1 00:00:31,946 --> 00:00:37,619 (多聞)「我が子 生まれ申し候。 つぐみと名付け申し候」。 2 00:00:37,619 --> 00:00:43,425 (新出)お前は 間違いなく多聞の娘だ。 3 00:00:43,425 --> 00:00:50,298 (つぐみ)あなたと 父と母との間に 何があったんですか! 4 00:00:50,298 --> 00:01:02,310 ♬~ 5 00:01:02,310 --> 00:01:04,245 (戸をたたく音) ≪先生! 大変なんだよ! 6 00:01:04,245 --> 00:01:06,314 (津川)どうした。 見てくれ。 7 00:01:06,314 --> 00:01:11,319 荷物の下敷きになって 骨が折れてる。 (津川)運べ! お雪 湯を沸かせ! 8 00:01:11,319 --> 00:01:13,321 (お雪)はい! 急げ! 9 00:01:13,321 --> 00:01:16,458 よ~し つなぐぞ。 はい。 10 00:01:16,458 --> 00:01:18,827 引っ張れ。 (田山 津川)せ~の! 11 00:01:18,827 --> 00:01:22,664 (叫び声) よ~し そのまま。 辛抱しろ。 12 00:01:22,664 --> 00:01:26,534 辛抱して! (叫び声) 13 00:01:26,534 --> 00:01:29,034 おとなしくしてろ! 14 00:01:30,772 --> 00:01:33,608 続けるぞ。 (叫び声) 15 00:01:33,608 --> 00:01:35,543 (お常)ほら 急いでよ。 (お雪)は~い。 16 00:01:35,543 --> 00:01:38,243 はい。 はい。 17 00:01:55,296 --> 00:02:02,804 薬だ。 きちんと飲むんだぞ。 はい。 ありがとうございました。 18 00:02:02,804 --> 00:02:11,980 今のお話ですが そんなにお忙しいなら 養生所の先生方も倒れちまいますね。 19 00:02:11,980 --> 00:02:16,317 まあ そうだな。 それに引き換え➡ 20 00:02:16,317 --> 00:02:22,824 保本先生は こうして外に出られるだけ お気が紛れてようございましょう。 21 00:02:22,824 --> 00:02:26,161 いや これはこれで 大変なんだ。 22 00:02:26,161 --> 00:02:29,197 (せきこみ) これは とんだ失礼を。 23 00:02:29,197 --> 00:02:32,397 おい! お支払いを。 はい。 24 00:02:33,968 --> 00:02:37,105 朝っぱらから けが人とは。 25 00:02:37,105 --> 00:02:40,608 あ~ 今日も忙しくなりそうだ。 26 00:02:40,608 --> 00:02:44,946 (田山)今頃 保本先生は のんびりと道草でも食ってるのかな。 27 00:02:44,946 --> 00:02:48,746 そんなことを言うと 保本先生が怒りますよ。 28 00:02:50,819 --> 00:02:53,819 (くしゃみ) あ~。 29 00:02:56,124 --> 00:03:00,995 今日は たった4件でしょう。 どう見ても楽です。 30 00:03:00,995 --> 00:03:05,495 それに 外を歩くと 気晴らしになりますからね。 31 00:03:07,836 --> 00:03:09,971 (つぐみ)愚痴を言うと かえって疲れますよ。 32 00:03:09,971 --> 00:03:13,808 愚痴ではない。 意見を言っているのだ。 33 00:03:13,808 --> 00:03:15,743 あっ そうですか。 34 00:03:15,743 --> 00:03:21,149 その言い方に どうも険があるな。 俺に何か含むところでもあるのか。 35 00:03:21,149 --> 00:03:23,818 いや 別に。 ほら! その言い方だ。 36 00:03:23,818 --> 00:03:25,753 黙って食え! 37 00:03:25,753 --> 00:03:27,689 すいません。 38 00:03:27,689 --> 00:03:30,625 では お先に。 39 00:03:30,625 --> 00:03:39,625 ♬~ 40 00:03:43,938 --> 00:03:47,775 おい。 はあ~。 41 00:03:47,775 --> 00:03:50,475 口を開けろ。 42 00:03:52,113 --> 00:03:54,415 このままじゃ見えぬ。 43 00:03:54,415 --> 00:03:56,351 あっ あっ…。 44 00:03:56,351 --> 00:03:59,651 (うめき声) 45 00:04:04,626 --> 00:04:08,429 葛根を九十匁。 46 00:04:08,429 --> 00:04:15,629 甘草を五十匁。 麻黄を五十匁。 47 00:04:20,174 --> 00:04:23,311 先生。 ああ 何だ? 48 00:04:23,311 --> 00:04:28,182 私は本来 いいかげんな人間です。 ふんっ 自分で言うな。 49 00:04:28,182 --> 00:04:30,118 そのような者が このような…➡ 50 00:04:30,118 --> 00:04:32,754 きちんとした仕事をするのは 向いてないんじゃないかと。 51 00:04:32,754 --> 00:04:34,789 お前は まだそんなことを…。 52 00:04:34,789 --> 00:04:38,259 そんな仕事が向いている人間は そうはいない それは 先日伺いました。 53 00:04:38,259 --> 00:04:41,763 じゃあ 何が言いたいんだ。 54 00:04:41,763 --> 00:04:44,799 この日常の先に何があるのだろうと。 55 00:04:44,799 --> 00:04:50,772 これを毎日繰り返すことで 得られるものは 何でしょうか? 56 00:04:50,772 --> 00:04:53,808 どうした。 津川らしくもない。 57 00:04:53,808 --> 00:04:56,578 私らしいとは 何ですか。 58 00:04:56,578 --> 00:04:59,948 先のことなど 誰にも分からん。 59 00:04:59,948 --> 00:05:03,284 それが 人生だ。 60 00:05:03,284 --> 00:05:05,219 あ~。 61 00:05:05,219 --> 00:05:08,790 疲れてるな…。 62 00:05:08,790 --> 00:05:11,426 少し休め。 63 00:05:11,426 --> 00:05:16,226 いいんですか。 医者が倒れては 元も子もない。 64 00:05:21,436 --> 00:05:25,974 <津川先生の心の中の小さなさざ波が➡ 65 00:05:25,974 --> 00:05:30,378 やっかいな事件を 引き起こすことになるのだった> 66 00:05:30,378 --> 00:05:50,264 ♬~ 67 00:05:50,264 --> 00:05:53,601 あらららら? 先生 どちらへ? 68 00:05:53,601 --> 00:05:58,801 赤ひげに 少し休めと お許しを頂いたんだ。 