1 00:02:50,139 --> 00:03:10,159 ♬~ 2 00:03:10,159 --> 00:03:20,169 ♬~ 3 00:03:20,169 --> 00:03:24,173 (八重)《私は かわいそうな子》➡ 4 00:03:24,173 --> 00:03:28,110 《お前は かわいそうな花》 5 00:03:28,110 --> 00:03:48,130 ♬~ 6 00:03:48,130 --> 00:04:00,142 ♬~ 7 00:04:00,142 --> 00:04:02,144 (新一郎)失礼しました 8 00:04:02,144 --> 00:04:07,149 あまり見事に描きになるんで つい ここで拝見していたんです 9 00:04:07,149 --> 00:04:11,153 (八重) お恥ずかしゅうございますわ 10 00:04:11,153 --> 00:04:14,156 珍しい描きようを なさっていたようですが➡ 11 00:04:14,156 --> 00:04:17,159 誰に付いて 学んでいらっしゃるんですか 12 00:04:17,159 --> 00:04:21,163 いえ 私が 好きで勝手に描いているだけで… 13 00:04:21,163 --> 00:04:23,165 全くの我流でございます 14 00:04:23,165 --> 00:04:28,103 ほう さざんかの花が持っている 気品のようなものが➡ 15 00:04:28,103 --> 00:04:32,107 あなたの絵には よく出ていると 感心していましたが 16 00:04:32,107 --> 00:04:36,111 まあ もったいない お褒めの言葉を頂いて➡ 17 00:04:36,111 --> 00:04:38,111 どういたしましょう 18 00:04:40,115 --> 00:04:43,118 4~5日前 江戸から戻ってきたばかりで➡ 19 00:04:43,118 --> 00:04:48,118 3年ぶりに ここの さざんかを 見に来ていたんです 20 00:04:51,126 --> 00:04:55,126 お邪魔をしてしまいました では 21 00:04:58,133 --> 00:05:18,153 ♬~ 22 00:05:18,153 --> 00:05:26,161 ♬~ 23 00:05:26,161 --> 00:05:31,100 (三味線) 24 00:05:31,100 --> 00:05:35,104 ♬~ 25 00:05:35,104 --> 00:05:42,111 (花丸)♬ 君が情けの➡ 26 00:05:42,111 --> 00:05:50,119 ♬ 仮寝の床の➡ 27 00:05:50,119 --> 00:05:59,128 ♬ 枕 片敷く➡ 28 00:05:59,128 --> 00:06:15,128 ♬ 夜もすがら~ 29 00:06:17,146 --> 00:06:20,149 (拍手) ハァ 30 00:06:20,149 --> 00:06:24,153 (宗石)いや~ 八重次の舞姿は いつ見ても ほれぼれする 31 00:06:24,153 --> 00:06:28,090 何か御褒美をあげなくてはね 32 00:06:28,090 --> 00:06:30,092 うん ハハハ… 恐れ入ります 33 00:06:30,092 --> 00:06:34,096 (登与松)旦那様 私にも お流れを 34 00:06:34,096 --> 00:06:36,098 (宗石)うん ああ いいだろう (花丸)あら 35 00:06:36,098 --> 00:06:38,098 (宗石)さあ やりなさい うん 36 00:06:40,102 --> 00:06:42,102 (宗石)うん (登与松)フフッ 37 00:06:46,108 --> 00:06:49,111 (お玉)越梅の旦那様 (宗石)何だ 38 00:06:49,111 --> 00:06:52,114 誠に申し訳ございませんが➡ 39 00:06:52,114 --> 00:06:55,117 あるじから ほんの少し 八重次をお貸し願えないかと➡ 40 00:06:55,117 --> 00:06:58,120 申しつかってまいりました (宗石)なぜだ 41 00:06:58,120 --> 00:07:01,123 あちらのお座敷の井村の若様が➡ 42 00:07:01,123 --> 00:07:04,126 是非 八重次姉さんをと 聞かないんでございます 43 00:07:04,126 --> 00:07:08,130 井村の若様って 御中老の井村様かい 44 00:07:08,130 --> 00:07:11,133 はい 45 00:07:11,133 --> 00:07:13,135 断ってもいいかな 46 00:07:13,135 --> 00:07:16,138 (花丸)あの方は お酒の癖が ひどく悪くて… 47 00:07:16,138 --> 00:07:19,141 また荒れてらっしゃるのよ きっと 48 00:07:19,141 --> 00:07:21,143 八重次が大のお気に入りですもの 49 00:07:21,143 --> 00:07:24,146 お前さんでないと 治まりゃしませんよ 50 00:07:24,146 --> 00:07:27,082 フッ ほらほら あの困った顔ったら 51 00:07:27,082 --> 00:07:29,084 (花丸・登与松)ハハハ… (宗石)これこれ これこれ 52 00:07:29,084 --> 00:07:32,087 これ 意地悪を言うもんじゃない 53 00:07:32,087 --> 00:07:35,090 八重次 いいから行きなさい 54 00:07:35,090 --> 00:07:37,090 申し訳ございません 55 00:07:41,096 --> 00:07:43,098 八重次でございます 56 00:07:43,098 --> 00:07:47,098 本日は お声を掛けていただき ありがとう存じます 57 00:07:55,110 --> 00:07:58,110 (井村)おい こっちへ来い 八重次 はーい 58 00:08:06,121 --> 00:08:08,121 おひとつ どうぞ 59 00:08:18,133 --> 00:08:21,136 (井村)聞けば 八重次➡ 60 00:08:21,136 --> 00:08:27,075 お前 漢学をやるんだってな 大層な見識だ➡ 61 00:08:27,075 --> 00:08:30,078 一体 どういうつもりか 聞かしてもらおうじゃないか 62 00:08:30,078 --> 00:08:33,081 ホホホ… 御冗談でございましょ 井村様 63 00:08:33,081 --> 00:08:35,083 おからかいになっちゃ嫌ですよ 64 00:08:35,083 --> 00:08:40,088 そんなことより さあさ 楽しく飲んでくださいましな 65 00:08:40,088 --> 00:08:43,091 (井村) 芸者が漢学をやる 歌を詠む➡ 66 00:08:43,091 --> 00:08:47,095 おまけに 絵を描くというから 生意気だ!