1 00:01:56,585 --> 00:02:00,589 (竜ノ口) <信じ難いと思われるでしょう> 2 00:02:00,589 --> 00:02:05,561 <信じるということが 今の世の人にとって➡ 3 00:02:05,561 --> 00:02:08,564 いかに 困難なことかということは➡ 4 00:02:08,564 --> 00:02:11,567 私も よく知っています> 5 00:02:11,567 --> 00:02:15,571 <それでいて 最も信じ難いことを➡ 6 00:02:15,571 --> 00:02:21,577 最も熱烈に信じているという この狂熱に近い話を➡ 7 00:02:21,577 --> 00:02:25,581 どうぞ 判断していただきたいのです> 8 00:04:37,579 --> 00:04:39,581 (男性)よしてください 9 00:04:39,581 --> 00:04:41,583 (竜ノ口)死ぬぞ 10 00:04:41,583 --> 00:04:44,586 それを待っているのです バカな! 11 00:05:23,592 --> 00:05:29,598 「憧れ知る人でなくて どうして 私の悩みが分かろう」 12 00:05:29,598 --> 00:05:38,573 「全ての喜びから引き裂かれて ただひとり 大空をかなたへ遠く」 13 00:05:38,573 --> 00:05:45,580 「ああ 我を恋い 我を知る人は 遠く かなたの空にいる」 14 00:05:45,580 --> 00:05:52,587 「この目は めまいし この五臓は たぎるばかり」 15 00:05:52,587 --> 00:05:57,587 「憧れ知る人でなくて どうして 私の悩みが分かろう」 16 00:06:01,596 --> 00:06:06,596 ミニヨンの歌ですね? ええ 17 00:06:13,575 --> 00:06:16,575 どうです? メシを食いませんか? 18 00:06:28,590 --> 00:06:30,590 よかったら もっと どうです? 19 00:07:20,575 --> 00:07:22,577 よしたまえ! 20 00:07:22,577 --> 00:07:25,580 離してください 21 00:07:25,580 --> 00:07:28,583 どうしても行くなら 私も行く 22 00:07:28,583 --> 00:07:32,583 迷惑です 私も迷惑だ 23 00:08:06,588 --> 00:08:09,588 寝ずに監視ですか? 24 00:08:11,593 --> 00:08:14,593 ひどく冷え込んできている 25 00:08:25,574 --> 00:08:28,574 どうして こんな生活をしてるのです? 26 00:08:33,582 --> 00:08:37,482 他人の秘密を聞く興味も ないんですが 27 00:08:40,589 --> 00:08:43,592 みんな きちがいだと言っている 28 00:08:43,592 --> 00:08:47,596 あなたは どこの大学? 東京 29 00:08:47,596 --> 00:08:49,598 私は京都だ 30 00:08:49,598 --> 00:08:52,598 あなたになら どんなことを 言ってもいいようだね 31 00:08:56,605 --> 00:08:59,574 私が高等学校時代です 32 00:10:10,578 --> 00:10:12,580 <1年ほどの間➡ 33 00:10:12,580 --> 00:10:15,583 金曜日には きっと出会ったお嬢さんが➡ 34 00:10:15,583 --> 00:10:19,587 ぷっつり 姿を見せなくなったのです> 35 00:10:46,581 --> 00:10:49,584 <それから3年目の6月> 36 00:10:49,584 --> 00:10:55,590 <友人の姉が亡くなった そのお通夜の晩だった> 37 00:11:46,608 --> 00:11:49,611 お1人では 気味の悪いような道です 38 00:11:49,611 --> 00:11:53,581 (あき子)ええ お連れがあって ホッといたしました 39 00:11:53,581 --> 00:11:55,583 亡くなられたお方は お友達ですか? 40 00:11:55,583 --> 00:11:57,585 同級生でございました 41 00:12:05,593 --> 00:12:08,596 こんなふうに お会いするとは 思いませんでした 42 00:12:08,596 --> 00:12:10,598 私も 43 00:12:10,598 --> 00:12:14,602 いつも金曜日でしたね ええ 44 00:12:14,602 --> 00:12:17,605 王禅寺の和尚様の ご法話をお伺いにまいった➡ 45 00:12:17,605 --> 00:12:20,608 その帰り道でした 46 00:12:20,608 --> 00:12:24,612 禅の講義ですか? ええ 47 00:12:24,612 --> 00:12:27,582 私には分からないのですけど➡ 48 00:12:27,582 --> 00:12:29,584 亡くなった父が 尊敬しておりましたので➡ 49 00:12:29,584 --> 00:12:32,584 お墓掃除を兼ねて伺いましたの 50 00:12:36,591 --> 00:12:38,591 流星です 51 00:12:43,598 --> 00:12:46,601 私は 星空を見て歩く癖があります 52 00:12:46,601 --> 00:12:50,605 私は 文学や絵画などに 趣味がありません 53 00:12:50,605 --> 00:12:53,605 天体物理学を 専攻しているものですから 54 00:12:56,611 --> 00:13:01,583 私は あそこから5軒目の家の 離れに下宿しています 55 00:13:01,583 --> 00:13:05,587 ああ そうですか 56 00:13:05,587 --> 00:13:08,590 では ありがとうございました おやすみあそばせ 57 00:13:08,590 --> 00:13:10,592 お宅までお送りします 58 00:13:10,592 --> 00:13:13,595 いいえ 結構でございます どうぞ おかまいなく 59 00:13:13,595 --> 00:13:16,598 お送りします 夜更けですから 60 00:13:16,598 --> 00:13:19,598 はあ ありがとうございます 61 00:13:23,605 --> 00:13:27,609 ペガサス星座の辺ですね ええ 62 00:13:39,587 --> 00:13:43,591 <お通夜から4~5日目の 日曜だった> 63 00:13:59,607 --> 00:14:04,612 先夜は ありがとうございました いいえ 64 00:14:04,612 --> 00:14:07,615 粗末な物ですけど そんなこと困ります 65 00:14:07,615 --> 00:14:11,586 いいえ ほんのお口汚しでございます 66 00:14:11,586 --> 00:14:13,586 ありがとうございます 67 00:14:17,592 --> 00:14:19,594 突然 お伺いして➡ 68 00:14:19,594 --> 00:14:22,597 ご勉強のお邪魔になって 相すみません 69 00:14:22,597 --> 00:14:24,599 いいえ 日曜は いつも遊びです 70 00:14:24,599 --> 00:14:26,601 さっきまで 退屈しのぎに➡ 71 00:14:26,601 --> 00:14:30,601 ここの子供さんから これを借りて 読んでいました 72 00:14:38,613 --> 00:14:40,615 童話集ですのね 73 00:14:40,615 --> 00:14:44,615 ええ 私のは堅い本ばかりで 日曜は困ります 74 00:14:59,601 --> 00:15:01,603 私 これで失礼いたします 75 00:15:01,603 --> 00:15:03,605 どうぞ ごゆっくりなすってください 76 00:15:03,605 --> 00:15:07,609 はあ… 子供が待っておりますから 77 00:15:07,609 --> 00:15:09,609 子供さん? 78 00:15:11,613 --> 00:15:16,618 あの道で あなた様にお会いした明くる月➡ 79 00:15:16,618 --> 00:15:20,588 結婚いたしました 80 00:15:20,588 --> 00:15:23,591 ご主人は? 81 00:15:23,591 --> 00:15:26,594 フランスにまいっております 82 00:15:26,594 --> 00:15:29,597 <それから3日目に➡ 83 00:15:29,597 --> 00:15:33,601 「日曜日の退屈しのぎに お読みください」という➡ 84 00:15:33,601 --> 00:15:35,603 葉書と一緒に送ってきた> 85 00:15:59,594 --> 00:16:02,597 <次に この本が送ってきた> 86 00:16:22,617 --> 00:16:24,619 <2枚の しおりは➡ 87 00:16:24,619 --> 00:16:28,589 私に宛てて書いたものとは 思えなかったが➡ 88 00:16:28,589 --> 00:16:31,592 私は なぜか➡ 89 00:16:31,592 --> 00:16:34,492 じっとしていることが できなかった> 90 00:16:36,597 --> 00:16:42,603 <友達の亡き姉の四十九日の 法事の帰り道だった> 91 00:16:50,611 --> 00:16:53,614 もったいないですね ええ 92 00:16:53,614 --> 00:16:58,619 でも ご供養になりますわ じゃあ その意味で 93 00:17:07,595 --> 00:17:11,599 お年寄りのようなコイですのね いくつぐらいでしょうかしら 94 00:17:11,599 --> 00:17:15,599 さあ… 今度 動物学の先生に 聞いてみましょう 95 00:17:18,606 --> 00:17:20,608 これは もったいないです 96 00:17:20,608 --> 00:17:22,610 このおいしさは コイには分からないでしょう 97 00:17:22,610 --> 00:17:29,617 フフッ… どうぞ 動物学の先生に お聞きくださいませ フフフ… 98 00:17:39,594 --> 00:17:42,597 このごろ おかげさまで 文学が すっかり好きになりました 99 00:17:42,597 --> 00:17:44,599 フフッ… でも かえって➡ 100 00:17:44,599 --> 00:17:46,601 ご勉強のお妨げに なるんじゃないでしょうかしら 101 00:17:46,601 --> 00:17:50,601 いいえ 文学によって 自分の心が 開けていくような気がしますよ 102 00:18:03,618 --> 00:18:06,621 いい声ですね 103 00:18:06,621 --> 00:18:09,624 せせらぎにいるような 気がいたします 104 00:18:09,624 --> 00:18:15,596 お世話が大変でしょうね フフフ… どうせ 暇人ですから 105 00:18:35,616 --> 00:18:38,619 ご主人は いつ フランスから お帰りになるんですか? 106 00:18:38,619 --> 00:18:43,619 さあ… いつ 里心がつきますか 107 00:18:48,596 --> 00:18:50,596 竜ノ口さん 108 00:18:53,601 --> 00:18:57,605 いいえ 何でもないの 109 00:18:57,605 --> 00:19:00,608 ただ 私は こんな楽しい日が➡ 110 00:19:00,608 --> 00:19:04,608 いつまで続くかと 考えていましたの 111 00:19:07,615 --> 00:19:09,617 あき子さん 112 00:19:09,617 --> 00:19:13,621 私は いつまでも続くように 祈っています 113 00:19:44,619 --> 00:19:48,623 <秋風が立つころだった> 114 00:20:12,613 --> 00:20:16,617 ああ よくいらっしゃいました どうぞ 115 00:20:16,617 --> 00:20:18,619 ええ… 116 00:20:28,629 --> 00:20:32,600 どうかなさったんですか? 117 00:20:32,600 --> 00:20:37,600 私 お別れにまいりましたの 118 00:20:41,609 --> 00:20:43,609 どういう意味でしょう? 119 00:20:47,615 --> 00:20:52,620 今のうちは 何か 姉弟のように親しくて➡ 120 00:20:52,620 --> 00:20:55,623 私は幸せなのですけど 121 00:20:55,623 --> 00:20:59,627 このまま おつきあいを続けていますと➡ 122 00:20:59,627 --> 00:21:04,599 私 自分が苦しくなりそうに 思われてまいりましたの 123 00:21:04,599 --> 00:21:07,602 私は友情と考えていました 124 00:21:07,602 --> 00:21:10,605 このままで お互いの立場が➡ 125 00:21:10,605 --> 00:21:13,608 決して 苦しくなるようなことは ないと思いますが 126 00:21:13,608 --> 00:21:18,613 でも 私 もう決心してまいりました 127 00:21:43,604 --> 00:21:46,607 どうぞ お帰りになって 128 00:21:46,607 --> 00:21:50,611 もう これっきり お目にかかれないんですか? 