1 00:00:33,093 --> 00:00:36,963 ♬~ 2 00:00:36,963 --> 00:00:38,898 (去定)どうだ? 3 00:00:38,898 --> 00:00:42,398 だいぶ よろしゅうございます。 4 00:00:45,705 --> 00:00:49,843 冷えにより 血の巡りが悪くなると 痛みが増す。 5 00:00:49,843 --> 00:00:52,178 くれぐれも 体を冷やさぬように。 はい。 6 00:00:52,178 --> 00:00:54,114 保本。 (保本)はい。 7 00:00:54,114 --> 00:00:57,517 これは 体の調子を正す薬だ。 8 00:00:57,517 --> 00:01:00,420 煎じて飲みなさい。 ありがとうございます。 9 00:01:00,420 --> 00:01:06,720 よかった…。 先生のおかげです。 10 00:01:11,865 --> 00:01:14,768 では お薬料は いかほど…。 11 00:01:14,768 --> 00:01:18,068 あの薬は ちと高い。 はあ…。 12 00:01:19,739 --> 00:01:24,878 20両。 そんなに…。 13 00:01:24,878 --> 00:01:29,878 あ いや お支払いします。 14 00:01:32,685 --> 00:01:36,489 ♬~ 15 00:01:36,489 --> 00:01:41,828 わしを軽蔑したかったら してもいいぞ。 あの薬は もっと安い。 16 00:01:41,828 --> 00:01:45,698 いえ。 養生所のために しておられることですから。 17 00:01:45,698 --> 00:01:48,501 お上に 費用を増やせと言っても にらまれるだけだ。 18 00:01:48,501 --> 00:01:50,837 こんなやり方しかない。 19 00:01:50,837 --> 00:01:56,509 <去定先生は 時々 こうして 私に八つ当たりをした。➡ 20 00:01:56,509 --> 00:02:02,509 それも しかたないと思い 私は受け流していた> 21 00:02:08,521 --> 00:02:11,191 入所して 様子を見た方がよさそうだな。 22 00:02:11,191 --> 00:02:14,093 津川先生 次の人 入れていいかい? よし 入れろ。 23 00:02:14,093 --> 00:02:16,529 お常さん この者の入所の用意を頼む。 24 00:02:16,529 --> 00:02:18,465 分かりました。 よいしょ。 25 00:02:18,465 --> 00:02:20,400 もうすぐ あんたの番だからね。 26 00:02:20,400 --> 00:02:24,400 (お雪)あっ 保本先生 お帰りなさい。 27 00:02:26,206 --> 00:02:28,541 帰ってきたか。 助かる。 28 00:02:28,541 --> 00:02:31,444 今日は忙しそうですね。 ああ。 田山がいないからだ。 29 00:02:31,444 --> 00:02:35,815 あいつでも 案外と役に立っていたんだな。 田山先生は どちらに? 30 00:02:35,815 --> 00:02:38,718 去定先生のお使いで 八王子の医者を訪ねている。 31 00:02:38,718 --> 00:02:41,688 何でも 先生秘蔵の医学書を 貸し出すそうだ。 32 00:02:41,688 --> 00:02:46,388 今頃 帰り道で のんきに うまいもんでも食ってるんだろう。 33 00:03:00,507 --> 00:03:03,176 静かだな。 34 00:03:03,176 --> 00:03:11,050 はい。 田山がいないからです。 そうか。 35 00:03:11,050 --> 00:03:14,787 うるさいやつですが あれでも 役に立っていたんですよ。 36 00:03:14,787 --> 00:03:17,190 フン。 37 00:03:17,190 --> 00:03:21,490 ≪(足音) お 帰ってきた。 38 00:03:24,531 --> 00:03:27,200 先生 ただいま戻りました。 39 00:03:27,200 --> 00:03:30,103 ご苦労。 礼金は? 40 00:03:30,103 --> 00:03:36,103 はい… こちらに。 41 00:03:38,811 --> 00:03:40,747 よかろう。 42 00:03:40,747 --> 00:03:43,683 田山先生 お食事 まだでしょう。 召し上がりますか? 43 00:03:43,683 --> 00:03:47,153 頼む。 いや~ 腹が減った。 44 00:03:47,153 --> 00:03:51,491 道中 どうだった? 何か面白いことはあったか。 45 00:03:51,491 --> 00:03:56,829 いえ これといって 何もありません。 46 00:03:56,829 --> 00:04:02,502 <ふだんの田山なら 自慢げに あれこれと話すはずだ。➡ 47 00:04:02,502 --> 00:04:07,840 私は 田山が いつもより静かなのが 少し気になった> 48 00:04:07,840 --> 00:04:22,188 ♬~ 49 00:04:22,188 --> 00:04:25,858 (伊久)ごめんくださいまし。 ≪(お雪)はい。 50 00:04:25,858 --> 00:04:28,558 ≪(伊久)失礼いたします。 51 00:04:34,667 --> 00:04:38,805 少しずつ 赤みは引いてきているな。 まだ熱もあるな。 52 00:04:38,805 --> 00:04:41,140 田山先生。 53 00:04:41,140 --> 00:04:44,811 田山先生に お客様いらしてますよ。 私に? 54 00:04:44,811 --> 00:04:48,681 伊久様という女の方です。 55 00:04:48,681 --> 00:04:52,685 え 伊久さんが…。 (津川)誰だ? 伊久さんって。 56 00:04:52,685 --> 00:04:55,154 許嫁です。 57 00:04:55,154 --> 00:04:57,090 えっ! 58 00:04:57,090 --> 00:05:03,790 あ… ここはいいから 行ってこい。 はい。 59 00:05:07,500 --> 00:05:12,372 許嫁? あいつに そんなものがいたのか。 60 00:05:12,372 --> 00:05:15,174 田山の家は ご直参と聞いた。 61 00:05:15,174 --> 00:05:18,874 そうなのか 大したものだな。 62 00:05:20,513 --> 00:05:24,384 お久しゅうございます。 63 00:05:24,384 --> 00:05:28,084 こちらこそ すっかり ご無沙汰で。 64 00:05:29,856 --> 00:05:34,127 真一郎様は まだ 私のことが お嫌いですか? 65 00:05:34,127 --> 00:05:38,464 は? 私が あなたを 嫌いになる理由がありません。 66 00:05:38,464 --> 00:05:41,801 だったら どうして 私との婚儀を嫌がるのですか? 67 00:05:41,801 --> 00:05:46,673 いえ ただ 私は この養生所で 医者として修業をしたいのです。 68 00:05:46,673 --> 00:05:49,676 一人前になるには 何年かかるか分かりません。 69 00:05:49,676 --> 00:05:54,380 ですから ほかに好きな人が現れたら どうぞと申し上げただけです。 