➡ 67 00:08:47,095 --> 00:08:53,101 どんな魂胆があってのことだ 玉の輿でも狙ってのことか 68 00:08:53,101 --> 00:08:57,105 まあ うれしい 井村様 もらってくださるの? 69 00:08:57,105 --> 00:09:03,111 それじゃ 固めの杯よ さっ 受けてくださいますね 70 00:09:03,111 --> 00:09:06,114 (井村)よーし 受けてやろう➡ 71 00:09:06,114 --> 00:09:12,120 だがな 肴に望みがあるぞ 八重次 お前の三味線を持ってこい 72 00:09:12,120 --> 00:09:14,122 ああ よろしゅうございますね 73 00:09:14,122 --> 00:09:17,125 それじゃ 三味線で ぱーっと にぎやかにやりましょう 74 00:09:17,125 --> 00:09:20,125 (井村)おーい 持ってこい (芸者)はい 75 00:09:29,071 --> 00:09:31,073 (芸者)はい 八重次さん ええ 76 00:09:31,073 --> 00:09:33,075 あっ (井村)俺に貸せ 77 00:09:33,075 --> 00:09:35,077 乱暴なさらないでくださいまし 井村様 78 00:09:35,077 --> 00:09:37,079 それは 亡くなった おかみさんから頂いた➡ 79 00:09:37,079 --> 00:09:41,083 私の大事な宝物なんです (井村)つべこべ言うな 80 00:09:41,083 --> 00:09:45,083 井村様 本当に乱暴は… 81 00:09:47,089 --> 00:09:51,093 (井村)いいか この ぽんぽこ三味線の➡ 82 00:09:51,093 --> 00:09:54,096 一番 いい音を聞かしてやろうと 言ってるんだ ハハハ… 83 00:09:54,096 --> 00:09:58,096 みんな! よく聞いてろよ 84 00:10:01,103 --> 00:10:03,105 (井村)ハハハ… 85 00:10:03,105 --> 00:10:08,105 どうだ いい音だっただろう ハハハ… 86 00:10:13,115 --> 00:10:19,121 取っとけ もう少しは ましなのが買えるぞ 87 00:10:19,121 --> 00:10:21,121 結城! 88 00:10:24,126 --> 00:10:27,062 貴様 一体 何をたくらんでるんだ 89 00:10:27,062 --> 00:10:32,062 ここは江戸とは違うんだ 我々を甘く見るなよ 90 00:10:34,069 --> 00:10:38,073 (新一郎)やり過ぎるな 井村 お前 悪酔いをしたな➡ 91 00:10:38,073 --> 00:10:41,076 あっちへ行って 少し風に当たるといい➡ 92 00:10:41,076 --> 00:10:46,076 俺が連れてってやる さあ 立て 井村! 93 00:10:55,090 --> 00:10:57,090 すまなかったね 94 00:11:06,101 --> 00:11:08,101 《すまなかったね》 95 00:11:11,106 --> 00:11:17,112 《あのとき あの方は 私のことを 気付かれたのだろうか》 96 00:11:17,112 --> 00:11:22,117 《もし 私だと分かったとしたら➡ 97 00:11:22,117 --> 00:11:25,117 どんなふうに お思いになったのか》 98 00:11:33,061 --> 00:11:38,066 《そうよ お気が付かずにいたんだわ》 99 00:11:38,066 --> 00:11:41,069 《だって あまりに姿が変わっていたし➡ 100 00:11:41,069 --> 00:11:45,073 分かっていたら 何か おっしゃるはずだもの》 101 00:11:45,073 --> 00:11:49,077 《でも… でも…》 102 00:11:49,077 --> 00:11:56,077 《あの方は 御立派なお武家様 私とは違いすぎる》 103 00:12:01,089 --> 00:12:06,094 (三味線) 104 00:12:06,094 --> 00:12:10,098 ♬~ 105 00:12:10,098 --> 00:12:14,098 今日は 届け物があって来たんだ 106 00:12:19,107 --> 00:12:23,111 開けてみてごらん あ… はい 107 00:12:23,111 --> 00:12:28,116 (三味線) 108 00:12:28,116 --> 00:12:48,136 ♬~ 109 00:12:48,136 --> 00:12:50,136 ♬~ 110 00:12:52,140 --> 00:12:55,143 立派な お三味線 111 00:12:55,143 --> 00:12:57,143 出してみなさい 112 00:13:28,109 --> 00:13:34,115 私の母が使っていた物なんだ 芸事の好きな人でね➡ 113 00:13:34,115 --> 00:13:37,118 鼓だの笛だの いろいろ やっていたようだが➡ 114 00:13:37,118 --> 00:13:41,122 三味線が一番 物になったようだと 父が言っていた 115 00:13:41,122 --> 00:13:44,125 弾いてみて 気に入ったら 使ってくれ 116 00:13:44,125 --> 00:13:48,129 とんでもございません こんな立派なお道具➡ 117 00:13:48,129 --> 00:13:50,131 私などには もったいのうございます 118 00:13:50,131 --> 00:13:52,133 道具は使われてこそ生きる 119 00:13:52,133 --> 00:13:56,137 いえ 私などが お預かりいたしましては➡ 120 00:13:56,137 --> 00:13:58,139 宝の持ち腐れでございます 121 00:13:58,139 --> 