1 00:00:02,202 --> 00:00:04,137 ごめんよ。 (壮太)ありがとうございました。➡ 2 00:00:04,137 --> 00:00:06,139 またよろしくお願いいたします。 3 00:00:06,139 --> 00:00:09,943 <宝暦11年 12月14日。➡ 4 00:00:09,943 --> 00:00:11,979 この日 江戸の五鈴屋は➡ 5 00:00:11,979 --> 00:00:15,415 開店10周年を 迎えました> 6 00:00:15,415 --> 00:00:18,118 (お竹) どうぞ お好きなの 選んでおくれやす。 7 00:00:18,118 --> 00:00:21,955 おや! 今年の鼻緒は鈴がついてるね。 8 00:00:21,955 --> 00:00:29,129 へえ。 10年のお祝いだすよって 五鈴屋の名ぁに ちなんで。 フフフ。 9 00:00:29,129 --> 00:00:32,432 (お浜)あ~ おかみさん!➡ 10 00:00:32,432 --> 00:00:36,136 おめでとうございます。 (お照)10年 いろいろあったけど➡ 11 00:00:36,136 --> 00:00:38,171 ご繁盛で何よりですねえ。 12 00:00:38,171 --> 00:00:41,642 (幸)ありがとさんでございます。 皆さんのおかげだす。 13 00:00:41,642 --> 00:00:44,978 (お仲) 藍染めの浴衣地は 五鈴屋さんに限るよ。 14 00:00:44,978 --> 00:00:47,814 ほら! ちょっと前に はやった 源蔵紋なんて➡ 15 00:00:47,814 --> 00:00:49,750 もう さっぱりだってさ。 16 00:00:49,750 --> 00:00:54,454 (お浜)やっぱり 物がよくて 飽きずに長く着られるのが一番だからね。 17 00:00:54,454 --> 00:00:57,157 へえ。 小間物も見てみようよ! 18 00:00:57,157 --> 00:00:59,860 あっ そうだ! そうだ そうだ。 19 00:01:01,929 --> 00:01:04,831 あっ これだね! 「道成寺」の舞台で➡ 20 00:01:04,831 --> 00:01:07,801 富五郎と吉之丞が挿してた かんざしって。 21 00:01:07,801 --> 00:01:11,638 (菊栄)へえ こちらでございます! (お浜)きれいだね~! 22 00:01:11,638 --> 00:01:14,508 私らには とっても手が出ないけど…。 23 00:01:14,508 --> 00:01:20,113 あと三つ若けりゃ 亭主を質に入れてでも 買うけどねえ。 フフフ…。 24 00:01:20,113 --> 00:01:25,419 三つじゃ足りないよ。 あと二十は若くなくっちゃ。 25 00:01:25,419 --> 00:01:28,288 バカにおしじゃないよ! (笑い声) 26 00:01:28,288 --> 00:01:32,960 本当にねえ。何言ってんだい あんた! あと二つで十分。 27 00:01:32,960 --> 00:01:36,430 <年の暮れに開かれた 仲間の寄り合いには➡ 28 00:01:36,430 --> 00:01:40,801 初顔の人物が加わっていました> 29 00:01:40,801 --> 00:01:46,306 (河内屋)新しく浅草太物仲間に 加わりたいと お申し出の方が➡ 30 00:01:46,306 --> 00:01:49,309 本日 この場に お見えになっています。 31 00:01:49,309 --> 00:01:52,312 さあ どうぞ。 32 00:01:57,651 --> 00:02:04,257 お初にお目にかかります。 駒形町の丸屋でございます。 33 00:02:04,257 --> 00:02:08,261 (和泉屋)丸屋さんといえば 紬で評判の お店ではありませんか。 34 00:02:08,261 --> 00:02:14,401 はい。 二代にわたり 呉服を商ってまいりました。 35 00:02:14,401 --> 00:02:19,606 よい紬を手ごろな値で売るのが 丸屋の信条でございます。 36 00:02:19,606 --> 00:02:24,411 ところが 大火のあと 馬喰町の呉服仲間の取り決めで➡ 37 00:02:24,411 --> 00:02:28,949 大幅に売値を上げることとなりまして…。 38 00:02:28,949 --> 00:02:33,820 高値をつけてしまっては お客様の足は遠のくばかり。 39 00:02:33,820 --> 00:02:37,424 このままでは 商いが立ち行きません。 40 00:02:37,424 --> 00:02:41,294 (恵比寿屋)だからといって なぜ 太物に商売替えなさるのです? 41 00:02:41,294 --> 00:02:45,298 こちらの皆様は 大火のあとも値を抑え➡ 42 00:02:45,298 --> 00:02:49,970 そろって 火伏守りの浴衣地を 売り出されました。 43 00:02:49,970 --> 00:02:56,143 仲間とは本来そういったものではないかと 感じ入ったゆえでございます。 44 00:02:56,143 --> 00:02:59,646 (松見屋)それで かねて つきあいのある私のところに➡ 45 00:02:59,646 --> 00:03:02,549 ご相談に見えたというわけですよ。 46 00:03:02,549 --> 00:03:05,452 (大和屋)太物商いも難しいものですよ。 47 00:03:05,452 --> 00:03:09,322 いま一度 お考えになってみては いかがですか? 48 00:03:09,322 --> 00:03:13,927 いいえ… 後戻りはせぬ覚悟で➡ 49 00:03:13,927 --> 00:03:17,264 馬喰町の呉服仲間は もう抜けてまいりました。 50 00:03:17,264 --> 00:03:19,199 仲間を抜けて…。 51 00:03:19,199 --> 00:03:24,137 (丸屋)呉服商いを捨てても のれんだけは守りとうございます。 52 00:03:24,137 --> 00:03:31,144 どうか お仲間に加えていただけますよう 何とぞ… 何とぞ! 53 00:03:33,613 --> 00:03:37,951 (和泉屋) そこまで腹をくくっておいでならば…。 54 00:03:37,951 --> 00:03:45,625 いかがでしょう? 仲間が増えるのは 私たちにとっても心強いことです。 55 00:03:45,625 --> 00:03:48,662 ああ では この件は決まりということで…。 56 00:03:48,662 --> 00:03:53,366 いや… ちょっと お待ちくだされ。 57 00:03:55,302 --> 00:04:01,108 丸屋さんには 今までどおり 呉服商いを続けていただきたい。 58 00:04:01,108 --> 00:04:04,111 そ… そんな殺生な…。 59 00:04:04,111 --> 00:04:07,948 抜けてきた呉服仲間に また戻れと おっしゃるのですか? 60 00:04:07,948 --> 00:04:11,852 (河内屋)いやいや そういう話ではありませんよ。➡ 61 00:04:11,852 --> 00:04:16,389 私たちの方が看板を掛け替えるのです。 62 00:04:16,389 --> 00:04:19,292 看板を? はい。 63 00:04:19,292 --> 00:04:23,597 太物仲間から➡ 64 00:04:23,597 --> 00:04:27,400 浅草呉服太物仲間に 変わるのですよ。 