1 00:00:34,042 --> 00:00:37,045 (杉下右京)〈孤独とは いずこに? と問われても→ 2 00:00:37,045 --> 00:00:40,065 孤独など 好んで探すものではなし→ 3 00:00:40,065 --> 00:00:43,135 私とて 探偵家業などをしていなければ→ 4 00:00:43,135 --> 00:00:45,120 このたびの孤独の研究に→ 5 00:00:45,120 --> 00:00:48,120 足を踏み入れる事は なかったであろう〉 6 00:00:49,074 --> 00:00:53,044 〈「孤独は山の中でなく 街の中にある」と言った→ 7 00:00:53,044 --> 00:00:55,030 哲学者がいたが→ 8 00:00:55,030 --> 00:01:00,051 私もまた 街中で ある孤独な男に出会った〉 9 00:01:00,051 --> 00:01:03,054 〈10人目の助手であるKくんは→ 10 00:01:03,054 --> 00:01:06,992 「あの人 なんで 僕らを呼んだんですかね?」と→ 11 00:01:06,992 --> 00:01:10,061 今日すでに2度もつぶやいた〉 12 00:01:10,061 --> 00:01:13,048 〈そろそろ 3度目を言う頃だろうかと→ 13 00:01:13,048 --> 00:01:15,150 思っていると…〉 14 00:01:15,150 --> 00:01:20,150 (甲斐 享)あの人… なんで 僕らを呼んだんですかね? 15 00:01:21,156 --> 00:01:25,156 それは 今日のお茶会で 明らかになるでしょう。 16 00:01:25,977 --> 00:01:30,115 〈あの人とは 依頼人の“彼"の事である〉 17 00:01:30,115 --> 00:01:35,115 〈そもそも “彼"と私との関係を どう呼べばいいのか?〉 18 00:01:36,071 --> 00:01:43,061 ♬~ 19 00:01:43,061 --> 00:01:48,099 (江藤)うん。 これは スリランカの マッタケレ茶園のものだろうね。 20 00:01:48,099 --> 00:01:50,051 非常に甘みがある。 21 00:01:50,051 --> 00:01:53,054 僕には どこか懐かしい香りが するのですが。 22 00:01:53,054 --> 00:01:55,073 懐かしい? 23 00:01:55,073 --> 00:01:58,093 君 イギリスに行った経験は? ええ あります。 24 00:01:58,093 --> 00:02:01,062 その時に同じものを 飲んだんじゃないのかね? 25 00:02:01,062 --> 00:02:03,064 私は イギリスの大学で 教えていたんだが→ 26 00:02:03,064 --> 00:02:05,066 向こうの友人が→ 27 00:02:05,066 --> 00:02:09,054 紅茶はセイロンに限ると 言っていたよ。 28 00:02:09,054 --> 00:02:12,023 まあ 最近は 日本産の紅茶もあるが→ 29 00:02:12,023 --> 00:02:16,061 私は 本場の茶樹しか認めないね。 30 00:02:16,061 --> 00:02:18,096 (毒島幸一)無知な人間は→ 31 00:02:18,096 --> 00:02:21,249 自分から 無知をさらけ出すものですね。 32 00:02:21,249 --> 00:02:23,249 私が無知というのかね? 33 00:02:26,021 --> 00:02:28,056 (毒島)このセイロンティー→ 34 00:02:28,056 --> 00:02:32,043 確かに マッタケレ茶園のものですが→ 35 00:02:32,043 --> 00:02:37,048 その茶樹は 日本から持ち込まれた紅富貴だ。 36 00:02:37,048 --> 00:02:40,018 ちなみに 奈良県で作られた紅茶が→ 37 00:02:40,018 --> 00:02:44,122 50年も前に イギリスの品評会で 最優秀賞を取っている。 38 00:02:44,122 --> 00:02:49,094 本当の紅茶好きは 産地に関係なく その味を楽しむ。 39 00:02:49,094 --> 00:02:51,094 講義 終わり。 40 00:02:55,066 --> 00:02:57,068 あなたは紅茶が好きなのか? 41 00:02:57,068 --> 00:02:59,070 それとも 紅茶に詳しい自分を→ 42 00:02:59,070 --> 00:03:01,156 人に認めてもらうのが 好きなのか? 43 00:03:01,156 --> 00:03:06,156 ご自慢のイギリスの友人の意見を ぜひ聞いてみたいものです。 44 00:03:09,064 --> 00:03:12,067 懐かしいという感覚は 素晴らしいですね。 45 00:03:12,067 --> 00:03:14,035 ありがとうございます。 46 00:03:14,035 --> 00:03:19,140 お客様 犬を連れてのご入場は ご遠慮願います。 47 00:03:19,140 --> 00:03:22,140 そうだよ 君 非常識だよ! 早く帰りたまえ! 48 00:03:23,228 --> 00:03:25,228 失礼致しました。 49 00:03:30,118 --> 00:03:34,118 紅茶 お詳しいんですねぇ。 50 00:03:35,073 --> 00:03:37,058 好きなだけですよ。 51 00:03:37,058 --> 00:03:41,079 嫌いなのは ああやって権威を笠に 詳しいふりをする人間です。 52 00:03:41,079 --> 00:03:45,083 全く信用出来ない。 そのとおりかもしれませんねぇ。 53 00:03:45,083 --> 00:03:49,070 信用出来るのは 世の中で 犬と紅茶だけです。 54 00:03:49,070 --> 00:03:51,072 犬と紅茶だけですか。 55 00:03:51,072 --> 00:03:53,074 そんなあなたの淹れる紅茶 飲みたいものです。 56 00:03:53,074 --> 00:03:55,176 社交辞令ですか? 57 00:03:55,176 --> 00:03:58,176 社交辞令は苦手なもので。 58 00:03:59,164 --> 00:04:01,164 杉下と申します。 59 00:04:03,068 --> 00:04:07,155 僕は 毒島といいます。 無職なので 名刺はありません。 60 00:04:07,155 --> 00:04:11,155 ああ 構いませんよ。 いつでも 連絡ください。 61 00:04:12,060 --> 00:04:15,163 〈恐らく この出会いは→ 62 00:04:15,163 --> 00:04:18,163 一期一会で終わるだろうと 思ったのだが…〉 63 00:04:18,967 --> 00:04:22,053 〈意外にも 1週間後→ 64 00:04:22,053 --> 00:04:25,056 “彼"から 茶会の誘いがあったのである〉 65 00:04:25,056 --> 00:04:28,076 お茶会なんて言うから どんな豪邸かと思いました。 66 00:04:28,076 --> 00:04:30,045 大体 どういう知り合いなんですか? 67 00:04:30,045 --> 00:04:34,149 実は まだ 知り合いというほど 相手を知らないんですよ。 68 00:04:34,149 --> 00:04:36,149 え? (チャイム) 69 00:04:39,004 --> 00:04:41,072 どうも。 お招きありがとうございます。 70 00:04:41,072 --> 00:04:43,058 同僚も連れてきました。 71 00:04:43,058 --> 00:04:46,127 どうも。 甲斐と申します。 72 00:04:46,127 --> 00:04:49,127 毒島です。 どうぞ。 73 00:04:53,068 --> 00:04:56,004 靴は脱がないでいいです。 大丈夫なんですか? 74 00:04:56,004 --> 00:04:59,024 このアパート もうすぐ 取り壊しが決まってるんです。 75 00:04:59,024 --> 00:05:02,143 大家にも 好きに使っていいと 言われていまして。 76 00:05:02,143 --> 00:05:04,143 なるほど。 どうぞ。 77 00:05:09,017 --> 00:05:13,071 海外のアパートみたいですね。 留学時代を思い出します。 78 00:05:13,071 --> 00:05:17,075 元々 アパートは イギリスの産業革命の時に→ 79 00:05:17,075 --> 00:05:21,062 労働者が住むために 発達したものですからね。 80 00:05:21,062 --> 00:05:24,099 僕のような低所得者には ぴったりです。 81 00:05:24,099 --> 00:05:27,099 この前のワンちゃんは どうされたのですか? 82 00:05:28,053 --> 00:05:30,105 (毒島)アルは死にました。 83 00:05:30,105 --> 00:05:33,105 それは ご愁傷さまです。 84 00:05:38,146 --> 00:05:42,146 あっ… 書斎を見せてもらっても? ええ。 85 00:05:44,052 --> 00:05:46,020 どうぞ。 86 00:05:46,020 --> 00:05:50,058 うわ~ すごい本ですね。 87 00:05:50,058 --> 00:05:52,961 これでも 去年 半分捨てました。 88 00:05:52,961 --> 00:05:56,097 ほとんどミステリー小説ですね。 89 00:05:56,097 --> 00:06:01,097 ええ。 日本では未翻訳の作品も 海外から取り寄せています。 90 00:06:04,139 --> 00:06:06,139 紅茶を淹れましょうか。 