1 00:00:33,903 --> 00:00:43,312 (雨音と雷鳴) 2 00:00:43,312 --> 00:00:45,815 (お杉) このところ よく降りますね。 3 00:00:45,815 --> 00:00:48,717 (お常)まあ でも その前に 分かるからいいけどね。 4 00:00:48,717 --> 00:00:50,686 (お杉)えっ どうして 分かるんですか? 5 00:00:50,686 --> 00:00:55,524 (お雪)雨が近づくと 竹造さんが 井戸で 顔 洗うんですよ。 6 00:00:55,524 --> 00:00:58,327 (お常)アハハハハ! (お杉)何か 猫みたいですね。 7 00:00:58,327 --> 00:01:00,262 (お雪)そんな かわいいもんじゃ ないですよ。 8 00:01:00,262 --> 00:01:02,498 どっちかっていうと イノシシだよね。 (笑い声) 9 00:01:02,498 --> 00:01:06,669 (雷鳴と悲鳴) 10 00:01:06,669 --> 00:01:08,604 (保本)水をくれ。 11 00:01:08,604 --> 00:01:13,008 (お常)はあ…。 アハハハハ… あら。 アハハハ! 12 00:01:13,008 --> 00:01:15,911 お似合いですよ。 アハハハハ! 13 00:01:15,911 --> 00:01:18,347 何が おかしい? 14 00:01:18,347 --> 00:01:22,218 この子はね 保本先生が お仕着せ 着たのが うれしいんですよ。 15 00:01:22,218 --> 00:01:25,221 えっ… どうして? 16 00:01:25,221 --> 00:01:28,023 (お雪) 嫌だ。 勘違いしないで下さいよ。➡ 17 00:01:28,023 --> 00:01:30,926 お常さんと 賭けをしてただけなんです。 18 00:01:30,926 --> 00:01:33,629 賭け? 保本先生が➡ 19 00:01:33,629 --> 00:01:36,465 お仕着せを着るかどうか… アハハハハ! 20 00:01:36,465 --> 00:01:41,637 私と お光さんは 着る方に 賭けてたんです! アハハハハハ! 21 00:01:41,637 --> 00:01:45,507 そんな事で賭けをするな! (雷鳴) 22 00:01:45,507 --> 00:01:48,207 (お常とお雪の笑い声) 23 00:01:52,982 --> 00:01:56,982 (去定)佐八… 佐八 上がるぞ。 24 00:02:00,322 --> 00:02:03,359 チッ… またか。 25 00:02:03,359 --> 00:02:05,995 どういう患者ですか? 労咳だ。 26 00:02:05,995 --> 00:02:08,898 安静にしてろと言ったのに。 27 00:02:08,898 --> 00:02:11,898 (竹造)先生。 うん? 28 00:02:19,008 --> 00:02:21,677 (せきこみ) 29 00:02:21,677 --> 00:02:23,612 おい 大丈夫かい? 30 00:02:23,612 --> 00:02:27,349 おい 佐八 無理するな 無理を。 31 00:02:27,349 --> 00:02:29,285 平気だ。 32 00:02:29,285 --> 00:02:32,621 (せきこみ) あっ…。 33 00:02:32,621 --> 00:02:34,957 あっ すいやせん…。 あっ 先生…。 34 00:02:34,957 --> 00:02:37,860 (梅造)すいやせん あっしが頼んだんでさあ。 35 00:02:37,860 --> 00:02:41,297 (治兵衛) やめろって言ってたんですがね。 36 00:02:41,297 --> 00:02:43,232 (せきこみ) 37 00:02:43,232 --> 00:02:46,635 死にたいやつを診ても しかたない。 38 00:02:46,635 --> 00:02:48,570 任せる。 39 00:02:48,570 --> 00:02:51,507 先生…。 えっ? 40 00:02:51,507 --> 00:02:55,807 先生 ああ…。 おい 先生…。 41 00:02:57,646 --> 00:03:02,318 人のために役に立ちたいなら まず 自分の病気を治すんだ。 42 00:03:02,318 --> 00:03:05,654 へい…。 困ってる人を見ると➡ 43 00:03:05,654 --> 00:03:07,990 ほっとけない性分なんだね。 44 00:03:07,990 --> 00:03:14,863 ここの住人は みんな お前に 一度や二度は助けてもらってる。➡ 45 00:03:14,863 --> 00:03:19,001 恩を感じてるよ。 恩なんて…。 46 00:03:19,001 --> 00:03:21,904 俺は ただの人でなしだ。 47 00:03:21,904 --> 00:03:29,178 (せきこみ) 48 00:03:29,178 --> 00:03:31,213 ありがとうございました。 ≪どうなってんだよ。 49 00:03:31,213 --> 00:03:33,615 ≪どうなってんだ? 何が見えるんだよ。 50 00:03:33,615 --> 00:03:38,954 (騒ぐ声) 51 00:03:38,954 --> 00:03:42,291 何があった? 52 00:03:42,291 --> 00:03:46,962 そこの神社の裏手の… 土崩れがあって➡ 53 00:03:46,962 --> 00:03:50,833 土の中から こう 骸骨が 出てきちゃったんですわ。 54 00:03:50,833 --> 00:03:53,836 ≪役人が来るまで 動かさないように言っておけ。 55 00:03:53,836 --> 00:03:56,005 どうしたんだ?➡ 56 00:03:56,005 --> 00:03:58,307 ちょ… ちょっと…! ちょっと ちょっと お待ち! 57 00:03:58,307 --> 00:04:01,977 駄目だよ。 ねっ? 佐八さん 駄目だよ。 ねっ? 58 00:04:01,977 --> 00:04:05,481 寝てなきゃ… 佐八さん。 ああっ! 59 00:04:05,481 --> 00:04:09,985 先生! 佐八さんが…。 