1 00:00:04,938 --> 00:00:08,775 いや それ 五鈴屋の鈴小紋やね いいねえ。 フフフ…。 2 00:00:08,775 --> 00:00:10,811 やっぱり 五鈴屋さんのお着物➡ 3 00:00:10,811 --> 00:00:13,514 すてきよね~! ねえ そうよね~! 4 00:00:15,949 --> 00:00:18,952 ⚟おおきに。 またお待ちしております。 5 00:00:20,621 --> 00:00:22,556 (結)あっ おいでやす。 6 00:00:22,556 --> 00:00:24,791 (お竹)あっ おいでやす。 (佐助)おいでやす。 7 00:00:24,791 --> 00:00:26,727 (幸)よう おいでやす。 8 00:00:26,727 --> 00:00:30,130 どうぞ 見てっておくれやす。 9 00:00:30,130 --> 00:00:43,644 ♬~ 10 00:00:43,644 --> 00:00:45,946 まだやろか…。 11 00:00:47,514 --> 00:00:50,417 <宝暦4年11月。➡ 12 00:00:50,417 --> 00:00:52,819 五鈴屋江戸店の人々は➡ 13 00:00:52,819 --> 00:00:58,158 遠方からの客の訪れを 今か今かと待っていました> 14 00:00:58,158 --> 00:01:01,929 もう お着きになっても ええ頃だすのになあ…。 15 00:01:01,929 --> 00:01:05,265 へえ…。 今日こそはて思てましたんやけど。 16 00:01:05,265 --> 00:01:10,103 道に迷うてはるんやない? うちも賢輔どんと一緒に見てくるわ。 17 00:01:10,103 --> 00:01:12,039 ⚟(賢輔)ご寮さん! 18 00:01:12,039 --> 00:01:16,410 来はりましたで。 あっ…。 19 00:01:16,410 --> 00:01:19,313 ごめんやす! 茂作さん! 20 00:01:19,313 --> 00:01:23,183 ご寮さん えらいご無沙汰してもうて…。 21 00:01:23,183 --> 00:01:26,887 お待ちかねの人 連れてきましたで。 22 00:01:35,429 --> 00:01:37,965 梅松さん… だすな? 23 00:01:37,965 --> 00:01:39,900 (梅松)はい…。 24 00:01:39,900 --> 00:01:44,838 あっ… よう来ておくれやしたなあ! 25 00:01:44,838 --> 00:01:48,976 <この日 はるばる伊勢の白子から やって来たのは➡ 26 00:01:48,976 --> 00:01:53,313 鈴の小紋の型紙を彫った梅松でした> 27 00:01:53,313 --> 00:01:55,315 あっ…。 28 00:02:02,589 --> 00:02:06,893 こない美しい反物になったんか…。 29 00:02:08,462 --> 00:02:10,464 あっ…。 30 00:02:14,201 --> 00:02:22,909 (すすり泣き) 31 00:02:22,909 --> 00:02:35,288 ♬~ 32 00:02:35,288 --> 00:02:41,628 さっきは みっともない姿 見せてしもて すんませんだな。➡ 33 00:02:41,628 --> 00:02:45,799 型紙が反物になったとこ 初めて見たもんで…。 34 00:02:45,799 --> 00:02:47,734 初めて? 35 00:02:47,734 --> 00:02:52,572 わしらは 型紙こさえたら それっきりやもんで。 36 00:02:52,572 --> 00:02:54,574 ⚟(力造)梅松っつぁん! 37 00:02:59,646 --> 00:03:03,517 (力造)あんたが… 梅松っつぁんだね!? 38 00:03:03,517 --> 00:03:05,919 はい…。 39 00:03:05,919 --> 00:03:09,389 型付師の力造だよ。 40 00:03:09,389 --> 00:03:13,260 いや… よく来ておくんなすった! 41 00:03:13,260 --> 00:03:20,600 俺は… おめえさんが彫る型紙に 心底惚れちまってよ。 42 00:03:20,600 --> 00:03:23,270 (お才)ぶしつけでごめんなさいよ。 43 00:03:23,270 --> 00:03:27,774 うちの人… 梅松っつぁんが江戸に来るの➡ 44 00:03:27,774 --> 00:03:31,611 首長くして待ってたもんだから。 45 00:03:31,611 --> 00:03:36,783 <型紙作りが盛んな白子では 型売り業者が力を持ち➡ 46 00:03:36,783 --> 00:03:43,123 五鈴屋と じかに仕事をする梅松に 厳しい目が向けられていました。➡ 47 00:03:43,123 --> 00:03:49,629 苦境を知った幸は 梅松を 江戸に呼び寄せる手はずを取ったのです> 48 00:03:49,629 --> 00:03:56,136 遠いとこ おいでいただいて ホンマに ありがとさんでございます。 49 00:03:56,136 --> 00:03:59,639 礼言うのは わしの方やに。 50 00:03:59,639 --> 00:04:02,609 締め上げられて どもならんとこ➡ 51 00:04:02,609 --> 00:04:05,445 茂作さんの手引きで抜け出せたんや。 52 00:04:05,445 --> 00:04:09,249 見張りがついとってよ 夜逃げ同然やったさけ➡ 53 00:04:09,249 --> 00:04:12,152 持ち出せたんは 型彫りの道具だけでよ➡ 54 00:04:12,152 --> 00:04:14,921 あとは 何もかんも置いてきらった。 55 00:04:14,921 --> 00:04:20,794 な~に 道具と腕さえあったら ほんでええに。 56 00:04:20,794 --> 00:04:25,932 その腕 見込んで ご相談したいことがございます。 57 00:04:25,932 --> 00:04:28,268 何やろか? 58 00:04:28,268 --> 00:04:33,106 おかげさんで 小紋染めは よう売れてます。 59 00:04:33,106 --> 00:04:36,409 これをいっときのはやりで 終わらせんのは惜しい。 60 00:04:36,409 --> 00:04:42,215 末永う売れる品にできへんやろかて 皆で知恵絞ったんだす。 61 00:04:42,215 --> 00:04:47,154 男はんにも女子にも お年寄りや若い人にも➡ 62 00:04:47,154 --> 00:04:50,290 誰にでも似合うて 飽きが来ない➡ 63 00:04:50,290 --> 00:04:52,626 そないな新柄が出来たら➡ 64 00:04:52,626 --> 00:04:58,798 小紋染めは 江戸の町に しっかり 根下ろすんやないかて思てますのや。 65 00:04:58,798 --> 00:05:03,069 男にも 女子にも…。 