1 00:00:02,102 --> 00:00:19,520 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:19,520 --> 00:00:28,529 ♬~ 3 00:01:26,853 --> 00:01:31,191 <夫 エイスケが 突然 この世を去って 3年近くが たち➡ 4 00:01:31,191 --> 00:01:34,027 時代は 第2次大戦の 真っただ中➡ 5 00:01:34,027 --> 00:01:38,865 緊迫する戦局は 国民生活に 大きな影響を与えていました。➡ 6 00:01:38,865 --> 00:01:44,204 長男の淳之介は 中学を卒業してから 静岡の高等学校へ入学し➡ 7 00:01:44,204 --> 00:01:49,543 長女の和子は 元気に 国民学校の2年生になっていました> 8 00:01:49,543 --> 00:01:51,578 (和子)ただいま。 (あぐり)お帰り。 9 00:01:51,578 --> 00:01:56,383 (とめ)どうしたの? 和子ちゃん。 外に こんなの貼ってあった。 10 00:01:58,218 --> 00:02:02,089 (とめ)まあ…! (辰子)あの… どうしたんですか? 11 00:02:02,089 --> 00:02:05,092 ほら…。 これ…。 12 00:02:08,028 --> 00:02:12,165 まったく…! ママ? 13 00:02:12,165 --> 00:02:15,068 な~に? パパって どんな人だったの? 14 00:02:15,068 --> 00:02:17,971 どうしたの? 学校の宿題。 15 00:02:17,971 --> 00:02:20,507 「お父さんのこと 作文で書け」って。 16 00:02:20,507 --> 00:02:22,509 そう…。 17 00:02:24,177 --> 00:02:26,113  心の声  「私のお父さんは➡ 18 00:02:26,113 --> 00:02:31,051 3年前に 病気で 急に 死んでしまいました。➡ 19 00:02:31,051 --> 00:02:35,689 私は お父さんのことを よく覚えていません。➡ 20 00:02:35,689 --> 00:02:38,725 たった一つ 覚えていることは…」。 21 00:02:38,725 --> 00:02:43,563  回想 (エイスケ)和子… パパは ず~っと そばにいるからね。 22 00:02:43,563 --> 00:02:46,333 うん。 23 00:02:46,333 --> 00:02:49,536 早く元気になるといいねえ。 24 00:02:49,536 --> 00:02:51,538 うん。 25 00:02:53,206 --> 00:02:57,210  心の声 (和子)「私のお父さんは 時々 夢に出てきます。➡ 26 00:02:57,210 --> 00:03:01,014 白い洋服を着て いつも笑っています。➡ 27 00:03:01,014 --> 00:03:06,019 私の知っている お父さんの姿は それだけです」。 28 00:03:07,721 --> 00:03:14,494 びっくりした~。 ふ~ん… 白い洋服か…。 29 00:03:14,494 --> 00:03:19,166 だって ほかに覚えてないんだもん。 そうよね。 30 00:03:19,166 --> 00:03:23,003 パパが死んだ時 まだ 和子 4つだったもんね。 31 00:03:23,003 --> 00:03:25,505 ねえ パパって どんな人だったの? 32 00:03:25,505 --> 00:03:30,677 そうね…。 どんな時代にいても おさまらない人だったわね。 33 00:03:30,677 --> 00:03:34,481 「おさまらない」…? うん。 34 00:03:36,183 --> 00:03:39,086  回想 何ですか これ? 街だよ。 35 00:03:39,086 --> 00:03:43,857 街? 君には 見えないのか? 36 00:03:43,857 --> 00:03:47,194 この暗闇のような街が。 37 00:03:47,194 --> 00:03:49,129 暗闇? 38 00:03:49,129 --> 00:03:54,868 (エイスケ)全てが暗闇なんだよ。 人々の欲望が渦巻いて➡ 39 00:03:54,868 --> 00:04:02,676 やがて それが 空や川をも 闇の中に包んでしまうんだ。 40 00:04:02,676 --> 00:04:06,513 このキャンバスの中に それが描かれているんだ。 41 00:04:06,513 --> 00:04:11,284 君たちには 見えないのか? (民子)あっ 見えます! 42 00:04:11,284 --> 00:04:14,654 見えます 見えます。 あっ これ 街ですよね。 43 00:04:14,654 --> 00:04:18,525 あっ 私の家があった!バカみたい! えっ? 44 00:04:18,525 --> 00:04:21,161 私には 闇夜のカラスにしか 見えないわ。 