1 00:00:33,192 --> 00:00:36,596 (去定)それは受け入れられん! もう決まった事だ。 2 00:00:36,596 --> 00:00:40,266 これ以上 出費を切り詰めるなど どうしろというのだ!? 3 00:00:40,266 --> 00:00:42,935 だから 通い療治をやめろと 言ってるんだ。 4 00:00:42,935 --> 00:00:47,106 通い療治はやめん! なら 自分の金で続ける事だな。 5 00:00:47,106 --> 00:00:50,906 ああ そうする! ならば 文句はないんだな!? 6 00:00:52,612 --> 00:00:54,547 (森)どうしました? 7 00:00:54,547 --> 00:00:57,950 御公儀が成り立っているのは 下々の者たちが 日々➡ 8 00:00:57,950 --> 00:01:01,787 真面目に働いているからだ! その者たちの体を気遣うのは➡ 9 00:01:01,787 --> 00:01:05,958 当たり前ではないか~! 10 00:01:05,958 --> 00:01:08,628 (保本)心配ない。 戻れ。 11 00:01:08,628 --> 00:01:11,664 これから どうなるんでしょう? 知らん! 12 00:01:11,664 --> 00:01:13,664 あっ…。 13 00:01:16,969 --> 00:01:19,305 (まさを) お邪魔でしたでしょうか? 14 00:01:19,305 --> 00:01:23,605 いや… どうぞ お入りなさい。 15 00:01:33,252 --> 00:01:37,590 どうぞ。 ありがとうございます。 16 00:01:37,590 --> 00:01:42,094 …で 今日は? はい。 17 00:01:42,094 --> 00:01:45,965 父が 姉を許すと 言ってくれました。➡ 18 00:01:45,965 --> 00:01:49,268 そのご報告に。 そうですか。 19 00:01:49,268 --> 00:01:51,938 それは よかった。 (まさを)保本さんが➡ 20 00:01:51,938 --> 00:01:53,873 父に とりなしの手紙を➡ 21 00:01:53,873 --> 00:01:56,275 書いて下さった おかげです。 22 00:01:56,275 --> 00:01:58,210 いえ…➡ 23 00:01:58,210 --> 00:02:03,149 むしろ なぜ これまで あの手紙を 書く事ができなかったのか➡ 24 00:02:03,149 --> 00:02:06,919 恥じ入る気持ちです。 そんな! 25 00:02:06,919 --> 00:02:13,125 保本さんは どうして その…。 26 00:02:13,125 --> 00:02:18,631 はい? いえ…。 27 00:02:18,631 --> 00:02:20,566 私も…➡ 28 00:02:20,566 --> 00:02:26,505 あなたのように 慎み深い人でありたいと思います。 29 00:02:26,505 --> 00:02:29,205 私が 慎み深い? 30 00:02:31,210 --> 00:02:33,145 いえ そんな…。 31 00:02:33,145 --> 00:02:35,114 フフッ フフフフ。 32 00:02:35,114 --> 00:02:39,585 ほら… フフッ。 33 00:02:39,585 --> 00:02:43,456 ハハハハ…。 34 00:02:43,456 --> 00:02:47,259 <なぜだろう? この人といると➡ 35 00:02:47,259 --> 00:02:50,930 晴れ晴れとしたような 気持ちになるのは。➡ 36 00:02:50,930 --> 00:02:56,630 それは 姉の ちぐさには 感じた事のないものだった> 37 00:03:00,272 --> 00:03:07,772 (まさをと保本の笑い声) 38 00:03:09,448 --> 00:03:14,620 (津川)いよいよ 保本さんも 身を固める事になりそうだね。 39 00:03:14,620 --> 00:03:17,456 そうですか。 40 00:03:17,456 --> 00:03:21,627 あなたも どうかな? 誰かと…。 41 00:03:21,627 --> 00:03:24,427 私は ここの仕事があります。 42 00:03:28,300 --> 00:03:31,203 あなたが この仕事から➡ 43 00:03:31,203 --> 00:03:34,907 お役御免になる日も 近いんじゃないか? 44 00:03:34,907 --> 00:03:38,411 どういう事ですか? 45 00:03:38,411 --> 00:03:41,611 お嬢さんの病が治るって事だよ。 46 00:03:44,583 --> 00:03:48,454 本心で言ってるようには 聞こえません。 47 00:03:48,454 --> 00:03:51,457 あなたは 私を嫌ってるようだが➡ 48 00:03:51,457 --> 00:03:55,757 報われないという点では 似た者同士じゃないか。 49 00:04:06,272 --> 00:04:10,142 昼間は 見苦しいところを 見せたな。 50 00:04:10,142 --> 00:04:13,946 いえ 怒って当然です。 51 00:04:13,946 --> 00:04:16,282 そういう ご追従を言うな。 52 00:04:16,282 --> 00:04:19,785 ご追従など言っておりません。 思った事を言ったまでです。 53 00:04:19,785 --> 00:04:21,721 お前は…。 ≪どこ行った!? 54 00:04:21,721 --> 00:04:24,657 ≪どこだ!? こら! 55 00:04:24,657 --> 00:04:26,657 うっ…。 56 00:04:29,462 --> 00:04:32,898 おい どうした? あっ…。 57 00:04:32,898 --> 00:04:37,069 先生! うん? 58 00:04:37,069 --> 00:04:39,004 お前は…。 59 00:04:39,004 --> 00:04:42,408 いてっ! いて…。 何があった? 60 00:04:42,408 --> 00:04:46,278 追われてるんです。 追われてる? 61 00:04:46,278 --> 00:04:48,280 チッ そこへ隠れろ。 62 00:04:48,280 --> 00:04:50,780 竹造。 (竹造)へい。 63 00:04:55,421 --> 00:04:59,759 知り合いですか? 入所している多助の倅だ。 64 00:04:59,759 --> 00:05:02,094 ≪どこだ!? 65 00:05:02,094 --> 00:05:04,130 鼻緒が切れたのか? えっ? つかまれ。 66 00:05:04,130 --> 00:05:06,599 あっ はい。 どこだ!? こら! 67 00:05:06,599 --> 00:05:10,269 チクショウ どこ行った? 68 00:05:10,269 --> 00:05:13,105 どこ 隠れやがった!? 69 00:05:13,105 --> 00:05:18,444 (松次郎)どうだ? こっちには いません。 70 00:05:18,444 --> 00:05:20,944 行くぞ。 (男たち)へい。 71 00:05:35,227 --> 00:05:39,565 保本 養生所に運んでやれ。 はい。 72 00:05:39,565 --> 00:05:56,582 ♬~ 73 00:05:56,582 --> 00:05:59,919 よし 口を開けてみろ。 74 00:05:59,919 --> 00:06:02,254 もうちょっとだ。 75 00:06:02,254 --> 00:06:04,254 そうだ。 76 00:06:06,592 --> 00:06:08,592 もういいぞ。 