1 00:00:34,490 --> 00:00:40,270 しかし ようあの娘を 見つけてきたのう 2 00:00:40,270 --> 00:00:43,370 いえ 阿部様こそ 3 00:00:43,370 --> 00:00:46,670 三月の間に よくあれほどまでに 4 00:00:46,670 --> 00:00:49,240 んー いや わしも 5 00:00:49,240 --> 00:00:53,980 先年 死んだ曽根谷重次郎が 若い頃 屋敷にいた端女に 6 00:00:53,980 --> 00:00:57,620 あの おちさを産ませたことは 聞いていたが 7 00:00:57,620 --> 00:01:00,050 おぬしも ようそんな昔のことを 8 00:01:00,050 --> 00:01:03,690 いえ それは この間も申し上げましたとおり 9 00:01:03,690 --> 00:01:08,860 曽根谷様がはらませた端女が 私の昔の顔見知りの者 10 00:01:08,860 --> 00:01:12,300 二十何年も会いませなんだが ふと あそこで 11 00:01:12,300 --> 00:01:14,670 湯女風呂とか申したな 12 00:01:14,670 --> 00:01:17,640 はい とても阿部様のような 大身の方が 13 00:01:17,640 --> 00:01:20,240 おいでになるような所では ございませんが 14 00:01:20,240 --> 00:01:23,310 なかなかに 15 00:01:23,310 --> 00:01:27,050 そこで見かけましたのが あの おちさ 16 00:01:27,050 --> 00:01:29,750 そのおちさを見た時 17 00:01:29,750 --> 00:01:35,990 これは阿部様の養女として あの大奥へ上げるべきだと 18 00:01:35,990 --> 00:01:38,390 おう ハハッ 19 00:02:03,210 --> 00:02:05,610 本当におきれいな 20 00:02:08,620 --> 00:02:14,260 こんなにきれいに結い上がって まるで見違えるよう 21 00:02:14,260 --> 00:02:16,360 これからも あなたに 22 00:02:16,360 --> 00:02:19,460 いけません あやと呼んでくださいまし 23 00:02:21,530 --> 00:02:25,000 では あや はい 24 00:02:25,000 --> 00:02:27,470 これからも あやが ついていてくれますから 25 00:02:27,470 --> 00:02:30,980 どんなに心丈夫か 26 00:02:30,980 --> 00:02:36,350 私には大奥という所が どんな所か分かりませんし 27 00:02:36,350 --> 00:02:39,150 怖いような気がしますけど… 何をおっしゃるのです 28 00:02:41,190 --> 00:02:43,190 大奥といえば 29 00:02:43,190 --> 00:02:47,790 誰もが一度は上がってみたいと 憧れる将軍様のお城の中 30 00:02:49,860 --> 00:02:52,230 それに いつもおっしゃってた おしの様にも 31 00:02:52,230 --> 00:02:54,600 お会いになれるでは ございませんか 32 00:02:54,600 --> 00:02:58,840 でも あやにも話したとおり 33 00:02:58,840 --> 00:03:02,870 姉とは今まで 晴れて会うこともできなんだ仲 34 00:03:02,870 --> 00:03:05,140 小さい時から 35 00:03:05,140 --> 00:03:09,080 よく姉の屋敷の前をうろついて 36 00:03:09,080 --> 00:03:11,650 父が病気で死んだ時のことを 話しましたか? 37 00:03:11,650 --> 00:03:13,850 いいえ 38 00:03:13,850 --> 00:03:18,050 その時 私は父の墓地へ 39 00:03:21,430 --> 00:03:26,460 生きている間に 一度でいいから父と呼びたかった 40 00:03:26,460 --> 00:03:28,960 そして姉と呼びたかったのに… 41 00:03:31,070 --> 00:03:34,170 その時の姿で姉が大奥女中として 42 00:03:34,170 --> 00:03:37,480 上がっていることを知ったんです 43 00:03:37,480 --> 00:03:40,180 でもその姉は今をときめく 44 00:03:40,180 --> 00:03:43,280 将軍様のお手つき中臈だと いうことです 45 00:03:45,280 --> 00:03:47,690 ただの行儀見習いで 上がる私とは違い… 46 00:03:47,690 --> 00:03:51,120 でもお会いになれば おしの様も 47 00:03:51,120 --> 00:03:56,160 それに おちさ様だって上様の 48 00:03:56,160 --> 00:04:00,160 さっ もう程なく刻限ゆえ お殿様に 49 00:04:21,590 --> 00:04:26,490 父上 おちさは ただ今から大奥へ参ります 50 00:04:26,490 --> 00:04:28,890 今日まで ふつつかな この私を 51 00:04:28,890 --> 00:04:31,130 よいか おちさ 52 00:04:31,130 --> 00:04:35,770 必ず上様の和子を産むのだぞ は? 53 00:04:35,770 --> 00:04:41,570 姉のおしのと同様 必ず 上様のご寵愛を受けるのだ 54 00:04:41,570 --> 00:04:43,810 あ… それは父上 55 00:04:43,810 --> 00:04:48,180 今日まで他人のお前を 養女として引き取り 56 00:04:48,180 --> 00:04:53,590 行儀作法など すべて武家風に 仕立て上げてきたのは 57 00:04:53,590 --> 00:04:57,020 何のためだと思うておる 58 00:04:57,020 --> 00:05:01,520 必ず上様のお気に入るのだぞ 59 00:05:14,170 --> 00:05:17,040 い… 板倉様 60 00:05:17,040 --> 00:05:19,080 うっ 61 00:05:19,080 --> 00:05:21,410 ああっ 62 00:05:21,410 --> 00:05:23,610 ああ… いやっ 63 00:05:25,820 --> 00:05:29,450 ああっ あっ はあっ 64 00:05:29,450 --> 00:05:32,820 おちさ 俺は お前の初めての男なんだぞ 65 00:05:32,820 --> 00:05:34,830 そのことを忘れるな そのお前を 66 00:05:34,830 --> 00:05:36,860 俺はいつか あの将軍にくれてやるのだ 67 00:05:36,860 --> 00:05:38,860 ああっ 68 00:07:03,350 --> 00:07:06,990 天明6年2月14日 69 00:07:06,990 --> 00:07:12,290 新たに将軍お手つき中臈と なる者の御庭御目見得が 70 00:07:12,290 --> 00:07:16,490 江戸城大奥 御庭先で行われた 71 00:07:16,490 --> 00:07:21,830 将軍はここで気に入った者を 名指しすればよいのである 72 00:07:21,830 --> 00:07:24,640 あれは? まあ 73 00:07:24,640 --> 00:07:28,070 爪の先まで おしろいを塗って いやらしい 74 00:07:28,070 --> 00:07:31,540 ほんにお色の黒いこと 75 00:07:31,540 --> 00:07:35,450 そうじゃございませんか? おしの様 76 00:07:35,450 --> 00:07:38,520 ここに従う5人の女たちは 77 00:07:38,520 --> 00:07:42,050 今の将軍のお手つき中臈である 78 00:07:42,050 --> 00:07:46,720 だからこそ この女たちは 異常なほどの関心で 79 00:07:46,720 --> 00:07:50,230 これから先は 敵になるかもしれぬ女たちを 80 00:07:50,230 --> 00:07:52,630 見ていたのである 81 00:07:54,630 --> 00:07:58,470 旦那様 あっ 早う 早う 82 00:07:58,470 --> 00:08:01,570 おお これじゃ これじゃ 83 00:08:07,810 --> 00:08:10,850 さあ なっ 84 00:08:10,850 --> 00:08:14,190 このほうが よう目立つ 85 00:08:14,190 --> 00:08:16,550 よいか おちさ 86 00:08:16,550 --> 00:08:19,290 阿部様からも くれぐれもと頼まれて 87 00:08:19,290 --> 00:08:22,830 御年寄衆にも よう話してはあるが 88 00:08:22,830 --> 00:08:26,460 決して粗相のないよう 落ち着くのじゃぞ 89 00:08:26,460 --> 00:08:30,840 お前の姉 おしのは 今 上様のご寵愛を 90 00:08:30,840 --> 00:08:34,470 一手に受けている お手つき中臈 91 00:08:34,470 --> 00:08:37,710 もしお前が上様のお目にとまれば 92 00:08:37,710 --> 00:08:42,410 姉妹して上様のご寵愛を受け… 93 00:08:42,410 --> 00:08:44,420 よいか 94 00:08:44,420 --> 00:08:47,520 万一 お前が上様のお種を宿し 95 00:08:47,520 --> 00:08:50,590 和子様でも産んでみい なっ 96 00:08:50,590 --> 00:08:54,560 お前は次期将軍の母君ぞ 97 00:08:54,560 --> 00:08:57,860 そうなれば お前の出世はもちろん 98 00:08:57,860 --> 00:09:01,600 一家眷属 仮親たる阿部様も 99 00:09:01,600 --> 00:09:04,840 大奥で世話親となった この私も 100 00:09:04,840 --> 00:09:07,170 なっ 旦那様 101 00:09:07,170 --> 00:09:09,340 あっ これ 102 00:09:09,340 --> 00:09:12,610 阿部主水正様ご養女 おちさ様 103 00:09:12,610 --> 00:09:15,910 お介添 御客会釈 藤岡様にございます 104 00:09:18,250 --> 00:09:21,020 おちさ 105 00:09:21,020 --> 00:09:23,020 おちさ これ 106 00:11:43,660 --> 00:11:48,700 俺はお前の初めての男なんだぞ そのことを忘れるな 107 00:11:48,700 --> 00:11:52,900 そのお前を俺はいつか あの将軍にくれてやるのだ 108 00:12:04,380 --> 00:12:08,320 おちさ殿には お夜伽の儀 上々首尾と承り 109 00:12:08,320 --> 00:12:10,320 おめでとう存じます 110 00:12:10,320 --> 00:12:14,830 わけても阿部様には 若年寄にご昇格とか 111 00:12:14,830 --> 00:12:19,600 次は上様に代わって 政を司る老中職 112 00:12:19,600 --> 00:12:23,500 まずは重ね重ね 祝着至極に存じ上げます 113 00:12:23,500 --> 00:12:26,470 いや おぬしの言うように おちさが 114 00:12:26,470 --> 00:12:29,670 上様のお気に入るかどうか 心配であったが 115 00:12:29,670 --> 00:12:31,840 元来 上様は 116 00:12:31,840 --> 00:12:35,750 側室 お妙の方様や お染の方様のごとく 117 00:12:35,750 --> 00:12:39,080 いとこ同士を 同時にはべらすことが 118 00:12:39,080 --> 00:12:41,490 大層お好きなご様子 119 00:12:41,490 --> 00:12:45,260 さすれば実の姉妹ともなれば… 120 00:12:45,260 --> 00:12:48,190 なるほどな 121 00:12:48,190 --> 00:12:52,190 まっ これはわしの志じゃ 納めてくれ 122 00:12:54,270 --> 00:12:58,700 のう 板倉 わしも若年寄になったことゆえ 123 00:12:58,700 --> 00:13:01,210 おぬしのことは考えておる 124 00:13:01,210 --> 00:13:04,710 今日も御老中の水野様と お話ししたが 125 00:13:04,710 --> 00:13:08,480 表御祐筆組に空きがある 126 00:13:08,480 --> 00:13:12,980 加増して 出仕してはどうかと思うが 127 00:13:14,990 --> 00:13:17,860 不足だというのか 128 00:13:17,860 --> 00:13:19,860 何の不足など 129 00:13:19,860 --> 00:13:25,660 ただ私など城中に上がりましても 何の役にも立たぬ男 130 00:13:25,660 --> 00:13:29,500 今のまま 終日 城へ上がる必要もなく 131 00:13:29,500 --> 00:13:32,140 ただのんびりと しておりさえすれば済む 132 00:13:32,140 --> 00:13:36,770 無役の小普請組であるほうが 性に合っておりまする 133 00:13:36,770 --> 00:13:39,140 阿部様 この板倉 134 00:13:39,140 --> 00:13:42,850 決して不足があって 申しているのではございません 135 00:13:42,850 --> 00:13:45,850 私には別の楽しみが 136 00:13:47,820 --> 00:13:50,820 ハハハハハ 137 00:13:53,560 --> 00:13:57,560 おお なんとよい香りじゃ 138 00:13:57,560 --> 00:13:59,930 去年 京よりお越しの 139 00:13:59,930 --> 00:14:04,900 御台様お身内を おもてなしした折の頂き物 140 00:14:04,900 --> 00:14:09,940 そなたのために使うのなら 少しも惜しゅうはない 141 00:14:09,940 --> 00:14:14,780 これからも一層のご寵愛を 賜るよう励むのじゃぞ 142 00:14:14,780 --> 00:14:18,080 おしのなぞに負けては… のう 143 00:14:18,080 --> 00:14:21,190 旦那様! 