1 00:02:52,394 --> 00:02:56,999 港長崎 その異国情緒豊かな 町に生まれ 2 00:02:56,999 --> 00:03:03,272 海産問屋 松浦屋の一粒種として 二親の慈愛の翼に育まれ 3 00:03:03,272 --> 00:03:07,743 何不自由なく 10歳の春を迎えた雪太郎は 4 00:03:07,743 --> 00:03:10,379 その日 母に手を引かれ 5 00:03:10,379 --> 00:03:13,849 番頭の三郎兵衛や女中を 供に連れて 6 00:03:13,849 --> 00:03:17,019 松浦屋の身代を 根こそぎにするような 7 00:03:17,019 --> 00:03:20,189 恐ろしい運命が 待っているとも知らず 8 00:03:20,189 --> 00:03:24,560 名物のおくんろ祭りに興じていた 9 00:03:24,560 --> 00:03:29,465 広海屋の二階に陣取って 祭りを見物していた土部三斉の 10 00:03:29,465 --> 00:03:35,270 好色な瞳に映ったのは 雪太郎の母の美貌だった 11 00:03:35,270 --> 00:03:40,342 当時 長崎奉行であった三斉の 職権の袖に隠れ 12 00:03:40,342 --> 00:03:43,312 密貿易で 巨利を占めていた広海屋は 13 00:03:43,312 --> 00:03:45,581 三斉の意を迎えるためには 14 00:03:45,581 --> 00:03:49,481 どんな悪らつな手段も 辞さない男だった 15 00:03:57,393 --> 00:04:02,398 雪太郎の母 お道を 三斉の枕辺にはべらせるために 16 00:04:02,398 --> 00:04:05,200 番頭の三郎兵衛を買収し 17 00:04:05,200 --> 00:04:09,538 父親を密貿易という 身に覚えのない罪に落として 18 00:04:09,538 --> 00:04:12,141 長崎奉行の手で逮捕させ 19 00:04:12,141 --> 00:04:18,041 三郎兵衛の偽りの証言を 根拠として牢屋へ送ってしまった 20 00:04:27,122 --> 00:04:30,793 そしてお道を役宅へ呼びつけて 21 00:04:30,793 --> 00:04:35,097 意に従えば父親の罪は できるだけ軽くしてやると 22 00:04:35,097 --> 00:04:38,734 おためごかしで 意に従わせようとした 23 00:04:38,734 --> 00:04:44,034 しかしお道はその手に乗るほど 愚かではなかった 24 00:05:09,097 --> 00:05:11,400 ついに舌をかみ切って 25 00:05:11,400 --> 00:05:15,400 夫への貞節を まっとうしたのであった 26 00:05:25,781 --> 00:05:29,151 獄屋で妻の死を知った父親は 27 00:05:29,151 --> 00:05:33,388 度重なる痛手に とうとう発狂してしまった 28 00:05:33,388 --> 00:05:38,760 そして これもまた自ら 生命を絶ってしまったのである 29 00:05:38,760 --> 00:05:45,534 狂気のうちにも三斉 広海屋 三郎兵衛に対する恨みを忘れず 30 00:05:45,534 --> 00:05:50,234 ひそかに記した遺書を 同房の囚人に託して… 31 00:06:08,056 --> 00:06:12,394 松浦屋は欠所になった 32 00:06:12,394 --> 00:06:15,831 雪太郎は天涯孤独 33 00:06:15,831 --> 00:06:18,934 誰一人頼りにする肉親も持たない 34 00:06:18,934 --> 00:06:22,704 哀れな みなしごと なってしまった 35 00:06:22,704 --> 00:06:26,742 だが捨てる神ばかりではなかった 36 00:06:26,742 --> 00:06:30,512 父親が生前 ひいきにしていた その頃はまだ 37 00:06:30,512 --> 00:06:34,783 九州の田舎回りにすぎなかった 中村菊之丞に 38 00:06:34,783 --> 00:06:37,185 拾われたのであった 39 00:06:37,185 --> 00:06:41,990 雪太郎は やがて 雪之丞の芸名を与えられ 40 00:06:41,990 --> 00:06:44,693 舞台を踏むようになった 41 00:06:44,693 --> 00:06:47,362 そして苦節15年 42 00:06:47,362 --> 00:06:52,968 必死の修業は報いられ 上方役者として人気を極め 43 00:06:52,968 --> 00:06:56,138 誰知らぬ者はないようになった 44 00:06:56,138 --> 00:06:59,107 が雪之丞の念願は 45 00:06:59,107 --> 00:07:04,012 非業に死んだ二親の恨みを 晴らしたい一心だった 46 00:07:04,012 --> 00:07:07,649 そして ついにその機会は来た 47 00:07:07,649 --> 00:07:11,086 今度の江戸初下がりが それであった 48 00:07:11,086 --> 00:07:17,225 だが思いきや相手もあろうに 将軍家の思い者 49 00:07:17,225 --> 00:07:21,296 今は江戸にときめく 土部の娘 浪路に見初められ 50 00:07:21,296 --> 00:07:25,996 懇望されて その屋敷へ 招かれていこうとは… 51 00:07:31,773 --> 00:07:34,443 出ろ 雪之丞! 52 00:07:34,443 --> 00:07:39,143 出ぬと おのれ かごもろとも田楽刺しだぞ 53 00:07:47,089 --> 00:07:49,089 デヤーッ! 54 00:07:51,893 --> 00:07:56,498 門倉様 あなた様には あの白紙の奥義書に書かれた 55 00:07:56,498 --> 00:07:59,134 独創天心流の秘伝が 56 00:07:59,134 --> 00:08:01,603 お読みになれなかったと 見えまするな 57 00:08:01,603 --> 00:08:05,207 黙れ!この平馬が欲しいのは 58 00:08:05,207 --> 00:08:09,611 はっきりと墨で書かれた奥義書だ 出せ! 59 00:08:09,611 --> 00:08:12,514 奥義書に二通りはございません 60 00:08:12,514 --> 00:08:16,214 うぬ 殺しても取るぞ! 61 00:09:08,070 --> 00:09:10,070 あっ 62 00:09:15,043 --> 00:09:18,380 うぬ 土部家の定紋だ 引き揚げろ! 63 00:09:18,380 --> 00:09:20,380 はっ 64 00:09:27,456 --> 00:09:30,525 あっ 雪之丞 遅いので迎えに参ったのだ 65 00:09:30,525 --> 00:09:32,661 それはご造作をかけまして 66 00:09:32,661 --> 00:09:35,263 だが今の人影は? 