77 00:06:10,930 --> 00:06:15,100 多助さん あんたの倅が 怪我して担ぎ込まれたよ。 78 00:06:15,100 --> 00:06:18,938 その人に 何か言っても 駄目だよ。 79 00:06:18,938 --> 00:06:21,607 もう すっかり…。 80 00:06:21,607 --> 00:06:25,444 (お常)そう…。 81 00:06:25,444 --> 00:06:28,948 いってえ いてえ! 我慢しろ。 82 00:06:28,948 --> 00:06:31,851 いてえ… いてえよ。 83 00:06:31,851 --> 00:06:35,387 あんた! 84 00:06:35,387 --> 00:06:39,225 よう。 だから 言わんこっちゃない! 85 00:06:39,225 --> 00:06:41,260 かみさんに聞いたぞ。 いてっ。 86 00:06:41,260 --> 00:06:45,564 バカな事を しようとしたようだな。 87 00:06:45,564 --> 00:06:47,499 へい…。 88 00:06:47,499 --> 00:06:52,238 なぜ 自分の長屋の大家を 襲おうとした? 89 00:06:52,238 --> 00:06:54,273 大家を? 90 00:06:54,273 --> 00:06:56,575 高田屋の松次郎さん。➡ 91 00:06:56,575 --> 00:07:00,913 私どもが住んでいる 藪下長屋の大家です。 92 00:07:00,913 --> 00:07:05,584 もとはといえば 親父が悪いんだ。 93 00:07:05,584 --> 00:07:10,422 一体 何があった? 94 00:07:10,422 --> 00:07:14,760 あれは 半月前の事です。 95 00:07:14,760 --> 00:07:18,264 出ていけだって? (松次郎)そう。 96 00:07:18,264 --> 00:07:21,600 この一角を 今月の末に取り壊す。 97 00:07:21,600 --> 00:07:26,105 それまでに みんな ここを引き払ってもらおう。 98 00:07:26,105 --> 00:07:29,441 それは おかしい! 死んだ あんたの父親の与七さんと➡ 99 00:07:29,441 --> 00:07:31,377 ここの店子の間で➡ 100 00:07:31,377 --> 00:07:33,879 約束があったのを 知らないのかい? 101 00:07:33,879 --> 00:07:35,814 約束? 102 00:07:35,814 --> 00:07:39,685 はあ… とぼけてもらっちゃ困るな。 103 00:07:39,685 --> 00:07:43,055 ここの店子からは 店賃は 一切 取らない。 104 00:07:43,055 --> 00:07:45,557 それは 与七さんだけじゃなく 倅➡ 105 00:07:45,557 --> 00:07:48,594 つまり あんたの代まで続くって約束だ。 106 00:07:48,594 --> 00:07:53,232 フン… それなら 聞いた事があるがね➡ 107 00:07:53,232 --> 00:07:56,568 大家が店子から 店賃を取らないなんて妙な話が➡ 108 00:07:56,568 --> 00:07:58,504 どこの世の中にあるのかな? 109 00:07:58,504 --> 00:08:01,440 (草太)妙だろうが何だろうが 約束があるのは本当だ。 110 00:08:01,440 --> 00:08:04,243 ハハハ… そんなバカな約束は➡ 111 00:08:04,243 --> 00:08:06,178 俺の代になったからには➡ 112 00:08:06,178 --> 00:08:09,415 反故にさせてもらうよ。 113 00:08:09,415 --> 00:08:11,450 そんなひどい話がありますか? 114 00:08:11,450 --> 00:08:13,585 自分のお父っつぁんがした 約束を➡ 115 00:08:13,585 --> 00:08:15,921 お父っつぁんが亡くなった途端に 破るんですか? 116 00:08:15,921 --> 00:08:20,092 約束と言ったが 何か証文でもあるのか? 117 00:08:20,092 --> 00:08:23,762 (吾平)いや それは…。 うん? 118 00:08:23,762 --> 00:08:26,562 ありません。 フッ。 119 00:08:29,568 --> 00:08:33,372 約束をした事を 覚えてる者がいる。 120 00:08:33,372 --> 00:08:36,709 ほう。 そのころの事を 覚えてる者は➡ 121 00:08:36,709 --> 00:08:39,209 みんな 死んだと聞いたが? 122 00:08:51,223 --> 00:08:53,258 なあ 親父➡ 123 00:08:53,258 --> 00:09:01,233 高田屋の与七さんと 約束したんだよな? そうだろ? 124 00:09:01,233 --> 00:09:04,136 約束? そうだよ。 125 00:09:04,136 --> 00:09:06,136 なあ? そうだろ? 126 00:09:08,907 --> 00:09:13,412 すまねえ 分からねえ。 127 00:09:13,412 --> 00:09:18,751 おい… おい! 128 00:09:18,751 --> 00:09:22,621 すまねえ。 思い出せねえんだ。 129 00:09:22,621 --> 00:09:25,090 何も覚えてねえのかよ!? 130 00:09:25,090 --> 00:09:28,290 店賃が ただになった理由だよ! 131 00:09:33,532 --> 00:09:37,832 ハハハハ… 無駄だったようだな。 132 00:09:39,872 --> 00:09:42,207 ここの跡地をどうするかは もう決めてあるんでね。 133 00:09:42,207 --> 00:09:44,143 月末までには みんな出ていってもらうよ。 134 00:09:44,143 --> 00:09:46,545 いいな!? おいおい… ちょっと待ってくれ。 135 00:09:46,545 --> 00:09:49,214 俺は やっと 表に 店を持ったばっかりなんだよ。 136 00:09:49,214 --> 00:09:52,718 今 店まで潰されたらさ 店を出すために借りた金も➡ 137 00:09:52,718 --> 00:09:54,753 全部 借金になっちまうんだよ。 なっ? 138 00:09:54,753 --> 00:09:57,056 なあ 考え直してくれよ。 なっ? お願いします。 139 00:09:57,056 --> 00:09:58,991 うるさい! いっ! どけ! 140 00:09:58,991 --> 00:10:00,926 何…。 邪魔だ! あっ! 141 00:10:00,926 --> 00:10:02,928 あんた! ああ…。 142 00:10:02,928 --> 00:10:05,428 (戸の開閉音) 143 00:10:08,667 --> 00:10:10,867 すまねえ…。 144 00:10:13,605 --> 00:10:18,744 この人のお父っつぁんが 倒れたのは その夜の事でした。 145 00:10:18,744 --> 00:10:21,780 それで ここに担ぎ込んだ訳か。 146 00:10:21,780 --> 00:10:25,250 親子そろって 養生所に担ぎ込まれたんじゃ➡ 147 00:10:25,250 --> 00:10:27,286 世話ねえよな。 148 00:10:27,286 --> 00:10:32,124 家ばかりか 店まで 潰されてしまうという事か。 149 00:10:32,124 --> 00:10:37,124 必死に お金をためて やっと開いた店なんです。 150 00:10:45,571 --> 00:10:47,571 よし…。 151 00:10:54,279 --> 00:10:58,150 はい 上がったよ。 