1 00:00:06,965 --> 00:00:10,552 (石を彫る音) 2 00:00:12,387 --> 00:00:15,473 (マルクス) まったく たまったもんじゃねえよ! 3 00:00:15,640 --> 00:00:18,309 こいつがナイル川で おぼれ死んじまった おかげで― 4 00:00:18,476 --> 00:00:20,186 こっちは休む間もねえ 5 00:00:20,478 --> 00:00:21,563 (ルシウス)仕方あるまい 6 00:00:21,730 --> 00:00:24,232 ハドリアヌス帝は自分が愛した このアンティノーを― 7 00:00:24,399 --> 00:00:26,484 帝国中に置いておきたいのさ 8 00:00:26,943 --> 00:00:28,903 (解説)ここで少し解説すると― 9 00:00:29,070 --> 00:00:30,905 ハドリアヌスは 五賢帝の1人で― 10 00:00:31,031 --> 00:00:32,907 有能な人物 だったのですが― 11 00:00:33,074 --> 00:00:37,412 自分の愛した男アンティノーが おぼれ死んだのを嘆き悲しみ― 12 00:00:37,579 --> 00:00:40,206 帝国中に彼の石像を ぶっ建ててしまい― 13 00:00:40,373 --> 00:00:42,167 すこぶる評判を落としました 14 00:00:42,333 --> 00:00:44,711 しかも アンティノーは男 15 00:00:44,878 --> 00:00:47,130 当時 ローマにおいて 男色趣味は― 16 00:00:47,297 --> 00:00:49,716 “ギリシャ的だ”と言われ バカにされていたの 17 00:00:49,883 --> 00:00:52,218 まっ 男にしちゃベッピンだし 18 00:00:52,385 --> 00:00:54,512 ハドリアヌスさまが ムラっと きたのも― 19 00:00:54,679 --> 00:00:56,181 分からなくもねえけどな 20 00:00:56,347 --> 00:00:59,350 (師匠) マルクスよ 今日も悪いがよ― 21 00:00:59,517 --> 00:01:01,728 浴場に連れていってくれんかね 22 00:01:01,895 --> 00:01:05,356 ああ いいですよ ちょっと待っててくださいね 23 00:01:06,274 --> 00:01:10,987 ハァ… あんなヨレヨレになっても 風呂にだけは行きたがる 24 00:01:11,154 --> 00:01:12,864 面倒くせえったら ねえよ 25 00:01:13,031 --> 00:01:16,785 でも お前の大切な師匠だろ そんなこと言っていいのか 26 00:01:16,951 --> 00:01:19,496 まあ そうなんだけどな… 27 00:01:19,662 --> 00:01:24,667 ♪~ 28 00:01:29,798 --> 00:01:34,803 ~♪ 29 00:01:35,762 --> 00:01:37,972 (師匠)ふあああ… 30 00:01:38,431 --> 00:01:41,100 湯に浸かるのは至上の喜びじゃわい 31 00:01:41,267 --> 00:01:44,395 骨の芯まで染み入るの~ 32 00:01:44,604 --> 00:01:47,482 ああ… でも いちいち ここまで来んでも― 33 00:01:47,649 --> 00:01:50,527 家に風呂があったら ラクじゃろうに 34 00:01:50,693 --> 00:01:53,488 師匠 なに贅沢(ぜいたく) 言ってるんですか 35 00:01:53,655 --> 00:01:55,949 家に風呂なんて金持ちか 貴族さまにしか― 36 00:01:56,116 --> 00:01:57,408 かなわねえことっすよ 37 00:01:57,575 --> 00:01:59,285 だって“ヨレヨレになっても―” 38 00:01:59,452 --> 00:02:03,498 “風呂だけは毎日行きたがりやがって 面倒くさいったらねえ”とか― 39 00:02:03,665 --> 00:02:04,874 絶対 思ってんだろ! 40 00:02:05,041 --> 00:02:06,793 なんで そんなに ネガティブなんですか 41 00:02:06,960 --> 00:02:09,129 (ルシウス)家の敷地に風呂か 42 00:02:09,337 --> 00:02:11,464 決して不可能ではなさそうだが… 43 00:02:11,631 --> 00:02:14,551 (師匠)やっぱ思ってる! (マルクス)思ってませんて! 