1 00:00:46,634 --> 00:02:25,115 2 00:02:25,115 --> 00:02:29,119 ようよう よう あら まあ 中松警部 3 00:02:29,119 --> 00:02:31,121 久しぶり ほんと 4 00:02:31,121 --> 00:02:34,124 どこ行くんだい 帰って来たところです 取材先から 5 00:02:34,124 --> 00:02:37,127 じゃあ もう用なしか? まあね 6 00:02:37,127 --> 00:02:40,130 でも 原稿を整理しなくちゃ ならないんです 7 00:02:40,130 --> 00:02:44,118 明日だっていいだろ せっかく会ったんだい 8 00:02:44,118 --> 00:02:49,123 ちょいとそこらで1杯きゅ~っと いうには早すぎるかな 9 00:02:49,123 --> 00:02:52,126 あっ それじゃあ どうですか 和菓子の獅子屋さんの2階で 10 00:02:52,126 --> 00:02:55,129 お茶とおまんじゅうでも いいね 11 00:02:55,129 --> 00:02:58,132 獅子屋の喫茶室は 気分がいいもんな 12 00:02:58,132 --> 00:03:01,118 ええ よし それで決まりだ 13 00:03:01,118 --> 00:03:05,122 待ってください どうしたっていうんです 14 00:03:05,122 --> 00:03:07,124 訳を教えてください 訳を 15 00:03:07,124 --> 00:03:10,124 え~い 放してくれ あっ! 16 00:03:12,129 --> 00:03:14,131 あぁ… 17 00:03:14,131 --> 00:03:18,118 もう少しで中身が 割れるところだったじゃないか 18 00:03:18,118 --> 00:03:21,121 訳を え~い 放せ 放せったら 19 00:03:21,121 --> 00:03:27,127 おら~!天下の往来で 何やってんだい えっ? 20 00:03:27,127 --> 00:03:30,127 あぁ… ちょいとそこまで来てもらおうか 21 00:03:34,117 --> 00:03:39,122 さあ 訳を 説明してもらおうじゃねえか おう 22 00:03:39,122 --> 00:03:42,125 私は均野法二といいます 23 00:03:42,125 --> 00:03:46,129 江戸一番という酒造会社の 役員をしています 24 00:03:46,129 --> 00:03:49,132 おう 日本酒 造ってる会社の 25 00:03:49,132 --> 00:03:53,120 こちらは 喜山徹さんとおっしゃって 26 00:03:53,120 --> 00:03:55,122 杜氏さんです 杜氏というと 27 00:03:55,122 --> 00:03:58,125 酒造りの杜氏のことか? そうです 28 00:03:58,125 --> 00:04:01,128 へぇ~ 杜氏っていうんですか 29 00:04:01,128 --> 00:04:04,131 私 とうじと読むのかと 思ってましたけど 30 00:04:04,131 --> 00:04:08,135 とじ とうじ どっちでもいいんだ 31 00:04:08,135 --> 00:04:12,122 杜氏は昔の主婦を表す刀自に通じ 32 00:04:12,122 --> 00:04:17,127 酒造りは婦女の仕事で その管理に 主婦が当たったからとか 33 00:04:17,127 --> 00:04:22,132 あるいは古代中国の酒造りの祖と 伝えられている 34 00:04:22,132 --> 00:04:25,135 杜康の名にちなむとも いわれている 35 00:04:25,135 --> 00:04:28,121 いや~ よくご存じですね 36 00:04:28,121 --> 00:04:31,124 ははははっ 俺たち飲んべえは 37 00:04:31,124 --> 00:04:34,127 そのぐらいのことは ちゃんと知ってんだ 38 00:04:34,127 --> 00:04:38,131 大体 杜氏の出身地は 伝統的に決まってて 39 00:04:38,131 --> 00:04:43,136 関西から西では広島県の三原杜氏 40 00:04:43,136 --> 00:04:46,123 京都と兵庫県にまたがる丹波杜氏 41 00:04:46,123 --> 00:04:48,125 岡山県の備中杜氏 42 00:04:48,125 --> 00:04:53,130 関東から東では新潟県の越後杜氏 43 00:04:53,130 --> 00:04:55,132 岩手県の南部杜氏 44 00:04:55,132 --> 00:05:00,120 長野県の諏訪杜氏などが有名だろ 45 00:05:00,120 --> 00:05:05,125 それにふだん 杜氏は農業に従事しているけど 46 00:05:05,125 --> 00:05:08,128 