1 00:00:32,302 --> 00:00:34,237 (保本)<赤ひげに恨みを抱き➡ 2 00:00:34,237 --> 00:00:37,641 一度は 赤ひげを殺そうとした 遊女 およね。➡ 3 00:00:37,641 --> 00:00:41,144 しかし 赤ひげは およねのけがが治るまで➡ 4 00:00:41,144 --> 00:00:45,816 養生所に とどまることを許したのだった> 5 00:00:45,816 --> 00:00:55,116 ♬~ 6 00:01:00,364 --> 00:01:05,202 (棟梁)おい 辰蔵! おい 辰蔵! おい 辰蔵! おい 辰蔵! 7 00:01:05,202 --> 00:01:08,071 おい 急げ! 急げよ! 8 00:01:08,071 --> 00:01:10,771 おい 早く早く! 急げよ! 9 00:01:14,177 --> 00:01:18,348 縫うぞ。 針をよこせ。 (田山)はい。 10 00:01:18,348 --> 00:01:24,154 先生 大丈夫ですかね? 打ち所が悪きゃ 万一ってことも…。 11 00:01:24,154 --> 00:01:26,523 (田山)無礼なことを言うものではない。 へ? 12 00:01:26,523 --> 00:01:28,859 偉大なる新出去定先生が➡ 13 00:01:28,859 --> 00:01:31,461 これしきのけがを治せぬはずがない。 田山! 14 00:01:31,461 --> 00:01:35,332 針をよこせ! はい。 15 00:01:35,332 --> 00:01:39,803 けがは大したことないが 体が ひどく弱っている。 (田山)先生。 16 00:01:39,803 --> 00:01:42,139 無理な働かせ方をしたのではないのか。 17 00:01:42,139 --> 00:01:46,476 いや とんでもねえ! あっ そういや…。 18 00:01:46,476 --> 00:01:49,813 何だ? いや こいつ➡ 19 00:01:49,813 --> 00:01:53,817 俺の知らねえとこで 修繕やら手仕事なんかやってたようで…。 20 00:01:53,817 --> 00:01:58,822 こっちの普請場だけで 手いっぱいのはずなんですがね。 21 00:01:58,822 --> 00:02:03,693 <その辰蔵という けが人は それから間もなく目を覚ました。➡ 22 00:02:03,693 --> 00:02:06,163 しかし…> 23 00:02:06,163 --> 00:02:09,833 おい 何やってる! おとなしく寝ていろと言っただろ。 24 00:02:09,833 --> 00:02:12,736 駄目なんだ。 こんなことしちゃいられねえ。 25 00:02:12,736 --> 00:02:17,574 俺は働かなきゃいけないんだ。 そんな体で働けるわけがないだろう! 26 00:02:17,574 --> 00:02:23,680 辰蔵! けがをしたって聞いて驚いたよ。 27 00:02:23,680 --> 00:02:28,852 あっ 先生 この子 どうか よろしくお願いします。 28 00:02:28,852 --> 00:02:33,123 何だか いい眺めだね。➡ 29 00:02:33,123 --> 00:02:39,323 優しい母親に 働き者で けなげな息子じゃないか。 30 00:02:44,468 --> 00:02:47,804 (津川)いくら 孝行息子っていってもね➡ 31 00:02:47,804 --> 00:02:52,676 倒れるまで働かれちゃ かえって迷惑ってもんだ。 32 00:02:52,676 --> 00:02:56,313 ん? あ…。 33 00:02:56,313 --> 00:02:59,649 しょっぱ! (お雪)何 言ってんの。 34 00:02:59,649 --> 00:03:03,487 いっつも 大げさなんだから。 35 00:03:03,487 --> 00:03:06,787 ん? ちょっ… しょっぱ! 36 00:03:12,195 --> 00:03:15,665 すまないね。 37 00:03:15,665 --> 00:03:23,173 手が滑って 塩が バッて…。 38 00:03:23,173 --> 00:03:26,676 まあ 煮直せば 大丈夫だけど。 39 00:03:26,676 --> 00:03:29,179 お常さん 何だか 今日…。 40 00:03:29,179 --> 00:03:31,114 おい どうした? お雪に いじめられたのか? 41 00:03:31,114 --> 00:03:33,450 はあ? そんなことするわけないでしょ! 42 00:03:33,450 --> 00:03:38,922 親孝行で 何が悪い! 結構なことじゃないか。 え? 43 00:03:38,922 --> 00:03:43,293 私の金 勝手に持ち出して 賭場で すっちまうような親不孝者よりかさ。 44 00:03:43,293 --> 00:03:46,129 え! お常さんの息子さんが? 45 00:03:46,129 --> 00:03:48,164 そりゃ とんだバカ息子だな。 え! 46 00:03:48,164 --> 00:03:50,300 バカ! あ! 47 00:03:50,300 --> 00:03:52,235 いや! 違う違う 違うの! 48 00:03:52,235 --> 00:03:56,806 いや お常さんの息子さんのこと 今 言ったんじゃないのよ。 (泣き声) 49 00:03:56,806 --> 00:04:01,006 バカ。 (お雪)もう! 50 00:04:11,354 --> 00:04:13,356 (ため息) 51 00:04:13,356 --> 00:04:15,492 (三郎)どうしたんだい? おっ母さん。 52 00:04:15,492 --> 00:04:19,963 (おその)おっ母さん 辰蔵兄ちゃんのことが心配なの? 53 00:04:19,963 --> 00:04:21,898 あ… うん。 54 00:04:21,898 --> 00:04:25,098 (三郎)こんな時に おっきいお兄ちゃん いてくれたらいいんだけどね。 55 00:04:27,704 --> 00:04:32,442 (おその)おっきい兄ちゃん 次は いつ帰ってくるんだろうね。 56 00:04:32,442 --> 00:04:53,730 ♬~ 57 00:04:53,730 --> 00:04:57,730 (伸吉)よう 達者だったか。 58 00:05:00,470 --> 00:05:05,141 おうおう おうおう… 寝てろ 寝てろって。 59 00:05:05,141 --> 00:05:09,479 達者だったかって けが人に向かって 達者かは おかしいよな。 60 00:05:09,479 --> 00:05:12,382 兄貴…。 61 00:05:12,382 --> 00:05:14,351 俺に何の用だ? 62 00:05:14,351 --> 00:05:18,822 何の用って かわいい弟の顔 見に来たんだろ。 