45 00:04:21,161 --> 00:04:24,498 「闇夜のカラス」? そう…。 46 00:04:24,498 --> 00:04:30,170 闇夜のカラスねえ…。 それはいい…。 う~ん いいねえ…。 47 00:04:30,170 --> 00:04:36,877 本当に 変な人だと思ったのよ。 それが まさかねえ…。 48 00:04:38,845 --> 00:04:41,515  回想  やあ 皆さん お待ちどおさま。 49 00:04:41,515 --> 00:04:45,685 (健太郎)エイスケ。 花婿が遅れて どうするんな? 50 00:04:45,685 --> 00:04:48,388 ごめん ごめん。 51 00:04:57,197 --> 00:05:02,702 あれ? 闇夜のカラスちゃん? 52 00:05:04,938 --> 00:05:10,644 「闇夜のカラス」? そう ママのことをね そう呼ぶのよ。 53 00:05:10,644 --> 00:05:13,980 初めは なんて嫌な奴かと思ったわ。 54 00:05:13,980 --> 00:05:16,016 もう じんましんが出るぐらい 嫌いだったの。 55 00:05:16,016 --> 00:05:19,486 ふ~ん…。 でもね ママが➡ 56 00:05:19,486 --> 00:05:22,155 女学校を 退学にされそうになった時ね…。 57 00:05:22,155 --> 00:05:27,294  回想 これだけは言っておきますよ。 あぐりは 僕の大切な妻です。 58 00:05:27,294 --> 00:05:31,164 最愛の妻です。➡ 59 00:05:31,164 --> 00:05:34,501 皆さんは さっき 「自分の子供を守る」と言ったが➡ 60 00:05:34,501 --> 00:05:39,839 だったら 僕は あぐりを守るのが 夫としての務めなんだ! 61 00:05:39,839 --> 00:05:45,178 不条理な言いがかりをつけるなら 今後は 僕が受けて立つ! 62 00:05:45,178 --> 00:05:51,885 従って あぐりは 学校は やめさせない。 63 00:05:55,522 --> 00:05:58,425 以上! 64 00:05:58,425 --> 00:06:02,796 初めて ママ パパと結婚してよかったって…➡ 65 00:06:02,796 --> 00:06:05,632 そう思ったのよ。 66 00:06:05,632 --> 00:06:12,272 パパ 優しかったのね。 うん。 その優しさが くせものだったのよ。 67 00:06:12,272 --> 00:06:15,575 「くせもの」? うん。 68 00:06:17,477 --> 00:06:24,150  回想 おかしくないですか? すてきだよ…。 マダム あぐり。 69 00:06:24,150 --> 00:06:29,155 エイスケさん… 東京へ行くつもりなんでしょ? 70 00:06:32,025 --> 00:06:36,162 こんなに 私や淳之介に 優しくしてくれるなんて…➡ 71 00:06:36,162 --> 00:06:38,465 おかしいもの。 72 00:06:40,166 --> 00:06:43,837 パパが ママに 急に 優しくしてくれるのは➡ 73 00:06:43,837 --> 00:06:47,507 どこかに行ってしまう 前触れだったのよ。 74 00:06:47,507 --> 00:06:50,310 (和子)前触れ? そう。 75 00:06:50,310 --> 00:06:55,148 あの時も その次の日には 東京に行ってしまったわ。 76 00:06:55,148 --> 00:07:00,954 結局ね パパを追いかけて ママも 東京に行ったの。 77 00:07:00,954 --> 00:07:03,990 本当に いろんなことがあったなあ…。 78 00:07:03,990 --> 00:07:06,126  回想  (春子)ところで あんた 誰? 79 00:07:06,126 --> 00:07:09,029 (うめ)エイちゃんの奥さんだってさ。 (春子とうめの笑い声) 80 00:07:09,029 --> 00:07:13,466 みんな 言うのよ そういうふうに。 近所の手前 そう言わないとね。 81 00:07:13,466 --> 00:07:17,270 本当の奥さんなんて 来たことないのにさ。 岡山だからね エイちゃんの奥さん。 82 00:07:17,270 --> 00:07:20,807 私 本当の奥さんなんです! だから みんな そう言うんだってば。 83 00:07:20,807 --> 00:07:23,476 望月あぐりです。 今朝 岡山から着きました。 84 00:07:23,476 --> 00:07:26,279 主人が どうも お世話になっております! 85 00:07:27,981 --> 00:07:30,283 (チェリー山岡)ごめんなさい。 お名前 何て おっしゃったかしら? 86 00:07:30,283 --> 00:07:33,820 あぐりです。 望月あぐり。 あぐりさん。 87 00:07:33,820 --> 00:07:37,290 はい。あなたねえ 絶対 洋髪が似合うわよ。 