00:14:02,139 自分から己を卑しめるような 言い方は 私は嫌いだ 122 00:14:04,145 --> 00:14:06,147 申し訳ございません 123 00:14:06,147 --> 00:14:13,147 でも そのお心遣いだけで 私は もう うれしゅうございます 124 00:14:15,156 --> 00:14:21,162 ここのところ さざんかを描きに来なかったね 125 00:14:21,162 --> 00:14:25,162 会えるかと思って 2~3度 行ってみたんだ 126 00:14:27,102 --> 00:14:31,106 あのときの娘が私だと… 127 00:14:31,106 --> 00:14:35,110 すぐに お気付きでございましたか 128 00:14:35,110 --> 00:14:39,114 井村が乱暴したとき分かった 129 00:14:39,114 --> 00:14:42,117 顔色が変わって目が据わったよ 130 00:14:42,117 --> 00:14:46,121 すぐに さざんかの娘だなと 気が付いた 131 00:14:46,121 --> 00:14:53,128 ぴんと張り詰めて絵を描いていた あのときの横顔と同じだった 132 00:14:53,128 --> 00:14:57,132 さぞ お蔑みなさいましたでしょ 133 00:14:57,132 --> 00:15:00,132 誰が何を蔑むのだ 134 00:15:04,139 --> 00:15:08,143 その三味線 弾いてごらん 135 00:15:08,143 --> 00:15:10,143 はい 136 00:15:20,155 --> 00:15:32,155 (三味線) 137 00:15:45,113 --> 00:15:50,118 (三味線) 138 00:15:50,118 --> 00:16:02,118 ♬~ 139 00:16:04,132 --> 00:16:08,136 ハァ… 駄目でございます 140 00:16:08,136 --> 00:16:12,140 これ以上は 息が切れてしまって 141 00:16:12,140 --> 00:16:15,143 聞いている方も 何だか くたびれるよ 142 00:16:15,143 --> 00:16:20,148 申し訳ございません これぐらいの物になりますと➡ 143 00:16:20,148 --> 00:16:23,151 相当の腕がなければ とても弾きこなせませんわ 144 00:16:23,151 --> 00:16:27,088 母の弾くのは 度々 聞いたけれど こんなことはなかったな 145 00:16:27,088 --> 00:16:29,090 それは お母様が お上手でいらしたからですわ 146 00:16:29,090 --> 00:16:33,094 お比べになる方が無理です 147 00:16:33,094 --> 00:16:36,097 あっ… ハハハ… 148 00:16:36,097 --> 00:16:39,100 ハハハ… フフフ… 149 00:16:39,100 --> 00:16:42,100 では 少し稽古をしなさい はい 150 00:16:44,105 --> 00:16:50,111 大切に… 大切に お預かりします 151 00:16:50,111 --> 00:16:54,115 ハハハ… 152 00:16:54,115 --> 00:16:59,120 (三味線) 153 00:16:59,120 --> 00:17:07,128 ♬~ 154 00:17:07,128 --> 00:17:11,132 (小芳)ハァ… 御城代家老のお跡取りに➡ 155 00:17:11,132 --> 00:17:15,136 どんな手管で取り入ったのか 知らないけどさ➡ 156 00:17:15,136 --> 00:17:19,140 まっ 8, 500石の奥方様は 無理だとしても➡ 157 00:17:19,140 --> 00:17:22,143 せめて お部屋様ぐらいにゃ なりたいもんだよね 158 00:17:22,143 --> 00:17:27,081 お前さんたちとは違うわよってな あの高慢ちきな顔だけが➡ 159 00:17:27,081 --> 00:17:29,081 お部屋様に向いてるんじゃない? 160 00:17:40,094 --> 00:17:44,094 (新一郎)八重 今すぐというわけにはいかないが 161 00:17:47,101 --> 00:17:50,101 私を信じて待っていてくれるか 162 00:17:52,106 --> 00:17:59,113 そんな… 新一郎様と私とでは 身分が違いすぎます 163 00:17:59,113 --> 00:18:03,117 世間が 許してくれっこありませんわ 164 00:18:03,117 --> 00:18:05,117 世間か… 165 00:18:07,121 --> 00:18:09,123 だが 私は本気だ 166 00:18:09,123 --> 00:18:16,123 今回の仕事も そして 八重とのことも 167 00:18:30,078 --> 00:18:34,082 (新一郎) ああ… うまく形が取れない 168 00:18:34,082 --> 00:18:37,085 難しいよ 八重 169 00:18:37,085 --> 00:18:40,088 形にこだわることはないんです 170 00:18:40,088 --> 00:18:43,091 こうして じっと花を見つめて➡ 171 00:18:43,091 --> 00:18:48,096 花に心が添ったときに 自然に お描きになればいいんです 172 00:18:48,096 --> 00:18:52,100 花に心が添うか… 173 00:18:52,100 --> 00:18:57,105 ああ ますます難しい 174 00:18:57,105 --> 00:19:00,108 まあ 175 00:19:00,108 --> 00:19:03,111 (新一郎・八重の笑い声) 176 00:19:03,111 --> 00:19:09,117 八重 八重は どこか 私の母に似ているよ 177 00:19:09,117 --> 00:19:14,122 まあ もったいないことを 178 00:19:14,122 --> 00:19:20,128 今度 お母様のお話 いろいろ聞かせてくださいましね 179 00:19:20,128 --> 00:19:25,133 でも 今は せっかく 早起きをしてきたのですから➡ 180 00:19:25,133 --> 00:19:30,071 もう少し続けて ねっ 181 00:19:30,071 --> 00:19:33,074 八重 はい 182 00:19:33,074 --> 00:19:38,074 これから 少し 足が遠のくかもしれないよ 183 00:19:41,082 --> 00:19:46,087 そう長いことじゃないから 辛抱しよう 184 00:19:46,087 --> 00:19:49,090 何か ございましたの? 