1 00:00:32,697 --> 00:00:35,600 (つぐみ)私は 父の子どもではないのですね? 2 00:00:35,600 --> 00:00:37,569 (新出)何!? 3 00:00:37,569 --> 00:00:40,769 私の本当の父親は…。 4 00:00:42,707 --> 00:00:46,377 新出去定 あなたなんですね? 5 00:00:46,377 --> 00:00:49,677 なっ…! (お雪)えっ…。 6 00:00:51,249 --> 00:00:53,949 ≪けが人だ! 7 00:01:00,892 --> 00:01:04,229 まさか…。 (お光)どうしたの。 えっ! えっ? 8 00:01:04,229 --> 00:01:07,065 あ… あっ 掃除… ハハハッ。 9 00:01:07,065 --> 00:01:09,765 ちゃんとして。 はい。 はい。 10 00:01:11,402 --> 00:01:18,543 去定先生と… つぐみちゃんが…。 11 00:01:18,543 --> 00:01:24,249 つぐみちゃんが どうかしたの? えっ あっ あっ! えっ やだ 何でも。 12 00:01:24,249 --> 00:01:31,022 そう? さっきから おかしいわね。 エッヘヘヘヘッ。 13 00:01:31,022 --> 00:01:33,222 はあ~。 14 00:01:34,893 --> 00:01:39,393 (田山)どうかしたのか? あっ… 何でも。 15 00:01:41,199 --> 00:01:45,703 俺でよければ 話を聞くぞ。 16 00:01:45,703 --> 00:01:50,041 何でも… ないんですって…。 17 00:01:50,041 --> 00:01:54,379 俺は こう見えて めっぽう口が堅いんだ。 18 00:01:54,379 --> 00:01:56,314 そうなんですか? 19 00:01:56,314 --> 00:01:58,249 そうだ。 20 00:01:58,249 --> 00:02:01,449 じゃあ…。 21 00:02:04,389 --> 00:02:07,392 あの…。 22 00:02:07,392 --> 00:02:10,895 実は…➡ 23 00:02:10,895 --> 00:02:16,395 いや やっぱり 何でもないです。 24 00:02:21,072 --> 00:02:28,372 まさか… つぐみちゃんの父親は… はあ~。 25 00:02:30,782 --> 00:02:33,718 おい。 うん? 何だか 焦げ臭いぞ。 26 00:02:33,718 --> 00:02:36,020 あっ! いっけない! 27 00:02:36,020 --> 00:02:39,820 どうも ありがとう。 28 00:02:45,496 --> 00:02:48,700 ああっ! (津川)おい 急に変な声出すな。 29 00:02:48,700 --> 00:02:54,873 そうか… お雪は 私に恋を…? ああ? 30 00:02:54,873 --> 00:02:58,209 だから あんなに ため息をついて…。 31 00:02:58,209 --> 00:03:06,384 ♬~ 32 00:03:06,384 --> 00:03:11,684 フフッ ご精が出ますね。 はい。 33 00:03:17,395 --> 00:03:23,195 やはり。 フフフフ…。 気持ち悪い。 34 00:03:30,742 --> 00:03:33,011 先生。 何だ。 35 00:03:33,011 --> 00:03:37,711 病人の器が もう使えぬものばかりだと 台所から苦情が出ています。 36 00:03:42,353 --> 00:03:44,689 まだ十分使える。 37 00:03:44,689 --> 00:03:49,189 いや あれでは さすがに…。 そんな金が どこにある! 38 00:03:56,701 --> 00:03:58,736 うん? 39 00:03:58,736 --> 00:04:02,507 先生。 おまつの具合が…。 40 00:04:02,507 --> 00:04:04,807 何!? 41 00:04:07,211 --> 00:04:11,516 <そんな中 台所の要であるお常に➡ 42 00:04:11,516 --> 00:04:15,016 悲しい別れが迫っていた> 43 00:04:29,400 --> 00:04:31,900 先生…? 44 00:04:43,681 --> 00:04:50,021 会わせたい者がいるのなら 今のうちに会わせた方がいい。 45 00:04:50,021 --> 00:04:52,357 じゃあ…。 46 00:04:52,357 --> 00:04:56,861 今まで 本当に よく頑張った。 47 00:04:56,861 --> 00:05:01,699 さすがは お前の母だ。 強い。 48 00:05:01,699 --> 00:05:04,202 先生~。 49 00:05:04,202 --> 00:05:17,002 (泣き声) 50 00:05:21,619 --> 00:05:24,589 おっかさん。 51 00:05:24,589 --> 00:05:30,328 どっか痛くないかい? 苦しくないかい? 52 00:05:30,328 --> 00:05:36,134 お常… まだ なおらないのかい? 53 00:05:36,134 --> 00:05:38,069 えっ? 54 00:05:38,069 --> 00:05:47,678 赤ん坊の頃から 泣いて泣いて 泣き虫で➡ 55 00:05:47,678 --> 00:05:52,678 お前は 本当に困った子だったよ。 56 00:05:55,420 --> 00:05:58,120 おっかさん…。 57 00:06:00,858 --> 00:06:05,696 おっかさん 何か食べるかい? 58 00:06:05,696 --> 00:06:08,996 おかゆが炊けたところだよ。 59 00:06:11,202 --> 00:06:14,872 お常…。 うん? 60 00:06:14,872 --> 00:06:20,672 うちに… 帰しておくれ…。 