1 00:00:33,239 --> 00:00:38,978 (雷鳴) 2 00:00:38,978 --> 00:00:43,850 (雨音) 3 00:00:43,850 --> 00:00:46,719 (雷鳴) 4 00:00:46,719 --> 00:00:49,155 (お杉) このところ よく降りますね。 5 00:00:49,155 --> 00:00:51,824 (お常)まあ でも その前に 分かるからいいけどね。 6 00:00:51,824 --> 00:00:53,759 (お杉)えっ どうして 分かるんですか? 7 00:00:53,759 --> 00:00:58,331 (お雪)雨が近づくと 竹造さんが 井戸で 顔 洗うんですよ。 8 00:00:58,331 --> 00:01:01,234 (お常)アハハハハ! (お杉)何か 猫みたいですね。 9 00:01:01,234 --> 00:01:03,202 (お雪)そんな かわいいもんじゃ ないですよ。 10 00:01:03,202 --> 00:01:05,204 どっちかっていうと イノシシだよね。 (笑い声) 11 00:01:05,204 --> 00:01:07,340 (雷鳴) 12 00:01:07,340 --> 00:01:11,177 (悲鳴) 13 00:01:11,177 --> 00:01:13,846 (保本)水をくれ。 14 00:01:13,846 --> 00:01:15,882 (お常)あっ… はあ…。 15 00:01:15,882 --> 00:01:20,019 アハハハハ… あら。 アハハハ! 16 00:01:20,019 --> 00:01:22,521 お似合いですよ。 アハハハハ! 17 00:01:22,521 --> 00:01:26,359 (お雪の笑い声) 18 00:01:26,359 --> 00:01:28,294 何が おかしい? 19 00:01:28,294 --> 00:01:33,132 この子はね 保本先生が お仕着せ 着たのが うれしいんですよ。 20 00:01:33,132 --> 00:01:35,968 えっ… どうして? 21 00:01:35,968 --> 00:01:38,871 (お雪) 嫌だ。 勘違いしないで下さいよ。➡ 22 00:01:38,871 --> 00:01:41,641 お常さんと 賭けをしてただけなんです。 23 00:01:41,641 --> 00:01:44,143 賭け? 保本先生が➡ 24 00:01:44,143 --> 00:01:47,480 お仕着せを着るかどうか… アハハハハ! 25 00:01:47,480 --> 00:01:52,985 私と お光さんは 着る方に 賭けてたんです! アハハハハハ! 26 00:01:52,985 --> 00:01:56,322 (お常とお雪の笑い声) 27 00:01:56,322 --> 00:01:58,257 そんな事で賭けをするな! 28 00:01:58,257 --> 00:02:00,192 (雷鳴) 29 00:02:00,192 --> 00:02:04,192 (お常とお雪の笑い声) 30 00:02:08,501 --> 00:02:10,536 先生➡ 31 00:02:10,536 --> 00:02:13,005 養生所の女たちには もっと厳しくした方が➡ 32 00:02:13,005 --> 00:02:17,677 いいのではないでしょうか? (去定)うん? どうしてだ? 33 00:02:17,677 --> 00:02:22,181 何というか… 医者を敬う気持ちがありません。 34 00:02:22,181 --> 00:02:26,352 敬いたくなるような医者になれ。 35 00:02:26,352 --> 00:02:31,352 (雷鳴) 36 00:02:36,462 --> 00:02:41,462 佐八… 佐八 上がるぞ。 37 00:02:45,171 --> 00:02:48,074 チッ… またか。 38 00:02:48,074 --> 00:02:50,643 どういう患者ですか? 労咳だ。 39 00:02:50,643 --> 00:02:53,479 安静にしてろと言ったのに。 40 00:02:53,479 --> 00:02:56,279 (竹造)先生。 うん? 41 00:03:03,990 --> 00:03:06,892 はいよ はい。 42 00:03:06,892 --> 00:03:09,495 (せきこみ) 43 00:03:09,495 --> 00:03:14,333 おい 大丈夫かい? おい 佐八。 無理するな 無理を。 44 00:03:14,333 --> 00:03:16,669 平気だ。 45 00:03:16,669 --> 00:03:19,705 (せきこみ) あっ…。 46 00:03:19,705 --> 00:03:22,475 あっ すいやせん…。 あっ 先生…。 47 00:03:22,475 --> 00:03:25,177 (梅造)すいやせん あっしが頼んだんでさあ。 48 00:03:25,177 --> 00:03:28,214 (治兵衛) やめろって言ってたんですがね。 49 00:03:28,214 --> 00:03:31,050 (せきこみ) 50 00:03:31,050 --> 00:03:34,787 死にたいやつを診ても しかたない。 51 00:03:34,787 --> 00:03:36,822 任せる。 52 00:03:36,822 --> 00:03:38,958 先生…。 えっ? 53 00:03:38,958 --> 00:03:43,658 先生… ああ…。 おい… 先生…。 54 00:03:45,297 --> 00:03:49,802 (治兵衛)病人のくせに ああやって ちょこちょこ仕事をしちゃあ➡ 55 00:03:49,802 --> 00:03:54,673 稼いだ金 周りの連中に やっちまうんですよ。 56 00:03:54,673 --> 00:03:59,145 人のために役に立ちたいなら まず 自分の病気を治すんだ。 57 00:03:59,145 --> 00:04:02,481 へい…。 困ってる人を見ると➡ 58 00:04:02,481 --> 00:04:04,984 ほっとけない性分なんだね。 59 00:04:04,984 --> 00:04:11,657 ここの住人は みんな お前に 一度や二度は助けてもらってる。➡ 60 00:04:11,657 --> 00:04:15,494 恩を感じてるよ。 恩なんて…。 61 00:04:15,494 --> 00:04:18,330 俺は ただの人でなしだ。 62 00:04:18,330 --> 00:04:21,000 とんでもない! 佐八さんは➡ 63 00:04:21,000 --> 00:04:24,670 仏様の生まれ変わりのような 人だよ。 64 00:04:24,670 --> 00:04:32,111 (せきこみ) 65 00:04:32,111 --> 00:04:34,046 ありがとうございました。 ≪どうなってんだよ。 66 00:04:34,046 --> 00:04:36,449 ≪どうなってんだ? 何が見えるんだよ。 67 00:04:36,449 --> 00:04:43,789 (騒ぐ声) 68 00:04:43,789 --> 00:04:47,293 何があった? 69 00:04:47,293 --> 00:04:51,630 そこの神社の裏手の… 土崩れがあって➡ 70 00:04:51,630 --> 00:04:55,301 土の中から こう 骸骨が 出てきちゃったんですわ。 71 00:04:55,301 --> 00:04:57,336 骸骨? 72 00:04:57,336 --> 00:05:00,806 ≪奉行所には知らせたのか? ≪へい 今 行ってやす。 73 00:05:00,806 --> 00:05:02,741 ≪役人が来るまで 動かさないように言っておけ。 