70 00:05:54,380 --> 00:05:58,151 私を好きなら 何年かかるか分からないが➡ 71 00:05:58,151 --> 00:06:00,486 待っていてくれと 言うはずではないでしょうか。 72 00:06:00,486 --> 00:06:02,822 そう言われると…。 73 00:06:02,822 --> 00:06:06,492 つまり 私のことを それほど好きではないのでしょう。 74 00:06:06,492 --> 00:06:08,428 そうなりますか…。 75 00:06:08,428 --> 00:06:10,830 ああ そうですか! 76 00:06:10,830 --> 00:06:15,501 まあ 何しろ 親同士が 勝手に進めてしまったことですから。 77 00:06:15,501 --> 00:06:18,404 で 今日は何か? 78 00:06:18,404 --> 00:06:23,176 はい。 そういうわけで 私は この度 ほかの方と…。 79 00:06:23,176 --> 00:06:27,513 あ さようでしたか。 どうぞ お幸せに。 80 00:06:27,513 --> 00:06:30,850 そう たやすいことではないのです。 81 00:06:30,850 --> 00:06:33,453 どういうことですか? 82 00:06:33,453 --> 00:06:36,153 実は…。 83 00:06:42,795 --> 00:06:45,095 私…。 84 00:06:47,667 --> 00:06:50,967 ≪(田山)え~っ! 85 00:06:57,143 --> 00:07:02,482 そうか… 許嫁か。 はあ。 86 00:07:02,482 --> 00:07:07,353 それで 先生にお願いがございまして。 何だ? 言ってみろ。 87 00:07:07,353 --> 00:07:10,156 はあ…。 88 00:07:10,156 --> 00:07:14,827 実は こちらの伊久さんが みごもりまして。 89 00:07:14,827 --> 00:07:19,165 うん? どういうことだ。 90 00:07:19,165 --> 00:07:21,834 つまり 私の子です。 91 00:07:21,834 --> 00:07:26,506 何? しかし い… いつの間に。 92 00:07:26,506 --> 00:07:28,841 実家に帰った時に 手早く。 て…! 93 00:07:28,841 --> 00:07:31,744 ええ。 この方は手が早くて。 94 00:07:31,744 --> 00:07:34,647 それで お願いなのですが…。 実は私➡ 95 00:07:34,647 --> 00:07:39,118 みごもったことが 親に知られて ひどく叱られてしまいました。 96 00:07:39,118 --> 00:07:41,788 特に 父の怒りは尋常ではなく。 97 00:07:41,788 --> 00:07:43,723 それは そうであろう。 98 00:07:43,723 --> 00:07:48,661 父の怒りが解けるまで しばらく ここに置いていただけませんでしょうか? 99 00:07:48,661 --> 00:07:52,799 んな…! 私 何でもします。 下働きでも何でも。 100 00:07:52,799 --> 00:07:55,701 人手が足りないと 先生も おっしゃっていたではありませんか。 101 00:07:55,701 --> 00:07:57,670 しかし…。 102 00:07:57,670 --> 00:07:59,970 (2人)お願いします! 103 00:08:05,144 --> 00:08:07,144 お常さ~ん! 104 00:08:08,815 --> 00:08:13,152 あの… 田山先生が!? 105 00:08:13,152 --> 00:08:15,087 (笑い声) 106 00:08:15,087 --> 00:08:19,826 ただの粗忽者だと思っていたが… 人は見かけによらないものだな。 107 00:08:19,826 --> 00:08:22,495 (笑い声) なぜか 負けた気がする…。 108 00:08:22,495 --> 00:08:25,832 ああいう男ほど すけべえなのさ。 109 00:08:25,832 --> 00:08:27,832 (笑い声) 110 00:08:32,438 --> 00:08:35,107 あ 皆さん 実はですね…。 111 00:08:35,107 --> 00:08:37,443 事情は聞いた。 112 00:08:37,443 --> 00:08:40,112 おめでただそうですね。 113 00:08:40,112 --> 00:08:43,783 はい。 しばらく こちらにお世話になります。 114 00:08:43,783 --> 00:08:47,653 どうぞ。 ついでに お子様も こちらで➡ 115 00:08:47,653 --> 00:08:50,122 お産みになられたら いかがですか? 116 00:08:50,122 --> 00:08:54,422 それは 願ってもないことでございます。 117 00:08:56,462 --> 00:09:07,473 (笑い声) 118 00:09:07,473 --> 00:09:11,143 <こうして 田山の許嫁の伊久は➡ 119 00:09:11,143 --> 00:09:15,143 養生所に居候するようになった> 120 00:09:29,495 --> 00:09:32,098 これも お願いできますか。 121 00:09:32,098 --> 00:09:35,001 かしこまりました。 122 00:09:35,001 --> 00:09:39,001 これは 前の分です。 ああ。 123 00:09:44,443 --> 00:09:47,346 手早いものですね。 124 00:09:47,346 --> 00:09:51,784 こんなに大勢の病人や けが人を診てらっしゃるんですね。 125 00:09:51,784 --> 00:09:54,687 何せ 養生所は 江戸では ここだけですから。 126 00:09:54,687 --> 00:09:58,124 そうなんですか…。 127 00:09:58,124 --> 00:10:19,412 ♬~ 128 00:10:19,412 --> 00:10:23,349 (津川)少し白っぽいな。 先生 大丈夫でしょうか? 129 00:10:23,349 --> 00:10:26,152 次。 今日は どうした? 130 00:10:26,152 --> 00:10:28,821 熱が高いな。 下痢… 下痢が ずっと続いていて➡ 131 00:10:28,821 --> 00:10:30,756 ごはんも ほとんど食べてないんです。 132 00:10:30,756 --> 00:10:34,493 お願いします 先生! 今 診てるからな。 は… はい。 133 00:10:34,493 --> 00:10:39,365 肩と腰を しっかり押さえろ。 何度 言ったら分かる! 134 00:10:39,365 --> 00:10:43,502 田山! すみません! 135 00:10:43,502 --> 00:10:46,839 (うめき声) 136 00:10:46,839 --> 00:10:48,839 いいぞ。 137 00:10:55,848 --> 00:10:59,185 あら いい匂い。 138 00:10:59,185 --> 00:11:02,521 たくさん作らないといけないから 大変ですねえ。 139 00:11:02,521 --> 00:11:04,857 いえ もう慣れましたから。 