60 00:04:09,985 --> 00:04:20,329 ♬~ 61 00:04:20,329 --> 00:04:23,665 (佐八)あそこに…➡ 62 00:04:23,665 --> 00:04:27,002 あそこに いさせてくれ…。 63 00:04:27,002 --> 00:04:28,937 (せきこみ) 64 00:04:28,937 --> 00:04:32,274 おなか… おなか…。 65 00:04:32,274 --> 00:04:35,177 佐八のやつ おなかを呼んでる。 66 00:04:35,177 --> 00:04:37,780 (松吉)ああ…。 こいつも➡ 67 00:04:37,780 --> 00:04:40,816 おなかさえ生きていたらな。 68 00:04:40,816 --> 00:04:42,951 おなかとは誰だ? 69 00:04:42,951 --> 00:04:45,854 (梅造)佐八の 死んだ女房でさあ。 70 00:04:45,854 --> 00:04:50,626 あっしは 佐八とは 古くからの仕事仲間なもんで➡ 71 00:04:50,626 --> 00:04:53,462 よ~く知ってまさあ。 72 00:04:53,462 --> 00:04:56,799 佐八のやつが おなかを見初めて➡ 73 00:04:56,799 --> 00:05:01,303 そりゃ もう 熱心に口説きましてね。 74 00:05:01,303 --> 00:05:05,174 (おなか)駄目なの。 (佐八)どうして? 75 00:05:05,174 --> 00:05:10,312 どうしてって…。 訳は… 言えないの。 76 00:05:10,312 --> 00:05:15,184 訳を聞かねえんじゃ 俺だって引き下がれねえよ。 77 00:05:15,184 --> 00:05:18,987 (笑い声) 何 聞いてやがる! 78 00:05:18,987 --> 00:05:20,923 ♬~(佐八の鼻歌) 79 00:05:20,923 --> 00:05:23,659 おい ちょいと ごめんよ。 80 00:05:23,659 --> 00:05:27,996 おい どうした? 機嫌がいいじゃねえか。 81 00:05:27,996 --> 00:05:33,802 ヘヘッ…。 おなかが ゆうべ 言ってくれたんだ。 ああ。 82 00:05:33,802 --> 00:05:36,605 俺と 一緒になってもいいって。 ヘヘヘ。 83 00:05:36,605 --> 00:05:38,941 おいおいおい! 本当か おい! 84 00:05:38,941 --> 00:05:41,844 そいつは めでてえ! 帰りに一杯やるか! 85 00:05:41,844 --> 00:05:45,714 おう! いよっ 色男! アハハハ! 86 00:05:45,714 --> 00:05:52,914 (松吉)2人は 見ていて 羨ましくなるほど 仲がよかった。 87 00:05:54,490 --> 00:05:58,293 それが…➡ 88 00:05:58,293 --> 00:06:02,965 10年前の大火事で…。 89 00:06:02,965 --> 00:06:05,868 おなか! 90 00:06:05,868 --> 00:06:11,974 おなか! おい おなか~! 91 00:06:11,974 --> 00:06:15,010 (梅造)ああ… 考えてみりゃ➡ 92 00:06:15,010 --> 00:06:20,482 あいつが あんな 仏様みてえな男になったのは➡ 93 00:06:20,482 --> 00:06:23,519 おなかを失ってからだ。 (治兵衛)ああ。➡ 94 00:06:23,519 --> 00:06:29,019 それが おなかへの 供養だったのかねえ…。 95 00:06:39,268 --> 00:06:42,604 先生 佐八が…。 聞いた。 96 00:06:42,604 --> 00:06:47,904 あの男は お前と森に任せる。 97 00:06:58,153 --> 00:07:00,622 (お常)保本先生。 98 00:07:00,622 --> 00:07:04,293 また あの人 来てますよ。 99 00:07:04,293 --> 00:07:06,993 フフッ…。 えっ? 100 00:07:09,798 --> 00:07:13,302 先日は…➡ 101 00:07:13,302 --> 00:07:18,473 ぶしつけな事を言って 申し訳ありませんでした。 102 00:07:18,473 --> 00:07:21,173 いえ…。 103 00:07:25,247 --> 00:07:33,589 ちぐささんは… その後 どうしてらっしゃいますか? 104 00:07:33,589 --> 00:07:35,924 はい…。 105 00:07:35,924 --> 00:07:43,599 既に嫁ぎまして そのあとは 私も会っておりません。 106 00:07:43,599 --> 00:07:47,936 その方と 夫婦になられた訳ですね? 107 00:07:47,936 --> 00:07:50,272 (まさを)はい。 108 00:07:50,272 --> 00:07:52,774 …それは よかった。 109 00:07:52,774 --> 00:07:56,612 姉を許して下さるんですか? 110 00:07:56,612 --> 00:08:02,117 最初は ちぐささんの事を 恨みに思いました。 111 00:08:02,117 --> 00:08:06,989 ど… どうして たった3年 待ってくれなかったのかと。 112 00:08:06,989 --> 00:08:10,792 しかし あれから いろいろと考えまして➡ 113 00:08:10,792 --> 00:08:15,297 今は もう済んだ事だと 思うようになりました。 114 00:08:15,297 --> 00:08:19,968 それをお聞きして ほっと致しました。 115 00:08:19,968 --> 00:08:21,903 実は…➡ 116 00:08:21,903 --> 00:08:26,308 姉は みごもっているそうです。 117 00:08:26,308 --> 00:08:29,978 いっ… あっつ…! 118 00:08:29,978 --> 00:08:32,978 (まさを)大丈夫ですか? そうなんですか…。 119 00:08:35,784 --> 00:08:41,256 夫婦となれば 子どもも出来るでしょう。 120 00:08:41,256 --> 00:08:44,092 よかったじゃないですか。 121 00:08:44,092 --> 00:08:47,929 天野先生も お孫さんが出来て お喜びでしょう。 