61 00:06:23,381 --> 00:06:26,050 お願いだよ。 62 00:06:26,050 --> 00:06:30,388 <こうして おまつは うちに帰ることになった> 63 00:06:30,388 --> 00:06:33,991 待て~! 64 00:06:33,991 --> 00:06:37,829 (竹造)ヘヘヘッ どこへ行くんだい。 65 00:06:37,829 --> 00:06:40,731 うら~! (子どもたち)うわ~! ハハハハッ。 66 00:06:40,731 --> 00:06:45,031 フフフフッ…。 67 00:06:50,174 --> 00:06:54,011 先生 ここまで おっかさんを おぶってくれて➡ 68 00:06:54,011 --> 00:06:57,482 ありがとうございました。 いや。 69 00:06:57,482 --> 00:07:00,351 先生…。 70 00:07:00,351 --> 00:07:06,224 私の… わがままを聞いてくれて…。 71 00:07:06,224 --> 00:07:08,524 無理に話さなくていい。 72 00:07:16,367 --> 00:07:21,367 おとっつぁん おっかさんが帰ってきたんだよ。 73 00:07:25,076 --> 00:07:29,514 おとっつぁん! 何してんだい おとっつぁん! 74 00:07:29,514 --> 00:07:35,319 いいんだよ お常…。 75 00:07:35,319 --> 00:07:38,319 おっかさん。 76 00:07:41,659 --> 00:07:44,859 <それから数日後> 77 00:07:51,002 --> 00:07:53,471 (荒い息遣い) 78 00:07:53,471 --> 00:07:56,174 おっかさん! 79 00:07:56,174 --> 00:08:07,885 ♬~ 80 00:08:07,885 --> 00:08:13,357 おっかさん… うっ… おっかさん! 81 00:08:13,357 --> 00:08:18,029 (お常の泣き声) 82 00:08:18,029 --> 00:08:24,902 <私は この時 妻に先立たれた 藤吉のことが気になっていた。➡ 83 00:08:24,902 --> 00:08:31,976 その いかめしい顔の裏に 一体 どんな思いを抱えているのかと> 84 00:08:31,976 --> 00:08:37,448 (鼻歌) 85 00:08:37,448 --> 00:08:41,319 はいはいっと。 よいしょ よ~いしょっと。 86 00:08:41,319 --> 00:08:44,655 あらっ ちょちょちょ…。 87 00:08:44,655 --> 00:08:49,327 いい出来だね。 あんた 腕上げたんじゃないの? 88 00:08:49,327 --> 00:08:52,163 ええ 本当に? ハハハハッ。 89 00:08:52,163 --> 00:08:54,465 あらっ あらあら ちょちょちょ…。 90 00:08:54,465 --> 00:08:57,368 いや いい艶だよ。 91 00:08:57,368 --> 00:09:02,006 さすが お光さんの煮物に限るねえ。 あ… はい。 92 00:09:02,006 --> 00:09:06,677 (鼻歌) 93 00:09:06,677 --> 00:09:12,177 お常さん 大丈夫かしらね。 そうねえ…。 94 00:09:15,353 --> 00:09:22,053 (鼻歌) 95 00:09:27,932 --> 00:09:31,435 (物音) 96 00:09:31,435 --> 00:09:38,142 先生 何してんです? 雲行きが怪しい。 一雨来るかもしれん。 97 00:09:38,142 --> 00:09:40,444 いや 先生に こんなこと…。 98 00:09:40,444 --> 00:09:42,513 急ぐぞ。 あ… はい。 99 00:09:42,513 --> 00:09:45,650 はい はい はい はい はい。 100 00:09:45,650 --> 00:09:48,452 無理に明るくするな。 101 00:09:48,452 --> 00:09:51,152 後で来るぞ。 102 00:09:56,994 --> 00:10:01,666 先生? うん? 103 00:10:01,666 --> 00:10:07,966 おっかさん 幸せだったんでしょうか。 104 00:10:11,175 --> 00:10:16,681 おとっつぁん ここに見舞いにも来なかった。 105 00:10:16,681 --> 00:10:22,481 おっかさんが うちに帰ってからも 片ときも ノミを放そうとしなかった。 106 00:10:28,292 --> 00:10:35,366 お前の父親は 大名家にも品を納めている 腕のいい指物師だったな。 107 00:10:35,366 --> 00:10:39,704 そんなの はるか昔の話です。 108 00:10:39,704 --> 00:10:43,874 今は 年取っちまったせいで すっかり落ちぶれちまって…。 109 00:10:43,874 --> 00:10:49,747 それなのに いい時のことが忘れられずに 必死に仕事にしがみついて。 110 00:10:49,747 --> 00:10:53,384 おっかさんは 職人かたぎのおとっつぁんに➡ 111 00:10:53,384 --> 00:10:56,287 いっつも気兼ねして暮らしてた。 112 00:10:56,287 --> 00:11:00,057 おっかさんが かわいそうで しかたないんです。 113 00:11:00,057 --> 00:11:02,960 (雷鳴) 114 00:11:02,960 --> 00:11:09,260 雷さんだ いよいよだ。 あ~ くわばらくわばら。 115 00:11:16,073 --> 00:11:23,873 <藤吉の様子が気になった私は 往診の途中で 藤吉のうちに立ち寄った> 116 00:11:26,083 --> 00:11:30,083 (戸をたたく音) 藤吉 いるか? 117 00:11:31,689 --> 00:11:34,592 あっ おい。 ここのところ 藤吉見かけたか? 