1 00:00:02,202 --> 00:00:04,605 先生! (田山)どうした? 2 00:00:04,605 --> 00:00:07,107 宿の客なんですが 急に苦しみだして…。 3 00:00:07,107 --> 00:00:10,310 (田山)運べ。 こっちだ。 4 00:00:12,279 --> 00:00:14,781 (新出)おい ちょっと待て。 5 00:00:17,150 --> 00:00:20,153 (おたね)はあ… はあ… はあ…。 6 00:00:20,153 --> 00:00:23,790 (田山)先生? 7 00:00:23,790 --> 00:00:27,094 よ~し 行け。 (田山)こっちだ。 8 00:00:30,430 --> 00:00:33,333 熱が高いな。 9 00:00:33,333 --> 00:00:35,836 口を開けて。 10 00:00:37,804 --> 00:00:41,108 (せきこみ) 特に 喉の腫れはないな。 11 00:00:44,578 --> 00:00:46,813 イッ…! ううっ…。 12 00:00:46,813 --> 00:00:49,716 はあ… はあ…。 13 00:00:49,716 --> 00:00:52,152 何か変なものを 食わせたりしていないだろうな? 14 00:00:52,152 --> 00:00:54,454 そんなことありません。 15 00:00:54,454 --> 00:00:56,390 風邪が腹に行ったか。 16 00:00:56,390 --> 00:01:00,160 葛根湯を飲ませましょうか? そうだな。 17 00:01:00,160 --> 00:01:02,596 用意します。 18 00:01:02,596 --> 00:01:05,399 あっ! 19 00:01:05,399 --> 00:01:07,334 どうだ? 20 00:01:07,334 --> 00:01:11,605 熱は高いものの 脈も息もはっきりしています。 21 00:01:11,605 --> 00:01:16,310 体の力が弱っているので 恐らく 風邪をこじらせたんでしょう。 22 00:01:17,945 --> 00:01:22,149 はあ… はあ…。 23 00:01:29,957 --> 00:01:32,426 どこの女だ? 24 00:01:32,426 --> 00:01:37,798 ああ ここの近くの安宿に しばらく とう留していたようです。 25 00:01:37,798 --> 00:01:39,833 急に 高熱を出して倒れたんで➡ 26 00:01:39,833 --> 00:01:44,137 先生に おすがりしようと 運んできました。 27 00:01:44,137 --> 00:01:48,442 名前は? おたねと名乗っていました。 28 00:01:50,811 --> 00:01:53,113 おたね…。 29 00:01:58,318 --> 00:02:00,253 何か…? 30 00:02:00,253 --> 00:02:03,256 ああ いや。 31 00:02:03,256 --> 00:02:06,593 ううっ…。 32 00:02:06,593 --> 00:02:10,764 はあ… はあ… はあ…。 33 00:02:10,764 --> 00:02:15,936 とりあえず 命に別状はなさそうだ。 34 00:02:15,936 --> 00:02:21,274 しばらく様子を見るしかあるまい。 35 00:02:21,274 --> 00:02:23,276 はい。 36 00:02:27,781 --> 00:02:31,618 保本…➡ 37 00:02:31,618 --> 00:02:35,956 この女は お前が診ろ。 はい。 38 00:02:35,956 --> 00:02:40,293 何か変わったことがあったら すぐに知らせてくれ。 39 00:02:40,293 --> 00:02:42,596 はい…。 40 00:02:44,965 --> 00:02:49,436 ♬~ 41 00:02:49,436 --> 00:02:55,809 <去定先生の この病人を見る目が普通と違うことが➡ 42 00:02:55,809 --> 00:02:58,645 私は 少し気になっていた> 43 00:02:58,645 --> 00:03:12,192 ♬~ 44 00:03:12,192 --> 00:03:14,695 水 もらうよ。 (お常)はいよ。 45 00:03:19,399 --> 00:03:22,769 今日 運び込まれたのは 随分と きれいな人だった。 46 00:03:22,769 --> 00:03:25,272 (お雪)ああ そうですか。 それで? 47 00:03:25,272 --> 00:03:30,143 どうも 去定先生が その女のことを気にしている様子なんだ。 48 00:03:30,143 --> 00:03:33,613 去定先生が 女のことなんか 気になることあんのかね? 49 00:03:33,613 --> 00:03:36,650 去定先生といえども 一人の男だ。 50 00:03:36,650 --> 00:03:41,121 たまには そういうこともあるだろう。 ハハハハ。 51 00:03:41,121 --> 00:03:44,624 痛っ。 何だ? 52 00:03:52,732 --> 00:04:00,140 はあ… はあ… はあ…。 53 00:04:00,140 --> 00:04:02,075 ああっ…。 54 00:04:02,075 --> 00:04:07,581 はあ… はあ… はあ…。 55 00:04:15,589 --> 00:04:20,393 あっ ちょっと用事を思い出した。 先に帰っててくれ。 56 00:04:20,393 --> 00:04:22,596 へい。 57 00:04:26,767 --> 00:04:34,641 ♬~ 58 00:04:34,641 --> 00:04:38,278 ハハハハハハ…! おめえに気があるって? 59 00:04:38,278 --> 00:04:45,051 おう 間違いねえ。 お嬢さんは 俺に気があるんだよ。 60 00:04:45,051 --> 00:04:49,289 明日 心の内を聞いてみるつもりさ。 61 00:04:49,289 --> 00:04:52,626 おう そうしろ そうしろ。 62 00:04:52,626 --> 00:04:54,961 いいんですか? お酒飲んで。 63 00:04:54,961 --> 00:04:57,297 今日の仕事は 終わりだ。 64 00:04:57,297 --> 00:04:59,800 ほんのちょっと飲んだくらいで 罰は当たらない。 65 00:04:59,800 --> 00:05:04,371 赤ひげ先生は お元気ですか? 気の利かない女だなあ。 66 00:05:04,371 --> 00:05:07,073 俺は 赤ひげを忘れるために 飲んでるんだぞ。 67 00:05:07,073 --> 00:05:09,109 すみませんね。 