129 00:21:50,611 --> 00:21:54,615 ええ そう決心してまいりましたの 130 00:22:03,624 --> 00:22:05,626 あき子さん… 131 00:22:12,633 --> 00:22:14,602 竜ノ口さん 132 00:22:14,602 --> 00:22:20,608 私は 26の今まで あなたのような方に➡ 133 00:22:20,608 --> 00:22:23,611 一度も お会いしたことは ありませんでした 134 00:22:31,619 --> 00:22:35,519 私は いつの間にか… 135 00:22:37,625 --> 00:22:41,629 あなたを お愛し申し上げておりました 136 00:22:41,629 --> 00:22:46,634 私も あなたが好きです たまらなく好きです 137 00:22:46,634 --> 00:22:51,605 好きということが 愛しているということなら➡ 138 00:22:51,605 --> 00:22:54,608 私も あなたを愛しています 139 00:22:54,608 --> 00:22:57,611 どうぞ おっしゃらないで 140 00:22:57,611 --> 00:23:00,611 それは許されないことですわ 141 00:23:02,616 --> 00:23:07,621 私たちは いつまでも よいお友達として➡ 142 00:23:07,621 --> 00:23:10,624 あなたを傷つけず➡ 143 00:23:10,624 --> 00:23:13,627 私も 妻として 母として 生きていこうと➡ 144 00:23:13,627 --> 00:23:16,630 どんなに考えたかしれません 145 00:23:16,630 --> 00:23:21,635 でも あなたに お目にかかって➡ 146 00:23:21,635 --> 00:23:24,635 私 そんな自信がなくなりました 147 00:23:28,609 --> 00:23:34,615 でも また いつか よいお友達として➡ 148 00:23:34,615 --> 00:23:37,615 お目にかかれる日が ないとも限りませんけど 149 00:23:40,621 --> 00:23:44,625 もう それまでは お目にかかりません 150 00:23:56,637 --> 00:24:01,609 《私は もう 最後のお別れをいたしました》 151 00:24:01,609 --> 00:24:06,614 《でも たとえ 一生 このままに なってしまいましても➡ 152 00:24:06,614 --> 00:24:09,617 生きているかぎり 私は➡ 153 00:24:09,617 --> 00:24:14,622 いつも いつも あなた様のことを お祈りいたしております》 154 00:24:14,622 --> 00:24:20,628 《それが せめてもの 私の慰めです》 155 00:24:20,628 --> 00:24:25,633 《どうぞ 今後 お友達をお選びになるときは➡ 156 00:24:25,633 --> 00:24:30,638 私のような罪深い者は お選びくださいますな》 157 00:24:30,638 --> 00:24:32,606 《では》 158 00:25:03,637 --> 00:25:05,639 ≪(廉太郎)お母様 おやすみなさい 159 00:25:05,639 --> 00:25:08,609 ≪ おやすみなさい あとで また行ってあげますからね 160 00:25:08,609 --> 00:25:10,609 ≪ うん 161 00:25:22,623 --> 00:25:25,626 失礼しました 162 00:25:25,626 --> 00:25:27,628 子供が あした 遠足なものですから➡ 163 00:25:27,628 --> 00:25:30,628 早く休ませましたの 164 00:25:32,633 --> 00:25:35,636 よく お分かりになりましたわね 165 00:25:35,636 --> 00:25:37,638 どうしても会いたかったんです 166 00:25:37,638 --> 00:25:41,609 お越しになったと知って たまらなくなって やって来ました 167 00:25:41,609 --> 00:25:47,609 越したのは 家庭の事情も あってのことなんですけれど 168 00:25:49,617 --> 00:25:52,620 私は 心構えの できてないときに打ち込まれて➡ 169 00:25:52,620 --> 00:25:55,623 ただ まいってしまいました 170 00:25:55,623 --> 00:25:58,623 どうしていいのか 途方に暮れましたが… 171 00:26:03,631 --> 00:26:06,631 どうしても お会いせずに いられなかったんです 172 00:26:12,640 --> 00:26:18,640 私 もう お会いしないと 固い決心いたしました 173 00:26:25,619 --> 00:26:30,619 こんなこと 申し上げずにおこうと 思ったのですけれど… 174 00:26:36,630 --> 00:26:41,635 主人は あちらで 愛人ができてるということを➡ 175 00:26:41,635 --> 00:26:44,638 ある知人から 便りがございました 176 00:26:44,638 --> 00:26:48,642 主人からも その悩みを 打ち明けた便りがまいり➡ 177 00:26:48,642 --> 00:26:51,642 それには 私の裁きを待つというのです 178 00:26:53,614 --> 00:26:58,619 私には 人を裁く資格などございません 179 00:26:58,619 --> 00:27:04,625 自分が 母として 妻としての 節操を裏切るようなことは➡ 180 00:27:04,625 --> 00:27:09,630 自分ながら さもしいように思われました 181 00:27:09,630 --> 00:27:14,635 「ただ いつまでも お帰りを待っております」と➡ 182 00:27:14,635 --> 00:27:17,635 私 主人に申し送りましたの 183 00:27:22,643 --> 00:27:26,613 私 毎晩 