140 00:11:04,857 --> 00:11:08,194 病人や けが人には 滋養のあるものを 食べてもらわないといけないから➡ 141 00:11:08,194 --> 00:11:12,531 毎日 それが大変ですかね。 そうなんですか…。 142 00:11:12,531 --> 00:11:14,867 あ それは みそ煮ですね。 143 00:11:14,867 --> 00:11:19,538 煮上がったら しばらく置いておくと 味が染みて おいしくなりますよ。 144 00:11:19,538 --> 00:11:23,209 何か お手伝いしましょうか。 そんな とんでもない! 145 00:11:23,209 --> 00:11:25,878 あ あのごぼう 切りましょうか。 146 00:11:25,878 --> 00:11:28,214 ちょっと お嬢様に そんなことさせられませんから。 ね ね。 147 00:11:28,214 --> 00:11:32,485 ほら 汚れますから お着物が…。 じゃあ あの ささがきでお願いします。 148 00:11:32,485 --> 00:11:35,185 ありがとうございます。 細かめに。 149 00:11:39,825 --> 00:12:02,515 ♬~ 150 00:12:02,515 --> 00:12:05,418 うまい。 よかった。 151 00:12:05,418 --> 00:12:08,387 お伊久様が 手伝ってくだすったんですよ。 ねえ。 152 00:12:08,387 --> 00:12:10,389 さすがですねえ。 153 00:12:10,389 --> 00:12:14,860 田山は所帯を持つと こんなうまいものを 毎日食えるのか。 154 00:12:14,860 --> 00:12:20,160 親のもとでは こんなことしか することがありませんので。 155 00:12:23,202 --> 00:12:26,872 いや~ 大したもんですね。 156 00:12:26,872 --> 00:12:32,144 何せ 一つも偉そうにしないのがいい。 本当 いいお嬢様ですよ。 157 00:12:32,144 --> 00:12:37,016 そういう女子が 田山と一緒になろうと 思い 子をなすということは➡ 158 00:12:37,016 --> 00:12:40,820 実は 田山は あれで ひとかどの男なのかもしれない。 159 00:12:40,820 --> 00:12:43,155 ふ~ん そんなもんですか。 160 00:12:43,155 --> 00:12:46,826 岡場所にも ああいう女はいたよ。 161 00:12:46,826 --> 00:12:50,162 どんな客にも いい顔する女がね…。 162 00:12:50,162 --> 00:12:53,499 みんな す~ぐ だまされるんだ。 163 00:12:53,499 --> 00:12:57,199 失礼な女だよ。 164 00:13:07,847 --> 00:13:12,518 むくみは取れたようだな。 ええ 近頃は よくなりました。 165 00:13:12,518 --> 00:13:15,818 あっ いや イタタタ…! 166 00:13:17,389 --> 00:13:21,527 これからは 適度に体を動かした方がいい。 167 00:13:21,527 --> 00:13:25,197 はい。 しかし 脚に変なしびれがあって…。 168 00:13:25,197 --> 00:13:29,869 ほう 立てますかな。 はい。 169 00:13:29,869 --> 00:13:31,869 イタ! イタタタ…。 170 00:13:34,473 --> 00:13:36,473 イ~タタタタ タタタ…! 171 00:13:38,811 --> 00:13:41,147 ≪イタタタ…! 172 00:13:41,147 --> 00:13:44,049 アイタタタタタ…! 173 00:13:44,049 --> 00:13:47,820 どこへ行っていた? は。 厠をお借りしておりました。 174 00:13:47,820 --> 00:13:49,755 手伝え。 はい。 175 00:13:49,755 --> 00:13:52,158 さあ。 すみません。 176 00:13:52,158 --> 00:13:55,828 あっ イ~タタタタタタ! イタタタタ…。 177 00:13:55,828 --> 00:13:58,497 ああ もういい。 無理は禁物です。 178 00:13:58,497 --> 00:14:02,168 (吉次郎)旦那様~! 大変です! 179 00:14:02,168 --> 00:14:04,103 どうした 吉次郎。 180 00:14:04,103 --> 00:14:08,040 家宝の壺が… 割れております! 181 00:14:08,040 --> 00:14:11,844 何! あっ アイタタタッ…! 182 00:14:11,844 --> 00:14:13,844 何! 183 00:14:17,183 --> 00:14:21,053 (吉次郎)私が通りかかったら 割れていたんです。 184 00:14:21,053 --> 00:14:30,196 こ… これは 先々代が 水戸様から頂戴した大切な壺…。➡ 185 00:14:30,196 --> 00:14:33,098 ひとりでに落ちるわけがない。 186 00:14:33,098 --> 00:14:35,467 誰がやった~! 187 00:14:35,467 --> 00:14:38,137 家の者を集めて 詮議しなさい! 188 00:14:38,137 --> 00:14:40,072 早く! は… はい! 189 00:14:40,072 --> 00:14:42,072 申し上げます! 190 00:14:44,810 --> 00:14:46,810 私です。 191 00:14:48,480 --> 00:14:50,480 え? 192 00:14:52,818 --> 00:14:56,488 申し訳ありません。 193 00:14:56,488 --> 00:15:00,826 先ほど 厠に行った帰りに この壺が目についたもので➡ 194 00:15:00,826 --> 00:15:03,162 思わず触れてしまい…。 195 00:15:03,162 --> 00:15:06,498 それは本当か? (田山)はい。 196 00:15:06,498 --> 00:15:09,835 なぜ 早く言わなかった! 197 00:15:09,835 --> 00:15:13,706 しでかしたことの大きさに 怖くなって つい…。 198 00:15:13,706 --> 00:15:16,508 申し訳ありません。 償いはいたします。 199 00:15:16,508 --> 00:15:18,444 そうは おっしゃられても…➡ 200 00:15:18,444 --> 00:15:20,379 これは 値のつけようのないものでして。 201 00:15:20,379 --> 00:15:24,850 では 私の命を取るなり何なり ご勝手にしてください。 202 00:15:24,850 --> 00:15:26,785 バカ者! 203 00:15:26,785 --> 00:15:32,085 そのようなことを 軽々しく口にするんじゃない! 204 00:15:37,129 --> 00:15:42,001 うちの者が とんでもないことを…。 205 00:15:42,001 --> 00:15:45,001 申し訳ない。 206 00:15:55,147 --> 00:15:58,484 それで 許してくれたのか? 207 00:15:58,484 --> 00:16:00,819 (竹造)へい。 