68 00:05:09,109 --> 00:05:11,378 赤ひげみたいな人間は➡ 69 00:05:11,378 --> 00:05:14,247 ほかの者も 自分と同じくらいの働きをして➡ 70 00:05:14,247 --> 00:05:16,583 当然だと思うんだな。 71 00:05:16,583 --> 00:05:19,252 人それぞれ違うということを 分かってない。 72 00:05:19,252 --> 00:05:21,588 全く 困ったもんだ。 73 00:05:21,588 --> 00:05:24,257 ここに連れてきてあげれば いいじゃありませんか。 74 00:05:24,257 --> 00:05:29,095 えっ… だから 何で 俺が 赤ひげと飲まなけりゃいけないんだ? 75 00:05:29,095 --> 00:05:34,267 もういっぺん言ってみろ! (竹二郎)ああ 何度だって言ってやらあ。 76 00:05:34,267 --> 00:05:39,105 てめえみてえな貧乏人が 大店のお嬢さんと ほれたのはれたの➡ 77 00:05:39,105 --> 00:05:41,775 笑わせんなってんだ。 78 00:05:41,775 --> 00:05:45,111 見ず知らずのくせに! 79 00:05:45,111 --> 00:05:49,282 世間ってもんを 教えてやろうと思ってな。 80 00:05:49,282 --> 00:05:51,618 お嬢さんは 確かに俺に➡ 81 00:05:51,618 --> 00:05:54,421 「せいさんって すてきな人ね」 って言ったんだ。 82 00:05:54,421 --> 00:05:59,125 ハハハ お愛想で言ってんだよ。 鏡を見ろ。 83 00:05:59,125 --> 00:06:02,329 この野郎! やっちまえ! 84 00:06:04,097 --> 00:06:08,235 お客さん! お客さん やめて! やめて! 85 00:06:08,235 --> 00:06:14,374 (喧嘩する声) 86 00:06:14,374 --> 00:06:17,077 (津川) やめろって! やるなら よそでやれ! 87 00:06:17,077 --> 00:06:19,379 うるせえ! (津川)イテッ! 88 00:06:19,379 --> 00:06:27,087 (喧嘩する声) 89 00:06:27,087 --> 00:06:29,923 うお~! ああ~! 90 00:06:29,923 --> 00:06:32,926 こっちだ! 91 00:06:35,395 --> 00:06:40,267 (津川)気を付けろ はい ゆっくり。 お~い 誰か! 誰か! 92 00:06:40,267 --> 00:06:45,105 えっ? いや ちょっと… どうしたんですか? 93 00:06:45,105 --> 00:06:47,574 居酒屋で喧嘩だ。 94 00:06:50,443 --> 00:06:53,980 津川先生 居合わせたんですか? えっ? 95 00:06:53,980 --> 00:06:57,317 あっ。 96 00:06:57,317 --> 00:07:00,587 酒臭い。 97 00:07:00,587 --> 00:07:03,256 早く手当てしてやらないと。 98 00:07:08,261 --> 00:07:14,067 痛~い! イテテテテ…。 ああ この傷は縫わないといけないな。 99 00:07:14,067 --> 00:07:17,404 痛むが我慢しろ。 100 00:07:17,404 --> 00:07:19,472 イテテテ イテテテ…。 101 00:07:19,472 --> 00:07:22,242 くだらないことで喧嘩するからだ。 動くな! 102 00:07:22,242 --> 00:07:25,111 バカなこと言ってんで ちょいと 口を挟んだだけじゃねえか。 103 00:07:25,111 --> 00:07:27,614 イタタタ…。 聞き流せ。 104 00:07:27,614 --> 00:07:30,950 やなこった…。何で? 性分なんで。 105 00:07:30,950 --> 00:07:34,421 その性分を直さないと これからも痛い目に遭うぞ。 106 00:07:34,421 --> 00:07:37,090 あ~! イタタタ… イタタタ…。 107 00:07:39,125 --> 00:07:41,428 しばらく入所せにゃならん。 108 00:07:41,428 --> 00:07:44,798 家の者に知らせてやるから 名前と所を言え。 109 00:07:44,798 --> 00:07:48,969 名は 竹二郎。 家は ありません。 110 00:07:48,969 --> 00:07:52,839 何? 俺は 天涯孤独の宿なしだよ。 111 00:07:52,839 --> 00:07:57,143 困ったな。 心配しなくても すぐ出てってやるよ。 112 00:07:57,143 --> 00:08:00,380 駄目だ。 治るまでいろ。 113 00:08:00,380 --> 00:08:03,650 イッテ! ああ~! 114 00:08:10,123 --> 00:08:12,125 縫うぞ。 (竹二郎)はい。 115 00:08:12,125 --> 00:08:14,894 我慢しろ! 116 00:08:14,894 --> 00:08:20,367 イッテ~! ああ~! 静かにしろ! 117 00:08:24,404 --> 00:08:29,275 あら お久しぶりです。 行ってらっしゃいまし。 118 00:08:29,275 --> 00:08:34,414 (おさよ)すみません。 あの 竹二郎って人 来ませんでしたか? 119 00:08:34,414 --> 00:08:37,283 あんた あの男の身内かい? 120 00:08:37,283 --> 00:08:39,953 はい。 竹二郎は あたしのあんちゃんです。 121 00:08:39,953 --> 00:08:41,988 全く ひどい目に遭ったよ。 122 00:08:41,988 --> 00:08:44,624 喧嘩はするわ 器は割るわ。 123 00:08:44,624 --> 00:08:48,294 すみません…。 すみません! 124 00:08:48,294 --> 00:08:51,765 …で あんちゃんは どこに? 125 00:08:59,305 --> 00:09:05,111 イッテ! イテ…。 126 00:09:05,111 --> 00:09:07,914 何 見てんだい! 127 00:09:07,914 --> 00:09:11,251 あの男は けがが治るまで 20日ばかり入所の要があります。 128 00:09:11,251 --> 00:09:13,920 どうも その間 やっかいごとを起こさないか心配で。 129 00:09:13,920 --> 00:09:15,955 だったら おとなしくさせろ。 130 00:09:15,955 --> 00:09:20,093 それも含めて医者の仕事だ。 はあ…。 131 00:09:20,093 --> 00:09:23,129 昨日 運び込まれた女の病人は どうですか? 132 00:09:23,129 --> 00:09:25,598 まだ正気づかない。 