185 00:19:49,090 --> 00:19:55,090 心配は いらない 私を信じて待っておいで 186 00:19:57,098 --> 00:19:59,098 新一郎様… 187 00:20:09,110 --> 00:20:12,113 (角田)八重次➡ 188 00:20:12,113 --> 00:20:16,117 結城新一郎と お前のことが だいぶ噂になっているが➡ 189 00:20:16,117 --> 00:20:21,122 結城の若旦那は 相変わらず せっせと通ってきているのか 190 00:20:21,122 --> 00:20:23,124 (住井)今夜あたりも 来ているんじゃないのか 191 00:20:23,124 --> 00:20:27,061 (井村)江戸で 何を勉強してきたものやら➡ 192 00:20:27,061 --> 00:20:32,066 帰るなり 色町の花に うつつを抜かしおって えっ?➡ 193 00:20:32,066 --> 00:20:35,069 あんなやつに何ができる (村上)なーに➡ 194 00:20:35,069 --> 00:20:40,074 いずれ この国元からも 追っ払われますよ 決まってる 195 00:20:40,074 --> 00:20:44,078 (井村)そうなれば 八重次と道行きと しゃれるかな 196 00:20:44,078 --> 00:20:47,081 (住井)竹の柱に かやの屋根ってね 197 00:20:47,081 --> 00:20:49,081 (一同)ハハハ… 198 00:20:53,087 --> 00:20:59,093 亡くなった私の母は 普通とは違う神経があったようだ 199 00:20:59,093 --> 00:21:03,097 例えば 雨が降るとか 地震が揺れるとかいうときは➡ 200 00:21:03,097 --> 00:21:07,101 大抵 5拍子ばかり先に分かるんだ 201 00:21:07,101 --> 00:21:09,103 「ああ 雨でございますね」と言う 202 00:21:09,103 --> 00:21:12,106 「冗談じゃない 今 見たら 星が出ていたよ」 203 00:21:12,106 --> 00:21:14,108 父が こんなふうに笑うと➡ 204 00:21:14,108 --> 00:21:17,111 間もなく ぱらぱらと聞こえてくるんだ 205 00:21:17,111 --> 00:21:19,113 まあ すると 母は➡ 206 00:21:19,113 --> 00:21:23,117 「そら 御覧なさい 降ってきたでしょう」って➡ 207 00:21:23,117 --> 00:21:29,057 子供のように得意げで うれしそうな顔をするんだ 208 00:21:29,057 --> 00:21:33,061 地震のときは もっと確実だった さっと顔色が変わる 209 00:21:33,061 --> 00:21:36,064 素早く天井を見上げて 「あっ 地震だ」と つぶやくんだ 210 00:21:36,064 --> 00:21:41,069 すると 5つ勘定しないうちに きっと揺れてきてね 211 00:21:41,069 --> 00:21:44,072 そう言われても分からないくらい 小さな地震でも➡ 212 00:21:44,072 --> 00:21:48,076 必ず 母には分かるんだ 213 00:21:48,076 --> 00:21:51,079 きっと 芸事に御堪能な方だったから➡ 214 00:21:51,079 --> 00:21:55,083 神経が それだけ こまやかだったんですわ 215 00:21:55,083 --> 00:22:01,089 ハハハ… もっと おかしいのは その時分の陽気になると➡ 216 00:22:01,089 --> 00:22:04,092 蛇が穴から抜けるのが 分かるというんだ 217 00:22:04,092 --> 00:22:08,092 誰も信用しなかったが 大真面目でね 218 00:22:11,099 --> 00:22:14,102 ふっと 何かをしている手を止めて➡ 219 00:22:14,102 --> 00:22:18,106 遠くの物音でも聞くような 目つきをする 220 00:22:18,106 --> 00:22:26,106 新一郎様は お母様が お好きでいらしたんですね 221 00:22:35,123 --> 00:22:39,127 さざんかの花を描いているのを 見たときから➡ 222 00:22:39,127 --> 00:22:44,127 あのときから 八重のことを 忘れられなくなっていた 223 00:22:46,134 --> 00:22:52,140 あっ… 会えなくなるのを 少し辛抱しようと➡ 224 00:22:52,140 --> 00:22:56,144 自分から言っておきながら… 225 00:22:56,144 --> 00:23:01,149 八重 もうしばらく 辛抱するんだ 226 00:23:01,149 --> 00:23:07,155 いいか 私を信じて 待っていてくれ 227 00:23:07,155 --> 00:23:13,155 もったいのうございます もったいない 私など 228 00:23:20,168 --> 00:23:22,170 ちょっと 騒々しくなるかもしれないが➡ 229 00:23:22,170 --> 00:23:27,108 出ちゃいけない じっとしてるんだ いいか 230 00:23:27,108 --> 00:23:30,111 (井村)邪魔をするぞ (新一郎)あーあ➡ 231 00:23:30,111 --> 00:23:36,117 昼寝をしていたんだ おそろいで 何か用かな 232 00:23:36,117 --> 00:23:39,120 (角田)美人は 早くも雲隠れですか 233 00:23:39,120 --> 00:23:42,123 ≪(井村)俺は押さえたんだが 若い者たちが聞かない➡ 234 00:23:42,123 --> 00:23:45,126 さっ みんな 構わないから上がれ ≪(藩士たち)はっ 235 00:23:45,126 --> 00:23:49,130 昼寝の邪魔は されたくないね 堅苦しい話は 御免被る 