91 00:06:07,125 --> 00:06:09,144 恐縮です。 92 00:06:09,144 --> 00:06:32,144 ♬~ 93 00:06:33,151 --> 00:06:50,151 ♬~ 94 00:06:51,052 --> 00:06:54,005 アンティークですねぇ。 ええ まあ。 95 00:06:54,005 --> 00:06:57,025 へえ~。 96 00:06:57,025 --> 00:07:02,030 僕には不釣り合いかな? いえ そうは思いませんが。 97 00:07:02,030 --> 00:07:07,051 そうかな? 紅茶と犬しか 楽しみのない人生なものでね。 98 00:07:07,051 --> 00:07:11,089 ティーセットぐらいは いいものを持っておきたくなる。 99 00:07:11,089 --> 00:07:14,959 ワトソンくんも 紅茶が好きなのかな? 100 00:07:14,959 --> 00:07:17,061 ん? ワトソン? 101 00:07:17,061 --> 00:07:21,065 この方は 和製シャーロック・ホームズと→ 102 00:07:21,065 --> 00:07:24,135 呼ばれているそうだから。 へえ~ 杉下さんがですか? 103 00:07:24,135 --> 00:07:28,056 検索したら 『都民ジャーナル』の 記事が引っかかりましたよ。 104 00:07:28,056 --> 00:07:30,992 随分前の話です。 お恥ずかしい。 105 00:07:30,992 --> 00:07:34,112 杉下さんがホームズなら 甲斐さんは さしずめ→ 106 00:07:34,112 --> 00:07:37,148 助手のワトソン というところじゃないかな。 107 00:07:37,148 --> 00:07:40,148 助手… まあ 一応 部下ではありますが…。 108 00:07:41,102 --> 00:07:46,057 とても澄んだ赤い色合いです。 やわらかい風味は緑茶を思わせる。 109 00:07:46,057 --> 00:07:48,993 もしかして これは日本産ですか? 110 00:07:48,993 --> 00:07:54,065 鹿児島産です。 違いがわかる人だ。 111 00:07:54,065 --> 00:07:57,068 警察なんて バカしかいないと思ってた。 112 00:07:57,068 --> 00:08:01,005 おや 以前に警察の人間と 会った事があるのですか? 113 00:08:01,005 --> 00:08:06,060 1年前に 頭の悪そうな刑事が2人 聞き込みに来たんです。 114 00:08:06,060 --> 00:08:08,963 頭の悪そうな刑事が2人…。 115 00:08:08,963 --> 00:08:12,166 何か事件だったのですか? 116 00:08:12,166 --> 00:08:16,166 隣の部屋で 女が殺されていたんです。 117 00:08:20,041 --> 00:08:24,062 (毒島) 女の恋人だったミステリー作家→ 118 00:08:24,062 --> 00:08:27,065 烏森凌が逮捕されたんですが…。 119 00:08:27,065 --> 00:08:30,051 ああ その事件ならば 記憶にあります。 120 00:08:30,051 --> 00:08:34,072 解決したと聞いていますが。 だといいのですが…。 121 00:08:34,072 --> 00:08:38,076 …と言うと 冤罪だと思ってらっしゃる? 122 00:08:38,076 --> 00:08:40,044 どうでしょう? 123 00:08:40,044 --> 00:08:42,063 警察は信用出来ないと 思っているだけです。 124 00:08:42,063 --> 00:08:45,066 世の中で信用出来るのは…。 紅茶と犬だけ。 125 00:08:45,066 --> 00:08:48,102 そのとおり。 わかりました。 126 00:08:48,102 --> 00:08:51,139 その事件 調べてみましょう。 え? 127 00:08:51,139 --> 00:08:55,139 逮捕された烏森凌さんの作品も お読みになった事が? 128 00:08:55,994 --> 00:08:59,030 彼は未熟な作家です。 129 00:08:59,030 --> 00:09:02,066 彼には 作家に必要な 劣等感や渇望感→ 130 00:09:02,066 --> 00:09:06,054 いわば なんらかの欠落が 欠落している。 131 00:09:06,054 --> 00:09:10,174 なるほど。 よければ 1冊 お借り出来ますか? 132 00:09:10,174 --> 00:09:12,174 ええ。 133 00:09:13,261 --> 00:09:18,261 杉下さん 調べるって どういうつもりですか? 134 00:09:20,068 --> 00:09:22,036 どうぞ。 135 00:09:22,036 --> 00:09:25,056 『傷口とナイフ』ですか。 136 00:09:25,056 --> 00:09:27,108 お借りします。 137 00:09:27,108 --> 00:09:30,061 殺された女性とは 面識はあったのですか? 138 00:09:30,061 --> 00:09:35,049 ええ。 犬の散歩の時に 顔を合わせたりはしてましたけど。 139 00:09:35,049 --> 00:09:37,185 どんな女性でしたか? 140 00:09:37,185 --> 00:09:40,185 化粧っ気がなくて よく たばこを吸ってました。 141 00:09:42,056 --> 00:09:46,010 (米沢 守)被害者は 佐藤静香 28歳 ホステス。 142 00:09:46,010 --> 00:09:49,080 自宅アパートを訪ねてきた恋人に ナイフで刺され 死亡。 143 00:09:49,080 --> 00:09:53,067 致命傷となったのは 腹部2か所の刺し傷です。 144 00:09:53,067 --> 00:09:56,070 この事件の事なら よく覚えてますよ。 145 00:09:56,070 --> 00:10:00,074 何しろ 犯人がミステリー作家の 烏森凌でしたからね。 146 00:10:00,074 --> 00:10:01,959 ミステリーマニアから見た 烏森さんは→ 147 00:10:01,959 --> 00:10:04,045 どういう作家だったのでしょう? 148 00:10:04,045 --> 00:10:07,048 烏森凌は そのルックスのよさもあり→ 149 00:10:07,048 --> 00:10:11,102 華々しくデビューしたんですが 小説の内容は重厚さに欠け→ 150 00:10:11,102 --> 00:10:14,072 マニアの評判は よくありませんでしたね。 151 00:10:14,072 --> 00:10:16,124 実際 その後は→ 152 00:10:16,124 --> 00:10:18,124 なかなか 発表の場に 恵まれなかったようです。 153 00:10:19,127 --> 00:10:23,047 こちら 大御所の批評家 大沢重光のコメントです。 154 00:10:23,047 --> 00:10:27,018 「大胆にして繊細! 至高のミステリー」ですか。 155 00:10:27,018 --> 00:10:31,105 事件当日 烏森は 大沢さんと揉めてますね。 156 00:10:31,105 --> 00:10:35,059 (大沢重光)烏森くんじゃないか。 ええ? 157 00:10:35,059 --> 00:10:41,065 君の新作ね 素晴らしかったよ! うん! ハハハハ…! 158 00:10:41,065 --> 00:10:47,155 (烏森 凌)は? 俺のつまらない小説褒めて…→ 159 00:10:47,155 --> 00:10:49,155 お前 バカか? うっ!? 160 00:10:50,091 --> 00:10:53,010 そんなにね 本当の事を言ってほしいんなら→ 161 00:10:53,010 --> 00:10:54,979 言おうじゃないか! 162 00:10:54,979 --> 00:10:57,999 君の小説は駄作だよ! 163 00:10:57,999 --> 00:11:03,137 それ 褒めたのはね 君の女と寝たからだ! 164 00:11:03,137 --> 00:11:05,056 うっ! 165 00:11:05,056 --> 00:11:09,060 烏森は大沢を殴り その足で 佐藤静香さんの部屋に向かった。 166 00:11:09,060 --> 00:11:12,096 そして このナイフで殺害した。 167 00:11:12,096 --> 00:11:18,052 作家としての誇りを傷つけられた 烏森には 明確な殺意があった。 168 00:11:18,052 --> 00:11:22,006 状況的に考えて 烏森の犯行だと思いますがね。 169 00:11:22,006 --> 00:11:24,075 では なぜ 毒島さんは→ 170 00:11:24,075 --> 00:11:26,961 僕たちを部屋に呼んでまで あのような話をしたのでしょう? 171 00:11:26,961 --> 00:11:29,997 さあ…。 また 杉下さんと→ 172 00:11:29,997 --> 00:11:32,150 お茶を 飲みたかったんじゃないですか? 173 00:11:32,150 --> 00:11:35,150 あの人 友達いなそうだし。 174 00:11:37,989 --> 00:11:42,076 〈孤独とは 文字どおり 一人きりの状態を指すのであるが→ 175 00:11:42,076 --> 00:11:44,045 ただ1人でいるからといって→ 176 00:11:44,045 --> 00:11:49,066 別段 孤独を感じるという事は ないものである〉 177 00:11:49,066 --> 00:11:52,069 烏森とは 4日後に面会出来るそうです。 