1 00:00:33,231 --> 00:00:38,570 (保本)<江戸 小石川に 幕府直轄の養生所がある。➡ 2 00:00:38,570 --> 00:00:40,505 享保の改革の時➡ 3 00:00:40,505 --> 00:00:45,043 貧しくて医者にかかれない者たちのために 作られた> 4 00:00:45,043 --> 00:00:49,247 先生! 先生! 先生~! 5 00:00:49,247 --> 00:00:52,283 どうした。 <この男が ここの所長の➡ 6 00:00:52,283 --> 00:00:54,419 新出去定だ> 7 00:00:54,419 --> 00:00:57,755 ひどい熱だな。 何があった? 8 00:00:57,755 --> 00:01:00,425 ちょっと前から寒気があって…。 9 00:01:00,425 --> 00:01:03,761 いつからだ? 10日くらい前から。 10 00:01:03,761 --> 00:01:08,633 風邪をこじらせたのか。 こんなになるまで なぜ放っておいた! 11 00:01:08,633 --> 00:01:12,470 なんまいだ なんまいだ。 12 00:01:12,470 --> 00:01:15,273 念仏で病が治るか バカ者。 13 00:01:15,273 --> 00:01:18,573 お前たち こいつを担いで中へ運べ。 14 00:01:20,445 --> 00:01:22,480 はいよ。 (お雪)はいよ。 15 00:01:22,480 --> 00:01:24,780 よいしょ…。 16 00:01:27,619 --> 00:01:30,088 はい どうぞ。 17 00:01:30,088 --> 00:01:33,391 <ここには 多くの病人が訪れる。➡ 18 00:01:33,391 --> 00:01:38,262 しかし 医者の数も資金も 十分ではなかった。➡ 19 00:01:38,262 --> 00:01:45,103 救いは新人の医師 田山が 多少 仕事ができるようになったことだろうか> 20 00:01:45,103 --> 00:01:47,739 (津川)動くなよ。➡ 21 00:01:47,739 --> 00:01:49,939 じっとしてろ。 22 00:01:53,044 --> 00:01:54,979 申し訳ありません。 23 00:01:54,979 --> 00:01:57,479 (竹造)すまない。 24 00:02:02,053 --> 00:02:04,122 あ~。 25 00:02:04,122 --> 00:02:08,426 <そのおかげか 中のことは彼らに任され➡ 26 00:02:08,426 --> 00:02:13,297 私 保本 登は 往診に専念することになった> 27 00:02:13,297 --> 00:02:19,437 この薬は このように色がにじみ出るまで 煎じて 朝晩 飲ませるんだ。 28 00:02:19,437 --> 00:02:22,073 いいな。 はい。 29 00:02:22,073 --> 00:02:26,611 起きられるか? はい…。 30 00:02:26,611 --> 00:02:29,611 少し苦いが我慢しろ。 31 00:02:36,220 --> 00:02:43,961 これで よくなる。 ありがとうございます 先生。 32 00:02:43,961 --> 00:02:47,832 本当にありがとうございます 先生。 33 00:02:47,832 --> 00:02:52,236 <我ながら いつも優しいので 病人たちの評判もよい。➡ 34 00:02:52,236 --> 00:02:57,936 それに引き換え この男は相変わらず機嫌が悪い> 35 00:03:00,912 --> 00:03:03,815 薬代が随分 増えてるな。 36 00:03:03,815 --> 00:03:06,584 薬種問屋が だいぶ吹っかけてきましたもので。 37 00:03:06,584 --> 00:03:11,456 <津川先生は 私の代わりに 中の仕事を取りしきっている> 38 00:03:11,456 --> 00:03:14,759 談判して 安くまとめろ。 39 00:03:14,759 --> 00:03:18,062 しかし 私は そういう仕事には 向いておりません。 40 00:03:18,062 --> 00:03:21,432 そういう仕事に向いている者など そうはおらん。 41 00:03:21,432 --> 00:03:25,303 誰かがやらねばならんのだ。 42 00:03:25,303 --> 00:03:29,307 貧乏くじということですか。 そういうことだ! 43 00:03:29,307 --> 00:03:33,010 はあ~! 津川! 44 00:03:33,010 --> 00:03:35,079 はい。 45 00:03:35,079 --> 00:03:38,549 すまん 少し八つ当たりをした。 はい? 46 00:03:38,549 --> 00:03:43,221 相変わらず金がないのに 病人は増えるばかりだ…。 47 00:03:43,221 --> 00:03:46,257 医者一人がやれることなど たかが知れてる。 48 00:03:46,257 --> 00:03:49,393 医術は進歩する。 49 00:03:49,393 --> 00:03:52,430 新しい医術も学ばねばならん。 50 00:03:52,430 --> 00:03:56,901 この蘭方医書の写本もそうだ。 ところが どうだ。 51 00:03:56,901 --> 00:04:01,405 未整理で分からんとこだらけだ。 52 00:04:01,405 --> 00:04:05,042 一つずつ片づけていくしかない。 53 00:04:05,042 --> 00:04:10,248 無知と貧困。 そいつと闘うということですね。 54 00:04:10,248 --> 00:04:12,448 そうだ。 55 00:04:14,051 --> 00:04:17,755 先生! けが人です。 しかも5人! 56 00:04:17,755 --> 00:04:20,591 何? 57 00:04:20,591 --> 00:04:23,628 あんた しっかりして。 大丈夫か? 58 00:04:23,628 --> 00:04:25,763 どけ。 59 00:04:25,763 --> 00:04:27,698 あんた~! 60 00:04:27,698 --> 00:04:31,202 本郷の大工です。 足場が崩れて 体が下敷きになっちまったみたいで。 61 00:04:31,202 --> 00:04:33,137 お常 湯だ 湯を持ってこい。 はい! 62 00:04:33,137 --> 00:04:36,374 先生 脈がありません。 何!? 63 00:04:36,374 --> 00:04:38,409 田山 そっちを診ろ。 はい。 64 00:04:38,409 --> 00:04:41,879 (津川)聞こえるか? しっかりしろ。 65 00:04:41,879 --> 00:04:46,384 ふっ。 戻ってこい 戻ってこい。 66 00:04:46,384 --> 00:04:49,887 動かすぞ? 肩の骨が折れてますが 息はしっかりしてます。 67 00:04:49,887 --> 00:04:51,889 よし。 68 00:04:51,889 --> 00:04:54,759 しっかりして~! 69 00:04:54,759 --> 00:04:56,759 駄目か…。 70 00:04:58,896 --> 00:05:01,899 津川 そいつをのせろ。 