1 00:00:11,590 --> 00:00:14,590 (柴)これなんですけど。 2 00:00:14,590 --> 00:00:16,600 (勝呂)素晴らしい! 3 00:00:16,600 --> 00:00:18,600 殺人事件に遭遇するなんて 4 00:00:18,600 --> 00:00:20,600 めったに あることでは ないですからね。 5 00:00:20,600 --> 00:00:23,600 記録に残しておいた方が いいと思いまして。 6 00:00:25,600 --> 00:00:27,610 読ませていただきます。 7 00:00:27,610 --> 00:00:30,610 捜査が終わったら どこかの出版社に 8 00:00:30,610 --> 00:00:32,610 持ち込んでみようと 思っていたんです。 9 00:00:32,610 --> 00:00:36,610 実現するといいですねぇ。 10 00:00:40,620 --> 00:00:43,620 今 ここで読むのですか? 11 00:00:43,620 --> 00:00:45,620 見ていたいんです 読むところを。 12 00:00:45,620 --> 00:00:49,630 ハハハ… お借りしても よろしいですか? 13 00:00:49,630 --> 00:00:51,630 家で じっくり。 14 00:00:51,630 --> 00:00:54,630 そうします? 15 00:01:05,580 --> 00:01:10,580 (♬『Girl of my dreams』) 16 00:01:10,580 --> 00:01:17,580 Thanks for downloading, you can share it with friends but please don't use for online-watching website or other purpose, thank you. 17 00:01:17,580 --> 00:01:22,580 This subtitles is from jpsubbers.xyz, thank them for the share, really appreciate. 18 00:01:22,590 --> 00:01:24,600 〈殿里村における 19 00:01:24,600 --> 00:01:28,600 黒井戸 禄助殺人事件 についての考察〉 20 00:01:28,600 --> 00:01:30,600 〈柴 平祐〉 21 00:01:36,610 --> 00:01:38,610 〈唐津 佐奈子が亡くなったのは 22 00:01:38,610 --> 00:01:42,610 3月16日から17日にかけての 夜だった〉 23 00:01:42,610 --> 00:02:16,580 ♬~ 24 00:02:23,590 --> 00:02:28,590 (袖丈)先生。 恐らく 睡眠薬の飲み過ぎですね。 25 00:02:28,590 --> 00:02:32,600 バルビタールは 量を超えると 毒物となりますから。 26 00:02:32,600 --> 00:02:34,600 (袖丈)死亡推定時刻は 分かりますか? 27 00:02:34,600 --> 00:02:39,600 専門ではないですが 死後8時間というとこですかね。 28 00:02:41,610 --> 00:02:44,610 〈私が 早朝から呼び出されたのは 29 00:02:44,610 --> 00:02:46,610 村で唯一の医者だからだが…〉 30 00:02:46,610 --> 00:02:49,610 じっちゃん。 (男性)おお。 31 00:02:49,610 --> 00:02:52,620 どうだい? 膝の調子は。 いやぁ 柴先生 32 00:02:52,620 --> 00:02:55,620 おかげさんで まあ 大丈夫ですわ。 33 00:02:55,620 --> 00:02:58,620 そっか。 あまり無理しちゃ駄目だぞ。 34 00:02:58,620 --> 00:03:01,640 はい… ありがとうございます。 35 00:03:01,640 --> 00:03:05,640 〈変死体の検視というのは いささか 荷が重かった〉 36 00:03:10,570 --> 00:03:12,570 ただいま。 37 00:03:12,570 --> 00:03:14,570 (カナ)おかえりなさい。 38 00:03:17,580 --> 00:03:21,580 朝ご飯 用意しますね。 けさは いいです。 39 00:03:21,580 --> 00:03:24,580 あまり 食欲が…。 太助から聞いたんだけど 40 00:03:24,580 --> 00:03:28,590 唐津さんの奥さん 亡くなったんですって? 41 00:03:28,590 --> 00:03:30,590 太助っていうのは…。 新聞配達の子。 42 00:03:30,590 --> 00:03:35,590 ああ… 睡眠薬の過剰摂取で 眠っている間に。 43 00:03:35,590 --> 00:03:38,600 自殺だったんでしょ。 虎夫から聞いた。 44 00:03:38,600 --> 00:03:40,600 虎夫? 牛乳配達の子。 45 00:03:40,600 --> 00:03:44,600 決め付けるのは よくないです。 自殺に決まってるわよ。 46 00:03:44,600 --> 00:03:46,610 理由がない。 良心の呵責でしょ。 47 00:03:46,610 --> 00:03:50,610 だって 何てったって 1年前に 旦那さんを殺してるんだから。 48 00:03:50,610 --> 00:03:52,610 それは 姉さんが 勝手に言ってるだけでしょ。 49 00:03:52,610 --> 00:03:56,620 だ… だけどね…。 午前中の往診に行ってきます。 50 00:03:56,620 --> 00:04:00,620 遺書は? ありません! 51 00:04:00,620 --> 00:04:02,620 昼前には戻ります。 52 00:04:05,560 --> 00:04:09,560 〈最後に唐津 佐奈子に会ったのは いつだろうか〉 53 00:04:09,560 --> 00:04:12,560 〈確か あれは1週間前〉 54 00:04:14,570 --> 00:04:17,570 〈あのときは 特に 思い詰めたふうにも 55 00:04:17,570 --> 00:04:20,570 見えなかった〉 56 00:04:20,570 --> 00:04:24,580 〈何かあったら 真っ先に気付いていたはずだ〉 57 00:04:24,580 --> 00:04:26,580 ≪先生。 58 00:04:28,580 --> 00:04:30,580 黒井戸さん。 59 00:04:36,590 --> 00:04:43,600 このたびは 何と申し上げてよいか…。 60 00:04:43,600 --> 00:04:49,600 (黒井戸) 佐奈子は 私の全てだった。 61 00:04:49,600 --> 00:04:52,600 存じ上げております。 62 00:04:52,600 --> 00:04:56,610 気をしっかりと持ってください。 63 00:04:56,610 --> 00:05:03,550 (黒井戸) ハァ… どうして こんなことに…。 64 00:05:03,550 --> 00:05:07,550 どうか そばにいてあげてください。 65 00:05:12,560 --> 00:05:15,560 〈村一番の名士 黒井戸 禄助が 66 00:05:15,560 --> 00:05:20,570 唐津 佐奈子と恋仲だったことは 村の人間なら 誰でも知っていた〉 67 00:05:20,570 --> 00:05:22,570 (黒井戸)先生。 68 00:05:22,570 --> 00:05:28,570 はい。 今夜 うちに来てくれるか? 69 00:05:28,570 --> 00:05:31,580 話したいことがあんだ。 私にですか? 70 00:05:31,580 --> 00:05:35,580 夜の7時。 飯も用意しておく。 71 00:05:35,580 --> 00:05:38,580 分かりました。 72 00:05:42,590 --> 00:05:45,590 〈幾つかの往診を終えて 帰宅すると…〉 73 00:05:45,590 --> 00:05:49,590 ただいま。 診察室に 来仙さん来てるわよ。 74 00:05:49,590 --> 00:05:53,600 来仙さん? 黒井戸家の女中頭の。 75 00:05:53,600 --> 00:05:57,600 ああ。 予約 入ってたかな? 76 00:05:57,600 --> 00:06:02,540 急用なんじゃないかしら? ふーん。 77 00:06:02,540 --> 00:06:06,540 ねえ 知ってた? 春夫が戻ってきてるんですって。 78 00:06:06,540 --> 00:06:11,550 春夫が? もう 今 村中 その噂で持ち切り。 79 00:06:11,550 --> 00:06:13,550 東京にいたんじゃないんですか? 80 00:06:13,550 --> 00:06:19,560 〈春夫は 黒井戸 禄助の 亡くなった奥さんの連れ子だ〉 81 00:06:19,560 --> 00:06:21,560 どうして 戻ってきたんだろう。 82 00:06:21,560 --> 00:06:23,560 黒井戸さんと もめてるからよ。 83 00:06:23,560 --> 00:06:26,560 何で知ってるんです? 何でって もめ事がなかったら 84 00:06:26,560 --> 00:06:28,570 普通 戻ってきたら 実家に泊まるでしょ。 85 00:06:28,570 --> 00:06:31,570 わざわざ 宿を取るなんて おかしいじゃない。 86 00:06:31,570 --> 00:06:33,570 もめ事って? 花子ちゃんのことに 87 00:06:33,570 --> 00:06:36,570 決まってるじゃない。 花子ちゃんが どうしたんです? 88 00:06:36,570 --> 00:06:39,580 婚約したんでしょ? 春夫と。 えっ!? 89 00:06:39,580 --> 00:06:42,580 (カナ)いいのよ。 いとこ同士は結婚したって。 90 00:06:42,580 --> 00:06:44,580 それに 春夫とは 血は つながってないわけだし。 91 00:06:44,580 --> 00:06:48,590 ところが それに 黒井戸さんが大反対。 92 00:06:48,590 --> 00:06:51,590 だから 春夫は宿を取って そこで 花子ちゃんと会ってるわけよ。 93 00:06:51,590 --> 00:06:53,590 2人が婚約したことは どこから? 94 00:06:53,590 --> 00:06:56,590 もちろん 想像よ。 想像? 95 00:06:56,590 --> 00:06:58,590 あたしの。 96 00:07:00,600 --> 00:07:04,540 ≪(ドアの開閉音) 97 00:07:04,540 --> 00:07:07,540 どうされました? 98 00:07:07,540 --> 00:07:10,540 (来仙)この辺りが ひりひりするんです。 99 00:07:10,540 --> 00:07:12,540 ひりひり? 100 00:07:14,550 --> 00:07:18,550 特に…。 ひりひりするんです。 101 00:07:18,550 --> 00:07:22,550 じゃ 取りあえず 軟こうを 出しておきましょうかね。 102 00:07:22,550 --> 00:07:25,560 あの 先生。 はい? 103 00:07:25,560 --> 00:07:28,560 麻薬の中毒というのは 104 00:07:28,560 --> 00:07:30,560 治ることが あるんでございますか? 105 00:07:30,560 --> 00:07:33,570 えっ? 私 知識がないものでして。 106 00:07:33,570 --> 00:07:37,570 麻薬にも色々あります。 ヒロポン。 107 00:07:37,570 --> 00:07:39,570 ヒロポンは 覚せい剤です。 108 00:07:39,570 --> 00:07:43,580 使い過ぎると 中毒を起こし 廃人になることもある。 109 00:07:43,580 --> 00:07:45,580 非常に 危険な薬品です。 110 00:07:45,580 --> 00:07:47,580 治すことはできるんですか? 111 00:07:47,580 --> 00:07:50,580 まあ 程度にもよりますが…。 112 00:07:50,580 --> 00:07:53,590 ありがとうございました。 113 00:07:53,590 --> 00:07:55,590 あっ 軟こうは? 114 00:07:55,590 --> 00:07:57,590 軟こう。 (ドアの閉まる音) 115 00:08:00,590 --> 00:08:04,530 姉さん さっきの話なんだけど…。 116 00:08:04,530 --> 00:08:06,530 姉さん。 117 00:08:12,540 --> 00:08:15,540 姉さん? 118 00:08:15,540 --> 00:08:17,540 姉さん! 119 00:08:17,540 --> 00:08:20,550 ≪ええーい! うおっ! 120 00:08:20,550 --> 00:08:22,550 何だ!? 121 00:08:22,550 --> 00:08:25,550 失礼しました。 先生。 122 00:08:25,550 --> 00:08:28,550 杉野さん 驚かさないでくださいよ。 123 00:08:28,550 --> 00:08:31,560 勝呂です。 あっ 勝呂さん。 124 00:08:31,560 --> 00:08:34,560 散々 苦労した末に 125 00:08:34,560 --> 00:08:38,560 まさか こんな いびつなものが できてしまうとは。 126 00:08:38,560 --> 00:08:41,570 それで 腹いせに。 いや 狙ったわけではありません。 127 00:08:41,570 --> 00:08:43,570 手が滑ったのです。 128 00:08:43,570 --> 00:08:46,570 しかし 多少 いびつな方が 129 00:08:46,570 --> 00:08:48,570 味が濃くて おいしいと聞きますよ。 130 00:08:48,570 --> 00:08:51,580 味は関係ないのです。 私は 非の打ちどころのない 131 00:08:51,580 --> 00:08:56,580 美しいカボチャが 作りたかったのです! もう~! 132 00:08:56,580 --> 00:08:59,580 ああ やめてください モグロさん ちょっと…。 133 00:08:59,580 --> 00:09:01,600 何やってんだ あんた…。 勝呂です! 134 00:09:01,600 --> 00:09:04,520 (カナ)ただいま~。 135 00:09:04,520 --> 00:09:07,530 あっ 姉さん。 春夫なんですけど 136 00:09:07,530 --> 00:09:09,530 どこの宿に泊まっているか…。 猪の湯よ。 137 00:09:09,530 --> 00:09:14,530 猪の湯? 何で あんな汚い所に…。 138 00:09:14,530 --> 00:09:16,530 さて! ここで問題です。 139 00:09:16,530 --> 00:09:20,540 私は 今 そこで 誰に会ったでしょうか? 140 00:09:20,540 --> 00:09:22,540 さあ…。 黒井戸さん。 141 00:09:22,540 --> 00:09:25,540 黒井戸さん? やっぱり 落ち込んでたわね~。 142 00:09:25,540 --> 00:09:29,550 (カナ)《黒井戸さ~ん!》 143 00:09:29,550 --> 00:09:33,550 《ホントに 大変なことになって お悔やみ申し上げます》 144 00:09:33,550 --> 00:09:35,550 (カナ)そりゃそうよね。 恋人の佐奈子さんが 145 00:09:35,550 --> 00:09:38,560 あんなことになっちゃって。 話したんですか? 146 00:09:38,560 --> 00:09:40,560 (カナ)うん。 励ましてあげたわ。 147 00:09:40,560 --> 00:09:42,560 そういうときは 話し掛けない方がいいんですよ。 148 00:09:42,560 --> 00:09:45,560 (カナ)でも 喜んでたわよ。 帰りたがってもいたけど。 149 00:09:45,560 --> 00:09:47,570 喜んでないでしょ じゃあ。 150 00:09:47,570 --> 00:09:51,570 春夫は 猪の湯に泊まってるって 教えてあげた。 151 00:09:51,570 --> 00:09:55,570 姉さん そうやって見境なく 何でもかんでも話す癖は 152 00:09:55,570 --> 00:09:57,580 やめた方がいいなぁ。 そしたら 黒井戸さんね 153 00:09:57,580 --> 00:10:00,580 「すぐに 猪の湯に行ってみる」って おっしゃったから 154 00:10:00,580 --> 00:10:02,580 今は いませんよって。 155 00:10:02,580 --> 00:10:04,580 いないって どうして分かるんです? 156 00:10:04,580 --> 00:10:07,590 だって 八幡さまで見掛けたから。 春夫にも会ったんですか!? 157 00:10:07,590 --> 00:10:09,590 (カナ)それがねぇ…。 158 00:10:09,590 --> 00:10:13,590 女の人と一緒だった。 花子ちゃんじゃないんですか? 159 00:10:13,590 --> 00:10:16,590 (カナ)違うのよ。 顔は よく見えなかったけど 160 00:10:16,590 --> 00:10:20,600 あれは 別の女の人だった。 161 00:10:20,600 --> 00:10:22,600 「親父さえ ぽっくり逝ってくれれば 162 00:10:22,600 --> 00:10:26,600 全てが解決するのにな」 163 00:10:26,600 --> 00:10:29,610 そんなこと 花子ちゃんと話すと思う? 164 00:10:29,610 --> 00:10:32,610 〈姉は 想像力の塊だが 165 00:10:32,610 --> 00:10:37,610 たまに それが当たっているときも あるので 決して 侮れない〉 166 00:10:39,620 --> 00:10:42,620 〈夕方。 その日の診察を終えると 167 00:10:42,620 --> 00:10:45,620 私は 猪の湯へ向かった〉 168 00:10:45,620 --> 00:10:48,630 春夫君。 169 00:10:48,630 --> 00:10:51,630 (春夫)あっ 先生! 170 00:10:51,630 --> 00:10:54,630 戻ってきてるなら 一言 欲しかった。 171 00:10:54,630 --> 00:10:56,630 すみません ごたごたしていて。 172 00:10:56,630 --> 00:11:00,640 上がっていいかな。 どうぞ。 173 00:11:00,640 --> 00:11:03,570 いったい 何があったんだ? 174 00:11:03,570 --> 00:11:07,580 これから どうしたらいいのか 見当もつかないんです。 175 00:11:07,580 --> 00:11:12,580 事と次第によっては 相談に乗ってあげてもいいが。 176 00:11:12,580 --> 00:11:16,590 先生… もう 涙が出そうです。 177 00:11:16,590 --> 00:11:19,590 君と私の仲じゃないか。 178 00:11:19,590 --> 00:11:22,590 ありがとうございます。 179 00:11:22,590 --> 00:11:26,600 黒井戸さんに 関係してることかな。 180 00:11:26,600 --> 00:11:30,600 今回ばかりは 僕も参りました。 181 00:11:30,600 --> 00:11:32,600 君の力になりたいんだが。 182 00:11:34,610 --> 00:11:39,610 やっぱり 先生を 巻き込むわけにはいきません。 183 00:11:39,610 --> 00:11:41,610 これは 僕一人で 184 00:11:41,610 --> 00:11:43,610 立ち向かわなければ ならないんです。 185 00:11:43,610 --> 00:11:46,620 必ず 親父を説得してみせる。 186 00:11:46,620 --> 00:11:48,620 黒井戸さんと何があったんだ。 187 00:11:48,620 --> 00:11:53,620 これは 僕が自分で解決しなくちゃ いけないことなんです。 188 00:11:55,630 --> 00:11:57,630 今回ばかりは。 189 00:11:57,630 --> 00:12:01,650 〈そのときの 春夫の思い詰めた表情を 190 00:12:01,650 --> 00:12:05,570 忘れることはできない〉 191 00:12:05,570 --> 00:12:08,570 〈さて 黒井戸 禄助は 192 00:12:08,570 --> 00:12:13,580 車輪の製造で財を成した 村一番の名士である〉 193 00:12:13,580 --> 00:12:17,580 〈彼の屋敷を訪れたのは 夜の7時ごろだ〉 194 00:12:17,580 --> 00:12:20,580 (袴田)いらっしゃいませ。 やあ。 195 00:12:22,590 --> 00:12:25,590 応接室でお待ちください。 196 00:12:25,590 --> 00:12:27,590 分かった。 197 00:12:31,600 --> 00:12:34,600 (冷泉)どうも 先生。 今夜は往診ですか? 198 00:12:34,600 --> 00:12:38,600 いや いつ お産が始まっても おかしくない患者さんがいてね。 199 00:12:38,600 --> 00:12:41,610 どこへ行くにも 持ち歩いてるんだよ。 200 00:12:41,610 --> 00:12:43,610 後ほど。 201 00:12:51,620 --> 00:12:55,620 ≪(きしむ音) 202 00:12:59,620 --> 00:13:01,590 わあっ! 203 00:13:01,590 --> 00:13:04,590 生け花が しおれていないか 確認を。 204 00:13:06,460 --> 00:13:10,460 あっ 痛み どうですか? 205 00:13:41,500 --> 00:13:47,500 (きしむ音) 206 00:13:51,510 --> 00:13:53,510 (花子)先生。 207 00:13:53,510 --> 00:13:57,520 どうかされました? ああ この扉 208 00:13:57,520 --> 00:13:59,520 袴田に言って 油を差してもらった方がいいね。 209 00:13:59,520 --> 00:14:01,520 (花子)言っておきます。 210 00:14:05,560 --> 00:14:10,560 花子ちゃん。 春夫君の件なんだけども。 211 00:14:10,560 --> 00:14:14,570 ご報告が遅れてしまい ごめんなさい。 212 00:14:14,570 --> 00:14:17,570 えっ まさか…。 213 00:14:17,570 --> 00:14:20,570 私たち 婚約したんです。 214 00:14:20,570 --> 00:14:25,580 こ… 婚約!? はい。 215 00:14:25,580 --> 00:14:29,580 一言あっても よかったんじゃないか? 216 00:14:29,580 --> 00:14:31,580 すみません。 217 00:14:34,590 --> 00:14:37,590 おめでとう。 ありがとうございます。 218 00:14:37,590 --> 00:14:41,590 今さっき 春夫君に会ってたんだよ。 219 00:14:41,590 --> 00:14:43,590 えっ? 戻ってきてるんだ。 220 00:14:43,590 --> 00:14:47,600 猪の湯に泊まってる。 何て言ってました? 221 00:14:47,600 --> 00:14:49,600 ≪(ドアの開く音) あっ…。 222 00:14:49,600 --> 00:14:51,600 (満つる)まあ! お見えになってたんですね! 223 00:14:51,600 --> 00:14:56,610 お邪魔してます。 聞きました? 花子の話。 224 00:14:56,610 --> 00:15:01,600 おめでとうございます。 2人は絶対 お似合いだと思って。 225 00:15:01,600 --> 00:15:03,550 まさに 美男美女。 226 00:15:03,550 --> 00:15:05,550 カワイイ赤ちゃんの顔が 目に浮かぶわね~。 227 00:15:05,550 --> 00:15:07,550 (花子)お母さま およしになって。 228 00:15:07,550 --> 00:15:09,550 先生。 229 00:15:09,550 --> 00:15:11,560 先生は 兄の古いお友達で いらっしゃいますでしょ。 230 00:15:11,560 --> 00:15:15,560 ええ。 先生から 一度 財産分与のこと 231 00:15:15,560 --> 00:15:19,560 聞いてみてもらえないかしら? えっ? 232 00:15:19,560 --> 00:15:21,570 春夫は 血はつながっていなくとも 233 00:15:21,570 --> 00:15:23,570 兄の たった一人の息子。 234 00:15:23,570 --> 00:15:27,570 あの人も いいかげん 腹をくくるしかないと思うの。 235 00:15:27,570 --> 00:15:29,570 同感です。 兄の財産は 236 00:15:29,570 --> 00:15:33,580 春夫が相続するんでしょ。 どうなの? 237 00:15:33,580 --> 00:15:36,580 たぶん そういうことになるでしょう。 238 00:15:36,580 --> 00:15:38,580 問題なのは あたくし。 239 00:15:38,580 --> 00:15:41,590 あたくしのことは どう思ってるの? 240 00:15:41,590 --> 00:15:43,590 一応 義理でも妹なんですから 241 00:15:43,590 --> 00:15:46,590 それなりのことは していただかないと。 242 00:15:46,590 --> 00:15:48,590 お嬢さんが 春夫君と一緒になるんだから 243 00:15:48,590 --> 00:15:51,600 いいじゃないですか。 あたくしはね 244 00:15:51,600 --> 00:15:53,600 あたくしのお金が欲しいの。 245 00:15:53,600 --> 00:15:56,600 散々 兄に頭下げて 生活費 出してもらって。 246 00:15:56,600 --> 00:15:58,600 この先は何? 娘に たかれっていうの? 247 00:15:58,600 --> 00:16:02,540 お母さま。 先生 お困りなのが分からないの? 248 00:16:02,540 --> 00:16:04,540 別に 困ってなんかいないわよねぇ? 249 00:16:04,540 --> 00:16:06,540 困ってます。 (満つる)あら。 250 00:16:06,540 --> 00:16:08,550 (ドアの開く音) 251 00:16:08,550 --> 00:16:12,550 あっ。 蘭堂先生 ご存じでしたっけ? 252 00:16:12,550 --> 00:16:14,550 ええ 以前。 (蘭堂)こんばんは。 253 00:16:14,550 --> 00:16:17,560 ご無沙汰してます。 執筆に疲れると 254 00:16:17,560 --> 00:16:20,560 こちらに来て 気分転換されるんです。 255 00:16:20,560 --> 00:16:24,560 はあ~ 人気作家も 煮詰まることがあるんですか? 256 00:16:24,560 --> 00:16:29,570 フッ。 煮詰まるというのは 257 00:16:29,570 --> 00:16:34,570 物事をじゅうぶんに吟味し 結果が見えてくる状態をいう。 258 00:16:34,570 --> 00:16:38,580 創作活動が滞るときは 「行き詰まる」 259 00:16:38,580 --> 00:16:40,580 君が言いたかったのは こちらではないかな。 260 00:16:40,580 --> 00:16:43,580 ならば 答えはイエス。 261 00:16:43,580 --> 00:16:45,580 ありがとうございました。 (ノック) 262 00:16:47,590 --> 00:16:49,590 お食事の用意ができました。 263 00:16:53,590 --> 00:16:57,600 〈その日の晩さんは 決して 陽気とはいえなかった〉 264 00:16:57,600 --> 00:17:01,600 〈黒井戸は 明らかに 気も そぞろといった様子で 265 00:17:01,600 --> 00:17:04,600 ほとんど 食事に手を付けなかった〉 266 00:17:17,550 --> 00:17:21,550 (黒井戸)どうも 昨日から 胃の調子が悪くてね。 267 00:17:21,550 --> 00:17:23,550 ちょっと 診てみましょう。 268 00:17:23,550 --> 00:17:26,560 もう行っていい。 269 00:17:26,560 --> 00:17:28,560 失礼いたします。 270 00:17:36,570 --> 00:17:40,570 窓が ちゃんと閉まっているか 確かめてもらえないか? 271 00:17:53,580 --> 00:17:56,590 閉まってます。 272 00:17:56,590 --> 00:17:58,590 廊下も。 273 00:18:07,530 --> 00:18:09,530 結構。 274 00:18:09,530 --> 00:18:12,540 胃の調子が悪いってのは 嘘だ。 275 00:18:12,540 --> 00:18:18,540 あの袴田という男 やたら聞き耳を立てるんでね。 276 00:18:18,540 --> 00:18:20,540 だと思いました。 277 00:18:20,540 --> 00:18:25,540 私も 診察道具は入っていません。 278 00:18:28,550 --> 00:18:32,560 柴先生。 とんでもないことになった。 279 00:18:32,560 --> 00:18:36,560 花子ちゃんの件は 私も驚きました。 280 00:18:36,560 --> 00:18:40,560 それもあるが その話は後だ。 281 00:18:40,560 --> 00:18:45,570 去年 佐奈子のご主人が 亡くなったとき 282 00:18:45,570 --> 00:18:47,570 真っ先に駆け付けたのは 君だったよね。 283 00:18:47,570 --> 00:18:50,570 ええ 奥さまから 連絡をもらいまして。 284 00:18:50,570 --> 00:18:54,580 そのとき 何か不審な点はなかったか? 285 00:18:54,580 --> 00:18:58,580 質問の意味が…。 とどのつまり 286 00:18:58,580 --> 00:19:01,600 毒を盛られた形跡は? 287 00:19:01,600 --> 00:19:05,520 確かに そういう噂もありましたが 288 00:19:05,520 --> 00:19:07,520 あれは心臓発作でした。 289 00:19:10,530 --> 00:19:14,530 彼は 毒殺されたんだ。 290 00:19:14,530 --> 00:19:16,530 誰に? 奥さんにだよ。 