63 00:05:18,822 --> 00:05:21,157 何だか お前 痩せたんじゃねえか? 64 00:05:21,157 --> 00:05:25,829 ちゃんと 食うもん食わねえと治らねえぞ。 65 00:05:25,829 --> 00:05:28,498 伸吉? 66 00:05:28,498 --> 00:05:31,768 伸吉! おうおう おっ母さん! 67 00:05:31,768 --> 00:05:36,439 お前 今まで どこに行ってたんだよ? あ~ 何だか あちこちな。 68 00:05:36,439 --> 00:05:38,775 風邪なんて ひいてなかったのかい? 69 00:05:38,775 --> 00:05:40,710 ちゃんと布団のあるとこで寝てたのかい? 70 00:05:40,710 --> 00:05:43,113 滋養のあるもの 食べてたのかい? 71 00:05:43,113 --> 00:05:45,048 ああ 達者で暮らしてたよ。 72 00:05:45,048 --> 00:05:49,786 もう 私が どんなに 心配したと思ってんだよ! 73 00:05:49,786 --> 00:05:53,657 悪かったよ おっ母さん。 けど 安心してくれよ。 74 00:05:53,657 --> 00:05:57,127 俺はもう おっ母さんのそばから離れねえから。 75 00:05:57,127 --> 00:06:00,427 伸吉…。 76 00:06:08,738 --> 00:06:12,475 ああ…。 痛むか? 77 00:06:12,475 --> 00:06:19,816 いえ 大丈夫です。 78 00:06:19,816 --> 00:06:23,486 痛む時は 痛むと言えばいい。 え? 79 00:06:23,486 --> 00:06:30,186 それで楽になることもある。 医者に向かって遠慮はするな。 80 00:06:32,762 --> 00:06:37,634 さっきの男 あれは お前の兄か? 81 00:06:37,634 --> 00:06:42,105 久しぶりに会ったようだが 兄は働きにでも出ていたのか? 82 00:06:42,105 --> 00:06:44,405 いや…。 83 00:06:47,777 --> 00:06:52,777 話してみろ。 楽になれる。 84 00:06:58,788 --> 00:07:03,126 兄貴は 根っからの遊び人で➡ 85 00:07:03,126 --> 00:07:11,468 まともに働かずに ぷいっと いなくなっては 急に戻ってきて➡ 86 00:07:11,468 --> 00:07:18,341 おっ母さんに 金をせびってきたんです。 87 00:07:18,341 --> 00:07:23,480 で そん時よ とっさに よけたら 猫の尻尾 踏んじまって。 88 00:07:23,480 --> 00:07:25,415 それで どうなったんだい? 89 00:07:25,415 --> 00:07:28,151 猫が ギャ~ッて怒って 追っかけてくるもんだから➡ 90 00:07:28,151 --> 00:07:30,086 俺は まあ 逃げる 逃げる。 91 00:07:30,086 --> 00:07:33,423 そしたら 今度は けっつまずいて 肥だめに ドボ~ンよ。 92 00:07:33,423 --> 00:07:36,092 えっ 肥だめ? 臭え! 93 00:07:36,092 --> 00:07:38,995 伸吉 飯の最中に何だい。 94 00:07:38,995 --> 00:07:42,432 いや~ 悪い 悪い。 95 00:07:42,432 --> 00:07:47,303 おう おっ母さん これ 食べろよ。 96 00:07:47,303 --> 00:07:51,775 え? これは お前の分だよ。 97 00:07:51,775 --> 00:07:56,475 おっ母さん 好きだろ。 たくさん食べろよ。 98 00:07:59,649 --> 00:08:02,118 伸吉…。 99 00:08:02,118 --> 00:08:07,118 じゃ ちょっと出てくるわ。 ちょいと お待ち。 100 00:08:12,462 --> 00:08:15,799 (辰蔵)おっ母さんは 口がうまくて 調子のいい兄貴のことが➡ 101 00:08:15,799 --> 00:08:18,468 かわいくて しかたないんだ。 行っといで。 102 00:08:18,468 --> 00:08:23,807 だから 俺が働いて ためた金を 残らず兄貴にやっちまう。 103 00:08:23,807 --> 00:08:28,478 兄貴は それを 博打に使って すっからかんにしちまう。 104 00:08:28,478 --> 00:08:32,081 お前たちの父親は…。 105 00:08:32,081 --> 00:08:36,419 俺が6つの時に死にました。 106 00:08:36,419 --> 00:08:41,090 お父っつぁんが死んでから おっ母さんは苦労のし通しで➡ 107 00:08:41,090 --> 00:08:45,428 食うものも食わねえで 俺たちを育ててくれた。 108 00:08:45,428 --> 00:08:50,099 なのに 兄貴は…。 109 00:08:50,099 --> 00:08:59,776 きっと この先 兄貴は とことんまで 俺や おっ母さんを食い尽くす。 110 00:08:59,776 --> 00:09:05,476 このままじゃ うちは おしまいだ。 111 00:09:11,387 --> 00:09:15,124 なるほど。 世の中 うまくできてますね。 112 00:09:15,124 --> 00:09:20,797 え? ブラブラしている兄貴に 働き者の弟。 113 00:09:20,797 --> 00:09:23,466 両方 出来が悪いんじゃ 目も当てられませんが➡ 114 00:09:23,466 --> 00:09:28,338 両方 出来すぎっていうのも また 世間の恨みを買いますからね。 115 00:09:28,338 --> 00:09:31,741 そう のんきに笑っていられるものでも ないでしょう。 116 00:09:31,741 --> 00:09:36,412 あの辰蔵という けが人は 働き過ぎで体を壊したんです。 117 00:09:36,412 --> 00:09:39,082 といっても ほかは どこも悪くないんですから➡ 118 00:09:39,082 --> 00:09:43,753 ここで養生すれば すぐに よくなるでしょうよ。 119 00:09:43,753 --> 00:09:46,422 そう たやすいものでもないでしょう。 120 00:09:46,422 --> 00:09:49,325 (津川)ん? 121 00:09:49,325 --> 00:09:54,764 このままでは 辰蔵は 同じことを 繰り返すのではないでしょうか。 122 00:09:54,764 --> 00:09:57,667 どうして そう思うんだ? 