そのようで…。 208 00:16:00,819 --> 00:16:07,819 去定先生に頭を下げられては それ以上 責められまい…。 209 00:16:12,831 --> 00:16:15,734 田山は どうしてる? 210 00:16:15,734 --> 00:16:19,505 罰として 通い病人診療簿の不備を➡ 211 00:16:19,505 --> 00:16:23,505 今夜中に 一人で確かめろと言われて やっています。 212 00:16:36,989 --> 00:16:43,128 田山先生 何やら しでかしたらしいね。 213 00:16:43,128 --> 00:16:46,465 そのようですね。 214 00:16:46,465 --> 00:16:51,136 おや 平気な顔だね。 215 00:16:51,136 --> 00:16:55,474 許されたと聞いております。 216 00:16:55,474 --> 00:17:02,348 あんた どうも怪しいね。 は? 217 00:17:02,348 --> 00:17:06,485 何か隠してないかい? 218 00:17:06,485 --> 00:17:09,822 私が 一体 何を…。 219 00:17:09,822 --> 00:17:12,725 さあね…。 220 00:17:12,725 --> 00:17:18,831 ああああ… ああああ…! ああああ…! 221 00:17:18,831 --> 00:17:21,500 ああああ… どうしよう…! 222 00:17:21,500 --> 00:17:23,435 どうしたんだ! 223 00:17:23,435 --> 00:17:25,838 お金がないんですよ! (2人)えっ! 224 00:17:25,838 --> 00:17:29,508 去定先生からお預かりした 支払いのための一分金4枚で1両…! 225 00:17:29,508 --> 00:17:31,443 棚に置いたはずなのに…! 226 00:17:31,443 --> 00:17:33,379 それは 大変な額だな。 227 00:17:33,379 --> 00:17:36,315 私のせいです…。 どうしましょう! とにかく捜そう! 228 00:17:36,315 --> 00:17:40,119 どうしましょうか!? どうしましょう! ねえ どうしましょう…! 229 00:17:40,119 --> 00:17:47,459 ♬~ 230 00:17:47,459 --> 00:17:50,159 (津川)ないな。 231 00:17:52,331 --> 00:17:57,331 全く 余計な手間を…。 232 00:17:59,071 --> 00:18:03,008 置いたのは 確かなんだな。 はい 確かに ここに。 233 00:18:03,008 --> 00:18:06,812 ありませんね。 234 00:18:06,812 --> 00:18:09,481 泥棒ですよ。 え…。 235 00:18:09,481 --> 00:18:13,819 養生所の中に 盗みをするような者は…。 236 00:18:13,819 --> 00:18:18,690 何してる? お前も捜せ。 237 00:18:18,690 --> 00:18:22,161 金なら ここにあります。 238 00:18:22,161 --> 00:18:24,861 え? 239 00:18:26,498 --> 00:18:29,168 (お常)あっ 確かに! 240 00:18:29,168 --> 00:18:33,772 申し訳ありません… 私です。 241 00:18:33,772 --> 00:18:38,110 どういうことだ。 まさか お前が盗んだのか? 242 00:18:38,110 --> 00:18:43,782 いえ。 置いたままになってるのを見つけて 不用心だと思って預かったんです。 243 00:18:43,782 --> 00:18:46,118 何だ…。 244 00:18:46,118 --> 00:18:49,455 お騒がせして… 申し訳ありません! 245 00:18:49,455 --> 00:18:52,357 いえ 悪いのは私なんですから。 246 00:18:52,357 --> 00:18:59,131 とんだ手間がかかった。 仕事に戻れ。 (お常)はい すいませんでした。 247 00:18:59,131 --> 00:19:07,473 ♬~ 248 00:19:07,473 --> 00:19:12,144 もう大丈夫です。 はい…。 249 00:19:12,144 --> 00:19:29,161 ♬~ 250 00:19:29,161 --> 00:19:32,431 妙なことがあるものですね…。 251 00:19:32,431 --> 00:19:37,302 田山がやったというのが どうも 本当とは思えない。 252 00:19:37,302 --> 00:19:41,773 あなたは それが伊久さんが 関わりがあると思われるのですか? 253 00:19:41,773 --> 00:19:46,645 伊久さんが来てからなんだ。 田山が おかしくなったのは。 254 00:19:46,645 --> 00:19:53,118 それより前に 何か いつもと違うことは? 255 00:19:53,118 --> 00:19:59,458 田山は 先生の言いつけで 八王子に行っていたが…。 256 00:19:59,458 --> 00:20:04,329 もしかして その道中で何かあったとか? 257 00:20:04,329 --> 00:20:06,798 どういうことだ? 258 00:20:06,798 --> 00:20:10,135 田山さんは 帰ってきた時の様子は? 259 00:20:10,135 --> 00:20:13,472 いつもどおり…。 260 00:20:13,472 --> 00:20:16,808 道中 どうだった? 何か面白いことはあったか。 261 00:20:16,808 --> 00:20:21,508 いえ これといって 何もありません。 262 00:20:23,148 --> 00:20:25,484 あっ…。 何か? 263 00:20:25,484 --> 00:20:27,819 いや ふだんの田山なら➡ 264 00:20:27,819 --> 00:20:30,489 旅先であったことを あれこれ話すはずだ。 265 00:20:30,489 --> 00:20:33,789 なのに 妙に おとなしかった。 266 00:20:35,827 --> 00:20:37,827 何だ? 267 00:20:39,498 --> 00:20:43,368 分かりません。 268 00:20:43,368 --> 00:20:50,142 でも 謎めいて 何だか楽しくないですか? 269 00:20:50,142 --> 00:20:57,849 ♬~ 270 00:20:57,849 --> 00:21:03,722 <その夜遅く 事態は急展開を迎えた> 271 00:21:03,722 --> 00:21:06,722 (およね)キャ~ッ! 272 00:21:08,493 --> 00:21:11,863 だ… 誰だい!? 誰だい! 273 00:21:11,863 --> 00:21:15,734 誰だい! な… 何だ 何だ!? どうしたんだ? 274 00:21:15,734 --> 00:21:17,736 男が忍び込んだんだよ! 275 00:21:17,736 --> 00:21:21,206 私のことを襲おうとしたんだ! えっ お… 男!? ああ! 276 00:21:21,206 --> 00:21:24,543 何事だ。 男が忍び込んだそうです。 