66 00:05:03,069 --> 00:05:09,843 型紙彫る人 染める人 売る店➡ 67 00:05:09,843 --> 00:05:15,649 皆が 一つ所に力合わせたら きっと作り出せるて思います。 68 00:05:15,649 --> 00:05:19,920 図案描く人も ここにいてますし。 69 00:05:19,920 --> 00:05:23,256 へえ! 70 00:05:23,256 --> 00:05:26,459 誰からも望まれる小紋…。 71 00:05:28,395 --> 00:05:33,233 身の回りの世話は うちに任せておくんなさいよ。 72 00:05:33,233 --> 00:05:37,103 部屋の支度も もうできてますから。 73 00:05:37,103 --> 00:05:40,607 皆さん… おおきんな! 74 00:05:44,844 --> 00:05:47,547 ホンマに おおきん! 75 00:06:00,894 --> 00:06:05,565 <絹の反物に 小紋を美しく染め抜くためには➡ 76 00:06:05,565 --> 00:06:12,239 型紙の上に糊を置く 型付師の熟練の技が必要です。➡ 77 00:06:12,239 --> 00:06:19,746 五鈴屋の鈴小紋は 梅松が彫った型紙を 力造が丹念に型付けすることで➡ 78 00:06:19,746 --> 00:06:22,249 生み出されたのです> 79 00:06:22,249 --> 00:06:30,924 ♬~ 80 00:06:30,924 --> 00:06:34,794 (茂作)初めて見せてもうたけんど 見事な技やのう! 81 00:06:34,794 --> 00:06:37,397 へえ! 梅松っつぁん➡ 82 00:06:37,397 --> 00:06:40,300 こいつ 干し場に上げるんで 手ぇ貸しておくんなさい。 83 00:06:40,300 --> 00:06:42,269 はい! お手伝いします。 84 00:06:42,269 --> 00:06:44,271 わしも! お~ ありがてえ! 85 00:06:44,271 --> 00:06:47,474 じゃあ いきまっせ。 おう… いよっ! 86 00:06:49,142 --> 00:06:53,847 うちの人 朝から張り切ってたんですよ。 87 00:06:53,847 --> 00:06:57,817 梅松っつぁんに 型付け見てもらうんだって。 88 00:06:57,817 --> 00:07:01,354 これから何べんだって 見せられるのにねえ? 89 00:07:01,354 --> 00:07:03,890 へえ。 90 00:07:03,890 --> 00:07:06,192 はあ…。 91 00:07:10,063 --> 00:07:12,365 藍甕? 92 00:07:12,365 --> 00:07:16,069 力造さん 藍染めも始めはったんだすか? 93 00:07:16,069 --> 00:07:18,571 あっ… ええ。 94 00:07:18,571 --> 00:07:21,474 (力造)まだ お目にかけられる 代物じゃねえんですが…。 95 00:07:21,474 --> 00:07:25,345 あ… これは…? 96 00:07:25,345 --> 00:07:30,183 絹と同じように 木綿にも 小紋を染められねえかってね。 97 00:07:30,183 --> 00:07:33,920 ああ…。 木綿に糊を置いたあと➡ 98 00:07:33,920 --> 00:07:36,589 藍甕に入れて つけ染めにしてみたんです。 99 00:07:36,589 --> 00:07:40,260 絹と違って 木綿は 染まりにくくてね…。 100 00:07:40,260 --> 00:07:43,163 藍甕にドボンとつけんのが 一番なんだが➡ 101 00:07:43,163 --> 00:07:46,766 裏が藍で染まって こうなっちまうんだ。 102 00:07:46,766 --> 00:07:50,637 何度も 何度も 試しちゃいるんですけどねえ。 103 00:07:50,637 --> 00:07:53,940 面白い…。 104 00:07:53,940 --> 00:07:56,276 これが うまいこといったら➡ 105 00:07:56,276 --> 00:08:03,550 木綿のええとこと絹のええとこ合わせた 新しい反物が出来ますなあ! 106 00:08:03,550 --> 00:08:07,220 反物いうんは ホンマに奥が深い。 107 00:08:07,220 --> 00:08:12,726 呉服も太物も やらんならんことが まだまだ山のようにあります! 108 00:08:12,726 --> 00:08:16,563 あっ… 何や 武者震いがしますわ! 109 00:08:16,563 --> 00:08:18,598 (笑い声) 110 00:08:18,598 --> 00:08:20,900 ご寮さんは 大したお方やのう! 111 00:08:20,900 --> 00:08:26,573 賢輔 せえだい ご奉公して ご寮さんのお役に立つんやで。 112 00:08:26,573 --> 00:08:29,242 へえ! (茂作)おう。 113 00:08:29,242 --> 00:08:32,145 (笑い声) 114 00:08:32,145 --> 00:08:34,114 はあ…。 115 00:08:34,114 --> 00:09:03,109 ♬~ 116 00:09:08,548 --> 00:09:12,218 それ 賢輔どんの? へえ。 117 00:09:12,218 --> 00:09:16,222 食べて力つけんと 治る風邪も治りまへんよって。 118 00:09:16,222 --> 00:09:18,358 無理しすぎなんやわ。 119 00:09:18,358 --> 00:09:22,562 毎晩毎晩 寝る間も惜しんで 図案描いてはるんやもの。 120 00:09:22,562 --> 00:09:28,234 早う新しい図案作らんならんて 一所懸命だすのや。 121 00:09:28,234 --> 00:09:32,939 それ うちが持っていきます。 あっ… ほな。 122 00:09:35,909 --> 00:09:39,212 賢輔どん おかゆさん持ってきた…。 123 00:10:10,810 --> 00:10:15,582 ええ柄ばっかり…。 124 00:10:15,582 --> 00:10:19,486 (賢輔)んん…。 125 00:10:19,486 --> 00:10:22,188 目ぇ覚めたん? 126 00:10:25,291 --> 00:10:27,293 結さん! 127 00:10:27,293 --> 00:10:31,631 えらいすんまへん! 慌てんでええよ。 128 00:10:31,631 --> 00:10:35,301 寒いことない? 129 00:10:35,301 --> 00:10:39,105 寝汗かいてるわ。 冷えたらあかん。 130 00:10:42,075 --> 00:10:46,446 そないなこと してもろたら…➡ 131 00:10:46,446 --> 00:10:48,648 罰当たります。 132 00:10:50,316 --> 00:10:53,987 あ…。 ありがとさんでございます。 133 00:10:53,987 --> 00:10:56,689 もう ようなりましたよって。 