133 00:09:25,598 --> 00:09:28,868 どういう人なんでしょうね? 134 00:09:33,473 --> 00:09:35,942 ⚟(お常)保本先生! 135 00:09:35,942 --> 00:09:38,778 あっ あの女の病人が… 早く来てください。 136 00:09:38,778 --> 00:09:42,248 えっ! あっ ちょっ…。 137 00:09:49,122 --> 00:09:52,158 あっ。 138 00:09:52,158 --> 00:09:55,428 寝ていなくては駄目だ。 139 00:09:55,428 --> 00:09:59,132 ここは…。 小石川養生所だ。 140 00:09:59,132 --> 00:10:02,035 お前は倒れて運ばれたんだ。 141 00:10:02,035 --> 00:10:05,004 養生所…。 142 00:10:19,319 --> 00:10:21,488 おい。 143 00:10:23,189 --> 00:10:28,328 あれ? おたねさん? 144 00:10:28,328 --> 00:10:30,830 あっ ちょっ…。 145 00:10:30,830 --> 00:10:34,167 やめろ。 やめろ。 146 00:10:34,167 --> 00:10:37,337 お前は 病人なんだ。 働くことはない。 147 00:10:40,840 --> 00:10:42,876 おい。 148 00:10:42,876 --> 00:10:47,480 部屋に運ぶぞ。 (お雪)はい。 おたねさん。➡ 149 00:10:47,480 --> 00:10:50,183 足元 気を付けてくださいね。 150 00:10:50,183 --> 00:11:04,130 ♬~ 151 00:11:04,130 --> 00:11:07,167 さっきのは 何だったんでしょう? 152 00:11:07,167 --> 00:11:12,639 熱が高いと 頭の中で 夢と うつつの区別がつかなくなり➡ 153 00:11:12,639 --> 00:11:16,442 頭で考えずとも 体が勝手に動いてしまうことがある。 154 00:11:16,442 --> 00:11:23,316 恐らく 以前は どこかで女中でもしていたんだろう。 155 00:11:23,316 --> 00:11:27,187 うっ…。 156 00:11:27,187 --> 00:11:41,167 ♬~ 157 00:11:41,167 --> 00:11:44,003 あなたたちは…? 158 00:11:44,003 --> 00:11:47,340 小石川養生所の医師だ。 159 00:11:47,340 --> 00:11:52,011 この方は 新出先生➡ 160 00:11:52,011 --> 00:11:54,280 私は 保本。 161 00:11:55,882 --> 00:11:59,852 お前 名前は何という? 162 00:12:06,125 --> 00:12:09,429 名前が分からないのか。 163 00:12:09,429 --> 00:12:13,700 宿では おたねと呼ばれていたんだろう。 164 00:12:16,202 --> 00:12:22,175 そう せかすことはない。 今は 安静が一番だ。 165 00:12:24,444 --> 00:12:31,117 何も心配することはないぞ。 さあ ゆっくり休んでいろ。 166 00:12:41,327 --> 00:12:44,230 ⚟この野郎! ⚟(竹二郎)何だ 何か違うのか! 167 00:12:44,230 --> 00:12:46,466 何の騒ぎだ? 168 00:12:46,466 --> 00:12:50,837 (喧嘩する声) 169 00:12:50,837 --> 00:12:53,740 (つぐみ)離れて 2人とも! 170 00:12:53,740 --> 00:12:56,643 (津川) やめろ! けが人同士で何やってる? 171 00:12:56,643 --> 00:12:59,846 だって こいつがよ! 何を言ったんだ? 172 00:12:59,846 --> 00:13:02,115 「この死に損ないが」って言ったんだよ! 173 00:13:02,115 --> 00:13:05,018 確かに 俺は死に損ないだよ! けど 俺は…。 174 00:13:05,018 --> 00:13:07,987 この真吉さんは 弟が屋根から落ちそうになるのを助けて➡ 175 00:13:07,987 --> 00:13:09,989 代わりに落ちたんだよ! 176 00:13:09,989 --> 00:13:12,625 いや… 落ちたのは俺のドジだ。 えっ。 177 00:13:12,625 --> 00:13:15,962 貧乏人同士 かばいやがって! 貧乏は お前も一緒だろうが! 178 00:13:15,962 --> 00:13:19,298 貧乏は 今 関係ない… 関係ないだろうがよ! 179 00:13:19,298 --> 00:13:21,968 やめろって。 180 00:13:21,968 --> 00:13:25,004 何をしてる! 181 00:13:25,004 --> 00:13:29,642 ここは 病を治す場所だ! 182 00:13:29,642 --> 00:13:33,446 (おさよ)あんちゃん! 183 00:13:33,446 --> 00:13:36,649 あ… あんちゃん? 心配したのよ! 184 00:13:36,649 --> 00:13:39,152 何だ お前 何しに来やがった? 185 00:13:39,152 --> 00:13:42,989 平吉さんの所にも帰ってないっていうから あちこち探したのよ。 186 00:13:42,989 --> 00:13:45,324 そしたら 「すみよし」って居酒屋で➡ 187 00:13:45,324 --> 00:13:48,828 あんちゃんが けがして ここに 担ぎ込まれたって聞いたの。 188 00:13:48,828 --> 00:13:51,864 大丈夫なの? 189 00:13:51,864 --> 00:13:54,167 余計な心配すんな。 帰れ。 190 00:13:54,167 --> 00:13:56,469 お前 天涯孤独だって言わなかったか? 191 00:13:56,469 --> 00:14:01,607 あたしたち 二親とも死んで 2人っきりなんです。 192 00:14:01,607 --> 00:14:05,111 あんちゃんが ご迷惑をおかけして申し訳ありません。 193 00:14:05,111 --> 00:14:07,146 いえ 迷惑なんて全然。 194 00:14:07,146 --> 00:14:10,616 とにかく帰ってくれ! ねえ あんちゃん。 195 00:14:10,616 --> 00:14:14,587 うるせえよ。 ほっといてくれ。 196 00:14:20,293 --> 00:14:24,797 お前の兄は 昔から ああなのか? 197 00:14:24,797 --> 00:14:30,670 いえ… 前は 本当に優しくて 真面目な人だったのに。 