農閑期になると 20人前後の仲間が 47 00:05:08,128 --> 00:05:13,133 頭目に率いられて 技術の出稼ぎに行くわけだ 48 00:05:13,133 --> 00:05:15,135 これは話しやすい 49 00:05:15,135 --> 00:05:23,126 ご承知のように日本酒造りは 精米から洗米 50 00:05:23,126 --> 00:05:29,132 こうじ作り 仕込みと 全てを杜氏さんが仕切ります 51 00:05:29,132 --> 00:05:34,137 杜氏さんがいて 初めて酒造りができるのです 52 00:05:34,137 --> 00:05:39,126 で その杜氏と酒造会社の経営者が 何もめてたんだい 53 00:05:39,126 --> 00:05:43,130 それがどうしてだか 私にもわかりませんで 54 00:05:43,130 --> 00:05:47,030 何? わからねえだと はい 55 00:05:57,127 --> 00:06:01,131 私の所は江戸一番という名からも おわかりのように 56 00:06:01,131 --> 00:06:04,134 東京都内で 日本酒造りをしておりますが 57 00:06:04,134 --> 00:06:06,136 恥ずかしながら 58 00:06:06,136 --> 00:06:10,136 皆様に褒めていただけるような うまい酒じゃなかった 59 00:06:12,125 --> 00:06:17,130 だが 父が死んで兄が社長を継ぎ 私が専務になって 60 00:06:17,130 --> 00:06:21,134 このままでは売れ行きが 減るばかりで潰れてしまう 61 00:06:21,134 --> 00:06:25,138 立て直すためには もっとうまい酒を造ることだと 62 00:06:25,138 --> 00:06:29,126 私たちは決心したんです 63 00:06:29,126 --> 00:06:33,130 それには腕のいい杜氏さんが 必要だ 64 00:06:33,130 --> 00:06:37,134 ちょうどその時 喜山さんのことを知ったんです 65 00:06:37,134 --> 00:06:42,139 喜山さんは去年まで 新潟県の七ッ星という酒で有名な 66 00:06:42,139 --> 00:06:44,139 酒蔵の杜氏さんでした 67 00:06:46,126 --> 00:06:49,129 何? 七ッ星なら知ってるぜ 68 00:06:49,129 --> 00:06:53,129 辛口のすばらしい酒だ へぇ~ 69 00:06:55,135 --> 00:06:58,138 でも 酒造りは手作業ですから 70 00:06:58,138 --> 00:07:02,125 いい酒を造るには 量の限界があります 71 00:07:02,125 --> 00:07:06,129 その限界を超えてまで造れという 蔵主さんと 72 00:07:06,129 --> 00:07:11,134 いい酒しか造りたくないという 喜山さんの間がまずくなって 73 00:07:11,134 --> 00:07:15,134 喜山さんは七ッ星を辞めたんです 74 00:07:22,129 --> 00:07:27,134 なるほど 最近 七ッ星の味が 落ちた訳がわかったぜ 75 00:07:27,134 --> 00:07:31,138 そういうのが多いね 近頃は 76 00:07:31,138 --> 00:07:34,141 それまで その土地のファンに 愛されてきた酒が 77 00:07:34,141 --> 00:07:38,128 全国的な人気で 無理に大量販売すると 78 00:07:38,128 --> 00:07:41,131 途端に味が落ちやがるんだ 79 00:07:41,131 --> 00:07:43,133 日本酒党としては許せねえ 80 00:07:43,133 --> 00:07:46,136 詐欺罪で しょっ引いてやっか ってな 81 00:07:46,136 --> 00:07:50,140 ははははっ 82 00:07:50,140 --> 00:07:53,126 それで? あっ はあ 83 00:07:53,126 --> 00:07:56,129 こんな幸運は めったにありません 84 00:07:56,129 --> 00:07:59,132 私は飛んで行って 必死に口説きました 85 00:07:59,132 --> 00:08:01,134 そして ついに喜山さんは 86 00:08:01,134 --> 00:08:05,138 うちの杜氏になってくれるのを 承諾してくれたんです 87 00:08:05,138 --> 00:08:09,142 そいつは めでてえや でしょ? 88 00:08:09,142 --> 00:08:14,131 そこで今夜 銀座で 酒の卸売り業者の人たちも招いて 89 00:08:14,131 --> 00:08:18,135 新しい杜氏さんの紹介の宴を 開くことになっていたので 90 00:08:18,135 --> 00:08:21,138 