277 00:21:24,543 --> 00:21:27,543 何! そ… そうなんだよ。 278 00:21:29,881 --> 00:21:32,484 どんな男だった? 279 00:21:32,484 --> 00:21:39,484 さあ。 顔は見えなかった…。 私が暴れたら 逃げてったよ。 280 00:21:41,159 --> 00:21:43,095 戸締まりは どうだ? 281 00:21:43,095 --> 00:21:49,835 へい 人が出はいりした様子は ありません。 分かった。 282 00:21:49,835 --> 00:21:54,506 病人は 誰も部屋を出ておりません。 そうか。 283 00:21:54,506 --> 00:21:57,175 では 一体 誰が…。➡ 284 00:21:57,175 --> 00:22:04,175 ここにいる男は 私と先生と あとは…。 285 00:22:06,518 --> 00:22:11,518 ま… まさか また お前か? 286 00:22:13,191 --> 00:22:16,491 はい 私です。 287 00:22:18,063 --> 00:22:20,065 どういうことだ? 288 00:22:20,065 --> 00:22:24,202 およねは 前々から 私を気に入ったそぶりをしてたので…。 289 00:22:24,202 --> 00:22:26,902 (津川)したのか? 290 00:22:30,542 --> 00:22:32,811 したかもね。 291 00:22:32,811 --> 00:22:35,714 すみません 出来心で。 292 00:22:35,714 --> 00:22:38,150 許嫁がありながら どうして そんなことを…。 293 00:22:38,150 --> 00:22:40,850 魔が差したと申しましょうか。 294 00:22:42,487 --> 00:22:47,826 こればかりは 不問に付するというわけにはいかんぞ。 295 00:22:47,826 --> 00:22:51,697 おとがめは受けます。 296 00:22:51,697 --> 00:22:56,997 では ここから去れ。 297 00:23:00,172 --> 00:23:02,841 (津川)しかし 何もしなかったのですから。 298 00:23:02,841 --> 00:23:05,841 そういう問題ではない! 299 00:23:07,512 --> 00:23:10,512 どうなんだ! 300 00:23:13,852 --> 00:23:19,524 (泣き声) 301 00:23:19,524 --> 00:23:25,864 もういいだろう…。 およね 話してやれ。 302 00:23:25,864 --> 00:23:29,164 え…。 303 00:23:31,470 --> 00:23:35,140 私は襲われてなんかいないよ。➡ 304 00:23:35,140 --> 00:23:38,477 芝居をしたんだ。 305 00:23:38,477 --> 00:23:41,379 そういう芝居をすれば➡ 306 00:23:41,379 --> 00:23:44,816 この男が 自分がやったと 名乗り出るんじゃないかって➡ 307 00:23:44,816 --> 00:23:47,486 赤ひげに言われてね。 先生が…。 308 00:23:47,486 --> 00:23:55,360 あまり よい方法とは言えないが 致し方なかった。 309 00:23:55,360 --> 00:24:01,833 さあ 田山 本当のことを言え。 310 00:24:01,833 --> 00:24:07,706 はい…。 確かに 私は およねを襲ってはおりません。 311 00:24:07,706 --> 00:24:10,175 壺は? 割っておりません。 312 00:24:10,175 --> 00:24:13,078 金は? 預かっておりません。➡ 313 00:24:13,078 --> 00:24:15,046 自分で立て替えた金です。 314 00:24:15,046 --> 00:24:20,185 つまり 人の罪を かぶろうとしたんだな。 315 00:24:20,185 --> 00:24:26,485 はい。 なぜ そんなことをしようとした? 316 00:24:33,732 --> 00:24:36,032 なぜだ! 317 00:24:51,149 --> 00:24:56,021 で 田山は 訳を話したんですか? 318 00:24:56,021 --> 00:24:58,824 言えません。 319 00:24:58,824 --> 00:25:01,493 言えないだと!? 320 00:25:01,493 --> 00:25:05,163 はい… 言えません。 321 00:25:05,163 --> 00:25:07,833 どういうことだ…。 322 00:25:07,833 --> 00:25:11,133 分からん…。 323 00:25:12,704 --> 00:25:15,507 ≪(伊久)失礼いたします。 324 00:25:15,507 --> 00:25:22,807 ♬~ 325 00:25:24,516 --> 00:25:27,816 一体 何の話だ。 326 00:25:29,387 --> 00:25:33,325 朝のお忙しい時に お手間を取らせてしまい➡ 327 00:25:33,325 --> 00:25:37,095 申し訳なく存じます。 328 00:25:37,095 --> 00:25:40,999 実は…➡ 329 00:25:40,999 --> 00:25:48,299 この人が あんな嘘をついたのは 私への当てつけなんです。 330 00:25:51,676 --> 00:25:54,479 そうなんでしょう? 331 00:25:54,479 --> 00:25:59,150 私が あなたに嘘をついたこと あなたは分かってたんでしょ。 332 00:25:59,150 --> 00:26:01,086 (田山)え? 333 00:26:01,086 --> 00:26:04,823 その当てつけに 自分も いろいろな嘘をついてみせたんでしょう。 334 00:26:04,823 --> 00:26:07,158 あ いや…。 335 00:26:07,158 --> 00:26:11,029 あなたがついた嘘とは 何ですか? 336 00:26:11,029 --> 00:26:13,832 私…➡ 337 00:26:13,832 --> 00:26:16,167 みごもってなどおりません。 338 00:26:16,167 --> 00:26:18,167 え! (津川 保本)え! 339 00:26:21,506 --> 00:26:24,843 私は あの時…。 340 00:26:24,843 --> 00:26:27,746 そう たやすいことではないのです。 341 00:26:27,746 --> 00:26:29,714 どういうことですか? 342 00:26:29,714 --> 00:26:32,714 実は…。 343 00:26:36,454 --> 00:26:41,793 私 その方の子をみごもってしまいました。 344 00:26:41,793 --> 00:26:43,728 え…。 ところが➡ 345 00:26:43,728 --> 00:26:47,465 みごもったことを 父に知られてしまったので➡ 346 00:26:47,465 --> 00:26:52,337 私 思わず 真一郎様の子だと 言ってしまったんです。 347 00:26:52,337 --> 00:26:54,339 どうして そんな…。 348 00:26:54,339 --> 00:26:57,809 許嫁との間で そういうことになったのであれば➡ 349 00:26:57,809 --> 00:27:00,712 まだ許されると思いまして。 