1 00:01:57,303 --> 00:01:59,303 2 00:02:22,194 --> 00:02:42,214 ♬~ 3 00:02:42,214 --> 00:03:02,168 ♬~ 4 00:03:02,168 --> 00:03:22,188 ♬~ 5 00:03:22,188 --> 00:03:42,208 ♬~ 6 00:03:42,208 --> 00:03:57,208 ♬~ 7 00:04:44,203 --> 00:04:51,210 (ナレーター:坂本頼光) <ここは 藩お抱えの漢学者 松澄永山の屋敷> 8 00:04:51,210 --> 00:04:55,214 <漢学講義所を兼ねている この永山塾には➡ 9 00:04:55,214 --> 00:04:59,151 藩重臣の子息から 下級藩士に至るまで➡ 10 00:04:59,151 --> 00:05:03,155 多くの若者が 日々 勉学に通っていたが➡ 11 00:05:03,155 --> 00:05:09,161 本日は いつにも増して 人の出入りが激しかった> 12 00:05:09,161 --> 00:05:12,161 <それも そのはずで> 13 00:05:14,166 --> 00:05:17,169 <この日 永山塾では➡ 14 00:05:17,169 --> 00:05:24,169 塾長 松澄永山先生の誕生祝が 催されるのであった> 15 00:05:30,182 --> 00:05:33,185 <日頃は学者としての威厳に満ち➡ 16 00:05:33,185 --> 00:05:40,192 辺りを払う貫禄の永山先生も 今日ばかりは相好を崩して…> 17 00:05:40,192 --> 00:05:43,192 (永山)さあ 貴殿も一つ 18 00:05:47,199 --> 00:05:53,199 <塾生たちの祝辞を受けつつ うれしげに盃を交わす> 19 00:06:03,148 --> 00:06:09,148 <まさに 羞花閉月ともいうべき その美貌> 20 00:06:26,171 --> 00:06:35,180 <小禄軽輩の身分ながら 気性は清廉潔白にして頑固一徹> 21 00:06:35,180 --> 00:06:37,182 <事に奈美江を思う心は➡ 22 00:06:37,182 --> 00:06:41,182 他の誰にも負けはせぬという 面魂> 23 00:06:44,189 --> 00:06:49,189 <師を思う心も ひときわ強かった> 24 00:07:08,147 --> 00:07:12,147 <さあ そうなると…> 25 00:07:15,154 --> 00:07:18,157 <お酒飲む人 ヤッコの豆腐> 26 00:07:18,157 --> 00:07:21,160 <はじめ四角で あとはグズグズ> 27 00:07:21,160 --> 00:07:25,164 <そのうえ無礼講ともなれば 緊張の糸も解けて➡ 28 00:07:25,164 --> 00:07:28,167 たちまち乱れる酒の席> 29 00:07:28,167 --> 00:07:31,170 <おのおのが 好き勝手な振る舞いを始める> 30 00:07:31,170 --> 00:07:35,174 (藩士)おっ 出ましたな 組頭殿の下手な謡いが 31 00:07:35,174 --> 00:07:37,176 (藩士)何を? (藩士)ハハハ 32 00:07:37,176 --> 00:07:42,181 まあ よいではござらぬか 今日は ゆっくり伺いましょう 33 00:07:42,181 --> 00:07:47,186 <謡い上戸に機嫌上戸 笑い上戸と相集まって➡ 34 00:07:47,186 --> 00:07:50,189 座敷は これ 殷賑の極み> 35 00:07:50,189 --> 00:07:54,193 <久利富平三郎も 同輩たちと和気あいあい➡ 36 00:07:54,193 --> 00:07:59,131 拳遊びに興じながら 楽しい時を過ごす> 37 00:07:59,131 --> 00:08:03,131 <うたげは今や 宴もたけなわ> 38 00:08:14,146 --> 00:08:19,151 <この男 いわゆる絡み上戸> 39 00:08:19,151 --> 00:08:24,156 <常日頃から父親の権威を笠に着て 威張り腐っているのが➡ 40 00:08:24,156 --> 00:08:27,159 飲むと ますますひどくなる> 41 00:08:27,159 --> 00:08:30,162 <皆 腫れ物に触るかのごとく扱う> 42 00:08:30,162 --> 00:08:35,167 <それが さらに彼を悪酔いさせた> 43 00:08:35,167 --> 00:08:38,170 <酩酊酔眼> 44 00:08:38,170 --> 00:08:40,172 <だが その奥に➡ 45 00:08:40,172 --> 00:08:45,177 贄を求むるかのような 残酷の色たたえつつ➡ 46 00:08:45,177 --> 00:08:48,177 座を見渡せば…> 47 00:08:52,184 --> 00:08:55,187 (浪岡)うむ 48 00:08:55,187 --> 00:08:58,123 おい! 49 00:08:58,123 --> 00:09:00,123 久利富! 50 00:09:03,128 --> 00:09:06,131 久利富 51 00:09:06,131 --> 00:09:09,131 さあ 参れ 52 00:09:14,139 --> 00:09:20,139 <その傲慢な言いように 平三郎 思わず…> 53 00:09:34,159 --> 00:09:38,159 (浪岡)な… なんだと? 54 00:09:46,171 --> 00:09:50,175 (平三郎)いえ… いえ 決して さようなことは 55 00:09:50,175 --> 00:09:53,178 (浪岡)ならば飲め うん? 56 00:09:53,178 --> 00:09:57,116 上役であるワシの盃を 受けぬという法があるか? 57 00:09:57,116 --> 00:10:00,119 さあ ぐいっと空けろ 58 00:10:00,119 --> 00:10:02,121 何とぞ ご容赦を 59 00:10:02,121 --> 00:10:04,121 (浪岡)うぬ… 60 00:10:10,129 --> 00:10:15,134 (浪岡)さあ いかにしても飲めい! 61 00:10:15,134 --> 00:10:18,134 浪岡殿 62 00:10:33,152 --> 00:10:36,155 (浪岡)ぬう… 抜かしおったな 63 00:10:36,155 --> 00:10:39,155 えい 痴れ者! 64 00:10:41,160 --> 00:10:44,163 おのれ… 65 00:10:44,163 --> 00:10:48,167 おのれ 浪岡! 66 00:10:48,167 --> 00:10:50,169 やったな! んっ! 67 00:10:50,169 --> 00:10:52,171 (浪岡)な… 何をする! 68 00:10:52,171 --> 00:10:57,109 武士たる者の面体を 貴様 よくも! 69 00:10:57,109 --> 00:11:00,112 <平三郎 持ち前の潔癖が憤怒を呼び➡ 70 00:11:00,112 --> 00:11:04,116 猛然と真八郎に つかみかかった> 71 00:11:04,116 --> 00:11:06,118 <真八郎も さらに逆上> 72 00:11:06,118 --> 00:11:08,120 <くんずほぐれつの大ゲンカ> 73 00:11:08,120 --> 00:11:11,123 <押しとどめようとする 周囲の者をも巻き込んで➡ 74 00:11:11,123 --> 00:11:15,127 座敷は大変な騒ぎに> 75 00:11:15,127 --> 00:11:18,130 (塾生)ええい やめぬか 二人とも! 落ち着け! 76 00:11:18,130 --> 00:11:22,134 くう… 浪岡! 77 00:11:22,134 --> 00:11:24,134 (永山)何事だ 78 00:11:27,139 --> 00:11:30,142 ああ これ よさぬか 79 00:11:30,142 --> 00:11:32,144 どうしたというのだ 二人とも 80 00:11:32,144 --> 00:11:34,146 ええ これ 久利富! 81 00:11:34,146 --> 00:11:37,149 浪岡も 82 00:11:37,149 --> 00:11:39,151 先生! 83 00:11:39,151 --> 00:11:42,154 (浪岡)無礼討ちに致してくれる! 84 00:11:42,154 --> 00:11:48,160 (永山)落ち着きなさい 二人とも 何があったのじゃ? 85 00:11:48,160 --> 00:11:51,163 申し訳… ござりませぬ 86 00:11:51,163 --> 00:11:53,165 先生 87 00:11:53,165 --> 00:11:57,169 なれど なれど浪岡殿が… 88 00:11:57,169 --> 00:12:01,173 あまりにも 理不尽なマネをされたゆえ 89 00:12:01,173 --> 00:12:04,176 つい… 90 00:12:04,176 --> 00:12:08,180 (永山)事の起こりは 浪岡にあると申すか? 91 00:12:08,180 --> 00:12:14,186 悪酔いした浪岡殿が 拙者に配膳の酒を! 92 00:12:14,186 --> 00:12:17,186 (浪岡) 黙れ! 無礼は貴様ではないか! 93 00:12:42,214 --> 00:12:46,218 (浪岡)先生 狼藉者は こやつでござる! 94 00:12:46,218 --> 00:12:50,222 違う! 違います! 浪岡殿は偽りを申しておる 95 00:12:50,222 --> 00:12:53,225 先生! 拙者をお信じくだされ 96 00:12:53,225 --> 00:12:57,162 (永山)ああ もうよい 皆 鎮まれ 落ち着かぬか 97 00:12:57,162 --> 00:12:59,164 しかし 先生… 98 00:12:59,164 --> 00:13:01,166 (永山)落ち着けと申すに! 99 00:13:01,166 --> 00:13:04,166 違う 違う… 100 00:13:06,171 --> 00:13:09,174 違うではないか… 101 00:13:09,174 --> 00:13:13,178 何もかも… 102 00:13:13,178 --> 00:13:18,183 それを方々は知っていながら 103 00:13:18,183 --> 00:13:21,183 何故… 104 00:13:27,192 --> 00:13:31,196 (永山)やめぬか これ 久利富! 105 00:13:31,196 --> 00:13:34,196 いいかげんに致せ! 106 00:13:42,207 --> 00:13:44,209 久利富 107 00:13:44,209 --> 00:13:48,209 聞けば 御身は… 108 00:14:02,160 --> 00:14:05,163 はあ… 109 00:14:05,163 --> 00:14:11,169 (永山)もうよい 御身は もうこれで帰られい 110 00:14:11,169 --> 00:14:13,171 先生 111 00:14:13,171 --> 00:14:19,177 誠に申し訳ございませんでした 112 00:14:19,177 --> 00:14:23,177 拙者 これにて… 113 00:14:31,189 --> 00:14:33,191 (奈美江)平三郎様 114 00:14:33,191 --> 00:14:35,191 奈美江殿 115 00:14:48,206 --> 00:14:50,206 はい… 116 00:15:19,171 --> 00:15:23,175 <ケンカ両成敗も あらばこそ> 117 00:15:23,175 --> 00:15:28,180 <家老の倅で 浪岡には なんのとがめもなしという➡ 118 00:15:28,180 --> 00:15:33,180 平三郎にとっては 得心のゆかぬ裁き> 119 00:15:58,143 --> 00:16:02,147 <親しかった者たちも いつしか遠ざかり➡ 120 00:16:02,147 --> 00:16:07,152 日々 孤独の影を濃くする平三郎> 121 00:16:07,152 --> 00:16:15,160 <さて そうした ある日の昼下がり 無聊をかこつ平三郎の耳に➡ 122 00:16:15,160 --> 00:16:19,160 同門の侍たちの会話が 聞こえてくる> 123 00:16:23,168 --> 00:16:28,168 <何気なく 後をつけてみると…> 124 00:16:32,177 --> 00:16:36,181 何を話しておるのだ 125 00:16:36,181 --> 00:16:39,181 <平三郎に気がつかぬ3人> 126 00:16:47,192 --> 00:16:52,192 (藩士)ええ? あの奈美江殿の秘密とな? 127 00:16:59,137 --> 00:17:02,137 (藩士)ホッホッホッホ 128 00:17:10,148 --> 00:17:13,151 (藩士)な… なんと 129 00:17:13,151 --> 00:17:15,153 いやー 驚いた 130 00:17:15,153 --> 00:17:19,157 人は 見かけによらぬものでござるな 131 00:17:19,157 --> 00:17:21,157 (藩士)ムムム… 132 00:17:26,164 --> 00:17:29,164 (藩士)フッフッフ 殿じゃ 133 00:17:42,180 --> 00:17:46,184 (藩士)誠でござるか? それは ハァー 134 00:17:46,184 --> 00:17:49,184 (藩士)いや それだけではないぞ 135 00:18:01,132 --> 00:18:04,135 うむ? 黙れ黙れ! 136 00:18:04,135 --> 00:18:07,138 ええい もはや聞き捨てならぬわ! 137 00:18:07,138 --> 00:18:10,141 (藩士)あっ 誰かと思えば久利富! 138 00:18:10,141 --> 00:18:12,141 黙れ! 139 00:18:22,153 --> 00:18:24,155 行かぬとあらば➡ 140 00:18:24,155 --> 00:18:28,159 力ずくでも 引き立ててゆくまでだ! 141 00:18:28,159 --> 00:18:30,161 来い! 142 00:18:30,161 --> 00:18:34,165 (藩士)ああ… おい な… 何をする やめろ! 143 00:18:34,165 --> 00:18:37,168 (藩士)おのれ 平三郎! 144 00:18:37,168 --> 00:18:40,171 よっ んっ 145 00:18:40,171 --> 00:18:43,174 貴様ら 抜いたな! 146 00:18:43,174 --> 00:18:48,179 来るか! お家を辱める不忠者め 147 00:18:48,179 --> 00:18:51,182 <相手が抜刀したのを見て取った 平三郎> 148 00:18:51,182 --> 00:18:55,182 <思わず刀を抜いて応戦する> 149 00:19:01,126 --> 00:19:04,129 <白昼往来での乱闘> 150 00:19:04,129 --> 00:19:06,131 <町の人々は騒然> 151 00:19:06,131 --> 00:19:10,135 <そこへ来かかった 同輩たちが…> 152 00:19:10,135 --> 00:19:14,139 (同輩) おや? あれは久利富ではないか 153 00:19:14,139 --> 00:19:18,143 <お家と永山先生に対する義憤> 154 00:19:18,143 --> 00:19:23,148 <そして いまだ恋慕の情 色あせぬ 奈美江を傷つけられた怒り> 155 00:19:23,148 --> 00:19:27,152 <卑劣千万の悪口を懲らしめん とした平三郎の行動は➡ 156 00:19:27,152 --> 00:19:30,155 あくまで純粋だったが…> 157 00:19:30,155 --> 00:19:33,158 (男性)物騒な お武家もいたもんだ 158 00:19:33,158 --> 00:19:37,162 昼日なか斬り合いだよ ありゃ 159 00:19:37,162 --> 00:19:39,164 <相手は3人 こちらは1人> 160 00:19:39,164 --> 00:19:43,168 <なれど平三郎 一歩も引かず 獅子奮迅> 161 00:19:43,168 --> 00:19:47,172 <徐々に 彼らを追い詰めて…> 162 00:19:47,172 --> 00:19:50,175 (藩士)おお… おい 方々 助けてくれ 163 00:19:50,175 --> 00:19:53,178 久利富が いきなり斬りかかってきおった! 