118 00:11:34,592 --> 00:11:39,029 ふん 知らないよ あの偏屈じじいのことなんか。 119 00:11:39,029 --> 00:11:44,835 えっ? はあ。 全く 同じ貧乏長屋に住んでるってのに➡ 120 00:11:44,835 --> 00:11:49,035 ろくに挨拶もしないで。 何様だと思ってんだい。 121 00:11:59,717 --> 00:12:03,053 ♬~ 122 00:12:03,053 --> 00:12:08,353 藤吉! 藤吉 大丈夫か。 123 00:12:11,729 --> 00:12:15,729 <藤吉の体は ひどく弱っていた> 124 00:12:17,535 --> 00:12:20,237 (竹造)空けてくれ。 125 00:12:20,237 --> 00:12:23,073 あっ 病人だ 寝床を用意してくれ。 126 00:12:23,073 --> 00:12:25,543 はい。 127 00:12:25,543 --> 00:12:28,245 えっ おとっつぁん? 128 00:12:28,245 --> 00:12:31,148 家で倒れていた。 しばらく食べていないようだ。 129 00:12:31,148 --> 00:12:33,083 おとっつぁん!? 130 00:12:33,083 --> 00:12:39,583 <体力が戻るまで 藤吉を養生所に入所させることになった> 131 00:12:41,358 --> 00:12:44,261 食べねば よくなりませんよ。 132 00:12:44,261 --> 00:12:46,461 いらねえよ。 133 00:12:49,033 --> 00:12:52,069 それなら出ていってください。 134 00:12:52,069 --> 00:12:54,371 何だと。 135 00:12:54,371 --> 00:12:58,375 治すつもりがないなら 出ていってください。 136 00:12:58,375 --> 00:13:03,514 ここで療治しなけりゃいけない病人は あなたのほかに あまたいるんです。 137 00:13:03,514 --> 00:13:06,717 先生! お~い 先生! 138 00:13:06,717 --> 00:13:08,652 どうしました? 139 00:13:08,652 --> 00:13:10,588 こいつを診てやってくれ! はい。 140 00:13:10,588 --> 00:13:13,788 ≪(つぐみ)さあ 食べてください。 141 00:13:16,060 --> 00:13:21,232 食べてください! いらねえって言ってるだろ。 142 00:13:21,232 --> 00:13:24,068 何やってんだよ おとっつぁん。 143 00:13:24,068 --> 00:13:27,538 つぐみ お前 また余計なこと言ったんだろ。 144 00:13:27,538 --> 00:13:29,473 全く お前は 減らず口だからな。 145 00:13:29,473 --> 00:13:32,376 フッ あなた程ではありません。 146 00:13:32,376 --> 00:13:34,845 ああ? おとっつぁん。 147 00:13:34,845 --> 00:13:39,016 危ないとこ助けてもらって こんなに よくしてもらって➡ 148 00:13:39,016 --> 00:13:40,951 一体 何が気に入らないってんだい! 149 00:13:40,951 --> 00:13:45,356 誰も そんなこと頼んじゃいねえよ。 150 00:13:45,356 --> 00:13:49,693 何だって? あんたなんかね あんたなんかね! 151 00:13:49,693 --> 00:13:52,363 (津川)おいおい まあ 今日は そんくらいにしてな。 うわっ➡ 152 00:13:52,363 --> 00:13:54,865 ああっ…。 153 00:13:54,865 --> 00:13:57,902 こんなこと言いたかないけどね…➡ 154 00:13:57,902 --> 00:14:03,202 おっかさんじゃなくて あんたが死ねば よかったんだ! 155 00:14:05,509 --> 00:14:11,382 うん あれだな。 女ってのは ついカ~ッとなるもんで。 156 00:14:11,382 --> 00:14:15,519 フッ 男も同じです。 157 00:14:15,519 --> 00:14:19,390 ≪何度言ったら分かるんだ! うん? 158 00:14:19,390 --> 00:14:23,060 体を休ませねばならんと言っただろ! 159 00:14:23,060 --> 00:14:26,397 女房が大事じゃないのか。 160 00:14:26,397 --> 00:14:29,900 お前は それでも亭主か! 161 00:14:29,900 --> 00:14:32,169 ≪すんません! 162 00:14:32,169 --> 00:14:35,673 まあ そりゃ そうだけど…。 163 00:14:35,673 --> 00:14:38,175 あいつの言うとおりだ。 164 00:14:38,175 --> 00:14:40,210 えっ? 165 00:14:40,210 --> 00:14:44,848 俺が先に死にゃあよかったんだ。 166 00:14:44,848 --> 00:14:51,021 <それからも藤吉は かたくなに食事をとろうとしなかった> 167 00:14:51,021 --> 00:15:06,503 ♬~ 168 00:15:06,503 --> 00:15:09,406 つぐみ。 はい。 169 00:15:09,406 --> 00:15:12,876 藤吉は まだ何も食わんのか。 170 00:15:12,876 --> 00:15:17,214 はい。 う~ん…。 171 00:15:17,214 --> 00:15:23,520 お常さんも言い過ぎたことを気にして いろいろ こしらえているんですが…。 172 00:15:23,520 --> 00:15:34,999 ♬~ 173 00:15:34,999 --> 00:15:41,299 子に やっかいをかける親は どこにでもいるんですね。 