291 00:19:16,530 --> 00:19:20,540 まさか。 彼女自身が そう言ったんだ。 292 00:19:20,540 --> 00:19:22,540 昨日のことだ。 293 00:19:22,540 --> 00:19:25,540 (佐奈子)《私…》 294 00:19:30,550 --> 00:19:34,550 (佐奈子)《夫を殺しました》 295 00:19:34,550 --> 00:19:41,560 3カ月前 私は 佐奈子に結婚を申し込んだ。 296 00:19:41,560 --> 00:19:44,560 ご主人が亡くなって1年 頃合いかと思ったんだ。 297 00:19:44,560 --> 00:19:48,570 《こんなこと お話できるのは 禄助さんしかいなくて…》 298 00:19:48,570 --> 00:19:51,570 (黒井戸)佐奈子は泣き崩れた。 299 00:19:51,570 --> 00:19:55,570 そして 打ち明けてくれたんだ。 300 00:19:55,570 --> 00:20:01,580 乱暴な夫への憎しみ。 私に対する思い。 301 00:20:01,580 --> 00:20:05,580 そして その結果…。 ご主人を毒殺。 302 00:20:05,580 --> 00:20:08,580 さらに 彼女は…。 303 00:20:10,590 --> 00:20:12,590 驚くべき話をした。 304 00:20:12,590 --> 00:20:14,590 《許せない人間がいるんです》 305 00:20:14,590 --> 00:20:20,600 (黒井戸)佐奈子は 夫に毒を飲ませたことを 306 00:20:20,600 --> 00:20:25,600 ある人物に嗅ぎつけられ 脅されていたらしいんだ。 307 00:20:25,600 --> 00:20:29,610 これまで 大金を支払ってきたと。 308 00:20:29,610 --> 00:20:32,610 恐喝? 金を払わなければ 309 00:20:32,610 --> 00:20:35,610 夫殺しのことを 警察に伝えると。 310 00:20:35,610 --> 00:20:38,620 誰なんです? 知らん。 311 00:20:38,620 --> 00:20:42,620 名前を聞かなかったんですか? 教えてくれなかった。 312 00:20:42,620 --> 00:20:45,620 中途半端な…。 313 00:20:45,620 --> 00:20:51,630 私が知れば 半殺しにでもすると 思ったんじゃないのか。 314 00:20:51,630 --> 00:20:57,640 彼女は あと1日 考えさせてくれと言った。 315 00:20:57,640 --> 00:21:01,610 まさか こんなことになろうとは。 316 00:21:01,610 --> 00:21:03,470 私が追い詰めたようなもんだ。 317 00:21:03,470 --> 00:21:07,480 そんなふうに考えない方が いいと思いますよ。 318 00:21:07,480 --> 00:21:13,480 佐奈子を脅迫したやつを 許すわけにいかん。 319 00:21:13,480 --> 00:21:16,490 しかし そいつを 法の下に引きずり出せば 320 00:21:16,490 --> 00:21:21,490 佐奈子さん自身の犯罪も 明るみに出ることになります。 321 00:21:21,490 --> 00:21:24,490 お気持ちは分かりますが…。 322 00:21:28,500 --> 00:21:31,500 ≪(ノック) 323 00:21:31,500 --> 00:21:33,500 誰だ? 324 00:21:33,500 --> 00:21:37,510 ≪(袴田)袴田でございます。 旦那さまに お手紙が。 325 00:21:37,510 --> 00:21:40,510 入れ。 326 00:21:40,510 --> 00:21:42,510 失礼いたします。 327 00:21:46,520 --> 00:21:48,520 こちらでございます。 328 00:21:59,530 --> 00:22:02,530 君は もう よい。 329 00:22:13,580 --> 00:22:17,580 佐奈子からだ。 まさか。 330 00:22:17,580 --> 00:22:20,580 これは 彼女の遺書だ。 331 00:22:20,580 --> 00:22:23,580 遺書? 332 00:22:31,600 --> 00:22:33,600 廊下を。 333 00:22:46,610 --> 00:22:49,610 誰もいません。 どうも 今夜は 334 00:22:49,610 --> 00:22:52,610 誰かに監視されてるような 気がしてならん。 335 00:22:59,620 --> 00:23:04,560 (佐奈子)「愛する禄助さま」 336 00:23:04,560 --> 00:23:09,570 「命は 命をもって償うしかない」 337 00:23:09,570 --> 00:23:14,570 「私も ようやく それに気付きました」 338 00:23:14,570 --> 00:23:20,580 「この1年 私の人生を 生き地獄にした人間への罰は 339 00:23:20,580 --> 00:23:22,580 あなたに お任せします」 340 00:23:25,580 --> 00:23:30,590 (佐奈子)「あのときは 名前を言いませんでしたが…」 341 00:23:30,590 --> 00:23:35,590 「今は お伝えする気持ちに…」 342 00:23:35,590 --> 00:23:41,600 申し訳ないが 席を外してもらえないか? 343 00:23:41,600 --> 00:23:44,600 えっ? この先は 私一人で読みたい。 344 00:23:44,600 --> 00:23:47,600 いや 今 読んでください。 気になるじゃないですか。 345 00:23:47,600 --> 00:23:49,610 何が書いてあったかは 後で伝える。 346 00:23:49,610 --> 00:23:52,610 今 知りたいんです。 今日は帰ってくれ。 347 00:23:52,610 --> 00:23:55,610 ここまで話しといて それはないでしょう。 348 00:23:55,610 --> 00:23:59,620 乗りかかった船です。 気持ちは ありがたいが。 349 00:23:59,620 --> 00:24:01,640 ざっと目を通して 350 00:24:01,640 --> 00:24:03,550 犯人の名前だけでも 教えてくれませんか? 351 00:24:03,550 --> 00:24:08,560 あんたも しつこいな。 申し訳ないが 今日のところは。 352 00:24:08,560 --> 00:24:11,560 お願いします。 断る! 353 00:24:25,580 --> 00:24:29,580 黒井戸さんは 邪魔されたくないそうだ。 354 00:24:29,580 --> 00:24:31,580 何か呼ばれたような気が したものですから。 355 00:24:31,580 --> 00:24:33,580 呼んでない。 356 00:24:33,580 --> 00:24:35,580 かしこまりました。 357 00:24:49,600 --> 00:24:54,610 (鐘の音) 358 00:24:54,610 --> 00:25:02,550 (復員服の男) ♬「右のポッケにゃ 夢がある」 359 00:25:02,550 --> 00:25:11,550 ♬「左のポッケにゃ チュウインガム」 360 00:25:14,560 --> 00:25:17,560 ただいま。 361 00:25:17,560 --> 00:25:20,560 おかえりなさい。 ただいま。 362 00:25:24,570 --> 00:25:29,570 (♬『Girl of my dreams』) 363 00:25:29,570 --> 00:25:43,590 ♬~ 364 00:25:43,590 --> 00:25:50,590 ☎ 365 00:25:50,590 --> 00:25:53,600 はい 柴です。 366 00:25:53,600 --> 00:25:56,600 ああ どうしました? 367 00:25:58,600 --> 00:26:01,620 まさか… そんな…。 368 00:26:01,620 --> 00:26:07,540 何? 分かりました。 すぐ戻ります。 369 00:26:07,540 --> 00:26:09,550 何なの? 370 00:26:09,550 --> 00:26:12,550 黒井戸さんとこの執事の 袴田からです。 371 00:26:12,550 --> 00:26:15,550 たった今 黒井戸さんが 殺されてるのが 372 00:26:15,550 --> 00:26:17,550 見つかったそうです。 373 00:26:17,550 --> 00:26:20,560 えっ!? 374 00:26:20,560 --> 00:26:32,570 ♬~ 375 00:26:32,570 --> 00:26:35,570 (チャイム) 376 00:26:42,580 --> 00:26:44,580 先生。 何を落ち着いているんだ! 377 00:26:44,580 --> 00:26:46,580 警察は呼んだのか? 警察? 378 00:26:46,580 --> 00:26:49,590 いいかげんにしないか! 何が 何だか…。 379 00:26:49,590 --> 00:26:51,590 黒井戸さんは? 書斎におられますが。 380 00:26:51,590 --> 00:26:54,590 今さっき 電話で 殺されたって! 381 00:26:54,590 --> 00:26:56,590 誰が? もう いい! 382 00:27:02,530 --> 00:27:04,530 黒井戸さん! 383 00:27:04,530 --> 00:27:07,540 黒井戸さん? 旦那さま? 384 00:27:07,540 --> 00:27:09,540 (ドアノブを回す音) 黒井戸さん! 385 00:27:09,540 --> 00:27:12,540 入れてください 黒井戸さん! 386 00:27:12,540 --> 00:27:14,540 蹴破ってくれ! しかし…。 387 00:27:14,540 --> 00:27:17,550 嫌な予感がする。 責任は 私が取る。 388 00:27:17,550 --> 00:27:20,550 一度やってみたかったんです。 389 00:27:20,550 --> 00:27:36,570 ♬~ 390 00:27:36,570 --> 00:27:41,570 あっ 触ってはいけない! すぐに 警察に連絡を! 391 00:27:41,570 --> 00:27:43,570 はい! 392 00:27:43,570 --> 00:27:46,580 それから 秘書の彼を呼んできてください。 393 00:27:46,580 --> 00:27:49,580 かしこまりました。 女性の方々には? 394 00:27:49,580 --> 00:27:51,580 まだ何も言うな。 395 00:28:03,180 --> 00:28:07,190 ああ…。 396 00:28:07,190 --> 00:28:10,190 亡くなってるんですか? 397 00:28:10,190 --> 00:28:13,190 残念ながら。 ああ…。 398 00:28:13,190 --> 00:28:16,190 触ってはいけない。 399 00:28:16,190 --> 00:28:18,200 警察が来るまでは このままの状態で。 400 00:28:18,200 --> 00:28:20,200 あっ そうでした。 401 00:28:20,200 --> 00:28:23,200 探偵小説では よく こんな場面を読むんですよね。 402 00:28:31,210 --> 00:28:34,210 (冷泉・柴)触ってはいけない。 403 00:28:34,210 --> 00:28:36,210 失礼。 404 00:28:36,210 --> 00:28:41,220 ん? あっ これ…。 405 00:28:41,220 --> 00:28:46,220 チュニジアの短剣ですよ。 (蘭堂)そのようだな。 406 00:28:46,220 --> 00:28:48,230 何です? 黒井戸さんのコレクションですよ。 407 00:28:48,230 --> 00:28:51,230 応接室の陳列ケースにあった。 408 00:28:58,240 --> 00:29:00,240 (刑事)ぶつけるなよ。 409 00:29:04,180 --> 00:29:08,180 (袖丈) えー では 死体を発見したのは? 410 00:29:08,180 --> 00:29:12,180 私と 執事の袴田です。 411 00:29:12,180 --> 00:29:14,190 ご自宅に 電話がかかってきたと おっしゃいましたね。 412 00:29:14,190 --> 00:29:18,190 はい。 電話の相手は 袴田と はっきり名乗りました。 413 00:29:18,190 --> 00:29:21,190 私は そのような電話は かけておりません。 414 00:29:21,190 --> 00:29:24,200 (袖丈) うーん。 おかしな話ですな。 415 00:29:24,200 --> 00:29:27,200 柴先生。 黒井戸さんは 死んで どのぐらい? 416 00:29:27,200 --> 00:29:30,200 死後30分といったところですか。 417 00:29:30,200 --> 00:29:33,210 死亡推定時刻は 午後10時。 418 00:29:33,210 --> 00:29:37,210 黒井戸さんの生きている 最後の姿を見たのは? 419 00:29:37,210 --> 00:29:39,210 たぶん 私です。 420 00:29:39,210 --> 00:29:42,210 8時50分に 黒井戸さんと別れて 書斎を出ました。 421 00:29:42,210 --> 00:29:45,220 誰にも邪魔されたくないと 言うので 422 00:29:45,220 --> 00:29:47,220 その旨 袴田に伝えました。 423 00:29:47,220 --> 00:29:50,220 (袖丈)その後に 黒井戸さんを 見た人はいませんね? 424 00:29:50,220 --> 00:29:52,220 (冷泉)ああ 9時半ごろに 425 00:29:52,220 --> 00:29:54,230 書斎の前を 通り掛かったんですが 426 00:29:54,230 --> 00:29:59,230 黒井戸さんが 誰かと 話している声を聞きました。 427 00:29:59,230 --> 00:30:01,250 (袖丈)誰と? (冷泉)いや そのときは 428 00:30:01,250 --> 00:30:05,170 柴先生かと思ったんですが…。 いや 私ではない。 429 00:30:05,170 --> 00:30:09,170 あなたですか? (蘭堂)違うね。 430 00:30:09,170 --> 00:30:14,180 9時半の段階では 黒井戸さんは まだ生きていた。 431 00:30:14,180 --> 00:30:18,180 (袴田)あっ 9時45分ごろ 432 00:30:18,180 --> 00:30:22,190 花子お嬢さまが 旦那さまと お会いになっています。 433 00:30:22,190 --> 00:30:24,190 誰? (冷泉)黒井戸さんの 434 00:30:24,190 --> 00:30:27,190 めいごさんですよ。 花子ちゃんが? 435 00:30:27,190 --> 00:30:32,200 はい。 お嬢さまが 書斎から出てこられるところを 436 00:30:32,200 --> 00:30:35,200 私 たまたま 見てしまいまして。 437 00:30:37,200 --> 00:30:39,200 《袴田》 438 00:30:39,200 --> 00:30:41,210 《伯父さまは もう 今晩は 邪魔されたくないと 439 00:30:41,210 --> 00:30:46,210 おっしゃっているわ》 (袴田)《かしこまりました》 440 00:30:46,210 --> 00:30:48,210 花子さんを 呼んできてもらえますか? 441 00:30:48,210 --> 00:30:50,220 かしこまりました。 442 00:30:50,220 --> 00:30:53,220 (蘭堂)あの人は まだ 何が起こったか知らないはずだ。 443 00:30:53,220 --> 00:30:55,220 言葉には気を付けて。 444 00:30:55,220 --> 00:30:58,220 かしこまりました。 445 00:30:58,220 --> 00:31:01,190 柴先生。 ちょっと よろしいですか。 446 00:31:01,190 --> 00:31:03,190 はい。 447 00:31:07,070 --> 00:31:10,070 えー はん…。 448 00:31:10,070 --> 00:31:14,070 犯人は ここから侵入し ここから出ていってます。 449 00:31:14,070 --> 00:31:17,080 足跡が それを証明しています。 450 00:31:17,080 --> 00:31:19,080 あっ そこに足跡が! 451 00:31:19,080 --> 00:31:23,080 分かってます。 あの 分かってます。 452 00:31:23,080 --> 00:31:26,080 先生がお帰りになったとき 窓は? 453 00:31:26,080 --> 00:31:28,090 閉まってました。 はっきり覚えています。 454 00:31:28,090 --> 00:31:30,090 鍵も掛かっていた。 つまり…。 455 00:31:30,090 --> 00:31:34,090 では 犯人は どうやって 中に? 456 00:31:34,090 --> 00:31:36,090 まあ 鍵は壊れてないので 457 00:31:36,090 --> 00:31:38,100 黒井戸さんが 招き入れた可能性が高いですな。 458 00:31:38,100 --> 00:31:42,100 つまり…。 (冷泉)顔見知りの犯行。 459 00:31:42,100 --> 00:31:44,100 じゅうぶん あり得ますね。 460 00:31:44,100 --> 00:31:48,110 実は 袖丈さん ここを出て うちに帰る途中 461 00:31:48,110 --> 00:31:52,110 地蔵の辻で 怪しい男と擦れ違ったんです。 462 00:31:52,110 --> 00:31:55,110 見掛けない顔でした。 (袖丈)時間は? 463 00:31:55,110 --> 00:31:58,120 ちょうど9時でした。 寺の鐘が鳴ったので。 464 00:31:58,120 --> 00:32:03,150 ひょっとしたら こっちに向かっていたのかも。 465 00:32:03,150 --> 00:32:07,160 気になりますなぁ。 466 00:32:07,160 --> 00:32:11,160 (袖丈)えー 袴田が あなたが伯父さんの書斎から 467 00:32:11,160 --> 00:32:14,170 9時45分に出てくるのを見たと 言っているんですが 468 00:32:14,170 --> 00:32:16,170 間違いありませんか? (花子)間違いありません。 469 00:32:16,170 --> 00:32:20,170 おやすみの挨拶をしに。 (袖丈)うん。 470 00:32:20,170 --> 00:32:22,170 伯父さんの様子 いかがでしたかね? 471 00:32:22,170 --> 00:32:24,180 お一人でした? それとも 誰かと一緒でした? 472 00:32:24,180 --> 00:32:27,180 1人でした。 473 00:32:27,180 --> 00:32:29,180 何があったんですか? 474 00:32:29,180 --> 00:32:32,180 (袖丈)伯父さんとは どのような会話を? 475 00:32:32,180 --> 00:32:34,190 おやすみの挨拶…。 (袖丈)それだけですか? 476 00:32:34,190 --> 00:32:37,190 それだけです。 477 00:32:37,190 --> 00:32:40,190 ありがとう。 もういいよ。 478 00:32:40,190 --> 00:32:43,190 あの… いったい 何があったんですか? 479 00:32:45,200 --> 00:32:48,200 実はね…。 黒井戸さん 殺されちゃいましたよ。 480 00:32:48,200 --> 00:32:52,200 首にナイフが ぐさりと。 (花子)ああ…。 481 00:32:52,200 --> 00:32:55,210 言い方ってもんがあるだろう! (冷泉)ああ。 482 00:32:55,210 --> 00:32:57,210 いつですか!? (袖丈)おそらく あなたが 483 00:32:57,210 --> 00:33:00,210 書斎から出た すぐ後です。 484 00:33:00,210 --> 00:33:03,210 ああ…。 (冷泉)あっ。 485 00:33:06,150 --> 00:33:08,150 どいて。 486 00:33:08,150 --> 00:33:10,150 大丈夫? 487 00:33:12,160 --> 00:33:14,160 少し 横になってた方がいい。 488 00:33:14,160 --> 00:33:17,160 犯人は? まだ分からない。 489 00:33:17,160 --> 00:33:19,160 (ノック) (袴田)失礼いたします。 490 00:33:19,160 --> 00:33:21,170 女中頭の来仙が 491 00:33:21,170 --> 00:33:24,170 どうしても 警察の方に お話ししたいことがあるらしく。 492 00:33:24,170 --> 00:33:29,170 旦那さまが殺されたというのは 本当でございますか。 493 00:33:31,180 --> 00:33:34,180 今夜9時半ごろでしたでしょうか。 494 00:33:34,180 --> 00:33:39,180 お屋敷から 少し行ったところに 小さなお堂があるのですが 495 00:33:39,180 --> 00:33:42,190 たまたま そこを通り掛かったときに 496 00:33:42,190 --> 00:33:45,190 怪しい人影を見たのでございます。 497 00:33:45,190 --> 00:33:47,190 怪しい…。 (冷泉)怪しい人影? 498 00:33:47,190 --> 00:33:50,200 (来仙)お屋敷の様子を 伺っているふうでございました。 499 00:33:50,200 --> 00:33:53,200 どんな人物でしたか? (冷泉)男? 女? 500 00:33:53,200 --> 00:33:55,200 それは…。 501 00:33:55,200 --> 00:33:57,200 ひょっとして あなたの知ってる人ですか? 502 00:33:57,200 --> 00:34:00,210 ええ…。 誰なんです? 503 00:34:00,210 --> 00:34:06,140 あれは おそらく 春夫坊ちゃまでございます。 504 00:34:06,140 --> 00:34:08,150 えっ…。 (冷泉)あの人は 今は 505 00:34:08,150 --> 00:34:11,150 東京にいるはずだ。 506 00:34:11,150 --> 00:34:15,150 いや 戻ってきてるんだ。 507 00:34:15,150 --> 00:34:19,150 今は 猪の湯に泊まってる。 508 00:34:30,260 --> 00:34:35,260 昨日は すみませんでした。 いや 誰だって ああなると思うな。 509 00:34:35,260 --> 00:34:37,260 伯父さまは お気の毒でしたね。 510 00:34:37,260 --> 00:34:40,270 一緒に暮らしたのは 1年ちょっとですが 511 00:34:40,270 --> 00:34:42,270 数少ない身内ですから。 512 00:34:42,270 --> 00:34:45,270 しかも あんな殺され方してはねぇ。 513 00:34:45,270 --> 00:34:47,270 姉さん 向こう行っててもらえませんか。 514 00:34:47,270 --> 00:34:50,280 花子さんは 私に用事があるんです。 515 00:34:50,280 --> 00:34:54,280 そんな言い方する? 516 00:34:54,280 --> 00:34:57,280 花子ちゃんは 身内みたいなもんだ。 517 00:34:57,280 --> 00:35:00,290 何でも力になるから 遠慮なく言ってくださいね。 518 00:35:00,290 --> 00:35:02,290 先生。 519 00:35:02,290 --> 00:35:05,290 これから一緒に お隣のうちへ 行ってもらえませんか? 520 00:35:05,290 --> 00:35:09,300 隣? (花子)はい。 521 00:35:09,300 --> 00:35:11,300 勝呂さん? 522 00:35:11,300 --> 00:35:14,300 あの方が どういうお方か ご存じないんですか? 523 00:35:14,300 --> 00:35:17,300 私立探偵ですよ。 それも世界的に有名な。 524 00:35:17,300 --> 00:35:19,310 あの男が? (カナ)やっぱり~? 525 00:35:19,310 --> 00:35:23,310 もう どっかで聞いた名前だと 思ったのよ! 526 00:35:23,310 --> 00:35:25,310 難事件を幾つも解決し 527 00:35:25,310 --> 00:35:28,330 それで一生 食べていけるだけの お金を稼いで 引退。 528 00:35:28,330 --> 00:35:30,250 そして この村に。 529 00:35:30,250 --> 00:35:32,250 それをどこで? 亡くなった伯父が 530 00:35:32,250 --> 00:35:35,250 冷泉さんを使って 調べさせたんです。 531 00:35:35,250 --> 00:35:37,260 村のことは 何でも知っておかないと 532 00:35:37,260 --> 00:35:41,260 気が済まない人だから。 で 彼に会って どうするの? 533 00:35:41,260 --> 00:35:43,260 事件を調査してもらうんです。 534 00:35:43,260 --> 00:35:46,270 (カナ)あっ それ! それはいいかもしれな…。 535 00:35:46,270 --> 00:35:48,270 もう…。 536 00:35:52,270 --> 00:35:54,270 警察は 春夫さんを疑ってます。 537 00:35:54,270 --> 00:35:57,280 今も村中 捜し回ってます。 538 00:35:57,280 --> 00:35:59,280 猪の湯にはいなかったの? 539 00:35:59,280 --> 00:36:03,280 ゆうべ 警察が着いたころには 姿を消していたそうです。 540 00:36:03,280 --> 00:36:06,290 どこに行ってしまったんだろう。 541 00:36:06,290 --> 00:36:09,290 勝呂さんを 頼りにするしかないんです。 542 00:36:09,290 --> 00:36:12,290 しかし あんな男を この事件に 543 00:36:12,290 --> 00:36:14,290 引きずり込まない方が いいと思うよ。 544 00:36:14,290 --> 00:36:18,300 ここは 地元の警察に…。 春夫さんを救いたいんです。 545 00:36:18,300 --> 00:36:22,300 春夫さんを救ってあげられるのは 勝呂さんしかいないんです! 546 00:36:25,300 --> 00:36:29,240 うちの庭で とれたカボチャです。 547 00:36:29,240 --> 00:36:32,240 変わった形をしていますね。 548 00:36:32,240 --> 00:36:35,250 丸いものが苦手でしてねぇ。 549 00:36:35,250 --> 00:36:37,250 コロコロと転がるのが嫌で 550 00:36:37,250 --> 00:36:40,250 それで こういうものを作ってみました。 551 00:36:40,250 --> 00:36:42,250 品種改良されてるんですか? 552 00:36:42,250 --> 00:36:46,260 最終的には目指していますが 今は ただ 553 00:36:46,260 --> 00:36:52,260 実が まだ小さいときに こういうものに はめています。 554 00:36:52,260 --> 00:36:55,270 フハハハ…。 555 00:36:55,270 --> 00:37:03,280 ところで 今日は この勝呂に 何かご用かな? 556 00:37:03,280 --> 00:37:08,280 昨日の事件のことは もう お聞き及びでしょうか? 557 00:37:08,280 --> 00:37:10,280 もちろん。 558 00:37:10,280 --> 00:37:14,290 亡くなったのは あなたの伯父さまでしたねぇ。 559 00:37:14,290 --> 00:37:18,290 はい。 悲しい出来事でした。 560 00:37:18,290 --> 00:37:20,290 お悔やみを申し上げます。 561 00:37:20,290 --> 00:37:23,300 勝呂さん 犯人を見つけてください。 562 00:37:23,300 --> 00:37:27,300 それは警察の仕事です。 563 00:37:27,300 --> 00:37:30,240 私は 勝呂さんに 解決してほしいんです。 564 00:37:30,240 --> 00:37:34,240 地元の警察を あまり信頼していないようで。 565 00:37:34,240 --> 00:37:37,240 大事なことですねぇ。 566 00:37:37,240 --> 00:37:39,250 世界的な名探偵と伺いました。 567 00:37:39,250 --> 00:37:42,250 はい 名探偵です。 568 00:37:42,250 --> 00:37:45,250 やはり お金もお高いのですか? 569 00:37:45,250 --> 00:37:49,260 残念ながら お金に関しては 570 00:37:49,260 --> 00:37:52,260 どうでもいいというわけには いきません。 571 00:37:52,260 --> 00:37:54,260 おそらく 勝呂先生は 572 00:37:54,260 --> 00:37:58,260 東京の上流階級の事件しか 扱わないんだよ。 諦めよう。 573 00:37:58,260 --> 00:38:00,270 勝呂は お金目当てで仕事したことは 574 00:38:00,270 --> 00:38:05,270 一度もありません。 もちろん タダ働きもしませんが。 575 00:38:05,270 --> 00:38:08,270 でも もう引退されてるんですよね? 576 00:38:08,270 --> 00:38:11,280 ご迷惑では…。 そうでもないですよ。 577 00:38:11,280 --> 00:38:16,280 半年にわたる ここでの暮らしも 578 00:38:16,280 --> 00:38:21,290 いささか 退屈に感じていたところでした。 579 00:38:21,290 --> 00:38:23,290 では…。 580 00:38:23,290 --> 00:38:27,290 この素晴らしい景色に 囲まれた村を 581 00:38:27,290 --> 00:38:34,230 血で汚した人物を 私は許すわけにはゆきません! 582 00:38:34,230 --> 00:38:37,240 喜んで 力になりましょう。 583 00:38:37,240 --> 00:38:39,240 ありがとうございます! 