1 00:00:28,440 --> 00:00:48,460 ・~ 2 00:00:48,460 --> 00:01:08,450 ・~ 3 00:01:08,450 --> 00:01:23,460 ・~ 4 00:01:23,460 --> 00:01:27,470 (竜ノ口) <信じ難いと思われるでしょう> 5 00:01:27,470 --> 00:01:32,440 <信じるということが 今の世の人にとって・ 6 00:01:32,440 --> 00:01:35,440 いかに 困難なことかということは・ 7 00:01:35,440 --> 00:01:38,450 私も よく知っています> 8 00:01:38,450 --> 00:01:42,450 <それでいて 最も信じ難いことを・ 9 00:01:42,450 --> 00:01:48,460 最も熱烈に信じているという この狂熱に近い話を・ 10 00:01:48,460 --> 00:01:52,460 どうぞ 判断していただきたいのです> 11 00:01:52,460 --> 00:02:12,450 ・~ 12 00:02:12,450 --> 00:02:32,470 ・~ 13 00:02:32,470 --> 00:02:45,450 ・~ 14 00:02:45,450 --> 00:02:57,460 ・~ 15 00:02:57,460 --> 00:02:59,460 (銃声) 16 00:02:59,460 --> 00:03:19,450 ・~ 17 00:03:19,450 --> 00:03:39,470 ・~ 18 00:03:39,470 --> 00:03:56,450 ・~ 19 00:03:56,450 --> 00:03:59,450 (殴る音) 20 00:04:04,460 --> 00:04:06,460 (男性)よしてください 21 00:04:06,460 --> 00:04:08,460 (竜ノ口)死ぬぞ 22 00:04:08,460 --> 00:04:11,460 それを待っているのです バカな! 23 00:04:11,460 --> 00:04:23,360 ・~ 24 00:04:50,470 --> 00:04:56,480 「憧れ知る人でなくて どうして 私の悩みが分かろう」 25 00:04:56,480 --> 00:05:05,450 「全ての喜びから引き裂かれて ただひとり 大空をかなたへ遠く」 26 00:05:05,450 --> 00:05:12,460 「ああ 我を恋い 我を知る人は 遠く かなたの空にいる」 27 00:05:12,460 --> 00:05:19,470 「この目は めまいし この五臓は たぎるばかり」 28 00:05:19,470 --> 00:05:24,470 「憧れ知る人でなくて どうして 私の悩みが分かろう」 29 00:05:28,470 --> 00:05:33,470 ミニヨンの歌ですね? ええ 30 00:05:40,450 --> 00:05:43,450 どうです? メシを食いませんか? 31 00:05:55,470 --> 00:05:57,470 よかったら もっと どうです? 32 00:06:47,450 --> 00:06:49,460 よしたまえ! 33 00:06:49,460 --> 00:06:52,460 離してください 34 00:06:52,460 --> 00:06:55,460 どうしても行くなら 私も行く 35 00:06:55,460 --> 00:06:59,460 迷惑です 私も迷惑だ 36 00:07:33,470 --> 00:07:36,470 寝ずに監視ですか? 37 00:07:38,470 --> 00:07:41,470 ひどく冷え込んできている 38 00:07:52,450 --> 00:07:55,450 どうして こんな生活をしてるのです? 39 00:08:00,460 --> 00:08:04,360 他人の秘密を聞く興味も ないんですが 40 00:08:07,470 --> 00:08:10,470 みんな きちがいだと言っている 41 00:08:10,470 --> 00:08:14,470 あなたは どこの大学? 東京 42 00:08:14,470 --> 00:08:16,480 私は京都だ 43 00:08:16,480 --> 00:08:19,480 あなたになら どんなことを 言ってもいいようだね 44 00:08:23,480 --> 00:08:26,450 私が高等学校時代です 45 00:08:26,450 --> 00:08:46,470 ・~ 46 00:08:46,470 --> 00:09:06,460 ・~ 47 00:09:06,460 --> 00:09:26,480 ・~ 48 00:09:26,480 --> 00:09:37,460 ・~ 49 00:09:37,460 --> 00:09:39,460 <1年ほどの間・ 50 00:09:39,460 --> 00:09:42,460 金曜日には きっと出会ったお嬢さんが・ 51 00:09:42,460 --> 00:09:46,470 ぷっつり 姿を見せなくなったのです> 52 00:09:46,470 --> 00:10:06,490 ・~ 53 00:10:06,490 --> 00:10:13,460 ・~ 54 00:10:13,460 --> 00:10:16,460 <それから3年目の6月> 55 00:10:16,460 --> 00:10:22,470 <友人の姉が亡くなった そのお通夜の晩だった> 56 00:10:22,470 --> 00:10:42,490 ・~ 57 00:10:42,490 --> 00:11:02,480 ・~ 58 00:11:02,480 --> 00:11:13,490 ・~ 59 00:11:13,490 --> 00:11:16,490 お1人では 気味の悪いような道です 60 00:11:16,490 --> 00:11:20,460 (あき子)ええ お連れがあって ホッといたしました 61 00:11:20,460 --> 00:11:22,460 亡くなられたお方は お友達ですか? 62 00:11:22,460 --> 00:11:24,460 同級生でございました 63 00:11:24,460 --> 00:11:32,470 ・~ 64 00:11:32,470 --> 00:11:35,470 こんなふうに お会いするとは 思いませんでした 65 00:11:35,470 --> 00:11:37,480 私も 66 00:11:37,480 --> 00:11:41,480 いつも金曜日でしたね ええ 67 00:11:41,480 --> 00:11:44,480 王禅寺の和尚様の ご法話をお伺いにまいった・ 68 00:11:44,480 --> 00:11:47,490 その帰り道でした 69 00:11:47,490 --> 00:11:51,490 禅の講義ですか? ええ 70 00:11:51,490 --> 00:11:54,460 私には分からないのですけど・ 71 00:11:54,460 --> 00:11:56,460 亡くなった父が 尊敬しておりましたので・ 72 00:11:56,460 --> 00:11:59,460 お墓掃除を兼ねて伺いましたの 73 00:12:03,470 --> 00:12:05,470 流星です 74 00:12:10,480 --> 00:12:13,480 私は 星空を見て歩く癖があります 75 00:12:13,480 --> 00:12:17,480 私は 文学や絵画などに 趣味がありません 76 00:12:17,480 --> 00:12:20,480 天体物理学を 専攻しているものですから 77 00:12:23,490 --> 00:12:28,460 私は あそこから5軒目の家の 離れに下宿しています 78 00:12:28,460 --> 00:12:32,470 ああ そうですか 79 00:12:32,470 --> 00:12:35,470 では ありがとうございました おやすみあそばせ 80 00:12:35,470 --> 00:12:37,470 お宅までお送りします 81 00:12:37,470 --> 00:12:40,470 いいえ 結構でございます どうぞ おかまいなく 82 00:12:40,470 --> 00:12:43,480 お送りします 夜更けですから 83 00:12:43,480 --> 00:12:46,480 はあ ありがとうございます 84 00:12:50,480 --> 00:12:54,490 ペガサス星座の辺ですね ええ 85 00:12:54,490 --> 00:13:06,470 ・~ 86 00:13:06,470 --> 00:13:10,470 <お通夜から4~5日目の 日曜だった> 87 00:13:10,470 --> 00:13:26,490 ・~ 88 00:13:26,490 --> 00:13:31,490 先夜は ありがとうございました いいえ 89 00:13:31,490 --> 00:13:34,490 粗末な物ですけど そんなこと困ります 90 00:13:34,490 --> 00:13:38,460 いいえ ほんのお口汚しでございます 91 00:13:38,460 --> 00:13:40,460 ありがとうございます 92 00:13:44,470 --> 00:13:46,470 突然 お伺いして・ 93 00:13:46,470 --> 00:13:49,480 ご勉強のお邪魔になって 相すみません 94 00:13:49,480 --> 00:13:51,480 いいえ 日曜は いつも遊びです 95 00:13:51,480 --> 00:13:53,480 さっきまで 退屈しのぎに・ 96 00:13:53,480 --> 00:13:57,480 ここの子供さんから これを借りて 読んでいました 97 00:14:05,490 --> 00:14:07,490 童話集ですのね 98 00:14:07,490 --> 00:14:11,490 ええ 私のは堅い本ばかりで 日曜は困ります 99 00:14:26,480 --> 00:14:28,480 私 これで失礼いたします 100 00:14:28,480 --> 00:14:30,480 どうぞ ごゆっくりなすってください 101 00:14:30,480 --> 00:14:34,490 はあ… 子供が待っておりますから 102 00:14:34,490 --> 00:14:36,490 子供さん? 103 00:14:38,490 --> 00:14:43,500 あの道で あなた様にお会いした明くる月・ 104 00:14:43,500 --> 00:14:47,470 結婚いたしました 105 00:14:47,470 --> 00:14:50,470 ご主人は? 106 00:14:50,470 --> 00:14:53,470 フランスにまいっております 107 00:14:53,470 --> 00:14:56,480 <それから3日目に・ 108 00:14:56,480 --> 00:15:00,480 「日曜日の退屈しのぎに お読みください」という・ 109 00:15:00,480 --> 00:15:02,480 葉書と一緒に送ってきた> 110 00:15:02,480 --> 00:15:14,490 ・~ 111 00:15:14,490 --> 00:15:26,470 ・~ 112 00:15:26,470 --> 00:15:29,480 <次に この本が送ってきた> 113 00:15:29,480 --> 00:15:49,500 ・~ 114 00:15:49,500 --> 00:15:51,500 <2枚の しおりは・ 115 00:15:51,500 --> 00:15:55,470 私に宛てて書いたものとは 思えなかったが・ 116 00:15:55,470 --> 00:15:58,470 私は なぜか・ 117 00:15:58,470 --> 00:16:01,370 じっとしていることが できなかった> 118 00:16:03,480 --> 00:16:09,480 <友達の亡き姉の四十九日の 法事の帰り道だった> 119 00:16:09,480 --> 00:16:17,490 ・~ 120 00:16:17,490 --> 00:16:20,490 もったいないですね ええ 121 00:16:20,490 --> 00:16:25,500 でも ご供養になりますわ じゃあ その意味で 122 00:16:25,500 --> 00:16:34,470 ・~ 123 00:16:34,470 --> 00:16:38,480 お年寄りのようなコイですのね いくつぐらいでしょうかしら 124 00:16:38,480 --> 00:16:42,480 さあ… 今度 動物学の先生に 聞いてみましょう 125 00:16:45,480 --> 00:16:47,490 これは もったいないです 126 00:16:47,490 --> 00:16:49,490 このおいしさは コイには分からないでしょう 127 00:16:49,490 --> 00:16:56,500 フフッ… どうぞ 動物学の先生に お聞きくださいませ フフフ… 128 00:16:56,500 --> 00:17:06,470 ・~ 129 00:17:06,470 --> 00:17:09,480 このごろ おかげさまで 文学が すっかり好きになりました 130 00:17:09,480 --> 00:17:11,480 フフッ… でも かえって・ 131 00:17:11,480 --> 00:17:13,480 ご勉強のお妨げに なるんじゃないでしょうかしら 132 00:17:13,480 --> 00:17:17,480 いいえ 文学によって 自分の心が 開けていくような気がしますよ 133 00:17:20,490 --> 00:17:30,500 (小鳥の鳴き声) 134 00:17:30,500 --> 00:17:33,500 いい声ですね 135 00:17:33,500 --> 00:17:36,500 せせらぎにいるような 気がいたします 136 00:17:36,500 --> 00:17:42,470 お世話が大変でしょうね フフフ… どうせ 暇人ですから 137 00:17:42,470 --> 00:17:46,480 (小鳥の鳴き声) 138 00:17:46,480 --> 00:18:02,490 ・~ 139 00:18:02,490 --> 00:18:05,500 ご主人は いつ フランスから お帰りになるんですか? 140 00:18:05,500 --> 00:18:10,500 さあ… いつ 里心がつきますか 141 00:18:15,470 --> 00:18:17,470 竜ノ口さん 142 00:18:20,480 --> 00:18:24,480 いいえ 何でもないの 143 00:18:24,480 --> 00:18:27,490 ただ 私は こんな楽しい日が・ 144 00:18:27,490 --> 00:18:31,490 いつまで続くかと 考えていましたの 145 00:18:34,490 --> 00:18:36,500 あき子さん 146 00:18:36,500 --> 00:18:40,500 私は いつまでも続くように 祈っています 147 00:18:40,500 --> 00:19:00,490 ・~ 148 00:19:00,490 --> 00:19:11,500 ・~ 149 00:19:11,500 --> 00:19:15,500 <秋風が立つころだった> 150 00:19:15,500 --> 00:19:27,480 ・~ 151 00:19:27,480 --> 00:19:39,490 ・~ 152 00:19:39,490 --> 00:19:43,500 ああ よくいらっしゃいました どうぞ 153 00:19:43,500 --> 00:19:45,500 ええ… 154 00:19:45,500 --> 00:19:55,510 ・~ 155 00:19:55,510 --> 00:19:59,480 どうかなさったんですか? 156 00:19:59,480 --> 00:20:04,480 私 お別れにまいりましたの 157 00:20:08,490 --> 00:20:10,490 どういう意味でしょう? 