何事じゃ 144 00:14:21,190 --> 00:14:23,790 ただ今 おしの様がこちらへ 145 00:14:23,790 --> 00:14:26,560 何?おしのが 146 00:14:26,560 --> 00:14:30,560 おちさ様にご挨拶申し上げたいと おっしゃられて 147 00:14:30,560 --> 00:14:33,700 さようか 通してくりゃれ 148 00:14:33,700 --> 00:14:35,700 はい 149 00:14:38,640 --> 00:14:40,970 何も恐れることはない 150 00:14:40,970 --> 00:14:44,310 姉とはいえども そなたにとっては敵 151 00:14:44,310 --> 00:14:47,310 鼻先で軽う あしろうておやり 152 00:14:57,990 --> 00:15:01,490 まあ いい香り 153 00:15:03,690 --> 00:15:05,930 これは おしの 154 00:15:05,930 --> 00:15:10,630 ようこそ そなたから 訪ねておくれじゃったのう 155 00:15:14,540 --> 00:15:20,440 藤岡様 突然のお邪魔 お許しくださりませ 156 00:15:25,220 --> 00:15:28,420 ご挨拶が遅れまして 申し訳ありませぬ 157 00:15:28,420 --> 00:15:31,020 早う伺わねばと思いながら 158 00:15:31,020 --> 00:15:33,690 いいえ そのような わたくしこそ 159 00:15:33,690 --> 00:15:38,430 ほんに こたびは おめでとう存じます 160 00:15:38,430 --> 00:15:40,430 さっ 161 00:15:47,610 --> 00:15:51,610 これはお祝いのお印に 162 00:15:51,610 --> 00:15:53,610 まあ 163 00:15:53,610 --> 00:15:55,810 納めておき 164 00:15:55,810 --> 00:15:57,820 はい 165 00:15:57,820 --> 00:15:59,820 では 166 00:16:03,050 --> 00:16:06,760 そなたたちは縁 浅からぬ仲ゆえ 167 00:16:06,760 --> 00:16:09,560 積もる話もあろう 168 00:16:09,560 --> 00:16:12,960 わたくしは しばらくあちらへ 169 00:16:19,500 --> 00:16:22,440 おしの ゆっくりしや 170 00:16:22,440 --> 00:16:25,940 はい 171 00:16:25,940 --> 00:16:27,940 あや 172 00:16:42,260 --> 00:16:45,760 上様のお目にかのうただけあって 173 00:16:45,760 --> 00:16:49,130 美しい いえ 174 00:16:49,130 --> 00:16:55,040 来られたばかりで さぞ勝手の分からぬことが 175 00:16:55,040 --> 00:16:57,580 困ったことがあらば 176 00:16:57,580 --> 00:17:01,350 何なりと この姉にな 177 00:17:01,350 --> 00:17:03,950 姉様 178 00:17:03,950 --> 00:17:07,950 はあ… 姉様と呼んでも よろしゅうございますか 179 00:17:07,950 --> 00:17:10,620 何の遠慮など 180 00:17:10,620 --> 00:17:13,690 親たちの仲は知らぬこと 181 00:17:13,690 --> 00:17:16,360 ここで こうして会うたからには 182 00:17:16,360 --> 00:17:19,630 これからは姉 妹と呼び合うて 183 00:17:19,630 --> 00:17:21,800 お許しください 184 00:17:21,800 --> 00:17:26,240 この身は ただ行儀見習いに 上がるとばかり思うていました 185 00:17:26,240 --> 00:17:28,410 それが このような… 186 00:17:28,410 --> 00:17:32,610 せっかく姉様に会えても 心苦しゅうて 心苦しゅうて 187 00:17:32,610 --> 00:17:38,020 おちさ 何にも言わずともよい 188 00:17:38,020 --> 00:17:40,680 ただな 189 00:17:40,680 --> 00:17:45,090 口さがない女たちの ひしめく この大奥 190 00:17:45,090 --> 00:17:50,460 わたくしたちの仲を とやかく言われぬように 191 00:17:50,460 --> 00:17:55,800 この上は姉妹らしゅうな 192 00:17:55,800 --> 00:17:59,800 姉様 姉様 193 00:18:02,670 --> 00:18:04,680 上様… 194 00:18:04,680 --> 00:18:07,380 んー 195 00:18:07,380 --> 00:18:11,250 そちと妹とは違うのう ん? 196 00:18:11,250 --> 00:18:15,150 んっ またその話を なさらないでくださいまし 197 00:18:15,150 --> 00:18:17,660 んー なぜじゃ 198 00:18:17,660 --> 00:18:19,920 余はな 199 00:18:19,920 --> 00:18:24,160 おちさと むつむ時には そちの話をする 200 00:18:24,160 --> 00:18:29,070 そちと むつむ時には おちさの話をするのじゃ ん? 201 00:18:29,070 --> 00:18:32,900 では教えてくださりませ 202 00:18:32,900 --> 00:18:36,240 うん 203 00:18:36,240 --> 00:18:39,840 わたくしと妹と 204 00:18:39,840 --> 00:18:42,850 どちらがお好きでございます? 205 00:18:42,850 --> 00:18:45,750 両方とも好きじゃ 206 00:18:45,750 --> 00:18:48,820 嫌でございます んん? 207 00:18:48,820 --> 00:18:51,220 フフフフフ… 208 00:18:51,220 --> 00:18:53,220 教えてくださりませ 209 00:18:53,220 --> 00:18:55,590 うん… 210 00:18:55,590 --> 00:18:58,930 わたくしと妹と 211 00:18:58,930 --> 00:19:04,000 どちらかに決めるとなれば 212 00:19:04,000 --> 00:19:07,100 どうなされます? 213 00:19:07,100 --> 00:19:11,210 妹が好きじゃと申したら どうする? 214 00:19:11,210 --> 00:19:13,440 んん? 215 00:19:13,440 --> 00:19:16,480 んっ ヒヒヒヒヒ… 216 00:19:16,480 --> 00:19:21,820 それみい そのようなことを問うてはならん 217 00:19:21,820 --> 00:19:26,120 そちたち姉妹は仲むつまじゅう しておればよいのじゃ ん? 218 00:19:26,120 --> 00:19:28,120 でも… 219 00:19:31,800 --> 00:19:35,400 そちが好きじゃ んっ?うい奴 220 00:19:35,400 --> 00:19:37,500 まことにござりますか? 221 00:19:37,500 --> 00:19:40,170 妹よりも わたくしを? 222 00:19:40,170 --> 00:19:42,810 決まっておるではないか 223 00:19:42,810 --> 00:19:44,940 上様 んん… 224 00:19:44,940 --> 00:19:46,940 まあ 225 00:19:46,940 --> 00:19:49,680 じゃあ… 226 00:19:49,680 --> 00:19:51,680 富士 227 00:19:51,680 --> 00:19:55,820 えーと 確か富士は… 228 00:19:55,820 --> 00:19:58,160 この辺 229 00:19:58,160 --> 00:20:00,620 まあ 惜しい 230 00:20:00,620 --> 00:20:03,290 さっ 今度はあなたの番 しっかり 231 00:20:03,290 --> 00:20:05,290 今度こそは 232 00:20:08,270 --> 00:20:11,370 あっ 姫 さあ もう1枚 233 00:20:15,310 --> 00:20:19,340 あっ また おめでとう 234 00:20:19,340 --> 00:20:21,980 フフフハハハハ 235 00:20:21,980 --> 00:20:24,680 アハハハハハ おこと様 236 00:20:27,480 --> 00:20:31,220 かながね ひと言 申し上げたいと 思うておりましたが 237 00:20:31,220 --> 00:20:33,220 まあ 怖い 238 00:20:33,220 --> 00:20:37,730 何やら わたくしどものことを お話しのご様子 239 00:20:37,730 --> 00:20:41,100 わたくしたちの仲を 波立たせようとなされても 240 00:20:41,100 --> 00:20:43,100 無駄なことでございます 241 00:20:43,100 --> 00:20:45,700 何のことやら とんと合点がゆきませぬが? 242 00:20:45,700 --> 00:20:49,340 わたくしたちは姉 妹 243 00:20:49,340 --> 00:20:53,310 これからも助け合い かばい合うてゆきますゆえ 244 00:20:53,310 --> 00:20:55,410 ほっておいてくださりませ 245 00:20:55,410 --> 00:20:58,480 まあ なんと気味の悪い 246 00:20:58,480 --> 00:21:00,720 何と? 247 00:21:00,720 --> 00:21:03,920 うわべだけを いくら繕うてみせたところで 248 00:21:03,920 --> 00:21:06,420 腹の中では お互いに ヘビ マムシと 249 00:21:06,420 --> 00:21:08,960 呼び合うておいでのはずなのに 250 00:21:08,960 --> 00:21:12,730 おこと様 なんということを おちさ 251 00:21:12,730 --> 00:21:14,900 大方 おこと様は 252 00:21:14,900 --> 00:21:18,370 わたくしたちが共に頂く 上様のお慈しみを 253 00:21:18,370 --> 00:21:21,210 うらやんでのこと 254 00:21:21,210 --> 00:21:24,880 いくら上様のお招きが ないとはいえ 255 00:21:24,880 --> 00:21:27,510 はしたないお言葉は お慎みなされ 256 00:21:27,510 --> 00:21:29,610 はしたないと 257 00:21:29,610 --> 00:21:33,180 さようか 258 00:21:33,180 --> 00:21:36,250 では それほどに おしとやかな おしの様が 259 00:21:36,250 --> 00:21:38,920 上様のおしとねで どのように妹のことを 260 00:21:38,920 --> 00:21:41,430 言うていやるか 聞かせてしんぜようか 261 00:21:41,430 --> 00:21:44,530 何? おやめなされませ おこと様 262 00:21:44,530 --> 00:21:47,000 先日も妹と わたくしと 263 00:21:47,000 --> 00:21:49,830 どちらが おなごとして 優れているか 264 00:21:49,830 --> 00:21:53,370 決めろ 決めろと きつう上様に迫られたそうな 265 00:21:53,370 --> 00:21:57,910 そのような なんで そのような根も葉もないことを 266 00:21:57,910 --> 00:21:59,910 わたくしは ちゃんと お添い寝の者から 