1 00:00:32,921 --> 00:00:38,660 ♬~ 2 00:00:38,660 --> 00:00:41,997 この分なら もう2~3日で退所できるだろう。 3 00:00:41,997 --> 00:00:44,697 あっ ありがとうございます。 4 00:00:47,336 --> 00:00:54,009 (津川)もう少し 様子を見よう。 すみません。 ありがとうございます。 5 00:00:54,009 --> 00:00:57,346 具合は どうだ。 まだ 痛むんよ。 6 00:00:57,346 --> 00:01:00,249 そろそろ 治ってもいい頃なんだがな。 7 00:01:00,249 --> 00:01:04,219 何だい 私が嘘ついてるとでも言うのかい。 8 00:01:04,219 --> 00:01:07,919 いや。 ゆっくり養生しろ。 9 00:01:09,691 --> 00:01:13,362 こんなとこ いたくて いるんじゃないよ。 10 00:01:13,362 --> 00:01:17,232 治ったら すぐ出てってやるさ。 11 00:01:17,232 --> 00:01:20,235 どうだ 少しは楽になったか? 12 00:01:20,235 --> 00:01:23,372 おかげさまで すっかり よくなりました。 13 00:01:23,372 --> 00:01:27,709 治ってなどおらん。 熱があるじゃないか。 すみません。 14 00:01:27,709 --> 00:01:31,580 病を治さなければ 元も子もないだろう。 15 00:01:31,580 --> 00:01:35,984 病人は 医者に対して 正直じゃないといかんぞ。 16 00:01:35,984 --> 00:01:39,684 もう少し辛抱しろ。 17 00:01:49,331 --> 00:01:51,667 (せき) 18 00:01:51,667 --> 00:01:57,339 (荒い息遣い) 19 00:01:57,339 --> 00:02:01,677 熱は いつからだ。 (妻)7日ほど前から。 20 00:02:01,677 --> 00:02:06,677 息苦しそうだな。 よいしょ。 21 00:02:13,288 --> 00:02:16,288 ヘラだ。 あ。 22 00:02:19,695 --> 00:02:22,395 口を開けて。 23 00:02:26,568 --> 00:02:29,705 風邪を こじらせてるな…。 24 00:02:29,705 --> 00:02:32,607 このままだと 重い肺の病になるぞ。 25 00:02:32,607 --> 00:02:34,543 (夫)治るでしょうか…。 26 00:02:34,543 --> 00:02:38,313 早く治して働かないと…。 27 00:02:38,313 --> 00:02:42,313 今は 治すことだけを考えるんだ。 28 00:02:45,654 --> 00:02:48,557 この薬を飲めば 熱は下がる。 29 00:02:48,557 --> 00:02:51,994 あとは ゆっくり休め。 ありがとうございます。 30 00:02:51,994 --> 00:02:57,866 もっと早く診せなければ 駄目じゃないか。 すみません…。 31 00:02:57,866 --> 00:03:01,003 食べ物が よくないのだろう。 32 00:03:01,003 --> 00:03:06,341 ふだんから もっと滋養のあるものを 食べていれば 病気を減らせる。 33 00:03:06,341 --> 00:03:09,244 無知と貧困のせいですね。 34 00:03:09,244 --> 00:03:14,216 どこかで聞いたセリフだな。 新出先生が おっしゃっていました。 35 00:03:14,216 --> 00:03:18,353 (去定の真似で) 多くの病は 無知と貧困が原因だ。 36 00:03:18,353 --> 00:03:22,024 無知と貧困と闘って 世の中を変えなければ。 37 00:03:22,024 --> 00:03:25,360 それはいいが 目の前の仕事を早く覚えろ。 38 00:03:25,360 --> 00:03:28,263 喉を診る時は ヘラを用意しろと言っただろう。 39 00:03:28,263 --> 00:03:34,636 分かってます。 しかし 先のことを見据えることも大事でしょう。 40 00:03:34,636 --> 00:03:36,972 そうだな…。 (鎌田)どうなんだ。 41 00:03:36,972 --> 00:03:40,842 (八百屋)だから もう お侍さん 勘弁してくださいよ。 42 00:03:40,842 --> 00:03:43,311 (鎌田)何が難しいことがある? 聞いているんだ。 43 00:03:43,311 --> 00:03:45,647 (八百屋)ああ 全く! 44 00:03:45,647 --> 00:03:47,983 八百屋を営んでおきながら➡ 45 00:03:47,983 --> 00:03:50,318 売り物のことを知らないとはな。 46 00:03:50,318 --> 00:03:52,654 大根も ごぼうも そりゃ滋養はありますよ。 47 00:03:52,654 --> 00:03:55,323 だけど どっちが滋養が高いかなんて 聞かれてもね。 48 00:03:55,323 --> 00:03:57,659 それで 八百屋を よく名乗れたものだ。 49 00:03:57,659 --> 00:04:00,328 お侍でも それは聞き捨てなりませんな。➡ 50 00:04:00,328 --> 00:04:02,998 ここには 隣町からだって お客が来るんだ。➡ 51 00:04:02,998 --> 00:04:06,334 八百屋を名乗るななんて言われたんじゃ 引っ込みがつかねえや! 52 00:04:06,334 --> 00:04:08,270 言い過ぎた。 もうよい。 53 00:04:08,270 --> 00:04:12,007 よくないね。 そんなに 気に入らねえんなら➡ 54 00:04:12,007 --> 00:04:16,344 遠慮なく 手討ちにして おくんなさいよ! 55 00:04:16,344 --> 00:04:20,215 この刀は そんな くだらんことのために 使うものではない。 56 00:04:20,215 --> 00:04:23,218 くだらねえだと!? 喧嘩はよせ。 57 00:04:23,218 --> 00:04:27,355 こりゃ 養生所の先生…。 何があったんだ。 58 00:04:27,355 --> 00:04:29,291 病に伏せっている家内のために➡ 59 00:04:29,291 --> 00:04:31,626 滋養のあるものを 作ってやりたいのですが➡ 60 00:04:31,626 --> 00:04:34,529 八百屋が頼りになりませんので。 