えっ…。 71 00:05:01,899 --> 00:05:05,403 死んだ者より生きてる者だ。 急げ! (2人)はい! 72 00:05:05,403 --> 00:05:09,574 <小石川養生所の所長 新出去定。➡ 73 00:05:09,574 --> 00:05:18,274 ある者は恐れを ある者は親しみを込めて この男のことを赤ひげと呼ぶ> 74 00:05:26,924 --> 00:05:29,594 はやり病ですか。 75 00:05:29,594 --> 00:05:32,496 いえ ただの風邪です。 76 00:05:32,496 --> 00:05:35,199 子どもは 風邪をひきやすいので➡ 77 00:05:35,199 --> 00:05:37,235 体を冷やさぬよう くれぐれも気を付けてください。 78 00:05:37,235 --> 00:05:44,208 そうか よかった。 おい 冷やさぬようにな。 はい。 79 00:05:44,208 --> 00:05:46,508 (子どもたち)わあ~! 80 00:05:49,013 --> 00:05:51,549 子どもが増えたようですね。 81 00:05:51,549 --> 00:05:56,020 ハハ… 身寄りのない子を預かっていたら➡ 82 00:05:56,020 --> 00:05:59,557 こんなに たくさんになってしまいました。 83 00:05:59,557 --> 00:06:02,026 頭が下がります。 84 00:06:02,026 --> 00:06:04,326 (およね)こら~! 85 00:06:06,397 --> 00:06:09,033 <かつて遊女だった およねは➡ 86 00:06:09,033 --> 00:06:14,839 病人として養生所に入り 後に使用人となった。➡ 87 00:06:14,839 --> 00:06:21,579 そして 今は 去定先生の紹介で ここで働いている> 88 00:06:21,579 --> 00:06:26,050 あ~ もう 子ども増やさないでくださいよ。 89 00:06:26,050 --> 00:06:28,953 すまんな。 元気そうだな。 90 00:06:28,953 --> 00:06:34,358 あれ? 保本先生 来てたのかい。 励んでいるようだな。 91 00:06:34,358 --> 00:06:37,995 養生所で 赤ひげに文句言われながら働くより➡ 92 00:06:37,995 --> 00:06:42,533 子ども相手の方がましだよ。 ここを世話してくれてありがたいよ。 93 00:06:42,533 --> 00:06:45,369 そうか。 赤ひげは元気かい。 94 00:06:45,369 --> 00:06:48,873 あの人が どういう時に元気なのか よく分からない。 95 00:06:48,873 --> 00:06:56,013 ハッ まあ そうだね。 相変わらず仏頂面してんだろ。 96 00:06:56,013 --> 00:06:58,916 あんた! 父ちゃん…。 あんた…。 97 00:06:58,916 --> 00:07:02,720 ああ… あんた~。 (泣き声) 98 00:07:02,720 --> 00:07:07,920 何度見送っても 人の死には慣れないものだ。 99 00:07:10,895 --> 00:07:13,195 (間下)御免。 100 00:07:18,235 --> 00:07:20,235 (間下)おい。 101 00:07:27,244 --> 00:07:35,353 「私 死に候時は 新出去定を訪ね申すべき事。➡ 102 00:07:35,353 --> 00:07:37,688 父」。 103 00:07:37,688 --> 00:07:41,525 この 父というのは? 104 00:07:41,525 --> 00:07:47,325 それが 分からんのだ。 この娘が しゃべろうとしないので。 105 00:07:49,000 --> 00:07:53,704 この子は どうも頭が…。 106 00:07:53,704 --> 00:07:58,576 この娘は どこにいた。 あ… 千住の荒れ寺だ。 107 00:07:58,576 --> 00:08:02,880 盗人が逃げ込んだという知らせを受けて 手入れした折に見つけ➡ 108 00:08:02,880 --> 00:08:06,717 詮議をしたところ 盗みには関わっていないことが分かった。 109 00:08:06,717 --> 00:08:10,388 しかし 身寄りが分からず 口もきかず➡ 110 00:08:10,388 --> 00:08:13,224 さりとて このまま放り出すわけにもいかず…➡ 111 00:08:13,224 --> 00:08:16,724 手がかりは その手紙だけ…。 112 00:08:18,396 --> 00:08:22,266 分かった 預かろう。 113 00:08:22,266 --> 00:08:24,268 えっ…。 114 00:08:24,268 --> 00:08:27,905 はあ~ では お願いいたす。 115 00:08:27,905 --> 00:08:32,705 私は これで。 ご苦労だった。 116 00:08:35,646 --> 00:08:38,549 もういいぞ。 117 00:08:38,549 --> 00:08:43,354 バカのふりをしていたんだろ。 もういい。 118 00:08:43,354 --> 00:08:46,857 (つぐみ)どうして…? ええっ。 119 00:08:46,857 --> 00:08:50,557 なぜ バカのふりなどしたんだ。 120 00:08:54,198 --> 00:08:57,234 元のとこに戻されたらかないませんので。 121 00:08:57,234 --> 00:08:59,370 元のところ? 122 00:08:59,370 --> 00:09:03,207 あの人が死んで 身寄りがないもので➡ 123 00:09:03,207 --> 00:09:07,378 大家のつてで さる大店に預けられたんです。 124 00:09:07,378 --> 00:09:10,714 でも こき使われた上に 売り飛ばされそうに…➡ 125 00:09:10,714 --> 00:09:13,514 だから逃げたんです。 126 00:09:15,586 --> 00:09:20,891 では お手間をおかけしました。 127 00:09:20,891 --> 00:09:24,091 待て。 128 00:09:25,729 --> 00:09:28,566 何でしょう。 129 00:09:28,566 --> 00:09:32,837 あの人というのは お前の父のことだな。 130 00:09:32,837 --> 00:09:38,337 その父とは もしや 安岡多聞ではないのか。 131 00:09:40,578 --> 00:09:47,384 やはりそうか。 この字には見覚えがある。 132 00:09:47,384 --> 00:09:49,854 確か そんな名前でした。 133 00:09:49,854 --> 00:09:54,725 もう随分 会っていないが… 死んだのか。 134 00:09:54,725 --> 00:09:56,727 はい。 135 00:09:56,727 --> 00:10:01,365 この手紙があるのに どうして すぐに ここに来なかった。 136 00:10:01,365 --> 00:10:05,703 もう医者と関わるのは ごめんです。 137 00:10:05,703 --> 00:10:11,375 多聞は 町医者を続けていたのか。 