134 00:11:03,796 --> 00:11:10,270 ♬~ 135 00:11:10,270 --> 00:11:14,274 賢輔どん…。 へえ。 136 00:11:15,942 --> 00:11:23,416 うちを… おかみさんにしてくれへん? 137 00:11:23,416 --> 00:11:25,351 えっ? 138 00:11:25,351 --> 00:11:29,122 うち… 賢輔どんと一緒になりたい。 139 00:11:29,122 --> 00:11:32,025 ずっと そばにおりたいの。 140 00:11:32,025 --> 00:11:36,296 うちを… おかみさんにして。 141 00:11:36,296 --> 00:11:38,298 お願いや。 142 00:11:42,969 --> 00:11:45,638 めっそうもないことでございます! 143 00:11:45,638 --> 00:11:51,511 わては 奉公人です。 所帯持つことは でけしまへん。 144 00:11:51,511 --> 00:11:54,347 どうぞ堪忍しておくれやす! 145 00:11:54,347 --> 00:12:09,596 ♬~ 146 00:12:09,596 --> 00:12:13,900 結? そこで何してるの? 147 00:12:16,369 --> 00:12:21,941 うち… アホやなあ…。 148 00:12:21,941 --> 00:12:25,411 どないしたん? 149 00:12:25,411 --> 00:12:31,284 いらんこと言うて 賢輔どんを困らしてしもた。 150 00:12:31,284 --> 00:12:33,786 何言うたの? 151 00:12:37,423 --> 00:12:40,960 「おかみさんにしてほしい」て頼んだの。 152 00:12:40,960 --> 00:12:43,630 (風の音) 153 00:12:43,630 --> 00:12:48,635 奉公人やよって 所帯は持たれへん言われて…。 154 00:12:53,640 --> 00:12:58,811 賢輔どん… ひょっとして…➡ 155 00:12:58,811 --> 00:13:02,682 好きな人でもおるんやろか。 156 00:13:02,682 --> 00:13:05,618 まさか…。 157 00:13:05,618 --> 00:13:10,456 うち… 切ない。 158 00:13:10,456 --> 00:13:13,459 苦しいて かなんの…。 159 00:13:13,459 --> 00:13:17,597 (すすり泣き) 160 00:13:17,597 --> 00:13:27,907 (すすり泣き) 161 00:13:36,616 --> 00:13:38,551 邪魔するよ。 162 00:13:38,551 --> 00:13:41,287 (2人)いらっしゃいませ。 栄次郎さん! 163 00:13:41,287 --> 00:13:43,289 あっ お久しゅうございます。 164 00:13:43,289 --> 00:13:47,627 近くの料理屋で ひいき筋の旦那に馳走になってきた。 165 00:13:47,627 --> 00:13:50,663 あっ…。ハハハ…。 (吉二)はい。 これ お土産です。 166 00:13:50,663 --> 00:13:57,637 おや もう 来年の暦だすか。 167 00:13:57,637 --> 00:14:02,608 ひいき筋ってのは 暦問屋の大旦那でね➡ 168 00:14:02,608 --> 00:14:05,378 売り出し前の暦を分けてもらったのさ。 169 00:14:05,378 --> 00:14:09,248 おおきに。 ありがとさんでございます。 170 00:14:09,248 --> 00:14:13,753 来年は 乙亥… ええ年回りだすな。 171 00:14:13,753 --> 00:14:17,390 (栄次郎)うん…。 あの… 栄次郎さん。 172 00:14:17,390 --> 00:14:20,293 (栄次郎)何だい? 173 00:14:20,293 --> 00:14:26,766 お芝居の衣装に 男はんにも女子にも どっちにも似合う柄 ありまへんやろか? 174 00:14:26,766 --> 00:14:28,701 結…。 175 00:14:28,701 --> 00:14:35,775 う~ん… 芝居の衣装ってのは 一目で 何の役か分かるように出来てるから➡ 176 00:14:35,775 --> 00:14:40,613 男も女も同じってわけにはいかねえな。 177 00:14:40,613 --> 00:14:43,916 お姫様なら 赤い振り袖。 178 00:14:45,485 --> 00:14:50,289 仁王襷を掛けているのは豪傑。 179 00:14:50,289 --> 00:14:53,793 紙衣を着てるのは これは 貧乏人。 180 00:14:53,793 --> 00:14:55,728 ハハハ… けどな➡ 181 00:14:55,728 --> 00:15:00,133 なじみの花魁からの恋文なら 話は別だぜ。➡ 182 00:15:00,133 --> 00:15:04,003 「恋しく」なんて文字が柄になっててな➡ 183 00:15:04,003 --> 00:15:09,375 放蕩に身を持ち崩した 色男に見えるのさ。 184 00:15:09,375 --> 00:15:12,912 文字が… 柄に…。 185 00:15:12,912 --> 00:15:28,261 ♬~ 186 00:15:28,261 --> 00:15:31,164 あっ! 187 00:15:31,164 --> 00:15:33,132 これや…。 188 00:15:33,132 --> 00:15:36,402 ご寮さん! 干支… 干支だす! 189 00:15:36,402 --> 00:15:39,272 干支? 190 00:15:39,272 --> 00:15:42,775 子 丑 寅 卯 辰 巳…。 191 00:15:42,775 --> 00:15:46,779 干支の12文字 柄にしたら どないだすやろ? 192 00:15:50,116 --> 00:15:54,954 ⚟来年の大小柱暦 とじ暦~! 193 00:15:54,954 --> 00:15:59,458 ⚟来年の大小柱暦 とじ暦~! 194 00:16:07,900 --> 00:16:11,237 (お才)もう何日も座ったっきりで…➡ 195 00:16:11,237 --> 00:16:14,140 ろくに食べもしないし 横にもならない。➡ 196 00:16:14,140 --> 00:16:17,376 あれじゃ いくらなんだって 体壊しちまうよ。 197 00:16:17,376 --> 00:16:21,247 おめえも職人の女房なら分かるだろ? 198 00:16:21,247 --> 00:16:27,386 寝食忘れて のめり込むほど 賢輔さんの図案が見事だってこった。 199 00:16:27,386 --> 00:16:30,923 う~ん でもねえ…。 200 00:16:30,923 --> 00:16:32,859 あの~…。 うわっ! 201 00:16:32,859 --> 00:16:37,396 あ~ びっくりした! どうしなすったんです? 