198 00:14:30,670 --> 00:14:32,972 大工の腕もよかったんです。 199 00:14:32,972 --> 00:14:35,007 何かあったの? 200 00:14:35,007 --> 00:14:38,444 いえ 何も…。 201 00:14:38,444 --> 00:14:42,115 あんちゃんを よろしくお願いします。 202 00:14:44,984 --> 00:14:48,855 いい子だ…。 そうですね。 203 00:14:48,855 --> 00:14:51,824 何だ? 別に。 204 00:14:59,165 --> 00:15:01,601 (津川)あの竹二郎という男➡ 205 00:15:01,601 --> 00:15:04,404 どうも 無理して悪ぶっているように 見えるんです。 206 00:15:04,404 --> 00:15:07,273 どうして そう思うんだ? 207 00:15:07,273 --> 00:15:09,609 あの男の目です。 208 00:15:09,609 --> 00:15:12,278 目? 209 00:15:12,278 --> 00:15:15,114 どこか おびえているような…。 210 00:15:15,114 --> 00:15:20,419 本当に 怒りに我を忘れた人間は あんな目はしません。 211 00:15:20,419 --> 00:15:26,092 確かに 特に妹が来た時 まるで 妹を恐れてるみたいに。 212 00:15:29,428 --> 00:15:31,898 ああ! 213 00:15:35,802 --> 00:15:37,770 あっ。 214 00:15:39,438 --> 00:15:42,975 あっ…。 215 00:15:42,975 --> 00:15:47,814 ああっ… はあ~! 216 00:15:47,814 --> 00:15:51,484 ああ! 217 00:15:55,455 --> 00:15:57,623 何 見てんだよ。 218 00:16:03,196 --> 00:16:06,132 何か 文句でもあんのか? 219 00:16:06,132 --> 00:16:09,001 泣かなくていいんだよ。 220 00:16:09,001 --> 00:16:13,606 俺は 泣いてなんかいねえぞ。 221 00:16:13,606 --> 00:16:18,477 心が泣いてる…。 222 00:16:18,477 --> 00:16:22,114 何 言ってんだ おめえ! 223 00:16:22,114 --> 00:16:24,951 やめろ。 224 00:16:24,951 --> 00:16:29,822 あの女は 病なのだ。 225 00:16:29,822 --> 00:16:32,491 泣かないで。 226 00:16:35,127 --> 00:16:38,998 さあ 行こう。 227 00:16:38,998 --> 00:16:41,167 泣かないで。 228 00:16:46,639 --> 00:16:50,309 この人 どうしちまったんだろうね? 229 00:16:52,144 --> 00:16:54,814 (たえ)あたしも こんなふうに➡ 230 00:16:54,814 --> 00:16:58,451 ぼんやりと生きていきたいもんだよ。➡ 231 00:16:58,451 --> 00:17:01,621 そしたら随分と楽かもね。 232 00:17:15,268 --> 00:17:20,239 <おさよは 時折 養生所に来て 兄の世話を焼くようになった> 233 00:17:25,278 --> 00:17:28,614 おさよちゃんは お兄さんが好きなんだね。 234 00:17:28,614 --> 00:17:31,951 えっ? どうして? 235 00:17:31,951 --> 00:17:38,824 だって 随分楽しそうに お兄さんの仕事着 洗濯してんだもん。 236 00:17:38,824 --> 00:17:42,662 そりゃあ たった一人のあんちゃんだから。 237 00:17:42,662 --> 00:17:46,299 (お常)あの男も もう少し 妹に優しくしてやりゃいいのにね。 238 00:17:46,299 --> 00:17:48,568 (笑い声) 239 00:17:58,311 --> 00:18:01,247 よう。 (たえ)何だい? 240 00:18:01,247 --> 00:18:05,084 あんた 何してる人だい? 241 00:18:05,084 --> 00:18:07,586 居酒屋で働いてたのさ。 242 00:18:07,586 --> 00:18:13,092 そしたら 自分が飲み過ぎちまって 体 壊してね…。 243 00:18:13,092 --> 00:18:19,398 分かるよ。 客の相手で飲まなきゃ いけない時だって あるんだろ。 244 00:18:19,398 --> 00:18:22,268 まあね…。 245 00:18:22,268 --> 00:18:27,139 ここを出たら あんたの店 行くよ。 246 00:18:27,139 --> 00:18:30,977 うれしいこと言ってくれるね。 247 00:18:30,977 --> 00:18:35,414 やっぱり 優しい人なんだね。 248 00:18:35,414 --> 00:18:38,117 一目見れば分かるよ。 249 00:18:38,117 --> 00:18:44,090 悪ぶったって 本当は 優しい人だって。 250 00:18:45,858 --> 00:18:49,128 あんちゃん➡ 251 00:18:49,128 --> 00:18:52,798 仕事着 洗っておいたからね。 余計なことすんな。 252 00:18:52,798 --> 00:18:55,434 だって あんちゃん できないでしょ? 253 00:18:55,434 --> 00:19:00,139 俺はな ここを出たら この人に 仕事着 洗ってもらうからよ。 254 00:19:00,139 --> 00:19:02,108 えっ? 255 00:19:02,108 --> 00:19:05,945 ここに来た時から この人に ほれてたんだ。 256 00:19:05,945 --> 00:19:10,383 本当? 本当だとも。 257 00:19:10,383 --> 00:19:12,918 うれしい! 258 00:19:12,918 --> 00:19:16,389 (竹二郎)そういうこった。 だから お前は用なしだ。 259 00:19:16,389 --> 00:19:18,357 もう ここには来るな。 260 00:19:21,227 --> 00:19:24,263 分かった。 261 00:19:24,263 --> 00:19:38,277 ♬~ 262 00:19:38,277 --> 00:19:40,613 うん? 263 00:19:40,613 --> 00:19:51,957 ♬~ 264 00:19:51,957 --> 00:19:54,927 来ていたのか。 265 00:20:12,812 --> 00:20:15,448 何だ? 266 00:20:15,448 --> 00:20:21,320 ねえ さっきの話だけど ここ出たら 一緒になってくれるのかい? 