178 00:11:52,069 --> 00:11:54,055 どうもありがとう。 179 00:11:54,055 --> 00:11:58,126 あっ この前 毒島さんが淹れてくれた紅茶→ 180 00:11:58,126 --> 00:12:00,094 本当に うまかったですね。 181 00:12:00,094 --> 00:12:03,047 今までに飲んだ事のない味でした。 182 00:12:03,047 --> 00:12:07,018 紅茶の世界は 無限の広がりを 持っているんですよ。 183 00:12:07,018 --> 00:12:09,053 茶樹によって 産地によって…。 184 00:12:09,053 --> 00:12:11,105 同じ産地でも→ 185 00:12:11,105 --> 00:12:12,957 それぞれの紅茶園によって 味が変わります。 186 00:12:12,957 --> 00:12:15,059 さらに 収穫の時期や→ 187 00:12:15,059 --> 00:12:17,979 その年の気候によっても 変わるのですから→ 188 00:12:17,979 --> 00:12:22,183 楽しみは尽きませんねぇ。 う~ん 奥深いですね。 189 00:12:22,183 --> 00:12:25,183 今度 飲み比べとか してみたいですね。 190 00:12:27,054 --> 00:12:29,006 そうですか? はい? 191 00:12:29,006 --> 00:12:33,094 よかったら このあと 一緒に 紅茶店に行きませんか? 192 00:12:33,094 --> 00:12:36,998 あ… 今日ですか? ちょっと 先約がいまして。 193 00:12:36,998 --> 00:12:41,052 お先に失礼してもいいですか? それは残念ですねぇ。 194 00:12:41,052 --> 00:12:45,106 〈孤独は 人と人の間で不意に発生する→ 195 00:12:45,106 --> 00:12:47,041 化学反応のようなものだ〉 196 00:12:47,041 --> 00:12:52,046 〈まさに 「孤独は山の中ではなく 街の中にある」〉 197 00:12:52,046 --> 00:12:54,148 では お先に失礼します。 198 00:12:54,148 --> 00:12:56,148 はい お疲れさまでした。 お疲れっした。 199 00:12:59,070 --> 00:13:01,055 どうぞ。 ありがとうございます。 200 00:13:01,055 --> 00:13:04,058 〈異性なら 運命とでも言いたいところだが→ 201 00:13:04,058 --> 00:13:07,962 紅茶愛好家の男2人が 紅茶店で会うのは→ 202 00:13:07,962 --> 00:13:10,047 ただの偶然に過ぎない〉 203 00:13:10,047 --> 00:13:12,049 こんばんは。 204 00:13:12,049 --> 00:13:15,086 あっ こんばんは! (咳) 205 00:13:15,086 --> 00:13:18,055 ハーブティーを買いに来ました。 僕もです。 206 00:13:18,055 --> 00:13:20,041 (咳) 207 00:13:20,041 --> 00:13:22,059 (2人)エキナセア。 208 00:13:22,059 --> 00:13:25,079 ええ エキナセアは風邪予防に いいと言いますからねぇ。 209 00:13:25,079 --> 00:13:27,164 はい。 210 00:13:27,164 --> 00:13:31,164 よかったら ご一緒に。 はい。 211 00:13:36,073 --> 00:13:39,060 エキナセア。 212 00:13:39,060 --> 00:13:41,178 ジャーマンカモミール。 213 00:13:41,178 --> 00:13:45,178 レモングラスと もう1つ。 214 00:13:48,119 --> 00:13:50,119 (店長)甜茶ですわ。 215 00:13:51,105 --> 00:13:55,059 ああ。 甜茶は 上品な甘さのあるお茶ですね。 216 00:13:55,059 --> 00:13:57,061 ええ。 217 00:13:57,061 --> 00:13:59,046 お二人は お知り合いだったのね? 218 00:13:59,046 --> 00:14:03,150 いつもは お一人ですものね 2人とも。 219 00:14:03,150 --> 00:14:05,150 どうぞごゆっくり。 220 00:14:07,071 --> 00:14:11,058 あっ そういえば 烏森さんの作品 読みました。 221 00:14:11,058 --> 00:14:13,077 ご感想は? 222 00:14:13,077 --> 00:14:16,097 派手な文体で 飾り立ててはいますが→ 223 00:14:16,097 --> 00:14:18,065 読んでいる こちらは 盛り下がってしまうという→ 224 00:14:18,065 --> 00:14:20,067 典型的な例ですねぇ。 225 00:14:20,067 --> 00:14:23,054 まるで 母親のまねをして化粧をした→ 226 00:14:23,054 --> 00:14:25,106 小さな女の子のようです。 227 00:14:25,106 --> 00:14:28,075 成熟や洗練とは ほど遠く→ 228 00:14:28,075 --> 00:14:30,061 まだ 本当の作家には なっていない。 229 00:14:30,061 --> 00:14:32,029 ですが お借りした本の帯には→ 230 00:14:32,029 --> 00:14:36,100 批評家が絶賛するコメントが 書かれていました。 231 00:14:36,100 --> 00:14:39,036 だから 批評家なんて 信用出来ない。 232 00:14:39,036 --> 00:14:42,039 金や女で 平気で言葉を売る。 233 00:14:42,039 --> 00:14:46,110 残念ながら そういう部分も あるようですねぇ。 234 00:14:46,110 --> 00:14:49,063 しかし 一方で ミステリーマニアの間で→ 235 00:14:49,063 --> 00:14:52,049 非常に信用のある批評家が いるそうです。 236 00:14:52,049 --> 00:14:56,070 我々ミステリーマニアの間で 一番信用されている批評は→ 237 00:14:56,070 --> 00:14:58,122 このブログです。 238 00:14:58,122 --> 00:15:01,058 ほう… 毒薬さんですか。 239 00:15:01,058 --> 00:15:05,062 ええ。 その名のとおり 超毒舌です。 240 00:15:05,062 --> 00:15:07,048 例えば こちら。 241 00:15:07,048 --> 00:15:09,100 「駄作ゆえに古本屋に売りたいが→ 242 00:15:09,100 --> 00:15:12,053 この本を読んだと思われるのは 屈辱である」 243 00:15:12,053 --> 00:15:14,071 確かに毒舌ですねぇ。 244 00:15:14,071 --> 00:15:17,091 これだけだと ただの悪口のように見えますが→ 245 00:15:17,091 --> 00:15:19,143 褒める時は本当に褒める。 246 00:15:19,143 --> 00:15:22,046 それゆえに 毒薬さんは マニアに信頼されてます。 247 00:15:22,046 --> 00:15:24,065 なるほど。 ちなみに 毒薬さんは→ 248 00:15:24,065 --> 00:15:27,068 烏森さんの作品については なんと? 249 00:15:27,068 --> 00:15:30,087 (米沢) 烏森さんはと… こちらですね。 250 00:15:30,087 --> 00:15:34,125 「彼には 作家に必要な劣等感や渇望感→ 251 00:15:34,125 --> 00:15:37,125 いわば何らかの【欠落】が 欠落している」と。 252 00:15:38,245 --> 00:15:42,245 批評家 毒薬さんの正体は あなたですね? 253 00:15:44,068 --> 00:15:47,054 あなた 批評家でしたか。 254 00:15:47,054 --> 00:15:49,056 ネットで 好き勝手 書いてるだけです。 255 00:15:49,056 --> 00:15:51,125 仕事にはなってない。 256 00:15:51,125 --> 00:15:52,993 事件を起こせば→ 257 00:15:52,993 --> 00:15:57,081 「毒島幸一 42歳 無職」と 報道される。 258 00:15:57,081 --> 00:16:01,102 そんなあなただからこそ なんの利権にも縛られない批評で→ 259 00:16:01,102 --> 00:16:04,071 マニアの信用を 得ているのでしょうね。 260 00:16:04,071 --> 00:16:09,060 僕は腹いせに 他人の小説の悪口を 書いているだけです。 261 00:16:09,060 --> 00:16:11,962 腹いせ? なんのでしょう? 262 00:16:11,962 --> 00:16:14,014 小説を書こうと思って 書けなかった。 263 00:16:14,014 --> 00:16:17,068 その腹いせです。 なるほど。 264 00:16:17,068 --> 00:16:22,056 実は 僕も 小説を書いた事があるんです。 265 00:16:22,056 --> 00:16:24,008 それは読んでみたいな。 266 00:16:24,008 --> 00:16:28,045 …と言っても 中学生の時です。 内容も荒唐無稽で。 267 00:16:28,045 --> 00:16:31,015 今のあなたなら 違うものが 書けるんじゃないかな? 