はい。 138 00:10:11,375 --> 00:10:17,882 医者の娘か… 先生は この娘の父親をご存じなのですね。 139 00:10:17,882 --> 00:10:21,886 昔のことだ。 140 00:10:21,886 --> 00:10:25,022 お前は今 いくつだ。 141 00:10:25,022 --> 00:10:28,392 17です。 17…。 142 00:10:28,392 --> 00:10:30,895 死んだ人のことは どうでもいいんです! 143 00:10:30,895 --> 00:10:37,668 なら なぜ この手紙を 後生大事に持っていた。 144 00:10:37,668 --> 00:10:41,906 行く当てはあるのか。 145 00:10:41,906 --> 00:10:45,776 お前のような娘が うろついていたら かどわかしに遭うか➡ 146 00:10:45,776 --> 00:10:51,276 また役人に捕まるかの どちらかだぞ。 147 00:10:55,052 --> 00:10:57,121 よいしょ… 大根だね。 3本ね。 148 00:10:57,121 --> 00:10:59,256 あと ゴボウ…。 ゴボウ ゴボウ。 149 00:10:59,256 --> 00:11:02,927 よいしょ…。 何ですか この子。 えっ? 150 00:11:02,927 --> 00:11:06,597 ああ 去定先生が 住み込みの奉公先を見つけてやるから➡ 151 00:11:06,597 --> 00:11:10,067 それまで ここで働かせろって。 152 00:11:10,067 --> 00:11:14,438 ちゃんと挨拶できないのかい? よろしくお願いします だろ。 153 00:11:14,438 --> 00:11:17,775 ただ飯を食わせるわけにはいかないから 働け。 154 00:11:17,775 --> 00:11:21,278 そう言われただけです。 愛想のない子。 155 00:11:21,278 --> 00:11:24,949 ま… まあ 人手不足だから 愛想は とりあえずいいよ。 156 00:11:24,949 --> 00:11:29,649 ほら ちょっとあんた ここでネギ刻んでごらん。 はい。 157 00:11:37,895 --> 00:11:41,765 あら 割に いい手つきじゃない。 158 00:11:41,765 --> 00:11:46,403 あんた どっから来たの? 159 00:11:46,403 --> 00:11:49,039 名前は? 160 00:11:49,039 --> 00:11:53,410 あっ ざるはね こっちに変えたの。 161 00:11:53,410 --> 00:11:59,216 そう… ほかにも いろいろと 置き場所が変わってるんだね。 162 00:11:59,216 --> 00:12:01,585 そう。 こっちの方が取り回しよくて。 163 00:12:01,585 --> 00:12:05,256 お常さん 今月のお勘定です。 あっ はいよ。 164 00:12:05,256 --> 00:12:07,191 つぐみ。 165 00:12:07,191 --> 00:12:09,126 えっ? 166 00:12:09,126 --> 00:12:13,964 名前。 だったら 聞かれて すぐ答えなよ。 167 00:12:13,964 --> 00:12:16,867 自分の名前 嫌いだから。 168 00:12:16,867 --> 00:12:23,073 この人は お常さん。 こっちは お光さんよ。 169 00:12:23,073 --> 00:12:25,442 私は 雪。 170 00:12:25,442 --> 00:12:29,780 お光さんがいっとき 外に出てたんだけど 戻ってくれて➡ 171 00:12:29,780 --> 00:12:33,217 今は 3人で仲よく働いてるの。 172 00:12:33,217 --> 00:12:35,252 仲よく…。 (お雪)うん そうよ。 173 00:12:35,252 --> 00:12:37,388 フッ そんなの嘘っぱち。 174 00:12:37,388 --> 00:12:42,026 嘘? そんなことないよ。 どこが嘘なの。 175 00:12:42,026 --> 00:12:47,026 では 言わせてもらいますけど それ。 176 00:12:49,733 --> 00:12:52,036 (達吉)くさくさするねえ。 177 00:12:52,036 --> 00:12:54,405 吉原が懐かしいや。 178 00:12:54,405 --> 00:12:57,241 おや? あっ? 「なか」は詳しいのかい。 179 00:12:57,241 --> 00:12:59,910 おう ならしたもんよ。 180 00:12:59,910 --> 00:13:07,251 ち~んちん ♬「悪止めせずと」 181 00:13:07,251 --> 00:13:10,054 おうおう。 あっ? それが今じゃ勘当か? 182 00:13:10,054 --> 00:13:12,923 勘当じゃねえ! バカ野郎 こっちから飛び出してやったんだよ! 183 00:13:12,923 --> 00:13:15,759 静かにしろ。 ≪(お光)そうだったのね➡ 184 00:13:15,759 --> 00:13:20,431 私が邪魔なら出ていくわよ。 (お雪)そんなこと言ってないでしょ! 185 00:13:20,431 --> 00:13:23,467 お光さんこそ…! もう いいかげんにおしよ。 186 00:13:23,467 --> 00:13:25,602 何でもかんでも場所変えて。 187 00:13:25,602 --> 00:13:28,072 私がいなくても 2人で うまくやってたのね。 188 00:13:28,072 --> 00:13:30,140 何よ ざるくらいで。 189 00:13:30,140 --> 00:13:32,710 いや ざるは前に戻すよ。 ねっ それでいいだろ。 190 00:13:32,710 --> 00:13:36,213 私に余計な気を遣わないでください。 何だい その言い方は…! 191 00:13:36,213 --> 00:13:39,016 何で喧嘩なんかしてるんだ。 (3人)ああん!? 192 00:13:39,016 --> 00:13:42,516 だって あの子が! 193 00:13:44,388 --> 00:13:46,323 つぐみか…。 194 00:13:46,323 --> 00:13:50,260 私たちが仲いいって話したら あの子が そんなの嘘っぱちだって。 195 00:13:50,260 --> 00:13:54,031 そんなことないって言ったら…。 あの子が ざるの話を持ち出して。 196 00:13:54,031 --> 00:13:56,831 それは 喧嘩するようなことなのか? 197 00:13:58,569 --> 00:14:03,240 フッ 仲がいいなんて やっぱり嘘っぱちだったじゃない。 198 00:14:03,240 --> 00:14:07,411 う~っ しゃくに障るねえ! やれやれ…。 199 00:14:07,411 --> 00:14:10,911 おうおう 何だ 新しい子かい? 200 00:14:14,752 --> 00:14:21,252 つぐみ。 田山を手伝ってくれ。 出来た紫雲膏を詰めて蓋をするんだ。 201 00:14:25,929 --> 00:14:29,800 …にしても こんな小娘にかき回されたというわけか。 