267 00:20:21,320 --> 00:20:26,192 えっ ああ ああ…。 アハッ うれしい。 268 00:20:26,192 --> 00:20:30,362 どこで 所帯 持つ? あたし あんたのために働くよ。 269 00:20:32,031 --> 00:20:36,335 フン… 嘘だろ。 えっ。 270 00:20:36,335 --> 00:20:38,671 それくらい 分かるよ。 271 00:20:38,671 --> 00:20:42,174 こちとら 男にだまされるのには慣れてんだ。 272 00:20:42,174 --> 00:20:45,077 あんたが あたしなんかに 本気にほれるわけないってことぐらい➡ 273 00:20:45,077 --> 00:20:49,048 分かるよ。 妹を追い返すために言っただけだろ。 274 00:20:49,048 --> 00:20:51,851 分かったようなことを 言うんじゃねえよ…。 275 00:20:51,851 --> 00:20:55,488 あら 図星かい? 276 00:20:55,488 --> 00:21:00,192 まるで あんた 妹にほれてるみたいだね。 277 00:21:00,192 --> 00:21:02,161 何だと? 278 00:21:02,161 --> 00:21:05,164 気持ち悪い男だねえ。 279 00:21:05,164 --> 00:21:07,633 待て! いや~! 280 00:21:07,633 --> 00:21:10,436 俺のどこが 妹にほれてるっていうんだ! 281 00:21:10,436 --> 00:21:13,806 やめなさい!ええ! また お前か! いいかげんにしろ! 282 00:21:13,806 --> 00:21:17,309 やめんか! 283 00:21:17,309 --> 00:21:19,578 ちょっと来い。 284 00:21:24,984 --> 00:21:28,654 頼んだぞ。 行くぞ。 285 00:21:28,654 --> 00:21:30,689 あの たえという女はな➡ 286 00:21:30,689 --> 00:21:34,827 今まで 何度も男にだまされ 酒に溺れ➡ 287 00:21:34,827 --> 00:21:38,464 そのあげくに 体を壊して ここに運ばれた。 288 00:21:38,464 --> 00:21:42,334 これ以上 傷つけてはならん。 289 00:21:42,334 --> 00:21:46,172 すみません。 290 00:21:46,172 --> 00:21:54,680 お前 妹にほれてるみたいだと言われて 激高したな。 291 00:21:54,680 --> 00:21:57,183 なぜだ? 292 00:21:57,183 --> 00:21:59,952 妹との間に何があった? 293 00:22:02,788 --> 00:22:08,060 ほれていると言われたのは やはり図星なのか? 294 00:22:09,662 --> 00:22:14,133 たとえ その足の傷が治ったとしても➡ 295 00:22:14,133 --> 00:22:17,036 お前が 心に抱えてる傷が治らないかぎり➡ 296 00:22:17,036 --> 00:22:20,506 また 同じ過ちを繰り返すぞ。 297 00:22:23,442 --> 00:22:25,911 話してみろ。 298 00:22:28,314 --> 00:22:32,818 そのとおりです。 俺は…➡ 299 00:22:32,818 --> 00:22:37,456 俺は 妹にほれちまったんだ。 えっ。 300 00:22:37,456 --> 00:22:44,230 あいつの笑顔を見ていると 何だか たまらない気持ちになって…。 301 00:22:44,230 --> 00:22:48,200 こら。 うん うまい。 302 00:22:48,200 --> 00:22:51,003 よかった フフ。 303 00:22:51,003 --> 00:22:53,472 (笑い声) 304 00:22:53,472 --> 00:22:56,008 わっ! ねえ もう! 305 00:22:56,008 --> 00:22:58,978 もう あんちゃん やめてよ! 306 00:23:03,115 --> 00:23:06,285 よし。 フフフ…。 307 00:23:08,420 --> 00:23:11,957 すご~い きれい。 フフフ。 308 00:23:11,957 --> 00:23:15,227 見て きれい フフフ。 309 00:23:17,763 --> 00:23:23,435 いつからだ? 気付いた時には。 310 00:23:23,435 --> 00:23:26,639 それで苦しんでいたんだな。 311 00:23:26,639 --> 00:23:29,541 親父が死んでから➡ 312 00:23:29,541 --> 00:23:33,312 あの家には 俺とおさよの2人っきり。 313 00:23:33,312 --> 00:23:54,333 ♬~ 314 00:23:54,333 --> 00:23:58,837 (竹二郎)あの時 一歩間違えば 俺は…。➡ 315 00:23:58,837 --> 00:24:02,274 俺 自分が怖かった。➡ 316 00:24:02,274 --> 00:24:04,777 俺の中に魔物が住んでる。 317 00:24:04,777 --> 00:24:09,948 そう思ったら もう こいつと 一緒にいるわけにはいかない。 318 00:24:09,948 --> 00:24:15,754 それで家を出たのか? はい。 あいつから離れようと。 319 00:24:15,754 --> 00:24:18,123 離れようと? 320 00:24:18,123 --> 00:24:23,429 フン… それは嘘だな。 えっ? 321 00:24:23,429 --> 00:24:27,132 だったら なぜ騒ぎを起こす? 322 00:24:27,132 --> 00:24:29,168 お前が騒ぎを起こす度に➡ 323 00:24:29,168 --> 00:24:33,639 おさよは お前が迷惑をかけた相手に わびて回っている。 324 00:24:33,639 --> 00:24:37,443 もし 本当に おさよから離れたいのなら➡ 325 00:24:37,443 --> 00:24:41,413 どこか遠くへ行って おとなしくしていればいいだろう。 326 00:24:43,315 --> 00:24:45,284 どうなんだ? 327 00:24:48,987 --> 00:24:51,890 おっしゃるとおりです。 328 00:24:51,890 --> 00:24:55,327 俺は 外でぶらぶら暮らすうちに➡ 329 00:24:55,327 --> 00:24:58,497 おさよに 嫁入りの話があることを聞いたんです。 330 00:25:01,133 --> 00:25:04,937 おせっかいな長屋の大家が 間に入ってて➡ 331 00:25:04,937 --> 00:25:08,273 近所の左官で 英治ってやつです。 