1 00:00:02,202 --> 00:00:21,288 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:21,288 --> 00:00:31,798 ♬~ 3 00:01:21,281 --> 00:01:29,022 (世津子)私が 上海へ逃げた夜ね… あれが エイスケと会った最後だったわ。 4 00:01:29,022 --> 00:01:36,430 エイスケ 私に言ったの。 「死ぬなよ。 死んじゃ駄目だよ」。 5 00:01:36,430 --> 00:01:41,301 それなのに 自分が先に死んじゃった…。➡ 6 00:01:41,301 --> 00:01:46,440 バカよね。 (あぐり)でも… エイスケさん…➡ 7 00:01:46,440 --> 00:01:49,810 やりたいこと 全部やって 死んでいったから…。 8 00:01:49,810 --> 00:01:53,981 だから… 満足してたと思います。 9 00:01:53,981 --> 00:01:56,283 そうかしら…。 10 00:01:57,851 --> 00:02:03,256 それにしても 世津子さんが 帰ってきてくれて よかった。 11 00:02:03,256 --> 00:02:12,766 私… すごく心細かったから…。 また 相談に乗ってくださいね。 12 00:02:16,269 --> 00:02:19,272 ⚟こんにちは…。 あっ… 来た! 13 00:02:19,272 --> 00:02:21,475 誰…? 14 00:02:24,978 --> 00:02:31,418 私が連絡したんです。 燐太郎さん すぐ近くに住んでるんですよ。 15 00:02:31,418 --> 00:02:37,958 燐太郎君! 燐太郎君…! 16 00:02:37,958 --> 00:02:39,993 (燐太郎)世津ちゃん…。 17 00:02:39,993 --> 00:02:46,700 (泣き声) 18 00:02:49,302 --> 00:02:54,975 元気そうね。 ええ? ああ…。 世津ちゃんも。 19 00:02:54,975 --> 00:02:57,778 うん…。 うん。 20 00:03:02,249 --> 00:03:04,551 (つた子)はじめまして…。 21 00:03:06,586 --> 00:03:13,260 実は 僕を頼ってくる 若い作家の卵が 何人かいてね…。 22 00:03:13,260 --> 00:03:16,163 ところが 僕は どうも 人の世話までできなくて…。 23 00:03:16,163 --> 00:03:19,066 「こんな時 世津ちゃんが いてくれたら」って➡ 24 00:03:19,066 --> 00:03:21,968 ちょうど つた子と 話していたところだったんだ。 25 00:03:21,968 --> 00:03:27,274 燐太郎さん… 世津子さんには 全幅の信頼をおいてますから。 26 00:03:27,274 --> 00:03:29,276 「もし 世津ちゃんに 出会わなければ➡ 27 00:03:29,276 --> 00:03:33,146 僕や エイスケは 何にも書けなかった」って…。 28 00:03:33,146 --> 00:03:36,283 なかなかの素質の子も いるんだ。 29 00:03:36,283 --> 00:03:39,786 今度 セ・ラ・ヴィに連れてくよ。 ねえ 燐太郎君…。 30 00:03:39,786 --> 00:03:43,290 ん? 悪いけど 私 もう…➡ 31 00:03:43,290 --> 00:03:46,193 文士を育てる気は ないのよ。 32 00:03:46,193 --> 00:03:48,161 えっ? 33 00:03:48,161 --> 00:03:53,300 秋田に 親戚がいてね そこで世話になって…➡ 34 00:03:53,300 --> 00:03:56,203 のんびり暮らそうと 思っているの。 35 00:03:56,203 --> 00:04:02,375 秋田に? どうして? 36 00:04:02,375 --> 00:04:08,582 疲れたのよ。 もう 前みたいに やっていく気力は ないわ…。 37 00:04:08,582 --> 00:04:14,087 それじゃ カフェ セ・ラ・ヴィは? あれは 高山に譲るわ。 38 00:04:14,087 --> 00:04:17,924 だって あれだけ再建できたのは 彼の力だもの。 39 00:04:17,924 --> 00:04:22,762 何だか… 世津ちゃんらしくないな。 40 00:04:22,762 --> 00:04:27,400 きっと… 戦争のせいね。 41 00:04:27,400 --> 00:04:34,608 心の中に 大きな穴が ぽっかり開いてしまったの…。 42 00:04:34,608 --> 00:04:39,279 目の前で… 人が 次々に殺されていく。 43 00:04:39,279 --> 00:04:44,584 人間の愚かさに ほとほと 嫌気が さしたの…。 44 00:04:46,153 --> 00:04:53,793 それにね… この人が死んだことは もっと大きかったわ…。 45 00:04:53,793 --> 00:04:57,297 エイスケは 私が 殺したようなもんなの…。 