202 00:14:29,800 --> 00:14:31,735 女は浅はかですね。 203 00:14:31,735 --> 00:14:34,204 私は ありのままを言っただけです。 204 00:14:34,204 --> 00:14:39,877 ありのまま? 人は所詮 自分のことしか頭にありません。 205 00:14:39,877 --> 00:14:44,748 人のため 仲よく そんなの嘘に決まっています。 206 00:14:44,748 --> 00:14:48,218 ひねくれ者だな。 いや 一理ある。 207 00:14:48,218 --> 00:14:50,888 津川さんは 自分のことしか考えてないんですか。 208 00:14:50,888 --> 00:14:52,823 お前は違うのか。 私は違います。 209 00:14:52,823 --> 00:14:57,561 私は 世のため人のためと思い…。 ご立派なことだ。 210 00:14:57,561 --> 00:15:03,901 我々は もともと さほど仲がよくないから 喧嘩にもならんというわけだ。 211 00:15:03,901 --> 00:15:07,571 あっ 病人です。 去定先生がお呼びです。 212 00:15:07,571 --> 00:15:13,571 (おしの)はあ… はあ…。 脈が速いし 弱い。 はい。 213 00:15:17,581 --> 00:15:22,881 腹も痛むんだよな。 はい 少し…。 214 00:15:26,924 --> 00:15:29,593 (おしの)あっ…。 しこりがあります。 215 00:15:29,593 --> 00:15:31,893 そうなんだ。 216 00:15:34,865 --> 00:15:38,535 入所させて しばらく様子を見るか。 はい。 217 00:15:38,535 --> 00:15:42,372 (千吉)え… あ… 入所っていうのは どれくらい…? 218 00:15:42,372 --> 00:15:44,408 それは まだ分からん。 219 00:15:44,408 --> 00:15:48,545 うちには お金がないんです。 220 00:15:48,545 --> 00:15:50,881 病人が そんな心配をするな。 221 00:15:50,881 --> 00:15:52,883 ここは金が要らないんだよ。 222 00:15:52,883 --> 00:15:56,687 えっ 本当ですか! ああ。 そうだ。 223 00:15:56,687 --> 00:16:03,594 はあ…。 で おしのは 治りますか? お願いします! 224 00:16:03,594 --> 00:16:07,331 どうか なんとか治してやってください。 225 00:16:07,331 --> 00:16:10,033 分かっている。 226 00:16:10,033 --> 00:16:14,571 おとっつぁん ごめんよ 心配かけて。 227 00:16:14,571 --> 00:16:17,040 何言ってんだよ。 228 00:16:17,040 --> 00:16:21,879 お前には 苦労ばっかりかけた… こんなおとっつぁんのせいで。 229 00:16:21,879 --> 00:16:23,914 (泣き声) 230 00:16:23,914 --> 00:16:33,857 あ… この子の母親ってのもね 長いこと寝ついた末に 死にましてね。 231 00:16:33,857 --> 00:16:36,860 その上 私が体弱いもんだから➡ 232 00:16:36,860 --> 00:16:40,660 ちっちゃい時から働かして無理させて こんな…。 233 00:16:42,533 --> 00:16:47,704 金さえありゃ こんなことになんねえんだけどなあ。 234 00:16:47,704 --> 00:16:51,875 おとっつぁんったら そんなこと言わないで…。 235 00:16:51,875 --> 00:16:54,211 おい 無理しちゃいかん。 236 00:16:54,211 --> 00:17:03,887 はあ はあ… ここで養生して すぐ元気になるからね。 237 00:17:03,887 --> 00:17:06,390 それまで一人で大丈夫? 238 00:17:06,390 --> 00:17:09,426 バカ野郎… 子ども扱いするな。 239 00:17:09,426 --> 00:17:13,564 冷や飯が残ってるからね 今夜は あれを食べて。 240 00:17:13,564 --> 00:17:16,600 それから明日は…。 あっ もういいよ。 なっ。 241 00:17:16,600 --> 00:17:20,400 おめえは 寝てろ。 242 00:17:30,113 --> 00:17:32,683 おしのの病状 どう思う。 243 00:17:32,683 --> 00:17:37,187 はい 萎黄病ではないかと。 私は脚気を疑います。 244 00:17:37,187 --> 00:17:39,690 どちらも違うな。 245 00:17:39,690 --> 00:17:43,860 (2人)えっ? 萎黄病なら 血の気が引いたように肌が白くなる。 246 00:17:43,860 --> 00:17:46,363 脚気なら しびれを訴えるはずだが それもない。 247 00:17:46,363 --> 00:17:49,266 しかし では 一体…。 248 00:17:49,266 --> 00:17:52,235 分からん。 えっ? 249 00:17:52,235 --> 00:17:55,372 今のわしらには これ以上は何もできん。 250 00:17:55,372 --> 00:17:58,008 蘭方医学に何か答えがあるのでは? 251 00:17:58,008 --> 00:18:03,547 確かにな。 この中に答えがあるやもしれん…。 252 00:18:03,547 --> 00:18:08,418 しかし 長崎で蘭学を学んできた保本でさえ➡ 253 00:18:08,418 --> 00:18:11,421 半分も訳せなかった医術書だ。 254 00:18:11,421 --> 00:18:13,721 はあ…。 255 00:18:16,026 --> 00:18:48,358 ♬~ 256 00:18:48,358 --> 00:18:50,858 夜のお薬です。 257 00:18:52,529 --> 00:18:57,868 おとくさん。 あ… すまないねえ。 258 00:18:57,868 --> 00:19:00,868 おみよさん。 ありがとう。 259 00:19:03,540 --> 00:19:07,878 おしのさんなら さっきからいないよ。 260 00:19:07,878 --> 00:19:11,678 かわやにでも行ったんだろ。 261 00:19:14,551 --> 00:19:23,226 ♬~(三味線) 262 00:19:23,226 --> 00:19:29,733 何してるんです。 養生所では酒は ご法度ですよ。 263 00:19:29,733 --> 00:19:35,172 一杯どうです? 私はいい。 264 00:19:35,172 --> 00:19:37,172 いいから。 265 00:19:45,348 --> 00:19:47,984 あっ 何だ 水か。 266 00:19:47,984 --> 00:19:50,854 フフフッ 飲んでる気分だけ。 267 00:19:50,854 --> 00:19:55,854 私も昔 同じようなことをしました。 268 00:19:57,994 --> 00:20:01,698 どうです 近頃 中の様子は。 