164 00:19:53,178 --> 00:19:56,181 逃げるかっ ひきょう者! 165 00:19:56,181 --> 00:20:00,118 (同輩)またケンカか どうにも始末に負えぬ乱暴者じゃ 166 00:20:00,118 --> 00:20:03,121 方々 ここは我らにお任せを 167 00:20:03,121 --> 00:20:07,125 (藩士)乱心者じゃ 罪なき我らを 168 00:20:07,125 --> 00:20:12,130 何!? (同輩)おい 久利富 落ち着け 169 00:20:12,130 --> 00:20:14,132 (藩士)覚えておれ! 170 00:20:14,132 --> 00:20:19,137 我ら このままでは 決して済まぬからな 171 00:20:19,137 --> 00:20:22,140 それは こちらの言うセリフだ 172 00:20:22,140 --> 00:20:25,143 尻尾を巻いて逃げるのか? ひきょう者! 173 00:20:25,143 --> 00:20:30,148 (同輩)よせ 久利富 もう そのへんに致せ 174 00:20:30,148 --> 00:20:33,151 少しは人目を考えろ 175 00:20:33,151 --> 00:20:37,155 いや すまん 分かってはおるのだが… 176 00:20:37,155 --> 00:20:41,155 ヤツらの悪口が あまりにもな 177 00:20:46,164 --> 00:20:49,164 <だが このあと> 178 00:21:10,121 --> 00:21:22,133 ♬~ 179 00:21:22,133 --> 00:21:27,138 <もう二度と くぐることの許されない➡ 180 00:21:27,138 --> 00:21:32,143 永山塾の門をあとにして➡ 181 00:21:32,143 --> 00:21:38,143 悄然と家路につく平三郎> 182 00:21:43,154 --> 00:21:49,160 <ほんの数か月前 永山先生 誕生祝の席での➡ 183 00:21:49,160 --> 00:21:51,162 あの事件を機に➡ 184 00:21:51,162 --> 00:21:55,166 まさか我が身がかかる苦境に 陥れられようとは➡ 185 00:21:55,166 --> 00:21:58,166 想像も出来なかった> 186 00:22:27,198 --> 00:22:32,198 それが この始末 187 00:22:34,205 --> 00:22:36,207 もはや誰も➡ 188 00:22:36,207 --> 00:22:44,207 俺の誠の心を理解してくれる者は いないのだろうか 189 00:22:46,217 --> 00:22:48,217 やりきれん… 190 00:22:50,221 --> 00:22:55,221 なんとしても やりきれん 191 00:23:24,188 --> 00:23:28,188 <静まり返った永山邸> 192 00:23:30,194 --> 00:23:35,199 <月明かりが ぼんやりと照らす庭先に➡ 193 00:23:35,199 --> 00:23:39,199 奈美江の姿を求めて 平三郎> 194 00:23:41,205 --> 00:23:47,205 彼女には 彼女にだけは真実を… 195 00:23:50,214 --> 00:23:53,217 誰か? 196 00:23:53,217 --> 00:23:56,220 奈美江殿 まあ… 197 00:23:56,220 --> 00:23:59,157 久利富でござりまする 198 00:23:59,157 --> 00:24:02,160 あなた様と お話しすることはありません 199 00:24:02,160 --> 00:24:04,162 お引き取りを 200 00:24:04,162 --> 00:24:08,166 ああ いや しばらく 奈美江殿… 201 00:24:08,166 --> 00:24:10,168 もうこれ以上 何も… 202 00:24:10,168 --> 00:24:13,168 お聞きくだされ 奈美江殿 203 00:24:20,178 --> 00:24:22,178 弁解ご無用 204 00:24:28,186 --> 00:24:33,191 さあ 早くお引き取りください 人を呼びますよ 205 00:24:33,191 --> 00:24:35,193 奈美江殿 206 00:24:35,193 --> 00:24:38,196 ああ お待ちくだされ 奈美江殿! 207 00:24:38,196 --> 00:24:40,198 何をなされます! 208 00:24:40,198 --> 00:24:43,201 全ては誤解 誤解なのでござる! 209 00:24:43,201 --> 00:24:47,205 無体な お手を お手をお離しください 210 00:24:47,205 --> 00:24:51,209 聞いていただきたいのです あなたには 211 00:24:51,209 --> 00:24:55,209 たとえ この身がどうなろうと あなたにだけは拙者の真実を 212 00:24:59,150 --> 00:25:01,152 落ち着きあれ 213 00:25:01,152 --> 00:25:04,155 拙者はただ 話を聞いて いただきたいだけなのです 214 00:25:04,155 --> 00:25:07,158 どうか 奈美江殿! どうか… 215 00:25:07,158 --> 00:25:09,160 (永山)いかがいたした? 216 00:25:09,160 --> 00:25:11,162 やっ くせ者! 217 00:25:11,162 --> 00:25:15,166 貴様 久利富! 先生! 218 00:25:15,166 --> 00:25:18,169 (永山)なんという不埒者 はよう つまみ出せ! 219 00:25:18,169 --> 00:25:22,173 お待ちください 先生 拙者はただ 奈美江殿に真実を… 220 00:25:22,173 --> 00:25:24,175 (永山)久利富 221 00:25:24,175 --> 00:25:26,175 貴様 いよいよ… 222 00:25:30,181 --> 00:25:33,184 先生 それは違います 223 00:25:33,184 --> 00:25:36,187 どうかお願いです 話を… 224 00:25:36,187 --> 00:25:38,187 (永山)問答無用! 225 00:25:44,195 --> 00:25:46,197 (門弟)はっ! 226 00:25:46,197 --> 00:25:48,199 泥棒… 227 00:25:48,199 --> 00:25:50,199 先生! 228 00:25:54,205 --> 00:25:58,142 (永山)黙れ黙れ もはや うぬがごとき無頼漢と➡ 229 00:25:58,142 --> 00:26:00,144 言葉を交わすも汚らわしい 230 00:26:00,144 --> 00:26:02,146 出てうせぬか! 231 00:26:02,146 --> 00:26:04,148 先生 このとおりでござる 232 00:26:04,148 --> 00:26:06,150 いま一度 拙者の話を… 233 00:26:06,150 --> 00:26:08,152 奈美江殿! 234 00:26:08,152 --> 00:26:10,154 (門弟)久利富 おとなしゅうせえ! 235 00:26:10,154 --> 00:26:14,158 放せ 貴様らには分からん! 236 00:26:14,158 --> 00:26:17,161 (永山)たたき出せ (門弟)立ち去れ 久利富 237 00:26:17,161 --> 00:26:21,165 狼藉者 役人を呼ばれたいか! 何を言う! 238 00:26:21,165 --> 00:26:25,165 (永山)手に余らばかまわぬ 斬れ 斬り捨てい! 239 00:26:28,172 --> 00:26:31,175 先生… 240 00:26:31,175 --> 00:26:34,175 <平三郎は…> 241 00:26:50,194 --> 00:27:01,194 ♬~ 242 00:27:08,146 --> 00:27:10,148 御免 243 00:27:10,148 --> 00:27:13,151 (門弟)おのれ! ええい どけ! 244 00:27:13,151 --> 00:27:16,154 貴様らには用はない! 245 00:27:16,154 --> 00:27:26,164 ♬~ 246 00:27:26,164 --> 00:27:28,164 <翌日…> 247 00:27:54,192 --> 00:28:02,192 <もう 生きて再び この土地の土を 踏むことはないだろう> 248 00:28:05,136 --> 00:28:12,143 先生 いつまでも ご壮健で 249 00:28:12,143 --> 00:28:15,146 奈美江殿 250 00:28:15,146 --> 00:28:19,146 どうか お幸せに 251 00:28:22,153 --> 00:28:24,155 <見送る風は向かい風> 252 00:28:24,155 --> 00:28:27,158 <流す涙は波頭> 253 00:28:27,158 --> 00:28:32,158 <平三郎の流転の旅が始まった> 254 00:28:59,123 --> 00:29:04,128 <ふるさとにいたころの 益荒男ぶりは見る影もない> 255 00:29:04,128 --> 00:29:06,128 <食い詰め浪人> 256 00:29:08,132 --> 00:29:13,137 <それでも 腰の大小だけは 手放さないでいる彼には➡ 257 00:29:13,137 --> 00:29:17,137 いまだ 武士としての誇りがあった> 258 00:29:21,145 --> 00:29:28,152 <だが傍目には うらぶれた 着たきりすずめの平三郎に対し➡ 259 00:29:28,152 --> 00:29:32,156 人々の態度は どこまでも冷たく> 260 00:29:32,156 --> 00:29:39,163 ♬~ 261 00:29:39,163 --> 00:29:43,167 (幇間)エッヘッヘッヘ えー 旦那方 ねえ 262 00:29:43,167 --> 00:29:46,170 お次は どちらへ参りましょうか? ええ? 263 00:29:46,170 --> 00:29:51,175 おや? まあ こりゃ どうにも すげえのがいたもんだ 264 00:29:51,175 --> 00:29:54,178 えっ 恐れ入谷の鬼子母神 265 00:29:54,178 --> 00:29:58,115 (侍)そんな者に構うな はよう参れ 266 00:29:58,115 --> 00:30:04,121 (幇間)へいへい 何があったか 知らねえが お気の毒さま 267 00:30:04,121 --> 00:30:07,121 <万事が この調子> 268 00:30:09,126 --> 00:30:11,126 チッ 269 00:30:14,131 --> 00:30:19,136 <カネと暇を持て余し 貧者を蔑む者> 270 00:30:19,136 --> 00:30:21,138 <この1年の間に➡ 271 00:30:21,138 --> 00:30:26,143 ああした手合いに もう どれだけ会ってきたことか> 272 00:30:26,143 --> 00:30:31,143 <擦り切れた心には さしたる波風も立たない> 273 00:30:46,163 --> 00:30:52,163 <フッと気になって 見つめていると…> 274 00:30:54,171 --> 00:31:00,171 <娘に重なる面影が> 275 00:31:02,113 --> 00:31:09,113 <寝ては夢 起きては現 幻の 懐かしき初恋の人> 276 00:31:11,122 --> 00:31:15,126 奈美江殿… 277 00:31:15,126 --> 00:31:20,126 <どことなく 似ているように思われた> 278 00:31:22,133 --> 00:31:26,137 奈美江殿には お元気だろうか 279 00:31:26,137 --> 00:31:31,142 もう今頃は どこかに嫁がれ… 280 00:31:31,142 --> 00:31:37,148 いや これは未練というものだ 281 00:31:37,148 --> 00:31:39,148 忘れねば… 282 00:31:44,155 --> 00:31:48,159 <吉乃川からほど近い 料亭の2階で➡ 283 00:31:48,159 --> 00:31:54,165 これはもう すっかり泥酔の武士が 昼間から芸者を相手に…> 284 00:31:54,165 --> 00:31:58,169 (武士) ほうれ 拙者が食べさせてやる 逃げるでない 285 00:31:58,169 --> 00:32:00,171 ほれ 口を開けい 286 00:32:00,171 --> 00:32:02,173 (芸者)あれ お戯れを 287 00:32:02,173 --> 00:32:06,177 (武士)おとなしゅう致せ ほれほれ ああ? あーんとな 288 00:32:06,177 --> 00:32:08,179 (芸者)勘弁してくださいな 旦那 289 00:32:08,179 --> 00:32:10,181 もう… イヤ! 290 00:32:10,181 --> 00:32:13,184 うっ… 291 00:32:13,184 --> 00:32:15,184 (武士)ああ 292 00:32:18,189 --> 00:32:21,189 これはいかん 293 00:32:23,194 --> 00:32:25,196 おのれ… 294 00:32:25,196 --> 00:32:27,196 何をするか! 295 00:32:29,200 --> 00:32:31,202 無礼千万 296 00:32:31,202 --> 00:32:35,206 しかも 謝りもせず逃げるとは 297 00:32:35,206 --> 00:32:38,206 武士の風上にも置けぬヤツ! 298 00:32:40,211 --> 00:32:46,217 <平三郎 思わずカッとなって 料亭の玄関へと駆け込んだ> 299 00:32:46,217 --> 00:32:48,217 なんとしても わびさせてくれる 300 00:32:54,225 --> 00:32:57,161 (番頭)へえ いらっしゃいませ えー 手前 番頭でございますが➡ 301 00:32:57,161 --> 00:33:00,164 何かございましたので? 302 00:33:00,164 --> 00:33:02,166 「何か」ではない! 303 00:33:02,166 --> 00:33:04,166 拙者の… 304 00:33:14,178 --> 00:33:16,180 (番頭)ああ… 305 00:33:16,180 --> 00:33:19,183 それは とんだご災難で いや… お鎮まりを 306 00:33:19,183 --> 00:33:21,183 バカを申すな! 