はいよ! はい。 152 00:10:58,150 --> 00:11:00,452 は~い お待たせしました。 153 00:11:00,452 --> 00:11:05,124 せっかく お客も ついてきたっていうのに…。 154 00:11:05,124 --> 00:11:08,961 それにしても 店賃を ただにするなんて➡ 155 00:11:08,961 --> 00:11:11,997 そんな事があるのか? 156 00:11:11,997 --> 00:11:14,633 あの耄碌親父さえ しっかりしてくれたらよ! 157 00:11:14,633 --> 00:11:18,137 自分のお父っつぁんに そんな言い方…。 158 00:11:18,137 --> 00:11:20,937 この人は いつも こうなんです。 159 00:11:29,314 --> 00:11:34,586 親父…。 何か言いたい事があるようで。 160 00:11:34,586 --> 00:11:40,259 お… おくめ殺し…。 161 00:11:40,259 --> 00:11:44,559 おくめ殺し? 何なの? それは。 162 00:11:46,932 --> 00:11:53,272 その… 言葉が浮かぶんだ。 163 00:11:53,272 --> 00:11:56,572 それが何か 店賃と関わりがあんだな? 164 00:11:59,144 --> 00:12:01,146 さあ…? 165 00:12:01,146 --> 00:12:06,818 (角三)はっきりしろよ! 病人なんだ! 責めるな。 166 00:12:06,818 --> 00:12:09,821 はあ… んっ! 167 00:12:09,821 --> 00:12:20,365 ♬~ 168 00:12:20,365 --> 00:12:24,970 先生 おくめ殺しというのは 一体 何でしょう? 169 00:12:24,970 --> 00:12:26,905 いや 分からん。 何しろ➡ 170 00:12:26,905 --> 00:12:29,308 耄碌した老人が 言う事だからな。 171 00:12:29,308 --> 00:12:31,243 私は あの老人を診ていますが➡ 172 00:12:31,243 --> 00:12:33,912 ただの耄碌だけとは 思えないんです。 173 00:12:33,912 --> 00:12:36,415 どういう事だ? 174 00:12:36,415 --> 00:12:40,715 どうも あの さみしそうな目が 気になって しかたないんです。 175 00:12:43,755 --> 00:12:45,691 もし おくめ殺しが➡ 176 00:12:45,691 --> 00:12:49,261 店賃を取らないという約束と 関わりがあるなら➡ 177 00:12:49,261 --> 00:12:53,432 相当 昔の出来事 という事になりますね。 178 00:12:53,432 --> 00:12:56,468 森 お前➡ 179 00:12:56,468 --> 00:13:00,772 この事を調べてみろ。 えっ 私ですか? 180 00:13:00,772 --> 00:13:02,808 なぜ 私が? 言いだしっぺだ。 181 00:13:02,808 --> 00:13:05,108 病人のためじゃないですか。 182 00:13:14,620 --> 00:13:18,123 あの長屋を壊す? どうして そんな事…。 183 00:13:18,123 --> 00:13:20,459 新地にするんです。 184 00:13:20,459 --> 00:13:22,961 そこに 料理屋や岡場所をつくれば➡ 185 00:13:22,961 --> 00:13:24,896 大きな儲けになるんです。 186 00:13:24,896 --> 00:13:27,799 どうして そこまでして…。 187 00:13:27,799 --> 00:13:31,136 儲けるのが商人の仕事でしょ? 188 00:13:31,136 --> 00:13:34,906 お父さんはね 小さな質屋から始めて➡ 189 00:13:34,906 --> 00:13:37,809 地道に商売してきた。 はあ…。 190 00:13:37,809 --> 00:13:40,245 店が ここまで大きくなったのも➡ 191 00:13:40,245 --> 00:13:43,582 誰からも 後ろ指をさされずに 真面目にやった➡ 192 00:13:43,582 --> 00:13:46,418 お父さんのおかげですよ。 お前も お父さんに倣って…。 193 00:13:46,418 --> 00:13:49,254 親父は もう死んだんです。 194 00:13:49,254 --> 00:13:52,291 これからは 私のやり方で やらせてもらいますよ。 195 00:13:52,291 --> 00:13:56,595 店賃を ただにした事だって よくよくの訳があるんだよ。 196 00:13:56,595 --> 00:13:58,530 お父さんの気持ちを➡ 197 00:13:58,530 --> 00:14:00,465 踏みつけるような事に ならないかね? 198 00:14:00,465 --> 00:14:05,270 見ていて下さい。 お父っつぁんが作った この店を➡ 199 00:14:05,270 --> 00:14:08,940 もっと大きくしてみせますから。 200 00:14:08,940 --> 00:14:10,940 松次郎! 201 00:14:14,446 --> 00:14:17,246 いてててて…。 おい…。 202 00:14:29,461 --> 00:14:32,898 ああ… あ~ 着いた。 203 00:14:32,898 --> 00:14:34,833 待ちくたびれたぜ。 204 00:14:34,833 --> 00:14:38,704 昨日 うちの若旦那を襲ったやつが いるんで 捜してんだ。 205 00:14:38,704 --> 00:14:41,239 俺たちが 返り討ちに遭わせてやったから➡ 206 00:14:41,239 --> 00:14:45,744 結構な怪我を してるはずなんだがな。 207 00:14:45,744 --> 00:14:48,080 顔は見たのか? 208 00:14:48,080 --> 00:14:51,750 あいにく 手拭いで顔を隠しててね。 209 00:14:51,750 --> 00:14:55,253 でも 背格好は ちょうど このぐらいだったな。 210 00:14:55,253 --> 00:14:59,091 へえ~。 こいつなら違うぜ。 211 00:14:59,091 --> 00:15:01,426 ほう… 何か証拠でも? 212 00:15:01,426 --> 00:15:04,329 この人は 昨日は 山岸の親戚に行った帰りに➡ 213 00:15:04,329 --> 00:15:06,598 近道しようとして崖から落ちて➡ 214 00:15:06,598 --> 00:15:09,501 養生所に担ぎ込まれたんです。 215 00:15:09,501 --> 00:15:11,937 口裏 合わせやがったな。 216 00:15:11,937 --> 00:15:15,273 そんなうそは じきに ばれるんだ。 217 00:15:15,273 --> 00:15:19,444 襲った男を返り討ちに遭わせたと 言っていたが➡ 218 00:15:19,444 --> 00:15:21,480 若旦那は何もなってないのに➡ 219 00:15:21,480 --> 00:15:25,117 相手にだけ 怪我をさせたとなると➡ 220 00:15:25,117 --> 00:15:27,152 お奉行所が黙っているかね? 221 00:15:27,152 --> 00:15:29,988 何だと おい! そいつは➡ 222 00:15:29,988 --> 00:15:32,557 若旦那を 殺すつもりだったんだぜ? 223 00:15:32,557 --> 00:15:34,857 証拠があるのか!? 224 00:15:38,363 --> 00:15:40,298 行くぞ。 