ハハハ。 122 00:08:47,929 --> 00:08:52,601 ところが 父は あなたに 顔向けできないと申しまして➡ 123 00:08:52,601 --> 00:08:56,104 姉の勘当を解くつもりはないと。➡ 124 00:08:56,104 --> 00:08:59,941 それで あの… お願いが。 125 00:08:59,941 --> 00:09:01,877 何でしょう? 126 00:09:01,877 --> 00:09:05,614 なんとか 保本さんから➡ 127 00:09:05,614 --> 00:09:08,614 父をとりなして 頂けませんでしょうか? 128 00:09:11,286 --> 00:09:13,221 えっ…。 129 00:09:13,221 --> 00:09:15,957 (お常)そんで そんで そんで 保本先生 何つってたんだい? 130 00:09:15,957 --> 00:09:21,630 しばらく 黙ったあげくに 「少し考えさせて下さい」だって。 131 00:09:21,630 --> 00:09:23,965 何だい もう! 男らしくないねえ。 132 00:09:23,965 --> 00:09:27,302 (津川)その気持ちは分かるね。 えっ? 133 00:09:27,302 --> 00:09:30,205 ほかの男に 許嫁をとられた上に➡ 134 00:09:30,205 --> 00:09:32,574 親父さんとの間まで 取り持ってやったんじゃ➡ 135 00:09:32,574 --> 00:09:35,243 まるで 道化じゃないか。 136 00:09:35,243 --> 00:09:38,914 かといって断っても 心の狭い男に見える。 137 00:09:38,914 --> 00:09:41,583 一旦 答えを差し控えるのは 当然だね。 138 00:09:41,583 --> 00:09:46,455 へえ~。 男の人ってのは そんなもんなんですねえ。 139 00:09:46,455 --> 00:09:48,924 あっ 森先生 どう思います? 140 00:09:48,924 --> 00:09:50,859 何を気にしている? 141 00:09:50,859 --> 00:09:52,794 もう済んだ事なら どうでもいいだろう。 142 00:09:52,794 --> 00:09:56,794 はあ…。 聞く相手を間違えました。 143 00:09:58,600 --> 00:10:01,503 あっ…。 うん? 144 00:10:01,503 --> 00:10:04,406 んあっ! 今 ちょうど話して…。 145 00:10:04,406 --> 00:10:08,606 人の話で 勝手に面白がるな! 146 00:10:10,212 --> 00:10:13,148 怒った… また怒った。 147 00:10:13,148 --> 00:10:17,848 「人の話で 勝手に面白がるな!」。 ハハハハ…! 148 00:10:22,624 --> 00:10:25,460 (お杉)聞きましたよ。 149 00:10:25,460 --> 00:10:29,297 お雪ちゃん 保本先生を怒らせたって➡ 150 00:10:29,297 --> 00:10:31,967 しょげてました。 151 00:10:31,967 --> 00:10:36,304 お雪に怒ってるんじゃない。 152 00:10:36,304 --> 00:10:38,240 じゃあ 何ですか? 153 00:10:38,240 --> 00:10:41,977 ほっといてくれ! 154 00:10:41,977 --> 00:10:44,977 はい。 155 00:10:48,316 --> 00:10:51,653 <自分が 何に腹を立てているのか➡ 156 00:10:51,653 --> 00:10:55,653 よく分からなかった> 157 00:11:00,996 --> 00:11:06,696 壱岐守様 お脈を拝見致しましょう。 158 00:11:11,006 --> 00:11:14,042 かねてより 申し上げているように➡ 159 00:11:14,042 --> 00:11:17,879 壱岐守様の病は 江戸患いです。 160 00:11:17,879 --> 00:11:22,350 それに 肝の臓の病にも 侵されております。 161 00:11:22,350 --> 00:11:24,286 失礼。 162 00:11:24,286 --> 00:11:27,222 以前にも増して 顔色が黄色く➡ 163 00:11:27,222 --> 00:11:31,026 頬が痩せ細っているのが その証拠。 164 00:11:31,026 --> 00:11:33,995 このままでは やがて 歩く事も ままならず➡ 165 00:11:33,995 --> 00:11:36,465 寝たきりとなる事でしょう。 166 00:11:36,465 --> 00:11:41,970 今後は 私が立てた献立は 必ず守って頂きます。 167 00:11:41,970 --> 00:11:46,308 (壱岐守)まるで そこらの貧乏人と 同じような食事じゃのう。 168 00:11:46,308 --> 00:11:50,308 それでは 私は これで。 169 00:11:53,181 --> 00:11:57,652 ああ 今日は薬料を頂きたい。 170 00:11:57,652 --> 00:12:00,322 はあ… いかほど? 171 00:12:00,322 --> 00:12:02,257 50両。 えっ!? 172 00:12:02,257 --> 00:12:06,557 5… 50両!? 5… 5…? 173 00:12:09,664 --> 00:12:15,337 今朝 また 奉行所から 諸費用の切り詰めを言ってきた。 174 00:12:15,337 --> 00:12:18,006 今度は 通い療治をやめろという。 175 00:12:18,006 --> 00:12:22,344 もちろん そんな事はできんと 断ったがな。 176 00:12:22,344 --> 00:12:25,013 皮肉なもんだ。 177 00:12:25,013 --> 00:12:30,352 貧しい者たちが病気にかかるのは ほとんどが 粗末な食事のせいだ。 178 00:12:30,352 --> 00:12:34,222 しかし 金持ちや大名が病むのは➡ 179 00:12:34,222 --> 00:12:38,922 大抵が ぜいたくな食事と 決まってる。 180 00:12:41,630 --> 00:12:45,967 先生…。 