174 00:15:43,340 --> 00:15:48,012 私の本当の父親は… あなたなんですね? 175 00:15:48,012 --> 00:15:51,482 やっぱり。 何だ。 176 00:15:51,482 --> 00:15:56,687 あっ いえ。 ハハッ いや 何でもないです。 フフフッ お代わり? 177 00:15:56,687 --> 00:15:59,687 はい。 ウッフフフッ。 178 00:16:04,428 --> 00:16:09,366 あの! お光さん! う~ん 何? 179 00:16:09,366 --> 00:16:14,505 ああ… いえ…。 いや 何もだえてんの もう。 180 00:16:14,505 --> 00:16:17,041 何でもないです。 仕事して。 181 00:16:17,041 --> 00:16:19,877 やはり。 182 00:16:19,877 --> 00:16:24,214 今日は 佐平治長屋の甚六からだ。 (竹造)へい。 183 00:16:24,214 --> 00:16:27,117 保本。 はい。 184 00:16:27,117 --> 00:16:30,988 往診に出る前に 藤吉に会ってやれ。 185 00:16:30,988 --> 00:16:37,688 はあ。 女房持ちには 女房持ちだ。 186 00:16:52,843 --> 00:16:57,043 今から考えても しかたのないことなのだが…。 187 00:17:00,017 --> 00:17:06,217 私には 一緒になって3年の妻がいる。 188 00:17:08,726 --> 00:17:11,726 何の話だ。 189 00:17:15,365 --> 00:17:22,139 この先 共に年を重ねて➡ 190 00:17:22,139 --> 00:17:26,639 白髪になるまで添い遂げたいと 思っているが…。 191 00:17:32,783 --> 00:17:38,155 私は 妻に看取られて逝きたい。 192 00:17:38,155 --> 00:17:44,828 自分が妻を看取るなんて 耐えられそうもない。 193 00:17:44,828 --> 00:17:48,699 そんなことを時折 考える。 194 00:17:48,699 --> 00:17:53,899 全く 俺は 意気地のない男だな。 195 00:17:56,440 --> 00:17:59,843 罰が当たったんだ。 196 00:17:59,843 --> 00:18:04,348 女房を粗末にした罰だ。 197 00:18:04,348 --> 00:18:10,687 だから女房を… おまつを…➡ 198 00:18:10,687 --> 00:18:15,025 俺が見送るはめになった。➡ 199 00:18:15,025 --> 00:18:22,699 年取って すっかり落ちぶれちまったけど➡ 200 00:18:22,699 --> 00:18:31,041 俺は もう一度 お大名家に 納められるような品を作りたかった。➡ 201 00:18:31,041 --> 00:18:38,041 だから寝る間も惜しんで ノミを握り続けた。 202 00:18:39,750 --> 00:18:42,319 お茶が 入りましたよ。 203 00:18:42,319 --> 00:18:46,657 (藤吉)そんな俺の気持ちを おまつは…➡ 204 00:18:46,657 --> 00:18:51,657 おまつだけは分かってくれていると 思っていた。 205 00:18:53,831 --> 00:18:56,131 (藤吉)けど…。 206 00:19:03,173 --> 00:19:07,010 冷めないうちに どうぞ。 207 00:19:07,010 --> 00:19:16,510 俺に触られるのも嫌な程 おまつは 俺に愛想を尽かしていたんだ。 208 00:19:19,356 --> 00:19:21,859 笑えよ。 209 00:19:21,859 --> 00:19:23,794 えっ…。 210 00:19:23,794 --> 00:19:29,294 おかしいだろ。 笑えよ 笑ったらいいじゃねえか! 211 00:19:33,971 --> 00:19:41,471 <藤吉の凝り固まった心を解くのは そう たやすいことではなさそうだ> 212 00:19:44,448 --> 00:19:48,148 あの… もし。 213 00:19:51,989 --> 00:19:57,160 あなたが おまつさんのご亭主ですか? 214 00:19:57,160 --> 00:20:00,464 そうだが…。 215 00:20:00,464 --> 00:20:06,837 ここに入所中 おまつさんに 本当にお世話になりました。 216 00:20:06,837 --> 00:20:10,674 おまつに? はい。 217 00:20:10,674 --> 00:20:18,181 おまつさんは この子のために 自分の着物を仕立て直してくれたんです。 218 00:20:18,181 --> 00:20:21,981 私には もう いらないからって。 219 00:20:25,055 --> 00:20:28,825 旦那さんにお礼が言えてよかった。 220 00:20:28,825 --> 00:20:33,325 本当に ありがとうございました。 221 00:20:37,034 --> 00:20:42,706 博打がやめられねえで 借金を重ねた上に➡ 222 00:20:42,706 --> 00:20:48,211 病になって すっかりしょげてたらよ おまつさんは…。 223 00:20:48,211 --> 00:20:54,384 俺だってよ もっと まともな親のもとに生まれてれば➡ 224 00:20:54,384 --> 00:20:58,388 もっと金持ちの家に生まれてれば…! 225 00:20:58,388 --> 00:21:01,158 こうは ならなかったのによ。 226 00:21:01,158 --> 00:21:05,996 フフッ フフフフ…➡ 227 00:21:05,996 --> 00:21:09,866 どこで生まれたって 同じじゃないの? 228 00:21:09,866 --> 00:21:14,538 何だと!? 