584 00:38:41,240 --> 00:38:45,240 よろしくお願いします。 勝呂に お任せあれ! 585 00:38:50,262 --> 00:38:53,270 お仕事があったのでは? 診療所は 586 00:38:53,270 --> 00:38:55,280 臨時休診の札を出せば いいことですが…。 587 00:38:55,280 --> 00:38:58,280 勝呂さん ホント無理しなくて いいんですよ。 588 00:38:58,280 --> 00:39:02,280 警察署は まだですか? もう少しです…。 589 00:39:02,280 --> 00:39:05,290 おっ…。 おお…。 590 00:39:05,290 --> 00:39:08,290 すいません… 大丈夫ですか? 591 00:39:08,290 --> 00:39:11,290 (袖丈)ちょっ… どいて どいて…。 592 00:39:11,290 --> 00:39:14,290 あっ ああ… 勝呂先生! 593 00:39:14,290 --> 00:39:17,300 お目にかかれて光栄です。 594 00:39:17,300 --> 00:39:20,300 鬼怒川下り殺人事件で 勝呂先生とご一緒した 蛇口は 595 00:39:20,300 --> 00:39:24,300 私の同期なんです。 蛇口警部 覚えてますよ。 596 00:39:24,300 --> 00:39:26,310 (袖丈)もうね 先生のこと えらく褒めておりました。 597 00:39:26,310 --> 00:39:30,310 「あの人は天才だ」と。 よく言われます。 598 00:39:30,310 --> 00:39:32,310 いやぁ びっくりですな~。 599 00:39:32,310 --> 00:39:34,310 勝呂先生が この村にいらっしゃったとは! 600 00:39:34,310 --> 00:39:36,320 そうだ そうだ。 ちょっと お待ちください。 601 00:39:36,320 --> 00:39:39,320 ちょっと お待ちくださいね。 602 00:39:39,320 --> 00:39:41,320 では 私は。 603 00:39:41,320 --> 00:39:44,320 もう少し お付き合いを。 604 00:39:44,320 --> 00:39:49,350 シャーロック・ホームズの相棒の ワトソンをご存じですか? 605 00:39:49,350 --> 00:39:53,270 もちろん知っています。 彼も また 医者でした。 606 00:39:53,270 --> 00:39:56,270 私に あなたのワトソンになれと? 607 00:39:56,270 --> 00:40:01,270 先生は 村の事情にお詳しい。 非常に助かるのですが。 608 00:40:01,270 --> 00:40:04,280 逆に 足手まといになりませんか? 609 00:40:04,280 --> 00:40:07,280 とんでもない。 ≪(袖丈)早く 早く 早く。 610 00:40:07,280 --> 00:40:10,280 ちょっ… どけ…。 611 00:40:10,280 --> 00:40:13,290 写真機 持ってきました。 撮らんか…。 612 00:40:13,290 --> 00:40:17,290 1枚すいません 記念に。 構いませんよ。 613 00:40:17,290 --> 00:40:19,290 早く 早く…。 614 00:40:19,290 --> 00:40:21,290 あなたも ついでに ついでに…。 私も? 615 00:40:21,290 --> 00:40:23,300 早く。 616 00:40:23,300 --> 00:40:25,300 (刑事)はい 撮りまーす。 617 00:40:30,300 --> 00:40:35,310 (袖丈)死亡推定時刻は 夜の8時半から10時。 618 00:40:35,310 --> 00:40:39,310 花子さんが 9時45分に 被害者と会っていますので 619 00:40:39,310 --> 00:40:44,320 それより後。 つまり 9時45分から10時までの間に 620 00:40:44,320 --> 00:40:47,320 殺害されたものと思われます。 621 00:40:47,320 --> 00:40:50,260 えー これが容疑者たちの アリバイ一覧です。 622 00:40:50,260 --> 00:40:54,260 この方は できる刑事さんですねぇ。 623 00:40:54,260 --> 00:40:56,260 私も容疑者なんですか!? ええ。 624 00:40:56,260 --> 00:40:59,270 えー まず 花子さんですが 625 00:40:59,270 --> 00:41:03,270 9時45分に被害者と会った後は 1階のご自分の部屋へ。 626 00:41:03,270 --> 00:41:06,270 で 9時50分に 本多 明日香という女中が 627 00:41:06,270 --> 00:41:09,280 部屋を訪れています。 628 00:41:09,280 --> 00:41:12,280 客人の蘭堂氏と 秘書の冷泉は 629 00:41:12,280 --> 00:41:16,280 その時間は 応接室で 将棋を指しています。 630 00:41:16,280 --> 00:41:20,290 被害者の義理の妹である 満つるさんは 631 00:41:20,290 --> 00:41:22,290 その横で だらだらしておりましたが 632 00:41:22,290 --> 00:41:24,290 9時55分に 部屋に戻り 633 00:41:24,290 --> 00:41:30,300 それ以降は 1階の寝室で 娘の花子さんと一緒でした。 634 00:41:30,300 --> 00:41:37,300 で 執事の袴田 女中頭の来仙 ならびに 女中の本多 明日香は 635 00:41:37,300 --> 00:41:39,310 その時間は 台所で後片付け。 636 00:41:39,310 --> 00:41:45,310 えー 柴先生は 8時50分には 黒井戸の屋敷を後にしています。 637 00:41:45,310 --> 00:41:48,320 黒井戸家の関係者は これだけですが 638 00:41:48,320 --> 00:41:53,250 さらに 9時ちょうどに 犯行現場近くの地蔵の辻で 639 00:41:53,250 --> 00:41:56,260 柴先生が 復員服姿の男と 擦れ違っており 640 00:41:56,260 --> 00:42:02,260 また さらには9時半ごろに 近所のお堂で 女中頭の来仙が 641 00:42:02,260 --> 00:42:07,270 被害者の義理の息子である 兵藤 春夫の姿を見掛けています。 642 00:42:07,270 --> 00:42:13,270 つまり 事件当夜 黒井戸の屋敷にいた人間には 643 00:42:13,270 --> 00:42:16,280 全員アリバイがある というわけですな。 644 00:42:16,280 --> 00:42:19,280 全員にアリバイ…。 645 00:42:19,280 --> 00:42:22,280 面白いですねぇ。 646 00:42:22,280 --> 00:42:25,290 私も容疑者に入っているのが 非常に引っ掛かる。 647 00:42:25,290 --> 00:42:27,290 それは たまたま 先生が 黒井戸邸にいらっしゃったからです。 648 00:42:27,290 --> 00:42:29,290 心外だ! うん。 649 00:42:29,290 --> 00:42:32,290 えー まあ 普通に考えますとね 650 00:42:32,290 --> 00:42:35,300 最後に被害者に会った 花子さんが 最も怪しいと。 651 00:42:35,300 --> 00:42:37,300 バカなことを言うな。 652 00:42:37,300 --> 00:42:40,300 あの子が 黒井戸さんを殺すわけがない。 653 00:42:40,300 --> 00:42:44,300 私も そう思います。 となると やはり 兵藤 春夫か。 654 00:42:44,300 --> 00:42:49,330 先生が出会った復員服の男も 気になりますよ。 655 00:42:49,330 --> 00:42:51,240 ふと思ったんですが 656 00:42:51,240 --> 00:42:56,250 あの男 前にも地蔵の辻を 通ったことがあるんじゃないかな。 657 00:42:56,250 --> 00:43:00,250 何故 そう思いになりました? 658 00:43:00,250 --> 00:43:03,260 何というか 歩き方に迷いがなかった。 659 00:43:03,260 --> 00:43:06,260 素晴らしい。 660 00:43:06,260 --> 00:43:10,260 最近 黒井戸さんを 怪しい男が 訪ねてこなかったか 661 00:43:10,260 --> 00:43:12,270 確認してみた方が いいかもしれませんねぇ。 662 00:43:12,270 --> 00:43:14,270 凶器に移りましょう。 はい。 663 00:43:14,270 --> 00:43:17,270 えーっとですね 凶器は 664 00:43:17,270 --> 00:43:20,270 被害者が所有していた チュニジアの短剣です。 665 00:43:20,270 --> 00:43:23,280 応接室の陳列ケースの中に あったもので 666 00:43:23,280 --> 00:43:25,280 誰にでも取り出すことが 可能でした。 667 00:43:25,280 --> 00:43:29,280 なるほど。 やはり 兵藤 春夫が 668 00:43:29,280 --> 00:43:32,290 屋敷に忍び込み 短剣を盗み 669 00:43:32,290 --> 00:43:35,290 いったん 外に出て 書斎に 窓から入り 670 00:43:35,290 --> 00:43:37,290 それで 黒井戸さんを殺害したと 考えるのが 671 00:43:37,290 --> 00:43:39,290 もっとも自然でしょう。 672 00:43:39,290 --> 00:43:43,300 春夫君というのは どういう人なんですか? 673 00:43:43,300 --> 00:43:46,300 まあ 一言で言いますと 674 00:43:46,300 --> 00:43:50,240 いわゆる 苦労知らずのお坊ちゃんです。 675 00:43:50,240 --> 00:43:53,240 肺病を患い 兵役を逃れ 676 00:43:53,240 --> 00:43:56,240 戦後は 父親の会社で しばらく働いていましたが 677 00:43:56,240 --> 00:44:00,250 長続きせずに 1年前に東京に出て 678 00:44:00,250 --> 00:44:05,250 画廊の経営をし始めました。 もちろん 父親が出したお金で。 679 00:44:05,250 --> 00:44:07,250 しかし それも長続きせずに 680 00:44:07,250 --> 00:44:13,260 最近は 東京で 芸能関係の仕事に 就いていたようですが 681 00:44:13,260 --> 00:44:15,260 よくは分かりません。 682 00:44:15,260 --> 00:44:18,270 黒井戸さんとの仲は どうだったんですか? 683 00:44:18,270 --> 00:44:21,270 このところ 決して よくはなかったようです。 684 00:44:21,270 --> 00:44:25,270 なぜ そうお思いに? 黒井戸さんは 685 00:44:25,270 --> 00:44:30,280 春夫と花子さんの婚約に 猛反対していたようです。 686 00:44:30,280 --> 00:44:33,280 《必ず 親父を説得してみせる》 687 00:44:33,280 --> 00:44:35,280 《黒井戸さんと 何があったんだ?》 688 00:44:35,280 --> 00:44:37,280 《これは 僕が 自分で 689 00:44:37,280 --> 00:44:39,280 解決しなくちゃ いけないことなんです》 690 00:44:41,290 --> 00:44:43,290 《今回ばかりは》 691 00:44:43,290 --> 00:44:47,290 私としては 子供のころから知っているので 692 00:44:47,290 --> 00:44:50,230 彼を 犯人とは 思いたくないんですが。 693 00:44:50,230 --> 00:44:56,240 しかし 事件と無関係なら 姿を見せるべきでしょうねぇ。 694 00:44:56,240 --> 00:44:58,240 今 部下を総動員して 捜しているところです。 695 00:44:58,240 --> 00:45:03,240 警部。 事件現場を のぞいてみたいのですが。 696 00:45:03,240 --> 00:45:05,240 ご案内いたしましょう。 697 00:45:29,250 --> 00:45:32,250 (きしむ音) 698 00:45:34,260 --> 00:45:39,260 昨日 先生が見たときは まだ 短剣はあったのですねぇ? 699 00:45:39,260 --> 00:45:43,270 なかったように思うのですが…。 700 00:45:43,270 --> 00:45:45,270 すいません 自信はないです。 701 00:45:47,270 --> 00:45:50,270 そういえば 来仙さん。 702 00:45:50,270 --> 00:45:52,270 昨夜 私が ここに入ろうとしたとき 703 00:45:52,270 --> 00:45:54,280 中から出てきたね。 704 00:45:54,280 --> 00:45:57,280 《わあっ!》 あの直前 あなたが 705 00:45:57,280 --> 00:46:01,280 陳列ケースの扉を動かしてる音が 聞こえたんだが。 706 00:46:01,280 --> 00:46:04,290 はい。 扉を開けたんですか? 707 00:46:04,290 --> 00:46:07,290 閉めたんですか? 閉めました。 708 00:46:07,290 --> 00:46:10,290 扉は開いていた。 (来仙)さようでございます。 709 00:46:10,290 --> 00:46:13,300 そのとき 短剣はありましたか? 710 00:46:13,300 --> 00:46:17,300 私 ほこりや ごみは 気にしますが 711 00:46:17,300 --> 00:46:21,300 飾ってあるものには 興味がございません故。 712 00:46:21,300 --> 00:46:23,310 ありがとう。 713 00:46:23,310 --> 00:46:27,310 行っていいよ。 失礼いたします。 714 00:46:30,250 --> 00:46:33,250 愛想のない女ですなぁ。 715 00:46:36,250 --> 00:46:38,250 言われたとおり 716 00:46:38,250 --> 00:46:40,260 事件があったときのままに なっています。 717 00:46:40,260 --> 00:46:43,260 素晴らしい。 718 00:46:43,260 --> 00:46:46,260 (冷泉)ああ 確か 特急東洋の事件 719 00:46:46,260 --> 00:46:49,270 あれって 勝呂さんが 関わってらしたんですよね? 720 00:46:49,270 --> 00:46:51,270 そうです。 721 00:46:51,270 --> 00:46:54,270 結局 犯人は 分からずじまいだったけど 722 00:46:54,270 --> 00:46:56,270 本当は 真犯人 723 00:46:56,270 --> 00:46:59,280 知ってらっしゃるんじゃ ないですか? 724 00:46:59,280 --> 00:47:01,280 最近 見知らぬ人が 725 00:47:01,280 --> 00:47:04,280 黒井戸さんに 会いに来ませんでしたか? 726 00:47:04,280 --> 00:47:08,280 昨夜 柴先生が この近くで 怪しい人物を見掛けてんだ。 727 00:47:08,280 --> 00:47:11,290 ああ… 記憶にないですね。 728 00:47:11,290 --> 00:47:13,290 木曜日に。 729 00:47:13,290 --> 00:47:16,290 あっ 執事の袴田です。 730 00:47:16,290 --> 00:47:19,300 セールスマンが1人 来ました。 731 00:47:19,300 --> 00:47:23,300 ちなみに 何のセールスでしたか? 732 00:47:23,300 --> 00:47:25,300 ディクタホンです。 ご存じですよね? 733 00:47:25,300 --> 00:47:27,320 もちろん。 734 00:47:27,320 --> 00:47:31,240 探偵さんが言ってるのは そんなことじゃないと思うよ。 735 00:47:31,240 --> 00:47:33,240 ねっ? うん。 736 00:47:33,240 --> 00:47:35,240 君は もう 行っていいよ。 737 00:47:35,240 --> 00:47:37,240 失礼しました。 738 00:47:39,250 --> 00:47:42,250 気を付けてください。 盗み聞きの名人ですから。 739 00:47:42,250 --> 00:47:44,250 覚えておきましょう。 740 00:47:44,250 --> 00:47:48,250 ところで ディクタホンとは 何ですか? 741 00:47:50,260 --> 00:47:54,260 録音機のことです。 ほう。 742 00:47:54,260 --> 00:47:57,270 黒井戸さんが 誰かと話しているのを 743 00:47:57,270 --> 00:47:59,270 聞かれたそうですねぇ。 (冷泉)はい。 744 00:47:59,270 --> 00:48:01,270 時間は? 9時半。 745 00:48:01,270 --> 00:48:03,270 ずいぶん正確ですねぇ。 746 00:48:03,270 --> 00:48:06,280 その時間に 黒井戸さんの寝室に 747 00:48:06,280 --> 00:48:08,280 次の日の予定表を持っていくのが 日課なんです。 748 00:48:08,280 --> 00:48:13,280 それで書斎の前を通って 2階に。 うーむ…。 749 00:48:13,280 --> 00:48:15,280 な… 何か? 750 00:48:15,280 --> 00:48:17,290 書斎に 黒井戸さんがいたのに 751 00:48:17,290 --> 00:48:21,290 なぜ そのとき 渡さなかったんでしょう? 752 00:48:21,290 --> 00:48:24,290 あっ 来客中に部屋に入ると 753 00:48:24,290 --> 00:48:27,260 黒井戸さんは えらくお怒りになるんです。 754 00:48:27,260 --> 00:48:29,130 面白いな。 僕が嘘ついていると? 755 00:48:29,130 --> 00:48:32,130 捜査に ご協力ください。 756 00:48:32,130 --> 00:48:34,140 9時半に 予定表を持っていくことも 757 00:48:34,140 --> 00:48:37,140 黒井戸さんが怒りっぽいことも みんな知ってることですよ。 758 00:48:37,140 --> 00:48:39,140 後で 聞いてみてください。 759 00:48:39,140 --> 00:48:42,140 先生も ご存じですよね。 ああ。 760 00:48:42,140 --> 00:48:45,150 黒井戸さんは どんな話を? 761 00:48:45,150 --> 00:48:48,150 ずいぶん深刻な感じでしたよ。 762 00:48:48,150 --> 00:48:51,150 ≪(黒井戸) 《最近 とても物入りなので 763 00:48:51,150 --> 00:48:55,160 残念ながら あなたの要求に 応じることは…》 764 00:48:55,160 --> 00:48:57,160 相手が誰だったかは いまだ不明です。 765 00:48:57,160 --> 00:49:02,160 うん。 さて 死体のあった場所は? 766 00:49:02,160 --> 00:49:04,170 その椅子です。 767 00:49:04,170 --> 00:49:07,170 どなたか 座ってみてもらえますか? 768 00:49:07,170 --> 00:49:09,170 私が。 769 00:49:11,170 --> 00:49:15,180 えー こんな感じでしたよね? 先生。 770 00:49:15,180 --> 00:49:17,180 まあ そんな感じです。 771 00:49:17,180 --> 00:49:20,180 遺体は 明日の午後 警察から戻るそうなので 772 00:49:20,180 --> 00:49:23,190 明日の夜が通夜 あさってが告別式になりました。 773 00:49:23,190 --> 00:49:26,190 さすが手際がいい。 774 00:49:26,190 --> 00:49:28,220 何か気になること ありましたか? 775 00:49:28,220 --> 00:49:32,230 残念ながら ここには得るものは ありませんでした。 776 00:49:32,230 --> 00:49:35,230 ≪(袴田)あの。 777 00:49:35,230 --> 00:49:37,230 (袖丈)まだ いたのか。 778 00:49:37,230 --> 00:49:40,240 踏み込んだとき あそこの椅子が 779 00:49:40,240 --> 00:49:42,240 もう少し手前に 引き出されていました。 780 00:49:42,240 --> 00:49:45,240 あった位置に お願いできますか? 781 00:49:52,250 --> 00:49:55,250 (袴田)この辺りです。 782 00:49:55,250 --> 00:49:59,250 奇妙ですねぇ。 783 00:49:59,250 --> 00:50:01,260 なぜ こんな所に椅子が。 784 00:50:01,260 --> 00:50:05,260 戻したのは あなたですか? いえ 私ではありません。 785 00:50:05,260 --> 00:50:07,260 先生? いいえ。 786 00:50:07,260 --> 00:50:11,270 秘書の方? 違います。 787 00:50:11,270 --> 00:50:14,270 他に入った人は? 蘭堂さまが。 788 00:50:14,270 --> 00:50:17,270 ここに泊まってる作家さんです。 789 00:50:17,270 --> 00:50:20,280 あの人が いちいち 椅子を戻すとは思えない。 790 00:50:20,280 --> 00:50:23,280 椅子の位置が そんなに大事ですか? 791 00:50:23,280 --> 00:50:26,280 誰かが 意図的に動かさなければ 792 00:50:26,280 --> 00:50:30,220 椅子は こんな中途半端な所には ありませんし 793 00:50:30,220 --> 00:50:37,230 誰かが元に戻さないかぎり それが動くことはない。 794 00:50:37,230 --> 00:50:40,230 (袖丈)うーん。 警察関係者にも確認しておきます。 795 00:50:40,230 --> 00:50:43,230 はい。 (袖丈)まだ あるのか。 796 00:50:43,230 --> 00:50:46,240 封筒が1つ なくなっています。 (袖丈)封筒? 797 00:50:46,240 --> 00:50:50,240 昨日の夜 私は 旦那さまに 3通のお手紙をお届けしました。 798 00:50:50,240 --> 00:50:53,240 しかし…。 799 00:50:53,240 --> 00:50:56,250 今は 2通しかございません。 800 00:50:56,250 --> 00:51:00,250 これは重要な証言ですよ。 801 00:51:00,250 --> 00:51:03,250 青い封筒でした。 (袖丈)誰からの手紙だったんです? 802 00:51:03,250 --> 00:51:06,260 唐津 佐奈子さまでございます。 803 00:51:06,260 --> 00:51:10,260 唐津さんの手紙が なくなってるのか。 804 00:51:10,260 --> 00:51:12,260 面白くなってきましたね。 805 00:51:12,260 --> 00:51:17,270 あの人は 確か 黒井戸さんと婚約を。 806 00:51:17,270 --> 00:51:24,270 警部。 勝呂さん。 よろしいですか。 807 00:51:24,270 --> 00:51:26,280 何でしょう? 808 00:51:26,280 --> 00:51:30,210 皆さんに話さなければ ならないことがあります。 809 00:51:30,210 --> 00:51:33,220 〈黒井戸氏と 唐津夫人のことについて 810 00:51:33,220 --> 00:51:36,220 話せることは 全て話すことにした〉 811 00:51:36,220 --> 00:51:39,220 〈夫人の一件は 黙っていたかったが 812 00:51:39,220 --> 00:51:42,220 こうなった以上 しかたがない〉 813 00:51:42,220 --> 00:51:45,230 驚きましたな。 814 00:51:45,230 --> 00:51:50,230 その手紙には 唐津 佐奈子さんを ゆすっていた人間の名前が 815 00:51:50,230 --> 00:51:53,240 書いてあったんですねぇ? そうです。 816 00:51:53,240 --> 00:51:56,240 では 唐津さんを ゆすっていた人物が 817 00:51:56,240 --> 00:51:59,240 黒井戸さんを殺した。 じゅうぶん あり得ます。 818 00:51:59,240 --> 00:52:02,240 隠していて すいませんでした。 819 00:52:02,240 --> 00:52:06,250 正直に打ち明けていただいて 感謝します。 820 00:52:06,250 --> 00:52:13,260 しかし これで 捜査は 新たな局面を迎えました。 821 00:52:13,260 --> 00:52:16,260 非常に 面白いですねぇ。 822 00:52:21,245 --> 00:52:24,250 ゆうべ 女中頭の来仙さんは 823 00:52:24,250 --> 00:52:28,250 ここで 春夫君を見掛けたんですねぇ。 824 00:52:28,250 --> 00:52:32,260 そう言ってました。 夜の9時半。 825 00:52:32,260 --> 00:52:36,260 春夫君は ここで何をしていたのか。 826 00:52:36,260 --> 00:52:40,270 誰かと待ち合わせ? あり得ますねぇ。 827 00:52:40,270 --> 00:52:44,270 もう一つ 謎があります。 828 00:52:44,270 --> 00:52:50,280 来仙さんは なぜ そんな時間に ここにいたのか。 829 00:52:50,280 --> 00:52:54,280 確かに それも気になりますね。 830 00:52:54,280 --> 00:52:57,280 先生。 あれを。 831 00:52:57,280 --> 00:53:00,280 何か引っ掛かっていますねぇ。 832 00:53:03,290 --> 00:53:06,290 何でしょう? 833 00:53:06,290 --> 00:53:08,290 見てないで 取る。 834 00:53:08,290 --> 00:53:10,300 私がですか? 835 00:53:10,300 --> 00:53:14,300 手をケガしたくないので お願いします。 836 00:53:19,310 --> 00:53:22,240 何だと思いますか? 837 00:53:22,240 --> 00:53:25,240 ハンカチの切れ端? 838 00:53:28,250 --> 00:53:30,250 まともな洗濯屋は 839 00:53:30,250 --> 00:53:34,250 ハンカチに のりは付けないものですよ。 840 00:53:38,260 --> 00:53:43,260 あれは 花子さんではないですか。 841 00:53:43,260 --> 00:53:45,270 隠れましょう。 842 00:53:45,270 --> 00:53:47,270 隠れるんですか? 843 00:53:47,270 --> 00:53:50,270 早く! 844 00:53:55,280 --> 00:53:57,280 何で 隠れなきゃいけないんですか? 845 00:53:57,280 --> 00:53:59,280 いいから! (花子)先生。 846 00:53:59,280 --> 00:54:02,280 (蘭堂)お待たせしました。 先生? 847 00:54:02,280 --> 00:54:04,280 お仕事はかどりましたか? えっ? 848 00:54:04,280 --> 00:54:06,290 (蘭堂)いやぁ まったく。 849 00:54:06,290 --> 00:54:09,290 (花子)警察が ひっきりなしに 出入りしてましたからね。 850 00:54:09,290 --> 00:54:12,290 もともと 書く気なんてないんでね。 851 00:54:12,290 --> 00:54:14,290 少し 歩きませんか。 (花子)はい。 852 00:54:21,230 --> 00:54:23,240 (蘭堂)あなたが それほど沈んでいないのが 853 00:54:23,240 --> 00:54:27,240 僕としては うれしい。 (花子)本当は もっと 854 00:54:27,240 --> 00:54:30,240 悲しまなければ ならないんでしょうけど。 855 00:54:30,240 --> 00:54:32,240 無理して 悲しむことはない。 856 00:54:34,250 --> 00:54:37,250 何かが光った。 (花子)何ですか? 857 00:54:37,250 --> 00:54:42,260 何か ブローチのような…。 フフフ…。 858 00:54:42,260 --> 00:54:46,260 どうして お笑いに? (蘭堂)ドビュッシーのオペラにね 859 00:54:46,260 --> 00:54:54,270 メリザンドという姫の王冠を 湖で拾う男の話がある。 860 00:54:54,270 --> 00:54:58,270 あー… 見えなくなった。 861 00:55:01,270 --> 00:55:05,280 春夫さん 連絡をくれないんです。 862 00:55:05,280 --> 00:55:09,280 これじゃ 疑われても しょうがないわ。 863 00:55:09,280 --> 00:55:13,290 勝呂という探偵に お願いをしたんですけどね 864 00:55:13,290 --> 00:55:16,290 でも 会ってみたら すっとんきょうな感じで。 865 00:55:16,290 --> 00:55:19,290 ちょっと がっかり。 866 00:55:19,290 --> 00:55:23,230 (蘭堂)探偵なんて信じちゃ駄目だ。 867 00:55:23,230 --> 00:55:27,230 あっ ちょっと! 勝呂さん! 868 00:55:27,230 --> 00:55:30,240 捜査は順調に進んでおりますよ。 勝呂さん! 869 00:55:30,240 --> 00:55:34,240 必ずや 事件の真相を 暴いて お目に掛けます。 870 00:55:34,240 --> 00:55:37,240 ありがとうございます。 頼りにしてますわ。 871 00:55:37,240 --> 00:55:39,250 蘭堂先生。 872 00:55:39,250 --> 00:55:44,250 遺体発見現場で 椅子の位置を動かしましたか? 