1 00:00:02,202 --> 00:00:04,137 お帰りやす。お帰りやす。 2 00:00:04,137 --> 00:00:07,774 (一同)お帰りやす。 (菊栄)ただいま 戻りました。 3 00:00:07,774 --> 00:00:11,411 <徳兵衛との祝言から半月が過ぎて…➡ 4 00:00:11,411 --> 00:00:14,314 初めての実家帰りを終えた菊栄が➡ 5 00:00:14,314 --> 00:00:17,217 五鈴屋に 戻ってきました> 6 00:00:17,217 --> 00:00:19,152 (幸)お実家は どないだした? 7 00:00:19,152 --> 00:00:23,624 早う ややこ産めて さんざん言われましたわ。 8 00:00:23,624 --> 00:00:27,961 ご寮さんは ややこ産んで一人前やて。 9 00:00:27,961 --> 00:00:31,798 はあ 難儀やなあ。 10 00:00:31,798 --> 00:00:37,304 けど 好物のお魚 たんと食べさせてもらいましたで。 11 00:00:37,304 --> 00:00:41,808 イワシに サバに 甘辛う煮つけたタチウオ。 12 00:00:41,808 --> 00:00:44,645 おいしそう。 13 00:00:44,645 --> 00:00:48,515 幸も お魚好きか? へえ 大好きだす! 14 00:00:48,515 --> 00:00:52,319 めったに 御膳に上がりまへんけど。 15 00:00:52,319 --> 00:00:59,660 ほな なんとかしまひょか。 えっ? 16 00:00:59,660 --> 00:01:11,672 ♬~ 17 00:01:13,273 --> 00:01:16,610 (富久)紅屋の皆さん お変わりござりまへんだしたか? 18 00:01:16,610 --> 00:01:20,113 へえ。 おかげさんで 皆 達者だす。 19 00:01:20,113 --> 00:01:23,150 (富久)ご商売も繁盛なようで 何よりや。 20 00:01:23,150 --> 00:01:27,354 ほな 頂きまひょ。 21 00:01:34,127 --> 00:01:40,801 お家さん 船場では 月に二度 御膳にお魚つけますのやけど➡ 22 00:01:40,801 --> 00:01:42,736 天満では どないしてはります? 23 00:01:42,736 --> 00:01:50,444 お魚は 祭りの時だけだすなあ。 (菊栄)そら さびしごわすなあ。 24 00:01:50,444 --> 00:01:56,149 どないだすやろ。 毎月 一日と十五日には➡ 25 00:01:56,149 --> 00:02:00,921 昼の御膳に お魚つけることにしては? (惣次)ぜいたくや。 26 00:02:00,921 --> 00:02:07,394 ここは船場と ちゃいますで。 (徳兵衛)いや ええ考えやないか。➡ 27 00:02:07,394 --> 00:02:10,764 奉公人には 精出して働いてもらわんならん。 28 00:02:10,764 --> 00:02:13,800 月二度の魚が 励みになるなら それもええやろ。 29 00:02:13,800 --> 00:02:19,272 徳兵衛… あんたが 奉公人の気持ち考えるやなんて…。 30 00:02:19,272 --> 00:02:24,945 五鈴屋の主として 奥向きにも 船場の風 入れたろて思ただけだす。 31 00:02:24,945 --> 00:02:27,614 そない湯水のように金使われたら➡ 32 00:02:27,614 --> 00:02:31,418 わてが どんだけ反物売り歩いたかて 足らへんがな。 33 00:02:31,418 --> 00:02:34,955 (徳兵衛) お前はん 口の利き方に気ぃ付けや。 34 00:02:34,955 --> 00:02:37,791 なんぼ わてや菊栄のことが 気に入らんかてな➡ 35 00:02:37,791 --> 00:02:41,428 辛抱して ここで働かんならんのやさかい。 36 00:02:41,428 --> 00:02:44,131 いつまでも あんたの下にはおらん。 37 00:02:44,131 --> 00:02:47,801 (徳兵衛)ふん 分家する気ぃなら 当分 無理だすで。 38 00:02:47,801 --> 00:02:50,837 徳兵衛 その話は…。 分家さすにも 金かかりますやろ。 39 00:02:50,837 --> 00:02:54,141 五鈴屋に そんな蓄えおますかいな。➡ 40 00:02:54,141 --> 00:02:57,811 たまるまで まあ 三年はかかりますやろな。 41 00:02:57,811 --> 00:03:00,714 何やて。 (徳兵衛)辛抱でけん言うなら➡ 42 00:03:00,714 --> 00:03:03,083 今すぐ出てってもろても 構へんのやで。 43 00:03:03,083 --> 00:03:06,386 分家さす手間省けて 大助かりや。 44 00:03:06,386 --> 00:03:09,589 主面しくさって ようも言うたな! (智蔵)兄さん 手ぇ出したらあきまへん! 45 00:03:09,589 --> 00:03:12,392 何や! のけ! やめなはれ! 46 00:03:15,462 --> 00:03:19,099 奥で話しまひょ。 お竹どん 番頭さん呼んできて。 47 00:03:19,099 --> 00:03:21,101 (お竹)へえ。 48 00:03:25,405 --> 00:03:30,277 (治兵衛) 惣ぼん どうか こらえとくれやす。 49 00:03:30,277 --> 00:03:35,782 三年のうちに 分家の金は 必ず調えますよって。 50 00:03:37,617 --> 00:03:44,491 旦那さん 惣ぼんは 五鈴屋の稼ぎ頭だすで。 51 00:03:44,491 --> 00:03:49,963 今 惣ぼんに出ていかれたら のれん下ろさんなりまへん。 52 00:03:49,963 --> 00:03:55,435 どうか どうか 三年 三年 辛抱しとくなはれ。 53 00:03:55,435 --> 00:04:00,740 惣次 わてからも頼むわ。 五鈴屋を潰さんためや。 54 00:04:00,740 --> 00:04:05,912 ほな 証文書いてもらいまひょか。 (富久)証文? 55 00:04:05,912 --> 00:04:10,784 「三年後に分家さす。 たとえ 家屋敷をカタに入れても➡ 56 00:04:10,784 --> 00:04:17,624 その金 きっと作る」いう 約定の証文だすがな。 57 00:04:17,624 --> 00:04:23,330 わてが余計なこと言うたせいで けんかになってしもた。 58 00:04:23,330 --> 00:04:26,233 ご寮さんのせいと ちゃいます。 59 00:04:26,233 --> 00:04:30,103 もともと 不仲だすのや。 60 00:04:30,103 --> 00:04:34,407 智ぼんは 優しいなあ。 61 00:04:34,407 --> 00:04:38,278 わても悪いのや。 