喜山さんをお呼びしたんです 91 00:08:21,138 --> 00:08:24,141 ところが突然 喜山さんが 怒りだして 92 00:08:24,141 --> 00:08:27,144 江戸一番の杜氏にならないと おっしゃって 93 00:08:27,144 --> 00:08:30,130 困ってたところなんです 94 00:08:30,130 --> 00:08:32,132 う~ん それで もめてたのか 95 00:08:32,132 --> 00:08:37,132 おう 杜氏さんよ 怒りだした訳を 言ってやれや 訳を 96 00:08:42,142 --> 00:08:46,142 はぁ~ 私はどうしたらいいのか 97 00:08:48,131 --> 00:08:51,134 なあ 専務さんよ はい 98 00:08:51,134 --> 00:08:55,138 あんた 何か杜氏さんを 怒らせるようなことを 99 00:08:55,138 --> 00:08:59,142 したんじゃねえのかい えっ? 100 00:08:59,142 --> 00:09:02,129 自分じゃあ 気が付かねえけど 101 00:09:02,129 --> 00:09:06,133 人を怒らせてしまうってことは よくあることだぜ 102 00:09:06,133 --> 00:09:10,137 よ~く考えてみな そう言われても 103 00:09:10,137 --> 00:09:17,144 私は今日は午前中 新潟県まで 喜山さんを迎えに行って 104 00:09:17,144 --> 00:09:20,144 新幹線で帰って来たんですが 105 00:09:39,132 --> 00:09:41,132 あぁ~ 106 00:09:45,138 --> 00:09:47,038 あぁ~ 107 00:10:05,141 --> 00:10:09,141 早めに着いたもので お茶でも飲もうと 108 00:10:19,139 --> 00:10:21,141 あぁ~ 109 00:10:21,141 --> 00:10:24,141 すいません お水 下さい 110 00:10:27,147 --> 00:10:29,147 ありがとう 111 00:10:32,135 --> 00:10:34,135 あっ… 112 00:10:40,143 --> 00:10:45,148 待ってください どうしたんです 喜山さん 113 00:10:45,148 --> 00:10:49,135 え~い 放してくれ 114 00:10:49,135 --> 00:10:53,139 何? それだけかい そうです 115 00:10:53,139 --> 00:10:58,144 私は何も喜山さんを怒らせる ようなことは していません 116 00:10:58,144 --> 00:11:03,144 そうか う~ん まるでわからねえな 117 00:11:10,140 --> 00:11:13,143 何言ってんの 杜氏さんが怒るのは 当たり前さ 118 00:11:13,143 --> 00:11:16,146 えっ? どうしてですか? 119 00:11:16,146 --> 00:11:20,150 私もわかりましたわ どうして喜山さんが怒ったか 訳が 120 00:11:20,150 --> 00:11:23,136 おっ えっ!? 121 00:11:23,136 --> 00:11:27,140 では 栗田君が皆さんに 説明するそうです 122 00:11:27,140 --> 00:11:30,140 どうぞ えへっ 123 00:11:54,150 --> 00:11:57,150 あっ お待ちどおさまでした 124 00:11:59,139 --> 00:12:04,144 均野さんが列車の中で買ったのは この容器のお茶だったんですよね 125 00:12:04,144 --> 00:12:07,147 ええ 確かにそれですが 126 00:12:07,147 --> 00:12:10,150 へぇ~ 駅まで買いに行ったのか 127 00:12:10,150 --> 00:12:13,136 容器には ティーバッグが付いていて 128 00:12:13,136 --> 00:12:16,139 お茶を買うとティーバッグを 中に入れ 129 00:12:16,139 --> 00:12:20,143 上から熱い湯を注いでくれます 130 00:12:20,143 --> 00:12:24,143 それと杜氏さんが怒ったのと どう関係があるんですか 131 00:12:32,138 --> 00:12:36,142 まあ 飲んでみてください ええ 132 00:12:36,142 --> 00:12:40,146 そういや 久しく駅弁のお茶 買ったことがないな 133 00:12:40,146 --> 00:12:44,146 缶ビールばかり ひいきにしちまってさ 134 00:12:48,138 --> 00:12:50,140 あぁ~ 何だこりゃ 135 00:12:50,140 --> 00:12:53,143 ろうそくみたいな においじゃねえか 136 00:12:53,143 --> 00:12:56,146 えっ? 