74 00:05:02,741 --> 00:05:06,312 どうしたんだ? ちょ… ちょっと…。➡ 75 00:05:06,312 --> 00:05:08,247 ちょっと ちょっと お待ち。 駄目だよ…。 76 00:05:08,247 --> 00:05:11,183 佐八さん 駄目だよ。 ねっ? 77 00:05:11,183 --> 00:05:13,652 寝てなきゃ… 佐八さん。 78 00:05:13,652 --> 00:05:15,652 ああっ! 79 00:05:17,990 --> 00:05:19,925 先生!➡ 80 00:05:19,925 --> 00:05:21,861 佐八さんが…。 81 00:05:21,861 --> 00:05:33,272 ♬~ 82 00:05:33,272 --> 00:05:36,175 (佐八)あそこに…➡ 83 00:05:36,175 --> 00:05:38,777 あそこに いさせてくれ…。 84 00:05:38,777 --> 00:05:40,813 (せきこみ) 85 00:05:40,813 --> 00:05:44,650 おなか… おなか…。 86 00:05:44,650 --> 00:05:47,453 佐八のやつ おなかを呼んでる。 87 00:05:47,453 --> 00:05:50,789 (松吉)ああ…。 こいつも➡ 88 00:05:50,789 --> 00:05:53,626 おなかさえ生きていたらな。 89 00:05:53,626 --> 00:05:55,561 おなかとは誰だ? 90 00:05:55,561 --> 00:05:58,797 (梅造)佐八の 死んだ女房でさあ。 91 00:05:58,797 --> 00:06:01,467 女房がいたのか? (松吉)へい。 92 00:06:01,467 --> 00:06:05,638 あっしは 佐八とは 古くからの仕事仲間なもんで➡ 93 00:06:05,638 --> 00:06:08,541 よ~く知ってまさあ。 94 00:06:08,541 --> 00:06:11,977 佐八のやつが おなかを見初めて➡ 95 00:06:11,977 --> 00:06:15,677 そりゃ もう 熱心に口説きましてね。 96 00:06:17,316 --> 00:06:20,986 (おなか)駄目なの。 (佐八)どうして? 97 00:06:20,986 --> 00:06:25,491 どうしてって…。 訳は… 言えないの。 98 00:06:25,491 --> 00:06:28,994 訳を聞かねえんじゃ 俺だって引き下がれねえよ。 99 00:06:28,994 --> 00:06:31,430 (笑い声) 100 00:06:31,430 --> 00:06:35,768 何 聞いてやがる! (笑い声) 101 00:06:35,768 --> 00:06:39,438 ♬~(佐八の鼻歌) おい ちょいと ごめんよ。 102 00:06:39,438 --> 00:06:43,108 おい どうした? 機嫌がいいじゃねえか。 103 00:06:43,108 --> 00:06:48,981 ヘヘッ…。 おなかが ゆうべ 言ってくれたんだ。 ああ。 104 00:06:48,981 --> 00:06:51,450 俺と一緒になってもいいって。 ヘヘヘ。 105 00:06:51,450 --> 00:06:54,119 おいおいおい! 本当か おい! ハッハッハッハ…。 106 00:06:54,119 --> 00:06:56,622 そいつは めでてえ! 帰りに一杯やるか! 107 00:06:56,622 --> 00:07:00,492 おう! いよっ 色男! アハハハ! 108 00:07:00,492 --> 00:07:05,631 (松吉)2人は 見ていて 羨ましくなるほど 仲がよかった。 109 00:07:05,631 --> 00:07:07,931 行ってらっしゃい。 行ってくるよ。 110 00:07:10,302 --> 00:07:13,973 それが…➡ 111 00:07:13,973 --> 00:07:16,673 10年前の大火事で…。 112 00:07:18,644 --> 00:07:21,547 おなか! 113 00:07:21,547 --> 00:07:24,984 おなか! おい! 114 00:07:24,984 --> 00:07:27,319 おなか~! 115 00:07:27,319 --> 00:07:30,990 (梅造)ああ… 考えてみりゃ➡ 116 00:07:30,990 --> 00:07:35,427 あいつが あんな 仏様みてえな男になったのは➡ 117 00:07:35,427 --> 00:07:37,463 おなかを失ってからだ。 118 00:07:37,463 --> 00:07:43,663 (治兵衛)ああ。 それが おなかへの 供養だったのかねえ…。 119 00:07:56,615 --> 00:07:59,952 先生 佐八が…。 聞いた。 120 00:07:59,952 --> 00:08:04,252 あの男は お前と森に任せる。 121 00:08:08,294 --> 00:08:10,294 はあ…。 122 00:08:19,638 --> 00:08:22,308 (お常)保本先生。 123 00:08:22,308 --> 00:08:26,178 また あの人 来てますよ。 フフッ…。 124 00:08:26,178 --> 00:08:28,178 えっ? 125 00:08:31,116 --> 00:08:34,753 先日は…➡ 126 00:08:34,753 --> 00:08:39,591 ぶしつけな事を言って… 申し訳ありませんでした。 127 00:08:39,591 --> 00:08:41,591 いえ…。 128 00:08:46,765 --> 00:08:49,268 ちぐささんは…➡ 129 00:08:49,268 --> 00:08:53,468 その後… どうしてらっしゃいますか? 130 00:08:55,074 --> 00:08:57,142 はい…。 131 00:08:57,142 --> 00:09:02,842 既に嫁ぎまして そのあとは 私も会っておりません。 132 00:09:05,284 --> 00:09:09,154 その方と 夫婦になられた訳ですね? 133 00:09:09,154 --> 00:09:11,623 (まさを)はい。 134 00:09:11,623 --> 00:09:13,559 …それは よかった。 135 00:09:13,559 --> 00:09:18,297 姉を許して下さるんですか? 136 00:09:18,297 --> 00:09:22,968 最初は ちぐささんの事を 恨みに思いました。 137 00:09:22,968 --> 00:09:26,004 ど… どうして たった3年➡ 138 00:09:26,004 --> 00:09:28,140 待ってくれなかったのかと。 139 00:09:28,140 --> 00:09:32,010 しかし あれから いろいろと考えまして➡ 140 00:09:32,010 --> 00:09:35,881 今は もう済んだ事だと 思うようになりました。 141 00:09:35,881 --> 00:09:39,785 そうですか! 142 00:09:39,785 --> 00:09:43,922 それをお聞きして ほっと致しました。 143 00:09:43,922 --> 00:09:46,258 ちぐささんにも そのように お伝え下さい。 144 00:09:46,258 --> 00:09:48,258 (戸を閉める音) 145 00:09:50,129 --> 00:09:56,602 実は 姉は みごもっているそうです。 146 00:09:56,602 --> 00:09:59,505 いっ… あっつ…。 