1 00:02:38,012 --> 00:02:42,597 (風の音) 2 00:02:46,562 --> 00:03:05,548 ♪見よ妄執の城の趾(あと) 3 00:03:05,623 --> 00:03:25,201 ♪ 魂魄(こんぱく)未だ住むごとし 4 00:03:25,226 --> 00:03:44,303 ♪ それ執心の修羅の道 5 00:03:44,328 --> 00:04:12,421 ♪ 昔も今もかわりなし 6 00:05:31,936 --> 00:05:36,396 この度 北の舘(たち)藤巻殿の謀反 寝耳に水のこととて 7 00:05:36,524 --> 00:05:39,857 五の砦 四の砦はたちまち火をかけられ 8 00:05:40,277 --> 00:05:42,234 (国春) ええい 三の砦は 9 00:05:42,446 --> 00:05:45,905 三の砦は備えを整えるいとまもなく 10 00:05:46,033 --> 00:05:47,865 二の砦は何とした 11 00:05:48,994 --> 00:05:54,160 二の砦の三木義明殿は 崩れ去った三の砦の手勢を立て直し 12 00:05:54,291 --> 00:05:57,284 ただ今 獅子奮迅の最中にござります 13 00:05:57,461 --> 00:05:58,917 一の砦は 14 00:06:01,465 --> 00:06:07,757 一の砦の鷲津武時殿は五の砦 四の砦に火の手が上がると同時に 15 00:06:07,888 --> 00:06:14,510 どっと国境(くにざかい)より押し寄せた乾(いぬい)殿の手勢 およそ四百を一手(ひとて)に 16 00:06:14,770 --> 00:06:17,888 うむ乾の謀か 17 00:06:18,065 --> 00:06:21,103 (則保) 鷲津は・・・鷲津の合戦の模様は何とじゃ 18 00:06:22,278 --> 00:06:23,563 苦戦 19 00:06:23,696 --> 00:06:25,732 この者に手当てを 20 00:06:42,631 --> 00:06:44,167 (国春) 討って出るか 21 00:06:44,466 --> 00:06:47,629 それともこの城にこもるか 22 00:07:07,531 --> 00:07:09,989 城にこもる他ありませぬな 23 00:07:11,660 --> 00:07:14,653 勝ちに乗る敵を迎え撃つのは 24 00:07:14,788 --> 00:07:18,077 味方の深手をまねくばかりかと 存じます 25 00:07:19,126 --> 00:07:22,994 まず蜘蛛手の森に前衛を配し 26 00:07:23,756 --> 00:07:26,748 敵をあの迷路に誘って寸断し 27 00:07:27,885 --> 00:07:33,346 少しでも多く 痛手を与えた上 引き払って城にこもる 28 00:07:34,475 --> 00:07:37,262 まずこの一手かと存じます 29 00:07:42,441 --> 00:07:43,727 兵糧は 30 00:07:46,737 --> 00:07:52,107 水粥をすすって まず三月(みつき) 31 00:08:00,000 --> 00:08:01,741 (武者の声) 申し上げます 32 00:08:01,919 --> 00:08:04,911 二の砦より使武者にござります 33 00:08:05,172 --> 00:08:06,583 通せ 34 00:08:08,884 --> 00:08:10,045 通せ 35 00:08:21,480 --> 00:08:24,598 殿 御武運祝着に存じまする 36 00:08:24,858 --> 00:08:25,643 何とじゃ 37 00:08:28,320 --> 00:08:29,151 二の砦の合戦 38 00:08:29,822 --> 00:08:33,656 三木殿の奮迅めざましく 敵もやや攻めあぐむ折も折 39 00:08:33,784 --> 00:08:37,869 一の砦の鷲津殿が乾の寄手を 打ち破った勢い凄まじく 40 00:08:37,996 --> 00:08:40,409 敵の横手より弓を射かけながら 手勢を乗り入れ・・・ 41 00:08:40,541 --> 00:08:41,326 鷲津が 42 00:08:41,458 --> 00:08:42,164 はい 43 00:08:42,292 --> 00:08:43,533 鷲津がのう 44 00:08:43,669 --> 00:08:48,129 (使武者) はい その鷲津殿の働きに 敵はもろくも崩れ去って 45 00:08:48,257 --> 00:08:51,670 今や勝敗はところをかえたかと 見えまする 46 00:08:52,302 --> 00:08:55,511 殿! ただ今鷲津殿 三木殿と その手勢は 47 00:08:55,639 --> 00:08:59,883 逃げ足立った敵を北の舘に追い戻し 囲みを固めておりまする 48 00:09:00,602 --> 00:09:05,267 殿!殿! ただ今北の舘の藤巻殿 49 00:09:05,399 --> 00:09:08,892 頭を丸めると称し 和を請うて参りました 50 00:09:09,236 --> 00:09:10,772 ええい 和議は許さぬ 51 00:09:11,321 --> 00:09:12,152 則保 52 00:09:12,281 --> 00:09:13,271 はっ 53 00:09:15,200 --> 00:09:17,692 直ちに手勢を率いて北の舘に行き 54 00:09:18,662 --> 00:09:20,198 藤巻を斬れ 55 00:09:21,123 --> 00:09:26,084 また国境の備えを固め もし乾に兵を動かす兆しがなくば 56 00:09:26,670 --> 00:09:30,664 うん 鷲津と三木を城へ帰せ 余がじきじきにねぎらおう 57 00:09:43,771 --> 00:09:45,432 (武時) 何という日だ 58 00:09:45,564 --> 00:09:48,306 こんな奇妙な天気は ついぞ見たこともない 59 00:09:50,444 --> 00:09:54,187 (三木) 急ごう殿のお喜びの様子を 一刻も早く見たい 60 00:09:55,324 --> 00:09:56,985 おう いざ 61 00:10:42,830 --> 00:10:44,320 や ここは・・・ 62 00:10:44,581 --> 00:10:47,869 ここは確か先ほど駒をとめた道じゃな 63 00:10:48,377 --> 00:10:51,710 うむ 見ろ 踏み荒らした蹄の跡がある 64 00:10:54,258 --> 00:10:55,543 解せぬな 65 00:10:55,884 --> 00:10:58,376 おぬしこの森は確かに蜘蛛手の森と 思うか 66 00:10:58,512 --> 00:10:59,798 間違いない 67 00:11:00,347 --> 00:11:02,964 だとすると 城まで一息のはずだが 68 00:11:03,100 --> 00:11:04,090 うむ 69 00:11:04,810 --> 00:11:07,768 しかし われらはもう一刻も森の中を 走り続けておる 70 00:11:07,896 --> 00:11:09,557 しかも とんと森から出られん 71 00:11:11,150 --> 00:11:13,391 それでこそ名にし負う 蜘蛛手の森だ 72 00:11:13,527 --> 00:11:15,939 蜘蛛の手のように八方に道が乱れて 73 00:11:16,071 --> 00:11:19,860 寄手を惑わす我が蜘蛛巣城の 要害というものよ 74 00:11:21,577 --> 00:11:24,569 笑止な 寄手は知らず 75 00:11:24,705 --> 00:11:27,743 我ら城の手の者には 勝手知ったる森ではないか 76 00:11:36,466 --> 00:11:39,959 (老婆の笑い声) 77 00:11:41,930 --> 00:11:43,170 聞いたか 78 00:11:43,515 --> 00:11:46,724 物の怪じゃ 物の怪の仕業じゃ 79 00:11:49,521 --> 00:11:53,390 よおし この上はこの槍にかけて 突き伏せて通ろう 80 00:11:53,567 --> 00:11:56,775 うむ八幡 この弓矢にかけて 81 00:11:57,529 --> 00:11:59,361 わーっ 82 00:11:59,489 --> 00:12:00,775 やーつ 83 00:12:04,745 --> 00:12:07,783 (二人の掛け声) 84 00:12:08,123 --> 00:12:12,492 (あざ笑う老婆の声) 85 00:12:32,064 --> 00:12:34,021 (三木) やあれは何だ 86 00:12:35,067 --> 00:12:37,308 おぬし あの小屋に見覚えがあるか 87 00:12:37,444 --> 00:12:40,436 (武時) いやついぞ見掛けたこともない 88 00:12:42,783 --> 00:12:44,774 これも物の怪の仕業よ 89 00:12:44,910 --> 00:12:45,866 しかし 90 00:12:45,994 --> 00:12:49,408 馬を見ろこの怯えようは ただ事ではない 91 00:12:59,383 --> 00:13:07,381 (老婆の声) ♪あさましや あさましや 92 00:13:08,141 --> 00:13:18,121 ♪ などで人の世に生(しょう)をうけ 93 00:13:18,443 --> 00:13:29,103 ♪ 虫の命の細々と 94 00:13:29,204 --> 00:13:42,463 ♪ 身を苦しむる愚かさよ 95 00:13:42,759 --> 00:13:49,081 ♪ 花の命は 96 