873 00:55:44,250 --> 00:55:46,250 答える義務はない。 874 00:55:46,250 --> 00:55:49,260 そういう態度 私は好きではないな。 875 00:55:49,260 --> 00:55:52,260 君に好かれたいと 思ったことはないね。 876 00:55:52,260 --> 00:55:55,260 協力してさしあげて。 877 00:55:57,260 --> 00:55:59,270 椅子には触れていない。 878 00:55:59,270 --> 00:56:01,270 ありがとうございます。 879 00:56:01,270 --> 00:56:04,270 花子さんも 一つよろしいでしょうか? 880 00:56:04,270 --> 00:56:07,270 どうぞ。 春夫さんとの結婚に 881 00:56:07,270 --> 00:56:10,280 黒井戸さんは 反対していたようですが 882 00:56:10,280 --> 00:56:13,280 理由は何だと思われますか? 883 00:56:13,280 --> 00:56:15,280 待ってください。 何の話ですか? 884 00:56:15,280 --> 00:56:18,280 伯父さまは 結婚に反対なんかしていません。 885 00:56:18,280 --> 00:56:21,220 でも 春夫君は 自分の力で 886 00:56:21,220 --> 00:56:23,220 黒井戸さんを説得してみせると 言っていた。 887 00:56:23,220 --> 00:56:25,230 何かの間違いです。 888 00:56:25,230 --> 00:56:28,230 だって 婚約をお決めになったのは 889 00:56:28,230 --> 00:56:31,230 伯父さまなんですから。 えっ? 890 00:56:31,230 --> 00:56:35,240 なぜ 伯父さまは それを望んだのでしょうか? 891 00:56:35,240 --> 00:56:38,240 春夫さんを 後継者として 892 00:56:38,240 --> 00:56:40,240 育てていきたかったんじゃ ないですか? 893 00:56:40,240 --> 00:56:44,240 いいかげん 落ち着いてほしかったんだと…。 894 00:56:44,240 --> 00:56:48,250 あっ また光った。 895 00:56:48,250 --> 00:56:55,260 何かが沈んでいます。 勝呂に お任せあれ。 896 00:56:55,260 --> 00:56:59,260 くれぐれも汚さないように。 897 00:57:06,270 --> 00:57:08,270 冷たくないんですか? 898 00:57:08,270 --> 00:57:11,270 思ったほどは。 899 00:57:11,270 --> 00:57:17,270 あっ… 見失ってしまいました。 900 00:57:19,280 --> 00:57:22,220 (蘭堂)戻っていいのかな? 901 00:57:22,220 --> 00:57:25,220 こちらには いつまで? 902 00:57:25,220 --> 00:57:27,220 (蘭堂)しばらくいるようにと 警察に言われている。 903 00:57:27,220 --> 00:57:30,220 自分としては 長居したくはないのだが。 904 00:57:30,220 --> 00:57:33,230 そんなこと言わずに いつまでもいてください。 905 00:57:33,230 --> 00:57:39,230 この方には 都会の暮らしの方が 合ってるんだよ。 906 00:57:39,230 --> 00:57:43,230 私も行きます。 失礼します。 907 00:57:47,240 --> 00:57:52,250 あの蘭堂という男は 名うての色事師で 908 00:57:52,250 --> 00:57:57,250 銀座のマダムやら 映画女優やらと やたら 浮名を流してるんです。 909 00:57:57,250 --> 00:58:02,260 よくご存じですねぇ。 雑誌で読みました。 910 00:58:02,260 --> 00:58:05,260 花子ちゃんのことが 非常に心配です。 911 00:58:05,260 --> 00:58:07,260 ハァ~。 912 00:58:07,260 --> 00:58:09,260 ホントは 冷たかったんじゃないんですか。 913 00:58:09,260 --> 00:58:14,260 腕が ちぎれるかと思いました。 上着を。 914 00:58:17,270 --> 00:58:23,210 勝呂は 無駄に手を汚すような 愚かなことは 915 00:58:23,210 --> 00:58:28,210 決して いたしません。 916 00:58:28,210 --> 00:58:31,220 おお! 917 00:58:31,220 --> 00:58:37,220 これは サイズからすると 女性用ですね。 918 00:58:37,220 --> 00:58:40,230 内側に こびり付いた泥を 落とせば 919 00:58:40,230 --> 00:58:43,230 何か 文字が彫られているかも しれませんよ。 920 00:58:45,230 --> 00:58:50,240 それにしても 黒井戸さんは 2人の婚約について 921 00:58:50,240 --> 00:58:56,240 賛成だったのか 反対だったのか 非常に興味深いですねぇ。 922 00:58:56,240 --> 00:58:59,250 私が思うに…。 あ~っ! 923 00:58:59,250 --> 00:59:04,250 何ですか? ここに どっ… 泥が! 924 00:59:04,250 --> 00:59:08,250 泥なんかないですよ。 あなたの目は節穴ですか! 925 00:59:08,250 --> 00:59:10,260 ここです! ここ! 926 00:59:10,260 --> 00:59:14,260 これですか!? 洗濯です! 927 00:59:14,260 --> 00:59:17,260 すぐに洗濯です! 洗濯代は あなた持ちです! 928 00:59:17,260 --> 00:59:20,260 まったく! 勝呂さん…。 929 00:59:25,302 --> 00:59:27,531 袖丈警部がお待ちでございます。 930 00:59:37,170 --> 00:59:40,170 来仙さん。 昨日の夜9時半近く 931 00:59:40,170 --> 00:59:45,180 あなたは お堂の前で なーにをやってたんですか? 932 00:59:45,180 --> 00:59:48,180 えっ…。 結構。 933 00:59:54,190 --> 00:59:57,190 謎の電話なんですが ゆうべ10時15分に 934 00:59:57,190 --> 01:00:01,190 殿里の駅から 先生のご自宅へかけられています。 935 01:00:01,190 --> 01:00:05,200 駅でしたか。 936 01:00:05,200 --> 01:00:08,200 (袖丈)えー ちなみにですね それから8分後の 937 01:00:08,200 --> 01:00:13,200 10時23分 東京行きの夜行が 駅を出発しています。 938 01:00:13,200 --> 01:00:17,210 素晴らしい。 (ノック) 939 01:00:17,210 --> 01:00:20,210 柴先生。 お姉さまからお電話です。 940 01:00:23,210 --> 01:00:26,150 もしもし。 今 捜査中なんですが。 941 01:00:26,150 --> 01:00:28,150 ねえ いつになったら 帰ってくるの? 942 01:00:28,150 --> 01:00:30,150 鍋焼きうどん 伸びちゃうんですけど。 943 01:00:30,150 --> 01:00:33,160 鍋焼きうどんなんて 聞いてませんよ。 944 01:00:33,160 --> 01:00:36,160 だいたい 今日は 遅くなるかもしれないって。 945 01:00:36,160 --> 01:00:40,160 ☎(カナ)5時に帰るって。 そんなこと一言も言ってないよ。 946 01:00:40,160 --> 01:00:43,170 5時に帰るって言ったから…。 947 01:00:43,170 --> 01:00:45,170 分かりました。 急いで帰ります。 948 01:00:45,170 --> 01:00:48,170 勝呂さんの分もあるから 声 掛けてみて。 949 01:00:48,170 --> 01:00:50,170 あの人には あの人の予定があるから。 950 01:00:50,170 --> 01:00:52,180 何か? 951 01:00:52,180 --> 01:00:55,180 姉に 気を使うことないんですよ。 952 01:00:55,180 --> 01:00:57,180 無理して 鍋焼きうどん 食べなくても。 953 01:00:57,180 --> 01:00:59,180 私 大好物なんです。 954 01:00:59,180 --> 01:01:03,190 鍋焼きうどんが 伸びてしまいます! 急いで! 955 01:01:03,190 --> 01:01:06,190 はい。 よいしょ。 956 01:01:06,190 --> 01:01:10,190 おお~! いただきます。 957 01:01:10,190 --> 01:01:14,200 お好みで これ 振ってください。 958 01:01:14,200 --> 01:01:18,200 姉は 料理が得意なんです。 おお。 959 01:01:21,210 --> 01:01:26,140 うん。 この鍋焼きうどんも とてもおいしいです。 960 01:01:26,140 --> 01:01:29,150 アハハハ よかった。 姉は小うるさいですが 961 01:01:29,150 --> 01:01:31,150 私の身の回りのことを 全部やってくれているので 962 01:01:31,150 --> 01:01:35,150 ずいぶん助かります。 よいお姉さまですねぇ。 963 01:01:35,150 --> 01:01:38,160 それで あの 捜査の方は 進展はしているんですか? 964 01:01:38,160 --> 01:01:41,160 順調ですよ。 勝呂さんがね 965 01:01:41,160 --> 01:01:44,160 沼で 女性用の指輪を見つけたんだよ。 966 01:01:44,160 --> 01:01:48,170 しかし 汚れが こびり付いてて 彫ってある文字が 967 01:01:48,170 --> 01:01:51,170 よく見えないんです。 あした 街に行って…。 968 01:01:51,170 --> 01:01:53,170 だったら! ねえ! 969 01:01:53,170 --> 01:01:57,170 あなたの秘密のお部屋で 奇麗にしてさしあげたら? 970 01:01:57,170 --> 01:01:59,180 秘密のお部屋? 971 01:01:59,180 --> 01:02:02,180 この人ったら 趣味のお部屋 持ってるんです。 972 01:02:02,180 --> 01:02:05,180 それほどのものではないです。 何 言ってるの! 973 01:02:05,180 --> 01:02:08,190 あんだけ お金 掛けておいて。 974 01:02:08,190 --> 01:02:12,190 音楽が大好きで 何と 蓄音機まで 作ってしまったんですよ。 975 01:02:12,190 --> 01:02:15,190 蓄音機は作ってないです。 976 01:02:15,190 --> 01:02:17,190 環境を整えただけだよ。 977 01:02:17,190 --> 01:02:21,190 どうせ聴くなら いい音で聴きたいですからね。 978 01:02:24,220 --> 01:02:26,140 (♬『Girl of my dreams』) 979 01:02:26,140 --> 01:02:29,140 いい音ですねぇ。 980 01:02:29,140 --> 01:02:31,140 機械いじりが好きなもので 981 01:02:31,140 --> 01:02:36,150 自分で色々と つないでいたら こんなふうになってしまいまして。 982 01:02:36,150 --> 01:02:40,150 あっ 指輪を貸してもらえますか。 983 01:02:43,150 --> 01:02:47,160 おお。 拝借。 984 01:02:47,160 --> 01:02:52,160 (♬『Girl of my dreams』) 985 01:02:52,160 --> 01:03:19,190 ♬~ 986 01:03:19,190 --> 01:03:22,190 勝呂さん。 はい。 987 01:03:22,190 --> 01:03:27,130 ここに 字が刻まれています。 988 01:03:27,130 --> 01:03:32,140 漢字の「春」という字です。 春。 989 01:03:32,140 --> 01:03:36,140 「春より」と書いてある。 990 01:03:36,140 --> 01:03:41,150 婚約指輪だとしたら これ 花子さんの? 991 01:03:41,150 --> 01:03:45,150 指輪のことを知っているようには 見えませんでしたがねぇ。 992 01:03:45,150 --> 01:03:49,150 では…。 春夫の「春」であるならば 993 01:03:49,150 --> 01:03:55,150 彼は 別の誰かに 指輪を贈ったことになります。 994 01:04:22,240 --> 01:04:27,240 (鱧瀬)えー それでは 黒井戸 禄助氏の 995 01:04:27,240 --> 01:04:31,250 通夜 告別式に先駆けて 氏の要望により 996 01:04:31,250 --> 01:04:35,250 遺言状を 読み上げさせていただきます。 997 01:04:35,250 --> 01:04:37,250 (せきばらい) 998 01:04:37,250 --> 01:04:46,260 「遺言状。 私の人生は 決して 順風満帆とは言えなかった」 999 01:04:46,260 --> 01:04:52,270 「幼少期を満州で過ごし 早くに 両親と生き別れた私は…」 1000 01:04:52,270 --> 01:04:54,270 全部 読むの!? 1001 01:04:54,270 --> 01:04:58,270 いいんじゃないですか? 1002 01:04:58,270 --> 01:05:01,270 では 財産分与に飛びます。 1003 01:05:04,280 --> 01:05:12,290 「長年 仕えてくれた 女中頭の来仙 恒子には12万円」 1004 01:05:12,290 --> 01:05:19,290 「忠実なる秘書の冷泉 茂一には 同じく12万円」 1005 01:05:19,290 --> 01:05:25,230 「亡き弟 八助の妻 満つるには 15万円」 1006 01:05:25,230 --> 01:05:30,240 「いとしい めいの花子には 20万円」 1007 01:05:30,240 --> 01:05:34,240 「残り全て 血は つながらずとも 1008 01:05:34,240 --> 01:05:40,250 息子として 愛情を注いできた 春夫に贈るものとする」 1009 01:05:40,250 --> 01:05:44,250 まあ! 何てこと…。 1010 01:05:44,250 --> 01:05:47,260 (花子)わっ… えっ… お母さま!? 1011 01:05:47,260 --> 01:05:49,260 お母さま! 先生! 満つるさん! 1012 01:05:49,260 --> 01:05:51,260 (鱧瀬)結局 黒井戸さんは 1013 01:05:51,260 --> 01:05:56,260 春夫君のことを愛していた ということでしょうな。 1014 01:05:56,260 --> 01:06:00,270 春夫さんが相続される額は 幾らですか? 1015 01:06:00,270 --> 01:06:04,270 不動産を含めると…。 1016 01:06:04,270 --> 01:06:10,280 562万8, 000飛んで20円。 そんなに!? 1017 01:06:10,280 --> 01:06:16,280 まあ 春夫君は 一夜にして 大金持ちということです。 1018 01:06:16,280 --> 01:06:20,310 ますます 不利になってきたな…。 1019 01:06:20,310 --> 01:06:24,230 鱧瀬さんは 唐津 佐奈子さんの 1020 01:06:24,230 --> 01:06:26,230 顧問弁護士も されていたそうですが。 1021 01:06:26,230 --> 01:06:30,230 そうですよ。 あまり詳しく言えませんが 1022 01:06:30,230 --> 01:06:35,240 佐奈子さんは ある人物から 脅迫されてたんです。 1023 01:06:35,240 --> 01:06:37,240 でしょうな。 それは どういう意味ですか? 1024 01:06:37,240 --> 01:06:41,240 あの方は この1年で かなりの額を 1025 01:06:41,240 --> 01:06:44,250 銀行から引き出しております。 どれくらいですか? 1026 01:06:44,250 --> 01:06:47,250 えー ざっと…。 1027 01:06:47,250 --> 01:06:51,250 200万は くだらないでしょう。 そんなに! 1028 01:06:53,250 --> 01:06:56,260 冗談じゃありませんよ。 1029 01:06:56,260 --> 01:07:00,260 正直言って あたくし 傷ついてるんですの。 1030 01:07:00,260 --> 01:07:05,270 お母さま もう よしましょう。 1031 01:07:05,270 --> 01:07:08,270 兄は あたくしのことを どう思ってたんでしょう。 1032 01:07:08,270 --> 01:07:10,270 春夫が幾らですって? 1033 01:07:10,270 --> 01:07:14,280 562万8, 000飛んで20円 だそうです。 1034 01:07:14,280 --> 01:07:16,280 それで 何で あたくしが15万なの!? 1035 01:07:16,280 --> 01:07:19,280 それじゃ あの女中頭と 変わらないじゃないのよ。 1036 01:07:19,280 --> 01:07:22,220 あたくしは あの人の妹ですよ。 1037 01:07:22,220 --> 01:07:25,220 あなたが 血のつながった妹だったら 1038 01:07:25,220 --> 01:07:29,220 話は違ってたかもしれませんね。 1039 01:07:29,220 --> 01:07:32,230 少なくとも あたくしは 禄助さんのことを 1040 01:07:32,230 --> 01:07:36,230 実の兄だと思って接してました。 1041 01:07:36,230 --> 01:07:39,230 まったく損したわ! (花子)お母さま。 1042 01:07:39,230 --> 01:07:42,240 花子さんは いかがですか? 私? 1043 01:07:42,240 --> 01:07:44,240 この人に不満なんて あるわけがないじゃない。 1044 01:07:44,240 --> 01:07:46,240 満つるさん そういう言い方はどうだろう。 1045 01:07:46,240 --> 01:07:50,240 (花子)先生 いいんです。 1046 01:07:53,250 --> 01:07:55,250 (満つる)何? この空気。 1047 01:07:55,250 --> 01:07:58,250 あたくしだけが 悪者みたいになってる。 1048 01:07:58,250 --> 01:08:00,260 ≪(ノック) 1049 01:08:00,260 --> 01:08:02,260 どなた? ≪(冷泉)冷泉です。 1050 01:08:02,260 --> 01:08:05,260 勝呂さんは いらっしゃいますか? 1051 01:08:05,260 --> 01:08:07,260 どうぞ。 1052 01:08:07,260 --> 01:08:09,260 失礼いたします。 1053 01:08:09,260 --> 01:08:14,260 勝呂さん 少々お話ししたいことが。 1054 01:08:23,210 --> 01:08:25,210 こちらです。 1055 01:08:25,210 --> 01:08:30,210 この上は? 黒井戸さんの寝室しかありません。 1056 01:08:36,220 --> 01:08:38,220 どうぞ。 1057 01:08:40,230 --> 01:08:42,230 (冷泉) 弁護士の鱧瀬さんに言われて 1058 01:08:42,230 --> 01:08:46,230 黒井戸さんが残した現金の整理を していたんです。 1059 01:08:46,230 --> 01:08:48,240 亡くなる日の午前中に 黒井戸さんは 1060 01:08:48,240 --> 01:08:52,240 10万円の小切手を 現金に換えてるんです。 1061 01:08:52,240 --> 01:08:55,240 今月分の もろもろの支払いのために。 1062 01:08:57,250 --> 01:08:59,250 なくなっています。 1063 01:08:59,250 --> 01:09:03,250 なくなってる!? この中にあったんですか? 1064 01:09:03,250 --> 01:09:06,250 黒井戸さんは いつも ここに 現金をしまっていました。 1065 01:09:06,250 --> 01:09:09,260 みんな 知ってることです。 1066 01:09:09,260 --> 01:09:11,260 何か 事件と関係が? 1067 01:09:14,260 --> 01:09:16,260 旦那さまのお部屋の お掃除は 1068 01:09:16,260 --> 01:09:20,290 女中の本多 明日香と 決まっております。 1069 01:09:20,290 --> 01:09:22,200 その人に会わせてください。 1070 01:09:22,200 --> 01:09:26,210 (来仙)実は 明日香は 暇を取ることになっておりまして。 1071 01:09:26,210 --> 01:09:28,210 辞めるんですか? 1072 01:09:28,210 --> 01:09:30,210 (来仙) 旦那さまに ひどく怒られまして。 1073 01:09:30,210 --> 01:09:32,210 いつのことですか? 1074 01:09:32,210 --> 01:09:34,220 事件のあった日の 午後でございます。 1075 01:09:34,220 --> 01:09:38,220 ぜひ 会わせてください。 呼んでまいります。 1076 01:09:38,220 --> 01:09:42,220 あっ それから。 はい? 1077 01:09:42,220 --> 01:09:46,230 私が 夜9時半に お堂にいた理由ですが 1078 01:09:46,230 --> 01:09:48,230 絵を描くのが趣味で 1079 01:09:48,230 --> 01:09:53,230 あの日も大層 月が奇麗で これを描きに。 1080 01:09:53,230 --> 01:09:55,230 失礼いたします。 1081 01:10:01,240 --> 01:10:05,250 慌てて描いたのが丸分かりだ。 1082 01:10:05,250 --> 01:10:08,250 要注意人物ですねぇ。 1083 01:10:12,834 --> 01:10:16,210 ここを辞めるそうだね? (明日香)旦那さまには 1084 01:10:16,210 --> 01:10:18,210 できるだけ早く出ていくようにと 言われました。 1085 01:10:18,210 --> 01:10:20,210 何があったんですか? 1086 01:10:20,210 --> 01:10:23,220 旦那さまの机の上を 乱してしまったのです。 1087 01:10:23,220 --> 01:10:25,220 とても お怒りになられたので 1088 01:10:25,220 --> 01:10:29,220 私の方から お暇を頂きたいと 申し出ました。 1089 01:10:29,220 --> 01:10:32,220 黒井戸さんの寝室から 現金がなくなってるんだが。 1090 01:10:32,220 --> 01:10:37,230 それも かなりの額の。 私ではありません。 1091 01:10:37,230 --> 01:10:41,230 事件のあった夜 どこにいましたか? 1092 01:10:41,230 --> 01:10:45,240 台所で 後片付けをしていました。 1093 01:10:45,240 --> 01:10:50,240 ありがとう。 お仕事に戻っていいですよ。 1094 01:10:54,250 --> 01:10:57,250 旦那さまが殺されたのは 何時ごろでしょうか? 1095 01:10:57,250 --> 01:11:00,250 9時45分から10時の間だよ。 1096 01:11:00,250 --> 01:11:04,260 もっと前ということは ありませんか? 9時半とか。 1097 01:11:04,260 --> 01:11:06,260 それはない。 1098 01:11:06,260 --> 01:11:08,260 失礼いたしました。 1099 01:11:17,200 --> 01:11:19,210 今のは何だったんでしょう? 1100 01:11:19,210 --> 01:11:23,210 彼女の前掛けを見ましたか? 前掛け? 1101 01:11:23,210 --> 01:11:26,210 洗いたての真っ白でした。 1102 01:11:26,210 --> 01:11:30,220 今日か昨日の間に 下ろしたんでしょう。 1103 01:11:30,220 --> 01:11:32,220 それが何か? 古い前掛けは 1104 01:11:32,220 --> 01:11:38,220 汚してしまったか 破いてしまったか。 1105 01:11:38,220 --> 01:11:42,230 あっ。 《何か 引っ掛かっていますねぇ》 1106 01:11:42,230 --> 01:11:45,230 彼女も 事件の夜 お堂にいたっていうことですか? 1107 01:11:45,230 --> 01:11:49,230 その可能性はゼロではありません。 しかし 何のために? 1108 01:11:59,250 --> 01:12:03,250 そうなると あの夜 少なくとも 4人の人間が 1109 01:12:03,250 --> 01:12:06,250 屋敷の周りを うろうろしていたことになる。 1110 01:12:06,250 --> 01:12:10,260 春夫に 女中頭の来仙さんに 1111 01:12:10,260 --> 01:12:15,260 女中の明日香。 そして 復員服の男…。 1112 01:12:20,200 --> 01:12:23,200 何か お飲み物でも お持ちいたしましょうか? 1113 01:12:23,200 --> 01:12:27,210 今は結構です! 1114 01:12:27,210 --> 01:12:29,210 本多 明日香でございますが 1115 01:12:29,210 --> 01:12:34,210 あの夜 10分ほど 台所を離れております。 1116 01:12:34,210 --> 01:12:39,220 さすが 見てますねぇ。 1117 01:12:39,220 --> 01:12:43,220 あれは 確か 9時30分ごろでございます。 1118 01:12:43,220 --> 01:12:47,230 戻ってきたときには 若干 髪が乱れておりました。 1119 01:12:47,230 --> 01:12:49,230 失礼します。 1120 01:12:53,230 --> 01:12:56,240 立ち聞きの名人です。 1121 01:12:56,240 --> 01:12:59,240 唐津 佐奈子をゆすっていたのは あの男ではないでしょうか? 1122 01:12:59,240 --> 01:13:02,240 面白いですねぇ。 1123 01:13:02,240 --> 01:13:05,240 一つ 実験してみたいのですが。 1124 01:13:05,240 --> 01:13:08,250 ≪(足音) 来ましたよ。 1125 01:13:08,250 --> 01:13:10,250 これで よろしいですか? 1126 01:13:10,250 --> 01:13:14,190 まったく あのときのままですねぇ? 1127 01:13:14,190 --> 01:13:17,190 (袴田)そうでございます。 袴田が来たとき 1128 01:13:17,190 --> 01:13:22,190 お嬢さん あなたは どこにいましたか? 1129 01:13:24,200 --> 01:13:28,200 ここです。 ちょうど ドアを閉めたところでした。 1130 01:13:28,200 --> 01:13:31,200 では 始めましょう。 どうぞ。 1131 01:13:37,210 --> 01:13:39,210 伯父さまは もう 今夜は 1132 01:13:39,210 --> 01:13:42,210 邪魔されたくないと おっしゃっているわ。 1133 01:13:42,210 --> 01:13:47,220 こんな感じです。 素晴らしい。 続けて。 1134 01:13:47,220 --> 01:13:49,220 承知いたしました。 1135 01:13:49,220 --> 01:13:51,220 お部屋の戸締まりを いたしましょうか。 1136 01:13:51,220 --> 01:13:54,230 お願いします。 1137 01:13:54,230 --> 01:13:57,230 はい そこまで! よかった! 1138 01:13:57,230 --> 01:14:00,230 これで よろしいのですか? 完璧です。 1139 01:14:00,230 --> 01:14:02,230 何かのお役に立てたのかしら。 1140 01:14:02,230 --> 01:14:05,240 大いに立ちました。 1141 01:14:05,240 --> 01:14:08,240 グラスは なぜ 2つあるのですか? 1142 01:14:08,240 --> 01:14:10,240 いつも 2つ用意いたします。 1143 01:14:10,240 --> 01:14:13,180 一つは ウイスキー用。 一つは 炭酸用に。 1144 01:14:13,180 --> 01:14:16,180 下がってよろしい。 (袴田)失礼いたします。 1145 01:14:20,190 --> 01:14:22,190 実験は成功ですか? 1146 01:14:22,190 --> 01:14:27,190 袴田のお盆には 本当に グラスが2つ載っていましたか? 1147 01:14:27,190 --> 01:14:30,200 たぶん。 助かりました。 1148 01:14:30,200 --> 01:14:32,200 お嬢さん 下がってよろしいですよ。 1149 01:14:32,200 --> 01:14:35,200 お力になれて よかったです。 1150 01:14:42,210 --> 01:14:44,210 さっぱり 意味が分からないのですが。 1151 01:14:44,210 --> 01:14:47,210 今の質問は? 1152 01:14:47,210 --> 01:14:50,220 はっ? 何かを聞かなければ 1153 01:14:50,220 --> 01:14:53,220 収まりがつかなかったもの ですから。 1154 01:14:53,220 --> 01:14:55,220 あなたが まったく 理解できない。 1155 01:14:55,220 --> 01:14:58,220 とにかく 先生 知りたかったことを 1156 01:14:58,220 --> 01:15:03,230 知ることができました。 勝呂は満足です。 