どけ。 225 00:15:40,298 --> 00:15:42,267 あっ いてっ。 226 00:15:42,267 --> 00:15:46,738 とにかく 今月のうちに ここを出ていけ。 227 00:15:46,738 --> 00:15:48,738 いいな? 228 00:15:55,247 --> 00:15:58,150 これで引き下がる 相手じゃねえぜ。 229 00:15:58,150 --> 00:16:01,586 これから どうする? 230 00:16:01,586 --> 00:16:06,925 俺… ここを出ていこうかな。 えっ? 231 00:16:06,925 --> 00:16:12,264 いっそ 新しいとこでやり直すのも いいんじゃないかと思ってね。 232 00:16:12,264 --> 00:16:15,964 証文でも見つかりゃ 話は別だが。 233 00:16:18,603 --> 00:16:24,476 一人残ってる多助さんが あの様子じゃな…。 (草太)ああ。 234 00:16:24,476 --> 00:16:28,280 [ 回想 ] (多助)おくめ殺し。 235 00:16:28,280 --> 00:16:30,315 親父で思い出した。➡ 236 00:16:30,315 --> 00:16:34,719 なあ おくめ殺しって 何か分かるか? 237 00:16:34,719 --> 00:16:36,655 (草太)おくめ殺し? (角三)ああ。 親父が➡ 238 00:16:36,655 --> 00:16:38,590 それだけ思い出したんだ。➡ 239 00:16:38,590 --> 00:16:42,594 店賃と関わりがあるのかどうかは 分からない。 240 00:16:42,594 --> 00:16:45,230 (吾平 草太)えっ? 241 00:16:45,230 --> 00:16:49,401 おくめ殺しね…。 242 00:16:49,401 --> 00:16:53,238 先生に とんでもない役目を 任されてしまった…。 243 00:16:53,238 --> 00:16:56,274 頭のいい森さんなら わけないでしょう。 244 00:16:56,274 --> 00:16:58,577 何の手がかりもないのに➡ 245 00:16:58,577 --> 00:17:00,512 どうやって調べる? 246 00:17:00,512 --> 00:17:05,083 随分 昔の事だしね。 雲をつかむような話だねえ。 247 00:17:05,083 --> 00:17:07,018 (お光)分かった。 248 00:17:07,018 --> 00:17:10,255 何だい? 249 00:17:10,255 --> 00:17:14,092 昔 高田屋の先代が おくめを殺した。 250 00:17:14,092 --> 00:17:16,928 店子たちは それを見てしまった。 251 00:17:16,928 --> 00:17:21,266 その口止めに 店賃が…➡ 252 00:17:21,266 --> 00:17:23,935 ただ。 253 00:17:23,935 --> 00:17:27,772 はあ~。 三文芝居じゃあるまいし。 254 00:17:27,772 --> 00:17:31,972 そうだよね。 (笑い声) 255 00:17:42,220 --> 00:17:46,220 おくめ殺し? それしか分からないんだ。 256 00:17:48,093 --> 00:17:50,929 どうして 私に そのような事を? 257 00:17:50,929 --> 00:17:53,832 ただ 知恵を借りようと 思っただけだ。 258 00:17:53,832 --> 00:17:56,532 森さんの助けになればと思って。 259 00:17:58,403 --> 00:18:01,403 私に聞かれても 知りません。 260 00:18:04,209 --> 00:18:06,209 そうだな…。 261 00:18:12,918 --> 00:18:16,254 お寺のお坊さんに聞いてみたら どうですか? 262 00:18:16,254 --> 00:18:18,189 えっ? 263 00:18:18,189 --> 00:18:21,927 お坊さんなら そういう古い事を知ってるかも。 264 00:18:21,927 --> 00:18:24,763 そうだな…。 265 00:18:24,763 --> 00:18:26,763 ありがとう。 266 00:18:37,208 --> 00:18:40,111 (住職)おくめ殺し? はあ… ご住職なら➡ 267 00:18:40,111 --> 00:18:45,550 もしや ご存じではと。 おくめ殺しねえ…。 268 00:18:45,550 --> 00:18:48,887 う~ん。 はあ…。 269 00:18:48,887 --> 00:18:51,556 ああ あの事か。 270 00:18:51,556 --> 00:18:55,894 ご存じなんですか!? 知っているが 知らない。 271 00:18:55,894 --> 00:18:57,929 ハハハハハ。 どういう事ですか? 272 00:18:57,929 --> 00:19:02,667 知っているが 知らない。 これ いかに? 273 00:19:02,667 --> 00:19:05,236 禅問答をしに来たのでは ありません! 274 00:19:05,236 --> 00:19:09,536 ただのうわさ話だ。 うわさ? 275 00:19:13,578 --> 00:19:17,082 とある武家の娘で おくめという子が➡ 276 00:19:17,082 --> 00:19:19,918 ふいに姿を消した。 277 00:19:19,918 --> 00:19:22,754 方々 捜したが 見つからなかった。 278 00:19:22,754 --> 00:19:26,591 しばらくして 娘の骸が➡ 279 00:19:26,591 --> 00:19:30,428 屋敷の井戸から見つかったという。 280 00:19:30,428 --> 00:19:37,202 自分で飛び込んだのか 誰かに殺されたのか…。 281 00:19:37,202 --> 00:19:41,706 やがて その家は没落して 絶えた。 282 00:19:41,706 --> 00:19:43,642 その井戸が➡ 283 00:19:43,642 --> 00:19:45,577 おくめ殺しの井戸だ。 284 00:19:45,577 --> 00:19:48,480 それは 何年前の 出来事ですか? 285 00:19:48,480 --> 00:19:51,716 さあな…。 286 00:19:51,716 --> 00:19:55,887 ずっと昔の事だ。 今となっては➡ 287 00:19:55,887 --> 00:20:01,226 本当にあった事かどうかさえ 分からない。 288 00:20:01,226 --> 00:20:05,730 そんな話と長屋の店賃に 何の関わりが? 289 00:20:05,730 --> 00:20:09,067 一見 関わりのない事が➡ 290 00:20:09,067 --> 00:20:12,404 表裏一体でつながっているものだ。 291 00:20:12,404 --> 00:20:16,908 よ~く 考える事だな。 292 00:20:16,908 --> 00:20:20,412 フッフッフ… ハハハハハ! 293 00:20:20,412 --> 00:20:26,751 ♬~ 294 00:20:26,751 --> 00:20:34,951 南無阿弥陀仏…。 295 00:20:36,461 --> 00:20:39,464 …で 調べたんですが➡ 296 00:20:39,464 --> 00:20:43,935 昔 断絶した 吉岡家という家が あったのは本当のようです。 297 00:20:43,935 --> 00:20:47,439 断絶した訳について いろいろと うわさがあり➡ 298 00:20:47,439 --> 00:20:50,942 おくめ殺しというのも その うわさ話の一つだったようです。 