158 00:20:14,490 --> 00:20:19,500 今のうちは 何か 姉弟のように親しくて・ 159 00:20:19,500 --> 00:20:22,500 私は幸せなのですけど 160 00:20:22,500 --> 00:20:26,510 このまま おつきあいを続けていますと・ 161 00:20:26,510 --> 00:20:31,480 私 自分が苦しくなりそうに 思われてまいりましたの 162 00:20:31,480 --> 00:20:34,480 私は友情と考えていました 163 00:20:34,480 --> 00:20:37,480 このままで お互いの立場が・ 164 00:20:37,480 --> 00:20:40,490 決して 苦しくなるようなことは ないと思いますが 165 00:20:40,490 --> 00:20:45,490 でも 私 もう決心してまいりました 166 00:20:45,490 --> 00:20:58,500 ・~ 167 00:20:58,500 --> 00:21:10,480 ・~ 168 00:21:10,480 --> 00:21:13,490 どうぞ お帰りになって 169 00:21:13,490 --> 00:21:17,490 もう これっきり お目にかかれないんですか? 170 00:21:17,490 --> 00:21:21,490 ええ そう決心してまいりましたの 171 00:21:21,490 --> 00:21:30,500 ・~ 172 00:21:30,500 --> 00:21:32,500 あき子さん… 173 00:21:32,500 --> 00:21:39,510 ・~ 174 00:21:39,510 --> 00:21:41,480 竜ノ口さん 175 00:21:41,480 --> 00:21:47,490 私は 26の今まで あなたのような方に・ 176 00:21:47,490 --> 00:21:50,490 一度も お会いしたことは ありませんでした 177 00:21:50,490 --> 00:21:58,500 ・~ 178 00:21:58,500 --> 00:22:02,400 私は いつの間にか… 179 00:22:04,500 --> 00:22:08,510 あなたを お愛し申し上げておりました 180 00:22:08,510 --> 00:22:13,510 私も あなたが好きです たまらなく好きです 181 00:22:13,510 --> 00:22:18,480 好きということが 愛しているということなら・ 182 00:22:18,480 --> 00:22:21,490 私も あなたを愛しています 183 00:22:21,490 --> 00:22:24,490 どうぞ おっしゃらないで 184 00:22:24,490 --> 00:22:27,490 それは許されないことですわ 185 00:22:29,490 --> 00:22:34,500 私たちは いつまでも よいお友達として・ 186 00:22:34,500 --> 00:22:37,500 あなたを傷つけず・ 187 00:22:37,500 --> 00:22:40,510 私も 妻として 母として 生きていこうと・ 188 00:22:40,510 --> 00:22:43,510 どんなに考えたかしれません 189 00:22:43,510 --> 00:22:48,510 でも あなたに お目にかかって・ 190 00:22:48,510 --> 00:22:51,510 私 そんな自信がなくなりました 191 00:22:55,490 --> 00:23:01,490 でも また いつか よいお友達として・ 192 00:23:01,490 --> 00:23:04,490 お目にかかれる日が ないとも限りませんけど 193 00:23:07,500 --> 00:23:11,500 もう それまでは お目にかかりません 194 00:23:11,500 --> 00:23:23,520 ・~ 195 00:23:23,520 --> 00:23:28,490 《私は もう 最後のお別れをいたしました》 196 00:23:28,490 --> 00:23:33,490 《でも たとえ 一生 このままに なってしまいましても・ 197 00:23:33,490 --> 00:23:36,500 生きているかぎり 私は・ 198 00:23:36,500 --> 00:23:41,500 いつも いつも あなた様のことを お祈りいたしております》 199 00:23:41,500 --> 00:23:47,510 《それが せめてもの 私の慰めです》 200 00:23:47,510 --> 00:23:52,510 《どうぞ 今後 お友達をお選びになるときは・ 201 00:23:52,510 --> 00:23:57,520 私のような罪深い者は お選びくださいますな》 202 00:23:57,520 --> 00:23:59,480 《では》 203 00:23:59,480 --> 00:24:19,500 ・~ 204 00:24:19,500 --> 00:24:30,520 ・~ 205 00:24:30,520 --> 00:24:32,520 ・(廉太郎)お母様 おやすみなさい 206 00:24:32,520 --> 00:24:35,490 ・ おやすみなさい あとで また行ってあげますからね 207 00:24:35,490 --> 00:24:37,490 ・ うん 208 00:24:40,490 --> 00:24:42,490 (ドアが開く音) 209 00:24:49,500 --> 00:24:52,500 失礼しました 210 00:24:52,500 --> 00:24:54,510 子供が あした 遠足なものですから・ 211 00:24:54,510 --> 00:24:57,510 早く休ませましたの 212 00:24:59,510 --> 00:25:02,510 よく お分かりになりましたわね 213 00:25:02,510 --> 00:25:04,520 どうしても会いたかったんです 214 00:25:04,520 --> 00:25:08,490 お越しになったと知って たまらなくなって やって来ました 215 00:25:08,490 --> 00:25:14,490 越したのは 家庭の事情も あってのことなんですけれど 216 00:25:16,500 --> 00:25:19,500 私は 心構えの できてないときに打ち込まれて・ 217 00:25:19,500 --> 00:25:22,500 ただ まいってしまいました 218 00:25:22,500 --> 00:25:25,500 どうしていいのか 途方に暮れましたが… 219 00:25:30,510 --> 00:25:33,510 どうしても お会いせずに いられなかったんです 220 00:25:39,520 --> 00:25:45,520 私 もう お会いしないと 固い決心いたしました 221 00:25:52,500 --> 00:25:57,500 こんなこと 申し上げずにおこうと 思ったのですけれど… 222 00:26:03,510 --> 00:26:08,510 主人は あちらで 愛人ができてるということを・ 223 00:26:08,510 --> 00:26:11,520 ある知人から 便りがございました 224 00:26:11,520 --> 00:26:15,520 主人からも その悩みを 打ち明けた便りがまいり・ 225 00:26:15,520 --> 00:26:18,520 それには 私の裁きを待つというのです 226 00:26:20,490 --> 00:26:25,500 私には 人を裁く資格などございません 227 00:26:25,500 --> 00:26:31,500 自分が 母として 妻としての 節操を裏切るようなことは・ 228 00:26:31,500 --> 00:26:36,510 自分ながら さもしいように思われました 229 00:26:36,510 --> 00:26:41,510 「ただ いつまでも お帰りを待っております」と・ 230 00:26:41,510 --> 00:26:44,510 私 主人に申し送りましたの 231 00:26:49,520 --> 00:26:53,490 私 毎晩 あなたのお手紙を出して・ 232 00:26:53,490 --> 00:26:57,500 全部 読みました 233 00:26:57,500 --> 00:27:00,500 読み直さないと 眠られなかったものですから 