69 00:06:13,621 --> 00:06:44,619 ♬~ 70 00:06:44,619 --> 00:06:49,457 あら 津川先生 お久しぶりね。 ここで先生は やめてくれよ。 71 00:06:49,457 --> 00:06:51,957 いつもの。 はい。 72 00:07:03,971 --> 00:07:08,109 生き返るねえ。 (喜兵衛)あんたも大変だったな。 73 00:07:08,109 --> 00:07:13,809 ええ。 お上の気まぐれのせいで とんだ目に遭ったよ。 74 00:07:15,416 --> 00:07:18,319 おっ! この甘露煮は わかさぎかい? 75 00:07:18,319 --> 00:07:21,122 そうですよ。 うん うまい。 76 00:07:21,122 --> 00:07:24,425 いいんですか? お仕事中じゃないんですか。 77 00:07:24,425 --> 00:07:26,625 休みをもらったんだよ。 78 00:07:28,296 --> 00:07:33,134 何だか お疲れの様子ですねえ。 うん…。 79 00:07:33,134 --> 00:07:37,972 俺の暮らしは何だろうって 近頃思うんだよ。 80 00:07:37,972 --> 00:07:43,377 病人は いくら手当てしても 次から次へとやって来る。 81 00:07:43,377 --> 00:07:46,914 赤ひげに こき使われ 文句を言われ…。 82 00:07:46,914 --> 00:07:50,785 そこいくと お前さんの商売は うまくいってるようじゃないか。 83 00:07:50,785 --> 00:07:54,255 (喜兵衛)まあねえ。 あとは 跡取りだけだ。 84 00:07:54,255 --> 00:07:59,093 フフッ どこかに おみつに似合いの婿はいないもんかねえ。 85 00:07:59,093 --> 00:08:02,130 おみつさんというのは あんたの一人娘だね? 86 00:08:02,130 --> 00:08:06,400 そう。 当人が なかなか その気にならなくてねえ。 87 00:08:06,400 --> 00:08:10,605 いいお婿さんがいたら 紹介してくださいよ。 いいお婿ね。 88 00:08:10,605 --> 00:08:13,508 赤ひげは 無知と貧困と闘うなんて言うが…。 89 00:08:13,508 --> 00:08:17,278 (笑い声) おっと そろそろ刻限だ。 失礼するよ。 90 00:08:17,278 --> 00:08:21,278 ごちそうさん。 私も。 毎度ありがとうございます。 91 00:08:24,952 --> 00:08:27,652 ありがとうございました。 92 00:08:29,290 --> 00:08:34,061 いつも その赤ひげさんの文句ばかり。 よほど嫌いなのね。 93 00:08:34,061 --> 00:08:37,565 いや 好きとか嫌いとかね そういう あっさりした話じゃないんだよ。 94 00:08:37,565 --> 00:08:41,369 お前には そういう趣が分からないんだ。 95 00:08:41,369 --> 00:08:46,741 ああ そうですか。 ああ そうですよ。 96 00:08:46,741 --> 00:08:52,613 はあ。 さてと 帰るとするか。 勘定頼むよ。 97 00:08:52,613 --> 00:08:54,615 はい。 98 00:08:54,615 --> 00:08:57,385 うん? おい 忘れもんだ。 99 00:08:57,385 --> 00:09:00,922 あら さっきのお客さん。 忘れたのに気付いたら 取りに来るだろう。 100 00:09:00,922 --> 00:09:08,095 はい。 あの方は 確か常盤屋さん…。 常盤屋といえば神田の両替屋か。 101 00:09:08,095 --> 00:09:10,131 酔い覚ましがてら 届けてやろう。 102 00:09:10,131 --> 00:09:12,266 いいんですか? ああ。 103 00:09:12,266 --> 00:09:28,115 ♬~ 104 00:09:28,115 --> 00:09:30,051 御免。 105 00:09:30,051 --> 00:09:32,887 いらっしゃいませ。 106 00:09:32,887 --> 00:09:34,887 はっ…。 107 00:09:39,227 --> 00:09:42,897 財布を届けただけだ。 用事は済んだ。 帰りますよ。 108 00:09:42,897 --> 00:09:47,068 いえ! あるじが ひと言ご挨拶をしたいと 申しておりますので➡ 109 00:09:47,068 --> 00:09:49,868 もう少しお待ちください。 110 00:10:00,081 --> 00:10:04,585 じゃあ 今度の寄り合いの日取り お前さんが決めといてくれ。 111 00:10:04,585 --> 00:10:07,085 はい かしこまりました。 112 00:10:12,927 --> 00:10:16,597 これはこれは。 お待たせいたしました。 113 00:10:16,597 --> 00:10:20,768 いや 年ですかなあ こんな大事なものを忘れるなんて。 114 00:10:20,768 --> 00:10:24,272 わざわざ ありがとうございました。 115 00:10:24,272 --> 00:10:27,275 いえ 酔い覚ましがてら 届けただけですので。 では。 116 00:10:27,275 --> 00:10:30,411 ちょっとお待ちください。 礼などお気遣いなく。 117 00:10:30,411 --> 00:10:33,281 礼? 118 00:10:33,281 --> 00:10:37,151 いや… どうも…。 119 00:10:37,151 --> 00:10:39,153 何ですか? 120 00:10:39,153 --> 00:10:42,290 大変申し上げにくいのですが➡ 121 00:10:42,290 --> 00:10:46,294 実は この財布には 二分と一朱入っておりました。 122 00:10:46,294 --> 00:10:54,635 しかしながら 今 見せていただいたところ どうも 一分程 足りませんようで…。 123 00:10:54,635 --> 00:10:59,307 えっ? まさか 私が盗んだとでも? 124 00:10:59,307 --> 00:11:05,112 そうは申しません。 申しませんが… 中身が足りないのは 本当でございまして。 125 00:11:05,112 --> 00:11:07,181 盗んだと言ってるのと 同じじゃないですか。 126 00:11:07,181 --> 00:11:09,951 では 盗んでいないと。 当たり前です。 失敬な! 127 00:11:09,951 --> 00:11:13,321 失礼ですが… お仕事は? 128 00:11:13,321 --> 00:11:16,324 小石川養生所に勤める医者です。 129 00:11:16,324 --> 00:11:21,996 ほほっ お医者様でしたか。 これで 分かっていただけましたか。 130 00:11:21,996 --> 00:11:25,796 お医者様は盗みはしませんか。 131 00:11:28,336 --> 00:11:32,106 確かに 医者だから盗みをしないとは 言えません。 