299 00:20:50,942 --> 00:20:53,445 うん… では➡ 300 00:20:53,445 --> 00:20:57,615 おくめという娘が殺されたという 事実はないんだな? 301 00:20:57,615 --> 00:21:01,953 奉行所にも そういう記録は ありませんでした。 302 00:21:01,953 --> 00:21:06,624 その屋敷があったのは 柳坂下か…。 303 00:21:06,624 --> 00:21:09,527 はい。 304 00:21:09,527 --> 00:21:12,964 高田屋の近くだな。 305 00:21:12,964 --> 00:21:16,264 それが 高田屋と何か関わりが? 306 00:21:17,836 --> 00:21:23,141 やはり 答えは 多助から聞くしかあるまい。 307 00:21:23,141 --> 00:21:27,979 しかし… どうやって…。 308 00:21:27,979 --> 00:21:33,279 扉が開くには 鍵がいる。 309 00:21:49,100 --> 00:21:52,300 お父っつぁん 気持ちいいですか? 310 00:21:59,444 --> 00:22:01,944 お水 換えてきますね。 311 00:22:04,783 --> 00:22:08,953 角三は 父の見舞いに 来ないようだな。 312 00:22:08,953 --> 00:22:14,759 ええ。 たった一人の 父と息子なのに…。 313 00:22:14,759 --> 00:22:16,959 何かあったのか? 314 00:22:20,298 --> 00:22:24,169 お父っつぁんは 大工をしていたんです。➡ 315 00:22:24,169 --> 00:22:29,641 大がかりな普請で 家を長く留守にする事が多くて➡ 316 00:22:29,641 --> 00:22:36,414 うちの人は 子どもの頃は 随分と さみしい思いをしたようです。 317 00:22:36,414 --> 00:22:39,317 お父っつぁんが 大工を継げと言った時も➡ 318 00:22:39,317 --> 00:22:43,188 頑として受け付けず➡ 319 00:22:43,188 --> 00:22:48,188 そのころから すっかり 折り合いが悪くなったようです。 320 00:22:51,429 --> 00:22:56,267 自分の店を持てば 仕事で遠くに行く事もない。 321 00:22:56,267 --> 00:23:01,105 子どもができても そばにいてやれる。 322 00:23:01,105 --> 00:23:05,276 あの人 そう言ってました。 323 00:23:05,276 --> 00:23:07,612 でも 本当は➡ 324 00:23:07,612 --> 00:23:10,114 お父っつぁんに 自分の気持ちを➡ 325 00:23:10,114 --> 00:23:13,314 分かってほしかったのかも しれません。 326 00:23:14,986 --> 00:23:17,622 そうか。 327 00:23:17,622 --> 00:23:24,622 でも やっと手に入れた店も もうすぐ…。 328 00:23:34,405 --> 00:23:40,211 乗りかかった船だ。 この事は私がやる。 329 00:23:40,211 --> 00:23:45,750 この男を見ると どうも 自分の父親を思い出していけない。 330 00:23:45,750 --> 00:23:48,253 お父上の事を? 331 00:23:48,253 --> 00:23:50,755 3年前に死んだ。 332 00:23:50,755 --> 00:23:53,091 私は嫡男だったから➡ 333 00:23:53,091 --> 00:23:55,593 医者になるなど とんでもないと言われて➡ 334 00:23:55,593 --> 00:23:58,429 けんか別れしたままだった。 335 00:23:58,429 --> 00:24:01,266 私が医者になったのを 認める気持ちになっていたと➡ 336 00:24:01,266 --> 00:24:05,966 母から聞いたのは 父が死んだあとだった。 337 00:24:07,605 --> 00:24:09,605 そうか…。 338 00:24:12,777 --> 00:24:15,613 おくめ殺しの事を調べてる。 339 00:24:15,613 --> 00:24:18,283 井戸の話までは分かったんだ。 340 00:24:18,283 --> 00:24:20,583 そこからが分からない。 341 00:24:25,623 --> 00:24:30,962 はあ… やはり無理か。 342 00:24:30,962 --> 00:24:35,233 んっ んん んん…。 343 00:24:35,233 --> 00:24:37,933 どうした? 苦しいのか? 344 00:24:43,107 --> 00:24:46,244 仏壇。 345 00:24:46,244 --> 00:24:48,244 えっ? 346 00:24:51,082 --> 00:24:53,418 (戸が開く音) 347 00:24:53,418 --> 00:24:56,087 おう…。➡ 348 00:24:56,087 --> 00:25:02,260 んっ… おい どうしたんだよ? 349 00:25:02,260 --> 00:25:04,595 (角三のせきこみ) んん…。 350 00:25:04,595 --> 00:25:07,632 どうしたんだって聞いてんだよ。 351 00:25:07,632 --> 00:25:25,616 ♬~ 352 00:25:25,616 --> 00:25:28,953 ああ? あっ あんた…。 353 00:25:28,953 --> 00:25:32,653 あっ… おい…。 354 00:25:35,560 --> 00:25:37,495 これ…。 355 00:25:37,495 --> 00:25:39,495 もう そこです。 356 00:25:41,366 --> 00:25:44,268 連れてきた! あっ すいません➡ 357 00:25:44,268 --> 00:25:47,171 ご足労おかけして。 仏壇から 何か見つかったのか? 358 00:25:47,171 --> 00:25:50,108 はい。 実は 証文と一緒に➡ 359 00:25:50,108 --> 00:25:53,945 親父が当時の事を書いた書付けが 出てきたんです。 360 00:25:53,945 --> 00:25:56,247 じゃあ 店賃がただになった訳も? 361 00:25:56,247 --> 00:25:58,583 書いてありました。 そうか。 362 00:25:58,583 --> 00:26:01,252 それで…➡ 363 00:26:01,252 --> 00:26:04,756 この事を松次郎に話したいんで➡ 364 00:26:04,756 --> 00:26:09,093 先生には 立会人になって頂きたいんです。 365 00:26:09,093 --> 00:26:11,129 保本先生は? 366 00:26:11,129 --> 00:26:14,599 私じゃ不満か? いえ そんな事は。 367 00:26:14,599 --> 00:26:16,534 それで どういう訳だったんだ? 368 00:26:16,534 --> 00:26:20,772 それは…➡ 369 00:26:20,772 --> 00:26:22,707 まだ言えません。 370 00:26:22,707 --> 00:26:24,942 何!? (角三)先生には➡ 371 00:26:24,942 --> 00:26:27,845 これから あっしらがやろうとする事を➡ 372 00:26:27,845 --> 00:26:30,114 黙って見てて頂きたいんです。 373 00:26:30,114 --> 00:26:32,050 何をする? それも言えません。 