67 00:09:35,263 --> 00:09:39,563 流れ星でございましょう ではお供を 68 00:10:45,200 --> 00:10:47,803 太夫がお見えになりました 69 00:10:47,803 --> 00:10:51,503 おお 待ちかねました 70 00:11:39,888 --> 00:11:42,724 このお杯 71 00:11:42,724 --> 00:11:44,759 お覚えかえ? 72 00:11:44,759 --> 00:11:48,430 はい いつぞや芝居茶屋で 73 00:11:48,430 --> 00:11:51,833 よく覚えていてくだされた 74 00:11:51,833 --> 00:11:53,833 うれしい 75 00:12:16,658 --> 00:12:18,758 ちょうだいいたします 76 00:12:32,274 --> 00:12:34,374 ありがとうございました 77 00:12:36,778 --> 00:12:38,980 なあ 長崎屋 はい 78 00:12:38,980 --> 00:12:42,751 雪之丞はうまく説得してくれると よいがのう 79 00:12:42,751 --> 00:12:45,453 はっ 大丈夫でございます 80 00:12:45,453 --> 00:12:48,957 おなごと申すものは 思う男の勧めには 81 00:12:48,957 --> 00:12:51,593 どんなことでも 従うものでございます 82 00:12:51,593 --> 00:12:56,498 うむ そうあってくれぬと困るが 83 00:12:56,498 --> 00:12:59,534 時に長崎屋 はい 84 00:12:59,534 --> 00:13:02,904 どうしても思い出せぬが 85 00:13:02,904 --> 00:13:07,509 あの雪之丞の面影 誰かに似てると思わぬか 86 00:13:07,509 --> 00:13:10,145 ほんに そう承りますと 87 00:13:10,145 --> 00:13:13,214 確かに思い出の中にある面差し 88 00:13:13,214 --> 00:13:16,114 はて 誰でございましょう 89 00:13:18,620 --> 00:13:21,623 あっ ご隠居様 申し上げます 90 00:13:21,623 --> 00:13:23,658 何じゃ 門倉殿が 91 00:13:23,658 --> 00:13:26,027 お目通りを願い出ておりますが 92 00:13:26,027 --> 00:13:28,627 ああ すぐこれへ通せ 93 00:13:48,016 --> 00:13:51,152 太夫 94 00:13:51,152 --> 00:13:57,292 あの日以来 胸に刻まれた そなたの面影 95 00:13:57,292 --> 00:13:59,961 浪のまぶたを離れませぬ 96 00:13:59,961 --> 00:14:03,631 もったいない 手前は卑しい河原者 97 00:14:03,631 --> 00:14:05,633 あなた様は やんごとない上様の… 98 00:14:05,633 --> 00:14:10,271 嫌 嫌 それを言うてたもるな 99 00:14:10,271 --> 00:14:14,676 浪はもう父上 兄上の 生けにえとなって 100 00:14:14,676 --> 00:14:18,476 心にもない上様の おそばにお仕えするのは嫌 101 00:14:20,849 --> 00:14:25,587 地位も身分も捨てて そなたと一緒に暮らしたい 102 00:14:25,587 --> 00:14:28,487 とんでもない 何を仰せられます 103 00:14:30,525 --> 00:14:34,929 のう 太夫 そなたがうちを出ようと言うなら 104 00:14:34,929 --> 00:14:37,999 今夜にでも屋敷を抜けます 105 00:14:37,999 --> 00:14:40,899 町屋住まいの世話女房にも なりましょう 106 00:14:42,904 --> 00:14:46,804 そなたも決心してたもれ 107 00:14:59,287 --> 00:15:02,657 どうしたのじゃ 108 00:15:02,657 --> 00:15:05,193 返事がないのは 太夫 109 00:15:05,193 --> 00:15:07,193 そなた この浪がお嫌いか 110 00:15:09,197 --> 00:15:12,400 それなら もう頼みませぬ 111 00:15:12,400 --> 00:15:17,705 浪路様 浪路は死んでしまいます 112 00:15:17,705 --> 00:15:20,008 雪之丞とて若い身空 113 00:15:20,008 --> 00:15:22,710 高貴のお方に そこまで思い慕われて 114 00:15:22,710 --> 00:15:25,710 どうして心を動かさずに おられましょう 115 00:15:28,016 --> 00:15:30,718 太夫 116 00:15:30,718 --> 00:15:34,656 それでは そなたもこの浪を… 117 00:15:34,656 --> 00:15:37,156 憎う思うどころか… 118 00:15:40,161 --> 00:15:42,161 太夫! 119 00:16:05,420 --> 00:16:09,057 あなた様を いとしゅう思わぬではないが 120 00:16:09,057 --> 00:16:12,727 雪之丞には心願の筋がございます 121 00:16:12,727 --> 00:16:16,498 それが かのうまでは 女の肌には手を触れぬと 122 00:16:16,498 --> 00:16:19,400 神に誓った言葉は破れませぬ 123 00:16:19,400 --> 00:16:24,239 まあ やっぱり 浪は嫌われているのじゃ 124 00:16:24,239 --> 00:16:27,442 心願などと空々しい いいえ 決して嘘では… 125 00:16:27,442 --> 00:16:31,546 なら どのような心願か 浪に明かしてくだされ 126 00:16:31,546 --> 00:16:37,018 浪路様 その心願はあなた様とて 打ち明けることはできません 127 00:16:37,018 --> 00:16:40,155 しかし雪之丞が江戸にいる間には 128 00:16:40,155 --> 00:16:43,024 必ず かのうものと信じております 129 00:16:43,024 --> 00:16:47,324 それゆえ 今しばらく上様のおそばで… 130 00:16:50,598 --> 00:16:56,004 それほどまでに言やるなら 浪も信用しましょう 131 00:16:56,004 --> 00:17:02,177 でも上様の元に 帰らねばならぬかと思うと 132 00:17:02,177 --> 00:17:08,082 浪は身を切られるより つろうございます 133 00:17:08,082 --> 00:17:11,082 浪路様 雪之丞殿 134 00:17:16,758 --> 