44 00:02:14,717 --> 00:02:19,055 フンッ あれ? わしのストリジルがない 45 00:02:19,222 --> 00:02:22,350 金属製の垢すりベラ “ストリジル” 46 00:02:22,517 --> 00:02:25,937 当時は これを使って オリーブオイルを体に塗り 47 00:02:26,104 --> 00:02:30,483 その上に砂を軽く まぶして 垢をすり落としていたの 48 00:02:31,943 --> 00:02:34,779 (ルシウス)あっ あそこに 私が取ってきましょう 49 00:02:34,946 --> 00:02:36,364 あっ ルシウス… 50 00:02:37,907 --> 00:02:41,411 (ルシウス)数百年たつのに 全く進化しない原始的な代物 51 00:02:41,744 --> 00:02:45,456 今の時代 もっと使いやすい垢すりが 考案されても いいはずなのだが… 52 00:02:45,623 --> 00:02:47,041 (物音) 53 00:02:47,208 --> 00:02:49,002 ん? 何だ これは? 54 00:02:49,252 --> 00:02:51,921 水面が何かに覆われている ん? 55 00:02:52,088 --> 00:02:54,382 マルクス… これはマルクスのイタズラか? 56 00:02:54,549 --> 00:02:57,677 何てことを! これでは息がもたないぞ… 57 00:03:07,270 --> 00:03:09,105 何のマネだ マルクス! 58 00:03:09,272 --> 00:03:11,399 ん? マルク… ス? 59 00:03:20,783 --> 00:03:21,618 何! 60 00:03:24,787 --> 00:03:27,040 もしかして またもや あの世界なのか? 61 00:03:27,206 --> 00:03:30,627 そして 私が浸かっている この貯水槽は何なのだ! 62 00:03:30,835 --> 00:03:32,420 湯の入った棺!? 63 00:03:32,587 --> 00:03:34,547 いや 確かに棺のようだが― 64 00:03:34,714 --> 00:03:38,760 湯の温度から察すると 入浴用の浴槽ということも考えられる 65 00:03:39,052 --> 00:03:41,304 もし これが浴槽だとしたら― 66 00:03:41,763 --> 00:03:44,849 こんな墓のようなスペースしか なくても 湯を欲するなんて― 67 00:03:45,475 --> 00:03:47,393 ものすごい執念を感じるな 68 00:03:48,061 --> 00:03:51,856 この次元へ来るたびに出会う 文明的な物の数々 69 00:03:52,273 --> 00:03:55,318 できることなら こういった 意味不明な物を すべて集めて― 70 00:03:55,485 --> 00:03:56,736 ローマに持ち帰りたい! 71 00:03:57,278 --> 00:03:59,030 一見バカげた形状をしていても― 72 00:03:59,197 --> 00:04:01,741 どこかに とんでもない要素を 備えているに違いないのだ 73 00:04:01,908 --> 00:04:03,201 ウグッ… 74 00:04:03,993 --> 00:04:07,372 またしてもローマ人としての プライドが揺らぐ 75 00:04:08,081 --> 00:04:10,667 浴槽の表面を覆っていた これなんかにしても― 76 00:04:10,833 --> 00:04:13,461 要するに これは湯の熱を 外に逃さないための― 77 00:04:13,628 --> 00:04:15,546 用途を為しているのではないか? 78 00:04:15,880 --> 00:04:19,467 こうやってフタを閉めておけば 湯の温度は下がりにくくなる 79 00:04:19,842 --> 00:04:23,096 文明大国であるローマで 今まで誰か1人でもいい 80 00:04:23,429 --> 00:04:26,683 こんな方法を考えついた人間が いたであろうか! 81 00:04:27,016 --> 00:04:31,729 自分は浴場の技師として すべての知恵と 努力を注いできたと思っていたが― 82 00:04:31,896 --> 00:04:35,108 それは愚かな自負に 過ぎなかったわけだ 83 00:04:36,401 --> 00:04:37,235 (戸が開く音) 84 00:04:37,402 --> 00:04:38,236 おあっ! 85 00:04:38,444 --> 00:04:42,824 (おじいちゃん)おお 何じゃい 今日のヘルパーさん 外人さんですか 86 00:04:43,116 --> 00:04:44,742 あっ… (ルシウス)CAVE! 87 00:04:45,159 --> 00:04:48,246 (おじいちゃん)ハヘヘ… 危うく 滑って転びそうじゃった 88 00:04:48,413 --> 00:04:49,747 INCOLUMISNE? 89 00:04:49,956 --> 00:04:51,958 やはりまた 平たい顔族の国 90 00:04:51,958 --> 00:04:52,709 やはりまた 平たい顔族の国 91 00:04:51,958 --> 00:04:52,709 (おじいちゃん) すんませんねえ 92 00:04:52,709 --> 00:04:52,875 (おじいちゃん) すんませんねえ 93 00:04:52,875 --> 00:04:54,002 (おじいちゃん) すんませんねえ 94 00:04:52,875 --> 00:04:54,002 かなりの高齢者のようだが― 95 00:04:54,002 --> 00:04:54,711 かなりの高齢者のようだが― 96 00:04:54,919 --> 00:04:58,423 どうやら この棺型風呂の 持ち主らしいな 97 00:04:59,299 --> 00:05:02,927 それにしても マルクスの師匠にも これくらいの風呂があれば― 98 00:05:03,094 --> 00:05:04,637 十分ではないのか? 