62 00:04:38,278 --> 00:04:44,417 商いに身ぃ入れへんさかい 惣次兄さんを怒らせてばっかりで。 63 00:04:44,417 --> 00:04:48,288 わては 生まれ損ないだすな。 64 00:04:48,288 --> 00:04:53,426 商いより 三度の飯より わては 本の方が好きなんだすわ。 65 00:04:53,426 --> 00:04:59,132 本? どんなん読まはるんだす? 66 00:04:59,132 --> 00:05:02,035 何でも。 67 00:05:02,035 --> 00:05:06,373 こんまい頃は 金時さんの絵草子 道中記➡ 68 00:05:06,373 --> 00:05:09,743 それから 近松の浄瑠璃本。 69 00:05:09,743 --> 00:05:13,580 今は 西鶴の浮世草子だすな。 70 00:05:13,580 --> 00:05:18,385 西鶴…。 何べん叱られても読みとうて。 71 00:05:18,385 --> 00:05:21,755 初めて会うた時も そやったな。 へえ。 72 00:05:21,755 --> 00:05:25,458 智ぼんさん 押し入れから飛び出てきはって。 73 00:05:28,261 --> 00:05:31,932 アホ! 押し入れは隠れて 本読むとことちゃうで。 74 00:05:31,932 --> 00:05:36,603 (笑い声) ほな 一緒やな。 75 00:05:36,603 --> 00:05:41,474 わても 隠れて昼寝してるとこ 幸に見つかったんだす。 76 00:05:41,474 --> 00:05:44,477 ご寮さんも? へえ。 フフッ。 77 00:05:46,780 --> 00:05:50,417 なあ 智ぼん。 へえ。 78 00:05:50,417 --> 00:05:55,121 生まれ損ないやなんて 思たらあきまへん。 79 00:05:55,121 --> 00:05:58,992 人は それぞれ 違てるもんや思います。 80 00:05:58,992 --> 00:06:01,728 商いには向いてへんでも➡ 81 00:06:01,728 --> 00:06:06,366 智ぼんには 智ぼんの 別の道があるはずや。 82 00:06:06,366 --> 00:06:09,169 別の道…。 へえ。 83 00:06:11,571 --> 00:06:15,075 お茶 冷めてしまいました。 熱いの入れ直しますよって。 84 00:06:15,075 --> 00:06:18,111 おおきに。 85 00:06:18,111 --> 00:06:24,751 <さりげなく智蔵を励ます菊栄が 幸には 頼もしく思えました> 86 00:06:24,751 --> 00:06:27,754 ホンマだすか? ええ。 87 00:06:29,623 --> 00:06:34,461 証文 確かに受け取りました。 88 00:06:34,461 --> 00:06:38,265 三年は あんさんの下で 働かせてもらうわ。 89 00:06:38,265 --> 00:06:44,271 けど 言うとくで。 (徳兵衛)な… 何や? 90 00:06:49,409 --> 00:06:54,114 分家させてもろたら あんたの五鈴屋は➡ 91 00:06:54,114 --> 00:06:58,285 わての手ぇで きっと潰したる。 92 00:06:58,285 --> 00:07:00,287 惣次…。 93 00:07:10,563 --> 00:07:15,368 <師走に入ると 天満の町は にわかに慌ただしくなります> 94 00:07:15,368 --> 00:07:18,271 いて参じます! いて参じます! 95 00:07:18,271 --> 00:07:22,075 <このころの商いは 商品を先に渡し➡ 96 00:07:22,075 --> 00:07:27,747 代金は 盆暮れにまとめて集金する 掛け売りが主流でした。➡ 97 00:07:27,747 --> 00:07:29,783 師走の大節季ともなると➡ 98 00:07:29,783 --> 00:07:34,521 商家は 一年分の掛け金の回収に 追われるのです> 99 00:07:34,521 --> 00:07:38,458 師走も十日やのに これしか取れてへんのかいな。 100 00:07:38,458 --> 00:07:41,094 あんたら 何年 手代やってますのや! 101 00:07:41,094 --> 00:07:43,596 (鉄七)ホンマに すんまへん! (一同)すんまへん! 102 00:07:43,596 --> 00:07:45,632 どうも すんまへん! すんまへん! 103 00:07:45,632 --> 00:07:47,934 ええかげんにしいや! (一同)すんまへん! 104 00:07:47,934 --> 00:07:49,869 何べん言うたら分かるんや! (一同)すんまへん! 105 00:07:49,869 --> 00:07:55,608 (お梅)おお 怖っ。 今朝は一段と ご機嫌斜めだすな。 106 00:07:55,608 --> 00:08:01,214 智ぼんでさえ 毎晩 遅うまで そろばん はじいてはるのに➡ 107 00:08:01,214 --> 00:08:05,051 肝心のお方が 何もせえへんさかい。 108 00:08:05,051 --> 00:08:11,057 惣ぼんと 旦那さん 目ぇも合わさん。 まるで敵同士や。 109 00:08:15,228 --> 00:08:17,731 (お杉)ええご身分やな。➡ 110 00:08:17,731 --> 00:08:21,901 みんなが血眼になって 駆けずり回ってる時に。 111 00:08:21,901 --> 00:08:26,373 旦那さんは 商いがお嫌いなんやろか。 112 00:08:26,373 --> 00:08:28,908 あの人が好きなんは 色事だけや。 113 00:08:28,908 --> 00:08:34,080 惣ぼんと 旦那さん 生まれる順番 逆やったらよかったのに。 114 00:08:34,080 --> 00:08:36,583 お杉どん…。 115 00:08:36,583 --> 00:08:40,253 おおっ 寒っ。 116 00:08:40,253 --> 00:08:42,922 早う干し。 雪降るかもしれんで。 117 00:08:42,922 --> 00:08:46,259 へえ。 118 00:08:46,259 --> 00:08:52,565 (徳兵衛)あ~ 寒い。 (障子が閉まる音) 119 00:09:00,540 --> 00:09:02,742 これで よろしいか? 120 00:09:05,712 --> 00:09:09,582 ⚟(鐘の音) 121 00:09:09,582 --> 00:09:14,220 惣ぼん そろそろ…。 122 00:09:14,220 --> 00:09:20,727 もうそんな時刻かいな。 うどん屋 今日は誰を連れていく番や? 123 00:09:20,727 --> 00:09:27,500 安吉も辰吉も済んだし… あとは 幸でんな。 124 00:09:27,500 --> 00:09:29,436 幸か…。 