00:17:19,358 殿様がお呼びでございます 135 00:17:27,902 --> 00:17:30,438 雪様 136 00:17:30,438 --> 00:17:32,438 では 137 00:17:44,385 --> 00:17:46,385 どうも 138 00:17:48,656 --> 00:17:53,027 とにかく役者風情に剣を学んだり 139 00:17:53,027 --> 00:17:56,698 何かと腑に落ちかねる節の 多い男でございます 140 00:17:56,698 --> 00:17:58,700 あまりお近づけにならぬほうが 141 00:17:58,700 --> 00:18:01,869 ハハハ 同門と申すのに 142 00:18:01,869 --> 00:18:04,572 どうして そちは そう毛嫌いばかりするのじゃ 143 00:18:04,572 --> 00:18:07,842 いや 別に毛嫌いというわけでは… 144 00:18:07,842 --> 00:18:12,146 門倉さん 大阪時代から なじみの雪之丞 145 00:18:12,146 --> 00:18:15,416 素性についても 多少はご存じだろうが 146 00:18:15,416 --> 00:18:17,418 生まれは上方ですか 147 00:18:17,418 --> 00:18:21,089 うむ 大阪だと申しておりましたが 148 00:18:21,089 --> 00:18:26,694 脇田先生の道場へ通い始めた頃は 妙な なまりがありまして手前は… 149 00:18:26,694 --> 00:18:28,863 お連れいたしました 150 00:18:28,863 --> 00:18:31,063 ああ 参ったか 151 00:18:53,254 --> 00:18:56,991 ご苦労 ご苦労 152 00:18:56,991 --> 00:19:00,628 どうであった 説得してくれたか 153 00:19:00,628 --> 00:19:05,033 はい お帰りに なるそうでございます 154 00:19:05,033 --> 00:19:07,869 ああ そうか それはかたじけない 155 00:19:07,869 --> 00:19:10,369 雪之丞 ゆっくりしていけよ 156 00:19:12,373 --> 00:19:15,543 おっ 157 00:19:15,543 --> 00:19:18,379 ああ よかった よかった さあ 太夫 158 00:19:18,379 --> 00:19:20,448 おっ 長崎屋殿 159 00:19:20,448 --> 00:19:23,117 使いが見えまして大阪よりの船が 160 00:19:23,117 --> 00:19:26,454 品川の沖に入ったので すぐお帰りを願いたいそうで 161 00:19:26,454 --> 00:19:29,090 それはそれは 門倉さん 162 00:19:29,090 --> 00:19:31,690 宝船が着いたそうですよ 163 00:19:35,963 --> 00:19:38,833 帰ってくれるそうだな ありがたい 164 00:19:38,833 --> 00:19:41,069 わしは もうこのとおりだ 165 00:19:41,069 --> 00:19:45,907 でも もう2~3日 ゆっくりさせていただきます 166 00:19:45,907 --> 00:19:48,109 ああ いいとも いいとも 167 00:19:48,109 --> 00:19:52,647 大奥には 病気とでもお届けしておこう 168 00:19:52,647 --> 00:19:55,847 2~3日 ゆっくり休養するがいいぞ 169 00:20:24,412 --> 00:20:26,412 お米屋さん! 170 00:20:30,017 --> 00:20:32,017 お米屋さーん! 171 00:20:34,422 --> 00:20:38,322 今すぐ開けて お米屋さん! 172 00:20:41,329 --> 00:20:44,529 お米屋さん お米屋さん! 173 00:20:56,210 --> 00:20:58,310 何だ ありゃ 174 00:21:17,265 --> 00:21:20,535 なあ これで米も出回るだろう 175 00:21:20,535 --> 00:21:23,235 出るもんかい 何が出回るもんか 176 00:21:25,206 --> 00:21:28,176 釣り上げるだけ釣り上げて ここが頂上と 177 00:21:28,176 --> 00:21:30,578 見極めがつかなきゃ 放しっこはねえよ 178 00:21:30,578 --> 00:21:33,214 (笑い声) 179 00:21:33,214 --> 00:21:36,217 旦那 土部のご隠居がお忍びで 180 00:21:36,217 --> 00:21:38,653 ご隠居が? へえ 181 00:21:38,653 --> 00:21:41,053 ほう 何だろう 182 00:21:48,863 --> 00:21:51,232 旦那 米屋はみんな 店を閉めてるんだ 183 00:21:51,232 --> 00:21:53,234 少し分けてやっておくんなせえ 184 00:21:53,234 --> 00:21:58,272 うん 相場の3倍でなら この米全部 分けてやるぜ 185 00:21:58,272 --> 00:22:00,475 さあ どうぞ 186 00:22:00,475 --> 00:22:02,475 ちくしょう 187 00:22:20,294 --> 00:22:24,899 ああ これはこれは 突然のご入来で 188 00:22:24,899 --> 00:22:27,268 何か急なご用でも 189 00:22:27,268 --> 00:22:31,072 長崎屋 困ったことが起きた 190 00:22:31,072 --> 00:22:34,475 何事で? 浪が家出をいたしたのだ 191 00:22:34,475 --> 00:22:36,475 えっ 192 00:22:42,550 --> 00:22:47,288 大奥へ帰るというのは わしを油断させる手だったのだ 193 00:22:47,288 --> 00:22:53,160 それは一大事 して お心当たりは? 