202 00:16:37,396 --> 00:16:41,267 五鈴屋さんに伝えておくんない。 203 00:16:41,267 --> 00:16:45,104 型紙は… あと3日で仕上がるて。 204 00:16:45,104 --> 00:16:47,940 3日…。 205 00:16:47,940 --> 00:16:50,443 29日だね? 206 00:16:52,278 --> 00:16:54,213 あっ…。 207 00:16:54,213 --> 00:17:02,088 (風の音) 208 00:17:02,088 --> 00:17:06,792 ほな いて参じます。 へえ。 お早うお帰りやす。 209 00:17:10,229 --> 00:17:12,164 姉さん! 210 00:17:12,164 --> 00:17:14,567 うちも… 一緒に行ってええ? 211 00:17:14,567 --> 00:17:16,502 えっ? 212 00:17:16,502 --> 00:17:20,072 精魂込めて描いた図案 どないな型紙になったか➡ 213 00:17:20,072 --> 00:17:22,275 うちも見てみたい。 214 00:17:24,243 --> 00:17:26,245 ええよ。 215 00:17:27,914 --> 00:17:34,587 (強風の音) 216 00:17:34,587 --> 00:17:36,923 風… 強なってきましたな。 217 00:17:36,923 --> 00:17:41,761 ホンマやなあ…。 結 足元 気ぃ付けなはれや。 218 00:17:41,761 --> 00:17:48,267 (強風の音) 219 00:17:48,267 --> 00:17:50,202 あっ ああっ! あっ! 220 00:17:50,202 --> 00:17:52,204 危ない! 221 00:18:09,055 --> 00:18:12,558 ご寮さん おけが おまへんか!? あ…。 222 00:18:12,558 --> 00:18:15,461 結 だんないか!? 223 00:18:15,461 --> 00:18:18,230 どないしたん? どっか痛いんか? 224 00:18:18,230 --> 00:18:21,067 すまねえ。 風にあおられちまって…。 225 00:18:21,067 --> 00:18:25,071 (賢輔)危ないやないかい! けがしたら どないするんだす!? 226 00:18:26,872 --> 00:18:29,241 びっくりしたやろ…。 227 00:18:29,241 --> 00:18:32,144 いっぺん 店 戻りまひょ。 228 00:18:32,144 --> 00:18:35,381 梅松さんがお待ちだす。 先 行ってておくれやす。 229 00:18:35,381 --> 00:18:40,186 わては 結さん送って すぐ追いかけますよって。 230 00:18:41,921 --> 00:18:45,391 あっ… 結 立てるか? 231 00:18:45,391 --> 00:18:47,393 (賢輔)さあ。 232 00:18:53,933 --> 00:18:56,402 ほんなら 気ぃ付けてな。 へえ。 233 00:18:56,402 --> 00:18:58,404 行きまっせ。 234 00:19:01,207 --> 00:19:18,758 (風の音) 235 00:19:18,758 --> 00:19:20,893 ⚟結? 236 00:19:20,893 --> 00:19:24,363 型紙持って 帰ってきたよ。 237 00:19:24,363 --> 00:19:26,432 寝てるの? 238 00:19:26,432 --> 00:19:30,236 はあ… 明日楽しみに見たらええわ。 239 00:19:33,572 --> 00:19:46,385 ⚟(風の音) 240 00:19:53,259 --> 00:19:56,262 おお~! まあ!➡ 241 00:19:56,262 --> 00:20:00,399 なんと見事な細工やろか! 242 00:20:00,399 --> 00:20:03,936 (佐助)ええ型紙に仕上がって よろしおましたなあ! 243 00:20:03,936 --> 00:20:06,272 へえ! 皆に見せとうて➡ 244 00:20:06,272 --> 00:20:09,108 いっぺん預からしてもろたんだす。 はあ~! 245 00:20:09,108 --> 00:20:13,279 年が明けたら すぐに戻して 力造さんに染めてもらいます。 246 00:20:13,279 --> 00:20:18,417 (佐助)へえ! 申に寅… 戌は どこやろ? 247 00:20:18,417 --> 00:20:20,786 (壮太)あっ これじゃありませんか? (お竹)ああ~! 248 00:20:20,786 --> 00:20:23,289 (長介)丑は… あっ! あった! 249 00:20:23,289 --> 00:20:25,224 おお~! (笑い声) 250 00:20:25,224 --> 00:20:28,794 これ 手に取ったら 誰でも つい 干支探してしまいますな。 251 00:20:28,794 --> 00:20:35,568 へえ! 染め色次第で 男はんにも 女子にも よう似合いますやろ。 252 00:20:35,568 --> 00:20:40,139 来年は 干支の小紋で勝負しまひょな。 253 00:20:40,139 --> 00:20:42,074 (一同)へえ! 254 00:20:42,074 --> 00:21:09,768 ♬~ 255 00:21:12,138 --> 00:21:14,140 (物音) 256 00:21:14,140 --> 00:21:34,960 ⚟(駆け回る足音) 257 00:21:34,960 --> 00:21:37,263 「かんにん」? 258 00:21:39,298 --> 00:21:42,635 ⚟(佐助)ご寮さん! 259 00:21:42,635 --> 00:21:46,438 どないしたんだす!? 型紙がありまへん!えっ? 260 00:21:46,438 --> 00:21:49,308 文箱ごと消えてしもたんだす! 261 00:21:49,308 --> 00:21:51,310 まさか…。 262 00:21:55,648 --> 00:21:57,650 結…? 263 00:22:04,256 --> 00:22:06,592 結さん…。 264 00:22:06,592 --> 00:22:10,095 2人は大川沿いを頼んます。 (2人)はい! 265 00:22:10,095 --> 00:22:13,766 行くで! へえ! 266 00:22:13,766 --> 00:22:17,603 何か持ち出してはりますか? 何も…。 267 00:22:17,603 --> 00:22:21,473 ほな… 型紙だけ持って…? 268 00:22:21,473 --> 00:22:26,478 あの型紙… 賢輔どんの身代わりのつもりで? 269 00:22:28,948 --> 00:22:31,417 ご寮さん! どこ行かはるんだす? 270 00:22:31,417 --> 00:22:34,620 早う 結を見つけなあかん! 