147 00:09:59,505 --> 00:10:02,505 (まさを)大丈夫ですか? そうなんですか…。 148 00:10:06,278 --> 00:10:11,617 夫婦となれば 子どもも出来るでしょう。 149 00:10:11,617 --> 00:10:13,952 よかったじゃないですか。 150 00:10:13,952 --> 00:10:17,790 天野先生も お孫さんが出来て お喜びでしょう。 ハハハ。 151 00:10:17,790 --> 00:10:22,961 ところが 父は あなたに 顔向けできないと申しまして➡ 152 00:10:22,961 --> 00:10:27,800 姉の勘当を解くつもりはないと。➡ 153 00:10:27,800 --> 00:10:32,304 それで あの… お願いが。 154 00:10:32,304 --> 00:10:34,640 何でしょう? 155 00:10:34,640 --> 00:10:37,543 なんとか 保本さんから➡ 156 00:10:37,543 --> 00:10:40,843 父をとりなして 頂けませんでしょうか? 157 00:10:43,315 --> 00:10:45,250 えっ…。 158 00:10:45,250 --> 00:10:48,487 (お常)そんで そんで そんで 保本先生 何つってたんだい? 159 00:10:48,487 --> 00:10:50,422 それがね…。 うん! 160 00:10:50,422 --> 00:10:52,825 しばらく 黙ったあげくに➡ 161 00:10:52,825 --> 00:10:55,327 「少し考えさせて下さい」だって。 162 00:10:55,327 --> 00:10:58,230 何だい もう! 男らしくないねえ。 163 00:10:58,230 --> 00:11:01,200 (津川)その気持ちは分かるね。 えっ? 164 00:11:01,200 --> 00:11:04,336 ほかの男に 許嫁を とられた上に➡ 165 00:11:04,336 --> 00:11:07,005 親父さんとの間まで 取り持ってやったんじゃ➡ 166 00:11:07,005 --> 00:11:09,341 まるで 道化じゃないか。 167 00:11:09,341 --> 00:11:12,845 かといって断っても 心の狭い男に見える。 168 00:11:12,845 --> 00:11:15,681 一旦 答えを差し控えるのは 当然だね。 169 00:11:15,681 --> 00:11:20,519 へえ~。 男の人ってのは そんなもんなんですねえ。 170 00:11:20,519 --> 00:11:23,355 あっ 森先生 どう思います? 171 00:11:23,355 --> 00:11:25,390 何を気にしている? もう済んだ事なら➡ 172 00:11:25,390 --> 00:11:28,026 どうでもいいだろう。 はあ…。 173 00:11:28,026 --> 00:11:30,726 聞く相手を間違えました。 174 00:11:32,798 --> 00:11:35,834 あっ…。 うん? 175 00:11:35,834 --> 00:11:38,303 んあっ! 今 ちょうど話して…。 176 00:11:38,303 --> 00:11:41,603 人の話で 勝手に面白がるな! 177 00:11:44,476 --> 00:11:47,312 怒った… また怒った。 178 00:11:47,312 --> 00:11:51,984 「人の話で 勝手に面白がるな!」。 ハハハハ…! 179 00:11:51,984 --> 00:11:54,984 「人の… 人の話…」。 ハハハ! 180 00:11:59,324 --> 00:12:01,994 (お杉)聞きましたよ。 181 00:12:01,994 --> 00:12:05,330 お雪ちゃん 保本先生を怒らせたって➡ 182 00:12:05,330 --> 00:12:08,834 しょげてました。 183 00:12:08,834 --> 00:12:11,870 お雪に怒ってるんじゃない。 184 00:12:11,870 --> 00:12:14,339 じゃあ 何ですか? 185 00:12:14,339 --> 00:12:16,339 ほっといてくれ! 186 00:12:18,677 --> 00:12:20,677 はい。 187 00:12:24,550 --> 00:12:28,687 <自分が 何に腹を立てているのか➡ 188 00:12:28,687 --> 00:12:30,987 よく分からなかった> 189 00:12:41,266 --> 00:12:44,803 先日 お願いしたものは ご用意頂けましたかな? 190 00:12:44,803 --> 00:12:47,603 (用人)はっ。 ここに。 191 00:12:53,478 --> 00:12:55,814 チッ… はあ…。 192 00:12:55,814 --> 00:12:59,985 鶏肉 卵は厳禁だと 申し上げたはずです。 193 00:12:59,985 --> 00:13:02,020 はあ…。 魚介の類い 塩気のものも➡ 194 00:13:02,020 --> 00:13:05,157 定めた量を 超えているではありませんか! 195 00:13:05,157 --> 00:13:09,328 (用人)ええ… まあ…。 チッ。 はあ… 壱岐守様➡ 196 00:13:09,328 --> 00:13:12,664 お加減は いかがですか? 197 00:13:12,664 --> 00:13:15,701 (壱岐守)ようない。 ほう…。 198 00:13:15,701 --> 00:13:20,501 それでは お脈を拝見致しましょう。 199 00:13:25,844 --> 00:13:29,348 かねてより 申し上げているように➡ 200 00:13:29,348 --> 00:13:32,784 壱岐守様の病は 江戸患いです。 201 00:13:32,784 --> 00:13:36,655 それに 肝の蔵の病にも 侵されております。 202 00:13:36,655 --> 00:13:38,957 失礼。 203 00:13:38,957 --> 00:13:42,628 以前にも増して 顔色が黄色く➡ 204 00:13:42,628 --> 00:13:45,664 頬が痩せ細っているのが その証拠。 205 00:13:45,664 --> 00:13:48,500 このままでは やがて 歩く事も ままならず➡ 206 00:13:48,500 --> 00:13:51,303 寝たきりとなる事でしょう。 207 00:13:51,303 --> 00:13:57,109 今後は 私が立てた献立は 必ず守って頂きます。 208 00:13:57,109 --> 00:14:00,646 まるで そこらの貧乏人と 同じような食事じゃのう。 209 00:14:00,646 --> 00:14:04,346 それでは 私は これで。 210 00:14:08,153 --> 00:14:10,188 ああ 今日は➡ 211 00:14:10,188 --> 00:14:12,324 薬料を頂きたい。 212 00:14:12,324 --> 00:14:14,660 はあ… いかほど? 213 00:14:14,660 --> 00:14:16,595 50両。 えっ!? 214 00:14:16,595 --> 00:14:21,395 5… 50両!? 5… 5…? 215 00:14:25,003 --> 00:14:28,874 わしは まだまだ 人間が出来ておらん。 216 00:14:28,874 --> 00:14:31,276 はっ? 217 00:14:31,276 --> 00:14:36,114 さっき 壱岐守殿に つらく当たったのは➡ 218 00:14:36,114 --> 00:14:40,314 あれは 八つ当たりだ。 