あなたのお手紙を出して➡ 184 00:27:26,613 --> 00:27:30,617 全部 読みました 185 00:27:30,617 --> 00:27:33,617 読み直さないと 眠られなかったものですから 186 00:27:48,635 --> 00:27:52,639 分かりました 187 00:27:52,639 --> 00:27:54,639 もう お目にかかりません 188 00:27:57,644 --> 00:28:01,644 私の差し上げた手紙を 返していただきましょうか 189 00:28:56,637 --> 00:28:59,637 じゃあ これで 190 00:29:02,643 --> 00:29:06,647 もう これっきりですのね ええ 191 00:29:28,635 --> 00:29:35,642 <それから2年の間 私は あの人に会いませんでした> 192 00:29:35,642 --> 00:29:41,648 <私は あの人の苦しみが分かり それを尊敬し➡ 193 00:29:41,648 --> 00:29:46,620 あの人の心を主にして それに従うことに➡ 194 00:29:46,620 --> 00:29:51,625 本当の愛を見つけていこうと 考えていたのです> 195 00:29:51,625 --> 00:29:55,629 <すると 2年目の6月➡ 196 00:29:55,629 --> 00:29:59,633 突然 あの人から手紙が来たのです> 197 00:29:59,633 --> 00:30:03,637 <それには 「新聞で見た」といって➡ 198 00:30:03,637 --> 00:30:08,642 私の父の死に対する哀悼が 述べてあり➡ 199 00:30:08,642 --> 00:30:14,648 「自分は やっと 過去の心境から 出ることができたように思う」と➡ 200 00:30:14,648 --> 00:30:18,619 書いてあったのです> 201 00:30:18,619 --> 00:30:20,621 こんなに早く お目にかかれると 思いませんでしたわ 202 00:30:20,621 --> 00:30:22,623 お手紙いただいて➡ 203 00:30:22,623 --> 00:30:25,623 矢も盾もたまらなくなって まいりました 204 00:30:27,628 --> 00:30:31,632 本当に夢のような気がします 205 00:30:31,632 --> 00:30:35,636 ここで お別れして 2年になりますわね 206 00:30:35,636 --> 00:30:40,641 あなたは 少し お年をお取りになったかしら 207 00:30:40,641 --> 00:30:43,644 学校は? 春 卒業しました 208 00:30:43,644 --> 00:30:46,647 ホントに立派におなりになって 209 00:30:46,647 --> 00:30:49,650 あなたも 少しも変わりませんね 210 00:30:49,650 --> 00:30:51,650 フフッ… 211 00:30:57,624 --> 00:31:00,627 「愛欲の垢 尽きれば 道見ゆ」 212 00:31:00,627 --> 00:31:04,627 王禅寺の和尚様が 書いてくださったんですけど 213 00:31:08,635 --> 00:31:11,635 私には いつ 道が見えるかしら 214 00:31:14,641 --> 00:31:18,645 <それから 3度目に会ったときです> 215 00:31:56,650 --> 00:31:59,653 ああ… もう 宵月が出ていますわ 216 00:31:59,653 --> 00:32:03,624 十三夜ぐらいです 217 00:32:03,624 --> 00:32:05,624 いい思い出になりますわ 218 00:32:08,629 --> 00:32:10,631 大事に取っておきます 219 00:32:17,638 --> 00:32:20,638 今日は 偶然 金曜日ですね 220 00:32:23,644 --> 00:32:26,647 ええ 221 00:32:26,647 --> 00:32:32,653 あのころ 金曜日に あなたに お会いするのが生きがいでした 222 00:32:32,653 --> 00:32:34,655 私も 223 00:32:34,655 --> 00:32:37,624 ああして あなたに お会いする度に➡ 224 00:32:37,624 --> 00:32:41,628 自分が女学生だったらと 思いましたわ 225 00:33:44,624 --> 00:33:46,624 あき子さん 226 00:33:48,628 --> 00:33:51,631 あなたは なぜ 結婚なんかなすったんです? 227 00:34:06,646 --> 00:34:10,650 あなたと 永久に 一緒には住めないでしょうか 228 00:34:25,632 --> 00:34:31,638 私 自分の心が 平静に返ったと思ったのに➡ 229 00:34:31,638 --> 00:34:34,641 あなたに お会いすると➡ 230 00:34:34,641 --> 00:34:40,647 切なくて 苦しくて 分からなくなるのよ 231 00:34:50,657 --> 00:34:55,629 <それから2~3日して あの人から手紙が来た> 232 00:34:55,629 --> 00:34:57,631 <それには➡ 233 00:34:57,631 --> 00:35:01,635 「また あなたとお別れするより しかたがなくなりました」➡ 234 00:35:01,635 --> 00:35:03,635 という書き出しで…> 235 00:35:25,659 --> 00:35:30,630 《もう跡形もなく 打ち砕かれてしまいました》 236 00:35:30,630 --> 00:35:35,635 《私の心の弱さを どうぞ お笑いくださいませ》 237 00:35:35,635 --> 00:35:39,639 《でも この数週間 お目にかかれた日々➡ 238 00:35:39,639 --> 00:35:44,644 それは どんなに うれしかったでございましょう》 239 00:35:44,644 --> 00:35:47,647 《でも 1日 遅れれば遅れるほど➡ 240 00:35:47,647 --> 00:35:53,653 どうにもならなくなりそうな私を お哀れみくださいませ》 241 00:35:53,653 --> 00:35:57,657 《いくら書いても 書ききれません》 242 00:35:57,657 --> 00:36:02,662 《今の別れ難い気持ちのように これが最後と思うと➡ 243 00:36:02,662 --> 00:36:08,635 筆を置くことさえが 