61 00:04:34,529 --> 00:04:38,300 悪うございましたね。 邪魔をしたな。 62 00:04:38,300 --> 00:04:41,203 今 お内儀が病だと。 63 00:04:41,203 --> 00:04:43,638 ええ。 64 00:04:43,638 --> 00:04:49,311 私は 小石川養生所の医者です。 どのような病ですか? 65 00:04:49,311 --> 00:04:51,646 胃の病です。 66 00:04:51,646 --> 00:04:54,549 医者には診せていますか? もちろん。 67 00:04:54,549 --> 00:04:59,521 高名な医者に診てもらい 胃の薬と朝鮮人参を飲ませています。 68 00:04:59,521 --> 00:05:02,657 どこの 何という医者ですか? 69 00:05:02,657 --> 00:05:05,994 あなたよりは優秀な医者ですので ご心配なく。 70 00:05:05,994 --> 00:05:08,663 な…。 そうですか。 71 00:05:08,663 --> 00:05:11,663 では これにて。 72 00:05:15,537 --> 00:05:20,008 ややこしそうな男だな。 お前に言われたくはないだろう。 73 00:05:20,008 --> 00:05:25,347 いえいえ。 鎌田様は堅物そうに見えて そうでもないんですよ。 74 00:05:25,347 --> 00:05:28,683 どういうことだ? 1年ほど前でしたかね。 75 00:05:28,683 --> 00:05:34,289 病のご新造様のために 一軒家を借りてやって移り住んで。➡ 76 00:05:34,289 --> 00:05:37,192 毎日 あっちこっち訪ね歩いて➡ 77 00:05:37,192 --> 00:05:41,630 滋養のあるものを買ってきては ご新造様に食べさせてるんですよ。 78 00:05:41,630 --> 00:05:45,500 する話といったら ご新造様の話ばかり。 79 00:05:45,500 --> 00:05:47,502 女は わがままでいかん。 80 00:05:47,502 --> 00:05:50,639 毎日あれが食べたい これが食べたいと。 (行商)おっしゃるとおりで。 81 00:05:50,639 --> 00:05:54,309 でも 作っておあげになるんでしょ。 いや 甘いだけだ。 82 00:05:54,309 --> 00:05:56,978 (笑い声) 83 00:05:56,978 --> 00:06:04,319 ♬~ 84 00:06:04,319 --> 00:06:06,254 これをくれ。 85 00:06:06,254 --> 00:06:09,991 本当に ご新造様に ほれていらっしゃるんだね。 86 00:06:09,991 --> 00:06:12,894 意外だな。 大したものだな。 87 00:06:12,894 --> 00:06:16,865 お宅では そういうことは しないんですか? 88 00:06:16,865 --> 00:06:20,865 俺のことは どうでもいい。 89 00:06:24,005 --> 00:06:32,280 <これは この浪人と病に伏せる妻との 奇妙な物語だ> 90 00:06:32,280 --> 00:06:45,827 ♬~ 91 00:06:45,827 --> 00:06:48,527 椙江 帰ったぞ。 92 00:06:50,298 --> 00:06:55,971 遅くなってすまない。 すぐに食事の支度をするからな。 93 00:06:55,971 --> 00:06:59,271 今日は塩鮭だ。 94 00:07:05,647 --> 00:07:19,194 ♬~ 95 00:07:19,194 --> 00:07:21,196 気になること? 96 00:07:21,196 --> 00:07:24,332 はあ。 浪人なのですが➡ 97 00:07:24,332 --> 00:07:27,669 妻が胃の病で伏せっているというのです。 98 00:07:27,669 --> 00:07:30,338 高名な医者に診せているというのですが➡ 99 00:07:30,338 --> 00:07:34,209 医者が出したのが 朝鮮人参だそうです。 100 00:07:34,209 --> 00:07:37,145 朝鮮人参? 101 00:07:37,145 --> 00:07:41,283 浪人が そんな値の張る薬に手を出せまい。 102 00:07:41,283 --> 00:07:43,218 そうなのです。 103 00:07:43,218 --> 00:07:45,620 先日 出先で聞いたのですが➡ 104 00:07:45,620 --> 00:07:49,291 名医と嘘をついて 高額な薬料を取って➡ 105 00:07:49,291 --> 00:07:53,962 実は 医者も薬も偽物だったということが 最近あったそうです。 106 00:07:53,962 --> 00:07:56,865 もしや それでは。 107 00:07:56,865 --> 00:08:00,835 どうしたものかと…。 108 00:08:00,835 --> 00:08:06,308 このまま放っておけば 病が悪くなってしまうかもしれません。 109 00:08:06,308 --> 00:08:11,980 人に聞く前に 自分は どう思うんだ。 110 00:08:11,980 --> 00:08:14,316 はあ…。 ≪(田山)失礼します。 111 00:08:14,316 --> 00:08:16,651 入れ。 112 00:08:16,651 --> 00:08:21,651 ご相談があります。 何だ。 113 00:08:23,525 --> 00:08:27,996 今日 帰り道で ちょっと。 浪人のことか。 114 00:08:27,996 --> 00:08:32,834 へ…。 もう お話しされたんですか? 115 00:08:32,834 --> 00:08:35,603 私が思うに 最近 高名な医者だと…。 116 00:08:35,603 --> 00:08:39,274 それも聞いた。 どうするかということだ。 117 00:08:39,274 --> 00:08:41,209 私に お任せください。 118 00:08:41,209 --> 00:08:45,613 明日にでも 家に乗り込んで 妻の様子を 無理にでも診ようと思います。 119 00:08:45,613 --> 00:08:49,484 そんな無理やりなことができるか。 そんな弱腰で 医者が務まりますか。 120 00:08:49,484 --> 00:08:52,954 強引ならいいというものではない! そこまでだ。 