307 00:33:25,189 --> 00:33:29,189 (番頭)いや でもございましょうが あの どうぞ ご勘弁を 308 00:33:43,207 --> 00:33:46,210 (番頭) いや そうおっしゃられましても こりゃ… 大変なごけんまく 309 00:33:46,210 --> 00:33:48,212 弱ったな どうも 310 00:33:48,212 --> 00:33:50,214 (女将)番頭さん 何をやってんだい 311 00:33:50,214 --> 00:33:53,217 こういうときは いつもの手 ねえ 312 00:33:53,217 --> 00:33:55,219 (番頭)あっ さようでございました へい 313 00:33:55,219 --> 00:33:58,155 えー 誠に どうも申し訳ございません 314 00:33:58,155 --> 00:34:01,158 何とぞ これで ご勘弁のほど… 315 00:34:01,158 --> 00:34:04,158 どうぞ お納めを 316 00:34:34,191 --> 00:34:36,193 貴様… 317 00:34:36,193 --> 00:34:38,195 そのカネはなんだ 318 00:34:38,195 --> 00:34:42,195 俺がいつ 銭 カネを要求した! 319 00:34:44,201 --> 00:34:46,201 (番頭)ううっ… 320 00:34:56,213 --> 00:34:59,149 それを よくも 321 00:34:59,149 --> 00:35:02,152 見損なうな この番頭! 322 00:35:02,152 --> 00:35:07,157 (番頭)ヒャー! お… お許しを イタタタ た… 助けて! 323 00:35:07,157 --> 00:35:12,162 どいつもこいつも 人をなんだと思っておるか! 324 00:35:12,162 --> 00:35:16,166 <すさまじい平三郎の勢いに➡ 325 00:35:16,166 --> 00:35:20,166 店の者たちは すっかり おびえきって…> 326 00:35:27,177 --> 00:35:31,181 (女将)店の者の不調法 どうぞ お許しを 327 00:35:31,181 --> 00:35:33,183 黙れ! わびるのは2階の武士じゃ 328 00:35:33,183 --> 00:35:36,186 のけ! のかぬか! 329 00:35:36,186 --> 00:35:39,189 おい! 聞こえておろうが 出てまいれ 330 00:35:39,189 --> 00:35:43,193 <やがて 急を知らされ 駆けつけた役人衆> 331 00:35:43,193 --> 00:35:45,195 (同心)何をしておる これ おとなしく致せ! 332 00:35:45,195 --> 00:35:49,199 放してくれ 子細あって ここの客に面会を求めておる 333 00:35:49,199 --> 00:35:52,199 (番頭)ああ よいところへ お役人様 334 00:35:59,143 --> 00:36:02,146 (番頭)早くお助けくださいまし 335 00:36:02,146 --> 00:36:04,148 無理難題? 336 00:36:04,148 --> 00:36:06,150 よくも そのようなデタラメを! 337 00:36:06,150 --> 00:36:08,152 ああ! 338 00:36:08,152 --> 00:36:11,152 このウソつきめ! 339 00:36:16,160 --> 00:36:20,164 お役人 この番頭めの言を お信じあるな 340 00:36:20,164 --> 00:36:24,168 (同心)分かった分かった うう… 341 00:36:24,168 --> 00:36:26,168 (役人)おい 面倒だ! 342 00:36:28,172 --> 00:36:30,174 (捕手)御用 御用だ 343 00:36:30,174 --> 00:36:34,178 な… 何? 召し捕る? 344 00:36:34,178 --> 00:36:36,180 (捕手)神妙に致せ! 345 00:36:36,180 --> 00:36:38,182 何をする 放してくれ! 346 00:36:38,182 --> 00:36:40,182 (役人)御用だ! 347 00:36:48,192 --> 00:36:50,194 (役人)御用だ! 348 00:36:50,194 --> 00:36:54,198 お待ちくだされ 役人衆 勘違い召されるな 349 00:36:54,198 --> 00:36:56,200 (捕手)御用 御用御用! 350 00:36:56,200 --> 00:36:59,136 おっ こやつ 手向かいするか! 351 00:36:59,136 --> 00:37:03,140 手向かいではない まずは拙者の話を聞いてくれ 頼む 352 00:37:03,140 --> 00:37:05,142 これは誤解だ! 353 00:37:05,142 --> 00:37:09,146 (捕手)えやっ おとなしく お縄を頂戴しろ 354 00:37:09,146 --> 00:37:12,149 お上に逆らう不届き者め 355 00:37:12,149 --> 00:37:15,152 何故 拙者の話を聞いてはくれぬのだ 356 00:37:15,152 --> 00:37:17,154 待ってくれ! 357 00:37:17,154 --> 00:37:21,158 (同心)問答無用 神妙に縛につけい 358 00:37:21,158 --> 00:37:26,163 <平三郎 我が身を守らんがため 必死に抵抗したが➡ 359 00:37:26,163 --> 00:37:29,166 所詮は多勢に無勢> 360 00:37:29,166 --> 00:37:31,168 理不尽じゃ 361 00:37:31,168 --> 00:37:33,170 理不尽でござる! 362 00:37:33,170 --> 00:37:36,170 (同心)それ 取り押さえい 御用だ! 363 00:37:38,175 --> 00:37:42,179 <ついに捕らえられてしまった> 364 00:37:42,179 --> 00:37:45,182 (同心)引っ立てい! 365 00:37:45,182 --> 00:37:48,185 (男性)うわー 物騒なこった 366 00:37:48,185 --> 00:37:50,187 町人相手に暴れて➡ 367 00:37:50,187 --> 00:37:53,190 役人を向こうに回して 大立ち回りだとよ 368 00:37:53,190 --> 00:37:56,190 とんでもねえ無頼漢だ 369 00:38:15,145 --> 00:38:35,145 ♬~ 370 00:38:50,180 --> 00:38:58,121 <放免はされたものの 罪人の汚名まで着せられた平三郎> 371 00:38:58,121 --> 00:39:04,127 <もはや この地に 居場所はないかに思われた> 372 00:39:04,127 --> 00:39:06,127 <だが…> 373 00:39:12,135 --> 00:39:17,135 どうしても忘れられぬ 374 00:39:25,148 --> 00:39:28,151 お千代殿… 375 00:39:28,151 --> 00:39:48,151 ♬~ 376 00:39:56,179 --> 00:40:03,179 だが これから先… 377 00:40:18,135 --> 00:40:23,135 <いくら考えても答えは出ない> 378 00:40:26,143 --> 00:40:32,143 もうすぐ日も暮れる 379 00:40:41,158 --> 00:40:47,164 いかにして暮らしてゆこう 380 00:40:47,164 --> 00:40:55,172 ♬~ 381 00:40:55,172 --> 00:40:59,109 <再び力なく歩き始めた平三郎> 382 00:40:59,109 --> 00:41:05,115 <その背に 「もし 久利富さん」と声をかけた➡ 383 00:41:05,115 --> 00:41:08,115 一人の男> 384 00:41:21,131 --> 00:41:24,134 (幸吉)お久しぶりでござんすねえ 385 00:41:24,134 --> 00:41:29,139 お牢ん中じゃ 短え間でしたが お世話になりやした 386 00:41:29,139 --> 00:41:32,142 元気そうだな 幸吉 387 00:41:32,142 --> 00:41:35,145 俺は 今朝出てきてのう 388 00:41:35,145 --> 00:41:37,147 (幸吉)そうですかい 389 00:41:37,147 --> 00:41:39,149 それにしても また一段と くたびれなすって 390 00:41:39,149 --> 00:41:41,151 無理もねえが 391 00:41:41,151 --> 00:41:44,154 これから どうしたものか➡ 392 00:41:44,154 --> 00:41:48,158 途方に暮れていた ところでござるよ 393 00:41:48,158 --> 00:41:51,158 (幸吉)お気の毒なことで 394 00:41:57,167 --> 00:41:59,169 どうです? 久利富さん 395 00:41:59,169 --> 00:42:03,173 しばらく うちに来てみちゃ 396 00:42:03,173 --> 00:42:05,175 よいのか? 397 00:42:05,175 --> 00:42:08,178 (幸吉)ええ ここで またお会いをしたのも➡ 398 00:42:08,178 --> 00:42:11,181 ご縁があるんでしょうよ 399 00:42:11,181 --> 00:42:13,183 さあ どうぞ 400 00:42:13,183 --> 00:42:15,183 かたじけない 401 00:42:49,219 --> 00:42:51,221 (客)ごちそうさん 402 00:42:51,221 --> 00:42:53,223 (お千代) 毎度ありがとうございます 403 00:42:53,223 --> 00:42:56,226 (客)お千代ちゃん 近頃 色っぽくなったねえ 404 00:42:56,226 --> 00:42:58,161 いい人でもできたかい? 405 00:42:58,161 --> 00:43:00,163 (お千代)バカ 塩まくよ 406 00:43:00,163 --> 00:43:02,163 (幸吉)旦那 行きやしょう 407 00:43:06,169 --> 00:43:09,172 (猫八)さあ どうぞ 408 00:43:09,172 --> 00:43:11,174 (お千代)また来たよ 409 00:43:11,174 --> 00:43:14,177 (親父)いらっしゃいまし 410 00:43:14,177 --> 00:43:18,181 <幸吉一家の食客となった平三郎> 411 00:43:18,181 --> 00:43:23,186 <三日にあげず この吉乃川を訪ねてくる> 412 00:43:23,186 --> 00:43:26,189 (客)来たよ 無頼漢が 413 00:43:26,189 --> 00:43:28,191 触らぬ神に祟りなし 414 00:43:28,191 --> 00:43:32,195 おう! また来るよ 415 00:43:32,195 --> 00:43:37,200 <何しろ 他の客が 怖がって帰ってしまうのだから➡ 416 00:43:37,200 --> 00:43:40,203 ありがた迷惑な お得意ではある> 417 00:43:40,203 --> 00:43:44,203 (幸吉)お千代ちゃん 熱いとこ頼むぜ 418 00:43:47,210 --> 00:43:51,214 いい娘ですねえ お千代ちゃんは 419 00:43:51,214 --> 00:43:53,216 ねえ 旦那 420 00:43:53,216 --> 00:43:55,218 うむ まあな 421 00:43:55,218 --> 00:43:58,218 (親父)いらっしゃいまし 422 00:44:04,161 --> 00:44:07,164 <こいつもまた お千代ちゃんに ちょいと ご執心で> 423 00:44:07,164 --> 00:44:09,166 (猫八)エヘヘッ どうも 424 00:44:09,166 --> 00:44:11,166 んーん 425 00:44:13,170 --> 00:44:17,174 おっ 相変わらず うめえなあ ダシが利いてらあ 426 00:44:17,174 --> 00:44:19,176 お千代ちゃんが作ったのかい? ええ? 427 00:44:19,176 --> 00:44:21,176 お千代ちゃーん 428 00:44:23,180 --> 00:44:25,182 (お千代)お待たせしました 429 00:44:25,182 --> 00:44:27,182 どうぞ 430 00:44:32,189 --> 00:44:34,191 さあ 親分 431 00:44:34,191 --> 00:44:36,193 (幸吉)旦那が先だあな 432 00:44:36,193 --> 00:44:38,193 (お千代)あっ すいません 433 00:44:40,197 --> 00:44:49,206 <そばで見れば見るほど やはり似ている> 434 00:44:49,206 --> 00:44:51,208 <奈美江に恋をし➡ 435 00:44:51,208 --> 00:44:56,213 永山塾で友と学んだ あの青春の日々が➡ 436 00:44:56,213 --> 00:45:01,151 人生で最も幸福なときであった> 437 00:45:01,151 --> 00:45:04,154 <お千代の顔を見つめていると➡ 438 00:45:04,154 --> 00:45:09,159 あのころを 思い出さずにはいられない> 439 00:45:09,159 --> 00:45:16,159 <もう随分と 昔の出来事のような気がする> 440 00:45:18,168 --> 00:45:20,168 お千代殿… 441 00:45:22,172 --> 00:45:27,177 (幸吉)ヘッヘッヘ だらしがねえね 久利富さんも 442 00:45:27,177 --> 00:45:30,180 (猫八)あれー 旦那 さては ええ? 443 00:45:30,180 --> 00:45:32,182 あたしの恋敵 くーっ 444 00:45:32,182 --> 00:45:35,185 こいつは手ごわいや 負けねえぞ 445 00:45:35,185 --> 00:45:39,189 <早くも酔っ払って おだあげている猫八> 446 00:45:39,189 --> 00:45:41,191 <と…> (客)おっとっとっと 447 00:45:41,191 --> 00:45:45,195 おっ 悪いなあ (猫八)悪いなあ? 448 00:45:45,195 --> 00:45:48,198 この野郎 べらぼうめ! 449 00:45:48,198 --> 00:45:50,200 (客)な… なんだ? (猫八)「なんだ」とは なんだ! 450 00:45:50,200 --> 00:45:53,203 大事な酒 どうしてくれんだ バカ野郎! あーっ 451 00:45:53,203 --> 00:45:56,206 (幸吉)おい よせ 猫八 よさねえかよ 452 00:45:56,206 --> 00:45:59,142 アイテッ いいかげんにしやがれ バカ野郎 453 00:45:59,142 --> 00:46:02,145 <三つどもえ 四つどもえの大ゲンカ> 454 00:46:02,145 --> 00:46:07,150 おい やめぬか これ 皆 少し落ち着け! 455 00:46:07,150 --> 00:46:09,152 店の迷惑になるではないか 456 00:46:09,152 --> 00:46:14,157 (幸吉)野郎 この二十日鼠の幸吉に ケンカ売るとは いい度胸だ 457 00:46:14,157 --> 00:46:16,159 思い知らせてやる こいつめ! 458 00:46:16,159 --> 00:46:22,165 親分 もう そのへんにしておけ 猫八も なあ 459 00:46:22,165 --> 00:46:26,169 <平三郎は あくまでも穏やかに ケンカの仲裁を努めた> 460 00:46:26,169 --> 00:46:30,173 <ところが この騒ぎを どこのおせっかいが知らせたか➡ 461 00:46:30,173 --> 00:46:33,176 駆けつけてきたのは 見回りのお役人> 462 00:46:33,176 --> 00:46:35,178 (同心)御用 御用御用! 463 00:46:35,178 --> 00:46:38,181 者ども鎮まれ お上の御用だ 464 00:46:38,181 --> 00:46:42,185 ええい 神妙に致せ! 