46 00:04:57,297 --> 00:04:59,966 世津子さん…。 この子はね…➡ 47 00:04:59,966 --> 00:05:03,737 いつも 書くことに追われて 疲れていた…。 48 00:05:03,737 --> 00:05:07,908 いつも苦しんで のたうち回っていたの。 49 00:05:07,908 --> 00:05:10,944 何度も 書くことから 逃げ出そうとしたわ…。 50 00:05:10,944 --> 00:05:16,750 でも その度に 私が連れ戻して 書かせていた…。 51 00:05:19,619 --> 00:05:24,357 結局… エイスケは 疲れ果てて➡ 52 00:05:24,357 --> 00:05:27,260 燃え尽きて 死んでいった。 53 00:05:27,260 --> 00:05:32,399 そんなこと ありません。 エイスケさん 満足してました。 54 00:05:32,399 --> 00:05:34,935 世津子さんが殺したなんて そんなことないです。 55 00:05:34,935 --> 00:05:39,272 でもね… もし 岡山へ エイスケを返していたら➡ 56 00:05:39,272 --> 00:05:42,943 彼は あんなに 苦しまなくて よかったの。 57 00:05:42,943 --> 00:05:45,278 考え過ぎだよ 世津ちゃん。 58 00:05:45,278 --> 00:05:47,948 エイスケは 苦しんでなんかいなかった。 59 00:05:47,948 --> 00:05:49,883 少なくとも 死ぬ前➡ 60 00:05:49,883 --> 00:05:52,819 あいつは 鳩のように 屈託のない目をしてたんだ。 61 00:05:52,819 --> 00:05:55,322 それは 本当だよ…。 62 00:05:57,123 --> 00:06:01,628 昔みたいに… また 一緒にやろうよ。 63 00:06:05,232 --> 00:06:07,167 ごめんなさい。 64 00:06:07,167 --> 00:06:09,870 世津子さん…。 65 00:06:12,105 --> 00:06:18,311 ああ… 私… 疲れたから 帰るわ。 66 00:06:20,080 --> 00:06:22,382 世津ちゃん…! 67 00:06:24,951 --> 00:06:30,457 (つた子)燐太郎さん… 今 書けないんです。 68 00:06:32,792 --> 00:06:37,631 戦争が終わって たくさんの人が亡くなって…。➡ 69 00:06:37,631 --> 00:06:41,768 戦争を鼓舞するような小説 書いてた自分を➡ 70 00:06:41,768 --> 00:06:48,275 ずっと 責めてるんです。 知らなかったわ…。 71 00:06:48,275 --> 00:06:50,610 世津子さん 帰ってきて…➡ 72 00:06:50,610 --> 00:06:54,948 燐太郎さん もう一度 気持ちを奮い立たせてきたんです。➡ 73 00:06:54,948 --> 00:06:59,786 あのころに戻れば まだ書けるって。 74 00:06:59,786 --> 00:07:04,224 <まるで 何かに 背中を押されるように 過ごしてきた日々の中で➡ 75 00:07:04,224 --> 00:07:07,227 エイスケの死や戦争が あぐりにとって➡ 76 00:07:07,227 --> 00:07:11,965 いつの間にか 遠い昔のことのように思えていました。➡ 77 00:07:11,965 --> 00:07:14,935 しかし 世津子や燐太郎にとっては➡ 78 00:07:14,935 --> 00:07:21,241 それが 今も 心に大きな傷となって 重く のしかかっていたのでした> 79 00:07:26,379 --> 00:07:29,916 (沢田)どうですか? 私の美容学校の件➡ 80 00:07:29,916 --> 00:07:35,255 気持ちは決まりましたか? すいません。 まだ迷ってるんです。 81 00:07:35,255 --> 00:07:40,126 私の出した条件に 何か? いえ 沢田さんのお話は➡ 82 00:07:40,126 --> 00:07:47,600 私には もったいないお話です。 何の不満もありません。 でも…。 83 00:07:47,600 --> 00:07:51,771 (チェリー山岡)どうしたの? いつもの あぐりさんらしくないわね。 84 00:07:51,771 --> 00:07:57,110 私… 美容学校の先生が 自分のやりたいことなのか…➡ 85 00:07:57,110 --> 00:08:00,347 それが 分からないんです。 86 00:08:00,347 --> 00:08:04,351 あぐり美容院を 再開したいのね? 87 00:08:06,886 --> 00:08:10,757 一度は 自分のお店を 持っていたんですもの。➡ 88 00:08:10,757 --> 00:08:15,562 もう一度 自分のお店を持ちたいと 思うのは 当たり前のことだわ。 89 00:08:17,364 --> 00:08:21,234 いいでしょう。 もう少し 待ちますよ。 