1157 01:15:03,230 --> 01:15:07,230 〈通夜と葬儀は 黒井戸氏と唐津 佐奈子の 1158 01:15:07,230 --> 01:15:11,240 合同でやることになった〉 1159 01:15:11,240 --> 01:15:16,180 〈喪主の春夫がいない 不思議な通夜だった〉 1160 01:15:16,180 --> 01:15:19,180 (満つる) 春夫は どこに行っちゃったのよ。 1161 01:15:19,180 --> 01:15:21,180 どうして 出てこないの? 1162 01:15:21,180 --> 01:15:25,180 (冷泉)出てこられない理由が あるからでしょう。 1163 01:15:25,180 --> 01:15:27,190 姿を見せないってことは…。 1164 01:15:27,190 --> 01:15:30,190 あの子が犯人なんでしょ。 (花子)お母さま。 1165 01:15:30,190 --> 01:15:36,200 あなた 正式に婚約する前で ホントよかったわね。 1166 01:15:36,200 --> 01:15:39,200 これは 神様のおぼしめしですよ。 1167 01:15:41,200 --> 01:15:45,200 皆さん。 勝呂さんから お話があるそうです。 1168 01:15:55,210 --> 01:15:57,220 ここにいる皆さんは 1169 01:15:57,220 --> 01:16:03,220 全員が 春夫君と 親しい関係にありました。 1170 01:16:03,220 --> 01:16:09,230 彼が今 どこに隠れているのか ご存じの人がいれば 1171 01:16:09,230 --> 01:16:14,230 ぜひ 教えていただきたいのですが。 1172 01:16:18,170 --> 01:16:23,180 ホホホホホ…。 1173 01:16:23,180 --> 01:16:27,180 皆さん 全員が何らかの嘘を ついていらっしゃる。 1174 01:16:27,180 --> 01:16:30,180 それぞれ 何かを隠している。 1175 01:16:30,180 --> 01:16:32,180 もう一度 伺います。 1176 01:16:32,180 --> 01:16:36,190 勝呂を前に 隠し事は通用しないことを 1177 01:16:36,190 --> 01:16:38,190 肝に銘じてください。 1178 01:16:38,190 --> 01:16:42,190 勝呂は必ず 真相にたどり着きます。 1179 01:16:42,190 --> 01:16:45,200 春夫君が どこにいるか 1180 01:16:45,200 --> 01:16:49,200 知っている人は どうか 教えてください。 1181 01:16:49,200 --> 01:17:08,200 ♬~ 1182 01:17:10,220 --> 01:17:15,220 非常に 残念です。 1183 01:17:20,628 --> 01:17:27,220 (カナ)お待たせ~。 今夜は カレーライスにしてみました! 1184 01:17:27,220 --> 01:17:29,230 おお~! 大好物です! 1185 01:17:29,230 --> 01:17:34,230 東京で はやってるって聞いて 試しに作ってみたんです。 1186 01:17:34,230 --> 01:17:36,230 いただきます! はい どうぞ。 1187 01:17:36,230 --> 01:17:38,230 よく カレー粉が 手に入りましたね。 1188 01:17:38,230 --> 01:17:43,240 そこは 灰色の脳細胞を 働かせました。 1189 01:17:43,240 --> 01:17:46,240 フフフフ…。 1190 01:17:46,240 --> 01:17:49,250 味噌で代用しました。 1191 01:17:49,250 --> 01:17:53,250 味噌? 食べてみて。 1192 01:18:01,260 --> 01:18:03,260 ウフッ。 1193 01:18:03,260 --> 01:18:05,260 たっくさん ありますからね。 1194 01:18:05,260 --> 01:18:08,260 遠慮しないで どんどん お代わりしてくださいね。 1195 01:18:08,260 --> 01:18:11,270 ウフッ。 あっ そうだ 付け合わせ忘れちゃった。 1196 01:18:11,270 --> 01:18:13,270 ピクルス ピクルス。 1197 01:18:17,270 --> 01:18:20,270 無理しないでください。 1198 01:18:26,220 --> 01:18:32,220 先生。 あしたのご予定は? 1199 01:18:32,220 --> 01:18:37,230 午前中は 往診があります。 葬儀には出られないのですか? 1200 01:18:37,230 --> 01:18:39,230 私は医者です。 亡くなった人より 1201 01:18:39,230 --> 01:18:43,230 亡くなりそうな人のために 時間を割きたいと思います。 1202 01:18:43,230 --> 01:18:46,240 立派なお考えですねぇ。 1203 01:18:46,240 --> 01:18:49,240 勝呂さんは どうされるのです? 1204 01:18:49,240 --> 01:18:53,240 私は ちょっと 隣村へ行こうと思っています。 1205 01:18:53,240 --> 01:18:57,250 袴田が 以前 雇われていたお屋敷を 1206 01:18:57,250 --> 01:19:00,250 警察が探し出してくれたもん ですから。 1207 01:19:00,250 --> 01:19:02,250 やはり 袴田が怪しいと? 1208 01:19:02,250 --> 01:19:08,260 一つ 私のわがままを 聞いていただけませんか? 1209 01:19:08,260 --> 01:19:10,260 中身にもよりますが。 1210 01:19:10,260 --> 01:19:14,260 明日 葬儀に立ち会って 1211 01:19:14,260 --> 01:19:18,270 ある人物の様子を 報告してほしいんです。 1212 01:19:18,270 --> 01:19:20,290 袴田の? 1213 01:19:20,290 --> 01:19:24,210 蘭堂先生です。 蘭堂の何を探れというんです? 1214 01:19:24,210 --> 01:19:28,210 唐津 佐奈子のご主人が 亡くなったとき 1215 01:19:28,210 --> 01:19:32,220 蘭堂さんが この村にいたかどうか。 1216 01:19:32,220 --> 01:19:35,220 どういうことです? 夫人の名前を出したときの 1217 01:19:35,220 --> 01:19:39,220 彼の表情を 見逃さないように。 1218 01:19:39,220 --> 01:19:41,220 蘭堂が関わってる ということですね。 1219 01:19:41,220 --> 01:19:43,230 はーい。 1220 01:19:43,230 --> 01:19:46,230 明日の往診は 誰でしたっけ? えっ? 1221 01:19:46,230 --> 01:19:48,230 姉は全部 把握してるんです。 1222 01:19:48,230 --> 01:19:51,230 明日は 金子のおばあちゃんと 大利根のおじいちゃんと 1223 01:19:51,230 --> 01:19:54,240 あと 村越のご隠居さんかしら。 1224 01:19:54,240 --> 01:19:56,240 うん。 年を取り過ぎていること以外は 1225 01:19:56,240 --> 01:20:00,240 問題のない人たちです。 日にちを延ばしてもらいましょう。 1226 01:20:00,240 --> 01:20:02,250 蘭堂のことは 私に任せてください。 1227 01:20:02,250 --> 01:20:06,250 助かります。 はい お口直し どうぞ。 1228 01:20:06,250 --> 01:20:09,250 おお ピクルスですか。 はい。 1229 01:20:09,250 --> 01:20:14,260 うちの裏の小川でとれた ドジョウのピクルスです。 1230 01:20:14,260 --> 01:20:27,200 (読経) 1231 01:20:27,200 --> 01:20:29,210 花子ちゃん! 1232 01:20:29,210 --> 01:20:32,210 (花子)先生。 よく ここが分かりましたね。 1233 01:20:32,210 --> 01:20:34,210 袴田に聞いてね。 1234 01:20:34,210 --> 01:20:36,210 (花子) 袴田が どうして知ってるの? 1235 01:20:36,210 --> 01:20:39,220 (蘭堂)立ち聞きは 彼の得意技だからね。 1236 01:20:39,220 --> 01:20:44,220 花子ちゃん こんなときに 出歩くのは あまり よくないな。 1237 01:20:44,220 --> 01:20:47,220 (蘭堂)私が誘ったんだ。 こんなときだからこそ 1238 01:20:47,220 --> 01:20:52,230 青空の下で 息抜きをすることが 必要だと思うがね。 1239 01:20:52,230 --> 01:20:55,230 柴さんも お座りになります? 1240 01:20:55,230 --> 01:20:59,230 では 失礼。 1241 01:21:03,240 --> 01:21:09,250 「三月や茜さしたる萱の山」 1242 01:21:09,250 --> 01:21:13,250 誰の句ですか? (蘭堂)芥川 龍之介。 1243 01:21:17,250 --> 01:21:21,190 急性上気道炎。 えっ? 1244 01:21:21,190 --> 01:21:24,190 季節の変わり目は 気を付けた方がいい。 1245 01:21:24,190 --> 01:21:28,200 急性上気道炎ってのは たいがい ウイルス感染で…。 1246 01:21:28,200 --> 01:21:30,200 風邪のことだろ。 1247 01:21:30,200 --> 01:21:33,200 そうなの? 1248 01:21:33,200 --> 01:21:37,210 いわゆる 風邪です。 1249 01:21:37,210 --> 01:21:41,210 そろそろ 出棺の時間だわ。 戻らないと。 1250 01:21:41,210 --> 01:21:43,210 (蘭堂) 私は もう少し ここにいるよ。 1251 01:21:43,210 --> 01:21:47,210 すぐ追い掛けます。 では 後ほど。 1252 01:21:52,220 --> 01:21:57,230 これ以上 彼女に付きまとうな。 あの子には婚約者がいる。 1253 01:21:57,230 --> 01:22:00,230 フッ。 何が おかしい? 1254 01:22:00,230 --> 01:22:03,230 失礼。 1255 01:22:06,240 --> 01:22:11,240 それにしても 合同葬というのは 確かに いい考えだ。 1256 01:22:11,240 --> 01:22:17,250 黒井戸さんは 心から 唐津さんのことを愛していた。 1257 01:22:17,250 --> 01:22:21,180 しかし もう その2人とも この世にはいない。 1258 01:22:21,180 --> 01:22:24,190 不思議な気持ちだよ。 1259 01:22:24,190 --> 01:22:27,190 医者だろ。 人の死は日常茶飯事じゃないのか。 1260 01:22:27,190 --> 01:22:32,190 人でなしのように言うな。 医者にだって 感情はある。 1261 01:22:34,200 --> 01:22:38,200 唐津 佐奈子さんとは 何度か会っていたのか? 1262 01:22:38,200 --> 01:22:43,210 もちろん。 最後に会ったのは? 1263 01:22:43,210 --> 01:22:47,210 勝呂に頼まれて 探りに来たか。 1264 01:22:49,210 --> 01:22:52,220 唐津さんとは面識があるが それだけだ。 1265 01:22:52,220 --> 01:22:54,220 死んだ旦那とも 会ったことはあるが 1266 01:22:54,220 --> 01:22:58,220 それが 今回の事件と 何の関係がある? 1267 01:22:58,220 --> 01:23:03,230 私は頼まれただけで 詳しくは 勝呂に…。 1268 01:23:03,230 --> 01:23:08,230 フフッ。 勝呂は 俺を疑ってるのか? 1269 01:23:08,230 --> 01:23:10,230 どうなんでしょう。 1270 01:23:10,230 --> 01:23:12,240 見当違いもいいところだ! 1271 01:23:12,240 --> 01:23:16,240 …と あの小男に伝えておけ。 1272 01:23:18,240 --> 01:23:20,240 分かりました。 1273 01:23:24,180 --> 01:23:28,180 私が? よかった。 1274 01:23:31,190 --> 01:23:34,190 (花子)お料理 お口に合いました? 1275 01:23:47,200 --> 01:23:50,210 あ~ 忙し 忙し。 はぁ~。 1276 01:23:50,210 --> 01:23:54,210 姉さん! 何してるんですか!? 1277 01:23:54,210 --> 01:23:57,210 てんてこ舞いだっていうから 手伝いに来てあげたの。 1278 01:23:57,210 --> 01:23:59,220 ああ 忙し 忙し。 手伝いに? 1279 01:23:59,220 --> 01:24:02,220 そう。 よいしょ。 はい いただきます。 1280 01:24:02,220 --> 01:24:04,220 何 勝手にやってるんですか。 1281 01:24:04,220 --> 01:24:08,220 一杯ぐらい分かりゃしないわよ。 1282 01:24:08,220 --> 01:24:11,230 いただきます。 1283 01:24:11,230 --> 01:24:14,230 うん… あ~っ。 1284 01:24:14,230 --> 01:24:16,230 姉さん もう帰りましょう。 1285 01:24:16,230 --> 01:24:19,240 今日 お昼 うちに誰が来たと思う? 1286 01:24:19,240 --> 01:24:22,170 分かりませんよ。 勝呂さん。 1287 01:24:22,170 --> 01:24:27,180 勝呂さん? そんなはずは…。 あの人は 今日 隣村に。 1288 01:24:27,180 --> 01:24:29,180 だって どうしても あたしと 話がしたいっていうんだもん。 1289 01:24:29,180 --> 01:24:31,180 勝呂さんが 姉さんに? (カナ)うん。 1290 01:24:31,180 --> 01:24:33,180 何の話? いろんな話。 1291 01:24:33,180 --> 01:24:37,190 例えば? ん? うん。 1292 01:24:37,190 --> 01:24:39,190 春夫が どんな子供だったかとかって。 1293 01:24:39,190 --> 01:24:41,190 はっ? だから 活発な子だったって 1294 01:24:41,190 --> 01:24:44,190 話してあげたわよ。 ほら 昔さ 1295 01:24:44,190 --> 01:24:47,200 春夫が 山で迷子になって 1296 01:24:47,200 --> 01:24:50,200 洞窟で見つかったっていうこと あったじゃない。 1297 01:24:50,200 --> 01:24:53,200 その話とかさ。 そしたら 勝呂さん 1298 01:24:53,200 --> 01:24:56,210 うれしそうに聞いてた。 ウフフ。 1299 01:24:56,210 --> 01:25:00,210 あとは? あとは え~…。 1300 01:25:00,210 --> 01:25:04,210 事件があった日 あなたが 診察した患者さんの話とか。 1301 01:25:04,210 --> 01:25:07,220 患者? (カナ)うん。 人数とか 1302 01:25:07,220 --> 01:25:09,220 あと 誰が来たかとか。 答えたんですか? 1303 01:25:09,220 --> 01:25:13,220 (カナ)うん。 まず 注然寺の和尚さんでしょ。 1304 01:25:13,220 --> 01:25:15,220 あと それから 村越のご隠居さんでしょ。 1305 01:25:15,220 --> 01:25:18,230 あと それから ほらほら 岩田さんの息子の友達で 1306 01:25:18,230 --> 01:25:21,160 東南アジアに行くとかって 船乗りの人で 1307 01:25:21,160 --> 01:25:24,170 ほら あの 予防注射を 受けに来た人いたでしょ。 1308 01:25:24,170 --> 01:25:29,170 あと それから 飛び込みの来仙さん。 1309 01:25:29,170 --> 01:25:32,180 あたし この 来仙さんのことが 聞きたかったんだ 1310 01:25:32,180 --> 01:25:35,180 勝呂さんは… って もう ピンってきた。 1311 01:25:35,180 --> 01:25:38,180 《麻薬の中毒というのは 1312 01:25:38,180 --> 01:25:40,180 治ることが あるんでございますか?》 1313 01:25:40,180 --> 01:25:43,190 《えっ?》 《私 知識がないものでして》 1314 01:25:43,190 --> 01:25:46,190 そんな話までしたんですか!? 1315 01:25:46,190 --> 01:25:51,190 あなたね 外に漏らしたくない話は 1316 01:25:51,190 --> 01:25:54,200 あたしにしたら駄目! 1317 01:25:54,200 --> 01:25:59,200 勝呂さん 食い付いてたわよ~! 1318 01:25:59,200 --> 01:26:03,210 あっ あと それから 勝呂さんに会ったら言っておいて。 1319 01:26:03,210 --> 01:26:07,210 げたの鼻緒の色は 紫だった。 1320 01:26:07,210 --> 01:26:10,210 何の話です? あの人に頼まれてね 1321 01:26:10,210 --> 01:26:14,220 あたしね 聞き込み捜査したの。 事件があった夜に 1322 01:26:14,220 --> 01:26:20,240 春夫君が履いていた げたの鼻緒の色は何色だったか。 1323 01:26:20,240 --> 01:26:23,160 まったく 意味が分からない。 (カナ)うん うん…。 1324 01:26:23,160 --> 01:26:25,160 あたしも まったく 意味は分からないけど 1325 01:26:25,160 --> 01:26:28,160 でも 勝呂さんに そんなふうに言われたの。 1326 01:26:28,160 --> 01:26:33,170 でね 私 猪の湯の周りのお店を 聞き込み捜査したら 1327 01:26:33,170 --> 01:26:39,180 乾物屋の徳さんが覚えてた。 1328 01:26:39,180 --> 01:26:45,180 げたの鼻緒の色は 間違いなく 紫だったって。 1329 01:26:45,180 --> 01:26:51,190 あそこの親父 そういうことは よーく覚えてるのよね。 1330 01:26:51,190 --> 01:26:54,190 前にさ ほら 私がストーブで 前髪を ちりちりちりって…。 1331 01:26:54,190 --> 01:26:59,190 もう いいですよ。 だから 鼻緒の色は 紫。 1332 01:27:01,200 --> 01:27:06,200 勝呂さんは いったい 何を考えてるんだ? 1333 01:27:24,220 --> 01:27:26,220 (カナ)はい? 1334 01:27:32,230 --> 01:27:34,230 あーっ! (春夫)あーっ! 1335 01:27:34,230 --> 01:27:37,230 (カナ)あっ あー! あーっ! あっ…。 1336 01:27:58,937 --> 01:28:02,150 許せない人間がいるんです。 (黒井戸)佐奈子は 1337 01:28:02,150 --> 01:28:04,150 脅されていたらしいんだ。 恐喝? まさか…。 1338 01:28:04,150 --> 01:28:09,160 殺されたって! 勝呂に お任せあれ! 1339 01:28:09,160 --> 01:28:11,160 (袖丈) 唐津さんをゆすっていた人物が 1340 01:28:11,160 --> 01:28:13,160 黒井戸さんを殺した。 地蔵の辻で 1341 01:28:13,160 --> 01:28:15,170 怪しい男と擦れ違ったんです。 (冷泉)黒井戸さんが 1342 01:28:15,170 --> 01:28:18,170 誰かと話している声を…。 (袴田)お嬢さまが 1343 01:28:18,170 --> 01:28:21,170 書斎から出てこられるところを…。 (花子)おやすみの挨拶をしに。 1344 01:28:21,170 --> 01:28:23,170 怪しい…。 (冷泉)怪しい人影? 1345 01:28:23,170 --> 01:28:25,180 (来仙)春夫坊ちゃまでございます。 1346 01:28:25,180 --> 01:28:27,180 僕が自分で解決しなくちゃ いけないことなんです。 1347 01:28:27,180 --> 01:28:30,180 急いで! あなたが まったく 理解できない。 1348 01:28:30,180 --> 01:28:32,180 勝呂は満足です。 1349 01:28:32,180 --> 01:28:37,190 皆さん 全員が何らかの嘘を ついていらっしゃる。 1350 01:28:37,190 --> 01:28:39,190 それぞれ 何かを隠している。 1351 01:28:39,190 --> 01:28:41,190 あーっ! (カナ)あーっ! あーっ! 1352 01:28:45,577 --> 01:28:50,310 (袖丈)おい おい。 お前 そっち行け。 そっち行け…。 1353 01:28:50,310 --> 01:28:52,310 (刑事)お前とお前 こっち来い。 1354 01:28:52,310 --> 01:28:54,320 春夫君! 1355 01:28:54,320 --> 01:28:58,320 私だよ。 柴だ。 1356 01:29:00,320 --> 01:29:02,320 春夫君! 春夫君…。 1357 01:29:02,320 --> 01:29:05,330 あっ…。 1358 01:29:05,330 --> 01:29:08,330 春夫君! 私だ…。 1359 01:29:08,330 --> 01:29:10,330 わっ…。 1360 01:29:10,330 --> 01:29:15,340 春夫君… 待ちなさい! 春夫君! 1361 01:29:15,340 --> 01:29:19,340 春夫君! 春夫君 待ってくれ! 1362 01:29:19,340 --> 01:29:22,340 待て! 待ってくれ! 1363 01:29:22,340 --> 01:29:25,350 春夫君! 1364 01:29:25,350 --> 01:29:27,350 春夫君…。 1365 01:29:27,350 --> 01:29:31,350 おーい! 出てきてくれ…。 1366 01:29:31,350 --> 01:29:33,350 あああっ! 1367 01:29:35,360 --> 01:29:38,360 ああ… 痛っ! 1368 01:29:38,360 --> 01:29:44,370 あっ… 何で こうなるんだ…。 ああ…。 1369 01:29:44,370 --> 01:29:47,300 痛っ… おお…。 1370 01:29:47,300 --> 01:29:49,300 あ痛た… 痛た…。 1371 01:29:49,300 --> 01:29:52,310 しかし 春夫は 何しに来たんでしょう? 1372 01:29:52,310 --> 01:29:54,310 姉さん もう いいよ。 勝手口から 1373 01:29:54,310 --> 01:29:57,310 中をのぞいていたんですねぇ? はい。 1374 01:29:57,310 --> 01:30:00,310 あたし もう びっくりしちゃって! 1375 01:30:00,310 --> 01:30:02,320 もう 大丈夫… もう 大丈夫! 1376 01:30:02,320 --> 01:30:05,320 なぜ 勝手口を選んだのでしょう。 1377 01:30:05,320 --> 01:30:07,320 花子さんに会いに来たのなら 1378 01:30:07,320 --> 01:30:10,320 彼女の部屋の窓を ノックすればいい話です。 1379 01:30:10,320 --> 01:30:13,330 彼女の部屋は1階でしたよ。 1380 01:30:13,330 --> 01:30:17,330 じゃ もしかして あたしに会いに来たのかしら? 1381 01:30:17,330 --> 01:30:20,330 姉さん…。 そうかもしれませんし 1382 01:30:20,330 --> 01:30:23,340 そうでないかもしれません。 1383 01:30:23,340 --> 01:30:27,340 やっぱり 春夫が犯人なのかしら…。 1384 01:30:27,340 --> 01:30:31,350 ある男のことを考えてみましょう。 1385 01:30:31,350 --> 01:30:33,350 ごく普通の男です。 1386 01:30:33,350 --> 01:30:37,350 殺人など 普段は考えたこともない男です。 1387 01:30:37,350 --> 01:30:43,360 あるとき 彼は 一人の女性の 秘密をつかみました。 1388 01:30:43,360 --> 01:30:48,300 彼は初め その秘密を公表しようと考えます。 1389 01:30:48,300 --> 01:30:50,300 しかし ふと思います。 1390 01:30:50,300 --> 01:30:54,300 これは 大金をつかむチャンスだ。 1391 01:30:54,300 --> 01:31:00,310 沈黙を守るだけで 金が手に入る。 それが始まりです。 1392 01:31:00,310 --> 01:31:03,310 金銭への欲望は底無しです。 1393 01:31:03,310 --> 01:31:06,310 もっと欲しい! もっと! 1394 01:31:06,310 --> 01:31:11,320 追い詰められた彼女は 死を選びました。 1395 01:31:11,320 --> 01:31:16,320 彼は 金の卵を産むガチョウを 殺してしまったのです。 1396 01:31:16,320 --> 01:31:19,330 しかし これで終わりではなかった。 1397 01:31:19,330 --> 01:31:23,330 今度は 彼の悪事が 暴露される事態に直面します。 1398 01:31:23,330 --> 01:31:27,340 彼は必死です。 もう 昔の彼ではない。 1399 01:31:27,340 --> 01:31:29,340 道徳心は すでに なくなっています。 1400 01:31:29,340 --> 01:31:34,340 彼は ためらうことなく 短剣を振り下ろした! 1401 01:31:34,340 --> 01:31:42,350 その後 彼は 本来の自分を取り戻し 1402 01:31:42,350 --> 01:31:47,290 以前の ごくありふれた人間に 戻ったことでしょう。 1403 01:31:47,290 --> 01:31:50,290 しかし 必要が生じれば 1404 01:31:50,290 --> 01:31:55,300 再び 彼は 短剣を振りかざすのです! 1405 01:31:55,300 --> 01:31:57,300 確かに… 確かに 春夫は 1406 01:31:57,300 --> 01:32:00,300 普段は目立たない おとなしい子供でした。 1407 01:32:00,300 --> 01:32:02,300 たまに 大きい声 出したり 1408 01:32:02,300 --> 01:32:04,310 暴力を振るうことも あったかもしれません。 1409 01:32:04,310 --> 01:32:07,310 でも だからって 春夫を犯人って決め付けるのは 1410 01:32:07,310 --> 01:32:09,310 それは あたし 納得がいきません! 1411 01:32:09,310 --> 01:32:13,310 姉さん 今日は もう寝た方がいい。 1412 01:32:13,310 --> 01:32:16,320 だけど 春夫が かわいそう…。 1413 01:32:16,320 --> 01:32:19,320 気分を害されたのなら 謝ります。 1414 01:32:19,320 --> 01:32:24,330 姉は 今日一日 働きづめで 疲れてるんです。 1415 01:32:24,330 --> 01:32:27,330 いいから 寝てきなさい。 1416 01:32:27,330 --> 01:32:29,330 医者が言うんだから。 1417 01:32:31,330 --> 01:32:34,340 そうするわ…。 1418 01:32:34,340 --> 01:32:37,340 薬を飲むのも忘れないようにね。 1419 01:32:47,280 --> 01:32:52,290 お姉さまを怒らせてしまいました。 1420 01:32:52,290 --> 01:32:59,290 姉は 元気に見えますが 病気を抱えているんです。 1421 01:32:59,290 --> 01:33:02,300 あまり詳しくは言えませんが 1422 01:33:02,300 --> 01:33:07,300 決して 軽いものではない。 そうでしたか…。 1423 01:33:07,300 --> 01:33:11,310 あまり 巻き込まないでほしいのです。 1424 01:33:11,310 --> 01:33:13,310 それは失礼しました。 1425 01:33:13,310 --> 01:33:16,310 だいたい あなた 今日は 村を離れると言っていた。 1426 01:33:16,310 --> 01:33:20,310 いや 代わりに 袖丈警部が 調べてくれました。 1427 01:33:20,310 --> 01:33:25,320 袴田は 前の雇い主の秘密を嗅ぎつけ 1428 01:33:25,320 --> 01:33:29,320 ゆすりを働こうとして 解雇されていたようですよ。 1429 01:33:29,320 --> 01:33:33,330 怪しいですね。 そちらは いかがでしたか? 1430 01:33:33,330 --> 01:33:37,330 あっ 蘭堂と 唐津 佐奈子の関係は 1431 01:33:37,330 --> 01:33:40,330 正直 よく分かりませんでした。 1432 01:33:40,330 --> 01:33:44,340 でも 深いつながりは なさそうです。 1433 01:33:44,340 --> 01:33:46,270 ありがとうございました。 1434 01:33:46,270 --> 01:33:50,280 それだけですか? じゅうぶんです。 1435 01:33:50,280 --> 01:33:53,280 もてあそんでます? 1436 01:33:53,280 --> 01:33:58,290 とんでもない。 あっ それから 姉から伝言です。 1437 01:33:58,290 --> 01:34:06,290 事件当日 春夫が履いていた げたの鼻緒の色は 紫だったと。 1438 01:34:06,290 --> 01:34:10,300 それは残念。 1439 01:34:10,300 --> 01:34:16,300 勝呂さん そういう 自分一人が 分かっているふうな感じ 1440 01:34:16,300 --> 01:34:20,310 ホントにイライラするんですけど。 