恐ろしいように思われます》 244 00:36:08,635 --> 00:36:10,637 <そして 最後に➡ 245 00:36:10,637 --> 00:36:15,642 「今は ただ 強いて忘るる いにしえを➡ 246 00:36:15,642 --> 00:36:21,648 思いいでよと澄める月かな」と 書いてあった> 247 00:36:21,648 --> 00:36:26,653 <私は会いたかった くるうほど会いたかった> 248 00:36:26,653 --> 00:36:32,659 <しかし 会うことは あの人に苦しみを与えるばかりだ> 249 00:36:32,659 --> 00:36:38,665 <私は 会いたい一念を たたきのめすために必死だった> 250 00:36:38,665 --> 00:36:42,636 <もし 私たちの愛が真実の愛ならば➡ 251 00:36:42,636 --> 00:36:47,641 それは 生涯を貫き 忍耐を教え➡ 252 00:36:47,641 --> 00:36:51,645 絶望をも 死をも 追い払うに違いない> 253 00:36:51,645 --> 00:36:55,649 <そして 今こそ 忍耐のときだ> 254 00:36:55,649 --> 00:36:58,652 <私は あの人と同じように➡ 255 00:36:58,652 --> 00:37:03,652 自分に打ち勝つことを美徳とする 精神を養おうとしたのです> 256 00:37:08,662 --> 00:37:13,633 <そして 私たちは 5年間 会わなかった> 257 00:37:13,633 --> 00:37:18,638 <そのころ 私は ある山麓の 測候所の技師になっていた> 258 00:37:53,640 --> 00:37:56,640 (女性)竜ノ口さん 259 00:38:10,657 --> 00:38:12,657 (女性)ねえ 260 00:38:15,662 --> 00:38:17,664 ここへ来ちゃいけないというのに 261 00:38:17,664 --> 00:38:21,668 でも あなたは ちっとも来てくれないんですもの 262 00:38:21,668 --> 00:38:23,637 イヤになっちゃうわ 263 00:38:23,637 --> 00:38:26,637 仕事が忙しいんだよ 264 00:38:28,642 --> 00:38:32,642 ねえ 私たちのこと どうするの? 265 00:38:35,649 --> 00:38:39,653 お父さんが待ってるわ あなたのお返事 266 00:38:39,653 --> 00:38:41,653 うん 267 00:38:43,657 --> 00:38:47,657 人が来るといけないよ 早く帰って 268 00:38:52,666 --> 00:38:54,666 お返事 早くしてね 269 00:39:25,665 --> 00:39:29,669 <私は あの人を思い続けながら➡ 270 00:39:29,669 --> 00:39:34,641 村の娘から 結婚を 強制される立場に落ち込んでいた> 271 00:39:34,641 --> 00:39:40,647 <この私の立場を あの人は どう裁いてくれるだろう> 272 00:39:40,647 --> 00:39:46,653 <最善の道を示してくれるのは あの人以外にはないのだ> 273 00:39:46,653 --> 00:39:52,659 <あの人に相談しよう あの人の真意を聞こう> 274 00:39:52,659 --> 00:39:58,665 <いや あの人に会いたい ただ 会いたかったのです> 275 00:40:33,666 --> 00:40:36,669 やはり いらっしゃいましたのね 276 00:40:36,669 --> 00:40:40,640 来ては悪かったでしょうか? いいえ おめでたいですわ 277 00:40:40,640 --> 00:40:43,643 ご縁談のご相談なんですもの 278 00:40:43,643 --> 00:40:46,646 暑かったでしょう? お風呂へ いらしては? 279 00:40:46,646 --> 00:40:48,646 はあ 280 00:40:52,652 --> 00:40:57,657 私は その女と 結婚する意志はなかったんです 281 00:40:57,657 --> 00:41:03,663 でも 私たちは いつの間にか 肉体的になって➡ 282 00:41:03,663 --> 00:41:06,663 その誘惑の中にいたことに 気づきました 283 00:41:09,669 --> 00:41:11,671 言い訳がましいですが➡ 284 00:41:11,671 --> 00:41:15,671 村の卑わいな雰囲気に 負けてしまったのです 285 00:41:17,644 --> 00:41:19,646 そんなことがあって➡ 286 00:41:19,646 --> 00:41:22,649 結婚なさらないなんて いけませんわ 287 00:41:22,649 --> 00:41:26,653 その方が かわいそうじゃありませんか 288 00:41:26,653 --> 00:41:31,653 さあ 早くお帰りなさい そのほうがいいのよ 289 00:41:36,663 --> 00:41:39,666 私は あなたが いつも良心的で➡ 290 00:41:39,666 --> 00:41:42,669 そういう方の 味方になっておあげになるよう➡ 291 00:41:42,669 --> 00:41:44,669 祈っていますわ 292 00:41:47,674 --> 00:41:49,642 何か 私に➡ 293 00:41:49,642 --> 00:41:52,645 怒っていらっしゃるんじゃ ないでしょうか 294 00:41:52,645 --> 00:41:56,649 私がですか? ええ 295 00:41:56,649 --> 00:41:58,651 どうして そんなこと… 296 00:41:58,651 --> 00:42:02,655 私 今 やっと 救われたような 気がしていますのに 297 00:42:02,655 --> 00:42:05,655 私から救われたと おっしゃるんですか? 