八つ当たりとは? 219 00:14:42,287 --> 00:14:47,793 今朝 また 奉行所から 諸費用の切り詰めを言ってきた。 220 00:14:47,793 --> 00:14:49,728 今度は 通い療治をやめろという。 221 00:14:49,728 --> 00:14:52,928 もちろん そんな事はできんと 断ったがな。 222 00:14:54,966 --> 00:14:57,636 皮肉なもんだ。 223 00:14:57,636 --> 00:15:02,507 貧しい者たちが病気にかかるのは ほとんどが 粗末な食事のせいだ。 224 00:15:02,507 --> 00:15:06,311 しかし 金持ちや大名が病むのは➡ 225 00:15:06,311 --> 00:15:09,611 大抵が ぜいたくな食事と 決まってる。 226 00:15:13,985 --> 00:15:15,985 先生…。 227 00:15:18,323 --> 00:15:21,827 あの佐八という男は どういう事なのでしょうか? 228 00:15:21,827 --> 00:15:24,162 どうとは? 229 00:15:24,162 --> 00:15:27,199 なぜ 自分の病気を治そうともせず 人のために? 230 00:15:27,199 --> 00:15:29,199 お前は どう思う? 231 00:15:32,270 --> 00:15:34,206 …分かりません。 232 00:15:34,206 --> 00:15:37,943 人に話を聞く時には 自分の意見ぐらい持て。 233 00:15:37,943 --> 00:15:40,643 分からないから お聞きしているんです。 234 00:15:43,749 --> 00:15:49,454 周りの者たちは 佐八は仏様のようだと言うが➡ 235 00:15:49,454 --> 00:15:53,125 それは違う。 236 00:15:53,125 --> 00:15:56,161 佐八は➡ 237 00:15:56,161 --> 00:15:58,461 人間だ。 238 00:16:00,632 --> 00:16:04,970 ≪(平吉)佐八! 佐八! どこだ? 佐八~! 239 00:16:04,970 --> 00:16:06,905 仕事の邪魔だ! 帰れ! 240 00:16:06,905 --> 00:16:10,642 (平吉)用が済んだら帰るって 言ってんだよ。 佐八…。 241 00:16:10,642 --> 00:16:12,577 どうした? 242 00:16:12,577 --> 00:16:15,313 この酔っ払いが 佐八の見舞いに来たと言うんだ。 243 00:16:15,313 --> 00:16:18,650 平吉か。 むじな長屋の酔いどれだ。 244 00:16:18,650 --> 00:16:22,521 先生 こりゃ どうも。 245 00:16:22,521 --> 00:16:25,423 見舞いに来るなら しらふで来い。 246 00:16:25,423 --> 00:16:30,662 お言葉ですがね 俺は 九つの時から飲み始めて➡ 247 00:16:30,662 --> 00:16:34,266 これまで 酒が切れた事がねえんだ。 248 00:16:34,266 --> 00:16:40,138 自慢じゃねえが 酔ってる時の方が まともなんだよ。 249 00:16:40,138 --> 00:16:42,140 それは まんざら うそでもないな。 250 00:16:42,140 --> 00:16:45,443 だろう? いつだったか 俺が➡ 251 00:16:45,443 --> 00:16:49,948 酒を飲み過ぎて 病気になった時 先生は言ったな。 252 00:16:49,948 --> 00:16:55,287 うん? 「病気になるほど 酒を飲む金があるのなら➡ 253 00:16:55,287 --> 00:16:58,790 女房 子どもの事を考えろ」ってな。 254 00:16:58,790 --> 00:17:03,128 冗談じゃねえ。 俺たちのような者は➡ 255 00:17:03,128 --> 00:17:07,999 汗水たらして働いても 満足に おまんまも食えねえ。 256 00:17:07,999 --> 00:17:12,304 今日は どうやって食おうか 明日は どうするって➡ 257 00:17:12,304 --> 00:17:15,207 そんな事ばかり考えてるんだ。 258 00:17:15,207 --> 00:17:19,177 その上 女房 子どもの事を 考えてみろ。 259 00:17:19,177 --> 00:17:23,877 途端に 飲まずには いられなくなるんだ! 260 00:17:27,152 --> 00:17:29,087 うっ! おい。 261 00:17:29,087 --> 00:17:32,924 うえっ… うっ うっ…。 262 00:17:32,924 --> 00:17:35,427 先生とこも… あっ!➡ 263 00:17:35,427 --> 00:17:38,763 佐八 元気か~?➡ 264 00:17:38,763 --> 00:17:41,433 元気な訳ねえか~。 265 00:17:41,433 --> 00:17:43,368 寝てなきゃ駄目じゃないか! 266 00:17:43,368 --> 00:17:47,105 すみません うちに帰らして下さい…。 267 00:17:47,105 --> 00:17:49,941 何を言っている。 お前の体は…。 268 00:17:49,941 --> 00:17:52,277 よし! 一緒に帰ろう。 269 00:17:52,277 --> 00:17:54,613 あっしのような者が こちらの やっかいになっては➡ 270 00:17:54,613 --> 00:17:58,450 ご迷惑でしょう。 いや 帰んなきゃなんねえんです。 271 00:17:58,450 --> 00:18:02,120 病人が バカな事を言うな! どうか お願いです。 272 00:18:02,120 --> 00:18:05,620 どうか…。 先生 何とか言ってやって下さい。 273 00:18:17,469 --> 00:18:20,805 帰っていいぞ。 えっ!? 274 00:18:20,805 --> 00:18:24,005 どうしてですか? (佐八)すいません…。 275 00:18:28,680 --> 00:18:32,680 先生 またな~。 276 00:18:36,087 --> 00:18:39,758 今 ここを出たら 命を 縮めるだけだと思いますが…。 277 00:18:39,758 --> 00:18:43,628 医者として やるべき事を 諦めるのですか? 278 00:18:43,628 --> 00:18:47,632 病気を治すだけが 医者の仕事じゃない。 279 00:18:47,632 --> 00:18:50,132 病気を治すほかに何が? 280 00:18:53,104 --> 00:18:55,104 先生! 281 00:18:58,443 --> 00:19:00,378 先生のお考えが分からない。 282 00:19:00,378 --> 00:19:03,782 (津川)赤ひげの気まぐれさ。 気まぐれ? 先生は そんな…。 283 00:19:03,782 --> 00:19:06,685 こういうところで権力を握ると 誰も口答えしなくなる。 284 00:19:06,685 --> 00:19:09,955 だから 気まぐれも そのまま 通ってしまうという訳。 285 00:19:09,955 --> 00:19:13,458 結局 俺たちは赤ひげの気まぐれに つきあわされているのさ。 