132 00:11:32,106 --> 00:11:35,977 養生所は 資金繰り厳しいとも 伺っております。 133 00:11:35,977 --> 00:11:40,614 随分 お給金も少ないのでしょうね。 134 00:11:40,614 --> 00:11:43,284 ええ 少ないですよ。 135 00:11:43,284 --> 00:11:47,788 だから私が 金を盗まないといけないのですか? 136 00:11:47,788 --> 00:11:50,288 気分が悪い。 137 00:11:51,959 --> 00:11:55,629 だったら これは 拾った場所に戻しておきます。 138 00:11:55,629 --> 00:11:57,665 おや お逃げになる。 139 00:11:57,665 --> 00:11:59,800 何ですと。 140 00:11:59,800 --> 00:12:06,300 元の所に返したところで 盗んでいない証しには なりませんよ。 141 00:12:07,975 --> 00:12:11,846 それは一理ある。 142 00:12:11,846 --> 00:12:13,846 チッ。 143 00:12:16,684 --> 00:12:20,484 足りないのは 一分でしたね。 144 00:12:22,323 --> 00:12:25,323 何をしてらっしゃいます。 145 00:12:26,994 --> 00:12:33,601 はい これで元どおりです。 いや 私は こんなことをしろとは…。 146 00:12:33,601 --> 00:12:35,636 しがない医者ですがね…➡ 147 00:12:35,636 --> 00:12:39,273 泥棒と言われて 黙っていられぬ気概と➡ 148 00:12:39,273 --> 00:12:42,973 一分くらいの金なら 持っているんです。 149 00:12:44,612 --> 00:12:46,612 では。 150 00:12:51,118 --> 00:12:53,618 ああ ちょっと! 151 00:13:02,730 --> 00:13:04,665 昨日は よく眠れたか。 152 00:13:04,665 --> 00:13:08,436 (太一)はい おかげさまで よく眠れました。 153 00:13:08,436 --> 00:13:12,306 やはり働き過ぎだな。 はい すみません。 154 00:13:12,306 --> 00:13:14,308 では 口を開けろ。 へらを取ってくれ。 155 00:13:14,308 --> 00:13:16,811 ご自分で どうぞ。 156 00:13:16,811 --> 00:13:19,713 それが先輩に対する物言いか。 157 00:13:19,713 --> 00:13:21,682 えっ。 「えっ」じゃない。 158 00:13:21,682 --> 00:13:26,520 お前は それで通ると思ってるんだろうが 世の中は そういうもんじゃない。 159 00:13:26,520 --> 00:13:31,325 津川先生 薬屋さんの今月の注文書き 早いとこ出してくださいね。 160 00:13:31,325 --> 00:13:35,596 あっ しまった 忘れてた。 お願いしますよ 全く。 161 00:13:35,596 --> 00:13:39,400 何でもかんでも俺ばかり…。 162 00:13:39,400 --> 00:13:42,937 少しは ねぎらえってんだ…! 163 00:13:42,937 --> 00:13:47,608 津川先生 どうしたんですか? 何がだ。 164 00:13:47,608 --> 00:13:51,779 何やら 機嫌が悪い。 俺だって そういうことはある。 165 00:13:51,779 --> 00:13:54,682 私です。 何が。 166 00:13:54,682 --> 00:14:00,788 津川先生は 私が倒れて担ぎ込まれた時に おっしゃいました。 167 00:14:00,788 --> 00:14:04,125 倒れるまで働くからだって。 168 00:14:04,125 --> 00:14:07,995 先生は 私のことを ずっと怒ってらっしゃるんでしょ? 169 00:14:07,995 --> 00:14:09,997 そんなことはない。 すみません。 170 00:14:09,997 --> 00:14:11,999 だから 違うと言ってるだろ! すみません。 171 00:14:11,999 --> 00:14:14,135 (達吉)ああ 先生 先生ね 先生ね➡ 172 00:14:14,135 --> 00:14:16,804 こいつはね いつも 「すいやせん すいやせん」っつって➡ 173 00:14:16,804 --> 00:14:19,140 お天道様が沈むのも 自分のせいみたいに言うんですよ。 174 00:14:19,140 --> 00:14:21,075 だから 勘弁してやってください。 ねっ。 すいません。 175 00:14:21,075 --> 00:14:23,875 だから 謝んじゃねえっつうんだよ。 176 00:14:27,848 --> 00:14:29,848 はあ~。 177 00:14:37,625 --> 00:14:41,625 何があったんだ? さあ? 178 00:14:46,600 --> 00:14:50,471 (つぐみ)津川先生! 何だ。 179 00:14:50,471 --> 00:14:53,274 あの 太一という病人のことですが…。 180 00:14:53,274 --> 00:14:56,277 うん? 太一の病が どうした。 181 00:14:56,277 --> 00:14:59,146 いや 私は そんなわけがあるかと 言ったのです。 しかし こいつが…。 182 00:14:59,146 --> 00:15:01,949 だから 何だ。 はい…。 183 00:15:01,949 --> 00:15:05,786 つぐみの話では 太一は 恋煩いではないかと。 184 00:15:05,786 --> 00:15:09,657 恋煩いだ? なぜ そんなことが分かる。 185 00:15:09,657 --> 00:15:15,296 お前から話せ。 あの人は いつも 遠くを見ては ため息をついて➡ 186 00:15:15,296 --> 00:15:18,299 憂鬱な顔をしています。 それは 病だからだろう。 187 00:15:18,299 --> 00:15:21,635 ただの病で ああいうふうにはなりません。 恋煩いです。 188 00:15:21,635 --> 00:15:25,439 ほう~。 お前には それが分かるのか。 189 00:15:25,439 --> 00:15:28,309 女には分かります。 190 00:15:28,309 --> 00:15:31,245 お前の見立ては? ただの働き過ぎでしょう。 191 00:15:31,245 --> 00:15:33,747 私は 働き過ぎではないと 言っているのではありません。 192 00:15:33,747 --> 00:15:35,783 恋煩いもあるのではと 申しているのです。 193 00:15:35,783 --> 00:15:37,918 だから どうしろと? 話を聞いてやれば…。 194 00:15:37,918 --> 00:15:40,254 バカバカしい お前…。 津川。 195 00:15:40,254 --> 00:15:42,923 あの病人は お前に任せたんだ。 196 00:15:42,923 --> 00:15:46,423 こんなことで いちいち わしに相談に来るな! 