269 00:20:01,698 --> 00:20:06,536 養生所のそろばん方までやらされて とんだ貧乏くじですよ。 270 00:20:06,536 --> 00:20:11,374 往診は のんきでいいな。 その言い方は心外です。 271 00:20:11,374 --> 00:20:15,212 苦労だってある。 これは ご無礼を。 272 00:20:15,212 --> 00:20:27,412 ♬~(三味線) 273 00:20:53,250 --> 00:20:55,550 (つぐみ)何してるの? 274 00:20:59,422 --> 00:21:01,758 ごめんなさい。 275 00:21:01,758 --> 00:21:06,958 お金は返しました。 このことは黙ってて。 276 00:21:09,065 --> 00:21:12,936 私には関わりないことだから。 277 00:21:12,936 --> 00:21:17,274 あっ…! おなかが痛いの? 278 00:21:17,274 --> 00:21:19,609 あ… はあ はあ…。 279 00:21:19,609 --> 00:21:24,948 この辺? あ… ああっ! 280 00:21:24,948 --> 00:21:27,948 何やってんだい? 281 00:21:32,556 --> 00:21:35,892 んっ これ おいしい。 あんたも なめな。 282 00:21:35,892 --> 00:21:40,230 これは病人のもの。 子どものお菓子じゃないんだよ。 283 00:21:40,230 --> 00:21:43,033 ふ~ん。 知らなかったので。 284 00:21:43,033 --> 00:21:45,402 この子は もう。 285 00:21:45,402 --> 00:21:48,305 ゆっくりでいいからね。 286 00:21:48,305 --> 00:21:50,740 何してる。 287 00:21:50,740 --> 00:21:54,611 あの子が盗み食いしようとしたんですよ… 全く。 288 00:21:54,611 --> 00:21:58,311 さあ。 ちゃんと寝かしておくんだぞ。 はい。 289 00:22:03,453 --> 00:22:06,756 あの子 このままじゃ死にますよ。 290 00:22:06,756 --> 00:22:10,056 ≪(津川)何? なぜ そんなことが分かる。 291 00:22:12,062 --> 00:22:15,932 この娘は? 去定先生が拾った子です。 292 00:22:15,932 --> 00:22:17,934 あなたは? 293 00:22:17,934 --> 00:22:21,805 ここの医者の保本 登だ。 294 00:22:21,805 --> 00:22:24,305 医者…。 295 00:22:29,446 --> 00:22:34,417 なぜ あんなことを…。 憎まれ口をたたきたいだけでしょう。 296 00:22:34,417 --> 00:22:40,717 ≪(津川)まあ おしのを治す方法が 分からないのは 本当ですがね。 297 00:22:51,034 --> 00:22:53,570 どうも気になるんだ…。 298 00:22:53,570 --> 00:22:57,407 あの子 このままじゃ死にますよ。 299 00:22:57,407 --> 00:23:00,911 どうして そんなことを言ったのか…。 300 00:23:00,911 --> 00:23:03,411 よほど ひねくれているのか。 301 00:23:04,915 --> 00:23:07,584 どんな子なのですか? 302 00:23:07,584 --> 00:23:11,922 さあ 去定先生が 預かったらしいのだが…。 303 00:23:11,922 --> 00:23:15,759 その子のことが気になるのですねえ。 304 00:23:15,759 --> 00:23:18,428 いや 別に。 305 00:23:18,428 --> 00:23:21,932 変な意味で言ったんじゃありませんよ。 306 00:23:21,932 --> 00:23:25,268 ああ。 うん。 かわいい子なのですか? 307 00:23:25,268 --> 00:23:30,073 だから そういうことではない。 分かっていますよ。 308 00:23:30,073 --> 00:23:33,877 あなたには 去定先生の癖が うつったのです。 309 00:23:33,877 --> 00:23:37,547 えっ 先生の癖が? 310 00:23:37,547 --> 00:23:44,721 何事も深いところを見ようとする。 311 00:23:44,721 --> 00:23:51,227 こう… 奥にあるものを知ろうとする。 312 00:23:51,227 --> 00:23:58,001 その人の心の中に何があるのでしょうね。 313 00:23:58,001 --> 00:24:01,237 去定先生に聞いてみてください。 314 00:24:01,237 --> 00:24:03,173 変なやつだ…。 315 00:24:03,173 --> 00:24:05,173 フフフッ。 316 00:24:08,111 --> 00:24:12,849 おしのの様子は どうだ。 今は落ち着いてます。 317 00:24:12,849 --> 00:24:19,055 そうか。 昨日 つぐみが おしのを誘い出したようで。 318 00:24:19,055 --> 00:24:24,260 うん。 お常たちに迷惑ばかりかけてるようです。 319 00:24:24,260 --> 00:24:29,065 先生 あの つぐみという娘 どのような関わりがあるのですか。 320 00:24:29,065 --> 00:24:31,001 なぜ そんなことを聞く。 321 00:24:31,001 --> 00:24:32,936 先生は なぜ あの娘を? 322 00:24:32,936 --> 00:24:36,539 お前たちが気にしなくていい。 323 00:24:36,539 --> 00:24:38,575 先生…。 324 00:24:38,575 --> 00:24:42,775 去定先生の心の内を はかろうとしても 無駄だ。 325 00:24:49,019 --> 00:25:02,032 ♬~ 326 00:25:02,032 --> 00:25:05,402 ≪(お雪)先生! (戸が開く音) 327 00:25:05,402 --> 00:25:07,437 おしのちゃんが! 328 00:25:07,437 --> 00:25:09,739 ううっ…。 329 00:25:09,739 --> 00:25:11,674 代われ。 はい。 330 00:25:11,674 --> 00:25:14,911 痛むか? 触るぞ。 331 00:25:14,911 --> 00:25:20,583 (荒い息遣い) 332 00:25:20,583 --> 00:25:26,389 むくみが出てきたな。 どうすれば…。 333 00:25:26,389 --> 00:25:31,227 湯冷ましを飲ませろ。 はい…。 334 00:25:31,227 --> 00:25:33,530 苦しそうです。 335 00:25:33,530 --> 00:25:37,200 病のもとが分からんのに やたらな薬は飲ませられん。 336 00:25:37,200 --> 00:25:42,872 背中を丸めてろ。 少しは楽だ。 337 00:25:42,872 --> 00:25:47,710 飲ませたら さすってやれ。 はい…。 