125 00:09:29,436 --> 00:09:34,741 おお~ 寒っ。 外 雪降りだしよりましたで。 126 00:09:34,741 --> 00:09:40,246 なら 明日にしまひょ。 まだ帳面も つけ終わらん。 127 00:09:40,246 --> 00:09:42,916 ほんなら わてが行きまひょか? 128 00:09:42,916 --> 00:09:46,786 楽しみにしてるのに お預けは かわいそうだす。 129 00:09:46,786 --> 00:09:49,789 ほな 任すわ。 へえ。 130 00:10:01,267 --> 00:10:03,269 はあ~。 131 00:10:05,271 --> 00:10:07,607 そこにおったら ぬれますで。 132 00:10:07,607 --> 00:10:11,111 こっち来なはれ。 へえ。 133 00:10:11,111 --> 00:10:14,414 滑らんよう 足元 気ぃ付けや。 へえ。 134 00:10:19,786 --> 00:10:24,624 <いてつく師走 奉公人たちの唯一の慰めは➡ 135 00:10:24,624 --> 00:10:28,795 交代で食べに行く 屋台のうどんでした> 136 00:10:28,795 --> 00:10:32,499 雪やなあ。 へえ。 137 00:10:34,134 --> 00:10:39,439 幸と二人 まるで「曽根崎心中」や。 138 00:10:39,439 --> 00:10:44,144 それ 何だす? ん? 人形浄瑠璃や。 139 00:10:46,646 --> 00:10:53,319 「この世も名残り 夜も名残り 死にに行く身をたとうれば➡ 140 00:10:53,319 --> 00:10:56,823 あだしが原の道の霜」…。 141 00:10:58,992 --> 00:11:04,297 「ひと足づつに消えて行く 夢の夢こそ あわれなれ」…。 142 00:11:08,801 --> 00:11:11,404 どないした? 143 00:11:11,404 --> 00:11:16,276 何や 胸に じんと来てしもて。 144 00:11:16,276 --> 00:11:19,779 そうか。 145 00:11:19,779 --> 00:11:27,287 これ 近松門左衛門いう人が 三十年も昔に書いた 浄瑠璃なんだす。 146 00:11:27,287 --> 00:11:32,125 それが今でも 幸の心に響くのや。 147 00:11:32,125 --> 00:11:51,511 ♬~ 148 00:11:51,511 --> 00:11:55,148 さっきは 近松の浄瑠璃やったけど➡ 149 00:11:55,148 --> 00:12:01,387 こないして うどんすすってるとこは 井原西鶴の浮世草子やな。 150 00:12:01,387 --> 00:12:05,925 浮世草子て どんな話だす? 151 00:12:05,925 --> 00:12:09,796 そやなあ…。 152 00:12:09,796 --> 00:12:14,400 わてらと同じような弱い人間が➡ 153 00:12:14,400 --> 00:12:19,706 生きにくい この世を 寄り添うて渡ってく そんな話や。 154 00:12:24,077 --> 00:12:28,781 智ぼんさんは 浮世草子を書かはるんだすか? 155 00:12:30,783 --> 00:12:36,489 西鶴さんのような話を書きとうて 何べんも読んではるんと違うんだすか? 156 00:12:39,959 --> 00:12:42,996 あの…。 157 00:12:42,996 --> 00:12:47,634 そやな…。 158 00:12:47,634 --> 00:12:50,436 ホンマは そうなんや。 159 00:12:56,142 --> 00:13:00,913 幸は どうや? 商いが好きなんか? えっ? 160 00:13:00,913 --> 00:13:05,385 「商売往来」学んで いつかは 商いをやりたいんか? 161 00:13:05,385 --> 00:13:12,258 私は… 新しいこと知るんが 楽しいんだす。 162 00:13:12,258 --> 00:13:15,595 番頭さんの商いの話が面白うて➡ 163 00:13:15,595 --> 00:13:19,098 その先も もっと先も 知りとうなる。 164 00:13:21,100 --> 00:13:25,304 けど 女衆は…。 165 00:13:36,949 --> 00:13:41,821 さあ 早う食べまひょ。 熱いうちにおあがり。 166 00:13:41,821 --> 00:13:44,023 へえ。 167 00:13:47,126 --> 00:13:52,932 <女衆は 一生 鍋の底を磨いて暮らすだけ。➡ 168 00:13:52,932 --> 00:13:57,937 その言葉を 幸は口にできませんでした> 169 00:14:09,382 --> 00:14:13,586 お出かけだすか? お寺さんに。 170 00:14:13,586 --> 00:14:17,390 先代の命日が近いさかいな。 171 00:14:17,390 --> 00:14:22,762 はあ~。 もう 十八年たつんだすなあ。 172 00:14:22,762 --> 00:14:27,266 夫婦そろて はやり病で逝ってしもて…。 173 00:14:27,266 --> 00:14:34,140 二親のない孫たちが ふびんで ついつい 甘やかしてしもたんやなあ。 174 00:14:34,140 --> 00:14:37,777 徳兵衛と惣次は いがみ合うてばっかりやし➡ 175 00:14:37,777 --> 00:14:42,281 智蔵は 商いに見向きもせん。 176 00:14:42,281 --> 00:14:45,184 (お竹)あの お家さん。 177 00:14:45,184 --> 00:14:48,154 智ぼんさん 変わらはりましたで。 178 00:14:48,154 --> 00:14:52,291 夜遅うまで 次の間に籠もってはるんだす。➡ 179 00:14:52,291 --> 00:14:55,628 「商いの覚え書き作る」言わはって。 180 00:14:55,628 --> 00:15:00,233 ほな やっと 商いに身ぃ入れる気になったんやな。 181 00:15:00,233 --> 00:15:06,906 あの子は 優しいさかい 徳兵衛とも あんじょうやってくれるやろ。 182 00:15:06,906 --> 00:15:08,908 へえ。 183 00:15:19,619 --> 00:15:24,323 (治兵衛)水 一杯くれるか? 184 00:15:24,323 --> 00:15:27,593 幸? へえ。 あっ すんまへん。 185 00:15:27,593 --> 00:15:29,796 あっ み… 水だすな。 186 00:15:31,764 --> 00:15:34,600 豆が どうかしたんか? すんまへん。 187 00:15:34,600 --> 00:15:37,804 その文字 何やろて つい気ぃ取られてしもて。 