267 00:21:59,910 --> 00:22:01,910 聞いているのです 268 00:22:01,910 --> 00:22:04,150 おしの様は上様を問い詰めて 269 00:22:04,150 --> 00:22:07,920 「おしののほうが好きじゃ」と 言わせておしまいになったとか 270 00:22:07,920 --> 00:22:09,920 やめて やめてくだされ 271 00:22:09,920 --> 00:22:13,260 ホホホホホ… 272 00:22:13,260 --> 00:22:16,190 姉 妹と口では言いながら 273 00:22:16,190 --> 00:22:18,830 おなごとしては敵 味方 274 00:22:18,830 --> 00:22:22,500 腹の底では 今宵の夜伽はどちらであろうと 275 00:22:22,500 --> 00:22:26,700 今の今も そればかり ホホホホホホ 276 00:22:30,640 --> 00:22:33,340 あっ 姉様 277 00:22:38,680 --> 00:22:42,250 どうかお願いにございまする 278 00:22:42,250 --> 00:22:45,490 おちさ やめぬか なんという恐れ多い 279 00:22:45,490 --> 00:22:49,360 上様 どうかお聞き届けを 280 00:22:49,360 --> 00:22:53,460 これからは姉を… 姉だけを お召しくだされませ 281 00:22:53,460 --> 00:22:56,930 ならん! おちさ 282 00:22:56,930 --> 00:23:01,940 上様は お前のために このような立派な茶室まで下され 283 00:23:01,940 --> 00:23:06,210 今日は初めて そなたのお点前で おうすを召されたというのに 284 00:23:06,210 --> 00:23:08,610 そのお礼も申さぬうちに お前は 285 00:23:08,610 --> 00:23:12,080 おちさ そちは余の心遣いが 286 00:23:12,080 --> 00:23:14,620 一向にうれしゅうない様子じゃの 287 00:23:14,620 --> 00:23:17,420 いいえ うれしゅうございます 288 00:23:19,390 --> 00:23:23,190 でも つろうございます 289 00:23:23,190 --> 00:23:26,460 おちさは つろうございます 290 00:23:26,460 --> 00:23:28,460 (泣き声) 291 00:23:52,560 --> 00:23:56,490 遠藤 そちはまだ独り身であったな 292 00:23:56,490 --> 00:23:58,690 おしのを遣わすぞ 293 00:24:33,130 --> 00:24:35,530 (乱れた琴の音) 294 00:24:37,630 --> 00:24:42,440 高砂や 295 00:24:42,440 --> 00:24:47,680 この浦船に 296 00:24:47,680 --> 00:24:51,550 帆を上げて 297 00:24:51,550 --> 00:24:56,650 月もろともに 298 00:24:56,650 --> 00:25:00,190 出汐の 299 00:25:00,190 --> 00:25:05,600 波の淡路の島影や 300 00:25:05,600 --> 00:25:10,430 遠く鳴尾の沖すぎて 301 00:25:10,430 --> 00:25:14,000 はや住の江に 302 00:25:14,000 --> 00:25:16,410 着きにけり 303 00:25:16,410 --> 00:25:22,850 はや住の江に 304 00:25:22,850 --> 00:25:29,250 着きにけり 305 00:25:39,030 --> 00:25:41,430 お帰りでございます 306 00:26:02,020 --> 00:26:04,520 おかえりなさいませ 307 00:26:55,970 --> 00:26:58,270 さあ 参れ 308 00:27:00,380 --> 00:27:02,580 嫌でございます 309 00:27:04,980 --> 00:27:08,450 どうしたのじゃ 310 00:27:08,450 --> 00:27:10,450 ハア… 311 00:27:13,260 --> 00:27:16,590 そちは姉のことを 気にしておるのじゃな 312 00:27:16,590 --> 00:27:18,730 ん? 313 00:27:18,730 --> 00:27:21,530 だがのう おちさ 314 00:27:21,530 --> 00:27:25,100 余がなぜ そちだけを慈しむのか 315 00:27:25,100 --> 00:27:27,470 まだ分からぬのか? 316 00:27:27,470 --> 00:27:30,170 上様 余はな 317 00:27:30,170 --> 00:27:33,770 そちに我が子を 産んでもらいたいのじゃ 318 00:27:36,110 --> 00:27:38,250 そちも知っていよう 319 00:27:38,250 --> 00:27:40,720 余に実子がないために 320 00:27:40,720 --> 00:27:45,060 西の丸には 一橋からもろうた豊千代が 321 00:27:45,060 --> 00:27:47,260 養子として控えておる 322 00:27:49,330 --> 00:27:52,200 だがのう 323 00:27:52,200 --> 00:27:55,930 余は我が子に跡を継がせたい 324 00:27:55,930 --> 00:28:00,700 おちさ 余の子を産んでくれ 男の子を なっ 325 00:28:00,700 --> 00:28:03,840 余の跡継ぎたる 玉のような男の子を なっ 326 00:28:03,840 --> 00:28:06,480 でも上様 今宵だけは 327 00:28:06,480 --> 00:28:09,150 おちさ これほど言うても… 328 00:28:09,150 --> 00:28:12,350 これ… あっ 329 00:28:12,350 --> 00:28:14,350 上様? 330 00:28:16,350 --> 00:28:19,120 上様 上様 331 00:28:19,120 --> 00:28:23,730 上様!上様 上様 上様 332 00:28:23,730 --> 00:28:27,900 上様 上様 う… 上様 333 00:28:27,900 --> 00:28:30,130 上様 334 00:28:30,130 --> 00:28:32,640 上様… 335 00:28:32,640 --> 00:28:34,910 上さ… 336 00:28:34,910 --> 00:28:37,110 上様 337 00:28:55,290 --> 00:28:58,460 将軍 家治の突然の死は 338 00:28:58,460 --> 00:29:01,670 江戸城内外を震駭させた 339 00:29:01,670 --> 00:29:05,270 そして時の老中 水野出羽以下 340 00:29:05,270 --> 00:29:09,310 幕府重役方 相集う中に 341 00:29:09,310 --> 00:29:14,340 この際 かつて一度も将軍を 出していない徳川御三家 尾張より 342 00:29:14,340 --> 00:29:20,320 大納言 宗睦を立てるのが 御三家の均衡を保つ最上の策と 343 00:29:20,320 --> 00:29:23,590 尾張方より意見が出された 344 00:29:23,590 --> 00:29:28,330 しかし それを拒否する若年寄 阿部の強い進言で 345 00:29:28,330 --> 00:29:30,690 従来より西の丸にあり 346 00:29:30,690 --> 00:29:36,370 家治の養子となっていた 一橋豊千代を急ぎ本丸に迎え 347 00:29:36,370 --> 00:29:39,370 これを11代将軍 家斉として 348 00:29:39,370 --> 00:29:44,840 新将軍の座に 据えることになったのである 349 00:29:44,840 --> 00:29:51,310 お通りあそばします 350 00:29:51,310 --> 00:29:56,150 このようにして 西の丸から新将軍を迎えれば 351 00:29:56,150 --> 00:30:00,460 今まで本丸 奥女中であった者は 総入れ替え 352 00:30:00,460 --> 00:30:05,960 代わって西の丸 奥女中が この大奥に移り住むのである 353 00:30:08,030 --> 00:30:12,100 今の今まで権勢を振るい 贅沢の限りを尽くし 354 00:30:12,100 --> 00:30:17,270 ことごとに西の丸の女たちを 見下していた大奥女中の悲嘆は 355 00:30:17,270 --> 00:30:19,710 想像を絶した 356 00:30:19,710 --> 00:30:22,510 そして一様に おちさを恨んだ 357 00:30:24,580 --> 00:30:27,580 あの好き者は上様を殺した 358 00:30:27,580 --> 00:30:30,680 あのおちささえ 上様を殺さなければ 359 00:30:33,060 --> 00:30:36,230 しかし どのように おちさを恨もうと 360 00:30:36,230 --> 00:30:40,660 将軍家のしきたりには 背くべくもなく 361 00:30:40,660 --> 00:30:43,530 今までの奥女中は それぞれの実家へ 362 00:30:43,530 --> 00:30:46,900 帰されることになったのである 363 00:30:46,900 --> 00:30:52,080 しかし将軍のお手がついた 中臈だけは別だった 364 00:30:52,080 --> 00:30:54,380 それでは 365 00:31:00,220 --> 00:31:04,990 将軍の葬儀が済むと髪を切り 366 00:31:04,990 --> 00:31:08,120 そのまま 虎ノ門の養生所へ入れられ 367 00:31:08,120 --> 00:31:11,830 ここで数ヵ月を過ごすのである 368 00:31:11,830 --> 00:31:16,100 つまり この間に 前将軍の種を宿した女が 369 00:31:16,100 --> 00:31:18,470 出てくるか こないか 370 00:31:18,470 --> 00:31:23,670 しばらく様子を見た上で その後の処置を決めるのだが… 371 00:31:38,560 --> 00:31:43,060 前将軍 家治の寵愛を 一手に受けた おちさにも 372 00:31:43,060 --> 00:31:45,760 ついに懐妊の兆しはなく 373 00:31:47,760 --> 00:31:50,030 (磬子の音) 374 00:31:50,030 --> 00:31:55,030 (読経) 375 00:32:05,920 --> 00:32:10,290 これは亡き上様のお位牌 376 00:32:10,290 --> 00:32:14,390 心して日夜 上様の菩提を 377 00:32:14,390 --> 00:32:16,960 弔うのですぞ 378 00:32:16,960 --> 00:32:20,660 こうして一生 将軍の位牌を守り 379 00:32:20,660 --> 00:32:23,330 そこからは 出ることのできない場所へと 380 00:32:23,330 --> 00:32:25,700 移されるのである 381 00:32:25,700 --> 00:32:30,910 これが お手つき中臈に対する 将軍家のしきたりだった 382 00:32:30,910 --> 00:32:34,510 そして その場所は 桜田屋敷と呼ばれており 383 00:32:34,510 --> 00:32:38,910 別名を比丘尼屋敷と言われていた 384 00:34:01,430 --> 00:34:06,540 お待ち申し上げておりました 385 00:34:06,540 --> 00:34:12,380 わたくしは前将軍 家治様御正室 386 00:34:12,380 --> 00:34:18,750 倫子様が まだ姫様として 京におわしました頃から 387 00:34:18,750 --> 00:34:24,120 親しくお言葉を賜っていた者 388 00:34:24,120 --> 00:34:29,960 この度 家治様死去に伴い 389 00:34:29,960 --> 00:34:34,430 御台様は落飾入門 390 00:34:34,430 --> 00:34:38,170 そのつれづれをお慰めするために 391 00:34:38,170 --> 00:34:41,100 京より召しいだされ 392 00:34:41,100 --> 00:34:43,770 同時に皆様方を 393 00:34:43,770 --> 00:34:48,580 仏の道にお導きするため 394 00:34:48,580 --> 00:34:53,780 さすれば このお屋敷を預かる者として 395 00:34:53,780 --> 00:34:58,660 以後 言葉を 改めさせていただきます 396 00:34:58,660 --> 00:35:03,860 方々も承知のとおり ここは比丘尼屋敷 397 00:35:03,860 --> 00:35:09,230 従って本日より 方々も仏門に入って 398 00:35:09,230 --> 00:35:15,070 仏に仕える身なれば この英法尼と共に 399 00:35:15,070 --> 00:35:18,840 起居 御仏前でのお勤めを 400 00:35:18,840 --> 00:35:22,080 共にしていただく 401 00:35:22,080 --> 00:35:25,880 これは言うまでもないことながら 402 00:35:25,880 --> 00:35:29,290 化粧 髪飾り 403 00:35:29,290 --> 00:35:34,890 華美な衣服を用いざることは 言うに及ばず 404 00:35:34,890 --> 00:35:39,100 一切の楽しみも相ならぬ 405 00:35:39,100 --> 00:35:43,330 何事も御仏の御心に沿うて 406 00:35:43,330 --> 00:35:47,170 静かに その毎日を 407 00:35:47,170 --> 00:35:51,980 前将軍の菩提を弔うて 408 00:35:51,980 --> 00:35:55,510 生きるのじゃ 409 00:35:55,510 --> 00:35:59,510 (読経) 410 00:37:09,720 --> 00:37:12,660 なんと この香の物のからいこと 411 00:37:12,660 --> 00:37:18,090 天宝院 ここでは 香の物などとは言わぬ 412 00:37:18,090 --> 00:37:20,890 順観 教えておやり 413 00:37:22,900 --> 00:37:25,070 京の御所のお言葉では 414 00:37:25,070 --> 00:37:29,440 漬物のことを 「おくもじ」と申します 415 00:37:29,440 --> 00:37:33,740 味噌のことを「おむし」 野菜は「青物」 416 00:37:33,740 --> 00:37:36,410 お塩のことを「お白物」と 417 00:37:36,410 --> 00:37:39,720 なるほど 京言葉の雅やかなこと 418 00:37:39,720 --> 00:37:42,150 では あられやおはぎ 419 00:37:42,150 --> 00:37:46,020 いえ あん餅などはどのように? 