皆で捜してます。 271 00:22:34,620 --> 00:22:36,555 ご寮さんは ここにいておくんなはれ。 272 00:22:36,555 --> 00:22:38,791 けど… もし おかしな考えでも起こしたら! 273 00:22:38,791 --> 00:22:43,662 ご寮さん! 結さんは 身投げするような弱い方とちゃいますで。 274 00:22:43,662 --> 00:22:46,165 落ち着いとくなはれ! 275 00:22:48,300 --> 00:22:53,005 必ず 無事に帰ってきはります。 276 00:22:59,645 --> 00:23:05,951 <しかし 日が暮れても 結の行方は知れませんでした> 277 00:23:08,254 --> 00:23:10,256 ⚟(戸が開く音) 278 00:23:13,125 --> 00:23:16,128 (佐助)力造さんにも 訳 話して 捜してもろてます。 279 00:23:16,128 --> 00:23:20,132 けど 行き先に 心当たりがおまへんよって…。 280 00:23:22,601 --> 00:23:26,472 (戸をたたく音) ⚟夜分に恐れ入ります。➡ 281 00:23:26,472 --> 00:23:30,342 枡吾屋の者でございます。 282 00:23:30,342 --> 00:23:33,112 えっ? 結が そちらさんに? 283 00:23:33,112 --> 00:23:36,015 (平助) はい… 昼から お見えになっています。 284 00:23:36,015 --> 00:23:39,418 無事だすやろか? けがは ありまへんか? 285 00:23:39,418 --> 00:23:44,290 ご無事でございます。 ご心配には及びません。 286 00:23:44,290 --> 00:23:47,159 ほんなら… 何で 枡吾屋さんに? 287 00:23:47,159 --> 00:23:50,429 店の前を 行きつ戻りつしておいでのところを➡ 288 00:23:50,429 --> 00:23:53,299 主の忠兵衛が声をかけまして。 289 00:23:53,299 --> 00:23:55,301 早くお知らせにあがるつもりが➡ 290 00:23:55,301 --> 00:24:01,106 何分 大晦日の忙しさに取り紛れ… 相すいません。 291 00:24:01,106 --> 00:24:03,909 何ぞ 荷物をお持ちだしたか? 292 00:24:03,909 --> 00:24:05,844 荷物…? (佐助)へえ。 293 00:24:05,844 --> 00:24:10,382 あっ ええ。 角張った風呂敷包みを一つ。 294 00:24:10,382 --> 00:24:14,086 やっぱり…。 ほな 今から迎えに参じます。 295 00:24:14,086 --> 00:24:16,755 (平助)あっ それは ご無用に願います。 296 00:24:16,755 --> 00:24:19,658 今夜のところは うちでお預かりいたしますと➡ 297 00:24:19,658 --> 00:24:22,161 主が申しておりますので。 298 00:24:24,930 --> 00:24:29,802 承知いたしました。 明日の朝一番に伺います。 299 00:24:29,802 --> 00:24:35,808 今夜一晩 妹をよろしゅうお頼申します。 300 00:24:40,279 --> 00:24:43,782 <まんじりともせずに朝を迎えた幸は➡ 301 00:24:43,782 --> 00:24:47,419 急ぎ 枡吾屋へと向かったのです> 302 00:24:47,419 --> 00:24:50,622 (枡吾屋忠兵衛) お待たせして申し訳ございません。 303 00:24:50,622 --> 00:24:52,958 年賀の客が ひっきりなしで…。 304 00:24:52,958 --> 00:24:56,829 妹が ごやっかいを おかけしてしもて おわびの申しようもございまへん。 305 00:24:56,829 --> 00:25:03,235 まあまあ… まずは新年のご挨拶を。 306 00:25:03,235 --> 00:25:06,905 はあ…。 307 00:25:06,905 --> 00:25:11,243 今… 祝いの膳の支度を させておりますので。 308 00:25:11,243 --> 00:25:13,746 いえ… 結構でございます。 309 00:25:13,746 --> 00:25:18,917 それより 一刻も早う 妹を連れて帰りとう存じます。 310 00:25:18,917 --> 00:25:21,387 弱りましたなあ…。 311 00:25:21,387 --> 00:25:26,592 結さん 五鈴屋さんには もう戻りたくないと仰せなのですよ。 312 00:25:26,592 --> 00:25:28,527 (佐助)えっ? 313 00:25:28,527 --> 00:25:31,096 「姉さんには 二度と会いたくない。➡ 314 00:25:31,096 --> 00:25:33,032 顔を合わせるのも嫌だ」と➡ 315 00:25:33,032 --> 00:25:36,402 そう おっしゃって。➡ 316 00:25:36,402 --> 00:25:41,206 仲のいい姉妹に 一体 何があったんです? 317 00:25:43,609 --> 00:25:48,947 結を… 呼んどくれやす。 妹と じかに話します。 318 00:25:48,947 --> 00:25:53,419 枡吾屋さんとは関わりのない 内輪の話でございますよって。 319 00:25:53,419 --> 00:25:56,955 あ~… ハハハハ…。 320 00:25:56,955 --> 00:25:59,425 ご存じないのですねえ。 321 00:25:59,425 --> 00:26:03,295 私は 前にも 結さんの相談に乗っているのですよ。 322 00:26:03,295 --> 00:26:07,733 ほら… お上から 上納金のお申しつけがあった時に。 323 00:26:07,733 --> 00:26:11,904 店の一大事に ご相談の相手もないというので➡ 324 00:26:11,904 --> 00:26:16,575 いつでも力になりますと申し上げました。 325 00:26:16,575 --> 00:26:20,746  回想 姉さん 枡吾屋さんに 頼んでみたらどないやろ? 326 00:26:20,746 --> 00:26:24,383 力になる言うてくれはったし…。 何言うてますのや! 327 00:26:24,383 --> 00:26:27,085 ほんなら あの時…。 328 00:26:27,085 --> 00:26:31,256 内情も すっかり打ち明けてくださいましてね…。 329 00:26:31,256 --> 00:26:34,092 あっ… アホなことを…。 330 00:26:34,092 --> 00:26:37,396 ああ… あっ あっ あっ… お怒りになっちゃいけませんよ。 331 00:26:37,396 --> 00:26:40,699 店のためを思ってのことですから。 332 00:26:43,202 --> 00:26:46,772 結さん! どこにいてますのや!? 