236 00:23:49,130 --> 00:23:53,134 (住井)結城さん 来月 殿の御帰国と同時に➡ 237 00:23:53,134 --> 00:23:55,136 あなたが 城代家老として➡ 238 00:23:55,136 --> 00:23:58,139 御改革とやらいう無謀な政治を 始めるということは➡ 239 00:23:58,139 --> 00:24:00,141 分かっているんです 240 00:24:00,141 --> 00:24:02,143 (村上)あなたは 江戸で 勉強してこられたか知らないが➡ 241 00:24:02,143 --> 00:24:06,147 なまはんかの机上論で 長年の 伝統をたたき壊すようなことは➡ 242 00:24:06,147 --> 00:24:08,149 してもらいたくありません 243 00:24:08,149 --> 00:24:11,152 手を引け 結城 244 00:24:11,152 --> 00:24:14,155 殿が御帰国なさるまでに 片をつけねばならん 245 00:24:14,155 --> 00:24:18,159 その話なら 俺の所へ持ってきてもしょうがない 246 00:24:18,159 --> 00:24:20,161 俺は まだ 部屋住みの身だ 247 00:24:20,161 --> 00:24:23,164 御政治向きのことには まるで関心がない 248 00:24:23,164 --> 00:24:26,167 ≪(角田)それを 本気で言うんですか 結城さん 249 00:24:26,167 --> 00:24:29,167 ≪(新一郎)私に そんな力はない 250 00:24:32,106 --> 00:24:36,110 御改革があるとすれば 老臣一統の協議であって➡ 251 00:24:36,110 --> 00:24:40,114 その是非は 殿が御採決をなさる 252 00:24:40,114 --> 00:24:43,117 そこもとたちは 誤解している (角田)逃げ口上は たくさんだ➡ 253 00:24:43,117 --> 00:24:46,120 議論では らちが明かん 庭へ出ろ 254 00:24:46,120 --> 00:24:48,122 嫌だね そんなことは真っ平だ 255 00:24:48,122 --> 00:24:52,126 (角田)ひきょう者 刀が恐ろしいか 256 00:24:52,126 --> 00:24:55,129 人間の ばかの方が ずっと怖い 257 00:24:55,129 --> 00:24:59,133 井村 お前の友達なんだろ 連れていってくれ 258 00:24:59,133 --> 00:25:02,136 (井村)皆 真剣なんだ➡ 259 00:25:02,136 --> 00:25:05,136 勝負した方が早いんじゃないか 260 00:25:08,142 --> 00:25:12,146 そうか そのつもりで来たのか 261 00:25:12,146 --> 00:25:15,146 俺は ただの立会人さ 262 00:25:18,152 --> 00:25:20,154 よかろう 263 00:25:20,154 --> 00:25:34,101 ♬~ 264 00:25:34,101 --> 00:25:37,104 新一郎様 265 00:25:37,104 --> 00:25:41,104 ≪ 待て待て 短慮な愚か者めらが! 266 00:25:43,110 --> 00:25:46,113 (儀兵衛)中老職として命ずる➡ 267 00:25:46,113 --> 00:25:51,118 沙汰があるまで 双方 居宅謹慎 違背する者は きっと申しつける➡ 268 00:25:51,118 --> 00:25:53,118 引き取れい! 269 00:25:59,126 --> 00:26:01,128 (新一郎) しばらく会えないかもしれない 270 00:26:01,128 --> 00:26:05,128 だが 心配しないで待っておいで 271 00:26:08,135 --> 00:26:15,135 よかった… よかった 御無事で 272 00:26:23,150 --> 00:26:26,153 (儀兵衛) わしは桑島儀兵衛といって➡ 273 00:26:26,153 --> 00:26:29,153 新一郎の伯父に当たる者だ 274 00:26:33,094 --> 00:26:39,100 直入に言う 新一郎との約束 忘れてほしい 275 00:26:39,100 --> 00:26:43,104 お前を新一郎の妻にするなど 断じて できん 276 00:26:43,104 --> 00:26:45,106 そんなばかなことが 許される道理はない 277 00:26:45,106 --> 00:26:47,108 お言葉ではございますが➡ 278 00:26:47,108 --> 00:26:51,112 その道理は あの方が 御承知だと存じます 279 00:26:51,112 --> 00:26:54,115 私は ただ 新一郎様を➡ 280 00:26:54,115 --> 00:26:57,118 お信じ申し上げているだけで ございます 281 00:26:57,118 --> 00:27:01,122 すっかり 丸め込んだというわけだな 282 00:27:01,122 --> 00:27:04,125 それは どういう意味でございますか 283 00:27:04,125 --> 00:27:09,130 問答無用 話は早い方がいい 金は いくら欲しい 284 00:27:09,130 --> 00:27:12,133 失礼ではございますが➡ 285 00:27:12,133 --> 00:27:16,137 あなた様は お嬢様をお持ちでございますか 286 00:27:16,137 --> 00:27:19,140 わしに娘がいたら どうなるのだ 287 00:27:19,140 --> 00:27:26,147 お嬢様がおありになって その方が 今の私のように➡ 288 00:27:26,147 --> 00:27:30,084 辱められ 卑しめられたとしたら➡ 289 00:27:30,084 --> 00:27:34,088 あなた様は どうお思いになりましょうか 290 00:27:34,088 --> 00:27:37,091 わしの娘は 芸妓にはならん 291 00:27:37,091 --> 00:27:40,091 それが 私の罪でございましょうか 292 00:27:42,096 --> 00:27:49,103 私は 5つのときから 惨めな生き方をしてまいりました 293 00:27:49,103 --> 00:27:53,107 担ぎ八百屋をしていた父に 