188 00:15:40,273 --> 00:15:46,078 ああ これは 預かり手形のことやな。 うん。 189 00:15:46,078 --> 00:15:50,917 手形て何だす? 「商売往来」では習てまへんけど。 190 00:15:50,917 --> 00:15:56,122 値ぇの張る売り買いするのに 銀のやり取りは 重うて骨だっしゃろ。 191 00:15:56,122 --> 00:15:59,425 せやさかい 銀は両替商に預けて➡ 192 00:15:59,425 --> 00:16:02,728 手形いう預かり証を 書いてもらうんだす。 193 00:16:02,728 --> 00:16:06,365 証文の紙が 銀の代わり? 194 00:16:06,365 --> 00:16:08,434 もろた方は どないするんだす? 195 00:16:08,434 --> 00:16:14,240 今から その両替商 行かんならん。 続きは また後でな。 196 00:16:14,240 --> 00:16:16,242 へえ。 197 00:16:20,246 --> 00:16:22,949 手形て 面白い…。 198 00:16:25,918 --> 00:16:29,255 (お杉)惣ぼんさん。 何や? 199 00:16:29,255 --> 00:16:34,126 あの… これ 何だすやろ? 200 00:16:34,126 --> 00:16:37,830 今朝 中庭で拾たんだすけど。 201 00:16:40,766 --> 00:16:42,768 これは…。 202 00:16:46,272 --> 00:16:48,274 ⚟このアホんだら! 203 00:16:50,776 --> 00:16:52,712 うっ! 智ぼんさん! 204 00:16:52,712 --> 00:16:56,415 血… 血! 夜なべ仕事のふりして➡ 205 00:16:56,415 --> 00:17:00,219 つまらん草子なんぞ 書きくさって! 206 00:17:00,219 --> 00:17:03,122 あっ! 207 00:17:03,122 --> 00:17:06,092 わしが 下げとうもない 頭下げて➡ 208 00:17:06,092 --> 00:17:09,562 地をはう思いで 一反一反 売り歩いてる間に➡ 209 00:17:09,562 --> 00:17:12,265 お前は 何してんのや! 210 00:17:14,066 --> 00:17:17,904 やめとくなはれ! 智ぼんさんが死んでしまう!のけ! 211 00:17:17,904 --> 00:17:20,373 何の騒ぎだす? 212 00:17:20,373 --> 00:17:22,875 何がおましたんや。 213 00:17:26,913 --> 00:17:30,783 そない商いが嫌なら 五鈴屋から出ていけ! 214 00:17:30,783 --> 00:17:34,253 何が悲しゅうて 穀潰し二人も養わんならんのや。 215 00:17:34,253 --> 00:17:38,090 (菊栄)惣ぼん あんまりだす! ええんだす。 216 00:17:38,090 --> 00:17:40,893 兄さんの言うとおりや。 217 00:17:48,601 --> 00:17:55,474 だまして すんまへんだした。 堪忍してください。 218 00:17:55,474 --> 00:18:02,548 けど… 商いより本が好きやいう気持ちは➡ 219 00:18:02,548 --> 00:18:05,551 どないしても変えられまへんのや。 220 00:18:07,420 --> 00:18:11,123 長いこと 世話かけました。 221 00:18:16,562 --> 00:18:19,899 出ていかしてもらいます。 何? 222 00:18:19,899 --> 00:18:23,569 あきまへん。 こないに血ぃ出てんのに。 223 00:18:23,569 --> 00:18:25,771 だんない。 224 00:18:27,907 --> 00:18:29,942 ああっ 動いたらあきまへん! 225 00:18:29,942 --> 00:18:34,080 智ぼん 待ちなはれ。 お家さんも番頭さんも 留守や。 226 00:18:34,080 --> 00:18:38,250 せめて お戻りになってから…。 227 00:18:38,250 --> 00:18:43,389 合わせる顔 おまへんさかい。 228 00:18:43,389 --> 00:18:47,593 分かった…。 ほな とっとと いになはれ。 229 00:18:53,065 --> 00:18:57,770 いぬんやったら 二度と戻てきなや。 230 00:18:59,839 --> 00:19:06,045 ほんなら 幸 そこまで 肩貸してくれるか? 231 00:19:17,556 --> 00:19:19,558 智ぼん…。 232 00:19:21,427 --> 00:19:24,730 悪いのは 智ぼんや…。 233 00:19:26,732 --> 00:19:30,036 何で… あんまりだす。 234 00:19:31,904 --> 00:19:35,574 ええのや。 235 00:19:35,574 --> 00:19:38,911 ホンマのことを言うとな➡ 236 00:19:38,911 --> 00:19:45,584 家を出るふんぎりが欲しいて わざと反故を捨てたんだす。 237 00:19:45,584 --> 00:19:47,520 えっ…。 238 00:19:47,520 --> 00:19:51,824 雪の日に 二人で うどん食べたやろ。 239 00:19:53,926 --> 00:19:58,230 あの晩 よう分かったんや。 240 00:20:00,099 --> 00:20:05,404 わての望みは 西鶴のように➡ 241 00:20:05,404 --> 00:20:10,209 本を書いて 生きていくことなんやて。 242 00:20:18,617 --> 00:20:21,954 おおきに。 もう ここでええわ。 243 00:20:21,954 --> 00:20:32,598 ♬~ 244 00:20:32,598 --> 00:20:38,104 わて… ずるいこと考えてましたんや。 245 00:20:40,306 --> 00:20:45,811 分家してもらうまで 五鈴屋におろうか。 246 00:20:45,811 --> 00:20:49,982 分家が かのうたら➡ 247 00:20:49,982 --> 00:20:53,452 幸を嫁さんにもろて…➡ 248 00:20:53,452 --> 00:20:55,988 商いは 幸に任せて➡ 249 00:20:55,988 --> 00:21:02,495 わては 好きな話書いて 生きていけんのやないかて。 250 00:21:04,263 --> 00:21:08,934 ホンマに アホで笑てまうやろ。 251 00:21:08,934 --> 00:21:13,806 そんな顔せんと 笑とくれやす。 252 00:21:13,806 --> 00:21:19,512 わては 幸の笑うた顔が 大好きなんや。 253 00:21:24,116 --> 00:21:26,418 これきりだすか? 