333 00:26:46,772 --> 00:26:49,408 結さん 出てきてくれなはれ! おやめください… おやめください! 334 00:26:49,408 --> 00:26:51,343 んっ! 335 00:26:51,343 --> 00:26:54,246 ♬~ 336 00:26:54,246 --> 00:26:57,950 やめなはれ… 佐助どん! 結さん! 出てきてくれなはれ! 337 00:26:57,950 --> 00:27:02,554 結さん! チッ… ならず者が。 338 00:27:02,554 --> 00:27:07,426 五鈴屋さんでは 奉公人に どんなしつけを しておいでなのです? 339 00:27:07,426 --> 00:27:12,564 奉公人の不調法は 主の私が 代わって おわび申します。 340 00:27:12,564 --> 00:27:17,903 けど… 店と妹を案じればこそ 大きな声も出しますのや。 341 00:27:17,903 --> 00:27:21,373 決して ならず者ではございまへん。 お引き取り願います。 342 00:27:21,373 --> 00:27:24,576 結さんは この先も 枡吾屋にとどまりたいと➡ 343 00:27:24,576 --> 00:27:27,880 そう望んでおいでなのですから。 344 00:27:36,255 --> 00:27:39,925 結さん… 何だって そんなことを…。 345 00:27:39,925 --> 00:27:46,698 妹の不始末 ホンマに なんと おわび申し上げたらええか…。 346 00:27:46,698 --> 00:27:51,403 ご寮さん 頭上げておくんない。 347 00:27:51,403 --> 00:27:55,941 いっぺん彫ったもんは 腕が覚えとるもんで➡ 348 00:27:55,941 --> 00:27:58,844 すぐに もういっぺん彫らしてもらいます。 349 00:27:58,844 --> 00:28:05,050 けど… 枡吾屋さんが あの型紙 使わへんはずがありまへん。 350 00:28:05,050 --> 00:28:11,356 よそで売り出されてしもたら 五鈴屋が まねしたことになってしまいます。 351 00:28:11,356 --> 00:28:20,365 せやけどなあ… あれで染めた反物は よその店では売れへんのや。 352 00:28:24,236 --> 00:28:31,376 ⚟(鳥の鳴き声) 353 00:28:31,376 --> 00:28:37,583 この度は 枡吾屋忠兵衛様と こちらの結さんのご縁談が調いまして➡ 354 00:28:37,583 --> 00:28:41,453 まことに おめでとうございます。 355 00:28:41,453 --> 00:28:47,593 収まるところに収まって 私も 一安心でございますよ。 356 00:28:47,593 --> 00:28:53,932 結さん それはそれは 大切にされておいでですよ。 357 00:28:53,932 --> 00:28:59,404 へえ…。 本日は お日柄もよく➡ 358 00:28:59,404 --> 00:29:06,712 略式ながら 幾久しゅうお納めくださいませ。 359 00:29:13,085 --> 00:29:20,058 こちらは そちら様で お納めくださいませ。 360 00:29:20,058 --> 00:29:24,730 頂戴するいわれのない 金子でございますよって。 361 00:29:24,730 --> 00:29:34,373 それより 祝言の前に 妹と二人きりで 話しさせていただきとう存じます。 362 00:29:34,373 --> 00:29:40,579 このこと 枡吾屋さんに よろしゅうお伝えください。 363 00:29:53,592 --> 00:29:55,894 こちらでございます。 364 00:30:13,612 --> 00:30:17,315 (障子を閉める音) 365 00:30:24,956 --> 00:30:33,265 結… これが あんたの望んだことやの? 366 00:30:35,434 --> 00:30:38,970 悔いはないの? 367 00:30:38,970 --> 00:30:43,842 悔い? そんなん あらへんわ。 368 00:30:43,842 --> 00:30:49,448 姉さんのそばで生きなあかん苦しさから やっと逃れられるんや。 369 00:30:49,448 --> 00:30:52,651 あんた 何言うてるの? 370 00:30:52,651 --> 00:30:56,455 何でも手に入る姉さんには うちの気持ちは分からんやろね。 371 00:30:56,455 --> 00:30:58,824 分かりまへん! 372 00:30:58,824 --> 00:31:00,792 相手に思いが通じへんからいうて➡ 373 00:31:00,792 --> 00:31:04,096 こない非道なまねしてええいう道理 おまへん! 374 00:31:06,398 --> 00:31:13,605 賢輔どんは… 己を責めて苦しんでますのやで。 375 00:31:13,605 --> 00:31:19,111 あんたの気持ちに応えんかったせいで 大事な型紙 失うて➡ 376 00:31:19,111 --> 00:31:22,414 お店に難儀かけてしもてるて…。 377 00:31:22,414 --> 00:31:27,786 「お店に」やて…? 378 00:31:27,786 --> 00:31:33,291 フフッ… 姉さんには ホンマに心がないのやね。 379 00:31:37,295 --> 00:31:44,002 人の思いに気ぃ付かんのは 罪なことやわ…。 380 00:31:51,643 --> 00:31:56,148 うちは あの型紙を土産にして➡ 381 00:31:56,148 --> 00:32:00,919 枡吾屋さんのご寮さんに してもらいましたんや。 382 00:32:00,919 --> 00:32:08,794 枡吾屋さん 日本橋に呉服屋開いて うちを店主にしてくれる言うてはります。 383 00:32:08,794 --> 00:32:14,466 姉さんと同じ 呉服屋の主だす。 384 00:32:14,466 --> 00:32:18,170 もう… 後戻りはできまへん。 385 00:32:22,941 --> 00:32:25,444 よう分かった…。 386 00:32:27,612 --> 00:32:30,649 あんたにかける祝いの言葉はありまへん。 387 00:32:30,649 --> 00:32:38,290 けど… せめてもの はなむけに 一つ教えておきます。 388 00:32:38,290 --> 00:32:42,160 あんたは あの型紙を土産や言うたけど➡ 389 00:32:42,160 --> 00:32:44,629 それは間違いやで。 390 00:32:44,629 --> 00:32:46,565 えっ? 391 00:32:46,565 --> 00:32:54,139 あれは 使い方一つで 嫁入り道具にも 身を滅ぼす罠にもなるもんや。 392 00:32:54,139 --> 00:32:56,975 ようよう気ぃ付けなはれや。 393 00:32:56,975 --> 00:33:23,401 ♬~ 394 00:33:23,401 --> 00:33:28,106 (蔵前屋)この度は よい縁を得られ おめでとうございます。 