65 00:04:27,400 --> 00:04:35,942 そうすれば 丸屋さんは これまでどおり 紬を売り続けることができますから。 66 00:04:35,942 --> 00:04:42,716 うちは代々 太物商いです。 今更 呉服など扱えるかどうか…。 67 00:04:42,716 --> 00:04:47,654 看板を掛け替えるというのは 新たに仲間を作るということですよ。 68 00:04:47,654 --> 00:04:50,957 そう たやすくは いきますまい…。 69 00:04:52,793 --> 00:04:57,631 何を商うかは それぞれの店次第で よいではありませんか。 70 00:04:57,631 --> 00:05:04,237 呉服と太物の両方を売るもよし 呉服か太物か どちらかでもよし。 71 00:05:04,237 --> 00:05:07,908 そうですね。 何より 取り扱う品が増えるのは➡ 72 00:05:07,908 --> 00:05:10,243 お客様にとって よいことですから。 73 00:05:10,243 --> 00:05:16,049 それに 私たちが 呉服太物仲間となれば➡ 74 00:05:16,049 --> 00:05:21,855 これまで断たれていた 呉服商いの道を 再び開くことができます。 75 00:05:25,725 --> 00:05:28,395 (河内屋)ごもっとも。➡ 76 00:05:28,395 --> 00:05:35,268 秘伝とすべき技を 惜しみなく お分けくださったご恩に報いる時は➡ 77 00:05:35,268 --> 00:05:38,071 今をおいてありませんぞ。 78 00:05:41,408 --> 00:05:46,279 (河内屋) さあ そろそろ決めるとしましょう。 79 00:05:46,279 --> 00:05:54,287 丸屋さんを迎え入れ 浅草呉服太物仲間を作ること➡ 80 00:05:54,287 --> 00:05:59,793 皆様 ご承知いただけますか否か。 81 00:05:59,793 --> 00:06:04,064 和泉屋は承知いたします。 恵比寿屋も承知でございます。 82 00:06:04,064 --> 00:06:06,099 承知しました。 承知しました。 83 00:06:06,099 --> 00:06:08,802 承知しました。 承知しました。 84 00:06:13,240 --> 00:06:17,244 五鈴屋も 承知でございます。 85 00:06:17,244 --> 00:06:39,266 ♬~ 86 00:06:39,266 --> 00:06:44,938 (佐助) ほな… また呉服商い できるんだすな? 87 00:06:44,938 --> 00:06:46,873 へえ。 88 00:06:46,873 --> 00:06:50,410 (賢輔)ああ…。 89 00:06:50,410 --> 00:06:55,248 夢やないやろか? まだ正式に決まったわけやありまへん。 90 00:06:55,248 --> 00:06:59,152 お上のお許しを 頂いてからのことだすよって。 91 00:06:59,152 --> 00:07:03,089 お許しをもらうんは 難しいことだすやろか? 92 00:07:03,089 --> 00:07:06,726 冥加金さえ お納めしたら お認めいただけるはずやて➡ 93 00:07:06,726 --> 00:07:08,762 皆さん 仰せだした。 94 00:07:08,762 --> 00:07:11,364 (長介) 冥加金というのは いかほどでしょう? 95 00:07:11,364 --> 00:07:13,900 確かなことは分かりまへんけど➡ 96 00:07:13,900 --> 00:07:19,239 何年か前に 七十両お納めして 仲間作ったためしがあるそうだす。 97 00:07:19,239 --> 00:07:23,910 (壮太)七十両…。 十三軒で割れば 僅かな額ですね! 98 00:07:23,910 --> 00:07:30,784 へえ! 年が明けたら 河内屋さんたちが お奉行所に願い出てくださるそうだす。 99 00:07:30,784 --> 00:07:36,489 ご寮さん… よろしおましたな。 100 00:07:39,759 --> 00:07:42,262 おめでとうさんでございます! 101 00:07:42,262 --> 00:07:44,464 (壮太 長介)おめでとうございます! 102 00:07:46,766 --> 00:07:48,768 へえ。 103 00:07:51,938 --> 00:07:59,646 6年…。 呉服仲間 外されて もう6年だす。 104 00:08:01,348 --> 00:08:03,350 ようやっと…。 105 00:08:05,051 --> 00:08:12,359 支配人には ホンマに長いこと 苦労かけましたなあ。 106 00:08:12,359 --> 00:08:16,896 呉服商い また気張っていきまひょな。 107 00:08:16,896 --> 00:08:18,832 へえ…。 108 00:08:18,832 --> 00:08:22,702 (泣き声) 109 00:08:22,702 --> 00:08:24,771 佐助どん…。 110 00:08:24,771 --> 00:08:37,917 ♬~ 111 00:08:37,917 --> 00:08:42,389 (力造) それじゃあ 呉服商いに戻れるんですね。 112 00:08:42,389 --> 00:08:45,258 (お才)おかみさん ようござんしたね! 113 00:08:45,258 --> 00:08:51,398 まだ先のことだすけど 仲間の寄り合いで そないな話になりましたんや。 114 00:08:51,398 --> 00:08:56,603 (お梅) ホンマだすか? ホンマに また呉服を? 115 00:08:56,603 --> 00:09:00,573 ああ… どないしょう…➡ 116 00:09:00,573 --> 00:09:03,877 うれしいてかなん! (笑い声) 117 00:09:03,877 --> 00:09:07,347 (梅松) ほんなら また小紋染めも作れるんやな。 118 00:09:07,347 --> 00:09:09,416 もちろんだす! 119 00:09:09,416 --> 00:09:14,888 力造さん 梅松さん 誠二さん➡ 120 00:09:14,888 --> 00:09:19,893 五鈴屋の小紋染め よろしゅうお頼申します。 121 00:09:22,562 --> 00:09:24,564 (力造)へい! 122 00:09:26,900 --> 00:09:29,235 (お才)うれしいねえ! 123 00:09:29,235 --> 00:09:34,240 新年早々 こんなおめでたい話が聞けるなんてさ! 124 00:09:35,909 --> 00:09:39,579 賢輔さん また いい図案を 描いておくんなさいよ。 125 00:09:39,579 --> 00:09:41,514 へえ! 126 00:09:41,514 --> 00:09:45,518 図案やったら もう出来てます。 127 00:09:59,599 --> 00:10:03,403 (力造)おお…。➡ 128 00:10:03,403 --> 00:10:08,274 家… 全…。➡ 129 00:10:08,274 --> 00:10:12,412 あっ 家内安全ですね! 130 00:10:12,412 --> 00:10:17,250 初めに染める小紋は これにしよて 前から決めてましたんや。 131 00:10:17,250 --> 00:10:21,421 ああ…。 132 00:10:21,421 --> 00:10:29,295 いつか また 呉服商いできる日が来たら きっと この柄で小紋 染めまひょな。 