332 00:25:08,273 --> 00:25:11,944 腕もいいから かい性もあって➡ 333 00:25:11,944 --> 00:25:15,614 聞くと おさよも まんざらじゃねえ様子 だっていうじゃないですか。 334 00:25:15,614 --> 00:25:18,117 俺は…。 335 00:25:18,117 --> 00:25:21,587 その嫁入り話を 壊したくなったんだな。 336 00:25:25,791 --> 00:25:30,662 俺は… 俺は なんてやつだ。 337 00:25:30,662 --> 00:25:34,133 俺は 人でなしだ。 338 00:25:34,133 --> 00:25:40,305 人の思いは そう たやすく変えられるものじゃない。 339 00:25:42,808 --> 00:25:48,981 お前が おさよを恋しいという思いも どうにもならん。 340 00:25:48,981 --> 00:25:53,452 それを恥じることはない。 341 00:25:53,452 --> 00:26:03,262 ただ… ただな 妹であれ ほれた女であれ➡ 342 00:26:03,262 --> 00:26:12,237 いとしい者の幸せを願うことこそ まことの愛情というものじゃないのか? 343 00:26:15,107 --> 00:26:18,410 そのために 何ができるのか➡ 344 00:26:18,410 --> 00:26:22,114 自分は 何をなすべきなのか➡ 345 00:26:22,114 --> 00:26:25,384 それを よ~く考えろ。 346 00:26:33,292 --> 00:26:35,461 おい。 347 00:26:37,796 --> 00:26:40,065 (津川)失礼します。 348 00:26:42,668 --> 00:26:45,537 先生! おさよちゃんは➡ 349 00:26:45,537 --> 00:26:48,807 兄のそんな思いに 気付いているのでしょうか? 350 00:26:54,980 --> 00:27:00,786 え~ もっと遊びたい。 駄目 鬼が出ちまうよ。 351 00:27:00,786 --> 00:27:51,169 ♬~ 352 00:27:51,169 --> 00:27:54,439 英治さん…。 353 00:27:56,441 --> 00:27:59,411 どうしたの? 354 00:28:02,080 --> 00:28:07,953 養生所に行ったんだ。 竹二郎さんに会おうと思って…。 355 00:28:07,953 --> 00:28:11,790 でも 中には入れなかった。 356 00:28:11,790 --> 00:28:16,261 おさよちゃんが悲しい顔で出ていくのを 見ちまったから。 357 00:28:16,261 --> 00:28:19,598 俺は おじけづいて帰ってきちまった。 358 00:28:19,598 --> 00:28:24,102 全く 情けねえや。 359 00:28:24,102 --> 00:28:27,940 俺は… 俺は駄目な男だ。 360 00:28:27,940 --> 00:28:29,975 何が駄目なの? 361 00:28:29,975 --> 00:28:33,612 真面目に仕事して ちゃんと稼いで➡ 362 00:28:33,612 --> 00:28:37,482 英治さんは 立派よ。 363 00:28:37,482 --> 00:28:43,121 ありがとう おさよちゃん。 こんな俺を頼りにしてくれて。 364 00:28:43,121 --> 00:28:45,791 英治さん。 365 00:28:45,791 --> 00:28:49,127 俺は おさよちゃんと一緒になりたい。 366 00:28:49,127 --> 00:28:52,030 お前を幸せにしたい。 367 00:28:52,030 --> 00:28:54,800 でも あたしは…。 分かってる。 368 00:28:54,800 --> 00:28:56,735 あんちゃんが認めてくれたら➡ 369 00:28:56,735 --> 00:29:00,238 竹二郎さんが うんと言ってくれたら だろ。 370 00:29:00,238 --> 00:29:02,574 うん。 371 00:29:02,574 --> 00:29:08,046 うん。 今度こそ きちんと話すよ。 372 00:29:23,262 --> 00:29:25,931 どうだ? 373 00:29:25,931 --> 00:29:28,967 病は 落ち着きました。 374 00:29:28,967 --> 00:29:34,406 しかし 頭の方は まだ ぼんやりしたままのようです。 375 00:29:34,406 --> 00:29:36,575 そうか…。 376 00:29:49,421 --> 00:29:52,324 (お常)先生! 何だ? 377 00:29:52,324 --> 00:29:55,293 竹造さんが 妙な男が 玄関でうろうろしてるのを➡ 378 00:29:55,293 --> 00:29:59,965 捕まえたんです。 何? 379 00:29:59,965 --> 00:30:02,000 イテッ。 380 00:30:02,000 --> 00:30:06,138 あっ こいつ 昨日も うろうろして…。 うろうろなんかしてません。 381 00:30:06,138 --> 00:30:08,440 入るのを ちょっと迷っていただけです。 382 00:30:08,440 --> 00:30:11,209 この養生所に何の用だ? 383 00:30:14,313 --> 00:30:19,651 あの… 私 竹二郎さんにお話があって…。 384 00:30:19,651 --> 00:30:22,821 竹二郎に? 385 00:30:34,833 --> 00:30:38,670 で 俺に用って何だよ? 386 00:30:38,670 --> 00:30:42,174 あの… 俺は…。 387 00:30:42,174 --> 00:30:45,844 お願いです。 おさよさんを下さい。 388 00:30:45,844 --> 00:30:50,015 俺の許しなんかいらねえよ。 一緒になりたきゃなりゃいいじゃねえか。 389 00:30:50,015 --> 00:30:52,050 それが そうはいかないんです。 390 00:30:52,050 --> 00:30:54,486 おさよさんは お兄さんが認めてくれたら➡ 391 00:30:54,486 --> 00:30:58,190 俺とのことを考えてくれる そう言ったんです。 392 00:30:58,190 --> 00:31:00,659 お願いします! 393 00:31:02,627 --> 00:31:06,965 お前 おさよの どこにほれたんだ? 394 00:31:06,965 --> 00:31:09,434 おさよさんといると ホッとするんです。 