88 00:07:37,290 --> 00:07:41,161 えっ? この髪 切りなさい! 89 00:07:41,161 --> 00:07:45,031 お願いします。 私を お弟子さんにして下さい。 90 00:07:45,031 --> 00:07:49,669 私 やっぱり 諦められないんです! 91 00:07:49,669 --> 00:07:55,308 子供は 義母が 東京で 面倒見てくれる事になったんです。 92 00:07:55,308 --> 00:08:02,615 私 美容師になりたいんです! 私 本気ですから。 93 00:08:02,615 --> 00:08:25,638 ♬~ 94 00:08:25,638 --> 00:08:30,143 本当に いろんな事があったなあ。 (和子)ママ? 95 00:08:30,143 --> 00:08:33,046 ん…? パパのこと聞いてたんだけどな。 96 00:08:33,046 --> 00:08:36,916 あっ そうだったわね…。 97 00:08:36,916 --> 00:08:41,154 あっ そうそう パパね ママが落ち込んでる時に➡ 98 00:08:41,154 --> 00:08:43,089 お店に来てくれたことがあったのよ。 99 00:08:43,089 --> 00:08:46,025  回想 鈴音ちゃん もう いいかげんにして下さい! 100 00:08:46,025 --> 00:08:50,830 私 まだ指名…。 やあ! お待ちしておりました。 101 00:08:50,830 --> 00:08:53,299 エイスケさん 何してるんですか? 102 00:08:53,299 --> 00:08:57,170 「何」って 美顔マッサージしてもらおうと思ってさ。 103 00:08:57,170 --> 00:08:59,672 でも ここ 美容院ですよ。 104 00:08:59,672 --> 00:09:02,442 男子禁制なんて どこにも書いてなかったけどね。 105 00:09:02,442 --> 00:09:05,345 そうじゃけど…。 パックも 頼むよ。 106 00:09:05,345 --> 00:09:09,215 へえ… パパって 面白い人だね やっぱり。 107 00:09:09,215 --> 00:09:16,122 そうね。 でも… そんなパパでも 辛い事 たくさん あったんだよ。 108 00:09:16,122 --> 00:09:25,265 ♬~ 109 00:09:25,265 --> 00:09:31,805  回想 (森)フラフラとね 木の葉が 川面を漂うように 生きる。 110 00:09:31,805 --> 00:09:36,976 自分で 自分の流れを 作ろうとしても 駄目。 111 00:09:36,976 --> 00:09:43,750 流れに身を任せて 流れを感じる。 112 00:09:43,750 --> 00:09:52,158 フ~ラ フ~ラ フ~ワ フワってね。 ハッハッハッ。➡ 113 00:09:52,158 --> 00:09:56,663 そうすれば 書きたいものは おのずと見つかる。➡ 114 00:09:56,663 --> 00:09:59,699 ま そういうもんだな。 115 00:09:59,699 --> 00:10:04,838 フ~ラ フ~ラ…。 116 00:10:04,838 --> 00:10:09,175 何 見てるの? 雲。 117 00:10:09,175 --> 00:10:11,111 ふ~ん。 118 00:10:11,111 --> 00:10:20,887 あっ! あの雲 何か 人の顔みたい。 本当だね…。 119 00:10:20,887 --> 00:10:28,194 ねえ あの雲 どこへ流れていくのかなあ? 120 00:10:28,194 --> 00:10:30,530 さあ…➡ 121 00:10:30,530 --> 00:10:34,334 それは 風が決めることだから…。 122 00:10:37,036 --> 00:10:39,339 風? 123 00:10:42,542 --> 00:10:46,412 風ねえ…。 124 00:10:46,412 --> 00:10:52,719 あぐりと一緒になって 僕は あぐりさんから➡ 125 00:10:52,719 --> 00:10:55,622 いろんな刺激を受けました。 126 00:10:55,622 --> 00:11:01,427 新鮮な驚きを たくさん くれたんです。 127 00:11:01,427 --> 00:11:09,936 あぐりが いたから 僕は今日まで 小説を書き続けてこられたんですよ。 128 00:11:13,506 --> 00:11:17,177 あぐりは どう思ってるか 分からないけど➡ 129 00:11:17,177 --> 00:11:21,514 僕は あぐりと結婚できて よかったです。 130 00:11:21,514 --> 00:11:27,020 これからも大事にします。 心配しないでください。 131 00:11:33,026 --> 00:11:37,697 ママ…? ごめんね。 132 00:11:37,697 --> 00:11:40,600 そうだ…。 