133 00:10:29,295 --> 00:10:32,298 それまでは こないして…。 134 00:10:36,436 --> 00:10:40,807 (梅松)誠二 見てみい。 見事なもんやに。 135 00:10:40,807 --> 00:10:42,842 (誠二)はい。 136 00:10:42,842 --> 00:10:46,980 「家内安全」は誰しもの願いや。➡ 137 00:10:46,980 --> 00:10:51,284 賢輔やん ええ図案 描いたな。 138 00:10:53,319 --> 00:10:55,255 (佐助)賢輔どん? 139 00:10:55,255 --> 00:11:13,273 (すすり泣き) 140 00:11:13,273 --> 00:11:17,610 稗ま~きゃ~ 稗ま~き。 141 00:11:17,610 --> 00:11:19,546 きれいな動き! 142 00:11:19,546 --> 00:11:22,949 <この年の4月 江戸の町では➡ 143 00:11:22,949 --> 00:11:27,820 市村座の芝居が 大当たりを取っていました> 144 00:11:27,820 --> 00:11:30,823 (菊栄)吉之丞さんの「鷺娘」➡ 145 00:11:30,823 --> 00:11:34,427 それはもう見事なもんでごあした! 146 00:11:34,427 --> 00:11:37,130 (お竹)真っ白なお衣装だすか? 147 00:11:37,130 --> 00:11:39,632 きれいだすなあ! 148 00:11:39,632 --> 00:11:44,971 舞台の上で この白無垢から パッと振り袖に替わるんだす。 149 00:11:44,971 --> 00:11:46,906 ホンマに瞬く間や。 150 00:11:46,906 --> 00:11:52,312 はあ… 舞台の上でて そないなこと できますのやろか? 151 00:11:52,312 --> 00:11:55,815 衣装に仕掛けがあってなあ。 152 00:11:55,815 --> 00:12:02,088 「鷺娘」は二代目を継がはった吉之丞さんの 一生の当たり役になりますやろ! 153 00:12:02,088 --> 00:12:04,757 へえ。 154 00:12:04,757 --> 00:12:09,262 ただ… 市村座の芝居だすよって➡ 155 00:12:09,262 --> 00:12:14,400 日本橋枡吾屋さんが 衣装を請け負うててなあ…。 156 00:12:14,400 --> 00:12:17,103 「吉之丞の白無垢」て名ぁ付けて➡ 157 00:12:17,103 --> 00:12:21,608 白綸子に高い値ぇつけて 売り出してはります。 158 00:12:21,608 --> 00:12:28,481 真っ白な綸子て… そうそう お召しに なることはないように思いますけど。 159 00:12:28,481 --> 00:12:33,286 (菊栄)また役者の名ぁ使て もうけよう思てはるのやろ。➡ 160 00:12:33,286 --> 00:12:38,958 ホンマに懲りへんお人らや。 へえ…。 161 00:12:38,958 --> 00:12:43,630 ご寮さん 近江屋さんがお見えだす。 162 00:12:43,630 --> 00:12:45,632 あ…。 163 00:12:50,403 --> 00:12:55,141 (近江屋荘八) あっ…。 いや 本日はお日柄もよく…➡ 164 00:12:55,141 --> 00:12:58,811 縁談と縁組みのご相談にあがりました。 165 00:12:58,811 --> 00:13:00,780 縁談て どなたのだす? うん? 166 00:13:00,780 --> 00:13:03,082 お梅どん。 すんまへん…。 167 00:13:03,082 --> 00:13:05,385 あっ…。 168 00:13:05,385 --> 00:13:08,588 ああ…。 169 00:13:08,588 --> 00:13:14,761 あ… 縁談というのは こちらの支配人さんへのお話なんです。 170 00:13:14,761 --> 00:13:20,099 佐助どんに? へえ。 米沢町で袋物を商っておられる➡ 171 00:13:20,099 --> 00:13:26,406 飯田屋さんが 二番目の娘さんを 佐助さんに めあわせたいと➡ 172 00:13:26,406 --> 00:13:28,941 ご相談に見えられました。 173 00:13:28,941 --> 00:13:33,413 飯田屋さんでごあしたら 何べんか伺うたことあります。 174 00:13:33,413 --> 00:13:37,950 客筋はええし ご主人夫婦のお人柄も 申し分ござりまへん。 175 00:13:37,950 --> 00:13:44,724 フフフ… 私も いいご縁ではないかと 仲人役を引き受けた次第です。 176 00:13:44,724 --> 00:13:48,661 あっ… これは ご挨拶代わりにと➡ 177 00:13:48,661 --> 00:13:53,166 飯田屋さんから お預かりしてまいりました。 はい。 178 00:13:56,336 --> 00:13:58,304 これは…。 179 00:13:58,304 --> 00:14:03,242 (近江屋)酒切手というそうです。 店に持っていけば酒一升と換えられます。 180 00:14:03,242 --> 00:14:07,580 はあ…。 大坂の饅頭切手と一緒だすなあ。 181 00:14:07,580 --> 00:14:09,582 へえ! 182 00:14:11,918 --> 00:14:17,590 結構なお話や思います。 まずは本人の気持ちを確かめてから➡ 183 00:14:17,590 --> 00:14:20,259 お返事させていただきとうございます。 184 00:14:20,259 --> 00:14:23,930 承知いたしました。 よろしくお願いいたします。 185 00:14:23,930 --> 00:14:25,865 へえ。 186 00:14:25,865 --> 00:14:28,101 はあ…。 あっ。 187 00:14:28,101 --> 00:14:31,137 (せきばらい) フフフ…。 188 00:14:31,137 --> 00:14:34,774 え~…。 189 00:14:34,774 --> 00:14:43,416 あの… もう一つの 縁組みと申しますのは 実は…➡ 190 00:14:43,416 --> 00:14:47,787 賢輔さんのことなのです。 賢輔の? 191 00:14:47,787 --> 00:14:55,428 いや 昨年 近江にある本店の跡取りが 急な病で亡くなりました。あ…。 192 00:14:55,428 --> 00:15:03,236 はあ~ 店主には ほかに子がなく 養子を取ることになったのですが…➡ 193 00:15:03,236 --> 00:15:06,906 しかるべき人物を見つけよとの お申しつけで➡ 194 00:15:06,906 --> 00:15:09,942 いや… 考えに考え抜いて たどりついたのが➡ 195 00:15:09,942 --> 00:15:14,647 こちらの賢輔さんというわけです。 196 00:15:14,647 --> 00:15:19,619 ほな… 賢輔を養子に欲しい いうことだすか? 197 00:15:19,619 --> 00:15:25,258 いや… 勝手なお願いなのは 重々承知しておりますが➡ 198 00:15:25,258 --> 00:15:30,129 どうか… お考えいただきませんでしょうか? 199 00:15:30,129 --> 00:15:33,132 頭上げとくれやす。 (近江屋)あっ…。 