俺が どんなに苦労したか知りもしないで。 229 00:21:14,538 --> 00:21:22,412 知らないわ。 けど 苦労しない人なんて 一人もいないのよ。 230 00:21:22,412 --> 00:21:24,548 えっ? 231 00:21:24,548 --> 00:21:29,753 あの人も。 ほら あの人だって。 232 00:21:29,753 --> 00:21:35,359 みんな 人には言えない苦労しょってるの。 233 00:21:35,359 --> 00:21:39,863 ほ~ら 見てよ あの人。 234 00:21:39,863 --> 00:21:45,202 この世の全ての苦労を 背負ったみたいな顔してるじゃない。 235 00:21:45,202 --> 00:21:47,237 う~ん…。 236 00:21:47,237 --> 00:21:50,707 あんな顔になりたいの? 237 00:21:50,707 --> 00:21:56,046 それは… ごめんだな。 238 00:21:56,046 --> 00:21:59,383 でしょう? フフフフ…。 239 00:21:59,383 --> 00:22:02,052 (笑い声) 240 00:22:02,052 --> 00:22:05,088 何が おかしいんだ。 さあ? 241 00:22:05,088 --> 00:22:11,395 何だか 俺 病の方も だんだんよくなって…➡ 242 00:22:11,395 --> 00:22:15,265 明日には ここを出られることになったんで。 243 00:22:15,265 --> 00:22:19,065 おまつさんに 会えてよかった。 244 00:22:29,563 --> 00:22:32,563 (達吉)よっ 色男。 245 00:22:34,701 --> 00:22:37,201 何だ お前は。 246 00:22:38,872 --> 00:22:41,708 あんた おまつさんの旦那なんだってね。 247 00:22:41,708 --> 00:22:44,611 いや~ まいったよ おまつさんには。 248 00:22:44,611 --> 00:22:51,885 うちの人の作る品物はね 10年たっても20年たっても変わらないの。 249 00:22:51,885 --> 00:22:57,224 変わらないどころか 使うごとに どんどんよくなるの。 250 00:22:57,224 --> 00:23:05,098 それはね うちの人が丹精込めて 丁寧な仕事をしているからなのよ。 251 00:23:05,098 --> 00:23:08,735 へえ~ そうかい。 ハハッ。 252 00:23:08,735 --> 00:23:11,638 (小声で)あれ これ昨日も聞いたよな。 253 00:23:11,638 --> 00:23:15,909 あんたの話 何度も繰り返しされてよ。 254 00:23:15,909 --> 00:23:22,249 でも そん時のおまつさん 何だか うれしそうで 楽しそうでよ。 255 00:23:22,249 --> 00:23:25,085 若え娘に戻っちまったみてえで。 256 00:23:25,085 --> 00:23:29,422 面倒くせえけど かわいいなと思っちまったよ。 257 00:23:29,422 --> 00:23:35,195 あんたが羨ましいよ。 女房に あそこまで ほれられるなんてよ。 258 00:23:35,195 --> 00:23:39,699 嘘だ。 えっ? 259 00:23:39,699 --> 00:23:46,039 そんな嘘… 俺をからかって どこが面白いんだ! 260 00:23:46,039 --> 00:23:49,910 ちょっ 落ち着け落ち着け。 待てって! ちょ… 待て待て 落ち着け落ち着けって。 261 00:23:49,910 --> 00:23:54,381 あっ 痛っ。 痛っ。 おい やめろ やめろ。 やめろ。 262 00:23:54,381 --> 00:23:58,251 おまつが そんなこと言うわけねえや! 263 00:23:58,251 --> 00:24:04,391 おまつは笑わねえ女だ めったに口をきかねえ女だ! 264 00:24:04,391 --> 00:24:08,895 見ず知らずのてめえなんかに そんな話するわけねえ! 265 00:24:08,895 --> 00:24:12,399 やめろって! 落ち着けって。 266 00:24:12,399 --> 00:24:18,199 おまつはな 俺に愛想を尽かして死んでったんだ! 267 00:24:19,906 --> 00:24:21,842 (達吉)イッテ。 チッ。 268 00:24:21,842 --> 00:24:23,777 ≪どう思う? 269 00:24:23,777 --> 00:24:28,248 (まさを)いや… どう と言われましても…。 270 00:24:28,248 --> 00:24:33,486 藤吉の言うように おまつは 藤吉に愛想を尽かしたのだろうか。 271 00:24:33,486 --> 00:24:37,023 それはありませんよ。 えっ? 272 00:24:37,023 --> 00:24:42,023 そうならば 家に帰りたいとは言いませんよ。 273 00:24:45,198 --> 00:24:50,070 おまつさんは 藤吉さんに見送られたいから➡ 274 00:24:50,070 --> 00:24:55,375 家に帰りたいと言ったのではないですか? 275 00:24:55,375 --> 00:25:00,714 では なぜ 藤吉の手を 振り払ったりしたのだろうか。 276 00:25:00,714 --> 00:25:04,584 う~ん…。 277 00:25:04,584 --> 00:25:08,384 あっ。 何だ? 278 00:25:10,223 --> 00:25:16,897 もし今 あなたが私の手に触れようとしたら➡ 279 00:25:16,897 --> 00:25:20,734 私も同じことをするかもしれません。 280 00:25:20,734 --> 00:25:23,536 えっ… 私に愛想を尽かしたのか? 281 00:25:23,536 --> 00:25:26,907 そうではありませんよ。 