1 00:00:02,202 --> 00:00:20,587 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:20,587 --> 00:00:31,298 ♬~ 3 00:01:22,115 --> 00:01:24,785 (林)絵が… 描けないんだよ。 4 00:01:24,785 --> 00:01:26,720 (民子)何 言ってるの! だって これ…。 5 00:01:26,720 --> 00:01:30,657 (林)自分の絵だよ。 「自分の絵」? 6 00:01:30,657 --> 00:01:35,162 僕は… このままで いいんだろうか。 7 00:01:38,298 --> 00:01:42,803 (あぐり)あっ まだ そんなことしてる! 早く 着替えて下さいよ。 8 00:01:42,803 --> 00:01:45,806 ああ…。 パーティー 遅れちゃいますよ。 9 00:01:48,308 --> 00:01:51,211 ねえ 前から 気になってたんだけど。 10 00:01:51,211 --> 00:01:55,449 何? ずっと白いままだけど➡ 11 00:01:55,449 --> 00:01:58,251 一体 何 描くつもりなんですか? 12 00:02:01,254 --> 00:02:05,125 あ いけない! 遅れちゃう! 着替えて下さいよ。 13 00:02:05,125 --> 00:02:07,627 玄関で待ってますからね。 14 00:02:10,931 --> 00:02:13,767 (受付係)いらっしゃいませ。 どうぞ お名前をお書き下さい。 15 00:02:13,767 --> 00:02:16,269 それじゃあ よろしくお願いします。 16 00:02:16,269 --> 00:02:20,140 (燐太郎)あぐりさん…。 いらっしゃい。 17 00:02:20,140 --> 00:02:24,144 目標達成 おめでとう。 (つた子)おめでとうございます。 18 00:02:24,144 --> 00:02:27,414 ありがとうございます。 どうぞ ゆっくりしていって下さいね。 19 00:02:27,414 --> 00:02:29,783 ありがとう。 (ドアベル) 20 00:02:29,783 --> 00:02:34,121 (沢子)とめさん…。 (とめ)先生… おめでとうございます。 21 00:02:34,121 --> 00:02:38,291 とめさん ありがとう。 ついに やりましたね。 22 00:02:38,291 --> 00:02:40,794 チェリー先生 みえてますよ。 えっ? 23 00:02:40,794 --> 00:02:43,697 (チェリー山岡)あ~ あぐりさん! 先生! 24 00:02:43,697 --> 00:02:45,666 まあ 今日は お招き ありがとう。 25 00:02:45,666 --> 00:02:49,302 お越し頂いて 光栄です。 ありがとうございます。 いいえ。 26 00:02:49,302 --> 00:02:52,806 (司会者)皆さん… ただいま あぐりさんの師匠である➡ 27 00:02:52,806 --> 00:02:54,741 チェリー山岡先生が おみえです。 28 00:02:54,741 --> 00:02:57,310 チェリー先生 早速ですが ご祝辞 お願いいたします。 29 00:02:57,310 --> 00:03:00,747 (チェリー山岡)まあ… まあ どうしましょう。 (拍手) 30 00:03:00,747 --> 00:03:06,253 (拍手) 31 00:03:06,253 --> 00:03:10,123 皆さん こんばんは。 チェリー山岡でございます。 32 00:03:10,123 --> 00:03:14,394 あぐりさん… 今日は ほんとに おめでとう。 33 00:03:14,394 --> 00:03:20,767 あなた 覚えていらっしゃるかしら? あなたが まだ 私のお店で働いてた頃➡ 34 00:03:20,767 --> 00:03:25,272 あなた 岡山のお義父様に 約束しましたよね。 35 00:03:25,272 --> 00:03:32,145 「いつか 必ず 日本一の美容師になる。 それが 私の夢だ」って。 36 00:03:32,145 --> 00:03:36,983 私は つい 昨日のことのように 覚えてますよ。➡ 37 00:03:36,983 --> 00:03:42,122 ついに 「その夢」が かないましたね。 38 00:03:42,122 --> 00:03:46,793 あなたは 名実ともに 日本一の美容師です。 39 00:03:46,793 --> 00:03:50,297 あぐりさん ほんとに おめでとう! 40 00:03:50,297 --> 00:03:57,304 (拍手) 41 00:03:58,972 --> 00:04:02,242 (民子)今日の あぐり きれい! 民ちゃんだって。 