194 00:22:53,160 --> 00:22:57,665 恐らく雪之丞と示し合わせた うえでのことだと思う 195 00:22:57,665 --> 00:23:01,969 しかし雪之丞が そのような無分別を… 196 00:23:01,969 --> 00:23:04,305 いや やりかねません 197 00:23:04,305 --> 00:23:07,341 だから手前が ご注意申し上げたんですが 198 00:23:07,341 --> 00:23:11,779 平馬 雪之丞のほうを 調べてみてくれ 極秘でな 199 00:23:11,779 --> 00:23:15,449 心得ました 200 00:23:15,449 --> 00:23:20,149 この不始末が上様のお耳に入れば わしは破滅じゃ 201 00:23:22,156 --> 00:23:26,427 せがれは勘定奉行のお役目を 召し上げられる 202 00:23:26,427 --> 00:23:28,996 そうなったら この長崎屋も最期だ 203 00:23:28,996 --> 00:23:33,000 あっ 門倉さん 一日も早く浪路様を 204 00:23:33,000 --> 00:23:36,070 おっ 平馬 頼んだぞ はっ 205 00:23:36,070 --> 00:23:38,070 では早速 206 00:23:47,582 --> 00:23:51,352 おーい こっちのうちだとよ 207 00:23:51,352 --> 00:23:54,152 (歓声) 208 00:24:04,632 --> 00:24:07,401 おっかあ このうちに ちげえねえのか 209 00:24:07,401 --> 00:24:09,701 ああ ちげえねえそうだよ 210 00:24:11,706 --> 00:24:15,042 かごの衆 このかごを中へ かい込んでくれ 211 00:24:15,042 --> 00:24:17,142 へい がってんでござんす 212 00:24:20,581 --> 00:24:25,386 これこれ 滅相もない 人のうちへ かごを担ぎ込むとは 213 00:24:25,386 --> 00:24:27,388 やかましいやい ぶちまけろい 214 00:24:27,388 --> 00:24:30,658 へい 215 00:24:30,658 --> 00:24:32,727 ほっ! よっ! 216 00:24:32,727 --> 00:24:34,729 こりゃ棺桶だ 217 00:24:34,729 --> 00:24:39,033 おっ ご苦労 ご苦労 じゃ後で迎えに来てくんな 218 00:24:39,033 --> 00:24:41,933 へい かごは置いてめえりやす 219 00:24:49,477 --> 00:24:53,481 へえ ごめんくださいまし 220 00:24:53,481 --> 00:24:56,881 おう こりゃあ いいうちだ 221 00:24:58,886 --> 00:25:01,856 おっかあ 茶を一杯もらってくんな 222 00:25:01,856 --> 00:25:07,395 あいよ お前 ご苦労だが 茶を一つお振る舞い 223 00:25:07,395 --> 00:25:09,895 ついでに たばこの火もねえよ 224 00:25:11,832 --> 00:25:13,834 何だな この手合いは 225 00:25:13,834 --> 00:25:18,973 キョロッカキョロッカせずと 茶を一つお振る舞いということよ 226 00:25:18,973 --> 00:25:21,976 火はねえのかえ 227 00:25:21,976 --> 00:25:26,681 火の用心のいいうちだねえ 228 00:25:26,681 --> 00:25:29,181 待ってました! 229 00:25:33,621 --> 00:25:35,721 たばこ盆 230 00:25:43,564 --> 00:25:45,564 お茶 231 00:25:48,436 --> 00:25:50,436 あいよ 232 00:25:55,643 --> 00:26:01,382 もし 弟御を連れてきたと 言わっしゃいますが 233 00:26:01,382 --> 00:26:05,653 あい ここにおりやす ええっ? 234 00:26:05,653 --> 00:26:07,955 死んでおりやすのさ 235 00:26:07,955 --> 00:26:10,355 ええっ 236 00:26:13,360 --> 00:26:16,130 お前方が寄ってたかって 237 00:26:16,130 --> 00:26:19,867 たたき殺しなすったのさ 238 00:26:19,867 --> 00:26:22,236 人を1人 殺しておいて 239 00:26:22,236 --> 00:26:27,108 古袷一枚に 金なら たった一分と言う 240 00:26:27,108 --> 00:26:31,846 ここのお店じゃ どなたが 相場を決めなすったか知らねえが 241 00:26:31,846 --> 00:26:33,948 そのお方に会いたいね 242 00:26:33,948 --> 00:26:38,119 お目にかかりたいね 会おうわな 243 00:26:38,119 --> 00:26:42,623 厚かましい手合いじゃねえか 244 00:26:42,623 --> 00:26:46,327 若花村 よっ! 若花村屋! 245 00:26:46,327 --> 00:26:48,796 これ 静かに言えよ 246 00:26:48,796 --> 00:26:52,666 何のかんのと言うようで 外聞が悪いわな 247 00:26:52,666 --> 00:26:54,935 まっ 静かにしろよ 248 00:26:54,935 --> 00:26:58,839 それだって わっちの 大事な弟を殺されたから 249 00:26:58,839 --> 00:27:03,778 悔しくって悔しくって 一層 腹が立ってならねえのさ 250 00:27:03,778 --> 00:27:09,116 まあ いいわな おめえのために 弟なら俺のためにも弟だ 251 00:27:09,116 --> 00:27:11,719 かたきは俺が取ってやろうぜ 252 00:27:11,719 --> 00:27:14,219 花村屋 花村屋! 253 00:27:31,672 --> 00:27:36,744 おう これこれ この棺桶は どうするのだ 254 00:27:36,744 --> 00:27:40,414 どうするものか 弔いはそっちでするがいいや 255 00:27:40,414 --> 00:27:43,017 置いておかれて たまるものか 256 00:27:43,017 --> 00:27:45,119 あっ もしもし お前さん 257 00:27:45,119 --> 00:27:49,319 えい 邪魔っけな えい 野郎 どきやがれ! 258 00:27:55,796 --> 00:27:58,332 まだ かごがあったよ うん 259 00:27:58,332 --> 00:28:01,769 置いていくのも盗っ人に追い銭だ 260 00:28:01,769 --> 00:28:06,769 片棒 担ぎな 何だ 俺が片棒 担ぐのかい 261 00:28:13,881 --> 00:28:19,186 ととうと かかあが 辻かごを担いで帰る引っ込みは 262 00:28:19,186 --> 00:28:21,722 今まで あんまりない型だね 263 00:28:21,722 --> 00:28:25,593 いや これも鶴屋南北の新趣向だ 264 00:28:25,593 --> 00:28:28,693 さあ 行こうぜ あいよ 265 00:28:30,731 --> 00:28:32,731 大当たり! 266 00:29:12,406 --> 00:29:14,706 さあ いらっしゃい 267 00:29:18,212 --> 00:29:22,112 さあ いらっしゃい いらっしゃい… 268 00:29:43,270 --> 00:29:45,270 太夫 269 00:29:55,349 --> 00:29:58,285 どうでございました やっぱり推量どおりだったぜ 270 00:29:58,285 --> 00:30:03,090 あれだけの米を仕入れるにゃ 長崎屋は身代残らず懸けてるぜ 271 00:30:03,090 --> 00:30:05,459 身代残らず? 