234 00:27:05,500 --> 00:27:09,500 (すすり泣き) 235 00:27:15,510 --> 00:27:19,520 分かりました 236 00:27:19,520 --> 00:27:21,520 もう お目にかかりません 237 00:27:24,520 --> 00:27:28,520 私の差し上げた手紙を 返していただきましょうか 238 00:28:08,500 --> 00:28:23,520 ・~ 239 00:28:23,520 --> 00:28:26,520 じゃあ これで 240 00:28:29,520 --> 00:28:33,530 もう これっきりですのね ええ 241 00:28:33,530 --> 00:28:44,500 ・~ 242 00:28:44,500 --> 00:28:55,510 ・~ 243 00:28:55,510 --> 00:29:02,520 <それから2年の間 私は あの人に会いませんでした> 244 00:29:02,520 --> 00:29:08,530 <私は あの人の苦しみが分かり それを尊敬し・ 245 00:29:08,530 --> 00:29:13,500 あの人の心を主にして それに従うことに・ 246 00:29:13,500 --> 00:29:18,500 本当の愛を見つけていこうと 考えていたのです> 247 00:29:18,500 --> 00:29:22,510 <すると 2年目の6月・ 248 00:29:22,510 --> 00:29:26,510 突然 あの人から手紙が来たのです> 249 00:29:26,510 --> 00:29:30,520 <それには 「新聞で見た」といって・ 250 00:29:30,520 --> 00:29:35,520 私の父の死に対する哀悼が 述べてあり・ 251 00:29:35,520 --> 00:29:41,530 「自分は やっと 過去の心境から 出ることができたように思う」と・ 252 00:29:41,530 --> 00:29:45,500 書いてあったのです> 253 00:29:45,500 --> 00:29:47,500 こんなに早く お目にかかれると 思いませんでしたわ 254 00:29:47,500 --> 00:29:49,500 お手紙いただいて・ 255 00:29:49,500 --> 00:29:52,500 矢も盾もたまらなくなって まいりました 256 00:29:54,510 --> 00:29:58,510 本当に夢のような気がします 257 00:29:58,510 --> 00:30:02,510 ここで お別れして 2年になりますわね 258 00:30:02,510 --> 00:30:07,520 あなたは 少し お年をお取りになったかしら 259 00:30:07,520 --> 00:30:10,520 学校は? 春 卒業しました 260 00:30:10,520 --> 00:30:13,530 ホントに立派におなりになって 261 00:30:13,530 --> 00:30:16,530 あなたも 少しも変わりませんね 262 00:30:16,530 --> 00:30:18,530 フフッ… 263 00:30:24,500 --> 00:30:27,510 「愛欲の垢 尽きれば 道見ゆ」 264 00:30:27,510 --> 00:30:31,510 王禅寺の和尚様が 書いてくださったんですけど 265 00:30:35,510 --> 00:30:38,510 私には いつ 道が見えるかしら 266 00:30:41,520 --> 00:30:45,520 <それから 3度目に会ったときです> 267 00:30:45,520 --> 00:31:05,510 ・~ 268 00:31:05,510 --> 00:31:23,530 ・~ 269 00:31:23,530 --> 00:31:26,530 ああ… もう 宵月が出ていますわ 270 00:31:26,530 --> 00:31:30,500 十三夜ぐらいです 271 00:31:30,500 --> 00:31:32,500 いい思い出になりますわ 272 00:31:35,510 --> 00:31:37,510 大事に取っておきます 273 00:31:37,510 --> 00:31:44,520 ・~ 274 00:31:44,520 --> 00:31:47,520 今日は 偶然 金曜日ですね 275 00:31:50,520 --> 00:31:53,530 ええ 276 00:31:53,530 --> 00:31:59,530 あのころ 金曜日に あなたに お会いするのが生きがいでした 277 00:31:59,530 --> 00:32:01,530 私も 278 00:32:01,530 --> 00:32:04,500 ああして あなたに お会いする度に・ 279 00:32:04,500 --> 00:32:08,510 自分が女学生だったらと 思いましたわ 280 00:32:08,510 --> 00:32:28,530 ・~ 281 00:32:28,530 --> 00:32:48,510 ・~ 282 00:32:48,510 --> 00:33:00,530 ・~ 283 00:33:00,530 --> 00:33:11,500 ・~ 284 00:33:11,500 --> 00:33:13,500 あき子さん 285 00:33:15,510 --> 00:33:18,510 あなたは なぜ 結婚なんかなすったんです? 286 00:33:18,510 --> 00:33:33,520 ・~ 287 00:33:33,520 --> 00:33:37,530 あなたと 永久に 一緒には住めないでしょうか 288 00:33:37,530 --> 00:33:52,510 ・~ 289 00:33:52,510 --> 00:33:58,520 私 自分の心が 平静に返ったと思ったのに・ 290 00:33:58,520 --> 00:34:01,520 あなたに お会いすると・ 291 00:34:01,520 --> 00:34:07,530 切なくて 苦しくて 分からなくなるのよ 292 00:34:07,530 --> 00:34:17,540 ・~ 293 00:34:17,540 --> 00:34:22,510 <それから2~3日して あの人から手紙が来た> 294 00:34:22,510 --> 00:34:24,510 <それには・ 295 00:34:24,510 --> 00:34:28,510 「また あなたとお別れするより しかたがなくなりました」・ 296 00:34:28,510 --> 00:34:30,510 という書き出しで…> 297 00:34:52,540 --> 00:34:57,510 《もう跡形もなく 打ち砕かれてしまいました》 298 00:34:57,510 --> 00:35:02,510 《私の心の弱さを どうぞ お笑いくださいませ》 299 00:35:02,510 --> 00:35:06,520 《でも この数週間 お目にかかれた日々・ 300 00:35:06,520 --> 00:35:11,520 それは どんなに うれしかったでございましょう》 301 00:35:11,520 --> 00:35:14,530 《でも 1日 遅れれば遅れるほど・ 302 00:35:14,530 --> 00:35:20,530 どうにもならなくなりそうな私を お哀れみくださいませ》 303 00:35:20,530 --> 00:35:24,540 《いくら書いても 書ききれません》 304 00:35:24,540 --> 00:35:29,540 《今の別れ難い気持ちのように これが最後と思うと・ 305 00:35:29,540 --> 00:35:35,510 筆を置くことさえが 恐ろしいように思われます》 306 00:35:35,510 --> 00:35:37,520 <そして 最後に・ 307 00:35:37,520 --> 00:35:42,520 「今は ただ 強いて忘るる いにしえを・ 308 00:35:42,520 --> 00:35:48,530 思いいでよと澄める月かな」と 書いてあった> 309 00:35:48,530 --> 00:35:53,530 <私は会いたかった