286 00:19:13,458 --> 00:19:16,127 だったら なぜ ここに戻ってきた。 好きで戻った訳じゃない。 287 00:19:16,127 --> 00:19:18,630 俺も あの人は 気まぐれを 言うような人ではないと思う。 288 00:19:18,630 --> 00:19:20,966 じゃあ 何で あんな事を? 何か訳があるのさ。 289 00:19:20,966 --> 00:19:23,868 思わせぶりな事を言うのが 赤ひげの手なのさ。 290 00:19:23,868 --> 00:19:26,168 何でも悪く言うやつだ。 291 00:19:33,545 --> 00:19:37,415 ちょちょ ちょちょちょ… 聞いて 聞いて 聞いて…。 292 00:19:37,415 --> 00:19:39,351 (お雪)何 何? 何 何? 今さ 御用聞きから➡ 293 00:19:39,351 --> 00:19:43,755 聞いてきたんだけどさ ほら むじな長屋の裏から出てきた骸骨。 294 00:19:43,755 --> 00:19:45,690 何か分かったの? 身につけていたものが➡ 295 00:19:45,690 --> 00:19:48,259 若い女のものだったらしいよ。 296 00:19:48,259 --> 00:19:51,596 (お雪)へえ~。 どこの誰か 分かったの? 297 00:19:51,596 --> 00:19:54,499 手がかりになるようなものは 何にもないって。 298 00:19:54,499 --> 00:19:58,470 殺されたんだ。 えっ? 299 00:19:58,470 --> 00:20:04,175 …でないと あんな所に埋まってない。 300 00:20:04,175 --> 00:20:07,946 それで? お光は 下手人が どんなやつか言ったのか? 301 00:20:07,946 --> 00:20:09,881 (お雪)いえ そこまでは。 302 00:20:09,881 --> 00:20:13,881 まっ そんなに古い骨なら 奉行所も どうしようもないね。 303 00:20:16,621 --> 00:20:18,656 佐八は あれから どうだ? 304 00:20:18,656 --> 00:20:21,459 はあ。 小康を得ております。 305 00:20:21,459 --> 00:20:24,295 そうか。 306 00:20:24,295 --> 00:20:28,595 そろそろ むじな長屋から 使いが来るだろう。 307 00:20:30,168 --> 00:20:33,004 どういう事でしょう? もし 来たら➡ 308 00:20:33,004 --> 00:20:36,504 保本 森 お前ら2人で行ってこい。 309 00:20:38,643 --> 00:20:40,578 はあ。 310 00:20:40,578 --> 00:20:43,481 どういう事だ? さあ? 311 00:20:43,481 --> 00:20:46,151 だから あれが赤ひげの手なんだよ。 312 00:20:46,151 --> 00:20:49,054 ごめんくださいやし。 313 00:20:49,054 --> 00:20:51,489 お前… むじな長屋の。 314 00:20:51,489 --> 00:20:57,662 へい。 実は 佐八のやつが こちらの先生に来てほしいと➡ 315 00:20:57,662 --> 00:20:59,662 申しておりまして…。 316 00:21:02,167 --> 00:21:04,102 足元 お気を付けなすって。 317 00:21:04,102 --> 00:21:07,839 おう 先生いらしたぞ。 はいよ。 318 00:21:07,839 --> 00:21:10,339 さあさあ さあさあ どうぞ どうぞ。 319 00:21:12,177 --> 00:21:14,679 これは 先生➡ 320 00:21:14,679 --> 00:21:17,182 わざわざ すいやせん。 321 00:21:17,182 --> 00:21:20,085 医者が病人のところに来るのは 当たり前だ。 322 00:21:20,085 --> 00:21:22,353 具合は どうだ? 323 00:21:22,353 --> 00:21:28,693 それが… 妙に気分がよくてね。 えっ? 324 00:21:28,693 --> 00:21:31,596 お迎えが近いからでしょう。 325 00:21:31,596 --> 00:21:34,296 バカな事を言うな。 326 00:21:36,301 --> 00:21:38,803 なぜ 俺たちを呼んだんだ? 327 00:21:38,803 --> 00:21:43,141 へい。 実は➡ 328 00:21:43,141 --> 00:21:47,812 先生方に 聞いて頂きたい事があるんです。 329 00:21:47,812 --> 00:21:51,316 何だ? 330 00:21:51,316 --> 00:21:53,316 それは…。 331 00:21:55,653 --> 00:22:00,158 死んだ私の女房➡ 332 00:22:00,158 --> 00:22:02,658 おなかの事です。 333 00:22:07,332 --> 00:22:11,169 おなかは➡ 334 00:22:11,169 --> 00:22:16,341 10年前の火事で 死んだんじゃありません。 335 00:22:16,341 --> 00:22:20,211 本当は何があったのか➡ 336 00:22:20,211 --> 00:22:24,082 洗いざらい話しますから➡ 337 00:22:24,082 --> 00:22:28,353 どうか 聞いて下さい。➡ 338 00:22:28,353 --> 00:22:33,191 おなかは 私が一緒になろうと口説いても➡ 339 00:22:33,191 --> 00:22:37,162 なかなか うんと言いませんでした。➡ 340 00:22:37,162 --> 00:22:40,798 1年も その店に通い詰めて➡ 341 00:22:40,798 --> 00:22:45,098 やっとの思いで 承知させたんです。 342 00:22:47,472 --> 00:22:50,808 (佐八)おなかと 一緒になってからというもの➡ 343 00:22:50,808 --> 00:22:58,483 私は 夢のように幸せな日々を 送っていました。➡ 344 00:22:58,483 --> 00:23:05,156 しかし ただ一つ 解せない事が ありました。 345 00:23:05,156 --> 00:23:08,493 どうしてなんだ? 所帯持って もう半年だ。 346 00:23:08,493 --> 00:23:13,331 まだ 親に挨拶もできねえなんて おかしいじゃねえか。 347 00:23:13,331 --> 00:23:16,367 それは そうなんだけど…。 348 00:23:16,367 --> 00:23:19,671 俺みてえな男 会わせんの 嫌かい? 349 00:23:19,671 --> 00:23:21,606 そんな訳ないでしょ。 350 00:23:21,606 --> 00:23:26,010 だったら…。 そのうち きっと会わせる。 351 00:23:26,010 --> 00:23:27,946 それまで 待ってちょうだい。 352 00:23:27,946 --> 00:23:30,515 (佐八)その事を除けば➡ 353 00:23:30,515 --> 00:23:36,515 何の不満もない 幸せな暮らしでした。 354 00:23:38,122 --> 00:23:41,159 しかし…➡ 355 00:23:41,159 --> 00:23:43,995 そんな暮らしは➡ 356 00:23:43,995 --> 00:23:47,195 2年と続きませんでした。 