465 00:46:42,185 --> 00:46:45,188 <その役人が…> 466 00:46:45,188 --> 00:46:48,188 (同心)ややっ まさしく! 467 00:46:53,196 --> 00:46:55,196 ああ いや お役人… 468 00:47:00,136 --> 00:47:06,142 店の者や 他の客にも迷惑と 必死に止めておったまで 469 00:47:06,142 --> 00:47:08,142 (同心)ケッ そら言をつけ! 470 00:47:12,148 --> 00:47:15,151 (同心)えーい 来るのだ! 471 00:47:15,151 --> 00:47:18,154 お待ちくだされ これは ぬれぎぬでござる 472 00:47:18,154 --> 00:47:21,157 見ていた者に 尋ねてくれさえすれば分かること 473 00:47:21,157 --> 00:47:24,160 お役人 何とぞ! 474 00:47:24,160 --> 00:47:27,163 (役人)無頼漢の言い逃れ 聞く耳 持たぬわ! 475 00:47:27,163 --> 00:47:30,166 誤解じゃ 拙者は あくまで潔白でござる 476 00:47:30,166 --> 00:47:32,168 断じて無頼漢ではない 477 00:47:32,168 --> 00:47:35,171 信じてくれ! 478 00:47:35,171 --> 00:47:43,171 <抵抗むなしく 平三郎は またも引き立てられてしまった> 479 00:47:48,184 --> 00:47:51,187 <数日して> 480 00:47:51,187 --> 00:47:55,191 <お解き放ちとなった平三郎> 481 00:47:55,191 --> 00:48:03,133 <今やこの町で 恐怖の対象として 彼を知らぬ者は一人もいない> 482 00:48:03,133 --> 00:48:07,137 <ろくな詮議もされぬまま➡ 483 00:48:07,137 --> 00:48:11,141 偏見と誤解のうちに 押されてしまった➡ 484 00:48:11,141 --> 00:48:15,145 無頼漢の烙印> 485 00:48:15,145 --> 00:48:17,147 (男性)おっととと… 486 00:48:17,147 --> 00:48:21,147 ああ… 物騒な野郎だよ 487 00:48:23,153 --> 00:48:27,157 いや あの男かい? ウワサの 488 00:48:27,157 --> 00:48:29,157 (棒手振り)ええ そうですとも 489 00:48:38,168 --> 00:48:41,168 (男性)くわばら くわばら 490 00:48:43,173 --> 00:48:48,178 <怖がるのは 大人たちばかりではない> 491 00:48:48,178 --> 00:48:53,183 <コマ遊びに興じる 幼い子供までが> 492 00:48:53,183 --> 00:48:56,186 <親にでも聞かされたのであろう> 493 00:48:56,186 --> 00:49:01,124 <平三郎の姿を見るやいなや…> 494 00:49:01,124 --> 00:49:06,124 (子供)うわあ! みんな 逃げろ 無頼漢の平三郎だい! 495 00:49:10,133 --> 00:49:12,133 なぜだ… 496 00:49:14,137 --> 00:49:19,137 俺が何をしたというのだ 497 00:49:26,149 --> 00:49:28,149 俺は… 498 00:49:40,163 --> 00:49:46,163 <平三郎は つくづく世の中が恨めしかった> 499 00:49:48,171 --> 00:49:56,179 確かに 俺という人間は 融通の利かぬ朴念仁かもしれぬ 500 00:49:56,179 --> 00:50:00,116 要領の悪いバカ者かもしれぬ 501 00:50:00,116 --> 00:50:04,120 だが しかし かくも真意を曲解され➡ 502 00:50:04,120 --> 00:50:09,125 誹り 嘲りを受けるような 悪人ではないはずだ 503 00:50:09,125 --> 00:50:11,125 それだのに… 504 00:50:13,129 --> 00:50:16,132 そうだ 505 00:50:16,132 --> 00:50:24,140 俺は 決して無頼漢ではないのだ 506 00:50:24,140 --> 00:50:31,147 俺は 誰よりも善良なのだ 507 00:50:31,147 --> 00:50:34,150 皆 世間のヤツらが➡ 508 00:50:34,150 --> 00:50:40,150 勝手に俺を 無頼漢にしてしまっているのだ 509 00:50:42,158 --> 00:50:46,162 <正しいと信ずることを➡ 510 00:50:46,162 --> 00:50:51,167 通そうとすればするほどに 落ちてゆく> 511 00:50:51,167 --> 00:50:57,167 <深くて くらい無限の奈落> 512 00:51:00,109 --> 00:51:09,109 <けれど その暗黒にも たった一つ小さな光があった> 513 00:51:13,122 --> 00:51:16,125 お千代 514 00:51:16,125 --> 00:51:23,125 ああ あの娘だけが 俺の生きるための光なのだ 515 00:51:25,134 --> 00:51:27,136 お千代殿 516 00:51:27,136 --> 00:51:30,136 いや 待ってくれ 517 00:51:32,141 --> 00:51:34,143 お千代殿 518 00:51:34,143 --> 00:51:38,147 何も怖がることはござらぬ 519 00:51:38,147 --> 00:51:42,151 人々は拙者を まるで鬼か蛇のように恐れるが➡ 520 00:51:42,151 --> 00:51:48,157 拙者は そんな恐ろしい人間ではないのだ 521 00:51:48,157 --> 00:51:50,157 本当だ 522 00:52:24,193 --> 00:52:26,193 皆… 523 00:52:32,201 --> 00:52:34,203 (お千代)ご冗談を 524 00:52:34,203 --> 00:52:36,205 冗談などではない 525 00:52:36,205 --> 00:52:38,207 お千代殿! 526 00:52:38,207 --> 00:52:41,207 お願いでござる お願いでござる 527 00:52:46,215 --> 00:52:51,220 (お千代)お放しください どうぞ もう ご勘弁を… 528 00:52:51,220 --> 00:52:53,222 お分かりいただけぬか 529 00:52:53,222 --> 00:52:57,160 あなたも そうして 拙者を避けるのか? 530 00:52:57,160 --> 00:52:59,162 お千代殿! 531 00:52:59,162 --> 00:53:04,167 (お千代)イヤです 放してください 放して 532 00:53:04,167 --> 00:53:06,169 (老人)何をしておる! 533 00:53:06,169 --> 00:53:08,169 (お千代)イヤ! 534 00:53:15,178 --> 00:53:22,185 (老人)ええ また あの無頼漢が 535 00:53:22,185 --> 00:53:27,185 <これを見ていたのが 二十日鼠の幸吉> 536 00:53:36,199 --> 00:53:39,202 幸吉か 537 00:53:39,202 --> 00:53:42,205 (幸吉)何 簡単なこった 538 00:53:42,205 --> 00:53:46,209 お千代が欲しけりゃあ… 539 00:53:46,209 --> 00:53:48,211 ねえ 540 00:53:48,211 --> 00:53:51,214 こ… 幸吉 バカを申すな! 541 00:53:51,214 --> 00:53:53,216 そのような恐ろしいことを 542 00:53:53,216 --> 00:53:55,218 (幸吉)ああ 大丈夫ですよう 543 00:53:55,218 --> 00:54:03,218 細工は隆々 仕上げをごろうじ 万事 あたしがうまくやりやす 544 00:54:22,178 --> 00:54:26,182 <夜陰に乗じて 吉乃川に押し込み➡ 545 00:54:26,182 --> 00:54:31,187 否応もなく お千代を引っさらい 駕籠の中へ> 546 00:54:31,187 --> 00:54:35,191 <電光石火の早業> 547 00:54:35,191 --> 00:54:38,194 (猫八)ヘッヘッヘッヘ 首尾は上々 548 00:54:38,194 --> 00:54:42,198 今夜 旦那 お千代ちゃんを手生けの花 549 00:54:42,198 --> 00:54:45,198 (幸吉) まあ ざっと こんなもんでさあ 550 00:54:47,203 --> 00:54:50,206 <かどわかし> 551 00:54:50,206 --> 00:54:54,210 <これは明らかな悪事である> 552 00:54:54,210 --> 00:54:56,212 <こんな手段を用いるのは➡ 553 00:54:56,212 --> 00:55:01,212 無論 平三郎の本意ではなかったが> 554 00:55:05,154 --> 00:55:09,158 (幸吉) どうしたんです? 久利富さん 浮かぬ顔をして 555 00:55:09,158 --> 00:55:12,161 お千代は もう あんたのもんだ 556 00:55:12,161 --> 00:55:15,164 もうちっと喜んだって いいじゃありませんか 557 00:55:15,164 --> 00:55:20,169 あんたのためならばと こちとらも 危ねえ橋を渡ったんだ 558 00:55:20,169 --> 00:55:25,169 二十日鼠の心尽くし 受けておくんなさいよ 559 00:55:27,176 --> 00:55:33,176 なんということをしてくれたのだ 560 00:55:35,184 --> 00:55:38,187 (猫八)お千代ちゃん そんなに怖がらねえで 561 00:55:38,187 --> 00:55:41,190 猫八つぁんですよ (お千代)来ないで! 562 00:55:41,190 --> 00:55:45,194 (猫八)イテエ! おお イテエ 怒んなよ 563 00:55:45,194 --> 00:55:48,197 俺だってね 久利富の旦那と おんなじで➡ 564 00:55:48,197 --> 00:55:51,200 お千代ちゃんのことをさあ ヘヘッ 565 00:55:51,200 --> 00:55:53,202 (幸吉)猫八! (猫八)へえ 566 00:55:53,202 --> 00:55:56,205 (幸吉) おめえは こっちに来るんだよ ええ? 567 00:55:56,205 --> 00:56:01,205 お千代は今からな 旦那のお相手よ 568 00:56:03,145 --> 00:56:05,147 <哀れなるかな> 569 00:56:05,147 --> 00:56:10,152 <とらわれの身となった お千代> 570 00:56:10,152 --> 00:56:17,152 <そして彼女の運命は 平三郎の胸三寸にかかっている> 571 00:56:20,162 --> 00:56:24,162 お千代殿 572 00:56:27,169 --> 00:56:33,175 <ついに魔に取りつかれたか 平三郎> 573 00:56:33,175 --> 00:56:39,181 <欲望と理性との葛藤に もだえ苦しみながらも➡ 574 00:56:39,181 --> 00:56:42,184 お千代に迫る> 575 00:56:42,184 --> 00:56:45,184 お千代殿 576 00:56:47,189 --> 00:56:50,192 お千代… (お千代)何をなされます! 577 00:56:50,192 --> 00:56:53,195 思いを遂げさせてくれ 頼む 578 00:56:53,195 --> 00:56:57,133 頼む お千代! 579 00:56:57,133 --> 00:57:01,133 <荒ぶる煩悩> 580 00:57:06,142 --> 00:57:10,146 お千代! 俺には もう この世に なんの生きる希望もない 581 00:57:10,146 --> 00:57:13,149 あるとすれば ただ一つ それは お前だ 582 00:57:13,149 --> 00:57:18,154 俺の絶望を 俺の孤独を 救ってくれるのは お前だけなのだ 583 00:57:18,154 --> 00:57:20,156 <不条理窮まる世間の仕打ちに➡ 584 00:57:20,156 --> 00:57:23,159 恨みの炎は 積欲の業火と化して➡ 585 00:57:23,159 --> 00:57:29,165 今や 平三郎の良心をも 焼き尽くさんとする> 586 00:57:29,165 --> 00:57:33,169 お千代… 587 00:57:33,169 --> 00:57:37,173 <良心なき人間> 588 00:57:37,173 --> 00:57:42,178 <それは 果たして人か?> 589 00:57:42,178 --> 00:57:46,178 <あるいは 獣か> 590 00:57:48,184 --> 00:57:52,188 <はたまた 悪魔か> 591 00:57:52,188 --> 00:57:54,188 お千代 592 00:57:56,192 --> 00:58:00,129 (お千代)ああ… お助けください お願いです 久利富様 593 00:58:00,129 --> 00:58:03,132 どうか どうかお願い 594 00:58:03,132 --> 00:58:07,136 これ以上 無体なことは… 595 00:58:07,136 --> 00:58:09,138 久利富様 596 00:58:09,138 --> 00:58:11,138 <お千代> 597 00:58:14,143 --> 00:58:17,146 <お千代…> 598 00:58:17,146 --> 00:58:30,159 ♬~ 599 00:58:30,159 --> 00:58:33,159 出来ぬ 600 00:58:38,167 --> 00:58:40,167 ああ… 601 00:58:53,182 --> 00:59:02,124 これ以上 この気の毒な娘を 苦しめることはできん 602 00:59:02,124 --> 00:59:16,124 ♬~ 603 00:59:19,141 --> 00:59:23,141 (猫八)静かになりやしたねえ? 604 00:59:31,153 --> 00:59:37,153 悪魔にも獣にもなれぬ男だ 605 00:59:41,163 --> 00:59:47,169 (お千代)後生です うちへ帰してください 606 00:59:47,169 --> 00:59:50,172 さも あろう 607 00:59:50,172 --> 00:59:53,175 安心してくれ 608 00:59:53,175 --> 00:59:57,175 拙者は もう何もせぬ 609 01:00:00,116 --> 01:00:03,119 (猫八)どうやら 望みを果たしたようですね 610 01:00:03,119 --> 01:00:05,121 久利富の旦那も 611 01:00:05,121 --> 01:00:10,126 (幸吉)まあ これから せいぜい 働いてもらわなくっちゃなあ 612 01:00:10,126 --> 01:00:15,131 <だが 悪事千里を走るのたとえ 吉乃川からの知らせで➡ 613 01:00:15,131 --> 01:00:20,136 役人が捕手を率いて 幸吉宅を取り囲んだ> 614 01:00:20,136 --> 01:00:23,139 (猫八)これで あの旦那も いよいよ俺たちの仲間入りですね 615 01:00:23,139 --> 01:00:29,145 (幸吉)今度の大仕事にゃ ヤツの腕が必要なのよう 616 01:00:29,145 --> 01:00:33,149 (役人)御用! 