熱湯を注ぐことで 137 00:12:56,146 --> 00:13:00,150 容器のプラスチックの成分が 溶け出したとしか考えられません 138 00:13:00,150 --> 00:13:05,138 においも味も絶望的だし 体にだって悪いに決まっている 139 00:13:05,138 --> 00:13:08,141 駅弁のお茶というと 140 00:13:08,141 --> 00:13:11,144 昔は素焼きの土瓶に 入れてくれたもんだ 141 00:13:11,144 --> 00:13:15,148 それがいつの頃からか プラスチックの容器になってしまった 142 00:13:15,148 --> 00:13:19,152 素焼きの土瓶は金がかかるし 重いから 143 00:13:19,152 --> 00:13:21,137 これに替えたんだろうけど 144 00:13:21,137 --> 00:13:25,141 俺は この駅弁のお茶に 日本の食品産業が 145 00:13:25,141 --> 00:13:29,145 いかに良心を失っているかが 集約されていると思う 146 00:13:29,145 --> 00:13:32,148 ほんとですね 買ってくれる人の健康なんか 147 00:13:32,148 --> 00:13:34,150 少しも気遣ったりしないし 148 00:13:34,150 --> 00:13:37,153 買ってくれる人に おいしいものをあげて 149 00:13:37,153 --> 00:13:40,140 喜んでもらうという気持ちも 全然ないんですね 150 00:13:40,140 --> 00:13:43,143 うぅ~ 151 00:13:43,143 --> 00:13:47,147 喜山さんは多分 においを 嗅いだだけで飲まなかった 152 00:13:47,147 --> 00:13:50,150 そうなんですよね? 153 00:13:50,150 --> 00:13:52,152 はあ… 154 00:13:52,152 --> 00:13:56,139 あっ… 私も変なにおいが するなとは思ったんですが 155 00:13:56,139 --> 00:14:00,143 喉が渇いてたもので 156 00:14:00,143 --> 00:14:04,147 次にこれですが さっき 均野さんと喜山さんが入った 157 00:14:04,147 --> 00:14:06,149 喫茶店の水をもらってきました 158 00:14:06,149 --> 00:14:09,152 それがどうかしたんですか? 159 00:14:09,152 --> 00:14:11,152 これも とにかく飲んでみてください 160 00:14:23,149 --> 00:14:25,151 ぶは~! 161 00:14:25,151 --> 00:14:32,142 こらだめだ 水道の水だ 水道の水がどうしてだめなんです 162 00:14:32,142 --> 00:14:36,146 消毒のにおいに加えてカビ臭いぜ 163 00:14:36,146 --> 00:14:40,150 東京のビルの水は水道の水を一旦 タンクにためて 164 00:14:40,150 --> 00:14:43,153 ビルの内部に給水する 165 00:14:43,153 --> 00:14:47,157 そのタンクの清掃が十分でないと こんな嫌なにおいがするんだ 166 00:14:47,157 --> 00:14:52,157 ええ 当然 喜山さんは 飲まれなかったと思いますが 167 00:14:55,148 --> 00:14:57,150 喜山さんが怒った理由は 168 00:14:57,150 --> 00:15:00,153 このお茶と 喫茶店の水だったんです 169 00:15:00,153 --> 00:15:03,156 これを均野さんが おいしそうに飲んだから 170 00:15:03,156 --> 00:15:05,141 えっ? 171 00:15:05,141 --> 00:15:08,144 日本酒造りに 一番大事なのは水です 172 00:15:08,144 --> 00:15:12,148 それなのに肝心の経営者が 水の味に鈍感だとしたら 173 00:15:12,148 --> 00:15:15,151 いいお酒を造ることが できるでしょうか 174 00:15:15,151 --> 00:15:17,153 あっ! 175 00:15:17,153 --> 00:15:20,156 それに均野さんは たばこもお吸いになる 176 00:15:20,156 --> 00:15:24,156 喜山さんはもちろん お吸いにならないと思いますが 177 00:15:26,145 --> 00:15:28,147 たばこを吸うということは 178 00:15:28,147 --> 00:15:30,149 舌も鼻もだめになってることの 証拠なんです 179 00:15:30,149 --> 00:15:32,151 あぁ… 180 00:15:32,151 --> 00:15:39,158 