1 00:00:02,202 --> 00:00:05,939 (惣次)そこで 何してんのや! (幸)一つ一つ 学ばせてもろて➡ 2 00:00:05,939 --> 00:00:08,408 商いの知識を 身につけていきとうございます。 3 00:00:08,408 --> 00:00:11,278 女子のくせに 余計なことせんといてくれ。 4 00:00:11,278 --> 00:00:13,280 余計なことやあらしまへん。 わての役目だす! 5 00:00:13,280 --> 00:00:15,282 出しゃばるんやない! (鉄助)惣ぼんさん あきまへん! 6 00:00:15,282 --> 00:00:19,019 どけ! ⚟(富久)幸 幸! 7 00:00:19,019 --> 00:00:21,922 へえ。 ⚟(富久)どこにいてますのや?➡ 8 00:00:21,922 --> 00:00:26,827 ちょっと来とくなはれ。 今 参ります! 9 00:00:26,827 --> 00:00:29,029 お家さんが お呼びだすさかい。 10 00:00:34,301 --> 00:00:36,803 (鉄助)すんまへん。 お叱りは 私が…。 11 00:00:36,803 --> 00:00:40,440 ちゃっちゃと片づけて 帳場に戻んなはれ。 12 00:00:40,440 --> 00:00:42,376 へえ。 13 00:00:42,376 --> 00:00:52,986 ♬~ 14 00:00:52,986 --> 00:00:58,859 (富久)これ 届けてもらえへんやろか。 へえ。 どちらへ? 15 00:00:58,859 --> 00:01:02,396 智蔵のとこや。 えっ…。 16 00:01:02,396 --> 00:01:09,102 人づてに聞いたんやけどな あの子 心斎橋の本屋にいてるんや。 17 00:01:09,102 --> 00:01:12,940 店番しながら なんぞ書いてるらしいわ。 18 00:01:12,940 --> 00:01:16,777 どないな暮らししてることやら。 19 00:01:16,777 --> 00:01:19,112 もうじき 衣がえやろ。 20 00:01:19,112 --> 00:01:22,783 単衣の一枚でもと思て 縫うたんやけどな➡ 21 00:01:22,783 --> 00:01:26,653 わてが会うたら 惣次への義理が立たへん。 22 00:01:26,653 --> 00:01:31,291 すまんけど 代わりに届けてほしいんや。 23 00:01:31,291 --> 00:01:33,293 へえ。 24 00:02:03,757 --> 00:02:07,761 ごめんやす! 智ぼんさん! 25 00:02:09,396 --> 00:02:12,899 うちの人に 何の用? 26 00:02:16,770 --> 00:02:19,072 ごめんやす。 27 00:02:20,941 --> 00:02:28,281 ごめんやす。 あっ…。 あ~ ハハ。 おいでやす。 さあ どうぞ。 28 00:02:28,281 --> 00:02:34,087 あの 智ぼん… あ いえ… 智蔵さん いてはりますやろか? 29 00:02:34,087 --> 00:02:36,790 あいにく留守だすわ。 30 00:02:36,790 --> 00:02:42,963 月初めの辰の日やさかい 住吉さんに詣でてます。 31 00:02:42,963 --> 00:02:45,298 そうだすか…。 32 00:02:45,298 --> 00:02:49,803 何の御用でっしゃろ。 留守 頼まれてますねんけど。 33 00:02:49,803 --> 00:02:54,975 あっ… ほな これ 智蔵さんに渡してもらえますやろか? 34 00:02:54,975 --> 00:02:58,011 お家さんからと伝えてもろたら 分かりますよって。 35 00:02:58,011 --> 00:03:00,380 待ってたら じき戻りますで。 36 00:03:00,380 --> 00:03:05,252 ええんだす。 よろしゅうお頼申します。 37 00:03:05,252 --> 00:03:07,254 (智蔵)今 帰りました。 38 00:03:07,254 --> 00:03:10,457 初辰さんの猫 おばちゃんの分も頂いてきたで。 39 00:03:15,262 --> 00:03:17,764 智ぼんさん…。 40 00:03:17,764 --> 00:03:20,467 幸? 幸か。 41 00:03:27,941 --> 00:03:30,777 そやったんか。 42 00:03:30,777 --> 00:03:35,482 幸が ご寮さんに…。 へえ。 43 00:03:38,518 --> 00:03:44,791 どうりで見違えるはずや。 おめでとうさんだす。 44 00:03:44,791 --> 00:03:46,993 へえ。 45 00:03:51,131 --> 00:03:57,003 すまんな。 何にもお祝いしてやれんで。 46 00:03:57,003 --> 00:04:02,375 おお 涼しげな ええ柄や。 47 00:04:02,375 --> 00:04:06,079 お家さんらしい 丁寧な仕立てやなあ。 48 00:04:08,181 --> 00:04:16,590 あの… 住吉さんへは おかみさんと ご一緒に? 49 00:04:16,590 --> 00:04:20,927 おかみさん? そんな結構なもの おりまへんで。 50 00:04:20,927 --> 00:04:26,266 えっ…。 何や? 店番のおばちゃんから➡ 51 00:04:26,266 --> 00:04:28,935 近所の姐さんの うわさ話でも聞いたんか? 52 00:04:28,935 --> 00:04:31,772 あ… そんなんちゃいます。 53 00:04:31,772 --> 00:04:35,475 居候の身で 所帯が持てますかいな。 54 00:04:37,410 --> 00:04:40,213 届けてくれて おおきに。 55 00:04:42,616 --> 00:04:47,788 書いてはるんだすな 浮世草子。 56 00:04:47,788 --> 00:04:52,592 ああ。 うん。 57 00:04:54,561 --> 00:04:57,430 智ぼんさんが書かはった本 どれだす? 58 00:04:57,430 --> 00:05:02,636 えっ? ああ… ああ これや これ。 59 00:05:05,071 --> 00:05:07,741 えっ!えっ? えっ!えっ? 60 00:05:07,741 --> 00:05:09,743 あっ…。 えっ? 61 00:05:11,378 --> 00:05:13,680 あっ 違た! 62 00:05:25,959 --> 00:05:31,798 古い浮世草子や。 書き写してほしいて 頼まれてな。 63 00:05:31,798 --> 00:05:36,803 ええ稼ぎになるし 写本は 書く修行にもなるさかい。 64 00:05:46,947 --> 00:05:49,849 ウソ言うて すまん。 65 00:05:49,849 --> 00:05:54,688 ホンマは わての本 出てまへんのや。 