00:13:49,308 --> 00:13:54,282 ♪短くて 97 00:13:54,479 --> 00:14:08,025 ♪ やがて腐肉となるものを 98 00:14:08,827 --> 00:14:20,133 ♪ それ人間のなりわいは 99 00:14:20,380 --> 00:14:32,886 ♪五欲の炎に身をこがし 100 00:14:33,268 --> 00:14:39,883 ♪ 五濁(ごじょく)の水に 101 00:14:40,025 --> 00:14:46,350 ♪ 身をさらし 102 00:14:46,657 --> 00:14:56,450 ♪ 業(ごう)の上には業を積み 103 00:14:56,708 --> 00:15:10,107 ♪迷いの果てに行きつけば 104 00:15:10,472 --> 00:15:23,398 ♪ 腐肉破れて花と咲き 105 00:15:23,693 --> 00:15:37,093 ♪悪臭かえって香(か)を放つ 106 00:15:37,332 --> 00:15:51,172 ♪ 面白の人の命や 107 00:15:51,429 --> 00:15:55,999 ♪ おもしろや 108 00:15:56,268 --> 00:16:01,388 ♪ おもしろや 109 00:16:08,655 --> 00:16:09,520 何者だ 110 00:16:09,656 --> 00:16:12,489 いや人間かそれとも化生(けしょう)の者か 111 00:16:12,617 --> 00:16:14,574 えい 言わぬか 112 00:16:14,703 --> 00:16:16,660 唄うことができるなら 物も言えよう 113 00:16:16,788 --> 00:16:18,324 はい 114 00:16:19,666 --> 00:16:23,000 鷲津武時様 115 00:16:23,712 --> 00:16:27,876 一の砦の大将様 116 00:16:28,008 --> 00:16:30,590 なに? わしを存じておるのか 117 00:16:30,719 --> 00:16:32,255 はい 118 00:16:33,263 --> 00:16:38,474 今宵から北の舘のお殿様 119 00:16:38,602 --> 00:16:41,969 なに 今宵から北の舘の殿? 120 00:16:42,272 --> 00:16:43,683 はい 121 00:16:44,524 --> 00:16:51,112 やがては蜘蛛巣城の御城主様 122 00:16:52,240 --> 00:16:53,276 ふん 123 00:16:54,493 --> 00:16:57,656 ほざくな ざれ言も程々にせい 124 00:16:58,205 --> 00:17:02,448 このようなめでたいお話に 125 00:17:02,584 --> 00:17:07,294 なぜそのようにお怒りなさるのじゃ 126 00:17:07,422 --> 00:17:10,790 蜘蛛巣城の主は 我が殿をおいて他にはおらぬ 127 00:17:11,635 --> 00:17:16,595 人間はおかしなものよのう 128 00:17:17,557 --> 00:17:23,678 自分の心の底をのぞくのが怖いのじゃ 129 00:17:24,064 --> 00:17:26,555 ううこやつ 130 00:17:30,153 --> 00:17:31,359 待て待て 131 00:17:32,322 --> 00:17:37,192 たとえこの者が化生の者であろうと おぬしの矢先を胸にうけて 132 00:17:37,327 --> 00:17:40,160 ただざれ言をもてあそぶとも 思われぬ 133 00:17:40,288 --> 00:17:43,656 いやわしから とくと問いただしてみよう 134 00:17:44,626 --> 00:17:47,618 これ よく聞け 135 00:17:49,589 --> 00:17:53,958 貴様には現在この眼(まなこ)が見るように 未来のことが見えるのか 136 00:17:54,094 --> 00:17:55,425 はい 137 00:17:56,721 --> 00:17:59,759 三木義明様 138 00:18:00,809 --> 00:18:04,518 二の砦の大将様 139 00:18:05,272 --> 00:18:10,107 今宵からは一の砦の大将様 140 00:18:10,318 --> 00:18:14,278 なに? 今宵から一の砦の大将? ふむ 141 00:18:18,535 --> 00:18:21,072 それから先の所領と位は? 142 00:18:23,081 --> 00:18:30,499 あなたの御運は鷲津様より 小さくて大きい 143 00:18:30,964 --> 00:18:34,548 なに? それはどういう意味だ 144 00:18:35,385 --> 00:18:43,385 あなたのお子様は やがて蜘蛛巣城の御城主様 145 00:19:09,169 --> 00:19:11,160 おっ 146 00:20:13,942 --> 00:20:15,603 (馬のいななき) 147 00:20:31,334 --> 00:20:34,702 (馬のいななき) 148 00:20:50,812 --> 00:20:53,270 (馬のいななき) 149 00:21:17,130 --> 00:21:19,041 (馬のいななき) 150 00:22:18,775 --> 00:22:21,266 (馬のいななき) 151 00:22:53,268 --> 00:22:56,101 おう 城が見える 152 00:22:56,563 --> 00:22:58,519 やっと蜘蛛の手を逃れた 153 00:22:59,399 --> 00:23:00,263 いざ一駆け 154 00:23:00,400 --> 00:23:01,810 ああ いや待て 155 00:23:02,819 --> 00:23:04,480 ひどく疲れた 156 00:23:05,280 --> 00:23:07,396 常になく鎧が重い 157 00:23:07,532 --> 00:23:09,773 うむ 無理もない 158 00:23:10,034 --> 00:23:13,152 昨日の合戦から 馬を乗りつぶすこと三度だ 159 00:23:13,288 --> 00:23:14,698 少し休むか 160 00:23:14,831 --> 00:23:15,821 うむ 161 00:23:27,844 --> 00:23:29,175 眠い 162 00:23:30,972 --> 00:23:34,886 今俺の望みといえば ただぐっすり眠ることだ 163 00:23:35,476 --> 00:23:42,440 いやあ俺はまた すでに夢の中に いるような気がする 164 00:23:43,443 --> 00:23:48,733 あの化生の者に会ったのも 実は夢の中でのことかもしれぬ 165 00:23:49,073 --> 00:23:52,157 夢は五欲のあらわれと言うからな 166 00:23:53,161 --> 00:23:58,156 正直な話 打物とって城の主に なる夢を描かぬ者はあるまい 167 00:24:00,043 --> 00:24:04,036 おぬしのせがれは あの城の主に なるということではないか 168 00:24:04,172 --> 00:24:09,007 いやおぬしこそ 自身あの城の主になるということよ 169 00:24:13,181 --> 00:24:18,597 しかしその前にまず 北の舘の主になるはずだぞ 170 00:24:18,728 --> 00:24:20,935 俺はまた一の砦の将になるはずだ 171 00:24:21,064 --> 00:24:21,724 めでたいの 172 00:24:21,856 --> 00:24:23,221 いやめでたい 173 00:24:32,283 --> 00:24:33,523 しかし・・・ 174 00:24:34,786 --> 00:24:37,277 何だ 何を言おうとしたのだ 175 00:24:37,413 --> 00:24:39,404 いやおぬしこそ 176 00:24:40,083 --> 00:24:41,118 うむ・・・ 177 00:24:42,502 --> 00:24:43,537 しかし 178 00:24:44,504 --> 00:24:49,043 もし今宵から・・・俺が北の舘の主 179 00:24:49,842 --> 00:24:52,459 おぬしガ一の砦の将になったなら 180 00:25:24,168 --> 00:25:28,458 この度の合戦の武功一番 鷲津武時 181 00:25:40,143 --> 00:25:43,727 今宵よりは北の舘の主じゃ! 182 00:25:57,785 --> 00:26:02,575 三木義明 その方の功も 武時には劣らぬ 183 00:26:13,718 --> 00:26:17,962 今宵よりは一の砦の宰領じゃ! 