181 00:12:45,967 --> 00:12:49,804 あの佐八という男は どういう事なのでしょうか? 182 00:12:49,804 --> 00:12:52,307 どうとは? 183 00:12:52,307 --> 00:12:55,210 なぜ 自分の病気を治そうともせず 人のために…。 184 00:12:55,210 --> 00:12:58,210 お前は どう思う? 185 00:12:59,981 --> 00:13:02,484 …分かりません。 186 00:13:02,484 --> 00:13:05,987 人に話を聞く時には 自分の意見ぐらい持て。 187 00:13:05,987 --> 00:13:09,687 分からないから お聞きしているんです。 188 00:13:11,326 --> 00:13:17,499 周りの者たちは 佐八は仏様のようだと言うが➡ 189 00:13:17,499 --> 00:13:20,535 それは違う。 190 00:13:20,535 --> 00:13:26,535 佐八は… 人間だ。 191 00:13:28,209 --> 00:13:32,981 ≪(平吉)佐八! 佐八! どこだ? 佐八~! 192 00:13:32,981 --> 00:13:35,283 仕事の邪魔だ! 帰れ! 193 00:13:35,283 --> 00:13:38,954 (平吉)用が済んだら帰るって 言ってんだよ。 佐八…! 194 00:13:38,954 --> 00:13:40,889 どうした? 195 00:13:40,889 --> 00:13:43,291 この酔っ払いが 佐八の見舞いに来たと言うんだ。 196 00:13:43,291 --> 00:13:46,962 平吉か。 むじな長屋の酔いどれだ。 197 00:13:46,962 --> 00:13:51,299 先生! 見舞いに来るなら しらふで来い。 198 00:13:51,299 --> 00:13:57,105 お言葉ですがね 俺は 9つの時から飲み始めて➡ 199 00:13:57,105 --> 00:14:00,642 これまで 酒が切れた事がねえんだ。 200 00:14:00,642 --> 00:14:06,314 自慢じゃねえが 酔ってる時の方が まともなんだよ。 201 00:14:06,314 --> 00:14:08,984 それは まんざら うそでもないな。 202 00:14:08,984 --> 00:14:11,886 だろう? いつだったか 俺が➡ 203 00:14:11,886 --> 00:14:16,658 酒を飲み過ぎて 病気になった時 先生は言ったな。 204 00:14:16,658 --> 00:14:21,529 うん? 「病気になるほど 酒を飲む金があるのなら➡ 205 00:14:21,529 --> 00:14:25,333 女房 子どもの事を考えろ」ってな。 206 00:14:25,333 --> 00:14:29,204 冗談じゃねえ。 俺たちのような者は➡ 207 00:14:29,204 --> 00:14:34,142 汗水たらして働いても 満足に おまんまも食えねえ。 208 00:14:34,142 --> 00:14:38,613 今日は どうやって食おうか 明日は どうするって➡ 209 00:14:38,613 --> 00:14:41,516 そんな事ばかり考えてるんだ。 210 00:14:41,516 --> 00:14:45,954 その上 女房 子どもの事を 考えてみろ。 211 00:14:45,954 --> 00:14:50,954 途端に 飲まずには いられなくなるんだ! 212 00:14:53,628 --> 00:14:55,563 うっ! おい。 213 00:14:55,563 --> 00:14:59,300 うえっ… うっ うっ…。 214 00:14:59,300 --> 00:15:01,970 先生とこも… あっ!➡ 215 00:15:01,970 --> 00:15:05,306 佐八 元気か~?➡ 216 00:15:05,306 --> 00:15:07,976 元気な訳ねえか~。 217 00:15:07,976 --> 00:15:11,312 すみません うちに帰らして下さい…。 218 00:15:11,312 --> 00:15:14,649 何を言っている。 お前の体は…。 219 00:15:14,649 --> 00:15:17,152 よし 一緒に帰ろう! 220 00:15:17,152 --> 00:15:19,654 あっしのような者が こちらの やっかいになっては➡ 221 00:15:19,654 --> 00:15:23,324 ご迷惑でしょう。 いや 帰んなきゃなんねえんです。 222 00:15:23,324 --> 00:15:27,662 病人が バカな事を言うな! どうか お願いです。 どうか…。 223 00:15:27,662 --> 00:15:29,962 先生 なんとか 言ってやって下さい。 224 00:15:41,609 --> 00:15:45,280 帰っていいぞ。 えっ!? 225 00:15:45,280 --> 00:15:48,980 どうしてですか? (佐八)すいません…。 226 00:15:51,152 --> 00:15:56,152 先生 またな~。 227 00:15:58,293 --> 00:16:02,163 今 ここを出たら 命を 縮めるだけだと思いますが…。 228 00:16:02,163 --> 00:16:05,967 医者として やるべき事を 諦めるのですか? 229 00:16:05,967 --> 00:16:10,305 病気を治すだけが 医者の仕事じゃない。 230 00:16:10,305 --> 00:16:13,605 病気を治すほかに何が? 231 00:16:15,176 --> 00:16:17,876 先生! 232 00:16:22,484 --> 00:16:24,819 ちょちょちょ ちょちょ ちょちょちょ…➡ 233 00:16:24,819 --> 00:16:27,655 聞いて! 聞いて聞いて聞いて…! (お雪)何 何? 何 何? 234 00:16:27,655 --> 00:16:30,325 今さ 御用聞きから 聞いてきたんだけどさ➡ 235 00:16:30,325 --> 00:16:34,095 ほら むじな長屋の裏から出てきた 骸骨。 何か分かったの? 236 00:16:34,095 --> 00:16:37,132 身につけていたものが 若い女のものだったらしいよ。 237 00:16:37,132 --> 00:16:40,869 (お雪)へえ~。 どこの誰か 分かったの? 