1 00:02:02,612 --> 00:02:04,612 さあ いらっしゃい いらっしゃい いらっしゃい 2 00:02:22,932 --> 00:02:25,768 てえした人気だな すたれかかってた中村座も 3 00:02:25,768 --> 00:02:28,738 これで立ち直れるって評判ですぜ たかが上方役者じゃねえか 4 00:02:28,738 --> 00:02:30,740 江戸っ子は誰でも そう馬鹿にしてたんですがね 5 00:02:30,740 --> 00:02:33,142 ところが ふたを開けてみたら この景気なんでね 6 00:02:33,142 --> 00:02:35,144 誰よりも裏方が びっくりしてるって話で 7 00:02:35,144 --> 00:02:37,614 江戸っ子の初物食いだろ ところが大違い 8 00:02:37,614 --> 00:02:40,850 人気の元ってのは一座の 雪之丞っていう女形なんですがね 9 00:02:40,850 --> 00:02:43,553 これがまた ふるいつきたく なるようないい女形でね 10 00:02:43,553 --> 00:02:47,857 それがね お染 久松 お光 奥女中 竹川 土手のお六 母貞昌 11 00:02:47,857 --> 00:02:49,892 それに芸者の小竹の七役まで 早変わりで 12 00:02:49,892 --> 00:02:51,894 見せようってんですからね 人気が湧かなきゃ 13 00:02:51,894 --> 00:02:54,464 どうかしてまさあね 14 00:02:54,464 --> 00:02:57,900 六 てめえの肩入れじゃ 始まるめえが 15 00:02:57,900 --> 00:03:00,436 俺は髪 結い直してくるから その間に 16 00:03:00,436 --> 00:03:02,438 肩入れついでに 一幕のぞいてきてもいいぜ 17 00:03:02,438 --> 00:03:05,141 ありがてえ こんな話の分かる 親分とは思わなかった 18 00:03:05,141 --> 00:03:07,141 じゃ いってきます 19 00:03:15,952 --> 00:03:18,287 あっ いらっしゃいまし どうぞ 20 00:03:18,287 --> 00:03:20,287 頼むぜ 親方 21 00:03:56,025 --> 00:03:58,061 どうも お粗末さまで 22 00:03:58,061 --> 00:04:01,698 すまなかったな 親方 どうも 23 00:04:01,698 --> 00:04:04,000 釣りは要らねえよ あっ こりゃどうも 24 00:04:04,000 --> 00:04:06,669 まあ 一服おつけなさって また頼むぜ 25 00:04:06,669 --> 00:04:08,669 お気をつけて 26 00:04:11,541 --> 00:04:13,743 あっ 親分さん お待ちどおさまで 27 00:04:13,743 --> 00:04:15,743 おう 28 00:04:21,884 --> 00:04:25,621 へえ どうも 29 00:04:25,621 --> 00:04:28,725 今のは常連か? いえいえ 不意のお客様で 30 00:04:28,725 --> 00:04:30,725 うん へえ 31 00:04:37,633 --> 00:04:40,169 今の客のじゃねえのか? あっ 小判! 32 00:04:40,169 --> 00:04:42,171 あっ これ 定吉 今の人を追ってみな 33 00:04:42,171 --> 00:04:44,173 へえ 34 00:04:44,173 --> 00:04:47,744 あっ 山形屋の刻印だ! えっ? 35 00:04:47,744 --> 00:04:51,881 闇太郎! あっ 親分 そっ その頭では… 36 00:04:51,881 --> 00:04:53,881 親分! 37 00:04:55,885 --> 00:05:00,089 親分!親分 親分って これ 38 00:05:00,089 --> 00:05:03,292 (人々の笑い声) 39 00:05:03,292 --> 00:05:06,292 ちくしょう 足のはええ野郎だ 40 00:05:23,613 --> 00:05:27,713 幕がなげえぞ! 早くやりゃいいんだけどな 41 00:06:09,892 --> 00:06:13,262 ほほう 土部の隠居らしいな 42 00:06:13,262 --> 00:06:17,733 はあ 浪路様がお宿下がりなので そのご慰労でございましょう 43 00:06:17,733 --> 00:06:21,637 ほほう 長崎屋も一緒らしいな 挨拶に行かなくてもよいのか? 44 00:06:21,637 --> 00:06:25,641 はっ はあ 後ほどちょっと 45 00:06:25,641 --> 00:06:27,741 うん 46 00:06:34,383 --> 00:06:37,353 土部三斉?うーん 47 00:06:37,353 --> 00:06:39,488 あれが隠居の身で 天下のこと何一つ 48 00:06:39,488 --> 00:06:41,490 思うままにならねえものは ねえという 49 00:06:41,490 --> 00:06:43,693 飛ぶ鳥を落とす土部様だが 50 00:06:43,693 --> 00:06:47,330 昔の長崎奉行のことを思えば 大したご出世よ 51 00:06:47,330 --> 00:06:50,833 だが それというのもみんな あの娘御の浪路様のおかげさ 52 00:06:50,833 --> 00:06:54,570 何しろ将軍様は浪路様でねえと 夜も日も明けねえってんだからな 53 00:06:54,570 --> 00:06:58,241 あの取り巻きの 裕福そうな町人2人は? 54 00:06:58,241 --> 00:07:03,312 竜閑町の広海屋与平 越前堀の長崎屋三郎兵衛 55 00:07:03,312 --> 00:07:05,815 あの2人に土部様の3人が 顔を合わせりゃ 56 00:07:05,815 --> 00:07:10,715 日本国中の小判をかき集めるのは 朝飯前という やり手ぞろいさ 57 00:07:16,092 --> 00:07:18,594 長崎屋殿 おう 門倉さん 58 00:07:18,594 --> 00:07:20,596 あんたも来ていなすったのか 59 00:07:20,596 --> 00:07:23,332 ご隠居 60 00:07:23,332 --> 00:07:25,334 おう 平馬ではないか 61 