123 00:09:57,667 --> 00:10:02,639 あれは… 嫉妬ではないでしょうか。 124 00:10:02,639 --> 00:10:04,774 嫉妬? 125 00:10:04,774 --> 00:10:07,110 どんな嫉妬だ? 126 00:10:07,110 --> 00:10:11,447 兄の伸吉への嫉妬です。 は? 127 00:10:11,447 --> 00:10:16,319 母親の情愛は 辰蔵より 兄の伸吉に向かっています。 128 00:10:16,319 --> 00:10:20,456 その嫉妬から 身を粉にして働くことで➡ 129 00:10:20,456 --> 00:10:24,327 母親の情愛を得ようとしているように 私には思います。 130 00:10:24,327 --> 00:10:29,799 はっ 何を言うかと思えば。 母親を巡って 兄貴に嫉妬? 131 00:10:29,799 --> 00:10:33,136 また とっぴなことを言いだすものですね 保本さんも。 132 00:10:33,136 --> 00:10:37,807 保本… あのけが人は お前に任せる。 133 00:10:37,807 --> 00:10:39,742 え? いいな。 134 00:10:39,742 --> 00:10:42,145 分かりました。 135 00:10:42,145 --> 00:10:48,017 やれやれ また やっかい事を しょい込みましたね 保本さんも。 136 00:10:48,017 --> 00:10:52,155 なるほど。 どこでも似たようなことがあるもの。 137 00:10:52,155 --> 00:10:55,491 ん? 新出先生の情愛を巡って➡ 138 00:10:55,491 --> 00:10:58,828 津川さんは 保本さんに嫉妬の炎を。 139 00:10:58,828 --> 00:11:00,763 さっさと食え。 140 00:11:00,763 --> 00:11:05,063 お代わり。 はい。 141 00:11:15,178 --> 00:11:17,513 あの… 先生。 142 00:11:17,513 --> 00:11:21,513 どうした? 傷が痛みだしたか? 143 00:11:26,856 --> 00:11:33,856 これを しばらくの間 預かってほしいんです。 144 00:11:38,468 --> 00:11:40,403 大金じゃないか! 145 00:11:40,403 --> 00:11:44,140 お願いします! この金も いつ兄貴にとられるか。 146 00:11:44,140 --> 00:11:46,075 いや けどな…。 147 00:11:46,075 --> 00:11:48,811 これは 俺が骨身を削って ためた金です。➡ 148 00:11:48,811 --> 00:11:51,714 おっ母さんや妹たちのために ためた金です。 149 00:11:51,714 --> 00:11:55,685 兄貴に とられるわけにはいかないんです。 お願いします! 150 00:11:55,685 --> 00:11:57,985 いや ひとまず 落ち着け。 先生! 151 00:12:00,823 --> 00:12:06,696 悪いが 預かることはできない。 何で? 152 00:12:06,696 --> 00:12:10,833 ここで 以前 同じようなことがあったんだ。 153 00:12:10,833 --> 00:12:16,172 病人に頼まれて 医者が金を預かった。 154 00:12:16,172 --> 00:12:21,511 ここを出る時 そっくり返したんだが 中身が抜かれていたと騒ぎだしたんだ。 155 00:12:21,511 --> 00:12:23,446 俺は そんなことはしません。 156 00:12:23,446 --> 00:12:31,320 それから 固く禁じられている。 病人の金を預かってはならぬと。 157 00:12:31,320 --> 00:12:34,320 そんな…。 158 00:12:36,993 --> 00:12:39,462 すまん。 159 00:12:39,462 --> 00:12:53,009 ♬~ 160 00:12:53,009 --> 00:12:55,478 (うめき声) 161 00:12:55,478 --> 00:13:00,478 まだ痛むのか。 うん…。 162 00:13:02,151 --> 00:13:07,023 あんた 初めから分かってたんだね。 163 00:13:07,023 --> 00:13:10,827 何がだ? 164 00:13:10,827 --> 00:13:17,700 あの辰蔵ってやつのことだよ。 165 00:13:17,700 --> 00:13:24,173 優しい母親に 働き者のけなげな息子って…。 166 00:13:24,173 --> 00:13:26,843 それだけじゃないってことをさ。 167 00:13:26,843 --> 00:13:29,543 ああ…。 168 00:13:31,681 --> 00:13:38,981 そうさ いつだって頑張ってる方が 泣きを見るのさ。 169 00:13:45,795 --> 00:13:53,669 おっ母さんが死んだあと 拾ってもらった恩を返したくてさ➡ 170 00:13:53,669 --> 00:13:59,809 少しでも楽させたくて 一生懸命 働いたよ。 171 00:13:59,809 --> 00:14:03,146 おきぬとかいう叔母のためにか。 172 00:14:03,146 --> 00:14:10,820 でも あの女は 私を食い物にすることしか 考えてなかった。 173 00:14:10,820 --> 00:14:16,692 それで しまいにゃ 岡場所行きさ。 174 00:14:16,692 --> 00:14:19,829 こんな汚れた女になっちまった。 175 00:14:19,829 --> 00:14:23,699 汚れた女? ああ。 176 00:14:23,699 --> 00:14:27,170 そう言ったのは誰だ? え? 177 00:14:27,170 --> 00:14:29,839 誰が そう言ったか聞いとるんだ! 178 00:14:29,839 --> 00:14:35,111 誰も彼もだろ。 あんただって そう思ってんだろ! 179 00:14:35,111 --> 00:14:38,981 汚れていない人間などいない。 180 00:14:38,981 --> 00:14:41,784 誰も彼もが汚れている。 181 00:14:41,784 --> 00:14:47,456 お前に そう言った人間も このわしも汚れている。 182 00:14:47,456 --> 00:14:52,156 そんな言葉で 自分を辱めるんじゃない! 183 00:14:54,330 --> 00:14:56,799 ≪(辰蔵)あの女は どこだ!? 184 00:14:56,799 --> 00:14:59,135 何だ? 185 00:14:59,135 --> 00:15:01,470 お前か…。 