90 00:08:21,234 --> 00:08:26,439 よく考えてください。 すいません。 91 00:08:36,783 --> 00:08:40,253 (高山)いらっしゃい。 世津子さんは…? 92 00:08:40,253 --> 00:08:44,591 出かけてますよ。 そう…。 じゃ また来ます。 93 00:08:44,591 --> 00:08:47,293 (燐太郎)あぐりさん…。 94 00:08:49,262 --> 00:08:52,932 (燐太郎)そう…。 ここで 世津子さんと話したら➡ 95 00:08:52,932 --> 00:08:57,103 答えが 見つかるんじゃないかと思って…。 96 00:08:57,103 --> 00:09:01,875 だけど 肝心の世津ちゃんが 変わってしまったしな…。 97 00:09:01,875 --> 00:09:07,213 ええ…。 (森)何にも変わっちゃおらんよ。 98 00:09:07,213 --> 00:09:10,049 森さん…! アハハハ…。 99 00:09:10,049 --> 00:09:11,985 世津ちゃんは 世津ちゃん。 100 00:09:11,985 --> 00:09:14,721 カラスは カラス。 フクロウは フクロウだ。 101 00:09:14,721 --> 00:09:17,557 でも 世津子さん 「秋田に行く」って…。 102 00:09:17,557 --> 00:09:20,226 それも 世津ちゃんの人生だろうが…。 103 00:09:20,226 --> 00:09:27,100 だがね… 世津ちゃんは 今 一生懸命 自分を傷つける事で➡ 104 00:09:27,100 --> 00:09:32,806 必死に… 壁 乗り越えようとしてんだな…。 105 00:09:32,806 --> 00:09:39,612 しかし あんなに泣き続ける 世津ちゃんを見たのは 初めてだなあ。 106 00:09:39,612 --> 00:09:42,082 上海でね…➡ 107 00:09:42,082 --> 00:09:45,952 エイスケが死んだという知らせが 届いた時の 世津ちゃんだよ。 108 00:09:45,952 --> 00:09:50,256 よう泣いてな… 泣いて 泣いて 毎日 毎日➡ 109 00:09:50,256 --> 00:09:54,260 自分を苦しめ 痛め続けておったなあ…。 110 00:09:54,260 --> 00:09:57,063 世津子さん…。 111 00:09:59,766 --> 00:10:03,403 待つことだよ…。 世津ちゃんね…➡ 112 00:10:03,403 --> 00:10:07,273 今 「時間」という お医者さんの腕の中で➡ 113 00:10:07,273 --> 00:10:12,779 一生懸命 自分の傷口を 治療しようとしとるんだよ…。 114 00:10:12,779 --> 00:10:15,281 森さん…。 ん…? 115 00:10:15,281 --> 00:10:19,619 私たち… あのころに 戻れますか? 116 00:10:19,619 --> 00:10:25,125 当たり前じゃないか! 誰も 何にも 変わっちゃおらんよ。 117 00:10:25,125 --> 00:10:30,430 「変わってない」…? そうだ。 人間というのはね…➡ 118 00:10:30,430 --> 00:10:36,236 そう簡単に 変わることなんか… できない! 119 00:10:43,977 --> 00:10:47,313 ただいま…。 (和子)お帰りなさい。 120 00:10:47,313 --> 00:10:51,317 お兄ちゃんから 葉書 来てるけど…。 121 00:10:53,820 --> 00:10:57,157 (淳之介)「近々 学校を辞めて 東京へ帰る予定です。➡ 122 00:10:57,157 --> 00:11:01,961 荷物 別便で送りますので よろしくお願いいたします。 淳之介」。 123 00:11:03,596 --> 00:11:06,266 どういうこと? (淳之介)さあ…➡ 124 00:11:06,266 --> 00:11:08,768 こっちが聞きたいぐらいだよ。 いきなり➡ 125 00:11:08,768 --> 00:11:11,671 「君は 教師にあるまじき行為をした」って つるし上げるんだから。 126 00:11:11,671 --> 00:11:14,107 何よ? 「教師にあるまじき行為」って…? 127 00:11:14,107 --> 00:11:16,609 ちょっとね。 「ちょっと」… 何? 128 00:11:16,609 --> 00:11:21,781 ごく普通の 男女交際ですよ。 それが 「教師にあるまじき」なの? 129 00:11:21,781 --> 00:11:23,816 相手が 同僚の先生だからだって。 130 00:11:23,816 --> 00:11:27,120 それぐらいで 教師 辞めろって 横暴よね。 131 00:11:27,120 --> 00:11:29,956 そうでしょ? ⚟望月君… いるかね? 132 00:11:29,956 --> 00:11:32,158 はい…。 133 00:11:35,295 --> 00:11:38,631 あっ… 教頭先生。 (鬼頭)ちょっと いいですか? 