254 00:21:26,418 --> 00:21:30,923 もう戻ってきはらへんのだすか? 255 00:21:38,998 --> 00:21:43,803 商い しっかり学びなはれや。 256 00:21:43,803 --> 00:21:45,738 あんさんの名は➡ 257 00:21:45,738 --> 00:21:50,442 「買うての幸い 売っての幸せ」の 幸や。 258 00:21:54,313 --> 00:21:56,315 智ぼんさん! 259 00:22:00,586 --> 00:22:02,621 嫌や…。 260 00:22:02,621 --> 00:22:26,412 ♬~ 261 00:22:26,412 --> 00:22:28,781 (子供たち) ♬ 亥んの子、 亥んの子、 262 00:22:28,781 --> 00:22:31,417 ♬ 亥子餅は よいとこな 263 00:22:31,417 --> 00:22:38,290 <智蔵が五鈴屋を去って 一年半が過ぎた 秋のこと…> 264 00:22:38,290 --> 00:22:54,106 ♬~(子供たちの歌声) 265 00:22:58,310 --> 00:23:01,013 また おしろいつけて。 266 00:23:06,051 --> 00:23:09,755 (富久)徳兵衛は また外だすか? 267 00:23:09,755 --> 00:23:13,926 へえ。 寄り合いやそうだす。 268 00:23:13,926 --> 00:23:17,796 まあ つきあいもあるやろな。 269 00:23:17,796 --> 00:23:21,600 四代目のくるわ通いは 天満中のうわさだすで。 270 00:23:21,600 --> 00:23:24,270 船場の嬢さん 嫁にもろても➡ 271 00:23:24,270 --> 00:23:27,273 女遊びは 辛抱できんのやて。 272 00:23:27,273 --> 00:23:31,577 (富久)惣次。 ほな 頂きまひょ。 273 00:23:41,420 --> 00:23:46,292 平気な顔して よう食べられるもんだすなあ。 274 00:23:46,292 --> 00:23:52,631 へえ。 わて 結構 ずぶとおますさかい。 275 00:23:52,631 --> 00:23:57,803 あんさんは平気でも 五鈴屋の信用は がた落ちだすで。 276 00:23:57,803 --> 00:24:02,641 菊栄に文句言うことないやろ。 悪いのは徳兵衛や。 277 00:24:02,641 --> 00:24:07,613 徳兵衛には わてから きつう言うときます。 278 00:24:07,613 --> 00:24:13,585 あの子かて 今に子ぉができたら 性根が改まるはずや。➡ 279 00:24:13,585 --> 00:24:16,088 我が子に継がす店やと思たら➡ 280 00:24:16,088 --> 00:24:22,795 徳兵衛も目が覚めて 五鈴屋のために 精出して働くやろ。 281 00:24:27,099 --> 00:24:31,603 <徳兵衛と菊栄の仲人が 五鈴屋を訪ねてきたのは➡ 282 00:24:31,603 --> 00:24:34,640 その翌朝のことでした> 283 00:24:34,640 --> 00:24:39,278 旦那さん まだ戻らへんのかいな。 284 00:24:39,278 --> 00:24:42,781 くるわの囲い女郎に 血道を上げてるてうわさ➡ 285 00:24:42,781 --> 00:24:45,818 ホンマなんだすな。➡ 286 00:24:45,818 --> 00:24:49,288 紅屋さん カンカンだすで。➡ 287 00:24:49,288 --> 00:24:53,125 娘をないがしろにするとは どういう了見やて。 288 00:24:53,125 --> 00:24:55,060 お怒りは ごもっともだす。 289 00:24:55,060 --> 00:24:59,431 ああ ともかく 菊栄さんは いっぺん 実家に連れて帰りますわ。 290 00:24:59,431 --> 00:25:04,236 待っとくれやす。 徳兵衛が戻りましたら 申し開きさせますよって。 291 00:25:04,236 --> 00:25:09,908 どうぞ どうぞ もうしばらく 待っておくれやす。 292 00:25:09,908 --> 00:25:11,910 (仲人)はあ…。 293 00:25:13,579 --> 00:25:15,614 どんな様子や? 294 00:25:15,614 --> 00:25:21,253 仲人さん えらい剣幕だす。 ご寮さん 連れて帰るて。 295 00:25:21,253 --> 00:25:26,759 えっ! ほんで ご寮さん 何て? 296 00:25:26,759 --> 00:25:32,931 何も言わんと ただ座ってはるんだすわ。 297 00:25:32,931 --> 00:25:38,604 これは ひょっとしたら ひょっとするかもしれん。 298 00:25:38,604 --> 00:25:43,275 ひょっとするて? 離縁やろ。 299 00:25:43,275 --> 00:25:45,778 旦那さん 着物の襟裏に➡ 300 00:25:45,778 --> 00:25:48,113 べったり おしろいつけて 帰ってきはるんや。 301 00:25:48,113 --> 00:25:50,149 ご寮さんかて 愛想尽きるわ。 302 00:25:50,149 --> 00:25:54,620 (お梅)こうなると 子がおらんのが いっそ 幸いかもしれまへん。 303 00:25:54,620 --> 00:25:56,655 めったなこと 言いないな。 304 00:25:56,655 --> 00:25:59,458 離縁て まだ決まってへんで。 305 00:26:11,070 --> 00:26:13,906 お呼びでしょうか? 306 00:26:13,906 --> 00:26:21,780 幸 実家に顔出すことになったさかい 支度 手伝うて。 307 00:26:21,780 --> 00:26:23,782 へえ。 308 00:26:28,086 --> 00:26:32,391 幸には ホンマのこと言うとくわ。 309 00:26:34,860 --> 00:26:42,868 わて この家には 二度と戻らんつもりなんや。 310 00:26:45,637 --> 00:26:49,641 何でだす? あ… 愛想が尽きたんだすか? 311 00:26:55,180 --> 00:27:03,989 旦那さんとは どないしても 心が通わんかった。 312 00:27:08,560 --> 00:27:14,433 ゆうべ 「子ぉができたら旦那さんも変わる」て➡ 313 00:27:14,433 --> 00:27:18,570 お家さんに言われたやろ。 314 00:27:18,570 --> 00:27:22,074 子を産むことだけ望まれて➡ 315 00:27:22,074 --> 00:27:26,879 心の通わん人と生きていくのは しんどいわ。 