395 00:31:09,434 --> 00:31:12,304 仕事で疲れた時も おさよさんの笑顔を見ると➡ 396 00:31:12,304 --> 00:31:15,974 いっぺんに疲れが吹き飛んで。 397 00:31:15,974 --> 00:31:21,780 あの…。 お前 おさよを幸せにできんのか? 398 00:31:21,780 --> 00:31:25,650 も… もちろんです。 一生 おさよさんに苦労はさせません。 399 00:31:25,650 --> 00:31:28,687 ヘッ 分かるもんかい。 400 00:31:28,687 --> 00:31:30,822 おさよさんが ずっと 笑顔でいられたのは➡ 401 00:31:30,822 --> 00:31:33,658 お兄さんの… あなたのおかげです。 402 00:31:33,658 --> 00:31:36,461 あなたに負けないように その…。 俺は関わりねえだろ! 403 00:31:36,461 --> 00:31:41,333 だって あなたは 血のつながりのない 妹の幸せを そこまで…。 404 00:31:41,333 --> 00:31:45,170 ちょっと待て。 えっ? 405 00:31:45,170 --> 00:31:47,205 血のつながりがねえだと? 406 00:31:47,205 --> 00:31:50,976 す… すいません。 決して言うなって口止めされていたのに。 407 00:31:50,976 --> 00:31:53,345 いいかげんなことを言うんじゃねえぞ! 408 00:31:53,345 --> 00:31:57,349 おい 竹二郎。 やめろ! 409 00:31:57,349 --> 00:32:00,152 落ち着け。 410 00:32:00,152 --> 00:32:03,989 血のつながりがないというのは どういうことだ? 411 00:32:03,989 --> 00:32:09,795 おさよさんは 赤ん坊の頃に 拾われた子だって聞きました。 412 00:32:09,795 --> 00:32:14,132 (赤ん坊の泣き声) 413 00:32:14,132 --> 00:32:16,067 (英治)寺の前に捨てられていた赤ん坊を➡ 414 00:32:16,067 --> 00:32:18,737 あなたの両親が引き取って…。 415 00:32:20,438 --> 00:32:24,609 お帰り。 ほれ 風車。 416 00:32:26,978 --> 00:32:29,648 誰から聞いたんだ? 417 00:32:29,648 --> 00:32:32,551 (英治)大家のおかみさんからです。 418 00:32:32,551 --> 00:32:36,421 おさよは このことを知っているのか? 419 00:32:36,421 --> 00:32:42,327 はい。 話を聞いた時 おさよさんも一緒でしたから。 420 00:32:42,327 --> 00:32:47,999 竹二郎とおさよには 血のつながりがないんだよ。 421 00:32:47,999 --> 00:32:53,472 なのに おさよは 実の兄のように慕って…。 422 00:32:55,874 --> 00:33:01,947 あたしとあんちゃんは 血のつながりがあろうとなかろうと➡ 423 00:33:01,947 --> 00:33:06,284 一緒に育った きょうだいです。 424 00:33:06,284 --> 00:33:09,754 あんちゃんは あんちゃんです。 425 00:33:12,090 --> 00:33:19,364 それは 本当なのか? はい。 426 00:33:22,734 --> 00:33:26,905 竹二郎さん お兄さん。 きっと おさよさんを幸せにします! 427 00:33:44,823 --> 00:33:48,660 聞きました。 これは どういうことになるんですか? 428 00:33:48,660 --> 00:33:52,831 どうって… まあ 竹二郎は うれしいだろう。 429 00:33:52,831 --> 00:33:55,166 血のつながりがないってことは➡ 430 00:33:55,166 --> 00:33:58,003 晴れて おさよと一緒になれるってことだ。 431 00:33:58,003 --> 00:34:00,405 そうなるんでしょうか? 432 00:34:00,405 --> 00:34:03,608 違うのか? 433 00:34:03,608 --> 00:34:08,280 俺は そうあってほしいね。 434 00:34:14,953 --> 00:34:17,856 あ~ よかったな。 435 00:34:17,856 --> 00:34:21,726 これで お前の悩みはなくなった。 436 00:34:21,726 --> 00:34:24,963 お前が おさよに寄せている思いは➡ 437 00:34:24,963 --> 00:34:30,135 血のつながりがないならば 至極当然のことだ。 438 00:34:30,135 --> 00:34:35,807 ただな おさよが なぜ今まで このことを言えなかったのか➡ 439 00:34:35,807 --> 00:34:40,445 お前は分かるか? いえ…。 440 00:34:40,445 --> 00:34:46,151 恐らく おさよは お前の思いに気付いていたんだ。 441 00:34:46,151 --> 00:34:50,021 だから 言えなかった。 えっ? 442 00:34:50,021 --> 00:34:53,658 男としてのお前を 受け入れなければ➡ 443 00:34:53,658 --> 00:34:57,996 兄としてのお前も 失うことになる。 444 00:34:57,996 --> 00:35:00,899 おさよは 苦しんだはずだ。 445 00:35:00,899 --> 00:35:06,404 お前以上に苦しんだかもしれん。 446 00:35:06,404 --> 00:35:09,608 俺は どうすれば…。 447 00:35:09,608 --> 00:35:14,879 それは お前が決めることだ。 448 00:35:28,626 --> 00:35:30,895 あんちゃん…。 449 00:35:35,800 --> 00:35:38,136 あんちゃん…! 450 00:35:38,136 --> 00:35:59,824 ♬~ 451 00:35:59,824 --> 00:36:04,596 <翌日 おさよがやって来た> 452 00:36:16,107 --> 00:36:20,779 何だ? 話があるんじゃねえのか? 453 00:36:20,779 --> 00:36:25,116 (おさよ)昨日 英治さんが来たんだって? 454 00:36:25,116 --> 00:36:30,922 (竹二郎) おう… あいつは 何か言ってたか? 455 00:36:30,922 --> 00:36:37,128 帰ってきて やっぱり あんちゃんに 許してもらえなかったって➡ 456 00:36:37,128 --> 00:36:39,631 それだけ。 457 00:36:39,631 --> 00:36:45,136 ハハハ…。 俺は知らなくてよ。 