では なぜ? 282 00:25:26,907 --> 00:25:34,607 もし そうだとしたら… おかわいそうに…。 283 00:25:36,182 --> 00:25:39,019 かわいそう? 284 00:25:39,019 --> 00:25:43,356 藤吉さんは おまつさんのお気持ちを➡ 285 00:25:43,356 --> 00:25:48,695 分かって差し上げることが できなかったのですね。 286 00:25:48,695 --> 00:26:15,995 ♬~ 287 00:26:20,060 --> 00:26:23,360 達吉の言うとおりだ。 288 00:26:24,931 --> 00:26:29,069 おまつは お前に ほれていたんだ。 289 00:26:29,069 --> 00:26:32,038 何 言ってんだ…。 290 00:26:32,038 --> 00:26:36,176 じゃあ 何で 俺の手を振り払ったんだ。 291 00:26:36,176 --> 00:26:40,480 俺に触れられるのも嫌だったからだ! 292 00:26:40,480 --> 00:26:45,480 お前は おまつが亡くなった時 その手を握っていたな。 293 00:26:47,187 --> 00:26:51,687 ええ? その手は どうだった? 294 00:26:55,362 --> 00:26:59,199 どうって…➡ 295 00:26:59,199 --> 00:27:04,704 荒れて… くたびれてたよ。 296 00:27:04,704 --> 00:27:10,510 俺が 苦労かけて粗末にしたから…。 297 00:27:10,510 --> 00:27:13,310 やはり そうか。 298 00:27:16,316 --> 00:27:20,016 お前の手を振り払ったのはな…。 299 00:27:21,721 --> 00:27:24,391 恥ずかしかったんだ。 300 00:27:24,391 --> 00:27:27,891 荒れた手をお前に触られるのが。 301 00:27:29,529 --> 00:27:32,832 どうしても嫌だったんだ。 302 00:27:32,832 --> 00:27:39,032 くたびれた手をしていることを お前に知られるのが。 303 00:27:46,379 --> 00:27:49,849 男は愚かなものだな。 304 00:27:49,849 --> 00:27:56,549 一番近くにいるのに 何で女房の気持ちに 気付いてやれないんだろう。 305 00:28:00,560 --> 00:28:05,031 ヘッ… ヘヘッ ヘヘッ…。 306 00:28:05,031 --> 00:28:07,367 藤吉? 307 00:28:07,367 --> 00:28:12,205 そんなバカなことがあるか。 308 00:28:12,205 --> 00:28:16,709 そんなバカな… でたらめ言うんじゃねえや! 309 00:28:16,709 --> 00:28:19,409 (お常)おとっつぁん。 310 00:28:22,382 --> 00:28:27,253 これ 覚えがあんだろう? 311 00:28:27,253 --> 00:28:33,326 これは おっかさんが死ぬ前にくれたんだ。 312 00:28:33,326 --> 00:28:40,834 おっかさん これを帯の中に入れて 肌身離さず持ってたんだよ。 313 00:28:40,834 --> 00:28:59,686 ♬~ 314 00:28:59,686 --> 00:29:07,560 何度も貸してって言ったのに おっかさん 一度も貸してくれなかった。 315 00:29:07,560 --> 00:29:12,265 これは 一緒になったばっかりの頃➡ 316 00:29:12,265 --> 00:29:17,103 おとっつぁんが作ってくれた 宝物だからって。 317 00:29:17,103 --> 00:29:26,913 おっかさん ずっと大切にしてたから 少しも傷んでないんだよ。 318 00:29:26,913 --> 00:29:31,913 ほら 見てごらんよ。 319 00:29:33,553 --> 00:29:40,160 おっかさんは 心底 おとっつぁんに ほれてたんだ。 320 00:29:40,160 --> 00:29:45,465 ほれた おとっつぁんに いい仕事してもらうために➡ 321 00:29:45,465 --> 00:29:51,465 文句も言わずに支え続けたんだよ。 322 00:29:54,841 --> 00:29:57,541 ううっ…。 323 00:30:01,347 --> 00:30:04,184 ううっ…。 324 00:30:04,184 --> 00:30:07,684 おとっつぁん。 うう~。 325 00:30:09,355 --> 00:30:12,692 (藤吉)ううっ… うっ…。 326 00:30:12,692 --> 00:30:41,392 ♬~ 327 00:30:48,061 --> 00:30:51,097 食べろ。 328 00:30:51,097 --> 00:30:54,097 食べるんだ。 329 00:31:02,609 --> 00:31:06,412 おまつに…➡ 330 00:31:06,412 --> 00:31:10,750 おまつに 会いてえ。 331 00:31:10,750 --> 00:31:17,423 会って… 言ってやりてえ。 332 00:31:17,423 --> 00:31:26,423 おめえは 俺には もったいねえ女房だったと。 333 00:31:28,067 --> 00:31:34,707 本当のお前は 朗らかで 明るくて➡ 334 00:31:34,707 --> 00:31:41,481 周りの力になれる女だったんだな。 335 00:31:41,481 --> 00:31:47,053 ず~っと一緒にいたのに…➡ 336 00:31:47,053 --> 00:31:51,853 あいつの何を見てきたんだ…。 337 00:31:54,727 --> 00:31:57,727 もう遅い。 338 00:32:00,233 --> 00:32:02,902 もう手遅れだ…。 339 00:32:02,902 --> 00:32:07,073 (すすり泣き) 遅くはない。 