374 00:26:32,050 --> 00:26:34,719 何だ それは。 それを話すと➡ 375 00:26:34,719 --> 00:26:36,754 先生は きっと やめろと おっしゃるでしょう。 376 00:26:36,754 --> 00:26:39,891 だったら呼ぶな。 私が言ったんですよ。 377 00:26:39,891 --> 00:26:43,728 養生所の先生を お呼びしたらって。 378 00:26:43,728 --> 00:26:47,065 やめろと言っても この人たちは やります。 379 00:26:47,065 --> 00:26:50,101 せめて 先生に見て頂いたらって。 380 00:26:50,101 --> 00:26:52,403 まさか 松次郎を…。 (角三)いえ➡ 381 00:26:52,403 --> 00:26:56,240 もう殺そうなんてしません。 382 00:26:56,240 --> 00:27:00,111 しかし…。 383 00:27:00,111 --> 00:27:04,811 おう… おそろいだな。 384 00:27:06,751 --> 00:27:09,087 何だよ? 話って。 385 00:27:09,087 --> 00:27:14,258 実は 店賃をただにするという 証拠が出てきたんだ。 386 00:27:14,258 --> 00:27:16,928 ほう… どこだ? 387 00:27:16,928 --> 00:27:18,863 ここにはねえ。 じゃあ持ってこい。 388 00:27:18,863 --> 00:27:22,800 あ~ ところが ちょいとばかし 大きいもんだから➡ 389 00:27:22,800 --> 00:27:24,802 この部屋に入らねえんだ。 390 00:27:24,802 --> 00:27:26,938 からかうのも大概にしろ! 391 00:27:26,938 --> 00:27:31,109 本当なんだ。 なあ➡ 392 00:27:31,109 --> 00:27:34,545 そう遠くはねえ ちょっと つきあってくれねえか? 393 00:27:34,545 --> 00:27:37,882 どこだ? 連れていくから➡ 394 00:27:37,882 --> 00:27:39,817 あんた一人で来てくれ。 395 00:27:39,817 --> 00:27:42,220 はあ? 何だと!? 396 00:27:42,220 --> 00:27:44,555 何で 若旦那一人じゃなきゃ いけねえんだ!? 397 00:27:44,555 --> 00:27:47,058 亡くなった先代の旦那は➡ 398 00:27:47,058 --> 00:27:51,929 店賃をただにした理由を ほかに知られたくなかったんだ。 399 00:27:51,929 --> 00:27:54,732 だから 今回の事は➡ 400 00:27:54,732 --> 00:27:58,603 俺たちと若旦那の間だけの事に してもらいたいんだ。 401 00:27:58,603 --> 00:28:03,074 フッ ハッハッ… あ~あ。 402 00:28:03,074 --> 00:28:05,009 だまそうってんじゃ ねえだろうな? 403 00:28:05,009 --> 00:28:09,809 養生所の先生もいる。 信用してくれ。 404 00:28:12,783 --> 00:28:14,783 そういう事だ。 405 00:28:17,255 --> 00:28:19,255 分かった。 406 00:28:22,927 --> 00:28:26,797 おい どこに連れていくんだ? 407 00:28:26,797 --> 00:28:36,874 ♬~ 408 00:28:36,874 --> 00:28:40,545 (松次郎)どこまで行くんだ? 409 00:28:40,545 --> 00:28:42,845 おい ちょっと…。 410 00:28:46,884 --> 00:28:50,388 こっちだよな? 411 00:28:50,388 --> 00:28:52,323 あ~ この辺だな。 412 00:28:52,323 --> 00:28:56,823 (吾平)うん? あっ そうだな。 あ~ 確かに この辺だ。 413 00:29:01,098 --> 00:29:04,402 若旦那 ちょっと 下がってくれませんか? 414 00:29:04,402 --> 00:29:08,739 どうして? いや その方が見やすいからな。 415 00:29:08,739 --> 00:29:11,409 ああ? 416 00:29:11,409 --> 00:29:13,344 あれだな。 417 00:29:13,344 --> 00:29:16,280 もうちょっと後ろだな。 う~ん。 なっ? 418 00:29:16,280 --> 00:29:18,749 ほら。 あっ あっ あっ…。 419 00:29:18,749 --> 00:29:20,949 はあ…。 420 00:29:26,624 --> 00:29:29,460 うわわ… あっ! 421 00:29:29,460 --> 00:29:31,862 あっ…。 422 00:29:31,862 --> 00:29:33,798 これは井戸か? (松次郎)いたたた…。➡ 423 00:29:33,798 --> 00:29:37,201 ああ… いて…。➡ 424 00:29:37,201 --> 00:29:42,073 うう… いてえ~。 425 00:29:42,073 --> 00:29:47,845 ん~! チックショウ。 426 00:29:47,845 --> 00:29:50,381 だましたな! 出せ! 427 00:29:50,381 --> 00:29:54,218 だましちゃいねえよ。 これが あんたの親父さんが➡ 428 00:29:54,218 --> 00:29:57,054 店賃をただにした理由だ。 429 00:29:57,054 --> 00:29:59,890 ああ? 430 00:29:59,890 --> 00:30:02,560 どういう事だ? 431 00:30:02,560 --> 00:30:05,896 これが おくめ殺しの井戸なんです。 432 00:30:05,896 --> 00:30:07,932 えっ? 433 00:30:07,932 --> 00:30:10,401 (角三)思い出したか? 434 00:30:10,401 --> 00:30:13,304 何の話だ? 早く出せ! 435 00:30:13,304 --> 00:30:17,804 思い出さねえんだったら 教えてやるよ。 436 00:30:21,579 --> 00:30:25,249 走れ 走れ! 437 00:30:25,249 --> 00:30:29,587 (角三)あんたは両親にとっちゃ 跡取りの一人息子だ。 438 00:30:29,587 --> 00:30:32,256 (与七)ハハハハ… よしよし。 439 00:30:32,256 --> 00:30:34,191 フフッ。 松次郎 もっと行くか? 440 00:30:34,191 --> 00:30:37,762 (角三)そりゃあ大事に育てられた。 441 00:30:37,762 --> 00:30:41,432 松次郎? (角三)ところが ある日➡ 442 00:30:41,432 --> 00:30:45,269 あんたの姿が 急に見えなくなった。 443 00:30:45,269 --> 00:30:47,605 お前さん…。 444 00:30:47,605 --> 00:30:50,441 そんな事 覚えてねえよ。 445 00:30:50,441 --> 00:30:55,112 あんたの親御さんは 血相を変えて あんたを捜し回った。 446 00:30:55,112 --> 00:30:59,984 松次郎? 松次郎? 447 00:30:59,984 --> 00:31:01,986 お前さん 松次郎は? 448 00:31:01,986 --> 00:31:05,122 あっ…。 449 00:31:05,122 --> 00:31:07,058 松次郎…。 450 00:31:07,058 --> 00:31:09,794 頼む。 