184 00:27:28,167 --> 00:27:31,125 あーあ 185 00:27:33,172 --> 00:27:34,663 のどかじゃのう 186 00:27:34,924 --> 00:27:37,040 うん 極楽じゃ 187 00:27:37,677 --> 00:27:40,885 砦と舘ではこうも住み心地が 違うものか 188 00:27:41,013 --> 00:27:43,255 上には上があるものよのう 189 00:27:43,474 --> 00:27:49,516 身につながる我々も果報ながら さぞ殿や奥方もご満悦であろうな 190 00:28:25,641 --> 00:28:28,429 (浅茅) お覚悟は定まりましたか 191 00:28:28,561 --> 00:28:29,517 いや 192 00:28:30,688 --> 00:28:34,272 俺は悪い夢を見ていた 193 00:28:35,484 --> 00:28:41,151 俺は物の怪に惑わされておった だがもう迷うまい 194 00:28:42,116 --> 00:28:46,326 蜘蛛巣城の主などと そのような大それた望みは 195 00:28:46,454 --> 00:28:50,538 大それた望みなどと仰せられまするな 196 00:28:51,292 --> 00:28:56,628 弓矢とる身に誰一人 それを望まぬ者とてないはず 197 00:28:56,756 --> 00:28:57,837 いや 198 00:29:00,468 --> 00:29:03,176 俺は・・・ このままでよい 199 00:29:04,096 --> 00:29:07,589 この舘の主で大殿に忠勤を励む 200 00:29:08,684 --> 00:29:11,267 分相応の安らかさが好ましい 201 00:29:12,230 --> 00:29:14,516 (浅茅) それは叶いますまい 202 00:29:14,649 --> 00:29:15,309 なに 203 00:29:16,484 --> 00:29:19,021 もし三木義明殿が 204 00:29:19,529 --> 00:29:24,148 蜘蛛手の森の物の怪の予言を 大殿に洩らされたら 205 00:29:25,952 --> 00:29:29,285 (浅茅) その時はこのままでは済みませぬ 206 00:29:30,957 --> 00:29:34,950 大殿は自分の地位を脅かす者として 207 00:29:35,378 --> 00:29:40,918 直ちに軍勢をもって この舘を囲むに相違ござりません 208 00:29:44,470 --> 00:29:47,758 殿の行く道はただ二つ 209 00:29:49,100 --> 00:29:53,309 じっとこのまま 大殿に斬られるのを待つか 210 00:29:54,063 --> 00:29:58,648 大殿を殺して蜘蛛巣城の主になるか 211 00:30:08,494 --> 00:30:12,112 主君を殺すのは大逆だぞ 212 00:30:12,206 --> 00:30:14,243 その御主君も 213 00:30:14,709 --> 00:30:19,794 先君を殺して今の位につかれた方では ござりませぬか 214 00:30:19,922 --> 00:30:21,037 いや 215 00:30:21,549 --> 00:30:24,917 あれは先君が大殿を疑って 殺そうとなされたからだ 216 00:30:26,846 --> 00:30:30,179 大殿は俺を信じておられる 217 00:30:31,309 --> 00:30:33,641 この上なく目をかけて下さるものを 218 00:30:33,769 --> 00:30:39,891 それはあなたの心の底を ご存じないからです 219 00:30:41,027 --> 00:30:42,358 俺の心? 220 00:30:43,988 --> 00:30:45,899 俺の心には何もない 221 00:30:50,286 --> 00:30:51,901 それは嘘です 222 00:30:55,166 --> 00:30:56,281 ばかな 223 00:30:56,959 --> 00:31:01,169 俺は・・・俺はこの舘の主で 満足しておるのだ 224 00:31:01,797 --> 00:31:04,710 もしそれが真実(まこと)だとしても 225 00:31:05,217 --> 00:31:09,052 それを大殿がお信じになるでしょうか 226 00:31:09,388 --> 00:31:13,257 三木殿から あの予言のお話を聞いても 227 00:31:13,392 --> 00:31:14,473 三木… 228 00:31:16,103 --> 00:31:21,098 三木は・・・ 三木は子供の時から 弓矢の友だ 229 00:31:21,233 --> 00:31:23,190 そのような卑劣な真似はせぬ 230 00:31:23,319 --> 00:31:26,436 出世功名のためなれば 231 00:31:26,572 --> 00:31:31,112 親が子を殺し 子が親を殺す世の中です 232 00:31:32,203 --> 00:31:38,324 しょせん 人に殺されぬためには 人を殺さねばならぬ末世です 233 00:31:39,919 --> 00:31:46,256 私はもう三木殿が大殿に 申し上げてしまったのではないかと 234 00:31:46,509 --> 00:31:49,091 そればかりが心配で 235 00:31:53,516 --> 00:31:56,804 浅茅! 人を疑うも程々にせい 236 00:31:56,936 --> 00:31:58,142 (郎党)殿! 237 00:32:03,150 --> 00:32:06,518 申し上げます 裏山の林に蜘蛛巣城の手勢およそ三百 238 00:32:06,654 --> 00:32:07,268 なに 239 00:32:07,405 --> 00:32:09,771 音もなく たむろしておりまするが 240 00:32:09,907 --> 00:32:12,695 殿! 241 00:32:13,035 --> 00:32:15,527 (蹄の音) 242 00:32:16,372 --> 00:32:19,865 この北の舘を囲む林という林 山かげという山かげに 243 00:32:20,001 --> 00:32:21,832 おびただしい軍兵(ぐんぴょう)が見えます 244 00:32:21,961 --> 00:32:24,498 いずれも蜘蛛巣城の手勢と 見えまするが 245 00:32:24,630 --> 00:32:26,120 旗を伏せ 槍を伏せ 246 00:32:26,257 --> 00:32:29,750 馬には枚(ばい)をふくませて ひそかに寄せて参りまする 247 00:32:42,106 --> 00:32:45,144 北の舘 鷲津殿に申す 248 00:32:45,276 --> 00:32:47,858 大殿のお成り! 249 00:32:51,198 --> 00:32:52,359 何事じゃ 250 00:32:52,491 --> 00:32:55,654 殿 大殿のお成りにござります 251 00:32:55,786 --> 00:32:57,402 者ども 出合え! 252 00:32:58,831 --> 00:33:00,162 出合え! 出合え! 253 00:33:03,836 --> 00:33:05,668 ええい 者ども 出合え 254 00:33:05,796 --> 00:33:10,336 鷲津殿 それには及びませぬぞ 大殿にはお忍びの狩競(かりくら)じゃ 255 00:33:10,468 --> 00:33:13,926 万事その態にて 仰々しいお出迎えは無用 256 00:33:54,762 --> 00:33:59,631 (国春一行の笑い声) 257 00:34:07,858 --> 00:34:12,102 御狩競 大猟にて 祝着至極に存じます 258 00:34:12,238 --> 00:34:15,822 いや狩競は表向きのことでな 259 00:34:18,077 --> 00:34:22,161 狩りに事よせて 兵を動かし 乾を討つ所存なのだ 260 00:34:24,458 --> 00:34:26,791 ああ乾の振る舞いは勘弁ならぬ 261 00:34:27,169 --> 00:34:29,502 藤巻と謀って事を構えたあの折 262 00:34:29,630 --> 00:34:32,588 追い討ちを堪えたのは 今日を期してのことじゃ 263 00:34:32,716 --> 00:34:33,957 よいか 264 00:34:34,176 --> 00:34:37,134 本陣は今宵からこの北の舘におく 265 00:34:37,263 --> 00:34:41,757 国境にひそかに主力を集め 満を持して放つ所存 266 00:34:41,892 --> 00:34:44,805 それまではすべて隠密のこと 267 00:34:45,312 --> 00:34:46,552 よいな 268 00:34:48,232 --> 00:34:49,062 武時! 269 00:34:49,191 --> 00:34:49,976 はっ 270 00:34:50,067 --> 00:34:50,772 義明! 271 00:34:51,110 --> 00:34:52,099 はっ 272 00:34:52,361 --> 00:34:55,899 両人とも前(さき)の合戦の功により 名誉をとらすぞ 273 00:34:56,031 --> 00:34:59,240 武時は先陣の将 義明は蜘蛛巣城の留守を仕れ 274 00:34:59,368 --> 00:35:00,529 ははっ 275 00:35:05,916 --> 00:35:08,954 (武時の満足げな笑い声) 276 00:35:13,882 --> 00:35:15,123 浅茅 277 00:35:16,969 --> 00:35:20,553 これでお前の疑り深い心も 得心がいったであろう 278 00:35:23,851 --> 00:35:27,310 大殿はこの俺を信じておられる 279 00:35:28,522 --> 00:35:30,638 義明の讒言(ざんげん)などと 280 00:35:31,150 --> 00:35:34,483 疑り怯える心にこそ 物の怪が忍んでおるのだ 281 00:35:34,612 --> 00:35:37,354 私はそうは思いませぬ 282 00:35:39,617 --> 00:35:41,357 これでもお前は・・・ 283 00:35:41,702 --> 00:35:47,118 よいか 大殿は俺を誰よりも 信任なされておる 284 00:35:48,125 --> 00:35:52,835 だからこそ先陣の将という重い役目を 賜ったのだ 285 00:35:52,963 --> 00:35:58,880 その先手の大将は 前と後ろから矢をうけましょう 286 00:36:06,852 --> 00:36:09,435 大殿もお人の悪い 287 00:36:09,939 --> 00:36:13,602 舌の先三寸でこの舘を取り上げ 288 00:36:14,193 --> 00:36:21,110 最も信任の厚い三木殿に危ない瀬を 渡らずにすむお城の留守を 289 00:36:22,368 --> 00:36:26,031 そして 憎いあなたを矢玉の中へ 290 00:36:30,793 --> 00:36:33,785 三木殿はお城の高見から 291 00:36:34,421 --> 00:36:39,587 人の好いあなたの御最期を 笑って見物なさるでしょう 292 00:36:54,066 --> 00:36:55,101 誰だ 293 00:36:55,234 --> 00:36:56,770 北の舘の者でございます 294 00:36:57,653 --> 00:36:59,519 大殿の御寝所じゃ 295 00:36:59,655 --> 00:37:04,194 北の舘の者であろうと 今宵は これより先へ入ることはならん 296 00:37:04,451 --> 00:37:06,408 御寝所へは近づきませぬ 297 00:37:06,537 --> 00:37:09,028 あの開かずの間を開きに参ります 298 00:37:09,915 --> 00:37:11,076 開かずの間? 