238 00:16:40,869 --> 00:16:43,805 手がかりになるようなものは 何にもないって。 239 00:16:43,805 --> 00:16:47,609 殺されたんだ。 えっ? 240 00:16:47,609 --> 00:16:53,481 …でないと あんな所に埋まってない。 241 00:16:53,481 --> 00:16:57,285 それで? お光は 下手人が どんなやつか言ったのか? 242 00:16:57,285 --> 00:16:59,220 (お雪)いえ そこまでは。 243 00:16:59,220 --> 00:17:02,957 まっ そんなに古い骨なら 奉行所も どうしようもないね。 244 00:17:02,957 --> 00:17:08,296 そろそろ むじな長屋から 使いが来るだろう。 245 00:17:08,296 --> 00:17:11,199 どういう事でしょう? もし 来たら➡ 246 00:17:11,199 --> 00:17:16,638 保本 森 お前ら2人で行ってこい。 247 00:17:16,638 --> 00:17:19,307 はあ。 248 00:17:19,307 --> 00:17:21,810 どういう事だ? さあ? 249 00:17:21,810 --> 00:17:24,312 だから あれが赤ひげの手なんだよ。 250 00:17:24,312 --> 00:17:26,981 ごめんくださいやし。 251 00:17:26,981 --> 00:17:30,318 お前… むじな長屋の。 252 00:17:30,318 --> 00:17:35,590 へい。 実は 佐八のやつが こちらの先生に来てほしいと➡ 253 00:17:35,590 --> 00:17:39,260 申しておりまして…。 254 00:17:39,260 --> 00:17:41,196 足元 お気を付けなすって。 255 00:17:41,196 --> 00:17:44,599 おう 先生いらしたぞ。 はいよ。 256 00:17:44,599 --> 00:17:47,299 さあさあ さあさあ どうぞ どうぞ。 257 00:17:48,937 --> 00:17:55,276 これは 先生 わざわざ すいやせん。 258 00:17:55,276 --> 00:17:57,946 なぜ 俺たちを呼んだんだ? 259 00:17:57,946 --> 00:18:02,283 へい。 実は➡ 260 00:18:02,283 --> 00:18:07,155 先生方に 聞いて頂きたい事があるんです。 261 00:18:07,155 --> 00:18:10,158 何だ? 262 00:18:10,158 --> 00:18:14,629 それは…➡ 263 00:18:14,629 --> 00:18:23,629 死んだ私の女房 おなかの事です。 264 00:18:26,241 --> 00:18:29,978 おなかは…➡ 265 00:18:29,978 --> 00:18:35,583 10年前の火事で 死んだんじゃありません。 266 00:18:35,583 --> 00:18:39,254 本当は何があったのか➡ 267 00:18:39,254 --> 00:18:43,124 洗いざらい話しますから➡ 268 00:18:43,124 --> 00:18:47,595 どうか 聞いて下さい。➡ 269 00:18:47,595 --> 00:18:52,467 おなかは 私が一緒になろうと口説いても➡ 270 00:18:52,467 --> 00:18:56,271 なかなか うんと言いませんでした。➡ 271 00:18:56,271 --> 00:19:00,108 1年も その店に通い詰めて➡ 272 00:19:00,108 --> 00:19:06,614 やっとの思いで 承知させたんです。➡ 273 00:19:06,614 --> 00:19:10,285 おなかと 一緒になってからというもの➡ 274 00:19:10,285 --> 00:19:17,625 私は 夢のように幸せな日々を 送っていました。➡ 275 00:19:17,625 --> 00:19:24,499 しかし ただ一つ 解せない事がありました。 276 00:19:24,499 --> 00:19:27,969 どうしてなんだ? 所帯持って もう半年だ。 277 00:19:27,969 --> 00:19:32,573 まだ 親に挨拶もできねえなんて おかしいじゃねえか。 278 00:19:32,573 --> 00:19:35,476 それは そうなんだけど…。 279 00:19:35,476 --> 00:19:39,247 俺みてえな男 会わせんの嫌かい? 280 00:19:39,247 --> 00:19:41,182 そんな訳ないでしょ! 281 00:19:41,182 --> 00:19:45,119 だったら…。 そのうち きっと会わせる。 282 00:19:45,119 --> 00:19:47,588 それまで 待ってちょうだい。 283 00:19:47,588 --> 00:19:50,258 (佐八)その事を除けば➡ 284 00:19:50,258 --> 00:19:56,931 何の不満もない 幸せな暮らしでした。➡ 285 00:19:56,931 --> 00:20:00,268 しかし…➡ 286 00:20:00,268 --> 00:20:08,943 そんな暮らしは 2年と続きませんでした。➡ 287 00:20:08,943 --> 00:20:13,281 あの火事です。➡ 288 00:20:13,281 --> 00:20:18,619 私が 仕事先から帰ってみると➡ 289 00:20:18,619 --> 00:20:23,458 うちの辺りは 一面 火の海で➡ 290 00:20:23,458 --> 00:20:27,962 近寄る事も できませんでした。➡ 291 00:20:27,962 --> 00:20:33,835 私は 気が変になりそうになって➡ 292 00:20:33,835 --> 00:20:37,972 おなかを捜し歩きました。➡ 293 00:20:37,972 --> 00:20:43,644 どこかに逃げているはずだと 信じて。 294 00:20:43,644 --> 00:20:46,314 でも…➡ 295 00:20:46,314 --> 00:20:51,652 おなかは どこにも見つかりませんでした。 296 00:20:51,652 --> 00:20:54,322 私は…➡ 297 00:20:54,322 --> 00:21:01,195 おなかは死んだものと 諦めようとしました。