420 00:37:46,020 --> 00:37:48,560 はい 421 00:37:48,560 --> 00:37:52,700 あられは「おいりいり」 おはぎは「おやわやわ」 422 00:37:52,700 --> 00:37:54,830 あん餅は「おべたべた」と 423 00:37:54,830 --> 00:37:58,230 (笑い声) もうよい! 424 00:38:58,260 --> 00:39:01,400 旦那様 425 00:39:01,400 --> 00:39:03,400 旦那様… 426 00:39:07,140 --> 00:39:10,740 おぶでも おいれしましょうか 427 00:39:10,740 --> 00:39:15,510 あや 私をどう思います? 428 00:39:15,510 --> 00:39:18,110 上様がお亡くなりになった時 429 00:39:18,110 --> 00:39:21,980 共に おしとねにおりました私を 430 00:39:21,980 --> 00:39:26,890 え? 他の方々は私が上様を殺したと 431 00:39:26,890 --> 00:39:30,360 旦那様 そんなことはお気に 432 00:39:30,360 --> 00:39:33,560 旦那様はただ上様の… いいえ 433 00:39:33,560 --> 00:39:38,460 そう言われても あの場にいた私は 仕方がないと思うております 434 00:39:40,540 --> 00:39:44,110 でもそれはやはり 私が いけなかったのでしょうか あや 435 00:39:44,110 --> 00:39:48,840 旦那様は上様のご寵愛を 受けられた最後のお方 436 00:39:48,840 --> 00:39:52,080 それだけでも この上ない栄誉 437 00:39:52,080 --> 00:39:57,290 本当に 本当に お幸せな方でございます 438 00:39:57,290 --> 00:40:00,220 私は罪深い女です 439 00:40:00,220 --> 00:40:03,190 だからこそ一生懸命… いいえ 440 00:40:03,190 --> 00:40:05,830 私の命のある限り 441 00:40:05,830 --> 00:40:08,730 上様のご位牌を守っていこうと 442 00:40:10,700 --> 00:40:16,140 それなのに なぜ時々 ふと我が身が悲しくなるのか 443 00:40:16,140 --> 00:40:18,440 それがどうしても 分からないのです あや 444 00:40:18,440 --> 00:40:21,910 旦那様 しっかりしてください 445 00:40:21,910 --> 00:40:23,910 旦那様には上様の… 446 00:40:23,910 --> 00:40:27,580 上様 447 00:40:27,580 --> 00:40:31,380 お成り! 448 00:40:34,060 --> 00:40:38,630 上様 おせんでございます 449 00:40:38,630 --> 00:40:44,330 おせんは お待ち申しておりました 450 00:40:44,330 --> 00:40:47,200 上様 瑞明院様 瑞明院様 451 00:40:47,200 --> 00:40:49,740 あっ 下がれ 下がれ 下がれ… さあ 参りましょう 452 00:40:49,740 --> 00:40:51,740 下がれ 下がれ 何をなされます 453 00:40:51,740 --> 00:40:53,880 あっ 瑞明院様 お静かになさいませ 454 00:40:53,880 --> 00:40:56,810 ああー あー 455 00:40:56,810 --> 00:41:00,820 姫様は… 瑞明院様 456 00:41:00,820 --> 00:41:06,020 嫌じゃ 嫌じゃと 457 00:41:06,020 --> 00:41:10,930 言うものの 458 00:41:10,930 --> 00:41:17,930 汗びっしょりの 459 00:41:17,930 --> 00:41:23,170 明けの鐘 460 00:41:23,170 --> 00:41:25,270 瑞明院 461 00:41:27,740 --> 00:41:30,180 こなたの部屋に閉じ込めておきや 462 00:41:30,180 --> 00:41:32,180 はい 463 00:41:35,550 --> 00:41:38,790 待ちや! 464 00:41:38,790 --> 00:41:41,990 よう見たであろうのう 465 00:41:41,990 --> 00:41:46,260 御仏の道に心の入らぬ者は 466 00:41:46,260 --> 00:41:50,570 いずれは あのような浅ましさに 467 00:41:50,570 --> 00:41:54,140 フフフ あれはのう 468 00:41:54,140 --> 00:41:56,840 先々代将軍 469 00:41:56,840 --> 00:42:02,010 家重公のお手つき中臈 470 00:42:02,010 --> 00:42:06,620 もう三十何年前にもなろうか 471 00:42:06,620 --> 00:42:10,290 家重公が亡くなると共に 472 00:42:10,290 --> 00:42:13,190 そのお手つき中臈が 473 00:42:13,190 --> 00:42:17,260 皆と同じく この屋敷へ来た 474 00:42:17,260 --> 00:42:21,060 他の者はもう皆 死に絶えて 475 00:42:21,060 --> 00:42:24,770 あの瑞明院一人が残ったが 476 00:42:24,770 --> 00:42:29,000 御仏の道に身が入らねばこそ 477 00:42:29,000 --> 00:42:32,700 あのように気がくるったのじゃ 478 00:42:35,910 --> 00:42:37,980 よいかな 479 00:42:37,980 --> 00:42:42,650 皆も心して 御仏の道にいそしまねば 480 00:42:42,650 --> 00:42:46,650 あの瑞明院の道を歩むことになる 481 00:42:48,690 --> 00:42:51,090 分かったな 482 00:42:56,900 --> 00:43:01,900 (読経) 483 00:43:34,140 --> 00:43:36,540 いかがなされました? 484 00:43:39,070 --> 00:43:43,150 浄心院様 お教えくださいませ 485 00:43:43,150 --> 00:43:47,650 愚かなこの身は煩悩でいっぱい 486 00:43:47,650 --> 00:43:53,290 同じ身の上ながら 浄心院様は 始終 お心静かにしておられる 487 00:43:53,290 --> 00:43:55,760 どうして?どうして 488 00:43:55,760 --> 00:43:59,430 そのようなこと わたくしとて同じこと 489 00:43:59,430 --> 00:44:01,730 ただ英法尼様をはじめ 490 00:44:01,730 --> 00:44:06,440 皆様方の御仏のお教えにすがり ようやく 491 00:44:06,440 --> 00:44:10,770 わたくしも 浄心院様のようになりたい 492 00:44:10,770 --> 00:44:12,980 どのようにすれば そのようなお心に? 493 00:44:12,980 --> 00:44:16,180 お祈りなさりませ 494 00:44:16,180 --> 00:44:20,950 己をむなしゅうして 祈りに祈るのです 495 00:44:20,950 --> 00:44:23,320 心乱るることがあれば… 496 00:44:23,320 --> 00:44:25,490 あ… いいえ 497 00:44:25,490 --> 00:44:28,220 わたくしにできますことが ございますれば 498 00:44:28,220 --> 00:44:31,930 いつでもお手助けして さしあげましょう 499 00:44:31,930 --> 00:44:35,030 浄心院様 さあ 祈りましょう 500 00:44:37,030 --> 00:44:41,030 (読経) 501 00:45:04,730 --> 00:45:07,460 2~3両あればいいんだ 502 00:45:07,460 --> 00:45:10,500 出せ 503 00:45:10,500 --> 00:45:15,200 おちさがもらう年40両の手当を せびり取ってるだろうが 504 00:45:17,140 --> 00:45:19,440 そんな お前が こんなうちまで 505 00:45:19,440 --> 00:45:22,810 阿部から あてがってもらえたのはな 506 00:45:22,810 --> 00:45:25,380 俺が おちさを 507 00:45:25,380 --> 00:45:30,390 そんなこと分かってますよ 508 00:45:30,390 --> 00:45:32,420 でもね 509 00:45:32,420 --> 00:45:35,520 おちさだって可哀想なんです 510 00:45:48,640 --> 00:45:51,270 あんただってさ 511 00:45:51,270 --> 00:45:54,140 阿部さんが 御老中におなりになったんだから 512 00:45:54,140 --> 00:45:57,150 何とかしてもらったら? 513 00:45:57,150 --> 00:46:03,220 俺は ああいう老中とか 将軍とかいう奴が嫌いでな 514 00:46:03,220 --> 00:46:08,960 でもねえ 偉い人には へばりついてたほうが 515 00:46:08,960 --> 00:46:12,560 (杯が割れる音) あっ 516 00:46:12,560 --> 00:46:15,000 ハア… あんた 517 00:46:15,000 --> 00:46:17,530 ああ… 518 00:46:17,530 --> 00:46:19,970 今に見てろ 519 00:46:19,970 --> 00:46:24,270 俺はあいつらを 必ず引きずり下ろしてやる 520 00:46:27,540 --> 00:46:31,250 おちさは どうしてる? 521 00:46:31,250 --> 00:46:34,050 どうしてるって言ったって 522 00:46:34,050 --> 00:46:36,150 あんた 523 00:46:41,790 --> 00:46:44,860 お民 524 00:46:44,860 --> 00:46:49,570 たまには おちさを外へ出してやるのが 525 00:46:49,570 --> 00:46:52,430 親心というやつではないか? 526 00:46:52,430 --> 00:46:54,430 ん? 527 00:47:09,590 --> 00:47:13,390 一之助はどうする それがこの子のためでございます 528 00:47:15,420 --> 00:47:18,760 わたくしが再び大奥へ上がり 529 00:47:18,760 --> 00:47:22,900 こたび将軍家にお生まれになった 和子様の乳母となることは 530 00:47:22,900 --> 00:47:25,270 この一之助のため 531 00:47:25,270 --> 00:47:28,370 ひいては あなたのためでもございます 532 00:47:30,410 --> 00:47:33,310 あなた様は昔とは違い 533 00:47:33,310 --> 00:47:36,280 新将軍付のお侍衆が来たために 534 00:47:36,280 --> 00:47:40,650 御広敷役人に格下げられたお方 535 00:47:40,650 --> 00:47:43,190 わたくしが阿部様を通じ 536 00:47:43,190 --> 00:47:46,290 乳母の儀 願い出ましたのは… 537 00:47:49,190 --> 00:47:53,100 俺は女の力で 出世したいとは思わぬ 538 00:47:53,100 --> 00:47:55,700 一之助のことも考えるんだ 539 00:48:11,380 --> 00:48:14,920 ねえ お前 少し痩せたんじゃないか? 