316 00:27:33,785 --> 00:27:37,623 縁あって嫁いできて➡ 317 00:27:37,623 --> 00:27:41,827 ええご寮さんになろうと 努めてきたつもりや。 318 00:27:44,263 --> 00:27:49,968 けど… 気付いてしもた。 319 00:27:51,937 --> 00:27:58,443 わてには わての もっと別の道があるはずやて。 320 00:28:02,881 --> 00:28:08,687 ずっと おそばにいられるて思てました。 321 00:28:08,687 --> 00:28:13,058 ご寮さんまで出ていかはるなんて…。 322 00:28:13,058 --> 00:28:15,727 幸…。 323 00:28:15,727 --> 00:28:21,433 幸には ようしてもろたな。 324 00:28:26,371 --> 00:28:30,375 これ あんたに あげまひょ。 325 00:28:34,913 --> 00:28:39,618 あっ 甘い。おいしいな。 へえ。 326 00:28:41,687 --> 00:28:43,989 泣きなて。 327 00:28:46,391 --> 00:28:48,594 幸。 328 00:28:51,263 --> 00:28:57,769 なんぞ困ったことがあったら いつでも紅屋を訪ねておいで。 329 00:29:02,207 --> 00:29:05,877 ほなな。 330 00:29:05,877 --> 00:29:10,716 <その日 仲人と共に五鈴屋を出た菊栄は➡ 331 00:29:10,716 --> 00:29:14,219 そのまま離縁が決まり…。➡ 332 00:29:14,219 --> 00:29:20,726 菊栄を失った五鈴屋は まるで 火が消えたようでした。➡ 333 00:29:20,726 --> 00:29:22,661 そして…> 334 00:29:22,661 --> 00:29:26,164 三十五両 どないするつもりや? 335 00:29:29,067 --> 00:29:31,970 まさか持参金まで使い込むとは…。 336 00:29:31,970 --> 00:29:34,873 離縁したら返さんならんことくらい 分かってたやろ。 337 00:29:34,873 --> 00:29:38,377 わてだけが使たんやない。 菊栄は勝手に いんだんやさかい➡ 338 00:29:38,377 --> 00:29:41,913 わてが追い出したんと違う。 持参金は 返さんでええやろ。 339 00:29:41,913 --> 00:29:45,584 あのお方 ホンマに アホボンだすな。 340 00:29:45,584 --> 00:29:49,388 (お竹) そらもう 折り紙つきのアホボンや。 341 00:29:49,388 --> 00:29:52,291 (お梅) いつから あないな色ボケになったんか。 342 00:29:52,291 --> 00:29:56,928 (お杉)色狂いの上にアホて お店 危ないんとちゃいますか。 343 00:29:56,928 --> 00:30:01,266 縁起でもない。 五鈴屋に限って…。 344 00:30:01,266 --> 00:30:06,138 ⚟あんたのせいで のれん下ろすことになるで! 345 00:30:06,138 --> 00:30:11,610 (お梅)五鈴屋が のうなったら どこに行けばええのや。 346 00:30:11,610 --> 00:30:15,480 <徳兵衛が使い込んだ持参金の 穴埋めのため➡ 347 00:30:15,480 --> 00:30:19,284 富久たちは 金策に走り回っていました> 348 00:30:19,284 --> 00:30:23,789 しんど。 少し休みまひょか。 へえ。 349 00:30:23,789 --> 00:30:26,792 ごっつぉさん。 おおきに。 350 00:30:30,295 --> 00:30:32,297 どうぞ。 351 00:30:40,439 --> 00:30:48,146 何がさて 三十五両の算段がついて ようございました。 352 00:30:48,146 --> 00:30:52,984 お家さんが 呉服仲間に 頭下げてくださったおかげだす。 353 00:30:52,984 --> 00:30:55,887 まだ 貸してもらえるか 分かりまへん。 354 00:30:55,887 --> 00:30:58,857 条件つきや。 355 00:30:58,857 --> 00:31:04,396 「徳兵衛に後添え持たせて 身持ちを改めさせよ」て。 356 00:31:04,396 --> 00:31:08,600 はあ~ 難儀だすなあ。 357 00:31:08,600 --> 00:31:16,108 難儀も難儀。 菊栄でさえ さじ投げたものを。 358 00:31:16,108 --> 00:31:19,111 旦那さんの放とう もう知れ渡ってます。 359 00:31:21,913 --> 00:31:26,818 しっかりした家の嬢さんを 後添えにするのは➡ 360 00:31:26,818 --> 00:31:29,020 無理かもしれまへん。 361 00:31:40,966 --> 00:31:43,869 (お勢)お待っとうさん。➡ 362 00:31:43,869 --> 00:31:49,441 いや そない暗い顔してたら 福の神さんが逃げていくで。 363 00:31:49,441 --> 00:31:52,144 へえ。 364 00:31:52,144 --> 00:31:57,015 気ぃ晴れるおまじない 唱えてあげまひょか? 365 00:31:57,015 --> 00:32:00,018 智ぼん 達者にしてはるで。 366 00:32:00,018 --> 00:32:02,754 い… 今 どこにいてはるんだす? 367 00:32:02,754 --> 00:32:07,592 大川 渡って ずっと行った先の 心斎橋や。 368 00:32:07,592 --> 00:32:13,398 本屋で店番しながらいうて あの 昨日来たお客さんが言うてはったで。 369 00:32:13,398 --> 00:32:15,467 心斎橋の本屋…。 370 00:32:15,467 --> 00:32:22,407 店番しながら 浮世草子いうのを 書いてはるんやて。 371 00:32:22,407 --> 00:32:27,245 智ぼんさん 好きな道を歩いてはるんや。 372 00:32:27,245 --> 00:32:30,115 よかった! 373 00:32:30,115 --> 00:32:34,619 おまじない よう効いたな。 へえ。 ありがとさんだす! 374 00:32:36,621 --> 00:32:39,825 大変なんは これからやで。 375 00:32:41,960 --> 00:32:45,797 (お勢) 五鈴屋も あの子にも➡ 376 00:32:45,797 --> 00:32:50,302 大荒れの卦が出てるがな。➡ 377 00:32:50,302 --> 00:32:52,604 お気張りやす。 378 00:32:56,174 --> 00:32:58,810 何してはるんだす? 379 00:32:58,810 --> 00:33:01,713 お竹どんが かんざし落としたんや。 