268 00:16:31,015 --> 00:16:33,984 ああ そんな事は 考えもしませんでしたね。 269 00:16:33,984 --> 00:16:36,170 書いてください。 遠慮なく批評しますから。 270 00:16:36,170 --> 00:16:38,170 怖いですねぇ。 271 00:16:41,025 --> 00:16:43,060 あっ そういえば→ 272 00:16:43,060 --> 00:16:45,062 事件で使用された 凶器のナイフですが→ 273 00:16:45,062 --> 00:16:47,114 イギリスのアンティークでした。 274 00:16:47,114 --> 00:16:52,052 小説の主人公が愛用しているのも 同じナイフだったんですねぇ。 275 00:16:52,052 --> 00:16:54,004 ご存じでした? 276 00:16:54,004 --> 00:16:58,058 自分と主人公を 重ねたのかもしれないな…。 277 00:16:58,058 --> 00:17:02,029 なるほど。 小説では 恋人に裏切られた男が→ 278 00:17:02,029 --> 00:17:05,149 そのナイフで 犯行に及ぶわけですがねぇ…。 279 00:17:05,149 --> 00:17:07,149 ええ…。 280 00:17:09,053 --> 00:17:13,073 〈その時 不意に孤独が立ち込めた〉 281 00:17:13,073 --> 00:17:16,093 〈孤独は 濃い霧のごとく→ 282 00:17:16,093 --> 00:17:19,046 “彼"の秘密を覆い隠すのである〉 283 00:17:19,046 --> 00:17:24,151 (角田六郎)おい 暇か? 暇じゃないですよ。 捜査中です。 284 00:17:24,151 --> 00:17:27,151 ハッ… そうは見えないけどね。 285 00:17:28,155 --> 00:17:30,155 何書いてんのよ? 286 00:17:31,058 --> 00:17:34,061 なんだ? 小説か? 287 00:17:34,061 --> 00:17:37,164 ハッ… 文芸部にでもなったか? 特命は。 288 00:17:37,164 --> 00:17:39,164 これも職務の一環です。 289 00:17:40,067 --> 00:17:43,120 この“彼"って…。 290 00:17:43,120 --> 00:17:45,120 ええ。 291 00:17:47,241 --> 00:17:52,241 今日のお茶会 楽しみですね。 292 00:20:29,119 --> 00:20:35,119 〈私は孤独の研究を携え “彼"との茶会へと向かった〉 293 00:20:40,080 --> 00:20:45,169 ああ 毒島さん。 今日は 僕が紅茶を淹れましょう。 294 00:20:45,169 --> 00:20:50,169 オリジナルティーを持参しました。 それは楽しみです。 295 00:20:59,066 --> 00:21:01,068 毒島さんの淹れ方と そっくりでしょう? 296 00:21:01,068 --> 00:21:03,020 こんな淹れ方する人が 他にもいたなんて→ 297 00:21:03,020 --> 00:21:06,090 思いませんでした。 これが異性なら→ 298 00:21:06,090 --> 00:21:08,108 運命とでも 呼べるんでしょうけどね。 299 00:21:08,108 --> 00:21:12,129 同感です。 まあ 今日は 男3人の茶会を楽しみましょう。 300 00:21:12,129 --> 00:21:14,129 頂きましょう。 301 00:21:18,102 --> 00:21:21,102 フフフフ…。 302 00:21:22,122 --> 00:21:24,091 こうして 同じ顔ぶれで茶会を重ねるのは→ 303 00:21:24,091 --> 00:21:26,060 いいものですねぇ。 304 00:21:26,060 --> 00:21:28,045 いつも 1人だけというのは 寂しすぎる。 305 00:21:28,045 --> 00:21:31,098 僕の事ですか? いえ 僕の事です。 306 00:21:31,098 --> 00:21:35,069 確かに あなたも 職場で 浮くタイプかもしれませんね。 307 00:21:35,069 --> 00:21:39,073 フフッ。 …ああ すいません。 308 00:21:39,073 --> 00:21:41,091 興味があるなぁ。 309 00:21:41,091 --> 00:21:44,078 和製ホームズが 警察では どんな扱いを受けているのか。 310 00:21:44,078 --> 00:21:47,014 あー…。 構いませんよ。 311 00:21:47,014 --> 00:21:49,049 杉下さんが職場で→ 312 00:21:49,049 --> 00:21:51,085 浮いてるかどうかは わかりませんが→ 313 00:21:51,085 --> 00:21:54,088 特命係が たった2名の部署である事→ 314 00:21:54,088 --> 00:21:57,057 そして 僕の前に 前任者が9名いた事で→ 315 00:21:57,057 --> 00:22:00,060 事情を察して頂ければ。 9名は やりすぎですね。 316 00:22:00,060 --> 00:22:03,964 特命係は人材の墓場って 呼ばれてたんですよね。 317 00:22:03,964 --> 00:22:06,050 ええ。 墓場ですか。 318 00:22:06,050 --> 00:22:10,070 なかなか素敵なニックネームだ。 7人目の同僚に…→ 319 00:22:10,070 --> 00:22:13,123 いえ 相棒に 言われた事があります。 320 00:22:13,123 --> 00:22:15,092 僕には協調性というものがないと。 321 00:22:15,092 --> 00:22:18,062 仲間を立てるとか そういう事を覚えれば→ 322 00:22:18,062 --> 00:22:20,013 もっと出世すると。 323 00:22:20,013 --> 00:22:23,067 彼がいなくならない事を 祈るばかりです。 324 00:22:23,067 --> 00:22:26,086 ええ。 フフフ…。 大きなお世話かもしれませんが→ 325 00:22:26,086 --> 00:22:29,056 もっと親睦を深めておいた方が いいんじゃないですか? 326 00:22:29,056 --> 00:22:31,075 …と言うと? 327 00:22:31,075 --> 00:22:34,078 例えば ファーストネームで 呼んでみるとか。 328 00:22:34,078 --> 00:22:39,032 ああ… でも 杉下さんは 歳も階級も上ですし→ 329 00:22:39,032 --> 00:22:41,051 あんまり なれなれしいのは…。 330 00:22:41,051 --> 00:22:44,004 そういうものですか? 僕は構いませんよ。 331 00:22:44,004 --> 00:22:46,106 右京さんと呼ばれた事も ありました。 332 00:22:46,106 --> 00:22:49,159 右京さん…。 いやぁ ピンとこないですね。 333 00:22:49,159 --> 00:22:52,079 (3人の笑い声) 334 00:22:52,079 --> 00:22:55,032 あなたも結構 孤独なんですね。 335 00:22:55,032 --> 00:22:59,236 いえ “彼"の孤独に比べれば 僕の孤独など…。 336 00:22:59,236 --> 00:23:03,236 “彼"? ああ これは失礼。 337 00:23:07,161 --> 00:23:11,161 僕の書いた小説の登場人物です。 338 00:23:13,066 --> 00:23:16,069 (毒島)『孤独の研究』ですか。 339 00:23:16,069 --> 00:23:19,039 ドイルの 『緋色の研究』みたいですね。 340 00:23:19,039 --> 00:23:22,075 クラシカルな探偵小説を 意識しました。 341 00:23:22,075 --> 00:23:28,182 あっ! よろしければ この場で ご批評頂けませんか? 342 00:23:28,182 --> 00:23:30,182 この場でですか? ええ。 343 00:23:31,135 --> 00:23:33,135 …いいでしょう。 344 00:23:36,056 --> 00:23:40,077 〈“彼"の事を覚えている人間は 少なかった〉 345 00:23:40,077 --> 00:23:44,148 〈“彼"は 人々の記憶から 遺棄された人間だ〉 346 00:23:44,148 --> 00:23:46,066 〈死体遺棄は犯罪だが→ 347 00:23:46,066 --> 00:23:49,069 記憶を遺棄しても 犯罪にはならない〉 348 00:23:49,069 --> 00:23:53,106 〈“彼"は子供の頃から 人付き合いが苦手だった〉 349 00:23:53,106 --> 00:23:58,162 〈一方で 勉強は出来たため 態度だけは尊大になった〉 350 00:23:58,162 --> 00:24:01,162 〈そして なおさら嫌われた〉 351 00:24:02,132 --> 00:24:05,035 〈大学に進学後も その性格は変わらず→ 352 00:24:05,035 --> 00:24:07,020 友達はいない〉 353 00:24:07,020 --> 00:24:10,090 〈恋人など当然いない〉 354 00:24:10,090 --> 00:24:13,143 〈そして 大学院に進んだ〉 355 00:24:13,143 --> 00:24:18,065 〈“彼"としては 大学院を 人間関係に煩わされず→ 356 00:24:18,065 --> 00:24:22,019 純粋に1人で研究が出来る 場所だと信じていた〉 357 00:24:22,019 --> 00:24:24,171 〈だが 大学こそ→ 358 00:24:24,171 --> 00:24:28,171 人間関係が 重視される場所だったのである〉 359 00:24:29,059 --> 00:24:33,030 〈“彼"は 自分の担当教授の 論文のミスを指摘した〉 360 00:24:33,030 --> 00:24:35,032 〈“彼"としては 純粋に→ 361 00:24:35,032 --> 00:24:38,135 学術的な間違いを 指摘しただけだった〉 362 00:24:38,135 --> 00:24:41,135 〈だが 教授は激怒した〉 363 00:24:43,156 --> 00:24:47,156 〈“彼"は冷遇され 研究者になる道は閉ざされた〉 364 00:24:49,062 --> 00:24:53,033 はい。 