死なれたあと➡ 294 00:27:53,107 --> 00:27:59,107 母と私を頭に 3人の子が残されました 295 00:28:02,116 --> 00:28:07,121 よそのお葬式があると聞けば 施し物をもらうため➡ 296 00:28:07,121 --> 00:28:13,127 冬の吹きさらしに 半時も 一時も立って➡ 297 00:28:13,127 --> 00:28:17,131 背中で泣きむずかる妹を あやしながら➡ 298 00:28:17,131 --> 00:28:23,137 子供心にも 恥ずかしい あさましいと思いながら➡ 299 00:28:23,137 --> 00:28:26,140 投げ銭を拾うのでございます 300 00:28:26,140 --> 00:28:32,079 それでも食いかねて 人様の家のお台所へ立ち➡ 301 00:28:32,079 --> 00:28:37,079 余り物をもらったことも 数知れず 302 00:28:39,086 --> 00:28:44,091 こんなことも みんな 私の罪でしょうか 303 00:28:44,091 --> 00:28:49,091 (泣き声) 304 00:28:51,098 --> 00:28:56,103 また来る それまでに思案を決めておけ 305 00:28:56,103 --> 00:28:59,106 お前は 気の毒な育ち方を したかもしれぬが➡ 306 00:28:59,106 --> 00:29:03,110 その責任を 新一郎に 負わせる理由はないはずだ 307 00:29:03,110 --> 00:29:09,110 真の愛とは 自分から進んで 身を引くことだと わしは思う 308 00:29:11,118 --> 00:29:23,118 (泣き声) 309 00:29:26,133 --> 00:29:32,072 また召し上がらないんですか 体が弱ってしまいます 310 00:29:32,072 --> 00:29:36,076 一口でも食べてください お願いします 311 00:29:36,076 --> 00:29:42,076 下げてちょうだい 食べたくないの 312 00:29:44,084 --> 00:29:48,088 (八重)《私は かわいそうな子》➡ 313 00:29:48,088 --> 00:29:52,088 《お前は かわいそうな花》 314 00:29:54,094 --> 00:29:58,098 私は かわいそうな子 315 00:29:58,098 --> 00:30:01,098 お前は かわいそうな花 316 00:30:09,109 --> 00:30:15,109 もう あの方なしでは 生きてゆかれません 317 00:30:20,120 --> 00:30:23,120 一生 囲い者でも構いません 318 00:30:25,125 --> 00:30:30,064 どうぞ… どうぞ… 319 00:30:30,064 --> 00:30:36,070 あの方から 私を引き離さないでくださいまし 320 00:30:36,070 --> 00:30:42,070 このとおりでございます お願いします 321 00:30:45,079 --> 00:30:50,084 いいか 八重 よく聞くがいい 322 00:30:50,084 --> 00:30:56,090 人間というものは 一人で生きているのではない 323 00:30:56,090 --> 00:30:58,092 多くの者が寄り集まって➡ 324 00:30:58,092 --> 00:31:02,096 支え合い 助け合って 生きているのだ 325 00:31:02,096 --> 00:31:05,099 お前は 着物を着 帯を締めているが➡ 326 00:31:05,099 --> 00:31:09,103 それも お前が織った物ではなかろう? 327 00:31:09,103 --> 00:31:15,103 畳の上に座っているが この畳も 自分で作った物ではない 328 00:31:17,111 --> 00:31:21,115 家は大工が建て 左官が塗った 329 00:31:21,115 --> 00:31:27,054 百姓の作った米 漁師の取った魚を食べている 330 00:31:27,054 --> 00:31:34,061 紙も筆も 箸も茶わんも 全て 他人の労力によるものだ 331 00:31:34,061 --> 00:31:37,064 お前にとっては見も知らぬ これらの他人が➡ 332 00:31:37,064 --> 00:31:42,069 このように お前の生活を支えている 333 00:31:42,069 --> 00:31:46,073 こうして 多くの人に 支えられて生きながら➡ 334 00:31:46,073 --> 00:31:50,077 他人の迷惑や不幸に構わず➡ 335 00:31:50,077 --> 00:31:55,082 自分だけの幸せを 願う者があるとしたら➡ 336 00:31:55,082 --> 00:31:57,082 お前は どう思う 337 00:31:59,086 --> 00:32:03,090 藩では 近く 政治の御改革がある 338 00:32:03,090 --> 00:32:08,095 それを巡って 新旧勢力が激しく争っている 339 00:32:08,095 --> 00:32:11,098 その中心の責任者として➡ 340 00:32:11,098 --> 00:32:17,104 新一郎は 矢面に立たなくては ならないだろう 341 00:32:17,104 --> 00:32:20,107 御改革に反対する一派は 新一郎を排して➡ 342 00:32:20,107 --> 00:32:24,111 別の人物を据えようとしている 343 00:32:24,111 --> 00:32:31,118 新一郎が倒されることは そのまま 御改革が挫折することになるのだ 344 00:32:31,118 --> 00:32:35,122 新一郎の身に ささいな傷があっても➡ 345 00:32:35,122 --> 00:32:39,122 彼らは そこを逃さず 攻めてくるだろう 346 00:32:41,128 --> 00:32:46,133 お前との仲は もう かなり評判になっている 347 00:32:46,133 --> 00:32:51,138 これ以上 会えば もう取り返しはつくまい 348 00:32:51,138 --> 00:32:56,143 そこのところを よーく考え直してほしいのだ 349 00:32:56,143 --> 00:33:16,163 ♬~ 350 00:33:16,163 --> 00:33:21,168 ♬~ 351 00:33:21,168 --> 00:33:28,108 《さむしろに 衣かたしき 今宵もや➡ 352 00:33:28,108 --> 00:33:32,108 恋しき人に あわで わが寝ん》 353 00:34:05,145 --> 00:34:08,148 (ふすまの開閉音) 354 00:34:08,148 --> 00:34:20,160 ♬~ 355 00:34:20,160 --> 00:34:23,163 よーく分かりました 356 00:34:23,163 --> 00:34:28,101 わがままを申し上げて 恥ずかしゅうございました 357 00:34:28,101 --> 00:34:32,101 おっしゃるとおりにいたします 358 00:34:34,107 --> 00:34:39,112 (三味線) 359 00:34:39,112 --> 00:34:49,112 ♬~ 360 00:35:02,135 --> 00:35:04,137 ばかな子だねえ 361 00:35:04,137 --> 00:35:07,140 あんまり長いこと お月さん見てると➡ 362 00:35:07,140 --> 00:35:10,140 ますます めいっちまうのに 363 00:35:17,150 --> 00:35:19,152 八重次 364 00:35:19,152 --> 00:35:24,157 こんなとこで風邪ひくじゃないか もう 中へ入った方がいいよ 365 00:35:24,157 --> 00:35:27,094 登与松姉さん 366 00:35:27,094 --> 00:35:30,097 寒い寒い 367 00:35:30,097 --> 00:35:35,102 すいません 大丈夫ですから 368 00:35:35,102 --> 00:35:39,106 姉さんこそ 風邪ひいたら大変です 369 00:35:39,106 --> 00:35:45,112 アハッ… うれしいね 久しぶりに口を聞いておくれだよ 370 00:35:45,112 --> 00:35:49,116 寝よう寝よう さあさあ 早く 371 00:35:49,116 --> 00:35:57,124 女が男にほれるっていうのは 悲しいことなんだね 372 00:35:57,124 --> 00:36:01,128 このまんまじゃ 体 壊しちまうよ 373 00:36:01,128 --> 00:36:04,131 あの子も変わったよ 374 00:36:04,131 --> 00:36:08,131 私らも あの子の一途さを もっと分かってやりゃよかった 375 00:36:10,137 --> 00:36:17,144 自分が どんなに たくさんの人に 支えられて生きてきたのか… 376 00:36:17,144 --> 00:36:24,151 一本の柱 一枚の瓦… (宗石)うん 377 00:36:24,151 --> 00:36:28,088 人が生きていくために 必要な物は➡ 378 00:36:28,088 --> 00:36:33,093 みんな 誰かの汗と丹精で 出来ているんだって➡ 379 00:36:33,093 --> 00:36:36,093 よーく分かったんです 380 00:36:38,098 --> 00:36:48,108 あるお人に そう言われて 初めて 分かったんです 381 00:36:48,108 --> 00:36:50,110 うん 382 00:36:50,110 --> 00:36:56,110 なるほど 今のままじゃ お前さんも つらかろう 383 00:36:58,118 --> 00:37:05,118 どうだね お前さん うちの娘になる気はないかい 384 00:37:07,127 --> 00:37:13,133 養女になって 末は しかるべき婿を選んで➡ 385 00:37:13,133 --> 00:37:17,137 絹物の店でも やるがいいじゃないか 386 00:37:17,137 --> 00:37:19,139 えっ… 387 00:37:19,139 --> 00:37:24,144 違う生き方をしてみるんだよ 388 00:37:24,144 --> 00:37:31,144 これまでとは きっぱり縁を切って 違う生き方をね 389 00:37:33,086 --> 00:37:40,093 これまでとは きっぱり縁を切って➡ 390 00:37:40,093 --> 00:37:42,093 違う生き方を… 391 00:37:48,101 --> 00:37:52,105 (もよ)まあ よくお似合いだこと 392 00:37:52,105 --> 00:37:55,108 桜の頃になったら お花見をしましょう 393 00:37:55,108 --> 00:37:57,110 八重さんが お世話になってる方を みんな お呼びして 394 00:37:57,110 --> 00:38:01,114 まず 歌の先生 三味線のお師匠さん➡ 395 00:38:01,114 --> 00:38:05,118 それに お琴と舞の師匠方もね 396 00:38:05,118 --> 00:38:08,121 お花見に 先生方をお招きするなんて➡ 397 00:38:08,121 --> 00:38:11,124 まるで 大家の お嬢様のようでございますね 398 00:38:11,124 --> 00:38:17,130 越梅といえば 京 大坂から 江戸まで知られた大家ですよ 399 00:38:17,130 --> 00:38:20,133 あなたは その越梅の娘なんですから➡ 400 00:38:20,133 --> 00:38:23,136 大家のお嬢様に 違いないでしょう? 401 00:38:23,136 --> 00:38:30,077 でもね 私のように 太ることはないんですよ 402 00:38:30,077 --> 00:38:38,085 (笑い声) 403 00:38:38,085 --> 00:38:41,088 お母様 はっ? 404 00:38:41,088 --> 00:38:43,090 孝行させていただきます 405 00:38:43,090 --> 00:38:49,096 娘として お父様 お母様に 孝行させてください 406 00:38:49,096 --> 00:38:54,101 八重さん ありがとう 407 00:38:54,101 --> 00:38:56,103 そんな… 408 00:38:56,103 --> 00:39:03,110 いや 驚くのは無理もないが 先方は 強いお申し出なんだ 409 00:39:03,110 --> 00:39:08,115 こないだの句会に 大寄合の 殿村右京様が いらしていたろう 410 