121 00:08:52,954 --> 00:08:56,624 この一件は お前たち2人に任せる。 122 00:08:56,624 --> 00:09:00,962 はあ…。 分かりました。 123 00:09:00,962 --> 00:09:07,836 ♬~ 124 00:09:07,836 --> 00:09:11,606 新出先生は 私たちを信用してくださいましたね。 125 00:09:11,606 --> 00:09:13,541 体よく 押しつけられただけだ。 126 00:09:13,541 --> 00:09:17,979 せっかく 先生に任されたんですよ。 保本さんが やらないと言うのなら➡ 127 00:09:17,979 --> 00:09:21,316 私一人でも乗り込んで 療治を受けさせます。 128 00:09:21,316 --> 00:09:26,016 好きにしろ。 好きにします。 129 00:09:27,989 --> 00:09:29,924 田山先生にかかっちゃ➡ 130 00:09:29,924 --> 00:09:32,260 保本先生も 形なしですね。 131 00:09:32,260 --> 00:09:34,195 怖いもの知らずなだけだ。 132 00:09:34,195 --> 00:09:36,131 今に 痛い目に遭うに決まってる。 133 00:09:36,131 --> 00:09:38,600 強がっちゃって…! 134 00:09:38,600 --> 00:09:41,900 (笑い声) 135 00:09:45,473 --> 00:09:53,473 (子どもたち)えいっ えいっ えいっ…。 136 00:10:03,825 --> 00:10:07,125 御免。 137 00:10:13,968 --> 00:10:15,904 何か? 138 00:10:15,904 --> 00:10:20,308 いや… 通りかかったので お内儀の様子でも見てさしあげようかと。 139 00:10:20,308 --> 00:10:24,179 言ったはずだ。 妻は 高名な医者に診てもらっている。 140 00:10:24,179 --> 00:10:27,649 何という方ですか? 141 00:10:27,649 --> 00:10:30,949 あ これは 良庵先生。 142 00:10:33,988 --> 00:10:38,660 (良庵)今日も お内儀を拝見しに参った。 143 00:10:38,660 --> 00:10:42,360 ありがとうございます。 さっ。 144 00:10:44,532 --> 00:10:48,336 お 養生所の方じゃな…。 145 00:10:48,336 --> 00:10:52,036 さあ 先生 どうぞ。 ああ。 146 00:11:00,682 --> 00:11:04,552 (子どもたち)おじさ~ん! おじさん おじさん おじさん…! 147 00:11:04,552 --> 00:11:08,356 大変だ おじさん! どうした? 148 00:11:08,356 --> 00:11:11,025 あっちで お侍が斬り合いしてるよ! 149 00:11:11,025 --> 00:11:13,025 何…。 150 00:11:14,896 --> 00:11:17,899 先生 頼みます! 151 00:11:17,899 --> 00:11:20,034 どっちだ? あっち あっち! 152 00:11:20,034 --> 00:11:23,734 早く! 早く! 153 00:11:25,707 --> 00:11:30,044 やる気か! (小島)おう。 決着をつけよう! 154 00:11:30,044 --> 00:11:34,344 (沖田)待て待て 落ち着け! 止めだて無用! 155 00:11:37,318 --> 00:11:42,657 (沖田)待て! 待て 待て…! 156 00:11:42,657 --> 00:11:49,998 ♬~ 157 00:11:49,998 --> 00:11:53,334 うおりゃ~! やめろ やめろ! 158 00:11:53,334 --> 00:11:55,670 何をしている。 159 00:11:55,670 --> 00:12:00,542 子細あって このような仕儀と相なった。 そちらには関わりのないこと。 160 00:12:00,542 --> 00:12:02,544 こんなところでやられたら 周りが迷惑だ。 161 00:12:02,544 --> 00:12:05,844 うるさい! やれ! 162 00:12:07,682 --> 00:12:13,354 やるなら 私を倒してからにされよ。 163 00:12:13,354 --> 00:12:38,313 ♬~ 164 00:12:38,313 --> 00:12:40,982 ええい 離せ! 165 00:12:40,982 --> 00:12:44,852 ぐあっ! おのれ~! 166 00:12:44,852 --> 00:12:46,852 うっ…! 167 00:12:56,998 --> 00:13:00,698 お見事。 168 00:13:04,672 --> 00:13:07,575 このバカ者どもが…。 169 00:13:07,575 --> 00:13:09,544 手当てをせねば…。 170 00:13:09,544 --> 00:13:14,544 お いいところに医者がいる。 171 00:13:18,019 --> 00:13:22,690 寝る時以外は これをつけて あまり 上半身を動かさないようにしろ。 172 00:13:22,690 --> 00:13:25,026 失礼します。 よし いいぞ。 173 00:13:25,026 --> 00:13:27,695 内臓に問題はなさそうだな。 174 00:13:27,695 --> 00:13:30,031 冷やしておけば じきに腫れは引くだろう。 175 00:13:30,031 --> 00:13:32,331 よし 次。 176 00:13:33,901 --> 00:13:36,304 イタタタタ…! 我慢しなさい。 177 00:13:36,304 --> 00:13:38,640 余計な仕事を持ち込んで…。 178 00:13:38,640 --> 00:13:43,940 申し訳ない。 あ いえ… 外でお待ちください。 179 00:13:51,653 --> 00:13:58,326 とんだ手間をおかけして。 いやいや 何があったのですか? 180 00:13:58,326 --> 00:14:02,997 もとはといえば 御前試合の判定を巡って➡ 181 00:14:02,997 --> 00:14:08,670 勝った負けたのと言い争いが高じて このようなことに…。 182 00:14:08,670 --> 00:14:16,010 人が死ねば 大変なことになるところを あの鎌田殿のおかげで…。 