42 00:04:02,242 --> 00:04:05,145 ありがとう。 でも あぐりには負けるわ。 43 00:04:05,145 --> 00:04:10,117 あなた 自信に満ちあふれてるもの。 夢を実現させた 自信よ。 44 00:04:10,117 --> 00:04:14,421 (林)ほんとに そうなのかな? 45 00:04:17,257 --> 00:04:26,600 なあ あぐり…。 君は ほんとに 夢が かなったのかな? 46 00:04:26,600 --> 00:04:29,269 どういうこと? 47 00:04:29,269 --> 00:04:33,140 うまく言えないんだけど…。 48 00:04:33,140 --> 00:04:39,279 これが ほんとに 君の追い求めていたものなのかな? 49 00:04:39,279 --> 00:04:42,949 林さん 何 言うのよ! 50 00:04:42,949 --> 00:04:49,723 僕は… 何かが 違うような気がするんだよ。 51 00:04:49,723 --> 00:04:54,427 「何かが 違う」…。 52 00:04:54,427 --> 00:04:58,298 あ すまない! 53 00:04:58,298 --> 00:05:01,801 気にしないでくれ。 54 00:05:06,106 --> 00:05:10,744 林さん どうしたの? さあ? 55 00:05:10,744 --> 00:05:13,747 (民子)ここんとこ 変よ。 56 00:05:15,615 --> 00:05:21,755 僕の 白いキャンバスね… ず~っと 白いまんまの。 57 00:05:21,755 --> 00:05:26,259 ええ。 何にも 描けないんだよ。 58 00:05:29,262 --> 00:05:36,770 新聞社にいた時は 絵を描くだけで 暮らしていきたいって ずっと願ってた。 59 00:05:36,770 --> 00:05:42,108 民子さんと出会って 挿絵の仕事が 面白いように来るようになった。 60 00:05:42,108 --> 00:05:44,778 それで 僕は 十分 満足だった。 61 00:05:44,778 --> 00:05:50,283 夢が かなった。 そう思ってたよ。 62 00:05:50,283 --> 00:05:56,156 少しずつだけど 自分に 時間を作る余裕ができてきた。 63 00:05:56,156 --> 00:06:03,230 それで… 久しぶりに キャンバスを出してみたんだ。 64 00:06:03,230 --> 00:06:07,901 でも… 何にも出てこない。 65 00:06:07,901 --> 00:06:14,774 描こうと思うものが 何にも わいてこないんだ。 66 00:06:14,774 --> 00:06:17,244 「夢は かなったんだ」って➡ 67 00:06:17,244 --> 00:06:19,746 何度も 何度も そう 自分に 言い聞かせたんだけど➡ 68 00:06:19,746 --> 00:06:22,649 やっぱり 何にも描けない。 69 00:06:22,649 --> 00:06:28,255 僕の中で… 何かが違い始めていたんだね。 70 00:06:28,255 --> 00:06:31,758 「夢は かなっていなかった」? 71 00:06:31,758 --> 00:06:35,629 自分のための絵を描きたい。 72 00:06:35,629 --> 00:06:40,767 それが ほんとに 追いかけていたものだったんだ。 73 00:06:40,767 --> 00:06:47,274 白いキャンバスに向かった時 ようやく そのことに気がついたんだ。 74 00:06:47,274 --> 00:06:49,276 そう。 75 00:06:52,145 --> 00:06:58,285 今の あぐりを見てると 僕と同じように見えるよ。 76 00:06:58,285 --> 00:07:03,723 君には 別の夢が あったんじゃないかなって。 77 00:07:03,723 --> 00:07:07,060 別の… 夢…。 78 00:07:07,060 --> 00:07:13,733  回想  (森)猫も杓子も おんなじ髪形ってのがね 我が輩は 大嫌いなんだ! 79 00:07:13,733 --> 00:07:18,238 (世津子)森さん…。 (森)スズメは スズメなんだよ。 80 00:07:18,238 --> 00:07:23,376 「スズメ」? そう カッコウには カッコウの色があり➡ 81 00:07:23,376 --> 00:07:26,379 ウグイスには ウグイスの声がある。 82 00:07:29,749 --> 00:07:32,252 ⚟(弘子)午後から 日本橋支店の支店長と 打ち合わせ。 83 00:07:32,252 --> 00:07:36,122 そのあと 美容学校で講演。 夕方からは 「関日新聞社」の取材。