197 00:15:51,098 --> 00:15:53,767 お前が妙なこと言いだすから 先生の不興を買った。 198 00:15:53,767 --> 00:15:56,270 では 太一のことは お願いします。 199 00:15:56,270 --> 00:15:58,272 えっ お前が言いだしたんだ お前が なんとかしろ。 200 00:15:58,272 --> 00:16:03,772 太一は もともと津川先生の受け持ちです。 それに こういうことは男同士でしょう。 201 00:16:05,946 --> 00:16:08,983 御免! 202 00:16:08,983 --> 00:16:11,418 えっ! 203 00:16:11,418 --> 00:16:13,354 どうかしました? シッ! 204 00:16:13,354 --> 00:16:17,625 はい…。 津川先生は おいでになりますか。 205 00:16:17,625 --> 00:16:21,925 はい。 ちょっとお待ちください。 206 00:16:25,299 --> 00:16:29,136 わっ。 あっ 津川先生 お客様ですよ。 207 00:16:29,136 --> 00:16:34,136 いないと言ってくれ。 えっ もういるって言っちゃいました。 208 00:16:41,782 --> 00:16:44,282 何の用だ。 209 00:16:47,087 --> 00:16:49,887 これはこれは。 210 00:16:51,759 --> 00:16:56,559 まだ何か ご用ですか。 金なら もう…。 まことに! 211 00:16:58,532 --> 00:17:02,936 申し訳ありませんでした。 212 00:17:02,936 --> 00:17:06,407 私 うっかりしておりまして➡ 213 00:17:06,407 --> 00:17:12,212 一分を その前に使ったのを すっかり忘れておりました。 214 00:17:12,212 --> 00:17:16,150 それを あなた様のせいにしてしまい…➡ 215 00:17:16,150 --> 00:17:24,350 とんでもない失礼なことを…。 平に… 平に! 216 00:17:26,126 --> 00:17:28,629 ≪(津川)いえ そういうことなら もう。 217 00:17:28,629 --> 00:17:32,366 お許しいただけますか。 218 00:17:32,366 --> 00:17:35,069 許すとかではなく…。 219 00:17:35,069 --> 00:17:39,907 お許しいただけなくとも それは しかたがありませんが…。 220 00:17:39,907 --> 00:17:45,207 いいですいいです。 許します。 221 00:17:47,581 --> 00:17:50,084 フフフフフ…。 222 00:17:50,084 --> 00:17:53,921 フッフッフッフッ…。 223 00:17:53,921 --> 00:17:56,590 うん! 気に入った! 224 00:17:56,590 --> 00:17:58,590 ええっ。 225 00:18:00,260 --> 00:18:04,598 先日の 足りない金を自分で足す潔さ➡ 226 00:18:04,598 --> 00:18:08,769 そして 本日の その寛大なお答えぶり…➡ 227 00:18:08,769 --> 00:18:11,105 すばらしい。 228 00:18:11,105 --> 00:18:13,607 ただ面倒なだけですが。 229 00:18:13,607 --> 00:18:16,410 その奥ゆかしさがいい。 230 00:18:16,410 --> 00:18:22,616 決めました。 是非 嫌とは言わせませんぞ。 231 00:18:22,616 --> 00:18:24,651 一体 何の話です? 232 00:18:24,651 --> 00:18:29,957 うちの 婿になっていただきたい。 233 00:18:29,957 --> 00:18:31,892 ええっ! 234 00:18:31,892 --> 00:18:33,827 えっ! 235 00:18:33,827 --> 00:18:37,698 一人娘のおみつは 今年18になります。 236 00:18:37,698 --> 00:18:41,235 是非 おみつと一緒に…➡ 237 00:18:41,235 --> 00:18:47,574 お願いいたします。 し… しかし…。 238 00:18:47,574 --> 00:18:51,874 フフフフ…。 239 00:18:53,447 --> 00:18:55,916 ええっ! お婿に? 240 00:18:55,916 --> 00:18:58,819 いえ 断りましたので。 断ったんですか!? 241 00:18:58,819 --> 00:19:01,588 そりゃ 断るだろう いきなり婿になれと言われて。 242 00:19:01,588 --> 00:19:07,094 でも常盤屋といえば大店でしょう。 そうですよ! いい話じゃないですか。 243 00:19:07,094 --> 00:19:09,029 人ごとだと思って いいかげんなことを。 244 00:19:09,029 --> 00:19:12,766 いや これは決して 人ごとではありませんよ。 245 00:19:12,766 --> 00:19:16,603 えっ どこが。 私たちに大いに関わりのあることです。 246 00:19:16,603 --> 00:19:19,940 津川先生が金持ちの娘を嫁にもらえば➡ 247 00:19:19,940 --> 00:19:23,777 養生所をいくらかでも 助けてもらえるのではないですか? 248 00:19:23,777 --> 00:19:26,477 なるほど! (津川)なるほどじゃないだろう。 249 00:19:33,587 --> 00:19:39,226 もし常盤屋の婿になった場合 医者を辞めて 店の仕事をするんですか。 250 00:19:39,226 --> 00:19:43,230 婿になるとは そういうことだろう。 何で俺が両替屋をやらなきゃいかんのだ。 251 00:19:43,230 --> 00:19:50,838 津川。 お前は 医者であることに 迷いを覚えていたんじゃないか。 252 00:19:50,838 --> 00:19:53,373 えっ… いや…。 253 00:19:53,373 --> 00:19:56,373 いい機会かもしれんぞ。 254 00:19:58,212 --> 00:20:01,248 では 私に婿になって 両替屋を継げとおっしゃるんですか。 255 00:20:01,248 --> 00:20:05,048 お前の好きにすればいいということだ。 256 00:20:13,694 --> 00:20:17,564 ええっ! おいおいおい 津川先生が婿に!? 257 00:20:17,564 --> 00:20:21,268 そうなんだよ。 全く降って湧いたような話でさ。 ハハッ。 258 00:20:21,268 --> 00:20:24,271 まあ でも 津川先生は 見た目も頭も悪くねえ。 259 00:20:24,271 --> 00:20:28,041 婿に うってつけじゃねえか。 なあ。 で どこの店だい。 260 00:20:28,041 --> 00:20:30,978 常盤屋さんよ。 (むせこみ) 261 00:20:30,978 --> 00:20:33,780 おい どうした。 