183 00:14:16,010 --> 00:14:21,683 それにしても あの鎌田殿は大変な腕前。 184 00:14:21,683 --> 00:14:25,983 是非とも 我が家中に迎えたい。 185 00:14:31,292 --> 00:14:33,227 鎌田殿。 186 00:14:33,227 --> 00:14:35,630 では 私は これで。 187 00:14:35,630 --> 00:14:37,630 お待ちくだされ! 188 00:14:39,300 --> 00:14:41,235 お待ちくだされ! 189 00:14:41,235 --> 00:14:46,641 鎌田殿! お待ちくだされ。 190 00:14:46,641 --> 00:14:49,544 鎌田殿! 191 00:14:49,544 --> 00:15:29,016 ♬~ 192 00:15:29,016 --> 00:15:31,919 何だい… 文句でもあるのかい。 193 00:15:31,919 --> 00:15:35,289 いや ない。 194 00:15:35,289 --> 00:15:37,959 ≪(沖田)鎌田殿!➡ 195 00:15:37,959 --> 00:15:41,295 鎌田殿! 196 00:15:41,295 --> 00:15:43,595 ああ…。 197 00:15:45,967 --> 00:15:48,636 何か 悪いことでもしたのかい。 198 00:15:48,636 --> 00:15:51,973 いや そうでもないのだが。 199 00:15:51,973 --> 00:15:54,642 (およね)どうだか。 200 00:15:54,642 --> 00:15:57,311 お前は どうして このような…。 201 00:15:57,311 --> 00:15:59,981 (およね)ここを出ても 行くとこないし➡ 202 00:15:59,981 --> 00:16:03,317 ここなら ただで飯が食えるからね。 203 00:16:03,317 --> 00:16:05,987 なるほど…。 204 00:16:05,987 --> 00:16:10,324 初めて会った女の隠し事を聞くのは 妙な気分だ。 205 00:16:10,324 --> 00:16:13,024 しかし…。 206 00:16:14,662 --> 00:16:17,331 何だい。 207 00:16:17,331 --> 00:16:20,234 いつまでも 嘘をつけるものではないだろう。 208 00:16:20,234 --> 00:16:24,934 そんなことは分かってるさ。 …どうにでもなれ。 209 00:16:28,676 --> 00:16:35,376 ♬~ 210 00:16:36,951 --> 00:16:38,886 あの鎌田というのが➡ 211 00:16:38,886 --> 00:16:42,824 妻が胃の病だという浪人だな。 はい。 212 00:16:42,824 --> 00:16:46,627 あ さっきの騒ぎで 言うのを忘れていました。 213 00:16:46,627 --> 00:16:49,964 そのことなら 大丈夫です。 え… どうして。 214 00:16:49,964 --> 00:16:54,964 あの浪人の妻は 良庵という医者が診ています。 215 00:16:56,637 --> 00:17:00,508 面構えが やけに偉そうな医者でした。 216 00:17:00,508 --> 00:17:03,978 フン なら間違いあるまい。 217 00:17:03,978 --> 00:17:06,278 ご存じですか? 218 00:17:07,849 --> 00:17:10,651 俺の父親だ。 219 00:17:10,651 --> 00:17:12,987 え! 220 00:17:12,987 --> 00:17:17,325 そんなに 偉そうだったか。 221 00:17:17,325 --> 00:17:21,996 時に津川さん およねの具合は どうですか? 222 00:17:21,996 --> 00:17:24,899 もう けがは治る頃ですが。 223 00:17:24,899 --> 00:17:28,669 治ってるはずなんだが まだ 本人が痛いと言うんでな。 224 00:17:28,669 --> 00:17:32,940 一度は 先生を刺そうとした女ですよ。 放り出せばいいでしょ。 225 00:17:32,940 --> 00:17:35,843 田山 黙って食え。 226 00:17:35,843 --> 00:17:38,279 は… はい。 227 00:17:38,279 --> 00:17:46,279 (お常の笑い声) 228 00:17:53,294 --> 00:17:57,632 ああ! やっと見つけた。 229 00:17:57,632 --> 00:18:00,534 辺りで聞いて回ったのだ。 230 00:18:00,534 --> 00:18:03,504 何か…。 鎌田殿。 231 00:18:03,504 --> 00:18:09,977 昨日は 大変なところを収めていただき まことに かたじけない…。 232 00:18:09,977 --> 00:18:12,880 十分なお礼も言えぬままに。 233 00:18:12,880 --> 00:18:14,849 礼を言われるほどのことでは ございません。 234 00:18:14,849 --> 00:18:18,653 いや それでは私の気持ちが収まらぬ。 235 00:18:18,653 --> 00:18:21,989 分かりました。 では。 236 00:18:21,989 --> 00:18:24,659 いや それだけではなく…➡ 237 00:18:24,659 --> 00:18:31,465 是非 貴殿と話したいことがありましてな。 238 00:18:31,465 --> 00:18:36,765 家の中は むさ苦しいので その辺で。 239 00:18:41,142 --> 00:18:45,279 とにかく 喧嘩が収まって よろしゅうございました。 240 00:18:45,279 --> 00:18:51,152 それも 貴殿にお助けいただいたおかげ。 いえ。 それは もう。 241 00:18:51,152 --> 00:18:57,625 鎌田殿の剣の腕前は かなりのものと お見受けいたした。 242 00:18:57,625 --> 00:19:00,528 これは どちらで? 243 00:19:00,528 --> 00:19:05,499 故あって 今は浪々の身ですが 以前は さる大名家に仕えておりました。 244 00:19:05,499 --> 00:19:10,638 そうでしたか。 いや 相当な修練を 積まれたのでしょうなあ。 245 00:19:10,638 --> 00:19:13,307 はあ…。 