340 00:32:07,073 --> 00:32:10,073 まだ遅くはないぞ。 341 00:32:12,879 --> 00:32:15,782 これは…➡ 342 00:32:15,782 --> 00:32:19,085 この手は➡ 343 00:32:19,085 --> 00:32:25,085 今まで 一生懸命働いてきた職人の手だ。 344 00:32:26,759 --> 00:32:34,567 そして この手は まだ誰かのために 働くことのできる手なんじゃないのか。 345 00:32:34,567 --> 00:32:41,367 お前の女房も きっと それを望んでるはずだ。 346 00:32:43,209 --> 00:32:50,909 しっかり生きて 生き抜いて また女房に会えたら…。 347 00:32:52,518 --> 00:32:57,357 その時 その時こそ➡ 348 00:32:57,357 --> 00:33:02,357 しっかりと その手を握り締めてやれ。 349 00:33:05,732 --> 00:33:16,242 (泣き声) 350 00:33:16,242 --> 00:33:46,706 ♬~ 351 00:33:46,706 --> 00:33:49,375 おとっつぁん…。 352 00:33:49,375 --> 00:33:59,719 ♬~ 353 00:33:59,719 --> 00:34:05,719 <そして藤吉は 再び指物師として仕事を始めた> 354 00:34:08,728 --> 00:34:12,064 おとっつぁん 出来たかい? もう少しだ。 355 00:34:12,064 --> 00:34:16,903 ああ じゃあ ちょっと待たしてもらうよ。 よいしょ。 356 00:34:16,903 --> 00:34:21,741 おとっつぁんの作る品物は 使い勝手がいいって評判だよ。 357 00:34:21,741 --> 00:34:25,545 そうかい。 ヘヘッ。 フフッ。 358 00:34:25,545 --> 00:34:30,416 <藤吉は 大名家に納めるためのものではない➡ 359 00:34:30,416 --> 00:34:35,216 人々の暮らしに寄り添う品々を 作り始めた> 360 00:34:38,691 --> 00:34:43,496 もう少し待っててくれよ おまつ。 361 00:34:43,496 --> 00:34:49,869 <おまつのように 日々を懸命に生きる人々のためのものを> 362 00:34:49,869 --> 00:34:53,206 (お雪)はい。 はい。 置いとくよ。 363 00:34:53,206 --> 00:34:56,509 あれ? どうしたんだい 随分いい器じゃねえか。 364 00:34:56,509 --> 00:34:59,212 器だけじゃないよ 中身もいいよ。 365 00:34:59,212 --> 00:35:02,715 本当かよ。 ったく もう…。 366 00:35:02,715 --> 00:35:04,715 あっ…。 367 00:35:06,385 --> 00:35:08,721 先生。 うん? 368 00:35:08,721 --> 00:35:11,524 あの…➡ 369 00:35:11,524 --> 00:35:18,397 おっかさんは かわいそうな女だって 思ってました。 370 00:35:18,397 --> 00:35:21,534 けど…➡ 371 00:35:21,534 --> 00:35:28,307 心底ほれた相手と一緒にいられたんだから 幸せだったんですよね。 372 00:35:28,307 --> 00:35:34,113 そうだな。 フフッ はい。 373 00:35:34,113 --> 00:35:37,350 はい! ごはんだよ。➡ 374 00:35:37,350 --> 00:35:40,253 はいはい はいはい お待ち遠さん。 375 00:35:40,253 --> 00:35:44,123 はいよ。 おう 器替わっただけで やたらうめえな。 376 00:35:44,123 --> 00:35:47,360 だから 中身も頑張ってんだから ねえ? そうだよ。 377 00:35:47,360 --> 00:35:49,695 うめえ うめえ。 なあ? うめえな。 おいしいかい? 378 00:35:49,695 --> 00:35:54,367 (まさを)そうですか。 それは よかったですね。 379 00:35:54,367 --> 00:35:57,370 お前のおかげだ。 380 00:35:57,370 --> 00:35:59,570 えっ? 381 00:36:04,076 --> 00:36:06,576 あら。 382 00:36:09,916 --> 00:36:16,622 それは どういたしまして。 フフフッ。 383 00:36:16,622 --> 00:36:20,893 お前は いいな。 えっ? 384 00:36:20,893 --> 00:36:24,393 そうやって すぐに素直になれて。 385 00:36:26,232 --> 00:36:29,735 私には なかなか難しい。 386 00:36:29,735 --> 00:36:35,341 だから 藤吉のかたくなな気持ちも 分からなくもなかった。 387 00:36:35,341 --> 00:36:38,341 そうですか。 388 00:36:45,351 --> 00:36:50,856 でも… たまには こうやって 素直にならなくてはな。 389 00:36:50,856 --> 00:36:56,495 あっ いや。 あの…。 うん? 390 00:36:56,495 --> 00:36:59,865 私の手…➡ 391 00:36:59,865 --> 00:37:03,565 すっかり荒れてしまってますけど。 392 00:37:06,739 --> 00:37:09,539 荒れてなどいない。 393 00:37:13,045 --> 00:37:18,517 私を支えてくれてる あたたかい手だ。 394 00:37:18,517 --> 00:37:26,892 ♬~ 395 00:37:26,892 --> 00:37:33,092 この手で 大勢の人の命を救っているのですね。 