御用だ! 二十日鼠の幸吉 617 01:00:33,149 --> 01:00:36,152 ならびに その一党 神妙に致せ! 618 01:00:36,152 --> 01:00:40,156 (幸吉)ええ… しまった! 619 01:00:40,156 --> 01:00:43,159 いけねえ! 旦那! 役人だ 620 01:00:43,159 --> 01:00:45,161 おおっ 621 01:00:45,161 --> 01:00:47,161 <我に返った平三郎> 622 01:00:50,166 --> 01:00:54,170 (捕手)ややっ こやつ 無頼漢の平三郎! 623 01:00:54,170 --> 01:00:56,172 御用だ のけい! 624 01:00:56,172 --> 01:00:58,107 <平三郎 この場合➡ 625 01:00:58,107 --> 01:01:03,112 なんとしても お千代だけは 騒ぎに巻き込みたくなかった> 626 01:01:03,112 --> 01:01:06,112 お千代殿 この間に逃げてくれ! 627 01:01:11,120 --> 01:01:14,123 (役人)御用! 御用御用! 二十日鼠の幸吉 628 01:01:14,123 --> 01:01:17,126 ニラミの猫八! 御用だ! 629 01:01:17,126 --> 01:01:19,128 (猫八)チクショウ! 630 01:01:19,128 --> 01:01:29,138 ♬~ 631 01:01:29,138 --> 01:01:40,149 ♬~ 632 01:01:40,149 --> 01:01:42,151 (役人)神妙に致せ! 633 01:01:42,151 --> 01:01:47,156 <かくて 幸吉一味は 一人残らず捕らえられたが➡ 634 01:01:47,156 --> 01:01:55,164 お千代だけは この騒ぎの中を からくも逃れることが出来た> 635 01:01:55,164 --> 01:01:58,164 <そして 平三郎は…> 636 01:02:00,169 --> 01:02:03,172 (役人)御用! 御用御用 御用だ! 637 01:02:03,172 --> 01:02:07,172 無頼漢の平三郎 神妙にお縄を頂戴致せい! 638 01:02:12,181 --> 01:02:19,188 <乱闘の果てに 二十日鼠の幸吉と 子分たちは お縄にかけられ➡ 639 01:02:19,188 --> 01:02:25,188 平三郎に至っては 三度目の捕縛となった> 640 01:02:28,197 --> 01:02:30,197 (役人)引っ立てい! 641 01:03:05,167 --> 01:03:07,169 (親父)火の用心 642 01:03:07,169 --> 01:03:11,173 しゃっしゃりやしょう (拍子木の音) 643 01:03:11,173 --> 01:03:14,176 (親父)火の用心… 644 01:03:14,176 --> 01:03:17,179 旦那方 何か? 645 01:03:17,179 --> 01:03:21,183 (役人)親父 この辺りで 若い男を見なかったか? 646 01:03:21,183 --> 01:03:25,187 (親父)いいえ そいつは? 647 01:03:25,187 --> 01:03:29,191 (役人)無頼漢の久利富平三郎が 牢を破って逃げた 648 01:03:29,191 --> 01:03:31,193 (親父)えっ! (役人)お前も気をつけろよ 649 01:03:31,193 --> 01:03:33,193 (親父)ヒャー おっかねえ! 650 01:03:39,201 --> 01:03:42,201 行ったか 651 01:03:45,207 --> 01:03:48,210 おっ 652 01:03:48,210 --> 01:03:51,213 (役人) 草の根を分けても捜し出せい! 653 01:03:51,213 --> 01:03:59,154 ♬~ 654 01:03:59,154 --> 01:04:04,159 <危険を顧みず 破牢までして逃れたのは➡ 655 01:04:04,159 --> 01:04:09,164 ひとえに お千代の無事を 知りたいがためである> 656 01:04:09,164 --> 01:04:14,169 <あの騒ぎを脱して 吉乃川へ帰ったのだろうが➡ 657 01:04:14,169 --> 01:04:17,172 あれから どう過ごしているのか> 658 01:04:17,172 --> 01:04:20,175 <心の傷は癒えたのか> 659 01:04:20,175 --> 01:04:26,181 <以前と変わらぬ 元気なその姿を ただ一目でよい 見たい> 660 01:04:26,181 --> 01:04:32,187 いや やはり会いたい 661 01:04:32,187 --> 01:04:38,193 俺は お千代に どうしても会いたいのだ 662 01:04:38,193 --> 01:04:47,202 <益荒男の聡き心も今はなし 恋の奴に 我は死ぬべし> 663 01:04:47,202 --> 01:04:51,206 <捕手の網は 町の隅々にまで> 664 01:04:51,206 --> 01:04:59,148 <それ かいくぐり 決死の覚悟で ようやく たどり着く吉乃川> 665 01:04:59,148 --> 01:05:03,152 <平三郎が朝夕 思い焦がれ➡ 666 01:05:03,152 --> 01:05:11,160 冷たい獄舎に生きる 唯一のよすがと頼んだ娘 お千代> 667 01:05:11,160 --> 01:05:17,160 <だが その お千代は…> 668 01:05:20,169 --> 01:05:24,169 <平三郎の知らぬ間に…> 669 01:05:26,175 --> 01:05:37,186 <うれし恥ずかし丸まげも初々しい 新妻姿に身を変えていた> 670 01:05:37,186 --> 01:05:42,186 お… お千代! 671 01:05:44,193 --> 01:05:50,199 <がく然とする平三郎> 672 01:05:50,199 --> 01:05:52,199 お千代… 673 01:05:54,203 --> 01:05:56,205 バカな… 674 01:05:56,205 --> 01:05:58,140 こんな… 675 01:05:58,140 --> 01:06:02,140 こんなバカなことが 676 01:06:04,146 --> 01:06:10,152 これは悪い夢に相違ない 677 01:06:10,152 --> 01:06:16,152 俺は悪夢を見ているのだ 678 01:06:20,162 --> 01:06:23,162 お千代… 679 01:06:25,167 --> 01:06:28,167 お千代… 680 01:06:31,173 --> 01:06:37,173 <最後の希望も 無残に打ち砕かれた> 681 01:06:39,181 --> 01:06:47,189 <これまでにない大きな絶望が 平三郎を襲う> 682 01:06:47,189 --> 01:06:55,197 ♬~ 683 01:06:55,197 --> 01:06:57,132 おお… 684 01:06:57,132 --> 01:07:01,132 お千代は もう… 685 01:07:10,145 --> 01:07:14,149 <夢であってほしい> 686 01:07:14,149 --> 01:07:17,152 <だが これは事実だ> 687 01:07:17,152 --> 01:07:20,155 <事実は現実> 688 01:07:20,155 --> 01:07:30,155 <そして もう一つの残酷な現実が 今 平三郎の眼前へ迫っていた> 689 01:07:37,172 --> 01:07:41,176 <広がる闇は鬼の口> 690 01:07:41,176 --> 01:07:46,181 <きらめく十手は鬼の牙> 691 01:07:46,181 --> 01:07:50,185 <月明かりに照らし出された 手負いの獲物> 692 01:07:50,185 --> 01:07:59,127 <その五体を その魂を食らわんと 狙いを定め…> 693 01:07:59,127 --> 01:08:12,140 ♬~ 694 01:08:12,140 --> 01:08:15,140 むなしい 695 01:08:18,146 --> 01:08:22,146 全ては無だ 696 01:08:27,155 --> 01:08:34,155 どこか静かな所へ行こう 697 01:08:38,166 --> 01:08:42,170 誰もいない 698 01:08:42,170 --> 01:08:49,177 何も聞こえない 静かな所で 699 01:08:49,177 --> 01:08:54,177 ただ眠りたい 700 01:08:56,184 --> 01:09:00,122 (捕手)それ 御用! 御用だ! 701 01:09:00,122 --> 01:09:03,125 ええい… 702 01:09:03,125 --> 01:09:06,128 のけい! 703 01:09:06,128 --> 01:09:09,131 (役人)牢破りの重罪人! 無頼漢の平三郎! 704 01:09:09,131 --> 01:09:14,136 神妙にお縄を頂戴致せ! 御用だ! 705 01:09:14,136 --> 01:09:16,138 おい! 706 01:09:16,138 --> 01:09:18,138 待ってくれ 707 01:09:34,156 --> 01:09:36,158 だが… 708 01:09:36,158 --> 01:09:43,158 だが俺は そんな恐ろしいことを したくはない! 709 01:09:53,175 --> 01:09:55,175 (役人)黙れ 悪党! 710 01:10:00,115 --> 01:10:03,118 (役人)御用だ! 711 01:10:03,118 --> 01:10:09,118 貴様たちには 拙者の気持ちが分からぬのか! 712 01:10:20,135 --> 01:10:24,139 (役人)世まい言を抜かすな! ええい グズグズするな 713 01:10:24,139 --> 01:10:27,142 はよう召し捕ってしまえ 714 01:10:27,142 --> 01:10:29,142 (役人)いよっ おのれ… 715 01:10:40,155 --> 01:10:46,155 <我が心 剣のごとくさえ いつ誰をしも刺さんとすらん> 716 01:10:49,164 --> 01:10:51,166 のけ! のけと申すに! 717 01:10:51,166 --> 01:10:53,168 <荒れ狂った平三郎> 718 01:10:53,168 --> 01:10:57,105 <捕手の囲いを破って逃れた その先は…> 719 01:10:57,105 --> 01:10:59,107 ああっ… 720 01:10:59,107 --> 01:11:01,107 (役人)あちらへ逃げたぞ! 721 01:11:05,113 --> 01:11:08,113 (治郎三)んー? (鼻)誰でい? てめえ 722 01:11:17,125 --> 01:11:20,128 (治郎三)見れば ただ事でねえ様子 723 01:11:20,128 --> 01:11:22,128 どうしなすった? 724 01:11:31,139 --> 01:11:35,143 何とぞ! (治郎三)役人に? 725 01:11:35,143 --> 01:11:37,143 おお… 726 01:11:54,162 --> 01:12:00,168 (治郎三)こりゃあ 皆さん こんな夜更けに捕り物ですかい? 727 01:12:00,168 --> 01:12:02,168 (役人)これは治郎三親分 728 01:12:04,172 --> 01:12:09,177 いや 実は牢破りの咎人を 捜しておってな 729 01:12:09,177 --> 01:12:11,179 (治郎三)どんな野郎で? 730 01:12:11,179 --> 01:12:14,182 (役人)元は侍での ほっかむりをしておる 731 01:12:14,182 --> 01:12:18,186 確かに こちらのほうへ 逃げてきたはずなのだが 732 01:12:18,186 --> 01:12:21,189 親分 心当たりはないかの? 733 01:12:21,189 --> 01:12:23,191 (治郎三)うむ… 734 01:12:23,191 --> 01:12:28,196 あっ そういや ついさっき そんな野郎が向こうへね 735 01:12:28,196 --> 01:12:31,199 (役人)さようか いやあ かたじけない 736 01:12:31,199 --> 01:12:33,199 それ 者ども 急げ! 737 01:12:35,203 --> 01:12:40,203 (治郎三)ハハハハッ 単純なもんだい 行っちまったよ 738 01:13:04,165 --> 01:13:06,167 <治郎三によって➡ 739 01:13:06,167 --> 01:13:10,171 しばし穏やかな暮らしを 取り戻すことができた平三郎> 740 01:13:10,171 --> 01:13:16,177 <せめてもの恩返しにと 子分たちに剣術の指南> 741 01:13:16,177 --> 01:13:19,180 ようし 次は誰かな 742 01:13:19,180 --> 01:13:21,182 (三太)へえ あっしでごぜえやす 743 01:13:21,182 --> 01:13:25,186 三太 少しは上達したか? 744 01:13:25,186 --> 01:13:27,188 <薄バカの三太> 745 01:13:27,188 --> 01:13:32,193 (三太)今度は負けませんよ! 先生 見ててくだせえよ 746 01:13:32,193 --> 01:13:35,196 さあ 来い! (三太)やあ! やあ! 747 01:13:35,196 --> 01:13:38,199 やあ やあ やあ! んっ どうした どうした! 748 01:13:38,199 --> 01:13:40,201 よっ 749 01:13:40,201 --> 01:13:45,206 (三太)イテテ! まだ まだまだ! 750 01:13:45,206 --> 01:13:49,210 ちょっとも腰が入っとらんぞ ハハハッ ダメだダメだ 751 01:13:49,210 --> 01:13:54,215 (三太)あう… チクショウ 悔しい 752 01:13:54,215 --> 01:13:56,217 まだまだ 753 01:13:56,217 --> 01:13:58,217 えいやっ! 754 01:14:01,156 --> 01:14:03,156 それ! (三太)うう… 755 01:14:05,160 --> 01:14:08,163 よっ! (三太)あー もう まいった! 756 01:14:08,163 --> 01:14:12,167 まだまだだが その気合いやよし 757 01:14:12,167 --> 01:14:16,171 (治郎三)先生 すいやせんねえ こんなボンクラども相手に 758 01:14:16,171 --> 01:14:23,178 なんの 親分 皆 一生懸命 拙者も教えがいがある 759 01:14:23,178 --> 01:14:26,178 <平和な日々> 760 01:14:33,188 --> 01:14:42,197 <厠に起きた平三郎は 思いがけない光景を目撃する> 761 01:14:42,197 --> 01:14:44,197 おや 762 01:14:46,201 --> 01:14:52,201 親分も皆も こんな夜更けに 何をしているのだ 763 01:14:54,209 --> 01:15:00,148 <娘たちが 駕籠で運ばれてきた> 764 01:15:00,148 --> 01:15:06,148 <手足を縛られ 猿ぐつわを かまされていたようだが…> 765 01:15:10,158 --> 01:15:15,158 <情けに熱いはずの 治郎三親分が…> 766 01:15:17,165 --> 01:15:23,165 <にわかには信じがたい裏の顔> 767 01:15:27,175 --> 01:15:30,178 (治郎三)おとなしくしろい ハハハハッ 768 01:15:30,178 --> 01:15:33,181 (女性)誰か! 