00:39:08,115 --> 00:39:11,118 あのあと 話があったんだ 411 00:39:11,118 --> 00:39:16,123 あんたを是非 養女に欲しいとな うん 412 00:39:16,123 --> 00:39:18,125 そういうことなんだ 413 00:39:18,125 --> 00:39:20,127 行かなければいけませんか 414 00:39:20,127 --> 00:39:23,127 お断りしていただくわけには いきませんか 415 00:39:27,067 --> 00:39:35,075 新一郎様は この度 城代家老になられたよ 416 00:39:35,075 --> 00:39:40,080 あんたの心は無駄じゃあなかった 417 00:39:40,080 --> 00:39:45,080 御立派に お役目を果たしておいでだそうだ 418 00:39:52,092 --> 00:39:54,092 分かりました 419 00:39:57,097 --> 00:40:00,100 おっしゃるとおりにいたします 420 00:40:00,100 --> 00:40:18,118 ♬~ 421 00:40:18,118 --> 00:40:22,122 《私は かわいそうな子》 422 00:40:22,122 --> 00:40:26,122 《お前は かわいそうな花》 423 00:40:35,068 --> 00:40:40,073 (彦乃)茶の道は 武家の娘として 心得ておかねばならぬ➡ 424 00:40:40,073 --> 00:40:43,076 大切なものです 425 00:40:43,076 --> 00:40:47,076 心して お稽古なさいまし はい 426 00:40:49,082 --> 00:40:53,086 (彦乃)えい! やー! えい! 427 00:40:53,086 --> 00:40:56,089 あっ! あっ… ハァ ハァ… 428 00:40:56,089 --> 00:41:00,093 (彦乃)そんな ふがいのないことで どうします! 429 00:41:00,093 --> 00:41:03,096 先日のお茶会で➡ 430 00:41:03,096 --> 00:41:07,100 中老 柏原頼母様が あなたを御覧になり➡ 431 00:41:07,100 --> 00:41:11,104 是非 養女にと 望まれているのですよ 432 00:41:11,104 --> 00:41:15,104 我が殿村家といたしましては この上もない名誉 433 00:41:17,110 --> 00:41:21,114 私は あなたを 厳しく教育したつもりです 434 00:41:21,114 --> 00:41:25,114 もう どこへ出しても 恥ずかしくない娘におなりですよ 435 00:41:28,054 --> 00:41:32,054 あちらへ行っても ますます精進なさいまし 436 00:41:42,068 --> 00:41:46,072 (頼母) 八重 そなたの嫁入りが決まったぞ 437 00:41:46,072 --> 00:41:51,077 お待ちくださいませ 誠に 誠に勝手ながら➡ 438 00:41:51,077 --> 00:41:54,080 私 生涯 独り身を通す覚悟でございます 439 00:41:54,080 --> 00:41:57,083 そのお話 平に お許しくださいませ 440 00:41:57,083 --> 00:42:03,089 (頼母)何を思って そのような 愚かな覚悟をせねばならんのだ 441 00:42:03,089 --> 00:42:09,095 良き夫を選び 夫に仕え 子を産み育てることこそ➡ 442 00:42:09,095 --> 00:42:13,099 女の本分 喜びであろうに 443 00:42:13,099 --> 00:42:15,101 後生でございます 444 00:42:15,101 --> 00:42:18,104 どうぞ 私のわがままを お許しくださいませ 445 00:42:18,104 --> 00:42:21,107 当柏原家の娘として➡ 446 00:42:21,107 --> 00:42:26,112 そのような らちもないことを 許すわけにはいかん 447 00:42:26,112 --> 00:42:31,117 明後日 持光寺での茶会の折 茶をたてるのだ 448 00:42:31,117 --> 00:42:37,123 当日の主客が そなたの婿殿だ よいな 449 00:42:37,123 --> 00:42:49,135 ♬~ 450 00:42:49,135 --> 00:42:55,141 私の違う生き方とは➡ 451 00:42:55,141 --> 00:43:02,148 人の都合で ただ 流されていくだけのものだったのか 452 00:43:02,148 --> 00:43:17,148 ♬~ 453 00:44:28,101 --> 00:44:32,101 (男性)うーん まあまあだな 454 00:44:40,113 --> 00:44:42,113 あっ… 455 00:44:46,119 --> 00:44:53,126 どうして… どうして… 456 00:44:53,126 --> 00:44:56,129 私は お前に言ったろう 457 00:44:56,129 --> 00:45:00,129 信じておいで 私を信じておいでって 458 00:45:02,135 --> 00:45:07,140 宗石が養女に引き取ったのは 私と相談の上だ 459 00:45:07,140 --> 00:45:14,140 次の大寄合 殿村家も そして 中老 柏原家も そうだ 460 00:45:17,150 --> 00:45:23,150 そして この次は 私の妻になるんだよ 八重 461 00:45:25,158 --> 00:45:28,158 新一郎様 462 00:45:36,102 --> 00:45:38,102 御覧 463 00:45:40,106 --> 00:45:43,106 また さざんかの季節だね 464 00:45:47,113 --> 00:45:49,113 さざんか 465 00:45:51,117 --> 00:45:54,120 《私は 幸せな子》 466 00:45:54,120 --> 00:45:59,120 《お前は 優しい花》 467 00:46:01,127 --> 00:46:21,147 ♬~ 468 00:46:21,147 --> 00:46:41,100 ♬~ 469 00:46:41,100 --> 00:47:01,120 ♬~ 470 00:47:01,120 --> 00:47:10,120 ♬~