あっ いや 別に…。 262 00:20:33,780 --> 00:20:37,417 結構な大店だ。 あやかりたいね。 263 00:20:37,417 --> 00:20:40,287 (達吉)でも その娘っていうのは 一体 どういう子なんだい。 264 00:20:40,287 --> 00:20:44,157 大店の娘なのに 婿が見つからずに困ってるってのは➡ 265 00:20:44,157 --> 00:20:47,794 相当な訳ありかもしんねえぞ。 そうだねえ。 266 00:20:47,794 --> 00:20:50,130 (太一)ううっ…。 うん? 267 00:20:50,130 --> 00:20:55,130 すいません。 すいません… ああっ…。 268 00:20:59,640 --> 00:21:03,510 (まさを)おめでとう。 ありがとうございます。 269 00:21:03,510 --> 00:21:07,981 よかったな。 ご亭主と仲よくするんだぞ。 270 00:21:07,981 --> 00:21:09,917 はい。 271 00:21:09,917 --> 00:21:12,853 およしちゃんもお嫁に行く年頃なのね。 272 00:21:12,853 --> 00:21:15,155 うん。 273 00:21:15,155 --> 00:21:18,992 そういえば 養生所にも縁談があってな。 274 00:21:18,992 --> 00:21:21,895 えっ どなたの? 津川先生だ。 275 00:21:21,895 --> 00:21:26,733 急に婿入りの話が持ち上がったんだ。 へえ~。 276 00:21:26,733 --> 00:21:31,271 津川先生も 婿に行くお年頃だ。 どんなお話ですの? 277 00:21:31,271 --> 00:21:35,776 フッ いや 冗談のような話だ。 誰も本気になどしていない。 278 00:21:35,776 --> 00:21:38,412 そうなんですか。 フフフフフッ。 279 00:21:38,412 --> 00:21:44,712 あの~ 夫婦の心得を何か教えていただけますか。 280 00:21:48,789 --> 00:21:52,426 そうねえ…。 281 00:21:52,426 --> 00:22:00,133 まず 妻は 何があっても夫を立てること。 282 00:22:00,133 --> 00:22:03,170 はい。 ほう。 283 00:22:03,170 --> 00:22:08,642 でも 腹が立つことがあれば その日のうちに…➡ 284 00:22:08,642 --> 00:22:13,513 遅くとも 次の日には ちゃんと言うこと。 285 00:22:13,513 --> 00:22:17,317 腹にためておくのが一番よくないんです。 286 00:22:17,317 --> 00:22:21,188 まさをが口うるさいのは そういうことか。 そうですよ。 287 00:22:21,188 --> 00:22:23,457 ハハハッ。 ええ? フフッ。 288 00:22:23,457 --> 00:22:26,159 仲のおよろしいこと。 289 00:22:26,159 --> 00:22:31,765 (笑い声) 290 00:22:31,765 --> 00:22:35,265 待てよ…。 何か? 291 00:22:36,937 --> 00:22:44,111 俺も初めは まさか まさをと 一緒になるとは思いもしなかった。 292 00:22:44,111 --> 00:22:47,414 それは 私も…。 293 00:22:47,414 --> 00:22:52,285 しかし 今は こうして うまくやっている。 294 00:22:52,285 --> 00:22:56,785 相手によっては 津川先生も…。 295 00:22:58,625 --> 00:23:02,925 (おみつ)ごめんください。 ≪(お雪)はい。 296 00:23:12,139 --> 00:23:16,443 (津川)何でしょう。 (おみつ)昨日 常盤屋の喜兵衛が➡ 297 00:23:16,443 --> 00:23:20,147 あなた様を 一人娘の婿にしたいと申したそうで…。 298 00:23:20,147 --> 00:23:22,082 (津川)はあ… あなたは…? 299 00:23:22,082 --> 00:23:25,652 私が その娘です。 みつと申します。 300 00:23:25,652 --> 00:23:27,652 えっ…。 え~。 301 00:23:31,258 --> 00:23:36,596 父が妙なことを申しまして まことに 申し訳ございません。 302 00:23:36,596 --> 00:23:38,932 いえ あなたが謝ることでは。 303 00:23:38,932 --> 00:23:43,270 私も昨夜 父から そのことを聞いて 驚きました。 304 00:23:43,270 --> 00:23:46,273 さぞかし ご迷惑をおかけしたことと思い…。 305 00:23:46,273 --> 00:23:50,473 いえ それほどのことでは どうぞ 頭をお上げください。 306 00:23:58,285 --> 00:24:02,289 (おみつ)では お怒りではないのですか? (津川)ええ ちっとも…。 307 00:24:02,289 --> 00:24:08,628 心の広いお方ですのね。 あっ いや そういうことでは…。 308 00:24:08,628 --> 00:24:13,500 養生所のお医者様は お忙しそうですね。 いえ それほどでも。 309 00:24:13,500 --> 00:24:15,502 (笑い声) 310 00:24:15,502 --> 00:24:20,640 お医者様は 人を助ける尊いお仕事です。 はあ…。 311 00:24:20,640 --> 00:24:23,677 それに引き換え うちの稼業の両替屋など➡ 312 00:24:23,677 --> 00:24:27,414 父は いつもお金の勘定ばかり…。 313 00:24:27,414 --> 00:24:33,220 私は 子どもの頃から うちの稼業が嫌いでした。 314 00:24:33,220 --> 00:24:39,993 両替屋は 人の体に血が流れるように お金を世の中に回すのが仕事です。 315 00:24:39,993 --> 00:24:43,864 これは これで 人々の役に立っている仕事なんです。 316 00:24:43,864 --> 00:24:45,799 本当ですか? 317 00:24:45,799 --> 00:24:50,637 ええ。 医者が両替屋より 尊いなどということはありません。 318 00:24:50,637 --> 00:24:59,479 私のためを思って そのようなことを? お優しいのですね。 319 00:24:59,479 --> 00:25:04,618 両替屋も さぞかし忙しいでしょう。 私のような素人にできるものでは…。 320 00:25:04,618 --> 00:25:08,421 いえ うちの仕事は 番頭が取りしきっております。 321 00:25:08,421 --> 00:25:14,221 父は とにかく人柄がよく 立派な方をと…。 322 00:25:16,163 --> 00:25:19,663 そうなんですか…。 323 00:25:21,968 --> 00:25:27,440 あっ だからといって 津川先生に 婿になってくださいなどとは… ハハッ。 