誰か助けて! 769 01:15:33,181 --> 01:15:40,181 <手ごめにされんとする娘の 悲痛な叫びが聞こえる> 770 01:15:44,192 --> 01:15:48,192 <さて その後も平三郎は…> 771 01:15:59,140 --> 01:16:03,144 <善良高潔 義きょう心に富んだ 人格者とは➡ 772 01:16:03,144 --> 01:16:07,148 世を欺く仮の姿> 773 01:16:07,148 --> 01:16:09,150 <赤城の治郎三> 774 01:16:09,150 --> 01:16:15,150 <実は 無類の好色にして 婦女誘拐の大悪党> 775 01:16:19,160 --> 01:16:25,166 世の中とは奇妙なものよのう 776 01:16:25,166 --> 01:16:28,169 ハハハハッ… 777 01:16:28,169 --> 01:16:34,175 人々から 無頼漢 無頼漢と恐れられている俺が➡ 778 01:16:34,175 --> 01:16:37,178 実は 善良な人間で➡ 779 01:16:37,178 --> 01:16:43,184 その同じ人々から神 仏のように あがめられている治郎三が➡ 780 01:16:43,184 --> 01:16:48,189 実は 希代の大悪人 781 01:16:48,189 --> 01:16:51,189 大きな矛盾だ 782 01:17:02,137 --> 01:17:08,143 なんという皮肉なことだ 783 01:17:08,143 --> 01:17:11,146 <平三郎の顔には いつしか➡ 784 01:17:11,146 --> 01:17:15,150 自分につらく当たった世間を あざ笑うかのような➡ 785 01:17:15,150 --> 01:17:19,150 反逆の笑みが浮かんでいた> 786 01:17:43,178 --> 01:17:47,182 (治郎三)おう お客さんだ ご病人さんだから気をつけろ 787 01:17:47,182 --> 01:17:51,186 さあ お内儀 ご遠慮なく 788 01:17:51,186 --> 01:17:55,186 ありがとうございます ご親切さまに 789 01:18:16,144 --> 01:18:22,150 <信之丞は 歩くのもままならぬ衰弱ぶりで> 790 01:18:22,150 --> 01:18:26,154 (子分) さあ どうぞ お楽になすって 791 01:18:26,154 --> 01:18:29,157 (信之丞)かたじけない 792 01:18:29,157 --> 01:18:34,162 <道中 病につかれ 路銀も心もとなく窮迫のところ➡ 793 01:18:34,162 --> 01:18:41,169 通りかかった治郎三に救われた 信之丞 奈美江夫婦> 794 01:18:41,169 --> 01:18:45,173 本当に なんとお礼を申し上げてよいやら 795 01:18:45,173 --> 01:18:49,177 (治郎三)いやいや 困ったときは お互いさま 796 01:18:49,177 --> 01:18:54,182 具合がよくなるまで幾日でも うちで養生しなさるがいい 797 01:18:54,182 --> 01:18:57,118 地獄で仏とは このこと 798 01:18:57,118 --> 01:19:00,121 治郎三さん ありがとう存じます 799 01:19:00,121 --> 01:19:04,125 <奈美江は 治郎三の本性を知らない> 800 01:19:04,125 --> 01:19:11,125 <地獄で会った仏とは 仏面した鬼である> 801 01:19:22,143 --> 01:19:27,148 (治郎三)病気のご亭主 抱えて 長旅たあ ご苦労だったでしょう 802 01:19:27,148 --> 01:19:31,152 お気を緩められて どうです? 一つ 803 01:19:31,152 --> 01:19:37,158 あの せっかくでございますが あたくし 不調法でございますので 804 01:19:37,158 --> 01:19:39,160 (治郎三) 一杯ぐらいは いけるでしょう? 805 01:19:39,160 --> 01:19:46,167 いえ 本当に どうぞ お酌でご勘弁を 806 01:19:46,167 --> 01:19:48,167 (治郎三)こいつはどうも 807 01:19:53,174 --> 01:19:57,111 んっ あーっ うめえねえ 808 01:19:57,111 --> 01:20:02,116 お内儀のような お美しい方の 酌でもって飲む酒は➡ 809 01:20:02,116 --> 01:20:05,119 また格別でさあ 810 01:20:05,119 --> 01:20:07,121 まあ ご冗談を 811 01:20:07,121 --> 01:20:10,124 (治郎三) いや 冗談じゃありませんよ 812 01:20:10,124 --> 01:20:13,127 あたしもねえ そっちのほうの遊びは➡ 813 01:20:13,127 --> 01:20:15,129 それなりにしてきたもんだが➡ 814 01:20:15,129 --> 01:20:18,132 あんた様は そこらの女とは訳が違う 815 01:20:18,132 --> 01:20:23,137 お育ちは争えませんな なんともいえねえ色気だ アハッ 816 01:20:23,137 --> 01:20:26,140 いや こら とんだ失礼を 817 01:20:26,140 --> 01:20:30,144 ねえ どうです あたしばかし 飲んでちゃ つまんねえんだよ 818 01:20:30,144 --> 01:20:33,147 ほんの一杯 ねえ お内儀 819 01:20:33,147 --> 01:20:37,151 どうぞ そればかりは お許しを 820 01:20:37,151 --> 01:20:41,155 (治郎三)お許し? 821 01:20:41,155 --> 01:20:45,159 そう お堅いこってすなあ 822 01:20:45,159 --> 01:20:49,163 それとも 下賤の酒なんざ飲めねえと? 823 01:20:49,163 --> 01:20:53,167 いえ そんなつもりは… あの 申し訳ございません 824 01:20:53,167 --> 01:20:58,106 (治郎三)謝るこたあねえよ じゃあ もういっぺん ついでくだせえな 825 01:20:58,106 --> 01:21:01,109 はい では これで… 826 01:21:01,109 --> 01:21:04,112 どうぞ もう ご勘弁を 827 01:21:04,112 --> 01:21:07,115 (治郎三)そうはさせねえよ! 828 01:21:07,115 --> 01:21:09,117 何をなされます! (治郎三)ヘヘヘッ 829 01:21:09,117 --> 01:21:11,119 何もかにもあるもんかい 830 01:21:11,119 --> 01:21:15,123 一旦 俺の懐に入ったからには 逃がしゃあしねえんだ! 831 01:21:15,123 --> 01:21:19,127 無礼な! (治郎三)おとなしくしろい! 832 01:21:19,127 --> 01:21:23,131 いいじゃねえか ええ こっちに来なよう 833 01:21:23,131 --> 01:21:25,133 放せ! 無礼者! 834 01:21:25,133 --> 01:21:28,136 それ以上 近づけば… (治郎三)うおっ 835 01:21:28,136 --> 01:21:31,139 容赦は致しませんぞ 836 01:21:31,139 --> 01:21:35,143 (治郎三)おっ こいつは 歯応えがありそうだ 面白えやい 837 01:21:35,143 --> 01:21:37,145 何をする! 838 01:21:37,145 --> 01:21:41,145 ああ どこの女か知らぬが… 839 01:21:49,157 --> 01:21:52,160 <必死に抵抗する奈美江> 840 01:21:52,160 --> 01:21:55,163 <夫 信之丞も止めに入って> 841 01:21:55,163 --> 01:21:58,166 (信之丞)奈美江を放せ! 842 01:21:58,166 --> 01:22:00,168 (治郎三)やかましいやい! 843 01:22:00,168 --> 01:22:03,171 (信之丞)奈美江! 奈美江!? 844 01:22:03,171 --> 01:22:06,174 まさか… 845 01:22:06,174 --> 01:22:11,179 おやめください 夫は… 夫は病人でございます 846 01:22:11,179 --> 01:22:13,179 (信之丞)おのれ… 847 01:22:15,183 --> 01:22:18,186 (信之丞)殺せ! 殺せ… 848 01:22:18,186 --> 01:22:22,190 (治郎三)ようし 望みどおり殺してやるぜ 849 01:22:22,190 --> 01:22:24,192 おやめください お願いでございます 850 01:22:24,192 --> 01:22:27,195 どうか 夫の命ばかりは 851 01:22:27,195 --> 01:22:30,198 (信之丞)奈美江! 奈美江! 852 01:22:30,198 --> 01:22:33,201 あなた… 853 01:22:33,201 --> 01:22:35,203 あっ 854 01:22:35,203 --> 01:22:42,210 まさしく 奈美江殿に相違ない 855 01:22:42,210 --> 01:22:46,214 <平三郎 すぐにも その場に飛び込んで➡ 856 01:22:46,214 --> 01:22:50,218 助けてやろうとしたが…> 857 01:22:50,218 --> 01:22:52,220 あっ… 858 01:22:52,220 --> 01:22:54,222 出来ぬ 859 01:22:54,222 --> 01:22:58,222 俺は今や あの治郎三に飼われる身 860 01:23:14,175 --> 01:23:17,178 (治郎三)じたばたするねえ! 野郎 ふん縛っちまえ! 861 01:23:17,178 --> 01:23:19,178 おい 862 01:23:30,191 --> 01:23:32,191 お願いです 863 01:23:40,201 --> 01:23:44,205 お願いでございます お願いでございます! 864 01:23:44,205 --> 01:23:47,208 奈美江殿… 865 01:23:47,208 --> 01:23:51,212 (治郎三)そうかい そんなに亭主野郎が大事かい 866 01:23:51,212 --> 01:23:57,151 まあ それなら命は助けてやるから その代わり… 867 01:23:57,151 --> 01:24:00,154 さあ こっちへ来るんだ 868 01:24:00,154 --> 01:24:04,158 無体な そればかりは何とぞ… 869 01:24:04,158 --> 01:24:06,160 (治郎三)ええい じれってえ 870 01:24:06,160 --> 01:24:09,163 生娘でもあんめえし 大概にしろい! 871 01:24:09,163 --> 01:24:11,165 俺は 気が短えんだ 872 01:24:11,165 --> 01:24:14,168 あなた あなたー! 873 01:24:14,168 --> 01:24:17,171 (信之丞)奈美江を放せ 奈美江! 奈美江! 874 01:24:17,171 --> 01:24:21,175 (治郎三)やかましい! この上 四の五の抜かすなら➡ 875 01:24:21,175 --> 01:24:24,178 2人そろって ぶち殺すぞ! 876 01:24:24,178 --> 01:24:27,181 <見て見ぬ振りをしようとした 平三郎だったが➡ 877 01:24:27,181 --> 01:24:29,183 あまりの非道に…> 878 01:24:29,183 --> 01:24:32,186 親分! お待ちくだされ 親分! 879 01:24:32,186 --> 01:24:37,191 (治郎三)ええ? しばらく しばらくお待ちを 880 01:24:37,191 --> 01:24:39,193 ハアッ 881 01:24:39,193 --> 01:24:41,195 (治郎三)なんだってんだい? 久利富さん 882 01:24:41,195 --> 01:24:43,195 実はな 親分… 883 01:24:50,204 --> 01:24:53,207 (治郎三)そうでしたか 884 01:24:53,207 --> 01:24:55,209 けどねえ… 885 01:24:55,209 --> 01:24:57,209 せっかくだが… 886 01:25:00,147 --> 01:25:05,152 (治郎三)これは あっしの病でね 887 01:25:05,152 --> 01:25:10,157 でもござりましょうが 親分 お情けあらば ここは何とぞ! 888 01:25:10,157 --> 01:25:12,157 (治郎三)できねえな 889 01:25:14,161 --> 01:25:17,161 この女だけは… 890 01:25:19,166 --> 01:25:23,166 だがのう 親分 891 01:25:34,181 --> 01:25:39,186 このとおりでござる どうか どうか拙者に免じて 892 01:25:39,186 --> 01:25:41,186 (治郎三)何を! 893 01:25:49,196 --> 01:25:52,199 (治郎三) 差し出口は よしてもらいてえな 894 01:25:52,199 --> 01:25:54,201 すっこんでろい 895 01:25:54,201 --> 01:25:56,203 親分… 896 01:25:56,203 --> 01:25:58,203 親分! 897 01:26:03,144 --> 01:26:05,146 (治郎三)えーい! 898 01:26:05,146 --> 01:26:07,146 いくら言ったって… 899 01:26:09,150 --> 01:26:12,153 そこを曲げて… 900 01:26:12,153 --> 01:26:14,155 このとおりでござる! 901 01:26:14,155 --> 01:26:16,157 (治郎三)しつけえぞ! 902 01:26:16,157 --> 01:26:18,159 親分! 903 01:26:18,159 --> 01:26:20,159 (治郎三)何をしやがる! 904 01:26:29,170 --> 01:26:31,170 (治郎三)おうともよ 905 01:26:33,174 --> 01:26:39,174 これほどまでに頼んでも… 906 01:26:52,193 --> 01:26:54,193 (治郎三)ほざきやがって 907 01:27:02,136 --> 01:27:04,136 いいや 908 01:27:12,146 --> 01:27:15,149 貴様らの悪行も これまで 909 01:27:15,149 --> 01:27:18,152 成敗致す! 910 01:27:18,152 --> 01:27:21,155 (治郎三)しゃらくせえ! 野郎ども やっちまえ! 