00:07:25,334 --> 00:07:29,205 はあ 図らずもお姿を 拝しましたのでご挨拶に 62 00:07:29,205 --> 00:07:32,041 日頃 家中の者が世話になる 大儀じゃ 63 00:07:32,041 --> 00:07:34,944 恐れ入ります だが武骨者の そのほうが 64 00:07:34,944 --> 00:07:37,613 芝居見物とは変わったことが あるもんじゃな 65 00:07:37,613 --> 00:07:43,152 はあ 実は菊之丞一座の雪之丞と 申しまする者 師匠一松斉が 66 00:07:43,152 --> 00:07:45,655 大阪表におりました頃の 門人でございまして 67 00:07:45,655 --> 00:07:47,657 ほう 役者の雪之丞がか 68 00:07:47,657 --> 00:07:50,993 はあ 役者ふぜいが 何のための剣道か 69 00:07:50,993 --> 00:07:54,063 手前にはその当時から 一向に分かりかねましたが 70 00:07:54,063 --> 00:07:57,800 とにかく師匠は 大層な肩の入れ方でございまして 71 00:07:57,800 --> 00:08:03,306 江戸下りをすればしたで ああして手前を供にわざわざ… 72 00:08:03,306 --> 00:08:05,306 どうした どうした! 73 00:08:20,256 --> 00:08:22,658 太夫 二丁が入りました 74 00:08:22,658 --> 00:08:24,658 あいよ 75 00:08:28,898 --> 00:08:33,069 じゃ しっかりお願いしますよ 若花村屋さん 何しろ今をときめく 76 00:08:33,069 --> 00:08:36,872 土部様ご父子のご見物です 粗相のないようにね 77 00:08:36,872 --> 00:08:42,445 せっかくですが雪之丞は 土部様のために舞台は勤めません 78 00:08:42,445 --> 00:08:44,580 大入り場や平土間の お客様のために 79 00:08:44,580 --> 00:08:47,083 粗相がないようにと おっしゃるのなら 80 00:08:47,083 --> 00:08:49,783 一生懸命 勤めますよ 81 00:09:03,265 --> 00:09:06,265 ご師匠様 お願いいたします 82 00:09:08,237 --> 00:09:12,108 雪 どなた様がご見物なさろうと 83 00:09:12,108 --> 00:09:15,011 役者の舞台は芸が身上なんだから 84 00:09:15,011 --> 00:09:18,381 心を乱して とちるんじゃねえぞ 分かったな 85 00:09:18,381 --> 00:09:21,283 はい 分かったら早く行け 86 00:09:21,283 --> 00:09:23,883 では勤めさせていただきます 87 00:09:59,989 --> 00:10:03,993 門倉さん おかげで例のほうは 万事 都合よく運んでますよ 88 00:10:03,993 --> 00:10:06,595 もう積み出しましたか 船出をしたという知らせが 89 00:10:06,595 --> 00:10:09,832 入ったから もう日ならずして 江戸へ着きますよ 90 00:10:09,832 --> 00:10:13,169 これも大阪にいたことのある お前さんの顔の効き目だ 91 00:10:13,169 --> 00:10:16,038 お礼はたんまりしますぜ いやあ 拙者としては 92 00:10:16,038 --> 00:10:19,475 土部様に橋渡しをしてもらった ほんのお礼心だが 93 00:10:19,475 --> 00:10:23,746 奥州筋の不作でうなぎ登りに 値上がりしてる この時を狙って 94 00:10:23,746 --> 00:10:26,849 六千石の米を西国で 買い付けるとは 95 00:10:26,849 --> 00:10:28,851 さすがは長崎屋さんだ 96 00:10:28,851 --> 00:10:31,654 何しろ身代残らず懸けての勝負だ 97 00:10:31,654 --> 00:10:34,924 もし しくじったら これしかない 98 00:10:34,924 --> 00:10:36,926 もうけないで どうするものか 99 00:10:36,926 --> 00:10:40,062 広海屋も相当の買い付け米を 持ってるらしいが 100 00:10:40,062 --> 00:10:43,462 この話を聞いたら さぞ苦い顔をするだろう 101 00:11:01,083 --> 00:11:05,554 あれまあ 久松はどこにいやるやら 102 00:11:05,554 --> 00:11:09,291 午の刻過ぎ 水天様で 103 00:11:09,291 --> 00:11:13,129 会おうと固く約束して 104 00:11:13,129 --> 00:11:16,966 あれ そんなお約束を 105 00:11:16,966 --> 00:11:19,401 ちゃっと おじゃ 106 00:11:19,401 --> 00:11:22,601 若花村 待ってました! 107 00:12:15,324 --> 00:12:17,924 若花村! 108 00:14:07,303 --> 00:14:10,506 若花村! ちょっと静かに願いたいね 109 00:14:10,506 --> 00:14:13,642 へっ 大きなお世話だよ シッ! 110 00:14:13,642 --> 00:14:15,642 若花村! 111 00:14:32,561 --> 00:14:38,000 ご隠居様 後ほど雪之丞をご挨拶に 伺わせることにいたしましたが 112 00:14:38,000 --> 00:14:40,002 いかがでございましょう 113 00:14:40,002 --> 00:14:42,571 まあ 114 00:14:42,571 --> 00:14:46,975 うむ 浪路にも異存はなさそうだ よきに計らえ 115 00:14:46,975 --> 00:14:49,211 承知いたしました 116 00:14:49,211 --> 00:14:52,114 あっ 雪 117 00:14:52,114 --> 00:14:55,317 お染が済んだら茶屋のほうへ いらっしゃるそうだから 118 00:14:55,317 --> 00:14:59,617 土部様にご挨拶に出るように 奥役が言ってきたがどうする 119 00:15:03,125 --> 00:15:05,160 伺います そうか 120 