:28,051 おっかさんが死ぬ 少し前に 見てしまって。 945 01:25:29,995 --> 01:25:34,995 (たえ)《長いこと すみませんでした》 946 01:25:37,002 --> 01:25:39,004 (たえ)《甘えっ放しで》 947 01:25:39,004 --> 01:25:43,008 (熊五郎)《いや。 とんでもない》 (たえ)《熊五郎さん》➡ 948 01:25:43,008 --> 01:25:50,015 《もう うちの人に 手を掛けたことは 忘れて》 949 01:25:50,015 --> 01:26:00,015 (たえ)《寿命だったと思って もう 自分を責めないで》 950 01:26:05,030 --> 01:26:09,034 (たえ)《熊五郎さん。 手を》 951 01:26:09,034 --> 01:26:26,985 ♬~ 952 01:26:26,985 --> 01:26:33,992 《何年も 一つ屋根の下に暮らして➡ 953 01:26:33,992 --> 01:26:40,992 手一つ 触れ合うことも ありませんでしたね》 954 01:26:49,007 --> 01:26:51,007 (熊五郎)《おっ》 955 01:26:55,013 --> 01:26:59,013 (たえ)《堪忍してくださいね》 956 01:27:03,021 --> 01:27:09,021 (たえ)《堪忍です。 堪忍です》 957 01:27:13,031 --> 01:27:20,031 とっつぁんは そのことだけは お前さんに 知られたくないと。 958 01:27:23,041 --> 01:27:26,044 (おしん)分かってました。 959 01:27:26,044 --> 01:27:30,982 しかし そんな いわくが ありながら➡ 960 01:27:30,982 --> 01:27:33,982 よく 一緒に暮らしたものだ。 961 01:27:38,990 --> 01:27:44,990 熊五郎おとっつぁんが 私の おとっつぁんですから。 962 01:27:50,001 --> 01:27:54,005 (おしん)ご隠居さん。 うん? 963 01:27:54,005 --> 01:27:58,009 おとっつぁんの手 ごついんですよ。 964 01:27:58,009 --> 01:28:03,014 その ごつい指に 縫い針 持って➡ 965 01:28:03,014 --> 01:28:07,018 小さい時分 私の着物も 肌着も みんな➡ 966 01:28:07,018 --> 01:28:12,023 おとっつぁんが 仕立て直ししてくれて。 967 01:28:12,023 --> 01:28:22,033 お祭りや 縁日に行くと あの手で 私の手を ぎゅっと。➡ 968 01:28:22,033 --> 01:28:28,033 私が はぐれないようにって ぎゅーっと。 969 01:28:32,043 --> 01:28:37,048 痛かったけど うれしかった。 970 01:28:37,048 --> 01:28:55,066 ♬~ 971 01:28:55,066 --> 01:28:57,068 そうめんか。 972 01:28:57,068 --> 01:29:01,072 (文吉)ひとつ このつゆに つけて 召し上がってくださいまし。 973 01:29:01,072 --> 01:29:18,089 ♬~ 974 01:29:18,089 --> 01:29:21,092 このつゆは? 975 01:29:21,092 --> 01:29:24,095 おとっつぁんが 最後に 教えてくれた 煮貫でして。 976 01:29:24,095 --> 01:29:26,097 ふーん。 977 01:29:26,097 --> 01:29:30,097 味噌と かつお節の うま味を 煮出したもんです。 978 01:29:37,041 --> 01:29:39,041 うまい。 979 01:29:42,046 --> 01:29:49,046 鬼熊め。 いいもの 残して 逝きやがったね。 980 01:29:53,057 --> 01:29:56,057 (文吉)ありがとうございます。 981 01:29:59,063 --> 01:30:01,063 (文吉)ありがとうございます。 982 01:30:21,119 --> 01:30:27,119 (三冬)今日は 出稽古だとか? (大治郎)はい。 その帰りでして。 983 01:30:37,135 --> 01:30:42,140 (三冬)私 その後 ご報告しましたでしょうか? 984 01:30:42,140 --> 01:30:46,144 (大治郎)いえ。 (三冬)では 申しますが➡ 985 01:30:46,144 --> 01:30:50,148 何のことだと お思いで? (大治郎)あっ。➡ 986 01:30:50,148 --> 01:30:56,154 いや。 そのう。 おそらく 立ち合いのことかと。 