➡ 84 00:07:36,122 --> 00:07:39,759 それから 「化粧品研究所」の方で 会議がございます…。 85 00:07:39,759 --> 00:07:45,265 今の あぐりを見てると 僕と同じように見えるよ。 86 00:07:45,265 --> 00:07:50,136 君には 別の夢が あったんじゃないかなって。 87 00:07:50,136 --> 00:07:56,876 「別の夢があったような気がする」か…。 88 00:07:56,876 --> 00:07:58,812 (弘子)何か? えっ? 89 00:07:58,812 --> 00:08:04,117 何か ほかに ご予定が? ううん。 分かったわ。 90 00:08:11,224 --> 00:08:13,226 世津子さん…? 91 00:08:15,095 --> 00:08:20,233 (世津子)あ~ でも 久しぶりね あなたに セットしてもらうの。 92 00:08:20,233 --> 00:08:24,104 そうですね… はい。 ああ ありがとう。 93 00:08:24,104 --> 00:08:28,108 ああ… でも どうしても あなたに セットしてもらいたかったの。 94 00:08:28,108 --> 00:08:33,246 私に? うん。 東京と しばらく お別れだから。 95 00:08:33,246 --> 00:08:38,118 えっ? 明日の朝 盛岡へ発つの。 96 00:08:38,118 --> 00:08:42,389 長堀がね… 倒れたのよ。 97 00:08:42,389 --> 00:08:46,259 えっ 作家の長堀俊介先生ですか? 98 00:08:46,259 --> 00:08:50,130 覚えてるでしょ? 私と 長堀のこと。 99 00:08:50,130 --> 00:08:53,767 ええ。 世津子さんが 芸者時代の…。 100 00:08:53,767 --> 00:09:00,273 (世津子)うん。 若い頃の ちょっと訳ありだった人…。 101 00:09:01,875 --> 00:09:04,210 奥様が亡くなってからね➡ 102 00:09:04,210 --> 00:09:09,082 ず~っと 一人で 疎開先の盛岡で暮らしていたの…。 103 00:09:09,082 --> 00:09:12,719 それが 脳溢血で倒れて。 104 00:09:12,719 --> 00:09:17,557 身内もなくてね 今 たった一人で 病院に いるらしいわ。 105 00:09:17,557 --> 00:09:23,730 あの人ね 郷土のための文学館を 建てようとしていたのよ。 106 00:09:23,730 --> 00:09:26,366 だから 私が その意志を引き継いで➡ 107 00:09:26,366 --> 00:09:32,172 なんとか 実現するように しばらく お手伝いできたらと思って。 108 00:09:32,172 --> 00:09:36,376 でも 長堀先生は 世津子さんが 「婦人現代」出す時に…。 109 00:09:36,376 --> 00:09:45,118 ああ 確かに邪魔してきたわ。 出版元に圧力かけて 妨害してきた。 110 00:09:45,118 --> 00:09:48,121 それでも…? ええ。 111 00:09:50,256 --> 00:09:55,261 あの人ね 私の青春だったんだもの…。 112 00:09:58,131 --> 00:10:02,268 いろいろあって 別れちゃったけど。 113 00:10:02,268 --> 00:10:09,142 でも あの人がね… 私が必要な時に すぐ そばに行ってあげられる。 114 00:10:09,142 --> 00:10:14,280 そんな関係で あり続けたいの。 115 00:10:14,280 --> 00:10:18,151 それが 私の ささやかな夢だった。 116 00:10:18,151 --> 00:10:23,790 ウッフッフッフ。 この年になって また 夢を追いかけるなんて➡ 117 00:10:23,790 --> 00:10:26,693 おかしいでしょう? そんなことないです。 118 00:10:26,693 --> 00:10:29,496 世津子さん すてきです。 119 00:10:31,297 --> 00:10:35,802 あ~ でも 人生って面白いわね。 120 00:10:35,802 --> 00:10:41,307 今頃になって 置き去りにした夢と 出会えたなんて…。 121 00:10:41,307 --> 00:10:51,317 ♬~ 122 00:10:51,317 --> 00:10:56,823 ごめんなさいね こんなに遅くまで…。 疲れたでしょう? 123 00:10:56,823 --> 00:11:01,261 どうも ありがとう。 いいえ こちらこそ…。 124 00:11:01,261 --> 00:11:07,133 ああ… おかげで 気分も新たに 出発できるわ! 