350 00:27:00,712 --> 00:27:02,681 それは そうですね。 351 00:27:02,681 --> 00:27:06,818 でも 父の怒りは収まりませんでした…。 352 00:27:06,818 --> 00:27:12,490 なので ほとぼりが冷めるまで ここに置いていただけませんでしょうか。 353 00:27:12,490 --> 00:27:15,827 子どもは あなたの子だということにして。 354 00:27:15,827 --> 00:27:18,127 はあ…。 355 00:27:23,168 --> 00:27:25,103 分かりました。 356 00:27:25,103 --> 00:27:29,040 では お芝居を始めましょう。 え? 357 00:27:29,040 --> 00:27:32,978 まずは あなたが 大げさに驚くところからです。 358 00:27:32,978 --> 00:27:37,978 はい どうぞ。 …はい! 359 00:27:39,651 --> 00:27:42,351 え~っ! 360 00:27:44,122 --> 00:27:47,459 なぜ みごもったなどと嘘を…。 361 00:27:47,459 --> 00:27:54,132 この人が 私との婚儀を 一向に真面目に考えてくれないもので…。 362 00:27:54,132 --> 00:27:59,004 ここで ごやっかいになるうちに 私のさまざまな手並みをお見せすれば➡ 363 00:27:59,004 --> 00:28:03,141 お気持ちも変わるかと。 364 00:28:03,141 --> 00:28:05,477 そうだったのか…。 365 00:28:05,477 --> 00:28:10,815 あなたは 気付いていたんですよね? だから 私への当てつけに➡ 366 00:28:10,815 --> 00:28:15,487 壺を割っただの およねさんを襲っただの いろいろな嘘をついたんでしょ。 367 00:28:15,487 --> 00:28:17,422 いや…。 368 00:28:17,422 --> 00:28:20,158 では なぜ あなたは無用な嘘をついたのですか? 369 00:28:20,158 --> 00:28:24,496 だから… その訳は言えません。 370 00:28:24,496 --> 00:28:26,431 あっ。 371 00:28:26,431 --> 00:28:31,302 もしかして その道中で何かあったとか? 372 00:28:31,302 --> 00:28:36,107 先生の使いの道中… そこで 何かあったんだな。 373 00:28:36,107 --> 00:28:38,043 いや! いや…。 374 00:28:38,043 --> 00:28:40,779 話してみろ。 375 00:28:40,779 --> 00:28:44,779 これ以上 皆に心配をかけるのか? 376 00:28:59,798 --> 00:29:03,134 あれは…➡ 377 00:29:03,134 --> 00:29:07,434 使いの帰り道のことでした。 378 00:29:13,144 --> 00:29:15,844 どうした? 379 00:29:17,482 --> 00:29:20,782 (おたま)足が…。 380 00:29:22,353 --> 00:29:26,653 私は医者だ。 見せてみなさい。 381 00:29:28,493 --> 00:29:30,428 ううっ…! 382 00:29:30,428 --> 00:29:34,099 痛むか? はい。 383 00:29:34,099 --> 00:29:36,034 くじいたようだな…。 384 00:29:36,034 --> 00:29:38,436 これから どこへ行く? 385 00:29:38,436 --> 00:29:44,736 江戸へ…。 今夜は 府中に泊まろうかと。 なら 私と一緒だ。 386 00:29:46,311 --> 00:29:49,080 ああっ! 大丈夫か? 387 00:29:49,080 --> 00:29:51,380 すみません…。 388 00:29:56,454 --> 00:30:00,325 同じ部屋に泊まるなんて… 困る。 389 00:30:00,325 --> 00:30:05,325 旅は道連れと言うじゃありませんか…。 390 00:30:07,098 --> 00:30:12,398 女の1人旅は 何かと不安なんです。 391 00:30:15,473 --> 00:30:18,143 (熊吉)おい! あら…。 392 00:30:18,143 --> 00:30:21,813 てめえ よくも うちの親分のお内儀さんに 手を出したな。 393 00:30:21,813 --> 00:30:25,150 えっ。 この人が 一緒に泊まろうって➡ 394 00:30:25,150 --> 00:30:27,485 無理やり…。 そんな 私は…! 395 00:30:27,485 --> 00:30:31,823 どう落とし前つけるんだ。 ええっ! 396 00:30:31,823 --> 00:30:37,523 それは 美人局というやつではないか。 397 00:30:39,697 --> 00:30:42,167 そうです…。 398 00:30:42,167 --> 00:30:49,507 ♬~ 399 00:30:49,507 --> 00:30:51,843 (戸が開く音) 400 00:30:51,843 --> 00:30:57,143 (侍)大変だのう。 ハハハッ…。 401 00:30:59,517 --> 00:31:03,188 隣の部屋で 話は聞いた。 402 00:31:03,188 --> 00:31:07,058 悪党の猿知恵に引っかかるとは…➡ 403 00:31:07,058 --> 00:31:10,862 お主も よっぽど 人がよいと見える。 404 00:31:10,862 --> 00:31:13,531 ありがとうございます。 405 00:31:13,531 --> 00:31:17,869 ここは わたくしに任せて逃げよ。 え。 406 00:31:17,869 --> 00:31:20,772 あいつらが戻る前に。 さあ。 407 00:31:20,772 --> 00:31:23,208 しかし そんなことしたら あなたが…。 408 00:31:23,208 --> 00:31:27,078 心配ご無用。 わたくしは これでも武士だ。 409 00:31:27,078 --> 00:31:30,548 いざとなれば これがある。 410 00:31:30,548 --> 00:31:39,824 ♬~ 411 00:31:39,824 --> 00:31:44,495 (親分)てめえか。 俺の女房に 手ぇ出しやがったやつは! 412 00:31:44,495 --> 00:31:46,831 はい わたくしです。 413 00:31:46,831 --> 00:31:50,531 あっ いや… こ こいつは…! 414 00:31:52,170 --> 00:31:54,839 (おたま)こんな男 知らないよ! 415 00:31:54,839 --> 00:31:57,508 わたくしですよ。 忘れたのですか? 416 00:31:57,508 --> 00:32:00,178 誰なのよ あんた! 知らない顔だね。 417 00:32:00,178 --> 00:32:05,516 どちら様ですか? (親分)熊… 説明しろ。 418 00:32:05,516 --> 00:32:25,536 ♬~ 419 00:32:25,536 --> 00:32:30,408 (田山)己のふがいなさが 何とも情けない限りでした。 