66 00:05:54,688 --> 00:05:56,690 えっ…。 67 00:05:59,960 --> 00:06:04,564 今は 修行中の身だす。 68 00:06:04,564 --> 00:06:12,239 けど 好きで選んだ道やよって 一つも苦にはならん。 69 00:06:12,239 --> 00:06:14,941 そうだすか。 70 00:06:21,748 --> 00:06:24,751 幸も お気張りやす。 71 00:06:26,620 --> 00:06:29,623 難儀なことも多いやろけど➡ 72 00:06:29,623 --> 00:06:34,327 幸なら きっと ええご寮さんになれますで。 73 00:06:38,932 --> 00:06:40,867 へえ。 74 00:06:40,867 --> 00:06:45,805 あっ そや あんまり遅なったら お家さんが案じはるやろ。 75 00:06:45,805 --> 00:06:49,409 そこまで送るわ。 ええんだす。 76 00:06:49,409 --> 00:06:52,612 一人で帰れますよって。 77 00:06:55,215 --> 00:06:57,150 ほうか。 78 00:06:57,150 --> 00:07:17,070 ♬~ 79 00:07:17,070 --> 00:07:20,573 つらい思い するやろな…。 80 00:07:26,379 --> 00:07:30,250 そや お守り代わりに。 81 00:07:30,250 --> 00:07:42,829 ♬~ 82 00:07:42,829 --> 00:07:45,131 智ぼんさん…。 83 00:07:50,403 --> 00:07:54,607 あかん もう決めたんや。 84 00:07:57,110 --> 00:07:59,612 前だけ見て 歩かな。 85 00:07:59,612 --> 00:08:23,803 ♬~ 86 00:08:23,803 --> 00:08:26,005 幸…。 87 00:08:32,078 --> 00:08:36,783 アホやな。 もう遅いわ。 88 00:08:44,090 --> 00:08:47,093 幸せになるんやで。 89 00:08:59,105 --> 00:09:02,709 <幸が五鈴屋に嫁いで 二月が過ぎて➡ 90 00:09:02,709 --> 00:09:05,745 長い梅雨が明けた ある日…> 91 00:09:05,745 --> 00:09:11,217 ⚟(物音) 92 00:09:11,217 --> 00:09:14,721 騒がしいなあ。 なんぞありましたんか? 93 00:09:14,721 --> 00:09:17,223 (徳兵衛)ん? さあ。 94 00:09:17,223 --> 00:09:22,095 仕入れたとこの明石縮 どこにもあらへん。 95 00:09:22,095 --> 00:09:26,366 あんたが くすねたんとちゃうやろな。 えっ? 96 00:09:26,366 --> 00:09:30,236 ああ~ あれな。 ちょっと借りましたで。 97 00:09:30,236 --> 00:09:34,073 何? ええやないか。 わてが店主やで。 98 00:09:34,073 --> 00:09:37,377 見世の品は わての品も同然や。 ちょっと借りた…。 99 00:09:37,377 --> 00:09:41,581 このアホんだら! あれは 米忠のご寮さんに頼まれて➡ 100 00:09:41,581 --> 00:09:44,918 八方 手ぇ尽くして やっとの思いで手に入れた品やで! 101 00:09:44,918 --> 00:09:48,254 米忠さんて あの…。 えっ? 102 00:09:48,254 --> 00:09:53,593 そうだす。 大坂一の米問屋 うちの大得意や。 103 00:09:53,593 --> 00:09:57,464 一両日中に届けますて もう言うてしもた。 104 00:09:57,464 --> 00:09:59,933 今更 ないでは済まんのやで! 105 00:09:59,933 --> 00:10:03,269 (富久)徳兵衛 あんた 反物 どこやったんや! 106 00:10:03,269 --> 00:10:08,975 あ… か… か… 返してもろてきます。 107 00:10:12,278 --> 00:10:15,281 どうせ 新町ぐるわの女郎にでも くれてやったんやろ。 108 00:10:15,281 --> 00:10:19,152 とっくに金に化けてるわ。 なんちゅうことを…。 109 00:10:19,152 --> 00:10:22,288 これが初めてとちゃいますやろな。 110 00:10:22,288 --> 00:10:27,160 よう調べたら のうなってる反物 まだまだ あるはずや。 111 00:10:27,160 --> 00:10:30,029 (富久)ホンマに すまんことだす。➡ 112 00:10:30,029 --> 00:10:33,299 米忠さんには わてが おわびに伺うさかい。 113 00:10:33,299 --> 00:10:37,103 お家さんに頭下げてもろたかて どないも…。 114 00:10:42,008 --> 00:10:48,715 お家さん 確か明石縮の単衣 持ってはりましたな! 115 00:10:56,155 --> 00:11:00,026 その帯とちゃう。 もっと明るいのあったやろ。 116 00:11:00,026 --> 00:11:04,397 (お梅)けど お家さん 前に この帯 合わせてはりましたで。 117 00:11:04,397 --> 00:11:06,466 お梅どんでは あかん。 118 00:11:06,466 --> 00:11:11,104 お竹どん お家さんの夏帯 全部 持ってきてんか。 119 00:11:11,104 --> 00:11:13,773 全部やで! ⚟(お竹)へ~い! 120 00:11:13,773 --> 00:11:16,976 これ 締めてみなはれ。 (お竹)へえ。 121 00:11:18,611 --> 00:11:20,647 髪も結い直して➡ 122 00:11:20,647 --> 00:11:24,784 お家さんから 銀の平打ちのかんざし 借りてきなはれ。 123 00:11:24,784 --> 00:11:26,819 化粧は 薄うに。 124 00:11:26,819 --> 00:11:30,623 そや 匂い袋も用意したってな。 (お梅)へえ。 125 00:11:32,425 --> 00:11:34,727 (お竹)よっしゃ。 126 00:11:41,167 --> 00:11:43,169 (2人)おお~! 127 00:11:43,169 --> 00:11:47,807 (お梅)よう似合うてますなあ。 (お竹)色映りもええし 品もある。 128 00:11:47,807 --> 00:11:54,581 どっから見ても 名のある お店の嬢さんや。 ハハッ。 129 00:11:54,581 --> 00:11:58,151 どうや 明石縮は? 130 00:11:58,151 --> 00:12:01,588 軽うて さらっとしてて ええ着心地だす。 131 00:12:01,588 --> 00:12:07,393 そやろ。 