298 00:42:17,670 --> 00:42:19,670 いけません 299 00:42:22,675 --> 00:42:25,645 早くお帰りになってね 300 00:42:36,656 --> 00:42:39,659 早くお帰りになって➡ 301 00:42:39,659 --> 00:42:42,662 その方と 結婚してあげていただきたいわ 302 00:42:51,671 --> 00:42:54,674 そうします 303 00:42:54,674 --> 00:42:59,646 それから 村の娘と結婚しましたが➡ 304 00:42:59,646 --> 00:43:04,651 結局 あの人への憧れが 強くなるばかりでした 305 00:43:04,651 --> 00:43:11,658 娘も 私の得体の知れない憂鬱を 嫌いだしてきたのです 306 00:43:11,658 --> 00:43:15,662 その結婚は 1年ほどで破れました 307 00:43:15,662 --> 00:43:19,666 それから 私は 東京へ転勤になりました 308 00:43:45,658 --> 00:43:47,660 あき子さん! 309 00:44:08,648 --> 00:44:10,650 神戸にいらっしゃるとばかり 思ってました 310 00:44:10,650 --> 00:44:13,653 あなたこそ 沼津のほうかと思って 311 00:44:13,653 --> 00:44:17,657 転勤して2年になります (ウエーター)どうぞ 312 00:44:17,657 --> 00:44:19,659 (ウエーター)お預かりいたします 313 00:44:19,659 --> 00:44:21,659 何か冷たい物を はい 314 00:44:23,663 --> 00:44:27,667 私 こちらへ来てから 3年になりますの 315 00:44:27,667 --> 00:44:30,670 偶然ですね 316 00:44:30,670 --> 00:44:33,673 ホントに 317 00:44:33,673 --> 00:44:36,676 子供が 胃を悪くしてるもんですから➡ 318 00:44:36,676 --> 00:44:38,678 近所の漢方医まで出かけましたの 319 00:44:38,678 --> 00:44:41,678 お会いできて こんな うれしいことはありません 320 00:44:43,649 --> 00:44:48,654 ご主人は? ええ… 321 00:44:48,654 --> 00:44:50,656 奥様は いかが? 322 00:44:50,656 --> 00:44:53,656 あなた お子さんは まだですの? 323 00:44:55,661 --> 00:45:00,666 無残な結婚生活でしたが それで得たものは➡ 324 00:45:00,666 --> 00:45:06,672 あなた以外の人が 私の心に 住めないということでした 325 00:45:06,672 --> 00:45:08,674 同じ気持ちを➡ 326 00:45:08,674 --> 00:45:11,677 やはり 持っていて くださるんでしょうか? 327 00:45:18,651 --> 00:45:21,654 せんだって 子供に叱られましたの 328 00:45:21,654 --> 00:45:24,657 学校の父兄会に うっかり 若作りで出かけましたら➡ 329 00:45:24,657 --> 00:45:27,657 「お母さんらしくない」って 330 00:45:31,664 --> 00:45:33,664 お住まいは? 331 00:45:37,670 --> 00:45:40,670 まだ お会いする時期じゃないと 思いますわ 332 00:45:42,675 --> 00:45:45,678 私は 私の生涯の初めに➡ 333 00:45:45,678 --> 00:45:49,682 あの人に会わなかったら よかったのかもしれません 334 00:45:59,659 --> 00:46:02,662 久しぶりに あの人に会い➡ 335 00:46:02,662 --> 00:46:05,665 あれほど冷淡な仕打ちを 受けながら➡ 336 00:46:05,665 --> 00:46:08,668 ますます あの人を愛しようとする自分を➡ 337 00:46:08,668 --> 00:46:10,668 どうすることも できなかったんです 338 00:46:12,672 --> 00:46:17,677 私は 一生懸命 あの人の住まいを捜しました 339 00:46:17,677 --> 00:46:19,677 そして ある日… 340 00:46:29,655 --> 00:46:31,657 どなたでしょうか? 341 00:46:31,657 --> 00:46:33,659 ≪ 竜ノ口です 342 00:46:55,681 --> 00:46:58,684 どうぞ そのまま お帰りください 343 00:46:58,684 --> 00:47:01,654 私は まだ➡ 344 00:47:01,654 --> 00:47:05,658 あなたに お目にかかることは できないように思います 345 00:47:05,658 --> 00:47:11,664 私は あなたに お会いしたくて 3週間も捜しました 346 00:47:30,683 --> 00:47:32,685 どうぞ 347 00:48:12,658 --> 00:48:14,660 どうぞ 348 00:48:14,660 --> 00:48:16,660 あき子さん 349 00:48:18,664 --> 00:48:20,666 これ 読んでください 350 00:48:20,666 --> 00:48:22,666 私の思うままを書いてきました 351 00:48:25,671 --> 00:48:32,678 お手紙を読ませていただいても かえって あだになるだけです 352 00:48:32,678 --> 00:48:38,684 私は また あなたと 醜い別れをしたくはありません 353 00:48:38,684 --> 00:48:43,656 どうぞ 読んでください 私の全てを懸けたものです 354 00:48:43,656 --> 00:48:47,660 あき子さん この長い年月➡ 355 00:48:47,660 --> 00:48:49,662 たとえ いっときでも 半時でも➡ 356 00:48:49,662 --> 00:48:55,668 私の心が あなたのもので なかったことがあったでしょうか 357 00:48:55,668 --> 00:48:58,671 私は それを あなたに知ってもらいたかった 358 00:48:58,671 --> 00:49:00,671 それを書いてきたのです 359 00:49:06,679 --> 00:49:09,682 私は ゆうべ 考えました 360 00:49:09,682 --> 00:49:14,687 あなたを殺して 私も死んだら どんなに楽だろうと➡ 361 00:49:14,687 --> 00:49:17,687 ひと晩中 考えました 362 00:49:32,672 --> 00:49:34,572 私は人妻です 363 00:49:37,677 --> 00:49:41,677 どうして あなたは 人妻を 求めなければならないんでしょう 364 00:49:43,683 --> 00:49:50,583 