420 00:32:30,408 --> 00:32:37,482 やがて あのお武家に お礼ができない分 何かできないかと考え…➡ 421 00:32:37,482 --> 00:32:42,482 他人の不始末を 身代わりになって 助けようと決心をしたのです。 422 00:32:52,030 --> 00:32:55,033 ≪(お常)ああああっ…!➡ 423 00:32:55,033 --> 00:32:59,170 ああああっ…! ああああっ…! 424 00:32:59,170 --> 00:33:01,839 どうした!? あった あった あった!➡ 425 00:33:01,839 --> 00:33:03,775 お金があったんですよ!➡ 426 00:33:03,775 --> 00:33:07,512 洗濯物を干す時に ひょいって置いたのを 忘れてたんですよ! 427 00:33:07,512 --> 00:33:11,182 なのに 私ったら 棚に置いただなん…。 428 00:33:11,182 --> 00:33:18,856 あれ? そしたら… あの時 田山先生が お出しになったお金は? 429 00:33:18,856 --> 00:33:24,195 田山が立て替えたんだ。 ほかの誰かが罪にならないように。 430 00:33:24,195 --> 00:33:27,865 そうだったんだ…。 431 00:33:27,865 --> 00:33:29,801 ありがとうございます! 432 00:33:29,801 --> 00:33:32,136 あの時 田山先生が お金を出してくださらなかったら➡ 433 00:33:32,136 --> 00:33:35,807 私は この養生所に泥棒がいるって 疑ったまんまだったんですよ! 434 00:33:35,807 --> 00:33:39,143 先生 ありがとうございます! 435 00:33:39,143 --> 00:33:44,143 あの… こちらの方が。 ああ これは。 436 00:33:49,153 --> 00:33:54,492 この度は 何とも 申し訳の立たぬことをいたしました。 437 00:33:54,492 --> 00:34:01,492 実は 壺を割ったのは… 私なんです。 438 00:34:03,501 --> 00:34:08,172 あの時 先生は ご覧になったんでしょう? 439 00:34:08,172 --> 00:34:15,046 ♬~ 440 00:34:15,046 --> 00:34:17,046 ああっ! (壺が割れる音) 441 00:34:19,517 --> 00:34:21,452 どうしよう…! 442 00:34:21,452 --> 00:34:29,527 ♬~ 443 00:34:29,527 --> 00:34:34,132 (吉次郎)田山先生が 自分がやったと おっしゃった時には驚きました。 444 00:34:34,132 --> 00:34:36,467 なんて いいお人なんだ…。 445 00:34:36,467 --> 00:34:38,403 それに引き換え この私は…。 446 00:34:38,403 --> 00:34:40,805 田山先生が あんなことをしてくださらなきゃ➡ 447 00:34:40,805 --> 00:34:43,141 私は 口をつぐんだままでした…。➡ 448 00:34:43,141 --> 00:34:47,478 先生のおかげで 思い直すことができたんです。 449 00:34:47,478 --> 00:34:54,152 今朝 この者から本当のことを聞きました。 一度は 暇を出そうかとも思いました。➡ 450 00:34:54,152 --> 00:35:01,826 しかし 先生の気持ちに免じて 今度だけは 許してやることにしました。 451 00:35:01,826 --> 00:35:04,729 ありがとうございました。 452 00:35:04,729 --> 00:35:10,835 いやいや こちらこそ ご迷惑をおかけした。 453 00:35:10,835 --> 00:35:15,506 では 失礼いたします。 また いずれ 改めまして。 454 00:35:15,506 --> 00:35:19,844 わざわざ ご足労いただき 相すまぬ。 455 00:35:19,844 --> 00:35:22,544 おい お常。 ≪(お常)はい! 456 00:35:31,789 --> 00:35:37,128 全く… 人騒がせなやつだ。 457 00:35:37,128 --> 00:35:39,063 申し訳ございませんでした。 458 00:35:39,063 --> 00:35:45,470 しかし 田山のおかげで あのように救われた者もいたのですから。 459 00:35:45,470 --> 00:35:48,806 そんなものは たまたまだ。 460 00:35:48,806 --> 00:35:53,478 田山が罪をかぶったのを これ幸いに 口をつぐむ者だって出るだろう。 461 00:35:53,478 --> 00:35:55,813 しかもだ…➡ 462 00:35:55,813 --> 00:35:59,684 このまま 罪をかぶり続けていったら 田山自身は どうなる。 463 00:35:59,684 --> 00:36:05,823 しまいには 人殺しの罪を着て 死罪にだって なりかねんぞ。 464 00:36:05,823 --> 00:36:12,123 田山 お前は何者だ! 465 00:36:13,698 --> 00:36:16,834 医者ではないのか! 466 00:36:16,834 --> 00:36:21,506 もし 本当に その侍の恩に報いたいのなら➡ 467 00:36:21,506 --> 00:36:25,843 まずは 一人前の医者になって 病人たちを救うことこそ➡ 468 00:36:25,843 --> 00:36:29,514 お前がなすべきことじゃないのか! 469 00:36:29,514 --> 00:36:31,782 医者として半人前のくせに➡ 470 00:36:31,782 --> 00:36:36,454 人の罪をかぶりたいなどという者は この養生所には無用の者だ。 471 00:36:36,454 --> 00:36:39,754 今すぐ出ていけ! 472 00:36:41,325 --> 00:36:43,794 ここに いさせてください! 473 00:36:43,794 --> 00:36:49,094 お願いします! お願いします! 474 00:36:52,803 --> 00:36:58,142 ならば 心を入れ替えろ。 475 00:36:58,142 --> 00:37:01,842 この大バカ者が! 476 00:37:03,481 --> 00:37:06,384 (泣き声) 477 00:37:06,384 --> 00:37:09,820 ごめんなさい! 478 00:37:09,820 --> 00:37:17,495 一番醜いのは私です。 私は自分のことだけ…。 479 00:37:17,495 --> 00:37:21,195 田山先生が 好きだからだろ。 480 00:37:24,835 --> 00:37:27,738 こういう成り行きだ。 481 00:37:27,738 --> 00:37:32,643 この際 伊久さんと一緒になれよ。 482 00:37:32,643 --> 00:37:36,781 うん。 そうだな…。 483 00:37:36,781 --> 00:37:41,652 私は ここで働きながら ちゃんと 妻との暮らしはできている。 484 00:37:41,652 --> 00:37:44,655 いつまでも 待たせることはない。 