395 00:33:28,106 --> 00:33:31,610 いい年をして 年の離れたのをもらいまして…。 396 00:33:31,610 --> 00:33:35,313 今日は ご披露かたがた 連れてまいりました。 397 00:33:41,286 --> 00:33:46,958 結と申します。 よろしゅうお頼申します。 398 00:33:46,958 --> 00:33:51,296 これはまた 上方言葉がかわいらしい。 399 00:33:51,296 --> 00:33:55,800 枡吾屋さん 十も二十も 若返って見えますよ。 400 00:33:55,800 --> 00:33:59,437 (笑い声) 401 00:33:59,437 --> 00:34:03,241 遅うなりまして。 (蔵前屋)井筒屋さん こちらへ。 402 00:34:03,241 --> 00:34:05,243 へえ。 403 00:34:13,585 --> 00:34:18,924 顔がそろったところで お披露目することがございます。 404 00:34:18,924 --> 00:34:24,095 私 近く 日本橋に呉服店を 開くこととなりました。 405 00:34:24,095 --> 00:34:27,766 おお~。 田所屋を居抜きで買い上げたと➡ 406 00:34:27,766 --> 00:34:32,938 聞いていますが? はい。 呉服商 日本橋枡吾屋の方は➡ 407 00:34:32,938 --> 00:34:39,611 女房の結が店主を務めます。 どうぞ ごひいきに願います。➡ 408 00:34:39,611 --> 00:34:41,913 そこで…。 409 00:34:52,624 --> 00:34:59,431 店開きに 売り出す品でございます。 お納めくださいませ。 410 00:35:01,733 --> 00:35:07,539 小紋染めですね…。 これは美しい! 411 00:35:07,539 --> 00:35:11,376 おや? 何か文字のようなものが…。 412 00:35:11,376 --> 00:35:17,582 はい。 干支の12文字を散らして 小紋に染めました。 413 00:35:17,582 --> 00:35:20,385 (一同)おお~! 414 00:35:20,385 --> 00:35:25,223 本当だ! ここに 私の干支の「子」の字が。 415 00:35:25,223 --> 00:35:27,592 辰は どこでしょう? 416 00:35:27,592 --> 00:35:33,264 (蔵前屋)こんな しゃれた柄を… よく思いついたものですねえ。 417 00:35:33,264 --> 00:35:36,968 これなら大当たり間違いなしですよ! フフフ…。 418 00:35:38,603 --> 00:35:44,409 う~ん… 干支のほかにも 文字が交じってますのやなあ。 419 00:35:44,409 --> 00:35:46,411 えっ? 420 00:35:49,614 --> 00:35:53,952 (惣次)ここに「五」➡ 421 00:35:53,952 --> 00:35:56,788 ここに「金」➡ 422 00:35:56,788 --> 00:35:59,290 ここに「令」。 423 00:35:59,290 --> 00:36:03,294 干支にない字が 3つありますで。 424 00:36:06,898 --> 00:36:13,571 五と金と令… 何かの符丁でおますか? 425 00:36:13,571 --> 00:36:18,443 あ… それは…。 426 00:36:18,443 --> 00:36:20,912 「五鈴」だす。 427 00:36:20,912 --> 00:36:25,917 3つの文字 組み合わせたら「五鈴」になります。 428 00:36:27,585 --> 00:36:33,391 うちの姉は 田原町五鈴屋の 七代目店主でございます。 429 00:36:33,391 --> 00:36:36,594 五鈴屋さんの? 430 00:36:36,594 --> 00:36:39,497 田原町にある呉服屋ですね。 431 00:36:39,497 --> 00:36:43,768 小紋を売り出した店ですよ。 ああ~。 432 00:36:43,768 --> 00:36:48,606 (ざわめき) 433 00:36:48,606 --> 00:36:52,777 干支の小紋は 姉が型紙を作って➡ 434 00:36:52,777 --> 00:36:56,614 嫁入り道具に 持たせてくれたものでございます。 435 00:36:56,614 --> 00:37:04,722 ああ~ なるほど! それで「五鈴」の文字が。 436 00:37:04,722 --> 00:37:08,226 呉服屋同士 競い合うこともあるでしょうに。 437 00:37:08,226 --> 00:37:11,229 妹思いの姉様ですねえ。 438 00:37:11,229 --> 00:37:13,364 へえ…。 439 00:37:13,364 --> 00:37:16,568 (忠兵衛)よそに まねされては 一大事でございます。➡ 440 00:37:16,568 --> 00:37:20,371 店開きまで ご内密に。 441 00:37:24,742 --> 00:37:26,678 (清兵衛)おお~ どれどれ…? 442 00:37:26,678 --> 00:37:30,615 (雪乃)あっ また見つけました! 父さんの干支の「酉」ですよ。 443 00:37:30,615 --> 00:37:33,918 アハハハ! 南無三。 先を越されたか。 444 00:37:33,918 --> 00:37:36,821 (笑い声) 445 00:37:36,821 --> 00:37:39,724 (雪乃)お杉 あなたの干支は なあに? 446 00:37:39,724 --> 00:37:45,630 わての干支だすか? (雪乃)旦那様が頂いてきた反物➡ 447 00:37:45,630 --> 00:37:49,267 干支の文字が柄になってるの。 448 00:37:49,267 --> 00:37:51,769 面白い柄を考えたものだ。 449 00:37:51,769 --> 00:37:56,407 枡吾屋さんは よい後添えを もらいなすったねえ。 450 00:37:56,407 --> 00:37:58,476 へえ…。 451 00:37:58,476 --> 00:38:04,048 新六 ありがたいと思っていますよ。 あっ…。 452 00:38:04,048 --> 00:38:08,353 娘が よく笑うようになったのは お前のおかげだ。 453 00:38:08,353 --> 00:38:11,222 あ… 親父様 何をおっしゃいます。 454 00:38:11,222 --> 00:38:15,727 亡くなった母親に似て あれは体が弱い。➡ 455 00:38:15,727 --> 00:38:20,365 家に籠もってばかりで 青白い顔が幽霊のようだと➡ 456 00:38:20,365 --> 00:38:23,902 陰口をたたかれたこともあったが➡ 457 00:38:23,902 --> 00:38:32,610 お前に着物を見立ててもらうようになって 雪乃は 見違えるほど きれいになった。 