え? 186 00:15:01,470 --> 00:15:04,140 俺の金を盗んだのは お前か! 187 00:15:04,140 --> 00:15:07,476 辰蔵 何やってるんだ! 何だよ 金って? 188 00:15:07,476 --> 00:15:10,379 お前 岡場所の女だそうだな。 189 00:15:10,379 --> 00:15:13,349 足抜けするには 金が要るんだろ! 辰蔵! 190 00:15:13,349 --> 00:15:19,049 おい 盗人! 俺の金を返せ! 191 00:15:20,823 --> 00:15:25,161 ほ~ら 赤ひげ 聞いたかよ。 192 00:15:25,161 --> 00:15:29,498 こんなもんさ。 193 00:15:29,498 --> 00:15:36,305 何かあれば 真っ先に疑われるんだ。 どこ行ったってね。 194 00:15:36,305 --> 00:15:40,776 私みたいな汚れた女が! 195 00:15:40,776 --> 00:15:45,476 さあ 返せ! 早く返せ~! 196 00:15:50,453 --> 00:15:54,123 この女の顔を よ~く見ろ。 197 00:15:54,123 --> 00:16:01,998 ♬~ 198 00:16:01,998 --> 00:16:08,698 これが 盗みを働いた人間の顔か! 199 00:16:12,475 --> 00:16:17,175 お前は病んでいる。 体がじゃない 心が。 200 00:16:18,814 --> 00:16:23,486 その病は 我々 医者には治せぬ。 201 00:16:23,486 --> 00:16:27,356 自分自身にしか治せぬ病だ。 202 00:16:27,356 --> 00:16:41,971 ♬~ 203 00:16:41,971 --> 00:16:44,440 [ 回想 ] お前は病んでいる。 204 00:16:44,440 --> 00:16:48,140 体ではない 心がだ。 205 00:16:52,315 --> 00:16:55,785 おっ母さん…。 206 00:16:55,785 --> 00:17:00,456 お前 何で あんな大金 隠してたんだい? 207 00:17:00,456 --> 00:17:03,359 え…。 何でだい? 208 00:17:03,359 --> 00:17:17,807 ♬~ 209 00:17:17,807 --> 00:17:24,680 お前は 自分のことしか考えてないのかい。 210 00:17:24,680 --> 00:17:30,753 あの金を持って 一人で逃げる気だったんじゃないのかい。 211 00:17:30,753 --> 00:17:36,425 そんなこと するわけないだろ。 じゃあ 何で隠してたんだよ! 212 00:17:36,425 --> 00:17:41,297 あの金を どうしたんだ? まさか また兄貴に…。 213 00:17:41,297 --> 00:17:47,069 あの子はね 私たちのことを 心底 思ってるよ。 気にかけてるよ。 214 00:17:47,069 --> 00:17:49,004 おっ母さん…。 215 00:17:49,004 --> 00:17:53,442 私たちのために 新しい仕事を 始めようとしてんだってよ! 216 00:17:53,442 --> 00:17:55,778 そんなの嘘に決まってる! 嘘じゃない。 217 00:17:55,778 --> 00:17:58,681 おっ母さんは 何度 兄貴に裏切られたら 気が済むんだ。 218 00:17:58,681 --> 00:18:02,651 あの子が私を裏切ったことなんてないよ! 219 00:18:02,651 --> 00:18:06,789 お父っつぁんが死んで どうしようもない時に➡ 220 00:18:06,789 --> 00:18:14,130 あの子だけは いつも 私を思ってくれた。 優しくしてくれたよ。 221 00:18:14,130 --> 00:18:21,470 私には お前が分からないよ。 222 00:18:21,470 --> 00:18:33,170 ♬~ 223 00:18:40,956 --> 00:18:44,656 ごめんください。 ≪(お雪)はい。 224 00:18:46,429 --> 00:18:51,129 よろしいですか。 うん。 225 00:18:52,768 --> 00:18:57,640 今日も泊まりだとおっしゃっていたので お着替えを。 226 00:18:57,640 --> 00:19:00,643 いつも すまないな。 227 00:19:00,643 --> 00:19:05,781 母上が おいでになりましたよ。 母上が? 228 00:19:05,781 --> 00:19:09,452 また 何だかんだと うるさいことを言ったのでしょう。 229 00:19:09,452 --> 00:19:11,387 フフッ。 230 00:19:11,387 --> 00:19:18,127 また おいしいものを たくさん こしらえてきてくださったんですよ。 231 00:19:18,127 --> 00:19:22,465 ありがたいことだな。 え? 232 00:19:22,465 --> 00:19:29,338 いや つい 親が こうしてくれるのを 当たり前のようだと思ってしまうが➡ 233 00:19:29,338 --> 00:19:34,038 本当に ありがたいことだなと。 234 00:19:35,744 --> 00:19:43,085 私たちも 親になりましたら 同じようにしましょうね。 235 00:19:43,085 --> 00:19:47,423 ああ そうだな。 236 00:19:47,423 --> 00:19:50,759 はい。 237 00:19:50,759 --> 00:19:56,098 すまないな… 夫婦らしい暮らしをする暇もなく。 238 00:19:56,098 --> 00:20:02,098 いいえ。 私は 何の不満もありませんよ。 239 00:20:17,119 --> 00:20:34,670 ♬~ 240 00:20:34,670 --> 00:20:39,375 お前は お父っつぁん譲りで 酒が強いね。 241 00:20:39,375 --> 00:20:42,811 カ~ッ! おう おっ母さんも飲みなよ。 242 00:20:42,811 --> 00:20:47,483 え? そ… そうかい? おうおう 飲みねえ 飲みねえ。 243 00:20:47,483 --> 00:20:50,819 (笑い声) 244 00:20:50,819 --> 00:21:09,838 ♬~ 245 00:21:09,838 --> 00:21:14,510 ああ! はあ~! 246 00:21:14,510 --> 00:21:19,181 ほら 早く拭かないと 風邪ひくよ。 247 00:21:19,181 --> 00:21:23,481 おっ母さんは気が利くな。 ありがとよ。 