246 00:19:13,307 --> 00:19:15,977 もう よろしいでしょうか。 247 00:19:15,977 --> 00:19:18,879 ああ~ お待ちくだされ! 248 00:19:18,879 --> 00:19:20,848 何でしょう。 249 00:19:20,848 --> 00:19:24,652 それがしには 娘がござる。 250 00:19:24,652 --> 00:19:29,523 志乃と申します。 当年取って 18歳。 251 00:19:29,523 --> 00:19:34,261 我が娘ながら なかなかの器量。 252 00:19:34,261 --> 00:19:38,132 礼儀作法も 一とおりは教えております。 253 00:19:38,132 --> 00:19:40,134 それで? 254 00:19:40,134 --> 00:19:43,604 婿になっていただきたい。 255 00:19:43,604 --> 00:19:46,507 え? さすれば おのずと➡ 256 00:19:46,507 --> 00:19:50,478 仕官がかなう。 257 00:19:50,478 --> 00:19:56,617 貴殿の腕前なら 否やを言うものは おりますまい。 258 00:19:56,617 --> 00:20:01,288 まことに ありがたいお言葉ですが… あいにく 私には妻がおります。 259 00:20:01,288 --> 00:20:05,960 え! あ… それは さようか。 260 00:20:05,960 --> 00:20:11,298 長年 病に伏せっておりまして… そばにいてやらねばならんのです。 261 00:20:11,298 --> 00:20:14,969 あ それは… それは お気の毒に。 262 00:20:14,969 --> 00:20:17,969 では これにて。 はあ。 263 00:20:25,312 --> 00:20:31,185 ハハハッ そうか。 しかし 驚いたな。 264 00:20:31,185 --> 00:20:33,654 驚いたのは こっちです。 265 00:20:33,654 --> 00:20:37,324 ≪(田山)失礼します。 おう。 266 00:20:37,324 --> 00:20:39,260 お呼びでしょうか。 267 00:20:39,260 --> 00:20:41,195 おう。 あっ! 268 00:20:41,195 --> 00:20:45,199 偉そうな顔の保本良庵だ。 269 00:20:45,199 --> 00:20:50,337 誰が そんなことを…。 ハハハハハッ。 270 00:20:50,337 --> 00:20:54,208 時に 鎌田殿のお内儀のお加減は いかがですか。 271 00:20:54,208 --> 00:20:58,208 うむ。 お加減なあ…。 272 00:21:00,347 --> 00:21:03,017 病の妻はおらん。 273 00:21:03,017 --> 00:21:06,353 は? 今 父から聞いたところだ。 274 00:21:06,353 --> 00:21:09,023 あの人の妻女は 3年前に亡くなっている。 275 00:21:09,023 --> 00:21:13,894 え? 最期を看取ったのは この私だ。 276 00:21:13,894 --> 00:21:16,897 では あの浪人は…。 277 00:21:16,897 --> 00:21:21,035 妻が生きていると 思い込んでいるのでしょうか。 278 00:21:21,035 --> 00:21:25,906 人の心とは 謎に満ちたものだぞ。 279 00:21:25,906 --> 00:21:28,375 (田山)では なぜ あの時…。 280 00:21:28,375 --> 00:21:33,214 わしが 妻がいると言ったか? え…。 281 00:21:33,214 --> 00:21:38,652 今日も お内儀を拝見しに参った。 282 00:21:38,652 --> 00:21:42,990 俺は お内儀の絵を見に行ったのだ。 283 00:21:42,990 --> 00:21:45,326 絵を? 284 00:21:45,326 --> 00:21:50,664 お内儀の椙江殿は それは美しいお人でな…。➡ 285 00:21:50,664 --> 00:21:56,537 絵師が こぞって 椙江殿を絵に描きたいと言っていた。➡ 286 00:21:56,537 --> 00:22:03,244 その絵を 鎌田殿は飾っておるのだ。 287 00:22:03,244 --> 00:22:12,686 絵を拝みに行くという口実で 時々 鎌田殿の様子を見に行っておるのだ。 288 00:22:12,686 --> 00:22:16,357 あの人のことが心配で。 289 00:22:16,357 --> 00:22:21,357 夫婦の間に 何があったんだ? 290 00:22:23,030 --> 00:22:25,366 参りました! 次。 291 00:22:25,366 --> 00:22:28,035 お願いします! 292 00:22:28,035 --> 00:22:32,873 (良庵)鎌田殿は 剣の道に かけた男だった。➡ 293 00:22:32,873 --> 00:22:35,843 剣術師範役の座を目指して➡ 294 00:22:35,843 --> 00:22:41,143 脇目も振らずに 稽古ばかりしていた。 295 00:22:50,291 --> 00:22:54,195 池上に出来た 山村という お菓子屋のきんつばが➡ 296 00:22:54,195 --> 00:22:57,665 大層おいしいと 評判なんですって。 297 00:22:57,665 --> 00:23:01,965 一度 食べてみたいものですわ。 そうか…。 298 00:23:06,006 --> 00:23:11,679 (良庵)椙江殿は かいがいしく 夫に尽くした。 299 00:23:11,679 --> 00:23:26,227 ♬~ 300 00:23:26,227 --> 00:23:29,230 (椙江)ううっ…。 301 00:23:29,230 --> 00:23:34,902 (良庵)やがて 椙江殿は病に倒れた。 302 00:23:34,902 --> 00:23:37,838 おい どうした! おい 椙江! 303 00:23:37,838 --> 00:23:41,838 (鎌田)出かけてくる。 304 00:23:43,611 --> 00:23:46,313 具合は どうだ? 305 00:23:46,313 --> 00:23:49,613 私は大丈夫です…。 306 00:23:51,652 --> 00:23:55,990 今日は 御前試合でしたね。 307 00:23:55,990 --> 00:24:00,861 どうか ご武運を。 