540 00:48:14,920 --> 00:48:18,420 そんなことは まあ 541 00:48:18,420 --> 00:48:23,090 お前 こんなとこで よく我慢していられるね 542 00:48:23,090 --> 00:48:26,860 私なら もうとっくに 気がくるってるよ 543 00:48:26,860 --> 00:48:29,670 で かか様のほうは 毎日どうなんです? 544 00:48:29,670 --> 00:48:31,670 相変わらずさ 545 00:48:31,670 --> 00:48:36,440 たまにね 板倉の旦那が来てね 546 00:48:36,440 --> 00:48:39,440 私のほうは切り詰めてやってるよ 547 00:48:39,440 --> 00:48:41,740 ほんとだよ 548 00:48:49,790 --> 00:48:52,920 まあ… すまないねえ 549 00:48:52,920 --> 00:48:56,490 いつもね もう すまない すまないと思ってるよ 550 00:48:56,490 --> 00:48:59,600 お前のおかげだものね 551 00:48:59,600 --> 00:49:01,600 今日はこれだけしか ありませんけど 552 00:49:01,600 --> 00:49:03,670 私ね こういうつもりで 来たんじゃないんだよ 553 00:49:03,670 --> 00:49:06,770 んー だけど せっかくだからね 554 00:49:12,980 --> 00:49:14,980 これだけかい? 555 00:49:14,980 --> 00:49:17,250 お手当は 年に12度に分けてですから 556 00:49:17,250 --> 00:49:19,250 そうたくさんは 557 00:49:19,250 --> 00:49:21,420 そうかい 558 00:49:21,420 --> 00:49:23,720 まあね 559 00:49:23,720 --> 00:49:27,190 こんな所に 若い女を閉じ込めといて 560 00:49:27,190 --> 00:49:29,760 これぽっちのお金しか あてがわないなんて 561 00:49:29,760 --> 00:49:33,100 ハッ どんな気なんだろうね お役人衆なんてのは 562 00:49:33,100 --> 00:49:36,500 チッ バカにしてるよ 563 00:49:36,500 --> 00:49:38,630 板倉の旦那に聞いたんだけどね 564 00:49:38,630 --> 00:49:41,300 上様の命日とご先祖様の命日には 565 00:49:41,300 --> 00:49:43,640 ここから出られるって いうじゃないか 566 00:49:43,640 --> 00:49:46,180 お母さん 曽根谷様ならいいんだろ? 567 00:49:46,180 --> 00:49:49,680 この28日がそうなんだよ 568 00:49:49,680 --> 00:49:52,380 お前が悪いことしたわけじゃ ないしさ 569 00:49:52,380 --> 00:49:54,450 こんなとこへ 閉じ込められっぱなしじゃ 570 00:49:54,450 --> 00:49:58,450 気がくるっちまうよ ねっ そうおしよ 571 00:50:46,130 --> 00:50:48,400 おちさ 572 00:50:48,400 --> 00:50:50,770 おちさではありませぬか 573 00:50:50,770 --> 00:50:53,180 姉様 まあ 574 00:50:53,180 --> 00:50:56,280 まさか そなたが来ていようとは 思いもしませなんだ 575 00:50:56,280 --> 00:50:58,450 ほんに よう会えましたもの 576 00:50:58,450 --> 00:51:01,880 ご機嫌よろしゅう していられますか? 577 00:51:01,880 --> 00:51:03,990 この子は? 578 00:51:03,990 --> 00:51:06,220 ふた月前に生まれた一之助 579 00:51:06,220 --> 00:51:08,360 まあ 姉様の 580 00:51:08,360 --> 00:51:11,560 あ… まあ かわいい 581 00:51:16,030 --> 00:51:19,400 (赤ん坊の泣き声) 582 00:51:19,400 --> 00:51:21,500 おちさ 583 00:51:21,500 --> 00:51:24,770 こなたの人は わたくしの 584 00:51:24,770 --> 00:51:28,370 遠藤弥左衛門にございます 以後 お見知りおきを 585 00:51:31,310 --> 00:51:35,380 あ… 「いちのすけ」というと どのような字を? 586 00:51:35,380 --> 00:51:38,350 数の一 一番の一 587 00:51:38,350 --> 00:51:43,930 何事もそうなるように ねえ あなた様 588 00:51:43,930 --> 00:51:47,500 ほれ 目元といい 口元といい 589 00:51:47,500 --> 00:51:50,770 ようあの人に似ておりましょ? 590 00:51:50,770 --> 00:51:54,870 それはもう大きな声で 泣くんですよ 591 00:51:54,870 --> 00:51:58,640 むずがる時は わたくしたちして 代わる代わるに 592 00:51:58,640 --> 00:52:01,380 ねえ あなた様 593 00:52:01,380 --> 00:52:04,380 この人も ほんとに優しいし 594 00:52:04,380 --> 00:52:07,750 こんなかわいい一之助も 生まれたし 595 00:52:07,750 --> 00:52:11,750 こんなに わたくしが幸せなのも 596 00:52:11,750 --> 00:52:15,450 ほんとに あの時の そなたのおかげ 597 00:52:19,030 --> 00:52:24,130 ほんに よい妹を持って よかったと思うております 598 00:52:26,370 --> 00:52:29,400 では わたくしはこれにて 599 00:52:29,400 --> 00:52:31,440 そうですか? 600 00:52:31,440 --> 00:52:35,480 ではまた ご命日にはおいでなされ 601 00:52:35,480 --> 00:52:39,280 かないますことならば またいつか 602 00:52:55,000 --> 00:52:58,330 お前は あの方とは まるで違う女だな 603 00:52:58,330 --> 00:53:01,940 あの方? 604 00:53:01,940 --> 00:53:04,910 わたくしは旗本 曽根谷の娘 605 00:53:04,910 --> 00:53:08,310 あのような下賤な育ちのおなごと 一緒にされては 606 00:53:08,310 --> 00:53:10,410 たまりませぬ 607 00:53:16,690 --> 00:53:18,790 あっ 608 00:53:18,790 --> 00:53:22,660 しばらくだったな おちさ 609 00:53:22,660 --> 00:53:27,300 いや 今は光妙院殿だったな 610 00:53:27,300 --> 00:53:29,730 今日は曽根谷の三回忌 611 00:53:29,730 --> 00:53:34,230 なかなか出られぬお前としては 必ず来ると思うていた 612 00:53:36,910 --> 00:53:39,980 おい おしのに会うたな 613 00:53:39,980 --> 00:53:44,580 どうだ 夫の遠藤は なかなか きりりとした男であろう 614 00:53:44,580 --> 00:53:48,020 待て 615 00:53:48,020 --> 00:53:52,190 お前に 聞かせておきたいことがある 616 00:53:52,190 --> 00:53:54,990 おしのが再び大奥へ上がるぞ 617 00:53:57,060 --> 00:54:00,730 あやつは あそこで 止まっているような女ではない 618 00:54:00,730 --> 00:54:04,430 今度は将軍の和子様の 乳母としてな 619 00:54:06,540 --> 00:54:08,540 乳母 620 00:54:08,540 --> 00:54:13,140 さよう だが遠藤こそ いい面の皮だ 621 00:54:13,140 --> 00:54:16,140 我が子を抱いて さまよい歩き 622 00:54:16,140 --> 00:54:20,450 さぞ乳を飲ませるために 泣くことであろうて 623 00:54:20,450 --> 00:54:23,120 ハハハハ… 嘘です 624 00:54:23,120 --> 00:54:26,020 姉様がそのようなこと するわけが… 625 00:54:26,020 --> 00:54:30,020 では帰って聞いてみるんだな 626 00:54:35,400 --> 00:54:38,400 旦那様 おしの様は本当に? 627 00:54:40,500 --> 00:54:43,400 さっ 戻りませぬと ご勤行に 628 00:54:45,470 --> 00:54:49,580 (読経) 629 00:54:49,580 --> 00:54:53,850 お願いにございます この身につきまとう身の不運 630 00:54:53,850 --> 00:54:57,820 どうぞ打ち払うてくださいませ 631 00:54:57,820 --> 00:55:00,420 わたくしは何も悪いこと… 632 00:55:00,420 --> 00:55:03,490 なのに なぜ わたくしばかりがこのような 633 00:55:03,490 --> 00:55:07,600 もう嫌でございます お助けくださいませ 634 00:55:07,600 --> 00:55:13,400 この上は御上人様の御法力に おすがりするより 635 00:55:13,400 --> 00:55:16,600 わしに近う寄りなされ 636 00:55:28,150 --> 00:55:31,050 わしの目を見るのじゃ 637 00:55:41,000 --> 00:55:46,300 そなた 罪を犯そうとしておるな 638 00:55:46,300 --> 00:55:50,610 は… そのようなことは決して 639 00:55:50,610 --> 00:55:52,840 そのようなことは 640 00:55:52,840 --> 00:55:58,450 よいか そのよこしまな心を 払うてやる 641 00:55:58,450 --> 00:56:01,750 そのよこしまな心を 642 00:56:25,510 --> 00:56:27,780 照徳院 643 00:56:27,780 --> 00:56:31,150 今の刻限までどこにいたか 644 00:56:31,150 --> 00:56:36,420 たとえご法事とはいえ 門限に遅れることは許されぬ 645 00:56:36,420 --> 00:56:40,190 なぜ遅れたか申してみよ 646 00:56:40,190 --> 00:56:42,560 言えぬのか 647 00:56:42,560 --> 00:56:47,500 よし 答えられぬとあらば それまでじゃ 648 00:56:47,500 --> 00:56:50,700 皆も よう覚えておきや 649 00:56:52,770 --> 00:56:56,370 わたくしの問いに 答えられぬはおろか 650 00:56:56,370 --> 00:57:00,740 あまつさえ 刻限に遅れる不届き者には 651 00:57:00,740 --> 00:57:03,740 重罰をもって臨みまする 652 00:57:11,950 --> 00:57:14,050 照徳院様 653 00:57:23,700 --> 00:57:26,900 さっ お食事です 654 00:57:30,640 --> 00:57:33,640 何かしてほしい用は ありませぬか? 655 00:57:36,210 --> 00:57:39,110 では 光妙院様 656 00:57:41,520 --> 00:57:43,850 あなたにだけは 657 00:57:43,850 --> 00:57:47,290 昨晩 私が何をしていたか 658 00:57:47,290 --> 00:57:50,230 どうして刻限までに遅れたか 659 00:57:50,230 --> 00:57:54,000 その訳を話しとうございます 660 00:57:54,000 --> 00:57:56,870 では わたくしが伺うて 661 00:57:56,870 --> 00:58:00,040 英法尼様にお許しを 662 00:58:00,040 --> 00:58:02,940 そのようなことができるはずが 663 00:58:05,040 --> 00:58:09,640 私はゆうべ ある男と通じたのです 664 00:58:13,820 --> 00:58:17,690 その男の僧衣の下に隠された 665 00:58:17,690 --> 00:58:21,790 太い腕に 締めつけられておりますと 666 00:58:21,790 --> 00:58:26,360 私はもう うれしゅうて うれしゅうて 667 00:58:26,360 --> 00:58:29,060 一体 このようなことを 668 00:58:29,060 --> 00:58:31,730 あの英法尼様にお話しして 669 00:58:31,730 --> 00:58:37,470 私が許されると 思われるか?