00:15:05,160 --> 00:15:08,330 だが夢にも 松浦屋のせがれ雪太郎と 121 00:15:08,330 --> 00:15:11,834 悟られるような振る舞いが あったら今日までの苦労は水の泡 122 00:15:11,834 --> 00:15:13,836 分かっているな 雪 123 00:15:13,836 --> 00:15:15,836 はい 124 00:15:23,045 --> 00:15:25,614 あっ 親分 どうしたんです 125 00:15:25,614 --> 00:15:28,951 佐竹様で盗まれた小判だ えっ 闇太郎ですね 126 00:15:28,951 --> 00:15:31,351 いってえ どんな野郎です 親分 127 00:15:49,338 --> 00:15:54,143 さあ そう硬くならずと ずっと進んでお杯を 128 00:15:54,143 --> 00:15:56,145 さあ 受けてくれ 129 00:15:56,145 --> 00:15:58,645 かたじけのう存じます 130 00:16:32,948 --> 00:16:36,485 このお杯は? ああ ご息女へ 131 00:16:36,485 --> 00:16:38,885 あっ そのままそのまま 132 00:16:52,134 --> 00:16:57,806 この頃の江戸では雪之丞のような 優れた芸道の者が口に当てた杯は 133 00:16:57,806 --> 00:17:01,806 お客が持ち帰るのが 習わしになっております 134 00:17:04,112 --> 00:17:07,149 花村屋 明日は大奥へ お帰りなさるのだ 135 00:17:07,149 --> 00:17:11,587 そなたもご息女にお願いして 記念にお持ち帰り願うがいいぞ 136 00:17:11,587 --> 00:17:13,587 はい 137 00:17:31,640 --> 00:17:37,746 江戸には初下りと聞くが 生まれは大阪か 138 00:17:37,746 --> 00:17:41,216 はい うむ 139 00:17:41,216 --> 00:17:44,016 親の代からの役者か 140 00:17:47,022 --> 00:17:51,693 父は堅気な あきんどでございました 141 00:17:51,693 --> 00:17:54,129 すると もう他界いたしたのじゃな 142 00:17:54,129 --> 00:17:56,398 はい 143 00:17:56,398 --> 00:18:01,770 母も間もなく父の後を追うように 144 00:18:01,770 --> 00:18:06,241 ああ そうか 苦労したと見えるが 145 00:18:06,241 --> 00:18:11,141 その苦労が実を結んで今日の 雪之丞をつくり上げたんじゃろう 146 00:18:13,782 --> 00:18:17,953 そちが舞台を踏んだのは いくつの時じゃな? 147 00:18:17,953 --> 00:18:22,724 両親に死に別れました 10歳の折でございます 148 00:18:22,724 --> 00:18:27,262 では みなしごとなられたために この道へ? 149 00:18:27,262 --> 00:18:33,368 はい 今の師匠 菊之丞に 拾い上げられたのが 150 00:18:33,368 --> 00:18:38,574 役者修業の始まりでございます 151 00:18:38,574 --> 00:18:41,410 一見 華やかに見えても 152 00:18:41,410 --> 00:18:45,010 人には涙が付き物と見えまするな 153 00:18:53,589 --> 00:18:56,425 何?土部の座敷へ? 154 00:18:56,425 --> 00:19:01,463 土部 広海屋 長崎屋 この3人を一同に並べて 155 00:19:01,463 --> 00:19:05,534 首実検をさせておくのも 後日のためでございましょう 156 00:19:05,534 --> 00:19:07,536 うむ そこもある 157 00:19:07,536 --> 00:19:10,005 いや 今度の初上りは 158 00:19:10,005 --> 00:19:13,075 あれにとっては またとない折でございまするでな 159 00:19:13,075 --> 00:19:16,778 うむ この機会を 無駄にさしてはならんのじゃ 160 00:19:16,778 --> 00:19:20,115 ついては花村屋殿 雪之丞をこよい 161 00:19:20,115 --> 00:19:22,651 道場までよこしてはくださらんか 162 00:19:22,651 --> 00:19:26,651 わしは ぜひとも あれに譲りたい物がござるのじゃ 163 00:19:34,796 --> 00:19:37,366 稽古はどうしたんだ はっ 164 00:19:37,366 --> 00:19:40,402 それが道場はお客様です 誰だ 165 00:19:40,402 --> 00:19:42,738 中村座の 雪之丞とやらだそうですが 166 00:19:42,738 --> 00:19:45,540 何か二人きりで話があるからと おっしゃって 167 00:19:45,540 --> 00:19:47,940 二人っきりで? 168 00:20:18,507 --> 00:20:23,879 雪之丞 そなたに 譲りたいという品はこれじゃ 169 00:20:23,879 --> 00:20:26,848 わしが幼きより独立自発 170 00:20:26,848 --> 00:20:30,419 心肝を砕いて編み出した 流儀の奥伝じゃ 171 00:20:30,419 --> 00:20:35,524 では私に独創天心流の奥義を… 172 00:20:35,524 --> 00:20:39,761 そなたにとっては千載一遇の この折じゃ 173 00:20:39,761 --> 00:20:43,665 今 譲らねば 譲る機会は二度とあるまい 174 00:20:43,665 --> 00:20:46,468 ちこう参れ 175 00:20:46,468 --> 00:20:48,468 かたじけのう存じます 176 00:20:50,539 --> 00:20:54,339 しばらく!