お家さんが若い頃に着てた 上物やさかいな。 132 00:12:07,393 --> 00:12:11,931 ほな 行くで。 どこにだす? 133 00:12:11,931 --> 00:12:15,935 肝試しや。 えっ? 134 00:12:24,944 --> 00:12:27,981 ええあつらいで。 えらいべっぴんさんやな。 135 00:12:27,981 --> 00:12:30,116 はんなりして よろしいなあ。 136 00:12:30,116 --> 00:12:34,420 あの 肝試して お墓にでも行くんだすか? 137 00:12:34,420 --> 00:12:36,356 アホかいな。 138 00:12:36,356 --> 00:12:41,628 昼日中に墓場行ったかて 恐ろしゅうも 何ともないわい。 139 00:12:41,628 --> 00:12:43,630 へえ。 140 00:12:49,502 --> 00:12:53,640 ⚟ええもん 安いのが備前屋や。 あれや。 141 00:12:53,640 --> 00:12:56,976 そこの嬢さん どないだすか? 見てってや。 142 00:12:56,976 --> 00:13:00,246 べっぴんさんで。 143 00:13:00,246 --> 00:13:02,181 一度 見てっておくれやす。 144 00:13:02,181 --> 00:13:04,751 上物の反物 入ってまっせ。 145 00:13:04,751 --> 00:13:10,923 あそこに 今 あんさんが着てるのと よう似た明石縮があるはずや。 146 00:13:10,923 --> 00:13:15,094 それ 買うてきなはれ。 えっ? 147 00:13:15,094 --> 00:13:17,930 問屋から聞いてある。 148 00:13:17,930 --> 00:13:21,267 徳兵衛が くすねたんと おんなじ織り元の品➡ 149 00:13:21,267 --> 00:13:23,569 あそこにも卸してるんや。 150 00:13:25,271 --> 00:13:31,778 買値は 銀六十五匁。 ここに ちょうど入ってる。 151 00:13:31,778 --> 00:13:35,481 備前屋に損させん ギリギリの値ぇや。 152 00:13:38,551 --> 00:13:42,422 これで 買うてくるんだすか? そや。 153 00:13:42,422 --> 00:13:47,260 けど 呉服て お得意先のお屋敷回って 売るもんやないんだすか? 154 00:13:47,260 --> 00:13:50,163 つどつどの売り買いは 帳面につけて➡ 155 00:13:50,163 --> 00:13:53,433 暮れに まとめて集金するんや 思てましたけど…。 156 00:13:53,433 --> 00:13:56,969 そらそや。 けど 備前屋では➡ 157 00:13:56,969 --> 00:14:01,574 店前現銀売りいう商いしてんのや。 158 00:14:01,574 --> 00:14:03,509 店前現銀売り? 159 00:14:03,509 --> 00:14:08,815 客の方から 見世に足運んで その場で金払て 反物 買うんだす。 160 00:14:12,218 --> 00:14:15,722 ごちゃごちゃ考えんでも 行ったら分かるわ。 161 00:14:20,927 --> 00:14:25,264 さあ 肝試しや! 162 00:14:25,264 --> 00:14:27,767 足元 見られるんやないで。 163 00:14:30,136 --> 00:14:38,811 (話し声) 164 00:14:38,811 --> 00:14:41,614 おいでやす。 おいでやす! 165 00:14:41,614 --> 00:14:43,549 おおきに。 166 00:14:43,549 --> 00:14:47,487 子供! へえ! 167 00:14:47,487 --> 00:14:49,789 ありがとさんだす。 168 00:14:49,789 --> 00:15:13,980 ♬~ 169 00:15:13,980 --> 00:15:16,949 おいでやす。 (備前屋番頭 宗助) ああ 構へん 構へん。 170 00:15:16,949 --> 00:15:22,588 おいでやす。 今日は どないな品を お探しですやろか? 171 00:15:22,588 --> 00:15:25,291 へえ あの…。 172 00:15:27,093 --> 00:15:29,028 この着物の替えが欲しゅうて➡ 173 00:15:29,028 --> 00:15:30,963 似た物を探してますのや。 174 00:15:30,963 --> 00:15:34,600 ああ ほな なんぼか お見せしまひょか? 175 00:15:34,600 --> 00:15:38,271 へえ 頼みます。 どうぞ こちらへ。 176 00:15:38,271 --> 00:15:40,273 (宗助)子供! へえ! 177 00:15:40,273 --> 00:15:45,778 あのな 若い人向けのな… 見繕うて持ってきて。 178 00:15:45,778 --> 00:15:47,780 へえ。 179 00:15:49,649 --> 00:15:51,951 (手代)こちらなど どないだすか? 180 00:15:51,951 --> 00:15:54,854 愛らしいなあ。 うちの子に 似合いそうやわ。 181 00:15:54,854 --> 00:15:57,757 嬢さん おいくつだす? 三つや。 182 00:15:57,757 --> 00:16:01,761 三つ身やったら 半反で足りますな…。 183 00:16:01,761 --> 00:16:04,530 ほんなら 半分に切って お売りいたしまひょか? 184 00:16:04,530 --> 00:16:08,434 (客)ええの? そら ありがたい…。 半分に切る? 185 00:16:08,434 --> 00:16:10,436 (手代)へえ おおきに。 186 00:16:14,574 --> 00:16:20,079 (宗助)お眼鏡にかなう品が ありますかどうか。 ハハハハッ。 187 00:16:20,079 --> 00:16:23,783 触っても構しまへんか? へえへえ どうぞ どうぞ。 188 00:16:45,771 --> 00:16:49,275 どれも ようお似合いやと思います。 189 00:16:56,115 --> 00:17:01,721 わてが欲しいのは 明石縮だす。 はあ。 190 00:17:01,721 --> 00:17:06,559 それも 今 着てるような上質なんを 探してるんだす。 191 00:17:06,559 --> 00:17:10,863 ここにあるのは どれも違いますなあ。 192 00:17:14,066 --> 00:17:19,071 こちらには 明石縮の上物は あらしまへんのか。 193 00:17:23,376 --> 00:17:26,746 せやったら しかたありまへんな。 ほな これで…。 