308 00:24:00,861 --> 00:24:02,863 行ってまいる。 309 00:24:02,863 --> 00:24:08,569 (良庵)それでも 鎌田殿は 妻を顧みることなく➡ 310 00:24:08,569 --> 00:24:15,869 ただ ひたすら 剣の道を究めようとしていた。 311 00:24:18,012 --> 00:24:22,349 どちらへ? 大事な用がありますもので。 312 00:24:22,349 --> 00:24:26,020 後 お願いします。 おう…。 313 00:24:26,020 --> 00:24:30,357 (良庵)しかし 帰ってきた時には…。 314 00:24:30,357 --> 00:24:32,626 椙江 椙江! 315 00:24:32,626 --> 00:24:36,497 椙江 勝ったぞ! か…。 316 00:24:36,497 --> 00:24:55,316 ♬~ 317 00:24:55,316 --> 00:25:04,316 あれから程なく 容体が急変してな…。 318 00:25:07,895 --> 00:25:13,667 (良庵)あの人は やっと気付いたのだ。➡ 319 00:25:13,667 --> 00:25:19,006 自分が失ったものの大きさに…。 320 00:25:19,006 --> 00:25:23,344 あ これは先生。 321 00:25:23,344 --> 00:25:30,017 鎌田殿… 少しは落ち着かれましたかな。 322 00:25:30,017 --> 00:25:37,624 は。 椙江の病も やや持ち直しております。 え? 323 00:25:37,624 --> 00:25:42,296 薬が無くなる頃合いです。 是非 お越しください。 324 00:25:42,296 --> 00:25:47,596 わ… 分かりました。 325 00:25:50,170 --> 00:25:52,940 (良庵)あの男の心は➡ 326 00:25:52,940 --> 00:25:59,940 妻が生きていた頃のまま 時が止まってしまったのだ。 327 00:26:02,983 --> 00:26:08,683 <あの男は 心の中で 何を見ているのだろう…> 328 00:26:10,657 --> 00:26:16,657 何だい 心の病かい。 329 00:26:18,999 --> 00:26:23,871 まさをは どうしてる。 達者にしています。 330 00:26:23,871 --> 00:26:26,871 大事にしてやれよ。 はい。 331 00:26:49,963 --> 00:26:52,866 どうかしましたか? 332 00:26:52,866 --> 00:26:55,836 お前は 本当に そこにいるのか。 333 00:26:55,836 --> 00:26:57,838 はあ? 334 00:26:57,838 --> 00:27:02,543 もしかして いないのではないのか。 335 00:27:02,543 --> 00:27:08,982 私が いると 思い込んでいるだけなのではないのか…。 336 00:27:08,982 --> 00:27:14,321 いや ふと心配になって。 337 00:27:14,321 --> 00:27:17,991 どうかしたんですか? 338 00:27:17,991 --> 00:27:24,331 人には それが本当のことだと 自分で思っていても➡ 339 00:27:24,331 --> 00:27:29,203 実は そのようなものはない ということがあるようだ。 340 00:27:29,203 --> 00:27:31,605 そうなのですか。 341 00:27:31,605 --> 00:27:38,905 自分が見ているものが 本当かどうか どうすれば分かるのだろう。 342 00:27:45,152 --> 00:27:47,152 痛い! 343 00:27:48,956 --> 00:27:51,291 どうやら 本当らしい。 344 00:27:51,291 --> 00:27:53,961 もう…。 345 00:27:53,961 --> 00:27:57,661 消えないでくれ。 346 00:28:01,835 --> 00:28:06,535 消えたりしません。 347 00:28:17,985 --> 00:28:22,322 どこかへ移り住まないか? 348 00:28:22,322 --> 00:28:26,622 もっと のんびりした田舎へでも…。 349 00:28:28,195 --> 00:28:35,869 そこで 2人だけで いつまでも静かに暮らそう。 350 00:28:35,869 --> 00:28:40,274 な 椙江。 351 00:28:40,274 --> 00:28:50,274 ♬~ 352 00:29:08,969 --> 00:29:10,904 お手前は。 353 00:29:10,904 --> 00:29:13,640 先日は よくも恥をかかせてくれたな。 354 00:29:13,640 --> 00:29:15,640 そのようなつもりは…。 355 00:29:17,311 --> 00:29:20,011 抜け。 やめておけ。 356 00:29:21,648 --> 00:29:23,648 問答無用! 357 00:29:27,321 --> 00:29:29,321 抜け! 358 00:29:35,596 --> 00:29:38,265 尋常に勝負しろ! 359 00:29:38,265 --> 00:30:07,294 ♬~ 360 00:30:07,294 --> 00:30:09,294 (鎌田)椙江!? 361 00:30:12,165 --> 00:30:14,968 うっ! 362 00:30:14,968 --> 00:30:16,903 待て! 363 00:30:16,903 --> 00:30:21,308 邪魔だてするな! その男を殺すことが名誉か! 364 00:30:21,308 --> 00:30:24,978 恥の上塗りをするだけだぞ。 365 00:30:24,978 --> 00:30:27,978 離せ! 366 00:30:39,526 --> 00:30:41,826 診せてみろ。 367 00:30:43,664 --> 00:30:46,964 傷は浅い。 368 00:30:58,679 --> 00:31:24,371 ♬~ 369 00:31:24,371 --> 00:31:28,041 負けた…。 え? 370 00:31:28,041 --> 00:31:31,912 一太刀 負わされてしまった。 371 00:31:31,912 --> 00:31:34,848 しかし 傷は浅い。 372 00:31:34,848 --> 00:31:39,319 あなたには分からん! 