はい…。 ですが お客様…。 365 00:24:53,033 --> 00:24:56,236 〈その後は 派遣社員として 職場を転々〉 366 00:24:56,236 --> 00:24:58,236 はい すみません。 367 00:24:59,172 --> 00:25:03,172 〈どこに行っても 人と折り合いが付かなかった〉 368 00:25:05,012 --> 00:25:09,082 〈そんな“彼"の愛情の捌け口が 犬であり→ 369 00:25:09,082 --> 00:25:11,151 楽しみが紅茶だった〉 370 00:25:11,151 --> 00:25:17,151 〈そして ネットでの批評で 自分の自尊心を満たした〉 371 00:25:21,011 --> 00:25:25,065 “彼"は 友情にも恋愛にも無縁。 仕事も定まらず 財産もない。 372 00:25:25,065 --> 00:25:27,034 クソみたいな男ですね。 373 00:25:27,034 --> 00:25:30,053 そんな“彼"にも 心を許す事がある。 374 00:25:30,053 --> 00:25:33,173 1つは 紅茶が関係した時。 375 00:25:33,173 --> 00:25:35,173 もう1つは…。 376 00:25:36,960 --> 00:25:39,012 犬が関係した時です。 377 00:25:39,012 --> 00:25:42,165 “彼"は“彼女"と 犬を通じて知り合った。 378 00:25:42,165 --> 00:25:45,165 続きを読んでもいいですか? ああ どうぞ。 379 00:25:46,053 --> 00:25:49,122 〈“彼"の生活が変わったのは→ 380 00:25:49,122 --> 00:25:53,122 隣の部屋に“彼女"が 引っ越してきてからだった〉 381 00:25:57,130 --> 00:26:01,130 (佐藤静香)あ… 今度 引っ越してきた 佐藤です。 382 00:26:02,052 --> 00:26:04,071 〈“彼女"は→ 383 00:26:04,071 --> 00:26:07,040 母親の再婚相手との関係に 問題があり→ 384 00:26:07,040 --> 00:26:10,127 わずか14歳で家を出た〉 385 00:26:10,127 --> 00:26:14,147 〈その歳で街に出た女の 人生については→ 386 00:26:14,147 --> 00:26:16,147 言わずもがなだろう〉 387 00:26:18,235 --> 00:26:22,235 〈やがて成長した“彼女"は ホステスになっていた〉 388 00:26:23,023 --> 00:26:27,060 〈それなりに人気のある ホステスにもかかわらず→ 389 00:26:27,060 --> 00:26:29,162 安アパートに越してきたのは→ 390 00:26:29,162 --> 00:26:34,162 今までの男に貢いで 借金があるからだった〉 391 00:26:35,068 --> 00:26:37,020 〈“彼女"は いつも→ 392 00:26:37,020 --> 00:26:40,040 駄目な男とばかり 付き合っていた〉 393 00:26:40,040 --> 00:26:43,076 〈自分を殴る男ばかり…〉 394 00:26:43,076 --> 00:26:44,995 〈口癖は→ 395 00:26:44,995 --> 00:26:49,099 「男は信用出来ない。 信用出来るのは犬だけ」→ 396 00:26:49,099 --> 00:26:51,068 というものだった〉 397 00:26:51,068 --> 00:26:53,970 〈夜の華やかな顔とは別の→ 398 00:26:53,970 --> 00:26:58,158 化粧を落として 犬の散歩をする時だけが→ 399 00:26:58,158 --> 00:27:02,158 “彼女"が素に戻れる時間だった〉 400 00:27:03,163 --> 00:27:08,163 この子 犬嫌いなのに…。 珍しい。 401 00:27:09,069 --> 00:27:11,004 〈“彼"も“彼女"も→ 402 00:27:11,004 --> 00:27:14,057 散歩中に声をかけ合うタイプの 人間ではない〉 403 00:27:14,057 --> 00:27:19,062 〈だが お互いの犬を介して 2人は打ち解けた〉 404 00:27:19,062 --> 00:27:22,065 仕事は何してるの? 405 00:27:22,065 --> 00:27:26,069 事務とか 色々です。 ふーん。 406 00:27:26,069 --> 00:27:29,039 でも 本当は ミステリー小説の 批評をしてるんです。 407 00:27:29,039 --> 00:27:33,009 結構 評判いいんですよ。 へえ~! 頭いいんだ。 408 00:27:33,009 --> 00:27:35,095 いや そんな事はないんですけど…。 409 00:27:35,095 --> 00:27:40,050 えっ ミステリーって どういう作家さんの? 410 00:27:40,050 --> 00:27:42,052 (毒島)作家ですか? まあ 全般…。 411 00:27:42,052 --> 00:27:46,106 〈無類の愛犬家同士の絆は 深いものだ〉 412 00:27:46,106 --> 00:27:51,144 〈男女関係など 一般社会のしがらみとは関係なく→ 413 00:27:51,144 --> 00:27:56,144 毎日の散歩で 何げなく会話を積み重ねる〉 414 00:27:57,017 --> 00:28:00,087 〈それは“彼"にとって 小さな…→ 415 00:28:00,087 --> 00:28:04,087 いや 大きな喜びだった〉 416 00:30:52,125 --> 00:30:54,125 空気を入れ替えましょうか。 417 00:30:55,128 --> 00:31:02,152 (鳥のさえずり) 418 00:31:02,152 --> 00:31:04,152 素敵な公園ですねぇ。 419 00:31:05,956 --> 00:31:09,059 小説についてですが→ 420 00:31:09,059 --> 00:31:11,061 “彼"の性格からいって→ 421 00:31:11,061 --> 00:31:14,064 誰にも ネットの批評の事は 話さないと思いませんか? 422 00:31:14,064 --> 00:31:15,999 普通なら そうでしょうね。 423 00:31:15,999 --> 00:31:18,969 ですが 相手に見栄を張りたい もっと言えば→ 424 00:31:18,969 --> 00:31:23,156 女性に格好つけたかったとすれば ええ…。 425 00:31:23,156 --> 00:31:25,156 他に ご指摘はありませんか? 426 00:31:28,028 --> 00:31:33,049 例えば こういうふうに 加えてみてはどうです? 427 00:31:33,049 --> 00:31:38,054 「“彼"は“彼女"の夜の顔を 見た事がなかった」。 428 00:31:38,054 --> 00:31:40,040 「“彼"にとって“彼女"は→ 429 00:31:40,040 --> 00:31:44,160 化粧っ気のない よく たばこを吸う女だった」。 430 00:31:44,160 --> 00:31:49,160 ああ… “彼女"は“彼"の前で たばこを吸っていたんですね。 431 00:31:51,001 --> 00:31:54,037 「毎日の犬の散歩→ 432 00:31:54,037 --> 00:31:58,041 “彼女"が たばこを2本 吸い終わるまでの時間の→ 433 00:31:58,041 --> 00:32:01,061 交わされる会話が “彼"の楽しみだった」。 434 00:32:01,061 --> 00:32:03,046 うん うん うん…。 435 00:32:03,046 --> 00:32:08,184 〈“彼女"は “彼の"孤独な人生に 差し込んだ光だった〉 436 00:32:08,184 --> 00:32:12,184 〈“彼"の心が高揚しても 無理からぬ事だ〉 437 00:32:13,006 --> 00:32:17,060 〈だからといって “彼女"との恋愛を望むほど→ 438 00:32:17,060 --> 00:32:20,063 “彼"は楽観的な男ではない〉 439 00:32:20,063 --> 00:32:23,049 〈“彼"に出来る 精いっぱいの事…→ 440 00:32:23,049 --> 00:32:28,054 それは 自分が愛する紅茶を 贈る事だけだった〉 441 00:32:28,054 --> 00:32:30,056 (毒島)これ。 442 00:32:30,056 --> 00:32:33,009 ああ ありがとう。 443 00:32:33,009 --> 00:32:36,062 いや 茶葉買いすぎたから。 