357 00:23:49,834 --> 00:23:54,138 (佐八)あの火事です。➡ 358 00:23:54,138 --> 00:23:59,811 私が 仕事先から帰ってみると➡ 359 00:23:59,811 --> 00:24:04,148 うちの辺りは 一面 火の海で➡ 360 00:24:04,148 --> 00:24:08,987 近寄る事も できませんでした。➡ 361 00:24:08,987 --> 00:24:14,792 私は 気が変になりそうになって➡ 362 00:24:14,792 --> 00:24:18,997 おなかを捜し歩きました。➡ 363 00:24:18,997 --> 00:24:24,335 どこかに逃げているはずだと 信じて。 364 00:24:24,335 --> 00:24:27,238 でも…➡ 365 00:24:27,238 --> 00:24:31,438 おなかは どこにも見つかりませんでした。 366 00:24:34,445 --> 00:24:37,782 私は…➡ 367 00:24:37,782 --> 00:24:44,555 おなかは死んだものと 諦めようとしました。➡ 368 00:24:44,555 --> 00:24:47,458 ただ 忘れるために➡ 369 00:24:47,458 --> 00:24:51,758 酒を飲んでは寝るという 毎日でした。 370 00:24:53,798 --> 00:25:00,571 2年たって この長屋に腰を落ち着けてから➡ 371 00:25:00,571 --> 00:25:06,271 やっと 気持ちも落ち着いてきました。 372 00:25:10,348 --> 00:25:12,548 ところが…。 373 00:25:15,086 --> 00:25:18,823 あの日… そうです➡ 374 00:25:18,823 --> 00:25:21,726 あの日… どうして…。 375 00:25:21,726 --> 00:25:25,163 無理に話さなくていいんだぞ。 376 00:25:25,163 --> 00:25:29,000 いえ… はあ…。 377 00:25:29,000 --> 00:25:32,300 はあ… 聞いて下さい…。 378 00:25:36,107 --> 00:25:38,609 あれは➡ 379 00:25:38,609 --> 00:25:43,114 浅草の祭りの前の日➡ 380 00:25:43,114 --> 00:25:45,049 あっしは仕事帰りでした。 381 00:25:45,049 --> 00:25:53,849 (赤ん坊の泣き声) 382 00:26:06,304 --> 00:26:23,721 ♬~ 383 00:26:23,721 --> 00:26:25,921 しばらくだな。 384 00:26:28,693 --> 00:26:30,828 しばらくね。 385 00:26:30,828 --> 00:26:36,434 (泣き声) 386 00:26:36,434 --> 00:26:38,434 お前の子か? 387 00:26:43,608 --> 00:26:45,908 もう誕生くらいか? 388 00:26:47,779 --> 00:26:49,979 十月目よ。 389 00:26:51,616 --> 00:26:54,519 (佐八)おかしな話です。➡ 390 00:26:54,519 --> 00:26:57,488 自分の女房が➡ 391 00:26:57,488 --> 00:27:01,488 他人の子どもを産んで あやしてるんですから。 392 00:27:03,327 --> 00:27:05,963 本当なら➡ 393 00:27:05,963 --> 00:27:09,963 半殺しにでも してやりたいところでしょう。 394 00:27:11,636 --> 00:27:14,138 なのに➡ 395 00:27:14,138 --> 00:27:20,478 私は ただ それが哀れで…。➡ 396 00:27:20,478 --> 00:27:24,315 もし できる事なら…➡ 397 00:27:24,315 --> 00:27:30,315 抱き締めて 一緒に泣いてやりたい ような気持ちでした。 398 00:27:31,923 --> 00:27:33,923 それで? 399 00:27:35,793 --> 00:27:38,793 おなかは 訳を話したのか? 400 00:27:41,632 --> 00:27:43,832 元気でやってんのかい? 401 00:27:46,938 --> 00:27:48,938 ええ…。 402 00:27:51,609 --> 00:27:56,113 もう 会えねえんだろうな…。 403 00:27:56,113 --> 00:28:07,913 ♬~ 404 00:28:18,302 --> 00:28:20,972 (佐八)でも どういう訳か➡ 405 00:28:20,972 --> 00:28:25,810 憎いという気持ちは 少しも湧きませんでした。 406 00:28:25,810 --> 00:28:29,981 はあ… はあ…。 407 00:28:29,981 --> 00:28:34,281 はあ… はあ… はあ…。 408 00:28:35,786 --> 00:28:39,257 それよりも➡ 409 00:28:39,257 --> 00:28:46,597 あの火事の時 どうして おなかは姿を消したのか➡ 410 00:28:46,597 --> 00:28:50,434 あの赤ん坊は誰の子なのか➡ 411 00:28:50,434 --> 00:28:54,605 それを知りたいという気持ちと➡ 412 00:28:54,605 --> 00:28:58,476 今更 知って 何になるという 気持ちが➡ 413 00:28:58,476 --> 00:29:03,314 行ったり来たりしてました。➡ 414 00:29:03,314 --> 00:29:09,453 そんな ある夜の事です。➡ 415 00:29:09,453 --> 00:29:12,490 不思議なもんです。➡ 416 00:29:12,490 --> 00:29:20,464 その足音で おなかだって すぐ分かりました。 417 00:29:20,464 --> 00:29:26,971 はあ… はあはあ はあはあ…。 418 00:29:26,971 --> 00:29:28,906 はあ… はあ…。 419 00:29:28,906 --> 00:29:32,243 どうして ここが分かった? 420 00:29:32,243 --> 00:29:37,243 車坂の… 利助さんに聞いたの。 421 00:29:41,586 --> 00:29:43,586 何しに来た? 422 00:29:46,757 --> 00:29:52,563 もう二度と会う事はないと 思ってた。 423 00:29:52,563 --> 00:29:56,267 私の事…➡ 424 00:29:56,267 --> 00:30:01,439 死んだものと 思ってくれてるだろうって。 425 00:30:01,439 --> 00:30:03,939 そう思おうとした。 426 00:30:06,110 --> 00:30:10,615 でも… 会ってしまった。 427 00:30:10,615 --> 00:30:12,615 ああ。 428 00:30:14,452 --> 00:30:16,954 だったら やっぱり…➡ 429 00:30:16,954 --> 00:30:19,454 ちゃんと 聞いてもらわなきゃって。 430 00:30:21,626 --> 00:30:24,926 (おなか)聞いて… くれますか? 431 00:30:27,431 --> 00:30:31,335 お前が つらくなければな。 