えっ?光妙院様 670 00:58:37,470 --> 00:58:41,280 どうして そのようなことを わたくしに? 671 00:58:41,280 --> 00:58:43,980 光妙院 672 00:58:43,980 --> 00:58:47,450 たった一つの位牌に縛られ 673 00:58:47,450 --> 00:58:51,120 生身の女が生きていけると 思われるのか 674 00:58:51,120 --> 00:58:54,720 たった一つの位牌に縛られて 675 00:58:58,030 --> 00:59:01,460 男と結んだ この肌に 676 00:59:01,460 --> 00:59:04,370 そなたも触れておみ 677 00:59:04,370 --> 00:59:06,700 まだ燃えてます 678 00:59:06,700 --> 00:59:09,600 燃えていようが 679 00:59:23,820 --> 00:59:27,820 (読経) 680 01:00:13,800 --> 01:00:15,900 浄心院様 681 01:00:23,010 --> 01:00:26,510 先ほどから えろう うなされておいでのご様子 682 01:00:26,510 --> 01:00:30,080 気遣わしゅうて のぞいて見てたのです 683 01:00:30,080 --> 01:00:32,620 何か悪い夢でも? 684 01:00:32,620 --> 01:00:35,420 いいえ 何でもありませぬ 685 01:00:35,420 --> 01:00:38,360 しばらく わたくしが ここにいてあげましょう 686 01:00:38,360 --> 01:00:41,530 さっ お休みなさいませ 687 01:00:41,530 --> 01:00:44,230 もう何にも怖いことは 688 01:00:46,330 --> 01:00:50,130 安心して お休みなさいませ 689 01:00:52,170 --> 01:00:54,710 ねえ 光妙院様 690 01:00:54,710 --> 01:00:58,910 わたくしは 光妙院様の寝顔を見るのが大好き 691 01:00:58,910 --> 01:01:01,320 時々 のぞいて見ておりましたが 692 01:01:01,320 --> 01:01:04,120 気づいておいでで ございましたか? 693 01:01:06,550 --> 01:01:09,690 光妙院様は いつも それは美しいお顔で 694 01:01:09,690 --> 01:01:13,230 眠っておられた 695 01:01:13,230 --> 01:01:16,160 わたくしは その寝顔を見ていると 696 01:01:16,160 --> 01:01:18,760 何だか とても幸せな 697 01:01:21,140 --> 01:01:24,470 はっ おやめなさいませ 光妙院様 698 01:01:24,470 --> 01:01:29,340 浄心院様 浄心院様までがそのような 699 01:01:29,340 --> 01:01:31,610 それでは… 700 01:01:31,610 --> 01:01:33,920 光妙院様 701 01:01:33,920 --> 01:01:37,090 どうかこの気持ち 702 01:01:37,090 --> 01:01:41,090 浄心院様だけが わたくしの心の拠り所 703 01:01:41,090 --> 01:01:43,830 愚かなこの身を 助け導いてくださる方と 704 01:01:43,830 --> 01:01:45,830 思うておりましたのに 705 01:01:45,830 --> 01:01:49,060 光妙院様のお姿 お心ばえ 706 01:01:49,060 --> 01:01:52,100 何もかも いとしゅうて 707 01:01:52,100 --> 01:01:55,700 どうか分かって 708 01:01:58,270 --> 01:02:00,270 ああっ 709 01:02:02,680 --> 01:02:05,410 光妙院 710 01:02:05,410 --> 01:02:07,410 浄心院様 711 01:02:09,450 --> 01:02:12,020 光妙院 712 01:02:12,020 --> 01:02:16,160 あなたも私も死ぬまで 713 01:02:16,160 --> 01:02:20,260 死ぬまで この牢獄から抜け出せぬ身の上 714 01:02:23,060 --> 01:02:25,700 同じ囚われ人同士 715 01:02:25,700 --> 01:02:29,640 愛し合おうというのが なぜ悪い 716 01:02:29,640 --> 01:02:33,240 ええ?なぜ悪い 717 01:02:35,480 --> 01:02:37,880 (ふすまの開く音) だ… 718 01:03:05,340 --> 01:03:08,710 地獄 719 01:03:08,710 --> 01:03:11,210 ここは地獄 720 01:03:14,950 --> 01:03:18,420 誰か私を 721 01:03:18,420 --> 01:03:20,520 誰か 722 01:03:20,520 --> 01:03:24,720 私をこの地獄から… 723 01:04:45,340 --> 01:04:47,540 浄心院様が! 724 01:04:47,540 --> 01:04:51,540 浄心院様が 浄心院様が 725 01:05:23,810 --> 01:05:27,150 ごめんくださいませ 726 01:05:27,150 --> 01:05:30,850 遠藤弥左衛門にございます 727 01:05:30,850 --> 01:05:32,850 遠藤… 728 01:05:34,860 --> 01:05:37,590 遠藤様が 729 01:05:37,590 --> 01:05:40,330 おちさ殿にはご機嫌うるわしく 730 01:05:40,330 --> 01:05:43,300 ちと御用の向きがあり 当屋敷まで参りましたので 731 01:05:43,300 --> 01:05:47,770 英法尼様のお許しを得て まあ それはほんに 732 01:05:47,770 --> 01:05:52,510 さあ どうぞ むさい所ゆえ何もありませぬが 733 01:05:52,510 --> 01:05:55,610 さあ 失礼つかまつります 734 01:06:01,480 --> 01:06:05,220 先日は失礼いたしました 735 01:06:05,220 --> 01:06:09,490 その後 姉様や一之助殿には お変わりなく? 736 01:06:09,490 --> 01:06:12,960 しのは大奥へ戻りました 737 01:06:12,960 --> 01:06:16,300 ではやはり 乳母として上がるというのは… 738 01:06:16,300 --> 01:06:19,370 そのとおり 739 01:06:19,370 --> 01:06:22,270 すると一之助殿は? 740 01:06:22,270 --> 01:06:27,070 幸い 縁者に乳の出る者があり 何とか 741 01:06:32,950 --> 01:06:36,550 あの… お役目というのは? 742 01:06:39,550 --> 01:06:42,420 あの… 743 01:06:42,420 --> 01:06:44,430 おちさ殿 744 01:06:44,430 --> 01:06:47,200 私は御広敷役人として 745 01:06:47,200 --> 01:06:49,860 当屋敷にいる一人の方を 召し捕りに 746 01:06:49,860 --> 01:06:53,170 父上 この私が一体 何をしたと 黙れ 黙れ 747 01:06:53,170 --> 01:06:55,800 おとなしく うちへ帰るのじゃ 748 01:06:55,800 --> 01:06:57,970 甲之進 姉上! 749 01:06:57,970 --> 01:07:00,740 あれほど何度も お戻りに なるように申し上げたのに 750 01:07:00,740 --> 01:07:04,810 お帰りになられぬから このようなことになるのですぞ 751 01:07:04,810 --> 01:07:08,220 嫌じゃ うちへ帰れば 二度とここへは 752 01:07:08,220 --> 01:07:10,550 お前が 753 01:07:10,550 --> 01:07:15,020 家治様のお位牌を 一心に守ってさえおれば… 754 01:07:15,020 --> 01:07:18,220 ようもようも三田村の家名を 755 01:07:21,230 --> 01:07:23,830 父上 その三田村家が… 756 01:07:23,830 --> 01:07:28,200 いえ 父上や甲之進が わずか100石の小身から 757 01:07:28,200 --> 01:07:30,470 人並みのお侍に お登りなされたのは 758 01:07:30,470 --> 01:07:33,040 一体 誰のためでございます 759 01:07:33,040 --> 01:07:37,980 皆 わたくしが人身御供のような お中臈に上がればこそ 760 01:07:37,980 --> 01:07:40,180 くっ おこと! 761 01:07:42,250 --> 01:07:45,290 たあーっ! 762 01:07:45,290 --> 01:07:47,390 三田村! 763 01:08:14,780 --> 01:08:18,780 今日は供の方は? あやは夕刻まで両親の所へ 764 01:08:20,820 --> 01:08:24,360 私に用というのは? 765 01:08:24,360 --> 01:08:26,830 遠藤様 766 01:08:26,830 --> 01:08:32,500 先日はお役目とはいえ なぜ照徳院様のお父上など 767 01:08:32,500 --> 01:08:36,500 まさか あの父や弟が 照徳院様を斬ると承知の上で 768 01:08:36,500 --> 01:08:38,800 連れてこられたわけでは ありますまい 769 01:08:40,810 --> 01:08:44,650 遠藤様は しょせんお役人 770 01:08:44,650 --> 01:08:47,950 あのようなところを 見せつけられた わたくしどもの 771 01:08:47,950 --> 01:08:51,450 身の毛のよだつような苦しみを 考えられたことは? 772 01:08:54,020 --> 01:08:58,760 お役目 お役目と まるで囚人でも扱うように 773 01:08:58,760 --> 01:09:01,360 わたくしたちを ご覧になって いたのでございましょ 774 01:09:01,360 --> 01:09:03,560 そうでございましょ 775 01:09:05,500 --> 01:09:09,770 あなた様の見る目に 何の心の動きも 776 01:09:09,770 --> 01:09:13,440 分かったとて どうにもならぬこと 遠藤様 777 01:09:13,440 --> 01:09:16,080 あなただけではない 778 01:09:16,080 --> 01:09:19,980 私も上様一人のために この身を翻弄されたのだ 779 01:09:43,040 --> 01:09:47,240 遠藤様 どうか わたくしを 780 01:09:47,240 --> 01:09:50,640 どうか わたくしを助けて 781 01:10:20,640 --> 01:10:22,840 この次はいつ? 782 01:10:26,510 --> 01:10:28,810 いつ会える 783 01:11:03,680 --> 01:11:06,750 こんな物は 誰に繕わせてもよいのだ 784 01:11:06,750 --> 01:11:10,850 いいえ 遠藤様が こんな物をお召しになっていては 785 01:11:15,730 --> 01:11:17,730 おちさ 786 01:11:26,540 --> 01:11:28,540 おちさ 787 01:11:43,320 --> 01:11:45,430 今や和子様の乳母 788 01:11:45,430 --> 01:11:49,060 その名も高い曽根谷の局様が わざわざお越しくだされたものの 789 01:11:49,060 --> 01:11:51,070 ご覧のような あばら家 790 01:11:51,070 --> 01:11:55,570 それに使う者とておりませぬゆえ 粗茶をお出しすることもできず 791 01:11:55,570 --> 01:11:57,670 失礼を 792 01:12:03,040 --> 01:12:05,280 ほう 793 01:12:05,280 --> 01:12:10,420 これは先日 あなた様に 人を介して差し上げました書状 794 01:12:10,420 --> 01:12:14,520 これが どうかいたしましたかな 795 01:12:14,520 --> 01:12:17,460 板倉殿 796 01:12:17,460 --> 01:12:22,060 どのような魂胆があって このようなことを 797 01:12:22,060 --> 01:12:25,700 いやあ 困りました 798 01:12:25,700 --> 01:12:29,540 ご主人 遠藤様と おちさ殿の度々の密通 799 01:12:29,540 --> 01:12:32,470 あのようにお会いなされては 800 01:12:32,470 --> 01:12:37,880 目も耳もある世間のこと 801 01:12:37,880 --> 01:12:41,550 わたくしもまた 阿部様を通じて今の光妙院様を 802 01:12:41,550 --> 01:12:44,720 前将軍に差し出した者 803 01:12:44,720 --> 01:12:50,060 この身も危うければ その仮親たる 老中職の阿部様もまた 804 01:12:50,060 --> 01:12:54,260 いや それよりも局様 805 01:12:54,260 --> 01:12:59,300 あなた様の御身もまた 806 01:12:59,300 --> 01:13:04,600 阿部様にも 同じ書状を差し上げてますが 807 01:13:06,670 --> 01:13:08,680 なに 808 01:13:08,680 --> 01:13:14,380 行き着く所まで行きますれば いずれ事は落着 809 01:13:14,380 --> 01:13:17,990 ただ その時は わたくしどもの首が飛ぶか 810 01:13:17,990 --> 01:13:22,090 いやー 飛ばぬまでも どのようなことになるかと 811 01:13:22,090 --> 01:13:24,690 ただ そればかり 812 01:13:33,330 --> 01:13:35,340 フッ フフフフ 813 01:13:35,340 --> 01:13:39,340 (読経) 814 01:14:35,800 --> 01:14:37,970 どうじゃ 815 01:14:37,970 --> 01:14:41,500 ご機嫌うるわしゅう していられるか? 