324 00:25:27,440 --> 00:25:29,976 (せきこみ) 325 00:25:29,976 --> 00:25:31,912 大丈夫ですか。 326 00:25:31,912 --> 00:25:33,947 すみません。 327 00:25:33,947 --> 00:25:40,086 (津川)せきに効く薬です。 ありがとうございます。 328 00:25:40,086 --> 00:25:43,086 失礼いたします。 329 00:25:53,099 --> 00:25:58,405 (笑い声) 330 00:25:58,405 --> 00:26:00,340 はあ! 331 00:26:00,340 --> 00:26:02,340 (せきばらい) 332 00:26:12,919 --> 00:26:18,625 <それから おみつは 養生所に足しげく来るようになった> 333 00:26:18,625 --> 00:26:25,131 その後 せきは どうですか。 あっ はい。 すっかりよくなりました。 334 00:26:25,131 --> 00:26:29,431 本当に ありがとうございました。 ああ よかったです。 335 00:26:37,244 --> 00:26:40,247 うん おいしい。 336 00:26:40,247 --> 00:26:44,117 ここで暮らしてると こういう甘いものに ありつくことがないので➡ 337 00:26:44,117 --> 00:26:47,254 ありがたいです。 フフフッ よかったです。 338 00:26:47,254 --> 00:26:51,258 ここのお店 干菓子も おいしいんです。 339 00:26:51,258 --> 00:26:56,930 今度持ってきます。 ありがとうございます。 340 00:26:56,930 --> 00:26:58,930 フフフフフフッ…。 341 00:27:01,801 --> 00:27:06,106 歴史を知るとは 人を知るということです。 342 00:27:06,106 --> 00:27:09,976 昔の出来事には 考えさせられることが多いですよ。 343 00:27:09,976 --> 00:27:12,976 そうなのですね。 344 00:27:21,588 --> 00:27:27,394 こんなに毎日のように来て 変なやつだとお思いでしょう? 345 00:27:27,394 --> 00:27:30,297 いえ そんなことは…。 346 00:27:30,297 --> 00:27:33,597 自分でも変だと思ってます。 347 00:27:37,570 --> 00:27:40,270 あの…。 348 00:27:41,908 --> 00:27:46,246 実は 私…。 349 00:27:46,246 --> 00:27:49,149 津川先生。 350 00:27:49,149 --> 00:27:53,753 療治を始める時分だな。 では 私は これで。 351 00:27:53,753 --> 00:27:56,753 お邪魔いたしました。 352 00:28:11,604 --> 00:28:15,108 [ 回想 ] (おみつ)うちの仕事は 番頭が取りしきっております。➡ 353 00:28:15,108 --> 00:28:20,914 父は とにかく人柄がよく 立派な方をと…。 354 00:28:20,914 --> 00:28:40,414 ♬~ 355 00:28:49,376 --> 00:28:51,745 足。 はい。 356 00:28:51,745 --> 00:28:54,080 すいやせんねえ いいところ お邪魔して。 357 00:28:54,080 --> 00:28:57,384 何の話だ。 とぼけなさんな。 おみつさん来てたんでしょ。 358 00:28:57,384 --> 00:29:01,087 津川先生も 両替屋の若旦那か。 いいかげんにしろ。 359 00:29:01,087 --> 00:29:04,924 医者に未練はありませんってことですか。 (笑い声) 360 00:29:04,924 --> 00:29:08,762 本当ですか? えっ? 361 00:29:08,762 --> 00:29:15,562 本当に医者に未練はないんですか。 ふん。 どうかな。 362 00:29:23,276 --> 00:29:25,945 ≪ずっと このままなんて嫌よ。 363 00:29:25,945 --> 00:29:29,945 ≪そんなこと言っても どうしようもないじゃないか。 364 00:29:31,551 --> 00:29:35,055 (おみつ)おとっつぁんは 私に婿を取ろうとしているのよ。 365 00:29:35,055 --> 00:29:41,828 (太一)知ってる 津川先生だろ。 いい人じゃないか。 366 00:29:41,828 --> 00:29:45,231 私には 太一さんしかいないのよ。 367 00:29:45,231 --> 00:29:47,734 おみっちゃん…。 (物音) 368 00:29:47,734 --> 00:29:49,934 あっ! ああっ…。 369 00:29:55,075 --> 00:30:03,275 こんなところで 何をしてるんだ。 先生…。 こちらの 大先生だ。 370 00:30:06,786 --> 00:30:09,589 そうだったか…➡ 371 00:30:09,589 --> 00:30:11,624 この太一と…。 372 00:30:11,624 --> 00:30:19,265 私が足しげく この養生所に通うのは この人と会うためです。 373 00:30:19,265 --> 00:30:25,405 では 津川は…。 申し訳ありません。 374 00:30:25,405 --> 00:30:30,276 津川先生と会うのは 隠れみのでした。 375 00:30:30,276 --> 00:30:33,279 う~ん。 376 00:30:33,279 --> 00:30:36,950 しかし なぜ隠れて…。 377 00:30:36,950 --> 00:30:42,122 父が 私と太一さんのことを 許そうとしないからです。 378 00:30:42,122 --> 00:30:46,626 でも 私たちは どうしても添い遂げたいと…。 379 00:30:46,626 --> 00:30:50,130 はあ~ 恋煩いは 本当だったか。 380 00:30:50,130 --> 00:30:52,799 えっ? ああ いや。 381 00:30:52,799 --> 00:30:57,137 元はと言えば 私が悪いんです。 いえ 太一さんは 何も…。 382 00:30:57,137 --> 00:31:03,309 いや 私の稼ぎが少ないばかりに この人のお父様から反対されて…。 383 00:31:03,309 --> 00:31:08,448 お前の仕事は 確か 荷方船の商いだったな。 384 00:31:08,448 --> 00:31:13,820 はい。 でも まだ ほんの小商いで…。 385 00:31:13,820 --> 00:31:17,323 許さん! 386 00:31:17,323 --> 00:31:22,162 私は この人が好きなの。 387 00:31:22,162 --> 00:31:24,998 本当にいい人なのよ。 388 00:31:24,998 --> 00:31:28,034 いい人で 飯が食えるか。 389 00:31:28,034 --> 00:31:30,603 こんな半人前の男。 