これが勝呂のやり方です。 1441 01:34:20,310 --> 01:34:23,310 ☎ 電話ですよ。 1442 01:34:23,310 --> 01:34:27,320 ☎ 分かってます。 1443 01:34:27,320 --> 01:34:30,320 ☎ 1444 01:34:30,320 --> 01:34:32,320 はい 柴です。 1445 01:34:32,320 --> 01:34:36,320 ああ 袖丈警部。 1446 01:34:36,320 --> 01:34:39,330 ええ。 今 ここにいらっしゃいますが。 1447 01:34:39,330 --> 01:34:43,330 かわりましょうか? ホントですか? 1448 01:34:43,330 --> 01:34:46,270 かわりましょうか? 分かりました。 1449 01:34:46,270 --> 01:34:48,270 明日一番に伺います。 かわりましょうか? 1450 01:34:48,270 --> 01:34:51,270 ああ いえいえ 私から 勝呂さんには伝えておきます。 1451 01:34:51,270 --> 01:34:54,280 失礼します。 1452 01:34:54,280 --> 01:34:57,280 神社の境内で 刑事が 復員服の男を 1453 01:34:57,280 --> 01:35:00,280 偶然 見つけたそうです。 私が会った男かどうか 1454 01:35:00,280 --> 01:35:04,290 明日 面通しに行ってきます。 素晴らしい! 1455 01:35:04,290 --> 01:35:06,290 (刑事)何で 急に逃げ出した! 1456 01:35:06,290 --> 01:35:08,290 (袖丈)茶川 建造。 30歳。 1457 01:35:08,290 --> 01:35:11,290 刑事たちが 不審尋問をしたところ 急に逃げ出したので 1458 01:35:11,290 --> 01:35:16,300 取り押さえました。 間違いありません。 あの男です。 1459 01:35:16,300 --> 01:35:20,300 麻薬中毒患者ではありませんか? 1460 01:35:20,300 --> 01:35:24,310 よく分かりましたね。 かなりの重症患者です。 1461 01:35:24,310 --> 01:35:29,310 (建造)い… いったい… お… 俺が何したっていうんだ! 1462 01:35:31,310 --> 01:35:35,320 (袖丈)3月17日 黒井戸さんが殺された夜 1463 01:35:35,320 --> 01:35:39,320 現場付近のあぜ道で お前を見掛けた人がいる。 1464 01:35:39,320 --> 01:35:42,320 く… 黒井戸なんて知らねえよ! 1465 01:35:42,320 --> 01:35:46,260 (袖丈)あの道の先には 黒井戸さんのお屋敷しかない。 1466 01:35:46,260 --> 01:35:52,270 何の用があったんだ? 誰に会いに行ったんだ? 1467 01:35:52,270 --> 01:35:58,270 答えろ! (建造)うう…。 1468 01:35:58,270 --> 01:36:00,270 ああ…。 1469 01:36:05,280 --> 01:36:09,280 明日 皆さんを 私の家にご招待したいのですが 1470 01:36:09,280 --> 01:36:12,290 集めていただけますか? 1471 01:36:12,290 --> 01:36:14,290 犯人が分かったんですか? 1472 01:36:14,290 --> 01:36:17,290 先生には 感謝しなければなりません。 1473 01:36:17,290 --> 01:36:21,300 よく 私を助けてくださいました。 素晴らしいワトソンでした。 1474 01:36:21,300 --> 01:36:24,300 ハハハハ…。 あなたがいなければ 1475 01:36:24,300 --> 01:36:29,300 今回の事件は 解決できませんでした。 1476 01:36:29,300 --> 01:36:31,310 力になった気がしないのですが。 1477 01:36:31,310 --> 01:36:34,310 ワトソンは 常に 事件を記録していました。 1478 01:36:34,310 --> 01:36:37,310 これで あなたが手記を書いていたなら 1479 01:36:37,310 --> 01:36:40,310 完璧なんですが。 実は 勝呂さん 1480 01:36:40,310 --> 01:36:43,320 私 書いてたんです。 1481 01:36:43,320 --> 01:36:46,250 手記をですか? 文章を書くのが好きでして。 1482 01:36:46,250 --> 01:36:48,260 ホホッ! ホホホ! 1483 01:36:48,260 --> 01:36:51,260 それは読みたいものです。 1484 01:36:57,260 --> 01:36:59,270 これなんですけど。 1485 01:36:59,270 --> 01:37:02,270 素晴らしい! 1486 01:37:02,270 --> 01:37:04,270 殺人事件に遭遇するなんて 1487 01:37:04,270 --> 01:37:06,270 めったに あることでは ないですからね。 1488 01:37:06,270 --> 01:37:09,270 記録に残しておいた方が いいと思いまして。 1489 01:37:11,280 --> 01:37:13,280 読ませていただきます。 1490 01:37:13,280 --> 01:37:31,300 ♬~ 1491 01:37:31,300 --> 01:37:34,300 ごめんね。 何だか 起きられなくて。 1492 01:37:34,300 --> 01:37:36,300 ご飯の支度もできなかった。 1493 01:37:36,300 --> 01:37:38,310 色々あったから 疲れたんですよ。 1494 01:37:38,310 --> 01:37:41,310 今日は ゆっくりしてください。 1495 01:37:41,310 --> 01:37:43,310 局長によろしく。 1496 01:37:43,310 --> 01:37:45,330 局長? 勝呂さんよ。 1497 01:37:45,330 --> 01:37:49,250 2人でね 探偵局つくろう っていう話になったの。 1498 01:37:49,250 --> 01:37:51,250 あまり真に受けない方が いいと思うけど。 1499 01:37:51,250 --> 01:37:55,260 あら あなたも参加するのよ。 私は いいですよ。 1500 01:37:55,260 --> 01:38:01,260 勝呂さんね あなたのこと すっごく買ってるんだから。 1501 01:38:01,260 --> 01:38:04,270 私を? 正式に助手にしたいって。 1502 01:38:04,270 --> 01:38:08,270 へぇ…。 あたしは局長代理。 1503 01:38:10,270 --> 01:38:12,270 いってきます。 1504 01:38:17,280 --> 01:38:19,280 ああ。 1505 01:38:21,280 --> 01:38:24,290 拝見いたしました。 1506 01:38:24,290 --> 01:38:26,290 いかがでしたか? 1507 01:38:26,290 --> 01:38:29,290 率直な感想 お聞きになりたいですか? 1508 01:38:29,290 --> 01:38:32,290 怖いな…。 1509 01:38:32,290 --> 01:38:34,300 非常に 綿密で正確です。 1510 01:38:34,300 --> 01:38:38,300 全ての事実が忠実で ありのままに書かれています。 1511 01:38:38,300 --> 01:38:41,300 ただ 自分のことについては 1512 01:38:41,300 --> 01:38:44,310 ずいぶん 控えめに書いていますねぇ。 1513 01:38:44,310 --> 01:38:46,310 性格ですかね。 1514 01:38:46,310 --> 01:38:50,310 ぜひ この先も書き続けてください。 1515 01:38:50,310 --> 01:38:52,310 うまく まとまったら 出版してもよろしいですか? 1516 01:38:52,310 --> 01:38:56,320 ぜひ。 あなたは 私のワトソンですから。 1517 01:38:56,320 --> 01:38:58,320 姉から 探偵局の話を聞きました。 1518 01:38:58,320 --> 01:39:00,320 正式に 私を助手として 雇いたいと? 1519 01:39:00,320 --> 01:39:04,330 もし 私がお願いしたら 受けていただけますか? 1520 01:39:04,330 --> 01:39:07,330 非常に 光栄なお話です。 1521 01:39:07,330 --> 01:39:09,330 私も 今の仕事に 疑問を感じていたんです。 1522 01:39:09,330 --> 01:39:12,330 本当に向いているのは 犯罪捜査なのではないかと。 1523 01:39:12,330 --> 01:39:14,340 人の心の闇に…。 ≪(チャイム) 1524 01:39:14,340 --> 01:39:16,340 来たようです。 私の…。 1525 01:39:18,340 --> 01:39:21,340 どうぞ お入りください。 1526 01:39:21,340 --> 01:39:24,350 ようこそおいでくださいました。 1527 01:39:24,350 --> 01:39:26,350 (冷泉)これは あれですよね。 1528 01:39:26,350 --> 01:39:28,350 探偵小説の最後の方に 必ず出てくる 1529 01:39:28,350 --> 01:39:30,350 関係者を集めて 謎解きするっていう。 1530 01:39:30,350 --> 01:39:34,360 (蘭堂) 「名探偵 皆を集めて さてと言い」 1531 01:39:34,360 --> 01:39:38,360 それじゃ 勝呂さんには 犯人が分かってるということ? 1532 01:39:38,360 --> 01:39:40,360 そうらしいですよ。 だったら 1533 01:39:40,360 --> 01:39:42,360 犯人だけ 呼べばいい話じゃないの? 1534 01:39:42,360 --> 01:39:45,330 事は それほど 単純ではないのです。 1535 01:39:45,330 --> 01:39:48,200 いけませんねぇ! 人の家に招かれたときは 1536 01:39:48,200 --> 01:39:51,210 あれこれ のぞき見しないものです。 1537 01:39:51,210 --> 01:39:54,210 隣の部屋に 誰かいる。 ノンノン。 1538 01:39:54,210 --> 01:39:57,210 私は一人暮らしですよ。 1539 01:39:57,210 --> 01:40:01,220 それでは 皆さん 椅子に座ってください。 1540 01:40:01,220 --> 01:40:04,220 数は足りるはずです。 1541 01:40:04,220 --> 01:40:06,220 さっ どうぞ。 1542 01:40:14,230 --> 01:40:16,230 それでは 勝呂さん お願いします。 1543 01:40:35,897 --> 01:40:42,100 黒井戸 禄助が 3月17日の 午後9時45分から10時の間に 1544 01:40:42,100 --> 01:40:46,110 何者かに 首の後ろを刺されて 殺されました。 1545 01:40:46,110 --> 01:40:51,110 ここに いらっしゃる全員が 容疑者です。 1546 01:40:54,120 --> 01:40:58,120 事件現場から 一通の手紙が持ち去られました。 1547 01:40:58,120 --> 01:41:01,120 先日 亡くなられた 唐津 佐奈子さんから 1548 01:41:01,120 --> 01:41:04,130 黒井戸さんに宛てた手紙です。 1549 01:41:04,130 --> 01:41:07,130 ある人物をXとします。 1550 01:41:07,130 --> 01:41:11,130 唐津さんは Xから ゆすられていました。 1551 01:41:11,130 --> 01:41:15,140 彼女は それを苦にして 自殺しました。 1552 01:41:15,140 --> 01:41:20,160 彼女の手紙が盗まれたことから 黒井戸さんを殺した人物は 1553 01:41:20,160 --> 01:41:28,080 唐津さんをゆすっていたXと 同一人物と思われます。 1554 01:41:28,080 --> 01:41:34,090 Xの可能性が 最も高いのは 彼です。 1555 01:41:34,090 --> 01:41:37,090 以前 雇い主の秘密を探り出し 1556 01:41:37,090 --> 01:41:42,100 それをネタに ゆすろうとして 勤め先を首になっています。 1557 01:41:42,100 --> 01:41:46,100 今回も いろんな場所で 立ち聞きをしているところを 1558 01:41:46,100 --> 01:41:49,100 見られています。 1559 01:41:49,100 --> 01:41:54,110 君は 根っからの ゆすり屋だねぇ。 1560 01:41:54,110 --> 01:41:56,110 ありがとうございます。 1561 01:41:58,110 --> 01:42:01,120 ところが 弁護士の鱧瀬さんによれば 1562 01:42:01,120 --> 01:42:04,120 唐津 佐奈子さんは つい最近まで かなりの額を 1563 01:42:04,120 --> 01:42:07,120 Xに支払っていました。 1564 01:42:07,120 --> 01:42:11,130 金になるネタを 日々探している 袴田の姿に 1565 01:42:11,130 --> 01:42:16,130 どうしても Xの姿が重なりません。 1566 01:42:16,130 --> 01:42:20,100 冷泉さんは 黒井戸さんの寝室から 1567 01:42:20,100 --> 01:42:23,970 大金がなくなっていたのを 見つけました。 1568 01:42:23,970 --> 01:42:26,980 しかし 彼ほど優秀な秘書なら 1569 01:42:26,980 --> 01:42:28,980 黒井戸さんの遺体が 発見されたとき 1570 01:42:28,980 --> 01:42:32,980 真っ先に 現金を調べるはずです。 1571 01:42:32,980 --> 01:42:36,990 紛失に気付いたのは 事件の2日後。 1572 01:42:36,990 --> 01:42:39,990 遅過ぎます。 1573 01:42:39,990 --> 01:42:49,000 ひょっとすると どさくさに紛れて 着服するつもりだったのでは? 1574 01:42:49,000 --> 01:42:52,000 ところが 金は すでに盗まれており 1575 01:42:52,000 --> 01:42:54,000 予定が狂った。 1576 01:42:54,000 --> 01:42:57,010 さすが 名探偵。 1577 01:42:57,010 --> 01:43:02,010 しかし 彼も また Xとは考えにくい。 1578 01:43:02,010 --> 01:43:08,020 1年かけて 唐津さんから 200万近く巻き上げた人物が 1579 01:43:08,020 --> 01:43:13,020 危ない橋を渡って 10万円を盗むでしょうか? 1580 01:43:13,020 --> 01:43:15,020 しませんね。 1581 01:43:15,020 --> 01:43:19,030 その意味では 姿を消した 兵藤 春夫さんは 1582 01:43:19,030 --> 01:43:23,060 Xの可能性が 非常に高いといえます。 1583 01:43:23,060 --> 01:43:26,070 彼は 東京で 事業に失敗しています。 1584 01:43:26,070 --> 01:43:29,070 いくらでも 金が必要だったでしょう。 1585 01:43:29,070 --> 01:43:32,070 やっぱり 犯人は あの子ね。 1586 01:43:32,070 --> 01:43:34,080 まだ決め付けるのは 早過ぎます。 1587 01:43:34,080 --> 01:43:36,080 話を変えましょう。 1588 01:43:36,080 --> 01:43:41,080 私は お堂で のりのきいた 木綿の切れ端を見つけました。 1589 01:43:41,080 --> 01:43:48,090 それは 女中の前掛けの 一部を思わせました。 1590 01:43:48,090 --> 01:43:51,090 女中の本多 明日香の前掛けは 洗いたて。 1591 01:43:51,090 --> 01:43:54,100 以前 使っていたものが 破れてしまったので 1592 01:43:54,100 --> 01:43:58,100 新しいものに替えたようでした。 1593 01:43:58,100 --> 01:44:01,100 あなたは あの夜 1594 01:44:01,100 --> 01:44:06,110 9時50分に 花子さんの部屋を訪れています。 1595 01:44:06,110 --> 01:44:11,110 それ以前は 台所で仕事をしていた。 1596 01:44:11,110 --> 01:44:15,120 はい。 しかし 9時半から少しの間 1597 01:44:15,120 --> 01:44:20,110 台所を離れたそうですねぇ? 袴田が覚えていましたよ。 1598 01:44:20,110 --> 01:44:23,060 ひょっとすると その時間 彼女は 1599 01:44:23,060 --> 01:44:26,060 お堂に 行っていたのかもしれません。 1600 01:44:26,060 --> 01:44:29,060 待ってください。 しかし 何のために? 1601 01:44:29,060 --> 01:44:34,070 誰かと会うためです。 その相手は誰か。 1602 01:44:34,070 --> 01:44:40,080 怪しいのは 柴先生が見掛けた 復員服の男ですが。 1603 01:44:40,080 --> 01:44:44,080 (鐘の音) 柴先生が 地蔵の辻で 1604 01:44:44,080 --> 01:44:47,080 その男に会ったのは 9時ちょうど。 1605 01:44:47,080 --> 01:44:50,090 お堂は そこから 目と鼻の先。 1606 01:44:50,090 --> 01:44:55,090 しかし 本多 明日香が 台所を離れたのは9時半。 1607 01:44:55,090 --> 01:44:57,090 時間が合いません。 1608 01:44:57,090 --> 01:45:00,100 そこで 勝呂は こう考えました。 1609 01:45:00,100 --> 01:45:04,100 ひょっとすると 明日香と 復員服の男は 1610 01:45:04,100 --> 01:45:12,110 それぞれ 別の人物と 待ち合わせていたのではないか? 1611 01:45:12,110 --> 01:45:16,110 昨日 捜査に 大きな動きがありました。 1612 01:45:16,110 --> 01:45:19,110 復員服の男が見つかったのです。 1613 01:45:19,110 --> 01:45:23,050 茶川 建造。 彼は 黙秘を続けていますが 1614 01:45:23,050 --> 01:45:29,060 勝呂は分かっています。 彼と お堂で会っていたのは…。 1615 01:45:29,060 --> 01:45:33,060 来仙さん。 1616 01:45:33,060 --> 01:45:36,060 あなたですね? 1617 01:45:39,070 --> 01:45:43,070 あの夜 お堂にいた まともな理由を 1618 01:45:43,070 --> 01:45:48,080 あなたは答えられなかった。 1619 01:45:48,080 --> 01:45:54,080 茶川 建造は あなたの息子さんですねぇ? 1620 01:45:54,080 --> 01:45:57,090 おっしゃるとおりでございます。 1621 01:45:57,090 --> 01:46:01,090 彼は 重度の麻薬中毒です。 1622 01:46:01,090 --> 01:46:05,090 戦地で負傷し 麻酔代わりに ヒロポンを打たれ 1623 01:46:05,090 --> 01:46:10,100 そのせいで中毒になってしまった 兵士は 数多い。 1624 01:46:10,100 --> 01:46:16,100 彼は ヒロポン代を求めて 何度も あなたの元へ足を運ぶ。 1625 01:46:16,100 --> 01:46:23,040 心を痛めた あなたは 柴先生に相談に行きましたねぇ。 1626 01:46:23,040 --> 01:46:25,050 (来仙)息子は 薬が切れると 1627 01:46:25,050 --> 01:46:28,050 人が変わったように 乱暴になるんです。 1628 01:46:28,050 --> 01:46:33,050 仕事も長続きせず 職を転々としておりました。 1629 01:46:33,050 --> 01:46:37,060 そんな息子を お屋敷に 来させるわけにもいかず 1630 01:46:37,060 --> 01:46:40,060 いつも お堂で会うことに しておりました。 1631 01:46:40,060 --> 01:46:44,070 あの日 7時に会う約束を しておりましたが 1632 01:46:44,070 --> 01:46:50,070 息子は現れませんでした。 1633 01:46:50,070 --> 01:46:57,070 置き手紙を残して いったん お屋敷に戻ってまいりました。 1634 01:46:59,080 --> 01:47:02,080 (来仙) そして 応接室を出たところで…。 1635 01:47:02,080 --> 01:47:04,090 《わあ!》 1636 01:47:04,090 --> 01:47:07,090 (来仙)9時すぎに もう一度 行きますと 1637 01:47:07,090 --> 01:47:09,090 息子は来ておりました。 1638 01:47:09,090 --> 01:47:13,090 かなりのお酒が 入っておりました。 1639 01:47:13,090 --> 01:47:16,100 お金は渡しませんでした。 1640 01:47:16,100 --> 01:47:19,100 一日も早く 病院で治療をするように 1641 01:47:19,100 --> 01:47:24,040 忠告をしたのですが 息子は恐ろしい形相で 1642 01:47:24,040 --> 01:47:30,040 怒鳴り散らして そして 去っていきました。 1643 01:47:30,040 --> 01:47:36,050 その後 春夫坊ちゃまを 見掛けたのでございます。 1644 01:47:36,050 --> 01:47:40,050 息子は この事件とは関係ありません。 1645 01:47:40,050 --> 01:47:45,060 私が必ず 立ち直らせてみせます。 お約束いたします。 1646 01:47:45,060 --> 01:47:47,060 分かっておりますよ。 1647 01:47:47,060 --> 01:47:53,070 ただし 昨年から 覚せい剤取締法が施行され 1648 01:47:53,070 --> 01:47:59,070 ヒロポン中毒は 犯罪となりました。 1649 01:47:59,070 --> 01:48:05,070 息子さんのことは 袖丈警部にお任せしましょう。 1650 01:48:07,080 --> 01:48:09,080 だとすれば 9時半に 1651 01:48:09,080 --> 01:48:13,090 本多 明日香と会っていたのは 誰なのか? 1652 01:48:13,090 --> 01:48:16,090 それは もう明白であります。 1653 01:48:16,090 --> 01:48:22,030 あらゆる状況から見て その相手は 兵藤 春夫です。 1654 01:48:22,030 --> 01:48:25,030 どういうことです? 1655 01:48:27,040 --> 01:48:32,040 あなたは 兵藤 春夫さんの 奥さんですね? 1656 01:48:38,100 --> 01:48:43,100 あなたは 兵藤 春夫さんの 奥さんですね? 1657 01:48:43,100 --> 01:48:45,100 まさか! 1658 01:48:45,100 --> 01:48:48,100 そんなこと あるわけないじゃない! 1659 01:48:53,110 --> 01:48:57,120 沼に 指輪が落ちていました。 1660 01:48:57,120 --> 01:49:00,120 春夫さんの名前入りです。 1661 01:49:00,120 --> 01:49:02,120 花子さんのものでは ありませんでした。 1662 01:49:02,120 --> 01:49:07,130 だとすれば 残りの女性の中で 1663 01:49:07,130 --> 01:49:11,130 春夫さんが 指輪を贈りそうな人は 1664 01:49:11,130 --> 01:49:14,130 あなたしかいません。 1665 01:49:16,140 --> 01:49:21,140 おとといも 春夫さんは 勝手口に現れました。 1666 01:49:21,140 --> 01:49:24,140 あなたに会いに来たのです。 1667 01:49:26,150 --> 01:49:30,150 被害者が殺された時刻を 気にしていましたねぇ。 1668 01:49:30,150 --> 01:49:33,150 《旦那さまが殺されたのは 何時ごろでしょうか?》 1669 01:49:33,150 --> 01:49:35,150 《9時45分から10時の間だよ》 1670 01:49:35,150 --> 01:49:39,090 《もっと前ということは ありませんか? 9時半とか》 1671 01:49:39,090 --> 01:49:43,100 9時半ならば 夫のアリバイを証明できる。 1672 01:49:43,100 --> 01:49:46,100 あなたは そう考えた。 1673 01:49:51,100 --> 01:49:56,110 お嬢さま 黙っていて 申し訳ありませんでした。 1674 01:49:56,110 --> 01:49:59,110 ちょっと待ちなさい。 (花子)お母さまは黙ってて! 1675 01:49:59,110 --> 01:50:03,120 いつなの? 結婚したのは。 1676 01:50:03,120 --> 01:50:05,120 1カ月前です。 1677 01:50:05,120 --> 01:50:07,120 (春夫)《お願いします》 1678 01:50:07,120 --> 01:50:10,120 (男性)《おめでとう》 (2人)《ありがとうございます》 1679 01:50:10,120 --> 01:50:12,120 (明日香)春夫さんとは 私が 1680 01:50:12,120 --> 01:50:16,130 去年 こちらに来てからの お付き合いです。 1681 01:50:16,130 --> 01:50:18,130 まったく 気付かなかった…。 1682 01:50:18,130 --> 01:50:20,130 あれだけ 立ち聞きしてた あんたがね。 1683 01:50:20,130 --> 01:50:22,130 (袴田)悔しいです! 1684 01:50:24,140 --> 01:50:28,140 (明日香)私が貧乏な家庭に 生まれたこともあり 1685 01:50:28,140 --> 01:50:32,140 黒井戸さんは 私たちのことを 決して 許さないだろうと 1686 01:50:32,140 --> 01:50:35,140 春夫さんは言いました。 1687 01:50:39,080 --> 01:50:44,090 《僕は 東京に出て 一人前になって 帰ってくる》 1688 01:50:44,090 --> 01:50:48,090 《親父には そのとき 結婚のことを打ち明ける》 1689 01:50:48,090 --> 01:50:50,100 《約束するよ》 1690 01:50:50,100 --> 01:50:53,100 (明日香)ところが 何も知らない黒井戸さんは 1691 01:50:53,100 --> 01:50:57,100 春夫さんと花子さんの結婚を 決めてしまわれました。 1692 01:50:57,100 --> 01:51:00,110 私は 春夫さんを 東京から呼び戻しました。 1693 01:51:00,110 --> 01:51:02,110 《本当のことを 話すしかないと思うの》 1694 01:51:02,110 --> 01:51:05,110 《いや しかし そんなことしたら 親父は絶対に 怒りだす》 1695 01:51:05,110 --> 01:51:09,110 《だけど 二重結婚に なってしまうじゃないですか》 1696 01:51:12,120 --> 01:51:15,120 《親父さえ ぽっくり逝ってくれれば 1697 01:51:15,120 --> 01:51:17,120 全てが解決するのにな》 1698 01:51:17,120 --> 01:51:21,130 (明日香) 《あなたが言えないなら…》 1699 01:51:21,130 --> 01:51:23,130 《私が言います》 《いや ちょっと待ってくれ》 1700 01:51:23,130 --> 01:51:25,130 《それは駄目だよ》 1701 01:51:25,130 --> 01:51:27,130 事件のあった日の午後 私は 1702 01:51:27,130 --> 01:51:32,140 旦那さまの机が どういうわけか ぐちゃぐちゃになっていたので 1703 01:51:32,140 --> 01:51:35,140 それを片付けていました。 1704 01:51:35,140 --> 01:51:37,080 そこへ 旦那さまが現れました。 1705 01:51:37,080 --> 01:51:41,080 旦那さまと2人きりになる機会は そうないので 1706 01:51:41,080 --> 01:51:43,080 私は 春夫さんのことを 打ち明けました。 1707 01:51:43,080 --> 01:51:46,090 《春夫さんと結婚いたしました》 1708 01:51:46,090 --> 01:51:48,090 《何 バカなこと言ってんだ》 1709 01:51:48,090 --> 01:51:51,090 《春夫と花子は 結婚が決まったばっかりだぞ》 1710 01:51:51,090 --> 01:51:54,090 《旦那さまが 花子さんとの婚約を お決めになる前に 1711 01:51:54,090 --> 01:51:57,100 婚姻届を出したのです》 《何 勝手なことやってんだ!》 1712 01:51:57,100 --> 01:51:59,100 (明日香)旦那さまは 大層 お怒りになり 1713 01:51:59,100 --> 01:52:03,100 結婚は 絶対に認めないと おっしゃいました。 1714 01:52:03,100 --> 01:52:06,110 そして 暇を出されたのです。 《出てけ!》 1715 01:52:06,110 --> 01:52:09,110 《計画が台無しじゃないか!》 1716 01:52:09,110 --> 01:52:12,110 《いつかは知られることだから 話しておいた方がいいかと》 1717 01:52:12,110 --> 01:52:14,110 《取りあえず 花子と婚約しておいて 1718 01:52:14,110 --> 01:52:18,120 時期が来たら 解消するつもりだった》 1719 01:52:18,120 --> 01:52:21,120 《そんな都合のいいように いくわけないわ!》 