それが 私たちを破滅さすことを お考えになれないんでしょうか 365 00:49:53,659 --> 00:49:56,662 ≪(廉太郎)お母様 ただいま 366 00:49:56,662 --> 00:49:59,662 あっ… おかえんなさい 367 00:50:01,667 --> 00:50:04,667 廉太郎も大きくなりましたの 368 00:50:12,678 --> 00:50:14,680 竜ノ口さん 369 00:50:14,680 --> 00:50:18,680 私は いつも あなたのことを 祈り続けてまいりました 370 00:50:25,691 --> 00:50:31,691 でも 私は 運命の摂理に 従うよりほかはないのです 371 00:50:39,672 --> 00:50:44,672 今日は どうぞ このまま お帰りください 372 00:50:54,687 --> 00:51:00,693 いつか 遠い将来に もっと気安い心で➡ 373 00:51:00,693 --> 00:51:03,693 あなたに お会いできる日が あるだろうと思います 374 00:51:30,689 --> 00:51:33,692 私は いつまでも あなたを待ちます 375 00:51:33,692 --> 00:51:36,592 あなたの心が自由になれるまで 376 00:51:40,666 --> 00:51:44,666 私の生きているかぎり 待ちます 377 00:51:48,674 --> 00:51:51,677 <35になった年の11月➡ 378 00:51:51,677 --> 00:51:56,682 私は この山の中の生活を始めました> 379 00:51:56,682 --> 00:51:59,685 <待つという寂しさ> 380 00:51:59,685 --> 00:52:04,690 <それが 自分に負わされた運命なら➡ 381 00:52:04,690 --> 00:52:10,663 自分は その寂しさに 徹しようと思ったからです> 382 00:52:10,663 --> 00:52:13,666 <雁の渡る秋の夜➡ 383 00:52:13,666 --> 00:52:18,671 寂しさが 私を眠らせなかったことが➡ 384 00:52:18,671 --> 00:52:21,674 幾晩かありました> 385 00:52:21,674 --> 00:52:25,678 このストーブも5回目の冬です 386 00:52:25,678 --> 00:52:28,681 しかし どんな苦しみに耐えても➡ 387 00:52:28,681 --> 00:52:33,686 あの人の傍らで 少しの間でも 幸福に暮らせたら➡ 388 00:52:33,686 --> 00:52:37,586 それで 全ての苦しみが償われるのです 389 00:52:42,695 --> 00:52:45,664 あなたは幸せです 390 00:53:03,682 --> 00:53:08,687 私は 絶えず 愛人に 呼び続けられているのです 391 00:53:08,687 --> 00:53:11,687 愛する人は死なれたのですか? 392 00:53:13,692 --> 00:53:18,697 私を愛するあまり 自殺をしたのです 393 00:55:58,691 --> 00:56:03,696 《あき子さんは生きている 生きているんだ》 394 00:56:03,696 --> 00:56:09,696 《でも もし 死んでいたら もし 死んでいたら どうする》 395 00:56:32,691 --> 00:56:34,591 竜ノ口です 396 00:56:37,696 --> 00:56:40,699 廉太郎君ですね? (廉太郎)はあ 397 00:56:40,699 --> 00:56:43,699 お母さんは ご健在ですか? (廉太郎)はあ 398 00:56:46,705 --> 00:56:50,676 これをお母さんにお渡しください 399 00:56:50,676 --> 00:56:52,678 はあ 分かりました 400 00:56:52,678 --> 00:56:54,678 失礼します 401 00:57:03,689 --> 00:57:06,692 どなた? 竜ノ口さんです 402 00:57:06,692 --> 00:57:08,692 これを置いていきました 403 00:57:13,699 --> 00:57:15,701 竜ノ口さんから? ええ 404 00:57:15,701 --> 00:57:18,701 あさって また お見えになるそうです 405 00:57:50,702 --> 00:57:54,706 《天に近い清浄な雪の中で➡ 406 00:57:54,706 --> 00:57:58,677 寒さと寂寥に対立しながら➡ 407 00:57:58,677 --> 00:58:02,681 ただ ひと筋に あなたを思い続けてきたのです》 408 00:58:02,681 --> 00:58:07,686 《以下の手記は 私の 山の生活記録です》 409 00:58:53,699 --> 00:58:56,699 《あき子 あき子》 410 00:59:01,707 --> 00:59:06,678 《私にとって 生きていることは苦しみだ》 411 00:59:06,678 --> 00:59:08,680 《先の分からぬ運命に➡ 412 00:59:08,680 --> 00:59:12,684 じりじり さいなまれるのが たまらなかった》 413 01:00:01,700 --> 01:00:04,703 《ランプを標的にして➡ 414 01:00:04,703 --> 01:00:09,708 弾が当たったら 一気に自決しよう》 415 01:00:09,708 --> 01:00:12,711 《もし 外れたら➡ 416 01:00:12,711 --> 01:00:17,683 この忍耐を続けて あの人の許す日を待とう》 417 01:00:39,705 --> 01:00:41,705 《死ねるぞ》 418 01:00:44,710 --> 01:00:48,714 《私は 苦しみから解放されるのだ》 419 01:01:19,711 --> 01:01:22,714 《あき子 あき子》 420 01:01:22,714 --> 01:01:26,714 《私は どうして あなたを 思い切ることができよう》 421 01:01:31,690 --> 01:01:33,692 《私と あなたを➡ 422 01:01:33,692 --> 01:01:36,592 別れさせようとする 死に神に向かって…》 423 01:01:57,716 --> 01:02:05,690 ≪(泣き声) 424 01:02:18,703 --> 01:02:22,707 お母さん どうかしたんですか? 