194 00:17:26,746 --> 00:17:30,082 ああ いや その…➡ 195 00:17:30,082 --> 00:17:37,823 実は 極上のを一反だけ ちょうど仕入れたとこでおます。 196 00:17:37,823 --> 00:17:42,395 ただ… 値ぇの張る品物やさかいに➡ 197 00:17:42,395 --> 00:17:45,598 お求めいただけるかどうか ちょっと…。 198 00:17:45,598 --> 00:17:56,108 ♬~ 199 00:17:56,108 --> 00:18:00,346 銀六十五匁 きっかり入ってます。 200 00:18:00,346 --> 00:18:03,549 これで売っていただけますやろか。 201 00:18:10,089 --> 00:18:13,726 そや。 確かに これや! 202 00:18:13,726 --> 00:18:17,229 六十五匁で 買うたんやな? へえ。 203 00:18:19,532 --> 00:18:24,737 まさか ホンマに やってのけるとは…。 204 00:18:24,737 --> 00:18:27,573 あの…。 何や? 205 00:18:27,573 --> 00:18:32,244 五鈴屋と あの店と 売り方が違てるのは 何でだす? 206 00:18:32,244 --> 00:18:35,748 うちだけやのうて 大抵の呉服屋は➡ 207 00:18:35,748 --> 00:18:40,620 品物を先に渡して 代金は 節季払いの掛け売りやさかい➡ 208 00:18:40,620 --> 00:18:43,622 手元に 金がのうても買える。 209 00:18:43,622 --> 00:18:46,926 けど 支払いまで 間ぁがある分➡ 210 00:18:46,926 --> 00:18:52,098 利息が乗って 反物の値ぇは高なるんや。 211 00:18:52,098 --> 00:18:57,770 備前屋さんのように 先に支払うた方が 安う買えるいうことだすか? 212 00:18:57,770 --> 00:19:03,542 そや。 それが 店前現銀売りの ええとこや。 213 00:19:03,542 --> 00:19:05,745 さあ 行くで。 214 00:19:08,214 --> 00:19:11,717 五鈴屋では 現銀売りは しはらへんのだすか? 215 00:19:11,717 --> 00:19:16,055 天満の呉服仲間では 現銀売りは してはならん決まりや。 216 00:19:16,055 --> 00:19:18,891 何でだす? 物が売れん時に➡ 217 00:19:18,891 --> 00:19:23,562 お客さんの方から来てくれるなら ええことや思いますけど。 218 00:19:23,562 --> 00:19:27,900 あんさん そない思うか? へえ。 219 00:19:27,900 --> 00:19:31,737 現銀売りは どないな客にも➡ 220 00:19:31,737 --> 00:19:36,909 あんたのような素性の分からん 初めての客にかて売るやろ。 221 00:19:36,909 --> 00:19:40,913 せやさかい 一段 格が落ちるのや。 222 00:19:45,084 --> 00:19:49,588 掛け売りと 現銀売り…➡ 223 00:19:49,588 --> 00:19:51,590 面白い。 224 00:20:00,099 --> 00:20:03,135 ホンマに よう似合てたなあ。 225 00:20:03,135 --> 00:20:05,271 着物だけやない。 226 00:20:05,271 --> 00:20:08,941 帯から小物から 取り合わせが見事や。 227 00:20:08,941 --> 00:20:14,280 それに比べて 旦那さんは さんざん女遊びしたかて➡ 228 00:20:14,280 --> 00:20:17,183 商いの役には ちょっとも立たへん。 229 00:20:17,183 --> 00:20:21,954 お店の品にまで手ぇ出して ホンマに ええとこなしや。 230 00:20:21,954 --> 00:20:24,990 あの性根は 直らんなあ。 231 00:20:24,990 --> 00:20:30,963 (お梅)不思議だすなあ。 惣ぼんは 女遊びもせんのに➡ 232 00:20:30,963 --> 00:20:35,167 女子を引き立てる着物 よう知ってはるわ。 233 00:20:40,973 --> 00:20:43,876 (お杉)惣ぼんさん。 234 00:20:43,876 --> 00:20:47,746 暑うおますやろ? 一休みしたら どないだす? 235 00:20:47,746 --> 00:20:51,150 白玉 よう冷えてますで。 236 00:20:51,150 --> 00:20:53,152 要らん。 237 00:20:57,656 --> 00:21:02,862 暑い中 幸 連れて どこ行かはったんだす? 238 00:21:05,264 --> 00:21:08,934 あの人 旦那さんに相手にされへんからいうて➡ 239 00:21:08,934 --> 00:21:11,270 惣ぼんさんに ついて歩かんでもええのに。 240 00:21:11,270 --> 00:21:13,272 やかましいなあ。 241 00:21:13,272 --> 00:21:17,977 商いのこと考えてんねん。 邪魔せんといてくれ。 242 00:21:29,955 --> 00:21:32,758 この色が 鬱金だす。 243 00:21:34,627 --> 00:21:38,430 これ 反物を包む布と 同じ色だすな。 244 00:21:38,430 --> 00:21:40,800 鬱金は もともと 胃や胆のお薬だす。 245 00:21:40,800 --> 00:21:43,135 虫よけにもなりますのや。 246 00:21:43,135 --> 00:21:48,641 で こっちが 紅鬱金いいます。 247 00:21:48,641 --> 00:21:52,311 この色 今日の紙入れの色。 248 00:21:52,311 --> 00:21:57,449 鬱金で下染めして 紅花で上掛けをする ぜいたくな色だす。 249 00:21:57,449 --> 00:22:00,920 商売繁盛の縁起のええ色や いわれてますよって➡ 250 00:22:00,920 --> 00:22:04,757 お店の主に この色の紙入れを使てる人が いてはりますのや。 251 00:22:04,757 --> 00:22:08,627 銀六十五匁 これで 売っていただけますやろか。 252 00:22:08,627 --> 00:22:11,397 ああ それで。 253 00:22:11,397 --> 00:22:14,266 で これが 茜色。 254 00:22:14,266 --> 00:22:17,102 茜草の根ぇで染めてます。 255 00:22:17,102 --> 00:22:20,105 あでやかな色だっしゃろ。 256 00:22:28,414 --> 00:22:31,317 (手をたたく音)あっ。 どないしはりました?あ いや…。 257 00:22:31,317 --> 00:22:35,120 茜色も 美しおますなあ。 そうだすやろ。 