➡ 298 00:21:01,195 --> 00:21:07,869 2年たって この長屋に腰を落ち着けてから➡ 299 00:21:07,869 --> 00:21:15,169 やっと 気持ちも落ち着いてきました。 300 00:21:18,012 --> 00:21:22,517 ところが…➡ 301 00:21:22,517 --> 00:21:27,188 あの日… そうです。 302 00:21:27,188 --> 00:21:30,024 無理に話さなくていいんだぞ。 303 00:21:30,024 --> 00:21:34,295 いえ… はあ…。 304 00:21:34,295 --> 00:21:38,295 はあ… 聞いて下さい…。 305 00:21:40,968 --> 00:21:47,642 あれは 浅草の祭りの前の日➡ 306 00:21:47,642 --> 00:21:52,513 あっしは仕事帰りでした。 307 00:21:52,513 --> 00:21:57,513 (赤ん坊の泣き声) 308 00:22:11,866 --> 00:22:28,683 ♬~ 309 00:22:28,683 --> 00:22:32,383 しばらくだな。 310 00:22:33,955 --> 00:22:36,624 しばらくね。 311 00:22:36,624 --> 00:22:41,295 (泣き声) 312 00:22:41,295 --> 00:22:43,995 お前の子か? 313 00:22:48,636 --> 00:22:52,507 もう誕生くらいか? 314 00:22:52,507 --> 00:22:56,310 十月目よ。 315 00:22:56,310 --> 00:22:59,647 (佐八)おかしな話です。➡ 316 00:22:59,647 --> 00:23:02,316 自分の女房が➡ 317 00:23:02,316 --> 00:23:08,189 他人の子どもを産んで あやしてるんですから。 318 00:23:08,189 --> 00:23:16,330 本当なら半殺しにでも してやりたいところでしょう。 319 00:23:16,330 --> 00:23:25,840 なのに 私は ただ それが哀れで…。➡ 320 00:23:25,840 --> 00:23:29,343 もし できる事なら…➡ 321 00:23:29,343 --> 00:23:36,617 抱き締めて 一緒に泣いてやりたい ような気持ちでした。 322 00:23:36,617 --> 00:23:48,617 ♬~ 323 00:23:58,873 --> 00:24:01,642 (佐八)でも どういう訳か➡ 324 00:24:01,642 --> 00:24:06,981 憎いという気持ちは 少しも湧きませんでした。 325 00:24:06,981 --> 00:24:10,851 はあ… はあ…。 326 00:24:10,851 --> 00:24:16,324 はあ… はあ… はあ…。 327 00:24:16,324 --> 00:24:19,227 それよりも➡ 328 00:24:19,227 --> 00:24:26,968 あの火事の時 どうして おなかは姿を消したのか➡ 329 00:24:26,968 --> 00:24:30,671 あの赤ん坊は誰の子なのか➡ 330 00:24:30,671 --> 00:24:34,942 それを知りたいという気持ちと➡ 331 00:24:34,942 --> 00:24:39,113 今更 知って 何になるという 気持ちが➡ 332 00:24:39,113 --> 00:24:43,618 行ったり来たりしてました。➡ 333 00:24:43,618 --> 00:24:49,490 そんな ある夜の事です。➡ 334 00:24:49,490 --> 00:24:52,960 不思議なもんです。➡ 335 00:24:52,960 --> 00:25:00,635 その足音で おなかだって すぐ分かりました。 336 00:25:00,635 --> 00:25:04,305 はあはあ はあはあ…。 337 00:25:04,305 --> 00:25:09,176 はあ… はあ…。 338 00:25:09,176 --> 00:25:12,647 どうして ここが分かった? 339 00:25:12,647 --> 00:25:18,347 車坂の… 利助さんに聞いたの。 340 00:25:21,656 --> 00:25:25,356 何しに来た? 341 00:25:26,994 --> 00:25:32,800 もう二度と… 会う事はないと思ってた。 342 00:25:32,800 --> 00:25:36,604 私の事…➡ 343 00:25:36,604 --> 00:25:41,942 死んだものと 思ってくれてるだろうって。 344 00:25:41,942 --> 00:25:46,614 そう思おうとした。 345 00:25:46,614 --> 00:25:50,951 でも… 会ってしまった。 346 00:25:50,951 --> 00:25:54,622 ああ。 347 00:25:54,622 --> 00:26:01,962 だったら やっぱり… ちゃんと聞いてもらわなきゃって。 348 00:26:01,962 --> 00:26:07,635 聞いて… くれますか? 349 00:26:07,635 --> 00:26:11,505 お前が つらくなければな。 350 00:26:11,505 --> 00:26:14,108 私には…➡ 351 00:26:14,108 --> 00:26:20,314 あんたと一緒になる前に 約束した人がいたの。 352 00:26:20,314 --> 00:26:22,249 えっ? 353 00:26:22,249 --> 00:26:26,187 うちの親が 大層 世話になった人で➡ 354 00:26:26,187 --> 00:26:33,594 親の勧めるまま その人と 一緒になるつもりでいたの。 355 00:26:33,594 --> 00:26:40,935 でも… あなたと… 出会ってしまった。 356 00:26:40,935 --> 00:26:44,805 断ろう… 断らなきゃって➡ 357 00:26:44,805 --> 00:26:49,276 一所懸命に思おうとした。 358 00:26:49,276 --> 00:26:53,614 でも できなくて…。 359 00:26:53,614 --> 00:27:01,489 あなたの事が… 好きだから…。 360 00:27:01,489 --> 00:27:06,627 そのうち… 心を決めました。 