380 00:33:01,713 --> 00:33:06,918 おかしいなあ。 この辺のはずやのに。 381 00:33:06,918 --> 00:33:10,255 井戸に落としたんちゃいますか? ちょっと…。 382 00:33:10,255 --> 00:33:13,925 そやったら 井戸替えまで出てきまへんで。 383 00:33:13,925 --> 00:33:18,797 そんな…。 384 00:33:18,797 --> 00:33:21,600 ぼさっとしとらんと あんたも捜し。 385 00:33:21,600 --> 00:33:24,102 へえ。 これ 置いてきます。 386 00:33:24,102 --> 00:33:27,405 いやいや いやいやいや。 387 00:33:27,405 --> 00:33:31,109 おっ。 あ…。 388 00:33:35,146 --> 00:33:37,148 あれ? 389 00:33:40,418 --> 00:33:43,321 ありましたで! 390 00:33:43,321 --> 00:33:47,959 ホンマに人騒がせだすなあ。 堪忍やで。 391 00:33:47,959 --> 00:33:51,429 てっきり落としたとばっかり 思い込んでしもて。 392 00:33:51,429 --> 00:33:54,799 紅屋さんをまねた安物やけど➡ 393 00:33:54,799 --> 00:33:58,670 一本しかない大事な かんざしや。 394 00:33:58,670 --> 00:34:03,875 紅屋さんか…。 ご寮さん どないしてはるやろ。 395 00:34:06,077 --> 00:34:09,915 けど 何で かんざしに 耳かき つけたんやろな? 396 00:34:09,915 --> 00:34:12,751 (お竹)そら 便利やからやろ。➡ 397 00:34:12,751 --> 00:34:18,390 頭かく時も 下駄の鼻緒立てる時も よう かんざし使てるやないの。 398 00:34:18,390 --> 00:34:21,259 お竹どんの安物とは ちゃいますで。 399 00:34:21,259 --> 00:34:26,932 紅屋のは サンゴの一つ玉や べっ甲細工の ぜいたく品や。 400 00:34:26,932 --> 00:34:32,237 そない ぜいたくなもん 耳かきに使たら バチ当たりますな。 401 00:34:35,941 --> 00:34:37,876 紅屋さんが売り出したんは➡ 402 00:34:37,876 --> 00:34:40,779 「耳かきのついた かんざし」やのうて➡ 403 00:34:40,779 --> 00:34:44,282 「飾りのついた 耳かき」やったんかも。 ん? 404 00:34:44,282 --> 00:34:48,119 ぜいたくを禁ずるお触れが 何度も出されたて聞いてます。 405 00:34:48,119 --> 00:34:50,789 そのせいで 呉服が売れんようになったて。 406 00:34:50,789 --> 00:34:54,960 (お梅)そや。 ぜいたく品は 売っても買っても あかん。 407 00:34:54,960 --> 00:34:57,996 着物や かんざしは 厳しゅう 取り締まっても➡ 408 00:34:57,996 --> 00:35:02,067 耳かきのことまでは うるそう言われなかったのと違いますか。 409 00:35:02,067 --> 00:35:07,739 なるほど。 「これ かんざしちゃいますで 耳かきだす」と言えば➡ 410 00:35:07,739 --> 00:35:12,077 お上の目ぇも逃れられそうや。 へえ。 411 00:35:12,077 --> 00:35:15,580 商いの知恵て 面白いもんだすな。 412 00:35:15,580 --> 00:35:18,249 (お竹)さあ 無駄口はしまいや。➡ 413 00:35:18,249 --> 00:35:20,251 夕げの支度するで。 へえ。 414 00:35:20,251 --> 00:35:23,054 (お梅)幸 鍋に水張ってんか。 へえ。 415 00:35:25,757 --> 00:35:29,628 何を言うのや。 女衆を後添えに据えるやなんて➡ 416 00:35:29,628 --> 00:35:32,631 この上 まだ 五鈴屋の名ぁをおとしめる気だすか! 417 00:35:32,631 --> 00:35:36,768 どうぞ 落ち着いて聞いとくれやす。 418 00:35:36,768 --> 00:35:41,272 幸が賢いことは お家さんも ようご存じのはずだす。 419 00:35:43,541 --> 00:35:47,112 ここへ来た日 値札に惑わされんと➡ 420 00:35:47,112 --> 00:35:49,948 上物の半襟を選んだ子でおます。➡ 421 00:35:49,948 --> 00:35:54,119 丁稚たちに教える「商売往来」を はたで聞いて➡ 422 00:35:54,119 --> 00:35:59,924 誰より深く 商いの仕組みを見抜く子なんだす。 423 00:35:59,924 --> 00:36:06,064 てんびん棒担いで古着売ってた 昔の五鈴屋とは違いますで。 424 00:36:06,064 --> 00:36:09,367 二代目徳兵衛と 嫁のわてが 力合わせて➡ 425 00:36:09,367 --> 00:36:14,072 家持ちの呉服屋として のれん出すまでにしたんだす。 426 00:36:14,072 --> 00:36:17,876 お前はん そののれんに 傷つける気だすか! 427 00:36:19,944 --> 00:36:24,649 幸には 商いの才があるんだす。 428 00:36:33,758 --> 00:36:36,094 (治兵衛)賢いだけやおまへん。➡ 429 00:36:36,094 --> 00:36:42,300 あの子には 人並み優れた商いの才が おますのや。 430 00:36:52,110 --> 00:36:55,780 (子供たち) ♬ 正一位 稲荷大明神 431 00:36:55,780 --> 00:36:58,116 出かけますで。➡ 432 00:36:58,116 --> 00:37:01,720 これに着替えて ついといで。 433 00:37:01,720 --> 00:37:05,056 えっ これ 着るんだすか? 434 00:37:05,056 --> 00:37:08,860 そや。 幸に似合うはずや。 435 00:37:10,562 --> 00:37:12,764 お家さん お出かけだすか? 436 00:37:14,432 --> 00:37:17,635 行っておいでやす。 行っておいでやす。 437 00:37:30,381 --> 00:37:32,383 どこ行くんやろ…。 438 00:37:39,758 --> 00:37:43,061 (女中)五鈴屋さんがお越しだす。 439 00:37:48,933 --> 00:37:50,969 (お房)幸! 440 00:37:50,969 --> 00:37:53,404 母さん。 441 00:37:53,404 --> 00:37:57,275 大きなったな。 