258 00:22:35,120 --> 00:22:39,792 <とがめることなく 無言で立ち去っていった惣次の背中に➡ 259 00:22:39,792 --> 00:22:45,598 幸は 商いを学ぶ 許しを得た思いがしたのです> 260 00:22:51,403 --> 00:22:54,974 (富久)何だすて。 現銀売りやて? 261 00:22:54,974 --> 00:23:00,779 蔵の中に 長いこと売れ残った反物が 五十反ばかりおます。 262 00:23:00,779 --> 00:23:05,584 値引いて現銀売りしたら どないだすやろか。 263 00:23:05,584 --> 00:23:07,620 あきまへん。 264 00:23:07,620 --> 00:23:11,757 現銀売りなんぞしたら お客さんに 顔向けできまへん。 265 00:23:11,757 --> 00:23:17,396 第一 仲間の取り決めを 破ることになります。 266 00:23:17,396 --> 00:23:23,202 たった一日 神無月 二十日限りのことだす。 267 00:23:23,202 --> 00:23:25,771 その日は 誓文払いいうて➡ 268 00:23:25,771 --> 00:23:29,408 日頃のウソを 神さんに許してもらう日ぃだすやろ。 269 00:23:29,408 --> 00:23:34,280 それに引っ掛けて 商いの駆け引きで 方便使た罪滅ぼしに➡ 270 00:23:34,280 --> 00:23:37,116 蔵ざらえの安売りをするんだす。 271 00:23:37,116 --> 00:23:40,019 (富久)そないなこと やったためしがあらしまへん。 272 00:23:40,019 --> 00:23:42,921 ためしがないさかい やってみたいんだす! 273 00:23:42,921 --> 00:23:46,825 あんじょういったら 来年は ほかの店にも まねしてもろて➡ 274 00:23:46,825 --> 00:23:49,128 みんなしてやったらええと思います。 275 00:23:49,128 --> 00:23:51,797 あかんもんは あかん。 お家さん! 276 00:23:51,797 --> 00:23:56,669 あの… 明石縮を買うた備前屋さん➡ 277 00:23:56,669 --> 00:23:58,971 現銀売りで 繁盛してるようだしたけど…。 278 00:23:58,971 --> 00:24:03,809 あんたは黙っとき! 幸には分からんやろけどな➡ 279 00:24:03,809 --> 00:24:10,916 五鈴屋と 現銀売りの店とでは 客筋が違てますのや。 280 00:24:10,916 --> 00:24:17,122 せやから たった一日 売るのは 五十反だけだす。 281 00:24:21,927 --> 00:24:26,799 一日だけやったら ええんとちゃいまっか。 282 00:24:26,799 --> 00:24:30,269 あんたまで 何言うのや。 283 00:24:30,269 --> 00:24:36,408 あの五十反 問屋に泣きつかれて わてが仕入れましてん。 284 00:24:36,408 --> 00:24:38,344 悪い品やないのやけど➡ 285 00:24:38,344 --> 00:24:42,648 うちの客の好みとは 違てたんかもしれまへんな。 286 00:24:44,783 --> 00:24:49,421 どないかせないかんて わても案じてたんだすわ。 287 00:24:49,421 --> 00:24:56,729 お家さん お頼申します。 呉服仲間に 話 通しておくんなはれ。 288 00:24:59,098 --> 00:25:04,903 (鉄助)お~ ええやないか え~。 289 00:25:04,903 --> 00:25:08,374 さあさ 五鈴屋の誓文払いだす。 290 00:25:08,374 --> 00:25:13,579 今日一日限りの現銀売りで ええ品 安う売らせてもらいます! 291 00:25:13,579 --> 00:25:17,383 (留七)さあ いかがだすか? (伝七)きれいな柄だっしゃろ。 292 00:25:17,383 --> 00:25:21,253 あんたんとこは 決まったお大尽しか 相手にせんのやろ。 293 00:25:21,253 --> 00:25:24,089 わしら 気軽う のれんくぐることも できへんわ。 294 00:25:24,089 --> 00:25:27,926 すんまへん。 今日は 日頃の不調法のおわびに➡ 295 00:25:27,926 --> 00:25:31,797 ここに並べた品 あらかた半値にさせてもらいます。 296 00:25:31,797 --> 00:25:35,267 半値! あの五鈴屋が? 297 00:25:35,267 --> 00:25:40,406 数には限りがございますよって 売り切れましたら ご容赦願います。 298 00:25:40,406 --> 00:25:44,777 さあ 初めての方も どうぞ 見てっておくれやす。 299 00:25:44,777 --> 00:25:48,113 ⚟五鈴屋の誓文払い 見てっておくれやっしゃ! 300 00:25:48,113 --> 00:25:51,984 あの声 惣ぼんだすか? まるで別人やな。 301 00:25:51,984 --> 00:25:55,988 あないに愛想のええ声 出せるんやったら➡ 302 00:25:55,988 --> 00:26:00,359 日頃から 奉公人にも 優しゅうしはったらええのに。 303 00:26:00,359 --> 00:26:03,729 何も分かってへん。 えっ? 何だす? 304 00:26:03,729 --> 00:26:05,764 惣ぼんが 厳しゅう言わはるのは➡ 305 00:26:05,764 --> 00:26:09,535 奉公人の気が緩まんようにするためだす。 306 00:26:09,535 --> 00:26:13,839 惣ぼんは 何よりも商いがお好きなんや。 307 00:26:18,076 --> 00:26:20,979 ほ~ら! 308 00:26:20,979 --> 00:26:25,818 (にぎわい) 309 00:26:25,818 --> 00:26:29,388 それ なんぼしますのん? 元の値は 六十四匁➡ 310 00:26:29,388 --> 00:26:34,259 そこを半値にして 三十二匁だす。 安いわあ! 311 00:26:34,259 --> 00:26:40,766 (お清)晴れ着 買うてやりたいけど 半値でも 手ぇ届かへんわ。 312 00:26:42,768 --> 00:26:45,571 ホンマに きれいやなあ…。 313 00:26:51,276 --> 00:26:55,280 反物 半分でも売ってもらえますやろか? はい? 314 00:26:55,280 --> 00:26:58,784 子供の三つ身やから 半反で足りますのやけど。 315 00:26:58,784 --> 00:27:04,356 ハハハ…。 ここ 切り売りするような店と ちゃいますで。 