248 00:21:25,054 --> 00:21:27,056 おっ母さんも入るかい。 249 00:21:27,056 --> 00:21:29,356 (笑い声) 250 00:21:32,461 --> 00:21:38,334 フフフフッ フフフフッ…。 251 00:21:38,334 --> 00:21:44,807 ハハハハッ ハハハハッ…。 252 00:21:44,807 --> 00:21:54,507 ハハハハッ ハハハハッ…。 253 00:22:01,824 --> 00:22:04,493 足りぬ 足りぬ 足りぬ! 足りぬ! 254 00:22:04,493 --> 00:22:07,830 これ以上 どう切り詰めろというのだ! 255 00:22:07,830 --> 00:22:10,165 (ため息) 256 00:22:10,165 --> 00:22:14,036 何だ? 何でもないよ。 257 00:22:14,036 --> 00:22:19,508 忙しいようだな。 気を回すな。 何だ? 258 00:22:19,508 --> 00:22:28,183 いや 何だか 気になるんだよ あいつのことが。 辰蔵のことか。 259 00:22:28,183 --> 00:22:35,457 あいつ 何だか とても苦しそうで 見ちゃいらんないんだよ。 260 00:22:35,457 --> 00:22:39,328 フッ。 何だよ? 261 00:22:39,328 --> 00:22:44,133 お前は いい娘だな。 え? 262 00:22:44,133 --> 00:22:49,471 あんなことを言われたのに 心配なのか。 悪いかよ。 263 00:22:49,471 --> 00:22:55,144 お前は 無知と貧困に毒されていない。 264 00:22:55,144 --> 00:23:00,444 な… 何だよ 赤ひげ バカにするんじゃないよ! 265 00:23:02,484 --> 00:23:05,154 先生! 何だ? 266 00:23:05,154 --> 00:23:08,490 辰蔵の姿がありません! 267 00:23:08,490 --> 00:23:10,490 何? 268 00:23:13,162 --> 00:23:15,497 まだ そう遠くへは行っていないだろ。 269 00:23:15,497 --> 00:23:18,400 どこに行ったんだ あの体で。 おい 田山➡ 270 00:23:18,400 --> 00:23:21,170 お前が ちゃんと見ていないから こんなことになったんだろ。 271 00:23:21,170 --> 00:23:25,507 津川先生 よく そんなことが言えますね。 賄いの女たちと遊んでたのに。 272 00:23:25,507 --> 00:23:28,177 遊んでいたのではない。 包丁が無くなったというから➡ 273 00:23:28,177 --> 00:23:30,512 一緒に捜していたんだ。 包丁が!? 274 00:23:30,512 --> 00:23:32,781 その包丁は見つかったのか? 275 00:23:32,781 --> 00:23:36,452 いえ。 あちこち捜したんですが…。 ん? 276 00:23:36,452 --> 00:23:39,788 お前か? 知らないよ! 277 00:23:39,788 --> 00:23:43,125 まさか…! 278 00:23:43,125 --> 00:24:07,425 ♬~ 279 00:24:09,151 --> 00:24:11,851 (壺振り)壺 かぶります。 280 00:24:13,489 --> 00:24:15,424 (胴元)さあ 張った 張った。 281 00:24:15,424 --> 00:24:18,160 半! 半! 282 00:24:18,160 --> 00:24:20,829 丁! 半! 283 00:24:20,829 --> 00:24:22,765 (胴元)丁方。 丁方ないか。 (伸吉)よ~し 丁だ! 284 00:24:22,765 --> 00:24:27,503 (壺振り)丁半駒そろいました。 勝負!➡ 285 00:24:27,503 --> 00:24:30,405 五二の半! 286 00:24:30,405 --> 00:24:33,776 よし! ヘヘヘッ…。 287 00:24:33,776 --> 00:24:37,112 おい 大丈夫か? 288 00:24:37,112 --> 00:24:41,984 今日は たんまりあるんでね。 ハハハハッ 景気いいな。 289 00:24:41,984 --> 00:24:44,787 ああ。 よし 次だ 次! よし来い! 290 00:24:44,787 --> 00:24:57,487 ♬~ 291 00:24:59,134 --> 00:25:02,471 この包丁で 何をするつもりだ? 292 00:25:02,471 --> 00:25:04,406 邪魔をするな! 293 00:25:04,406 --> 00:25:08,343 バカな真似はするな! 294 00:25:08,343 --> 00:25:12,481 兄を刺したところで どうにもならんぞ。 295 00:25:12,481 --> 00:25:16,351 あんたに 何が分かる! 296 00:25:16,351 --> 00:25:20,355 俺が どんな思いで働いてきたか。 297 00:25:20,355 --> 00:25:26,028 おっ母さんや妹たちを 幸せにするために働いてきたんだ。 298 00:25:26,028 --> 00:25:31,767 けど 兄貴のせいで…。 299 00:25:31,767 --> 00:25:34,102 兄貴がいなくなれば! 300 00:25:34,102 --> 00:25:38,974 お前は 母親を幸せにしたいと言った。 301 00:25:38,974 --> 00:25:45,674 しかし 兄を殺した息子を持って 母親は幸せになれると思うのか! 302 00:25:47,449 --> 00:25:53,322 母親や妹たちを幸せにしたい。 お前のその気持ちに嘘偽りはないだろう。 303 00:25:53,322 --> 00:25:59,061 だが お前が包丁を握ったのは その気持ちだけではないはずだ。 304 00:25:59,061 --> 00:26:01,997 たとえ 兄を殺したとしても➡ 305 00:26:01,997 --> 00:26:06,997 母親の情愛が すっかり 自分に向くわけではないんだぞ! 306 00:26:13,475 --> 00:26:23,151 ♬~ 307 00:26:23,151 --> 00:26:28,824 お前が 兄に向けるのは 包丁ではない。 308 00:26:28,824 --> 00:26:32,427 本当の思いだ。 309 00:26:32,427 --> 00:26:40,102 お前は 兄に本当の思いを ぶつけたことがあるのか。 310 00:26:40,102 --> 00:26:52,802 ♬~ 311 00:26:57,119 --> 00:27:00,022 気を付けろ。 はい。 