444 00:32:36,062 --> 00:32:39,966 〈そんなある日 “彼女"は恋に落ちた〉 445 00:32:39,966 --> 00:32:44,137 〈相手は ミステリー小説家だった〉 446 00:32:44,137 --> 00:32:47,137 女を殴る男じゃないよ。 447 00:32:49,092 --> 00:32:51,092 本当かな? 448 00:32:57,083 --> 00:32:59,083 試してみれば? 449 00:32:59,969 --> 00:33:04,057 〈小説家は ただ優しいだけの 恋人ではなかったが→ 450 00:33:04,057 --> 00:33:08,144 ある一点で “彼女"にとって 特別な男だった〉 451 00:33:08,144 --> 00:33:13,144 〈小説家は 決して“彼女"を 殴らなかったのである〉 452 00:33:15,135 --> 00:33:18,135 〈“彼女"は 愛に狂った〉 453 00:33:23,059 --> 00:33:29,132 私 初めて 女を殴らない男と付き合ったよ。 454 00:33:29,132 --> 00:33:32,132 それが 普通なのでは? 455 00:33:33,036 --> 00:33:37,123 私みたいな女には それが特別なの。 456 00:33:37,123 --> 00:33:39,123 そうか…。 457 00:33:40,110 --> 00:33:44,130 あっ ねえ 今度 彼 誕生日なんだけどさ→ 458 00:33:44,130 --> 00:33:48,130 小説家って 何あげたら喜ぶのかな? 459 00:33:50,036 --> 00:33:52,038 (ため息) 460 00:33:52,038 --> 00:33:56,059 “彼"は プレゼントの相談に なんと答えたと思いますか? 461 00:33:56,059 --> 00:34:00,029 うーん… “彼"は 小説家の作品を 読んでいたでしょうからねぇ→ 462 00:34:00,029 --> 00:34:05,068 何か 作品にちなんだものを プレゼントとして提案した。 463 00:34:05,068 --> 00:34:08,154 例えば 主人公の使っていた アンティークのナイフ! 464 00:34:08,154 --> 00:34:11,040 いい発想ですね。 書き加えた方がいい。 465 00:34:11,040 --> 00:34:13,993 しかし 小説家は プレゼントを喜びはしたが→ 466 00:34:13,993 --> 00:34:17,113 本当に欲しいものは 別にあったんです。 467 00:34:17,113 --> 00:34:21,050 それは 作品を発表出来る場所と 作品に対する評価。 468 00:34:21,050 --> 00:34:23,052 小説家としては当然でしょうね。 469 00:34:23,052 --> 00:34:27,106 小説家の苦悩が深まるほど “彼女"は愛に狂った。 470 00:34:27,106 --> 00:34:29,058 この 特別な恋人のために→ 471 00:34:29,058 --> 00:34:31,060 出来る事は なんでもしたいと思った。 472 00:34:31,060 --> 00:34:34,047 でも いくら恋人のためとはいえ→ 473 00:34:34,047 --> 00:34:37,066 編集者や批評家と 関係を持つなんて→ 474 00:34:37,066 --> 00:34:39,118 僕には 理解が出来ませんね。 475 00:34:39,118 --> 00:34:42,005 私みたいな女には それぐらいの事しか出来ない。 476 00:34:42,005 --> 00:34:45,024 “彼女"は そんなふうに 思ったのかもしれない。 477 00:34:45,024 --> 00:34:47,060 そして “彼女"は ネットの批評家として→ 478 00:34:47,060 --> 00:34:50,129 影響力を持つ“彼"に 話を持ちかけた。 479 00:34:50,129 --> 00:34:53,032 恋人の小説を絶賛するようにと。 480 00:34:53,032 --> 00:34:56,002 しかし “彼"が 小説を絶賛する事はなかった。 481 00:34:56,002 --> 00:34:58,054 むしろ酷評した。 482 00:34:58,054 --> 00:35:00,056 小説家への嫉妬からでしょうか? 483 00:35:00,056 --> 00:35:02,041 いや “彼"の性格からして それは あり得ませんねぇ。 484 00:35:02,041 --> 00:35:04,060 作品を正当に評価したはずです。 485 00:35:04,060 --> 00:35:06,045 “彼"は 何かと引き換えに→ 486 00:35:06,045 --> 00:35:09,082 自分の批評を 売るような事はありません。 487 00:35:09,082 --> 00:35:13,052 批評家のかがみだ。 “彼女"と関係を持たずに→ 488 00:35:13,052 --> 00:35:16,039 一銭にもならない ネットの批評を選ぶなんて。 489 00:35:16,039 --> 00:35:20,059 でも なんか きれい事すぎる気が するんですよね。 490 00:35:20,059 --> 00:35:22,128 ええ 確かに 立派すぎて→ 491 00:35:22,128 --> 00:35:26,149 やや人間性に欠ける人物造形に なっているかもしれませんねぇ。 492 00:35:26,149 --> 00:35:32,149 ああ このフローリングの床を 革靴で歩く足音は いいですねぇ。 493 00:35:33,139 --> 00:35:35,139 では こういうのは どうでしょう? 494 00:35:38,061 --> 00:35:40,964 〈その夜 “彼"の部屋を訪ねた“彼女"は→ 495 00:35:40,964 --> 00:35:47,036 ハイヒールを履き 化粧をして 着飾っていた〉 496 00:35:47,036 --> 00:35:50,106 お願いがあるの。 497 00:35:50,106 --> 00:35:52,106 お願い? 498 00:35:53,142 --> 00:35:58,142 (静香)彼の小説を褒めてほしいの。 499 00:36:02,051 --> 00:36:04,070 いいでしょ? 500 00:36:04,070 --> 00:36:07,190 〈それは “彼"の知る 「化粧っ気がなくて→ 501 00:36:07,190 --> 00:36:11,190 よく たばこを吸う女」 ではなかった〉 502 00:36:12,028 --> 00:36:15,064 ああ それなら わかるかも。 503 00:36:15,064 --> 00:36:17,066 自分が好きな雰囲気と違って→ 504 00:36:17,066 --> 00:36:19,118 がっかりって事もありますからね。 505 00:36:19,118 --> 00:36:21,070 そうだね。 では 書き加えましょう。 506 00:36:21,070 --> 00:36:23,039 ああ もう やめませんか? 507 00:36:23,039 --> 00:36:25,058 そろそろ 本題に入りましょう。 508 00:36:25,058 --> 00:36:27,060 事件の話に。 509 00:36:27,060 --> 00:36:31,047 彼は 我々の遊びに 飽きてしまったようです。 510 00:36:31,047 --> 00:36:33,049 そのようですね。 では カイトくん→ 511 00:36:33,049 --> 00:36:36,052 事件当日の流れを 振り返ってもらえますか? 512 00:36:36,052 --> 00:36:38,104 はい。 513 00:36:38,104 --> 00:36:45,061 事件当日 烏森さんは 批評家の大沢重光さんを殴った。 514 00:36:45,061 --> 00:36:50,033 大沢さんが 静香さんと 関係を持った事を話したからです。 515 00:36:50,033 --> 00:36:53,953 そのあと 興奮した状態で 静香さんの部屋を訪れた。 516 00:36:53,953 --> 00:36:59,058 その時に 争う声を聞いたと あなたも証言していますね。 517 00:36:59,058 --> 00:37:01,010 ええ。 518 00:37:01,010 --> 00:37:04,080 そして 静香さんは殺されたと 捜査資料にあります。 519 00:37:04,080 --> 00:37:07,050 ですが 僕は ある疑問を持ちました。 520 00:37:07,050 --> 00:37:09,052 初めからナイフで殺すつもりなら→ 521 00:37:09,052 --> 00:37:13,072 なぜ 烏森さんは 静香さんを殴ったのでしょう? 522 00:37:13,072 --> 00:37:16,059 烏森はカッとして殴り そのあとナイフで刺したのでは? 523 00:37:16,059 --> 00:37:18,044 それでは あなたがバカにしていた→ 524 00:37:18,044 --> 00:37:21,047 警察と同じ見立てになりますよ? 525 00:37:21,047 --> 00:37:25,051 嫌な言い方をしますね。 まるで僕のようだ。 526 00:37:25,051 --> 00:37:28,004 恐縮です。 僕の推理では→ 527 00:37:28,004 --> 00:37:31,057 静香さんを殴ったのは 他の人物です。 528 00:37:31,057 --> 00:37:32,959 烏森でないとする根拠は なんです? 529 00:37:32,959 --> 00:37:36,045 まず 烏森さんは 静香さんを殴らなかった。 530 00:37:36,045 --> 00:37:40,049 だからこそ 彼女は 狂おしいほどに愛したのですから。 531 00:37:40,049 --> 00:37:43,052 時と場合によるのでは ないですか? 