くるうほど会いたかった> 310 00:35:53,530 --> 00:35:59,540 <しかし 会うことは あの人に苦しみを与えるばかりだ> 311 00:35:59,540 --> 00:36:05,540 <私は 会いたい一念を たたきのめすために必死だった> 312 00:36:05,540 --> 00:36:09,510 <もし 私たちの愛が真実の愛ならば・ 313 00:36:09,510 --> 00:36:14,520 それは 生涯を貫き 忍耐を教え・ 314 00:36:14,520 --> 00:36:18,520 絶望をも 死をも 追い払うに違いない> 315 00:36:18,520 --> 00:36:22,530 <そして 今こそ 忍耐のときだ> 316 00:36:22,530 --> 00:36:25,530 <私は あの人と同じように・ 317 00:36:25,530 --> 00:36:30,530 自分に打ち勝つことを美徳とする 精神を養おうとしたのです> 318 00:36:35,540 --> 00:36:40,510 <そして 私たちは 5年間 会わなかった> 319 00:36:40,510 --> 00:36:45,520 <そのころ 私は ある山麓の 測候所の技師になっていた> 320 00:36:45,520 --> 00:36:57,530 ・~ 321 00:36:57,530 --> 00:37:09,330 ・~ 322 00:37:20,520 --> 00:37:23,520 (女性)竜ノ口さん 323 00:37:37,540 --> 00:37:39,540 (女性)ねえ 324 00:37:42,540 --> 00:37:44,540 ここへ来ちゃいけないというのに 325 00:37:44,540 --> 00:37:48,550 でも あなたは ちっとも来てくれないんですもの 326 00:37:48,550 --> 00:37:50,520 イヤになっちゃうわ 327 00:37:50,520 --> 00:37:53,520 仕事が忙しいんだよ 328 00:37:55,520 --> 00:37:59,520 ねえ 私たちのこと どうするの? 329 00:38:02,530 --> 00:38:06,530 お父さんが待ってるわ あなたのお返事 330 00:38:06,530 --> 00:38:08,530 うん 331 00:38:10,540 --> 00:38:14,540 人が来るといけないよ 早く帰って 332 00:38:19,540 --> 00:38:21,540 お返事 早くしてね 333 00:38:25,520 --> 00:38:28,520 (ドアの開閉音) 334 00:38:37,530 --> 00:38:52,540 ・~ 335 00:38:52,540 --> 00:38:56,550 <私は あの人を思い続けながら・ 336 00:38:56,550 --> 00:39:01,520 村の娘から 結婚を 強制される立場に落ち込んでいた> 337 00:39:01,520 --> 00:39:07,530 <この私の立場を あの人は どう裁いてくれるだろう> 338 00:39:07,530 --> 00:39:13,530 <最善の道を示してくれるのは あの人以外にはないのだ> 339 00:39:13,530 --> 00:39:19,540 <あの人に相談しよう あの人の真意を聞こう> 340 00:39:19,540 --> 00:39:25,540 <いや あの人に会いたい ただ 会いたかったのです> 341 00:39:25,540 --> 00:39:45,530 ・~ 342 00:39:45,530 --> 00:40:00,540 ・~ 343 00:40:00,540 --> 00:40:03,550 やはり いらっしゃいましたのね 344 00:40:03,550 --> 00:40:07,520 来ては悪かったでしょうか? いいえ おめでたいですわ 345 00:40:07,520 --> 00:40:10,520 ご縁談のご相談なんですもの 346 00:40:10,520 --> 00:40:13,520 暑かったでしょう? お風呂へ いらしては? 347 00:40:13,520 --> 00:40:15,520 はあ 348 00:40:19,530 --> 00:40:24,540 私は その女と 結婚する意志はなかったんです 349 00:40:24,540 --> 00:40:30,540 でも 私たちは いつの間にか 肉体的になって・ 350 00:40:30,540 --> 00:40:33,540 その誘惑の中にいたことに 気づきました 351 00:40:36,550 --> 00:40:38,550 言い訳がましいですが・ 352 00:40:38,550 --> 00:40:42,550 村の卑わいな雰囲気に 負けてしまったのです 353 00:40:44,520 --> 00:40:46,520 そんなことがあって・ 354 00:40:46,520 --> 00:40:49,530 結婚なさらないなんて いけませんわ 355 00:40:49,530 --> 00:40:53,530 その方が かわいそうじゃありませんか 356 00:40:53,530 --> 00:40:58,530 さあ 早くお帰りなさい そのほうがいいのよ 357 00:41:03,540 --> 00:41:06,540 私は あなたが いつも良心的で・ 358 00:41:06,540 --> 00:41:09,550 そういう方の 味方になっておあげになるよう・ 359 00:41:09,550 --> 00:41:11,550 祈っていますわ 360 00:41:14,550 --> 00:41:16,520 何か 私に・ 361 00:41:16,520 --> 00:41:19,520 怒っていらっしゃるんじゃ ないでしょうか 362 00:41:19,520 --> 00:41:23,530 私がですか? ええ 363 00:41:23,530 --> 00:41:25,530 どうして そんなこと… 364 00:41:25,530 --> 00:41:29,530 私 今 やっと 救われたような 気がしていますのに 365 00:41:29,530 --> 00:41:32,530 私から救われたと おっしゃるんですか? 366 00:41:44,550 --> 00:41:46,550 いけません 367 00:41:49,550 --> 00:41:52,520 早くお帰りになってね 368 00:41:52,520 --> 00:42:03,530 ・~ 369 00:42:03,530 --> 00:42:06,540 早くお帰りになって・ 370 00:42:06,540 --> 00:42:09,540 その方と 結婚してあげていただきたいわ 371 00:42:09,540 --> 00:42:18,550 ・~ 372 00:42:18,550 --> 00:42:21,550 そうします 373 00:42:21,550 --> 00:42:26,520 それから 村の娘と結婚しましたが・ 374 00:42:26,520 --> 00:42:31,530 結局 あの人への憧れが 強くなるばかりでした 375 00:42:31,530 --> 00:42:38,540 娘も 私の得体の知れない憂鬱を 嫌いだしてきたのです 376 00:42:38,540 --> 00:42:42,540 その結婚は 1年ほどで破れました 377 00:42:42,540 --> 00:42:46,540 それから 私は 東京へ転勤になりました 378 00:42:46,540 --> 00:43:06,530 ・~ 379 00:43:06,530 --> 00:43:12,540 ・~ 380 00:43:12,540 --> 00:43:14,540 あき子さん! 