そのご伝授は お待ちください 177 00:20:57,145 --> 00:21:01,650 先生 この門倉平馬 幼少より おそばにはべり 178 00:21:01,650 --> 00:21:03,819 至らぬながらも ご門下の1人として 179 00:21:03,819 --> 00:21:05,887 ご師範代なども 仰せつかっております 180 00:21:05,887 --> 00:21:09,324 しかるに その拙者を差し置き 門人とはいえ 181 00:21:09,324 --> 00:21:11,626 例外の雪之丞にご伝授とは その意を得ません 182 00:21:11,626 --> 00:21:15,363 しかし技の優劣は 門人として新しい古いとは 183 00:21:15,363 --> 00:21:17,833 おのずから別じゃ 184 00:21:17,833 --> 00:21:20,635 ではこの平馬の腕が 185 00:21:20,635 --> 00:21:24,005 この雪之丞殿より劣ると 申されまするか 186 00:21:24,005 --> 00:21:26,108 ではこの場で雪之丞殿と勝負を 187 00:21:26,108 --> 00:21:28,543 その焦心狂騒がよくないのじゃ 188 00:21:28,543 --> 00:21:31,646 それでは この奥義書を 読んだところで 189 00:21:31,646 --> 00:21:35,584 独創天心流の神髄を 会得することも おぼつかない 190 00:21:35,584 --> 00:21:39,284 時節を待て 今日のところは下がっておれ 191 00:21:41,256 --> 00:21:43,956 雪之丞 これを持て 192 00:21:48,330 --> 00:21:50,699 お待ちなされ! 待て それに及ばん 193 00:21:50,699 --> 00:21:53,799 と仰せられましても… 心を静めて座るがよい 194 00:22:18,960 --> 00:22:20,960 あっ! 195 00:22:24,933 --> 00:22:28,633 よくも一杯 食わせおったな! 196 00:22:47,222 --> 00:22:51,293 えっ あの奥義書は白紙だと 仰せられまするか 197 00:22:51,293 --> 00:22:53,929 うむ わしの流儀は 198 00:22:53,929 --> 00:22:56,331 言わず説かずを 旨にしていることを 199 00:22:56,331 --> 00:22:58,633 そなたも よく存じているはず 200 00:22:58,633 --> 00:23:01,303 すなわち わしの奥義は 201 00:23:01,303 --> 00:23:04,906 文字に託して伝えることは 何もないのじゃ 202 00:23:04,906 --> 00:23:09,411 事に当たって常に心をむなしく 白紙の状態にしておけ 203 00:23:09,411 --> 00:23:12,314 さすれば おのずから活路が開ける 204 00:23:12,314 --> 00:23:14,883 それが独創天心流の奥義じゃ 205 00:23:14,883 --> 00:23:19,221 どうじゃ 雪之丞 会得が参ったか 206 00:23:19,221 --> 00:23:22,424 はい それは会得がいけば 207 00:23:22,424 --> 00:23:25,527 これから先は そなたの心得ひとつじゃ 208 00:23:25,527 --> 00:23:27,529 のう 雪之丞 209 00:23:27,529 --> 00:23:32,000 土部三斉 広海屋与平 長崎屋三郎兵衛といえば 210 00:23:32,000 --> 00:23:34,769 容易ならぬ大敵だぞ 211 00:23:34,769 --> 00:23:38,173 焦るなよ 早まるではないぞ 212 00:23:38,173 --> 00:23:42,477 よいか まして 剣の技におごるなよ 213 00:23:42,477 --> 00:23:46,481 できることなれば 悪と悪とを戦わしめ 214 00:23:46,481 --> 00:23:50,752 自滅の道に追いやることじゃ よいか 215 00:23:50,752 --> 00:23:54,923 はい ご教訓 身に染みました 216 00:23:54,923 --> 00:23:56,923 誰じゃ! 217 00:24:29,691 --> 00:24:34,129 折り鶴の定紋付きの贈り物 218 00:24:34,129 --> 00:24:36,429 太夫 うれしいよ 219 00:25:45,800 --> 00:25:49,100 エイホ エイホ エイホ 220 00:25:51,740 --> 00:25:56,444 花村屋の若親方 待っとくんなさいよ 221 00:25:56,444 --> 00:25:59,948 どなた様でございます? 222 00:25:59,948 --> 00:26:03,685 問われて何のなにがしと 223 00:26:03,685 --> 00:26:07,088 名乗るほどの者じゃ ござんせんがね 224 00:26:07,088 --> 00:26:11,526 これでも初日以来 毎日欠かさず大入り場へ 225 00:26:11,526 --> 00:26:14,129 通い詰めてる ひいきの1人ですのさ 226 00:26:14,129 --> 00:26:16,629 若い衆さん へい 227 00:26:28,009 --> 00:26:30,078 江戸初下りの雪之丞 228 00:26:30,078 --> 00:26:33,848 つたない芸をお見限りもなく ご見物くださいまして 229 00:26:33,848 --> 00:26:36,284 お礼の申し上げようも ございません 230 00:26:36,284 --> 00:26:38,787 (笑い声) 231 00:26:38,787 --> 00:26:43,525 そう悪堅くご挨拶じゃ こっちが痛み入りますよ 232 00:26:43,525 --> 00:26:46,561 太夫は私がお供して ぶらぶら行くから先 帰っとくれ 233 00:26:46,561 --> 00:26:48,696 へい こりゃどうも ありがとうございます 234 00:26:48,696 --> 00:26:52,367 ご用があるなら かごは待たせておきますから 235 00:26:52,367 --> 00:26:57,772 脇田先生のお屋敷で かんざしを 頂いた者だと言っても? 