134 00:11:38,631 --> 00:11:40,633 はい。 135 00:11:42,969 --> 00:11:46,639 母です。 …教頭先生。 136 00:11:46,639 --> 00:11:51,444 淳之介が お世話になっています。 随分 若い お母様ですね。 137 00:11:51,444 --> 00:11:55,982 本当に 母親ですよ。 よく間違えられるんです 恋人に。 138 00:11:55,982 --> 00:12:00,954 この親あって この子ありだ。 よく言われるんですよ そういうふうに。 139 00:12:00,954 --> 00:12:03,089 校長先生からの伝言です。 140 00:12:03,089 --> 00:12:07,594 今日の放課後に 君の処分を決める 職員会議を開きますんで➡ 141 00:12:07,594 --> 00:12:10,630 必ず出席するように。 もし出席がなければ➡ 142 00:12:10,630 --> 00:12:13,266 弁明の意志なしと見なします。 いいですね? 143 00:12:13,266 --> 00:12:15,602 淳之介の処分って 何でしょうか? 144 00:12:15,602 --> 00:12:19,772 だから 教員の品位を 汚したことに対する処分です。 145 00:12:19,772 --> 00:12:25,278 同僚の先生と 恋人になったぐらいで 「品位を汚す」って言えるんでしょうか? 146 00:12:25,278 --> 00:12:28,615 (淳之介)もういいよ。 よくないわよ! お母さんね➡ 147 00:12:28,615 --> 00:12:32,118 こういう横暴なの 大嫌いなんだから。 横暴…? 148 00:12:32,118 --> 00:12:35,154 そうです! 望月先生の噂は➡ 149 00:12:35,154 --> 00:12:39,626 同僚の先生だけじゃありません。 鎌倉の宝石屋の未亡人➡ 150 00:12:39,626 --> 00:12:43,963 逗子の酒場の女店員 葉山の旅館の仲居さん…➡ 151 00:12:43,963 --> 00:12:50,303 あげくに生徒の姉… まだ言わせますか? ああ… いえ…。 152 00:12:50,303 --> 00:12:54,173 磯辺さんたちが 心配してたとおりだったわ。 153 00:12:54,173 --> 00:12:58,478 だから 「いい」って言ったでしょ! それじゃ 失礼いたします。 154 00:13:10,923 --> 00:13:15,261 校長先生。 どうやら 望月先生 お見えにならないようですね。 155 00:13:15,261 --> 00:13:18,264 出席なき場合は 弁明の意志なしということで➡ 156 00:13:18,264 --> 00:13:25,071 望月先生の処分について討議いたします。 ⚟あっ どうも こんにちは。 157 00:13:28,775 --> 00:13:33,946 あの~… 望月淳之介の母でございます。 158 00:13:33,946 --> 00:13:40,119 あの… 一応 本人に成り代わりまして 連絡に参りました。 159 00:13:40,119 --> 00:13:46,292 本日の職員会議には 欠席させて頂きます。 以上! 失礼しました。 160 00:13:46,292 --> 00:13:49,195 やっぱり 後ろめたいことが あるんですね。 161 00:13:49,195 --> 00:13:52,799 いい年した大人が 自分の弁明にも 来れないんだから。 162 00:13:52,799 --> 00:13:57,970 教頭先生! これは 私の一存で来たことです。 163 00:13:57,970 --> 00:14:00,239 そうですか…。 それから…。 164 00:14:00,239 --> 00:14:02,175 何ですか? 165 00:14:02,175 --> 00:14:06,045 息子が いろんな女性と つきあっている事に関しては➡ 166 00:14:06,045 --> 00:14:11,751 いちいち 弁明いたしません。 多分 そうなのかもしれません。 167 00:14:11,751 --> 00:14:16,923 でも それって 悪いことですか? 168 00:14:16,923 --> 00:14:19,392 教師だって人間です。 169 00:14:19,392 --> 00:14:22,261 人を好きになったり 嫌いになったりするのは➡ 170 00:14:22,261 --> 00:14:26,599 当然じゃないですか。 人が 人を好きになる。 171 00:14:26,599 --> 00:14:29,268 人間同士が 愛し合う。 172 00:14:29,268 --> 00:14:33,272 そういうのを 品位がどうのって 古すぎます! 173 00:14:33,272 --> 00:14:39,278 もっと 新しい考えを 持ってほしいと思います。 以上! 174 00:14:39,278 --> 00:14:43,483 (拍手) 175 00:14:47,420 --> 00:14:51,791 (山神)あぐりさん! 相変わらずですねえ…。 176 00:14:51,791 --> 00:14:55,294 ああ…! 山ん婆!