200 00:15:33,132 --> 00:15:39,772 賢輔のこと そこまで見込んでいただいて ありがとさんでございます。 201 00:15:39,772 --> 00:15:44,644 近江屋さんほどの大店との縁組みは 賢輔の身にとりまして➡ 202 00:15:44,644 --> 00:15:48,281 この上ないお話やと存じます。 あっ それでは…! 203 00:15:48,281 --> 00:15:54,086 いえ… まだ 内々の話なんだすけど➡ 204 00:15:54,086 --> 00:16:00,226 賢輔には いずれ 五鈴屋の九代目店主に なってもらうつもりでおります。 205 00:16:00,226 --> 00:16:03,129 賢輔さんが… 九代目に? 206 00:16:03,129 --> 00:16:07,733 へえ。 せやさかい このお話…➡ 207 00:16:07,733 --> 00:16:11,070 どうかお許しいただきとう存じます。 208 00:16:11,070 --> 00:16:16,742 (近江屋)そうでしたか…。 いや 知らんこととはいえ➡ 209 00:16:16,742 --> 00:16:23,749 むちゃを申しまして…。 今の話は どうぞお忘れください。 210 00:16:29,455 --> 00:16:33,192 ああっ すんまへん。 粗相いたしまして。 211 00:16:33,192 --> 00:16:37,597 いいえ。 わての方こそ。 あっ… ごめんやす。 212 00:16:37,597 --> 00:16:50,610 ♬~ 213 00:16:50,610 --> 00:16:55,948 幸 ちょっとよろしおますか? あっ… へえ。 214 00:16:55,948 --> 00:16:59,252 ええお月さん 出てますで。 215 00:17:01,754 --> 00:17:06,225 (菊栄) 縁談の話 佐助どんに伝えましたんか? 216 00:17:06,225 --> 00:17:13,099 へえ。 ええご縁や思たんだすけどなあ…➡ 217 00:17:13,099 --> 00:17:15,735 断ってほしい言うんだす。 218 00:17:15,735 --> 00:17:18,638 まだ所帯持てる身ぃやない言うて。 219 00:17:18,638 --> 00:17:23,609 まだて… もう ええ年だすのに。 220 00:17:23,609 --> 00:17:32,084 今は 呉服商いのことで頭がいっぱいで ほかのことは考えられへん言うんだす。 221 00:17:32,084 --> 00:17:35,922 値ぇの安い太物で売り上げ立てて➡ 222 00:17:35,922 --> 00:17:41,260 五百両ずつ 三度も 上納金納めて➡ 223 00:17:41,260 --> 00:17:44,096 せんど苦労かけてしもたさかい➡ 224 00:17:44,096 --> 00:17:48,301 今は望むようにさしてやりたい 思てます。 225 00:17:54,607 --> 00:17:59,779 わても… 幸に話すことがおます。 226 00:17:59,779 --> 00:18:04,283 へえ。 何だすやろ? 227 00:18:05,885 --> 00:18:11,691 わてなあ… 江戸に出た時は➡ 228 00:18:11,691 --> 00:18:17,897 誰にも気兼ねせんと わての名ぁで好きな商いできたら➡ 229 00:18:17,897 --> 00:18:21,734 それで満足や思てたんだす。 230 00:18:21,734 --> 00:18:26,072 菊栄の紅屋は 一代限り…➡ 231 00:18:26,072 --> 00:18:30,376 そのつもりでごあした。 232 00:18:30,376 --> 00:18:35,081 けどなあ…➡ 233 00:18:35,081 --> 00:18:41,787 何や それでは惜しいように 思えてきましたんや。 234 00:18:46,792 --> 00:18:53,099 長いこと 五鈴屋さんに 間借りさせてもろてましたけど➡ 235 00:18:53,099 --> 00:18:58,404 ここ出て 店構えよう思てます。 236 00:18:58,404 --> 00:19:01,307 えっ? 237 00:19:01,307 --> 00:19:05,544 店構えて のれん掲げて➡ 238 00:19:05,544 --> 00:19:09,415 初代の店主になろうて決めたんだす。 239 00:19:09,415 --> 00:19:14,720 末永う 後の世まで続く商いが できるように。 240 00:19:14,720 --> 00:19:17,223 菊栄さん…。 241 00:19:17,223 --> 00:19:23,996 幸も近江屋さんも 皆 のれん守るのに一所懸命だす。 242 00:19:23,996 --> 00:19:30,736 吉之丞さんかて 二代目として 立派にお役を勤めてはります。 243 00:19:30,736 --> 00:19:35,908 そないな様子 そばで見させてもろたおかげで➡ 244 00:19:35,908 --> 00:19:40,613 わても 腹 決まりましたんや。 245 00:19:43,582 --> 00:19:47,386 今すぐいうわけにはまいりまへん。 246 00:19:47,386 --> 00:19:55,594 けど… 2年後の暮れまでには 店出そう思てます。 247 00:19:57,596 --> 00:20:01,934 お覚悟 よう分かりました。 248 00:20:01,934 --> 00:20:06,806 お力になれること 何なりとさせていただきます。 249 00:20:06,806 --> 00:20:08,808 フフ…。 250 00:20:08,808 --> 00:20:11,644 おおきに。 フフッ。 251 00:20:11,644 --> 00:20:16,282 幸… 前にも約束しましたやろ? 252 00:20:16,282 --> 00:20:22,088 幸の呉服太物と わての小物で いつか一緒に➡ 253 00:20:22,088 --> 00:20:25,291 何ぞ 面白いことやりまひょな。 254 00:20:25,291 --> 00:20:27,293 へえ! 255 00:20:27,293 --> 00:20:29,495 (笑い声) 256 00:20:36,802 --> 00:20:39,705 <季節が変わり 5月に入っても➡ 257 00:20:39,705 --> 00:20:44,677 まだ 仲間の結成を認める御沙汰は 下りませんでした> 258 00:20:44,677 --> 00:20:48,414 京の巴屋さんに仕入れ頼んだ品だす。 259 00:20:48,414 --> 00:20:53,652 お上のお許しが出ましたら すぐに呉服商い始められます。 260 00:20:53,652 --> 00:21:01,260 浜羽二重 縮緬 紬 紗綾 繻子 緞子…。 261 00:21:01,260 --> 00:21:04,263 ああ どれもこれも懐かしい! 262 00:21:04,263 --> 00:21:07,066 ⚟(お梅)あんた 何ぞ おましたんか? 263 00:21:07,066 --> 00:21:09,135 (佐助)ああ…。 264 00:21:09,135 --> 00:21:12,972 ⚟(雷鳴) 265 00:21:12,972 --> 00:21:17,610 押しかけてきてしもて 堪忍しておくんない。 266 00:21:17,610 --> 00:21:21,614 これ 早うお見せしとうて。 267 00:21:25,284 --> 00:21:27,620 (お梅)あんた それ…。 268 00:21:27,620 --> 00:21:30,422 型紙や。 