425 01:02:22,707 --> 01:02:25,710 いいえ 何でもないの 426 01:02:33,685 --> 01:02:36,688 お返事を書こうと思いましたが➡ 427 01:02:36,688 --> 01:02:40,688 お目にかかって申し上げたほうが いいかと思いまして 428 01:02:42,694 --> 01:02:46,694 お手紙 よく拝見いたしました 429 01:02:54,706 --> 01:03:00,712 昔 私が愛の告白をしたばかりに➡ 430 01:03:00,712 --> 01:03:05,717 あなたの生活を ご不幸にしたように思います 431 01:03:05,717 --> 01:03:10,689 その心なさを 今となっては➡ 432 01:03:10,689 --> 01:03:13,692 どんなに おわびしているか 分かりません 433 01:03:13,692 --> 01:03:15,694 どうしてでしょう? 434 01:03:15,694 --> 01:03:17,696 私は私のために生きました 435 01:03:17,696 --> 01:03:20,699 好んで こうしてきたのです 436 01:03:20,699 --> 01:03:24,703 一度も あなたを恨んだり 憎んだりしたことはありません 437 01:03:24,703 --> 01:03:30,709 私には この生き方が いちばん生きがいがあったのです 438 01:03:30,709 --> 01:03:33,712 少しも悔いていません 439 01:03:33,712 --> 01:03:35,612 よく分かります 440 01:03:37,716 --> 01:03:42,687 私 どんなに あなたを避けたでしょう 441 01:03:42,687 --> 01:03:48,687 でも 私の もうひとつの心は あなたをお呼びしてたんですわ 442 01:03:50,695 --> 01:03:55,700 私 どんなに あなたに お会いしたかったでしょう 443 01:03:55,700 --> 01:03:59,704 あき子さん 僕は どんなに うれしいかしれません 444 01:03:59,704 --> 01:04:06,711 今こそ 申し上げますが 私は ただ➡ 445 01:04:06,711 --> 01:04:14,719 妻という 母親という名のために 耐えました 446 01:04:14,719 --> 01:04:20,692 夫と子供のために 年を取りました 447 01:04:37,709 --> 01:04:39,711 あき子さん 448 01:04:55,694 --> 01:04:57,696 あと3年たったら➡ 449 01:04:57,696 --> 01:05:00,696 おいでくださっても ようございますわ 450 01:05:02,701 --> 01:05:06,705 ホントでしょうか? それは 451 01:05:06,705 --> 01:05:08,705 ええ 452 01:05:12,711 --> 01:05:17,711 そのころには きっと お互いの道が開けると思います 453 01:05:19,718 --> 01:05:24,723 あき子さん 3年たったら 必ず お迎えにまいります 454 01:05:24,723 --> 01:05:28,723 ええ お待ちしていますわ 455 01:06:38,697 --> 01:06:43,702 お母さん 体をさすりましょうか? 456 01:06:43,702 --> 01:06:48,707 いいの 今は楽だから 457 01:06:48,707 --> 01:06:52,711 僕 お母さんに話があるんですけど 458 01:06:52,711 --> 01:06:56,715 どうしたの? 459 01:06:56,715 --> 01:07:01,720 お母さんは どうして言ってくれないんです? 460 01:07:01,720 --> 01:07:03,722 何を? 461 01:07:03,722 --> 01:07:08,727 今日まで 僕からは言えなかったんです 462 01:07:08,727 --> 01:07:14,727 僕は お母さんの留守に 竜ノ口さんの手紙を読みました 463 01:07:17,702 --> 01:07:21,706 僕は お母さんが どうして あの人と結婚しないのか➡ 464 01:07:21,706 --> 01:07:23,708 悔しく思っていました 465 01:07:23,708 --> 01:07:27,712 お父さんは フランスの土になる人です 466 01:07:27,712 --> 01:07:31,716 どうして お母さんは いつまでも 忍従ばかりなさるのです? 467 01:07:50,702 --> 01:07:58,710 あなたの その理解なさる日を 待っていましたの 468 01:08:18,696 --> 01:08:22,696 廉太郎さん ありがとう 469 01:08:25,703 --> 01:08:28,706 何よりの贈りものね 470 01:08:51,729 --> 01:08:54,699 ≪(ノック) ≪(村人)竜ノ口さん 471 01:09:00,705 --> 01:09:03,708 (村人)下で電報を頼まれましてな ああ ありがとう 472 01:09:03,708 --> 01:09:06,711 おやすみ 473 01:09:06,711 --> 01:09:08,713 ご苦労さまでした 474 01:09:24,729 --> 01:09:32,704 「弱い私が お約束の日まで 生きていたことを➡ 475 01:09:32,704 --> 01:09:35,707 褒めてくださいませ」 476 01:09:45,717 --> 01:09:53,725 「私の心は 地上では果たせませんでした」 477 01:09:53,725 --> 01:10:01,625 「でも どうぞ この私を お許しくださいませ」 478 01:10:04,702 --> 01:10:06,702 「私は…」 479 01:10:40,705 --> 01:10:43,705 お母さんは ご健在ですか? 480 01:10:45,710 --> 01:10:49,710 竜ノ口さん 母は… 481 01:10:56,721 --> 01:10:58,721 2階にいます 482 01:12:05,723 --> 01:12:08,726 竜ノ口さん 483 01:12:21,706 --> 01:12:23,708 これが遺言でした 484 01:12:56,708 --> 01:13:02,714 母は あなたのおいでを 随分 お待ちしていました 485 01:15:31,729 --> 01:15:36,734 <私は 天国にいるあの人に➡ 486 01:15:36,734 --> 01:15:40,738 便りする たったひとつの方法を 見つけたのです>