458 00:38:32,610 --> 00:38:37,248 ハハッ 親の欲目かもしれないが。 ハハハハ…。 459 00:38:37,248 --> 00:38:42,120 いえ… ホンマに おきれいだす。 460 00:38:42,120 --> 00:38:49,961 お杉も親切に世話をしてくれて 家内は円満 店は繁盛。 461 00:38:49,961 --> 00:38:56,401 うちの婿殿は 福の神かもしれませぬ。 462 00:38:56,401 --> 00:38:59,270 (笑い声) 463 00:38:59,270 --> 00:39:02,173 何を笑っているのです? うん? フフフ…。 464 00:39:02,173 --> 00:39:05,710 旦那様の干支 見つけましたよ。 465 00:39:05,710 --> 00:39:08,546 ん~ どこ? どこにある? 466 00:39:08,546 --> 00:39:13,751 ほら。 ああ… ハハハハ…。 467 00:39:18,223 --> 00:39:23,094 (甚八)売上銀 千五百匁 確かにお預かりいたしました。 468 00:39:23,094 --> 00:39:25,797 へえ。 おおきに。 469 00:39:28,867 --> 00:39:31,869 へえ。 間違いおまへん。 470 00:39:33,571 --> 00:39:39,911 ところで… 拝見しましたよ。 干支の小紋。 471 00:39:39,911 --> 00:39:44,082 寄り合いの席で 枡吾屋様がお配りになりまして。 472 00:39:44,082 --> 00:39:49,387 あれは 妹さんに持たせた 嫁入り道具だそうですねえ。 473 00:39:49,387 --> 00:39:51,322 へえ…。 474 00:39:51,322 --> 00:39:55,927 井筒屋様が 「五鈴」の文字を見つけたので こちら様の品だと分かったと➡ 475 00:39:55,927 --> 00:39:59,764 主が申しておりました。 そうだすか…。 476 00:39:59,764 --> 00:40:02,667 あっ… どうぞ ご安心を。 477 00:40:02,667 --> 00:40:07,939 4月1日の店開きまでは 決して口外いたしませんから。 478 00:40:07,939 --> 00:40:10,842 4月… 1日? 479 00:40:10,842 --> 00:40:16,948 干支の小紋 店開きに売り出すやなんて 恥知らずもええとこや! 480 00:40:16,948 --> 00:40:21,286 佐助どん。 (賢輔)あの細工に 惣ぼんさんが➡ 481 00:40:21,286 --> 00:40:24,622 気ぃ付かはったんだすな。 482 00:40:24,622 --> 00:40:30,428 梅松さんが ないしょで彫ってはった 「五」と「金」と「令」の文字。 483 00:40:30,428 --> 00:40:35,133 五鈴屋が干支の小紋 売り出せるのは あれのおかげだす。 484 00:40:35,133 --> 00:40:39,304 へえ…。 店開きが4月1日て…➡ 485 00:40:39,304 --> 00:40:43,141 五鈴屋が小紋売り出すのと同じ日だす。 486 00:40:43,141 --> 00:40:47,011 てっきり 先越される思うてましたけど…。 487 00:40:47,011 --> 00:40:49,447 何でやろなあ…? 488 00:40:49,447 --> 00:40:53,151 居抜きで店買うて 反物も染め上がってるのやったら➡ 489 00:40:53,151 --> 00:40:56,054 すぐにでも店開けるはずやのに。 490 00:40:56,054 --> 00:41:01,759 ひょっとして… 遠慮してはるのやありまへんか? 491 00:41:01,759 --> 00:41:06,097 4月1日は 旦那さんの祥月命日だす。 492 00:41:06,097 --> 00:41:09,934 五鈴屋は きっと その日に売り出すやろから➡ 493 00:41:09,934 --> 00:41:13,604 抜け駆けだけは せんようにて…。 494 00:41:13,604 --> 00:41:16,507 そやろか? 495 00:41:16,507 --> 00:41:20,478 <しかし… それが甘い考えであることを➡ 496 00:41:20,478 --> 00:41:24,782 幸たちは いずれ 思い知らされることになるのです> 497 00:41:24,782 --> 00:41:29,654 卯月朔日 店開き~。 あと20日~。 498 00:41:29,654 --> 00:41:33,491 どこにもない新柄小紋の売り出し…。 私にも おくれよ。 499 00:41:33,491 --> 00:41:36,494 (佐助)どれも ええ色だすなあ。 500 00:41:36,494 --> 00:41:40,798 売り出しの5日前には 数そろえて お納めいたします。 501 00:41:40,798 --> 00:41:43,835 よろしゅうお頼申します。 502 00:41:43,835 --> 00:41:48,306 けど… よりによって同じ日に 同じ小紋を➡ 503 00:41:48,306 --> 00:41:52,176 同じ銀 百匁で売り出すなんてねえ。 504 00:41:52,176 --> 00:41:57,015 今し方も 引き札まいてるとこに 出くわしちまったんですよ。 505 00:41:57,015 --> 00:41:59,817 なにも 浅草まで出張ってこなくたってさあ。 506 00:41:59,817 --> 00:42:02,120 おい! よさねえか。 507 00:42:05,390 --> 00:42:11,262 五鈴屋も 負けてられまへんなあ。 508 00:42:11,262 --> 00:42:15,767 お客さんに どないしたら 喜んで買うていただけるか➡ 509 00:42:15,767 --> 00:42:19,937 ここからが知恵の絞りどころだす。 510 00:42:19,937 --> 00:42:22,940 (一同)へえ! 511 00:42:25,610 --> 00:42:30,782 <2つの店が 干支の小紋を同時に売り出す日まで➡ 512 00:42:30,782 --> 00:42:35,420 あと20日に迫っていました> 513 00:42:35,420 --> 00:42:37,955 申し訳ありまへん! ご挨拶代わりに…。 514 00:42:37,955 --> 00:42:39,991 呉服仲間から外されるそうやな。 515 00:42:39,991 --> 00:42:42,827 外れていただきます。 お仲間を外されたら…! 516 00:42:42,827 --> 00:42:45,296 よろしく頼みますよ。 おかみさん…。 517 00:42:45,296 --> 00:42:47,632 大坂へ? 道は開けますよ。 518 00:42:47,632 --> 00:42:52,303 待ち人来りて 幸いあり。 よう戻らはりましたな。 519 00:42:52,303 --> 00:42:55,306 幸。 お帰りやす!ええ~!?