381 00:43:14,540 --> 00:43:25,550 ・~ 382 00:43:25,550 --> 00:43:35,530 ・~ 383 00:43:35,530 --> 00:43:37,530 神戸にいらっしゃるとばかり 思ってました 384 00:43:37,530 --> 00:43:40,530 あなたこそ 沼津のほうかと思って 385 00:43:40,530 --> 00:43:44,540 転勤して2年になります (ウエーター)どうぞ 386 00:43:44,540 --> 00:43:46,540 (ウエーター)お預かりいたします 387 00:43:46,540 --> 00:43:48,540 何か冷たい物を はい 388 00:43:50,540 --> 00:43:54,550 私 こちらへ来てから 3年になりますの 389 00:43:54,550 --> 00:43:57,550 偶然ですね 390 00:43:57,550 --> 00:44:00,550 ホントに 391 00:44:00,550 --> 00:44:03,550 子供が 胃を悪くしてるもんですから・ 392 00:44:03,550 --> 00:44:05,560 近所の漢方医まで出かけましたの 393 00:44:05,560 --> 00:44:08,560 お会いできて こんな うれしいことはありません 394 00:44:10,530 --> 00:44:15,530 ご主人は? ええ… 395 00:44:15,530 --> 00:44:17,530 奥様は いかが? 396 00:44:17,530 --> 00:44:20,530 あなた お子さんは まだですの? 397 00:44:22,540 --> 00:44:27,540 無残な結婚生活でしたが それで得たものは・ 398 00:44:27,540 --> 00:44:33,550 あなた以外の人が 私の心に 住めないということでした 399 00:44:33,550 --> 00:44:35,550 同じ気持ちを・ 400 00:44:35,550 --> 00:44:38,560 やはり 持っていて くださるんでしょうか? 401 00:44:38,560 --> 00:44:45,530 ・~ 402 00:44:45,530 --> 00:44:48,530 せんだって 子供に叱られましたの 403 00:44:48,530 --> 00:44:51,540 学校の父兄会に うっかり 若作りで出かけましたら・ 404 00:44:51,540 --> 00:44:54,540 「お母さんらしくない」って 405 00:44:58,540 --> 00:45:00,540 お住まいは? 406 00:45:04,550 --> 00:45:07,550 まだ お会いする時期じゃないと 思いますわ 407 00:45:09,550 --> 00:45:12,560 私は 私の生涯の初めに・ 408 00:45:12,560 --> 00:45:16,560 あの人に会わなかったら よかったのかもしれません 409 00:45:16,560 --> 00:45:26,540 ・~ 410 00:45:26,540 --> 00:45:29,540 久しぶりに あの人に会い・ 411 00:45:29,540 --> 00:45:32,540 あれほど冷淡な仕打ちを 受けながら・ 412 00:45:32,540 --> 00:45:35,550 ますます あの人を愛しようとする自分を・ 413 00:45:35,550 --> 00:45:37,550 どうすることも できなかったんです 414 00:45:39,550 --> 00:45:44,560 私は 一生懸命 あの人の住まいを捜しました 415 00:45:44,560 --> 00:45:46,560 そして ある日… 416 00:45:48,560 --> 00:45:53,560 (ドアベル) 417 00:45:56,530 --> 00:45:58,540 どなたでしょうか? 418 00:45:58,540 --> 00:46:00,540 ・ 竜ノ口です 419 00:46:00,540 --> 00:46:11,550 ・~ 420 00:46:11,550 --> 00:46:22,560 ・~ 421 00:46:22,560 --> 00:46:25,560 どうぞ そのまま お帰りください 422 00:46:25,560 --> 00:46:28,530 私は まだ・ 423 00:46:28,530 --> 00:46:32,540 あなたに お目にかかることは できないように思います 424 00:46:32,540 --> 00:46:38,540 私は あなたに お会いしたくて 3週間も捜しました 425 00:46:38,540 --> 00:46:57,560 ・~ 426 00:46:57,560 --> 00:46:59,560 どうぞ 427 00:46:59,560 --> 00:47:19,550 ・~ 428 00:47:19,550 --> 00:47:39,540 ・~ 429 00:47:39,540 --> 00:47:41,540 どうぞ 430 00:47:41,540 --> 00:47:43,540 あき子さん 431 00:47:45,540 --> 00:47:47,540 これ 読んでください 432 00:47:47,540 --> 00:47:49,540 私の思うままを書いてきました 433 00:47:52,550 --> 00:47:59,560 お手紙を読ませていただいても かえって あだになるだけです 434 00:47:59,560 --> 00:48:05,560 私は また あなたと 醜い別れをしたくはありません 435 00:48:05,560 --> 00:48:10,530 どうぞ 読んでください 私の全てを懸けたものです 436 00:48:10,530 --> 00:48:14,540 あき子さん この長い年月・ 437 00:48:14,540 --> 00:48:16,540 たとえ いっときでも 半時でも・ 438 00:48:16,540 --> 00:48:22,550 私の心が あなたのもので なかったことがあったでしょうか 439 00:48:22,550 --> 00:48:25,550 私は それを あなたに知ってもらいたかった 440 00:48:25,550 --> 00:48:27,550 それを書いてきたのです 441 00:48:33,560 --> 00:48:36,560 私は ゆうべ 考えました 442 00:48:36,560 --> 00:48:41,570 あなたを殺して 私も死んだら どんなに楽だろうと・ 443 00:48:41,570 --> 00:48:44,570 ひと晩中 考えました 444 00:48:59,550 --> 00:49:01,450 私は人妻です 445 00:49:04,560 --> 00:49:08,560 どうして あなたは 人妻を 求めなければならないんでしょう 446 00:49:10,560 --> 00:49:17,460 それが 私たちを破滅さすことを お考えになれないんでしょうか 447 00:49:20,540 --> 00:49:23,540 ・(廉太郎)お母様 ただいま 448 00:49:23,540 --> 00:49:26,540 あっ… おかえんなさい 449 00:49:28,550 --> 00:49:31,550 廉太郎も大きくなりましたの 450 00:49:39,560 --> 00:49:41,560 竜ノ口さん 451 00:49:41,560 --> 00:49:45,560 私は いつも あなたのことを 祈り続けてまいりました 452 00:49:52,570 --> 00:49:58,570 でも 私は 運命の摂理に 従うよりほかはないのです 453 00:50:06,550 --> 00:50:11,550 今日は どうぞ このまま お帰りください 454 00:50:21,570 --> 00:50:27,570 いつか 遠い将来に もっと気安い心で・ 455 00:50:27,570 --> 00:50:30,570 あなたに お会いできる日が あるだろうと思います 456 00:50:57,570 --> 00:51:00,570 私は いつまでも あなたを待ちます 457 00:51:00,570 --> 00:51:03,470 あなたの心が自由になれるまで 458 00:51:07,540 --> 00:51:11,540 私の生きているかぎり 待ちます 459 00:51:15,550 --> 00:51:18,560 <35になった年の11月・ 460 00:51:18,560 --> 00:51:23,560 私は