532 00:37:43,052 --> 00:37:46,122 しかし 烏森さんが殴るというのは 大変な事ですよ。 533 00:37:46,122 --> 00:37:50,026 彼は 長身な上に シャーロック・ホームズをまねて→ 534 00:37:50,026 --> 00:37:52,011 ボクシングを習っていたそうです。 535 00:37:52,011 --> 00:37:55,064 実際に 殴られた大沢重光さんは→ 536 00:37:55,064 --> 00:37:57,100 左の頬骨を陥没していたそうです。 537 00:37:57,100 --> 00:38:00,053 ハハハハハ… ざまあみろだな。 538 00:38:00,053 --> 00:38:04,023 もし 烏森さんが激高して 静香さんを殴ったとしたら→ 539 00:38:04,023 --> 00:38:08,144 遺体の傷は あの程度では 済まなかったはずです。 540 00:38:08,144 --> 00:38:10,144 じゃあ 誰が? 541 00:38:11,130 --> 00:38:13,049 その前に 紅茶を淹れ直しませんか? 542 00:38:13,049 --> 00:38:15,134 今度は あなたが。 543 00:38:15,134 --> 00:38:17,134 いいでしょう。 544 00:41:10,026 --> 00:41:14,030 淹れ方 本当にそっくりですね。 545 00:41:14,030 --> 00:41:17,116 静香さんの殴られた跡は 右頬にありました。 546 00:41:17,116 --> 00:41:19,068 つまり 殴った相手は 左利きだという事です。 547 00:41:19,068 --> 00:41:22,071 ですが 烏森さんは右利きでした。 548 00:41:22,071 --> 00:41:25,041 僕らの紅茶の淹れ方は とてもよく似ていますが→ 549 00:41:25,041 --> 00:41:27,126 1つだけ違う点があります。 550 00:41:27,126 --> 00:41:30,126 それは あなたが 左利きだという事です。 551 00:41:31,047 --> 00:41:34,000 事件のあった日 何が起こったのか→ 552 00:41:34,000 --> 00:41:37,119 本来であれば 最も信頼出来る目撃者に→ 553 00:41:37,119 --> 00:41:39,255 話を聞きたいところですが…。 554 00:41:39,255 --> 00:41:41,255 誰です? 555 00:41:44,010 --> 00:41:47,163 アルくんです。 彼は現場にいた。 556 00:41:47,163 --> 00:41:53,163 あの夜 アルくんが何を見たのか 僕と一緒に推理してください。 557 00:41:56,155 --> 00:41:59,155 ≫(アルの吠える声) ≫(静香の悲鳴) 558 00:42:02,061 --> 00:42:05,064 〈烏森さんは 彼女からプレゼントされた→ 559 00:42:05,064 --> 00:42:09,085 アンティークナイフを凶器にすると 決めていたそうです〉 560 00:42:09,085 --> 00:42:12,038 〈自分の小説の主人公と 同じナイフで→ 561 00:42:12,038 --> 00:42:14,073 同じような事件を起こせば→ 562 00:42:14,073 --> 00:42:17,093 せめて 作家として 名前を残せると…〉 563 00:42:17,093 --> 00:42:20,062 お前を殺して 俺も死ぬ! 564 00:42:20,062 --> 00:42:24,050 頼む… 俺と一緒に死んでくれ! 565 00:42:24,050 --> 00:42:26,035 うわあーっ! あっ…! 566 00:42:26,035 --> 00:42:28,070 (静香)うっ… ああーっ! 567 00:42:28,070 --> 00:42:43,169 ♬~ 568 00:42:43,169 --> 00:42:46,169 佐藤さん? どうしました? 569 00:42:52,061 --> 00:42:54,063 大丈夫ですか…? 570 00:42:54,063 --> 00:42:56,065 (毒島の声)僕が駆けつけると→ 571 00:42:56,065 --> 00:42:59,135 ピクリとも動かない烏森がいた。 572 00:42:59,135 --> 00:43:05,007 おそらく 仮死状態になったのを 死んだと勘違いしたのでしょう。 573 00:43:05,007 --> 00:43:07,143 そう 勘違い。 574 00:43:07,143 --> 00:43:10,143 その勘違いのせいで 僕は…。 575 00:43:12,164 --> 00:43:17,164 ぼ… 僕が 身代わりになるよ…。 576 00:43:19,171 --> 00:43:21,171 なんで? 577 00:43:24,160 --> 00:43:26,160 それは…。 578 00:43:29,065 --> 00:43:36,088 ぼ… ぼ… ぼ…。 579 00:43:36,088 --> 00:43:39,075 (毒島の声) 僕は君を愛しているから。 580 00:43:39,075 --> 00:43:43,045 そう言おうとして うまく言えなかった。 581 00:43:43,045 --> 00:43:45,097 仕方ない。 愛してるなんて→ 582 00:43:45,097 --> 00:43:49,051 人生で一度も 言った事がなかったんだ。 583 00:43:49,051 --> 00:43:51,020 すると 彼女は…。 584 00:43:51,020 --> 00:43:53,055 (笑い声) 585 00:43:53,055 --> 00:43:58,060 (毒島の声)僕は 僕の気持ちを 笑われたんだと思った。 586 00:43:58,060 --> 00:44:03,099 人生で たった一度の感情を バカにされたと…。 587 00:44:03,099 --> 00:44:07,099 その瞬間 僕の中で何かが弾けた。 588 00:44:13,042 --> 00:44:15,061 彼女を殴るなんて…。 589 00:44:15,061 --> 00:44:20,232 極限状況下で お互いに 感情が高ぶっていたのでしょう。 590 00:44:20,232 --> 00:44:26,232 殴ったあと 静香さんを ナイフで殺害した。 591 00:44:28,057 --> 00:44:30,059 僕は 遺体に関して まだ疑問を持っています。 592 00:44:30,059 --> 00:44:34,113 彼女の右頬についていた傷 それは 左利きのあなたが…→ 593 00:44:34,113 --> 00:44:37,183 殴ったものです。 そして 腹部の刺し傷ですが…。 594 00:44:37,183 --> 00:44:41,036 中央に1つ 左脇腹に1つ つまり 右利きの人間の犯行です。 595 00:44:41,036 --> 00:44:45,074 ええ カッとなって刺したのならば 左手で刺したはずです。 596 00:44:45,074 --> 00:44:47,093 ところが 右手で刺したとなると→ 597 00:44:47,093 --> 00:44:49,128 それは 烏森さんが やったと見せかけるための→ 598 00:44:49,128 --> 00:44:51,080 偽装だったという事に なりませんかねぇ? 599 00:44:51,080 --> 00:44:53,165 なりますね。 ええ 問題は→ 600 00:44:53,165 --> 00:44:57,165 なぜ あなたが 偽装したのかという事です。 601 00:44:59,054 --> 00:45:02,124 ごめん… ごめんよ ごめんよ…。 602 00:45:02,124 --> 00:45:06,124 いいよ。 私も笑うとこじゃなかった。 603 00:45:07,146 --> 00:45:10,146 許して なんでもするから。 604 00:45:17,039 --> 00:45:20,059 ねえ…。 605 00:45:20,059 --> 00:45:25,064 アルの事 頼んでもいいかな? 606 00:45:25,064 --> 00:45:27,082 あなたなら安心だから。 607 00:45:27,082 --> 00:45:30,169 (吠える声) 608 00:45:30,169 --> 00:45:33,169 いいけど… どういう意味? 609 00:45:35,040 --> 00:45:39,061 (ため息) 610 00:45:39,061 --> 00:45:44,166 この人 死んじゃって→ 611 00:45:44,166 --> 00:45:48,166 私 もう 生きてる意味ないよ。 612 00:45:54,143 --> 00:45:59,143 ねえ なんでもするって 言ってくれたよね? 613 00:46:02,117 --> 00:46:04,117 殺してくれるかな? 614 00:46:09,158 --> 00:46:14,158 初めから 素直に 殺されてあげればよかった…。 615 00:46:23,138 --> 00:46:27,138 そんなに 彼の事を…。 616 00:46:29,178 --> 00:46:31,178 うん。 617 00:46:35,134 --> 00:46:39,134 ごめんね こんな女で。 618 00:46:42,057 --> 00:46:49,131 でも こんな事頼めるの 他にいないから。 619 00:46:49,131 --> 00:47:12,187 ♬~ 620 00:47:12,187 --> 00:47:14,187 お願い。 621 00:47:16,091 --> 00:47:19,061 いや… 出来ない。 622 00:47:19,061 --> 00:47:28,153 ♬~ 623 00:47:28,153 --> 00:47:31,153 そのままで いてくれればいいから。 