和子が生まれた時ね➡ 133 00:11:40,600 --> 00:11:43,336 パパ 大変だったんだよ…。 えっ? 134 00:11:43,336 --> 00:11:46,539  回想 (沢子)もうすぐ 6時です。 そろそろね…。 135 00:11:46,539 --> 00:11:48,741 来ましたよ。 136 00:11:53,212 --> 00:11:57,050 ただいま…。 お帰りなさい! 137 00:11:57,050 --> 00:12:00,019 はい。 お願いします。 さあ 和ちゃん…。 138 00:12:00,019 --> 00:12:03,656 パパ 帰ってきましたよ! お風呂 入りましょうね。 139 00:12:03,656 --> 00:12:13,166 ♬~ 140 00:12:13,166 --> 00:12:16,836 さあ 和ちゃん きれいになったね。 141 00:12:16,836 --> 00:12:20,506 やあ さっぱりした? 142 00:12:20,506 --> 00:12:24,310 (沢子)もうすぐ 7時です。 そろそろね。 143 00:12:31,017 --> 00:12:34,520 ねえ パパは いつも どこ行ってたの? 144 00:12:34,520 --> 00:12:40,860 そうね… どこ行ってたのかしらね。 不思議な人だったのよ…。 145 00:12:40,860 --> 00:12:43,896 「不思議な人」? そう…。 146 00:12:43,896 --> 00:12:49,202 でもね いっつも あなたたちのこと 愛してくれてたのよ。 147 00:12:49,202 --> 00:12:51,204 ママのことは? えっ? 148 00:12:51,204 --> 00:12:54,540 愛してた? 当たり前よ…! 149 00:12:54,540 --> 00:12:57,844 パパは ず~っと ママのそばにいるわ。 150 00:12:59,412 --> 00:13:03,816  回想 エイスケさん…。 ん? 151 00:13:03,816 --> 00:13:06,653 また どこかへ 行っちゃうつもりなんでしょ? 152 00:13:06,653 --> 00:13:10,156 えっ? 分かってるんだ。 153 00:13:10,156 --> 00:13:13,159 エイスケさんが こうやって ご飯 作ってくれたり➡ 154 00:13:13,159 --> 00:13:15,828 優しくしてくれる時って➡ 155 00:13:15,828 --> 00:13:19,499 必ず 私の前から 消えちゃう 前触れなんだもの。 156 00:13:19,499 --> 00:13:23,670 そう? 本当のこと 言って。 157 00:13:23,670 --> 00:13:26,873 今度は どこへ行くつもり? 158 00:13:33,846 --> 00:13:37,317 どこにも行かないよ。 159 00:13:37,317 --> 00:13:43,189 僕は ず~っと あぐりのそばにいるよ。➡ 160 00:13:43,189 --> 00:13:46,993 これからも ずっとね…。 161 00:13:46,993 --> 00:13:50,196 ねっ…。 162 00:13:50,196 --> 00:13:55,535 パパ 早く死んじゃって かわいそうね。 そうね。 163 00:13:55,535 --> 00:14:00,273 でもね 人には 一生で やれることが決まってるのよ。 164 00:14:00,273 --> 00:14:04,811 パパはね それを 全部やって 死んでいったと思うのよ。 165 00:14:04,811 --> 00:14:10,483 人一倍 好き勝手な事をして いろんな人に 出会って…➡ 166 00:14:10,483 --> 00:14:16,289 短い人生だったけど とっても贅沢で 幸せな人生だったのよ。 167 00:14:16,289 --> 00:14:20,159 ふ~ん…。 168 00:14:20,159 --> 00:14:23,830 和子には まだ分からないかな…。 169 00:14:23,830 --> 00:14:25,765 (足音) 170 00:14:25,765 --> 00:14:28,501 (淳之介)やあ! あっ 淳之介…? 171 00:14:28,501 --> 00:14:30,837 お兄ちゃん…! どうしたの? 172 00:14:30,837 --> 00:14:33,740 あなたこそ どうしたの? 何? 173 00:14:33,740 --> 00:14:38,511 学校よ…。 ああ 学校ね… やめた。 174 00:14:38,511 --> 00:14:42,315 えっ? 何か 腹 減ったな。 175 00:14:42,315 --> 00:14:46,853 ちょっと 淳! 「学校やめた」って どういうこと? 176 00:14:46,853 --> 00:14:50,690 <静岡の高校に行っていた淳之介が 突然 帰ってきたのは➡ 177 00:14:50,690 --> 00:14:54,026 そんな日の 午後のことでした> 178 00:14:54,026 --> 00:14:57,230 ♬~