373 00:31:39,319 --> 00:31:45,992 これまでの修行は 何だったのだ…。 374 00:31:45,992 --> 00:31:52,332 斬り合いをしている時 死んだ椙江が 一瞬 見えた気がした。 375 00:31:52,332 --> 00:31:54,267 え? 376 00:31:54,267 --> 00:31:57,003 いつまで 剣に こだわってるんだ➡ 377 00:31:57,003 --> 00:31:59,673 いいかげんにしなさいと➡ 378 00:31:59,673 --> 00:32:02,576 あきれた顔で…。 379 00:32:02,576 --> 00:32:08,276 今 死んだ椙江と…? 380 00:32:10,016 --> 00:32:11,952 はい。 381 00:32:11,952 --> 00:32:15,889 お内儀は 病に伏せっているのでは? 382 00:32:15,889 --> 00:32:21,628 妻の椙江は 3年前に死んでおります。 383 00:32:21,628 --> 00:32:24,030 え! 384 00:32:24,030 --> 00:32:35,308 ♬~ 385 00:32:35,308 --> 00:32:44,985 そうか。 では 妻が生きているというのは 貴殿のついた嘘だったんだな。 386 00:32:44,985 --> 00:32:46,920 嘘…。 387 00:32:46,920 --> 00:32:50,323 では 気鬱の病というのは。 388 00:32:50,323 --> 00:32:55,996 はい。 申し訳ありませんでした。 389 00:32:55,996 --> 00:33:00,867 皆の前で そんな嘘をつき続けるのは 並大抵では…。 390 00:33:00,867 --> 00:33:02,869 病に伏せっている家内のために➡ 391 00:33:02,869 --> 00:33:05,338 滋養のあるものを 作ってやりたいのですが…。 392 00:33:05,338 --> 00:33:07,274 女は わがままでいかん。 393 00:33:07,274 --> 00:33:11,974 これをくれ。 誰も信じて疑わぬほどに…。 394 00:33:14,014 --> 00:33:18,885 せめてもの… 供養です。 395 00:33:18,885 --> 00:33:28,028 ♬~ 396 00:33:28,028 --> 00:33:31,631 [ 心の声 ] (鎌田)椙江を殺したのは私だ…。➡ 397 00:33:31,631 --> 00:33:35,302 剣のことばかりに かまけて…。➡ 398 00:33:35,302 --> 00:33:39,639 御前試合に勝ったから何だというのだ…。 399 00:33:39,639 --> 00:33:46,313 ♬~ 400 00:33:46,313 --> 00:33:49,613 今 作ってやるからな。 401 00:33:54,187 --> 00:34:00,861 (鎌田)椙江が生きていたら ああしてやりたい こうしてやりたいと➡ 402 00:34:00,861 --> 00:34:05,861 そう思うことを やっていたのです。 403 00:34:20,013 --> 00:34:21,948 ≪(お常)先生。 404 00:34:21,948 --> 00:34:24,684 お連れしましたよ。 うむ。 405 00:34:24,684 --> 00:34:27,684 さあ どうぞ どうぞ。 406 00:34:34,494 --> 00:34:39,199 この方は志乃さん… 沖田殿のご息女だ。 407 00:34:39,199 --> 00:34:41,499 えっ。 408 00:34:43,637 --> 00:34:47,637 先ほどは 失礼いたしました。 409 00:34:50,977 --> 00:34:56,316 父に 先日 失礼なことを 申し上げたおわびに➡ 410 00:34:56,316 --> 00:35:00,186 これを お持ちしろと言われまして。 411 00:35:00,186 --> 00:35:02,656 失礼とは? 412 00:35:02,656 --> 00:35:08,528 その… 婿になれと。 413 00:35:08,528 --> 00:35:11,331 ああ そのようなことは。 414 00:35:11,331 --> 00:35:14,000 どうぞ これを。 415 00:35:14,000 --> 00:35:17,337 これは お気遣いいただいて。 しかし…。 416 00:35:17,337 --> 00:35:20,240 どうぞ お納めください。 いえ。 417 00:35:20,240 --> 00:35:23,240 私が 父に叱られます。 418 00:35:30,884 --> 00:35:33,184 では。 419 00:35:39,592 --> 00:35:41,528 これは…。 420 00:35:41,528 --> 00:35:44,528 山村のきんつばです。 421 00:35:48,301 --> 00:35:51,638 池上に出来た 山村という お菓子屋のきんつばが➡ 422 00:35:51,638 --> 00:35:54,338 大層おいしいと 評判なんですって。 423 00:35:57,310 --> 00:36:05,986 きんつば… 山村のきんつば…。 424 00:36:05,986 --> 00:36:12,986 死んだ椙江が 食べたがっていたものです。 425 00:36:15,328 --> 00:36:24,004 椙江… きんつばを頂いたぞ。 426 00:36:24,004 --> 00:36:29,004 食べたいと言っていたな…。 427 00:36:33,813 --> 00:36:37,951 だが お前は もういない…。 428 00:36:37,951 --> 00:36:46,960 なぜ 俺は お前が生きている時に これを買ってやらなかった…。 429 00:36:46,960 --> 00:36:50,630 なぜだ! 430 00:36:50,630 --> 00:36:55,969 ♬~ 431 00:36:55,969 --> 00:37:02,308 お前が死んでからも 俺は逃げていた…。 432 00:37:02,308 --> 00:37:06,980 己が楽になりたいばかりに…。 433 00:37:06,980 --> 00:37:15,989 すまない… すまない 椙江…。 434 00:37:15,989 --> 00:37:29,536 ♬~ 435 00:37:29,536 --> 00:37:33,473 椙江…! 436 00:37:33,473 --> 00:37:41,614 ♬~ 437 00:37:41,614 --> 00:37:44,517 ≪(鎌田)椙江…。 