236 00:26:57,772 --> 00:27:01,843 お前さん 別れて帰ると おっしゃいますかね 237 00:27:01,843 --> 00:27:04,643 それじゃ あなたはあの時の… 238 00:27:07,649 --> 00:27:10,285 かご屋さん 先へ帰ってください へい 239 00:27:10,285 --> 00:27:12,554 それじゃ ごめんなすって 240 00:27:12,554 --> 00:27:14,556 おい 241 00:27:14,556 --> 00:27:16,556 ありがとうございました 242 00:27:23,531 --> 00:27:26,501 お女中 243 00:27:26,501 --> 00:27:30,071 あたしゃ軽業のお初 244 00:27:30,071 --> 00:27:33,571 名前を呼んでいただきとう ござんすね 245 00:27:43,818 --> 00:27:47,856 お初様 お前様はさっきの話を… 246 00:27:47,856 --> 00:27:50,058 聞きましたよ 247 00:27:50,058 --> 00:27:54,262 土部 広海屋 長崎屋 248 00:27:54,262 --> 00:27:58,262 確かそんな名前が出ましたっけね 249 00:28:02,770 --> 00:28:07,408 誰に頼まれて 盗み聞きをなさいました? 250 00:28:07,408 --> 00:28:10,578 とんでもない 251 00:28:10,578 --> 00:28:15,150 誰に頼まれるもんですか 252 00:28:15,150 --> 00:28:19,320 ただ ねえ? 253 00:28:19,320 --> 00:28:23,291 太夫恋しさの一念で後をつけ回し 254 00:28:23,291 --> 00:28:28,396 役者衆とは縁遠い剣道指南の門を くぐるのを見届けて 255 00:28:28,396 --> 00:28:31,399 はて面妖なと 256 00:28:31,399 --> 00:28:35,570 好奇心を起こしただけですのさ 257 00:28:35,570 --> 00:28:38,473 だけど ねえ 太夫 258 00:28:38,473 --> 00:28:43,378 今 江戸で飛ぶ鳥を落とす土部様を 敵と狙う人があることを 259 00:28:43,378 --> 00:28:48,750 お恐れながらと訴え出たら どうなるんでしょうね 260 00:28:48,750 --> 00:28:50,750 お初様 261 00:28:53,354 --> 00:28:58,554 まだ誰も訴えて出るとは 言やあしませんよ 262 00:29:00,762 --> 00:29:06,062 ただ魚心あれば水心 263 00:29:12,407 --> 00:29:15,410 ねえ 太夫 264 00:29:15,410 --> 00:29:19,013 軽業のお初は こんな あばずれだけど 265 00:29:19,013 --> 00:29:22,713 まだ男に肌だけは 許したことのないおぼこ 266 00:29:24,786 --> 00:29:27,388 そのお初が 267 00:29:27,388 --> 00:29:30,325 太夫にだけは身も心もと 打ち込んだんだ 268 00:29:30,325 --> 00:29:32,327 お初様 いいえ お願い 269 00:29:32,327 --> 00:29:36,297 たった一度 一度でいいからこの思いを 270 00:29:36,297 --> 00:29:39,734 嫌だと言ったら どうなさる? 271 00:29:39,734 --> 00:29:43,271 太夫 お前は… 272 00:29:43,271 --> 00:29:47,371 (泣き声) 273 00:29:50,645 --> 00:29:53,114 心願かなうそれまでは 274 00:29:53,114 --> 00:29:56,684 女は一切 近づけぬと誓った雪之丞 275 00:29:56,684 --> 00:30:01,623 せっかくながらお断り申します 276 00:30:01,623 --> 00:30:04,492 それじゃお前はあたしに 277 00:30:04,492 --> 00:30:06,761 土部様へ駆け込めと お言いなのかえ 278 00:30:06,761 --> 00:30:09,864 一面識のそなた 敵に回す気はないが 279 00:30:09,864 --> 00:30:14,364 雪之丞が大望の妨げをすると いうなら やむを得ません 280 00:30:35,256 --> 00:30:38,693 太夫 お前… 281 00:30:38,693 --> 00:30:41,093 どうでも あたいを斬る気かえ 282 00:30:43,064 --> 00:30:45,933 無理無体 あたいを 斬ろうっていうんなら 283 00:30:45,933 --> 00:30:49,370 あたいも軽業の出刃打ちのお初 284 00:30:49,370 --> 00:30:53,470 このかんざしでお前の目を 狙ったら外れっこねえよ 285 00:31:01,215 --> 00:31:04,319 おっ! 286 00:31:04,319 --> 00:31:08,289 雪之丞 貴様の帰りを待っていた 287 00:31:08,289 --> 00:31:11,389 女 助勢をするぞ! 288 00:31:13,761 --> 00:31:17,332 門倉様 手前はあなたに 恨みを受ける覚えはございません 289 00:31:17,332 --> 00:31:19,334 黙れ! 290 00:31:19,334 --> 00:31:24,839 一松斉となれ合って よくも白紙の 巻物でこの平馬を欺きおったな 291 00:31:24,839 --> 00:31:29,539 四の五の言わず そこに所持する 秘伝書をこっちに渡してしまえ 292 00:31:31,779 --> 00:31:34,015 これはご無体な 293 00:31:34,015 --> 00:31:36,615 あれが真実の秘伝書です 言うな! 294 00:32:29,504 --> 00:32:31,504 うっ! 295 00:32:33,641 --> 00:32:35,641 あっ! 296 00:32:39,714 --> 00:32:41,714 引き揚げろ! 