この山の中の生活を始めました> 461 00:51:23,560 --> 00:51:26,560 <待つという寂しさ> 462 00:51:26,560 --> 00:51:31,570 <それが 自分に負わされた運命なら・ 463 00:51:31,570 --> 00:51:37,540 自分は その寂しさに 徹しようと思ったからです> 464 00:51:37,540 --> 00:51:40,540 <雁の渡る秋の夜・ 465 00:51:40,540 --> 00:51:45,550 寂しさが 私を眠らせなかったことが・ 466 00:51:45,550 --> 00:51:48,550 幾晩かありました> 467 00:51:48,550 --> 00:51:52,560 このストーブも5回目の冬です 468 00:51:52,560 --> 00:51:55,560 しかし どんな苦しみに耐えても・ 469 00:51:55,560 --> 00:52:00,560 あの人の傍らで 少しの間でも 幸福に暮らせたら・ 470 00:52:00,560 --> 00:52:04,460 それで 全ての苦しみが償われるのです 471 00:52:09,570 --> 00:52:12,540 あなたは幸せです 472 00:52:12,540 --> 00:52:30,560 ・~ 473 00:52:30,560 --> 00:52:35,570 私は 絶えず 愛人に 呼び続けられているのです 474 00:52:35,570 --> 00:52:38,570 愛する人は死なれたのですか? 475 00:52:40,570 --> 00:52:45,580 私を愛するあまり 自殺をしたのです 476 00:52:45,580 --> 00:53:05,560 ・~ 477 00:53:05,560 --> 00:53:25,550 ・~ 478 00:53:25,550 --> 00:53:45,570 ・~ 479 00:53:45,570 --> 00:54:05,560 ・~ 480 00:54:05,560 --> 00:54:25,580 ・~ 481 00:54:25,580 --> 00:54:45,560 ・~ 482 00:54:45,560 --> 00:55:05,550 ・~ 483 00:55:05,550 --> 00:55:25,570 ・~ 484 00:55:25,570 --> 00:55:30,570 《あき子さんは生きている 生きているんだ》 485 00:55:30,570 --> 00:55:36,570 《でも もし 死んでいたら もし 死んでいたら どうする》 486 00:55:59,570 --> 00:56:01,470 竜ノ口です 487 00:56:04,570 --> 00:56:07,580 廉太郎君ですね? (廉太郎)はあ 488 00:56:07,580 --> 00:56:10,580 お母さんは ご健在ですか? (廉太郎)はあ 489 00:56:13,580 --> 00:56:17,550 これをお母さんにお渡しください 490 00:56:17,550 --> 00:56:19,560 はあ 分かりました 491 00:56:19,560 --> 00:56:21,560 失礼します 492 00:56:30,570 --> 00:56:33,570 どなた? 竜ノ口さんです 493 00:56:33,570 --> 00:56:35,570 これを置いていきました 494 00:56:40,580 --> 00:56:42,580 竜ノ口さんから? ええ 495 00:56:42,580 --> 00:56:45,580 あさって また お見えになるそうです 496 00:57:17,580 --> 00:57:21,580 《天に近い清浄な雪の中で・ 497 00:57:21,580 --> 00:57:25,560 寒さと寂寥に対立しながら・ 498 00:57:25,560 --> 00:57:29,560 ただ ひと筋に あなたを思い続けてきたのです》 499 00:57:29,560 --> 00:57:34,560 《以下の手記は 私の 山の生活記録です》 500 00:57:34,560 --> 00:57:54,580 ・~ 501 00:57:54,580 --> 00:58:14,570 ・~ 502 00:58:14,570 --> 00:58:20,580 ・~ 503 00:58:20,580 --> 00:58:23,580 《あき子 あき子》 504 00:58:28,590 --> 00:58:33,560 《私にとって 生きていることは苦しみだ》 505 00:58:33,560 --> 00:58:35,560 《先の分からぬ運命に・ 506 00:58:35,560 --> 00:58:39,560 じりじり さいなまれるのが たまらなかった》 507 00:58:39,560 --> 00:58:59,580 ・~ 508 00:58:59,580 --> 00:59:19,570 ・~ 509 00:59:19,570 --> 00:59:28,580 ・~ 510 00:59:28,580 --> 00:59:31,580 《ランプを標的にして・ 511 00:59:31,580 --> 00:59:36,590 弾が当たったら 一気に自決しよう》 512 00:59:36,590 --> 00:59:39,590 《もし 外れたら・ 513 00:59:39,590 --> 00:59:44,560 この忍耐を続けて あの人の許す日を待とう》 514 00:59:44,560 --> 00:59:56,570 ・~ 515 00:59:56,570 --> 00:59:58,580 (銃声) 516 00:59:58,580 --> 01:00:06,580 ・~ 517 01:00:06,580 --> 01:00:08,580 《死ねるぞ》 518 01:00:11,590 --> 01:00:15,590 《私は 苦しみから解放されるのだ》 519 01:00:15,590 --> 01:00:35,580 ・~ 520 01:00:35,580 --> 01:00:46,590 ・~ 521 01:00:46,590 --> 01:00:49,590 《あき子 あき子》 522 01:00:49,590 --> 01:00:53,590 《私は どうして あなたを 思い切ることができよう》 523 01:00:58,570 --> 01:01:00,570 《私と あなたを・ 524 01:01:00,570 --> 01:01:03,470 別れさせようとする 死に神に向かって…》 525 01:01:06,580 --> 01:01:08,580 (銃声) 526 01:01:10,580 --> 01:01:24,590 (泣き声) 527 01:01:24,590 --> 01:01:32,570 ・(泣き声) 528 01:01:32,570 --> 01:01:45,580 ・~ 529 01:01:45,580 --> 01:01:49,590 お母さん どうかしたんですか? 530 01:01:49,590 --> 01:01:52,590 いいえ 何でもないの 531 01:01:52,590 --> 01:02:00,560 ・~ 532 01:02:00,560 --> 01:02:03,570 お返事を書こうと思いましたが・ 533 01:02:03,570 --> 01:02:07,570 お目にかかって申し上げたほうが いいかと思いまして 534 01:02:09,570 --> 01:02:13,570 お手紙 よく拝見いたしました 535 01:02:21,580 --> 01:02:27,590 昔 私が愛の告白をしたばかりに・ 536 01:02:27,590 --> 01:02:32,600 あなたの生活を ご不幸にしたように思います 537 01:02:32,600 --> 01:02:37,570 その心なさを 今となっては・ 538 01:02:37,570 --> 01:02:40,570 どんなに おわびしているか 分かりません 539 01:02:40,570 --> 01:02:42,570 どうしてでしょう? 