911 01:27:21,155 --> 01:27:23,157 (子分)んっ! 912 01:27:23,157 --> 01:27:25,159 たわけめ 913 01:27:25,159 --> 01:27:28,162 うぬらに 俺がやられると思うてか! 914 01:27:28,162 --> 01:27:32,166 <眠れる獅子が 目を覚ましたかのごとく➡ 915 01:27:32,166 --> 01:27:36,170 今 ここに人間の良心を取り戻した 久利富平三郎> 916 01:27:36,170 --> 01:27:40,174 <勇憤天を突き 地に落して鳴動す> 917 01:27:40,174 --> 01:27:43,177 <偽善の皮をかぶり 世を欺く➡ 918 01:27:43,177 --> 01:27:47,181 悪逆非道の治郎三一家に対し 破邪顕正!> 919 01:27:47,181 --> 01:27:52,186 <天誅の刃は振り下ろされた> 920 01:27:52,186 --> 01:27:54,188 治郎三 921 01:27:54,188 --> 01:27:56,190 覚悟! 922 01:27:56,190 --> 01:27:59,126 (力み声) 923 01:27:59,126 --> 01:28:02,129 (治郎三のうめき声) 924 01:28:02,129 --> 01:28:06,133 (信之丞)久利富殿… かたじけない 925 01:28:06,133 --> 01:28:10,137 礼など要らぬ さあ 早くお逃げなさい! 926 01:28:10,137 --> 01:28:16,143 <夫婦を助け 平三郎 治郎三宅をあとにする> 927 01:28:16,143 --> 01:28:19,146 (子分)逃がさねえぞ! 野郎! 928 01:28:19,146 --> 01:28:21,148 寄るな 929 01:28:21,148 --> 01:28:25,152 寄るな ウジ虫ども 寄らば 斬るぞ! 930 01:28:25,152 --> 01:28:27,154 (子分)うわっ! 931 01:28:27,154 --> 01:28:32,159 <早くも騒ぎを聞きつけた 捕手 役人の群れが> 932 01:28:32,159 --> 01:28:34,161 (役人)うむ こやつは… 933 01:28:34,161 --> 01:28:36,161 お尋ね者! 934 01:28:41,168 --> 01:28:45,172 (捕手)御用! 御用御用! 平三郎 御用だ! 935 01:28:45,172 --> 01:28:51,178 んー 邪魔を致すな のけい ええい のかぬか! 936 01:28:51,178 --> 01:28:54,181 奈美江殿! ご亭主! 937 01:28:54,181 --> 01:28:57,181 この間に早く お逃げなさい! 938 01:29:04,124 --> 01:29:10,130 <夜の静寂を打ち破り 半鐘乱打 御用の声> 939 01:29:10,130 --> 01:29:15,135 <町の隅々にまで轟いて…> 940 01:29:15,135 --> 01:29:18,138 (男性)おい どうしたってんだい ええ? 941 01:29:18,138 --> 01:29:21,141 こんな夜更けに半鐘たあ スリバンだ 942 01:29:21,141 --> 01:29:23,143 (男性)火事か? 火元は近えぞ? 943 01:29:23,143 --> 01:29:25,145 (男性)どうしたってんだい ええ? 944 01:29:25,145 --> 01:29:27,147 何? 火事じゃねえ? 945 01:29:27,147 --> 01:29:29,149 無頼漢? えっ 946 01:29:29,149 --> 01:29:32,152 じゃあ あの久利富平三郎が 出やがったか? 947 01:29:32,152 --> 01:29:34,154 (男性)おーい 大変だ 948 01:29:34,154 --> 01:29:39,154 無頼漢の久利富平三郎が 現れたぞーい 949 01:29:41,161 --> 01:29:44,161 (男性)どこだ? 無頼漢はどこだ! 950 01:29:46,166 --> 01:29:49,169 (捕手)御用! 御用御用 御用だ 951 01:29:49,169 --> 01:29:51,171 (男性)うわーっ 952 01:29:51,171 --> 01:29:54,174 (捕手)刀を捨てろ! 平三郎 953 01:29:54,174 --> 01:29:57,111 おとなしく お縄を頂戴致せ 954 01:29:57,111 --> 01:30:00,111 待てーい! 955 01:30:06,120 --> 01:30:12,126 <やりどころなき 男心のゆくところ> 956 01:30:12,126 --> 01:30:17,126 <やがて反逆の徒と なりぬべきかな> 957 01:30:19,133 --> 01:30:21,135 久利富様 958 01:30:21,135 --> 01:30:23,135 (信之丞)平三郎殿! 959 01:30:25,139 --> 01:30:29,143 (捕手)御用だ! おっ こやつ まだ手向かうか 960 01:30:29,143 --> 01:30:31,143 おのれ 待てい! 961 01:30:42,156 --> 01:30:46,160 <御用ちょうちん十手の群れが 情け無用と彼を追う> 962 01:30:46,160 --> 01:30:51,165 <月に叢雲 花に風 所詮 浮世の荒波に➡ 963 01:30:51,165 --> 01:30:57,104 もまれ もまれて流さるる 人の運命の狂おしさ> 964 01:30:57,104 --> 01:31:00,107 <それでもなお 彼は走り続けた> 965 01:31:00,107 --> 01:31:05,112 <自由を求めて 世間のあらゆる迫害から➡ 966 01:31:05,112 --> 01:31:09,116 不条理から逃れるために> 967 01:31:09,116 --> 01:31:15,122 のけい のけのけ のけい! のいてくれ! 968 01:31:15,122 --> 01:31:28,135 ♬~ 969 01:31:28,135 --> 01:31:31,138 (捕手)平三郎 観念を致せ! 970 01:31:31,138 --> 01:31:34,141 この上 まだ罪を重ねるか 971 01:31:34,141 --> 01:31:36,143 無頼漢! 972 01:31:36,143 --> 01:31:38,145 寄るな 973 01:31:38,145 --> 01:31:43,150 ええい 寄るな 寄るでない! 974 01:31:43,150 --> 01:31:48,155 寄らば 斬るぞ! 975 01:31:48,155 --> 01:31:53,160 <血煙上がる阿修羅のちまたに やがて また我を失い➡ 976 01:31:53,160 --> 01:31:58,165 憤怒の形相すさまじく 孤独の刃を振るい続ける> 977 01:31:58,165 --> 01:32:02,169 <呪詛と厭世 絶望と狂気> 978 01:32:02,169 --> 01:32:06,173 <涙流して荒れ狂う 平三郎は ただ一人> 979 01:32:06,173 --> 01:32:11,178 <手負いの雄呂血が ただ一匹> 980 01:32:11,178 --> 01:32:31,198 ♬~ 981 01:32:31,198 --> 01:32:51,218 ♬~ 982 01:32:51,218 --> 01:33:11,171 ♬~ 983 01:33:11,171 --> 01:33:31,191 ♬~ 984 01:33:31,191 --> 01:33:51,211 ♬~ 985 01:33:51,211 --> 01:34:11,165 ♬~ 986 01:34:11,165 --> 01:34:31,185 ♬~ 987 01:34:31,185 --> 01:34:51,205 ♬~ 988 01:34:51,205 --> 01:35:11,158 ♬~ 989 01:35:11,158 --> 01:35:31,178 ♬~ 990 01:35:31,178 --> 01:35:51,198 ♬~ 991 01:35:51,198 --> 01:36:11,151 ♬~ 992 01:36:11,151 --> 01:36:21,161 ♬~ 993 01:36:21,161 --> 01:36:26,166 <乱刃乱闘の時は過ぎ➡ 994 01:36:26,166 --> 01:36:32,172 我と我が身を守らんがため 無我夢中> 995 01:36:32,172 --> 01:36:39,172 <襲い来る捕手たちを ただひたすらに討ち払った平三郎> 996 01:36:41,181 --> 01:36:50,190 <だが もはや五体は 綿のごとく疲れ果て 気息奄々> 997 01:36:50,190 --> 01:36:54,194 寄るな… 998 01:36:54,194 --> 01:36:57,130 寄るな… 999 01:36:57,130 --> 01:37:01,130 寄らば 斬る 1000 01:37:03,136 --> 01:37:08,141 寄らば 斬るぞ 1001 01:37:08,141 --> 01:37:11,144 あっ… 1002 01:37:11,144 --> 01:37:16,149 まだ… まだ来るか! 1003 01:37:16,149 --> 01:37:23,156 うぬらは まだ この上 俺を苦しめるのか 1004 01:37:23,156 --> 01:37:25,156 (捕手)御用だ! 1005 01:37:27,160 --> 01:37:30,160 のけい… 1006 01:37:32,165 --> 01:37:35,165 のけい! 1007 01:37:37,170 --> 01:37:40,170 寄るな… 1008 01:37:42,175 --> 01:37:48,175 寄らば 斬るぞ 1009 01:37:51,184 --> 01:37:56,189 寄らば 斬る! 1010 01:37:56,189 --> 01:37:58,125 ハアッ 1011 01:37:58,125 --> 01:38:07,134 <我に返れば その足元には 無残に転がる捕手の骸> 1012 01:38:07,134 --> 01:38:10,137 は… 1013 01:38:10,137 --> 01:38:13,140 は… 放せ 1014 01:38:13,140 --> 01:38:15,142 放してくれ! 1015 01:38:15,142 --> 01:38:19,146 お… 俺は斬った 1016 01:38:19,146 --> 01:38:21,148 俺は… 1017 01:38:21,148 --> 01:38:28,155 俺は 人を殺してしまった! 1018 01:38:28,155 --> 01:38:32,155 (捕手)平三郎 御用だ! 1019 01:38:37,164 --> 01:38:43,164 <ついに平三郎は捕らえられた> 1020 01:38:48,175 --> 01:38:56,175 (役人)無頼漢 久利富平三郎 とうとう召し捕ったぞ! 1021 01:38:58,118 --> 01:39:04,124 <音吐朗々 勝ちどきの声 上がる> 1022 01:39:04,124 --> 01:39:07,124 (役人)引っ立てーい! 1023 01:39:12,132 --> 01:39:19,139 <無残に引きずられてゆく平三郎> 1024 01:39:19,139 --> 01:39:24,144 <町の者を震かんさせた牢破り➡ 1025 01:39:24,144 --> 01:39:29,149 人格者 赤城の治郎三殺しの 憎い凶賊が➡ 1026 01:39:29,149 --> 01:39:37,157 とうとう お縄になったかと 何も知らぬ人々は安どした> 1027 01:39:37,157 --> 01:39:39,159 <そして…> 1028 01:39:39,159 --> 01:39:43,163 (男性) やれやれ ようやく捕まったな 1029 01:39:43,163 --> 01:39:46,166 恐ろしい野郎だよ 本当に 1030 01:39:46,166 --> 01:39:48,168 人殺し! 1031 01:39:48,168 --> 01:39:52,172 (男性) 治郎三親分も お気の毒ですねえ 1032 01:39:52,172 --> 01:39:57,110 あんな極悪人に殺されたんじゃ 浮かばれませんよ 1033 01:39:57,110 --> 01:40:02,115 お役人様 必ず極刑にしてくださいましよ! 1034 01:40:02,115 --> 01:40:07,120 (男性)無頼漢! 地獄へ落ちろい! 1035 01:40:07,120 --> 01:40:14,127 <雷雨のごとく浴びせられる 悪口 雑言 罵り 嘲り> 1036 01:40:14,127 --> 01:40:19,132 <しかし もう 彼には何も聞こえなかった> 1037 01:40:19,132 --> 01:40:25,138 <行き先定まる覚悟の道> 1038 01:40:25,138 --> 01:40:32,145 俺が この世でなすことは もう何一つない 1039 01:40:32,145 --> 01:40:36,149 俺の誠を知ろうとしない 者たちの中では➡ 1040 01:40:36,149 --> 01:40:43,149 俺が生き長らえる意味など どこにもないのだ 1041 01:40:45,158 --> 01:40:49,162 お千代… 1042 01:40:49,162 --> 01:40:53,162 そうだろう… 1043 01:40:56,169 --> 01:41:01,107 <正しきを信じ 義を重んじ➡ 1044 01:41:01,107 --> 01:41:07,113 善良高潔を貫かんとした若き武士 久利富平三郎の生涯は➡ 1045 01:41:07,113 --> 01:41:13,119 ついに報われることのないままに 幕を下ろそうとしていた> 1046 01:41:13,119 --> 01:41:18,124 <群衆にとって 彼は どこまでも恐ろしい殺人鬼> 1047 01:41:18,124 --> 01:41:23,129 <悪逆非道の 無頼漢にすぎなかった> 1048 01:41:23,129 --> 01:41:26,132 <幸い少なき後半生> 1049 01:41:26,132 --> 01:41:30,132 <無常の風が吹くばかり> 1050 01:41:53,159 --> 01:41:56,162 <世人 無頼漢と称する者➡ 1051 01:41:56,162 --> 01:42:00,166 必ずしも 誠の無頼漢のみにあらず> 1052 01:42:00,166 --> 01:42:03,169 <善良高潔なる 人格者と称せらるる者➡ 1053 01:42:03,169 --> 01:42:07,173 必ずしも 誠の善人のみにあらず> 1054 01:42:07,173 --> 01:42:13,179 <表面善事の仮面をかぶり 裏面に奸悪を行う大偽善者> 1055 01:42:13,179 --> 01:42:19,185 <また 我らの世界に 数多く生息することを知れ> 1056 01:42:19,185 --> 01:42:39,205 ♬~ 1057 01:42:39,205 --> 01:42:46,212 ♬~ 1058 01:42:46,212 --> 01:42:54,212 ♬~ 1059 01:49:05,324 --> 01:49:06,192 1060 01:49:06,192 --> 01:49:09,195 (小林)皆さん お元気ですか 小林綾子です 1061 01:49:09,195 --> 01:49:15,201 日本には 古くから 神社仏閣に伝わる行事や飾り物 1062 01:49:15,201 --> 01:49:20,206 季節によって味わう旬な食べ物や その土地に伝わる風習など 1063 01:49:20,206 --> 01:49:26,212 幸運を呼び込むために縁起を担ぐ さまざまな物や行いがあります 1064 01:49:26,212 --> 01:49:31,217 皆さんの周りにも きっとある 幸運を呼ぶ縁起物 1065 01:49:31,217 --> 01:49:35,221 この番組では そんな縁起物を ご紹介していきます 1066 01:49:35,221 --> 01:49:38,221 さて 今日の縁起物は? 