338 00:25:47,710 --> 00:25:51,010 起こすぞ。 339 00:25:53,383 --> 00:25:58,221 あの… 分からねえってのは どういうことなんでしょうね。 340 00:25:58,221 --> 00:26:01,891 (おしの)心配しないで。 今は楽になったから。 341 00:26:01,891 --> 00:26:06,563 おしのちゃん 大丈夫かしらね。 心配だね…。 342 00:26:06,563 --> 00:26:10,863 あんたが昨日 連れ出したせいじゃないのかい。 343 00:26:28,818 --> 00:26:32,618 この辺? あ… ああっ! 344 00:26:34,624 --> 00:26:37,193 「セメンシナ」…。 345 00:26:37,193 --> 00:26:39,863 (田山)何してる。➡ 346 00:26:39,863 --> 00:26:44,163 何を見てる? それは先生の本だぞ。 347 00:26:48,872 --> 00:26:51,372 何だ? 348 00:26:54,677 --> 00:26:58,214 (千吉)どうだい。 うん? 具合は。 349 00:26:58,214 --> 00:27:00,550 (おしの)大丈夫よ。 350 00:27:00,550 --> 00:27:04,220 で…➡ 351 00:27:04,220 --> 00:27:08,024 金は? それは勘弁して。 352 00:27:08,024 --> 00:27:10,393 何だって!?➡ 353 00:27:10,393 --> 00:27:12,896 そりゃ まずいな…。 354 00:27:12,896 --> 00:27:16,766 博打の借金? そんなわきゃねえだろ。➡ 355 00:27:16,766 --> 00:27:20,770 たまってる店賃とかよ… いろいろあんだよ。 356 00:27:20,770 --> 00:27:24,407 早くよくなって 働いてくれよ。 357 00:27:24,407 --> 00:27:32,215 ♬~ 358 00:27:32,215 --> 00:27:37,215 どこ行ってたんだい。 ほら これ洗っといとくれ。 359 00:27:40,857 --> 00:27:43,857 はい これもね。 360 00:27:51,201 --> 00:27:54,901 ちょっと! (お常)何すんだい! 361 00:27:56,539 --> 00:27:58,474 ええ…。 362 00:27:58,474 --> 00:28:03,774 おい どこ行くんだ。 363 00:28:05,548 --> 00:28:08,384 何? 出ていった? 364 00:28:08,384 --> 00:28:13,890 ちょっと叱ったら。 どうしようもない娘ですよ。 う~ん…。 365 00:28:13,890 --> 00:28:17,393 さっきも ここで先生の本を 勝手に見ていたので 叱ってやりました。 366 00:28:17,393 --> 00:28:21,264 本? どの本だ。 367 00:28:21,264 --> 00:28:23,464 えっと…。 368 00:28:27,036 --> 00:28:31,841 これです。 何で こんな本を…➡ 369 00:28:31,841 --> 00:28:36,679 どこを読んでいた。 さあ そこまでは…。 370 00:28:36,679 --> 00:28:41,184 何か 妙なことをつぶやいていました。 何と。 371 00:28:41,184 --> 00:28:45,989 えっと… セメンシナとか…。 372 00:28:45,989 --> 00:28:50,489 セメンシナ… 何だ それは。 373 00:29:00,570 --> 00:29:04,370 出かけてくる。 後を頼む。 374 00:29:16,386 --> 00:29:23,026 (笑い声) 375 00:29:23,026 --> 00:29:25,395 さあ どっちか! 丁か半か。 376 00:29:25,395 --> 00:29:27,430 丁! 377 00:29:27,430 --> 00:29:30,566 半だ。 ハハハハハッ! てめえ いかさまだろ これ! 378 00:29:30,566 --> 00:29:33,836 何 言ってんだ こら おい! 立て こら! 379 00:29:33,836 --> 00:29:42,845 (もめる声) 380 00:29:42,845 --> 00:29:47,350 こんなとこには珍しい上玉じゃねえか。 381 00:29:47,350 --> 00:29:51,988 アッハハハハ…。 382 00:29:51,988 --> 00:29:56,188 おい 何やってんだ。 ちょっと こっち来いよ。 383 00:29:58,194 --> 00:30:01,097 アッハハハハ…。 384 00:30:01,097 --> 00:30:04,367 何だ こいつ おもしれえや。 385 00:30:04,367 --> 00:30:08,204 ハハハハッ。 遊ぼうぜ。 386 00:30:08,204 --> 00:30:11,007 立つんだよ。 おおっ…。 やめんか。 387 00:30:11,007 --> 00:30:12,942 イテテテテッ。 何だ てめえは! 388 00:30:12,942 --> 00:30:14,877 野郎! イテッ! 389 00:30:14,877 --> 00:30:18,548 この野郎! イタタタ…。 おら~! 390 00:30:18,548 --> 00:30:22,848 やめておけ。 来い。 はい。 391 00:30:25,722 --> 00:30:28,558 気取りやがって! や~! 392 00:30:28,558 --> 00:30:30,593 うわっ…。 待て こら! 393 00:30:30,593 --> 00:30:38,735 ♬~ 394 00:30:38,735 --> 00:30:42,535 おら~! うわっ… あっ…。 395 00:30:44,240 --> 00:30:46,175 走れ! はい! 396 00:30:46,175 --> 00:30:48,911 待て! てめえ この野郎! 397 00:30:48,911 --> 00:30:59,911 ♬~ 398 00:31:01,924 --> 00:31:06,262 セメンシナとは何だ? 399 00:31:06,262 --> 00:31:09,762 お前は 何を知っている? 400 00:31:11,934 --> 00:31:16,272 「セメンシナ」… オランダ語だろう。 401 00:31:16,272 --> 00:31:21,472 お前には 多聞から受け継いだ 知識があるんだな。 402 00:31:23,045 --> 00:31:26,345 その知識を もっと教えてくれ。 403 00:31:28,785 --> 00:31:35,558 お前の父 多聞とわしは 共に同じ師の下で学ぶ仲だった。 404 00:31:35,558 --> 00:31:37,493 えっ…。 405 00:31:37,493 --> 00:31:42,732 多聞は 医者の家の出ではなかったが 優れた男だった。 406 00:31:42,732 --> 00:31:48,604 自らオランダ語を学び 蘭方医書を 原文のまま読むようになっていた。 407 00:31:48,604 --> 00:31:53,804 お前! いつの間にオランダ語を…。 