390 00:31:30,603 --> 00:31:35,275 ろくな稼ぎもないくせに おみつに色目使いおって。 391 00:31:35,275 --> 00:31:37,944 お許しください! 392 00:31:37,944 --> 00:31:42,444 悔しかったら わしが驚くぐらい稼いでみろ! 393 00:31:46,419 --> 00:31:48,354 ここ。 394 00:31:48,354 --> 00:31:53,193 私は 認められたい一心で働きました。 395 00:31:53,193 --> 00:31:59,299 しかし せっかく ためた銭も 使用人に持ち逃げされちまって…➡ 396 00:31:59,299 --> 00:32:06,599 無理して働きました。 そしたら 体が思うように動かなくなっちまって…。 397 00:32:13,313 --> 00:32:17,817 それで ここに担ぎ込まれたわけか。 はい。 398 00:32:17,817 --> 00:32:22,322 私は 太一さんのことを 諦めることができず…。 399 00:32:22,322 --> 00:32:26,826 父は それを察して 早く婿を取ろうとしていたのです。 400 00:32:26,826 --> 00:32:30,263 相手は誰でもよかったのです。 誰でも? 401 00:32:30,263 --> 00:32:34,133 あっ いえ 津川先生は とてもすばらしいお方です。 402 00:32:34,133 --> 00:32:37,333 でも 私は…。 403 00:32:40,773 --> 00:32:43,276 (ため息) 404 00:32:43,276 --> 00:32:49,616 これ以上 津川先生に嘘はつけません。 本当のことを…。 405 00:32:49,616 --> 00:32:51,951 あっ いや ちょっと待て。 406 00:32:51,951 --> 00:32:58,291 どうしてですか。 う~ん… どうしたもんか…。 407 00:32:58,291 --> 00:33:02,629 うっ… ううっ… ううっ。 408 00:33:02,629 --> 00:33:05,965 どうした。 太一さん? おい。 409 00:33:05,965 --> 00:33:09,435 こらえずに吐き出せ。 410 00:33:09,435 --> 00:33:13,139 よ~し。 ここは もういいぞ。 帰りなさい。 411 00:33:13,139 --> 00:33:17,810 いや でも…。 心配するな。 後は任せておけ。 412 00:33:17,810 --> 00:33:22,110 さあ 上を向くぞ。 よ~し ゆっくりでいいぞ。 413 00:33:27,320 --> 00:33:29,989 あれ まだいらしたんですか。 414 00:33:29,989 --> 00:33:32,789 ≪つぐみ 冷やすぞ。 ≪はい。 415 00:33:34,594 --> 00:33:37,630 何をしてる 早く太一を診ろ。 はい。 416 00:33:37,630 --> 00:33:42,101 急に腹の痛みを訴えて吐いた。 えっ! 417 00:33:42,101 --> 00:33:44,604 熱い…。 418 00:33:44,604 --> 00:33:46,639 吐血…。 419 00:33:46,639 --> 00:33:50,339 お前の見立ては 働き過ぎだったな。 420 00:33:53,279 --> 00:33:58,117 私が見落としたんです。 申し訳ありません。 いいから。 421 00:33:58,117 --> 00:34:01,417 早く見立て直しをしろ。 はい! 422 00:34:03,623 --> 00:34:06,423 うっ ううっ…。 423 00:34:20,440 --> 00:34:25,812 脈が落ち着いた。 本当ですか。 ああ。 424 00:34:25,812 --> 00:34:29,112 よかった…。 425 00:34:32,385 --> 00:34:36,255 恋煩いなどと 余計なことを言ったせいで。 426 00:34:36,255 --> 00:34:40,927 気にするな。 でも…! 私の気が緩んでいたんだ。 427 00:34:40,927 --> 00:34:45,398 毎日 同じことの繰り返しのような気がして…。 428 00:34:45,398 --> 00:34:51,771 一人一人の病人を気遣う気持ちが おろそかになっていた…。 429 00:34:51,771 --> 00:35:22,971 ♬~ 430 00:35:26,305 --> 00:35:32,245 きっと いいお話に違いない。 うん。 フフフフフッ。➡ 431 00:35:32,245 --> 00:35:34,445 御免! 432 00:35:49,629 --> 00:35:56,302 これはこれは。 フフフッ。 まあ 座れ。 はあ。 433 00:35:56,302 --> 00:36:01,140 今日は きっと いいお話に違いないと 思って やって参りました。 434 00:36:01,140 --> 00:36:08,281 フフフッ 何しろ 新出先生じきじきの お呼び出しですからな。 435 00:36:08,281 --> 00:36:10,281 先生が? 436 00:36:11,951 --> 00:36:17,423 婿入りは 承知ということですな? えっ…。 437 00:36:17,423 --> 00:36:23,129 フッ 聞くところによれば おみつは 毎日のように津川先生を訪ね➡ 438 00:36:23,129 --> 00:36:26,799 津川先生も 喜んでくださっているとのこと。 439 00:36:26,799 --> 00:36:33,299 これは もう決まったも同然と思って よろしいのですな? 440 00:36:36,909 --> 00:36:40,246 どうなんだ。 承知なのか? 441 00:36:40,246 --> 00:36:44,083 ご無理なさらないでください。 私が勝手に押しかけただけですから。 442 00:36:44,083 --> 00:36:46,752 お前は 黙ってなさい。➡ 443 00:36:46,752 --> 00:36:50,256 どうなのですか。 444 00:36:50,256 --> 00:36:52,456 私は…。 445 00:36:58,598 --> 00:37:01,634 私はですね。 (戸が開く音) 446 00:37:01,634 --> 00:37:05,371 おみつさんを下さい。 お願いします! 447 00:37:05,371 --> 00:37:09,775 お前は…! こ… これは どういうことだ。 448 00:37:09,775 --> 00:37:12,678 すいません あの…。 449 00:37:12,678 --> 00:37:16,415 お願いします! 太一さんと一緒にさせてください! 450 00:37:16,415 --> 00:37:18,351 お願いします! 451 00:37:18,351 --> 00:37:20,351 はあ!? 452 00:37:22,288 --> 00:37:27,788 私は この人のことが好きなんです。 453 00:37:29,795 --> 00:37:32,698 申し訳ありません。 454 00:37:32,698 --> 00:37:37,998 私が 何度も ここに来たのは この人に会うためでした。 455 00:37:39,605 --> 00:37:41,741 えっ…? 