299 00:37:12,084 --> 00:37:16,794 この舘の前(さき)の主 藤巻殿が 自害なされた所です 300 00:37:16,922 --> 00:37:18,708 その血糊で染まった床が 301 00:37:18,841 --> 00:37:23,051 いくら手斧をかけても 消えませぬ故 閉じたままにしてあります 302 00:37:23,178 --> 00:37:25,841 その開かずの間を今宵に限って なぜ開くのだ 303 00:37:26,765 --> 00:37:31,760 大殿様が主の部屋へお泊まり故 主の闇をあれにしつらえます 304 00:37:32,104 --> 00:37:36,063 いやそれはお役目ご苦労 お通り下さい 305 00:38:28,535 --> 00:38:32,119 うーん 奇妙だのう 306 00:38:33,665 --> 00:38:38,626 度重なる戦に血潮の海を 幾度越えたか分からぬこの俺が 307 00:38:39,505 --> 00:38:43,168 この血潮の痕だけは 見る度にゾッとする 308 00:38:49,932 --> 00:38:51,718 犬の血だからよ 309 00:38:52,184 --> 00:38:55,677 これは大逆無道の血だ 310 00:38:55,813 --> 00:38:58,304 しかも謀反を企てて敗れると 311 00:38:58,440 --> 00:39:02,855 袖にすがって命ごいをした 卑怯者の血だからだ 312 00:39:14,748 --> 00:39:16,785 (時鳥の声) 313 00:39:16,917 --> 00:39:20,956 くそ 鳥まで不吉な奴が鳴きやがる 314 00:39:32,099 --> 00:39:36,058 (浅茅) あなたは私を疑い深すぎると おっしゃる 315 00:39:36,687 --> 00:39:39,304 しかし その私でさえ 316 00:39:39,440 --> 00:39:43,433 あの予言だけはどうしても 信ぜずにはおられません 317 00:39:44,945 --> 00:39:47,983 よく目を開いてご覧あそばせ 318 00:39:48,991 --> 00:39:51,983 あの予言通りになる手はずが 319 00:39:52,119 --> 00:39:54,281 あなたのお手を少しもわずらわさずに 320 00:39:54,413 --> 00:39:57,371 ちゃんと整っているではありませんか 321 00:40:00,210 --> 00:40:02,998 まだお分かりになりませぬか 322 00:40:04,214 --> 00:40:09,550 大殿は自らあなたの手中に 飛び込まれたのです 323 00:40:11,346 --> 00:40:17,138 今宵を逃してはまたと再び このような機会は参りませぬ 324 00:40:27,905 --> 00:40:32,444 しかし大逆を犯して何の名目が立つ 325 00:40:32,576 --> 00:40:35,909 いや何と言って全軍を率いられよう 326 00:40:36,038 --> 00:40:39,622 大殿はあなたを信じていると 言いながら 327 00:40:39,750 --> 00:40:45,666 則保殿の手の者に警護を任せて おられるのが もっけの幸いです 328 00:40:46,840 --> 00:40:51,255 しびれ薬の入った酒を 警護の者に振る舞い 329 00:40:51,386 --> 00:40:55,846 その眠りに落ちたのを見すまして 大殿を刺し 330 00:40:55,974 --> 00:40:59,888 則保殿の仕業として 全軍に触れるのです 331 00:41:03,524 --> 00:41:06,266 (時鳥の声) 332 00:41:11,198 --> 00:41:14,611 あの声を何とお聞きになります 333 00:41:19,623 --> 00:41:25,414 天下賭けたか・・・私にはそう聞こえます 334 00:41:32,636 --> 00:41:35,469 大望を抱いてこそ男子 335 00:41:35,806 --> 00:41:38,093 蜘蛛巣城を根城に 336 00:41:38,225 --> 00:41:43,015 やがては天下をも望めという 天来の声と聞こえました 337 00:42:12,926 --> 00:42:14,132 誰じゃ 338 00:42:14,845 --> 00:42:17,086 (郎党) 御寝所をしつらえました 339 00:42:21,852 --> 00:42:23,593 ご苦労でした 340 00:42:24,396 --> 00:42:29,482 あっ 大殿警護の方々は いかがしておられます 341 00:42:29,609 --> 00:42:33,148 (郎党) 槍襖を作って 寝ずの番をなされております 342 00:42:33,280 --> 00:42:34,895 それはそれは 343 00:42:36,909 --> 00:42:39,776 では 酒(ささ)など進ぜましょう 344 00:44:21,138 --> 00:44:24,005 (衣ずれの音) 345 00:45:03,305 --> 00:45:05,888 (時鳥の声) 346 00:49:17,851 --> 00:49:21,343 狼藉者じゃ 狼藉者じゃ 347 00:49:29,279 --> 00:49:30,610 出合え 出合え 348 00:49:34,492 --> 00:49:36,609 大殿の大事ぞ! 349 00:49:50,008 --> 00:49:51,293 逆賊! 350 00:50:30,048 --> 00:50:31,003 (国丸) 放せ! 放せ! 351 00:50:31,132 --> 00:50:32,167 (則保) 若君若君 352 00:50:32,300 --> 00:50:34,337 ええい 放せっ 放せと言うのに 353 00:50:34,469 --> 00:50:38,212 短慮はなりませぬ 若君 若君! ひとまず城へ 354 00:50:38,348 --> 00:50:42,762 ええい 放せっ 明らかに武時の謀略じゃ! 355 00:50:42,894 --> 00:50:45,010 このまま逃れては 我らが大逆の汚名を着るぞ! 356 00:50:45,146 --> 00:50:49,731 聞き分けられよ 若君 犬死にして理非は正せませぬぞ 357 00:50:50,068 --> 00:50:53,231 ええい 放せっ 放せと言うのに 358 00:50:54,072 --> 00:50:56,404 若君若君 359 00:50:57,909 --> 00:51:01,322 逃がすな 逆賊だ 大殿の敵(かたき)! 360 00:51:02,997 --> 00:51:07,537 雑兵どもには目をくれるな 目指す敵(かたき)は則保ぞ! 361 00:51:07,752 --> 00:51:09,743 則保は? 則保は 362 00:51:09,879 --> 00:51:11,244 いま一息というところを 363 00:51:11,381 --> 00:51:13,372 うーん 逃げおったか 364 00:51:13,508 --> 00:51:16,591 はっ 若君と共に城へ向かって 365 00:51:16,803 --> 00:51:19,465 なに? 若君を擁して城へ 366 00:51:19,597 --> 00:51:24,182 南無三… 城を守るは三木義明 両人を城へ入れては 367 00:51:24,310 --> 00:51:28,429 いや悪逆無道の両人を城へ入れては 大殿に相済まぬぞ 368 00:51:28,565 --> 00:51:31,147 続け 続け ! 続け! 369 00:51:52,088 --> 00:51:53,624 ええい 追え 追え 370 00:51:53,757 --> 00:51:56,373 それ それ ! 371 00:52:01,723 --> 00:52:04,135 えっ 弓! 弓弓! 372 00:53:21,386 --> 00:53:22,751 しまった 373 00:53:30,728 --> 00:53:32,139 三木殿に申す 374 00:53:33,022 --> 00:53:36,686 大殿乾入道討伐の途次 375 00:53:36,818 --> 00:53:41,437 北の舘鷲津武時の大逆あって 無念のご逝去 376 00:53:41,572 --> 00:53:47,443 小田倉則保 若君国丸様を奉じ 血路を開いて帰城仕った 377 00:53:48,204 --> 00:53:50,161 早々ご開門下されい 378 00:53:50,915 --> 00:53:52,406 (国丸) 開門! 379 00:53:53,668 --> 00:53:56,831 三木殿! 