408 00:31:55,912 --> 00:31:59,248 やつも わしと同じく➡ 409 00:31:59,248 --> 00:32:04,754 貧しい病人を一人でも多く救いたいという 思いがあった。 410 00:32:04,754 --> 00:32:07,056 そんなことはありません。 411 00:32:07,056 --> 00:32:09,056 何? 412 00:32:13,429 --> 00:32:17,729 さらしが足らん。 もっと早く切れ。 はい。 413 00:32:20,603 --> 00:32:26,303 うっ! あの 先生… 今日は金が…。 414 00:32:28,344 --> 00:32:31,214 じゃあ ここまでだ。 415 00:32:31,214 --> 00:32:37,014 そりゃあないですよ 先生! 療治に薬代は必須。 どこ行っても同じだ。 416 00:32:38,721 --> 00:32:42,558 一体… どうしちまったんだ…。 417 00:32:42,558 --> 00:32:49,031 ホミチュスが おう吐。 ヂャルルーアは下痢だ。 418 00:32:49,031 --> 00:32:56,572 (つぐみ)ホミチュスがおう吐… ヂャルルーアが下痢…。 419 00:32:56,572 --> 00:33:01,772 (笑い声) 420 00:33:04,447 --> 00:33:10,920 何 よそ見してる。 ちゃんと覚えたのか! はい。 421 00:33:10,920 --> 00:33:15,791 あの人は 私のことも娘だとは少しも…。 422 00:33:15,791 --> 00:33:20,062 ただ 言うことを聞くしもべとしか 思っていませんでした。 423 00:33:20,062 --> 00:33:22,765 いや しかし…。 424 00:33:22,765 --> 00:33:28,571 あなたは なぜ あの人と 会わなくなったんですか? 425 00:33:28,571 --> 00:33:31,574 あの人と何があったんですか! 426 00:33:31,574 --> 00:33:54,764 ♬~ 427 00:33:54,764 --> 00:33:57,900 おしのを救いたいんだ。 428 00:33:57,900 --> 00:34:01,400 お前の知識なら それができるかもしれん。 429 00:34:05,241 --> 00:34:09,745 金は? それは勘弁して。 何だって!? 430 00:34:09,745 --> 00:34:12,045 ううっ…。 431 00:34:19,055 --> 00:34:21,055 はあ…。 432 00:34:23,759 --> 00:34:29,565 先生 また おしのの具合が…。 何!? 433 00:34:29,565 --> 00:34:33,002 うっ! はあ はあ はあ…。 434 00:34:33,002 --> 00:34:35,538 しっかりしろ! どうした! 435 00:34:35,538 --> 00:34:37,573 今までにない痛みです! 436 00:34:37,573 --> 00:34:39,875 押さえろ! はい。 437 00:34:39,875 --> 00:34:41,877 ううっ…。 438 00:34:41,877 --> 00:34:44,377 腹触るぞ。 はい。 はい。 439 00:34:46,215 --> 00:34:48,250 (おしの)あ~! 440 00:34:48,250 --> 00:34:52,555 しこりの場所が今までと違う。 (津川)しこりの場所が? 441 00:34:52,555 --> 00:34:54,590 これは…。 442 00:34:54,590 --> 00:34:56,726 (足音) 443 00:34:56,726 --> 00:34:59,562 何だ! 444 00:34:59,562 --> 00:35:03,432 セメンシナ。 その子は おなかに虫がわいています。 445 00:35:03,432 --> 00:35:05,434 やはり回虫か。 446 00:35:05,434 --> 00:35:07,737 なぜ分かる。 447 00:35:07,737 --> 00:35:10,239 痛みが強くなったり 弱くなったりします。 448 00:35:10,239 --> 00:35:12,274 そして しこりは やわらかく その場所が変わる。 449 00:35:12,274 --> 00:35:16,412 これが その証し。 セメンシナがあれば…。 450 00:35:16,412 --> 00:35:19,248 セメンシナとは 西洋の薬だな? 451 00:35:19,248 --> 00:35:21,584 蘭方の虫下しの薬です。 452 00:35:21,584 --> 00:35:25,054 ならば 海人草が使えるな。 453 00:35:25,054 --> 00:35:28,257 津川 海人草あるな。 あ はい。 よし 飲ませるぞ。 454 00:35:28,257 --> 00:35:31,457 はい! 田山 お前も行け。 はい。 455 00:35:32,995 --> 00:35:37,695 代われ。 海人草を入れるぞ。 はい。 456 00:35:45,374 --> 00:35:47,574 飲めるか。 457 00:35:51,013 --> 00:35:56,513 ゆっくりと 全部飲ませるんだ。 はい。 458 00:35:58,754 --> 00:36:01,757 様子を知らせてくれ。 はい。 459 00:36:01,757 --> 00:36:04,226 ちょっと来い。 460 00:36:04,226 --> 00:36:18,407 ♬~ 461 00:36:18,407 --> 00:36:21,911 ヘルメンテ…。 …テジスです。 うん。 462 00:36:21,911 --> 00:36:26,248 それは どういう意味だ。 回虫が おなかの中にいる状態という意味です。 463 00:36:26,248 --> 00:36:29,748 夜通し? らしい。 464 00:36:32,988 --> 00:36:36,525 先生。 うん? 465 00:36:36,525 --> 00:36:39,361 あ… おしのは…➡ 466 00:36:39,361 --> 00:36:42,998 おしのの加減は どうですかね…。 娘の具合が悪いというのに➡ 467 00:36:42,998 --> 00:36:45,868 どこに行っていた。 長屋に使いを出したんだぞ。 468 00:36:45,868 --> 00:36:49,705 いえいえ そんな… ちょいとばかり この…。 469 00:36:49,705 --> 00:36:52,208 博打です。 何なんですか。 えっ? 470 00:36:52,208 --> 00:36:55,878 あの子が治ったら また 働かせるつもりですか。 博打のために。 471 00:36:55,878 --> 00:36:59,749 とんでもねえ 何なんですか この娘は。 472 00:36:59,749 --> 00:37:03,619 あっ…。 お前は 左官だと言ったな。 473 00:37:03,619 --> 00:37:08,224 この手は 長いこと仕事をしていない者の手だ。 474 00:37:08,224 --> 00:37:10,726 ああ…! 475 00:37:10,726 --> 00:37:15,564 ああ そうだよ! それが どうした。 476 00:37:15,564 --> 00:37:20,736 娘がな 父親のために働くんだ 何が悪いんだよ! 