432 00:30:31,335 --> 00:30:33,804 私には…➡ 433 00:30:33,804 --> 00:30:39,677 あんたと一緒になる前に 約束した人がいたの。 434 00:30:39,677 --> 00:30:41,679 えっ? 435 00:30:41,679 --> 00:30:45,516 (おなか)うちの親が 大層 世話になった人で➡ 436 00:30:45,516 --> 00:30:51,656 私も その人の事… 嫌いじゃなかったし➡ 437 00:30:51,656 --> 00:30:58,996 親の勧めるまま その人と 一緒になるつもりでいたの。➡ 438 00:30:58,996 --> 00:31:06,504 でも… あなたと… 出会ってしまった。➡ 439 00:31:06,504 --> 00:31:10,675 断ろう… 断らなきゃって➡ 440 00:31:10,675 --> 00:31:14,545 一所懸命に思おうとした。 441 00:31:14,545 --> 00:31:16,845 でも できなくて…。 442 00:31:19,016 --> 00:31:21,919 あなたの事が…➡ 443 00:31:21,919 --> 00:31:23,919 好きだから…。 444 00:31:27,191 --> 00:31:31,796 (おなか) そのうち… 心を決めました。➡ 445 00:31:31,796 --> 00:31:38,669 恩義は恩義。 後で どうとでも返し方はある。➡ 446 00:31:38,669 --> 00:31:42,669 思いきって 親に話しました。 447 00:31:46,343 --> 00:31:50,815 父には 殴られ➡ 448 00:31:50,815 --> 00:31:54,685 母には 泣かれました…。 449 00:31:54,685 --> 00:31:58,155 どうして それを 俺に話してくれなかったんだ。 450 00:31:58,155 --> 00:32:01,058 だって…➡ 451 00:32:01,058 --> 00:32:04,258 あなたとの日々が幸せすぎたから。 452 00:32:08,799 --> 00:32:15,573 おなかは 自分の親に 勘当同然にされてまで➡ 453 00:32:15,573 --> 00:32:21,345 私と一緒になってくれたんです。 454 00:32:21,345 --> 00:32:24,381 だから…➡ 455 00:32:24,381 --> 00:32:27,852 お前に 親を会わせる事が できなかったんだな。 456 00:32:27,852 --> 00:32:31,288 ええ。 457 00:32:31,288 --> 00:32:36,160 私は 大バカです。 458 00:32:36,160 --> 00:32:43,000 そんな… おなかの苦しみも知らずに➡ 459 00:32:43,000 --> 00:32:47,000 ただ 幸せに暮らしてたんですから。 460 00:32:49,306 --> 00:32:53,006 <なぜか 私は 自分の事を思い出していた> 461 00:32:57,181 --> 00:33:00,481 <無邪気に将来を信じていた私を> 462 00:33:02,319 --> 00:33:05,156 (佐八)バカでした…。 463 00:33:05,156 --> 00:33:09,493 知らない事は しょうがないだろう。 464 00:33:09,493 --> 00:33:12,493 それで済めば 苦労はない。 465 00:33:16,167 --> 00:33:20,337 あの火事の時…。 466 00:33:20,337 --> 00:33:22,673 一体 何があったんだ? 467 00:33:22,673 --> 00:33:25,342 (おなか)あの時➡ 468 00:33:25,342 --> 00:33:28,679 私は…➡ 469 00:33:28,679 --> 00:33:32,950 焼け跡をさまよいながら 思いました。➡ 470 00:33:32,950 --> 00:33:37,454 自分の幸せのために➡ 471 00:33:37,454 --> 00:33:41,792 親や恩人を裏切った 罰が当たったんだって。➡ 472 00:33:41,792 --> 00:33:44,461 私は もう…➡ 473 00:33:44,461 --> 00:33:48,299 人の一生分も幸せに暮らした。➡ 474 00:33:48,299 --> 00:33:52,803 これは ここで区切りをつけろ って事だ…。➡ 475 00:33:52,803 --> 00:33:57,141 ふと 気が付くと➡ 476 00:33:57,141 --> 00:34:01,011 私は…➡ 477 00:34:01,011 --> 00:34:04,811 あの人のうちの前に 立ってました。 478 00:34:08,652 --> 00:34:11,352 親が決めた男のとこかい? 479 00:34:18,996 --> 00:34:23,500 あの日から…➡ 480 00:34:23,500 --> 00:34:27,838 私は 別人になったんです。➡ 481 00:34:27,838 --> 00:34:31,609 いえ… そう思おうとした。 482 00:34:31,609 --> 00:34:36,780 子どもも生まれて やっと…➡ 483 00:34:36,780 --> 00:34:41,118 暮らしも落ち着いてきたと 思った。 484 00:34:41,118 --> 00:34:44,989 そしたら…➡ 485 00:34:44,989 --> 00:34:48,993 あなたと この間 会ってしまった。 486 00:34:48,993 --> 00:34:50,993 ああ…。 487 00:35:04,308 --> 00:35:08,178 (おなか)あなたが決めて。 488 00:35:08,178 --> 00:35:10,178 えっ? 489 00:35:22,326 --> 00:35:24,326 帰ってきてくれ。 490 00:35:28,666 --> 00:35:30,966 行かないでくれ。 491 00:35:35,439 --> 00:35:38,275 抱いて。 492 00:35:38,275 --> 00:35:42,112 いいのか? 493 00:35:42,112 --> 00:35:44,782 お願い…。 494 00:35:44,782 --> 00:35:46,782 抱いて…。 495 00:35:50,454 --> 00:35:52,489 おなか…。 496 00:35:52,489 --> 00:35:58,329 もっと強く抱いて。 どこにも行かないように。 497 00:35:58,329 --> 00:36:00,329 ああ。 498 00:36:02,066 --> 00:36:04,468 ああ… あっ…。 499 00:36:04,468 --> 00:36:08,806 はっ… あっ…。 おなか? 500 00:36:08,806 --> 00:36:12,476 おい…。 501 00:36:12,476 --> 00:36:16,276 おなか… おなか! 502 00:36:23,988 --> 00:36:27,825 どこにも…➡ 503 00:36:27,825 --> 00:36:30,025 行かない…。 504 00:36:35,099 --> 00:36:39,269 あっ… おなか! 505 00:36:39,269 --> 00:36:41,939 おい… おなか…。 506 00:36:41,939 --> 00:36:47,811 (泣き声) 507 00:36:47,811 --> 00:36:49,811 おなか…。 508 00:36:53,650 --> 00:36:59,790 (佐八)もう お分かりでしょう。