武時の追手も間近でござるぞ 380 00:53:57,672 --> 00:53:59,879 開門! 開門! 381 00:54:00,842 --> 00:54:02,207 開門! 382 00:54:02,719 --> 00:54:04,255 開門! 383 00:54:23,489 --> 00:54:25,150 義明 何事ぞ 384 00:54:25,283 --> 00:54:26,318 若君 385 00:54:45,845 --> 00:54:47,085 追い討ちを殿 386 00:54:47,221 --> 00:54:48,086 殿殿 387 00:54:48,222 --> 00:54:49,633 ええい 待て 待て 388 00:54:51,309 --> 00:54:54,301 殿追い討ちを 殿追い討ちを 389 00:54:56,356 --> 00:54:57,721 ええい待たんか 390 00:55:05,782 --> 00:55:09,150 義明の真意が分からぬうちは めったに動けぬ 391 00:55:09,285 --> 00:55:13,870 大殿の亡き後 このままあの城に 居座る所存とならば 392 00:55:13,998 --> 00:55:17,116 三木義明こそ まず当面の敵じゃ 393 00:55:29,639 --> 00:55:30,674 殿! 394 00:55:32,100 --> 00:55:33,215 殿! 395 00:55:38,189 --> 00:55:41,352 殿奥方様よりのご伝言にござります 396 00:55:41,484 --> 00:55:42,348 何とじゃ 397 00:55:42,485 --> 00:55:45,102 もし三木様が城門を閉じて 開かぬその時は 398 00:55:45,238 --> 00:55:48,276 大殿様の御枢を守って進ませたまえと 399 00:55:49,242 --> 00:55:50,197 うむ 400 00:56:09,304 --> 00:56:11,010 門を開け! 401 00:56:11,889 --> 00:56:13,880 大殿のお帰りじゃ! 402 00:56:15,768 --> 00:56:17,429 開門! 403 00:56:18,688 --> 00:56:23,307 鷲津武時大殿の柩を守って通る 404 00:59:32,256 --> 00:59:34,338 (重々しい物音) 405 01:00:39,115 --> 01:00:44,906 (女たちの泣き声) 406 01:00:49,750 --> 01:00:52,583 奥方はいかがなされた 407 01:00:53,087 --> 01:00:54,703 自害めされた 408 01:00:57,258 --> 01:01:01,627 敵(かたき)に城を与えるのをこの目で 見たくないと仰せられてな 409 01:01:55,649 --> 01:02:00,564 蜘蛛手の森の物の怪は よう言い当てたのう 410 01:02:02,573 --> 01:02:07,568 大殿亡き後乾の輩はきっと この城を狙う 411 01:02:08,496 --> 01:02:10,361 余程の剛の者 412 01:02:11,082 --> 01:02:15,542 まずもって おぬしほどのカがのうては この城は守れん 413 01:02:16,378 --> 01:02:21,623 大評定の座で俺はこの理(ことわり)を 皆に訴える所存じゃ 414 01:02:42,363 --> 01:02:45,070 いずれ ゆるりと話そう 415 01:03:21,193 --> 01:03:22,684 北の舘はどこだ 416 01:03:22,820 --> 01:03:23,775 うん 417 01:03:24,822 --> 01:03:27,530 あの山の裾に・・・ ほれ 418 01:03:27,658 --> 01:03:32,323 ふーむ ここから見下ろすと 哀れなほど小さく見えるのう 419 01:03:32,454 --> 01:03:35,321 うむ上には上があるものよ 420 01:03:35,457 --> 01:03:37,824 いや 果報 ! 果報! 421 01:03:37,960 --> 01:03:42,625 この上 お世継ぎさえお生まれ あそばせば お家万々歳じゃがのう 422 01:03:51,182 --> 01:03:54,470 それではどうあっても この城は 423 01:03:54,602 --> 01:03:59,312 三木殿のお子様に お譲りあそばすのでござりますか 424 01:04:00,858 --> 01:04:06,228 大評定の折 三木は俺を この城主に推して一歩も引かなんだ 425 01:04:07,281 --> 01:04:11,024 俺の今日あるは 三木の変わらぬ友情の賜だ 426 01:04:11,619 --> 01:04:13,359 あの友誼には報いねばならぬ 427 01:04:13,496 --> 01:04:16,784 私はそうは思いませぬ 428 01:04:16,916 --> 01:04:21,706 三木殿があなたを推したのは 情誼からではござりません 429 01:04:21,837 --> 01:04:25,250 それはあなたもよくご存じのはず 430 01:04:26,383 --> 01:04:27,874 そう申すな 431 01:04:29,386 --> 01:04:33,505 三木は勇気もある 知略にも秀でておる 432 01:04:34,099 --> 01:04:38,309 敵に回せば恐ろしいが 味方にすれば頼もしい 433 01:04:39,521 --> 01:04:42,309 そのせがれを わしの世継ぎと定めれば 434 01:04:42,441 --> 01:04:45,558 奴は俺のためにどのような労も いとわぬであろう 435 01:04:47,738 --> 01:04:48,944 よいか 436 01:04:49,198 --> 01:04:53,612 今宵の宴は その世継ぎを披露する大切な催しだ 437 01:04:54,912 --> 01:04:57,574 三木親子を丁重にもてなしてくれ 438 01:04:59,458 --> 01:05:03,247 私は 三木殿のお子様のために 439 01:05:04,088 --> 01:05:07,876 この手を血で汚したのでは ござりません 440 01:05:12,221 --> 01:05:14,633 俺の城主は一代限り 441 01:05:16,016 --> 01:05:18,383 その後は三木の子孫が継ぐ 442 01:05:19,103 --> 01:05:21,685 蜘蛛手の森で聞いたあの予言を 信ずるなら 443 01:05:21,814 --> 01:05:23,546 これもせんないことではないか 444 01:05:23,571 --> 01:05:25,022 私は嫌です 445 01:05:25,609 --> 01:05:27,976 だと申して 子のない我らだ 446 01:05:28,112 --> 01:05:30,694 いずれは誰ぞ世継ぎを迎えねばならぬ 447 01:05:33,409 --> 01:05:34,945 私… 448 01:05:36,453 --> 01:05:38,365 身ごもりました 449 01:05:39,873 --> 01:05:41,159 身ごもった? 450 01:05:42,751 --> 01:05:43,832 はい 451 01:06:10,571 --> 01:06:11,686 たわけ! 452 01:06:14,074 --> 01:06:14,939 何事じゃ 453 01:06:15,993 --> 01:06:19,361 今日は常になくあのおとなしい朝風が 手に負えませぬ 454 01:06:19,496 --> 01:06:23,034 鞍をつけようとすると荒れ狂い 手綱をひきちぎって逃げました 455 01:06:25,294 --> 01:06:29,162 (義照) 父上悪い知らせです 今日の登城はおやめ下さい 456 01:06:29,298 --> 01:06:30,333 ばかな! 457 01:06:31,091 --> 01:06:34,835 今日の宴は我らが正客 不参は許されぬ 458 01:06:47,858 --> 01:06:49,064 父上 459 01:06:51,278 --> 01:06:52,984 先ほども申し上げた通り 460 01:06:53,113 --> 01:06:55,776 この度のお取り計らい ありがたくは存じますが 461 01:06:55,908 --> 01:06:57,114 何が不服なのだ 462 01:06:57,242 --> 01:06:59,279 いいえ 不服なぞと 463 01:07:00,204 --> 01:07:02,912 ただ私には信じられませぬ 464 01:07:03,040 --> 01:07:05,656 物の怪の予言などと・・・ 愚かな 465 01:07:05,792 --> 01:07:07,283 愚かだと? 466 01:07:08,587 --> 01:07:10,874 わしは しかとこの目で見た 467 01:07:11,673 --> 01:07:15,166 またその予言は鷲津の場合は すべて当たった 468 01:07:16,053 --> 01:07:17,293 俺の場合も 今宵… 469 01:07:17,429 --> 01:07:20,967 そのお考えこそ物の怪に憑かれている しるしです 470 01:07:21,099 --> 01:07:22,840 