438 00:37:44,517 --> 00:37:50,623 (泣き声) 439 00:37:50,623 --> 00:38:06,623 ♬~ 440 00:38:08,174 --> 00:38:12,174 お前も 早く よくなるといいな。 441 00:38:16,649 --> 00:38:19,552 では 私も これで。 442 00:38:19,552 --> 00:38:22,522 そこまで お送りしましょう。 443 00:38:22,522 --> 00:38:24,822 はい…。 444 00:38:38,905 --> 00:38:41,274 病ではなかったのですね…。 445 00:38:41,274 --> 00:38:44,944 いや 病だ。 446 00:38:44,944 --> 00:38:48,815 深い後悔という病だ…。 447 00:38:48,815 --> 00:38:56,556 その病のせいで あの男は 新しい人生を生きられなかった。 448 00:38:56,556 --> 00:39:02,295 しかし あの涙で…。 449 00:39:02,295 --> 00:39:12,939 ♬~ 450 00:39:12,939 --> 00:39:16,643 ≪(沖田)御免! (戸が開く音) 451 00:39:16,643 --> 00:39:19,979 ≪(沖田)御免! はい。 452 00:39:19,979 --> 00:39:24,851 鎌田殿が 小島に襲われて けがをされたと聞いた。 453 00:39:24,851 --> 00:39:28,321 大事ありません。 もう帰られました。 454 00:39:28,321 --> 00:39:32,926 そうか… それは よかった。 娘は? 455 00:39:32,926 --> 00:39:35,595 あの方と 一緒に出られました。 456 00:39:35,595 --> 00:39:41,467 ああ… 鎌田殿に ご妻女がおらねばのう。 457 00:39:41,467 --> 00:39:44,270 返す返すも残念。 458 00:39:44,270 --> 00:39:48,141 鎌田殿に お内儀はいません。 459 00:39:48,141 --> 00:39:51,945 えっ… それは まことか! 460 00:39:51,945 --> 00:39:53,880 はあ。 461 00:39:53,880 --> 00:39:58,284 いないのなら もう一度 また お話をしたい! 462 00:39:58,284 --> 00:40:01,621 いやはや もう一度 話をしたい! 463 00:40:01,621 --> 00:40:04,524 鎌田殿~! 464 00:40:04,524 --> 00:40:34,520 ♬~ 465 00:40:34,520 --> 00:40:40,660 鎌田殿! ハアハアハア…。 466 00:40:40,660 --> 00:40:46,332 鎌田殿 お待ちくだされ! 鎌田…! 467 00:40:46,332 --> 00:40:50,332 ♬~ 468 00:40:52,672 --> 00:40:55,575 先生。 何だ? 469 00:40:55,575 --> 00:40:57,575 およねが…。 470 00:41:10,023 --> 00:41:13,693 出ていくよ。 世話になったね。 471 00:41:13,693 --> 00:41:16,596 脚が このとおり治ったんでね。 472 00:41:16,596 --> 00:41:18,564 どこへ行くんだ? 473 00:41:18,564 --> 00:41:23,564 フッ 医者には関わりのないことだろ。 474 00:41:28,041 --> 00:41:32,879 手が足りない。 ここで働け。 475 00:41:32,879 --> 00:41:34,879 え? 476 00:41:37,850 --> 00:41:39,986 住み込みだ。 477 00:41:39,986 --> 00:41:44,986 給金は安い。 いいな。 478 00:41:47,860 --> 00:41:51,160 どうなんだ。 479 00:41:57,003 --> 00:41:59,339 しかたないね…。 480 00:41:59,339 --> 00:42:10,950 ♬~ 481 00:42:10,950 --> 00:42:12,885 何だい。 482 00:42:12,885 --> 00:42:14,887 励めよ。 483 00:42:14,887 --> 00:42:16,889 フン。 484 00:42:16,889 --> 00:42:22,362 やれやれ。 出ていくと言ったり いると言ったり…。 485 00:42:22,362 --> 00:42:31,637 ♬~ 486 00:42:31,637 --> 00:42:38,511 <およねも 鎌田さんが新しい人生を 歩きだすところを見たのだろう…。➡ 487 00:42:38,511 --> 00:42:44,511 それにしても この赤ひげという男は…> 488 00:42:46,652 --> 00:42:48,988 何だ。 489 00:42:48,988 --> 00:42:51,657 いえ 別に。 490 00:42:51,657 --> 00:42:53,657 フン。 491 00:43:01,000 --> 00:43:02,935 酒だ 酒! 酒 持ってこい! 492 00:43:02,935 --> 00:43:06,672 亭主が傷つくから ないしょで働いてるって言ってたけど➡ 493 00:43:06,672 --> 00:43:10,009 あんな男だったとはね。 お前のために➡ 494 00:43:10,009 --> 00:43:12,345 どれだけのことしてきたと思ってんだよ! 清さん それは…! 495 00:43:12,345 --> 00:43:14,680 与助のことは忘れて➡ 496 00:43:14,680 --> 00:43:18,351 俺と一緒に なってくれ。 497 00:43:18,351 --> 00:43:25,651 あがいてみろ。 みっともなく あがいて 生きてみろ! 498 00:45:34,320 --> 00:45:44,830 4回にわたり 一人のミュージシャンの音楽人生を 歌と共にたどる 「歌のあとさき」。 499 00:45:44,830 --> 00:45:48,334 今回は 時代時代と向き合いながら➡ 500 00:45:48,334 --> 00:45:50,403 歌で メッセージを 届けてきた➡ 501 00:45:50,403 --> 00:45:53,940 シンガーソングライター 加藤登紀子。 502 00:45:53,940 --> 00:45:58,740 その第4回 「時代と共に」。