269 00:21:30,422 --> 00:21:34,226 どうぞ ご覧になっておくんない。 270 00:21:46,305 --> 00:21:49,642 ああ…。 271 00:21:49,642 --> 00:21:52,545 家内安全…。 272 00:21:52,545 --> 00:21:55,347 見事な型紙だす! 273 00:22:00,586 --> 00:22:05,925 梅松さん… おおきに ありがとさんでございます! 274 00:22:05,925 --> 00:22:08,594 いえ…。 275 00:22:08,594 --> 00:22:14,934 染め上がった反物が 目に浮かぶようだす。 276 00:22:14,934 --> 00:22:19,271 あんた よろしおましたなあ。 277 00:22:19,271 --> 00:22:22,107 (お竹)ご寮さん! (駆けてくる足音) 278 00:22:22,107 --> 00:22:24,043 あっ…。➡ 279 00:22:24,043 --> 00:22:28,347 会所から使いの方がお見えだす。 ああ…。 280 00:22:30,616 --> 00:22:34,420 <知らせは 町奉行所から呼び出しがあり➡ 281 00:22:34,420 --> 00:22:39,258 河内屋と和泉屋が出向いている というものでした> 282 00:22:39,258 --> 00:22:43,429 はあ…。 ご寮さん いよいよ…。 283 00:22:43,429 --> 00:22:50,202 <ようやく 浅草呉服太物仲間結成の 許しが下りたのです。➡ 284 00:22:50,202 --> 00:22:52,171 ところが…> 285 00:22:52,171 --> 00:22:56,008 えっ 冥加金が千六百両ですか!? (和泉屋)はい…。 286 00:22:56,008 --> 00:23:00,846 殺生な! どう そろばん はじいたら そんな法外な値がつくのでしょう? 287 00:23:00,846 --> 00:23:07,086 仲間十三人の頭割りで… 一人 百二十三両の出費ですね。 288 00:23:07,086 --> 00:23:12,591 百二十三両!? そんな大金 うちでは工面できません! 289 00:23:12,591 --> 00:23:14,927 日本橋辺りの大店じゃあるまいし…。 290 00:23:14,927 --> 00:23:18,764 百両払うほどなら 呉服商いには 手を出さぬ方がましですよ! 291 00:23:18,764 --> 00:23:22,635 冥加金の額 引き下げていただくことは できぬのでしょうか? 292 00:23:22,635 --> 00:23:26,272 一度下った御沙汰 覆ることはありますまい。 293 00:23:26,272 --> 00:23:29,174 ならば もう 願いは取り下げましょう! 294 00:23:29,174 --> 00:23:31,944 店が潰れては元も子もありません! 295 00:23:31,944 --> 00:23:33,879 おっしゃるとおり! 諦めましょう! 296 00:23:33,879 --> 00:23:37,416 (大和屋)五鈴屋さんと丸屋さんには 申し訳ないが…➡ 297 00:23:37,416 --> 00:23:39,485 それだけの金があるなら➡ 298 00:23:39,485 --> 00:23:46,625 下野の綿の産地に使う方が 後々のためです。 299 00:23:46,625 --> 00:23:49,962 (河内屋) 今日のところは ここまでとして➡ 300 00:23:49,962 --> 00:23:54,466 月半ばに いま一度 集まるとしましょう。 301 00:23:59,138 --> 00:24:04,944 (お竹)千六百両て… そないアホな…! 302 00:24:04,944 --> 00:24:10,082 (佐助)お上は 正直な商いしてるもんから 搾り取るばかりやおまへんか。➡ 303 00:24:10,082 --> 00:24:16,255 お納めした上納金の千五百両かて まだ一文も返してもろてへんいうのに。 304 00:24:16,255 --> 00:24:22,461 お申しつけの千五百両… お上に 献金させていただきとう存じます。 305 00:24:27,266 --> 00:24:34,606 五鈴屋に嫁ぐ時 治兵衛さんから 言われたことがあります。 306 00:24:34,606 --> 00:24:41,413 商いは 生きるか死ぬか そろばんでする戦やて。 307 00:24:43,115 --> 00:24:45,784 今度の戦の相手は お上だす。 308 00:24:45,784 --> 00:24:50,656 五鈴屋だけでは 到底 太刀打ちできるもんやあらしまへん。 309 00:24:50,656 --> 00:24:53,525 (佐助) せやさかい お仲間のお助けを請うて…。 310 00:24:53,525 --> 00:24:56,428 情に訴えたかて どもなりまへん。 311 00:24:56,428 --> 00:24:59,331 皆さん そろばんで戦してはりますのや。 312 00:24:59,331 --> 00:25:03,635 己の店が第一いうんは 当たり前のことだす。 313 00:25:05,571 --> 00:25:13,579 けど… もし 勝てる道が見えてたら…。 314 00:25:16,248 --> 00:25:22,054 呉服商いで 活路を開けるなら…。 315 00:25:30,262 --> 00:25:35,768 <5月15日 再び 太物仲間の寄り合いが開かれ…> 316 00:25:35,768 --> 00:25:42,975 申しつかった千六百両の冥加金について 五鈴屋さんから ご相談があるそうです。 317 00:25:47,279 --> 00:25:50,182 7年前のことでございます。 318 00:25:50,182 --> 00:25:55,954 五鈴屋は お奉行所から 上納金 千五百両を申しつかり➡ 319 00:25:55,954 --> 00:25:59,425 3年に分けて お納めいたしました。 320 00:25:59,425 --> 00:26:04,063 上納金と申しますのは 年三分の利を乗せて➡ 321 00:26:04,063 --> 00:26:09,234 お返しいただくお約束の お金でございます。 322 00:26:09,234 --> 00:26:15,374 その千五百両を 浅草呉服太物仲間を作るための➡ 323 00:26:15,374 --> 00:26:18,277 冥加金に 充てさせていただきとう存じます。 324 00:26:18,277 --> 00:26:21,180 えっ? えっ? 325 00:26:21,180 --> 00:26:27,386 それは 五鈴屋さんが 千五百両の返済を ご辞退なさるということですか? 326 00:26:27,386 --> 00:26:32,091 へえ。 冥加金の金高は千六百両。 327 00:26:32,091 --> 00:26:37,763 そこから千五百両を差し引いて 百両に まけていただくのでございます。 328 00:26:37,763 --> 00:26:42,267 えっ なんと!? お上相手に百両に値切ると? 329 00:26:42,267 --> 00:26:45,270 そんな話にお上が乗りますかね? 330 00:26:45,270 --> 00:26:49,775 そもそも 上納金を返すつもりは あるのでしょうか? 331 00:26:49,775 --> 00:26:54,413 ご返済の代わりに 名字帯刀を許された という話を聞いたことがありますよ。 332 00:26:54,413 --> 00:26:59,118 わては女子だすよって 刀差すいうわけにはいきまへん。 