816 01:14:41,500 --> 01:14:44,370 はい 817 01:14:44,370 --> 01:14:47,170 毎日 忙しゅうしておりますゆえ 818 01:14:47,170 --> 01:14:51,850 めったに お城外へ出ることも ありませぬ 819 01:14:51,850 --> 01:14:55,320 そなたとも久方ぶり この折に 820 01:14:55,320 --> 01:14:58,320 今までの埋め合わせを したいと思うて 821 01:15:00,420 --> 01:15:03,420 さあ はい 822 01:15:21,680 --> 01:15:25,080 いかがなされた 823 01:15:25,080 --> 01:15:27,510 この姉のもてなし 824 01:15:27,510 --> 01:15:30,350 気に召しませぬか? 825 01:15:30,350 --> 01:15:32,990 ハア… 826 01:15:32,990 --> 01:15:35,290 姉様 827 01:15:35,290 --> 01:15:38,230 姉様はご存じなので ございましょう 828 01:15:38,230 --> 01:15:40,230 何が? 829 01:15:45,470 --> 01:15:48,570 ご存じなのですね 830 01:15:48,570 --> 01:15:50,640 それを 831 01:15:50,640 --> 01:15:55,080 わたくしから言わせるおつもりか 832 01:15:55,080 --> 01:15:57,610 おちさ 833 01:15:57,610 --> 01:15:59,810 遠藤と会うたは 834 01:15:59,810 --> 01:16:02,650 あの墓地の時が初めか?それとも 835 01:16:02,650 --> 01:16:08,160 もっと以前から わたくしの目を盗んで 836 01:16:08,160 --> 01:16:11,290 お気の済むように ののしってくださりませ 837 01:16:11,290 --> 01:16:13,890 あざけってくださいませ 838 01:16:16,330 --> 01:16:20,730 許して… 許してくださりませ 839 01:16:25,370 --> 01:16:29,140 済んだことは致し方がありませぬ 840 01:16:29,140 --> 01:16:31,650 でも 841 01:16:31,650 --> 01:16:34,550 これからは決して 842 01:16:47,530 --> 01:16:49,530 おちさ 843 01:16:51,800 --> 01:16:54,500 おちさ 844 01:16:54,500 --> 01:16:56,540 そなたは 845 01:16:56,540 --> 01:16:58,810 自分のしていることが どんなに恐ろしいことか 846 01:16:58,810 --> 01:17:00,810 分かっているのか 847 01:17:00,810 --> 01:17:05,410 このことが お上に知れれば そなたも遠藤も 848 01:17:08,550 --> 01:17:10,550 おちさ 849 01:17:22,430 --> 01:17:25,270 どうせ 850 01:17:25,270 --> 01:17:27,570 恥多いこの身 851 01:17:29,940 --> 01:17:32,740 ここまで来たからには 852 01:17:32,740 --> 01:17:34,840 何が来ようとも恐れませぬ 853 01:17:36,910 --> 01:17:39,610 たとえ 854 01:17:39,610 --> 01:17:42,810 この身が地獄へ落ちようと 855 01:17:51,560 --> 01:17:57,200 そなた 人の男を盗んでおいて 856 01:17:57,200 --> 01:18:01,270 その顔は笑うていやる 857 01:18:01,270 --> 01:18:05,070 わたくしを心の中で あざ笑って 858 01:18:19,020 --> 01:18:21,320 おちさも おちさだが 859 01:18:21,320 --> 01:18:25,360 遠藤も分別のつかぬ男 860 01:18:25,360 --> 01:18:29,100 せっかく そなたのおかげでの ご加増も決まり 861 01:18:29,100 --> 01:18:32,970 この先 更に 出世もできようというのに 862 01:18:32,970 --> 01:18:36,670 たかが女一人に 863 01:18:36,670 --> 01:18:38,670 しかもそれが前将軍の… 864 01:18:38,670 --> 01:18:41,640 みんな あの女が 悪いのでございます 865 01:18:41,640 --> 01:18:44,440 いつも男を 取り殺してしまうのです 866 01:18:46,450 --> 01:18:50,920 だが本当によろしいのかな 867 01:18:50,920 --> 01:18:54,660 先刻 話したとおりに事を運ぶが 868 01:18:54,660 --> 01:18:59,330 曽根谷殿には しかと 心を決めておられるのかな? 869 01:18:59,330 --> 01:19:03,530 はい 必ず そのようにしてくださいませ 870 01:19:06,000 --> 01:19:08,300 御免こうむります 871 01:19:08,300 --> 01:19:11,200 ほう 板倉か これへ入れ 872 01:19:23,220 --> 01:19:26,020 先日の書状にもあったが 873 01:19:26,020 --> 01:19:28,760 そちは おちさと遠藤 874 01:19:28,760 --> 01:19:31,560 2人の密会の場所を 存じておろうな 875 01:19:33,730 --> 01:19:36,530 それへ数人の者を遣わしたいが 876 01:19:36,530 --> 01:19:39,470 案内してくれるか 877 01:19:39,470 --> 01:19:42,570 と申されますと? 878 01:19:42,570 --> 01:19:44,570 お二人ともどもに殺せと? 879 01:19:44,570 --> 01:19:47,570 妹を… おちさを殺すのです 880 01:19:47,570 --> 01:19:51,110 殺すのは おちさだけでよい 881 01:19:51,110 --> 01:19:56,420 遠藤も女がいなくなれば どうすることも 882 01:19:56,420 --> 01:20:01,520 フッフフハハハハハ ハハハハハハ… 883 01:20:10,700 --> 01:20:13,470 どうするかな 何? 884 01:20:13,470 --> 01:20:17,670 いや どうすれば 一番面白くなるかとな 885 01:20:17,670 --> 01:20:19,770 面白い? 886 01:20:28,880 --> 01:20:30,980 俺も 887 01:20:30,980 --> 01:20:33,280 死ぬか 888 01:20:54,570 --> 01:20:56,570 ううっ 889 01:21:00,110 --> 01:21:02,580 おい!おい 何をする 890 01:21:02,580 --> 01:21:04,690 よせ よせ! 891 01:21:04,690 --> 01:21:06,790 よさぬか… 板倉 892 01:21:06,790 --> 01:21:08,990 くるったか 893 01:21:16,460 --> 01:21:19,200 板倉 894 01:21:19,200 --> 01:21:21,400 板倉!おっ 895 01:21:35,680 --> 01:21:37,680 ああっ 896 01:21:41,120 --> 01:21:43,120 あっ あんた 897 01:21:43,120 --> 01:21:46,030 うああっ あんた 898 01:21:46,030 --> 01:21:48,500 はあっ あんた 899 01:21:48,500 --> 01:21:52,730 あんた あ… あんた 900 01:21:52,730 --> 01:21:55,030 ああっ あんた 901 01:21:57,840 --> 01:21:59,940 逃げろ 902 01:21:59,940 --> 01:22:01,940 どうしたっていうんだよ お前さん 903 01:22:01,940 --> 01:22:04,140 ねえ あん… 904 01:22:04,140 --> 01:22:06,150 逃げろ 905 01:22:06,150 --> 01:22:09,780 俺は今 おぬしたちを 殺しに来た者たちを斬った 906 01:22:09,780 --> 01:22:11,850 事は既に露見している 907 01:22:11,850 --> 01:22:14,590 2人で 逃げられるところまで逃げろ 908 01:22:14,590 --> 01:22:16,690 旦那様 909 01:22:18,760 --> 01:22:21,260 なぜ逃げねばならぬ 910 01:22:21,260 --> 01:22:24,230 何? 911 01:22:24,230 --> 01:22:27,800 今の騒ぎは私も聞いた 912 01:22:27,800 --> 01:22:31,900 しかし 1人は 討ち漏らしたようだな 913 01:22:37,180 --> 01:22:39,450 おぬしの言うとおり 914 01:22:39,450 --> 01:22:43,180 俺たちは逃げたところで 逃げ切れるものではない 915 01:22:43,180 --> 01:22:47,480 それよりも おぬしはなぜ 殺しに来た者を逆に斬ったのだ 916 01:22:49,790 --> 01:22:52,490 おぬしは何か策しているのだな 917 01:22:55,300 --> 01:22:57,700 フハハハハハ 918 01:22:57,700 --> 01:23:00,970 ハハハハハハ… 919 01:23:00,970 --> 01:23:03,000 そうか 920 01:23:03,000 --> 01:23:07,940 そこまで見破られたんなら 聞かしてやろう 921 01:23:07,940 --> 01:23:12,080 俺が 阿部の差し向けた刺客を 斬ったのは 922 01:23:12,080 --> 01:23:14,080 もしお前たちが 斬られてしまっては 923 01:23:14,080 --> 01:23:16,350 あの将軍家の中に 924 01:23:16,350 --> 01:23:20,590 何も起こらなかったことに なるからだ 925 01:23:20,590 --> 01:23:23,490 奴らも人なら 俺も人だ! 926 01:23:25,530 --> 01:23:29,760 なぜ あいつらの前に ひれ伏しておらねばならんのだ 927 01:23:29,760 --> 01:23:31,970 俺はな 928 01:23:31,970 --> 01:23:36,670 いつか奴らに ひと泡 吹かせてやろうと思っていた 929 01:23:36,670 --> 01:23:39,110 分かるだろ なあ おちさ 930 01:23:39,110 --> 01:23:41,610 だからこそ お前たちを使って 931 01:23:41,610 --> 01:23:44,680 奴らの失態を天下に示し 932 01:23:44,680 --> 01:23:47,480 あの鉄よりも堅い 将軍家の屋台骨を 933 01:23:47,480 --> 01:23:51,220 フハハハハハハ 934 01:23:51,220 --> 01:23:53,450 そのためにな 935 01:23:53,450 --> 01:23:56,820 刺客の1人は 殺さずに逃がしてやった 936 01:23:56,820 --> 01:23:59,890 あいつは阿部の所か奉行所へ 飛び込んで 937 01:23:59,890 --> 01:24:02,960 今に捕手を引き連れてくるだろう 938 01:24:02,960 --> 01:24:07,200 そうなれば斬って斬って 騒ぎが大きくなればなるほど 939 01:24:07,200 --> 01:24:10,440 誰がどのように 口を塞がせようとしたところで 940 01:24:10,440 --> 01:24:13,140 この失態は 広く天下に知れ渡るんだ 941 01:24:13,140 --> 01:24:15,910 俺はな それをしたいために… 気違い!