99 00:05:05,013 --> 00:05:09,100 じゃあ ええ… 背中をねえ 流してもらおうかの 100 00:05:09,267 --> 00:05:10,476 えっ? 101 00:05:10,643 --> 00:05:12,812 ん? 分かんない? 102 00:05:13,146 --> 00:05:17,984 これは垢をするための布で こんな感じにさ… 103 00:05:19,444 --> 00:05:21,988 (ルシウス)おおっ もしや これは… 104 00:05:22,155 --> 00:05:24,574 垢をするための布!? 105 00:05:24,741 --> 00:05:28,161 いやあ ヘルパーさんも大変だの 106 00:05:28,328 --> 00:05:32,498 国の家族に 仕送りせにゃ いけんのでしょう? 107 00:05:32,665 --> 00:05:33,666 ほれ 108 00:05:40,339 --> 00:05:43,259 (ルシウス)じゃんじゃん出る! 油を塗ったわけでもないのに― 109 00:05:43,426 --> 00:05:47,388 布切れ1枚で 乾いた老人の肌から こんなに老廃物が! 110 00:05:47,722 --> 00:05:49,474 何なのだ この布は… 111 00:05:49,640 --> 00:05:51,726 この布は一体 何なのだ! 112 00:05:51,893 --> 00:05:55,021 あああ… あっ イテ… あああ イテッ! 113 00:05:55,188 --> 00:05:58,274 すり過ぎ! すり過ぎ! ああ… 114 00:05:58,441 --> 00:06:01,778 (ルシウス)この布 一体 何の繊維で できているんだ 115 00:06:01,944 --> 00:06:05,156 オーケイ! ハハハハ… 116 00:06:05,323 --> 00:06:09,077 じゃ 次は頭洗うからの… 117 00:06:09,243 --> 00:06:12,246 わしゃ サンプーが 目にしみるでの― 118 00:06:12,413 --> 00:06:14,957 このサンプーハットを 使っております 119 00:06:15,124 --> 00:06:15,958 ん? 120 00:06:16,125 --> 00:06:19,670 (おじいちゃん)ヘルパーさん サンプーハット 知らんですか 121 00:06:20,630 --> 00:06:22,256 こ… これは! 122 00:06:22,840 --> 00:06:24,342 か… 冠!? 123 00:06:24,967 --> 00:06:28,596 この老人 この種族の族長なのか? 124 00:06:30,681 --> 00:06:33,059 で こうやって洗って― 125 00:06:33,518 --> 00:06:36,521 これで流しての… ほれ! 126 00:06:36,687 --> 00:06:39,273 顔は ちっとも濡れとらんじゃろ 127 00:06:41,067 --> 00:06:43,820 (ルシウス) 軍事力で領地を広げることは簡単だ 128 00:06:43,986 --> 00:06:45,738 しかし文明は… 129 00:06:46,197 --> 00:06:48,491 文明は そうはいかぬ 130 00:06:49,242 --> 00:06:52,286 (おじいちゃん)なあなあなあ どうしんたんじゃい ヘルパーさん 131 00:06:52,453 --> 00:06:54,372 あっ… のぼせたのかい? 132 00:06:54,539 --> 00:06:57,166 今 飲み物を持ってくるじゃの 133 00:06:57,333 --> 00:06:59,293 ちょっと待ってな 134 00:06:59,961 --> 00:07:00,962 (ルシウス)ああ… 135 00:07:01,129 --> 00:07:05,383 この世界へ来るたびに感じさせられる とてつもない敗北感 136 00:07:05,633 --> 00:07:09,428 泣き寝入りなどしている場合では ないことも分かっている 137 00:07:09,637 --> 00:07:13,349 (おじいちゃん) ほれほれ ほい スッキリする 飲み物 持ってきたで 138 00:07:13,516 --> 00:07:16,227 まままま… クイッと そう 139 00:07:16,394 --> 00:07:18,229 クイッとな 140 00:07:20,481 --> 00:07:21,691 (ルシウス)うおっ! 141 00:07:22,150 --> 00:07:27,196 うおおおー キューッときた! ハッハッハッ… 142 00:07:27,447 --> 00:07:30,324 どうじゃい えっ? それで少しは― 143 00:07:30,491 --> 00:07:32,452 元気になったかいの? 