1720 01:52:21,120 --> 01:52:24,120 《親父を怒らせたら おしまいなんだよ!》 1721 01:52:33,130 --> 01:52:37,130 (明日香の泣き声) 1722 01:52:46,080 --> 01:52:50,080 (明日香)春夫さんは とても 黒井戸さんを恐れていました。 1723 01:52:50,080 --> 01:52:57,090 気が小さくて 苦労知らずで 行き当たりばったり。 1724 01:52:57,090 --> 01:53:05,100 どうしようもない人ですが あの人は 私の夫です。 1725 01:53:05,100 --> 01:53:09,100 今も あの人のことを 愛しています。 1726 01:53:09,100 --> 01:53:13,100 青天のへきれきです。 1727 01:53:18,110 --> 01:53:22,110 すみません。 (花子)いいの。 1728 01:53:22,110 --> 01:53:27,120 春夫さんと私は 幼なじみで 仲は良かったけど 1729 01:53:27,120 --> 01:53:30,120 それは 愛でなかったの。 1730 01:53:30,120 --> 01:53:35,130 婚約も 伯父さまが 勝手に決めたこと。 1731 01:53:35,130 --> 01:53:38,060 私は初めから 乗り気じゃなかった。 1732 01:53:38,060 --> 01:53:42,070 そうだったのか…。 1733 01:53:42,070 --> 01:53:47,070 それに気付いたのは 蘭堂先生だけです。 1734 01:53:52,080 --> 01:53:55,080 幸せを祈ってるわ。 1735 01:53:55,080 --> 01:54:00,090 お嬢さまに そう言っていただけて ほっとしました。 1736 01:54:00,090 --> 01:54:03,090 あたくしは納得してませんよ。 1737 01:54:03,090 --> 01:54:05,090 遺産はどうなるんです? 1738 01:54:05,090 --> 01:54:09,090 兄の財産は全部 この子のものになるわけでしょ。 1739 01:54:09,090 --> 01:54:12,100 冗談じゃありませんよ。 1740 01:54:12,100 --> 01:54:14,100 あたくしは認めませんから。 1741 01:54:14,100 --> 01:54:17,100 一つだけ そうならない場合があります。 1742 01:54:17,100 --> 01:54:21,100 春夫さんが犯人だった場合です。 1743 01:54:25,110 --> 01:54:30,120 大事な質問をします。 事件のあった夜 1744 01:54:30,120 --> 01:54:34,120 春夫さんと会っていた 正確な時間が分かりますか? 1745 01:54:34,120 --> 01:54:37,060 9時半に会う約束をしていました。 1746 01:54:37,060 --> 01:54:40,060 お屋敷に戻ったのは? 9時50分です。 1747 01:54:40,060 --> 01:54:47,070 黒井戸さんの死亡推定時刻が 9時45分から10時の間。 1748 01:54:47,070 --> 01:54:51,070 ということは 春夫が あなたと別れてから 1749 01:54:51,070 --> 01:54:54,070 殺しに行っても じゅうぶん 間に合うな。 1750 01:54:54,070 --> 01:54:57,080 先生は 春夫さんの味方じゃ なかったんですか!? 1751 01:54:57,080 --> 01:55:01,080 もちろん 彼には無実であってほしいが…。 1752 01:55:01,080 --> 01:55:05,080 ここで 勝呂は 皆さんに問います。 1753 01:55:05,080 --> 01:55:13,090 黒井戸さんは 9時45分に 本当に生きていたのでしょうか? 1754 01:55:13,090 --> 01:55:17,100 それは間違いないでしょう。 なぜです? 1755 01:55:17,100 --> 01:55:20,100 だって 花子ちゃんが。 1756 01:55:20,100 --> 01:55:22,100 (蘭堂) 彼女が嘘をついたというのか? 1757 01:55:22,100 --> 01:55:25,100 あり得ない。 だって 書斎から出てくるところを 1758 01:55:25,100 --> 01:55:27,110 袴田が見てるんですよ。 1759 01:55:27,110 --> 01:55:30,110 いいえ。 見ていません。 1760 01:55:30,110 --> 01:55:32,110 何を言ってるんです? 勝呂さん。 1761 01:55:32,110 --> 01:55:36,130 実験したではないですか。 1762 01:55:36,130 --> 01:55:41,050 袴田が見たのは ドアノブに 手を掛けた花子さんの姿です。 1763 01:55:41,050 --> 01:55:45,060 あのとき 花子さんは 書斎から出てきたのではなく 1764 01:55:45,060 --> 01:55:49,060 階段を下りてきたところだった。 1765 01:55:52,060 --> 01:55:55,070 それを袴田に見られて 1766 01:55:55,070 --> 01:55:59,070 とっさに 書斎から出てきたふりをした。 1767 01:55:59,070 --> 01:56:02,070 《袴田。 伯父さまは もう 今晩は 1768 01:56:02,070 --> 01:56:04,080 邪魔されたくないと おっしゃっているわ》 1769 01:56:04,080 --> 01:56:07,080 そうは考えられませんか? 1770 01:56:07,080 --> 01:56:10,080 しかし あの階段の上には 1771 01:56:10,080 --> 01:56:12,080 黒井戸さんの寝室しか ありませんよ。 1772 01:56:12,080 --> 01:56:14,090 そのとおりです! 1773 01:56:14,090 --> 01:56:16,090 分かった。 1774 01:56:16,090 --> 01:56:21,090 つまり 寝室から金を盗んだのは 花子さんだと。 1775 01:56:26,100 --> 01:56:30,100 いかがです? 1776 01:56:30,100 --> 01:56:35,110 あの実験は それを確かめるためでしたの? 1777 01:56:35,110 --> 01:56:39,040 はい。 袴田が何を持ってきたとか 1778 01:56:39,040 --> 01:56:41,050 そんなことは 関係なかったんですね。 1779 01:56:41,050 --> 01:56:45,050 だまして 申し訳ございません。 1780 01:56:47,050 --> 01:56:49,050 お金を盗んだのは 私です。 1781 01:56:49,050 --> 01:56:51,060 (満つる)バカなことを言うのは よしなさい! 1782 01:56:51,060 --> 01:56:55,060 お金がない生活に もう うんざりだったんです。 1783 01:56:55,060 --> 01:56:59,060 何か欲しいものがあると そのたびに 1784 01:56:59,060 --> 01:57:03,070 伯父さまの部屋に行って ひたすら お願いをする。 1785 01:57:03,070 --> 01:57:08,070 嫌みを言われ 罵倒され 惨めでした。 1786 01:57:08,070 --> 01:57:13,070 だから あの晩 伯父さまの部屋に忍び込んで…。 1787 01:57:19,080 --> 01:57:21,090 (蘭堂)それは違う! 1788 01:57:21,090 --> 01:57:24,090 あの金は 黒井戸から 私が借りたんだ。 1789 01:57:24,090 --> 01:57:27,090 理由は言えん。 彼女は 金を盗んだりしていない。 1790 01:57:27,090 --> 01:57:32,100 蘭堂先生 下手な芝居は おやめになった方がいい。 1791 01:57:32,100 --> 01:57:37,040 先生。 もう いいんです。 1792 01:57:37,040 --> 01:57:40,040 諦めた方がよさそうですよ。 1793 01:57:40,040 --> 01:57:44,040 蘭堂先生と花子さんは 愛し合っておられます。 1794 01:57:44,040 --> 01:57:46,040 だまされちゃ駄目だ! 1795 01:57:49,050 --> 01:57:51,050 (満つる) どんなに生活が苦しくても 1796 01:57:51,050 --> 01:57:55,050 人間 盗みを働いては おしまいですよ。 1797 01:57:55,050 --> 01:57:59,060 勝呂さん 娘を許してやってくださいな。 1798 01:57:59,060 --> 01:58:04,060 全てを お嬢さまに 押し付けるおつもりですか? 1799 01:58:04,060 --> 01:58:06,060 何をおっしゃってるの? お嬢さまは 1800 01:58:06,060 --> 01:58:11,070 ご自分の意志で 盗みを 働くような人ではありません。 1801 01:58:11,070 --> 01:58:15,070 お母さんに言われましたねぇ。 1802 01:58:15,070 --> 01:58:17,080 どうして そういうことになるんです? 1803 01:58:17,080 --> 01:58:20,080 あなたは 遺言の内容を 事前に知っていました。 1804 01:58:20,080 --> 01:58:23,080 そして 自分の取り分が 少ないことを知って 1805 01:58:23,080 --> 01:58:26,080 お嬢さんに お金を盗んでくるように 1806 01:58:26,080 --> 01:58:29,090 命じたんです。 1807 01:58:29,090 --> 01:58:32,090 今の言葉 取り消しなさい! 1808 01:58:32,090 --> 01:58:36,090 鱧瀬弁護士が 遺言の内容を発表したとき 1809 01:58:36,090 --> 01:58:38,100 あなたは 卒倒されました。 1810 01:58:38,100 --> 01:58:43,100 しかし 勝呂は見逃しませんでしたよ。 1811 01:58:43,100 --> 01:58:48,110 あなたは 春夫さんの名前が出る前に 1812 01:58:48,110 --> 01:58:50,110 持っていたカップを わざわざ 1813 01:58:50,110 --> 01:58:54,110 離れたテーブルまで 持ってゆかれましたねぇ。 1814 01:58:54,110 --> 01:58:58,120 《まあ! 何てこと…》 卒倒するときに こぼれて 1815 01:58:58,120 --> 01:59:03,120 お召し物が汚れるのを 防ぐためです。 1816 01:59:03,120 --> 01:59:07,130 事件の当日 黒井戸さんの机の上が 1817 01:59:07,130 --> 01:59:15,130 ぐしゃぐしゃになっているという 小さな事件がありました。 1818 01:59:15,130 --> 01:59:19,140 あなたは 黒井戸さんの書斎に 忍び込んで 1819 01:59:19,140 --> 01:59:24,140 遺言状を盗み読みしましたねぇ。 1820 01:59:27,150 --> 01:59:32,150 そして その夜 花子さんを呼びつけた。 1821 01:59:32,150 --> 01:59:34,150 《そんなことは できません!》 1822 01:59:34,150 --> 01:59:37,090 《それぐらいのことはしても 罰は当たりません!》 1823 01:59:37,090 --> 01:59:39,090 《早く行ってきなさい!》 1824 01:59:42,090 --> 01:59:45,100 死刑にでも何でもすれば いいじゃないですか! 1825 01:59:45,100 --> 01:59:49,100 ついでに もう一つ これは推測ですが 1826 01:59:49,100 --> 01:59:53,110 応接室の 陳列ケースの扉を開けたのも 1827 01:59:53,110 --> 01:59:56,110 あなたではないですか? 1828 01:59:56,110 --> 01:59:59,110 もちろん。 1829 01:59:59,110 --> 02:00:03,120 遺言状を見て 大変なショックを 受けたものですから 1830 02:00:03,120 --> 02:00:07,120 腹いせに 何か盗んでやろうと 思いましてね。 1831 02:00:07,120 --> 02:00:10,120 大して 金目の物がなかったんで やめましたけど。 1832 02:00:10,120 --> 02:00:14,130 そして 扉を閉めずに帰った。 1833 02:00:14,130 --> 02:00:18,130 あたくし 開けた扉を閉めたことなど 1834 02:00:18,130 --> 02:00:20,130 一度もありません。 1835 02:00:20,130 --> 02:00:23,140 母は 決して 悪い人ではないのです。 1836 02:00:23,140 --> 02:00:27,140 お金のない暮らしが続いて 心が痛んでしまったんです。 1837 02:00:27,140 --> 02:00:30,140 10万円盗難事件については 1838 02:00:30,140 --> 02:00:34,140 あとは 当事者の皆さまにお任せします。 1839 02:00:36,160 --> 02:00:40,090 大事なのは 殺人事件の方です。 1840 02:00:40,090 --> 02:00:45,090 さて 花子さんの証言が 嘘となると 1841 02:00:45,090 --> 02:00:48,090 黒井戸さんが殺されたのは 1842 02:00:48,090 --> 02:00:53,100 9時45分よりも前の可能性が 出てきました。 1843 02:00:53,100 --> 02:00:56,100 (冷泉)となると 最後に 彼に会ったのは 1844 02:00:56,100 --> 02:01:00,110 僕ということになりますね。 まあ 声を聞いただけですが。 1845 02:01:00,110 --> 02:01:04,110 ここで一つの問題に 突き当たります。 1846 02:01:04,110 --> 02:01:09,110 9時半に 黒井戸さんと 話していたのは 誰か? 1847 02:01:09,110 --> 02:01:11,120 春夫じゃないの? 1848 02:01:11,120 --> 02:01:14,120 その時間は 私と会っていました。 (満つる)分かったもんじゃないわ。 1849 02:01:14,120 --> 02:01:17,120 春夫さんではありません。 じゃ 誰なんです? 1850 02:01:17,120 --> 02:01:22,130 そこで 私は 大胆な仮説を 立ててみました。 1851 02:01:22,130 --> 02:01:27,130 そもそも 黒井戸さんは 誰かと一緒だったのか。 1852 02:01:27,130 --> 02:01:30,140 だから 僕は 声を聞いてるんですよ。 1853 02:01:30,140 --> 02:01:33,140 本当に 会話を聞いたんですか? 1854 02:01:33,140 --> 02:01:35,140 (冷泉)どうして 信じてくれないんですか? 1855 02:01:35,140 --> 02:01:37,080 黒井戸さんが 何と言ったか 1856 02:01:37,080 --> 02:01:41,080 今も 正確に 覚えてらっしゃいますか? 1857 02:01:41,080 --> 02:01:43,080 忘れました! 1858 02:01:43,080 --> 02:01:46,080 柴先生が ぜーんぶ 書き留めてくれています。 1859 02:01:46,080 --> 02:01:49,090 その部分 読み上げていただけますか? 1860 02:01:49,090 --> 02:01:51,090 あっ。 1861 02:01:53,090 --> 02:01:56,090 少々お待ちください。 1862 02:01:59,100 --> 02:02:02,100 「最近 とても物入りなので 1863 02:02:02,100 --> 02:02:08,110 残念ながら あなたの要求に 応じることはできかねる」 1864 02:02:08,110 --> 02:02:12,110 ずいぶん 奇妙な言い方ですねぇ。 1865 02:02:12,110 --> 02:02:18,120 お気付きになりませんか? これは明らかに 手紙の文章です。 1866 02:02:18,120 --> 02:02:21,120 手紙を読み上げていた というんですか? 1867 02:02:21,120 --> 02:02:24,120 つまり 相手がいたとは限らない。 1868 02:02:24,120 --> 02:02:26,120 う~ん そりゃおかしいな。 1869 02:02:26,120 --> 02:02:29,130 一人で声に出して 手紙を読みますかね。 1870 02:02:29,130 --> 02:02:31,130 やはり 聞いてる相手が いないことには…。 1871 02:02:31,130 --> 02:02:34,130 皆さん 思い出してください。 1872 02:02:34,130 --> 02:02:39,130 数日前 黒井戸邸を訪ねてきた 人物のことを。 1873 02:02:43,070 --> 02:02:46,080 セールスマンだ! もみ上げの長い! 1874 02:02:46,080 --> 02:02:49,080 そう。 何のセールスマンでしたか? 1875 02:02:49,080 --> 02:02:52,080 ディクタホン! そのとおり。 1876 02:02:52,080 --> 02:02:57,090 彼は 最新型のディクタホンを 売りに来たのです。 1877 02:02:57,090 --> 02:02:59,090 彼は 優秀なセールスマンでした。 1878 02:02:59,090 --> 02:03:01,090 会社に問い合わせてみたところ 1879 02:03:01,090 --> 02:03:05,100 黒井戸さんは 1台 購入されています。 1880 02:03:05,100 --> 02:03:08,100 そんな話 初めて聞いた。 1881 02:03:08,100 --> 02:03:12,100 衝動買いにしては あまりに金額が高いので 1882 02:03:12,100 --> 02:03:16,110 あなたに言うのには 気が引けたのでしょう。 1883 02:03:16,110 --> 02:03:20,110 ちなみに 幾らなんです? 輸入品なので 12万円。 1884 02:03:20,110 --> 02:03:24,120 あたくしが くすねた金より 高いじゃない! 1885 02:03:24,120 --> 02:03:27,120 勝呂さんは 9時半に書斎にいたのは 1886 02:03:27,120 --> 02:03:30,120 黒井戸さんだけだったと おっしゃりたいのですか? 1887 02:03:30,120 --> 02:03:34,130 録音機相手に一人で? その可能性もあります。 1888 02:03:34,130 --> 02:03:36,140 (蘭堂)しかし 分からんな 勝呂。 1889 02:03:36,140 --> 02:03:39,060 9時半に 黒井戸が一人でいたとしても 1890 02:03:39,060 --> 02:03:41,070 それが何だね? 1891 02:03:41,070 --> 02:03:44,070 彼が その時刻まで 生きていたことに変わりはない。 1892 02:03:44,070 --> 02:03:47,070 相変わらず 怪しいのは 兵藤 春夫ではないのか? 1893 02:03:47,070 --> 02:03:50,080 私も同感です。 春夫が出てきて 1894 02:03:50,080 --> 02:03:53,080 自分の口で釈明しないかぎり 1895 02:03:53,080 --> 02:03:55,080 無実は証明できないと 思うのですが。 1896 02:03:55,080 --> 02:03:59,080 初めて 蘭堂さんと意見が合いましたねぇ。 1897 02:03:59,080 --> 02:04:01,090 堂々巡りだな。 1898 02:04:01,090 --> 02:04:04,090 あの人は犯人ではありません! 1899 02:04:04,090 --> 02:04:07,090 春夫さんは どこにいるんですか? 1900 02:04:07,090 --> 02:04:10,100 本当に知らないの? (明日香)本当なんです。 1901 02:04:10,100 --> 02:04:14,100 春夫の居場所は 実は 誰も分からないのです。 1902 02:04:14,100 --> 02:04:17,100 勝呂 武尊以外は。 1903 02:04:20,110 --> 02:04:25,110 私は 全てを知っています。 1904 02:04:25,110 --> 02:04:27,110 あなたには 見当がついているんですか? 1905 02:04:27,110 --> 02:04:29,110 見当がつくとは言っていません。 1906 02:04:29,110 --> 02:04:32,120 知っていると言っているのです。 1907 02:04:32,120 --> 02:04:35,120 居場所を知ってるんですか? どこにいるんです? 1908 02:04:35,120 --> 02:04:38,060 そう遠くではありません。 どこなんです! 1909 02:04:38,060 --> 02:04:40,060 夫に会わせてください! 1910 02:04:40,060 --> 02:04:44,060 兵藤 春夫は…。 1911 02:04:44,060 --> 02:04:47,060 そこにいます。 1912 02:04:55,070 --> 02:04:57,070 春夫さん! 1913 02:05:04,765 --> 02:05:09,240 兵藤 春夫は そこにいます。 1914 02:05:12,240 --> 02:05:14,240 春夫さん! 1915 02:05:14,240 --> 02:05:19,240 〈私にとって それは極めて 居心地の悪い瞬間だった〉 1916 02:05:25,250 --> 02:05:27,250 (春夫)心配かけて すまない。 1917 02:05:31,260 --> 02:05:35,260 花ちゃん ごめん 黙ってて。 1918 02:05:35,260 --> 02:05:39,270 よかったと思う。 お似合いよ。 1919 02:05:39,270 --> 02:05:41,270 ありがとう。 1920 02:05:41,270 --> 02:05:45,270 私もね 蘭堂先生と一緒になるの。 1921 02:05:45,270 --> 02:05:49,280 裏で聞いてたよ。 おめでとう。 1922 02:05:49,280 --> 02:05:51,280 いけませんねぇ。 1923 02:05:51,280 --> 02:05:54,280 勝呂 武尊から 何かを隠そうとしても無駄だと 1924 02:05:54,280 --> 02:05:59,290 少なくとも 36回は言ったはずですよ! 1925 02:05:59,290 --> 02:06:01,290 おっしゃってる意味が…。 1926 02:06:01,290 --> 02:06:04,310 あなたは 春夫君の友人です。 1927 02:06:04,310 --> 02:06:06,230 黒井戸さんが殺されて 1928 02:06:06,230 --> 02:06:09,230 春夫君に疑いが掛かったことを 知ったなら 1929 02:06:09,230 --> 02:06:12,230 真っ先に 連絡を取るはず。 1930 02:06:12,230 --> 02:06:14,240 手記には省略されていましたが 1931 02:06:14,240 --> 02:06:19,240 私は あの日 あなたは 事件現場から 1932 02:06:19,240 --> 02:06:21,240 真っすぐ 自宅には戻らず 1933 02:06:21,240 --> 02:06:27,240 まず 猪の湯に行っていたと 考えています。 1934 02:06:30,250 --> 02:06:35,260 全てをお話しした方が いいようですね。 1935 02:06:35,260 --> 02:06:38,260 春夫君。 お任せします。 1936 02:06:38,260 --> 02:06:42,260 その前に 極秘結婚のこと 1937 02:06:42,260 --> 02:06:45,270 どうして 教えてくれなかったんだ! 1938 02:06:45,270 --> 02:06:48,270 非常に 残念だ! すみませんでした。 1939 02:06:48,270 --> 02:06:51,270 どれだけ 面倒を見てやったと 思ってるんだ! 1940 02:06:51,270 --> 02:06:53,270 先生。 1941 02:06:57,280 --> 02:07:03,290 確かに あの日 私は二度 猪の湯に行きました。 1942 02:07:03,290 --> 02:07:07,220 一度目は 手記にも書いたとおり 昼間。 1943 02:07:07,220 --> 02:07:14,230 春夫君は 結婚のことや 現在の苦境を話してくれました。 1944 02:07:14,230 --> 02:07:20,240 黒井戸さんが殺されて 春夫君が第一容疑者に。 1945 02:07:20,240 --> 02:07:23,240 そして 私は 家に帰る途中 1946 02:07:23,240 --> 02:07:26,240 もう一度 春夫君に会いに行きました。 1947 02:07:26,240 --> 02:07:30,250 警察が やって来る前に。 ですから 私は言ったのです。 1948 02:07:30,250 --> 02:07:32,250 自分のことについては 1949 02:07:32,250 --> 02:07:36,250 ずいぶん 控えめに書いていますねと。 1950 02:07:36,250 --> 02:07:40,260 警察が 君を疑っていると 伝えました。 1951 02:07:40,260 --> 02:07:42,260 《今すぐ ここに 警察が押し掛けてくるぞ》 1952 02:07:42,260 --> 02:07:47,260 《そんな… このままでは 僕は逮捕される!》 1953 02:07:47,260 --> 02:07:49,260 《逃げるしかない!》 1954 02:07:49,260 --> 02:07:51,270 (明日香)姿を消して 何になるの? 1955 02:07:51,270 --> 02:07:54,270 そのときは それが一番だと思ったんだよ。 1956 02:07:54,270 --> 02:07:57,270 私は 春夫君を助けるために 1957 02:07:57,270 --> 02:07:59,270 できるだけのことをすると 誓いました。 1958 02:07:59,270 --> 02:08:05,210 そして 見事に 彼を警察の目から 隠すことに成功しましたねぇ。 1959 02:08:05,210 --> 02:08:09,220 ずっと 知ってらっしゃったんですか。 1960 02:08:09,220 --> 02:08:13,220 どこにいたの? 注然寺です。 1961 02:08:13,220 --> 02:08:18,230 先生の診察を受けた患者の中に 和尚の名前がありました。 1962 02:08:18,230 --> 02:08:21,230 戦国時代から 犯罪人が逃げ込むのは 1963 02:08:21,230 --> 02:08:24,230 寺と相場が決まっております。 1964 02:08:26,230 --> 02:08:28,240 あの和尚は 生臭坊主でね。 1965 02:08:28,240 --> 02:08:31,240 (和尚)《腫れがひかんし 痛うて 痛うて…》 1966 02:08:31,240 --> 02:08:35,240 人には言えない下半身の病気に 長年 悩まされていた。 1967 02:08:35,240 --> 02:08:38,250 《奥さんに言いますよ》 秘密をバラすと言うと 1968 02:08:38,250 --> 02:08:41,250 何でも 手を貸してくれた。 1969 02:08:41,250 --> 02:08:46,250 注然寺は 山の中にあり 身を隠すには もってこい。 1970 02:08:46,250 --> 02:08:48,260 ほとぼりが冷めるまで 1971 02:08:48,260 --> 02:08:50,260 春夫君を かくまってほしいと頼むと…。 1972 02:08:50,260 --> 02:08:53,260 《ああ 分かった 分かった》 和尚は 了解してくれました。 1973 02:08:53,260 --> 02:08:57,270 では ずっと お寺に? 1974 02:08:57,270 --> 02:09:00,270 こもっていると 無性に 妻に会いたくなってね。 1975 02:09:00,270 --> 02:09:02,270 それで おととい 山から下りたんだ。 1976 02:09:02,270 --> 02:09:06,270 葬儀の最中なら 逆に 目立たないかと思って。 1977 02:09:08,210 --> 02:09:11,210 親父の死に顔が見たかった というのもある。 1978 02:09:11,210 --> 02:09:18,220 色々あったけど 僕は あの人を 実の父親だと思ってます。 1979 02:09:18,220 --> 02:09:20,220 (カナ)《あーっ!》 (春夫)《あーっ!》 1980 02:09:20,220 --> 02:09:22,220 《あっ! あーっ!》 (明日香)逃げれば それだけ 1981 02:09:22,220 --> 02:09:24,230 疑われるのが どうして分からないの? 1982 02:09:24,230 --> 02:09:26,230 性分なんだよ。 追い掛けられると 1983 02:09:26,230 --> 02:09:29,230 思わず 走りだしてしまうんだ。 1984 02:09:31,230 --> 02:09:34,240 (春夫)寺にも いずれ 警察が やって来るだろうと思ったんで 1985 02:09:34,240 --> 02:09:37,240 それからは 山の中をさまよってました。 1986 02:09:39,240 --> 02:09:44,250 そして 洞窟で 勝呂に会った。 1987 02:09:44,250 --> 02:09:47,250 春夫君が 子供のころ 洞窟に隠れていたという話を 1988 02:09:47,250 --> 02:09:52,250 柴先生のお姉さんから 聞いていましたから。 1989 02:09:52,250 --> 02:09:56,260 勝呂の勘は さえわたっています。 1990 02:09:56,260 --> 02:10:00,260 春夫さんは これから どうなるんです? 1991 02:10:00,260 --> 02:10:02,260 信じてください。 僕は殺していません。 1992 02:10:02,260 --> 02:10:05,200 あの夜 書斎には 近づいてもいないし 1993 02:10:05,200 --> 02:10:07,200 父にも会ってません。 (明日香)夫は無実です。 1994 02:10:07,200 --> 02:10:12,210 彼には アリバイがありません。 動機もある。 1995 02:10:12,210 --> 02:10:16,210 相変わらず この事件の第一容疑者です。 1996 02:10:16,210 --> 02:10:18,210 僕は殺してない! 1997 02:10:18,210 --> 02:10:23,210 勝呂も 同意見です。 