624 00:47:34,059 --> 00:47:36,061 (刺す音) 625 00:47:36,061 --> 00:47:44,153 ♬~ 626 00:47:44,153 --> 00:47:48,153 お願い 楽にして…。 627 00:47:50,075 --> 00:47:53,062 あなたは 烏森さんの犯行に見せるために→ 628 00:47:53,062 --> 00:47:56,081 右手でナイフを持ち 彼女の左脇腹を刺した。 629 00:47:56,081 --> 00:47:59,151 そして 自分の指紋を拭き取り→ 630 00:47:59,151 --> 00:48:02,151 烏森さんの指紋をつけ 現場を去った。 631 00:48:06,075 --> 00:48:09,061 ところが 死んでいなかった烏森さんは→ 632 00:48:09,061 --> 00:48:12,097 翌朝 目を覚まし 記憶があいまいなまま→ 633 00:48:12,097 --> 00:48:16,035 逮捕されてしまった。 そうですね? 634 00:48:16,035 --> 00:48:19,054 (毒島)僕が彼女を殺した。 635 00:48:19,054 --> 00:48:22,107 それ以外の事は 言い訳にしかならない。 636 00:48:22,107 --> 00:48:24,159 誰も信じてくれないでしょう。 637 00:48:24,159 --> 00:48:29,164 僕は信じますよ。 彼女が あなたを信用したように。 638 00:48:29,164 --> 00:48:33,164 僕も信じます。 639 00:48:35,154 --> 00:48:38,154 最後に もう1つだけ。 640 00:48:44,063 --> 00:48:46,081 また小説ですか。 641 00:48:46,081 --> 00:48:48,083 これは 烏森さんの小説です。 642 00:48:48,083 --> 00:48:50,052 (毒島)獄中で書いたんですか? 643 00:48:50,052 --> 00:48:53,972 批評家 毒薬さん つまり あなたに認められたい一心で→ 644 00:48:53,972 --> 00:48:56,008 書き上げた小説だそうです。 645 00:48:56,008 --> 00:48:58,093 酷評したのに…。 646 00:48:58,093 --> 00:49:00,045 烏森さんが言ってました。 647 00:49:00,045 --> 00:49:03,065 (杉下の声)あなたの批評は 死にたくなるほど辛辣ですが→ 648 00:49:03,065 --> 00:49:08,070 逆に言えば 一言一句に至るまで 真剣に読んでくれている人間が→ 649 00:49:08,070 --> 00:49:11,173 必ず1人はいるという事でもある。 650 00:49:11,173 --> 00:49:15,173 作家にとって それ以上のエールはないのだと。 651 00:49:16,161 --> 00:49:20,161 小説家というのは 大したものですね。 652 00:49:21,016 --> 00:49:25,070 僕は 人が書いたものを ああだこうだ文句を言うだけ。 653 00:49:25,070 --> 00:49:30,059 書く人間がいなければ 僕は存在すらしない。 654 00:49:30,059 --> 00:49:32,077 本当に クソみたいな人生です。 655 00:49:32,077 --> 00:49:35,013 友達も恋人もいない。 656 00:49:35,013 --> 00:49:37,082 最後は殺人を犯し→ 657 00:49:37,082 --> 00:49:43,072 毒島幸一 42歳 無職と報道されて 笑われる。 658 00:49:43,072 --> 00:49:47,076 毒島さん あなたは批評家として→ 659 00:49:47,076 --> 00:49:50,145 胸を張っていい仕事をしました。 660 00:49:50,145 --> 00:49:52,064 大御所と呼ばれている人物よりも。 661 00:49:52,064 --> 00:49:55,067 それは ミステリー小説を 愛する人間ならば→ 662 00:49:55,067 --> 00:49:57,186 誰でも わかっている事です。 663 00:49:57,186 --> 00:50:03,186 ご自分の罪についても 胸を張って 本当の事を話すべきです。 664 00:50:06,161 --> 00:50:08,161 わかりました。 665 00:50:09,131 --> 00:50:13,018 どうして 今になって 僕らを呼んだんですか? 666 00:50:13,018 --> 00:50:18,157 自分から名乗り出なければ 完全犯罪になったのに。 667 00:50:18,157 --> 00:50:20,157 なぜだと思う? 668 00:50:22,094 --> 00:50:27,065 あなたが望んだ完全犯罪では なかったからです。 669 00:50:27,065 --> 00:50:31,036 それに いくら頼まれたとはいえ→ 670 00:50:31,036 --> 00:50:35,057 愛する女性を殺した良心の呵責に 耐えかねていた。 671 00:50:35,057 --> 00:50:38,060 それでも 犬を最後まで看取るという→ 672 00:50:38,060 --> 00:50:41,079 約束があったから黙っていた。 673 00:50:41,079 --> 00:50:43,966 犬が死んだ今→ 674 00:50:43,966 --> 00:50:48,103 罪を償う決心をした。 675 00:50:48,103 --> 00:50:50,103 違いますか? 676 00:50:51,039 --> 00:50:54,076 もっと単純なんだ。 677 00:50:54,076 --> 00:51:00,065 自分をわかってくれる相手に 本当の事を話したかった。 678 00:51:00,065 --> 00:51:02,050 ただ それだけ。 679 00:51:02,050 --> 00:51:18,066 ♬~ 680 00:51:18,066 --> 00:51:20,169 紅茶くらいしか お礼は出来ませんが→ 681 00:51:20,169 --> 00:51:23,169 僕がブレンドをしたものです。 682 00:51:24,139 --> 00:51:26,139 何よりのお礼です。 683 00:51:28,076 --> 00:51:33,065 あなたの事を孤独と言いましたが それは間違いでした。 684 00:51:33,065 --> 00:51:36,068 孤独と孤高は違います。 685 00:51:36,068 --> 00:51:41,073 あなたは その能力ゆえに 孤高の存在なのでしょう。 686 00:51:41,073 --> 00:51:43,075 さすが 和製シャーロック・ホームズと→ 687 00:51:43,075 --> 00:51:45,177 言われるだけの事は ありました。 688 00:51:45,177 --> 00:51:47,177 恐縮です。 689 00:51:53,018 --> 00:51:56,054 ワトソンくんにも。 えっ? 690 00:51:56,054 --> 00:52:01,143 ああ… ありがとうございます。 691 00:52:01,143 --> 00:52:06,048 助手と言うと 聞こえは悪いかもしれないが→ 692 00:52:06,048 --> 00:52:10,152 ワトソンくんは 頼れる相棒なんだ。 693 00:52:10,152 --> 00:52:13,152 ワトソンなしじゃ ホームズは立ち行かない。 694 00:52:16,058 --> 00:52:19,161 へえ…。 695 00:52:19,161 --> 00:52:21,161 どうも。 696 00:52:23,181 --> 00:52:25,181 行きましょうか。 697 00:52:33,075 --> 00:52:38,030 『孤独の研究』 ぴったりなタイトルだ。 698 00:52:38,030 --> 00:52:41,066 書き上げたら 見せてください。 699 00:52:41,066 --> 00:52:44,152 もちろん。 700 00:52:44,152 --> 00:52:48,152 “彼"には どんな結末が 待っているのかな。 701 00:52:54,079 --> 00:52:59,084 〈こうして 私の孤独の研究は 一つの結論を見た〉 702 00:52:59,084 --> 00:53:21,006 ♬~ 703 00:53:21,006 --> 00:53:25,193 〈だが 最後に疑問が残る〉 704 00:53:25,193 --> 00:53:30,193 〈僕と “彼"の関係を どう呼べばいいのか?〉 705 00:53:32,067 --> 00:53:34,136 (伊丹憲一)その人は? 706 00:53:34,136 --> 00:53:38,136 〈最後の答えをくれたのは Kくんであった〉 707 00:53:40,075 --> 00:53:44,162 右京さんの… 友達です。 708 00:53:44,162 --> 00:53:54,162 ♬~ 709 00:54:34,096 --> 00:54:40,185 当番組は同時入力の為、誤字脱字 が発生する場合があります。 710 00:54:41,269 --> 00:54:43,605 ≫こんばんは。 711 00:54:43,605 --> 00:54:45,941 ここから 「報道ステーション」です。 712 00:54:49,828 --> 00:54:52,147 私は今、村井知事に会いに 仙台の宮城県庁に 713 00:54:52,147 --> 00:54:54,449 やってまいりました。 今年に入りまして興味を持って 714 00:54:57,002 --> 00:54:59,287 宮城県のスケールの大きな 防潮堤計画。