1067 01:49:50,236 --> 01:49:55,241 香りと色で 春を感じさせてくれる桜餅 1068 01:49:55,241 --> 01:49:59,245 桜の葉で餅を包む工夫は 江戸時代に始まったそうです 1069 01:49:59,245 --> 01:50:03,249 ちなみに 桜餅は 2種類あることをご存じですか 1070 01:50:03,249 --> 01:50:07,186 関東で多いといわれている桜餅は 1071 01:50:07,186 --> 01:50:12,191 小麦粉などの生地を焼いた皮で あんを巻いたクレープ状のお餅 1072 01:50:12,191 --> 01:50:14,193 一方 関西の桜餅は➡ 1073 01:50:14,193 --> 01:50:19,198 道明寺粉で皮を作り あんを包んだ饅頭状のお餅で➡ 1074 01:50:19,198 --> 01:50:23,202 道明寺粉の 粒々した食感が特徴です 1075 01:50:23,202 --> 01:50:25,204 桜餅といえば➡ 1076 01:50:25,204 --> 01:50:30,209 餅を包んでいる塩漬けの桜の葉の 存在が欠かせません 1077 01:50:30,209 --> 01:50:34,213 正式には 葉を取って食べるのが 推奨されているそうです 1078 01:50:34,213 --> 01:50:37,216 もちろん 食べても 問題はないそうですよ 1079 01:50:37,216 --> 01:50:40,216 私は 時々 食べちゃうかな 1080 01:50:45,224 --> 01:50:49,228 突然ですが 皆さんは 竹の子 お好きですか 1081 01:50:49,228 --> 01:50:52,231 歯ごたえがよく 食べ飽きない風味で➡ 1082 01:50:52,231 --> 01:50:55,234 私は もう大好きです 1083 01:50:55,234 --> 01:50:58,237 昔から 出世運がアップする 縁起のよい食べ物として➡ 1084 01:50:58,237 --> 01:51:00,239 愛されてきました 1085 01:51:00,239 --> 01:51:04,243 竹の子は すくすくと まっすぐに 太陽に向かって伸びるため➡ 1086 01:51:04,243 --> 01:51:09,182 神さまのご加護が得られやすいと 考えられていました 1087 01:51:09,182 --> 01:51:12,185 また竹の子は 成長が早いため➡ 1088 01:51:12,185 --> 01:51:15,188 竹の子のように 早く成長してほしいと➡ 1089 01:51:15,188 --> 01:51:18,191 親が子供に 竹の子を食べさせたそうです 1090 01:51:18,191 --> 01:51:23,196 そのほかにも めったに 病気にならない 子だくさんなど 1091 01:51:23,196 --> 01:51:26,199 さまざまな効果があると 信じられていました 1092 01:51:26,199 --> 01:51:29,202 おいしくて こんなに たくさんのご利益があるなら➡ 1093 01:51:29,202 --> 01:51:31,204 食べないとですよね 1094 01:51:31,204 --> 01:51:36,204 私は 竹の子ご飯が好きかなぁ ん~… 1095 01:51:41,214 --> 01:51:45,218 突然ですが 皆さんは お茶はお好きですか 1096 01:51:45,218 --> 01:51:52,225 ♪ 夏も近づく八十八夜 1097 01:51:52,225 --> 01:51:55,228 この歌 一度は 聞いたことがありますよね 1098 01:51:55,228 --> 01:52:00,228 『茶摘み』 でも 「八十八夜」とは 何のことでしょうか 1099 01:52:05,171 --> 01:52:09,175 つまり 5月の初めごろのことをいいます 1100 01:52:09,175 --> 01:52:14,180 節目の日とされる八十八夜は 末広がりの八が2つあることから 1101 01:52:14,180 --> 01:52:16,182 縁起がよいとされてきました 1102 01:52:16,182 --> 01:52:19,185 そのため 八十八夜に摘み取られるお茶は➡ 1103 01:52:19,185 --> 01:52:22,188 不老長寿の縁起物として重宝され 1104 01:52:22,188 --> 01:52:28,194 その新茶を飲むと 1年を災いなく 過ごせるといわれています 1105 01:52:28,194 --> 01:52:32,198 また 「八十八夜の別れ霜」という 言葉があり➡ 1106 01:52:32,198 --> 01:52:36,202 八十八夜以降は 霜の心配がなくなるので➡ 1107 01:52:36,202 --> 01:52:40,206 農家では茶摘みや農作業を 始める時期でもありました 1108 01:52:40,206 --> 01:52:45,211 縁起もよく さわやかな香りと 甘みもある新茶を飲んで➡ 1109 01:52:45,211 --> 01:52:47,211 今年1年を元気に過ごしましょう 1110 01:52:52,218 --> 01:52:57,223 七月七日といえば 七夕の日ですよね 1111 01:52:57,223 --> 01:53:00,226 江戸時代には旧暦の七月七日は➡ 1112 01:53:00,226 --> 01:53:04,230 もうひとつの大切な仕事が あったそうなんですが… 1113 01:53:04,230 --> 01:53:07,166 それは 「井戸替え」です 1114 01:53:07,166 --> 01:53:10,169 夏に 疫病が 流行するのを防ぐために➡ 1115 01:53:10,169 --> 01:53:14,173 この時期に 井戸の中の掃除をしました 1116 01:53:14,173 --> 01:53:18,177 「井戸浚え」 「晒井戸」とも呼ばれ➡ 1117 01:53:18,177 --> 01:53:22,181 「つるつる」という落語や 歌舞伎にも登場するほど➡ 1118 01:53:22,181 --> 01:53:25,184 夏の風物詩でもあったようです 1119 01:53:25,184 --> 01:53:30,189 井戸の水を全て出して 井戸職人を中を掃除するのですが 1120 01:53:30,189 --> 01:53:36,195 深~い井戸の中に入っての作業は 時に危険を伴ったそうです 1121 01:53:36,195 --> 01:53:39,198 一方 水をくむときに➡ 1122 01:53:39,198 --> 01:53:42,201 井戸に落としてしまった 髪飾りなども見つかるので➡ 1123 01:53:42,201 --> 01:53:46,201 その日を楽しみに していた女性もいたそうですよ 1124 01:53:51,210 --> 01:53:56,215 江戸時代から続く 夏の風物詩のひとつ 花火 1125 01:53:56,215 --> 01:54:02,221 中でも 線香花火は 古くから 日本人に愛されていますが 1126 01:54:02,221 --> 01:54:05,157 実は 国産の線香花火の製造は➡ 1127 01:54:05,157 --> 01:54:08,160 一度 途絶えてしまったそうなんですが 1128 01:54:08,160 --> 01:54:10,162 職人さんの手によって➡ 1129 01:54:10,162 --> 01:54:14,166 今は 純国産の線香花火を 楽しめるようになりました 1130 01:54:14,166 --> 01:54:18,170 1本1本 手作業で作られているため➡ 1131 01:54:18,170 --> 01:54:21,173 表情や持続時間も 微妙に異なります 1132 01:54:21,173 --> 01:54:25,173 また 純国産線香花火の 燃え方は… 1133 01:54:33,185 --> 01:54:36,188 …と変化していきます 1134 01:54:36,188 --> 01:54:38,190 この美しい変化は➡ 1135 01:54:38,190 --> 01:54:42,194 はかなく消えゆく 人の一生が表現されているそうで 1136 01:54:42,194 --> 01:54:46,194 この辺りは日本人ならではの 感性ですよね 1137 01:54:51,203 --> 01:54:56,208 皆さんは 9月9日の 「重陽の節句」をご存じでしょうか 1138 01:54:56,208 --> 01:55:00,212 大人の雛祭りとも いわれていますが… 1139 01:55:00,212 --> 01:55:03,215 重陽は 菊の節句として伝わり➡ 1140 01:55:03,215 --> 01:55:07,153 菊酒や 食用菊を 盛り込んだ料理・和菓子をたしなみ 1141 01:55:07,153 --> 01:55:09,155 健康を祈願します 1142 01:55:09,155 --> 01:55:15,161 また 行事として 「後の雛」という 風習も江戸時代から生まれ➡ 1143 01:55:15,161 --> 01:55:20,161 3月に飾った雛人形を9月に もう一度 出すことで… 1144 01:55:26,172 --> 01:55:28,174 桃の節句と違い➡ 1145 01:55:28,174 --> 01:55:33,179 重陽は 菊が主役の節句なので 少し落ち着い雰囲気 1146 01:55:33,179 --> 01:55:36,182 そして お酒に菊の花びらを浮かべて➡ 1147 01:55:36,182 --> 01:55:39,185 長寿を願い飲む菊酒が 定番だそうで➡ 1148 01:55:39,185 --> 01:55:44,185 正に大人の雛祭りといえますね 1149 01:55:49,195 --> 01:55:53,199 突然ですが おはぎはお好きですか 1150 01:55:53,199 --> 01:55:56,202 では ぼたもちは いかがでしょう? 1151 01:55:56,202 --> 01:56:01,207 うん? おはぎと ぼたもちって 似ていますよね 1152 01:56:01,207 --> 01:56:04,210 違いってあるんでしょうか… 1153 01:56:04,210 --> 01:56:07,146 おはぎと ぼたもち その違いは➡ 1154 01:56:07,146 --> 01:56:10,149 作られる季節によって 名前を変えていたそうです 1155 01:56:10,149 --> 01:56:14,153 春のお彼岸に食べるのが 「ぼたもち」 1156 01:56:14,153 --> 01:56:17,156 牡丹の咲く時期に 食べられたことから➡ 1157 01:56:17,156 --> 01:56:21,160 「牡丹餅」と呼ばれていたのが 「ぼたもち」になったそうです 1158 01:56:21,160 --> 01:56:25,164 一方 秋のお彼岸に 食べるのが 「おはぎ」です 1159 01:56:25,164 --> 01:56:28,167 その由来は もちろん 萩です 1160 01:56:28,167 --> 01:56:33,172 おはぎに使用する粒あんを 秋に咲く萩の花に見立て➡ 1161 01:56:33,172 --> 01:56:35,174 こう呼ばれるようになりました 1162 01:56:35,174 --> 01:56:38,177 同じものでも 季節によって 呼び方を変えるって➡ 1163 01:56:38,177 --> 01:56:40,177 風流ですよねえ 1164 01:56:46,185 --> 01:56:51,190 秋の味覚の最高峰とも言えるのが 松茸ではないでしょうか 1165 01:56:51,190 --> 01:56:55,194 ウ~ン! このいい香りが たまりませ~ん! 1166 01:56:55,194 --> 01:56:58,197 日本では 昔から親しまれ➡ 1167 01:56:58,197 --> 01:57:02,201 『日本書紀』に 庶民から 天皇への献上品として➡ 1168 01:57:02,201 --> 01:57:06,138 栗・鮎 そして 松茸を送ったそうです 1169 01:57:06,138 --> 01:57:11,143 また 『万葉集』では 「秋の香りのよさ」と詠まれ➡ 1170 01:57:11,143 --> 01:57:14,146 吉田兼好は 『徒然草』の中で➡ 1171 01:57:14,146 --> 01:57:18,150 3大珍味の ひとつとして挙げています 1172 01:57:18,150 --> 01:57:21,153 その後も 松尾芭蕉をはじめとする➡ 1173 01:57:21,153 --> 01:57:24,156 江戸時代の俳人たちにも 詠まれてきました 1174 01:57:24,156 --> 01:57:28,160 江戸時代では 庶民の食べ物だったそうで 1175 01:57:28,160 --> 01:57:33,165 お吸い物や焼き物など さまざまな 料理で愛されていました 1176 01:57:33,165 --> 01:57:38,165 ちなみに 私は 松茸の土瓶蒸しが大好きで~す 1177 01:57:43,175 --> 01:57:48,180 皆さんは 冬の訪れの風物詩 亥の子餅って ご存じですか 1178 01:57:48,180 --> 01:57:51,183 大変 ご利益もあり➡ 1179 01:57:51,183 --> 01:57:54,186 紫式部の 『源氏物語』にも 登場するそうですが 1180 01:57:54,186 --> 01:57:59,191 いのししの子供・ウリ坊の形に かたどった和菓子 1181 01:57:59,191 --> 01:58:03,195 亥の月の 亥の日 亥の刻に➡ 1182 01:58:03,195 --> 01:58:06,131 亥の子餅を食べると 無病息災となり 1183 01:58:06,131 --> 01:58:10,135 また 子供をたくさん産む いのししにあやかって➡ 1184 01:58:10,135 --> 01:58:13,138 子孫繁栄を願う意味が あるそうです 1185 01:58:13,138 --> 01:58:17,142 平安時代に 中国から日本に伝わり 1186 01:58:17,142 --> 01:58:20,145 亥の子祝いとして 貴族の間に広まり➡ 1187 01:58:20,145 --> 01:58:24,149 紫式部の 『源氏物語』に 登場するほど➡ 1188 01:58:24,149 --> 01:58:26,151 身近なイベントだったようです 1189 01:58:26,151 --> 01:58:30,155 江戸時代になると 亥の子祝いの日に➡ 1190 01:58:30,155 --> 01:58:34,159 亥の子餅を食べ いろりや こたつなどを使い始めると➡ 1191 01:58:34,159 --> 01:58:38,163 火事が起きないという風習が 広まりました 1192 01:58:38,163 --> 01:58:40,165 いかがでしたでしょうか 1193 01:58:40,165 --> 01:58:45,170 まだまだ 私たちの知らないものや 意外なものにも➡ 1194 01:58:45,170 --> 01:58:49,174 さまざまな縁起担ぎの意味が 込められているようですね 1195 01:58:49,174 --> 01:58:52,177 身近にある そんな縁起物 1196 01:58:52,177 --> 01:58:55,180 皆さんも お店や神社で探してみたり 1197 01:58:55,180 --> 01:58:59,184 幸せを呼び込んでみては いかがでしょうか 1198 01:58:59,184 --> 01:59:03,184 それでは またお会いしましょう 小林綾子でした