316 00:27:04,356 --> 00:27:07,226 心斎橋辺りに行ってみたら どや? 317 00:27:07,226 --> 00:27:10,896 ハハッ あんた言い過ぎや。 すんまへん。 318 00:27:10,896 --> 00:27:12,931 おいでやす。 319 00:27:12,931 --> 00:27:16,568 おじょうちゃんの晴れ着だすか? え? へえ…。 320 00:27:16,568 --> 00:27:22,241 今日は 切り売りもさせてもらいまっさ。 半反やったら 十六匁だす。 321 00:27:22,241 --> 00:27:25,911 十六匁なら どうにか…。 322 00:27:25,911 --> 00:27:29,248 見せてもろても ええやろか? さあ どうぞ。 323 00:27:29,248 --> 00:27:32,751 よう見て選んどくれやす。 さあ こっちへ どうぞ。 324 00:27:32,751 --> 00:27:35,387 どうぞ どうぞ。 足元 お気を付けて。 325 00:27:35,387 --> 00:27:40,259 十六匁やて 安いなあ。 ホンマに? 326 00:27:40,259 --> 00:27:43,762 え~。 ヒヒヒ…。 327 00:27:43,762 --> 00:27:50,269 あ~ ホンマに きれいやなあ。 328 00:27:50,269 --> 00:27:54,139 一生に いっぺんだけでも 五鈴屋さんの反物で➡ 329 00:27:54,139 --> 00:27:59,411 この子に 晴れ着 仕立ててやりたいて 思てましてん。 330 00:27:59,411 --> 00:28:02,714 あんたの 一生の宝やで。 331 00:28:04,249 --> 00:28:09,054 そないなこと言うていただいて おおきに ありがとさんでございます! 332 00:28:09,054 --> 00:28:11,557 (一同)ありがとさんでございます! 333 00:28:11,557 --> 00:28:15,060 さあさ 中へ 中へ。 334 00:28:15,060 --> 00:28:19,865 (にぎわい) 335 00:28:21,567 --> 00:28:26,371 半値かて 安い買い物 違う。 336 00:28:26,371 --> 00:28:31,910 十六匁あったら お米 二十升は買えますわ。 337 00:28:31,910 --> 00:28:35,914 そんな大事なお金を…。 へえ。 338 00:28:38,383 --> 00:28:40,452 (にぎわい) 339 00:28:40,452 --> 00:28:44,756 (佐七)これ 半反に。 へえ。ありがとさんだす。 340 00:28:44,756 --> 00:28:49,261 物が売れるて 幸せなことだすなあ。 341 00:28:53,398 --> 00:28:57,269 <何年も蔵に眠っていた 五十反の反物は➡ 342 00:28:57,269 --> 00:29:00,539 僅か半日で完売しました。➡ 343 00:29:00,539 --> 00:29:04,209 その日の売り上げは 銀一貫六百➡ 344 00:29:04,209 --> 00:29:09,514 小判に直せば 三十両にもなる 大商いでした> 345 00:29:15,821 --> 00:29:18,123 ⚟(物音) 346 00:29:27,432 --> 00:29:30,902 旦那さん…? 347 00:29:30,902 --> 00:29:33,405 ⚟この盗っ人が! 348 00:29:35,741 --> 00:29:40,078 (徳兵衛)うわっ! ううっ うう…。 349 00:29:40,078 --> 00:29:42,014 惣ぼんさん! よこせ! 350 00:29:42,014 --> 00:29:43,949 離せ! こっちに よこせ! 351 00:29:43,949 --> 00:29:46,251 あっ! 352 00:29:49,755 --> 00:29:55,260 あっ! 今日の売り上げが! 353 00:29:55,260 --> 00:29:59,598 もしやと思て 寝ずの番してたら 案の定や。 354 00:29:59,598 --> 00:30:01,633 なんちゅうことしくさるねん! 355 00:30:01,633 --> 00:30:04,403 不用心やさかい 明日 両替屋に持っていくまでの間➡ 356 00:30:04,403 --> 00:30:06,338 預かろうと思ただけや! 357 00:30:06,338 --> 00:30:10,842 ほう~ こんな夜中に 羽織 着てなあ。 358 00:30:14,613 --> 00:30:18,483 どうせ 新町ぐるわの女郎に 使う気やったんやろ。 このクズが! 359 00:30:18,483 --> 00:30:22,120 ああ… うっ うう~ あっ…。 360 00:30:22,120 --> 00:30:25,991 初めから そのつもりで…? 361 00:30:25,991 --> 00:30:29,695 おう! ふん! 362 00:30:31,830 --> 00:30:38,537 おい! あんさんら ネコババするんやないで! 363 00:30:47,646 --> 00:30:52,984 ゆうべのこと 何と言うて わびたらええか。 364 00:30:52,984 --> 00:30:58,323 店主の不始末は わての不徳でおます。 このとおりや。 365 00:30:58,323 --> 00:31:02,127 やめておくんなはれ。 どうぞ 頭 上げておくれやす。 366 00:31:06,598 --> 00:31:11,403 お家さん 申し上げにくいことだすけど…。 367 00:31:11,403 --> 00:31:15,273 何や? 何でも言うてんか。 368 00:31:15,273 --> 00:31:18,777 お暇を頂戴しとうございます。 369 00:31:18,777 --> 00:31:23,281 (鉄助)何を言うのや! 留七 何で…。 370 00:31:23,281 --> 00:31:28,420 ゆうべ はいつくばって 銀貨 拾てる時に➡ 371 00:31:28,420 --> 00:31:34,292 旦那さん 「ネコババすんな」て 言わはったんだす。➡ 372 00:31:34,292 --> 00:31:38,597 あれ聞いた時 わて もう何もかも嫌になってしもて。 373 00:31:41,433 --> 00:31:46,138 お家さんには ホンマに ようしていただきました。 374 00:31:46,138 --> 00:31:48,340 けど あのアホボンは…。 375 00:31:52,644 --> 00:31:59,518 旦那さんの下で働くんは もう こりごりだす。 376 00:31:59,518 --> 00:32:04,089 いなさせていただきとう存じます。 377 00:32:04,089 --> 00:32:09,394 わてもだす。 お暇を頂戴しとう存じます。 378 00:32:10,962 --> 00:32:14,099 佐七っとん 末七っとんまで。 379 00:32:14,099 --> 00:32:16,134 よう そんな恩知らずなことを! 