272 00:30:05,459 --> 00:30:07,461 だから何かのきっかけで 273 00:30:07,461 --> 00:30:10,664 今の相場を割り始めりゃ 長崎屋はご破算だ 274 00:30:10,664 --> 00:30:12,700 太夫 275 00:30:12,700 --> 00:30:15,602 桟敷の広海屋様から お届け物ですよ 276 00:30:15,602 --> 00:30:17,702 広海屋さんが? 277 00:30:22,476 --> 00:30:25,679 おかみさんが すっかり 太夫の舞台が気に入ってしまって 278 00:30:25,679 --> 00:30:28,015 ご夫婦で長崎の異国料理を 279 00:30:28,015 --> 00:30:30,017 ごちそうしたいと おっしゃるんですが 280 00:30:30,017 --> 00:30:32,119 ご都合はいかがでしょう? 281 00:30:32,119 --> 00:30:36,123 長崎の異国料理… お邪魔をいたします 282 00:30:36,123 --> 00:30:39,223 ああ そうですか それはお喜びになるでしょう 283 00:30:44,398 --> 00:30:46,867 親方 お世話さまでした 284 00:30:46,867 --> 00:30:49,636 なあに お安いご用だ 285 00:30:49,636 --> 00:30:52,336 また何かあったら 使いをよこしておくんなさい 286 00:30:54,908 --> 00:30:56,908 じゃあ また 287 00:31:03,784 --> 00:31:06,453 あっ もし どちらへ 288 00:31:06,453 --> 00:31:08,522 雪之丞に会えば分かる どけ! 289 00:31:08,522 --> 00:31:11,358 いや それは困ります 290 00:31:11,358 --> 00:31:13,927 雪之丞に会えば分かると 言ってるではないか どけ! 291 00:31:13,927 --> 00:31:15,927 うるさい! 292 00:31:47,194 --> 00:31:49,194 雪之丞 293 00:31:51,231 --> 00:31:53,233 ご息女をどこへ隠した 294 00:31:53,233 --> 00:31:56,904 存じません しらばっくれるな 295 00:31:56,904 --> 00:31:59,139 隠居は火のようになって 怒っておられるぞ 296 00:31:59,139 --> 00:32:01,241 すると あの方はやはり家出を? 297 00:32:01,241 --> 00:32:03,277 黙れ! 298 00:32:03,277 --> 00:32:05,279 示し合わせて 手引きをしておきながら 299 00:32:05,279 --> 00:32:09,550 門倉様 当て推量も よい加減になさいまし 300 00:32:09,550 --> 00:32:11,852 雪之丞が かどわかしたと おっしゃるなら 301 00:32:11,852 --> 00:32:13,854 お町へ訴え出ていただきましょう 302 00:32:13,854 --> 00:32:16,090 なっ 何? それとも 303 00:32:16,090 --> 00:32:19,960 証拠があるとおっしゃるなら この場で拝見いたしましょう 304 00:32:19,960 --> 00:32:22,696 おっ おのれ 305 00:32:22,696 --> 00:32:25,432 明るみへ出せぬと知って 居直るつもりだな 306 00:32:25,432 --> 00:32:28,232 くどうございます お帰りください 307 00:32:30,304 --> 00:32:32,773 ようし 308 00:32:32,773 --> 00:32:35,976 いずれ吠え面かかしてやる 309 00:32:35,976 --> 00:32:38,476 その時になって後悔するな 310 00:32:55,662 --> 00:33:00,134 雪 そなた 本当に関わり合いはないのか 311 00:33:00,134 --> 00:33:03,370 ございません そうか いや それならばいいが 312 00:33:03,370 --> 00:33:05,572 そなたのための家出とすっと 313 00:33:05,572 --> 00:33:07,975 こりゃ思いがけない 良い結果になるぞ 314 00:33:07,975 --> 00:33:11,778 しかし浪路様は どうなるのでございましょう 315 00:33:11,778 --> 00:33:15,382 憎いかたきの娘とはいえ あの人には罪はございません 316 00:33:15,382 --> 00:33:19,219 雪 そなた… いいえ いかに目的のためとはいえ 317 00:33:19,219 --> 00:33:22,189 罪もないあの人に 苦しみは見せられません 318 00:33:22,189 --> 00:33:26,260 しかし それは先様が勝手に なすっていることじゃないか 319 00:33:26,260 --> 00:33:29,563 こんなことになるのも あの時の雪之丞に 320 00:33:29,563 --> 00:33:33,100 この考えが 足りなかったからでございます 321 00:33:33,100 --> 00:33:36,436 雪 そなた まさかあの娘に… 322 00:33:36,436 --> 00:33:38,472 いいえ ちっ 違います 323 00:33:38,472 --> 00:33:41,972 かたきの娘に引かれるなどと そんな… 324 00:33:51,485 --> 00:33:53,785 二丁でございます 325 00:34:36,230 --> 00:34:38,232 よう 兄さん また会っちゃったね 326 00:34:38,232 --> 00:34:40,334 ハハ よく会うね 327 00:34:40,334 --> 00:34:42,669 時に闇太郎は捕まったかい? 328 00:34:42,669 --> 00:34:44,969 それがまだなんだよ 329 00:34:46,940 --> 00:34:48,940 あっ! 330 00:34:51,745 --> 00:34:53,747 馬鹿野郎!