396 00:37:35,701 --> 00:37:41,540 あたたかくて 誇らしい手です。 397 00:37:41,540 --> 00:37:54,954 ♬~ 398 00:37:54,954 --> 00:37:58,190 つっ…。 ハア~。 399 00:37:58,190 --> 00:38:00,860 ハア。 400 00:38:00,860 --> 00:38:03,860 おおっ 何だ。 401 00:38:05,498 --> 00:38:07,867 うん? 402 00:38:07,867 --> 00:38:11,704 あかぎれに効きます。 いらん。 403 00:38:11,704 --> 00:38:14,607 迷惑です。 うん? 404 00:38:14,607 --> 00:38:18,377 そんな手で病人を触るつもりですか。 405 00:38:18,377 --> 00:38:22,077 チッ。 はあ~。 406 00:38:29,522 --> 00:38:31,991 失礼します。 407 00:38:31,991 --> 00:38:34,491 待て。 408 00:38:36,162 --> 00:38:38,462 話がある。 409 00:38:53,479 --> 00:38:59,179 何ですか これは。 その字に見覚えがあるだろう。 410 00:39:03,856 --> 00:39:06,356 読んでみろ。 411 00:39:10,029 --> 00:39:16,329 どこにしまったのか忘れていたが ようやく見つかった。 412 00:39:19,739 --> 00:39:23,509 (多聞)「我が子 生まれ申し候。➡ 413 00:39:23,509 --> 00:39:29,048 いつか この子に 会いてもらいたく存じより候。➡ 414 00:39:29,048 --> 00:39:32,651 つぐみと名付け申し候。➡ 415 00:39:32,651 --> 00:39:37,951 私によく似ておりし 女の子にて候」。 416 00:39:40,526 --> 00:39:46,326 お前は 間違いなく多聞の娘だ。 417 00:39:49,468 --> 00:39:57,843 はあ~ 勘違いか… もう。 気に病んで損した。 418 00:39:57,843 --> 00:40:02,715 その文は お前が持っていろ。 419 00:40:02,715 --> 00:40:05,017 えっ? 420 00:40:05,017 --> 00:40:12,491 ♬~ 421 00:40:12,491 --> 00:40:15,027 いりません! 422 00:40:15,027 --> 00:40:17,863 どうしてだ。 423 00:40:17,863 --> 00:40:25,204 父は私をしもべのように こき使い 母は私を捨てて出ていきました。 424 00:40:25,204 --> 00:40:28,204 なぜですか? 425 00:40:30,042 --> 00:40:37,383 あなたと 父と母との間に 何があったんですか! 426 00:40:37,383 --> 00:40:49,895 ♬~ 427 00:40:49,895 --> 00:40:58,395 えっ… つぐみちゃんのおとっつぁんと 去定先生に 何があったの? 428 00:41:00,072 --> 00:41:02,572 お雪。 はい!? 429 00:41:06,412 --> 00:41:09,315 お雪。 うん? 430 00:41:09,315 --> 00:41:14,553 私なりに よく考えてみたんだが…。 431 00:41:14,553 --> 00:41:16,922 あの… 何を? 432 00:41:16,922 --> 00:41:21,093 ここは男らしく お前の気持ちに応えたいと思う。 433 00:41:21,093 --> 00:41:23,996 私の気持ち? ああ。 434 00:41:23,996 --> 00:41:29,435 しかし考えてみたら 私も前から お前に ほれていた気がするんだ。 435 00:41:29,435 --> 00:41:33,706 だから私は。 あの 何言ってるんですか。 436 00:41:33,706 --> 00:41:39,378 恥ずかしがらなくてもよい。 お前は この私に ほれているのだろ? 437 00:41:39,378 --> 00:41:42,047 えっ? えっ? 438 00:41:42,047 --> 00:41:47,219 いいえ 全く。 少しも。 439 00:41:47,219 --> 00:41:54,093 ♬~ 440 00:41:54,093 --> 00:41:59,393 <そして この男の勘違いは幕を閉じた> 441 00:42:10,242 --> 00:42:12,542 <一方…> 442 00:42:20,953 --> 00:42:23,453 [ 回想 ] 失礼します。 443 00:42:26,792 --> 00:42:31,497 ご精が出ますね。 お茶を どうぞ。 444 00:42:31,497 --> 00:42:34,033 かたじけない。 445 00:42:34,033 --> 00:42:50,883 ♬~ 446 00:42:50,883 --> 00:42:56,583 <この男の過去には 一体 何があるのだろうか> 447 00:43:01,393 --> 00:43:05,731 うちの 婿になっていただきたい。 ええ!? 448 00:43:05,731 --> 00:43:09,535 お前は 医者であることに 迷いを覚えていたんじゃないか。 449 00:43:09,535 --> 00:43:12,905 俺の暮らしは何だろうって 近頃 思うんだよ。 450 00:43:12,905 --> 00:43:15,941 津川先生も婿に行くお年頃だ。 451 00:43:15,941 --> 00:43:18,777 恋煩いだ? 恋煩いです。 452 00:43:18,777 --> 00:43:21,547 お優しいのですね。 453 00:43:21,547 --> 00:43:24,416 本当に医者に未練はないんですか。 454 00:43:24,416 --> 00:43:26,416 私はですね…。