442 00:37:57,275 --> 00:38:00,478 きれいな着物 着せてもうて。 443 00:38:05,083 --> 00:38:11,923 彦太夫さん この度は お力添えいただいて おおきに ありがとさんでございます。 444 00:38:11,923 --> 00:38:15,360 (彦太夫) おめでとうさんでございます。 445 00:38:15,360 --> 00:38:20,231 お父はんが亡くならはって もう五年やな。 446 00:38:20,231 --> 00:38:26,004 あんたの立派な姿 見たら どんだけ喜んだやろか。 447 00:38:26,004 --> 00:38:27,939 へえ。 448 00:38:27,939 --> 00:38:32,744 この度は 結構なお話を ありがとうございます。 449 00:38:32,744 --> 00:38:36,381 娘のこと よろしくお願い申し上げます。 450 00:38:36,381 --> 00:38:40,919 よう承知してくれましたな。 母さん…? 451 00:38:40,919 --> 00:38:44,589 (彦太夫)世話した わしも 鼻が高いわ。 452 00:38:44,589 --> 00:38:50,461 女衆として奉公した娘が 後添えに望まれるて➡ 453 00:38:50,461 --> 00:38:54,766 これほどの誉れがあるやろか。 アッハハハッ! 454 00:38:54,766 --> 00:38:56,968 えっ! 455 00:38:59,270 --> 00:39:03,875 何や 聞いてへんかったんか? 456 00:39:03,875 --> 00:39:10,648 びっくりしたやろけどな こない結構な話ないで うん。 457 00:39:10,648 --> 00:39:19,224 幸が ご寮さんやなんて ホンマに夢のようや。 458 00:39:19,224 --> 00:39:21,726 (彦太夫)ハハハ… よかったなあ。 459 00:39:28,366 --> 00:39:31,569 (富久)道中 お気を付けて。 460 00:39:37,575 --> 00:39:40,378 黙ってて堪忍や。 461 00:39:40,378 --> 00:39:44,916 先に話して 逃げられたら どないしょう思たんや。 462 00:39:44,916 --> 00:39:49,254 さあ 戻って 治兵衛どんと一緒に 話しまひょ。 463 00:39:49,254 --> 00:39:55,760 やっぱり 商人て 人をだますんだすな。 464 00:39:55,760 --> 00:39:57,762 えっ? 465 00:40:01,399 --> 00:40:03,935 嫌だす。 幸。 466 00:40:03,935 --> 00:40:07,438 後添えになるのは 嫌だす! 待って! 467 00:40:12,610 --> 00:40:15,947 嫌や そんなん嫌や…。 468 00:40:15,947 --> 00:40:18,616 い… 今 どこにいてはるんだす? 心斎橋や。➡ 469 00:40:18,616 --> 00:40:23,288 本屋で店番してはるて 昨日来たお客さんが言うてはったで。 470 00:40:23,288 --> 00:40:25,590 心斎橋の本屋…。 471 00:40:27,158 --> 00:40:29,427 あっ あれ…。 472 00:40:29,427 --> 00:40:31,429 ごめんやす! 473 00:40:34,966 --> 00:40:36,968 智ぼんさん! 474 00:40:40,638 --> 00:40:43,141 智やんなら 留守やで。 475 00:40:48,146 --> 00:40:51,950 うちの人に 何の用? 476 00:40:59,457 --> 00:41:03,761 ああ 五鈴屋はん 何や降りだしそうでんな。 477 00:41:08,933 --> 00:41:13,104 お帰りやす。お帰りやす。 幸 戻ってるか? 478 00:41:13,104 --> 00:41:18,609 いや まだだすけど ご一緒やなかったんだすか? 479 00:41:18,609 --> 00:41:22,780 あの子 どこ行ったんやろ…。 480 00:41:22,780 --> 00:41:26,117 船場の嬢さんの次は 女衆かいな。 481 00:41:26,117 --> 00:41:28,152 ようお似合いや。 482 00:41:28,152 --> 00:41:31,990 アホ! 誰がすき好んで 女衆なんぞ。 483 00:41:31,990 --> 00:41:34,425 五鈴屋のためや。 484 00:41:34,425 --> 00:41:36,794 恥の上塗りやな。 485 00:41:36,794 --> 00:41:40,131 世間の笑いもんだすで。 486 00:41:40,131 --> 00:41:43,801 お前に何が分かる! 487 00:41:43,801 --> 00:41:46,637 もめてる場合 ちゃいますで! うっ…。 488 00:41:46,637 --> 00:41:49,540 あっ お家さん…。 何してんだ! 489 00:41:49,540 --> 00:41:52,443 お家さんに 何するんだす! 離さんかい! 490 00:41:52,443 --> 00:41:54,746 (治兵衛)あっ…。 491 00:41:58,816 --> 00:42:02,387 治兵衛…。 どないした! 492 00:42:02,387 --> 00:42:05,089 徳兵衛 あんた 治兵衛に 何したん! 493 00:42:05,089 --> 00:42:07,992 わて 何もしてまへんで。 治兵衛どん しっかりしなはれ! 494 00:42:07,992 --> 00:42:10,261 (徳兵衛)わてのせいやない。 495 00:42:10,261 --> 00:42:13,097 あかん。 医者 呼んできますわ! 496 00:42:13,097 --> 00:42:15,133 治兵衛 治兵衛…。 497 00:42:15,133 --> 00:42:17,602 治兵衛! 498 00:42:17,602 --> 00:42:21,105 (雷鳴) 499 00:42:21,105 --> 00:42:35,286 (雷鳴) 500 00:42:35,286 --> 00:42:39,791 商いの川を 金色と銀色に 染めてみなはれ。 501 00:42:39,791 --> 00:42:41,826 金色と銀色…。 502 00:42:41,826 --> 00:42:43,961 お美しいご寮さんだすこと。 503 00:42:43,961 --> 00:42:46,864 女衆の分際で女房面すな! 504 00:42:46,864 --> 00:42:50,134 あんたに 何ができるん? 尋ねたいことがごわす。 505 00:42:50,134 --> 00:42:52,070 何やったら 答えられますのや? 506 00:42:52,070 --> 00:42:55,273 「商売往来」よりほかは 何も存じまへん。はい?