333 00:26:59,118 --> 00:27:01,887 まあ…。 334 00:27:01,887 --> 00:27:05,224 成るか 成らんかは 勝負でございます。 335 00:27:05,224 --> 00:27:12,898 けど… しかるべき筋から願い出れば 勝算はある思います。 336 00:27:12,898 --> 00:27:17,769 お志はありがたいが 危ない橋を渡ってまで➡ 337 00:27:17,769 --> 00:27:22,608 呉服商いに手を広げたいわけでは ないのですよ。 338 00:27:22,608 --> 00:27:28,380 今までどおり 無事に商いができれば それで不足はありませんから。 339 00:27:28,380 --> 00:27:33,886 実は もう一つ ご相談したいことがございます。 340 00:27:43,862 --> 00:27:47,733 それは 近頃 出回ってる酒切手ですね。 341 00:27:47,733 --> 00:27:54,239 へえ。 いつでも一升のお酒に換えられる 便利なもんだす。 342 00:27:55,941 --> 00:28:01,713 これと似たようなこと 呉服で できまへんやろか? 343 00:28:01,713 --> 00:28:06,218 切手と反物を交換するということですか? 344 00:28:06,218 --> 00:28:11,356 へえ。 大坂では 饅頭切手をよう使てます。 345 00:28:11,356 --> 00:28:15,894 何十枚あったかて 饅頭と違て 重いことありまへん。 346 00:28:15,894 --> 00:28:18,797 もろた人は 好きな時に引き換えられますよって➡ 347 00:28:18,797 --> 00:28:21,066 大層人気でございます。 348 00:28:21,066 --> 00:28:24,369 反物を 饅頭のように 買い込む人はいませんよ。 349 00:28:24,369 --> 00:28:28,907 いえ 盆暮れの挨拶に 五反 十反と まとめてお買い上げになるお客様は➡ 350 00:28:28,907 --> 00:28:30,842 いらっしゃいますよ。 351 00:28:30,842 --> 00:28:36,648 呉服切手なら かさばりまへんよって お買いになるお方は 持ち運びが楽。 352 00:28:36,648 --> 00:28:40,919 もろたお方は 好きな時に 好きな反物と換えられて➡ 353 00:28:40,919 --> 00:28:43,388 双方が幸せでございます。 354 00:28:43,388 --> 00:28:48,226 なるほど。 目新しくて 喜ばれるかもしれませんねえ。 355 00:28:48,226 --> 00:28:52,397 しかし 酒と違って 呉服は さまざまですよ。 356 00:28:52,397 --> 00:28:54,333 値も 天と地ほど差があるのに➡ 357 00:28:54,333 --> 00:28:57,936 呉服一反の切手を どの品と 引き換えればよいのです? 358 00:28:57,936 --> 00:29:02,774 では 表書きを「呉服一反」ではなく 「銀百匁」としてはいかがでしょう? 359 00:29:02,774 --> 00:29:07,045 でも ちょうど百匁という反物が そうそうあるわけではなし➡ 360 00:29:07,045 --> 00:29:09,715 不足や余りが出たら どうします? 361 00:29:09,715 --> 00:29:13,552 あとで利を配分するのに 手間がかかるようでは➡ 362 00:29:13,552 --> 00:29:16,221 たまったものではありませんよ。 363 00:29:16,221 --> 00:29:21,059 五鈴屋さんには 何か 考えがおありですかな? 364 00:29:21,059 --> 00:29:30,569 へえ! まずは 浅草呉服太物仲間に限って 切手と換えられる格別な品➡ 365 00:29:30,569 --> 00:29:33,372 あつらえてみては いかがでしょう? 366 00:29:33,372 --> 00:29:35,741 (河内屋)格別な品とは? 367 00:29:35,741 --> 00:29:39,244 これ ご覧になっとくれやす。 368 00:29:45,751 --> 00:29:47,686 ごめんやす。 369 00:29:47,686 --> 00:29:58,930 ♬~ 370 00:29:58,930 --> 00:30:05,404 呉服商いができるようになりましたら 最初に売り出すつもりで染めたもんだす。 371 00:30:05,404 --> 00:30:07,406 どれどれ…。 372 00:30:15,781 --> 00:30:20,118 「家内安全」の 文字散らしの小紋でございます。 373 00:30:20,118 --> 00:30:23,422 ああ… 読めますな! 374 00:30:23,422 --> 00:30:33,098 家… 内… 安… 全! 375 00:30:33,098 --> 00:30:36,435 (一同)おお~! 376 00:30:36,435 --> 00:30:40,138 型紙は 皆 こちらでご用意いたします。 377 00:30:40,138 --> 00:30:44,643 腕のいい型付師にも つながせていただきます。 378 00:30:44,643 --> 00:30:50,449 皆さんと一緒に 呉服で戦がしとうございます。 379 00:30:50,449 --> 00:30:54,319 商いの活路を開く戦でございます。 380 00:30:54,319 --> 00:30:57,222 どうぞ お考えいただけますよう➡ 381 00:30:57,222 --> 00:30:59,925 よろしゅうお頼申します。 382 00:31:02,394 --> 00:31:07,899 そういうことなら 私から 一つ 申し上げることが。 383 00:31:09,601 --> 00:31:13,772 店それぞれ 染め色を変えてはいかがでしょう? 384 00:31:13,772 --> 00:31:19,277 同じ柄でも さまざまな色があれば 選ぶ楽しみができますから。 385 00:31:19,277 --> 00:31:21,279 うん! ごもっとも! 386 00:31:21,279 --> 00:31:27,152 うちは 鴇色にします。 では 私のところは利休茶で…。 387 00:31:27,152 --> 00:31:37,295 ♬~ 388 00:31:37,295 --> 00:31:40,966 ♬ 初春に 389 00:31:40,966 --> 00:31:46,171 <翌年 宝暦13年の 正月2日> 390 00:31:47,839 --> 00:31:51,610 <とうとう その日が来たのです> 391 00:31:51,610 --> 00:31:53,979 ♬ 呉服切手の 392 00:31:53,979 --> 00:31:56,014 呉服切手って何だろうね? 393 00:31:56,014 --> 00:32:00,252 ♬ ますます ますます ご繁盛 ハッ 394 00:32:00,252 --> 00:32:04,256 ♬ あっ 商売繁盛 家内ことほぎ 395 00:32:04,256 --> 00:32:09,761 ♬ いやさか いやさか めでたやな よっ! 396 00:32:11,596 --> 00:32:15,467 新年のお喜びを申し上げます。 397 00:32:15,467 --> 00:32:22,240 五鈴屋江戸本店 今日から また 呉服商い 始めさせていただきます。 398 00:32:22,240 --> 00:32:25,944 どうぞ ごひいきに願います。 