380 00:32:16,134 --> 00:32:19,404 丁稚の頃から 商い仕込んでもろて 手代にまでしてもろたんやろが! 381 00:32:19,404 --> 00:32:23,275 けど ここにいたかて 何の望みも持てしまへんのや。 382 00:32:23,275 --> 00:32:27,112 何でや。 ん? 昨日の誓文払いかて➡ 383 00:32:27,112 --> 00:32:29,948 お客さんに喜んでもろて 売り上げも上がったやろ。 384 00:32:29,948 --> 00:32:35,654 その大事な売り上げを 旦那さんが くすねはったんや。 385 00:32:39,958 --> 00:32:41,993 待っておくれやす。 幸。 386 00:32:41,993 --> 00:32:45,297 もうええ。 えっ? 387 00:32:45,297 --> 00:32:49,100 皆の言うとおりや。 見限られても しゃあない。 388 00:32:51,970 --> 00:32:55,674 残ってくれと頼めた義理やないわ。 389 00:32:58,443 --> 00:33:01,746 二~三日 待ってくれへんか。 390 00:33:01,746 --> 00:33:08,253 大したことは でけへんけど 暇銀 用意させてもらいますよって。 391 00:33:08,253 --> 00:33:10,922 お家さん…。 392 00:33:10,922 --> 00:33:16,094 長いこと よう尽くしてくれました。 393 00:33:16,094 --> 00:33:19,798 ホンマに ありがとさんだす。 394 00:33:23,969 --> 00:33:29,107 あかん。 やっぱり あかんわ。 395 00:33:29,107 --> 00:33:32,611 お家さん すんまへん! このまま置いとくれやす。 396 00:33:32,611 --> 00:33:35,514 佐七っとん。 何でや? 397 00:33:35,514 --> 00:33:40,785 九つで 奉公に上がらしてもろて ずうたいばかりでかい ノロマを➡ 398 00:33:40,785 --> 00:33:44,422 前の番頭さんが 見捨てんと 育ててくれはったんだす。➡ 399 00:33:44,422 --> 00:33:49,794 そのご恩 まだ ちょっとも返せてまへん。 400 00:33:49,794 --> 00:33:54,966 (末七)わてもや。 お家さん わても残ります。 401 00:33:54,966 --> 00:33:57,869 どうぞ ここに置いておくれやす。 402 00:33:57,869 --> 00:34:02,774 佐七っとん 末七っとん…。 403 00:34:02,774 --> 00:34:07,612 おおきに。 ありがとさんだす。 404 00:34:07,612 --> 00:34:20,759 ♬~ 405 00:34:20,759 --> 00:34:23,595 皮肉やなあ。 406 00:34:23,595 --> 00:34:29,401 昨日ほど こののれんを 誇らしいて思たこと なかったのに。 407 00:34:29,401 --> 00:34:35,106 せやさかい 見とうないのや 地に落ちるとこは。 408 00:34:35,106 --> 00:34:49,955 ♬~ 409 00:34:49,955 --> 00:34:53,625 <内証の苦しさを知る留七と伝七は➡ 410 00:34:53,625 --> 00:34:58,797 暇銀も受け取らずに 五鈴屋を去っていきました。➡ 411 00:34:58,797 --> 00:35:03,768 二人の長年の辛抱と奉公は 実を結ぶことなく➡ 412 00:35:03,768 --> 00:35:07,072 あっけなく終わってしまったのです> 413 00:35:20,585 --> 00:35:26,925 留七っとんと 伝七っとん 出ていかはりました。 414 00:35:26,925 --> 00:35:29,127 けっ…! 415 00:35:30,795 --> 00:35:34,265 旦那さん…➡ 416 00:35:34,265 --> 00:35:40,772 こないな別れ 去る人にも 残る人にも あまりにも むごうおます。 417 00:35:40,772 --> 00:35:46,077 誰より お家さんがお気の毒だす。 418 00:35:49,280 --> 00:35:53,785 お頼申します。 どうか商いに励んどくれやす。 419 00:35:56,054 --> 00:35:59,424 旦那さんが 一所懸命に働くとこ 見せてくれはったら➡ 420 00:35:59,424 --> 00:36:05,063 奉公する者は どないな辛抱かて できるもんだす。 421 00:36:05,063 --> 00:36:08,366 前に 大火で店が焼けて のうなった時も➡ 422 00:36:08,366 --> 00:36:12,370 皆で 心一つにして働いて 立て直したて聞いてます。 423 00:36:16,107 --> 00:36:18,910 あん時は 治兵衛がおったんや。 424 00:36:21,579 --> 00:36:28,453 わてかて 治兵衛や惣次くらい 商いの才があったら➡ 425 00:36:28,453 --> 00:36:32,924 どないによかったかて思うで。 えっ…。 426 00:36:32,924 --> 00:36:35,393 そしたら 奉公人らも➡ 427 00:36:35,393 --> 00:36:41,199 惣次やのうて わての方を向いてくれたやろな。 428 00:36:41,199 --> 00:36:44,936 旦那さん…。 429 00:36:44,936 --> 00:36:50,442 親から受け継いだんは 男前の この顔だけや。 430 00:36:55,413 --> 00:36:58,716 どこ行かはるんだす? 新町で厄落としや。 431 00:37:06,057 --> 00:37:10,862 (掛け声) 432 00:37:13,932 --> 00:37:18,069 おっ! (歓声) 433 00:37:18,069 --> 00:37:21,873 (掛け声) 434 00:37:23,742 --> 00:37:28,913 (お染)わあ ぎょうさん頂戴して ありがとさんでございます。 435 00:37:28,913 --> 00:37:31,583 (治兵衛)重うおましたやろ。 436 00:37:31,583 --> 00:37:35,253 それ どないしはったんだすか? 437 00:37:35,253 --> 00:37:38,089 歩く稽古してて こけたんだすわ。 438 00:37:38,089 --> 00:37:42,393 危ない。 むちゃしたら あきまへん。 むちゃと ちゃいますがな。 439 00:37:44,262 --> 00:37:50,769 赤ん坊かて 歩き始めん時は よう転ぶもんだっしゃろ。 440 00:37:50,769 --> 00:37:54,939 こけながら ちょっとずつ歩けるようになる。 441 00:37:54,939 --> 00:37:58,776 わても一緒だすわ。 