あれが闇太郎だ 331 00:34:53,747 --> 00:34:57,150 へえ あれがね 332 00:34:57,150 --> 00:34:59,850 あっ 親分! 333 00:35:39,226 --> 00:35:42,026 ありがとうございました どうも ありがとうございました 334 00:35:50,037 --> 00:35:52,239 花村屋の若親方は 今日は 335 00:35:52,239 --> 00:35:54,274 どうかしてるんじゃねえか? うん 336 00:35:54,274 --> 00:35:56,276 ちっとも意気が 上がらねえじゃねえか 337 00:35:56,276 --> 00:35:58,278 まったくだな 338 00:35:58,278 --> 00:36:01,081 雪 今の幕 あれは何だ 339 00:36:01,081 --> 00:36:03,283 申し訳ありません 340 00:36:03,283 --> 00:36:05,652 ご両親のことを考えてみなさい 341 00:36:05,652 --> 00:36:10,052 あの方の家出などに 心を奪われてる時ではあるまい 342 00:36:12,626 --> 00:36:16,463 はい 343 00:36:16,463 --> 00:36:18,463 太夫 344 00:36:22,169 --> 00:36:24,269 お使いがこれを 345 00:36:33,980 --> 00:36:37,884 「お目もじいたしてより胸も心も」 346 00:36:37,884 --> 00:36:42,055 「ただただ 焦がれ高ぶるのみにござ候」 347 00:36:42,055 --> 00:36:45,792 「されば若き身を 閉じ込め候檻より」 348 00:36:45,792 --> 00:36:49,796 「ようやく逃れいだし 古き乳母を頼り」 349 00:36:49,796 --> 00:36:56,536 「その者の手にて 小石川伝通院裏に忍び隠れ申し候」 350 00:36:56,536 --> 00:37:01,274 「幸薄き身の あなた様のみ 恋い焦がれおり候」 351 00:37:01,274 --> 00:37:04,945 「哀れな女をいとしと おぼし召し」 352 00:37:04,945 --> 00:37:09,916 「こよいお越したまわることのみ 念じ上げまいらせ候」 353 00:37:09,916 --> 00:37:13,016 「かしこ 浪路」 354 00:37:23,697 --> 00:37:25,997 お返ししておくれ 355 00:37:32,606 --> 00:37:35,906 あの お返ししておくれと おっしゃってますから 356 00:39:36,997 --> 00:39:40,300 長崎の異国料理なぞ 太夫も初めてだろう 357 00:39:40,300 --> 00:39:43,003 うわさには聞いておりましたが 358 00:39:43,003 --> 00:39:47,007 長崎はいい所だ 料理はうまいし女はいいし 359 00:39:47,007 --> 00:39:49,609 あなた フフフ… 360 00:39:49,609 --> 00:39:51,609 さあ 太夫 361 00:39:54,414 --> 00:39:58,151 えっ 太夫からお迎えが? 362 00:39:58,151 --> 00:40:00,854 あっ お起きになりましては 363 00:40:00,854 --> 00:40:04,124 出かけます 鏡を 364 00:40:04,124 --> 00:40:06,124 でも… 365 00:40:08,228 --> 00:40:10,230 大事ないというに 366 00:40:10,230 --> 00:40:13,700 ハハハ… 大事ない 大事ない 367 00:40:13,700 --> 00:40:16,803 長崎屋がいくら 大量の米を仕入れようと 368 00:40:16,803 --> 00:40:19,139 江戸の人間の口は多い 369 00:40:19,139 --> 00:40:22,776 広海屋手持ちの米は めったに腐らせはせん 370 00:40:22,776 --> 00:40:24,811 では あなた様も? 371 00:40:24,811 --> 00:40:28,315 えー わしの持ち米は何万 372 00:40:28,315 --> 00:40:32,719 長崎屋の買い付け米なぞ 問題じゃない 373 00:40:32,719 --> 00:40:35,655 広海屋様 そのお米を 374 00:40:35,655 --> 00:40:38,692 この際 安くお手放しになるお気は ございませんか 375 00:40:38,692 --> 00:40:42,963 安く?ハハハ とんでもない 376 00:40:42,963 --> 00:40:45,365 いいえ 実は手前 377 00:40:45,365 --> 00:40:49,636 先日 ご城内のさる役向きの お座敷へ呼ばれましたが 378 00:40:49,636 --> 00:40:53,073 その時 図らずも あなた様のお名が出まして 379 00:40:53,073 --> 00:40:56,543 まあ 380 00:40:56,543 --> 00:40:59,112 ほう どのようなうわさを? 381 00:40:59,112 --> 00:41:02,515 広海屋様もこの際 手持ちを投げ出して 382 00:41:02,515 --> 00:41:07,020 米の値を一挙に引き下げたら お名前も上下に輝き 383 00:41:07,020 --> 00:41:09,856 江戸一の勢いを お示しになれるのに 384 00:41:09,856 --> 00:41:12,692 何をためらっているのであろうと 太夫 385 00:41:12,692 --> 00:41:15,395 底値の時に お仕入れになった米なら 386 00:41:15,395 --> 00:41:18,298 ご損はせずに男になれるのにと 387 00:41:18,298 --> 00:41:21,198 そのように おっしゃってでございました 388 00:42:15,689 --> 00:42:17,691 たわけめ 何日になると思う 389 00:42:17,691 --> 00:42:21,728 ははっ いや 雪之丞の身辺には 見張りをつけてございますが 390 00:42:21,728 --> 00:42:24,030 ご息女に会った形跡が ございませぬので 391 00:42:24,030 --> 00:42:27,000 たたけ たたけ 雪之丞をたたいてみい 392 00:42:27,000 --> 00:42:29,736 はっ ご隠居様 一大事でございます 393 00:42:29,736 --> 00:42:33,673 大奥からお見舞いとして 御典医 松尾玄順殿が参りました 394 00:42:33,673 --> 00:42:36,142 わしが会う前に 金をつかませるのじゃ 金を 395 00:42:36,142 --> 00:42:38,845 はっ はっ 396 00:42:38,845 --> 00:42:42,315 平馬 雪之丞を始末してしまえ 397 00:42:42,315 --> 00:42:44,784 あいつさえ この世から消してしまえば 398 00:42:44,784 --> 00:42:47,253 浪は諦めて必ず帰ってくる 399 00:42:47,253 --> 00:42:49,253 はっ 400 00:42:55,628 --> 00:43:00,734 長崎奉行当時 手に入れた オランダ渡りの連発銃じゃ 401 00:43:00,734 --> 00:43:03,470 万が一の時に使うがいいぞ 402 00:43:03,470 --> 00:43:05,470 はっ 403 00:43:25,058 --> 00:43:28,658 キャーッ 花村屋! 404 00:43:46,379 --> 00:43:48,381 花村屋さん 花村屋さん! 