297 00:32:56,230 --> 00:32:58,499 とんだお世話になりまして 298 00:32:58,499 --> 00:33:01,536 なあに 舞台に障るほどの 傷じゃねえ 299 00:33:01,536 --> 00:33:04,205 5~6日の辛抱だ 300 00:33:04,205 --> 00:33:06,674 助けついでに宿まで あっしが送ってあげる 301 00:33:06,674 --> 00:33:08,674 まあ 一杯おやんなせえ 302 00:33:30,798 --> 00:33:32,934 やっと落ち着きました 303 00:33:32,934 --> 00:33:36,504 危なかったね だが今 売り出しの若おやまに 304 00:33:36,504 --> 00:33:39,307 あれだけの腕があるとは 思わなかった 305 00:33:39,307 --> 00:33:42,944 太夫 おめえさん 何か大望を持っていなさるね 306 00:33:42,944 --> 00:33:45,413 えっ 307 00:33:45,413 --> 00:33:49,250 いや 驚かなくってもいい 筒持ち同心の家に生まれながら 308 00:33:49,250 --> 00:33:51,719 今じゃ闇太郎などという ありがたくねえ名前を 309 00:33:51,719 --> 00:33:55,790 世間からちょうだいして 闇から闇を生きている男だ 310 00:33:55,790 --> 00:33:58,960 くれえ中でも 眼力だけはよく利く奴さ 311 00:33:58,960 --> 00:34:01,162 だが権力をかさに着て 312 00:34:01,162 --> 00:34:04,632 おおっぴらで悪事を働くような さもしい野郎どもと 313 00:34:04,632 --> 00:34:07,034 同じにだけは見られたくねえよ 314 00:34:07,034 --> 00:34:11,506 これでも弱いもんには味方をし つええ奴には盾突きたくなる男だ 315 00:34:11,506 --> 00:34:15,810 事情によっちゃ 太夫 力にならねえもんでもねえぜ 316 00:34:15,810 --> 00:34:19,580 かたじけのう存じます そのご好意 317 00:34:19,580 --> 00:34:22,884 いつかはお受けする時が あるかもしれません 318 00:34:22,884 --> 00:34:25,186 しかし今は… 319 00:34:25,186 --> 00:34:28,089 ようがすとも 闇太郎 人様の秘密を 320 00:34:28,089 --> 00:34:30,091 暴きたてようとは思いやせん 321 00:34:30,091 --> 00:34:33,961 事情は聞かなくっても あっしは おめえさんを信用してるんだ 322 00:34:33,961 --> 00:34:38,099 いつ何時でも用のある時は 使いをよこしておくんなさい 323 00:34:38,099 --> 00:34:40,968 ありがとう存じます だが太夫 324 00:34:40,968 --> 00:34:43,070 軽業のお初とは どうしたいきさつで? 325 00:34:43,070 --> 00:34:45,670 さあ それでございます 326 00:34:57,618 --> 00:35:01,389 どうだ お初 (お初の笑い声) 327 00:35:01,389 --> 00:35:06,394 そりゃ あたしがあの人の秘密を 握ってるからですよ 328 00:35:06,394 --> 00:35:09,163 秘密? 329 00:35:09,163 --> 00:35:14,135 そうか 役者だてらに剣を学ぶ 330 00:35:14,135 --> 00:35:17,335 くさいと思っていたが さては誰かを狙っているな 331 00:35:19,273 --> 00:35:21,375 らしゅうござんすね 332 00:35:21,375 --> 00:35:24,946 誰だ その相手は 333 00:35:24,946 --> 00:35:27,181 と おっしゃられても 334 00:35:27,181 --> 00:35:31,085 ここじゃ申し上げられませんね 335 00:35:31,085 --> 00:35:33,621 あたしが口を割る時は 336 00:35:33,621 --> 00:35:36,821 あの人を殺したくなった時ですよ 337 00:35:50,304 --> 00:35:52,707 太夫 338 00:35:52,707 --> 00:35:55,107 これをお前さんにさし上げよう 339 00:36:00,548 --> 00:36:04,285 まあ 何というお見事な 340 00:36:04,285 --> 00:36:07,221 器用に任せて 表向きの家業は牙彫師 341 00:36:07,221 --> 00:36:11,459 まあ 慰み半分の仕事だが 鷹は百鳥のつわもの 342 00:36:11,459 --> 00:36:15,463 一度 見込んだ相手は 逃しっこねえと言われている 343 00:36:15,463 --> 00:36:18,499 時にとってまたとない縁起物 344 00:36:18,499 --> 00:36:22,103 ありがたく ちょうだいいたします さあ 太夫 送っていこう 345 00:36:22,103 --> 00:36:24,438 お初のことはあっしが引き受けて 346 00:36:24,438 --> 00:36:27,538 口を塞いでおくから 安心しておくんなせえ 347 00:37:09,583 --> 00:37:12,586 雪様 348 00:37:12,586 --> 00:37:16,086 あなただけが浪の命でございます 349 00:37:18,059 --> 00:37:20,959 何?浪路が… はい 350 00:37:46,220 --> 00:37:49,457 浪 どうしたのじゃ 351 00:37:49,457 --> 00:37:52,259 わずか4~5日の宿下がりで 352 00:37:52,259 --> 00:37:55,930 上様はそなたを どのようにお待ちかねか 353 00:37:55,930 --> 00:38:00,167 それが分からんそなたでも あるまいが 354 00:38:00,167 --> 00:38:02,169 父上 355 00:38:02,169 --> 00:38:06,407 浪はもう大奥へなど 帰りたくはございません 356 00:38:06,407 --> 00:38:10,478 フフ たわけたことを申すな 357 00:38:10,478 --> 00:38:15,382 いいえ 今までは 父上や兄上のためを考え 358 00:38:15,382 --> 00:38:18,686 おっしゃるとおりに いたしてまいりました 359 00:38:18,686 --> 00:38:23,424 でも今では もうお二人の出世の 道具で終わる気はございません 360 00:38:23,424 --> 00:38:26,927 わしや せがれの出世のためだと? 