458 00:36:45,136 --> 00:36:48,640 俺たちの間に 血のつながりがなかったなんて。 459 00:36:48,640 --> 00:36:54,312 あの男から聞くなんて 全く まぬけな話だ。 460 00:36:54,312 --> 00:36:59,818 あたしも 知った時は驚いた。 461 00:36:59,818 --> 00:37:03,588 いつ知ったんだ? 462 00:37:03,588 --> 00:37:08,393 お父っつぁんが亡くなって 人別帳を見た時に知ったの。 463 00:37:08,393 --> 00:37:13,932 それで 大家さんに 何があったのか教えてくれって頼んだの。 464 00:37:13,932 --> 00:37:17,602 1年前か 何で黙ってたんだ! 465 00:37:17,602 --> 00:37:24,776 言うと あんちゃんと 一緒にいられなくなる気がして…。 466 00:37:28,780 --> 00:37:35,954 あんちゃん。 あたし 血がつながってなくても➡ 467 00:37:35,954 --> 00:37:38,990 あんちゃんと2人で幸せだった。 468 00:37:38,990 --> 00:37:41,292 お父っつぁんと おっ母さんが死んでも➡ 469 00:37:41,292 --> 00:37:46,431 あんちゃんが いてくれるから ちっとも寂しくなかった。 470 00:37:46,431 --> 00:37:48,900 でも…。 471 00:38:06,384 --> 00:38:09,854 あんちゃん あの時…。 472 00:38:15,593 --> 00:38:22,767 あたしは その思いには こたえられない。 473 00:38:22,767 --> 00:38:28,106 でも拒んだら あんちゃんを失って 一人っきりになってしまう。 474 00:38:28,106 --> 00:38:31,142 だから あたしは…! やめてくれ 気持ち悪い。 475 00:38:31,142 --> 00:38:38,116 何 勘違いしてんだよ。 俺はな おめえの兄貴だぞ。➡ 476 00:38:38,116 --> 00:38:42,420 それ以上でも それ以下でもねえよ。 477 00:38:42,420 --> 00:38:46,291 あんちゃん…。 478 00:38:46,291 --> 00:38:50,962 祝言は いつにするんだ? 479 00:38:50,962 --> 00:38:56,634 えっ? 今度の嫁入りの話 進めようじゃねえか。 480 00:38:59,304 --> 00:39:04,075 あの英治って野郎 ちょっと頼りねえところもあるが➡ 481 00:39:04,075 --> 00:39:07,111 まあ いいやつじゃねえか。➡ 482 00:39:07,111 --> 00:39:09,881 左官の腕も確かだし。➡ 483 00:39:09,881 --> 00:39:14,252 何より おめえにほれてやがる。➡ 484 00:39:14,252 --> 00:39:19,023 おめえのことを幸せにしてくれるだろう。 485 00:39:21,125 --> 00:39:25,863 あんちゃん…。 486 00:39:25,863 --> 00:39:31,269 おさよ…➡ 487 00:39:31,269 --> 00:39:33,938 幸せになるんだぞ。 488 00:39:38,776 --> 00:39:42,413 うん。 489 00:39:42,413 --> 00:39:46,084 (竹二郎)おめえ 何 泣いてんだよ。 490 00:39:49,287 --> 00:39:53,625 これからも ずっと…➡ 491 00:39:53,625 --> 00:39:57,095 あたしのあんちゃんでいてね。 492 00:40:03,968 --> 00:40:06,871 そうか。 493 00:40:06,871 --> 00:40:12,143 竹二郎は なぜ…。 494 00:40:12,143 --> 00:40:18,316 人は 常に何かを選んで生きている。 495 00:40:18,316 --> 00:40:21,152 正しい道を選ぶこともあれば➡ 496 00:40:21,152 --> 00:40:27,458 欲に負けて 間違った道を選ぶこともある。 497 00:40:27,458 --> 00:40:33,831 竹二郎は おさよの兄として生きていこうと決めた。 498 00:40:33,831 --> 00:40:41,339 人として それが正しい道だと思い それを選んだんだ。 499 00:40:41,339 --> 00:40:44,008 ただ それだけのことだ。 500 00:40:53,351 --> 00:40:57,221 うん 随分 よくなったようだな。 501 00:40:57,221 --> 00:40:59,691 はい。 502 00:40:59,691 --> 00:41:02,961 ゆっくり養生しろよ。 503 00:41:08,399 --> 00:41:11,169 先生。 504 00:41:15,173 --> 00:41:34,826 ♬~ 505 00:41:34,826 --> 00:41:39,697 話とは何だ? 506 00:41:39,697 --> 00:41:46,170 私 随分 頭がはっきりしてきて➡ 507 00:41:46,170 --> 00:41:49,474 いろいろなことを思い出したんです。 508 00:41:49,474 --> 00:41:57,248 えっ。いえ 思い出したことと 思い出せないことと。 509 00:42:00,017 --> 00:42:05,623 まず 思い出したことをお話しします。 510 00:42:05,623 --> 00:42:10,895 分かった。 話してみろ。 511 00:42:14,132 --> 00:42:17,802 <一体 何を話そうというのか?➡ 512 00:42:17,802 --> 00:42:23,775 私には 去定先生が 少し震えているように見えた> 513 00:42:25,977 --> 00:42:29,313 ここで働いてみないか? えっ? 514 00:42:29,313 --> 00:42:31,649 飢えて死ぬつもりだったのか? 515 00:42:31,649 --> 00:42:36,320 嫁ぎ先を追い出されてからは 世捨て人のような暮らしぶりだったと。 516 00:42:36,320 --> 00:42:39,323 誰か いなさるんですか? 517 00:42:39,323 --> 00:42:42,126 あの方のお世話を させていただきたいのです。 518 00:42:42,126 --> 00:42:44,829 お菊を家から追い出したのは お静ということか。 519 00:42:44,829 --> 00:42:48,466 お前の顔なんか もう二度と 見たくないんだよ。 おっ母さん! 520 00:42:48,466 --> 00:42:50,835 お菊は お静に害をなすつもりで。 521 00:42:50,835 --> 00:42:55,006 なぜ そのような苦しい行いを続けるんだ?