361 00:27:06,627 --> 00:27:13,300 恩義は恩義。 後で どうとでも返し方はある。 362 00:27:13,300 --> 00:27:18,600 思いきって 親に話しました。 363 00:27:20,975 --> 00:27:25,646 父には 殴られ➡ 364 00:27:25,646 --> 00:27:29,316 母には 泣かれました…。 365 00:27:29,316 --> 00:27:33,587 どうして それを 俺に話してくれなかったんだ! 366 00:27:33,587 --> 00:27:39,787 だって… あなたとの日々が 幸せすぎたから! 367 00:27:43,764 --> 00:27:50,638 おなかは 自分の親に 勘当同然にされてまで➡ 368 00:27:50,638 --> 00:27:55,943 私と一緒になってくれたんです。 369 00:27:55,943 --> 00:28:02,817 だから お前に 親を会わせる事が できなかったんだな。 370 00:28:02,817 --> 00:28:05,953 ええ。 371 00:28:05,953 --> 00:28:10,624 私は 大バカです。 372 00:28:10,624 --> 00:28:17,498 そんな… おなかの苦しみも知らずに➡ 373 00:28:17,498 --> 00:28:23,971 ただ幸せに暮らしてたんですから。 374 00:28:23,971 --> 00:28:29,271 <なぜか 私は 自分の事を思い出していた> 375 00:28:31,779 --> 00:28:36,917 <無邪気に将来を信じていた私を> 376 00:28:36,917 --> 00:28:40,588 知らない事は しょうがないだろう。 377 00:28:40,588 --> 00:28:45,588 それで済めば 苦労はない。 378 00:28:47,261 --> 00:28:51,932 あの火事の時…。 379 00:28:51,932 --> 00:28:56,270 一体 何があったんだ? (おなか)あの時…➡ 380 00:28:56,270 --> 00:28:59,940 私は…➡ 381 00:28:59,940 --> 00:29:04,278 焼け跡をさまよいながら 思いました。➡ 382 00:29:04,278 --> 00:29:08,616 自分の幸せのために➡ 383 00:29:08,616 --> 00:29:13,454 親や恩人を裏切った 罰が当たったんだって。➡ 384 00:29:13,454 --> 00:29:19,627 私はもう… 人の一生分も幸せに暮らした。➡ 385 00:29:19,627 --> 00:29:24,465 これは ここで区切りをつけろ って事だ…。➡ 386 00:29:24,465 --> 00:29:28,636 ふと 気が付くと➡ 387 00:29:28,636 --> 00:29:32,239 私は…➡ 388 00:29:32,239 --> 00:29:38,239 あの人のうちの前に 立ってました。 389 00:29:39,914 --> 00:29:44,614 親が決めた男のとこかい? 390 00:29:49,924 --> 00:29:54,595 あの日から…➡ 391 00:29:54,595 --> 00:29:59,266 私は 別人になったんです。 392 00:29:59,266 --> 00:30:03,137 いえ… そう思おうとした。 393 00:30:03,137 --> 00:30:06,140 子どもも生まれて➡ 394 00:30:06,140 --> 00:30:12,279 やっと 暮らしも 落ち着いてきたと思った。 395 00:30:12,279 --> 00:30:16,150 そしたら…➡ 396 00:30:16,150 --> 00:30:20,788 あなたと この間 会ってしまった。 397 00:30:20,788 --> 00:30:23,588 ああ…。 398 00:30:35,636 --> 00:30:39,506 あなたが決めて。 399 00:30:39,506 --> 00:30:41,806 えっ? 400 00:30:53,487 --> 00:30:57,987 帰ってきてくれ…。 401 00:30:59,994 --> 00:31:04,194 行かないでくれ! 402 00:31:06,667 --> 00:31:09,570 抱いて。 403 00:31:09,570 --> 00:31:13,340 いいのか? 404 00:31:13,340 --> 00:31:19,640 お願い 抱いて…。 405 00:31:22,016 --> 00:31:23,951 おなか…。 406 00:31:23,951 --> 00:31:30,357 もっと強く抱いて! どこにも行かないように! 407 00:31:30,357 --> 00:31:32,357 ああ。 408 00:31:33,961 --> 00:31:36,296 ああ… あっ…。 409 00:31:36,296 --> 00:31:40,634 はっ… あっ…。 おなか? 410 00:31:40,634 --> 00:31:44,304 おい…。 411 00:31:44,304 --> 00:31:49,304 おなか… おなか! 412 00:31:54,948 --> 00:32:03,248 どこにも… 行かない…。 413 00:32:06,326 --> 00:32:10,664 あっ… おなか! 414 00:32:10,664 --> 00:32:14,334 おい… おなか…。 415 00:32:14,334 --> 00:32:19,673 (泣き声) 416 00:32:19,673 --> 00:32:23,673 おなか…! 417 00:32:25,345 --> 00:32:30,684 (佐八)もう お分かりでしょう。➡ 418 00:32:30,684 --> 00:32:37,684 あの骨は… おなかです。 419 00:32:42,963 --> 00:32:46,633 おなかと 一緒に暮らしてきたんだな。 420 00:32:46,633 --> 00:32:49,303 ええ。 421 00:32:49,303 --> 00:32:57,303 おなか… 戻ってきてくれたんです。 422 00:33:01,882 --> 00:33:05,652 この暮らしも…➡ 423 00:33:05,652 --> 00:33:10,524 骨が見つかったからには もう おしまいだと➡ 424 00:33:10,524 --> 00:33:14,995 心に決めました。 