399 00:32:25,944 --> 00:32:33,118 初荷の品には 「家内安全」の新柄小紋と 呉服切手をご用意いたしました。 400 00:32:33,118 --> 00:32:36,955 どうぞ 見てっておくれやす。 401 00:32:36,955 --> 00:32:39,624 いらっしゃいませ。 402 00:32:39,624 --> 00:32:41,560 おいでやす。 おいでやす。 403 00:32:41,560 --> 00:32:44,496 おいでやす。(お竹)おいでやす。 おいでやす。 404 00:32:44,496 --> 00:32:48,300 (お里) これは何です? 守り札のようだけど…。 405 00:32:48,300 --> 00:32:52,637 今日から売り出した 呉服切手でございます。 406 00:32:52,637 --> 00:32:58,977 これをお持ちいただきましたら 浅草呉服太物仲間十三軒の どこでも➡ 407 00:32:58,977 --> 00:33:04,583 家内安全の文字散らしの小紋と 引き換えさせていただきます。 408 00:33:04,583 --> 00:33:09,454 <その呉服切手は 浅草の店主たちが知恵を出し合い➡ 409 00:33:09,454 --> 00:33:14,259 幾度も やり直しながら 作り上げたものでした> 410 00:33:14,259 --> 00:33:18,763 いい柄だねえ! 色も落ち着いていて 粋なもんだ。 411 00:33:18,763 --> 00:33:21,399 染め色は店によって違てますよって➡ 412 00:33:21,399 --> 00:33:23,935 お好みに合う色をお選びいただけます。 413 00:33:23,935 --> 00:33:26,972 じゃあ ほかの店も のぞいてみようかねえ! 414 00:33:26,972 --> 00:33:29,407 へえ! そないしとくれやす。 415 00:33:29,407 --> 00:33:33,278 この切手 持ってるだけで 御利益ありそうだよ! 416 00:33:33,278 --> 00:33:39,417 へえ! お年賀に差し上げたら 喜んでいただけるんやないかて思てます。 417 00:33:39,417 --> 00:33:43,288 呉服切手は 一枚 銀百匁。 418 00:33:43,288 --> 00:33:46,291 小紋と同じ値ぇでございます。 419 00:33:46,291 --> 00:33:50,161 (蔵前屋)あの時は 驚きましたよ。➡ 420 00:33:50,161 --> 00:33:53,999 お上にお貸しした千五百両と引き換えに➡ 421 00:33:53,999 --> 00:33:58,770 冥加金を百両に値切りたいと…。 422 00:33:58,770 --> 00:34:01,373 (惣次)お上相手の面倒なお役目➡ 423 00:34:01,373 --> 00:34:05,744 蔵前屋さん よう お引き受けなさいましたな。 424 00:34:05,744 --> 00:34:11,383 な~に 私は 少しばかり 根回しをさせていただいただけです。 425 00:34:11,383 --> 00:34:15,587 南町奉行所の戸倉様とは かねてより おつきあいがございまして➡ 426 00:34:15,587 --> 00:34:20,392 それ… お金の融通やら何やら ハハハ。 427 00:34:20,392 --> 00:34:27,265 戸倉様というと… あっ 上納金の 年賦払いを認めたお役人さんだすな。 428 00:34:27,265 --> 00:34:32,137 はい。 上納金は あくまでも お借り上げ。 429 00:34:32,137 --> 00:34:35,874 年利を乗せて償還するという 建て前ですから➡ 430 00:34:35,874 --> 00:34:41,413 はなから返す気はないと 突き放すわけにもいきますまい。 431 00:34:41,413 --> 00:34:45,951 ええとこに目ぇつけたもんだすな。 432 00:34:45,951 --> 00:34:49,287 呉服商いに戻られるやいなや➡ 433 00:34:49,287 --> 00:34:55,160 家内安全の小紋と 呉服切手で評判を取るのですから➡ 434 00:34:55,160 --> 00:35:03,368 いや~ 五鈴屋さんの商いの才には 驚かされるばかりです。 435 00:35:03,368 --> 00:35:07,739 大坂では 切手は 珍しいもんやありまへんけど➡ 436 00:35:07,739 --> 00:35:13,378 呉服の切手とは… わても思いつきまへなんだ。 437 00:35:13,378 --> 00:35:20,085 あの… 前から 気にかかっていたのですが➡ 438 00:35:20,085 --> 00:35:27,392 井筒屋さんは あちら様とは どのような間柄なのですか? 439 00:35:29,594 --> 00:35:32,397 間柄…。 440 00:35:32,397 --> 00:35:37,602 あんさんが嫁になってくれたら わては もっと もっと 強うなれるのや! 441 00:35:37,602 --> 00:35:41,940 五代目徳兵衛の女房になってくれ。 442 00:35:41,940 --> 00:35:47,278 滑らかで 柔らこうて➡ 443 00:35:47,278 --> 00:35:49,948 ホンマに きれいや。 444 00:35:49,948 --> 00:35:51,883 (たたく音) やかましい! 445 00:35:51,883 --> 00:35:53,818 商いで わての上に立つことは 許しまへんで! 446 00:35:53,818 --> 00:36:00,225 上も下もあらしまへん。 旦那さんは 商いの川を汚す気だすか! 447 00:36:00,225 --> 00:36:04,562 (蔵前屋)井筒屋さん? 何か…? 448 00:36:04,562 --> 00:36:13,071 ああ いや… 五鈴屋さんの商いの才 妬んでる者もおりますやろな。 449 00:36:13,071 --> 00:36:18,276 (蔵前屋) ああ… 確かに いらっしゃいますね。 450 00:36:21,579 --> 00:36:24,082 お帰りなさいませ。 451 00:36:29,454 --> 00:36:31,456 (結)旦那さん。 452 00:36:33,258 --> 00:36:37,128 年が明けてから また 吉之丞の白無垢が売れてます。 453 00:36:37,128 --> 00:36:40,131 お年賀に使ていただいてるようだす。 454 00:36:41,900 --> 00:36:47,272 何だす?(枡吾屋忠兵衛) 浅草で売り出した呉服切手だ。 455 00:36:47,272 --> 00:36:52,977 家内安全… 浅草呉服太物仲間…。 456 00:36:55,780 --> 00:36:58,283 これ 反物と換えられるんだすか? 457 00:36:58,283 --> 00:37:00,718 浅草の店でしか使えない。 458 00:37:00,718 --> 00:37:05,223 取り替えられるのは 同じ柄の小紋だけ。 459 00:37:08,593 --> 00:37:14,065 こんなものが… なぜ売れるのだ…? 460 00:37:14,065 --> 00:37:17,902 浅草呉服太物仲間だと? 461 00:37:17,902 --> 00:37:21,906 二度と呉服商いはできぬように したはずが…。 462 00:37:25,777 --> 00:37:28,913 旦那さん? 463 00:37:28,913 --> 00:37:35,687 あ… それより もっとええ切手 日本橋枡吾屋で作ったらよろしおます。 