1998 02:10:25,220 --> 02:10:31,230 さて この哀れな青年を救う 一番の方法は 1999 02:10:31,230 --> 02:10:35,230 真犯人が自白することです。 2000 02:10:37,230 --> 02:10:43,240 勝呂は 黒井戸 禄助氏を 殺した犯人を知っています。 2001 02:10:43,240 --> 02:10:49,240 その人物は この中にいます。 2002 02:10:49,240 --> 02:10:51,250 犯人に伝えます。 2003 02:10:51,250 --> 02:11:01,260 私は明日 事件の真相を 袖丈警部に伝えるつもりです。 2004 02:11:01,260 --> 02:11:03,260 電報です。 2005 02:11:03,260 --> 02:11:11,200 先ほど 東シナ海に向かう 漁業船から届きました。 2006 02:11:11,200 --> 02:11:13,200 もう一度 言います。 2007 02:11:13,200 --> 02:11:21,210 私は明日 わが友 柴先生と もう一度 事件を検討した後 2008 02:11:21,210 --> 02:11:24,210 袖丈警部のところへ行きます。 2009 02:11:24,210 --> 02:11:31,220 私は この中の一人に対して 言っているのです。 2010 02:11:31,220 --> 02:11:37,220 この意味が お分かりになりますねぇ? 2011 02:11:42,502 --> 02:11:47,090 しかし 何で 犯人に あんな 手の込んだ警告をするんです? 2012 02:11:47,090 --> 02:11:50,090 狙いは何ですか? 2013 02:11:50,090 --> 02:11:52,090 狙い? あんなことを言って 2014 02:11:52,090 --> 02:11:55,090 犯人が逃亡したら どうするんですか? 2015 02:11:55,090 --> 02:11:59,100 自分に 逃げ道が一つしかないことを 2016 02:11:59,100 --> 02:12:05,100 その人物は知っています。 頭の切れる人間ですからねぇ。 2017 02:12:05,100 --> 02:12:11,110 つまりは 自白以外ないと? 2018 02:12:11,110 --> 02:12:14,110 あなたも 頭が切れますねぇ。 2019 02:12:14,110 --> 02:12:18,110 ハハハハ… 誰なんです? 2020 02:12:30,130 --> 02:12:36,140 最初に気になったのは あなたにかかってきた電話です。 2021 02:12:36,140 --> 02:12:39,140 電話? ☎ 2022 02:12:39,140 --> 02:12:43,080 あれは 駅から 共犯者がかけたものです。 2023 02:12:43,080 --> 02:12:48,080 犯人にとって あの電話は なぜ 必要だったのか? 2024 02:12:48,080 --> 02:12:52,080 その答えは こう考えれば見えてきます。 2025 02:12:52,080 --> 02:12:58,090 あの電話がなければ どうなっていたか? 2026 02:12:58,090 --> 02:13:02,090 遺体の発見が遅れた。 おそらく 次の朝 2027 02:13:02,090 --> 02:13:06,100 遺体は 袴田が 発見することになったでしょう。 2028 02:13:06,100 --> 02:13:10,100 犯人にしてみれば どうしても その夜のうちに 2029 02:13:10,100 --> 02:13:14,110 遺体が発見される必要があった。 2030 02:13:14,110 --> 02:13:20,110 朝では 犯人が 発見の瞬間に 立ち会うことができないから。 2031 02:13:20,110 --> 02:13:22,110 もう少し分かりやすく。 2032 02:13:22,110 --> 02:13:25,120 次に 私が引っ掛かったのは 椅子の件です。 2033 02:13:25,120 --> 02:13:30,120 教えてくれないんですか。 あの椅子は 誰が動かして 2034 02:13:30,120 --> 02:13:34,130 また 誰が元に戻したのか。 やはり それが重要ですか。 2035 02:13:34,130 --> 02:13:39,130 重要ですねぇ。 背もたれの大きな椅子でした。 2036 02:13:39,130 --> 02:13:42,070 あれが引き出されていたのは 2037 02:13:42,070 --> 02:13:47,070 部屋に入ってきた人間から 何かを隠すためではなかったか。 2038 02:13:47,070 --> 02:13:52,080 窓のすぐ前に 小さなテーブルが あったのを覚えていますか? 2039 02:13:52,080 --> 02:13:54,080 確かに ありました。 犯人にとって 2040 02:13:54,080 --> 02:13:58,080 どうしても見られたくないものが テーブルの上にあった。 2041 02:13:58,080 --> 02:14:04,090 椅子は それを隠すために 引き出されていたとしたら? 2042 02:14:04,090 --> 02:14:06,090 なるほど。 さあ これで 2043 02:14:06,090 --> 02:14:08,090 電話の件とつながりました。 2044 02:14:08,090 --> 02:14:15,100 つまり あの電話は 死体が発見されたときに 2045 02:14:15,100 --> 02:14:19,110 現場から 犯人が ある物を持ち出すために 2046 02:14:19,110 --> 02:14:22,110 どうしても 必要だったのです。 2047 02:14:22,110 --> 02:14:24,110 何を持ち出したんです? 2048 02:14:24,110 --> 02:14:29,110 それは 一つしかありません。 2049 02:14:34,120 --> 02:14:36,120 気になっていたのです。 2050 02:14:36,120 --> 02:14:41,140 あの晩 黒井戸さんが ディクタホンを使っていたとしたら 2051 02:14:41,140 --> 02:14:46,070 それは 今 どこにあるのでしょうか? 2052 02:14:46,070 --> 02:14:49,070 確かに そうですね。 2053 02:14:49,070 --> 02:14:51,070 部屋にはありませんでした。 2054 02:14:51,070 --> 02:14:54,070 犯人が持ち去ったとしか 思えません。 2055 02:14:54,070 --> 02:14:58,080 その理由は? あの機械の便利な点は 2056 02:14:58,080 --> 02:15:02,080 吹き込んだ声を聞くことが できることにあります。 2057 02:15:02,080 --> 02:15:05,080 そんなことは知っています。 冷泉さんが聞いた声は 2058 02:15:05,080 --> 02:15:07,090 ディクタホンから 流れたものでした。 2059 02:15:07,090 --> 02:15:09,090 (黒井戸) 《最近 とても物入りなので 2060 02:15:09,090 --> 02:15:15,090 残念ながら あなたの要求に 応じることはできかねる》 2061 02:15:15,090 --> 02:15:20,100 つまり 9時半の段階で 黒井戸さんは死んでいた。 2062 02:15:20,100 --> 02:15:22,100 それ以外 考えられません。 2063 02:15:22,100 --> 02:15:25,100 ディクタホンがなくなっているのが その証拠です。 2064 02:15:25,100 --> 02:15:28,110 しかし スイッチを入れなければ ディクタホンは動かない。 2065 02:15:28,110 --> 02:15:32,110 時限装置があれば可能です。 2066 02:15:34,110 --> 02:15:43,110 さーて 犯人の姿が 少しずつ 見えてきました。 2067 02:15:47,060 --> 02:15:52,060 夜のうちに 犯行現場に駆け付けた人物。 2068 02:15:52,060 --> 02:15:55,070 次の日には 現場にいられなかった人物。 2069 02:15:55,070 --> 02:15:59,070 ディクタホンが入るだけの 大きめのかばんを持っていた人物。 2070 02:15:59,070 --> 02:16:07,070 そして 自家製のタイマーを作るだけの 知識と技術のある人物。 2071 02:16:14,090 --> 02:16:16,090 次に 靴跡。 2072 02:16:16,090 --> 02:16:19,090 間違いなく 春夫君に 疑いを向けさせるために 2073 02:16:19,090 --> 02:16:21,090 つけられたものです。 2074 02:16:21,090 --> 02:16:28,100 では 犯人は どうやって 春夫君の靴を持ち出したのか? 2075 02:16:28,100 --> 02:16:32,100 事件のあった日 春夫君が どんな履物を履いていたか 2076 02:16:32,100 --> 02:16:37,110 お姉さんが調べてくれました。 鼻緒の色は どうでもよかった。 2077 02:16:37,110 --> 02:16:42,050 げたを履いていたという事実が 知りたかったのです。 2078 02:16:42,050 --> 02:16:46,050 おそらくは 旅館のげたでしょう。 2079 02:16:46,050 --> 02:16:51,060 この さむーい夜に 春夫君は げたで出歩いていた。 2080 02:16:51,060 --> 02:16:55,060 なぜなら 誰かに 靴を持っていかれたから。 2081 02:16:55,060 --> 02:16:57,060 フハハハ…。 2082 02:16:57,060 --> 02:17:01,070 つまり 犯人は あの日 猪の湯に行き 2083 02:17:01,070 --> 02:17:06,070 そして 春夫君の靴を 持ち出すことができた人物です。 2084 02:17:08,070 --> 02:17:12,080 つまり この事件の犯人は 2085 02:17:12,080 --> 02:17:15,080 黒井戸さんが ディクタホンを 買ったことを知るほど 2086 02:17:15,080 --> 02:17:19,090 彼と親しく 機械いじりが好きで 2087 02:17:19,090 --> 02:17:23,090 ディクタホンを隠すのに 都合のよい 例えば…。 2088 02:17:23,090 --> 02:17:27,090 医者が持つような 大きめなかばんを 常に持ち歩き 2089 02:17:27,090 --> 02:17:30,100 さらに 死体が発見された後 2090 02:17:30,100 --> 02:17:36,100 数分間 書斎で 一人きりになっていた人物。 2091 02:17:36,100 --> 02:17:41,100 それは 一人しかいません。 2092 02:17:44,040 --> 02:17:48,040 柴先生。 あなたです。 2093 02:17:57,060 --> 02:18:00,060 頭が どうかしている。 2094 02:18:03,060 --> 02:18:09,070 初めに 先生を疑ったのは ちょっとした時間の食い違いです。 2095 02:18:09,070 --> 02:18:11,070 食い違い? 黒井戸さんの屋敷から 2096 02:18:11,070 --> 02:18:17,080 地蔵の辻まで 歩いて5分。 自転車でも 2分もかかりません。 2097 02:18:17,080 --> 02:18:23,080 しかし あなたは 8時50分に屋敷を出たのに 2098 02:18:23,080 --> 02:18:26,090 来仙さんの息子さんに 会ったのは 9時。 2099 02:18:26,090 --> 02:18:32,090 どうして そんなに 時間がかかったのか? 2100 02:18:32,090 --> 02:18:38,100 その間 あなたは 春夫君の靴に履き替え 2101 02:18:38,100 --> 02:18:43,100 窓から忍び込んで 足跡をつけ…。 2102 02:18:49,040 --> 02:18:54,050 再び 出ていった。 2103 02:18:54,050 --> 02:18:57,050 ちなみに 自転車の後ろに 乗せてもらって 2104 02:18:57,050 --> 02:18:59,050 家に帰ったとき 時間を計ったら 2105 02:18:59,050 --> 02:19:02,050 わずか10分でした。 2106 02:19:02,050 --> 02:19:05,060 鍋焼きうどんは 伸びていませんでした。 2107 02:19:05,060 --> 02:19:07,060 ハハハハ…。 2108 02:19:07,060 --> 02:19:11,060 事件のあった夜は 20分もかかっていたというのに。 2109 02:19:11,060 --> 02:19:14,070 計ってたんですか。 2110 02:19:14,070 --> 02:19:16,070 計っておりました。 2111 02:19:16,070 --> 02:19:19,070 食えないお人だ。 2112 02:19:21,070 --> 02:19:28,070 あなたの手記には 大事なところが書かれていない。 2113 02:19:30,080 --> 02:19:34,090 黒井戸を殺して 私に 何の得があるっていうんです? 2114 02:19:34,090 --> 02:19:36,090 身の安全です。 2115 02:19:36,090 --> 02:19:40,090 唐津夫人を脅迫していたのは あなたです。 2116 02:19:40,090 --> 02:19:44,030 主治医のあなた以上に 1年前のご主人の死について 2117 02:19:44,030 --> 02:19:49,030 詳しく知っている者が いるでしょうか? 2118 02:19:49,030 --> 02:19:52,030 《こんなこと いつまで続けるつもりですか》 2119 02:19:54,040 --> 02:19:57,040 《いつまで?》 2120 02:19:57,040 --> 02:19:59,040 《あなたは まだ 自分の立場を 2121 02:19:59,040 --> 02:20:01,050 分かってらっしゃらないの ですか?》 2122 02:20:01,050 --> 02:20:03,050 あなたが 恐喝をやめなかったせいで 2123 02:20:03,050 --> 02:20:06,050 彼女は 死を選びました。 2124 02:20:06,050 --> 02:20:11,050 黒井戸さんが知れば あなたは破滅です。 2125 02:20:15,060 --> 02:20:18,060 電話の件は? 2126 02:20:18,060 --> 02:20:25,070 お姉さんから 事件のあった日の 患者の話を聞いたとき 2127 02:20:25,070 --> 02:20:28,070 先生の手口が分かりました。 2128 02:20:28,070 --> 02:20:30,080 当日の患者リストに 2129 02:20:30,080 --> 02:20:36,080 予防注射を打ちに来た 遠洋漁業の船乗りがいました。 2130 02:20:36,080 --> 02:20:39,080 勝手に 名前を調べさせていただき 2131 02:20:39,080 --> 02:20:41,100 東京の警察に頼んで 2132 02:20:41,100 --> 02:20:47,030 乗り込んでいる船を 捜し出してもらいました。 2133 02:20:47,030 --> 02:20:55,030 柴先生に何を頼まれたか 電報で尋ねると 返事が来ました。 2134 02:20:58,040 --> 02:21:00,040 読み上げます。 2135 02:21:03,040 --> 02:21:07,050 「注射の反応を知りたいので 2136 02:21:07,050 --> 02:21:14,050 10時15分になったら 自宅に電話するように」 2137 02:21:14,050 --> 02:21:19,060 (♬『Girl of my dreams』) 2138 02:21:19,060 --> 02:21:24,060 ♬~ 2139 02:21:24,060 --> 02:21:37,080 ☎ 2140 02:21:37,080 --> 02:21:40,080 《はい 柴です》 2141 02:21:40,080 --> 02:21:43,080 《まさか… そんな…》 2142 02:21:49,090 --> 02:21:53,090 何か 付け加えることは ございますか? 2143 02:22:02,100 --> 02:22:06,110 ハァ…。 2144 02:22:06,110 --> 02:22:09,110 実に 面白い話だ。 2145 02:22:09,110 --> 02:22:14,110 私の言葉を思い出してください。 2146 02:22:14,110 --> 02:22:19,120 明日の朝 私は警察に向かいます。 2147 02:22:19,120 --> 02:22:25,120 春夫君は 少々 考えが浅い青年ですが 2148 02:22:25,120 --> 02:22:29,130 やってもいない殺人の罪で 2149 02:22:29,130 --> 02:22:32,130 裁かれることが あってはならないのです! 2150 02:22:34,130 --> 02:22:41,110 あなたは 犯人に こんな手の込んだ警告をする 2151 02:22:41,110 --> 02:22:46,980 意味が分からないと おっしゃいましたねぇ。 2152 02:22:46,980 --> 02:22:49,980 全ては…。 2153 02:22:49,980 --> 02:22:53,980 お姉さんのためです。 2154 02:22:56,990 --> 02:23:04,000 勝手ながら お姉さんについても 調べさせてもらいました。 2155 02:23:04,000 --> 02:23:09,000 先月 東京の脳外科に 行かれてますねぇ。 2156 02:23:18,010 --> 02:23:21,010 脳に腫瘍があります。 2157 02:23:23,020 --> 02:23:28,020 本人は知らないが そう長くない。 2158 02:23:30,020 --> 02:23:33,030 持って 半年。 2159 02:23:33,030 --> 02:23:36,030 おつらいでしょう。 あなたには関係のないことだ。 2160 02:23:36,030 --> 02:23:40,030 姉思いの あなたにしてみれば 2161 02:23:40,030 --> 02:23:44,070 彼女の目の前で 2162 02:23:44,070 --> 02:23:50,080 弟が殺人罪で 逮捕されることだけは 2163 02:23:50,080 --> 02:23:54,080 避けたいのではないでしょうか? 2164 02:24:03,090 --> 02:24:06,090 例えば…。 2165 02:24:06,090 --> 02:24:12,090 睡眠薬の飲み過ぎという方法も あります。 2166 02:24:15,100 --> 02:24:18,100 幸い お姉さんは 2167 02:24:18,100 --> 02:24:23,110 私が あなたを買っていると 信じています。 2168 02:24:23,110 --> 02:24:26,110 大事な弟さんが 亡くなったとしても 2169 02:24:26,110 --> 02:24:33,110 まさか 事件に関わっていたとは 思わないでしょう。 2170 02:24:41,110 --> 02:24:44,060 なるほど。 2171 02:24:44,060 --> 02:24:52,070 そして 半年を過ぎた後 犯人の手記が見つかる。 2172 02:24:52,070 --> 02:24:56,070 というのは どうでしょう? 2173 02:24:56,070 --> 02:25:04,080 明日の朝 袖丈警部には 真相を話すことになります。 2174 02:25:04,080 --> 02:25:11,080 お姉さまが亡くなるまでの猶予を お願いするつもりです。 2175 02:25:13,090 --> 02:25:18,100 それまでは 世間的には そうですねぇ…。 2176 02:25:18,100 --> 02:25:25,100 電話をかけてきた 謎の男に 罪をかぶってもらいましょう。 2177 02:25:28,110 --> 02:25:30,110 よろしいのですか? 2178 02:25:30,110 --> 02:25:36,110 そして 半年後 犯人の手記が出てきたとき 2179 02:25:36,110 --> 02:25:45,110 いかに 勝呂が正しかったかを 世間は知ることになるのです。 2180 02:25:47,060 --> 02:25:53,060 それまでは この電報はなかったことに。 2181 02:25:57,070 --> 02:26:01,070 お心遣い 感謝します。 2182 02:26:03,080 --> 02:26:06,080 分かってほしいのは 勝呂さん 2183 02:26:06,080 --> 02:26:11,080 私は別に いい暮らしがしたくて 夫人をゆすってたわけじゃない。 2184 02:26:11,080 --> 02:26:15,080 お姉さんのためですねぇ。 2185 02:26:17,090 --> 02:26:23,090 アメリカに 優秀な脳外科医がいましてね。 2186 02:26:27,100 --> 02:26:30,100 彼なら 彼女を治すことができた。 2187 02:26:33,110 --> 02:26:38,110 しかし それには 多額の金が…。 2188 02:26:38,110 --> 02:26:41,110 あなたは。 2189 02:26:41,110 --> 02:26:47,050 ご自分の大切な人を守るために 2190 02:26:47,050 --> 02:26:53,050 黒井戸さんから 最も大切な人を奪ってしまった。 2191 02:26:55,060 --> 02:27:00,070 あなたが なすべきは 2192 02:27:00,070 --> 02:27:05,070 これから 家に帰って 手記を書き上げること。 2193 02:27:09,070 --> 02:27:15,080 ただし これまでのような 2194 02:27:15,080 --> 02:27:22,090 控えめな表現は なさいませぬように。 2195 02:27:22,090 --> 02:27:35,100 ♬~ 2196 02:27:35,100 --> 02:27:38,100 それがよさそうです。 2197 02:27:38,100 --> 02:27:49,050 ♬~ 2198 02:27:49,050 --> 02:27:51,050 (カナ)おかえりなさい。 2199 02:28:03,060 --> 02:28:05,060 ただいま。 2200 02:28:05,060 --> 02:28:08,060 今夜は 久々に カレーライスよ。 2201 02:28:52,230 --> 02:28:55,230 〈朝の5時である〉 2202 02:28:55,230 --> 02:29:01,240 〈全てを書き終え 私は今 ひどく疲れている〉 2203 02:29:01,240 --> 02:29:03,240 《先生。 これ すごいんだよ》 2204 02:29:03,240 --> 02:29:06,240 《ちょっと読むから 見ててな》 《はい》 2205 02:29:06,240 --> 02:29:09,250 《えー どこ 読もうかな》 2206 02:29:09,250 --> 02:29:12,250 《「最近 とても物入りなので 2207 02:29:12,250 --> 02:29:19,260 残念ながら あなたの要求に 応じることはできかねる」》 2208 02:29:19,260 --> 02:29:24,260 〈黒井戸が 買ったディクタホンを 私に自慢してみせたとき 2209 02:29:24,260 --> 02:29:27,270 まさか それが 犯行トリックになるとは 2210 02:29:27,270 --> 02:29:29,270 思ってもいなかった〉 2211 02:29:29,270 --> 02:29:31,270 〈彼が ディクタホンを買ったことを 2212 02:29:31,270 --> 02:29:36,270 周囲に内緒にしていたのは 実に 好都合だった〉 2213 02:29:39,280 --> 02:29:42,280 〈私は あらかじめ 黒井戸から 手入れの名目で 2214 02:29:42,280 --> 02:29:47,280 ディクタホンを預かり そこに タイマーを設置した〉 2215 02:29:49,290 --> 02:29:51,220 〈凶器は もともと 用意していったのだが…〉 2216 02:29:51,220 --> 02:29:56,220 (きしむ音) 2217 02:29:59,230 --> 02:30:05,240 〈あの日 応接室で チュニジアの短剣を目にし 2218 02:30:05,240 --> 02:30:09,240 これだと思った〉 2219 02:30:09,240 --> 02:30:13,240 〈この方が 春夫に罪をかぶせやすい〉 2220 02:30:15,250 --> 02:30:17,250 《先生》 2221 02:30:17,250 --> 02:30:21,250 《どうかされました?》 《ああ》 2222 02:30:23,250 --> 02:30:27,260 《この扉 袴田に言って 油を差してもらった方がいいね》 2223 02:30:27,260 --> 02:30:29,260 《ざっと目を通して 2224 02:30:29,260 --> 02:30:31,260 犯人の名前だけでも 教えてくれませんか?》 2225 02:30:31,260 --> 02:30:35,270 《あんたも しつこいな。 申し訳ないが 今日のところは》 2226 02:30:35,270 --> 02:30:39,270 《お願いします》 《断る!》 2227 02:30:39,270 --> 02:31:33,260 ♬~ 2228 02:31:33,260 --> 02:31:36,260 〈タイマーは 9時半にセットした〉 2229 02:31:36,260 --> 02:31:38,260 〈その時刻に 秘書が必ず 2230 02:31:38,260 --> 02:31:41,260 部屋の前を通ることを 私は知っていた〉 2231 02:31:49,270 --> 02:31:52,210 《黒井戸さんは 邪魔されたくないそうだ》 2232 02:31:52,210 --> 02:31:55,210 《何か 呼ばれたような気が したものですから》 2233 02:31:55,210 --> 02:31:58,210 《呼んでない》 《かしこまりました》 2234 02:32:04,220 --> 02:32:06,220 〈今にして思えば 2235 02:32:06,220 --> 02:32:10,230 なぜ 春夫の命を 奪わなかったのだろう〉 2236 02:32:10,230 --> 02:32:12,230 〈彼に 全てを押し付けて 2237 02:32:12,230 --> 02:32:14,230 殺害することだって できたはずだ〉 2238 02:32:14,230 --> 02:32:18,240 (春夫)《先生。 本当に ありがとうございます》 2239 02:32:18,240 --> 02:32:20,240 《しばらく ここで我慢してくれ》 2240 02:32:20,240 --> 02:32:24,240 《先生がいなければ 僕は破滅です》 2241 02:32:24,240 --> 02:32:26,240 《何でも相談に乗るよ》 2242 02:32:26,240 --> 02:32:29,250 (春夫)《あっ… 先生》 2243 02:32:29,250 --> 02:32:32,250 〈現に 山の中で 彼を見つけたときは 2244 02:32:32,250 --> 02:32:34,250 本気で 口をふさぐつもりだった〉 2245 02:32:34,250 --> 02:32:36,250 《待て! 待ってくれ!》 2246 02:32:36,250 --> 02:32:42,260 〈だが 捕まえたところで 本当に殺していたかどうか〉 2247 02:32:42,260 --> 02:32:45,260 〈私は 殺人鬼ではない〉 2248 02:32:45,260 --> 02:32:51,260 〈それは わずかに残された 私の人間性なのかもしれない〉 2249 02:32:56,210 --> 02:32:59,210 〈この世に未練はない〉 2250 02:32:59,210 --> 02:33:04,210 〈唯一あるとするなら それは 姉のことだ〉 2251 02:33:07,220 --> 02:33:11,220 〈姉は 私を愛してくれていた〉 2252 02:33:11,220 --> 02:33:15,230 〈私も また しかりである〉 2253 02:33:15,230 --> 02:33:20,230 〈彼女は 決して 真相を知ることはないだろう〉 2254 02:33:20,230 --> 02:33:25,240 〈勝呂は 信用できる男だ〉 2255 02:33:25,240 --> 02:33:31,240 〈彼と袖丈警部は きっと 内密に事を進めてくれるだろう〉 2256 02:33:31,240 --> 02:33:37,250 〈私の死は 事故という形で 処理されるに違いない〉 2257 02:33:37,250 --> 02:33:42,250 〈姉にとって それは 大きな悲しみだろうが 2258 02:33:42,250 --> 02:33:45,260 悲しみは いずれ癒える〉 2259 02:33:45,260 --> 02:33:49,260 〈そして 姉自身が この世を去るのも 2260 02:33:49,260 --> 02:33:51,260 そう遠いことではない〉 2261 02:33:53,200 --> 02:33:55,200 〈手記は 封筒に入れ 2262 02:33:55,200 --> 02:33:58,200 宛名には 勝呂の名を 書いておくつもりだ〉 2263 02:34:00,200 --> 02:34:04,210 〈薬は バルビタールにした〉 2264 02:34:04,210 --> 02:34:08,210 〈これ以上 私の死に ふさわしいものはない〉 2265 02:34:08,210 --> 02:34:15,220 〈この事件は バルビタールに始まり バルビタールに終わる〉 2266 02:34:15,220 --> 02:34:18,220 〈実に 文学的ではないか〉 2267 02:34:18,220 --> 02:34:23,230 〈作家になりたくて なれなかった男の 2268 02:34:23,230 --> 02:34:25,230 最後の こだわりである〉 2269 02:34:27,230 --> 02:34:33,230 〈私の手記は 意外な結末となってしまった〉 2270 02:34:35,240 --> 02:34:39,240 〈いつか 名探偵 勝呂 武尊の 失敗の記録として 2271 02:34:39,240 --> 02:34:43,250 出版するつもりだったのに〉 2272 02:34:43,250 --> 02:34:47,250 〈まさか こんな終わり方になろうとは…〉 2273 02:34:47,250 --> 02:34:51,190 〈それにしてもである〉 2274 02:34:51,190 --> 02:34:55,190 〈勝呂 武尊は なぜ カボチャ栽培のために 2275 02:34:55,190 --> 02:34:58,190 この村を選んだのだろう〉 2276 02:35:00,200 --> 02:35:06,200 〈それだけが つくづく 残念でならない〉 2277 02:35:06,200 --> 02:35:36,220 ♬~ 2278 02:35:46,240 --> 02:35:56,240 ♬~