425 00:33:14,995 --> 00:33:21,769 死ぬ前に… せめて 先生方に➡ 426 00:33:21,769 --> 00:33:28,008 本当の事を聞いてもらいたいと 思ったんです。 427 00:33:28,008 --> 00:33:33,781 なぜ 俺たちに? なぜでしょう…。 428 00:33:33,781 --> 00:33:39,953 こんなバカな男がいたって事を➡ 429 00:33:39,953 --> 00:33:47,828 ただ… 誰かに知ってほしかったんです。 430 00:33:47,828 --> 00:33:55,302 ああ… 聞いた。 俺も聞いた。 431 00:33:55,302 --> 00:33:59,302 よかった…。 432 00:34:04,011 --> 00:34:06,914 (佐八)ああ…。 433 00:34:06,914 --> 00:34:11,151 大丈夫か!? 434 00:34:11,151 --> 00:34:13,987 ああ…。 435 00:34:13,987 --> 00:34:16,687 おなか…。 436 00:34:18,826 --> 00:34:24,631 迎えに来てくれたんだねえ。 すぐ行くよ。 437 00:34:24,631 --> 00:34:28,331 行くな! まだ生きられる! 438 00:34:30,003 --> 00:34:33,974 行かせてやろう。 439 00:34:33,974 --> 00:34:37,444 おなか…➡ 440 00:34:37,444 --> 00:34:42,316 ああ きれいだよ…。 441 00:34:42,316 --> 00:34:51,959 ♬~ 442 00:34:51,959 --> 00:34:58,832 佐八… 佐八! 佐八! 443 00:34:58,832 --> 00:35:03,971 ♬~ 444 00:35:03,971 --> 00:35:07,641 長屋の連中で弔いをするそうです。 445 00:35:07,641 --> 00:35:10,544 奉行所には知らせておりません。 446 00:35:10,544 --> 00:35:15,315 今更 知らせたとしても…。 それでいいだろう。 447 00:35:15,315 --> 00:35:18,352 先生は…➡ 448 00:35:18,352 --> 00:35:21,121 あの骨が おなかだと 分かっていたんですか? 449 00:35:21,121 --> 00:35:23,657 そこまでは分からん。 450 00:35:23,657 --> 00:35:26,994 では どうして? 451 00:35:26,994 --> 00:35:33,994 ただ… 多少 長く生きてきた というだけの事だ。 452 00:35:40,274 --> 00:35:43,777 ほれ合ってたんだね…。 (泣き声) 453 00:35:43,777 --> 00:35:48,115 (お雪) 何だか 羨ましいような気がする。 454 00:35:48,115 --> 00:35:50,951 そんな事に 医者が2人で…。 455 00:35:50,951 --> 00:35:54,821 こっちは 2人の留守に 病人が立て込んで大忙しさ! 456 00:35:54,821 --> 00:35:57,291 すまなかった。 457 00:35:57,291 --> 00:35:59,626 いや…。 458 00:35:59,626 --> 00:36:03,497 病気を治すだけが 仕事じゃない… か。 459 00:36:03,497 --> 00:36:07,501 何ですか? 何でもない! 460 00:36:07,501 --> 00:36:13,473 (泣き声) 461 00:36:13,473 --> 00:36:16,310 羨ましい…。 462 00:36:16,310 --> 00:36:18,810 (泣き声) 463 00:36:22,649 --> 00:36:25,552 保本先生。 464 00:36:25,552 --> 00:36:29,552 この間は どなって悪かった。 465 00:36:31,325 --> 00:36:34,594 いいんです。 466 00:36:34,594 --> 00:36:38,265 やっと気付いた。 467 00:36:38,265 --> 00:36:42,102 俺は あの時 自分に怒っていたんだ。 468 00:36:42,102 --> 00:36:46,273 えっ? 俺は…➡ 469 00:36:46,273 --> 00:36:51,611 ちぐさの事は もう済んだ事だと思っていた。 470 00:36:51,611 --> 00:36:54,281 勝手なものだ。 471 00:36:54,281 --> 00:36:58,618 ちぐさは 俺が長崎に行く前に 夫婦になりたがっていた。 472 00:36:58,618 --> 00:37:01,955 でも 俺は 医術の事しか頭になかった。 473 00:37:01,955 --> 00:37:07,294 3年くらい待てるだろうと 気にも留めなかった。 474 00:37:07,294 --> 00:37:14,594 もし あの時 ちぐさの気持ちを 少しでも考えてやっていたら…。 475 00:37:16,303 --> 00:37:19,303 未熟だった。 476 00:37:21,975 --> 00:37:25,645 何か言ってやってくれ 3年前の俺に。 477 00:37:25,645 --> 00:37:28,145 「バカな男だ」って。 478 00:37:30,984 --> 00:37:39,693 私は… 3年前の保本先生の事は 知りませんから。 479 00:37:39,693 --> 00:37:44,264 でも 今 こうして悩んでる 保本先生の事は➡ 480 00:37:44,264 --> 00:37:48,935 ちっとも バカだとは思いません。 481 00:37:48,935 --> 00:37:51,135 そうか。 482 00:37:54,107 --> 00:37:56,143 <去定先生は➡ 483 00:37:56,143 --> 00:38:00,280 医者は病気を治すだけが 仕事ではないと言った。➡ 484 00:38:00,280 --> 00:38:03,950 では それ以外の何ができるのか…➡ 485 00:38:03,950 --> 00:38:06,853 私には まだ分からなかった> 486 00:38:06,853 --> 00:38:11,853 ここか? よし 動かすぞ。