312 00:27:00,022 --> 00:27:01,990 (お雪)お湯! お湯 持ってきました! 313 00:27:01,990 --> 00:27:03,992 ≪そこに置いてくれ。 ≪はい! 314 00:27:03,992 --> 00:27:07,129 何があった? あっ 先生! 315 00:27:07,129 --> 00:27:09,464 刃傷沙汰があって けが人が運ばれて…。 316 00:27:09,464 --> 00:27:11,400 あんたの兄ちゃんだよ! 317 00:27:11,400 --> 00:27:14,400 え? 何! 318 00:27:17,139 --> 00:27:21,139 意識は? もうろうとしています。 319 00:27:22,811 --> 00:27:26,148 縫うぞ。 針と糸を用意しろ。 はい。 320 00:27:26,148 --> 00:27:39,428 ♬~ 321 00:27:39,428 --> 00:27:48,103 あんたの兄さん 金がもとで 賭場の連中に襲われたらしい。 322 00:27:48,103 --> 00:27:50,439 え? 323 00:27:50,439 --> 00:27:55,310 その金って どうせ あんたが稼いだ金だろ。 324 00:27:55,310 --> 00:28:00,782 あんたを食い物にしてきた 罰が当たったんだよ。 325 00:28:00,782 --> 00:28:15,797 ♬~ 326 00:28:15,797 --> 00:28:18,467 兄貴…。 327 00:28:18,467 --> 00:28:22,137 おい。 兄貴…。 328 00:28:22,137 --> 00:28:25,137 兄貴! 329 00:28:30,479 --> 00:28:34,082 オエッ…。 え? 330 00:28:34,082 --> 00:28:36,985 おう 辰蔵か。 331 00:28:36,985 --> 00:28:42,758 ちょうどいいや。 水だ 水。 冷たい水 持ってきてくれよ。 332 00:28:42,758 --> 00:28:47,429 兄貴? あ~ 水だっつってんだろ。 333 00:28:47,429 --> 00:28:49,765 兄貴 大丈夫なのか? 334 00:28:49,765 --> 00:28:54,636 大丈夫じゃねえよ。 イッタタタタ… 死ぬかと思ったぜ。 335 00:28:54,636 --> 00:28:57,639 (津川)何 言ってんだ。 それしきのけがで 死ぬわけないだろ。 336 00:28:57,639 --> 00:29:00,776 え? 脇腹に浅い傷が出来ただけだ。 337 00:29:00,776 --> 00:29:03,678 ほら ぼさっとしてねえで 水 持ってこいよ。 338 00:29:03,678 --> 00:29:06,448 お前 まだ酔いが さめてないのか。 339 00:29:06,448 --> 00:29:12,320 あ~ だいぶ飲んじまったからな。 頭が痛えの何のって…。 340 00:29:12,320 --> 00:29:18,060 クソッ あの金 どこ行ったんだよ。➡ 341 00:29:18,060 --> 00:29:20,462 よっこらせっと。➡ 342 00:29:20,462 --> 00:29:25,801 あ~ 水! 井戸は どこだ? 井戸! 343 00:29:25,801 --> 00:29:31,606 待てよ… 待てよ! 344 00:29:31,606 --> 00:29:33,606 あ? 345 00:29:35,410 --> 00:29:38,313 この野郎! 346 00:29:38,313 --> 00:29:42,084 何だ てめえ 実の兄に何しやがるんだ! 347 00:29:42,084 --> 00:29:48,423 お前のことを 兄貴だなんて 思ったことなんか 一度もねえよ! 348 00:29:48,423 --> 00:29:50,759 おい 何をやってるんだ! 349 00:29:50,759 --> 00:29:53,428 邪魔するな。 (田山)え? ですが 先生。 350 00:29:53,428 --> 00:29:57,766 ただの兄弟喧嘩だ。 思う存分やらせてやれ。 351 00:29:57,766 --> 00:30:03,105 ♬~ 352 00:30:03,105 --> 00:30:08,777 兄貴だっていうならな 兄貴らしいとこ 見してくれよ! 353 00:30:08,777 --> 00:30:14,116 お前は ただ 俺や おっ母さんに たかってるだけじゃねえか。 354 00:30:14,116 --> 00:30:16,051 おいおい 何 言ってんだ。 355 00:30:16,051 --> 00:30:20,455 一山当てて お前たちに楽な暮らし させようとしてんのが分かんねえのか。 356 00:30:20,455 --> 00:30:23,125 だったら 真面目に働けっていうんだよ! 357 00:30:23,125 --> 00:30:27,796 おっ母さんに心配させねえで 暮らせっていうんだよ。 358 00:30:27,796 --> 00:30:32,134 それじゃあ お前が困るだろうが! え? 359 00:30:32,134 --> 00:30:36,805 この上 俺に真面目になられちゃあ お前の立場がなくなるぜ。 360 00:30:36,805 --> 00:30:39,805 お前なんか口下手で 真面目以外 取り柄がねえじゃねえか。 361 00:30:42,144 --> 00:30:45,144 ふざけるな~! 362 00:30:47,015 --> 00:30:51,153 お前のせいで…➡ 363 00:30:51,153 --> 00:30:57,025 俺が どれだけ苦労してきたか 分かってんのか! 364 00:30:57,025 --> 00:31:02,497 ♬~ 365 00:31:02,497 --> 00:31:05,834 クッソ~! 366 00:31:05,834 --> 00:31:09,704 分かってんのか! 367 00:31:09,704 --> 00:31:14,176 分かってんのかよ! 368 00:31:14,176 --> 00:31:17,512 畜生! 369 00:31:17,512 --> 00:31:20,812 分かってんのかよ! 370 00:31:22,384 --> 00:31:25,854 畜生! 371 00:31:25,854 --> 00:31:30,525 ♬~ 372 00:31:30,525 --> 00:31:34,225 畜生! 373 00:31:37,332 --> 00:31:40,802 口を開けろ。 しみるぞ。 374 00:31:40,802 --> 00:31:47,676 (うめき声) 375 00:31:47,676 --> 00:31:51,813 刃物の傷より ひどいな。 ハハッ。 376 00:31:51,813 --> 00:31:57,152 あいつに あんな力があったとは…。 