464 00:37:35,687 --> 00:37:41,926 なぜだ… なぜ あの女なのだ…。 465 00:37:41,926 --> 00:37:45,597 俺ではなく…。 466 00:37:45,597 --> 00:37:47,599 旦那さん? 467 00:37:53,338 --> 00:38:01,880 (にぎわい) 468 00:38:01,880 --> 00:38:03,882 見ておくれやす。 469 00:38:06,551 --> 00:38:08,586 幸。 470 00:38:08,586 --> 00:38:12,357 ええ眺めだすなあ。 へえ! 471 00:38:12,357 --> 00:38:17,228 お家さんが よう言うてはったとおりだす。 472 00:38:17,228 --> 00:38:23,968 のれん守っていくのに 仲間ほど大事なもんはない。 473 00:38:23,968 --> 00:38:30,775 仲間の皆さんが 五鈴屋に 呉服商い 取り戻してくれはったんだす。 474 00:38:35,246 --> 00:38:38,917 おおきに ありがとさんでございます。 475 00:38:38,917 --> 00:38:48,393 ♬~ 476 00:38:48,393 --> 00:38:53,598 呉服も 太物も…。 477 00:38:53,598 --> 00:38:59,804 呉服も 太物も…。 478 00:39:02,407 --> 00:39:08,546 <初荷の 呉服切手と 家内安全の小紋は 評判を呼び➡ 479 00:39:08,546 --> 00:39:14,886 浅草呉服太物仲間十三軒は そろって盛況となったのです> 480 00:39:14,886 --> 00:39:17,355 どれがええやろなあ? これもいい…。 481 00:39:17,355 --> 00:39:22,160 <呉服切手を売り出してから みつきが過ぎて…> 482 00:39:25,230 --> 00:39:27,732 ありがとうございました。 ありがとうございました。 483 00:39:27,732 --> 00:39:29,734 参ろうか。 484 00:39:34,372 --> 00:39:39,244 おはようさんだす! 近頃 お武家さんのお客さん 多おますな。 485 00:39:39,244 --> 00:39:42,247 呉服切手 重宝がられてますのやな! 486 00:39:42,247 --> 00:39:48,386 大きな声 出しなはんな。 奥に お武家さんがお見えだす。 487 00:39:48,386 --> 00:39:52,090 へえ…。 どちらのお家の方だす? 488 00:39:52,090 --> 00:39:55,960 お旗本のご用人さんって 名乗ってはったけど。 489 00:39:55,960 --> 00:40:01,165 お旗本が? 何の御用だすやろ? さあ? 490 00:40:02,800 --> 00:40:07,405 それがし 本田家用人 今井籐七郎と申す。 491 00:40:07,405 --> 00:40:09,340 内々の用談で参った。 492 00:40:09,340 --> 00:40:12,777 へえ どないなことでございましょう? 493 00:40:12,777 --> 00:40:18,416 当家のお嬢様の縁談が調い この秋 祝言を挙げることと相成り申してな。 494 00:40:18,416 --> 00:40:22,120 それはそれは おめでとうさんでございます。 495 00:40:22,120 --> 00:40:27,792 そこで 着物一式 あつらえてもらいたいのだ。 496 00:40:27,792 --> 00:40:32,430 お嫁入りのお支度を 五鈴屋に お任せくださるのでございますか? 497 00:40:32,430 --> 00:40:37,635 うむ! 田原町の五鈴屋は ほかにない よい品を扱っている上➡ 498 00:40:37,635 --> 00:40:41,439 決して法外な値はつけぬとの 評判を聞いたのでな。 499 00:40:41,439 --> 00:40:45,810 へえ! 正直な商い させていただいてます。 500 00:40:45,810 --> 00:40:51,449 末のお嬢様のことゆえ 殿様も奥様も 殊の外 かわいがっておいででな➡ 501 00:40:51,449 --> 00:40:58,656 よい品をそろえて持たせてあげたいのは やまやまなれど…。 502 00:40:58,656 --> 00:41:04,095 あっ… はあ~ 打ち明けて申せば➡ 503 00:41:04,095 --> 00:41:06,764 さほど ぜいたくはできん。 504 00:41:06,764 --> 00:41:10,101 ほな おいくらほどで ご用意さしてもろたら➡ 505 00:41:10,101 --> 00:41:12,403 よろしおますのやろか? 506 00:41:12,403 --> 00:41:14,906 箪笥二棹の分…。 507 00:41:19,177 --> 00:41:22,413 (今井)これで あつらえてもらえまいか? 508 00:41:22,413 --> 00:41:24,615 六十両…。 509 00:41:27,118 --> 00:41:31,622 へえ 承知いたしました。 510 00:41:31,622 --> 00:41:36,294 ああ… フフフ…。 511 00:41:36,294 --> 00:41:42,166 江戸店で初めての嫁荷だすな! もう うれしゅうて ありがとうて! 512 00:41:42,166 --> 00:41:47,438 ハハハ… へえ! 嫁荷を承るんは 呉服屋の何よりの誉れだす。 513 00:41:47,438 --> 00:41:52,310 箪笥二棹の着物 六十両では 心もとない気もしますが…。 514 00:41:52,310 --> 00:41:56,147 それは まあ…。 お旗本は 家格が おありでも➡ 515 00:41:56,147 --> 00:41:59,450 内証は苦しいそうですからね。 ああ…。 516 00:41:59,450 --> 00:42:04,756 おめでたい嫁荷 任せていただけますのは ホンマにありがたいことだす。 517 00:42:04,756 --> 00:42:07,592 ご婚礼まで半年ありますよって➡ 518 00:42:07,592 --> 00:42:11,396 天満の本店にも 京の巴屋さんにも お頼みして➡ 519 00:42:11,396 --> 00:42:14,766 ええ品 お選びいたしまひょ。 520 00:42:14,766 --> 00:42:16,768 (一同)へえ! 521 00:42:18,636 --> 00:42:22,840 さあ… どないしまひょ? 522 00:42:26,277 --> 00:42:29,981 こないな柄 どないだす? ああ ええなあ! 523 00:42:35,286 --> 00:42:38,623 難を転じて…。 難を転じて…。 524 00:42:38,623 --> 00:42:41,526 これでは まだまだ売り物にならない。 知恵を出し合いましょう。 525 00:42:41,526 --> 00:42:43,795 けど…。 枡吾屋はんが?枡吾屋が…。 526 00:42:43,795 --> 00:42:46,431 枡吾屋という…。 枡吾屋はんが関わってたんと➡ 527 00:42:46,431 --> 00:42:49,467 違いますやろか? これはこれは 五鈴屋さん! 528 00:42:49,467 --> 00:42:52,637 足すくわれんよう気ぃ付けておくれやす。 529 00:42:52,637 --> 00:42:55,640 しばらく様子見よか。 うん?