456 00:37:41,741 --> 00:37:45,077 お… お前たちは まだそんなことを。 457 00:37:45,077 --> 00:37:50,583 津川。 そういうことだ。 458 00:37:50,583 --> 00:37:57,083 あ~ あ~ はあ…。 459 00:38:01,227 --> 00:38:06,933 この2人のことを許さないそうだな。 460 00:38:06,933 --> 00:38:11,804 ええ 許しませんよ。 こんな頼りのない男。 461 00:38:11,804 --> 00:38:16,104 半人前で 稼ぎもないくせに…。 462 00:38:19,111 --> 00:38:24,283 フフッ フハハハハハッ…。 463 00:38:24,283 --> 00:38:28,955 ハハハハハッ… ハハハハハッ…。 464 00:38:28,955 --> 00:38:32,825 ハハハハハッ…。 465 00:38:32,825 --> 00:38:35,561 自慢じゃありませんが➡ 466 00:38:35,561 --> 00:38:40,232 この男は 私のような男より よほど ましですよ。 467 00:38:40,232 --> 00:38:44,904 私なんてね いいかげんで ふらふらして➡ 468 00:38:44,904 --> 00:38:49,241 それに引き換え この男は おみつさんだけを思って…➡ 469 00:38:49,241 --> 00:38:54,747 おみつさんと一緒になりたくて 仕事に根を詰めすぎて病に。 470 00:38:54,747 --> 00:38:58,447 私には とても まねできない。 471 00:39:00,620 --> 00:39:05,391 でも こんな私でも➡ 472 00:39:05,391 --> 00:39:09,929 医者だけは続けたいと思っています。 473 00:39:09,929 --> 00:39:13,629 ですから 両替屋の婿にはなれません。 474 00:39:15,601 --> 00:39:19,271 おみつさんとは 一緒になれないんです。 475 00:39:19,271 --> 00:39:22,608 はあ!? 476 00:39:22,608 --> 00:39:24,808 喜兵衛。 477 00:39:26,412 --> 00:39:33,552 太一は お前に言われて懸命に働いた。 478 00:39:33,552 --> 00:39:37,723 お前に認めてもらいたい一心でな。 479 00:39:37,723 --> 00:39:44,523 そして おみつは そんな太一を必死に支えようとしてる。 480 00:39:46,232 --> 00:39:51,732 見ろ。 この2人のまっすぐな目を。 481 00:39:54,573 --> 00:40:02,248 少しは この目を 信じてやったら どうだ。 482 00:40:02,248 --> 00:40:14,760 ♬~ 483 00:40:14,760 --> 00:40:17,460 しかたない。 484 00:40:19,098 --> 00:40:21,798 考えてみましょう。 485 00:40:23,402 --> 00:40:25,471 フッフッフッフッ…。 486 00:40:25,471 --> 00:40:43,289 (津川の笑い声) 487 00:40:43,289 --> 00:40:55,301 ♬~ 488 00:40:55,301 --> 00:40:59,171 何が どうなったんだい。 さあ。 489 00:40:59,171 --> 00:41:03,042 お父さんも きっと許してくれるわ。 490 00:41:03,042 --> 00:41:07,742 ああ…。 津川先生のおかげだ。 491 00:41:10,449 --> 00:41:13,352 うん。 492 00:41:13,352 --> 00:41:18,190 (田山の笑い声) 493 00:41:18,190 --> 00:41:25,331 あの 煎じ詰めると 津川先生は振られたということですね。 494 00:41:25,331 --> 00:41:28,000 煎じ詰めなくても そうだ! これは… フフフ…。 495 00:41:28,000 --> 00:41:31,270 それは どうかな。 496 00:41:31,270 --> 00:41:39,612 津川 お前 喜兵衛に婿入りを迫られた時に なんと返事をしようとしていたんだ。 497 00:41:39,612 --> 00:41:44,416 断るつもりだったんじゃないのか。 498 00:41:44,416 --> 00:41:47,787 さあ 忘れました。 499 00:41:47,787 --> 00:41:52,291 フフッ つくづく食えない男だ。 500 00:41:52,291 --> 00:41:58,631 まあ いずれにせよ 所帯は やはり ほれた女と持ちたいものですね。 501 00:41:58,631 --> 00:42:00,566 フッフッフッフッ。 502 00:42:00,566 --> 00:42:03,502 あっ そうだ。 保本先生に➡ 503 00:42:03,502 --> 00:42:07,139 夫婦仲よく暮らすコツを 伝授してもらえばいいんじゃないですか。 504 00:42:07,139 --> 00:42:12,645 結構です! さっさと食え。 今日も忙しくなるぞ。 505 00:42:12,645 --> 00:42:16,145 (田山 津川)はい。 お代わり。 506 00:42:18,450 --> 00:42:22,321 <養生所に前と変わりない日々が戻った> 507 00:42:22,321 --> 00:42:24,521 へらを取ってくれ。 508 00:42:30,763 --> 00:42:34,266 熱は下がったが まだ腫れてるな。 509 00:42:34,266 --> 00:42:36,602 ここは どうだ。 イテテテテテッ。 510 00:42:36,602 --> 00:42:40,472 では ここは? まだ痛みは続きますが 我慢してください。 511 00:42:40,472 --> 00:42:42,775 子どもが急に熱出したって。 512 00:42:42,775 --> 00:42:46,278 私が行こう。 つぐみ 頼んだぞ。 513 00:42:46,278 --> 00:42:48,214 はい。 514 00:42:48,214 --> 00:42:52,418 <忙しいことに変わりはない。➡ 515 00:42:52,418 --> 00:42:58,418 しかし そのことで 愚痴を言うものはいなくなったという> 516 00:43:00,159 --> 00:43:03,459 寺の境内に 血ぃ流して倒れていて! 517 00:43:05,297 --> 00:43:08,300 これ お食べ。 ありがとう。 518 00:43:08,300 --> 00:43:12,805 俺が… およねさんを… 刺した。 519 00:43:12,805 --> 00:43:14,840 何があった。 520 00:43:14,840 --> 00:43:18,143 およねさんは なぜ 定吉をかばうんですか。 521 00:43:18,143 --> 00:43:20,179 愚かなまねをするな! 522 00:43:20,179 --> 00:43:25,179 分からないんだ。 なぜ あの子が あんなことをしたのか。