144 00:07:30,491 --> 00:07:32,452 (ルシウス)しかし 何者なのだ この者たち 145 00:07:32,452 --> 00:07:33,161 (ルシウス)しかし 何者なのだ この者たち 146 00:07:33,327 --> 00:07:35,955 もしローマが この国を属州にしたら― 147 00:07:36,122 --> 00:07:38,249 我々のような人間の仕事は― 148 00:07:38,416 --> 00:07:41,335 間違いなく 彼らに取って代わられるだろう 149 00:07:41,502 --> 00:07:44,922 快楽追求の熟練度は ローマ人の比ではない 150 00:07:45,339 --> 00:07:46,924 クソッ 151 00:07:45,339 --> 00:07:46,924 (おじいちゃんの笑い声) 152 00:07:47,091 --> 00:07:49,093 いいねえ いいねえ 153 00:07:49,260 --> 00:07:51,220 (ルシウス)何とかしなくては… 154 00:07:51,387 --> 00:07:52,722 何とか… 155 00:07:52,847 --> 00:07:54,140 あれ? 156 00:07:57,602 --> 00:07:58,436 はっ… 157 00:07:58,603 --> 00:08:00,521 (マルクス) ルシウス 気がついたか 158 00:08:00,688 --> 00:08:03,107 ハァ~ よかった よかった 159 00:08:03,274 --> 00:08:05,860 ルシウス 何持ってんだ それ 160 00:08:06,027 --> 00:08:07,487 ええっ? 161 00:08:07,862 --> 00:08:09,322 垢すり… 162 00:08:09,739 --> 00:08:12,366 おい マルクス 師匠の風呂を作るぞ! 163 00:08:12,533 --> 00:08:13,743 何だって? 164 00:08:18,080 --> 00:08:21,584 (使者)おい マルクス マルクス・ピエトラス 165 00:08:21,751 --> 00:08:23,628 (マルクス)あっ… へいへい 166 00:08:23,794 --> 00:08:26,714 貴様が手にしているのは 石を彫るノミではなく― 167 00:08:27,131 --> 00:08:29,509 丸く切られた皮とハサミ 168 00:08:30,092 --> 00:08:31,677 皇帝のために依頼されていた― 169 00:08:31,844 --> 00:08:34,180 アンティノーさまの 石像作りは どうした! 170 00:08:34,347 --> 00:08:36,766 作りましたよ ほら! 171 00:08:36,933 --> 00:08:38,476 約束どおり20体 172 00:08:38,643 --> 00:08:39,977 (使者)何!? 173 00:08:40,353 --> 00:08:42,063 本当に20体あるのだな? 174 00:08:42,230 --> 00:08:43,940 (笑い声) (使者)ん? 175 00:08:44,106 --> 00:08:45,733 アハハハ… 176 00:08:45,900 --> 00:08:48,736 (使者)なっ… 何だ アレは!? 177 00:08:49,153 --> 00:08:52,281 風呂っすよ 家庭用簡易風呂 178 00:08:52,448 --> 00:08:55,576 友人の浴場設計技師が造ったんすよ 179 00:08:55,785 --> 00:08:59,205 牛の腸の先っぽに いっぱい穴を 開けたやつから出てくる― 180 00:08:59,372 --> 00:09:01,249 雨みたいな湯で洗い流す 181 00:09:01,415 --> 00:09:03,834 で あの頭にかぶってるやつが あれば― 182 00:09:04,001 --> 00:09:06,587 せっけんも水も 顔に かからないんですよ 183 00:09:06,754 --> 00:09:09,549 こ… これは絶対― 184 00:09:09,715 --> 00:09:12,426 皇帝陛下に お知らせしなくては! 185 00:09:16,931 --> 00:09:20,434 (ハドリアヌス) いったんローマに戻る準備をさせろ 186 00:09:20,601 --> 00:09:21,435 (家臣)はっ 187 00:09:21,602 --> 00:09:23,354 ローマで どうしても 会わねばならぬ― 188 00:09:23,521 --> 00:09:24,897 人物がおるようだ 189 00:09:25,064 --> 00:09:26,482 (家臣)ははっ 190 00:09:26,774 --> 00:09:33,739 ♪~ 191 00:10:51,192 --> 00:10:56,822 ~♪