987 01:30:56,154 --> 01:31:03,094 (三冬)気にしておいででしたか。 (大治郎)そりゃ…。 いえ。 988 01:31:03,094 --> 01:31:08,099 (三冬)立ち合いは 互角のまま 引き分けました。 989 01:31:08,099 --> 01:31:13,104 つまり 縁談は 立ち消えとなりました。 990 01:31:13,104 --> 01:31:18,109 まあ 秋山先生の おかげでも あります。 991 01:31:18,109 --> 01:31:21,112 ご存じでしたか? (三冬)何のことで? 992 01:31:21,112 --> 01:31:27,118 そのう 大久保 兵蔵殿の腕を…。 993 01:31:27,118 --> 01:31:30,121 その 一刀流と 立ち合いをするための➡ 994 01:31:30,121 --> 01:31:36,127 ご指南を受けました。 (大治郎)ああ。 995 01:31:36,127 --> 01:31:40,131 哀れみは 無用に願います。 私は むしろ➡ 996 01:31:40,131 --> 01:31:46,137 清々しているのですから。 (大治郎)へえー。 997 01:31:46,137 --> 01:31:49,140 何故 笑みを浮かべられました? (大治郎)いえ。 私は。 998 01:31:49,140 --> 01:31:54,145 (三冬)強がりだと お思いですね? (大治郎)いえ。 何も。 999 01:31:54,145 --> 01:31:59,083 夫となる お人は 私自ら 見つけるつもりです。➡ 1000 01:31:59,083 --> 01:32:01,083 では ごめん。 1001 01:32:06,090 --> 01:32:08,092 (田沼)三冬には どうも➡ 1002 01:32:08,092 --> 01:32:12,096 心に決めた者が いるように 思うのだ。 1003 01:32:12,096 --> 01:32:15,099 ああ。 やはり。 1004 01:32:15,099 --> 01:32:19,103 (田沼)誰だか 心当たりも なくはない。 1005 01:32:19,103 --> 01:32:21,105 ほう。 それは…。 1006 01:32:21,105 --> 01:32:26,110 いや。 確かめたわけではないので 軽率には 言えぬが。 1007 01:32:26,110 --> 01:32:29,113 まっ。 ともかく はきと してくれぬでは もう➡ 1008 01:32:29,113 --> 01:32:32,116 気を もむばかりで。 うん? 1009 01:32:32,116 --> 01:32:37,121 いえいえ。 これは せがれ 大治郎のことでして。 1010 01:32:37,121 --> 01:32:40,124 はきと せぬか? 1011 01:32:40,124 --> 01:32:45,129 はい。 もう それが ただ もどかしいばかりで。 1012 01:32:45,129 --> 01:32:49,129 そうなのだ。 おっ? 1013 01:32:51,135 --> 01:32:55,139 いや。 三冬もな。 あっ。 1014 01:32:55,139 --> 01:33:05,083 ♬~ 1015 01:33:05,083 --> 01:33:09,087 <小兵衛は 熊五郎の人生を 思っていた> 1016 01:33:09,087 --> 01:33:14,092 <そして 己の人生も振り返った> 1017 01:33:14,092 --> 01:33:19,097 <どちらが 幸せで どちらが 不幸せなどとは➡ 1018 01:33:19,097 --> 01:33:22,100 簡単には言えないと 思った> 1019 01:33:22,100 --> 01:33:28,106 <熊五郎も 案外 幸せだったのでは なかろうか?> 1020 01:33:28,106 --> 01:33:32,110 おはる。 (おはる)何だね? 1021 01:33:32,110 --> 01:33:38,116 わしは まだまだ 生きてやるつもりだが いいかえ? 1022 01:33:38,116 --> 01:33:41,119 (おはる)ああ。 そうしてもらわないと➡ 1023 01:33:41,119 --> 01:33:43,121 私が つまらないよ。 1024 01:33:43,121 --> 01:33:50,128 うん。 生きてりゃ まだまだ 面白いことが ありそうだ。 1025 01:33:50,128 --> 01:33:53,128 (おはる)あるよ。 あるある。 1026 01:34:01,072 --> 01:34:04,072 鬼熊か。 1027 01:34:06,077 --> 01:34:13,084 <秋山 小兵衛には 心に残る夏と なったので ございます> 1028 01:34:13,084 --> 01:34:23,084 ♬~