442 00:37:58,776 --> 00:38:02,547 すんまへん。 仕立物 届けに ちょっと出てきます。 443 00:38:02,547 --> 00:38:04,482 へえ。 お早うお帰り。 444 00:38:04,482 --> 00:38:06,785 へえ いて参じます。 445 00:38:13,892 --> 00:38:21,232 留七と伝七が抜けてしもて 暮れの掛け取り 難儀してますやろ。 446 00:38:21,232 --> 00:38:27,906 へえ。 惣ぼんさんの どなる声 毎日 奥まで響いてます。 447 00:38:27,906 --> 00:38:33,578 旦那さんは? 相変わらず…。 448 00:38:33,578 --> 00:38:41,085 ほうか…。 鉄助どんも苦労なことやな。 449 00:38:42,754 --> 00:38:47,625 留七っとんが 出ていかはる時 言うてはったんだす。 450 00:38:47,625 --> 00:38:52,330 「五鈴屋におっても この先の望みはない」て。 451 00:38:54,098 --> 00:38:59,771 旦那さんは わての話なんぞ 聞く耳を持ってくれまへん。 452 00:38:59,771 --> 00:39:07,212 ご寮さんて呼ばれたかて お店の役には 一つも立ってへんのだす。 453 00:39:07,212 --> 00:39:09,514 せやろか。 454 00:39:11,716 --> 00:39:17,889 誓文払いいうて 現銀売りするやなんて➡ 455 00:39:17,889 --> 00:39:20,792 五鈴屋も変わったもんやて 思いましたで。 456 00:39:20,792 --> 00:39:23,695 それは 惣ぼんさんが…。 457 00:39:23,695 --> 00:39:27,065 惣ぼん一人で 思いつくことやろか。 フフ。 458 00:39:27,065 --> 00:39:29,968 えっ? 459 00:39:29,968 --> 00:39:33,371 こないな体になりましたやろ。 460 00:39:33,371 --> 00:39:42,747 近頃 「縁と月日」いう言葉が つくづく 身にしみるんだす。 461 00:39:42,747 --> 00:39:46,618 卒中風で命拾いしたんは➡ 462 00:39:46,618 --> 00:39:51,389 この世との縁が まだ切れてへんいうことや。 463 00:39:51,389 --> 00:39:56,894 あんさんが 五鈴屋に嫁いだんは 縁や。 464 00:40:01,065 --> 00:40:05,603 お店のために 腕を振るえるようになるには➡ 465 00:40:05,603 --> 00:40:10,275 まだ月日がかかる。 466 00:40:10,275 --> 00:40:12,777 へえ。 467 00:40:12,777 --> 00:40:16,281 やれるだけのことやって➡ 468 00:40:16,281 --> 00:40:20,785 焦らず 諦めず➡ 469 00:40:20,785 --> 00:40:26,424 縁と月日が満ちるのを 待ちなはれ。 470 00:40:26,424 --> 00:40:30,295 縁と月日…。 471 00:40:30,295 --> 00:40:45,843 ♬~ 472 00:40:45,843 --> 00:40:47,845 <幸が ご寮さんとなって➡ 473 00:40:47,845 --> 00:40:51,149 三年がたち…> 474 00:40:51,149 --> 00:40:55,987 幸は どんどん 手が早うなるなあ。 475 00:40:55,987 --> 00:41:01,793 はあ…。 何や 近頃 目ぇが疲れてしょうないわ。 476 00:41:01,793 --> 00:41:03,995 ほんなら あとは わてが。 477 00:41:05,663 --> 00:41:10,868 (桔梗屋孫六) えらいこっちゃ~! えらいこっちゃ えらいこっちゃ えらいこっちゃ…! 478 00:41:15,773 --> 00:41:19,277 お家さん 桔梗屋の旦那さんが お見えだす。 479 00:41:19,277 --> 00:41:22,780 桔梗屋さんが?へえ。 何の御用だすやろ。 480 00:41:22,780 --> 00:41:24,716 旦那さんと 惣ぼんさんにも➡ 481 00:41:24,716 --> 00:41:27,518 話 聞いてもらいたいて 言うてはりますけど。 482 00:41:29,654 --> 00:41:31,656 はあ…。 483 00:41:33,491 --> 00:41:37,628 (孫六)ああ ご機嫌さん。➡ 484 00:41:37,628 --> 00:41:41,299 本日は ええお日柄だすなあ。 485 00:41:41,299 --> 00:41:45,136 どないしはりました? えらい改まって。 486 00:41:45,136 --> 00:41:47,805 めでたい話 持ってきましたんや。 487 00:41:47,805 --> 00:41:50,141 縁談だすがな。 488 00:41:50,141 --> 00:41:52,443 縁談て 誰の? 489 00:41:52,443 --> 00:41:56,314 (孫六)惣次さんに決まってますやろ。 490 00:41:56,314 --> 00:42:00,585 待っとくれやす。 嫁取って 分家するには まだ…。 491 00:42:00,585 --> 00:42:04,455 嫁取りとちゃいます。 入り婿の話だす。 492 00:42:04,455 --> 00:42:07,358 惣次を 婿に? 493 00:42:07,358 --> 00:42:11,929 驚いたら あきまへんで。 船場の伏見屋さんが➡ 494 00:42:11,929 --> 00:42:16,401 こいさんの婿にて お望みだすのや! 495 00:42:16,401 --> 00:42:20,271 (徳兵衛)何やて! あの伏見屋が? 496 00:42:20,271 --> 00:42:23,174 わてを 婿に? 497 00:42:23,174 --> 00:42:28,413 <降って湧いた惣次の縁談話は 五鈴屋に波乱を呼び➡ 498 00:42:28,413 --> 00:42:33,718 幸の運命をも 大きく変えていくことになるのです> 499 00:42:35,953 --> 00:42:38,790 何すんのや。 このアホ! ろくでなし! 500 00:42:38,790 --> 00:42:40,725 徳兵衛。 しっかりしなはれ。 501 00:42:40,725 --> 00:42:42,960 四代目の目ぇは 節穴やな。 502 00:42:42,960 --> 00:42:45,296 五代目のお披露目をさせていただきます。 503 00:42:45,296 --> 00:42:48,199 五鈴屋の五代目でございます。 えっ? 504 00:42:48,199 --> 00:42:51,803 幸を わての嫁に迎えとうおます。 505 00:42:51,803 --> 00:42:55,306 幸は 大した女子や。 ハッハハ!