なるほど それじゃあ 杜氏さんは やる気がなくなるよな 181 00:15:39,158 --> 00:15:43,146 口はばったいようですが えっ? 182 00:15:43,146 --> 00:15:47,150 水の味もわかっていただけない 蔵元さんのもとでは 183 00:15:47,150 --> 00:15:50,153 とても働く気には 184 00:15:50,153 --> 00:15:53,156 あぁ… 185 00:15:53,156 --> 00:15:56,159 ま… 待ってください それは違う 186 00:15:56,159 --> 00:16:00,146 私は経営者といっても 経理と販売が専門で 187 00:16:00,146 --> 00:16:02,146 酒造りのほうは 188 00:16:08,154 --> 00:16:14,143 どうも 均野でございます 兄さん どうしてここへ 189 00:16:14,143 --> 00:16:17,146 山岡さんという方に呼ばれて 190 00:16:17,146 --> 00:16:19,148 山岡士郎です 191 00:16:19,148 --> 00:16:22,151 お世話になります ああ いえ 192 00:16:22,151 --> 00:16:25,154 兄です 彼が社長なんです 193 00:16:25,154 --> 00:16:29,158 兄さん こちらが杜氏の喜山さんですよ 194 00:16:29,158 --> 00:16:31,160 よろしくお願いいたします 195 00:16:31,160 --> 00:16:35,148 兄は私と違って 舌も鼻もすごいんです 196 00:16:35,148 --> 00:16:38,148 だから考え直して 197 00:16:41,154 --> 00:16:45,154 どうです? ここは俺に 任せてくれませんか 198 00:16:47,160 --> 00:16:51,147 山岡の旦那 また何かたくらんだな 199 00:16:51,147 --> 00:16:56,152 喜山さん 社長を試してみて それでもだめだったら 200 00:16:56,152 --> 00:16:59,152 杜氏は引き受けないということに 201 00:17:02,158 --> 00:17:04,158 う~ん… 202 00:17:09,148 --> 00:17:14,148 喜山さん そのクーラーの中に 入っているのは? 203 00:17:21,160 --> 00:17:28,151 私が去年 仕込んだ七ッ星の 純米大吟醸と その蔵元の水です 204 00:17:28,151 --> 00:17:31,154 この水で こういう酒を 造ったということを 205 00:17:31,154 --> 00:17:35,158 蔵元さんに 見ていただこうと思って 206 00:17:35,158 --> 00:17:40,163 やはり そういう貴重なものが 入っていると思いましたよ 207 00:17:40,163 --> 00:17:44,150 純米大吟醸というのは? 208 00:17:44,150 --> 00:17:48,154 純米っていうのは 米と米こうじしか使わず 209 00:17:48,154 --> 00:17:53,159 醸造用アルコールなど 入っていない純水の酒のことで 210 00:17:53,159 --> 00:18:00,149 吟醸というのは優しく言えば 丁寧に造った酒ということだ 211 00:18:00,149 --> 00:18:02,151 じゃあ 純米大吟醸というのは 212 00:18:02,151 --> 00:18:04,153 最高のお酒ということに なるんですね 213 00:18:04,153 --> 00:18:07,156 まあ そういうこった 214 00:18:07,156 --> 00:18:09,156 よし これでいこう 215 00:18:12,161 --> 00:18:17,150 まず 七ッ星の純米大吟醸を 飲んでいただきます 216 00:18:17,150 --> 00:18:22,155 次にイ ロ ハの3つの茶わんの水を 飲んでください 217 00:18:22,155 --> 00:18:28,161 水は七ッ星の水 それに 岡星が使っている富士山の水 218 00:18:28,161 --> 00:18:32,148 美食倶楽部で使っている 京都 鞍馬の水 219 00:18:32,148 --> 00:18:38,154 3つのうち どれが七ッ星の水か それを当ててもらいます 220 00:18:38,154 --> 00:18:40,156 あっ 難しい 221 00:18:40,156 --> 00:18:43,159 酒を飲んだだけで 水を当てろだなんて 222 00:18:43,159 --> 00:18:46,162 むちゃだ そんな 223 00:18:46,162 --> 00:18:51,150 よく出来た酒は元の水の性格を そのまま持っているものです 224 00:18:51,150 --> 