物の怪に操られ 471 01:07:22,976 --> 01:07:25,434 己の手でその予言のままの 事実を作り 472 01:07:25,562 --> 01:07:27,895 予言が当たったとお考えなさる 473 01:07:28,023 --> 01:07:30,185 正気の沙汰とは思えませぬ 474 01:07:30,984 --> 01:07:33,897 信ぜられぬなら信ぜずともよい 475 01:07:35,906 --> 01:07:37,112 しかし・・・ 476 01:07:38,534 --> 01:07:41,526 鷲津がお前を世継ぎに欲しいと 申し出たのは 477 01:07:41,662 --> 01:07:44,074 夢でもなければ幻でもないぞ 478 01:07:44,206 --> 01:07:45,742 よく聞け 479 01:07:48,043 --> 01:07:52,037 血も流さず屍(かばね)も積まず 480 01:07:53,757 --> 01:07:57,125 一国一城を我が物にできるのだぞ 481 01:08:04,039 --> 01:08:07,778 朝風め何が気に食わんのか 見ろ この傷を 482 01:08:07,803 --> 01:08:09,157 おかげでお供がかなわなんだ 483 01:08:09,182 --> 01:08:11,643 おかげでお城の振る舞い酒を逃した 484 01:08:13,569 --> 01:08:16,652 (蹄の音) 485 01:08:21,660 --> 01:08:22,491 お? 486 01:08:22,911 --> 01:08:23,901 朝風 487 01:08:34,965 --> 01:08:40,085 (鼓と笛の音) 488 01:09:05,954 --> 01:09:08,787 三木殿はいかがなされたのかのう 489 01:09:09,333 --> 01:09:11,289 大殿も気になされておる 490 01:09:11,418 --> 01:09:14,126 正客が遅参とは三木殿にも似合わぬ 491 01:09:14,254 --> 01:09:19,215 ♪ いかに鬼神もたしかに聞け 492 01:09:19,593 --> 01:09:24,018 ♪ 昔もさるためしあり 493 01:09:24,244 --> 01:09:31,245 ♪千方(ちかた)と言いし 逆臣(げきしん)に仕えし鬼も 494 01:09:31,271 --> 01:09:36,061 ♪王位を背く天罰にて 495 01:09:36,276 --> 01:09:41,442 ♪ 千方を捨つれば忽ち亡び 496 01:09:41,657 --> 01:09:49,472 ♪ 失せしぞかし 497 01:09:49,498 --> 01:09:53,744 ええい もう舞いはたくさんじゃ やめい! やめい! 498 01:09:54,544 --> 01:09:55,500 はあ 499 01:11:27,012 --> 01:11:29,674 おのれ 義明! 500 01:11:31,809 --> 01:11:34,095 この推参者! 501 01:11:38,023 --> 01:11:39,308 さがれっ 502 01:11:40,525 --> 01:11:43,358 さがれ さがれ 503 01:11:43,487 --> 01:11:45,227 殿殿 504 01:11:46,031 --> 01:11:48,568 ああ お静まり下さい 505 01:11:48,700 --> 01:11:51,818 御酒(ごしゅ)をお過ごしなされたのです 殿 506 01:11:54,373 --> 01:11:58,958 大殿はこの頃 御酒を召し上がると よくこのような・・・ 507 01:12:00,087 --> 01:12:05,298 御先君の不慮のご最期が きつくお心にこたえたのでしょう 508 01:12:31,284 --> 01:12:33,150 ひどく酔うた 509 01:12:37,791 --> 01:12:39,407 どうしたというのじゃ 510 01:12:42,129 --> 01:12:44,120 おぬしたちは少しも飲まぬのう 511 01:12:45,340 --> 01:12:47,422 祝いの席じゃというのに 512 01:13:08,947 --> 01:13:12,315 それにしても三木殿の遅いこと 513 01:13:16,580 --> 01:13:20,414 乾の間者が入り込んでいるという 噂もある 514 01:13:21,543 --> 01:13:23,875 間違いでもなければよいが 515 01:13:43,899 --> 01:13:45,435 また出おった 516 01:14:05,170 --> 01:14:09,254 それほど恨めしくば 太刀を抜いてかかれ 517 01:14:11,927 --> 01:14:13,792 もう一度殺してくれよう 518 01:14:13,929 --> 01:14:17,217 えいえいやあ! 519 01:14:24,606 --> 01:14:26,313 殿殿 520 01:14:27,484 --> 01:14:29,349 お気にさえられまするな 521 01:14:29,486 --> 01:14:32,854 殿の御悩乱は酒が去れば 治まりましょう 522 01:14:32,989 --> 01:14:36,232 思わぬことにて興を殺(そ)ぎ 相済みませぬ 523 01:14:36,368 --> 01:14:38,734 今宵はこれにて お引き取り下さい 524 01:15:02,852 --> 01:15:04,138 (浅茅) さがりゃ! 525 01:15:32,883 --> 01:15:35,590 御立派でござります 526 01:15:35,719 --> 01:15:39,507 やがては天下をも狙おうという殿御が 527 01:15:39,639 --> 01:15:42,882 幻に怯えて取り乱されるとは 528 01:15:43,935 --> 01:15:45,221 誰じゃ! 529 01:16:19,763 --> 01:16:22,425 三木殿は確かに 530 01:16:30,315 --> 01:16:31,145 もうよい 531 01:16:33,902 --> 01:16:35,017 さがれ 532 01:16:37,280 --> 01:16:39,021 大殿としたことが 533 01:16:39,658 --> 01:16:42,821 まだ聞かねばならぬ大事があるはず 534 01:16:46,373 --> 01:16:47,328 小せがれめは? 535 01:16:49,861 --> 01:16:54,370 痛手を負わせましたが 馬にすがって逃げ失せました 536 01:16:54,394 --> 01:16:56,726 (武時) なに 逃がした 537 01:16:57,133 --> 01:16:58,919 申し訳ございません 538 01:17:30,333 --> 01:17:31,243 えい! 539 01:17:43,763 --> 01:17:46,346 殿殿! 540 01:18:09,831 --> 01:18:14,040 (風の音) 541 01:18:30,435 --> 01:18:32,221 吹くわ 吹くわ 542 01:18:32,354 --> 01:18:35,346 城の土台まで揺さぶられそうじゃ 543 01:18:36,900 --> 01:18:38,686 蜘蛛巣城の土台なら 544 01:18:38,818 --> 01:18:42,686 風が吹かいでももうだいぶ 揺らいでおるわさ 545 01:18:42,911 --> 01:18:50,911 これまでは毎日のように 御機嫌伺いに参じた 舘や砦の大将方も 近頃はとんと 546 01:18:50,935 --> 01:18:53,371 触らぬ神にたたりなしじゃ 547 01:18:53,500 --> 01:18:54,910 大殿に疑られて 548 01:18:55,043 --> 01:18:58,877 詰腹切らされた砦の大将が 二人もあってはのう 549 01:18:59,005 --> 01:19:04,216 三木様だとて乾の間者の手に かかったとは思えぬしの 550 01:19:05,011 --> 01:19:06,547 それじゃよ 551 01:19:06,972 --> 01:19:12,558 三木様の嫡男義照様は 乾に身を寄せておるというではないか 552 01:19:12,686 --> 01:19:16,178 親の敵(かたき)のもとへ身を寄せるばかは おらぬで 553 01:19:16,314 --> 01:19:22,811 小田倉則保も国丸様と共に その乾のもとにおると言うし のう? 554 01:19:22,946 --> 01:19:24,902 どうなることやら 555 01:19:25,824 --> 01:19:27,234 いずれにせよ この城も 556 01:19:27,367 --> 01:19:31,280 これまでのように難攻不落とばかり 安心してはおられん 557 01:19:31,746 --> 01:19:34,408 これは大手櫓の者に聞いたのだが 558 01:19:34,541 --> 01:19:39,126 つい先頃鼠の大群が 城から逃げ出すのを見たそうな 559 01:19:40,130 --> 01:19:47,343 昔から 家が焼ける時 まず鼠が逃げ出すというが 560 01:20:05,780 --> 01:20:07,236 いかが致した 561 01:20:08,033 --> 01:20:11,491 奥は・・・奥の容体は何とした 562 01:20:14,039 --> 01:20:15,119 言え! 563 01:20:15,999 --> 01:20:17,785 なぜ黙っておるのじゃ 564 01:20:19,586 --> 01:20:24,421 申し上げようもないことでござります 565 01:20:26,092 --> 01:20:29,551 奥方様には御死産を・・・ 566 01:20:29,679 --> 01:20:32,592 なに 死産 567 01:20:33,350 --> 01:20:35,762 それも胎内に死して 568 01:20:35,894 --> 01:20:39,011 すでに日を経ておりましたこととて 569 01:20:39,147 --> 01:20:44,562 奥方様の御身体も安堵は致しかねます 570 01:20:50,992 --> 01:20:55,577 殿!