➡ 509 00:36:59,790 --> 00:37:04,590 あの骨は… おなかです。 510 00:37:11,802 --> 00:37:15,139 おなかと 一緒に暮らしてきたんだな。 511 00:37:15,139 --> 00:37:18,042 ええ。 512 00:37:18,042 --> 00:37:23,842 おなか… 戻ってきてくれたんです。 513 00:37:30,988 --> 00:37:34,425 この暮らしも…➡ 514 00:37:34,425 --> 00:37:39,263 骨が見つかったからには もう おしまいだと➡ 515 00:37:39,263 --> 00:37:43,767 心に決めました。 516 00:37:43,767 --> 00:37:46,804 死ぬ前に…➡ 517 00:37:46,804 --> 00:37:50,274 せめて 先生方に➡ 518 00:37:50,274 --> 00:37:56,447 本当の事を聞いてもらいたいと 思ったんです。 519 00:37:56,447 --> 00:37:58,782 なぜ 俺たちに? 520 00:37:58,782 --> 00:38:02,619 なぜでしょう…。 521 00:38:02,619 --> 00:38:08,792 こんなバカな男がいたって事を➡ 522 00:38:08,792 --> 00:38:16,300 ただ… 誰かに知ってほしかったんです。 523 00:38:16,300 --> 00:38:21,638 ああ… 聞いた。 524 00:38:21,638 --> 00:38:23,574 俺も聞いた。 525 00:38:23,574 --> 00:38:25,874 よかった…。 526 00:38:32,749 --> 00:38:35,586 (佐八)ああ…。 527 00:38:35,586 --> 00:38:39,256 大丈夫か? 528 00:38:39,256 --> 00:38:42,292 ああ…。 529 00:38:42,292 --> 00:38:44,292 おなか…。 530 00:38:47,431 --> 00:38:53,103 迎えに来てくれたんだねえ。 すぐ行くよ。 531 00:38:53,103 --> 00:38:56,303 行くな! まだ生きられる。 532 00:38:58,609 --> 00:39:02,279 行かせてやろう。 533 00:39:02,279 --> 00:39:05,616 おなか…➡ 534 00:39:05,616 --> 00:39:09,786 ああ… きれいだよ…。 535 00:39:09,786 --> 00:39:20,797 ♬~ 536 00:39:20,797 --> 00:39:26,603 佐八… 佐八! 佐八! 537 00:39:26,603 --> 00:39:53,430 ♬~ 538 00:39:53,430 --> 00:39:57,601 長屋の連中で弔いをするそうです。 539 00:39:57,601 --> 00:40:01,471 奉行所には知らせておりません。 今更 知らせたとしても…。 540 00:40:01,471 --> 00:40:05,108 それでいいだろう。 541 00:40:05,108 --> 00:40:08,612 先生は あの骨が➡ 542 00:40:08,612 --> 00:40:10,647 おなかだと 分かっていたんですか? 543 00:40:10,647 --> 00:40:13,283 そこまでは分からん。 544 00:40:13,283 --> 00:40:16,787 では どうして? 545 00:40:16,787 --> 00:40:19,122 ただ…➡ 546 00:40:19,122 --> 00:40:22,922 多少 長く生きてきたというだけの事だ。 547 00:40:30,300 --> 00:40:33,203 ほれ合ってたんだね…。 (泣き声) 548 00:40:33,203 --> 00:40:37,474 (お雪) 何だか羨ましいような気がする。 549 00:40:37,474 --> 00:40:41,144 そんな事に 医者が2人で…。 550 00:40:41,144 --> 00:40:44,181 こっちは 2人の留守に 病人が立て込んで大忙しさ。 551 00:40:44,181 --> 00:40:47,317 すまなかった。 552 00:40:47,317 --> 00:40:49,353 いや…。 553 00:40:49,353 --> 00:40:53,190 病気を治すだけが 仕事じゃない… か。 554 00:40:53,190 --> 00:40:56,994 何ですか? 何でもない。 555 00:40:56,994 --> 00:41:03,333 (泣き声) 556 00:41:03,333 --> 00:41:05,269 羨ましい。 557 00:41:05,269 --> 00:41:07,969 (泣き声) 558 00:41:12,342 --> 00:41:15,679 保本先生。 559 00:41:15,679 --> 00:41:18,379 この間は どなって悪かった。 560 00:41:21,184 --> 00:41:24,521 いいんです。 561 00:41:24,521 --> 00:41:28,191 やっと気付いた。 562 00:41:28,191 --> 00:41:31,161 俺は あの時 自分に怒っていたんだ。 563 00:41:31,161 --> 00:41:33,964 えっ? 564 00:41:33,964 --> 00:41:36,300 俺は…➡ 565 00:41:36,300 --> 00:41:41,471 ちぐさの事は もう済んだ事だと思っていた。 566 00:41:41,471 --> 00:41:43,507 勝手なものだ。 567 00:41:43,507 --> 00:41:48,245 ちぐさは 俺が長崎に行く前に 夫婦になりたがっていた。 568 00:41:48,245 --> 00:41:51,982 でも 俺は 医術の事しか頭になかった。 569 00:41:51,982 --> 00:41:56,853 3年くらい待てるだろうと 気にも留めなかった。 570 00:41:56,853 --> 00:41:59,856 もし あの時➡ 571 00:41:59,856 --> 00:42:03,556 ちぐさの気持ちを 少しでも考えてやっていたら…。 572 00:42:05,495 --> 00:42:07,695 未熟だった。 573 00:42:12,002 --> 00:42:15,339 何か言ってやってくれ 3年前の俺に。 574 00:42:15,339 --> 00:42:17,539 「バカな男だ」って。 575 00:42:20,844 --> 00:42:22,779 私は…➡ 576 00:42:22,779 --> 00:42:26,779 3年前の保本先生の事は 知りませんから。 577 00:42:29,553 --> 00:42:34,291 でも 今 こうして悩んでる 保本先生の事は➡ 578 00:42:34,291 --> 00:42:36,991 ちっとも バカだとは思いません。 579 00:42:38,795 --> 00:42:40,795 そうか。 580 00:42:43,967 --> 00:42:46,002 <去定先生は➡ 581 00:42:46,002 --> 00:42:50,307 医者は病気を治すだけが 仕事ではないと言った。➡ 582 00:42:50,307 --> 00:42:53,977 では それ以外の何ができるのか➡ 583 00:42:53,977 --> 00:42:56,480 私には まだ分からなかった> 584 00:42:56,480 --> 00:43:00,480 ここか? よし 動かすぞ。