405 00:43:48,381 --> 00:43:50,781 花村屋さーん! 406 00:44:04,697 --> 00:44:07,097 おはようございます 407 00:44:17,777 --> 00:44:20,146 おう 太夫 408 00:44:20,146 --> 00:44:24,450 これはお早くから 太夫 あの方の件では 409 00:44:24,450 --> 00:44:27,120 ご隠居やわしも やきもきするばかりで 410 00:44:27,120 --> 00:44:29,422 もう ほとほと 途方に暮れてるんだよ 411 00:44:29,422 --> 00:44:31,491 決して悪いようにはしないからね 412 00:44:31,491 --> 00:44:34,427 わしにだけ そっとあの方の居所を 413 00:44:34,427 --> 00:44:39,199 長崎屋様 あなたまでこの雪之丞を お疑いでございますか 414 00:44:39,199 --> 00:44:42,569 いや 疑うというわけじゃ ないけれど 415 00:44:42,569 --> 00:44:46,206 ではお尋ねになるだけ 無駄でございましょう 416 00:44:46,206 --> 00:44:48,808 困ったなあ 太夫 417 00:44:48,808 --> 00:44:52,912 お前さんには わしや ご隠居の立場が分からぬのだ 418 00:44:52,912 --> 00:44:55,014 旦那様 大変でございます どうした 419 00:44:55,014 --> 00:44:58,084 米相場が今朝から どか落ちで ガラガラ下がるばかりなんです 420 00:44:58,084 --> 00:45:00,153 なっ 何だと 広海屋さんが 421 00:45:00,153 --> 00:45:02,155 手持ちの米を 残らず売りに出したので 422 00:45:02,155 --> 00:45:05,058 町中の米屋は どんどん店を開け始めました 423 00:45:05,058 --> 00:45:07,293 うむ 424 00:45:07,293 --> 00:45:09,562 広海屋め 425 00:45:09,562 --> 00:45:12,162 この長崎屋を潰す気だな 426 00:45:17,470 --> 00:45:19,870 (笑い声) 427 00:45:22,542 --> 00:45:26,042 太夫 お久しぶりですね 428 00:45:27,981 --> 00:45:32,581 その節はとんだ生きのいい 光り物をごちそうになりましたね 429 00:45:37,056 --> 00:45:39,759 出がらしだよ 430 00:45:39,759 --> 00:45:41,759 弟子はいないのかね 431 00:45:43,997 --> 00:45:46,532 ご用件は? 432 00:45:46,532 --> 00:45:48,668 太夫 433 00:45:48,668 --> 00:45:51,968 これに覚えはござんせんかね 434 00:45:53,973 --> 00:45:56,743 あっ 435 00:45:56,743 --> 00:45:58,743 あの時の 436 00:46:05,885 --> 00:46:09,522 太夫が口をつけた杯だと言って 437 00:46:09,522 --> 00:46:13,927 あの人が 命よりも大切にしている品 438 00:46:13,927 --> 00:46:19,332 それが どうして あたしの手にあるとお思いだえ? 439 00:46:19,332 --> 00:46:22,035 (笑い声) 440 00:46:22,035 --> 00:46:27,335 あの人はもう伝通院裏の 隠れ家にゃいませんよ 441 00:46:29,909 --> 00:46:32,409 ある所に… 442 00:46:48,561 --> 00:46:53,199 ちゃーんと護衛まで付けて 預かってますからね 443 00:46:53,199 --> 00:46:55,868 生かすも殺すも 444 00:46:55,868 --> 00:46:59,568 お初さんの心任せというわけさ 445 00:47:04,644 --> 00:47:08,144 何さ おっかない顔して 446 00:47:11,451 --> 00:47:14,587 太夫 447 00:47:14,587 --> 00:47:17,123 闇の親分に口説かれて 448 00:47:17,123 --> 00:47:20,727 ちっとは その気になりはしたが 449 00:47:20,727 --> 00:47:25,064 あたしにゃ聞かしてくれなかった 優しいせりふで 450 00:47:25,064 --> 00:47:29,435 あの人をなだめるのを 聞いちゃあね 451 00:47:29,435 --> 00:47:31,738 それじゃ あの時… 452 00:47:31,738 --> 00:47:34,474 そうさ 453 00:47:34,474 --> 00:47:38,077 縁の下に潜り込んでね 454 00:47:38,077 --> 00:47:41,547 それで私にどうしろと? 455 00:47:41,547 --> 00:47:43,850 太夫の気持ち次第じゃ 456 00:47:43,850 --> 00:47:46,753 あの人を自由にしてあげる つもりなんですがね 457 00:47:46,753 --> 00:47:48,755 やめてください! 458 00:47:48,755 --> 00:47:52,355 罪もないあの人を苦しめるのは 459 00:47:54,861 --> 00:47:57,730 太夫 お前さん 460 00:47:57,730 --> 00:48:01,968 やっぱり あの人にほれてるね 461 00:48:01,968 --> 00:48:06,068 太夫 広海屋様からお使いが 462 00:48:15,481 --> 00:48:19,018 「取り急ぎ一筆申し上げ候」 463 00:48:19,018 --> 00:48:21,354 「浪の路様の件につき」 464 00:48:21,354 --> 00:48:25,658 「そもじの身に関わる一大事 聞き込み候ゆえ」 465 00:48:25,658 --> 00:48:27,693 「ぜひともお耳に入れたく」 466 00:48:27,693 --> 00:48:31,964 「こよい宿までお迎えのかご 差し向け候間」 467 00:48:31,964 --> 00:48:35,068 「ご来駕くださるべく待ちおり候」 468 00:48:35,068 --> 00:48:37,168 「まずは用件のみ」 469 00:48:39,172 --> 00:48:41,774 お伺いいたしますと 申し上げてください 470 00:48:41,774 --> 00:48:43,774 はい 471 00:48:46,212 --> 00:48:48,712 太夫 お支度をどうぞ 472 00:49:10,436 --> 00:49:12,438 あの お伺いするそうで ございますから 473 00:49:12,438 --> 00:49:15,038 はい ではそう申し伝えます 474 00:49:36,929 --> 00:49:40,366 おうおう 475 00:49:40,366 --> 00:49:44,137 騒ぐんじゃねえ 静かに静かに 静かにってんだ 476 00:49:44,137 --> 00:49:47,106 おい 477 00:49:47,106 --> 00:49:51,577 長崎屋! 