361 00:38:26,927 --> 00:38:31,065 兄上が勘定奉行の要職に 就かれたのは 362 00:38:31,065 --> 00:38:35,469 浪が上様のおそばに上がることを 承知したからではございませぬか 363 00:38:35,469 --> 00:38:40,107 浪 お前は自分の果報が 分からんのだ 364 00:38:40,107 --> 00:38:44,245 人がお前のことを どんなにうらやんでいるか 365 00:38:44,245 --> 00:38:47,114 もう たくさんでございます 366 00:38:47,114 --> 00:38:49,416 浪の幸せを考えてくださるなら 367 00:38:49,416 --> 00:38:51,719 浪の思うままに させてくださいまし 368 00:38:51,719 --> 00:38:55,422 浪 お前少し わがままが過ぎやせんか 369 00:38:55,422 --> 00:38:58,292 いいえ 大奥へ帰るのは 嫌でございます 370 00:38:58,292 --> 00:39:02,192 浪 嫌!嫌でございます 371 00:39:11,038 --> 00:39:15,638 今 やってるのは江戸きっての 人気役者 中村雪之丞 七変化… 372 00:39:21,949 --> 00:39:23,949 さあ いらっしゃい いらっしゃい いらっしゃい 373 00:39:29,824 --> 00:39:33,060 よっ 兄さん また見物かい? おう おめえさんは? 374 00:39:33,060 --> 00:39:35,696 大きな声じゃ言えねえがね 闇太郎って男を捜してんだ 375 00:39:35,696 --> 00:39:39,266 闇太郎ってのはどんな男だ 若くて いなせでいい男だってよ 376 00:39:39,266 --> 00:39:41,268 おめえさんみてえな 377 00:39:41,268 --> 00:39:43,968 心当たりがあったら捜してくれな 頼むぜ 378 00:39:50,010 --> 00:39:55,810 (雪之丞が演じる声) 379 00:41:23,938 --> 00:41:27,538 太夫のことでおめえに話があんだ ちょっと顔 貸してくんねえか 380 00:41:47,194 --> 00:41:50,894 お疲れさん いらっしゃいまし 長崎屋様 381 00:41:55,002 --> 00:41:57,404 早速だがね 太夫 382 00:41:57,404 --> 00:42:01,642 今夜 土部様へ浪様のご機嫌伺いに 上がってもらいたいんだが 383 00:42:01,642 --> 00:42:05,245 おや まだ大奥へは お帰りではなかったので? 384 00:42:05,245 --> 00:42:08,345 さあ そこなんだよ 385 00:42:18,392 --> 00:42:21,762 なあ お初 おめえにも話したそうだが 386 00:42:21,762 --> 00:42:25,032 望みがかなうまでは 女の肌には手を触れねえと 387 00:42:25,032 --> 00:42:28,602 太夫は八幡様へ 願掛けをしてるんだ 388 00:42:28,602 --> 00:42:31,472 だから おめえの気持ちは うれしいが 389 00:42:31,472 --> 00:42:35,472 その日が来るまでは自分の体で 自分のもんじゃねえと言うんだ 390 00:42:40,314 --> 00:42:43,384 だから それまで待てってのかい 391 00:42:43,384 --> 00:42:46,754 そうなんだ きっと おめえの願いをかなえるから 392 00:42:46,754 --> 00:42:51,592 ハハハ… なっ 何がおかしいんでえ 393 00:42:51,592 --> 00:42:54,161 よしとくれよ 394 00:42:54,161 --> 00:42:56,830 19やはたちの小娘なら 395 00:42:56,830 --> 00:43:00,868 そんな殺し文句に ころりと参るかもしれないが 396 00:43:00,868 --> 00:43:03,404 軽業のお初にゃ 甲羅が生えてんだよ 397 00:43:03,404 --> 00:43:05,906 お初 この口を封じたかったら 398 00:43:05,906 --> 00:43:09,410 一晩 あたしと付き合っとくれと 399 00:43:09,410 --> 00:43:12,479 太夫にそう伝えてもらうんだね 400 00:43:12,479 --> 00:43:14,581 おめえは太夫の望みが どんなてえへんなものか 401 00:43:14,581 --> 00:43:18,318 知ってるはずじゃねえか 心底 太夫にほれてるなら 402 00:43:18,318 --> 00:43:21,088 なぜ陰ながら力を添えて 一日も早くその望みを 403 00:43:21,088 --> 00:43:24,925 遂げさせてやろうとしねえんだ 404 00:43:24,925 --> 00:43:30,531 女の肌へ触れないっていう心願が 本当ならだがね 405 00:43:30,531 --> 00:43:33,000 どうして それをうたぐるんだ 406 00:43:33,000 --> 00:43:35,002 おめえの口を封じるために 407 00:43:35,002 --> 00:43:37,471 殺すよりほかねえと 思い立ったのも 408 00:43:37,471 --> 00:43:41,742 神様への誓いを 破れねえからじゃねえか 409 00:43:41,742 --> 00:43:45,446 ああ そうか 410 00:43:45,446 --> 00:43:50,384 お初 いいよ 分かったよ 411 00:43:50,384 --> 00:43:56,190 それじゃ あたしも太夫が 望みを遂げるまで口は割るまい 412 00:43:56,190 --> 00:43:59,259 だがね 親分 もしそれが嘘で 413 00:43:59,259 --> 00:44:03,263 他の女と変なことでもあったら その時は土部様へ駆け込むからね 414 00:44:03,263 --> 00:44:05,265 ふん そう思っとくれ 415 00:44:05,265 --> 00:44:07,267 何?