377 00:31:57,152 --> 00:32:05,493 そりゃ そうだよな。 大工仕事で ずっと働いてきたんだから。 378 00:32:05,493 --> 00:32:10,165 後ろめたいようだな。 え? 379 00:32:10,165 --> 00:32:16,037 お前は ずっと長いこと 弟を食い物にしてきた。 380 00:32:16,037 --> 00:32:19,507 だから 殴られたままにしたんだろう。 381 00:32:19,507 --> 00:32:26,507 フッ。 あいつに これ以上 けがされたら 食いぶちが なくなるんでね。 382 00:32:30,518 --> 00:32:37,125 あいつは とにかく真面目なやつで➡ 383 00:32:37,125 --> 00:32:43,798 半端なことをしたのを 俺は見たことがねえ。 384 00:32:43,798 --> 00:32:47,469 立場ねえよ 全く。 385 00:32:47,469 --> 00:32:52,769 あいつの方が 兄貴の俺より ずっと 出来がいいんだからな。 386 00:32:56,811 --> 00:33:00,682 もっと いい加減に生きろってんだよな。 387 00:33:00,682 --> 00:33:07,822 人をだましてよ 裏をかいてよ。 388 00:33:07,822 --> 00:33:12,494 面白おかしくよ。 389 00:33:12,494 --> 00:33:15,794 ハハッ…。 390 00:33:22,504 --> 00:33:27,842 まだ 間に合うぞ。 391 00:33:27,842 --> 00:33:29,778 え? 392 00:33:29,778 --> 00:33:36,651 一度ぐらい 兄貴らしいところを 見せてやったらどうだ。 393 00:33:36,651 --> 00:33:44,351 お前は ろくでなしだったようだが 自分を諦めるのは まだ早すぎる。 394 00:33:57,472 --> 00:34:03,345 伸吉 お前がいなけりゃ 私は どうなるんだい…。➡ 395 00:34:03,345 --> 00:34:07,482 一体 何があったんだい? 396 00:34:07,482 --> 00:34:10,385 おっ母さんは 元気でいてくれよな。 397 00:34:10,385 --> 00:34:17,158 何せ 俺の大事な金づるだからな。 398 00:34:17,158 --> 00:34:19,094 金づる? 399 00:34:19,094 --> 00:34:22,030 おいおい なんて顔してんだよ。 400 00:34:22,030 --> 00:34:25,834 辰蔵も あのとおりの体なんだ。 401 00:34:25,834 --> 00:34:28,737 おっ母さんが働くのが当たり前だろ。 402 00:34:28,737 --> 00:34:30,672 え…。 403 00:34:30,672 --> 00:34:35,443 何なら 俺が いいとこ教えてやるよ。 404 00:34:35,443 --> 00:34:40,782 伸吉… お前 何 考えてんだい。 405 00:34:40,782 --> 00:34:44,119 心配するなって。 イテテテッ…。 406 00:34:44,119 --> 00:34:49,457 おっ母さんも まだ若えし なかなか いい女だよ。 407 00:34:49,457 --> 00:34:55,130 え…。 お… お前 親に向かって なんてこと! バカ! 408 00:34:55,130 --> 00:34:58,466 痛えな。 けが人には優しくしろよ。 409 00:34:58,466 --> 00:35:01,369 バカ! おうおう 案外 強えな。 410 00:35:01,369 --> 00:35:05,340 (おまさ) 私が 今まで どんなに お前のことを! 411 00:35:05,340 --> 00:35:12,480 分かってるよ。 感謝 感謝の気持ちで サイコロの目 追ってたよ。 412 00:35:12,480 --> 00:35:15,150 サイコロ? ああ。 413 00:35:15,150 --> 00:35:20,021 おっ母さんがくれた金 全部 博打に使ったよ。 414 00:35:20,021 --> 00:35:27,729 え! じゃあ 新しい仕事始めるってのも 全部 嘘だったのかい。 415 00:35:27,729 --> 00:35:32,634 フッ 博打も 仕事のうちよ。 416 00:35:32,634 --> 00:35:36,104 お前なんか もう息子でも何でもないよ! 417 00:35:36,104 --> 00:35:39,974 二度と うちに帰ってくるな! 418 00:35:39,974 --> 00:36:00,328 ♬~ 419 00:36:00,328 --> 00:36:08,036 あんた こんな仕事で いくら もらえるんだい? 420 00:36:08,036 --> 00:36:13,036 (竹造)え? 銭金じゃねえや。 421 00:36:15,143 --> 00:36:18,813 銭金じゃねえか…。 422 00:36:18,813 --> 00:36:20,748 フッ…。 423 00:36:20,748 --> 00:36:25,687 そうか… いいこと聞いたよ。 424 00:36:25,687 --> 00:36:46,975 ♬~ 425 00:36:46,975 --> 00:36:51,112 ん? フフッ… どう? 426 00:36:51,112 --> 00:36:53,448 うまい! そうでしょう? 427 00:36:53,448 --> 00:36:57,318 それね お常さんが作ったんですよ。 428 00:36:57,318 --> 00:37:03,124 お常さんの息子さんね 博打をやめて しっかり働きだしたみたいで。 429 00:37:03,124 --> 00:37:06,461 そうか そうか。 長続きするといいねえ。 430 00:37:06,461 --> 00:37:10,131 でないと まともな飯にありつけない。 431 00:37:10,131 --> 00:37:12,800 先生。 何だ? 432 00:37:12,800 --> 00:37:15,470 先ほど 伸吉が出ていったようです。 433 00:37:15,470 --> 00:37:20,341 どこかに 旅に出るような後ろ姿だったと。 434 00:37:20,341 --> 00:37:22,343 そうか。 435 00:37:22,343 --> 00:37:29,484 先生のおかげで 伸吉は ようやく 辰蔵の兄になれたんだと思います。 436 00:37:29,484 --> 00:37:34,322 それにしても おまさって母親も 悪いですよね。 437 00:37:34,322 --> 00:37:38,092 初めから お兄さんを えこひいきしていなければ➡ 438 00:37:38,092 --> 00:37:40,995 こんなことには ならなかったのに。 