米を出せ! 478 00:49:51,577 --> 00:49:54,777 長崎屋!米を出せ! 479 00:49:59,051 --> 00:50:02,951 ええ 町方は何をしてるんだ なぜ追い散らさないんだ! 480 00:50:05,057 --> 00:50:07,157 エイッ! 481 00:50:18,971 --> 00:50:20,971 長崎屋の旦那 482 00:50:23,242 --> 00:50:26,045 なっ 何だ お前は 483 00:50:26,045 --> 00:50:30,345 闇太郎と申し上げたら 多分 お聞きおよびでござんしょ 484 00:50:33,486 --> 00:50:35,886 何 闇太郎? 485 00:50:38,224 --> 00:50:40,226 その闇太郎が何の用だ 486 00:50:40,226 --> 00:50:44,430 へへっ 長崎屋さん 何もそう びくびくなさるにゃあたりやせん 487 00:50:44,430 --> 00:50:46,933 表の人たちはね あっしが たたき破れと 488 00:50:46,933 --> 00:50:49,235 下知をするまでは 踏み込んじゃめえりやせん 489 00:50:49,235 --> 00:50:52,338 早く言え なっ なっ 何が欲しいんだ 490 00:50:52,338 --> 00:50:55,007 表の人たちはね 広海屋さんに引き換えて 491 00:50:55,007 --> 00:50:57,410 旦那は鬼だと言って いきり立ってんでさ 492 00:50:57,410 --> 00:51:00,179 だから あの人たちを なだめるにゃ蔵ん中の米を 493 00:51:00,179 --> 00:51:03,282 そっくりやっていただくより 手はねえんで 494 00:51:03,282 --> 00:51:07,220 ばっ 馬鹿を言え それじゃ長崎屋は無一文だ 495 00:51:07,220 --> 00:51:10,489 嫌ですかい それじゃ一声かけやしょう 496 00:51:10,489 --> 00:51:14,026 その代わり旦那方一家の命は 保証できやせんぜ 497 00:51:14,026 --> 00:51:16,295 おーい 表の衆 498 00:51:16,295 --> 00:51:19,265 待て 待ってくれ 499 00:51:19,265 --> 00:51:22,165 それじゃあ蔵の鍵を闇太郎に 預けておくんなさるか 500 00:51:25,037 --> 00:51:28,837 長崎屋さん 今は 思案してる時じゃありやせんぜ 501 00:51:34,847 --> 00:51:36,847 あなた 502 00:51:39,385 --> 00:51:41,387 清兵衛 はい 503 00:51:41,387 --> 00:51:44,123 鍵を渡してやれ 504 00:51:44,123 --> 00:51:46,123 はい 505 00:51:54,634 --> 00:51:56,734 すまねえな 506 00:52:05,878 --> 00:52:09,278 おーい みんな 静かにしてくれ 507 00:52:12,151 --> 00:52:15,554 おーい みんな 旦那が 蔵ん中の米をそっくり下さったぜ 508 00:52:15,554 --> 00:52:17,754 そーれっ 509 00:52:31,270 --> 00:52:34,840 へっ おととい来やがれ 510 00:52:34,840 --> 00:52:38,540 待て 闇太郎 待て 闇太郎! 511 00:52:42,548 --> 00:52:45,948 おう 長崎屋さん 苦情は広海屋へ言ってくれよ 512 00:52:55,861 --> 00:52:58,564 ちきしょう 広海屋だ 513 00:52:58,564 --> 00:53:03,564 この長崎屋を丸裸にしたのは ちきしょう 広海屋だ 514 00:53:07,773 --> 00:53:12,773 何 広海屋さんへ? はい お迎えのかごでつい今しがた 515 00:53:50,149 --> 00:53:53,853 かご屋さん 広海屋さんからのお迎えにしては 516 00:53:53,853 --> 00:53:57,053 少々 物々しすぎるようですね 517 00:54:20,279 --> 00:54:23,382 かごが参りました 518 00:54:23,382 --> 00:54:25,782 稽古やめい! 519 00:54:28,421 --> 00:54:30,421 出ろ! 520 00:54:40,866 --> 00:54:42,866 通れ 521 00:55:42,728 --> 00:55:44,930 雪之丞 522 00:55:44,930 --> 00:55:47,867 さるお方のお頼みにより 523 00:55:47,867 --> 00:55:50,736 そのほうの命をもらうぞ 524 00:55:50,736 --> 00:55:53,973 雪之丞さえ この世から 消してしまえば 525 00:55:53,973 --> 00:55:56,976 あの方は諦めて帰ってくる 526 00:55:56,976 --> 00:56:00,513 そのお方はそうおっしゃったと 見えまするな 527 00:56:00,513 --> 00:56:04,683 何? だが雪之丞は斬れませぬ 528 00:56:04,683 --> 00:56:07,820 雪之丞には 見えない力の加護がございます 529 00:56:07,820 --> 00:56:10,456 広言を吐くな! 530 00:56:10,456 --> 00:56:12,456 何をなさいます 531 00:56:30,309 --> 00:56:32,309 動くな! 532 00:57:05,611 --> 00:57:08,180 太夫はね 533 00:57:08,180 --> 00:57:12,117 お前さんにほれてるよ 534 00:57:12,117 --> 00:57:14,119 だから… 535 00:57:14,119 --> 00:57:16,319 だから生かしちゃおけねえんだ 536 00:57:38,911 --> 00:57:41,547 御府内で発砲しても よろしいのでございますか 537 00:57:41,547 --> 00:57:44,416 心配するな フフフ… 538 00:57:44,416 --> 00:57:47,216 そこに抜かりのある平馬と思うか 539 00:57:50,656 --> 00:57:52,656 かかれ!