土部様? 416 00:44:07,267 --> 00:44:10,504 土部様のご隠居がでございますか 417 00:44:10,504 --> 00:44:13,407 うん 太夫の口から 大奥へ帰るように 418 00:44:13,407 --> 00:44:15,409 勧めてくれとおっしゃるのだ 419 00:44:15,409 --> 00:44:18,412 もし ご息女が 太夫のことを忘れかねて 420 00:44:18,412 --> 00:44:21,682 どうしても大奥へ帰らないと いうことになったら 421 00:44:21,682 --> 00:44:25,052 土部様のお家はこれが最後 422 00:44:25,052 --> 00:44:29,690 長崎以来 深い交わりを続けてきた わしや広海屋も 423 00:44:29,690 --> 00:44:34,027 土部様が今の権力を失ったら おかへ上がったカッパも同然 424 00:44:34,027 --> 00:44:37,030 せっかく つかんだ 公儀御用達の看板も 425 00:44:37,030 --> 00:44:39,030 いや 下ろさにゃならん 426 00:44:42,302 --> 00:44:45,302 分かりました 伺います 427 00:45:03,023 --> 00:45:06,894 「口惜しや 口惜しや」 428 00:45:06,894 --> 00:45:10,531 「焦熱地獄の苦しみ」 429 00:45:10,531 --> 00:45:15,369 「生きていがたい 呪わしや 土部」 430 00:45:15,369 --> 00:45:18,438 「憎しや 三郎兵衛」 431 00:45:18,438 --> 00:45:21,975 「憎らしや 広海屋」 432 00:45:21,975 --> 00:45:26,547 「生き果てて はよう見たい」 433 00:45:26,547 --> 00:45:30,017 「よみじの花の山」 434 00:45:30,017 --> 00:45:33,020 「なれど死ねぬ」 435 00:45:33,020 --> 00:45:37,620 「口惜しゅうて死ねぬ」 436 00:45:50,871 --> 00:45:53,407 太夫 おかごが参りました 437 00:45:53,407 --> 00:45:57,144 ありがとう 今 行きます 438 00:45:57,144 --> 00:45:59,544 雪 はい 439 00:46:10,123 --> 00:46:13,894 お師匠様 行ってまいります 440 00:46:13,894 --> 00:46:17,531 うむ いや そなたも若い身空 441 00:46:17,531 --> 00:46:22,869 心して決して若いおなごの言葉に 惑わされるでないぞ 442 00:46:22,869 --> 00:46:26,406 はい まして相手は土部の娘 443 00:46:26,406 --> 00:46:31,378 非業に死んだ父御や 母御のことを片時も忘れまいぞ 444 00:46:31,378 --> 00:46:33,378 はい 445 00:47:15,622 --> 00:47:17,924 岡部 貴公5~6人連れて 踏み込んで 446 00:47:17,924 --> 00:47:19,926 雪之丞の荷物を改めてくれ 447 00:47:19,926 --> 00:47:24,031 目的は独創天心流の奥義書と 奴の素性を知る手掛かりだ 448 00:47:24,031 --> 00:47:26,031 よし 心得た 449 00:47:51,491 --> 00:47:54,494 あっ… 450 00:47:54,494 --> 00:47:56,494 あっ もし! 451 00:48:04,971 --> 00:48:06,973 ご無体な 何をなされます 452 00:48:06,973 --> 00:48:10,373 黙れ!ぐずぐず申すと ぶった斬るぞ 453 00:49:15,175 --> 00:49:19,513 口惜しや 口惜しや 454 00:49:19,513 --> 00:49:24,751 焦熱地獄の苦しみ 455 00:49:24,751 --> 00:49:28,321 生きていがたい 456 00:49:28,321 --> 00:49:30,924 呪わしや 土部 457 00:49:30,924 --> 00:49:34,728 憎しや 三郎兵衛 458 00:49:34,728 --> 00:49:38,765 憎らしや 広海屋 459 00:49:38,765 --> 00:49:43,136 生き果てて はよう見たい 460 00:49:43,136 --> 00:49:47,240 よみじの花の山 461 00:49:47,240 --> 00:49:51,278 なれど死ねぬ 462 00:49:51,278 --> 00:49:55,678 口惜しゅうて死ねぬ 463 00:50:10,530 --> 00:50:12,530 かかれ 464 00:50:18,972 --> 00:50:21,272 待て 待て! 465 00:50:25,946 --> 00:50:27,946 出ろ 雪之丞 466 00:50:50,737 --> 00:50:52,906 鷹は百鳥のつわもの 467 00:50:52,906 --> 00:50:56,406 一度 見込んだ相手は 逃しっこねえと言われている 468 00:51:04,651 --> 00:51:08,655 常に心をむなしく 白紙の状態に置け 469 00:51:08,655 --> 00:51:12,155 さすれば おのずから活路が開ける 470 00:51:15,762 --> 00:51:18,732 出ろ 雪之丞! 471 00:51:18,732 --> 00:51:23,632 出ぬと おのれ かごもろとも田楽刺しだぞ 472 00:51:32,078 --> 00:51:34,378 デヤーッ! 473 00:51:37,217 --> 00:51:42,088 門倉様 あなた様には あの白紙の奥義書に書かれた 474 00:51:42,088 --> 00:51:44,724 独創天心流の秘伝が 475 00:51:44,724 --> 00:51:47,394 お読みになれなかったと 見えまするな 476 00:51:47,394 --> 00:51:50,797 黙れ!この平馬が欲しいのは 477 00:51:50,797 --> 00:51:53,500 はっきりと墨で書かれた奥義書だ 478 00:51:53,500 --> 00:51:55,502 出せ! 479 00:51:55,502 --> 00:51:58,338 奥義書に二通りはございません 480 00:51:58,338 --> 00:52:01,538 うぬ 殺しても取るぞ! 481 00:52:54,761 --> 00:52:56,761 うわっ!