気違いだよ お前さん 942 01:24:15,910 --> 01:24:18,610 ええい 943 01:24:18,610 --> 01:24:20,780 おちさ さあ お逃げ 944 01:24:20,780 --> 01:24:24,420 ねっ 逃げるんだよ 旦那様 旦那様 旦那様! 945 01:24:24,420 --> 01:24:27,190 おちさ 逃げるんだ 946 01:24:27,190 --> 01:24:30,960 いいの あなた方こそ早く 947 01:24:30,960 --> 01:24:33,830 せめて あなた方だけは 巻き添えにしたくない 948 01:24:33,830 --> 01:24:36,730 旦那様 おちさ 949 01:24:36,730 --> 01:24:38,870 えーい やあ 950 01:24:38,870 --> 01:24:41,640 ええい 951 01:24:41,640 --> 01:24:43,770 板倉殿 952 01:24:43,770 --> 01:24:46,010 あなたの気持ちも 分からんではない 953 01:24:46,010 --> 01:24:48,740 いや 954 01:24:48,740 --> 01:24:52,150 もっと早くから 知り合っておくべきだった 955 01:24:52,150 --> 01:24:54,920 どけ 956 01:24:54,920 --> 01:24:59,720 遠藤殿 いずれその話は 地獄でゆっくりと 957 01:25:01,760 --> 01:25:03,760 うわーっ 958 01:25:46,130 --> 01:25:48,130 あっ 959 01:25:52,210 --> 01:25:54,410 あや! 960 01:25:54,410 --> 01:25:56,440 あや!あや 961 01:25:56,440 --> 01:25:59,040 ああ… あや あや! 962 01:26:19,070 --> 01:26:21,970 あんた 963 01:26:21,970 --> 01:26:24,800 あんた!あんた 964 01:26:24,800 --> 01:26:27,810 あっ うっ あんた あんた 965 01:26:27,810 --> 01:26:31,410 あんた あうっ 966 01:26:31,410 --> 01:26:35,110 あんた あんた! 967 01:26:41,120 --> 01:26:43,620 だあーっ! 968 01:27:11,080 --> 01:27:14,990 遠藤様!あっ 遠藤様 969 01:27:14,990 --> 01:27:18,220 遠藤様 遠藤様! 970 01:27:18,220 --> 01:27:20,990 あっ 971 01:27:20,990 --> 01:27:23,630 遠藤様! 972 01:27:23,630 --> 01:27:27,130 おちさ おちさ 973 01:27:54,830 --> 01:27:57,230 光妙院 974 01:27:59,400 --> 01:28:04,800 阿部様のお言付けを 伝えに参ったのです 975 01:28:04,800 --> 01:28:11,010 阿部様には こたびのことでは 大層 心を痛められておりまする 976 01:28:11,010 --> 01:28:13,010 よって 977 01:28:13,010 --> 01:28:16,520 御老中様方ともご相談の上 978 01:28:16,520 --> 01:28:20,290 そなたに特別のお慈悲を 979 01:28:20,290 --> 01:28:24,220 そなたには 何のお咎めもありませぬ 980 01:28:24,220 --> 01:28:29,860 元のように 桜田のお屋敷に戻れるのじゃ 981 01:28:29,860 --> 01:28:33,870 そして心静かに毎日を 982 01:28:33,870 --> 01:28:36,340 よいか 983 01:28:36,340 --> 01:28:41,610 今日のお裁きは そなたが御用屋敷を出た折 984 01:28:41,610 --> 01:28:46,910 母が病気と偽った ただそのことだけについて 985 01:28:53,350 --> 01:28:56,420 阿部様は 986 01:28:56,420 --> 01:29:00,230 遠藤とのことはなかったことに 987 01:29:00,230 --> 01:29:03,130 あってはならぬことゆえ 988 01:29:03,130 --> 01:29:06,830 なかったことにいたすと 989 01:29:06,830 --> 01:29:10,200 なかった? 990 01:29:10,200 --> 01:29:13,170 わたくしのしたこと 991 01:29:13,170 --> 01:29:15,510 なかった? 992 01:29:15,510 --> 01:29:17,810 おちさ 993 01:29:17,810 --> 01:29:22,320 よろしいか 今日のお裁き 994 01:29:22,320 --> 01:29:25,950 決して他のことを申しては なりませぬぞ 995 01:29:25,950 --> 01:29:31,120 ただ理由を偽って 御用屋敷を外出したる段 996 01:29:31,120 --> 01:29:33,960 素直に認めるのです 997 01:29:33,960 --> 01:29:37,160 さすれば何のお咎めもありませぬ 998 01:29:39,830 --> 01:29:43,500 もし遠藤とのこと 999 01:29:43,500 --> 01:29:46,110 一言半句なりとも漏らしたら… 1000 01:29:46,110 --> 01:29:49,680 そうじゃ せっかくの 阿部様のお取り計らいも 1001 01:29:49,680 --> 01:29:51,680 すべて水の泡 1002 01:29:51,680 --> 01:29:54,450 そうなれば そなたも そなたの母も 1003 01:29:54,450 --> 01:29:56,680 軽い罪では済まぬ 1004 01:29:56,680 --> 01:30:02,490 ここのところ くれぐれも心して裁きに 1005 01:30:02,490 --> 01:30:05,020 おちさ 1006 01:30:05,020 --> 01:30:07,390 よろしいか わたくしが 1007 01:30:07,390 --> 01:30:10,500 阿部様のおっしゃるとおり するよう申すのは 1008 01:30:10,500 --> 01:30:13,470 そなたを救いたい一心より 1009 01:30:13,470 --> 01:30:16,070 おちさ 1010 01:30:16,070 --> 01:30:20,110 そなたの母も そなたの 返事ひとつで助かるのです 1011 01:30:20,110 --> 01:30:22,140 なっ なあ 1012 01:30:22,140 --> 01:30:24,580 どうか この姉の言うことも 聞いて… 1013 01:30:24,580 --> 01:30:27,880 お願いじゃ 1014 01:30:27,880 --> 01:30:29,880 おちさ! 1015 01:30:31,920 --> 01:30:34,590 桜田御用屋敷内にあり 1016 01:30:34,590 --> 01:30:38,360 先代将軍 家治様のご位牌を守り 1017 01:30:38,360 --> 01:30:42,560 光妙院と称しておるのは そのほうだな? 1018 01:30:42,560 --> 01:30:45,670 はい 1019 01:30:45,670 --> 01:30:49,240 そのほう 母 民の病気と偽り 1020 01:30:49,240 --> 01:30:51,500 度々 御法度を破り 1021 01:30:51,500 --> 01:30:54,710 屋敷外に出たる段 不届き至極 1022 01:30:54,710 --> 01:30:58,410 しかと身に覚えがあろうな 1023 01:31:11,490 --> 01:31:14,490 しかと身に覚えがあろうな! 1024 01:31:16,500 --> 01:31:19,230 はい 1025 01:31:19,230 --> 01:31:24,270 右の段 本来なれば 強きお咎めあるところ 1026 01:31:24,270 --> 01:31:28,980 そのほう 桜田屋敷にて 日頃の行い殊勝なれば 1027 01:31:28,980 --> 01:31:34,850 それに免じ この度のことは ここに戒めおくに留める 1028 01:31:34,850 --> 01:31:38,080 相分かったな 1029 01:31:38,080 --> 01:31:41,250 相分かったな! 1030 01:31:41,250 --> 01:31:44,560 はい 1031 01:31:44,560 --> 01:31:48,460 ですが御老中様 1032 01:31:50,730 --> 01:31:53,000 御老中様! 1033 01:31:53,000 --> 01:31:57,440 わたくしが遠藤弥左衛門と 密通したは ご存じのはず 1034 01:31:57,440 --> 01:32:00,540 なぜその罪でお裁きになりませぬ 1035 01:32:04,880 --> 01:32:07,950 みんなで寄りそろうて 1036 01:32:07,950 --> 01:32:12,650 この密通をなかったことに しようとなされる 1037 01:32:12,650 --> 01:32:14,690 でも 1038 01:32:14,690 --> 01:32:17,890 それがなかったら… 1039 01:32:17,890 --> 01:32:20,760 それだけが 1040 01:32:20,760 --> 01:32:25,660 それだけが わたくしたちの生きた ただ一つの証し 1041 01:32:28,200 --> 01:32:30,740 私は遠藤弥左衛門と密通した 1042 01:32:30,740 --> 01:32:33,370 遠藤弥左衛門を愛した 1043 01:32:33,370 --> 01:32:36,780 それがなぜいけないのです! 1044 01:32:36,780 --> 01:32:41,280 一人の生身の女が 1045 01:32:41,280 --> 01:32:44,150 一人の男と 1046 01:32:44,150 --> 01:32:47,020 それがなぜ! ええい 黙れ 黙らぬか 1047 01:32:47,020 --> 01:32:49,620 光妙院 お黙り 1048 01:32:49,620 --> 01:32:52,830 いくらでも言うてやる 私は密通した! 1049 01:32:52,830 --> 01:32:56,060 私は遠藤様と! 1050 01:32:56,060 --> 01:32:58,160 立ちませい 1051 01:33:01,170 --> 01:33:04,740 言うてやる! 1052 01:33:04,740 --> 01:33:08,240 私は… 私は遠藤様と密通した 1053 01:33:10,740 --> 01:33:13,710 言うてやる 1054 01:33:13,710 --> 01:33:18,020 私は… 私は遠藤様と密通した 1055 01:33:18,020 --> 01:33:20,620 私は… 私は密通した! 1056 01:33:36,770 --> 01:33:39,340 密通した 1057 01:33:39,340 --> 01:33:44,510 ん… 私… 遠藤様と 1058 01:33:44,510 --> 01:33:48,880 密通した 私は… 1059 01:33:48,880 --> 01:33:53,720 私は… 密通した 1060 01:33:53,720 --> 01:33:57,420 私は… 私は密通した 1061 01:33:59,730 --> 01:34:03,230 密通した 1062 01:34:03,230 --> 01:34:06,930 私は… 私は密通した 1063 01:34:09,040 --> 01:34:12,440 私は密通した 1064 01:34:14,470 --> 01:34:17,070 密通した 1065 01:34:19,110 --> 01:34:21,210 密通した 1066 01:34:37,200 --> 01:34:42,800 寛政2年10月に起こった この事件は人々の間に知れ渡り 1067 01:34:42,800 --> 01:34:47,340 幕府は少なからず その威信を失墜した 1068 01:34:47,340 --> 01:34:53,510 しかしそれ以後 この門内からは 人ひとり出ることはなかった 1069 01:34:53,510 --> 01:34:57,150 果たして 残った女たちはどうなったのか 1070 01:34:57,150 --> 01:34:59,820 またその後 代替わりとなって 1071 01:34:59,820 --> 01:35:03,520 ここへ入れられた女たちが どう生きたかは 1072 01:35:03,520 --> 01:35:06,920 まったく その歴史から 抹殺されている