殿 殿 殿 571 01:21:00,502 --> 01:21:02,413 殿! 殿… 572 01:21:12,263 --> 01:21:13,219 殿! 573 01:21:13,348 --> 01:21:16,886 (泣き出す老女) 574 01:21:52,804 --> 01:21:54,510 ばか者! 575 01:21:59,477 --> 01:22:00,763 ばか者 576 01:22:06,860 --> 01:22:09,977 ばか者 ばか者 ばか者 577 01:22:21,207 --> 01:22:22,618 (郎党) 大殿 578 01:22:23,418 --> 01:22:24,749 大殿 579 01:22:27,505 --> 01:22:29,667 大殿 大殿 580 01:22:35,096 --> 01:22:37,087 大殿 大殿 581 01:22:39,142 --> 01:22:41,383 大殿一の砦から使武者にござります 582 01:22:41,519 --> 01:22:42,554 なに 583 01:22:49,527 --> 01:22:50,733 何事じゃ 584 01:22:50,987 --> 01:22:55,026 乾の軍勢 国境を越えてなだれ込み 一の砦を取り囲みました 585 01:22:55,158 --> 01:22:56,648 先手の将は小田倉則保 586 01:22:56,785 --> 01:23:00,027 国丸君を奉じ 先君の仇を討たんと 称しております 587 01:23:02,290 --> 01:23:07,159 二の砦も敵に囲まれました 寄手の将は 三木義照 588 01:23:11,090 --> 01:23:14,253 一の砦 二の砦 共に敵方に寝返り 589 01:23:14,385 --> 01:23:17,548 力を合わせて今三の砦に 寄せております 590 01:23:55,176 --> 01:23:56,587 ふぬけめ 591 01:23:56,719 --> 01:24:01,634 戦評定もはや一刻に及ぶぞ 変に応ずるの策は誰もないのか 592 01:24:19,325 --> 01:24:20,656 もう頼まぬ 593 01:24:20,785 --> 01:24:22,275 変に驚いて色を変え 594 01:24:22,412 --> 01:24:25,529 声さえ立てられぬふぬけの策を 聞いても始まらぬわ 595 01:24:29,836 --> 01:24:33,124 (雷鳴) 596 01:24:42,765 --> 01:24:45,507 馬引けっ馬 引けーっ ! 597 01:24:56,446 --> 01:24:57,856 出合え! 598 01:24:58,573 --> 01:24:59,858 物の怪! 599 01:25:01,367 --> 01:25:03,950 物の怪 出合え 600 01:25:09,334 --> 01:25:13,168 出合え 物の怪 出合え 出合え 601 01:25:13,296 --> 01:25:16,788 (老婆の笑い声) 602 01:25:23,431 --> 01:25:27,515 出合え 物の怪 出合え 出合え 603 01:25:28,394 --> 01:25:29,384 出合え 604 01:25:29,520 --> 01:25:32,808 (笑い声) 605 01:25:37,236 --> 01:25:39,523 出合え 物の怪! 606 01:25:51,042 --> 01:25:53,454 出合え 物の怪 607 01:26:03,846 --> 01:26:06,133 これは これは 608 01:26:07,433 --> 01:26:12,018 蜘蛛巣城の御城主様 609 01:26:12,563 --> 01:26:15,476 ええい はっきりと返答しろ 610 01:26:15,608 --> 01:26:19,567 義明の子が蜘蛛巣城の主に なるというのは まことか 611 01:26:19,987 --> 01:26:22,649 これは これは 612 01:26:23,950 --> 01:26:28,910 迷いの果てに行きつかれた 613 01:26:30,581 --> 01:26:32,743 めでたや 614 01:26:34,711 --> 01:26:36,918 めでたや 615 01:26:37,588 --> 01:26:39,204 ええいっ 言わぬか 616 01:26:39,340 --> 01:26:43,253 貴様にそのカがあるなら この武時の武運を占え 617 01:26:43,386 --> 01:26:46,799 (笑い声) 618 01:26:52,562 --> 01:26:56,100 御安心なされませ 619 01:26:58,234 --> 01:27:03,103 この蜘蛛手の森が動き出して 620 01:27:04,198 --> 01:27:08,943 蜘蛛巣城へ押し寄せぬ限り 621 01:27:09,870 --> 01:27:16,412 あなた様は戦に敗れることはありませぬ 622 01:27:19,255 --> 01:27:22,793 なにっこの森が押し寄せる 623 01:27:25,720 --> 01:27:28,006 そんなことがあろう道理はない 624 01:27:31,350 --> 01:27:34,809 すると俺は 戦に負けることはないのだな 625 01:27:39,108 --> 01:27:43,227 修羅の道を進むなら 626 01:27:43,905 --> 01:27:49,366 思いきり極悪非道にやれ 627 01:27:50,203 --> 01:27:51,659 よーし 628 01:27:51,788 --> 01:27:57,203 則保も国丸も義明の小せがれも 皆殺しにしてくれる 629 01:27:57,752 --> 01:28:00,209 (笑い声) 630 01:28:00,796 --> 01:28:04,835 屍の山を築くなら 631 01:28:04,967 --> 01:28:09,086 思いきり大きな山を築け 632 01:28:10,097 --> 01:28:11,758 よーし 633 01:28:12,099 --> 01:28:15,308 この白骨の上に新しい屍の山を築くぞ! 634 01:28:15,436 --> 01:28:18,178 (笑い声) 635 01:28:19,691 --> 01:28:22,524 血潮を流すなら 636 01:28:22,943 --> 01:28:26,937 血の河 血の海を作れ 637 01:28:27,365 --> 01:28:28,730 よーし 638 01:28:28,866 --> 01:28:32,234 血潮の雨でこの森を 真っ赤に染めてみせよう 639 01:28:35,790 --> 01:28:37,530 来い則保 640 01:28:37,667 --> 01:28:39,373 乾とも組め 641 01:28:39,502 --> 01:28:41,663 国丸 義照 642 01:28:41,796 --> 01:28:45,129 いやーの砦 二の砦とも組むがよい 643 01:28:45,383 --> 01:28:47,715 幾千 幾万 644 01:28:47,843 --> 01:28:52,007 できる限りの軍兵を集めて 蜘蛛巣城に押してこい 645 01:29:42,606 --> 01:29:43,562 よいか 646 01:29:45,651 --> 01:29:50,646 蜘蛛手の森の要害は ただその蜘蛛手に伸びた道だ 647 01:29:53,367 --> 01:29:55,734 その道の虜になるな 648 01:29:56,621 --> 01:29:58,077 道を行くな 649 01:29:58,414 --> 01:29:59,950 森に入ったら 650 01:30:00,082 --> 01:30:04,918 ただ木(こ)の間を縫って 真っ向に押せ 651 01:30:06,756 --> 01:30:08,371 いよう! 652 01:30:54,428 --> 01:30:57,786 なにっ蜘蛛手の森の伏兵が 逃げ戻ったと 653 01:30:57,811 --> 01:30:58,767 はっ 654 01:30:59,892 --> 01:31:00,973 たわけっ 655 01:31:03,938 --> 01:31:08,780 あの要害に兵を伏せながら寄手に 一矢だに報いず引き払ったと申すのか! 656 01:31:08,805 --> 01:31:09,628 はっ 657 01:31:09,805 --> 01:31:13,770 敵は勝手知ったる小田倉則保 我が手の中には入りませぬ 658 01:31:15,324 --> 01:31:16,359 うーむ 659 01:32:17,553 --> 01:32:21,887 (武時の笑う声) 660 01:32:27,605 --> 01:32:29,436 俺としたことが 661 01:32:40,451 --> 01:32:41,281 者ども! 662 01:32:42,494 --> 01:32:44,030 よく聞け! 663 01:32:44,747 --> 01:32:47,580 戦は最後に勝つ者の勝利ぞ 664 01:32:48,042 --> 01:32:50,328 その他の勝敗はものの数ではない 665 01:32:51,295 --> 01:32:52,660 怯えるな 666 01:32:52,921 --> 01:32:55,037 この鷲津を信じろ! 