うちの子を捜すのを 手伝ってくれ。 451 00:31:09,794 --> 00:31:12,830 もちろんですとも。 おい 人を集めろ。 452 00:31:12,830 --> 00:31:16,133 (角三)うちの長屋の者たちも 捜すのを手伝った。➡ 453 00:31:16,133 --> 00:31:20,471 世話になってる大家さんの 一大事だ。 当然の事さ。 454 00:31:20,471 --> 00:31:23,374 坊ちゃん! 坊ちゃん! おいでになりませんか? 455 00:31:23,374 --> 00:31:26,277 松次郎坊ちゃん! 坊ちゃん! 456 00:31:26,277 --> 00:31:28,979 松次郎坊ちゃん? 坊ちゃん? 457 00:31:28,979 --> 00:31:31,015 これくらいの男の子なんだが 見かけなかったかい? 458 00:31:31,015 --> 00:31:32,950 これぐらいの子ども 見かけなかったかい? 459 00:31:32,950 --> 00:31:35,086 知らねえよ。 ああ…。 460 00:31:35,086 --> 00:31:38,956 坊ちゃん! 松次郎坊ちゃん! 松次郎! 松次郎坊ちゃん! 461 00:31:38,956 --> 00:31:41,959 松次郎坊ちゃん! 坊ちゃん! 462 00:31:41,959 --> 00:31:44,095 松次郎坊ちゃん! 463 00:31:44,095 --> 00:31:47,431 (角三)大勢の人を使って 三日三晩 捜し回った。 464 00:31:47,431 --> 00:31:49,631 松次郎! 465 00:31:53,604 --> 00:31:57,904 (角三)しかし あんたは見つかんなかった。 466 00:32:07,118 --> 00:32:11,989 どうしちまったのかねえ? まるで神隠しだ。 467 00:32:11,989 --> 00:32:14,792 う~ん。 どうしたの? 468 00:32:14,792 --> 00:32:20,297 念のためだ もう一回りしてくるか。 469 00:32:20,297 --> 00:32:22,597 そうだね。 うん。 470 00:32:25,169 --> 00:32:27,171 坊ちゃん! 松次郎坊ちゃん! 471 00:32:27,171 --> 00:32:30,641 おいでになりませんか? 坊ちゃん! 坊ちゃん? 472 00:32:30,641 --> 00:32:34,512 坊ちゃん! 坊ちゃん! 松次郎坊ちゃん! 473 00:32:34,512 --> 00:32:38,916 坊ちゃん? 坊ちゃん? 474 00:32:38,916 --> 00:32:43,916 あ~あ… 駄目か…。 475 00:32:45,790 --> 00:32:49,627 ≪(泣き声) 476 00:32:49,627 --> 00:32:55,766 あんた… 聞こえないかい? 477 00:32:55,766 --> 00:32:57,802 ≪(泣き声) (2人)あっ! 478 00:32:57,802 --> 00:32:59,937 お~ 聞こえる! おっ 聞こえるぞ! 479 00:32:59,937 --> 00:33:02,840 あっ こっちだ! 坊ちゃん! 坊ちゃん? 480 00:33:02,840 --> 00:33:05,810 坊ちゃんですかい? 坊ちゃん どこですか? 481 00:33:05,810 --> 00:33:08,112 坊ちゃん! 坊ちゃん! 482 00:33:08,112 --> 00:33:10,614 (泣き声) 483 00:33:10,614 --> 00:33:13,117 あっ! あんなとこに穴が! 484 00:33:13,117 --> 00:33:15,953 おお… あっ! (泣き声) 485 00:33:15,953 --> 00:33:18,456 あっ いた! 坊ちゃん! 486 00:33:18,456 --> 00:33:20,391 坊ちゃん! 大丈夫ですか!?➡ 487 00:33:20,391 --> 00:33:22,326 今 助けますからね。 おい… おい 人 呼んでこい。 488 00:33:22,326 --> 00:33:24,628 あっ はい! 坊ちゃん➡ 489 00:33:24,628 --> 00:33:28,499 もうちょっとの辛抱ですよ。 今 引き上げますからね。➡ 490 00:33:28,499 --> 00:33:31,235 坊ちゃん! 491 00:33:31,235 --> 00:33:37,107 (角三)こうして あんたは助かったそうだ。 492 00:33:37,107 --> 00:33:41,807 その夫婦が 俺の親父とおふくろだ。 493 00:33:45,082 --> 00:33:47,082 えっ? 494 00:33:49,587 --> 00:33:52,256 あの時 俺の親父たちが➡ 495 00:33:52,256 --> 00:33:55,092 もういっぺん 捜そうって 思わなかったら➡ 496 00:33:55,092 --> 00:33:57,292 あんた 死んでた。 497 00:33:59,763 --> 00:34:01,799 [ 回想 ] 旦那様! 旦那様 坊ちゃんが…➡ 498 00:34:01,799 --> 00:34:05,102 坊ちゃんが見つかりました! いました! いました いました! 499 00:34:05,102 --> 00:34:07,438 坊ちゃん…。 あっ 松次郎! 500 00:34:07,438 --> 00:34:10,107 松次郎! 松次郎! ハハハハハ! 501 00:34:10,107 --> 00:34:13,143 松次郎… 松次郎…。 502 00:34:13,143 --> 00:34:17,448 (泣き声) 503 00:34:17,448 --> 00:34:23,248 ご無事で何よりだ。 よかった…。 よかった…。 504 00:34:26,123 --> 00:34:30,995 本当に あんたたちのおかげで…。 505 00:34:30,995 --> 00:34:34,398 あっ いえいえ… そんな もう…。 506 00:34:34,398 --> 00:34:39,198 これは ほんのお礼のしるしだ。 えっ? 507 00:34:46,577 --> 00:34:50,080 みんなの店賃を ただにするっていう証文だ。 508 00:34:50,080 --> 00:34:52,016 えっ… えっ? 509 00:34:52,016 --> 00:34:55,886 (与七)助かった松次郎の代までだ。 510 00:34:55,886 --> 00:35:00,724 それは ありがたいこって! 511 00:35:00,724 --> 00:35:05,629 しかし 一つ頼みがある。 512 00:35:05,629 --> 00:35:07,631 何でござんしょう? 513 00:35:07,631 --> 00:35:10,935 松次郎には➡ 514 00:35:10,935 --> 00:35:16,235 あの子が大きくなっても この事は黙っていてほしい。 515 00:35:18,676 --> 00:35:21,445 あの子は まだ4つだ。 516 00:35:21,445 --> 00:35:24,949 井戸に落ちた事は忘れるだろう。 517 00:35:24,949 --> 00:35:27,851 こんな恐ろしい目に遭った事は➡ 518 00:35:27,851 --> 00:35:31,121 思い出させたくないんだ。 519 00:35:31,121 --> 00:35:35,960 この約束の事は 女房にも ないしょにするつもりだ。 520 00:35:35,960 --> 00:35:38,729 分かりやした。 そういう事なら➡ 521 00:35:38,729 --> 00:35:44,234 坊ちゃんには 金輪際 ないしょに致しましょう。 522 00:35:44,234 --> 00:35:47,137 ありがとう! ありがとうよ! 