125 00:11:07,133 --> 00:11:11,771 民ちゃんには? ああ あなたから 言っといて。 126 00:11:11,771 --> 00:11:14,674 だって もう 「婦人現代」は 彼女のものなんだから。 127 00:11:14,674 --> 00:11:17,644 そうですか…。 それから セ・ラ・ヴィだけど➡ 128 00:11:17,644 --> 00:11:24,117 若い人たちに任せてあるから 私が戻るまで よろしく面倒みてやってね。 129 00:11:24,117 --> 00:11:27,153 はい。 130 00:11:27,153 --> 00:11:33,126 じゃあ 元気でね。 131 00:11:33,126 --> 00:11:35,161 世津子さんも…。 132 00:11:35,161 --> 00:11:41,301 あぐりさん… 自分のお店で そういう格好してる あなたが➡ 133 00:11:41,301 --> 00:11:43,803 一番 似合うわよ。 134 00:11:43,803 --> 00:11:57,817 ♬~ 135 00:11:57,817 --> 00:12:00,820 じゃ… さようなら。 136 00:12:03,256 --> 00:12:05,191 さようなら…。 137 00:12:05,191 --> 00:12:09,762 ♬~ 138 00:12:09,762 --> 00:12:11,764 ただいま…! 139 00:12:24,110 --> 00:12:29,415  回想 (世津子)ウッフッフッフ。 この年になって また 夢を追いかけるなんて➡ 140 00:12:29,415 --> 00:12:32,952 おかしいでしょう? 141 00:12:32,952 --> 00:12:37,290 あ~ でも 人生って面白いわね。 142 00:12:37,290 --> 00:12:43,162 今頃になって 置き去りにした夢と 出会えたなんて…。 143 00:12:43,162 --> 00:12:47,367 「置き去りにした夢」…。 144 00:12:50,303 --> 00:12:55,174 あ 帰ってたのか…。 ただいま。 145 00:12:55,174 --> 00:13:03,182 ちょうど よかった。 大事な… 話があるんだよ。 146 00:13:06,252 --> 00:13:11,124 しばらく フランスへ行ってくる。 えっ? 147 00:13:11,124 --> 00:13:17,263 向こうで 絵の勉強をしてこようと 思うんだ。ああ…。 148 00:13:17,263 --> 00:13:23,269 そうすれば ここに 何かが 描けそうな気がするんだよ。 149 00:13:25,138 --> 00:13:29,275 そう…。 2年ほど 家を留守にするけど➡ 150 00:13:29,275 --> 00:13:32,278 子供たちのことは よろしく頼む。 151 00:13:34,781 --> 00:13:41,654 この年で 夢を追いかけるなんて 遅すぎるかな…。 152 00:13:41,654 --> 00:13:47,160 そんなことないわ。 夢を持つのに遅すぎることなんて ないわ。 153 00:13:51,230 --> 00:13:54,167 ありがとう。 154 00:13:54,167 --> 00:13:56,669 行ってらっしゃい 林さん。 155 00:13:58,638 --> 00:14:00,907 (森)ほう… フランスへなあ。 156 00:14:00,907 --> 00:14:05,078 そうか… とうとう 林君も エイスケに なっちまったか。 157 00:14:05,078 --> 00:14:08,114 (淳之介)えっ? ん? だからな… あの…。 158 00:14:08,114 --> 00:14:11,751 風に流れる雲になっちまったんだな…。 159 00:14:11,751 --> 00:14:14,253 「雲」かあ…。 160 00:14:14,253 --> 00:14:18,124 君の母上というのは 実に 魔訶不思議な女性でな➡ 161 00:14:18,124 --> 00:14:22,962 自分が愛した男を こう… 飛び立たせっちまうんだな➡ 162 00:14:22,962 --> 00:14:25,965 籠の中に閉じ込めないで。 フフッ。 163 00:14:25,965 --> 00:14:29,669 まあ それが 彼女の愛し方なんだろうね。 164 00:14:32,405 --> 00:14:37,110 <そして… 1か月後の ある朝のことでした> 165 00:14:41,147 --> 00:14:45,952 ♬~ 166 00:14:45,952 --> 00:14:50,289 (林)「突然ですが 今日 フランスへ発ちます。➡ 167 00:14:50,289 --> 00:14:53,192 後は よろしく」。 168 00:14:53,192 --> 00:14:57,196 ♬~