667 01:32:55,174 --> 01:32:59,292 この俺は金輪際 戦に負けるということはないのだ 668 01:33:09,855 --> 01:33:13,393 信じられぬとあらば 事をわけて話そう 669 01:33:20,491 --> 01:33:25,281 俺が一の砦を承っていた折のこと 670 01:33:25,621 --> 01:33:30,786 乾と組んだ藤巻の反軍を討ち平らげ 城へ帰る道すがら 671 01:33:30,918 --> 01:33:33,409 蜘蛛手の森で物の怪を見た 672 01:33:33,545 --> 01:33:35,877 その物の怪の予言に曰く 673 01:33:36,006 --> 01:33:42,002 汝は今宵 北の舘の主となり やがては蜘蛛巣城の城主たらんと 674 01:33:42,137 --> 01:33:43,798 見よ この俺を 675 01:33:44,473 --> 01:33:48,057 予言は寸分たがわず 俺の行く末を言い当てた 676 01:33:50,771 --> 01:33:53,058 さて 今日(こんにち) じゃ 677 01:33:56,026 --> 01:33:58,734 余は駒を蜘蛛手の森に走らせて 678 01:33:58,862 --> 01:34:02,105 俺の武運の行く末を その物の怪に問うてきた 679 01:34:04,952 --> 01:34:06,158 喜べ 680 01:34:07,079 --> 01:34:11,698 この俺は 天が崩れ地が裂けようと 戦には負けぬぞ! 681 01:34:12,751 --> 01:34:14,742 その物の怪の曰く 682 01:34:14,878 --> 01:34:19,543 あの蜘蛛手の森が動き出し この城に攻め寄せぬ限り 683 01:34:19,675 --> 01:34:22,166 断じて戦には負けぬと 684 01:34:25,598 --> 01:34:28,385 者ども 何とじゃ! 685 01:34:28,517 --> 01:34:30,224 あの森が動くと思うか 686 01:34:30,352 --> 01:34:33,344 (軍兵の笑い声) 687 01:34:38,318 --> 01:34:39,774 よし 688 01:34:40,070 --> 01:34:43,859 俺の武運を信ずる者は 打物を上げい 689 01:34:43,991 --> 01:34:46,357 おーっ 690 01:35:17,233 --> 01:35:18,973 何にも見えねえ 691 01:35:36,543 --> 01:35:37,658 おい 692 01:35:38,045 --> 01:35:42,129 寄手の奴ばら かがり火ひとつ焚かず 何をしとるのかのう 693 01:35:42,299 --> 01:35:45,587 ん? うーん 694 01:35:51,475 --> 01:35:54,467 (斧の音) 695 01:35:59,733 --> 01:36:01,349 何じゃ あれは 696 01:36:05,197 --> 01:36:09,657 寄せ切れぬと見て 柵でも作り始めたんじゃろう 697 01:36:31,307 --> 01:36:33,343 いかに則保といえど 698 01:36:34,184 --> 01:36:38,018 名にし負う この蜘蛛巣城の黒構えには 策もあるまい 699 01:36:39,148 --> 01:36:42,640 寄手からは城の中は少しも見えぬ 700 01:36:43,235 --> 01:36:45,772 城方からは寄手を見通し 701 01:36:47,031 --> 01:36:49,192 もし力押しに押してきたら 702 01:36:49,324 --> 01:36:52,487 引き寄せるだけ引き寄せて 矢玉の雨を降らせるまでじゃ 703 01:36:54,038 --> 01:36:54,948 はっ 704 01:36:56,832 --> 01:36:59,665 (羽ばたきの音) 705 01:37:05,883 --> 01:37:07,214 何事じゃ! 706 01:37:07,676 --> 01:37:09,917 (鳥の声) 707 01:37:11,388 --> 01:37:12,469 寄手か! 708 01:37:12,598 --> 01:37:13,428 夜討ちか! 709 01:37:30,365 --> 01:37:31,355 何事 710 01:37:36,413 --> 01:37:37,653 不吉 711 01:37:42,961 --> 01:37:45,874 何につけ色を失う ふぬけ大将 712 01:37:47,466 --> 01:37:49,923 これをしも 吉兆と思わぬのか 713 01:37:51,136 --> 01:37:55,846 敵の大軍が我が手に落ちるの吉兆を見て 浮き足立つとは何事じゃ 714 01:38:32,970 --> 01:38:34,631 (侍女) 奥方様! 715 01:38:34,888 --> 01:38:37,471 奥方様 奥方様 716 01:39:50,088 --> 01:39:51,749 (浅茅) 取れやしない 717 01:39:51,882 --> 01:39:56,751 ああ 嫌な血だねえ 718 01:40:03,351 --> 01:40:05,513 いくら洗っても 719 01:40:06,021 --> 01:40:08,637 なぜ消えないのかねえ 720 01:40:13,278 --> 01:40:16,361 ああ まだ血の臭いがする 721 01:40:19,951 --> 01:40:23,990 どうして きれいにならないのかねえ この手は・・・ 722 01:40:27,626 --> 01:40:28,832 浅茅! 723 01:40:31,630 --> 01:40:34,247 どうしたのかねえ この血は 724 01:40:37,052 --> 01:40:40,135 手に染みついて取れやしない 725 01:40:43,934 --> 01:40:45,344 洗っても 726 01:40:46,478 --> 01:40:48,094 洗っても・・・ 727 01:40:50,148 --> 01:40:53,641 血なまぐさい臭いがする ああ・・・ 728 01:41:02,828 --> 01:41:04,409 浅茅! 729 01:41:04,663 --> 01:41:07,029 嫌な血だねえ 730 01:41:07,374 --> 01:41:12,164 (軍兵たちのざわめき) 731 01:41:44,828 --> 01:41:45,943 たわけ! 732 01:41:46,371 --> 01:41:49,033 この大事の瀬戸に 何をうろたえておるんじゃ 733 01:41:50,083 --> 01:41:51,244 静まれ! 734 01:41:51,668 --> 01:41:53,955 静まれ 静まらんか! 735 01:41:54,129 --> 01:41:57,713 大殿! 森が・・・ 森が・・・ あの蜘蛛手の森が・・・ 736 01:41:57,841 --> 01:41:58,921 蜘蛛手の森が何とした! 737 01:41:59,051 --> 01:42:01,793 あの森が動き出して・・・ この城へ寄せて参ります 738 01:42:04,055 --> 01:42:05,341 何をばかな 739 01:42:05,474 --> 01:42:09,137 うつけ者の見し幻ぞ 森の動く道理はないわ 740 01:42:44,846 --> 01:42:45,711 あっ 741 01:42:46,181 --> 01:42:47,216 あーっ! 742 01:43:38,108 --> 01:43:39,973 あっああっ! 743 01:43:59,629 --> 01:44:03,338 何事じゃ 持ち場を離れてはならぬ 744 01:44:15,479 --> 01:44:18,812 持ち場につけ 持ち場へ戻れ! 745 01:44:30,285 --> 01:44:31,240 あっ 746 01:44:35,582 --> 01:44:38,324 卑怯者 読めたぞ 747 01:44:38,460 --> 01:44:42,920 俺を殺し 俺の首を土産に 敵の軍門に下る気だな 748 01:44:43,048 --> 01:44:44,834 あーつ あーつ 749 01:44:47,677 --> 01:44:50,168 犬! あーっ あ一つ 750 01:45:00,273 --> 01:45:05,358 犬! 裏切り者! 主君を殺すのは大逆ぞ 751 01:45:05,487 --> 01:45:08,194 先の殿を殺したのは誰だ 752 01:45:19,751 --> 01:45:20,581 犬! 753 01:45:48,029 --> 01:45:49,894 ああ犬! 754 01:47:03,438 --> 01:47:09,104 (風の音) 755 01:47:50,526 --> 01:47:53,609 城よりは寄手は見通しぞ 756 01:47:53,739 --> 01:47:58,608 大荷駄 小荷駄を先に立て その荷のかげに身を寄せよ! 757 01:47:59,745 --> 01:48:03,988 木の枝に隠れて身を矢面にさらすな 758 01:48:18,096 --> 01:48:21,339 (風の音) 759 01:48:31,067 --> 01:48:45,139 ♪見よ妄執の夢の跡 760 01:48:45,165 --> 01:48:59,820 ♪魂魄未だ住むごとし 761 01:48:59,846 --> 01:49:13,459 ♪それ執心の修羅の道 762 01:49:13,485 --> 01:49:32,224 ♪昔も今もかわりなし