477 00:37:20,736 --> 00:37:24,240 出ていけ! あの子は渡さない。 そんな非道があるか! 478 00:37:24,240 --> 00:37:27,042 帰れ! ちょっと待て お前が そんなこと言える立場か。 479 00:37:27,042 --> 00:37:29,745 うるさい。 なっ…。 この人は おしのちゃんに命じて➡ 480 00:37:29,745 --> 00:37:31,714 養生所の金を盗ませようとしたんです。 481 00:37:31,714 --> 00:37:34,414 いいかげんなことを! 482 00:37:38,354 --> 00:37:41,190 やりやがったな! いいかげんにしろ! 483 00:37:41,190 --> 00:37:44,994 お前は 性根がくさってる! ああ~! 484 00:37:44,994 --> 00:37:48,364 ヒッ やめ…。 たたき直してやる。 485 00:37:48,364 --> 00:37:50,399 やめて! 486 00:37:50,399 --> 00:37:52,599 おしの! 487 00:37:54,236 --> 00:37:59,542 寝てなきゃ駄目じゃないか。 はい。 でも 何だか気分がいいんです。 488 00:37:59,542 --> 00:38:04,380 じゃあ 海人草が…。 効いたんだ。 489 00:38:04,380 --> 00:38:07,680 お前の見立てが正しかった。 490 00:38:10,186 --> 00:38:14,723 おとっつぁんを叱らないで。 491 00:38:14,723 --> 00:38:16,659 えっ…。 492 00:38:16,659 --> 00:38:22,398 おとっつぁんは 弱い人なの。 493 00:38:22,398 --> 00:38:27,236 いろいろと つらいことがあって こうなってしまって…。 494 00:38:27,236 --> 00:38:29,738 私がいないと駄目なの。 495 00:38:29,738 --> 00:38:33,175 でも…。 496 00:38:33,175 --> 00:38:37,513 おとっつぁんのことは 私が ちゃんとするから。 497 00:38:37,513 --> 00:38:40,313 許してあげて。 498 00:38:46,522 --> 00:38:52,862 お前 娘に ここまで言わせて 恥ずかしいとは思わないのか。 499 00:38:52,862 --> 00:38:59,001 病の我が身より お前を大事に思う者が いることを忘れるな! 500 00:38:59,001 --> 00:39:07,543 (泣き声) 501 00:39:07,543 --> 00:39:10,343 おしの…。 502 00:39:12,014 --> 00:39:14,383 すまねえ! 503 00:39:14,383 --> 00:39:19,555 この子は すっかりよくなるまで ここで預かる。 504 00:39:19,555 --> 00:39:25,255 それまでに きっぱりと 博打とは縁を切るんだ。 505 00:39:27,229 --> 00:39:31,229 いいな! はい。 506 00:39:35,037 --> 00:39:39,675 おとっつぁん。 おしの…。 507 00:39:39,675 --> 00:39:53,222 ♬~ 508 00:39:53,222 --> 00:39:55,858 ありがとう。 509 00:39:55,858 --> 00:40:07,558 ♬~ 510 00:40:17,546 --> 00:40:21,016 何なの この子。 出てったくせに。 511 00:40:21,016 --> 00:40:23,816 いいんだよ。 512 00:40:26,388 --> 00:40:28,724 つぐみ。 513 00:40:28,724 --> 00:40:30,924 来い。 514 00:40:42,237 --> 00:40:45,937 礼を言う。 いえ。 515 00:40:47,576 --> 00:40:53,382 あの親子は 親と子が逆さまになっているんだ。 516 00:40:53,382 --> 00:40:57,082 いつの間にか そうなってしまったんだろう。 517 00:40:58,754 --> 00:41:01,590 そういう親子もある。 518 00:41:01,590 --> 00:41:04,390 親子なんて…。 519 00:41:11,066 --> 00:41:14,266 医者になる気はないか。 520 00:41:16,939 --> 00:41:18,941 えっ。 521 00:41:18,941 --> 00:41:21,710 ここで見習いをしろ。 522 00:41:21,710 --> 00:41:25,581 私が医者に? そうだ。 523 00:41:25,581 --> 00:41:29,284 父から教わったことを生かすんだ。 524 00:41:29,284 --> 00:41:31,553 でも 女が医者なんて…。 525 00:41:31,553 --> 00:41:35,053 女は医者になってはならん という法はない。 526 00:41:37,426 --> 00:41:39,726 どうだ。 527 00:41:43,165 --> 00:41:45,567 嫌です。 何? 528 00:41:45,567 --> 00:41:47,503 嫌です! 529 00:41:47,503 --> 00:41:49,438 なぜだ。 530 00:41:49,438 --> 00:41:53,638 あなたと私の父の間に 何があったんですか! 531 00:41:57,746 --> 00:42:01,046 あなたは まだ何か隠しています。 532 00:42:02,618 --> 00:42:05,054 おい ちょっと待て! 待て! 533 00:42:05,054 --> 00:42:07,254 ええい。 534 00:42:08,924 --> 00:42:19,568 ♬~ 535 00:42:19,568 --> 00:42:21,503 何がおかしい。 536 00:42:21,503 --> 00:42:26,075 <先生は 一体 何を隠しているというのだろう。➡ 537 00:42:26,075 --> 00:42:31,713 この養生所は また妙なものを抱え込んだようだ> 538 00:42:31,713 --> 00:42:44,426 ♬~ 539 00:42:44,426 --> 00:42:55,571 ♬~ 540 00:42:55,571 --> 00:42:58,071 はあ~。 541 00:43:00,909 --> 00:43:04,246 去定先生が あの子を医者にするらしいんだよ。 542 00:43:04,246 --> 00:43:06,181 女が医者! 543 00:43:06,181 --> 00:43:10,919 労咳だとすると 生きて ここを出るのは難しいだろう。 544 00:43:10,919 --> 00:43:12,855 一目おふくろに会いたい。 545 00:43:12,855 --> 00:43:16,725 行けばいい。 嘘が あの男のためと思うのか。 546 00:43:16,725 --> 00:43:20,429 では あの人は 何の望みもないまま 死ななければならないのですか。 547 00:43:20,429 --> 00:43:22,364 やめろ! 548 00:43:22,364 --> 00:43:25,564 医者など 嫌な仕事です。