523 00:35:47,137 --> 00:35:49,740 けど 坊ちゃんが大きくなって➡ 524 00:35:49,740 --> 00:35:54,411 店賃が ただになってる事を 不思議に思ったら どうするの? 525 00:35:54,411 --> 00:36:00,217 えっ? …その時は その時だ。 526 00:36:00,217 --> 00:36:04,088 俺らの子どもたちが なんとか うまくやるさ。 527 00:36:04,088 --> 00:36:06,590 そうね! なっ? 528 00:36:06,590 --> 00:36:08,525 そうだな。 529 00:36:08,525 --> 00:36:19,937 ♬~ 530 00:36:19,937 --> 00:36:24,108 (角三)店賃が ただになった理由が 分かんなかったのは➡ 531 00:36:24,108 --> 00:36:28,445 あんたの親父さんの計らいが あったからなんだ。 532 00:36:28,445 --> 00:36:30,945 お父っつぁんが…。 533 00:36:37,254 --> 00:36:41,392 バカだぜ まったく。 534 00:36:41,392 --> 00:36:47,197 俺が 嫌な事を 思い出さないようにだと? 535 00:36:47,197 --> 00:36:52,102 この松次郎を… 見くびりやがって! 536 00:36:52,102 --> 00:36:56,740 親心が分かんねえのか! 537 00:36:56,740 --> 00:37:03,414 お父っつぁん… バカ…。 538 00:37:03,414 --> 00:37:05,914 死んじまいやがって…。 539 00:37:10,087 --> 00:37:12,887 俺の方が もっとバカだ…。 540 00:37:15,259 --> 00:37:18,595 お父っつぁんが あんまり立派だから➡ 541 00:37:18,595 --> 00:37:22,266 負けたくなかった…。 542 00:37:22,266 --> 00:37:28,266 与七さんの倅って言われて 生きていきたくなかったんだ! 543 00:37:33,210 --> 00:37:37,715 お… お父っつぁん…。 544 00:37:37,715 --> 00:37:40,215 死んじまいやがって…。 545 00:37:42,386 --> 00:37:47,224 恩返しさせずに死にやがって…。 546 00:37:47,224 --> 00:37:52,096 (松次郎の泣き声) 547 00:37:52,096 --> 00:37:54,565 恩返し…。 548 00:37:54,565 --> 00:38:14,418 ♬~ 549 00:38:14,418 --> 00:38:17,321 それで 松次郎は どうした? 550 00:38:17,321 --> 00:38:21,191 はい。 それから 長屋に戻りまして➡ 551 00:38:21,191 --> 00:38:23,127 立ち退きの話は取り消し➡ 552 00:38:23,127 --> 00:38:27,127 そして 今後も店賃はただにする という証文を書きました。 553 00:38:34,204 --> 00:38:38,542 うん。 一件落着か。 554 00:38:38,542 --> 00:38:41,211 ≪(お常)先生。 555 00:38:41,211 --> 00:38:43,881 角三さんと おたねさんが お父さん引き取りたいって➡ 556 00:38:43,881 --> 00:38:46,383 言ってきてんですけど。 557 00:38:46,383 --> 00:38:51,221 まあ… 家で安静にしてればいいだろう。 558 00:38:51,221 --> 00:38:53,721 言うとおりにしてやれ。 (お常)はい。 559 00:38:55,893 --> 00:38:57,893 (角三)親父。 560 00:39:01,398 --> 00:39:03,398 うち帰ろう。 561 00:39:12,409 --> 00:39:15,312 (角三)すまなかった。 562 00:39:15,312 --> 00:39:18,282 ガキの頃➡ 563 00:39:18,282 --> 00:39:21,582 親父が 仕事で いつも いなくて さみしかった。 564 00:39:25,589 --> 00:39:29,289 おふくろが死んだ時も 親父は 仕事で いなかったよな。 565 00:39:33,397 --> 00:39:39,697 あのころから 俺は 親父の顔を ちゃんと見なくなっちまった。 566 00:39:45,542 --> 00:39:50,380 でもよ➡ 567 00:39:50,380 --> 00:39:55,719 俺が こうやって 大きくなったのは➡ 568 00:39:55,719 --> 00:40:01,058 親父が 自分の楽しみなんか これっぽっちも気にしないで➡ 569 00:40:01,058 --> 00:40:04,558 必死に 働いてくれてたからなんだよな。 570 00:40:11,768 --> 00:40:15,405 俺の店が大きくなったらよ➡ 571 00:40:15,405 --> 00:40:18,405 親父には楽させてやるから。 572 00:40:21,578 --> 00:40:24,278 その気持ちに うそはねえ。 573 00:40:30,087 --> 00:40:34,424 親父が生きててよかったよ。 574 00:40:34,424 --> 00:40:37,424 これから いくらでも恩返しできるからな。 575 00:40:47,137 --> 00:40:53,277 さしてくれよな… 恩返し。 576 00:40:53,277 --> 00:41:25,976 ♬~ 577 00:41:25,976 --> 00:41:29,976 <森さんの そんな顔を見たのは 初めてだった> 578 00:41:37,254 --> 00:41:39,189 ごめんよ。 (角三)いらっしゃい! 579 00:41:39,189 --> 00:41:42,125 わ~ いらっしゃい! 580 00:41:42,125 --> 00:41:45,128 はい 上がったよ。 はいよ! よいしょ。 581 00:41:45,128 --> 00:41:48,265 は~い お待たせしました。 ありがと。 582 00:41:48,265 --> 00:41:50,200 おっ 何でえ そっちも うまそうじゃねえか。 583 00:41:50,200 --> 00:41:54,771 おい ふざけんなよ! 584 00:41:54,771 --> 00:41:57,808 親父… はい。 585 00:41:57,808 --> 00:41:59,808 お茶な。 586 00:42:01,545 --> 00:42:03,947 いい天気だな。 587 00:42:03,947 --> 00:42:06,283 今日も 吾平と草太が来てくれてな。 588 00:42:06,283 --> 00:42:08,283 ありがてえな。 589 00:42:11,955 --> 00:42:15,292 はい? はいよ。 590 00:42:15,292 --> 00:42:24,301 ♬~ 591 00:42:24,301 --> 00:42:26,236 今回の事は➡ 592 00:42:26,236 --> 00:42:28,805 お杉が お寺の住職に聞いたらと 言ってくれたのが➡ 593 00:42:28,805 --> 00:42:33,643 きっかけだった。 礼を言うよ。 594 00:42:33,643 --> 00:42:36,913 私は別に。 595 00:42:36,913 --> 00:42:41,418 お礼を言うなら 森先生でしょう。 うん? 596 00:42:41,418 --> 00:42:45,088 そうだな。 物事は表裏一体。 597 00:42:45,088 --> 00:42:48,425 いろんな方向から見なくては 分からない。 598 00:42:48,425 --> 00:42:52,425 えっ? いや 何でもない。