439 00:37:40,995 --> 00:37:43,965 まあ 親も また 人だからな。 440 00:37:43,965 --> 00:37:50,438 人の心には 自分でも どうすることも できない 深い闇があるってもんで。 441 00:37:50,438 --> 00:37:54,108 津川。 はい。 442 00:37:54,108 --> 00:37:59,781 明日の往診は 全て お前に任せる。 443 00:37:59,781 --> 00:38:02,684 あ えっと… 全部ですか? 444 00:38:02,684 --> 00:38:04,684 頼んだぞ。 445 00:38:06,454 --> 00:38:08,790 はい。 446 00:38:08,790 --> 00:38:12,660 ♬~ 447 00:38:12,660 --> 00:38:16,130 何だか 風向きが変わったようだ。 448 00:38:16,130 --> 00:38:21,130 今度は 保本さんが 津川さんに嫉妬の炎を。 さっさと食え。 449 00:38:23,004 --> 00:38:27,004 お代わり。 はい。 450 00:38:46,427 --> 00:38:48,427 あ…。 451 00:38:53,101 --> 00:39:02,101 よかったね。 うちに帰れるんだね。 ああ…。 452 00:39:05,680 --> 00:39:13,680 達者でね。 また働き過ぎて 倒れるんじゃないよ。 453 00:39:25,466 --> 00:39:27,766 何だい。 454 00:39:31,739 --> 00:39:34,075 悪かった。 455 00:39:34,075 --> 00:39:38,746 お前を疑ったりして 悪かった。 456 00:39:38,746 --> 00:39:43,746 お前のけが 早くよくなるといいな。 457 00:39:45,420 --> 00:39:58,433 ♬~ 458 00:39:58,433 --> 00:40:01,733 何だい あいつ…。 459 00:40:07,442 --> 00:40:10,778 晴れ晴れした顔してさ。 460 00:40:10,778 --> 00:40:33,801 ♬~ 461 00:40:33,801 --> 00:40:38,673 で そん時よ とっさに よけたら 猫の尻尾 踏んじまって。 462 00:40:38,673 --> 00:40:41,142 (三郎)それで どうなったんだい? 463 00:40:41,142 --> 00:40:43,478 猫が ギャ~ッて怒って 追っかけてくるもんだから➡ 464 00:40:43,478 --> 00:40:45,413 俺は まあ 逃げる 逃げる。 465 00:40:45,413 --> 00:40:49,150 そしたら 今度は けっつまずいて 肥だめに ドボ~ンよ。 466 00:40:49,150 --> 00:40:52,053 えっ 肥だめ? 臭え! 467 00:40:52,053 --> 00:40:55,022 伸吉 飯の最中に何だい。 468 00:40:55,022 --> 00:41:03,698 ♬~ 469 00:41:03,698 --> 00:41:06,701 辰蔵 お前 いつ…。 470 00:41:06,701 --> 00:41:09,837 それ どうするんだ? 471 00:41:09,837 --> 00:41:14,709 ああ もう要らないんだよ。 え? 472 00:41:14,709 --> 00:41:18,709 伸吉は もう帰ってこないんだよ。 473 00:41:21,182 --> 00:41:24,085 そのうち 平気な顔で帰ってくるよ。 474 00:41:24,085 --> 00:41:26,385 え…。 475 00:41:28,856 --> 00:41:37,856 おっ母さん 俺… おっ母さんたちを守っていくから。 476 00:41:40,802 --> 00:41:45,502 どんなことがあっても 守るから。 477 00:41:49,477 --> 00:41:51,777 辰蔵…。 478 00:41:53,347 --> 00:41:55,817 ああ… 腹減ったな。 479 00:41:55,817 --> 00:42:00,154 おっ母さんの作ってくれる飯 食いてえな。 480 00:42:00,154 --> 00:42:04,492 全く しょうのない子だね。 481 00:42:04,492 --> 00:42:06,828 (おその 三郎)ただいま! お帰り。 482 00:42:06,828 --> 00:42:09,163 辰蔵兄ちゃん! 兄ちゃん! 483 00:42:09,163 --> 00:42:11,499 ただいま。 (おその 三郎)お帰り。 484 00:42:11,499 --> 00:42:13,835 おっ母さんを手伝ってやってくれ。 485 00:42:13,835 --> 00:42:18,172 じゃあ 三郎 水をくんできておくれ。 うん。 486 00:42:18,172 --> 00:42:26,514 ♬~ 487 00:42:26,514 --> 00:42:28,814 兄貴…。 488 00:42:30,384 --> 00:42:34,789 俺は ここで待ってるよ。 489 00:42:34,789 --> 00:42:54,809 ♬~ 490 00:42:54,809 --> 00:42:58,145 (辰蔵)達者だったか? (おその)うん。 491 00:42:58,145 --> 00:43:00,815 (辰蔵)腹減ったな。 492 00:43:00,815 --> 00:43:03,150 あいにく 私には妻がおります。 493 00:43:03,150 --> 00:43:05,486 それは いいことを聞いた。 妻が喜ぶ。 494 00:43:05,486 --> 00:43:07,822 病の妻は おらん。 495 00:43:07,822 --> 00:43:11,692 あの人は やっと気づいたのだ。 496 00:43:11,692 --> 00:43:15,496 自分が失ったものの大きさに…。 497 00:43:15,496 --> 00:43:20,368 俺は逃げていた。 己が楽になりたいばかりに…。 498 00:43:20,368 --> 00:43:25,368 病だ。 深い後悔という病だ…。 499 00:45:34,135 --> 00:45:38,606 4回にわたり 一人のミュージシャンの音楽人生を➡ 500 00:45:38,606 --> 00:45:43,010 歌と共にたどる 「歌のあとさき」。 501 00:45:43,010 --> 00:45:46,547 今回は 時代時代と向き合いながら➡ 502 00:45:46,547 --> 00:45:52,153 歌で メッセージを届けてきた シンガーソングライター 加藤登紀子。 503 00:45:52,153 --> 00:45:57,153 その第3回 「躍動編」です。