540 01:02:42,570 --> 01:02:44,570 私は私のために生きました 541 01:02:44,570 --> 01:02:47,580 好んで こうしてきたのです 542 01:02:47,580 --> 01:02:51,580 一度も あなたを恨んだり 憎んだりしたことはありません 543 01:02:51,580 --> 01:02:57,590 私には この生き方が いちばん生きがいがあったのです 544 01:02:57,590 --> 01:03:00,590 少しも悔いていません 545 01:03:00,590 --> 01:03:02,490 よく分かります 546 01:03:04,590 --> 01:03:09,570 私 どんなに あなたを避けたでしょう 547 01:03:09,570 --> 01:03:15,570 でも 私の もうひとつの心は あなたをお呼びしてたんですわ 548 01:03:17,570 --> 01:03:22,580 私 どんなに あなたに お会いしたかったでしょう 549 01:03:22,580 --> 01:03:26,580 あき子さん 僕は どんなに うれしいかしれません 550 01:03:26,580 --> 01:03:33,590 今こそ 申し上げますが 私は ただ・ 551 01:03:33,590 --> 01:03:41,600 妻という 母親という名のために 耐えました 552 01:03:41,600 --> 01:03:47,570 夫と子供のために 年を取りました 553 01:03:47,570 --> 01:03:54,580 (泣き声) 554 01:03:54,580 --> 01:04:04,590 ・~ 555 01:04:04,590 --> 01:04:06,590 あき子さん 556 01:04:06,590 --> 01:04:22,570 ・~ 557 01:04:22,570 --> 01:04:24,570 あと3年たったら・ 558 01:04:24,570 --> 01:04:27,570 おいでくださっても ようございますわ 559 01:04:29,580 --> 01:04:33,580 ホントでしょうか? それは 560 01:04:33,580 --> 01:04:35,580 ええ 561 01:04:39,590 --> 01:04:44,590 そのころには きっと お互いの道が開けると思います 562 01:04:46,600 --> 01:04:51,600 あき子さん 3年たったら 必ず お迎えにまいります 563 01:04:51,600 --> 01:04:55,600 ええ お待ちしていますわ 564 01:04:59,580 --> 01:05:19,600 ・~ 565 01:05:19,600 --> 01:05:39,580 ・~ 566 01:05:39,580 --> 01:05:59,600 ・~ 567 01:05:59,600 --> 01:06:05,580 ・~ 568 01:06:05,580 --> 01:06:10,580 お母さん 体をさすりましょうか? 569 01:06:10,580 --> 01:06:15,590 いいの 今は楽だから 570 01:06:15,590 --> 01:06:19,590 僕 お母さんに話があるんですけど 571 01:06:19,590 --> 01:06:23,590 どうしたの? 572 01:06:23,590 --> 01:06:28,600 お母さんは どうして言ってくれないんです? 573 01:06:28,600 --> 01:06:30,600 何を? 574 01:06:30,600 --> 01:06:35,610 今日まで 僕からは言えなかったんです 575 01:06:35,610 --> 01:06:41,610 僕は お母さんの留守に 竜ノ口さんの手紙を読みました 576 01:06:44,580 --> 01:06:48,580 僕は お母さんが どうして あの人と結婚しないのか・ 577 01:06:48,580 --> 01:06:50,590 悔しく思っていました 578 01:06:50,590 --> 01:06:54,590 お父さんは フランスの土になる人です 579 01:06:54,590 --> 01:06:58,590 どうして お母さんは いつまでも 忍従ばかりなさるのです? 580 01:06:58,590 --> 01:07:17,580 ・~ 581 01:07:17,580 --> 01:07:25,590 あなたの その理解なさる日を 待っていましたの 582 01:07:25,590 --> 01:07:32,600 (泣き声) 583 01:07:32,600 --> 01:07:45,570 ・~ 584 01:07:45,570 --> 01:07:49,570 廉太郎さん ありがとう 585 01:07:52,580 --> 01:07:55,580 何よりの贈りものね 586 01:07:55,580 --> 01:08:07,600 ・~ 587 01:08:07,600 --> 01:08:18,610 ・~ 588 01:08:18,610 --> 01:08:21,580 ・(ノック) ・(村人)竜ノ口さん 589 01:08:21,580 --> 01:08:27,580 ・~ 590 01:08:27,580 --> 01:08:30,590 (村人)下で電報を頼まれましてな ああ ありがとう 591 01:08:30,590 --> 01:08:33,590 おやすみ 592 01:08:33,590 --> 01:08:35,590 ご苦労さまでした 593 01:08:35,590 --> 01:08:51,610 ・~ 594 01:08:51,610 --> 01:08:59,580 「弱い私が お約束の日まで 生きていたことを・ 595 01:08:59,580 --> 01:09:02,590 褒めてくださいませ」 596 01:09:02,590 --> 01:09:12,600 ・~ 597 01:09:12,600 --> 01:09:20,600 「私の心は 地上では果たせませんでした」 598 01:09:20,600 --> 01:09:28,500 「でも どうぞ この私を お許しくださいませ」 599 01:09:31,580 --> 01:09:33,580 「私は…」 600 01:10:07,580 --> 01:10:10,580 お母さんは ご健在ですか? 601 01:10:12,590 --> 01:10:16,590 竜ノ口さん 母は… 602 01:10:23,600 --> 01:10:25,600 2階にいます 603 01:11:04,610 --> 01:11:20,590 ・~ 604 01:11:20,590 --> 01:11:32,600 (泣き声) 605 01:11:32,600 --> 01:11:35,600 竜ノ口さん 606 01:11:35,600 --> 01:11:48,580 ・~ 607 01:11:48,580 --> 01:11:50,590 これが遺言でした 608 01:11:50,590 --> 01:12:10,610 ・~ 609 01:12:10,610 --> 01:12:23,590 ・~ 610 01:12:23,590 --> 01:12:29,590 母は あなたのおいでを 随分 お待ちしていました 611 01:12:29,590 --> 01:12:49,610 ・~ 612 01:12:49,610 --> 01:13:09,600 ・~ 613 01:13:09,600 --> 01:13:29,620 ・~ 614 01:13:29,620 --> 01:13:49,610 ・~ 615 01:13:49,610 --> 01:14:05,310 ・~ 616 01:14:58,610 --> 01:15:03,610 <私は 天国にいるあの人に・ 617 01:15:03,610 --> 01:15:07,620 便りする たったひとつの方法を 見つけたのです> 618 01:15:07,620 --> 01:15:16,590 ・~ 619 01:15:16,590 --> 01:15:24,600 (花火の音) 620 01:15:24,600 --> 01:15:44,620 ・~ 621 01:15:44,620 --> 01:16:04,540 ・~ 622 01:16:04,540 --> 01:16:13,440 ・~