00:18:55,154 この酒を造るのに使った水は どれか 225 00:18:55,154 --> 00:18:57,156 わかる人にはわかるのです 226 00:18:57,156 --> 00:19:00,159 よろしい やってみましょう 227 00:19:00,159 --> 00:19:03,159 では まず酒を 228 00:19:17,160 --> 00:19:22,160 うん いい酒だ 実にいい 229 00:19:43,152 --> 00:19:45,152 兄さん 230 00:19:49,158 --> 00:19:51,158 もう一度 お酒を 231 00:19:56,165 --> 00:19:58,165 あぁ~ 232 00:20:12,165 --> 00:20:18,154 この七ッ星 最初にふうわりと 舌の上に広がって 233 00:20:18,154 --> 00:20:23,159 同時に爽やかな春の風が 花の香りを運んできて 234 00:20:23,159 --> 00:20:28,164 吹き抜けるように すばらしい芳香が立ち上って 235 00:20:28,164 --> 00:20:31,167 鼻こうをくすぐって逃げていく 236 00:20:31,167 --> 00:20:36,155 舌の上に残る味は さらさらと ほどけていって 237 00:20:36,155 --> 00:20:39,155 すっきりと消えていく 238 00:20:42,161 --> 00:20:46,165 まず この水は 239 00:20:46,165 --> 00:20:51,153 しっかりした味の像を形づくる 240 00:20:51,153 --> 00:20:55,157 クリスタルガラスのように 実に透明な味 241 00:20:55,157 --> 00:21:01,163 それが消え始める 消え始める あっ 最後の瞬間 何の未練もなく 242 00:21:01,163 --> 00:21:03,165 ふいと後味が消える 243 00:21:03,165 --> 00:21:09,165 その潔さ すばらしい味だが 七ッ星の味の性格とは違う 244 00:21:14,160 --> 00:21:21,167 これは高原の若草の葉に降りた 朝露の味だ 245 00:21:21,167 --> 00:21:27,156 柔らかく一切の不純な味がなく 全ての味を包み込み 246 00:21:27,156 --> 00:21:34,056 そして その味は余韻じょうじょう 美しくたなびいて消えていく 247 00:21:39,168 --> 00:21:42,171 ふ~ん これもすばらしい味だが 248 00:21:42,171 --> 00:21:46,158 七ッ星の味の性格ではない 249 00:21:46,158 --> 00:21:48,058 七ッ星の水は… 250 00:21:56,168 --> 00:21:58,168 ロの茶わんだ 251 00:22:02,158 --> 00:22:04,158 あっ… 252 00:22:11,167 --> 00:22:15,171 お見事 そのとおり あぁ 253 00:22:15,171 --> 00:22:18,157 すごいわ やった 兄さん 254 00:22:18,157 --> 00:22:21,160 ああ 255 00:22:21,160 --> 00:22:24,163 ちなみに 256 00:22:24,163 --> 00:22:27,166 イの水は富士山 257 00:22:27,166 --> 00:22:35,066 ハの水は鞍馬の水です へぇ~ 258 00:22:51,173 --> 00:22:58,164 蔵元さん よろしくお願いします 259 00:22:58,164 --> 00:23:00,166 喜山さん 260 00:23:00,166 --> 00:23:04,170 こんなに味のわかる 蔵元さんのもとでなら 261 00:23:04,170 --> 00:23:08,174 こっちから お願いしてでも 働かせてもらいたいです 262 00:23:08,174 --> 00:23:10,174 喜山さん 263 00:23:13,162 --> 00:23:17,162 あ… ありがとう 喜山さん 264 00:23:20,169 --> 00:23:24,173 私も これからは努力して たばこをやめるようにします 265 00:23:24,173 --> 00:23:28,160 酒を売っている人間が 本当の味がわからないんじゃ 266 00:23:28,160 --> 00:23:32,160 話になりませんからね ふふふふっ 267 00:23:41,173 --> 00:23:44,160 これから江戸一番は すごい酒になるぞ 268 00:23:44,160 --> 00:23:48,164 待ち遠しいな とても待ってられねえから 269 00:23:48,164 --> 00:23:51,164 どうだい? この辺で1杯 賛成 270 00:23:53,085 --> 00:23:58,085 かんぱ~い! ははははっ