485 00:37:44,655 --> 00:37:46,791 そうでしょうか。 486 00:37:46,791 --> 00:37:50,661 どうです 去定先生。 487 00:37:50,661 --> 00:37:54,665 わしに聞くな。 488 00:37:54,665 --> 00:37:58,135 当人の気持ち次第だろ。 489 00:37:58,135 --> 00:38:01,038 どうだ 田山? 490 00:38:01,038 --> 00:38:06,338 私は… 伊久さんさえよければ。 491 00:38:08,145 --> 00:38:11,048 ありがとうございます。 492 00:38:11,048 --> 00:38:14,018 でも…➡ 493 00:38:14,018 --> 00:38:16,020 この人の妻にはなれません! 494 00:38:16,020 --> 00:38:18,155 え! 495 00:38:18,155 --> 00:38:22,026 えっ ど… どうして? 496 00:38:22,026 --> 00:38:29,767 この人は 旅先で助けられた恩返しに 他人の不始末をかぶろうとした…。➡ 497 00:38:29,767 --> 00:38:34,639 だから 私が ほかの人の子どもを みごもったと言った時➡ 498 00:38:34,639 --> 00:38:38,442 自分の子だと 嘘をついてくれたんです。 499 00:38:38,442 --> 00:38:41,779 優しい… じゃないか。 500 00:38:41,779 --> 00:38:47,118 それじゃあ 私は割れた壺と同じではありませんか! 501 00:38:47,118 --> 00:38:51,989 ♬~ 502 00:38:51,989 --> 00:38:54,792 そうか? 503 00:38:54,792 --> 00:38:58,792 そう… なるのか? 504 00:39:01,666 --> 00:39:06,404 どうなんだい? 違うなら 違うって言ってやんなよ! 505 00:39:06,404 --> 00:39:11,104 そう言われると…。 506 00:39:14,478 --> 00:39:17,381 どうなんですか 先生? 507 00:39:17,381 --> 00:39:20,351 知らん。 508 00:39:20,351 --> 00:39:32,763 ♬~ 509 00:39:32,763 --> 00:39:35,433 痛むか? 痛みます。 510 00:39:35,433 --> 00:39:39,733 お雪 さらしを補充してくれ。 はい。 511 00:39:44,108 --> 00:39:47,778 薬を5日分 出しておくから…。 512 00:39:47,778 --> 00:39:50,681 この薬を飲んで 安静にするように。➡ 513 00:39:50,681 --> 00:39:55,981 それで熱が下がらなければ また来なさい。 分かりました。 514 00:40:17,475 --> 00:40:20,475 行くのか。 515 00:40:22,146 --> 00:40:26,484 はい。 お騒がせいたしました…。 516 00:40:26,484 --> 00:40:31,155 父には頭を下げて 正直に話をします。 517 00:40:31,155 --> 00:40:35,826 そうか それがいい。 518 00:40:35,826 --> 00:40:41,499 病や けがから 人を救おうとされる 先生方のお姿は➡ 519 00:40:41,499 --> 00:40:46,370 大変 尊く見えました。 520 00:40:46,370 --> 00:40:50,174 ここで お世話になっていれば➡ 521 00:40:50,174 --> 00:40:54,845 きっと あの人は 立派な医者になれますよね。 522 00:40:54,845 --> 00:40:58,545 それは あいつ次第だ。 523 00:41:01,519 --> 00:41:04,219 また来るといい。 524 00:41:05,856 --> 00:41:07,856 え…。 525 00:41:09,527 --> 00:41:16,227 田山のためを思えばこそ 今は身を引くんだろう。 526 00:41:20,871 --> 00:41:24,871 その心も また尊い。 527 00:41:26,744 --> 00:41:32,044 たまには来て やつに 活を入れてやってくれ。 528 00:41:34,418 --> 00:41:36,821 はい。 529 00:41:36,821 --> 00:41:45,162 ♬~ 530 00:41:45,162 --> 00:41:56,173 ♬~ 531 00:41:56,173 --> 00:41:58,509 これなら 縫わなくても大丈夫だろう。 532 00:41:58,509 --> 00:42:00,444 膏薬を貼っておいた。➡ 533 00:42:00,444 --> 00:42:06,383 これで 膿が出るかどうか 様子を見よう。 はい。 534 00:42:06,383 --> 00:42:09,520 先生。 何だ。 535 00:42:09,520 --> 00:42:11,856 妙な話なのですが➡ 536 00:42:11,856 --> 00:42:18,195 私は今回のことで 田山は意外と いい医者になるような気がしてきました。 537 00:42:18,195 --> 00:42:20,865 (田山)赤みは すぐに消える。 いいぞ。 538 00:42:20,865 --> 00:42:23,534 10日もすれば きれいに治るから 心配するな。 539 00:42:23,534 --> 00:42:28,234 フン… おかしなやつだ。 540 00:42:31,809 --> 00:42:36,146 <去定先生は 強くは否定しなかった。➡ 541 00:42:36,146 --> 00:42:41,819 先生も 私と同じことを 感じていたのかもしれない> 542 00:42:41,819 --> 00:42:45,689 いい医者か…。 543 00:42:45,689 --> 00:42:48,692 ああっ 何やってんだ! おおおい! 544 00:42:48,692 --> 00:42:50,828 ごめんなさい! お雪 雑巾 持ってきて! 545 00:42:50,828 --> 00:42:55,699 当分 先だな…。 (お雪)ああ もう焼酎が…! 546 00:42:55,699 --> 00:42:58,168 ああ いいぞ。 ありがとうございます。 547 00:42:58,168 --> 00:43:01,071 何やってんですか もう…。 すいません! すいません! 548 00:43:01,071 --> 00:43:03,040 私が この子の面倒見んだい。 549 00:43:03,040 --> 00:43:06,510 それならいいだろ。 文句ないだろ 赤ひげ。 550 00:43:06,510 --> 00:43:11,382 あの赤ん坊の世話をするようになってから 何だか働き者になったようで。 551 00:43:11,382 --> 00:43:15,519 鶴之介は私の子だ。 返してもらおう。 552 00:43:15,519 --> 00:43:17,454 待て およね! 553 00:43:17,454 --> 00:43:20,190 あんたといられて 楽しかったよ。 554 00:43:20,190 --> 00:43:25,190 お前のしたことは尊い。 限りなく尊い。 555 00:45:35,492 --> 00:45:41,192 (麺をすする音)